1 論文式試験問題集[刑事系科目第1問]
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5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 以下の事例に基づき,甲,乙及び丙の罪責について,具体的な事実を摘示しつつ論じなさい(特
8 別法違反の点を除く。)。
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11 甲(53歳,男性,身長170センチメートル,体重75キログラム)は,医薬品の研究開発・
12 製造・販売等を目的とするA株式会社(以下「A社」という。)の社員である。
13 A社には,新薬開発部,財務部を始めとする部があり,各部においてその業務上の情報等を管
14 理している。各部は,A社の本社ビルにおいて,互いに他の部から独立した部屋で業務を行って
15 いる。
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19 某年12月1日,甲がA社の新薬開発部の部長になって2年が経過した。甲は,部長として,
20 新薬開発部が使用する部屋に設置された部長席において執務し,同部の業務全般を統括し,A社
21 の新薬開発チームが作成した新薬の製造方法が記載された書類(以下「新薬の書類」という。)
22 を管理するなどの業務に従事していた。新薬の書類は,部長席の後方にある,暗証番号によって
23 開閉する金庫に入れて保管されていた。
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27 甲は,同日,甲の大学時代の後輩であり,A社とライバル関係にある製薬会社の営業部長乙(50
28 歳,男性)から食事に誘われ,その席で,乙に,「これはまだ秘密の話だが,最近,A社は新薬
29 の開発に成功した。私は,新薬開発部の部長だから,新薬の書類を自分で保管しているのだよ。」
30 と言った。すると,乙は,甲に,「是非,その書類を持ち出して私に下さい。私は,その書類を
31 我が社の商品開発に活用したい。成功すれば,私は将来,我が社の経営陣に加わることができる。
32 その書類と交換に,私のポケットマネーから300万円を甲先輩に払いますし,甲先輩を海外の
33 支社長として我が社に迎え入れます。」と言った。
34 甲は,部長職に就いたものの,A社における自己の人事評価は今一つで,そのうち早期退職を
35 促されるかもしれないと感じていたため,できることならば300万円を手に入れるとともに乙
36 の勤務する会社に転職もしたいと思った。そこで,甲は,乙に,「分かった。具体的な日にちは
37 言えないが,新薬の書類を年内に渡そう。また連絡する。」と言った。
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41 甲は,その後,同月3日付けで財務部経理課に所属が変わり,同日,新薬開発部の後任の部長
42 に引継ぎを行って部長席の後方にある金庫の暗証番号を伝えた。
43 甲は,もし自己の所属が変わったことを乙に告げれば,乙は同月1日の話をなかったことにす
44 ると言うかもしれない,そうなれば300万円が手に入らず転職もできないと思い,自己の所属
45 が変わったことを乙に告げず,毎月15日午前中にA社の本社ビルにある会議室で開催される新
46 薬開発部の部内会議のため同部の部屋に誰もいなくなった隙に新薬の書類を手に入れ,これを乙
47 に渡すこととした。
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51 甲は,同月15日,出勤して有給休暇取得の手続を済ませ,同日午前10時30分,新薬開発
52 部の部内会議が始まって同部の部屋に誰もいなくなったことを確認した後,A3サイズの書類が
53 入る大きさで,持ち手が付いた甲所有のかばん(時価約2万円相当。以下「甲のかばん」という。)
54 を持って同部の部屋に入った。そして,甲は,部長席の後方にある金庫に暗証番号を入力して金
55 庫を開け,新薬の書類(A3サイズのもの)10枚を取り出して甲のかばんに入れ,これを持っ
56 て新薬開発部の部屋を出て,そのままA社の本社ビルを出た。
57 甲は,甲のかばんを持ってA社の本社ビルの最寄り駅であるB駅に向かいながら,乙に,電話
58 で,「実は,先日,私は新薬開発部から財務部に所属が変わったのだが,今日,新薬の書類を持
59 ち出すことに成功した。これから会って渡したい。」と言ったところ,乙は,甲に,
60 「所属が変わっ
61 たことは知りませんでした。遠くて申し訳ありませんが,私の自宅で会いましょう。そこで300
62 万円と交換しましょう。」と言った。
