1 論文式試験問題集
2 [民法・商法・民事訴訟法]
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6 [民
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8 法]
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10 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
11 【事実】
12 1.Aは,自宅近くにあるB所有の建物(以下「B邸」という。)の外壁(れんが風タイル張り仕
13 上げ)がとても気に入り,自己が所有する別荘(以下「A邸」という。)を改修する際は,B邸
14 のような外壁にしたいと思っていた。
15 2.Aは,A邸の外壁が傷んできたのを機に,外壁の改修をすることとし,工務店を営むCにその
16 工事を依頼することにした。Aは,発注前にCと打合せをした際に,CにB邸を実際に見せて,
17 A邸の外壁をB邸と同じ仕様にしてほしい旨を伝えた。
18 3.Cは,B邸を建築した業者であるD社から,B邸の外壁に用いられているタイルがE社製造の
19 商品名「シャトー」であることを聞いた。CはE社に問い合わせ,「シャトー」が出荷可能であ
20 ることを確認した。
21 4.Cは,Aに対し,Aの希望に沿った改修工事が可能である旨を伝えた。そこで,AとCは,工
22 事完成を1か月後とするA邸の改修工事の請負契約を締結した。Aは,契約締結当日,Cに対
23 し,請負代金の全額を支払った。
24 5.工事の開始時に現場に立ち会ったAは,A邸の敷地内に積み上げられたE社製のタイル「シャ
25 トー」の色がB邸のものとは若干違うと思った。しかし,Aは,Cから,光の具合で色も違っ
26 て見えるし,長年の使用により多少変色するとの説明を受け,また,E社に問い合わせて確認
27 したから間違いないと言われたので,Aはそれ以上何も言わなかった。
28 6.Cは,【事実】5に記したA邸の敷地内に積み上げられたE社製のタイル「シャトー」を使用
29 して,A邸の外壁の改修を終えた。ところが,Aは,出来上がった外壁がB邸のものと異なる
30 感じを拭えなかったので,直接E社に問い合わせた。そして,E社からAに対し,タイル「シ
31 ャトー」の原料の一部につき従前使用していたものが入手しにくくなり,最近になって他の原
32 料に変えた結果,表面の手触りや光沢が若干異なるようになり,そのため色も少し違って見え
33 るが,耐火性,防水性等の性能は同一であるとの説明があった。また,Aは,B邸で使用した
34 タイルと完全に同じものは,特注品として注文を受けてから2週間あれば製作することができ
35 る旨をE社から伝えられた。
36 7.そこで,Aは,Cに対し,E社から特注品であるタイルの納入を受けた上でA邸の改修工事
37 をやり直すよう求めることにし,特注品であるタイルの製作及び改修工事のために必要な期間
38 を考慮して,3か月以内にその工事を完成させるよう請求した。
39 〔設問1〕
40 【事実】7に記したAの請求について,予想されるCからの反論を踏まえつつ検討しなさい。
41 【事実(続き)】
42 8.
43 【事実】7に記したAの請求があった後3か月が経過したが,Cは工事に全く着手しなかった。
44 そこで,嫌気がさしたAは,A邸を2500万円でFに売却し,引き渡すとともに,その代金
45 の全額を受領した。
46 9.なお,A邸の外壁に現在張られているタイルは,性能上は問題がなく,B邸に使用されている
47 ものと同じものが用いられていないからといって,A邸の売却価格には全く影響していない。
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49 - 2 -
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51 〔設問2〕
52 Aは,A邸をFに売却した後,Cに対し,外壁の改修工事の不備を理由とする損害の賠償を
53 求めている。この請求が認められるかを,反対の考え方にも留意しながら論じなさい。
54 なお,〔設問1〕に関して,AのCに対する請求が認められることを前提とする。
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56 - 3 -
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58 [商
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60 法]
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62 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
63 1.X株式会社(以下「X社」という。)は,携帯電話機の製造及び販売を行う取締役会設置会社
64 であり,普通株式のみを発行している。X社の発行可能株式総数は100万株であり,発行済
65 株式の総数は30万株である。また,X社は,会社法上の公開会社であるが,金融商品取引所
66 にその発行する株式を上場していない。X社の取締役は,A,B,Cほか2名の計5名であり,
67 その代表取締役は,Aのみである。
68 2.Y株式会社(以下「Y社」という。)は,携帯電話機用のバッテリーの製造及び販売を行う取
69 締役会設置会社であり,その製造するバッテリーをX社に納入している。Y社は,古くからX
70 社と取引関係があり,また,X社株式5万1千株(発行済株式の総数の17%)を有している。
71 Bは,Y社の創業者で,その発行済株式の総数の90%を有しているが,平成20年以降,
72 代表権のない取締役となっている。また,Bは,X社株式5万1千株(発行済株式の総数の1
73 7%)を有している。
74 3.Z株式会社(以下「Z社」という。)は,携帯電話機用のバッテリーの製造及び販売を行う取
