1 論文式試験問題集[公法系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [公法系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 A県B市には,
8 日本で有数の緑濃い原生林と透明度の高さを誇る美しい湖を含む自然保護地域が
9 ある。
10
11 このB市の自然保護地域には,
12 自家用車や観光バスで直接,
13 あるいは,
14 自然保護地域への拠点
15 となっているB駅からタクシーか,
16 定員20名のマイクロバスで運行される市営の路線バスを利用
17 して入ることになる。
18
19 B市は,
20 1年を通じて温暖な気候であることも幸いして,
21 全国各地から年間5
22 00万人を超える観光客が訪れるA県で最大の観光都市となっている。
23
24
25 しかしながら,
26 湖周辺では観光客が増えて交通量が増加したために,
27 車の排気ガスによる原生林の
28 損傷や,
29 心ない観光客の行為で湖が汚れ,
30 透明度が低下するといった問題が深刻になりつつあった。
31
32
33 それに加えて,
34 自然保護地域内の道路のほとんどは道幅が狭く,
35 片方が崖で曲がりくねっており,
36
37 身事故や車同士の接触事故など交通事故が多く発生した。
38
39 そのほとんどは,
40 この道路に不慣れな自家
41 用車と観光バスによるものであった。
42
43
44 そこで,
45 A県公安委員会は,
46 A県,
47 B市等と協議し,
48 自然保護地域内の道路について,
49 道路交通法
50 に基づき,
51 路線バス及びタクシーを除く車両の通行を禁止した。
52
53 その結果,
54 自然保護地域には,
55 観光
56 客は,
57 徒歩,
58 あるいは,
59 市営の路線バスかタクシーを利用しなければ入れないこととなり,
60 B市のタ
61 クシー事業者にとっては,
62 B駅と自然保護地域との間の運行が大きな収入源となった。
63
64
65 タクシー事業については,
66 当初,
67 需給バランスに基づいて政府が事業者の参入を規制する免許制が
68 採られていたが,
69 その後,
70 規制緩和の流れを受けて安全性等の一定条件を満たせば参入を認める許可
71 制に移行した。
72
73 しかし,
74 再び,
75 特定の地域に関してではあるが,
76 参入規制等を強化する法律が制定さ
77 れている。
78
79 これに加えて,
80 202*年には道路運送法が改正され,
81 地方分権推進策の一環として,
82
83 クシー事業に関する各種規制が都道府県条例により行えることとされ,
84 その許可権限が,
85 国土交通大
86 臣から各都道府県知事に移譲された。
87
88
89 Cタクシー会社(以下「C社」という。
90
91 )は,
92 A県から遠く離れた都市で低運賃を売り物に成功を
93 収めたが,
94 その後,
95 タクシーの利用客自体が大幅に減少し,
96 業績が悪化した。
97
98 そこで,
99 C社は,
100 新た
101 な事業地として,
102 一大観光地であるB市の自然保護地域に注目した。
103
104 というのも,
105 B駅に首都圏に直
106 結する特急列車の乗り入れが新たに決まり,
107 観光客の増加が見込め,
108 B駅から低運賃で運行すること
109 で,
110 より多くの観光客の獲得を期待できるからである。
111
112
113 C社の新規参入の動きに対し,
114 B市のタクシー事業者の団体は,
115 C社の新規参入により,
116 B市内の
117 タクシー事業者の収入が減少して過酷な運転業務を強いられることに加え,
118 自然保護地域内の道路
119 の運転に不慣れなタクシー運転者による交通事故の発生によって輸送の安全が脅かされるとともに,
120
121 公共交通機関たるタクシー事業の健全な発達が阻害されるとして,
122 C社の参入阻止を訴えて反対集
123 会を開くなどの反対運動を行うとともに,
124 A県やB市に対し適切な対応を採るよう求めた。
125
126
127 一方,
128 C社は,
129 マス・メディアを通じて,
130 自社が進出すれば,
131 従来よりも低運賃のタクシーで自然
132 保護地域を往復することができ,
133 首都圏からの日帰り旅行も容易になり,
134 観光振興に寄与すると訴え
135 た。
136
137
138 このような状況において,
139 A県は,
140 B市と協議した上で,
141
142 「A県B市の自然保護地域におけるタク
