1 論文式試験問題集[刑事系科目第1問]
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5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 以下の事例に基づき,甲,乙及び丙の罪責について,具体的な事実を摘示しつつ論じなさい(特別
8 法違反の点を除く。)。
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11 甲(23歳,女性)は,乙(24歳,男性)と婚姻し,某年3月1日(以下「某年」は省略す
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13 る。),乙との間に長男Aを出産し,乙名義で借りたアパートの一室に暮らしていたが,Aを出産し
14 てから乙と不仲となった。乙は,甲と離婚しないまま別居することとなり,5月1日,同アパート
15 から出て行った。乙は,その際,甲から,
16 「二度とアパートには来ないで。アパートの鍵は置いて
17 いって。」と言われ,同アパートの玄関の鍵を甲に渡したものの,以前に作った合鍵1個を甲に内
18 緒で引き続き所持していた。甲は,乙が出て行った後も名義を変えずに同アパート(以下「甲方」
19 という。)にAと住み続け,自分でその家賃を支払うようになった。甲は,5月中旬頃,丙(30
20 歳,男性)と知り合い,6月1日頃から,甲方において,丙と同棲するようになった。
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23 丙は,甲と同棲を開始した後,家賃を除く甲やAとの生活に必要な費用を負担するとともに,
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25 育児に協力してAのおむつを交換したり,Aを入浴させるなどしていた。しかし,丙は,Aの連日
26 の夜泣きにより寝不足となったことから,6月20日頃には,Aのことを疎ましく思うようにな
27 り,その頃からおむつ交換や入浴などの世話を一切しなくなった。
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30 甲は,その後,丙がAのことを疎ましく思っていることに気付き,「このままAがいれば,丙
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32 との関係が保てなくなるのではないか。」と不安になり,思い悩んだ末,6月末頃,丙に気付かれ
33 ないようにAを殺害することを決意した。Aは,容易に入手できる安価な市販の乳児用ミルクに対
34 してはアレルギーがあり,母乳しか飲むことができなかったところ,甲は,
35 「Aに授乳しなければ,
36 数日で死亡するだろう。
37 」と考え,7月1日朝の授乳を最後に,Aに授乳や水分補給(以下「授乳
38 等」という。)を一切しなくなった。
39 このときまで,甲は,2時間ないし3時間おきにAに授乳し,Aは,順調に成育し,体重や栄養
40 状態は標準的であり,特段の疾患や障害もなかった。通常,Aのような生後4か月の健康な乳児に
41 授乳等を一切しなくなった場合,その時点から,@約24時間を超えると,脱水症状や体力消耗に
42 よる生命の危険が生じ,A約48時間後までは,授乳等を再開すれば快復するものの,授乳等を再
43 開しなければ生命の危険が次第に高まり,B約48時間を超えると,病院で適切な治療を受けさせ
44 ない限り救命することが不可能となり,C約72時間を超えると,病院で適切な治療を受けさせて
45 も救命することが不可能となるとされている。
46 なお,甲は,Aを殺害しようとの意図を丙に察知されないように,Aに授乳等を一切しないほか
47 は,Aのおむつ交換,着替え,入浴などは通常どおりに行った。
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50 7月2日昼前には,Aに脱水症状や体力消耗による生命の危険が生じた。丙は,その頃,Aが
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52 頻繁に泣きながら手足をばたつかせるなどしているのに,甲が全くAに授乳等をしないことに気
53 付き,甲の意図を察知した。しかし,丙は,
54 「Aが死んでしまえば,夜泣きに悩まされずに済む。
55 Aは自分の子でもないし,普通のミルクにはアレルギーがあるから,俺がミルクを与えるわけにも
56 いかない。Aに授乳しないのは甲の責任だから,このままにしておこう。」と考え,このままでは