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68 甲が向かっているB駅は,通勤・通学客を中心に多数の乗客が利用する駅で,駅前のロータリー
69 から改札口に向かって右に自動券売機があり,左に待合室がある。待合室は四方がガラス張りだ
70 が,自動券売機に向かって立つと待合室は見えない。待合室は,B駅の始発時刻から終電時刻ま
71 での間は開放されて誰でも利用でき,出入口が1か所ある。自動券売機と待合室の出入口とは直
72 線距離で20メートル離れている。
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76 甲は,B駅に着き,待合室の出入口を入ってすぐ近くにあるベンチに座り,しばらく休んだ。
77 そして,甲は,同日午前11時15分,自動券売機で切符を買うため,甲のかばんから財布を取
78 り出して手に持ち,新薬の書類のみが入った甲のかばんを同ベンチに置いたまま待合室を出て,
79 自動券売機に向かった。
80 待合室の奥にあるベンチに座って甲の様子を見ていた丙(70歳,男性)は,ホームレスの生
81 活をしていたが,真冬の生活は辛かったので,甲のかばんを持って交番へ行き,他人のかばんを
82 勝手に持ってきた旨警察官に申し出れば,逮捕されて留置施設で寒さをしのぐことができるだろ
83 うと考え,同日午前11時16分,ベンチに置かれた甲のかばんを抱え,待合室を出た。この時,
84 甲は,自動券売機に向かって立ち,切符を買おうとしていた。丙は,甲のかばんを持って直ちに
85 ロータリーの先にある交番(待合室出入口から50メートルの距離)に行き,警察官に,「駅の
86 待合室からかばんを盗んできました。」と言って,甲のかばんを渡した。
87 甲がB駅の待合室に入ってから丙が甲のかばんを持って待合室を出るまでの間,待合室を利用
88 した者は,甲と丙のみであった。
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92 甲は,同日午前11時17分,切符の購入を済ませて待合室に戻る途中で,甲のかばんと同じ
93 ブランド,色,大きさのかばんを持って改札口を通過するC(35歳,男性,身長175センチ
94 メートル,体重65キログラム)を見たことから,甲のかばんのことが心配になって待合室のベ
95 ンチを見たところ,甲のかばんが無くなっていたので,Cが甲のかばんを盗んだものと思い込ん
96 だ。
97 甲は,Cからかばんを取り返そうと考え,即座に,「待て,待て。」と言ってCを追い掛けた。
98 甲は,同日午前11時18分,改札口を通過してホームに向かう通路でCに追い付き,Cに,
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100 「私のかばんを盗んだな。返してくれ。」と言った。しかし,Cは,自己の所有するかばんを持っ
101 ていたので,甲を無視してホームに向かおうとした。甲は,Cに,「待て。」と言ったが,Cが全
102 く取り合わなかったので,「盗んだかばんを返せと言っているだろう。」と言ってCが持っていた
103 C所有のかばんの持ち手を手でつかんで引っ張ってそのかばんを取り上げ,これを持ってホーム
104 に行き,出発間際の電車に飛び乗った。
105 Cは,甲からかばんを引っ張られた弾みで通路に手を付き,手の平を擦りむいて,加療1週間
106 を要する傷害を負った。
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110 論文式試験問題集[刑事系科目第2問]
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114 [刑事系科目]
115 〔第2問〕(配点:100)
116 次の【事例】を読んで,後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
117 【事
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120 例】
121 平成27年2月4日午前10時頃,L県M市内のV(65歳の女性)方に電話がかかり,Vは,
122
123 電話の相手から,「母さん,俺だよ。先物取引に手を出したら大損をしてしまった。それで,会
124 社の金に手を付けてしまい,それが上司にばれてしまった。今日中にその穴埋めをしないと,警
125 察に通報されて逮捕されてしまう。母さん,助けて。上司と電話を代わるよ。」と言われ,次の
126 電話の相手からは,「息子さんの上司です。息子さんが我が社の金を使い込んでしまいました。
127 金額は500万円です。このままでは警察に通報せざるを得ません。そうなると,息子さんはク
