1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 【事
21
22 例】
23 A株式会社(以下「A社」という。
24
25 )は,
26 平成8年に設立された機械部品の製造販売を業とす
27
28 る会社であり,
29 近隣の工場に製造した工作機械の部品等を卸していた。
30
31
32 A社は,
33 平成26年初め頃からの急激な円安により原材料費が急騰したため,
34 同年8月頃から
35 急速に資金繰りを悪化させ,
36 同年11月末には支払不能に陥った。
37
38 そこで,
39 A社は,
40 同年12月
41 10日,
42 債権者及び売掛先に弁護士受任通知を発して支払を停止した上,
43 同月15日,
44 破産手続
45 開始の申立てをしたところ,
46 同月17日,
47 破産手続開始の決定がされ,
48 破産管財人Xが選任され
49 た。
50
51
52 〔設
53
54 問〕
55
56 以下の1及び2については,
57 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
58
59
60
61 1.上記事例において,
62 XがA社の売掛金台帳を調査したところ,
63 部品納入先であるBに対して,
64
65 平成26年10月1日から同年11月末日分までの納入分に係る合計216万円の売掛債権
66 (以下「本件売掛債権」という。
67
68 )が未収となっていることが判明した。
69
70 そこで,
71 Xは,
72 Bに
73 対し,
74 平成27年1月末日までに本件売掛債権216万円を支払うよう催告した。
75
76
77 上記催告を受けたBは,
78 Xに対し,
79 「本件売掛債権については,
80 平成26年12月12日,
81
82 同月11日付けの確定日付のある証書により,
83 A社からY社に譲渡された旨の債権譲渡通知を
84 受領したため,
85 同月15日,
86 Y社に対して全額を支払った。
87
88 」と説明した。
89
90
91 そこで,
92 Xが更に調査をしたところ,
93 A社とY社との間においては,
94 平成24年5月10日
95 にA社がY社から設備投資のため1000万円の融資を受けるに当たり,
96 A社のBに対する売
97 掛債権について,
98 同日,
99 次のとおりの債権譲渡契約が締結されていることが判明した。
100
101
102 (債権譲渡)
103 1
104
105 A社は,
106 A社がY社に対して負担する一切の債務を担保するため,
107 A社がBに対して現
108 に有する売掛債権及び将来取得する売掛債権をY社に包括的に譲り渡す。
109
110
111
112 (効力発生時期)
113 2
114
115 前項の譲渡の効力は,
116 A社が,
117 支払を停止したとき又は破産手続開始の申立てをしたと
118 きにその効力を生ずる。
119
120
121 また,
122 Y社は,
123 上記債権譲渡契約の締結に当たり,
124 将来の債権譲渡通知のために,
125 A社から
126
127 委任状等の必要書類をあらかじめ受領しており,
128 Bが平成26年12月12日に受領した債権
129 譲渡通知は,
130 A社が同月10日に支払を停止したため,
131 上記債権譲渡の効力が発生したとして,
132
133 Y社がA社を代理して行ったものであることも判明した。
134
135
136 この調査結果を踏まえ,
137 Xは,
138 Y社に対し,
139 否認権を行使することにより,
140 Y社がBから受
141 領した本件売掛債権に係る売掛金216万円の返還を求めて訴えを提起しようと考えている。
142
143
144 この場合に,
145 Xの否認権の行使を基礎付ける法律構成としてどのようなものが考えられるか,
146
147 またXの否認権の行使が認められるかどうかについて,
148 予想されるY社の反論を踏まえて,
149 論
150 じなさい。
151
152
153 2.A社は,
154 破産手続開始前,
155 製造した部品を納入するため,
156 トラック1台(以下「本件車両」
157 といい,
158 道路運送車両法第5条第1項の適用を受けるものとする。
159
160 )を使用しており,
161 破産手
162 続開始時において,
163 同車両はA社の占有下にあったが,
164 自動車登録ファイルに登録された所有
165 者は,
166 自動車販売会社であるC社であった。
167
168 そこで,
169 Xは,
170 C社に対し,
171 登録名義の変更を求
172
173 - 2 -
174
175 めたが,
176 逆に,
177 C社の系列信販会社であるZ社から,
178 本件車両を同社に引き渡すよう求められ
179 た。
180
181
182 そこで,
183 Xが調査をしたところ,
184 本件車両は,
185 平成25年10月10日にC社がA社に対し
186 代金400万円で売却したものであり,
187 その際,
188 C社に対して頭金64万円が支払われ,
189 残代
190 金である336万円(以下「本件残代金」という。
191
192 )の支払等については,
193 同日,
194 A社,
195 C社
196 及びZ社の三者間において,
197 次のとおりの契約が締結されている事実が判明した。
198
199
200 (本件残代金の支払等)
201 1
202
203 A社は,
204 Z社に対し,
205 本件残代金336万円を自己に代わってC社に立替払することを
206 委託し,
207 本件残代金に手数料である24万円を加算した360万円を平成25年10月か
208 ら平成27年9月までの各月末日限り24回に分割してZ社に支払う(以下,
209 このA社の
210 支払債務を「本件立替払金等債務」という。
211
212 )。
213
214
215
216 (所有権の留保)
217 2
218
219 本件車両の所有権は,
220 C社のA社に対する本件残代金債権を担保するために,
221 C社に留
222 保する。
223
224
225
226 (留保所有権の移転)
227 3
228
229 A社は,
230 登録名義のいかんを問わず,
231 C社に留保されている本件車両の所有権が,
232 Z社
233 がC社に本件残代金を立替払することによってZ社に移転し,
234 A社が本件立替払金等債務
235 を完済するまでZ社に留保されることを承諾する。
236
237
238
239 (本件車両による弁済)
240 4
241
242 A社が本件立替払金等債務の支払を1回でも怠ったときは当然に期限の利益を失い,
243
244 その場合,
245 同社は,
246 Z社に対する弁済のため,
247 直ちに本件車両の保管場所を明らかにし,
248
249 本件車両をZ社に引き渡す。
250
251
252
253
254
255 Z社は,
256 本件車両の引渡しを受けた場合には,
257 その評価額をもって,
258 本件立替払金等