143 シーの運行の許可に関する条例」
144 (以下「本条例」という。
145
146 )を制定し,
147 本条例に定める目的のもとに,
148
149 自然保護地域におけるタクシーの運行については,
150 本条例に定める@車種,
151 A営業所及び運転者に関
152 する要件を満たし,
153 A県知事の許可を得たタクシー事業者のタクシーのみ認めることにした(【資料】
154 参照)。
155
156
157 B市は,
158 本条例の制定に伴い,
159 新たに,
160 B駅の傍らのタクシー乗り場と自然保護地域にあるタクシ
161 ー乗り場に,
162 電気自動車のための充電施設を設けた。
163
164 なお,
165 本条例の制定に当たっては,
166 A県に本社
167 のあるD自動車会社だけが車種に関する要件を満たす電気自動車を製造・販売していることも考慮
168 された。
169
170 ちなみに,
171 B市に営業所を構えるタクシー会社の多くは,
172 本条例の要求する車種要件を満た
173 - 2 -
174
175 す電気自動車を,
176 既にD自動車会社から購入している。
177
178
179 C社は,
180 営業所に関する年数要件及び運転者に関する要件のいずれも満たすことができなかった。
181
182
183 そして,
184 車種に関する要件についても,
185 高額の電気自動車を購入することは,
186 自社の最大の目玉であ
187 る低運賃を困難にすることから,
188 あえて電気自動車を購入せず,
189 より安価なハイブリッド車(従来の
190 ガソリン車より燃費がよく排気ガスの排出量は少ない。
191
192 )で対応しようとした。
193
194
195 C社は,
196 A県知事に対し,
197 A県を営業区域とするタクシー事業の許可申請を行うとともに,
198 自然保
199 護地域における運行許可申請を行ったが,
200 後者については本条例に規定する要件を満たさないとし
201 て不許可となった。
202
203 これにより,
204 C社は,
205 A県内でタクシー事業を行うことは可能になったが,
206 新規
207 参入の動機でもあったA県内で最大の利益が見込める自然保護地域への運行はできない。
208
209 C社は,
210
211 条例自体が不当な競争制限であり違憲であると主張して,
212 不許可処分取消訴訟を提起した。
213
214
215 〔設問1〕
216 あなたがC社の訴訟代理人となった場合,
217 あなたは,
218 どのような憲法上の主張を行うか。
219
220
221 なお,
222 法人の人権及び道路運送法と本条例との関係については,
223 論じなくてよい。
224
225
226 〔設問2〕
227 被告側の反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で,
228 あなた自身の見解を述べなさい。
229
230
231 【資料】A県B市の自然保護地域におけるタクシーの運行の許可に関する条例(抜粋)
232 (目的)
233 第1条
234
235 この条例は,
236 A県B市の自然保護地域(以下「自然保護地域」という。
237
238 )におけるタクシー
239
240 による輸送の安全を確保すること,
241 及び自然保護地域の豊かな自然を保護するとともに観光客の
242 より一層の安全・安心に配慮して観光振興を図ることを目的とする。
243
244
245 (タクシーの運行許可)
246 第2条
247
248 自然保護地域においてタクシーを運行しようとするタクシー事業者は,
249 A県知事の許可を
250
251 受けなければならない。
252
253
254 (許可申請)
255 第3条
256
257 (略)
258
259 (運行許可基準)
260 第4条
261
262 A県知事は,
263 第2条の許可をしようとするときは,
264 次の基準に適合するかどうかを審査し
265
266 て,
267 これをしなければならない。
268
269
270
271
272 自然保護地域において運行するタクシーの車種は,
273 次に掲げる要件の全てを満たす電気自動
274 車であること。
275
276
277
278
279
280 運転席,
281 助手席及び後部座席にエアバッグを装備していること。
282
283
284
285
286
287 自動体外式除細動器(AED)を搭載していること。
288
289
290
291
292
293 5年以上継続してB市内に営業所を有していること。
294