128 ビですし,横領罪で逮捕されます。ただ,今日中に穴埋めをしてもらえれば,私の一存で穏便に
129 済ませることができます。息子さんの代わりに500万円を用意していただけますか。私の携帯
130 電話の番号を教えるので,500万円を用意したら,私に電話を下さい。M駅前まで,私の部下
131 を受取に行かせます。」と言われた。Vは,息子とその上司からの電話だと思い込み,電話の相
132 手から求められるまま,500万円を用意してM駅前に持参することにした。
133 Vは,最寄りの銀行に赴き,窓口で自己名義の預金口座から現金500万円を払い戻そうとし
134 たが,銀行員の通報により駆けつけた司法警察員Pらの説得を受け,直接息子と連絡を取った結
135 果,何者かがVの息子に成り済ましてVから現金をだまし取ろうとしていることが判明した。
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138 Pらは,Vを被害者とする詐欺未遂事件として捜査を開始し,犯人を検挙するため,Vには引
139 き続きだまされているふりをしてもらい,犯人をM駅前に誘い出すことにした。
140 同日午後2時頃,M駅前に甲が現れ,Vから現金を受け取ろうとしたことから,あらかじめ付
141 近に張り込んでいたPらは,甲を,Vに対する詐欺未遂の現行犯人として逮捕した。
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144
145 甲は,「知らない男から,『謝礼を支払うので,自分の代わりに荷物を受け取ってほしい。』と
146
147 頼まれたことから,これを引き受けたが,詐欺とは知らなかった。」と供述し,詐欺未遂の被疑
148 事実を否認した。
149 甲は,同月6日,L地方検察庁検察官に送致されて引き続き勾留されたが,その後も同様の供
150 述を続けて被疑事実を否認した。
151 逮捕時,甲は同人名義の携帯電話機を所持していたことから,その通話記録について捜査した
152 結果,逮捕前に甲が乙と頻繁に通話をし,逮捕後も乙から頻繁に着信があったことが判明した。
153 そこで,Pらは,乙が共犯者ではないかと疑い,乙について捜査した結果,乙が,L県N市内の
154 Fマンション5階501号室に一人で居住し,仕事はしておらず,最近は外出を控え,周囲を警
155 戒していることが判明したことから,Pらは,一層その疑いを強めた。
156 そこで,Pらは,乙方の隣室であるFマンション502号室が空室であったことから,同月
157 12日,同室を賃借して引渡しを受け,同室にPらが待機して乙の動静を探ることにした。
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160 同月13日,Pが,Fマンション502号室ベランダに出た際,乙も,乙方ベランダに出て来
161 て,携帯電話で通話を始めた。その声は,仕切り板を隔てたPにも聞こえたことから,Pは,同
162 502号室ベランダにおいて,@ICレコーダを使用して,約3分間にわたり,この乙の会話を
163 録音した。その際,「甲が逮捕されました。どうしますか。」という乙の声がPにも聞こえ,同レ
164 コーダにも録音されたが,電話の相手の声は,Pには聞こえず,同レコーダにも録音されていな
165 かった。
166 このように,乙が本件に関与し,他に共犯者がいることがうかがわれ,乙がこの者と連絡を取っ
167 ていることから,Pらは,同502号室の居室の壁越しに乙方の居室内の音声を聞き取ろうとし
168 たが,壁に耳を当てても音声は聞こえなかった。そこで,Pらは,隣室と接する壁の振動を増幅
169 させて音声として聞き取り可能にする機器(以下「本件機器」という。)を使用することにし,
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173 本件機器を同502号室の居室の壁の表面に貼り付けると,本件機器を介して乙方の居室内の音
174 声を鮮明に聞き取ることができた。そして,Pらは,同月15日,A約10時間にわたり,本件
175 機器を介して乙方の居室内の音声を聞き取りつつ,本件機器に接続したICレコーダにその音声
176 を継続して録音した。しかし,このようにして聴取・録音された内容は,時折,乙が詐欺とはお
177 よそ関係のない話をしているにすぎないものであったことから,これ以後,Pらは本件機器を使
178 用しなかった。
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181 甲は,司法警察員Qによる取調べを受けていたが,前記のとおり,否認を続けていた。Qは,
182 同月16日,L地方検察庁において,検察官Rと今後の捜査方針を打ち合わせた際,Rから,
183 「こ
