1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒
10
11
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
17 【事
18
19 例】
20 A株式会社(以下「A社」という。)は,平成8年に設立された機械部品の製造販売を業とす
21
22 る会社であり,近隣の工場に製造した工作機械の部品等を卸していた。
23 A社は,平成26年初め頃からの急激な円安により原材料費が急騰したため,同年8月頃から
24 急速に資金繰りを悪化させ,同年11月末には支払不能に陥った。そこで,A社は,同年12月
25 10日,債権者及び売掛先に弁護士受任通知を発して支払を停止した上,同月15日,破産手続
26 開始の申立てをしたところ,同月17日,破産手続開始の決定がされ,破産管財人Xが選任され
27 た。
28 〔設
29
30 問〕
31
32 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
33
34 1.上記事例において,XがA社の売掛金台帳を調査したところ,部品納入先であるBに対して,
35 平成26年10月1日から同年11月末日分までの納入分に係る合計216万円の売掛債権
36 (以下「本件売掛債権」という。)が未収となっていることが判明した。そこで,Xは,Bに
37 対し,平成27年1月末日までに本件売掛債権216万円を支払うよう催告した。
38 上記催告を受けたBは,Xに対し,「本件売掛債権については,平成26年12月12日,
39 同月11日付けの確定日付のある証書により,A社からY社に譲渡された旨の債権譲渡通知を
40 受領したため,同月15日,Y社に対して全額を支払った。」と説明した。
41 そこで,Xが更に調査をしたところ,A社とY社との間においては,平成24年5月10日
42 にA社がY社から設備投資のため1000万円の融資を受けるに当たり,A社のBに対する売
43 掛債権について,同日,次のとおりの債権譲渡契約が締結されていることが判明した。
44 (債権譲渡)
45
46
47 A社は,A社がY社に対して負担する一切の債務を担保するため,A社がBに対して現
48 に有する売掛債権及び将来取得する売掛債権をY社に包括的に譲り渡す。
49
50 (効力発生時期)
51
52
53 前項の譲渡の効力は,A社が,支払を停止したとき又は破産手続開始の申立てをしたと
54 きにその効力を生ずる。
55 また,Y社は,上記債権譲渡契約の締結に当たり,将来の債権譲渡通知のために,A社から
56
57 委任状等の必要書類をあらかじめ受領しており,Bが平成26年12月12日に受領した債権
58 譲渡通知は,A社が同月10日に支払を停止したため,上記債権譲渡の効力が発生したとして,
59 Y社がA社を代理して行ったものであることも判明した。
60 この調査結果を踏まえ,Xは,Y社に対し,否認権を行使することにより,Y社がBから受
61 領した本件売掛債権に係る売掛金216万円の返還を求めて訴えを提起しようと考えている。
62 この場合に,Xの否認権の行使を基礎付ける法律構成としてどのようなものが考えられるか,
63 またXの否認権の行使が認められるかどうかについて,予想されるY社の反論を踏まえて,論
64 じなさい。
65 2.A社は,破産手続開始前,製造した部品を納入するため,トラック1台(以下「本件車両」
66 といい,道路運送車両法第5条第1項の適用を受けるものとする。)を使用しており,破産手
67 続開始時において,同車両はA社の占有下にあったが,自動車登録ファイルに登録された所有
68 者は,自動車販売会社であるC社であった。そこで,Xは,C社に対し,登録名義の変更を求
69
70 - 2 -
71
72 めたが,逆に,C社の系列信販会社であるZ社から,本件車両を同社に引き渡すよう求められ
73 た。
74 そこで,Xが調査をしたところ,本件車両は,平成25年10月10日にC社がA社に対し
75 代金400万円で売却したものであり,その際,C社に対して頭金64万円が支払われ,残代
76 金である336万円(以下「本件残代金」という。)の支払等については,同日,A社,C社
77 及びZ社の三者間において,次のとおりの契約が締結されている事実が判明した。
78 (本件残代金の支払等)
79
80
81 A社は,Z社に対し,本件残代金336万円を自己に代わってC社に立替払することを
82 委託し,本件残代金に手数料である24万円を加算した360万円を平成25年10月か
83 ら平成27年9月までの各月末日限り24回に分割してZ社に支払う(以下,このA社の
84 支払債務を「本件立替払金等債務」という。)。
85
86 (所有権の留保)
87
88
89 本件車両の所有権は,C社のA社に対する本件残代金債権を担保するために,C社に留
90 保する。
91
92 (留保所有権の移転)
93
94
95 A社は,登録名義のいかんを問わず,C社に留保されている本件車両の所有権が,Z社
96 がC社に本件残代金を立替払することによってZ社に移転し,A社が本件立替払金等債務
97 を完済するまでZ社に留保されることを承諾する。
98
99 (本件車両による弁済)
100
101
102 A社が本件立替払金等債務の支払を1回でも怠ったときは当然に期限の利益を失い,
103 その場合,同社は,Z社に対する弁済のため,直ちに本件車両の保管場所を明らかにし,
104 本件車両をZ社に引き渡す。
105
106
107
108 Z社は,本件車両の引渡しを受けた場合には,その評価額をもって,本件立替払金等
109 債務の弁済に充当することができる。
110
111 Xが更に調査をした結果,Z社が,平成25年10月15日,上記契約に基づき,C社に対
112 し,本件残代金336万円を立替払していること,A社が,本件立替払金等債務について,平
113 成26年11月末日分の支払を怠っていることが判明した。Z社は,Xに対して,本件車両の
114 引渡しを求める法的根拠として上記契約の4の条項を摘示した上,A社が,本件立替払金等
115 債務について,同年11月末日分の支払を怠ったため,当然に期限の利益を失ったと主張して
116 いる。
117 以上の調査結果を踏まえ,Xとして,Z社からの本件車両の引渡請求に対していかなる主張
118 をすることが考えられるか,またその主張が認められるかどうかについて,予想されるZ社の
119 反論を踏まえて,論じなさい。
120 (参照条文)道路運送車両法
121 第5条
122
123 登録を受けた自動車の所有権の得喪は,登録を受けなければ,第三者に対抗することができ
124
125 ない。
126
127
128 (略)
129
130 - 3 -
131
132 〔第2問〕(配点:50)
133 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
134 【事
135
136 例】
137 食品製造会社であるA株式会社(以下「A社」という。)は,平成26年2月頃,販売する製
138
139 品に虫の死がいが入っていたことが発見されたことから,生産を一時停止し,販売した製品を回
140 収しなければならない事態となり,同年3月末の借入債務の返済及び仕入代金の支払のために発
141 行した約束手形の決済等ができない見通しとなった。そこで,A社は,同月25日に再生手続開
142 始の申立てをしたところ,同日,監督命令を受け,同年4月2日,再生手続開始の決定を受けた。
143 〔設
144
145 問〕
146
147 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
148
149 1.A社は,再生手続開始の決定時において,現に稼働している工場及びその敷地(以下,まと
150 めて「工場不動産」という。)並びに使用していない旧工場の跡地(以下「本件土地」という。)
151 を所有していた。なお,工場不動産の評価額は3000万円,本件土地の評価額は5000万
152 円であり,本問を通じて,各評価額については争いがないものとする。
153 A社は,B銀行からの2億円の借入債務を被担保債権として,同銀行のために,工場不動産
154 及び本件土地に第1順位の抵当権(共同抵当)を設定し,その登記をするとともに,金融業者
155 C社からの1000万円の借入債務を被担保債権として,同社のために,本件土地に第2順位
156 の抵当権を設定し,その登記をした。そして,これらの抵当権は再生手続開始の決定時におい
157 て存続していた。
158 A社の事業計画においては,本件土地は処分する一方,工場不動産は確保して事業を継続す
159 ることとされており,本件土地の売却代金及び事業収益を再生債権の弁済等(別除権協定に基
160 づく債務の弁済を含む。)に充てることが予定されていた。A社は,その計画の実現のため,
161 B銀行との間で別除権協定を締結し,次のとおり合意した。
162
163
164 A社は,B銀行に対し,本件土地及び工場不動産の評価額の合計に相当する8000万
165 円を次のとおり分割して支払う。
166
167
168
169 @
170
171 再生計画認可決定の確定後1か月以内に500万円
172
173 A
174
175 同確定後6か月以内に5000万円
176
177 B
178
179 同確定後1年以内に500万円
180
181 C
182
183 同確定後2年以内に500万円
184
185 D
186
187 同確定後3年以内に500万円
188
189 E
190
191 同確定後4年以内に500万円
192
193 F
194
195 同確定後5年以内に500万円
196 1の各支払をA社が遅滞しない限り,B銀行は,本件土地及び工場不動産に設定された
197
198 抵当権を実行しない。
199
200
201 A社が1の各支払を遅滞なく完了したときは,B銀行は,本件土地及び工場不動産に設
202 定された抵当権を全て抹消する。ただし,1の各支払の完了前であっても,1@及びAの
203 支払が遅滞なく完了したときは,B銀行は,本件土地について設定された抵当権を抹消す
204 る。
205 なお,A社は,本件土地の売却代金を上記1Aの5000万円の支払に充てることを予定し
206
207 ており,上記別除権協定の締結に先立ち,監督委員の同意を得て,D社との間で,本件土地に
208 設定された各抵当権の抹消を条件に本件土地を5000万円で売買する契約を結んでいた。こ
209 のため,A社及びB銀行は,上記3ただし書の規定を設け,上記1@及びAの支払が遅滞なく
210 完了した場合には,本件土地について設定された抵当権を抹消することとしたものである。
211
212 - 4 -