295
296
297
298
299 自然保護地域においてタクシーを運転する者は,
300 次に掲げる要件の全てを満たす者であるこ
301 と。
302
303
304
305
306 自然保護地域の道路の状況及び自然環境について熟知し,
307 B市が実施する試験に合格して
308 いること。
309
310
311
312
313
314 B市に営業所を置く同一のタクシー事業者において10年以上継続して運転者として雇用
315 され,
316 又はB市内に営業所を置いて10年以上継続して個人タクシー事業を経営した経歴が
317 あること。
318
319
320
321
322
323 過去10年以内に,
324 交通事故を起こしたことがなく,
325 かつ,
326 道路の交通に関する法令に違反
327 したことがないこと。
328
329
330 - 3 -
331
332 第5条以下
333
334
335
336
337 第1条
338
339
340
341
342 この条例は,
343 平成XX年XX月XX日から施行する。
344
345
346
347 第2条の許可は,
348 この条例の施行日前においてもすることができる。
349
350
351
352 第2条
353
354 A県知事は,
355 この条例の施行後おおむね5年ごとに第4条第1号に規定する車種について検
356
357 討を加え,
358 必要があると認めるときは,
359 その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
360
361
362
363 - 4 -
364
365 論文式試験問題集[公法系科目第2問]
366
367 - 1 -
368
369 [公法系科目]
370 〔第2問〕(配点:100〔
371 〔設問1〕,
372 〔設問2〕,
373 〔設問3〕の配点割合は,
374 5:2.5:2.5〕)
375 株式会社Aは,
376 B県知事により採石法所定の登録を受けている採石業者である。
377
378 Aは,
379 B県の区域
380 にある岩石採取場(以下「本件採取場」という。
381
382
383 )で岩石を採取する計画を定め,
384 採石法に基づき,
385
386 B県知事に対し,
387 採取計画の認可の申請(以下「本件申請」という。
388
389 )をした。
390
391 Aの採取計画には,
392
393 跡地防災措置(岩石採取の跡地で岩石採取に起因する災害が発生することを防止するために必要な
394 措置をいう。
395
396 以下同じ。
397
398 )として,
399 掘削面の緑化等の措置を行うことが定められていた。
400
401
402 B県知事は,
403 B県採石法事務取扱要綱(以下「本件要綱」という。
404
405
406 )において,
407 跡地防災措置が確
408 実に行われるように,
409 跡地防災措置に係る保証(以下「跡地防災保証」という。
410
411 )について定めてい
412 る。
413
414 本件要綱によれば,
415 採石法による採取計画の認可(以下「採石認可」という。
416
417 )を申請する者は,
418
419 跡地防災措置を,
420 申請者自身が行わない場合に,
421 C組合が行う旨の保証書を,
422 認可申請書に添付しな
423 ければならないものとされる。
424
425 C組合は,
426 B県で営業している大部分の採石業者を組合員とする,
427
428 人格を有する事業協同組合であり,
429 AもC組合の組合員である。
430
431 Aは,
432 本件要綱に従って,
433 C組合と
434 の間で保証契約(以下「本件保証契約」という。
435
436
437 )を締結し,
438 その旨を記載した保証書を添付して,
439
440 本件申請をしていた。
441
442 B県知事は,
443 本件申請に対し,
444 岩石採取の期間を5年として採石認可(以下「本
445 件認可」という。
446
447 )をした。
448
449 Aは,
450 本件認可を受け,
451 直ちに本件採取場での岩石採取を開始した。
452
453
454 しかし,
455 Aは,
456 小規模な事業者の多いB県下の採石業者の中では突出して資本金の額や事業規模が
457 大きく,
458 経営状況の良好な会社であり,
459 採取計画に定められた跡地防災措置を実現できるように資金
460 を確保しているので,
461 保証を受ける必要はないのではないか,
462 また,
463 保証を受けるとしても,
464 他の採
465 石業者から保証を受ければ十分であり,