184 の種の詐欺は上位者を処罰しなければ根絶できないが,今のままでは乙を逮捕することもできな
185 い。甲が見え透いた虚偽の弁解をやめ,素直に共犯者についても洗いざらいしゃべって自供し,
186 改悛の情を示せば,本件は未遂に終わっていることから,起訴猶予処分にしてやってよい。甲に,
187 そのことをよく分からせ,率直に真相を自供することを勧めるように。」と言われた。そこで,
188 Qは,同日,甲を取り調べ,甲に対し,「共犯者は乙ではないのか。検察官は君が見え透いたう
189 そを言っていると思っているが,改悛の情を示せば起訴猶予にしてやると言っているので,共犯
190 者が誰かも含めて正直に話した方が良い。」と言って自白を促した。これを聞いて,甲は,自己
191 が不起訴処分になることを期待して,Qに対し,「それなら本当のことを話します。詐欺である
192 ことは分かっていました。共犯者は乙です。乙から誘われ,昨年12月頃から逮捕されるまで,
193 同じような詐欺を繰り返しやりました。役割は決まっており,乙が相手に電話をかける役であり,
194 私は現金を受け取る役でした。電話の声は,乙の一人二役でした。他に共犯者がいるかどうか,
195 私には分かりません。昨年までは痴漢の示談金名目で100万円を受け取っていましたが,今年
196 になってから,現金を受け取る名目を変えるように乙から指示され,使い込んだ会社の金を穴埋
197 めする名目で500万円を受け取るようになりました。詐欺の拠点は,M市内のGマンション
198 1003号室です。」と供述して自白した。
199 そこで,Pは,前記甲の自白に基づき,Vに対する詐欺未遂の被疑事実で乙の逮捕状,Gマン
200 ション1003号室を捜索場所とする捜索差押許可状の発付を受け,同月18日,乙を通常逮捕
201 し,また,同1003号室の捜索を実施したが,同室は既にもぬけの殻となっており,証拠物を
202 押収することはできなかった。
203 乙は,同日,逮捕後の取調べにおいて,甲の供述内容を知らされなかったものの,甲が自白し
204 たと察して,「甲が自白したのでしょうから話します。私が電話をかけてVをだまし,甲に現金
205 を受け取りに行かせました。しかし,甲が逮捕されてしまったので,Gマンション1003号室
206 から撤退しました。ほとぼりが冷めたら再開するつもりでしたので,詐欺で使った道具は,M市
207 内のHマンション705号室に隠してあります。」と供述した。乙は,同月19日,L地方検察
208 庁検察官に送致されて引き続き勾留された。
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212 Pは,前記乙の供述に基づき,Vに対する詐欺未遂の被疑事実でHマンション705号室を捜
213 索場所とする捜索差押許可状の発付を受け,同月19日,同室において,捜索差押えを実施した。
214 同室からは,架空人名義の携帯電話機,Vの住所・氏名・電話番号が掲載された名簿などのほ
215 か,次のような文書1通(以下「本件文書」という。)及びメモ紙1枚(以下「本件メモ」とい
216 う。)が差し押さえられた。
217 本件文書の記載内容は,
218 【資料1】のとおりであり,パソコンで作成されているが,右上の「0
219 XX−XXXX−5678」という記載は手書き文字である。この手書き文字は,V方の電話番
220 号と一致し,また,筆跡鑑定の結果,乙の筆跡であることが判明した。さらに,本件文書からは,
221 丙の指紋が検出された。
222 本件メモの記載内容は,【資料2】のとおりであり,全ての記載が手書き文字である。これら
223 の文字は,筆跡鑑定の結果,いずれも乙の筆跡であることが判明した。
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227 このように,本件文書から丙の指紋が検出されたほか,乙が逮捕時に所持していた同人名義の
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231 携帯電話の通話記録について捜査した結果,Pが同月13日にFマンション502号室のベラン
232 ダで乙の会話を聴取・録音したのと同じ時刻に,乙が丙に電話をかけていることが判明した。そ
233 こで,Pは,これらに基づき,Vに対する詐欺未遂の被疑事実で丙の逮捕状の発付を受け,同月
234 21日,丙を通常逮捕した。
235 丙は,逮捕後の取調べにおいて,「全く身に覚えがない。」と供述し,同月22日,L地方検察
236 庁検察官に送致されて引き続き勾留されたが,その後も同様の供述を続けて一貫して被疑事実を
237 否認した。
238 乙は,同月23日,Rによる取調べにおいて,「私は,甲と一緒になってVから現金500万
239 円をだまし取ろうとしました。私が電話をかける役であり,甲が現金を受け取る役でした。昨年