259 債務の弁済に充当することができる。
260
261
262
263 Xが更に調査をした結果,
264 Z社が,
265 平成25年10月15日,
266 上記契約に基づき,
267 C社に対
268 し,
269 本件残代金336万円を立替払していること,
270 A社が,
271 本件立替払金等債務について,
272 平
273 成26年11月末日分の支払を怠っていることが判明した。
274
275 Z社は,
276 Xに対して,
277 本件車両の
278 引渡しを求める法的根拠として上記契約の4の条項を摘示した上,
279 A社が,
280 本件立替払金等
281 債務について,
282 同年11月末日分の支払を怠ったため,
283 当然に期限の利益を失ったと主張して
284 いる。
285
286
287 以上の調査結果を踏まえ,
288 Xとして,
289 Z社からの本件車両の引渡請求に対していかなる主張
290 をすることが考えられるか,
291 またその主張が認められるかどうかについて,
292 予想されるZ社の
293 反論を踏まえて,
294 論じなさい。
295
296
297 (参照条文)道路運送車両法
298 第5条
299
300 登録を受けた自動車の所有権の得喪は,
301 登録を受けなければ,
302 第三者に対抗することができ
303
304 ない。
305
306
307 2
308
309 (略)
310
311 - 3 -
312
313 〔第2問〕(配点:50)
314 次の事例について,
315 以下の設問に答えなさい。
316
317
318 【事
319
320 例】
321 食品製造会社であるA株式会社(以下「A社」という。
322
323 )は,
324 平成26年2月頃,
325 販売する製
326
327 品に虫の死がいが入っていたことが発見されたことから,
328 生産を一時停止し,
329 販売した製品を回
330 収しなければならない事態となり,
331 同年3月末の借入債務の返済及び仕入代金の支払のために発
332 行した約束手形の決済等ができない見通しとなった。
333
334 そこで,
335 A社は,
336 同月25日に再生手続開
337 始の申立てをしたところ,
338 同日,
339 監督命令を受け,
340 同年4月2日,
341 再生手続開始の決定を受けた。
342
343
344 〔設
345
346 問〕
347
348 以下の1及び2については,
349 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
350
351
352
353 1.A社は,
354 再生手続開始の決定時において,
355 現に稼働している工場及びその敷地(以下,
356 まと
357 めて「工場不動産」という。
358
359 )並びに使用していない旧工場の跡地(以下「本件土地」という。
360
361 )
362 を所有していた。
363
364 なお,
365 工場不動産の評価額は3000万円,
366 本件土地の評価額は5000万
367 円であり,
368 本問を通じて,
369 各評価額については争いがないものとする。
370
371
372 A社は,
373 B銀行からの2億円の借入債務を被担保債権として,
374 同銀行のために,
375 工場不動産
376 及び本件土地に第1順位の抵当権(共同抵当)を設定し,
377 その登記をするとともに,
378 金融業者
379 C社からの1000万円の借入債務を被担保債権として,
380 同社のために,
381 本件土地に第2順位
382 の抵当権を設定し,
383 その登記をした。
384
385 そして,
386 これらの抵当権は再生手続開始の決定時におい
387 て存続していた。
388
389
390 A社の事業計画においては,
391 本件土地は処分する一方,
392 工場不動産は確保して事業を継続す
393 ることとされており,
394 本件土地の売却代金及び事業収益を再生債権の弁済等(別除権協定に基
395 づく債務の弁済を含む。
396
397 )に充てることが予定されていた。
398
399 A社は,
400 その計画の実現のため,
401
402 B銀行との間で別除権協定を締結し,
403 次のとおり合意した。
404
405
406 1
407
408 A社は,
409 B銀行に対し,
410 本件土地及び工場不動産の評価額の合計に相当する8000万
411 円を次のとおり分割して支払う。
412
413
414
415 2
416
417 @
418
419 再生計画認可決定の確定後1か月以内に500万円
420
421 A
422
423 同確定後6か月以内に5000万円
424
425 B
426
427 同確定後1年以内に500万円
428
429 C
430
431 同確定後2年以内に500万円
432
433 D
434
435 同確定後3年以内に500万円
436
437 E
438
439 同確定後4年以内に500万円
440
441 F
442
443 同確定後5年以内に500万円
444 1の各支払をA社が遅滞しない限り,
445 B銀行は,
446 本件土地及び工場不動産に設定された
447
448 抵当権を実行しない。
449
450
451 3
452
453 A社が1の各支払を遅滞なく完了したときは,
454 B銀行は,
455 本件土地及び工場不動産に設
456 定された抵当権を全て抹消する。
457
458 ただし,
459 1の各支払の完了前であっても,
460 1@及びAの
461 支払が遅滞なく完了したときは,
462 B銀行は,
463 本件土地について設定された抵当権を抹消す
464 る。
465
466
467 なお,
468 A社は,
469 本件土地の売却代金を上記1Aの5000万円の支払に充てることを予定し
470
471 ており,
472 上記別除権協定の締結に先立ち,
473 監督委員の同意を得て,
474 D社との間で,
475 本件土地に
476 設定された各抵当権の抹消を条件に本件土地を5000万円で売買する契約を結んでいた。
477
478 こ
479 のため,
480 A社及びB銀行は,
481 上記3ただし書の規定を設け,
482 上記1@及びAの支払が遅滞なく
483 完了した場合には,
484 本件土地について設定された抵当権を抹消することとしたものである。
485
486
487
488 - 4 -
489
490 一方,
491 A社は,
492 C社に対しては,
493 本件土地の価値に余剰がないことを考慮し,
494 少額の支払と
495 引換えに抵当権を抹消することを要請したが,
496 C社はこれに応じなかった。
497
498 そのため,
499 A社の
500 再生計画は平成26年10月に認可されたにもかかわらず,
501 C社の抵当権に関しては,
502 抹消に
503 関する合意が成立していなかった。
504
505
506 A社は,
507 C社の抵当権を抹消することができないとすれば,
508 B銀行との別除権協定に基づく
