1 論文式試験問題集
2 [法律実務基礎科目(民事・刑事)]
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6 [民
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8 事](〔設問1〕から〔設問5〕までの配点の割合は,8:16:4:14:8)
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10 司法試験予備試験用法文を適宜参照して,以下の各設問に答えなさい。
11 〔設問1〕
12 弁護士Pは,Xから次のような相談を受けた。
13 【Xの相談内容】
14 「私の父Yは,その妻である私の母が平成14年に亡くなって以来,Yが所有していた甲土地
15 上の古い建物(以下「旧建物」といいます。)に1人で居住していました。平成15年初め頃,
16 Yが,生活に不自由を来しているので同居してほしいと頼んできたため,私と私の妻子は,甲土
17 地に引っ越してYと同居することにしました。Yは,これを喜び,旧建物を取り壊した上で,甲
18 土地を私に無償で譲ってくれました。そこで,私は,甲土地上に新たに建物(以下「新建物」と
19 いいます。)を建築し,Yと同居を始めました。ちなみにYから甲土地の贈与を受けたのは,私
20 が新建物の建築工事を始めた平成15年12月1日のことで,その日,私はYから甲土地の引渡
21 しも受けました。
22 ところが,新建物の完成後に同居してみると,Yは私や妻に対しささいなことで怒ることが多
23 く,とりわけ,私が退職した平成25年春には,Yがひどい暴言を吐くようになり,ついには遠
24 方にいる弟Aの所に勝手に出て行ってしまいました。
25 平成25年10月頃,Aから電話があり,甲土地はAに相続させるとYが言っているとの話を
26 聞かされました。さすがにびっくりするとともに,とても腹が立ちました。親子なので書類は作
27 っていませんが,Yは,甲土地が既に私のものであることをよく分かっているはずです。平成1
28 6年から現在まで甲土地の固定資産税等の税金を支払っているのも私です。もちろん母がいると
29 きのようには生活できなかったかもしれませんが,私も妻もYを十分に支えてきました。
30 甲土地は,Yの名義のままになっていますので,この機会に,私は,Yに対し,所有権の移
31 転登記を求めたいと考えています。」
32 弁護士Pは,【Xの相談内容】を受けて甲土地の登記事項証明書を取り寄せたところ,昭和58
33 年12月1日付け売買を原因とするY名義の所有権移転登記(詳細省略)があることが明らかとな
34 った。弁護士Pは,【Xの相談内容】を前提に,Xの訴訟代理人として,Yに対し,贈与契約に基
35 づく所有権移転登記請求権を訴訟物として,所有権移転登記を求める訴えを提起することにした。
36 以上を前提に,以下の各問いに答えなさい。
37 (1) 弁護士Pが作成する訴状における請求の趣旨(民事訴訟法第133条第2項)を記載しなさい。
38 (2) 弁護士Pは,その訴状において,「Yは,Xに対し,平成15年12月1日,甲土地を贈与し
39 た。」との事実を主張したが,請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)は,この
40 事実のみで足りるか。結論とその理由を述べなさい。
41 〔設問2〕
42 上記訴状の副本を受け取ったYは,弁護士Qに相談した。贈与の事実はないとの事情をYから聴
43 取した弁護士Qは,Yの訴訟代理人として,Xの請求を棄却する,贈与の事実は否認する旨記載し
44 た答弁書を提出した。
45 平成26年2月28日の本件の第1回口頭弁論期日において,弁護士Pは訴状を陳述し,弁護士
46 Qは答弁書を陳述した。また,同期日において,弁護士Pは,次回期日までに,時効取得に基づい
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50 て所有権移転登記を求めるという内容の訴えの追加的変更を申し立てる予定であると述べた。
51 弁護士Pは,第1回口頭弁論期日後にXから更に事実関係を確認し,訴えの追加的変更につきX