213
214 一方,A社は,C社に対しては,本件土地の価値に余剰がないことを考慮し,少額の支払と
215 引換えに抵当権を抹消することを要請したが,C社はこれに応じなかった。そのため,A社の
216 再生計画は平成26年10月に認可されたにもかかわらず,C社の抵当権に関しては,抹消に
217 関する合意が成立していなかった。
218 A社は,C社の抵当権を抹消することができないとすれば,B銀行との別除権協定に基づく
219 債務を履行することができないために工場不動産について抵当権が実行され,その結果,再生
220 計画の履行ができなくなるのではないかと考え,本件土地について担保権消滅の許可の申立て
221 をすることとした。なお,担保権消滅の許可の申立てが認められた場合に必要となる資金につ
222 いては,D社から融資を受け,売買代金と相殺する予定であった。
223 この場合,A社による担保権消滅の許可の申立てが認められるかどうかについて,論じなさ
224 い。
225 2.A社の再生計画案は可決され,平成26年10月31日に再生計画認可の決定がなされ,そ
226 の認可決定は,同年11月28日に確定した。A社の再生計画の権利変更の定めは,確定再生
227 債権の10パーセントを5回に均等分割し,これを平成27年から平成31年まで各年3月末
228 日限り支払い,その余は再生計画認可の決定の確定時に免除を受けるという内容のものであっ
229 た。
230 同認可の決定の確定後,E及びFは,A社に対し,以下のとおり,A社に対する債権の弁済
231 を求めた。
232 Eは,平成20年創業の個人事業者であり,同年からA社に食品原料の納入を行っており(継
233 続的に納入する義務を負っていたわけではないものとする。),A社の再生手続開始の決定当
234 時,A社に対し,2か月分(平成26年2月分及び同年3月分。ただし,同月20日までに納
235 入済みであった。)の未払売掛金債権100万円(同年2月分として60万円,同年3月分と
236 して40万円)を有していた。A社及びEは,同年2月のA社製品への虫混入事件の発覚以降,
237 A社の要請に基づき,債務の繰延べに関する協議を行っており,A社が再生手続開始の申立て
238 をした時点では,合意内容はほぼ固まりつつあった。ところが,A社が同申立てをしたことか
239 ら,協議は中断され,再生手続の開始に伴い,Eに対して,A社の再生手続開始の決定に関す
240 る通知がされた。Eは,同年2月分の売掛金債権については,再生手続において,債権届出を
241 行ったが,同年3月分の売掛金債権(以下「本件売掛金債権」という。)については,もとも
242 との弁済期が再生手続開始決定後の同年4月15日であったため,再生手続の対象にならない
243 と考え,届出をしなかった。A社も,食品原料の仕入先をEから他の事業者に切り替えていた
244 こともあり,本件売掛金債権については失念し,認否書に記載しなかった。そのため,Eの本
245 件売掛金債権は,再生債権者表に記載されず,また再生計画においても変更されるべき権利と
246 して明示されなかった。その後,Eは,平成27年1月,A社に対し,本件売掛金債権40万
247 円の支払を求めた。
248 Fは消費者であり,A社製造の食品をインターネット経由で継続的に購入していたところ,
249 平成26年3月初旬,原因不明の発しんが出て病院で治療を受けた。その後,同年12月,A
250 社が製造した食品を摂取した消費者に発しん等の健康被害が複数発生しているとの報道がさ
251 れ,検査の結果,Fに生じた発しんもA社の食品を摂取したことが原因であることが判明した。
252 そこで,Fは,A社に対し,発しんの治療費等を含む損害の賠償として100万円の支払を求
253 めたが,A社は,Fの主張する損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)は,
254 再生債権者表に記載されず,また再生計画においても変更されるべき権利として明示されてい
255 ないために,Fの求めには応じられないと回答してきた。このため,Fは,平成27年1月,
256 A社に対し,本件損害賠償請求権に基づき,100万円の支払を求めた。
257 上記事例において,Eの有する本件売掛金債権及びFの有する本件損害賠償請求権が民事再
258 生法上どのように取り扱われるかについて,論じなさい。
259
260 - 5 -
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263
264 論文式試験問題集[租
265
266 - 7 -
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270 法]
271
272 [租
273
274
275
276 法]
277
278 〔第1問〕(配点:40)
279 弁護士であるAは,平成20年4月1日,いわゆる企業内弁護士として,B株式会社(以下「B
280 社」という。)に採用され,同日からB社の法務部長として勤務していた。採用時の契約において
281 は,勤務期間は平成25年3月31日までの5年間とされ,この間,B社所定の給与規程に基づく
282 給与の支払を受けるほか,5年間の勤務期間終了時には,退職金として1000万円の支払を受け
283 るという約定であった。
284 その後,Aは,平成25年4月1日から法律事務所を開設して個人で弁護士業務を営むことを計
285 画し,同年1月以降,その準備を進めていたが,折から,B社においてはC株式会社(以下「C社」
286 という。)との経営統合に向けた検討作業を開始することになったため,B社の社長は,Aに対し,
287 同年4月以降も引き続き法務部長として勤務してほしい旨強く求めた。AとB社の話合いの結果,
288 Aは,当初の契約において5年間の勤務期間終了時に支払うとされた1000万円(以下「本件約
289 定金」という。)の支払を受けた上で,B社との間で,同月1日から平成26年3月31日までの
290 1年間,B社の法務部長として勤務し,この間,B社所定の給与規程に基づく給与額の1.2倍に
291 当たる給与の支払を受け,1年間の勤務期間終了時には退職金の支払は受けないという内容の契約
292 を新たに締結し,B社の法務部長としての勤務を継続した。
293 ところで,B社には,各事業年度において功績の特に顕著であった従業員に対し,300万円を
294 上限として報奨金を支払うという報奨金制度がある。Aは,平成26年3月31日,B社を退職し
295 たが,その際,B社とC社の経営統合に関し,法務分野での功績が特に顕著であったとして,上記
296 報奨金制度に基づき,200万円(以下「本件報奨金」という。)の支払を受けた。
297 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。
298 〔設
299
300 問〕
301 Aが支払を受けた本件約定金及び本件報奨金は,所得税法上,いかなる所得に分類されるか,
302
303 関係する最高裁判例に言及した上,自説を述べなさい。
304
305 - 8 -
306
307 〔第2問〕(配点:60)
308 Aは,コンピュータのソフトウェアの開発を目的とするX株式会社(以下「X社」という。)に
309 勤務した後,独立してY株式会社(以下「Y社」という。)を設立し,その代表取締役に就任し,
310 毎月定額の報酬を受けていた。
311 Y社は,主にX社の下請会社として,同社が受注したソフトウェアの開発に関連する作業につい
312 て委託を受け,報酬を受け取っていた。Y社は,Bらを雇用し,毎月給料を支払っていた。
313 Y社にはC法律事務所の弁護士Cという顧問弁護士がおり,Y社は,Cから法律的な助言を定期
314 的に受けていた。具体的には,元請であるX社との契約条件の内容や契約書の内容さらには資金調
315 達の方法やY社の従業員の雇用問題などについて,AがCの事務所を訪問するなどして相談してい
316 た。なお,顧問契約により,Y社は,Cに対して毎月定額の顧問料を支払うことになっていた。
317 X社(事業年度は暦年としていた。)は,平成26年10月1日,甲株式会社(以下「甲社」と
318 いう。)の業務について,ソフトウェアの開発を3000万円で請け負い,同日,これに着手した。
319 完成したソフトウェアの引渡しは平成28年2月を予定しており,報酬の支払は同年3月15日と
320 された。
321 X社は,開発に関連する業務のうち,甲社の業務の現状把握及びその改善並びにソフトウェアに
322 対する甲社の要望を確定する作業をY社に委託し,Y社はこれを受託した。
323 X社が甲社に提示した開発スケジュールでは,Y社が担当する作業は,開発着手後1か月をめど
324 に終了させることになっていた。Y社の作業が終了しなければ,その後のソフトウェアの仕様の確
325 定やソフトウェアの基本設計さらには開発作業やテスト作業を行うことはできない。Y社の作業が
326 遅延すれば,開発全体が遅延することになるため,Y社は,X社からスケジュールどおりに作業を
327 終了させるように厳命を受けていた。
328 Aは,上記の作業をスケジュールどおりに終了させるためには,A及びY社の従業員Bらだけで
329 は人手が足りないと判断し,Dに対して作業の一部を委託することにした。DはAとともにX社に
330 勤務していたが,その後独立し事務所を賃借して,「ワークスD」という名称でX社を始めとする
331 大手の開発業者の下請や孫請として業務委託を受けて収入を得ていた。Y社とDとの間には「業務
332 委託契約書」(特に「兼業禁止」の条項はない。)が作成され,そこでは,Y社の作業が終了した時
333 点で「業務委託契約書」に定める金額を,Dに対して支払うことになっていた。
334 Y社が委託を受けた作業の進行スケジュールはAが定め,その進捗状況も厳しく管理し,Bらや
335 Dの作業が遅れると厳しく指導するなどしていた。
336 A,Bら及びDは,Y社が委託を受けた作業を行うために,X社の従業員とともに,何度も甲社
337 の事務所を訪れ,甲社の代表取締役,担当部長,エンドユーザーとなる甲社の従業員などから意見
338 を集め,甲社内の意見の調整にも奮闘した。甲社の意見聴取に際して,BらはY社所有のノートパ
339 ソコンを利用していたが,Dは自分のタブレットパソコンを利用していた。
340 また,A,Bら及びDは,Y社内の会議室で連日打合せを行い,共同して甲社に対する説明資料
341 などを作成したり,甲社がソフトウェアに対して要求する仕様の内容を取りまとめる書面を作成し
342 たりするなどの作業を行った。その際は,BらもDもY社のデスクトップパソコンを利用していた。