509 債務を履行することができないために工場不動産について抵当権が実行され,
510 その結果,
511 再生
512 計画の履行ができなくなるのではないかと考え,
513 本件土地について担保権消滅の許可の申立て
514 をすることとした。
515
516 なお,
517 担保権消滅の許可の申立てが認められた場合に必要となる資金につ
518 いては,
519 D社から融資を受け,
520 売買代金と相殺する予定であった。
521
522
523 この場合,
524 A社による担保権消滅の許可の申立てが認められるかどうかについて,
525 論じなさ
526 い。
527
528
529 2.A社の再生計画案は可決され,
530 平成26年10月31日に再生計画認可の決定がなされ,
531 そ
532 の認可決定は,
533 同年11月28日に確定した。
534
535 A社の再生計画の権利変更の定めは,
536 確定再生
537 債権の10パーセントを5回に均等分割し,
538 これを平成27年から平成31年まで各年3月末
539 日限り支払い,
540 その余は再生計画認可の決定の確定時に免除を受けるという内容のものであっ
541 た。
542
543
544 同認可の決定の確定後,
545 E及びFは,
546 A社に対し,
547 以下のとおり,
548 A社に対する債権の弁済
549 を求めた。
550
551
552 Eは,
553 平成20年創業の個人事業者であり,
554 同年からA社に食品原料の納入を行っており(継
555 続的に納入する義務を負っていたわけではないものとする。
556
557 ),
558 A社の再生手続開始の決定当
559 時,
560 A社に対し,
561 2か月分(平成26年2月分及び同年3月分。
562
563 ただし,
564 同月20日までに納
565 入済みであった。
566
567 )の未払売掛金債権100万円(同年2月分として60万円,
568 同年3月分と
569 して40万円)を有していた。
570
571 A社及びEは,
572 同年2月のA社製品への虫混入事件の発覚以降,
573
574 A社の要請に基づき,
575 債務の繰延べに関する協議を行っており,
576 A社が再生手続開始の申立て
577 をした時点では,
578 合意内容はほぼ固まりつつあった。
579
580 ところが,
581 A社が同申立てをしたことか
582 ら,
583 協議は中断され,
584 再生手続の開始に伴い,
585 Eに対して,
586 A社の再生手続開始の決定に関す
587 る通知がされた。
588
589 Eは,
590 同年2月分の売掛金債権については,
591 再生手続において,
592 債権届出を
593 行ったが,
594 同年3月分の売掛金債権(以下「本件売掛金債権」という。
595
596 )については,
597 もとも
598 との弁済期が再生手続開始決定後の同年4月15日であったため,
599 再生手続の対象にならない
600 と考え,
601 届出をしなかった。
602
603 A社も,
604 食品原料の仕入先をEから他の事業者に切り替えていた
605 こともあり,
606 本件売掛金債権については失念し,
607 認否書に記載しなかった。
608
609 そのため,
610 Eの本
611 件売掛金債権は,
612 再生債権者表に記載されず,
613 また再生計画においても変更されるべき権利と
614 して明示されなかった。
615
616 その後,
617 Eは,
618 平成27年1月,
619 A社に対し,
620 本件売掛金債権40万
621 円の支払を求めた。
622
623
624 Fは消費者であり,
625 A社製造の食品をインターネット経由で継続的に購入していたところ,
626
627 平成26年3月初旬,
628 原因不明の発しんが出て病院で治療を受けた。
629
630 その後,
631 同年12月,
632 A
633 社が製造した食品を摂取した消費者に発しん等の健康被害が複数発生しているとの報道がさ
634 れ,
635 検査の結果,
636 Fに生じた発しんもA社の食品を摂取したことが原因であることが判明した。
637
638
639 そこで,
640 Fは,
641 A社に対し,
642 発しんの治療費等を含む損害の賠償として100万円の支払を求
643 めたが,
644 A社は,
645 Fの主張する損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。
646
647 )は,
648
649 再生債権者表に記載されず,
650 また再生計画においても変更されるべき権利として明示されてい
651 ないために,
652 Fの求めには応じられないと回答してきた。
653
654 このため,
655 Fは,
656 平成27年1月,
657
658 A社に対し,
659 本件損害賠償請求権に基づき,
660 100万円の支払を求めた。
661
662
663 上記事例において,
664 Eの有する本件売掛金債権及びFの有する本件損害賠償請求権が民事再
665 生法上どのように取り扱われるかについて,
666 論じなさい。
667
668
669
670 - 5 -
671
672 - 6 -
673
674 論文式試験問題集[租
675
676 - 7 -
677
678 税
679
680 法]
681
682 [租
683
684 税
685
686 法]
687
688 〔第1問〕(配点:40)
689 弁護士であるAは,
690 平成20年4月1日,
691 いわゆる企業内弁護士として,
692 B株式会社(以下「B
693 社」という。
694
695 )に採用され,
696 同日からB社の法務部長として勤務していた。
697
698 採用時の契約において
699 は,
700 勤務期間は平成25年3月31日までの5年間とされ,
701 この間,
702 B社所定の給与規程に基づく
703 給与の支払を受けるほか,
704 5年間の勤務期間終了時には,
705 退職金として1000万円の支払を受け
706 るという約定であった。
707
708
709 その後,
710 Aは,
711 平成25年4月1日から法律事務所を開設して個人で弁護士業務を営むことを計
712 画し,
713 同年1月以降,
714 その準備を進めていたが,
715 折から,
716 B社においてはC株式会社(以下「C社」
717 という。
718
719 )との経営統合に向けた検討作業を開始することになったため,
720 B社の社長は,
721 Aに対し,
722
723 同年4月以降も引き続き法務部長として勤務してほしい旨強く求めた。
724
725 AとB社の話合いの結果,
726
727 Aは,
728 当初の契約において5年間の勤務期間終了時に支払うとされた1000万円(以下「本件約
729 定金」という。
730
731 )の支払を受けた上で,
732 B社との間で,
733 同月1日から平成26年3月31日までの
734 1年間,
735 B社の法務部長として勤務し,
736 この間,
737 B社所定の給与規程に基づく給与額の1.2倍に