466 保証料が割高なC組合に保証料を支払い続ける必要はない
467 のではないか,
468 との疑問をもっていた。
469
470 加えて,
471 Aは,
472 C組合の運営に関してC組合の役員と事ある
473 たびに対立していた。
474
475 こうしたことから,
476 Aは,
477 本件認可を受けるために仕方なく本件保証契約を締
478 結したものの,
479 当初から契約を継続する意思はなく,
480 本件認可を受けた1か月後には,
481 本件保証契約
482 を解除した。
483
484
485 これに対し,
486 B県の担当職員は,
487 Aは採石業者の中では大規模な事業者の部類に入るとはいえ,
488
489 企業とまではいえないから,
490 地元の事業者団体であるC組合の保証を受けることが必要であるとし
491 て,
492 Aに対し,
493 C組合による保証を受けるよう指導した。
494
495 しかし,
496 Aは,
497 そもそもC組合による保証
498 をAに対する採石認可の要件とすることは違法であり,
499 Aは本件申請の際にC組合による保証を受
500 ける必要はなかったと主張している。
501
502
503 他方,
504 本件採取場から下方に約10メートル離れた土地に,
505 居住はしていないが森林を所有し,
506
507 業を営んでいるDは,
508 Aによる跡地防災措置が確実に行われないおそれがあり,
509 もし跡地防災措置が
510 行われなければ,
511 Dの所有する森林が土砂災害により被害を受けるおそれがあると考えた。
512
513 そして,
514
515 Dは,
516 B県知事がAに対し岩石の採取をやめさせる処分を行うようにさせる何らかの行政訴訟を提
517 起することを検討していると,
518 B県の担当職員に伝えた。
519
520
521 B県の担当職員Eは,
522 AがC組合から跡地防災保証を受けるように,
523 引き続き指導していく方針で
524 あり,
525 現時点で直ちにAに対して岩石の採取をやめさせるために何らかの処分を行う必要はないと
526 考えている。
527
528 しかし,
529 Dが行政訴訟を提起する構えを見せていることから,
530 B県知事はDが求めるよ
531 うにAに対して処分を行うことができるのか,
532 Dは行政訴訟を適法に提起できるのか,
533 また,
534 Aが主
535 張するように,
536 そもそもC組合による保証をAに対する採石認可の要件とすることは違法なのか,
537
538 討しておく必要があると考えて,
539 弁護士Fに助言を求めた。
540
541
542 以下に示された【資料1
543
544 会議録】を読んだ上で,
545 職員Eから依頼を受けた弁護士Fの立場に立っ
546
547 て,
548 次の設問に答えなさい。
549
550
551 なお,
552 採石法及び採石法施行規則の抜粋を【資料2
553
554 関係法令】に,
555 本件要綱の抜粋を【資料3
556
557 B県採石法事務取扱要綱(抜粋)】に,
558 それぞれ掲げてあるので,
559 適宜参照しなさい。
560
561
562 - 2 -
563
564 〔設問1〕
565 Aは,
566 採石認可申請の際にC組合による保証を受ける必要はなかったと主張している。
567
568 仮にAが
569 採石認可申請の際にC組合から保証を受けていなかった場合,
570 B県知事がAに対し採石認可拒否処
571 分をすることは適法か。
572
573 採石法及び採石法施行規則の関係する規定の趣旨及び内容を検討し,
574 本件
575 要綱の関係する規定が法的にどのような性質及び効果をもつかを明らかにしながら答えなさい。
576
577
578 〔設問2〕
579 B県知事は,
580 Aに対し,
581 岩石の採取をやめさせるために何らかの処分を行うことができるか。
582
583
584 補となる処分を複数挙げ,
585 採石法の関係する規定を検討しながら答えなさい。
586
587 解答に当たっては,
588
589 〔設問1〕におけるB県知事の採石認可拒否処分は適法であるという考え方を前提にしなさい。
590
591
592 〔設問3〕
593 Dが〔設問2〕で挙げられた処分をさせることを求める行政訴訟を提起した場合,
594 当該訴えは適
595 法か。
596
597 行政事件訴訟法第3条第2項以下に列挙されている抗告訴訟として考えられる訴えの例を具
598 体的に一つ挙げ,
599 その訴えが訴訟要件を満たすか否かについて検討しなさい。
600