57 Aが確実に死亡することになると思いながら,甲に対し,Aに授乳等をするように言うなどの措置
58 は何ら講じず,見て見ぬふりをした。
59 甲は,丙が何も言わないことから,
60 「丙は,私の意図に気付いていないに違いない。Aが死んで
61 も,何らかの病気で死んだと思うだろう。丙が気付いて何か言ってきたら,Aを殺すことは諦める
62 しかないが,丙が何か言ってくるまではこのままにしていよう。
63 」と考え,引き続き,Aに授乳等
64 をしなかった。
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67 7月3日昼には,Aの脱水症状や体力消耗は深刻なものとなり,病院で適切な治療を受けさせ
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70 ない限り救命することが不可能な状態となった。同日昼過ぎ,丙は,甲が買物に出掛けている間に,
71 Aを溺愛している甲の母親から電話を受け,同日夕方にAの顔を見たいので甲方を訪問したいと
72 言われた。Aは,同日夕方に病院に連れて行って適切な治療を受けさせれば,いまだ救命可能な状
73 態にあったが,丙は,
74 「甲の母親は,Aの衰弱した姿を見れば,必ず病院に連れて行く。そうなれ
75 ば,Aが助かってしまう。」と考え,甲の母親に対し,甲らと出掛ける予定がないのに,
76 「あいにく,
77 今日は,これからみんなで出掛け,帰りも遅くなるので,またの機会にしてください。」などと嘘
78 をつき,甲の母親は,やむなく,その日の甲方訪問を断念した。
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81 7月3日夕方,甲は,目に見えて衰弱してきたAを見てかわいそうになり,Aを殺害するのをや
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83 めようと考え,Aへの授乳を再開し,以後,その翌日の昼前までの間,2時間ないし3時間おきに
84 Aに授乳した。しかし,Aは,いずれの授乳においても,衰弱のため,僅かしか母乳を飲まなかっ
85 た。甲は,Aが早く快復するためには病院に連れて行くことが必要であると考えたが,病院から警
86 察に通報されることを恐れ,
87 「授乳を続ければ,少しずつ元気になるだろう。」と考えてAを病院に
88 連れて行かなかった。
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91 他方,乙は,知人から,甲が丙と同棲するようになったと聞き,
92 「俺にも親権があるのだから,
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94 Aを自分の手で育てたい。」との思いを募らせていた。乙は,7月4日昼,歩いて甲方アパートの
95 近くまで行き,甲方の様子をうかがっていたところ,甲と丙が外出して近所の食堂に入ったのを見
96 た。乙は,甲らが外出している隙に,甲に無断でAを連れ去ろうと考え,持っていた合鍵を使い,
97 玄関のドアを開けて甲方に立ち入り,Aを抱きかかえて甲方から連れ去った。
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100 乙は,甲方から約300メートル離れた地点で,タクシーを拾おうと道路端の歩道上に立ち止
101
102 まり,そこでAの顔を見たところ,Aがひどく衰弱していることに気付いた。乙は,
103 「あいつら何
104 をやっていたんだ。Aを連れ出して良かった。一刻も早くAを病院に連れて行こう。」と考え,走
105 行してきたタクシーに向かって歩道上から手を挙げたところ,同タクシーの運転手が脇見をして
106 乙に気付くのが遅れ,直前で無理に停車しようとしてハンドル及びブレーキ操作を誤った。そのた
107 め,同タクシーは,歩道に乗り上げ,Aを抱いていた乙に衝突して乙とAを路上に転倒させた。
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110 乙とAは直ちに救急車で病院に搬送され,乙は治療を受けて一命をとりとめたものの,Aは病
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112 院到着時には既に死亡していた。司法解剖の結果,Aの死因は,タクシーに衝突されたことで生じ
113 た脳挫傷であるが,他方で,Aの衰弱は深刻なものであり,仮に乙が事故に遭うことなくタクシー
114 でAを病院に連れて行き,Aに適切な治療を受けさせたとしても,Aが助かる可能性はなく,1日
115 ないし2日後には,衰弱により確実に死亡していたであろうことが判明した。
