1 論文式試験問題集
2 [憲法・行政法]
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6 [憲
7
8 法]
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10 A市内の全ての商店街には,当該商店街に店舗を営む個人又は法人を会員とする商店会が組織
11 されている。会員は,店舗の大きさや売上高の多寡にかかわらず定額の会費を毎月納入し,その会
12 費で,防犯灯の役目を果たしている街路灯や商店街のネオンサイン等の設置・管理費用,商店街の
13 イベント費用,清掃美化活動費用などを賄っていた。しかし,A市内に古くからある商店街の多く
14 が,いわゆるシャッター通りと化してしまい,商店街の活動が不活発となっているだけでなく,商
15 店街の街路灯等の管理にも支障が生じており,防犯面でも問題が起きている。
16 A市内には,大型店やチェーン店もある。それらの多くは,商店街を通り抜けた道路沿いにあ
17 る。それらの大型店やチェーン店は,商店街の街路灯やネオンサイン等によって立地上の恩恵を受
18 けているにもかかわらず,それらの設置や管理等に掛かる費用を負担していない。また,大型店や
19 チェーン店は,商店街のイベントに参加しないものの,同時期にセールを行うことで集客増を図る
20 などしている。大型店やチェーン店は,営業成績が悪化しているわけでもないし,商店会に加入し
21 なくても営業に支障がない。それゆえ,多くの大型店やチェーン店は,商店街の活性化活動に非協
22 力的である。このような大型店やチェーン店に対して,全ての商店会から,商店街がもたらす利便
23 に「タダ乗り」しているとする批判が寄せられている。A市にとって,市内全体での商業活動を活
24 性化するためにも,古くからある商店街の活性化が喫緊の課題となっている。
25 このような状況に鑑みて,A市は,大型店やチェーン店を含む全てのA市内の店舗に対し,最
26 寄りの商店会への加入を義務付ける「A市商店街活性化条例」(以下「本条例」という。)を制定し
27 た。本条例の目的は大きく分けて二つある。第一の目的は,共同でイベントを開催するなど大型店
28 やチェーン店を含む全ての店舗が協力することによって集客力を向上させ,商店街及び市内全体で
29 の商業活動を活性化することである。第二の目的は,大型店やチェーン店をも含めた商店会を,地
30 域における防犯体制等の担い手として位置付けることである。
31 本条例は,商店会に納入すべき毎月の会費を,売場面積と売上高に一定の率を乗じて算出され
32 る金額と定めている。そして,本条例によれば,A市長は,加入義務に違反する者が営む店舗に対
33 して,最長で7日間の営業停止を命ずることができる。
34 A市内で最も広い売場面積を有し,最も売上高が大きい大型店Bの場合,加入するものとされ
35 ている商店会に毎月納入しなければならない会費の額が,その商店会の会員が納入する平均的な金
36 額の約50倍となる。そこで,大型店Bを営むC社としては,このような加入義務は憲法に違反し
37 ていると考え,当該商店会に加入しなかったために,A市長から,7日間の営業停止処分を受けた。
38 その結果,大型店Bの収益は大幅に減少した。
39 C社は,A市を被告として,本条例が違憲であると主張して,国家賠償請求訴訟を提起した。
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43 〔設問1〕
44 あなたがC社の訴訟代理人であるとしたら,どのような憲法上の主張を行うか。
45 なお,本条例による会費の算出方法の当否及び営業停止処分の日数の相当性については,論
46 じなくてよい。
47 〔設問2〕
48 想定される被告側の反論を簡潔に述べた上で,あなた自身の見解を述べなさい。
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52 [行政法]
53 A県は,漁港漁場整備法(以下「法」という。)に基づき,漁港管理者としてB漁港を管理して
54 いる。B漁港の一部には公共空地(以下「本件公共空地」という。)があり,Cは,A県の執行機
55 関であるA県知事から,本件公共空地の一部(以下「本件敷地」という。)につき,1981年8
56 月1日から2014年7月31日までの期間,3年ごとに法第39条第1項による占用許可(以下
57 「占用許可」とは,同法による占用許可をいう。)を受けてきた。そして,1982年に本件敷地
58 に建物を建築し,現在に至るまでその建物で飲食店を経営している。同飲食店は,本件公共空地の
59 近くにあった魚市場の関係者によって利用されていたが,同魚市場は徐々に縮小され,2012年
60 には廃止されて,関係施設も含め完全に撤去されるに至った。現在Cは,観光客などの一般利用者
61 をターゲットとして飲食店の営業を継続し,2013年には,客層の変化に対応するために店内の