52 の了解を得て,訴えの変更申立書を作成し,請求原因として次の各事実を記載した。
53 @ Xは,平成15年12月1日,甲土地を占有していた。
54 A
55
56 〔ア〕
57
58 B
59
60 無過失の評価根拠事実
61 平成15年11月1日,Yは,Xに対し,旧建物において,「明日からこの建物を取り壊
62 す。取り壊したら,甲土地はお前にただでやる。いい建物を頼むぞ。」と述べ,甲土地の登
63 記済証(権利証)を交付した。〔以下省略〕
64
65 C
66
67 Xは,Yに対し,本申立書をもって,甲土地の時効取得を援用する。
68
69 D
70
71 〔イ〕
72
73 E
74
75 よって,Xは,Yに対し,所有権に基づき,甲土地について,上記時効取得を原因とする
76 所有権移転登記手続をすることを求める。
77
78 以上を前提に,以下の各問いに答えなさい。
79 (1) 上記〔ア〕及び〔イ〕に入る具体的事実を,それぞれ答えなさい。
80 (2) 上記@からDまでの各事実について,請求原因事実としてそれらの事実を主張する必要があり,
81 かつ,これで足りると考えられる理由を,実体法の定める要件や当該要件についての主張・立
82 証責任の所在に留意しつつ説明しなさい。
83 (3) 上記B無過失の評価根拠事実(甲土地が自己の所有に属すると信じるにつき過失はなかったと
84 の評価を根拠付ける事実)に該当するとして,「Xは平成16年から現在まで甲土地の固定資産
85 税等の税金を支払っている。」を主張することは適切か。結論とその理由を述べなさい。
86 〔設問3〕
87 上記訴えの変更申立書の副本を受け取った弁護士Qは,Yに事実関係の確認をした。Yの相談内
88 容は次のとおりである。
89 【Yの相談内容】
90 「私は,長男Xと次男Aの独立後しばらくたった昭和58年12月1日,甲土地及び旧建物
91 を前所有者であるBから代金3000万円で購入して所有権移転登記を取得し,妻と生活して
92 いました。
93 その後,妻が亡くなってしまい,私も生活に不自由を来すようになりましたので,Xに同居
94 してくれるよう頼みました。Xは,甲土地であれば通勤等が便利だと言って喜んで賛成してく
95 れました。私とXは,旧建物は私の方で取り壊すこと,甲土地をXに無償で貸すこと,Xの方
96 で二世帯が住める住宅を建てることを決めました。
97 しかし,いざ新建物で同居してみると,だんだんと一緒に生活することが辛くなり,平成2
98 5年春,Aに頼んでAの所で生活をさせてもらうことにしました。
99 このような次第ですので,私が甲土地上の旧建物を取り壊して甲土地をXに引き渡したこと,
100 Xに甲土地を引き渡したのが新建物の建築工事が始まった平成15年12月1日であり,それ
101 以来Xが甲土地を占有していること,Xが新建物を所有していることは事実ですが,私はXに
102 対し甲土地を無償で貸したのであって,贈与したのではありません。平成15年12月1日に
103 私とXが会って新築工事の話をしましたが,その際に甲土地を贈与するという話は一切出てい
104 ませんし,書類も作っていません。私には所有権の移転登記をすべき義務はないと思います。」
105 弁護士Qは,【Yの相談内容】を踏まえて,どのような抗弁を主張することになると考えられる
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108 か。いずれの請求原因に関するものかを明らかにした上で,当該抗弁の内容を端的に記載しなさい
109 (なお,無過失の評価障害事実については記載する必要はない。)。
110 〔設問4〕
111 第1回弁論準備手続期日において,弁護士Pは訴えの変更申立書を陳述し,弁護士Qは前記抗弁
112 等を記載した準備書面を陳述した。その後,弁論準備手続が終結し,第2回口頭弁論期日において,
113 弁論準備手続の結果の陳述を経て,XとYの本人尋問が行われた。本人尋問におけるXとYの供述
114 内容の概略は,以下のとおりであった。
115 【Xの供述内容】
116 「私は,平成15年11月1日,旧建物に行き,Yと今後の相談をしました。その際,Yは,