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119 論文式試験問題集[刑事系科目第2問]
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123 [刑事系科目]
124 〔第2問〕(配点:100)
125 次の【事例】を読んで,後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
126 【事
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129 例】
130 L県警察は,平成26年2月9日,Wから「自宅で妻のVが死亡している。」との通報を受け
131
132 た。同日,L県M警察署の司法警察員Pらは,L県M市N町にあるW方に臨場したところ,Vは
133 頭部を多数回殴打されて死亡しており,Wは「私は,本日,2週間にわたる海外出張から帰宅し
134 た。帰宅時,玄関の鍵が掛かっておらず,居間に妻の死体があった。家屋内は荒らされていない
135 が,妻のダイヤモンドの指輪が見当たらない。」と供述した。
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138 Pらは,Vに対する殺人・窃盗事件として捜査を開始し,その一環として,Wが供述する指輪
139 について捜査したところ,同月10日,M市内の質屋から,同月3日午前中に甲がダイヤモンド
140 の指輪を質入れしたとの情報を得た。そこで,Pがその指輪を領置し,Wに確認したところ,W
141 は「指輪は妻のものに間違いない。甲は,私のいとこで,多額の借金を抱えて夜逃げしたが,時
142 々金を借りに来ていた。」と供述した。そして,甲が,隣県であるS県T市所在のU建設会社で
143 作業員として働き,同社敷地内にある従業員寮に居住していることが判明したことから,Pは,
144 同月11日,同所に赴き,午後1時頃,寮から出てきた甲に対し,「M市内の質屋にダイヤモン
145 ドの指輪を質入れしたことはないか。」と言ってM市所在のM警察署までの同行を求め,甲は素
146 直にこれに応じた。
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150 P及び甲は,同日午後4時頃,M警察署に到着し,Pはその頃から,同署刑事課取調室におい
151 て,甲に供述拒否権があることを告げ,その取調べを開始した。甲は,当初,「私がダイヤモン
152 ドの指輪を質入れしたことは間違いないが,その指輪は拾ったものである。」と供述したが,同
153 日午後7時頃,「指輪は,私がW方から盗んだものである。」と供述した。さらに,Pは,甲に対
154 し,V死亡の事実を告げて,甲の関与について尋ねたものの,甲は「私は関係ない。」と答え,
155 同日午後10時頃には,「先ほど指輪を盗んだと言ったのは嘘である。私は,Xを殺していない
156 し,指輪を盗んでもいない。指輪は知人からもらった。」と供述を変遷させた。
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160 この時点で夜も遅くなっていたため,Pは取調べを中断することとしたが,翌日も引き続き甲
161 を取り調べる必要があると考え,甲に対し,「明日朝から取調べを再開するので,出頭してほし
162 い。」と申し向けた。すると,甲は,翌日はS県内の建設現場で働く予定があるとして出頭に難
163 色を示したものの,Pから,捜査のため必要があるので協力してほしい旨説得され,「1日くら
164 いなら仕事を休んで,取調べに応じてもよい。しかし,今から寮に帰るとなると,タクシーを使
165 わなければならない。安いホテルに泊まった方が安上がりだと思うので,泊まる所を紹介してほ
166 しい。」と述べた。そこで,Pが,甲に対し,M警察署から徒歩約20分の距離にあるビジネス
167 ホテル「H」を紹介したところ,甲は,Hホテルまで自ら歩いて行き,同ホテルに自費で宿泊し
168 た。なお,Pは,甲に捜査員を同行させたり,甲の宿泊中に同ホテルに捜査員を派遣したりする
169 ことはしなかった。
170 翌12日午前10時頃,捜査員が同行することなく,甲が1人でM警察署に出頭したので,P
171 は,前日に引き続き,同署刑事課取調室において,甲に供述拒否権があることを告げ,@甲の取
172 調べを開始した。甲は,当初,殺人及び窃盗への関与を否認したものの,Pが適宜食事や休憩を
173 取らせながら取調べを継続したところ,同日午後6時頃,甲は,殺人及び窃盗の事実を認め,
174 「指
175 輪を質入れした日の前日の昼頃,W方に金を借りに行ったが,Wは不在で妻のXがいた。居間で