738 当たる給与の支払を受け,
739 1年間の勤務期間終了時には退職金の支払は受けないという内容の契約
740 を新たに締結し,
741 B社の法務部長としての勤務を継続した。
742
743
744 ところで,
745 B社には,
746 各事業年度において功績の特に顕著であった従業員に対し,
747 300万円を
748 上限として報奨金を支払うという報奨金制度がある。
749
750 Aは,
751 平成26年3月31日,
752 B社を退職し
753 たが,
754 その際,
755 B社とC社の経営統合に関し,
756 法務分野での功績が特に顕著であったとして,
757 上記
758 報奨金制度に基づき,
759 200万円(以下「本件報奨金」という。
760
761 )の支払を受けた。
762
763
764 以上の事案について,
765 以下の設問に答えなさい。
766
767
768 〔設
769
770 問〕
771 Aが支払を受けた本件約定金及び本件報奨金は,
772 所得税法上,
773 いかなる所得に分類されるか,
774
775
776 関係する最高裁判例に言及した上,
777 自説を述べなさい。
778
779
780
781 - 8 -
782
783 〔第2問〕(配点:60)
784 Aは,
785 コンピュータのソフトウェアの開発を目的とするX株式会社(以下「X社」という。
786
787 )に
788 勤務した後,
789 独立してY株式会社(以下「Y社」という。
790
791 )を設立し,
792 その代表取締役に就任し,
793
794 毎月定額の報酬を受けていた。
795
796
797 Y社は,
798 主にX社の下請会社として,
799 同社が受注したソフトウェアの開発に関連する作業につい
800 て委託を受け,
801 報酬を受け取っていた。
802
803 Y社は,
804 Bらを雇用し,
805 毎月給料を支払っていた。
806
807
808 Y社にはC法律事務所の弁護士Cという顧問弁護士がおり,
809 Y社は,
810 Cから法律的な助言を定期
811 的に受けていた。
812
813 具体的には,
814 元請であるX社との契約条件の内容や契約書の内容さらには資金調
815 達の方法やY社の従業員の雇用問題などについて,
816 AがCの事務所を訪問するなどして相談してい
817 た。
818
819 なお,
820 顧問契約により,
821 Y社は,
822 Cに対して毎月定額の顧問料を支払うことになっていた。
823
824
825 X社(事業年度は暦年としていた。
826
827 )は,
828 平成26年10月1日,
829 甲株式会社(以下「甲社」と
830 いう。
831
832 )の業務について,
833 ソフトウェアの開発を3000万円で請け負い,
834 同日,
835 これに着手した。
836
837
838 完成したソフトウェアの引渡しは平成28年2月を予定しており,
839 報酬の支払は同年3月15日と
840 された。
841
842
843 X社は,
844 開発に関連する業務のうち,
845 甲社の業務の現状把握及びその改善並びにソフトウェアに
846 対する甲社の要望を確定する作業をY社に委託し,
847 Y社はこれを受託した。
848
849
850 X社が甲社に提示した開発スケジュールでは,
851 Y社が担当する作業は,
852 開発着手後1か月をめど
853 に終了させることになっていた。
854
855 Y社の作業が終了しなければ,
856 その後のソフトウェアの仕様の確
857 定やソフトウェアの基本設計さらには開発作業やテスト作業を行うことはできない。
858
859 Y社の作業が
860 遅延すれば,
861 開発全体が遅延することになるため,
862 Y社は,
863 X社からスケジュールどおりに作業を
864 終了させるように厳命を受けていた。
865
866
867 Aは,
868 上記の作業をスケジュールどおりに終了させるためには,
869 A及びY社の従業員Bらだけで
870 は人手が足りないと判断し,
871 Dに対して作業の一部を委託することにした。
872
873 DはAとともにX社に
874 勤務していたが,
875 その後独立し事務所を賃借して,
876 「ワークスD」という名称でX社を始めとする
877 大手の開発業者の下請や孫請として業務委託を受けて収入を得ていた。
878
879 Y社とDとの間には「業務
880 委託契約書」(特に「兼業禁止」の条項はない。
881
882 )が作成され,
883 そこでは,
884 Y社の作業が終了した時
885 点で「業務委託契約書」に定める金額を,
886 Dに対して支払うことになっていた。
887
888
889 Y社が委託を受けた作業の進行スケジュールはAが定め,
890 その進捗状況も厳しく管理し,
891 Bらや
892 Dの作業が遅れると厳しく指導するなどしていた。
893
894
895 A,
896 Bら及びDは,
897 Y社が委託を受けた作業を行うために,
898 X社の従業員とともに,
899 何度も甲社
900 の事務所を訪れ,
901 甲社の代表取締役,
902 担当部長,
903 エンドユーザーとなる甲社の従業員などから意見
904 を集め,
905 甲社内の意見の調整にも奮闘した。
906
907 甲社の意見聴取に際して,
908 BらはY社所有のノートパ
909 ソコンを利用していたが,
910 Dは自分のタブレットパソコンを利用していた。
911
912
913 また,
914 A,
915 Bら及びDは,
916 Y社内の会議室で連日打合せを行い,
917 共同して甲社に対する説明資料
918 などを作成したり,
919 甲社がソフトウェアに対して要求する仕様の内容を取りまとめる書面を作成し
920 たりするなどの作業を行った。
921
922 その際は,
923 BらもDもY社のデスクトップパソコンを利用していた。
924
925
926 Dは,
927 Y社までは自分の自動車で移動していたが,
928 Y社から甲社まではY社の自動車に同乗して
929 移動していた。
930
931
932 Aの進行管理が良かったため,
933 Y社は,
934 X社の定めたスケジュールどおりに作業を終了すること
935 ができた。
936
937
938 以上の事案について,
939 以下の設問に答えなさい。
940
941
942 〔設問1〕
943 Y社は,
944 A,
945 Bら及びCに対して毎月金員を支払う際に,
946 所得税を源泉徴収する必要があるか。
947
948
949 源泉徴収制度について概要を述べた上で,
950 それぞれについてY社との間の法律関係に留意しつつ
951
952 - 9 -
953
954 検討しなさい。
955
956
957 〔設問2〕
958 Y社は,
959 Dに対して金員を支払う際に,
960 給与所得に係る所得税を源泉徴収する必要があるか。
961
962
963 Y社との間の法律関係に留意しつつ検討しなさい。
964
965
966 〔設問3〕