117 私に対し,『明日からこの建物を取り壊す。取り壊したら,甲土地はお前にただでやる。いい建
118 物を頼むぞ。』と述べ,甲土地の登記済証(権利証)を交付してくれました。私は,Yと相談し
119 て,Yの要望に沿った二世帯住宅を建築することにし,Yが住みやすいような間取りにしました。
120 新建物は,仮にYが亡くなった後も,私や私の妻子が末永く住めるよう私が依頼して鉄筋コンク
121 リート造の建物としました。
122 平成15年12月1日,更地になった甲土地で新建物の建築工事が始まることになり,Yと甲
123 土地で会いました。Yは,
124 『今日からこの土地はお前の土地だ。ただでやる。同居が楽しみだな。』
125 と言ってくれ,私も『ありがとう。』と答えました。
126 私はその日に土地の引渡しを受け,工事を開始し,新建物を建築しました。その後,私は,甲
127 土地の登記済証(権利証)を保管し,平成16年以降,甲土地の固定資産税等の税金を支払い,
128 Yが勝手に出て行った平成25年春までは,その生活の面倒も見てきました。
129 新建物の建築費用は3000万円で,私の預貯金から出しました。移転登記については,いず
130 れすればよいと思ってそのままにし,贈与税の申告もしていませんでした。なお,親子のことで
131 すから,贈与の書面は作っていませんが,Yが事実と異なることを言っているのは,Aと同居を
132 始めたからに違いありません。」
133 【Yの供述内容】
134 「私は,平成15年11月1日,旧建物で,Xと今後の相談をしましたが,その際,私は,
135 Xに対し,『明日からこの建物を取り壊す。取り壊したら,甲土地はお前に無償で貸す。いい建
136 物を頼むぞ。』と言ったのであって,『譲渡する』とは言っていません。Xには,生活の面倒を
137 見てもらい,甲土地の固定資産税等の支払いをしてもらい,正直,私が死んだら,甲土地はX
138 に相続させようと考えていたのは事実ですが,生前に贈与するつもりはありませんでしたし,
139 贈与の書類も作っていません。なお,甲土地の登記済証(権利証)を交付しましたが,これは
140 旧建物を取り壊す際に,Xに保管を依頼したものです。
141 平成15年12月1日,更地になった甲土地で新建物の建築工事が始まることになり,Xと
142 甲土地で会いましたが,私が言ったのは,『今日からこの土地はお前に貸してやる。お金はいら
143 ない。』ということです。その日からXが新建物の工事を始め,私の意向を踏まえた二世帯住宅
144 が建ち,私たちは同居を始めました。
145 しかし,いざ新建物で同居してみると,Xらは私を老人扱いしてささいなことも制約しよう
146 としましたので,だんだんと一緒に生活することが辛くなり,平成25年春,別居せざるを得
147 なくなったのです。Xには,誰のおかげでここまで来れたのか,もう一度よく考えてほしいと
148 思います。」
149 本人尋問終了後に,弁護士Qは,次回の第3回口頭弁論期日までに,当事者双方の尋問結果に基
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152 づいて準備書面を提出する予定であると陳述した。弁護士Qは,「Yは,Xに対し,平成15年1
153 2月1日,甲土地を贈与した。」とのXの主張に関し,法廷におけるXとYの供述内容を踏まえて,
154 Xに有利な事実への反論をし,Yに有利な事実を力説して,Yの主張の正当性を明らかにしたいと
155 考えている。
156 この点について,弁護士Qが作成すべき準備書面の概略を答案用紙1頁程度の分量で記載しなさ
157 い。
158 〔設問5〕
159 弁護士Qは,Yから本件事件を受任するに当たり,Yに対し,事件の見通し,処理方法,弁護士
160 報酬及び費用について一通り説明した上で,委任契約を交わした。その際,Yから「私も高齢で,
161 難しい法律の話はよく分からない。息子のAに全て任せているから,今後の細かい打合せ等につい
162 ては,Aとやってくれ。」と言われ,弁護士Qは,日頃Aと懇意にしていたこともあったため,そ
163 の後の訴訟の打合せ等のやりとりはAとの間で行っていた。
164 第3回口頭弁論期日において裁判所から和解勧告があり,XY間において,YがXに対し甲土地