343 Dは,Y社までは自分の自動車で移動していたが,Y社から甲社まではY社の自動車に同乗して
344 移動していた。
345 Aの進行管理が良かったため,Y社は,X社の定めたスケジュールどおりに作業を終了すること
346 ができた。
347 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。
348 〔設問1〕
349 Y社は,A,Bら及びCに対して毎月金員を支払う際に,所得税を源泉徴収する必要があるか。
350 源泉徴収制度について概要を述べた上で,それぞれについてY社との間の法律関係に留意しつつ
351
352 - 9 -
353
354 検討しなさい。
355 〔設問2〕
356 Y社は,Dに対して金員を支払う際に,給与所得に係る所得税を源泉徴収する必要があるか。
357 Y社との間の法律関係に留意しつつ検討しなさい。
358 〔設問3〕
359 甲社から請け負ったソフトウェアの開発に係るX社の収益について,その帰属事業年度を判断
360 する場合において,判断基準としてどのような考え方があるか。その内容について,条文上の根
361 拠を摘示しつつ説明しなさい。
362 (参照条文)法人税法施行令
363 (工事の請負)
364 第129条
365
366 法第64条第1項(工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)に規定する政令で
367
368 定める大規模な工事は,その請負の対価の額(その支払が外国通貨で行われるべきこととされてい
369 る工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。以下この目において同じ。)については,その工事
370 に係る契約の時における外国為替の売買相場による円換算額とする。)が10億円以上の工事とす
371 る。
372 2〜11
373
374 (略)
375
376 - 10 -
377
378 論文式試験問題集[経
379
380 - 11 -
381
382
383
384 法]
385
386 [経
387
388
389
390 法]
391
392 〔第1問〕(配点:50)
393 内装建材甲(以下「甲」という。)は,日本家屋の建築に欠かすことのできない内装建材で,日
394 本の建材メーカーのみが製造販売しており,現在輸入はなく,近い将来輸入される見込みもない。
395 現在のところ,甲に代替する内装建材は存在しない。甲は,その製造販売業者から建材専門商社に
396 販売され,建材専門商社から住宅メーカーに販売される。甲は,比較的軽く,その輸送は容易であ
397 る。甲の製造販売業者,甲を購入する建材専門商社及び住宅メーカーは,いずれも全国にその拠点
398 を有している。甲の製造販売業者は,21社存在している。
399 X社を除く甲の製造販売業者20社(以下「20社」という。)の担当営業部長は,20年前か
400 ら,
401 「甲の会」を組織し,一般的な経済状況や景気動向,内装建材業界を取り巻く社会・経済環境,
402 甲の安全基準などについて情報交換を行い,20社各社の事業運営に役立てている。「甲の会」の
403 規則上の最高意思決定機関は総会であるが,実際には,会長1名及び副会長2名によって構成され
404 る幹部会において「甲の会」の方針等が決定されることが多く,20社の担当営業部長がこの幹部
405 会による決定に異を唱えたことはない。X社は,甲の製造販売業者として比較的古参であり,高い
406 知名度を維持する有力な事業者であるが,自社の営業担当者を「甲の会」に入会させず,20社と
407 は一線を画する事業運営を行ってきている。なお,「甲の会」では,甲の価格,製造数量,販売数
408 量,取引先などに関する情報交換は行っておらず,20社の間では比較的活発な価格競争が行われ
409 ている。
410 近年,一般消費者の健康への意識が著しく高まっており,「甲の会」においても,甲の安全性へ
411 の信用や評判が大きな関心事となっている。別の内装建材丙については,それに含まれる化学物質
412 の種類や量に関する法令上の基準は遵守されていたが,昨年,一般消費者に皮膚障害をもたらすお
413 それのある化学物質が含まれていたということが大きく報道され,内装建材丙の需要が大幅に減退
414 したことがあった。また,甲についても,近年,科学的根拠は不十分であるものの,一般消費者に
415 皮膚障害をもたらすおそれのある化学物質が含まれているのではないかという疑問を公にする消費
416 者団体が現れている。このため,「甲の会」では,甲に含まれる化学物質の種類や量について,法
417 令上の基準を遵守するだけでは不十分であり,法令上の基準を超える厳しい安全基準を設ける必要
418 があるとの意見が大勢を占めるに至った。そこで,「甲の会」の幹部会は,甲に含まれる化学物質
419 に関する新たな安全基準を設定することの是非を含めた検討を,甲に含まれる化学物質について専
420 門的な知見があり,かつ,20社各社と利害関係のない大学の研究者3人に依頼することを決定し,
421 これに基づいて,会長が同研究者らに依頼した。その結果,甲に含まれる化学物質に関する新たな
422 安全基準が提言されたことから,「甲の会」の幹部会は,その提言どおりの安全基準を「甲の会」
423 の自主基準として設定することを決定し,これに基づいて,会長が,20社の担当営業部長に伝達
424 した。20社は,
425 「甲の会」の自主基準であるこの新たな安全基準を採用し,これを遵守するに至っ
426 ている。
427 しかし,X社は,「甲の会」が採用した安全基準に従っていない。「甲の会」の会長は,甲の古参
428 の製造販売業者であるX社が「甲の会」の安全基準を遵守しないことにより,内装建材甲全体の信
429 用や評判に悪影響が及ぶのではないかと恐れ,再三にわたり,X社に対して,「甲の会」の安全基
430 準を遵守するよう説得を試みた。ところが,X社の経営者は,安全を軽視する発言に終始し,説得
431 に応じなかった。そのため,「甲の会」の幹部会は,甲を取り扱う全ての建材専門商社に対して,
432 X社から甲を購入しないよう要請することを決定し,これに基づいて,会長が,それら建材専門商
433 社の担当者が一堂に会した会合において,その旨要請した。それら建材専門商社の担当者は,協議
434 の上,この要請に応じることを申し合わせた。その後,それら建材専門商社のほとんどは,X社か
435 らの甲の購入を中止するに至った。このため,X社は,甲を販売する取引先を容易に見つけ出すこ
436 とができなくなっている。
437 - 12 -
438
439 〔設
440
441 問〕
442 「甲の会」の会長が行った上記要請について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
443
444 律(以下「独占禁止法」という。)上の問題点を分析して検討しなさい。
445
446 - 13 -
447
448 〔第2問〕(配点:50)
449 A社は,電子部品甲(以下「甲」という。)のメーカーである。甲は,電子機器丙(完成品。以
450 下「丙」という。)に搭載され,他に用途はない。甲のメーカーは,甲を製造して丙のメーカーに
451 販売している。丙のメーカーは,甲を搭載した丙を製造して世界各国の販売代理店に販売し,販売
452 代理店がそれを消費者に販売している。
453 世界中の多くの国の消費者が丙を使用している。しかし,丙の規格が国によって異なるため,消
454 費者は一般に丙を自国で購入し,他国で丙を購入することはほとんどない。甲には,このような国
455 ごとの規格の違いはない。
456 甲のメーカーは,過去には世界に10社以上存在していたが,買収や撤退などにより,平成21
457 年末までにA社からH社までの8社に集約された。このうちA社,B社,C社は日本の企業,D社,
458 F社は日本以外のアジアの企業,E社はヨーロッパの企業,G社,H社は米国の企業であった。そ
459 の後,平成23年中にA社はB社を買収し,C社はD社を買収した。平成25年中にはE社がF社
460 を買収した。その結果,平成25年末時点で,世界における甲のメーカーは5社となった。
461 これら甲のメーカーの平成22年,平成24年及び平成26年の各暦年における市場シェアの推
462 移は,以下のとおりであった。
463 平成22年
464
465 平成24年
466
467 平成26年
468
469 A社(日本)
470
471 20%
472
473 25%
474
475 25%
476
477 B社(日本)
478
479 10%
480
481
482
483
484
485 C社(日本)
486
487 15%
488
489 20%
490
491 15%
492
493 D社(アジア)
494
495 5%
496
497
498
499
500
501 E社(ヨーロッパ)
502
503 5%
504
505 15%
506
507 15%
508
509 F社(アジア)
510
511 15%
512
513 5%
514
515
516
517 G社(米国)
518
519 10%
520
521 25%
522
523 30%
524
525 H社(米国)
526 合計
527
528 20%
529
530 10%
531
532 15%
533
534 100%
535
536 100%
537
538 100%
539
540 平成24年及び平成26年のA社の数値はB社を買収した後のもの,平成24年及び平成26年
541 のC社の数値はD社を買収した後のもの,平成26年のE社の数値はF社を買収した後のものであ
542 る。日本における市場シェアの分布を見ると,日本の甲のメーカーの市場シェアが多少高くなる傾
543 向はあるものの,上記のような世界における市場シェアの分布と有意な差異は見いだせない。
544 丙のメーカーは,平成26年末時点で,世界に15社存在し,日本,米国,アジア,ヨーロッパ
545 に偏りなく分布している。丙のメーカーの数や所在地は,平成22年以降ほぼ変動がない。
546 消費者は,丙の機能の高速化や大容量化を強く求めており,それを実現するためには,甲の機能
547 が高速化,大容量化することが重要である。甲のメーカーは,それぞれ,甲の機能の高速化や大容
548 量化のために既存の技術を発展させることのみならず,革新的な新技術の開発も行っている。それ
549 ゆえ,甲に関する技術が進歩するスピードは速く,毎年1回以上,前のモデルより高速化,大容量
550 化した新しいモデルの甲が発売されている。同時に,丙のメーカーに対しては,各国の丙の販売代
551 理店及び消費者から厳しい価格引下げ要求があり,それはそのまま丙のメーカーからの甲のメー