967 甲社から請け負ったソフトウェアの開発に係るX社の収益について,
968 その帰属事業年度を判断
969 する場合において,
970 判断基準としてどのような考え方があるか。
971
972 その内容について,
973 条文上の根
974 拠を摘示しつつ説明しなさい。
975
976
977 (参照条文)法人税法施行令
978 (工事の請負)
979 第129条
980
981 法第64条第1項(工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)に規定する政令で
982
983 定める大規模な工事は,
984 その請負の対価の額(その支払が外国通貨で行われるべきこととされてい
985 る工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。
986
987 以下この目において同じ。
988
989 )については,
990 その工事
991 に係る契約の時における外国為替の売買相場による円換算額とする。
992
993 )が10億円以上の工事とす
994 る。
995
996
997 2〜11
998
999 (略)
1000
1001 - 10 -
1002
1003 論文式試験問題集[経
1004
1005 - 11 -
1006
1007 済
1008
1009 法]
1010
1011 [経
1012
1013 済
1014
1015 法]
1016
1017 〔第1問〕(配点:50)
1018 内装建材甲(以下「甲」という。
1019
1020 )は,
1021 日本家屋の建築に欠かすことのできない内装建材で,
1022 日
1023 本の建材メーカーのみが製造販売しており,
1024 現在輸入はなく,
1025 近い将来輸入される見込みもない。
1026
1027
1028 現在のところ,
1029 甲に代替する内装建材は存在しない。
1030
1031 甲は,
1032 その製造販売業者から建材専門商社に
1033 販売され,
1034 建材専門商社から住宅メーカーに販売される。
1035
1036 甲は,
1037 比較的軽く,
1038 その輸送は容易であ
1039 る。
1040
1041 甲の製造販売業者,
1042 甲を購入する建材専門商社及び住宅メーカーは,
1043 いずれも全国にその拠点
1044 を有している。
1045
1046 甲の製造販売業者は,
1047 21社存在している。
1048
1049
1050 X社を除く甲の製造販売業者20社(以下「20社」という。
1051
1052 )の担当営業部長は,
1053 20年前か
1054 ら,
1055
1056 「甲の会」を組織し,
1057 一般的な経済状況や景気動向,
1058 内装建材業界を取り巻く社会・経済環境,
1059
1060 甲の安全基準などについて情報交換を行い,
1061 20社各社の事業運営に役立てている。
1062
1063 「甲の会」の
1064 規則上の最高意思決定機関は総会であるが,
1065 実際には,
1066 会長1名及び副会長2名によって構成され
1067 る幹部会において「甲の会」の方針等が決定されることが多く,
1068 20社の担当営業部長がこの幹部
1069 会による決定に異を唱えたことはない。
1070
1071 X社は,
1072 甲の製造販売業者として比較的古参であり,
1073 高い
1074 知名度を維持する有力な事業者であるが,
1075 自社の営業担当者を「甲の会」に入会させず,
1076 20社と
1077 は一線を画する事業運営を行ってきている。
1078
1079 なお,
1080 「甲の会」では,
1081 甲の価格,
1082 製造数量,
1083 販売数
1084 量,
1085 取引先などに関する情報交換は行っておらず,
1086 20社の間では比較的活発な価格競争が行われ
1087 ている。
1088
1089
1090 近年,
1091 一般消費者の健康への意識が著しく高まっており,
1092 「甲の会」においても,
1093 甲の安全性へ
1094 の信用や評判が大きな関心事となっている。
1095
1096 別の内装建材丙については,
1097 それに含まれる化学物質
1098 の種類や量に関する法令上の基準は遵守されていたが,
1099 昨年,
1100 一般消費者に皮膚障害をもたらすお
1101 それのある化学物質が含まれていたということが大きく報道され,
1102 内装建材丙の需要が大幅に減退
1103 したことがあった。
1104
1105 また,
1106 甲についても,
1107 近年,
1108 科学的根拠は不十分であるものの,
1109 一般消費者に
1110 皮膚障害をもたらすおそれのある化学物質が含まれているのではないかという疑問を公にする消費
1111 者団体が現れている。
1112
1113 このため,
1114 「甲の会」では,
1115 甲に含まれる化学物質の種類や量について,
1116 法
1117 令上の基準を遵守するだけでは不十分であり,
1118 法令上の基準を超える厳しい安全基準を設ける必要
1119 があるとの意見が大勢を占めるに至った。
1120
1121 そこで,
1122 「甲の会」の幹部会は,
1123 甲に含まれる化学物質
1124 に関する新たな安全基準を設定することの是非を含めた検討を,
1125 甲に含まれる化学物質について専
1126 門的な知見があり,
1127 かつ,
1128 20社各社と利害関係のない大学の研究者3人に依頼することを決定し,
1129
1130 これに基づいて,
1131 会長が同研究者らに依頼した。
1132
1133 その結果,
1134 甲に含まれる化学物質に関する新たな
1135 安全基準が提言されたことから,
1136 「甲の会」の幹部会は,
1137 その提言どおりの安全基準を「甲の会」
1138 の自主基準として設定することを決定し,
1139 これに基づいて,
1140 会長が,
1141 20社の担当営業部長に伝達
1142 した。
1143
1144 20社は,
1145
1146 「甲の会」の自主基準であるこの新たな安全基準を採用し,
1147 これを遵守するに至っ
1148 ている。
1149
1150
1151 しかし,
1152 X社は,
1153 「甲の会」が採用した安全基準に従っていない。
1154
1155 「甲の会」の会長は,
1156 甲の古参
1157 の製造販売業者であるX社が「甲の会」の安全基準を遵守しないことにより,
1158 内装建材甲全体の信
1159 用や評判に悪影響が及ぶのではないかと恐れ,
1160 再三にわたり,
1161 X社に対して,
1162 「甲の会」の安全基
1163 準を遵守するよう説得を試みた。
1164
1165 ところが,
1166 X社の経営者は,
1167 安全を軽視する発言に終始し,
1168 説得
1169 に応じなかった。
1170
1171 そのため,
1172 「甲の会」の幹部会は,
1173 甲を取り扱う全ての建材専門商社に対して,
1174
1175 X社から甲を購入しないよう要請することを決定し,