240 12月頃から同じような詐欺を繰り返しやりました。」と供述したものの,丙の関与については,
241 「丙のことは一切話したくありません。」と供述し,本件文書については,「これは,だます方法
242 のマニュアルです。このマニュアルに沿って電話で話して相手をだましていました。右上の手書
243 き文字は,私がVに電話をかけた際に,その電話番号を記載したものです。このマニュアルは,
244 私が作成したものではなく,他の人から渡されたものです。しかし,誰から渡されたかは話した
245 くありません。このマニュアルに丙の指紋が付いていたようですが,丙のことは話したくありま
246 せん。」と供述し,本件メモについては,「私が書いたものですが,何について書いたものかは話
247 したくありません。」と供述した。そこで,Rは,これらの乙の供述を録取し,末尾に本件文書
248 及び本件メモの各写しを添付して検察官調書1通(以下「本件検察官調書」という。)を作成し,
249 乙の署名・指印を得た。なお,乙は,丙の関与並びに本件文書及び本件メモについて,その後も
250 同様の供述を続けた。
251
252
253 Rは,甲については,延長された勾留期間の満了日である同月25日,釈放して起訴猶予処分
254 とし,乙及び丙については,乙の延長された勾留期間の満了日である同年3月10日,両名を,
255 甲,乙及び丙3名の共謀によるVに対する詐欺未遂の公訴事実でL地方裁判所に公判請求し,そ
256 の後,乙と丙の弁論は分離されることになった。
257
258
259
260 同年4月17日の丙の第1回公判において,丙は,「身に覚えがありません。」と陳述して公訴
261 事実を否認し,丙の弁護人は,本件検察官調書について,「添付文書を含め,不同意ないし取調
262 べに異議あり。」との証拠意見を述べたことから,Rは,丙と乙との共謀を立証するため,乙の
263 証人尋問を請求するとともに,B本件文書及び本件メモについても証拠調べを請求した。丙の弁
264 護人は,本件文書及び本件メモについて,「不同意ないし取調べに異議あり。」との証拠意見を述
265 べた。
266 同年5月8日の丙の第2回公判において,乙の証人尋問が実施され,乙は,丙の関与並びに本
267 件文書及び本件メモについて,本件検察官調書の記載と同様の供述をした。
268
269 〔設問1〕
270
271 @及びAで行われたそれぞれの捜査の適法性について,具体的事実を摘示しつつ論じ
272 なさい。
273
274 〔設問2〕
275
276 Bで証拠調べ請求された本件文書及び本件メモのそれぞれの証拠能力について,証拠
277 収集上の問題点を検討し,かつ,想定される具体的な要証事実を検討して論じなさい。
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281 【資料1】
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283 0XX−XXXX−5678
284 先物取引
285 〔母さん/父さん〕,俺だよ。
286 先物取引に手を出したら大損をしてしまった。
287 息子
288
289 それで,会社の金に手を付けてしまい,それが上司にばれてしまった。
290 今日中にその穴埋めをしないと,警察に通報されて逮捕されてしまう。
291 上司と電話を代わる。
292 息子さんの上司です。
293 息子さんが我が社の金を使い込んでしまいました。
294 金額は500万円です。
295 このままでは警察に通報せざるを得ません。
296
297 上司
298
299 そうなると,息子さんはクビですし,横領罪で逮捕されます。
300 しかし,今日中に穴埋めをしてもらえれば,私の一存で穏便に済ませることができます。
301 息子さんの代わりに500万円を用意してもらえますか。
302 私の携帯電話の番号を教えるので,500万円を用意したら,私に電話をください。
303
304
305 〕まで,私の部下を受け取りに行かせます。
306
307
308
309 受取役は,警察に捕まった場合,「知らない男から,『謝礼を支払うので,自分の代わりに荷物
310 を受け取ってほしい。』と頼まれて引き受けただけで,詐欺とは知らなかった。」と言い張ること。
311
312 【資料2】
313
314 1/5
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316 丙からtel
317
318 チカンの示談金はもうからないのでやめる
319 先物取引で会社の金を使いこんだことにする
320 金額は500万円
321 マニュアルは用意する
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