552 カーに対する強い価格引下げ要求に反映されている。
553 丙のメーカーが,特に自国の甲のメーカーのみから甲を購入する傾向はない。むしろ,丙のメー
554 カーは,特定の甲のメーカーにおける製造設備の事故等により甲の十分な供給を受けられなくなる
555 ことによって自社の丙の製造が中断する危険を回避するとともに,甲のメーカー間で価格競争を行
556 わせることを目的として,国を問わず複数の甲のメーカーから甲を購入するのが通常である。しか
557 も,丙のメーカーは,取引する甲のメーカーを固定化せず,甲のメーカーの技術能力や取引条件に
558 - 14 -
559
560 応じて取引する甲のメーカーを常時変更し,あるいは複数のメーカーからの甲の購入割合を常時変
561 更している。
562 甲の販売価格に占める輸送費用の割合は数パーセント程度である。甲に関税を課す国は現時点で
563 は存在しない。また,甲の販売価格が,国によって大きく異なるという傾向はない。
564 世界における甲の需要は緩やかな増加基調にある。しかし,近年,甲とは科学的原理も技術も全
565 く異なるが甲と同じ機能を有する新たな部品乙(国ごとの規格の違いはない。以下「乙」という。)
566 が流通し始め,一部の丙のメーカーには,甲に代えて乙を自社の丙に搭載する動きがある。平成
567 26年末時点で,乙の機能は,甲と比較すると20パーセント程度高速である一方,その価格は,
568 甲より50パーセント程度高額である。これらの機能,価格の差異は技術の進歩を勘案しても当面
569 大きく変わらないと予想され,数年のうちに丙のメーカー間で乙が広く普及する見込みはない。ま
570 た,甲のメーカーは,既存の甲の製造設備を利用して乙を製造することはできない。
571 平成27年5月現在,A社は,甲に関する自社の技術と親和性,補完性が高い新技術を開発して
572 いるH社を買収し,甲の開発時間を大幅に短縮することを目的として,H社の株式の全部を取得す
573 ることを計画している。
574 〔設
575
576 問〕
577 上記の状況において,A社が計画するH社の株式取得に関する独占禁止法上の問題点を分析し
578
579 て検討しなさい。
580
581 - 15 -
582
583 - 16 -
584
585 論文式試験問題集[知的財産法]
586
587 - 17 -
588
589 [知的財産法]
590 〔第1問〕(配点:50)
591 甲は,平成20年3月に,化学物質の発明であるα発明をし,当該発明が市場性を有するかどう
592 かを確認するために,同年6月10日から1か月間に限り,その実施品を一般の顧客に対してその
593 構造を明らかにすることなく試験的に販売した。α発明は,構成要件A,構成要件B及び構成要件
594 c1からなるものであった。甲は,α発明をした後も継続して行っていた研究開発により,構成要
595 件A,構成要件B及び構成要件Cからなるβ発明をした。Cはc1の上位概念である。甲は,平成
596 21年2月5日に,β発明について特許出願(以下「甲出願」という。)を行った。甲出願につい
597 ては,平成23年8月15日に,特許権の設定登録がされた(以下,この特許権を「甲特許権」と
598 いう。)。
599 他方,乙は,甲とは別個独立にβ発明と同一の発明をしたが,Cの下位概念であるc2(c2は,
600 c1とは異なるものである。)を用いると顕著な効果を得られることを認識し,構成要件A,構成
601 要件B及び構成要件c2からなるγ発明について特許出願(以下「乙出願」という。)を行った。
602 乙出願の出願日は,偶然にも,甲出願の出願日と同日であった。乙出願については,平成23年8
603 月25日に,特許権の設定登録がされた。
604 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。
605 〔設
606
607 問〕
608
609 1.甲は,β発明の技術的範囲に属する製品を製造販売する丙に対して,その行為が甲特許権を
610 侵害する旨の警告を行った。丙は,甲特許権について調査したところ,α発明の実施品が試験
611 的に販売されていたこと及び乙が乙出願を行っていたことを知り,これらに基づき甲特許権が
612 無効理由を有すると考え,特許無効審判請求をした。甲特許権は無効となるか。仮に乙出願が
613 平成21年2月4日に行われたとした場合はどうか。
614 2.乙は,平成23年3月から,γ発明の実施品を製造販売している。
615
616
617 甲は,平成27年5月になって乙の行為を知り,乙に対して,その行為が甲特許権の侵害
618 であるとして差止請求訴訟を提起した。
619 同訴訟において,甲は,どのような主張をすべきか。これに対する乙の反論として,どの
620 ような主張が考えられるか。
621 双方の主張の妥当性についても論じなさい。
622
623
624
625 上記の差止請求が認められるとする。甲が乙に対して補償金請求も行ったならば,この
626 請求も認められるか。仮に,甲は,乙の行為を平成23年6月に知ったが,乙に対して何ら
627 の措置も講じなかったとした場合はどうか。
628 なお,及びについては,甲特許権は無効理由を有しないものとする。
629
630 3.甲は,β発明の技術的範囲に属する製品は製造販売していないが,これと同様の作用効果を
631 奏する製品を製造販売している。丁は,β発明の技術的範囲に属する製品(以下「丁製品」と
632 いう。)を製造販売している。甲は,丁に対して,特許法第102条第2項を用いて損害額を
633 算定してその賠償を請求することができるか。
634 なお,甲特許権は無効理由を有しないものとし,丁製品はγ発明の技術的範囲に属しないも
635 のとする。
636
637 - 18 -
638
639 〔第2問〕(配点:50)
640 映画製作会社Yは,「四季の渓谷と橋のある風景」という題名で,日本全国の渓谷に架かる橋を
641 定点撮影し四季を通じて変化する風景を背景として,その橋を利用する人々の暮らしを紹介するこ
642 とをテーマとしたドキュメンタリー映画(以下「本件ドキュメンタリー」という。)の製作を企画
643 し,その監督として,同ドキュメンタリーに使用する映像の撮影及びシナリオに即した映像の編集
644 を,フリーの映像作家Xに依頼したところ,Xは同ドキュメンタリーの製作に参加することを約束
645 した。そして,Xは,本件ドキュメンタリーに使用する映像を撮影するために,渓谷と橋を数箇所
646 選定し,それぞれ選定した渓谷と橋との関係が一番美しく撮れる撮影箇所と時間帯を決定し,さら
647 に,構図,カメラアングル,光量,絞りなどを決めて,1年以上かけて,渓谷と橋及びそれを利用
648 する人々を撮影し,撮影の完了した未編集の映像フィルム(以下「本件映像フィルム」という。)
649 をYに提供した。
650 本件映像フィルムの撮影に関しては,撮影機材の提供,撮影場所への旅費,宿泊費,その他必要
651 経費は全てYの負担において賄われ,また,Xは,撮影のため地方に出張する場合以外は,毎週2,3
652 回程度Yに出社して,報酬も月払いで支払われていた。
653 ところが,その後Yの映画製作方針が変わり,本件ドキュメンタリーの製作は中止になった。そ
654 のため,本件映像フィルムは,NGフィルム選別,シナリオに従った粗編集,細編集,音づけ等の
655 映画製作過程を経ない未編集の状態で公表されないまま,Yのフィルム保管庫に保管された。
656 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。
657 〔設
658
659 問〕
660
661 1.Yの社内では,多額の費用を掛けて撮影された本件映像フィルムを何とか利用して映画製作
662 にいかしたいとして検討した結果,ある風景写真家が風景写真を撮るために各地を点々と旅し,
663 その旅先で出会った人々と交流する様を描いた映画(以下「本件映画」という。)を製作する
664 ことになり,その際,主人公が訪れる各地の風景として本件映像フィルムを活用することとし,
665 Xに無断で,同フィルムに主人公である俳優などの映像を合成して本件映画に使用した。
666 なお,本件映画中の出演者,制作スタッフなどの名を示す字幕(クレジット・タイトル)に
667 は,Xへの感謝を込めて,「風景撮影
668
669 X」と表示されていた。
670
671 Xは,本件映画を上映しようとしているYに対し,その差止めを求める訴訟を提起した。
672 同訴訟において,Xは,どのような主張をすべきか。これに対するYの反論として,どのよ
673 うな主張が考えられるか。
674 双方の主張の妥当性についても論じなさい。
675 2.Xが本件ドキュメンタリーのために定点撮影したある場所において,渓谷と橋のそばに能舞
676 台のある寺があり,そこでは,毎年,著名な振付師であるZの振り付けによる独創的な新作の
677 薪(たきぎ)能が行われていたところ,本件映像フィルムには,たまたまその能舞台で行われ
678 ていたZの振り付けによる新作の薪能(以下「本件能」という。)が,時間にして約3分間,
679 それを演じる能役者の動作が辛うじて感得できる程度に映っていた(以下,この部分を「本件
680 能映像」という。)。ただし,本件能の振り付けは,Zがそれを演じる能役者に自ら指導したも
681 のであって,台本や踊り方を説明した書類はなく,また,振り付けの映像なども存在していな
682 かった。
683 本件能映像は,夜の渓谷と橋が薪の灯りに浮かび上がる中で能役者が能を舞うという幻想的
684 な描写になっていたため,Yは,Zに無断で,本件映画の1シーンに本件能映像を使用した。
685 Zは,本件映画を上映しようとしているYに対して,その差止めを求める訴訟を提起した。
686 同訴訟において,Zは,どのような主張をすべきか。これに対するYの反論として,どのよ
687 うな主張が考えられるか。
688 双方の主張の妥当性についても論じなさい。
689
690 - 19 -
691
692 - 20 -
693
694 論文式試験問題集[労
695
696 - 21 -
697
698
699
700 法]
701
702 [労
703
704
705
706 法]
707
708 〔第1問〕(配点:50)
709 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
710 なお,職業安定法に言及する必要はない。
711 【事
712
713 例】
714 Y1社は,主に製造業務の請負等を目的として,平成元年頃から,一般労働者派遣事業の許可
715
716 を取得して労働者派遣事業を展開しつつ,業務請負事業も行っていた。Y1社は,自動車製造を