165 の所有権移転登記手続を行うのと引換えにXがYに対し1500万円を支払うとの内容の和解が成
166 立したが,弁護士Qは,その際の意思確認もAに行った。また,弁護士Qは,和解成立後の登記手
167 続等についても,Aから所有権移転登記手続書類を預かり,その交付と引換えにXから1500万
168 円の支払を受けた。さらに,弁護士Qは,受領した1500万円から本件事件の成功報酬を差し引
169 いて,残額については,Aの指示により,A名義の銀行口座に送金して返金した。
170 弁護士Qの行為は弁護士倫理上どのような問題があるか,司法試験予備試験用法文中の弁護士職
171 務基本規程を適宜参照して答えなさい。
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175 [刑
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177 事]
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179 次の【事例】を読んで,後記〔設問〕に答えなさい。
180 【事
181
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183 例】
184 A(男性,22歳)は,平成26年2月1日,V(男性,40歳)を被害者とする強盗致傷
185 罪の被疑事実で逮捕され,翌2日から勾留された後,同月21日,
186 「被告人は,Bと共謀の上,
187 通行人から金品を強取しようと企て,平成26年1月15日午前零時頃,H県I市J町1丁目
188 2番3号先路上において,同所を通行中のV(当時40歳)に対し,Bにおいて,Vの後頭部
189 をバットで1回殴り,同人が右手に所持していたかばんを強く引いて同人を転倒させる暴行を
190 加え,その反抗を抑圧した上,同人所有の現金10万円が入った財布等2点在中の前記かばん
191 1個(時価合計約1万円相当)を強取し,その際,同人に加療約1週間を要する頭部挫創の傷
192 害を負わせた。」との公訴事実が記載された起訴状により,I地方裁判所に公訴を提起された。
193 なお,B(男性,22歳)は,Aが公訴を提起される前の同年2月6日に同裁判所に同罪で公
194 訴を提起されていた。
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198 Aの弁護人は,Aが勾留された後,数回にわたりAと接見した。Aは,逮捕・勾留に係る被
199 疑事実につき,同弁護人に対し,「私は,平成26年1月14日午後11時頃,友人Bの家に
200 居た際,Bから『ひったくりをするから,一緒に来てくれ。車を運転してほしい。ひったくり
201 をする相手が見付かったら,俺だけ車から降りてひったくりをするから,俺が戻るまで車で待
202 っていてほしい。俺が車に戻ったらすぐに車を発進させて逃げてくれ。』と頼まれた。Bから
203 ひったくりの手伝いを頼まれたのは,この時が初めてである。私は,Bが通行人の隙を狙って
204 かばんなどを奪って逃げてくるのだと思った。私は金に困っておらず,ひったくりが成功した
205 際に分け前をもらえるかどうかについては何も聞かなかったが,私自身がひったくりをするわ
206 けでもないので自動車を運転するくらいなら構わないと思い,Bの頼みを引き受けた。その後,
207 私は,先にBの家を出て,その家に来る際に乗ってきていた私の自動車の運転席に乗った。し
208 ばらくしてから,Bが私の自動車の助手席に乗り込んだ。Bが私の自動車に乗り込んだ際,私
209 は,Bがバットを持っていることに気付かなかった。そして,私が自動車を運転して,I市内
210 の繁華街に向かった。車内では,どうやってかばんなどをひったくるのかについて何も話をし
211 なかった。私は,しばらく繁華街周辺の人気のない道路を走り,翌15日午前零時前頃,かば
212 んを持って一人で歩いている男性を見付けた。その男性がVである。Bも,Vがかばんを持っ
213 て歩いていることに気付き,私に『あの男のかばんをひったくるから,車を止めてくれ。』と