601 なお,
602 仮の救済は解
603 答の対象から除く。
604
605
606
607 - 3 -
608
609 【資料1
610
611
612 会議録】
613
614 員E:Aは,
615 C組合による保証をAに対する採石認可の要件とすることは違法であると主張して
616 います。
617
618 これまでは,
619 採石認可申請が保証書の添付なしに行われた場合も,
620 指導すれば,
621 採石
622 業者はすぐにC組合から保証書をとってきましたので,
623 Aの言うような問題は詰めて考えた
624 ことがないのです。
625
626 しかし,
627 これからAに指導を行う上では,
628 Aの主張に対して答える必要が
629 出てきそうですので,
630 検討していただけないでしょうか。
631
632
633
634 弁護士F:Aの主張については,
635 Dによる行政訴訟に関して検討する前提としても明らかにしておく
636 必要がありますので,
637 よく調べてお答えすることにいたします。
638
639 まずは採石法と採石法施行規
640 則の関係規定から調べますが,
641 B県では要綱も定めているのですね。
642
643
644
645
646 員E:はい。
647
648 採石業は,
649 骨材,
650 建築・装飾用材料,
651 工業用原料等として用いられる岩石を採取する
652 事業ですが,
653 岩石資源は単価が安く,
654 また,
655 輸送面での制約があるため,
656 地場産業として全国
657 各地に点在しており,
658 小規模事業者の比率が高い点に特徴があります。
659
660 ところが,
661 跡地防災措
662 置は多額の費用を必要とし,
663 確実に行われないおそれがあります。
664
665 そのような背景から,
666 本件
667 要綱は,
668 採石認可の申請者はC組合の跡地防災保証を受けなければならないとし,
669 保証書を採
670 石認可申請の際の添付書類として規定しています。
671
672 本件要綱のこうした規定によれば,
673 C組合
674 の保証を受けない者による採石認可申請を拒否できることは,
675 当然のようにも思われるので
676 すが。
677
678
679
680 弁護士F:御指摘の要綱の定めは,
681 法律に基づく政省令等により,
682 保証を許認可の要件として規定する
683 場合とは,
684 法的な意味が異なります。
685
686 御指摘の本件要綱の規定が,
687 採石法や採石法施行規則と
688 の関係でどのような法的性質をもち,
689 どのような法的効果をもつか,
690 私の方で検討しましょ
691 う。
692
693
694
695
696 員E:お願いします。
697
698
699
700 弁護士F:ところで,
701 他の都道府県でも,
702 本件要綱と同じように,
703 特定の採石事業協同組合による保証
704 を求めているのですか。
705
706
707
708
709 員E:その点は,
710 都道府県によってまちまちです。
711
712 保証人は申請者以外の複数の採石業者でもよい
713 としている県もありますし,
714 跡地防災措置のための資金計画の提出を求めるのみで,
715 保証を求
716 めていない県もあります。
717
718 しかし,
719 B県では,
720 跡地防災措置が適切になされない例が多く,
721
722 地防災措置を確実に履行させるためには,
723 地元のC組合による保証が必要と考えています。
724
725
726
727 弁護士F:なるほど。
728
729 今までのお話を踏まえて,
730 Aからの反論も想定した上で,
731 仮にAがC組合による
732 保証を受けずに採石認可申請をした場合,
733 B県知事が申請を拒否することが適法といえるか
734 どうか,
735 まとめておきます。
736
737
738
739
740 員E:今後の私たちの採石認可業務にも参考になりますので,
741 よろしくお願いします。
742
743
744
745 弁護士F:承知しました。
746
747 ところで,
748 Dが行政訴訟を起こそうとしていることも伺いました。
749
750 B県とし
751 ては,
752 保証が必要と考えておられるのでしたら,
753 Aに対して何らかの処分をすることは考えて
754 おられないのですか。
755
756
757
758
759 員E:Aに対して保証を受けるように指導はしているのですが,
760 今のところ,
761 Aの財務状況は良好
762 で,