717 業とするY2社とは平成18年頃から業務請負契約を締結して取引を行っていた。当該業務請負
718 契約の契約書によれば,契約期間は6か月とされ,Y1社がY2社から設備,事務所等を無償で
719 借り受け,Y1社の雇用する従業員をY2社A工場(以下「A工場」という。)の自動車組立て
720 ラインに派遣して組立て作業に従事させ,Y2社は月間生産台数に応じた額の報酬をY1社に毎
721 月支払うものとされていた。Y1社・Y2社間に資本関係や人的関係はない上,Y1社の取引先
722 はY2社に限られておらず,また,Y1社によるXを含む作業員(以下「Xら」という。)の採
723 用面接にY2社の社員が立ち会ったなどの事情は認められない。
724 Xらは,Y1社との間で雇用期間6か月,就労開始日を平成20年4月1日とする雇用契約を
725 締結し,雇用契約で指定されたA工場の就業場所において自動車組立て作業に従事すること,こ
726 れに対してY1社はXらにY1社就業規則に定めた給与を支給することとされていた。雇用期間
727 の始期と終期は,Y1社・Y2社間の業務請負期間のそれと一致していた。Xらは,自動車組立
728 てラインにおいて自動車部品をY2社作成のマニュアルに従って取り付ける作業を行い,同ライ
729 ンにおいてY2社の従業員と一緒に作業していた。A工場にはY1社の正社員が常駐していたが,
730 Xらは作業についてY2社の社員からも直接指示を受けていた。
731 Y1社及びY2社は,平成22年9月1日,A工場の所在する地域を管轄する労働局から,A
732 工場におけるXらの勤務実態は業務請負ではなく労働者派遣であり,労働者派遣事業の適正な運
733 営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)違反の事実が
734 あると認定され,業務請負契約を解消して新たに労働者派遣契約を締結するようにとの行政指導
735 を受けた。
736 これを受けて,Y1社及びY2社は業務請負契約の期間満了日である同年9月30日をもって
737 業務請負契約を終了し,同年10月1日から新たに6か月の契約期間を定めた労働者派遣契約を
738 締結した。それと同時に,Y1社はXらを派遣労働者とする雇用契約を締結した。新たな雇用契
739 約は,従前と同一の労働条件で同一の就業場所において同一の作業に従事することを内容とした
740 ものであった。Xらは,同年10月1日から就労を開始し,その後,同一内容の雇用契約を反復
741 更新した。
742 ところが,Y2社は,平成24年秋からY2社を取り巻く経営環境の悪化により生産規模の縮
743 小を余儀なくされ,平成24年12月10日に,Y1社との労働者派遣契約に定める規定に基づ
744 き,平成25年1月20日をもって労働者派遣契約を解約する旨Y1社に通知した。そこで,Y
745 1社は,A工場で作業を行うXらの雇用契約が同年3月31日をもって期間満了とされていたこ
746 とから,Xらに対し,別の就業場所を紹介してそこで作業を行うよう打診したところ,Xは,期
747 間満了後も引き続きA工場で同一の作業に従事することを希望し,同打診を断ったが,Xらのう
748 ちX以外の者は,いずれも同打診を受け入れた。Y1社は,Y2社が同年1月20日に労働者派
749 遣契約を解約したためXの就労する場所がない上,他の発注先からの契約打切りによりY1社の
750 財務状況が急速に悪化した事情もあり,30日間の予告期間を置いた上で,同年2月28日付け
751 でXを解雇した。
752
753 - 22 -
754
755 〔設
756
757 問〕
758
759 1.Xは,本件就労は労働者派遣法違反であるのでY1社との雇用契約は無効であり,Y2社と
760 の間に雇用契約が成立していたと主張し,Y2社との雇用関係上の地位の確認を請求して訴え
761 を提起した。予想されるY2社からの反論を踏まえつつ,法的な論点を指摘して,Xの請求の
762 当否を論じなさい。
763 2.Xは,Y1社に対して,平成25年2月28日の解雇が無効として,Y1社との間の雇用関
764 係上の地位の確認を請求して訴えを提起した。この請求の当否を論じなさい。
765 3.仮に,前記【事例】において,Y1社が,Xを解雇せず,平成25年3月31日をもって期
766 間満了によりXとの雇用契約が終了したものと扱い,これに対してXがY1社との間の雇用関
767 係上の地位の確認を請求して訴えを提起した場合におけるその請求の当否を論じなさい。
768
769 - 23 -
770
771 〔第2問〕(配点:50)
772 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
773 【事
774
775 例】
776 Y社は,クッキー,チョコレート,アメ等多品種の菓子を製造・販売する株式会社であり,多
777
778 くのパートタイマーを活用することで人件費を抑制し,多大な利益を上げてきた。Y社は,正社
779 員300名のほか,パートタイマー850名を雇用しており,大阪市の本社のほかに全国各地に
780 計8か所の営業所及び計3か所の工場を有していた。Y社には,正社員とパートタイマーの双方
781 が加盟する労働組合(以下「労組」という。)があり,Y社との間に,労使協議や団体交渉等の
782 ルールについて規定した期間の定めのない労働協約を締結していた。労組には,全正社員の8割
783 に当たる非管理職の正社員全員,パートタイマーの2割が加入しており,本社及び全ての営業所・
784 工場に分会を有していた。
785 Y社では,平成20年のいわゆるリーマンショックによる売上げの激減により,経営状況が目
786 に見えて悪化し,賃金も全く増額できなくなったほか,いくつかの菓子製造ラインが閉鎖される
787 など事業の縮小が目立つようになり,転職のために辞めていく従業員も次第に増えていった。
788 Zは,労組の委員長であったが,この様子を見て危機感を覚え,他の執行部のメンバーと相談
789 し,会社との間に,雇用の維持を認めさせる新たな協約を締結することを目指して,平成26年
790 5月にY社の社長甲らと内密の懇談の場を数回持った。Zは,自分が委員長に選出された選挙の
791 折,甲が自分を推薦して「我が社の労組にはZが委員長としてふさわしい。」との発言を繰り返
792 していたこと,自分が委員長に選出されてからも親しい交流を続けていたことなどから,甲が自
793 分の要請を理解してくれるものと期待していた。
794 上記の懇談の場において甲は,「5%の基本給カットをのんでくれるなら,少なくとも正社員
795 については雇用は維持できるよう会社としても最大限の努力をする。」とZに伝えた。賃金カッ
796 トをのめば組合員の雇用の維持を保障する協約を結べると判断したZら執行部は,組合規約に定
797 められた「協約締結権限」を早急に取得する必要があると考え,執行部内で対応を協議したとこ
798 ろ,組合規約には,「協約締結権限を執行部が得るためには組合大会を開催し,全組合員の過半
799 数の賛成を得る必要がある。」と規定されていた。しかし,全組合員の招集をはかるには時間と
800 手数がかかりすぎると判断した執行部は,「重要事項に該当しない問題については各分会におけ
801 る単純多数決の結果を集約し,組合全体として賛成が多数であれば執行部に協約締結権限が付与
802 されたものとする。」という組合規約の規定に着目し,かつ,実際には労働協約の締結権限につ
803 いても,ここ10年内に5回締結された労働協約は全てこの方式で締結権限が認められてきた事
804 実を確認した上で,今回もこの方式により,全分会における単純多数決の結果を集約したところ,
805 全組合員の過半数がZら執行部の方針を了承したことを確認した。
806 その後,平成26年7月10日付けで労組とY社との間に労働協約が締結され,予定どおり5
807 %の基本給カットが規定されたが,同カットは平成27年4月から行うこととされ,また,「平
808 成26年冬の賞与を前年より5%アップすることで緩和措置とする。」との規定も設けられてい
809 た。さらに,「会社は可能な限り雇用の維持に努め,人員整理の必要性が生じた場合は組合と協
810 議の上,対応を決定するものとする。」との規定もあった。
811 菓子を製造するA工場の分会に所属する組合員であるXは協約内容を見て,不満を抱き,Zに
812 「組合大会も開催せずに,5%の基本給カットをのんだことは許し難い。」と問い詰めたところ,
813 Zは,「確かに組合大会は開催していないが,従来の慣行に従って分会における単純多数決の結
814 果を集約しているので問題はない。」と回答した。
815 そこで,Xは,5%の基本給カットの実施に不安や疑問を抱いていた他の5名の組合員と相談
816 し,Zら執行部の了承を得ずに独断で「刷新派」と称するグループを結成した。これに対し,甲
817 はXを呼んで,「労組を混乱させてはいけない。刷新派などと称するグループは解散しなさい。」
818 と強く命じたが,Xは「お断りします。」と答えた。その後,刷新派は,自分たちの主張を広め
819
820 - 24 -
821
822 るため,「賃金カットは許さない」,「会社は5%の基本給カットを撤回せよ」などと記載した縦
823 10センチメートル,横2センチメートルのリボンを左胸部に着装して始業時刻から30分間業
824 務に従事し,30分後には当該リボンを取り外すという行動に出た。リボンを着装した組合員は,
825 Xを含め全員がA工場の菓子製造のラインで働いていた。
826 Y社はこれに対し,Zら執行部にXらの行動が労組の指導によるものでないことを確認した上
827 で,リボンの着装をやめるようXらに業務命令を発したが,Xらがこれに従わなかったため,就
828 業規則第12条に基づき,リボンを着装して業務に従事した組合員全員を戒告の懲戒処分に処し
829 た。
830 〔設
831
832 問〕
833
834 1.Xが,平成27年4月以降の賃金につき,5%カットされた基本給分の差額を請求して訴訟
835 を提起した場合,この請求は認められるか。想定される論点を検討した上で結論を示しなさい。
836 2.Xらは,戒告の懲戒処分は不当であると考えている。Xらがこの懲戒処分につき救済を求め
837 るには,どのような機関にどのような救済を求めることが考えられるか。想定される論点を検
838 討した上で結論を示しなさい。
839 【Y社就業規則(抜粋)】
840 (懲戒)
841 第12条
842
843 従業員が次のいずれかに該当するときは,情状に応じ,けん責,戒告又は減給とする。
844
845 @
846
847 業務中に許可なく職場を離れ,又は,業務と関係のない行為を行ったとき。