75 締役会設置会社であり,Cがその代表取締役である。
76 Z社は,Y社と同様に,その製造するバッテリーをX社に納入しているが,Y社と比較する
77 とX社と取引を始めた時期は遅く,最近になってその取引量を伸ばしてきている。なお,Z社
78 は,X社株式を有していない。
79 4.X社は,平成25年末頃から,経営状態が悪化し,急きょ10億円の資金が必要となった。そ
80 こで,Aは,その資金を調達する方法についてBに相談した。Bは,市場実勢よりもやや高い
81 金利によることとなるが,5億円であればY社がX社に貸し付けることができると述べた。
82 5.そこで,平成26年1月下旬,X社の取締役会が開催され,取締役5名が出席した。Y社から
83 の借入れの決定については,X社とY社との関係が強化されることを警戒して,Cのみが反対
84 したが,他の4名の取締役の賛成により決議が成立した。この取締役会の決定に基づき,X社
85 は,Y社から5億円を借り入れた。
86 6.Y社のX社に対する貸付金の原資は,Bが自己の資産を担保に金融機関から借り入れた5億円
87 であり,Bは,この5億円をそのままY社に貸し付けていた。Y社がX社に貸し付ける際の金
88 利は,Bが金融機関から借り入れた際の金利に若干の上乗せがされたものであった。なお,B
89 は,これらの事情をAに伝えたことはなく,X社の取締役会においても説明していなかった。
90 7.他方,Cは,Aに対し,X社の募集株式を引き受ける方法であれば,不足する5億円の資金を
91 Z社が提供することができると述べた。
92 8.そこで,同年2月上旬,X社の取締役会が開催され,1株当たりの払込金額を5000円とし
93 て,10万株の新株を発行し,その全株式をZ社に割り当てることを決定した。この決定につ
94 いては,Bのみが反対したが,他の4名の取締役の賛成により決議が成立した。
95 X社は,この募集株式の発行に当たり,株主総会の決議は経なかったが,募集事項の決定時
96 及び新株発行時のX社の1株当たりの価値は,1万円を下ることはなかった。また,X社はこ
97 の募集株式の発行について,適法に公告を行っている。
98 9.Cは,同月下旬,上記6の事情を知るに至った。
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100 - 4 -
101
102 〔設問1〕
103 Cは,平成26年3月に開催されたX社の取締役会において,X社のY社からの借入れが無
104 効であると主張している。この主張の当否について論じなさい。
105 〔設問2〕
106 Bは,X社のZ社に対する募集株式の発行の効力が生じた後,訴えを提起してその発行が無効
107 であると主張している。この主張の当否について論じなさい。
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111 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,2:3)
112 次の【事例】について,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
113 【事例】
114 Xは,Aとの間で,Aの所有する甲土地についての売買契約(以下「本件売買契約」という。)を
115 締結し,売買を原因とする所有権移転登記を経由している。ところが,本件売買契約が締結された
116 後,Xは,Yが甲土地上に自己所有の乙建物を建築し,乙建物の所有権保存登記を経由しているこ
117 とを知った。Xは,Yに甲土地の明渡しを求めたが,Yは,AX間で本件売買契約が締結される前
118 に,Aとの間で土地上に自己所有の建物を建築する目的で,甲土地を賃借する旨の契約を締結して
119 おり,甲土地の正当な占有権原がある旨を主張して,これに応じなかった。
120 そこで,Xは,平成26年4月15日,甲土地の所在地を管轄する地方裁判所に,Yを被告と
121 して,甲土地の所有権に基づき,乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴訟(以下「本
122 件訴訟」という。)を提起し,その訴状は,同月21日,Yに対して送達された。
123 平成26年7月13日の時点では,乙建物は,これをYから賃借したWが占有している。
124 〔設問1〕
125 上記の【事例】において,YがWに乙建物を賃貸したのは平成26年2月10日であり,X
126 は,Wに乙建物が賃貸されたことに気付かないまま,Yのみを相手に建物収去土地明渡しを求
127 める本件訴訟を提起し,その後,乙建物をWが占有していることに気付いた。Xは,Wに対す
128 る建物退去土地明渡請求についても,本件訴訟の手続で併せて審理してもらいたいと考えてい
129 るが,そのために民事訴訟法上どのような方法を採り得るか説明しなさい。
130 〔設問2〕(
131 〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。)
132 上記の【事例】において,YがWに乙建物を賃貸したのは平成26年5月10日であり,そ
133 して,Wは,本件訴訟で,AX間で本件売買契約が締結された事実はないとして,Xが甲土地
134 の所有権を有することを争いたいと考えている。
135 ところが,Yは,本件訴訟の口頭弁論期日において,AX間で本件売買契約が締結されたこ
136 とを認める旨の陳述をした。
137 @
138 A
139
140 Yがこの陳述をした口頭弁論期日の後に,Wが本件訴訟に当事者として参加した場合
141 Wが本件訴訟に当事者として参加した後の口頭弁論期日において,Yがこの陳述をした
142 場合
143
144 B
145
146 Xの申立てにより裁判所がWに訴訟を引き受けさせる旨の決定をした後の口頭弁論期日
147 において,Yがこの陳述をした場合
148
149 のそれぞれについて,Wとの関係で,このYの陳述が有する民事訴訟法上の意義を説明しなさい。
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