763 岩石の採取をやめさせる処分を直ちに行う必要はないと考えています。
764
765 それに,
766 こんな事
767 例は初めてで,
768 どのような処分が可能なのか,
769 やはり詰めて考えたことがないのです。
770
771
772
773 弁護士F:そうですか。
774
775 それでは,
776 Dが求めているように,
777 Aに対し岩石の採取をやめさせる処分が可
778 能なのか,
779 検討しておく必要がありますね。
780
781 Dは,
782 Aの主張とは逆に,
783 仮にC組合による跡地
784 防災保証がなければ,
785 Aからの採石認可申請は拒否すべきであったと主張するでしょうから,
786
787 こうした主張を前提にして考えてみます。
788
789 検討の前提として伺いますが,
790 認可されたAの採取
791 計画には,
792 跡地防災保証についても記載されているのですか。
793
794
795
796
797 員E:採取計画には,
798 法令上,
799 跡地防災措置について記載する必要があると考えられ,
800 Aの採取計
801 画にも,
802 採取跡地について掘削面の緑化等の措置を行うことが記載されていますが,
803 跡地防災
804 - 4 -
805
806 保証については,
807 法令上,
808 採取計画に定める事項とはされておらず,
809 Aの採取計画にも記載さ
810 れていません。
811
812 跡地防災保証については,
813 申請書に添付された保証書によって審査していま
814 す。
815
816 しかし,
817 採取計画と保証書とは一体であると考えていまして,
818 保証によって跡地防災措置
819 が確実に履行されることを前提として,
820 採取計画を認可しています。
821
822
823 弁護士F:分かりました。
824
825 今のお話を踏まえ,
826 採石法の関係する規定に照らして,
827 Aに対し岩石の採取
828 をやめさせるために行うことのできる処分について,
829 様々な可能性を検討してみます。
830
831
832
833
834 員E:お願いします。
835
836 ただ,
837 素朴に考えると,
838 認可の審査の際に前提としていた保証がなくなって
839 しまったわけですから,
840 認可の取消しは,
841 採石法の個々の規定にかかわらず当然できるように
842 思うのですが,
843 いかがでしょうか。
844
845
846
847 弁護士F:なるほど。
848
849 まずは採石法の個々の規定を綿密に読む必要がありますが,
850 御指摘の点も検討し
851 ておく価値がありますね。
852
853
854
855
856 員E:お願いします。
857
858 ところで,
859 Aに対して何らかの処分を行うことが可能だとしても,
860 処分を行
861 うか否かはB県知事が判断することだと思うのですが,
862 Dが裁判で求めるようなことができ
863 るのですか。
864
865
866
867 弁護士F:Dがどのような訴えを起こすのか,
868 現時点では確かではありませんが,
869 法定抗告訴訟を提起
870 する可能性が高いと思いますので,
871 法定抗告訴訟として考えられる訴えの例を具体的に一つ
872 想定し,
873 Dの訴えが訴訟要件を満たすか否かについて,
874 もちろん法令の関係する規定を踏まえ
875 て,
876 検討しておきます。
877
878 Dは,
879 行政訴訟に併せて仮の救済も申し立ててくると思いますが,
880
881 の救済の問題は,
882 今回は検討せず,
883 次の段階で検討することにします。
884
885
886
887 - 5 -
888
889 【資料2
890
891
892 関係法令】
893
894 採石法(昭和25年12月20日法律第291号)(抜粋)
895
896 (目的)
897 第1条
898
899 この法律は,
900 採石権の制度を創設し,
901 岩石の採取の事業についてその事業を行なう者の登録,
902
903
904 岩石の採取計画の認可その他の規制等を行ない,
905 岩石の採取に伴う災害を防止し,
906 岩石の採取の事業
907 の健全な発達を図ることによつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
908
909
910 (採取計画の認可)
911 第33条
912
913 採石業者は,
914 岩石の採取を行なおうとするときは,
915 当該岩石の採取を行なう場所(以下「岩
916