848
849 A
850
851 業務命令に反したとき。
852
853 (以下略)
854
855 - 25 -
856
857 - 26 -
858
859 論文式試験問題集[環
860
861 - 27 -
862
863
864
865 法]
866
867 [環
868
869
870
871 法]
872
873 〔第1問〕(配点:50)
874 総合建設業者であるA社は,同社が元請け施工する全てのマンション建設現場から排出される産
875 業廃棄物(特別管理産業廃棄物ではない。)の収集運搬及び中間処理を,廃棄物の処理及び清掃に
876 関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づいて,B県知事からそれぞれに係る産業廃棄
877 物処理業の許可を受けたC社に委託していた。
878 この場合において,【資料】を参照しつつ,以下の設問に答えよ。なお,設問はいずれも,独立
879 したものである。
880 〔設問1〕
881 A社は,産業廃棄物の排出に当たって,C社に対して,紙の産業廃棄物管理票(以下「マニフ
882 ェスト」という。)を適切に交付し,写しの送付を確認していた。ところが,交付したマニフェ
883 ストについて,収集運搬に係る写しは適切に送付されてきていたものの,2005年5月頃から,
884 中間処理に係る写しは,C社からの適時の送付が滞り始め,2008年からは,半年分が一度に
885 送られてくるようになった。しかし,A社は,これまで特段の問題は発生していなかったことか
886 ら,それについて何の対応もせず放置していた。
887 そうしたところ,C社が当該マニフェストに係る産業廃棄物を不法投棄していることが明らか
888 になった。C社は,利潤追求に走る余り,A社以外からも,その処理能力を超える産業廃棄物の
889 処理を受託しており,処理施設に運搬した後,処理しきれない産業廃棄物を,A社と取引があっ
890 たDが所有する土地(以下「本件土地」という。)に投棄していたのであった。
891 C社は,Dからは資材置場として用いるという名目で本件土地を賃借していた。Dは,一度本
892 件土地に行った際に,産業廃棄物らしいものが投棄されていると気付いてはいたが,賃料収入が
893 あることから,C社の行為を黙認していた。
894 本件土地の隣には,農民Eの畑があり,農作物を栽培している。不法投棄量が増えるにつれて,
895 不法投棄された産業廃棄物に起因する異臭のする液体が,Eの畑に流入するようになった。
896 2010年5月になって,農作物への影響を心配するEが当該液体を採取して調査会社に持ち込
897 んだところ,0.1mg/lの鉛(なお,土壌の汚染に係る環境基準値は,0.01mg/l以
898 下である。)が検出された。驚いたEは,同年6月,B県知事に通報した。この事実を確認した
899 B県知事は,四囲の状況から判断して,原因は本件土地に不法投棄された産業廃棄物であると考
900 えている。
901 この場合において,B県知事は,廃棄物処理法上,どのような法的措置を講ずることができる
902 かを説明せよ。なお,C社に対する法的措置については考えなくてよい。
903 〔設問2〕
904 A社は,産業廃棄物の処理の委託先を,C社から,C社と同様の許可を受けたF社に変更した。
905 ほどなく,A社の経営が,極度に悪化してきた。そこで,A社は,F社に対して,委託料金の大
906 幅な値引きを求めるようになった。その額は,B県内での同種処理の平均的料金の40%であっ
907 た。
908 最初は難色を示していたF社であったが,同社も業績が悪化していたし,処理委託される産業
909 廃棄物の量が多いためにそれなりの利益は得られると考え,結局はA社の要求を受け入れた。そ
910 して,新たな契約に基づき,2012年5月頃から,以前の料金の40%の価格で処理を受託し
911 ていた。このような料金では,適正処理は無理なことが程なく判明したが,値上げ交渉は困難と
912 考え,契約条件を変えないままでいた。
913 A社のマンション工事現場からは,産業廃棄物が排出され続けている。収集運搬後の処理に困っ
914
915 - 28 -
916
917 たF社は,2013年5月頃から,中間処理はしたという虚偽のマニフェストの写しをA社に送
918 付する一方で,B県内の山林に産業廃棄物を不法投棄するようになった。2015年1月になっ
919 て,F社は事実上倒産したため,A社の委託は停止された。
920 不法投棄されたA社の産業廃棄物は,相当の高さに積み上がっている。この不法投棄地のすぐ
921 そばには,かねてより地元住民が日常的に散策を楽しんでいた遊歩道がある。堆積された産業廃
922 棄物の一部が,遊歩道上に少しずつ崩落している状態にある。
923 この場合において,B県知事は,廃棄物処理法上,どのような法的措置を講ずることができる
924 か。この措置が設けられた趣旨を踏まえつつ論ぜよ。
925 【資
926
927
928 料】
929 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年9月23日厚生省令第35号)
930 (抜粋)
931
932 (管理票の写しの送付を受けるまでの期間)
933 第8条の28
934
935 法第12条の3第8項の環境省令で定める期間は,次の各号に掲げる区分に応じ,そ
936
937 れぞれ当該各号に定めるものとする。
938
939
940 法第12条の3第3項前段又は第4項前段の規定による管理票の写しの送付
941
942 管理票の交付
943
944 の日から90日(特別管理産業廃棄物に係る管理票にあつては,60日)
945
946
947 法第12条の3第5項又は第12条の5第5項の規定による最終処分が終了した旨が記載さ
948
949 れた管理票の写しの送付
950
951
952 管理票の交付の日から180日
953
954 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長「行政処分の指針について(通知)」
955 (平
956 成25年3月29日環廃産発第1303299号)(抜粋)
957
958
959 排出事業者等が当該産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき,当該処理が行
960 われることを知り,又は知ることができたときその他法第12条第7項,第12条の2第7項及
961 び第15条の4の3第3項の規定の趣旨に照らし排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせる
962 ことが適当であるとき(同条第1項第2号)
963 @
964
965 「適正な対価を負担していないとき」とは,不適正処理された産業廃棄物(中間処理後の産
966 業廃棄物にあっては事業活動に伴って生じた段階からのすべての産業廃棄物)を一般的に行わ
967 れている方法で処理するために必要とされる処理料金からみて著しく低廉な料金で委託するこ
968 と(実質的に著しく低廉な処理費用を負担している場合を含む。)をいうものであること。
969 「適正な対価」であるか否かを判断するに当たっては,まずは都道府県において,可能な範
970 囲内でその地域における当該産業廃棄物の一般的な処理料金の範囲を客観的に把握すること。
971 そして,その処理料金の半値程度又はそれを下回るような料金で処理委託を行っている排出事
972 業者については,当該料金に合理性があることを排出事業者において示すことができない限り
973 は,「適正な対価を負担していないとき」に該当するものと解して差し支えないこと。なお,
974 当該処理料金の半値程度よりも高額の料金で処理委託をした場合においても,これに該当する
975 場合があることは言うまでもないことから,排出事業者が一般的な料金よりも安い価格で委託
976 しても適正処理がなされると判断した理由について,随時報告徴収を実施するなどして把握す
977 るように努めること。
978
979 - 29 -
980
981 〔第2問〕(配点:50)
982 A社は,B県内の土地(以下「本件土地」という。)を所有している。本件土地では長らくC社
983 が化学工場(有害物質使用特定施設が設置されている。)を操業していたが,A社は本件土地をC
984 社から2013年に購入した。その後,A社は同工場を自ら操業することなく閉鎖した。ところが,
985 A社が同工場を解体して本件土地を更地にした際に土壌汚染対策法第3条第1項に基づく調査をし
986 たところ,砒素による汚染が発見された。調査を受託した会社によれば,砒素による汚染の程度は,
987 土壌汚染対策法第6条第1項第1号の環境省令で定める基準を超えていた。この汚染はC社の化学
988 工場の操業によって発生したものと考えられる。C社は汚染のおそれを認識していたため,A社の
989 本件土地の購入価格はその市場価格よりも著しく安かった。本件土地の西隣にはD井戸があり,住
990 民E及びFが飲用に供してきた。A社から本件土地の汚染について報告を受けたB県知事が2014
991 年にD井戸を調査したところ,水質汚濁に係る環境基準の1000倍の砒素が検出された。
992 この場合において,以下の設問に答えよ。
993 〔設問1〕
994 B県知事は,誰に対してどのような法的措置を講ずることができるか。
995 〔設問2〕
996 D井戸から西に100メートルのところにG井戸がある。本文において,B県は2010年の
997 時点で,法定の水質汚濁状況の監視作業を通じて,G井戸から水質環境基準の100倍の砒素が
998 検出された事実を把握していたとする。しかし,B県はこれを自然由来の局所的汚染であると即
999 断し,近くにD井戸が存在している事実を把握していたにもかかわらず,更なる原因究明のため
1000 の調査も付近の井戸の調査も行わず,また,周辺住民への周知もしなかった。本文における
1001 2014年のD井戸の調査結果を踏まえ,更にB県知事が調査した結果,2015年になって,
1002 D井戸にもG井戸にも本件土地からの汚染が広がっていたことが判明した。EはD井戸の水を長
1003 年飲んだことによって末梢神経に異常をきたしており,また,そのことを知ったFは自分もいつ
1004 発症するかと考え不安な日々を送っている。この場合において,E及びFは,誰に対してどのよ
1005 うな請求ができるか。なお,時効については考えなくてよい。
1006
1007 - 30 -
1008
1009 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1010
1011 - 31 -
1012