214 言ってきた。私が自動車を止めると,Bは一人で助手席から降り,Vの後を付けて行った。こ
215 の時,周囲が暗く,私は,Bがバットを持っていることには気付かなかったし,BがVに暴力
216 を振るうとは思っていなかった。その後,私からは,VとBの姿が見えなくなった。私は,自
217 動車の運転席で待機していた。しばらくすると,Bが私の自動車の方に走ってきたが,VもB
218 の後を追い掛けて走ってきた。私は,Bが自動車の助手席に乗り込むや,すぐに自動車を発進
219 させてその場から逃げた。Bがかばんを持っていたので,私は,ひったくりが成功したのだと
220 思ったが,BがVに暴力を振るったとは思っていなかった。私とBは,Bの家に戻ってから,
221 一緒にかばんの中身を確認した。かばんには財布と携帯電話機1台が入っており,財布の中に
222 は現金10万円が入っていた。Bが,私に2万円を渡してきたので,私は,自動車を運転した
223 謝礼としてこれを受け取った。残りの8万円はBが自分のものにした。財布や携帯電話機,か
224 ばんについては,Bが自分のものにしたか,あるいは捨てたのだと思う。私は,Bからもらっ
225 た2万円を自分の飲食費などに使った。」旨説明した。Aは,前記1のとおり公訴を提起され
226 た後も,同弁護人に前記説明と同じ内容の説明をした。
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230
231
232 受訴裁判所は,同年2月24日,Aに対する強盗致傷被告事件を公判前整理手続に付する決
233 定をした。検察官は,同年3月3日,【別紙1】の証明予定事実記載書を同裁判所及びAの弁
234 護人に提出・送付するとともに,同裁判所に【別紙2】の証拠の取調べを請求し,Aの弁護人
235 に当該証拠を開示した。Aの弁護人が当該証拠を閲覧・謄写したところ,その概要は次のとお
236 りであった。
237
238 (1)
239
240 甲第1号証の診断書には,Vの受傷について,同年1月15日から加療約1週間を要する
241
242 頭部挫創の傷害と診断する旨が記載されていた。
243 (2)
244
245 甲第2号証の実況見分調書には,司法警察員が,Vを立会人として,同日午前2時から同
246
247 日午前3時までの間,Vがかばんを奪われるなどの被害に遭った事件現場としてH県I市J
248 町1丁目2番3号先路上の状況を見分した結果が記載されており,同所付近には街灯が少な
249 く,夜間は非常に暗いこと,同路上の通行量はほとんどなく,実況見分中の1時間のうちに
250 通行人2名が通過しただけであったことなども記載されていた。
251 (3)
252
253 甲第3号証のバット1本は,木製で,長さ約90センチメートル,重さ約1キログラムの
254
255 ものであった。
256 (4)
257
258 甲第4号証のVの検察官調書には,「私は,平成26年1月15日午前零時頃,勤務先か
259
260 ら帰宅するためI市内の繁華街に近い道路を一人で歩いていたところ,いきなり何者かに後
261 頭部を固い物で殴られ,右手に持っていたかばんを強く引っ張られて仰向けに転倒した。私
262 は,仰向けに転倒した拍子にかばんから手を離した。すると,この時,私のすぐそばに男が
263 立っており,その男が左手にバットを持ち,右手に私のかばんを持っているのが見えた。そ
264 こで,私は,その男にバットで後頭部を殴られたのだと分かった。男は,私のかばんを持っ
265 て逃げたが,その際,バットを地面に落としていった。かばんには,財布と携帯電話機1台
266 を入れており,財布の中には,現金10万円を入れていた。男にかばんを奪われた後,私は,
267 すぐに男を追い掛けたが,男が自動車に乗って逃げたため,捕まえることはできなかった。」
268 旨記載されていた。
269 (5)
270
271 甲第5号証のBの検察官調書には,「私は,サラ金に約50万円の借金を抱え,平成26
272
273 年1月15日に事件を起こす1週間くらい前から,遊ぶ金欲しさに,通行人からかばんなど
274 をひったくることを考えていた。通行人からかばんなどをひったくる際には抵抗されること