917 石採取場」という。
918
919 )ごとに採取計画を定め,
920 当該岩石採取場の所在地を管轄する都道府県知事の認
921 可を受けなければならない。
922
923
924 (採取計画に定めるべき事項)
925 第33条の2
926
927 前条の採取計画には,
928 次に掲げる事項を定めなければならない。
929
930
931
932
933
934 岩石採取場の区域
935
936
937
938 採取をする岩石の種類及び数量並びにその採取の期間
939
940
941
942 岩石の採取の方法及び岩石の採取のための設備その他の施設に関する事項
943
944
945
946 岩石の採取に伴う災害の防止のための方法及び施設に関する事項
947
948
949
950 前各号に掲げるもののほか,
951 経済産業省令で定める事項
952
953 (認可の申請)
954 第33条の3
955
956 第33条の認可を受けようとする採石業者は,
957 次に掲げる事項を記載した申請書を都
958
959 道府県知事に提出しなければならない。
960
961
962
963
964
965
966
967 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては,
968 その代表者の氏名
969
970
971
972 登録の年月日及び登録番号
973
974
975
976 採取計画
977
978 前項の申請書には,
979 岩石採取場及びその周辺の状況を示す図面その他の経済産業省令で定める書
980 類を添附しなければならない。
981
982
983 (認可の基準)
984
985 第33条の4
986
987 都道府県知事は,
988 第33条の認可の申請があつた場合において,
989 当該申請に係る採取計
990
991 画に基づいて行なう岩石の採取が他人に危害を及ぼし,
992 公共の用に供する施設を損傷し,
993 又は農業,
994
995 林業若しくはその他の産業の利益を損じ,
996 公共の福祉に反すると認めるときは,
997 同条の認可をしては
998 ならない。
999
1000
1001 (認可の条件)
1002 第33条の7
1003
1004
1005 第33条の認可(中略)には,
1006 条件を附することができる。
1007
1008
1009
1010 前項の条件は,
1011 認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り,
1012 かつ,
1013 認可
1014
1015 を受ける者に不当な義務を課することとなるものであつてはならない。
1016
1017
1018 (遵守義務)
1019 第33条の8
1020
1021 第33条の認可を受けた採石業者は,
1022 当該認可に係る採取計画(中略)に従つて岩石の
1023
1024 採取を行なわなければならない。
1025
1026
1027 (認可の取消し等)
1028 第33条の12
1029
1030 都道府県知事は,
1031 第33条の認可を受けた採石業者が次の各号の一に該当するとき
1032
1033 は,
1034 その認可を取り消し,
1035 又は六箇月以内の期間を定めてその認可に係る岩石採取場における岩石の
1036 採取の停止を命ずることができる。
1037
1038
1039
1040
1041 第33条の7第1項の条件に違反したとき。
1042
1043
1044
1045
1046
1047 第33条の8の規定に違反したとき。
1048
1049
1050 - 6 -
1051
1052
1053
1054 (中略)次条第1項の規定による命令に違反したとき。
1055
1056
1057
1058
1059
1060 不正の手段により第33条の認可を受けたとき。
1061
1062
1063
1064 (緊急措置命令等)
1065 第33条の13
1066
1067 都道府県知事は,
1068 岩石の採取に伴う災害の防止のため緊急の必要があると認めると
1069
1070 きは,
1071 採取計画についてその認可を受けた採石業者に対し,
1072 岩石の採取に伴う災害の防止のための必
1073 要な措置をとるべきこと又は岩石の採取を停止すべきことを命ずることができる。
1074
1075
1076
1077
1078 都道府県知事は,
1079
1080 (中略)第33条若しくは第33条の8の規定に違反して岩石の採取を行なつた
1081 者に対し,
1082 採取跡の崩壊防止施設の設置その他岩石の採取に伴う災害の防止のための必要な措置を
1083 とるべきことを命ずることができる。