1013 [国際関係法(公法系)]
1014 〔第1問〕(配点:50)
1015 X国,Y国及びZ国は国際連合(以下「国連」という。)加盟国で,Y国は国連安全保障理事会
1016 (以下「国連安保理」という。)の常任理事国である。X国,Y国及びZ国は,いずれも「民間航
1017 空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」(以下「モントリオール条約」という。)の当事
1018 国であり,いずれもモントリオール条約批准時に同条約第1条に定義する行為を国内刑法上の犯罪
1019 とし,当該犯罪行為に重い刑罰を科すとともに,同条約第5条1及び2に定める場合に,上記犯罪
1020 行為に自国の裁判権を設定するための必要な国内法改正を行っていた。また,Z国は同国の国内法
1021 で,上記犯罪が国外で自国の国民に対して行われた場合も自国の裁判権を行使することを定めてい
1022 たが,X国及びY国の国内法はこのような裁判権の設定をしていない。
1023 Y国法人が運航するY国登録の民間航空機が,Y国からZ国に向けて飛行中に公海上空で爆破さ
1024 れ,Y国籍の乗員乗客150名とZ国籍の乗客10名が死亡した。4年後,同事件の実行犯がX国
1025 籍の甲であり,甲がX国領域内に所在することを突き止めたY国及びZ国の各警察当局は,当該犯
1026 罪行為がモントリオール条約第1条1(b)に定める業務中の航空機を破壊する行為に当たるとし
1027 て,それぞれ,同行為を犯罪化した自国の刑法を適用して甲の逮捕状の発付を受けた。X国とY国
1028 の間及びX国とZ国の間には犯罪人引渡条約は締結されていなかったが,Y国とZ国はそれぞれX
1029 国に対して甲の仮拘禁を要請し,それに続いて甲の引渡しを請求した。X国の逃亡犯罪人引渡法は,
1030 犯罪人引渡条約の存在を引渡しの条件としていないが,同法は自国民の引渡しを禁止している。X
1031 国の警察当局は,自国の法令に基づき甲を仮拘禁した後,事実についての予備調査を行う一方,甲
1032 が自国民であるので,甲のY国及びZ国への引渡しについては拒否した。しかし,X国の警察当局
1033 は,その後3年を経ても,同国における財政事情により十分な捜査人員を確保できていないとして,
1034 甲に関する事件を,訴追のために検察当局へ付託しなかった。
1035 そこで,Y国は,政府内で,「国連安保理に『安全保障理事会は,X国による甲の引渡し及び訴
1036 追の拒否が国際の平和と安全に対する脅威を構成すると決定し,国連憲章第7章の下に行動して,
1037 X国に対して甲をY国に引き渡すよう決定する』という決議案を提出し,その決定を受けて甲の身
1038 柄を確保すべきである」という強い意見もあったものの,最終的には,モントリオール条約第14
1039 条1に従い,X国を相手として本事件を国際司法裁判所(以下「ICJ」という。)に提訴するこ
1040 とを決定した。そして,Y国は,ICJに「@X国は甲が本件犯罪行為の容疑者であることを認識
1041 しながら甲のY国への引渡しを拒否し,その後3年を経ても,X国の財政事情を口実にして,甲を
1042 訴追するために,権限のあるX国当局に当該事件を付託することを怠っていることにより,モント
1043 リオール条約第7条に継続的に違反していること,Aしたがって,甲を直ちにY国に引き渡すこと
1044 によって国際違法行為を停止する義務があること」を宣言するように請求した。
1045 Z国も,モントリオール条約第14条1に従い,X国を相手として,X国による同条約第7条の
1046 継続的違反行為の停止を請求する訴えをICJに提起した。この訴えにおいて,Z国は自国の原告
1047 適格につき,「被害者の国籍に関係なく,Z国がモントリオール条約の当事国であることに基づい
1048 て,X国による継続的違反行為の停止を請求する原告適格を有する」と主張した。
1049 以上を踏まえて,下記の設問に答えなさい。
1050 〔設
1051
1052 問〕
1053
1054 1.ICJに対するY国の請求に対して,ICJはどのような判決を出し得るかを論じなさい。
1055 管轄権の問題は論じなくてよい。
1056 2.Y国政府内で強い意見があったとされている国連安保理決議案を,Y国が実際に国連安保理
1057 に提出し,同案が国連安保理決定として採択されたとする。これに対し,X国が「X国とY国
1058 の間にはモントリオール条約が締結されているから,甲のY国への引渡しについては,X国は
1059
1060 - 32 -
1061
1062 同条約の規定に従って対応する権利を有している」と主張した場合に,Y国はどのような反論
1063 ができるかを論じなさい。
1064 3.原告適格に関するZ国の主張を国際法に照らして評価しなさい。
1065 【参考資料】モントリオール条約
1066 この条約の締約国は,
1067 民間航空の安全に対する不法な行為が人及び財産の安全を害し,航空業務の運営に深刻な影響を及
1068 ぼし,また,民間航空の安全に対する世界の諸国民の信頼を損なうものであることを考慮し,
1069 そのような行為の発生が重大な関心事であることを考慮し,
1070 そのような行為を抑止する目的をもつて犯人の処罰のための適当な措置を緊急に講ずる必要がある
1071 ことを考慮して,
1072 次のとおり協定した。
1073 第1条
1074
1075
1076
1077 不法かつ故意に行う次の行為は,犯罪とする。
1078
1079 (a)
1080
1081 (略)
1082
1083 (b)
1084
1085 業務中の航空機を破壊し,又は業務中の航空機に対しその飛行を不能にする損害若しくは
1086 飛行中のその安全を損なうおそれがある損害を与える行為
1087
1088 (c)〜(e)
1089
1090
1091 (略)
1092
1093 (略)
1094
1095 第5条
1096
1097
1098
1099 いずれの締約国も,次の場合には,犯罪行為につき自国の裁判権を設定するために必要
1100
1101 な措置をとる。
1102 (a)
1103
1104 犯罪行為が当該締約国の領域内において行われた場合
1105
1106 (b)
1107
1108 犯罪行為が当該締約国において登録された航空機に対し又はその機内で行われた場合
1109
1110 (c)
1111
1112 機内で犯罪行為の行われた航空機が容疑者を乗せたまま当該締約国の領域内に着陸する場
1113
1114
1115 (d)
1116
1117 犯罪行為が,当該締約国内に主たる営業所を有する賃借人若しくは主たる営業所を有しな
1118 いが当該締約国内に住所を有する賃借人に対して乗組員なしに賃貸された航空機に対し又は
1119 その機内で行われた場合
1120
1121
1122
1123 容疑者が領域内に所在する締約国は,1(a),(b),(c)又は(d)の場合に該当する他のい
1124 ずれの締約国に対しても第8条の規定に従つてその容疑者を引き渡さない場合に第1条1(a)か
1125 ら(c)までに定める犯罪行為及びこれらの犯罪行為に係る同条2に定める犯罪行為につき自国の
1126 裁判権を設定するため,必要な措置をとる。
1127
1128
1129
1130 この条約は,国内法に従つて行使される刑事裁判権を排除するものではない。
1131
1132 第6条
1133
1134
1135
1136 犯人又は容疑者が領域内に所在する締約国は,状況によつて正当であると認める場合に
1137
1138 は,その者の所在を確実にするため抑留その他の措置をとる。この措置は,当該締約国の法令に定
1139 めるところによるものとするが,刑事訴訟手続又は犯罪人引渡手続を開始するために必要とする期
1140 間に限つて継続することができる。
1141
1142
1143 1の措置をとつた締約国は,事実について直ちに予備調査を行う。
1144
1145
1146
1147 1の規定に基づいて抑留された者は,その国籍国の最寄りの適当な代表と直ちに連絡をとるため
1148 の援助を与えられる。
1149
1150
1151
1152 いずれの国も,この条の規定に基づいていずれかの者を抑留する場合には,前条1(a),
1153 (b),
1154 (c)又は(d)の場合に該当する国,抑留された者の国籍国及び適当と認めるときはその他の利
1155 害関係国に対し,その者が抑留されている事実及びその抑留が正当とされる事情を直ちに通告する。
1156 2の予備調査を行つた国は,その結果をこれらの国に対して直ちに報告するものとし,かつ,自国
1157 が裁判権を行使する意図を有するかどうかを明示する。
1158
1159 第7条
1160
1161 容疑者が領域内で発見された締約国は,その容疑者を引き渡さない場合には,当該犯罪行為
1162
1163 - 33 -
1164
1165 が自国の領域内で行われたものであるかどうかを問わず,いかなる例外もなしに,訴追のため自国
1166 の権限ある当局に事件を付託する義務を負う。その当局は,自国の法令に規定する通常の重大な犯
1167 罪の場合と同様の方法で決定を行う。
1168 第8条
1169
1170
1171 1,2
1172
1173 (略)
1174
1175 条約の存在を犯罪人引渡しの条件としない締約国は,犯罪人引渡しの請求を受けた国の法令に定
1176 める条件に従い,相互間で,犯罪行為を引渡犯罪と認める。
1177
1178
1179
1180 各犯罪行為は,締約国間の犯罪人引渡しに関しては,当該犯罪行為が行われた場所のみでなく,
1181 第5条1(b),(c)又は(d)の規定に従つて裁判権を設定すべき国の領域内においても行われ
1182 たものとみなす。
1183
1184 第14条
1185
1186
1187
1188 この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によつて解決することができ
1189
1190 ないものは,それらの締約国のうちいずれか一国の要請によつて仲裁に付託される。紛争当事国が
1191 仲裁の要請の日から六箇月以内に仲裁の組織について合意に達しない場合には,それらの紛争当事
1192 国のうちいずれの一国も,国際司法裁判所規程に従つて国際司法裁判所に紛争を付託することがで
1193 きる。
1194 2,3
1195
1196 (略)
1197
1198 - 34 -
1199
1200 〔第2問〕(配点:50)
1201 X国はY国に隣接する小国であり,Y国は,海洋に面した経済大国である。Y国に所在するY国法人
1202 である会社甲社及び乙社は,Y国内の大規模な工場で石油からガソリンを精製し販売している。X国に