176 Xと話をするうち口論となり,カッとなって部屋にあったゴルフクラブでXの頭などを多数回殴
177 り付けて殺害した。殺害後,Xがダイヤモンドの指輪を着けていたことに初めて気付き,その指
178 輪を盗んだ。ゴルフクラブは山中に捨てた。」と供述するとともに,ゴルフクラブの投棄場所を
179 記載した図面を作成した。また,Pは,甲の上記供述を記載した甲の供述録取書を作成した。な
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182 お,取調べ開始からこの時点まで,甲が取調べの中止を訴えたり,取調室からの退去を希望した
183 りすることはなかった。
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186 この時点で午後9時になっていたので,Pは取調べを中断することとし,甲に対し,「ゴルフ
187 クラブを捨てた場所に案内してもらったり,更に詳しい話を聞きたいので,ホテルにもう1泊し
188 てもらい,明日も取調べを続けたいがよいか。」と申し向けた。これに対し,甲は「宿泊する金
189 がないし,続けて仕事を休むと勤務先に迷惑をかけることになるので,一旦寮に帰って社長に相
190 談したい。落ち着いたら必ず出頭する。」と述べたものの,Pから「社長には電話で相談すれば
191 いいのではないか。宿泊費は警察が出すので心配しなくてもよい。
192 」と説得され,渋々ながら「分
193 かりました。そうします。」と答えた。
194 そこで,Pは警察の費用でHホテルの客室を確保した。同客室は同ホテルの7階にあり,6畳
195 和室と8畳和室が続いていて,奥の6畳和室からホテルの通路に出るためには,必ず8畳和室を
196 通らなければならず,両室の間はふすまで仕切られているだけで,錠が掛からない構造であった。
197 Pは,部下であるQら3名の司法警察員に対し,警察車両で甲をHホテルまで送り届けて上記客
198 室の6畳和室に宿泊させ,Qら3名の司法警察員は同客室の8畳和室で待機するよう指示した。
199 甲は,Qらと共に上記客室に到着し,Qらも宿泊することを知ると,
200 「人がいると落ち着かない。
201 警察官は帰ってほしい。せめて私を個室にして警察官は別室にいてもらいたい。」と訴えた。し
202 かし,甲は,Qから「ふすまで仕切られているのだから,別室と同じようなものだろう。私達は
203 隣の部屋にいるだけで,君の部屋をのぞくようなことはしない。」と説得されると,諦めて6畳
204 和室で就寝し,Qら3名の司法警察員は8畳和室で待機した。
205 翌13日午前9時頃,甲が警察車両に乗せられてM警察署に出頭したので,Pは,前日に引き
206
207 続き,同署刑事課取調室において,甲に供述拒否権があることを告げ,A甲の取調べを開始した
208 ところ,甲は前夜同様に,Vを殺害して指輪を窃取した旨供述した。そこで,Pは,甲にゴルフ
209 クラブの投棄場所まで案内するように求め,これに応じた甲を警察車両に乗せ,甲の案内で山中
210 まで赴いたところ,同所から血のついたゴルフクラブが発見された。Pは,これを領置した上,
211 Wに確認を求めたところ,Wは,同クラブは特注品であり,自宅にあったものに間違いない旨供
212 述した。また,同クラブからは数個の指紋が検出され,そのうち一つが甲の指紋と合致した。P
213 は,これらの捜査を踏まえて甲に対する殺人及び窃盗の被疑事実で逮捕状を請求し,裁判官から
214 逮捕状を得た上,同日午後4時,M警察署において甲を通常逮捕した。なお,この日も,Pは,
215 甲に適宜食事や休憩を取らせ,甲は,取調べ開始から逮捕まで,取調べの中止を訴えたり,取調
216 室からの退去を希望したりすることはなかった。
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219 甲は,逮捕後の弁解録取においても両被疑事実を認め,翌14日午前9時,検察官に送致され
220 た。甲は,検察官Rによる弁解録取においても両被疑事実を認め,Rは,殺人及び窃盗の被疑事
221 実により甲の勾留を請求し,同日,勾留状が発付された。甲は,その後も両被疑事実を認め,
222 「2
223 月2日午後1時頃,借金を申し込むためにW方に行ったがWは不在だった。Xと口論となり,V
224 から『Wの金ばかり当てにしている甲斐性なし。』などと罵られ,カッとなってゴルフクラブで
225 Vを殴り殺した。その後,Xがダイヤモンドの指輪を着けていたことに初めて気付き,金に換え
226 ようと思ってその指輪を盗んだ。ゴルフクラブは山中に捨てた。」と供述した。Rは,その他所
227 要の捜査を遂げ,延長された勾留期間の満了日である同年3月5日,甲を殺人罪及び窃盗罪によ