1176 これに基づいて,
1177 会長が,
1178 それら建材専門商
1179 社の担当者が一堂に会した会合において,
1180 その旨要請した。
1181
1182 それら建材専門商社の担当者は,
1183 協議
1184 の上,
1185 この要請に応じることを申し合わせた。
1186
1187 その後,
1188 それら建材専門商社のほとんどは,
1189 X社か
1190 らの甲の購入を中止するに至った。
1191
1192 このため,
1193 X社は,
1194 甲を販売する取引先を容易に見つけ出すこ
1195 とができなくなっている。
1196
1197
1198 - 12 -
1199
1200 〔設
1201
1202 問〕
1203 「甲の会」の会長が行った上記要請について,
1204 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
1205
1206 律(以下「独占禁止法」という。
1207
1208 )上の問題点を分析して検討しなさい。
1209
1210
1211
1212 - 13 -
1213
1214 〔第2問〕(配点:50)
1215 A社は,
1216 電子部品甲(以下「甲」という。
1217
1218 )のメーカーである。
1219
1220 甲は,
1221 電子機器丙(完成品。
1222
1223 以
1224 下「丙」という。
1225
1226 )に搭載され,
1227 他に用途はない。
1228
1229 甲のメーカーは,
1230 甲を製造して丙のメーカーに
1231 販売している。
1232
1233 丙のメーカーは,
1234 甲を搭載した丙を製造して世界各国の販売代理店に販売し,
1235 販売
1236 代理店がそれを消費者に販売している。
1237
1238
1239 世界中の多くの国の消費者が丙を使用している。
1240
1241 しかし,
1242 丙の規格が国によって異なるため,
1243 消
1244 費者は一般に丙を自国で購入し,
1245 他国で丙を購入することはほとんどない。
1246
1247 甲には,
1248 このような国
1249 ごとの規格の違いはない。
1250
1251
1252 甲のメーカーは,
1253 過去には世界に10社以上存在していたが,
1254 買収や撤退などにより,
1255 平成21
1256 年末までにA社からH社までの8社に集約された。
1257
1258 このうちA社,
1259 B社,
1260 C社は日本の企業,
1261 D社,
1262
1263 F社は日本以外のアジアの企業,
1264 E社はヨーロッパの企業,
1265 G社,
1266 H社は米国の企業であった。
1267
1268 そ
1269 の後,
1270 平成23年中にA社はB社を買収し,
1271 C社はD社を買収した。
1272
1273 平成25年中にはE社がF社
1274 を買収した。
1275
1276 その結果,
1277 平成25年末時点で,
1278 世界における甲のメーカーは5社となった。
1279
1280
1281 これら甲のメーカーの平成22年,
1282 平成24年及び平成26年の各暦年における市場シェアの推
1283 移は,
1284 以下のとおりであった。
1285
1286
1287 平成22年
1288
1289 平成24年
1290
1291 平成26年
1292
1293 A社(日本)
1294
1295 20%
1296
1297 25%
1298
1299 25%
1300
1301 B社(日本)
1302
1303 10%
1304
1305 −
1306
1307 −
1308
1309 C社(日本)
1310
1311 15%
1312
1313 20%
1314
1315 15%
1316
1317 D社(アジア)
1318
1319 5%
1320
1321 −
1322
1323 −
1324
1325 E社(ヨーロッパ)
1326
1327 5%
1328
1329 15%
1330
1331 15%
1332
1333 F社(アジア)
1334
1335 15%
1336
1337 5%
1338
1339 −
1340
1341 G社(米国)
1342
1343 10%
1344
1345 25%
1346
1347 30%
1348
1349 H社(米国)
1350 合計
1351
1352 20%
1353
1354 10%
1355
1356 15%
1357
1358 100%
1359
1360 100%
1361
1362 100%
1363
1364 平成24年及び平成26年のA社の数値はB社を買収した後のもの,
1365 平成24年及び平成26年
1366 のC社の数値はD社を買収した後のもの,
1367 平成26年のE社の数値はF社を買収した後のものであ
1368 る。
1369
1370 日本における市場シェアの分布を見ると,
1371 日本の甲のメーカーの市場シェアが多少高くなる傾
1372 向はあるものの,
1373 上記のような世界における市場シェアの分布と有意な差異は見いだせない。
1374
1375
1376 丙のメーカーは,
1377 平成26年末時点で,
1378 世界に15社存在し,
1379 日本,
1380 米国,
1381 アジア,
1382 ヨーロッパ
1383 に偏りなく分布している。
1384
1385 丙のメーカーの数や所在地は,
1386 平成22年以降ほぼ変動がない。
1387
1388
1389 消費者は,
1390 丙の機能の高速化や大容量化を強く求めており,
1391 それを実現するためには,
1392 甲の機能
1393 が高速化,
1394 大容量化することが重要である。
1395
1396 甲のメーカーは,
1397 それぞれ,
1398 甲の機能の高速化や大容
1399 量化のために既存の技術を発展させることのみならず,
1400 革新的な新技術の開発も行っている。
1401
1402 それ
1403 ゆえ,
1404 甲に関する技術が進歩するスピードは速く,
1405 毎年1回以上,
1406 前のモデルより高速化,
1407 大容量
1408 化した新しいモデルの甲が発売されている。
1409
1410 同時に,
1411 丙のメーカーに対しては,
1412 各国の丙の販売代
1413 理店及び消費者から厳しい価格引下げ要求があり,
1414 それはそのまま丙のメーカーからの甲のメー
1415 カーに対する強い価格引下げ要求に反映されている。
1416
1417
1418 丙のメーカーが,
1419 特に自国の甲のメーカーのみから甲を購入する傾向はない。
1420
1421 むしろ,
1422 丙のメー
1423 カーは,
1424 特定の甲のメーカーにおける製造設備の事故等により甲の十分な供給を受けられなくなる
1425 ことによって自社の丙の製造が中断する危険を回避するとともに,
1426 甲のメーカー間で価格競争を行
1427 わせることを目的として,
1428 国を問わず複数の甲のメーカーから甲を購入するのが通常である。
1429
1430 しか
1431 も,