1203 はガソリンを精製する会社がなく,ガソリンを甲社及び乙社からの輸入に全面的に依存している。とこ
1204 ろが,甲社及び乙社は,談合の上,ガソリンの供給量を減少させた。この結果,X国及びY国における
1205 ガソリンの価格は2倍になった。そこで,Y国の公正取引委員会は,甲社及び乙社の上記行為がY国の
1206 独占禁止法に違反する行為に当たるとして,甲社及び乙社に対して,制裁金を科すための審査手続を開
1207 始した。他方,X国の公正取引委員会も,甲社及び乙社の行為がX国の独占禁止法に違反するとして,
1208 Y国に所在する甲社及び乙社に対し,制裁金を科すための審査を開始すると決定した。Y国は,X国に
1209 よる同国の独占禁止法の適用は国際法違反であると主張した。それにもかかわらず,X国の公正取引委
1210 員会の担当官は,Y国に所在する甲社及び乙社に赴き,本件談合に係る可能性のある資料を提出するよ
1211 うに命じる書面を手交した。X国の独占禁止法では,提出命令を拒否した場合には,制裁金が科される
1212 こととなっている。
1213 ところで,この事件の5年後に,甲社は,石油を用いてプラスチック製品を作る工場を,X国との国
1214 境付近のY国領域内に建設することを計画した。Y国政府は,工場からの排水に含まれ得る有害物質に
1215 ついて,Y国の国内法に定める環境基準に照らし,十分な対策がとられていることを事前に確認の上,
1216 その建設及び稼働を許可した。そこで,甲社は計画に従って工場を完成させた上,同環境基準に従った
1217 操業を行っていた。しかし,ある時,同工場で作業員によって同環境基準に違反する操業が行われた。
1218 このため,同工場から出された汚染排水が地下水を通じてX国に流入し,X国民に対し,重い健康被害
1219 を広範囲にもたらした。そこで,X国政府は,
1220 「X国民に被害が出た以上は,Y国は,発生した損害に
1221 ついて,Y国政府として責任を負わなければならない」と主張した。その後,Y国政府は,甲社の上記
1222 工場からの排水について検査を行い,同国国内法に定める環境基準の遵守を徹底するように甲社に命令
1223 した。これを受けて甲社は,直ちに同工場に当該環境基準の徹底遵守を指示するとともに,同工場に新
1224 しい排水浄化装置を設置した。甲社は,新設した排水浄化装置は最先端の設備であり,現在の科学的知
1225 見に従えば,排出される有害物質の量は微小で,その人体への影響は完全に無視できるほど小さいと主
1226 張している。これに対しX国は,甲社の主張に対抗する有力な科学的見解があり,同見解に従えば依然
1227 として健康被害が引き起こされる可能性は十分にあると主張している。X国は,Y国を相手取り,甲社
1228 の上記工場の操業停止を求めて国際司法裁判所に提訴し,同時に,甲社の同工場の操業を直ちに差し止
1229 めるようにY国に命じる暫定措置を要請した。X国とY国は,共に国際司法裁判所規程の当事国であり,
1230 選択条項受諾宣言をしている。
1231 以上を踏まえて,下記の設問に答えなさい。
1232 〔設 問〕
1233 1.甲社及び乙社が談合の上ガソリンの供給量を減少させ価格を引き上げた行為に対してX国の独占
1234 禁止法を適用することは国際法違反であるというY国の主張に対して,X国はどのような反論をな
1235 し得るか論じなさい。
1236 また,X国の公正取引委員会の担当官が談合に係る可能性のある資料を提出するように命じる書
1237 面をY国において手交した行為に対して,Y国は,執行管轄権の観点からどのような主張ができる
1238 か論じなさい。
1239 2.X国政府の「X国民に被害が出た以上は,Y国は,発生した損害について,Y国政府として責任
1240 を負わなければならない」という主張に対して,Y国は,国際法上,どのような反論をなし得るか
1241 を論じなさい。X国政府のこの主張以降にY国政府のとった措置は考慮しなくてよい。
1242 3.国際司法裁判所において,X国は,暫定措置を要請するに当たり,甲社の工場の操業を差し止め
1243 る必要性を,どのような根拠で主張し得るかについて論じなさい。
1244
1245 - 35 -
1246
1247 - 36 -
1248
1249 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1250
1251 - 37 -
1252
1253 [国際関係法(私法系)]
1254 〔第1問〕(配点:50)
1255 共に甲国人であった男Xと女Yは,1995年に甲国において甲国法に従い婚姻した。Xは,婚
1256 姻の直後に甲国に所在するA建物の所有権を取得した。その後,2000年にXとYはともに来日
1257 し,飲食業を営みながら日本で婚姻生活を営んでいた。その事業は順調に発展し,Xは,来日後約
1258 10年を経過した2010年に日本に所在するB土地の所有権を取得し,2012年には日本に所
1259 在するC土地の所有権も取得した。なお,XとYは,C土地の所有権取得の前年である2011年
1260 に日本に帰化し,双方とも,日本の国籍だけを有するに至った。
1261 2015年にXが死亡し,Yが相続すべきXの財産の範囲を日本の裁判所は確定しなければなら
1262 ない。XとYの婚姻は有効に成立しており,甲国法は次の規定を有しているものとして,以下の設
1263 問に答えなさい。
1264 【甲国国際私法】
1265 @
1266
1267 夫婦財産制は,夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により,その法がない場合におい
1268 て夫婦の本国法が同一であるときはその法による。
1269
1270 【甲国民法】
1271 A
1272
1273 夫婦の一方が婚姻中に取得した財産は,夫婦の共有に属する財産とする。
1274
1275 B
1276
1277 Aの規定にかかわらず,夫婦は,婚姻前又は婚姻中いつでも,その財産について書面により夫
1278 婦財産契約を締結できる。
1279
1280 〔設
1281
1282 問〕
1283
1284 1.XとYは,婚姻前からXの死亡までの全期間を通じて,その財産関係につきいかなる合意も
1285 していなかったとする。次の物に関する夫婦財産制には,いずれの国の法が適用されるか。
1286
1287
1288 A建物
1289
1290
1291
1292 B土地
1293
1294
1295
1296 C土地
1297
1298 2.XとYは,婚姻後,来日する前に,「A建物の所有権はXの特有財産とする」旨の夫婦財産
1299 契約を甲国において書面により締結していたとすると,XとYとの間において,A建物の所有
1300 権はXの特有財産となり得るか。
1301 3.XとYは,来日直後に,双方の署名と日付のある書面により,「婚姻中に取得される財産に
1302 ついて,夫婦の財産関係は甲国法による」旨の合意をしていたとする。XとYとの間における
1303 この合意の効力について,次の問いに答えなさい。
1304
1305
1306 この合意により,C土地の所有権に関するXとYの財産関係には,いずれの国の法が適用
1307 されるか。
1308
1309
1310
1311 この合意に,「ただし,日本に所在する土地については日本法による」との合意が付加さ
1312
1313 れていたとすると,B土地の所有権に関するXとYの財産関係には,いずれの国の法が適用
1314 されるか。
1315
1316 - 38 -
1317
1318 〔第2問〕(配点:50)
1319 Xは,日本に主たる営業所を有する日本法人であり,Yは,甲国に主たる営業所を有する甲国法
1320 人である。XとYは,それぞれの国において,化粧品を製造・販売している。
1321 〔設
1322
1323 問〕
1324
1325 1.Yは,日本の市場に初めて進出するに際し,自社製品と近い商品を扱っているXが日本の顧
1326 客から注文をとる代理人として適切であると考え,Xとの間で次の趣旨の合意を含む委任契約
1327 を締結した。すなわち,「Xは,日本における顧客との間で,Yの名前と計算により売買契約
1328 を締結する」,
1329 「Yは,その商品を顧客に直接送付し,その代金のうちから手数料をXに支払う」
1330 というものである。XとYは委任契約の準拠法として甲国法を選択したものとして,次の問い
1331 に答えなさい。
1332
1333
1334 XとYとの間において,Xが代理権を有するか否かは,いずれの国の法で判断すべきか。
1335
1336 日本における顧客である小売業者Tとの間でXがした売買契約の効力がYに及ぶか否かは,
1337 いずれの国の法で判断すべきか。
1338 2.その後,日本の市場において自社製品が知られるようになったために,Yは,自社製品を日
1339 本において大量に販売すべく,Xとの間で次の趣旨の基本契約を締結した。すなわち,
1340 「Yは,
1341 Xに対して,Xの名前と計算によりYの製品を日本において販売する権利を許諾する」,
1342 「Yは,
1343 10年の期間,日本においてはXのみを販売店とし,X以外の者を販売店とはしない」,
1344 「Xは,
1345 この基本契約に基づいて締結される個別の売買契約に従い,Yから商品を購入する」というも
1346 のである。しかし,数年後,Xの販売実績に不満を持ったYは,日本に主たる営業所を有する
1347 日本法人Wを日本における販売店に加えた。国際物品売買契約に関する国際連合条約の適用は
1348 ないものとして,次の問いに答えなさい。
1349
1350
1351 Xは,Wを販売店に加えることはXに日本における独占的販売権を認めた基本契約上の債
1352 務の不履行に該当するとして,Yに対して損害の賠償を求め,日本の裁判所に訴えを提起し
1353 た。
1354 ア.XとYとの間に国際裁判管轄につき合意がなかった場合において,日本の裁判所の国際
1355 裁判管轄権を基礎付ける事由を1つだけ挙げなさい。なお,Yは,日本に営業所や財産を
1356 一切有していないものとする。
1357 イ.XとYとの間に,「本契約から発生する全ての紛争は,甲国裁判所が国際裁判管轄権を
1358 有する」との書面による合意があったとする。日本の裁判所は国際裁判管轄権を有し得る
1359 か。
1360
1361
1362
1363 Xは,Yが日本におけるXの独占的販売権を侵害したとして,Yに対して不法行為に基づ
1364 く損害賠償を求めている。XとYが基本契約の準拠法として甲国法を選択していた場合に,
1365 この不法行為に基づく損害賠償請求には,いずれの国の法が適用されるか。
1366
1367 - 39 -
1368
1369