62 内装工事を行っている。他方,A県知事は,魚市場の廃止に伴って,観光客を誘引するために,B
63 漁港その他の県内漁港からの水産物の直売所を本件敷地を含む土地に建設する事業(以下「本件事
64 業」という。)の構想を,2014年の初めに取りまとめた。なお,本件事業は,法第1条にいう
65 漁港漁場整備事業にも,法第39条第2項にいう特定漁港漁場整備事業にも,該当するものではな
66 い。
67 Cは,これまで受けてきた占用許可に引き続き,2014年8月1日からも占用許可を受ける
68 ために,本件敷地の占用許可の申請をした。しかし,A県知事は,Cに対する占用許可が本件事業
69 の妨げになることに鑑みて,2014年7月10日付けで占用不許可処分(以下「本件不許可処分」
70 という。)をした。Cは,「Cは長期間継続して占用許可を受けてきたので,本件不許可処分は占用
71 許可を撤回する処分と理解すべきである。」という法律論を主張している。A県側は,「法第39条
72 第1項による占用許可をするか否かについて,同条第2項に従って判断すべき場合は,法第1条の
73 定める法の目的を促進する占用に限定されると解釈すべきである。Cによる本件敷地の占用は,法
74 第1条の定める法の目的を促進するものではないので,Cに対し本件敷地の占用許可をするかどう
75 かについては,その実質に照らし,地方自治法第238条の4第7項が行政財産の使用許可につい
76 て定める基準に従って判断するべきである。」という法律論を主張している。なお,B漁港は,A
77 県の行政財産である。
78 A県の職員から,Cがなぜ上記のような法律論を主張しているのか,及び,A県側の法律論は認
79 められるかについて,質問を受けた弁護士Dの立場に立って,以下の設問に解答しなさい。なお,
80 法の抜粋を資料として掲げるので,適宜参照しなさい。
81 〔設問1〕
82 本件不許可処分を,占用許可申請を拒否する処分と理解する法律論と,占用許可の撤回処分
83 と理解する法律論とを比べると,後者の法律論は,Cにとってどのような利点があるために,
84 Cが主張していると考えられるか。行政手続法及び行政事件訴訟法の規定も考慮して答えなさ
85 い。
86 〔設問2〕
87 (1)
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89 Cによる本件敷地の占用を許可するか否かについて,法第39条第2項に従って判断する法
90 律論と,A県側が主張するように,地方自治法第238条の4第7項の定める基準に従って
91 判断する法律論とを比べると,後者の法律論は,A県側にとってどのような利点があるか。
92 両方の規定の文言及び趣旨を比較して答えなさい。
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94 (2)
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96 本件において,A県側の上記の法律論は認められるか,検討しなさい。
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100 【資料】漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)(抜粋)
101 (目的)
102 第1条
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104 この法律は,水産業の健全な発展及びこれによる水産物の供給の安定を図るため,環境との
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106 調和に配慮しつつ,漁港漁場整備事業を総合的かつ計画的に推進し,及び漁港の維持管理を適正に
107 し,もつて国民生活の安定及び国民経済の発展に寄与し,あわせて豊かで住みよい漁村の振興に資
108 することを目的とする。
109 (漁港の保全)
110 第39条
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112 漁港の区域内の水域又は公共空地において,(中略)土地の一部の占用(中略)をしよう
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114 とする者は,漁港管理者の許可を受けなければならない。(以下略)
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117 漁港管理者は,前項の許可の申請に係る行為が特定漁港漁場整備事業の施行又は漁港の利用を著
118 しく阻害し,その他漁港の保全に著しく支障を与えるものでない限り,同項の許可をしなければな
119 らない。
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123 (略)
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