228 り起訴した(公訴事実は【資料】のとおり。)。
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230 7
231
232 同月8日,別の窃盗事件により勾留中の乙が,警察による取調べにおいて,W方でダイヤモン
233 ドの指輪及びルビーのペンダントを窃取し,ダイヤモンドの指輪は友人の甲に無償で譲渡し,ル
234 ビーのペンダントは自ら質入れした旨供述した。警察がこの供述に従い捜査したところ,W方に
235 あったVの宝石箱から検出された指紋の一つが乙のものと合致するとともに,乙が供述した質屋
236 からルビーのペンダントが発見され,そのペンダントは,VがWの出張中に購入したものであり,
237 Vの所有物に間違いないことが判明した。さらに,甲がV殺害に使用したと供述するゴルフクラ
238 - 3 -
239
240 ブから検出された数個の指紋のうち,一つは乙のものと合致することが判明したが,乙は「室内
241 で金目の物を探しているうちに,ゴルフクラブに私の指紋が付いたと思う。私はV殺害には関係
242 ない。」と供述した。
243 上記事情を把握したRは,第1回公判前整理手続期日前である同月24日,甲が勾留されてい
244 るL拘置所において,甲に対し,
245 「君が起訴されている事件につき,もう一度,取調べを行うが,
246 嫌なら取調べを受けなくてもよいし,取調べを受けるとしても,言いたくないことは言わなくて
247 もよい。」と告げ,甲が取調べに応じる旨述べたので,Rは,弁護人を立ち会わせることなく,
248 B甲の取調べを開始した。Rは,甲に対し,「乙という人物を知っているか。殺人・窃盗事件に
249 乙が関係しているのではないか。」と質問したところ,甲は,しばらく逡巡していたものの,「乙
250 は友人で,借金を肩代わりしてもらったことがある。今回の殺人事件に乙は関係していないが,
251 実は,ダイヤモンドの指輪は私が盗んだのではなく,乙が盗んだものである。以前,私は,乙に,
252 資産家であるいとこのWについて話したことがあった。2月2日午後7時頃,乙が寮の私の部屋
253 に来て,『今日,W方から盗んできた。』と言ってダイヤモンドの指輪をただでくれた。私は,2
254 月3日午前中にその指輪を質入れしたが,期待していたほどの金にならなかったので,Wから借
255 金をしようと考え,その日の午後1時頃にW方に行った。しかし,Wはおらず,Vと口論になり
256 罵られてカッとなって,ゴルフクラブでXを殺した。金目の物を探したり盗んだりすることなく,
257 直ちにその場から逃げてゴルフクラブを捨てた。殺害の方法はこれまで話してきたとおりであり,
258 私一人でしたことである。そして,私は,乙には日頃から世話になっていたことから,乙をかば
259 うために,ダイヤモンドの指輪を私が盗んだと嘘をつき,それとつじつまを合わせるために,V
260 を殺したのは質入れの前日だということにした。」と供述した。
261 その後,Rは,乙をも取り調べるなど所要の捜査を遂げた結果,甲及び乙の各供述に矛盾はな
262 く,本件の真相は,甲が,平成26年2月2日午後7時頃,U建設会社従業員寮の甲の居室にお
263 いて,乙から盗品と知りつつダイヤモンドの指輪を無償で譲り受け,同月3日午後1時頃,W方
264 居間において,単独で,Vを殺害した事件であると認め,C公判において,その旨立証するとの
265 方針を立てた。
266 〔設問1〕1. 【事例】中の4及び5に記載されている@及びAの甲の取調べの適法性について,
267 具体的事実を摘示しつつ論じなさい。
268 2. 【事例】中の7に記載されているBの甲の取調べの適法性について,具体的事実を
269 摘示しつつ論じなさい。
270 〔設問2〕
271
272 検察官は,Cの方針を前提とした場合,【資料】の公訴事実に関し,どのような措置を
273 講じるべきかについて論じなさい。
274
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276
277 【資料】
278
279 公
280
281 訴
282
283 事
284
285 実
286
287 被告人は
288 第1 平成26年2月2日午後1時頃,L県M市N町○丁目△番地のW
289 方居間において,Vに対し,殺意をもって,ゴルフクラブでその頭
290 部等を多数回殴打し,よって,その頃,同所において,同人を頭部
291 打撲に基づく脳挫滅により死亡させて殺害し
292 第2 前記日時場所において,同人所有の指輪1個を窃取し
293 たものである。
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