1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [刑
7
8 法]
9
10 以下の事例に基づき,
11 甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。
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13 )。
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18 甲(28歳,
19 男性,
20 身長178センチメートル,
21 体重82キログラム)は,
22 V(68歳,
23
24 性,
25 身長160センチメートル,
26 体重53キログラム)が密輸入された仏像を密かに所有して
27 いることを知り,
28 Vから,
29 売買を装いつつ,
30 代金を支払わずにこれを入手しようと考えた。
31
32
33 体的には,
34 甲は,
35 代金を支払う前に鑑定が必要であると言ってVから仏像の引渡しを受け,
36
37 れを別の者に託して持ち去らせ,
38 その後,
39 自身は隙を見て逃走して代金の支払を免れようと計
40 画した。
41
42
43 甲は,
44 偽名を使って自分の身元が明らかにならないようにして,
45 Vとの間で代金や仏像の受
46 渡しの日時・場所を決めるための交渉をし,
47 その結果,
48 仏像の代金は2000万円と決まり,
49
50 某日,
51 ホテルの一室で受渡しを行うこととなった。
52
53 甲は,
54 仏像の持ち去り役として後輩の乙を
55 誘ったが,
56 乙には,
57 「ホテルで人から仏像を預かることになっているが,
58 自分にはほかに用事
59 があるから,
60 仏像をホテルから持ち帰ってしばらく自宅に保管しておいてくれ。
61
62 」とのみ伝え
63 て上記計画は伝えず,
64 乙も,
65 上記計画を知らないまま,
66 甲の依頼に応じることとした。
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72 受渡し当日,
73 Vは,
74 一人で受渡し場所であるホテルの一室に行き,
75 一方,
76 甲も,
77 乙を連れて
78 同ホテルに向かい,
79 乙を室外に待たせ,
80 甲一人でVの待つ室内に入った。
81
82 甲は,
83 Vに対し,
84
85 「金
86 は持ってきたが,
87 近くの喫茶店で鑑定人が待っているので,
88 まず仏像を鑑定させてくれ。
89
90 本物
91 と確認できたら鑑定人から連絡が入るので,
92 ここにある金を渡す。
93
94 」と言い,
95 2000万円が
96 入っているように見せ掛けたアタッシュケースを示して仏像の引渡しを求めた。
97
98 Vは,
99 代金が
100 準備されているのであれば,
101 先に仏像を引き渡しても代金を受け取り損ねることはないだろう
102 と考え,
103 仏像を甲に引き渡した。
104
105 甲は,
106 待機していた乙を室内に招き入れ,
107 「これを頼む。
108
109 」と
110 言って,
111 仏像を手渡したところ,
112 乙は,
113 準備していた風呂敷で仏像を包み,
114 甲からの指示どお
115 り,
116 これを持ってそのままホテルを出て,
117 タクシーに乗って自宅に帰った。
118
119 乙がタクシーで立
120 ち去った後,
121 甲は,
122 代金を支払わないまま同室から逃走しようとしたが,
123 Vは,
124 その意図を見
125 破り,
126 同室出入口ドア前に立ちはだかって,
127 甲の逃走を阻んだ。
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130
131
132
133 Vは,
134 甲が逃げないように,
135 護身用に持ち歩いていたナイフ(刃体の長さ約15センチメー
136 トル)の刃先を甲の首元に突き付け,
137 さらに,
138 甲に命じてアタッシュケースを開けさせたが,
139
140 中に現金はほとんど入っていなかった。
141
142 Vは,
143 甲から仏像を取り返し,
144 又は代金を支払わせよ
145 うとして,
146 その首元にナイフを突き付けたまま,
147 「仏像を返すか,
148 すぐに金を準備して払え。
149
150
151 言うことを聞かないと痛い目に合うぞ。
152
153 」と言った。
154
155 また,
156 Vは,
157 甲の身元を確認しようと考
158 え,
159 「お前の免許証か何かを見せろ。
160
161 」と言った。
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163
164
165
166
167 甲は,
168 このままではナイフで刺される危険があり,
169 また,
170 Vに自動車運転免許証を見られる
171 と,
172 身元が知られて仏像の返還や代金の支払を免れることができなくなると考えた。
173
174 そこで,
175
176 甲は,
177 Vからナイフを奪い取ってVを殺害して,
178 自分の身を守るとともに,
179 仏像の返還や代金
180 の支払を免れることを意図し,
181 隙を狙ってVからナイフを奪い取り,
182 ナイフを取り返そうとし
183 て甲につかみ掛かってきたVの腹部を,
184 殺意をもって,
185 ナイフで1回突き刺し,