275 も予想し,そのときは相手を殴ってでもかばんなどを奪おうと考えていた。私は,同月14
276 日午後11時頃,私の自宅に来ていた友人Aに『ひったくりをするから,一緒に来てくれな
277 いか。車を運転してほしい。ひったくりをする相手が見付かったら,俺が一人で車から降り
278 てひったくりをするから,その間,車で待っていてくれ。俺が車に戻ったら,すぐに車を走
279 らせて逃げてほしい。』と頼んだ。Aは,快く引き受けてくれて,Aの自動車でI市内の繁
280 華街に行くことを話し合った。私は,かばんなどを奪う相手に抵抗されたりした場合にはそ
281 の相手をバットで殴ったり脅したりしようと考え,自分の部屋からバット1本を持ち出し,
282 そのバットを持ってAの自動車の助手席に乗った。そして,Aが自動車を運転して繁華街に
283 向かい,その周辺の道路を走行しながら,ひったくりの相手を探した。車内では,どうやっ
284 てかばんなどを奪うのかについて話はしなかった。私は,かばんを持って一人で歩いている
285 男性Vを見付けたので,Aに停車してもらってから,私一人でバットを持って降車し,Vの
286 後を付けて行った。私がバットを持って自動車に乗ったことや,バットを持って自動車から
287 降りたことは,Aも自動車の運転席に居たのだから,当然気付いていたと思う。私は,降車
288 してしばらくVを追跡してから,同月15日午前零時頃,背後からVに近付き,いきなりV
289 が右手に持っていたかばんをつかんで後ろに引っ張った。この時,Vが後方に転倒して頭部
290 を地面に打ち付け,かばんから手を離したので,私は,すぐにかばんを取ることができた。
291 私は,Vを転倒させようと思ってかばんを引っ張ったわけではなく,バットで殴りもしなか
292 った。かばんを奪った直後,私は,手を滑らせてバットをその場に落としてしまったが,V
293 - 7 -
294
295 がすぐに立ち上がって私を捕まえようとしたので,バットをその場に残したままAの自動車
296 まで走って逃げた。私は,Vに追い掛けられたが,私がAの自動車の助手席に乗り込むとA
297 がすぐに自動車を発進させてくれたので,逃げ切ることができた。その後,私とAは,私の
298 自宅に戻り,Vのかばんの中身を確認した。かばんには,財布と携帯電話機1台が入ってお
299 り,財布には現金10万円が入っていた。そこで,私は,Aに,自動車を運転してくれた謝
300 礼として現金2万円を渡し,残り8万円を自分の遊興費に使った。財布や携帯電話機,かば
301 んは,私がいずれもゴミとして捨てた。」旨記載されていた。
302 (6)
303
304 乙第1号証のAの警察官調書には,Aの生い立ちなどが記載されており,乙第2号証のA
305
306 の検察官調書には,前記2のとおりAが自己の弁護人に説明した内容と同じ内容が記載され
307 ていた。乙第3号証の身上調査照会回答書には,Aの戸籍の内容が記載されていた。
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309
310 Aの弁護人は,【別紙1】の証明予定事実記載書及び【別紙2】の検察官請求証拠を検討し
311 た後,@同証明予定事実記載書の内容につき,受訴裁判所裁判長に対して求釈明を求める方針
312 を定め,また,A検察官に対し,【別紙2】の検察官請求証拠の証明力を判断するため,類型
313 証拠の開示を請求した。そこで,検察官は,当該開示請求に係る証拠をAの弁護人に開示した。
314 その後,同年3月14日,Aに対する強盗致傷被告事件につき,第1回公判前整理手続期日
315 が開かれた。裁判長は,Aの弁護人からの前記求釈明の要求に応じて,検察官に釈明を求めた。
316 そこで,検察官は,今後,証明予定事実記載書を追加して提出することにより釈明する旨述べ
317 た。
318 第1回公判前整理手続期日が終了した後,検察官は,追加の証明予定事実記載書を受訴裁判
319 所及びAの弁護人に提出・送付した。Aの弁護人は,BがVの後頭部をバットで殴打したか否
320 かなどの実行行為の態様については,甲第4号証のVの検察官調書が信用性に乏しく,甲第5