1432 丙のメーカーは,
1433 取引する甲のメーカーを固定化せず,
1434 甲のメーカーの技術能力や取引条件に
1435 - 14 -
1436
1437 応じて取引する甲のメーカーを常時変更し,
1438 あるいは複数のメーカーからの甲の購入割合を常時変
1439 更している。
1440
1441
1442 甲の販売価格に占める輸送費用の割合は数パーセント程度である。
1443
1444 甲に関税を課す国は現時点で
1445 は存在しない。
1446
1447 また,
1448 甲の販売価格が,
1449 国によって大きく異なるという傾向はない。
1450
1451
1452 世界における甲の需要は緩やかな増加基調にある。
1453
1454 しかし,
1455 近年,
1456 甲とは科学的原理も技術も全
1457 く異なるが甲と同じ機能を有する新たな部品乙(国ごとの規格の違いはない。
1458
1459 以下「乙」という。
1460
1461 )
1462 が流通し始め,
1463 一部の丙のメーカーには,
1464 甲に代えて乙を自社の丙に搭載する動きがある。
1465
1466 平成
1467 26年末時点で,
1468 乙の機能は,
1469 甲と比較すると20パーセント程度高速である一方,
1470 その価格は,
1471
1472 甲より50パーセント程度高額である。
1473
1474 これらの機能,
1475 価格の差異は技術の進歩を勘案しても当面
1476 大きく変わらないと予想され,
1477 数年のうちに丙のメーカー間で乙が広く普及する見込みはない。
1478
1479 ま
1480 た,
1481 甲のメーカーは,
1482 既存の甲の製造設備を利用して乙を製造することはできない。
1483
1484
1485 平成27年5月現在,
1486 A社は,
1487 甲に関する自社の技術と親和性,
1488 補完性が高い新技術を開発して
1489 いるH社を買収し,
1490 甲の開発時間を大幅に短縮することを目的として,
1491 H社の株式の全部を取得す
1492 ることを計画している。
1493
1494
1495 〔設
1496
1497 問〕
1498 上記の状況において,
1499 A社が計画するH社の株式取得に関する独占禁止法上の問題点を分析し
1500
1501 て検討しなさい。
1502
1503
1504
1505 - 15 -
1506
1507 - 16 -
1508
1509 論文式試験問題集[知的財産法]
1510
1511 - 17 -
1512
1513 [知的財産法]
1514 〔第1問〕(配点:50)
1515 甲は,
1516 平成20年3月に,
1517 化学物質の発明であるα発明をし,
1518 当該発明が市場性を有するかどう
1519 かを確認するために,
1520 同年6月10日から1か月間に限り,
1521 その実施品を一般の顧客に対してその
1522 構造を明らかにすることなく試験的に販売した。
1523
1524 α発明は,
1525 構成要件A,
1526 構成要件B及び構成要件
1527 c1からなるものであった。
1528
1529 甲は,
1530 α発明をした後も継続して行っていた研究開発により,
1531 構成要
1532 件A,
1533 構成要件B及び構成要件Cからなるβ発明をした。
1534
1535 Cはc1の上位概念である。
1536
1537 甲は,
1538 平成
1539 21年2月5日に,
1540 β発明について特許出願(以下「甲出願」という。
1541
1542 )を行った。
1543
1544 甲出願につい
1545 ては,
1546 平成23年8月15日に,
1547 特許権の設定登録がされた(以下,
1548 この特許権を「甲特許権」と
1549 いう。
1550
1551 )。
1552
1553
1554 他方,
1555 乙は,
1556 甲とは別個独立にβ発明と同一の発明をしたが,
1557 Cの下位概念であるc2(c2は,
1558
1559 c1とは異なるものである。
1560
1561 )を用いると顕著な効果を得られることを認識し,
1562 構成要件A,
1563 構成
1564 要件B及び構成要件c2からなるγ発明について特許出願(以下「乙出願」という。
1565
1566 )を行った。
1567
1568
1569 乙出願の出願日は,
1570 偶然にも,
1571 甲出願の出願日と同日であった。
1572
1573 乙出願については,
1574 平成23年8
1575 月25日に,
1576 特許権の設定登録がされた。
1577
1578
1579 以上の事実関係を前提として,
1580 以下の設問に答えなさい。
1581
1582
1583 〔設
1584
1585 問〕
1586
1587 1.甲は,
1588 β発明の技術的範囲に属する製品を製造販売する丙に対して,
1589 その行為が甲特許権を
1590 侵害する旨の警告を行った。
1591
1592 丙は,
1593 甲特許権について調査したところ,
1594 α発明の実施品が試験
1595 的に販売されていたこと及び乙が乙出願を行っていたことを知り,
1596 これらに基づき甲特許権が
1597 無効理由を有すると考え,
1598 特許無効審判請求をした。
1599
1600 甲特許権は無効となるか。
1601
1602 仮に乙出願が
1603 平成21年2月4日に行われたとした場合はどうか。
1604
1605
1606 2.乙は,
1607 平成23年3月から,
1608 γ発明の実施品を製造販売している。
1609
1610
1611
1612
1613 甲は,
1614 平成27年5月になって乙の行為を知り,
1615 乙に対して,
1616 その行為が甲特許権の侵害
1617 であるとして差止請求訴訟を提起した。
1618
1619
1620 同訴訟において,
1621 甲は,
1622 どのような主張をすべきか。
1623
1624 これに対する乙の反論として,
1625 どの
1626 ような主張が考えられるか。
1627
1628
1629 双方の主張の妥当性についても論じなさい。
1630
1631
1632
1633
1634
1635 上記の差止請求が認められるとする。
1636
1637 甲が乙に対して補償金請求も行ったならば,
1638 この
1639 請求も認められるか。
1640
1641 仮に,
1642 甲は,
1643 乙の行為を平成23年6月に知ったが,
1644 乙に対して何ら
1645 の措置も講じなかったとした場合はどうか。
1646
1647
1648 なお,
1649 及びについては,
1650 甲特許権は無効理由を有しないものとする。
1651
1652
1653
1654 3.甲は,
1655 β発明の技術的範囲に属する製品は製造販売していないが,
1656 これと同様の作用効果を
1657 奏する製品を製造販売している。
1658
1659 丁は,
1660 β発明の技術的範囲に属する製品(以下「丁製品」と
1661 いう。
1662
1663 )を製造販売している。