186 Vに重傷を負
187 わせた。
188
189 甲は,
190 すぐに逃走したが,
191 部屋から逃げていく甲の姿を見て不審に思ったホテルの従
192 業員が,
193 Vが血を流して倒れているのに気付いて119番通報をした。
194
195 Vは,
196 直ちに病院に搬
197 送され,
198 一命を取り留めた。
199
200
201
202
203
204 甲は,
205 身を隠すため,
206 その日のうちに国外に逃亡した。
207
208 乙は,
209 持ち帰った仏像を自宅に保管
210 したまま,
211 甲からの指示を待った。
212
213 その後,
214 乙は,
215 甲から電話で,
216 上記一連の事情を全て打ち
217 明けられ,
218 引き続き仏像の保管を依頼された。
219
220 乙は,
221 先輩である甲からの依頼であるのでやむ
222
223 - 2 -
224
225 を得ないと思い,
226 そのまま仏像の保管を続けた。
227
228 しかし,
229 乙は,
230 その電話から2週間後,
231 金に
232 困っていたことから,
233 甲に無断で仏像を500万円で第三者に売却し,
234 その代金を自己の用途
235 に費消した。
236
237
238
239 - 3 -
240
241 [刑事訴訟法]
242 次の【事例】を読んで,
243 後記〔設問〕に答えなさい。
244
245
246 【事
247
248 例】
249 司法警察員Kらは,
250 A建設株式会社(以下「A社」という。
251
252 )代表取締役社長である甲が,
253 L県
254
255 発注の公共工事をA社において落札するため,
256 L県知事乙を接待しているとの情報を得て,
257 甲及び
258 乙に対する内偵捜査を進めるうち,
259 平成25年12月24日,
260 A社名義の預金口座から800万円
261 が引き出されたものの,
262 A社においてそれを取引に用いた形跡がない上,
263 同月25日,
264 乙が,
265 新車
266 を購入し,
267 その代金約800万円をその日のうちに現金で支払ったことが判明した。
268
269
270 Kらは,
271 甲が乙に対し,
272 800万円の現金を賄賂として供与したとの疑いを持ち,
273 甲を警察署
274 まで任意同行し,
275 Kは,
276 取調室において,
277 甲に対し,
278 供述拒否権を告知した上で,
279 A社名義の預金
280 口座から引き出された800万円の使途につき質問したところ,
281 甲は「何も言いたくない。
282
283 」と答
284 えた。
285
286
287 そこで,
288 Kは,
289 甲に対し,
290 「本当のことを話してほしい。
291
292 この部屋には君と私しかいない。
293
294 ここ
295 で君が話した内容は,
296 供述調書にはしないし,
297 他の警察官や検察官には教えない。
298
299 ここだけの話と
300 して私の胸にしまっておく。
301
302 」と申し向けたところ,
303 甲はしばらく黙っていたものの,
304 やがて「分
305 かりました。
306
307 それなら本当のことを話します。
308
309 あの800万円は乙知事に差し上げました。
310
311 」と話
312 し始めた。
313
314 Kが,
315 甲に気付かれないように,
316 所持していたICレコーダーを用いて録音を開始し,
317
318 そのまま取調べを継続すると,
319 甲は,
320 「乙知事は,
321 以前から,
322 高級車を欲しがっており,
323 その価格
324 が約800万円だと言っていた。
325
326 そこで,
327 私は,
328 平成25年12月24日にA社の預金口座から8
329 00万円を引き出し,
330 その日,
331 乙知事に対し,
332 車両購入代としてその800万円を差し上げ,
333 その
334 際,
335 乙知事に,
336 『来月入札のあるL県庁庁舎の耐震工事をA社が落札できるよう便宜を図っていた
337 だきたい。
338
339 この800万円はそのお礼です。
340
341 』とお願いした。
342
343 乙知事は『私に任せておきなさい。
344
345
346 と言ってくれた。
347
348 」と供述した。
349
350 Kは,
351 甲に対し,
352 前記供述を録音したことを告げずに取調べを終
353 えた。
354
355
356 その後,
357 甲は贈賄罪,
358 乙は収賄罪の各被疑事実によりそれぞれ逮捕,
359 勾留され,
360 各罪によりそ
361 れぞれ起訴された。
362
363 第1回公判期日の冒頭手続において,
364 甲は「何も言いたくない。
365
366 」と陳述し,
367
368 乙は「甲から800万円を受け取ったことに間違いないが,
369 それは私が甲から借りたものである。
370
371
372 と陳述し,
373 以後,
374 両被告事件の弁論は分離された。
375
376
377 〔設
378
379 問〕
380 甲の公判において,
381 「甲が乙に対し賄賂として現金800万円を供与したこと」を立証趣旨と
382
383 して,
384 前記ICレコーダーを証拠とすることができるか。
385
386 その証拠能力につき,
387 問題となり得る
388 点を挙げつつ論じなさい。
389
390
391
392 - 4 -
393
394