321 号証のBの検察官調書が信用できると考えた。その上で,BAの弁護人は,前記2のAの説明
322 内容に基づいて予定主張記載書面を作成し,これを受訴裁判所及び検察官に提出・送付した。
323 同月28日,第2回公判前整理手続期日が開かれ,受訴裁判所は,争点及び証拠を整理し,
324 V及びBの証人尋問が実施されることとなった。そして,同裁判所は,争点及び証拠の整理結
325 果を確認して審理計画を策定し,公判前整理手続を終結した。公判期日は,同年5月19日か
326 ら同月21日までの連日と定められた。
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330 その後,Bに対する強盗致傷被告事件の公判が,同年4月21日から同月23日まで行われ
331 た。Bは,同公判の被告人質問において,「実は,起訴されるまでの取調べにおいては嘘の話
332 をしていた。本当は,平成26年1月14日午後11時頃,自宅において,Aに対し本件犯行
333 への協力を求めた際,Aから『バットを持って行けばよい。』と勧められた。また,Vを襲っ
334 た時,バットでVの後頭部を殴ってから,Vのかばんを引っ張った。」旨新たに供述した。そ
335 こで,Aの公判を担当する検察官が,同年4月24日にBを取り調べたところ,Bは自己の公
336 判で供述した内容と同旨の供述をしたが,その一方で「Aの前では,Aに責任が及ぶことにつ
337 いて話しづらいので,Aの公判では,できることなら話したくない。今日話したことについて
338 は,供述調書の作成にも応じたくない。」旨供述した。C同検察官は,取調べの結果,Bが自
339 己の公判で新たにした供述の内容が信用できると判断した。
340
341 - 8 -
342
343 〔設問1〕
344 下線部@につき,Aの弁護人が求釈明を求める条文上の根拠を指摘するとともに,同弁護人が求
345 釈明を求める事項として考えられる内容を挙げ,当該求釈明の要求を必要と考える理由を具体的に
346 説明しなさい。
347 〔設問2〕
348 下線部Aにつき,Aの弁護人が甲第4号証のVの検察官調書の証明力を判断するために開示を請
349 求する類型証拠として考えられるものを3つ挙げ,同弁護人が当該各証拠の開示を請求するに当た
350 り明らかにしなければならない事項について,条文上の根拠を指摘しつつ具体的に説明しなさい。
351 ただし,当該各証拠は,異なる類型に該当するものを3つ挙げることとする。
352 〔設問3〕
353 下線部Bにつき,Aの弁護人は,Aの罪責についていかなる主張をすべきか,その結論を示すと
354 ともに理由を具体的に論じなさい。
355 〔設問4〕
356 下線部Cにつき,検察官は,Bが自己の公判で新たにした供述の内容をAの公訴事実の立証に用
357 いるためにどのような訴訟活動をすべきか,予想されるAの弁護人の対応を踏まえつつ具体的に論
358 じなさい。
359
360 - 9 -
361
362 【別紙2】
363 検察官請求証拠
364 甲号証
365 番号
366
367 証拠の標目
368
369 立証趣旨
370
371 甲第1号証
372
373 診断書
374
375 Vの負傷部位・内容
376
377 甲第2号証
378
379 実況見分調書
380
381 犯行現場の状況
382
383 甲第3号証
384
385 バット1本
386
387 犯行に用いられたバットの存在及び形状
388
389 甲第4号証
390
391 Vの検察官調書
392
393 被害状況
394
395 甲第5号証
396
397 Bの検察官調書
398
399 犯行に至る経緯及び犯行の状況等
400 乙号証
401
402 番号
403
404 証拠の標目
405
406 立証趣旨
407
408 乙第1号証
409
410 被告人の警察官調書
411
412 身上・経歴関係
413
414 乙第2号証
415
416 被告人の検察官調書
417
418 犯行に至る経緯及び犯行の状況等
419
420 乙第3号証
421
422 被告人の身上調査照会回答書
423
424 被告人の身上関係
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