1084
1085
1086
1087 第43条
1088
1089 次の各号の一に該当する者は,
1090 1年以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に処し,
1091 又はこ
1092
1093 れを併科する。
1094
1095
1096
1097
1098 (略)
1099
1100 二 (前略)第33条の12,
1101 第33条の13第1項若しくは第2項又は(中略)の規定による命令
1102 に違反した者
1103
1104
1105
1106
1107
1108 第33条又は第33条の8の規定に違反して岩石の採取を行なつた者
1109
1110
1111
1112 (略)
1113
1114 採石法施行規則(昭和26年1月31日通商産業省令第6号)(抜粋)
1115 (採取計画に定めるべき事項)
1116
1117 第8条の14
1118
1119 法(注:採石法)第33条の2第5号の経済産業省令で定める事項は,
1120 次に掲げるとお
1121
1122 りとする。
1123
1124
1125
1126
1127 岩石の賦存の状況
1128
1129
1130
1131 採取をする岩石の用途
1132
1133
1134
1135 廃土又は廃石のたい積の方法
1136
1137 (認可の申請)
1138 第8条の15
1139
1140
1141 (略)
1142
1143 法第33条の3第2項の経済産業省令で定める書類は,
1144 次に掲げるとおりとする。
1145
1146
1147
1148
1149 岩石採取場の位置を示す縮尺五万分の一の地図
1150
1151
1152
1153 岩石採取場及びその周辺の状況を示す図面
1154
1155
1156
1157 掘採に係る土地の実測平面図
1158
1159
1160
1161 掘採に係る土地の実測縦断面図及び実測横断面図に当該土地の計画地盤面を記載したもの
1162
1163
1164
1165 (略)
1166
1167
1168
1169 岩石採取場を管理する事務所の名称及び所在地,
1170 当該事務所の業務管理者の氏名並びに当該業
1171 務管理者が当該岩石採取場において認可採取計画に従つて岩石の採取及び災害の防止が行われる
1172 よう監督するための計画を記載した書面
1173
1174
1175
1176 岩石採取場で岩石の採取を行うことについて申請者が権原を有すること又は権原を取得する見
1177 込みが十分であることを示す書面
1178
1179
1180
1181 岩石の採取に係る行為に関し,
1182 他の行政庁の許可,
1183 認可その他の処分を受けることを必要とする
1184 ときは,
1185 その処分を受けていることを示す書面又は受ける見込みに関する書面
1186
1187
1188
1189 岩石採取場からの岩石の搬出の方法及び当該岩石採取場から国道又は都道府県道にいたるまで
1190 の岩石の搬出の経路を記載した書面
1191
1192
1193 十一
1194
1195 採取跡における災害の防止のために必要な資金計画を記載した書面
1196 その他参考となる事項を記載した図面又は書面
1197
1198 - 7 -
1199
1200 【資料3
1201
1202 B県採石法事務取扱要綱(抜粋)】
1203
1204 第7条 法(注:採石法)第33条の認可を受けようとする採石業者は,
1205 法第33条の2第4号により
1206 採取計画に定められた跡地防災措置(岩石採取の跡地で岩石採取に起因する災害が発生することを
1207 防止するために必要な措置をいう。
1208
1209 以下同じ。
1210
1211 )につき,
1212 C組合を保証人として立てなければならな
1213 い。
1214
1215
1216
1217
1218 前項の保証人は,
1219 その保証に係る採石業者が破産等により跡地防災措置を行わない場合に,
1220 その採
1221 石業者に代わって跡地防災措置を行うものとする。
1222
1223
1224
1225 第8条
1226
1227 採取計画の認可を受けようとする採石業者は,
1228 法第33条の3第1項の申請書に,
1229 法施行規則
1230
1231 第8条の15第2項第11号の図面又は書面として,
1232 次に掲げる書類を添付しなければならない。
1233
1234
1235
1236
1237 第7条の保証人を立てていることを証する書面
1238
1239 二〜五
1240
1241 (略)
1242
1243 - 8 -
1244
1245