1664
1665 甲は,
1666 丁に対して,
1667 特許法第102条第2項を用いて損害額を
1668 算定してその賠償を請求することができるか。
1669
1670
1671 なお,
1672 甲特許権は無効理由を有しないものとし,
1673 丁製品はγ発明の技術的範囲に属しないも
1674 のとする。
1675
1676
1677
1678 - 18 -
1679
1680 〔第2問〕(配点:50)
1681 映画製作会社Yは,
1682 「四季の渓谷と橋のある風景」という題名で,
1683 日本全国の渓谷に架かる橋を
1684 定点撮影し四季を通じて変化する風景を背景として,
1685 その橋を利用する人々の暮らしを紹介するこ
1686 とをテーマとしたドキュメンタリー映画(以下「本件ドキュメンタリー」という。
1687
1688 )の製作を企画
1689 し,
1690 その監督として,
1691 同ドキュメンタリーに使用する映像の撮影及びシナリオに即した映像の編集
1692 を,
1693 フリーの映像作家Xに依頼したところ,
1694 Xは同ドキュメンタリーの製作に参加することを約束
1695 した。
1696
1697 そして,
1698 Xは,
1699 本件ドキュメンタリーに使用する映像を撮影するために,
1700 渓谷と橋を数箇所
1701 選定し,
1702 それぞれ選定した渓谷と橋との関係が一番美しく撮れる撮影箇所と時間帯を決定し,
1703 さら
1704 に,
1705 構図,
1706 カメラアングル,
1707 光量,
1708 絞りなどを決めて,
1709 1年以上かけて,
1710 渓谷と橋及びそれを利用
1711 する人々を撮影し,
1712 撮影の完了した未編集の映像フィルム(以下「本件映像フィルム」という。
1713
1714 )
1715 をYに提供した。
1716
1717
1718 本件映像フィルムの撮影に関しては,
1719 撮影機材の提供,
1720 撮影場所への旅費,
1721 宿泊費,
1722 その他必要
1723 経費は全てYの負担において賄われ,
1724 また,
1725 Xは,
1726 撮影のため地方に出張する場合以外は,
1727 毎週2,
1728 3
1729 回程度Yに出社して,
1730 報酬も月払いで支払われていた。
1731
1732
1733 ところが,
1734 その後Yの映画製作方針が変わり,
1735 本件ドキュメンタリーの製作は中止になった。
1736
1737 そ
1738 のため,
1739 本件映像フィルムは,
1740 NGフィルム選別,
1741 シナリオに従った粗編集,
1742 細編集,
1743 音づけ等の
1744 映画製作過程を経ない未編集の状態で公表されないまま,
1745 Yのフィルム保管庫に保管された。
1746
1747
1748 以上の事実関係を前提として,
1749 以下の設問に答えなさい。
1750
1751
1752 〔設
1753
1754 問〕
1755
1756 1.Yの社内では,
1757 多額の費用を掛けて撮影された本件映像フィルムを何とか利用して映画製作
1758 にいかしたいとして検討した結果,
1759 ある風景写真家が風景写真を撮るために各地を点々と旅し,
1760
1761 その旅先で出会った人々と交流する様を描いた映画(以下「本件映画」という。
1762
1763 )を製作する
1764 ことになり,
1765 その際,
1766 主人公が訪れる各地の風景として本件映像フィルムを活用することとし,
1767
1768 Xに無断で,
1769 同フィルムに主人公である俳優などの映像を合成して本件映画に使用した。
1770
1771
1772 なお,
1773 本件映画中の出演者,
1774 制作スタッフなどの名を示す字幕(クレジット・タイトル)に
1775 は,
1776 Xへの感謝を込めて,
1777 「風景撮影
1778
1779 X」と表示されていた。
1780
1781
1782
1783 Xは,
1784 本件映画を上映しようとしているYに対し,
1785 その差止めを求める訴訟を提起した。
1786
1787
1788 同訴訟において,
1789 Xは,
1790 どのような主張をすべきか。
1791
1792 これに対するYの反論として,
1793 どのよ
1794 うな主張が考えられるか。
1795
1796
1797 双方の主張の妥当性についても論じなさい。
1798
1799
1800 2.Xが本件ドキュメンタリーのために定点撮影したある場所において,
1801 渓谷と橋のそばに能舞
1802 台のある寺があり,
1803 そこでは,
1804 毎年,
1805 著名な振付師であるZの振り付けによる独創的な新作の
1806 薪(たきぎ)能が行われていたところ,
1807 本件映像フィルムには,
1808 たまたまその能舞台で行われ
1809 ていたZの振り付けによる新作の薪能(以下「本件能」という。
1810
1811 )が,
1812 時間にして約3分間,
1813
1814 それを演じる能役者の動作が辛うじて感得できる程度に映っていた(以下,
1815 この部分を「本件
1816 能映像」という。
1817
1818 )。
1819
1820 ただし,
1821 本件能の振り付けは,
1822 Zがそれを演じる能役者に自ら指導したも
1823 のであって,
1824 台本や踊り方を説明した書類はなく,
1825 また,
1826 振り付けの映像なども存在していな
1827 かった。
1828
1829
1830 本件能映像は,
1831 夜の渓谷と橋が薪の灯りに浮かび上がる中で能役者が能を舞うという幻想的
1832 な描写になっていたため,
1833 Yは,
1834 Zに無断で,
1835 本件映画の1シーンに本件能映像を使用した。
1836
1837
1838 Zは,
1839 本件映画を上映しようとしているYに対して,
1840 その差止めを求める訴訟を提起した。
1841
1842
1843 同訴訟において,
1844 Zは,
1845 どのような主張をすべきか。
1846
1847 これに対するYの反論として,
1848 どのよ
1849 うな主張が考えられるか。
1850
1851
1852 双方の主張の妥当性についても論じなさい。
1853
1854
1855
1856 - 19 -
1857
1858 - 20 -
1859
1860 論文式試験問題集[労
1861
1862 - 21 -
1863
1864 働
1865
1866 法]
1867
1868 [労
1869
1870 働
1871
1872 法]
1873
1874 〔第1問〕(配点:50)
1875 次の事例を読んで,
1876 後記の設問に答えなさい。
1877
1878
1879 なお,
1880 職業安定法に言及する必要はない。
1881
1882
1883 【事
1884
1885 例】
1886 Y1社は,
1887 主に製造業務の請負等を目的として,
1888 平成元年頃から,
1889 一般労働者派遣事業の許可
1890
1891 を取得して労働者派遣事業を展開しつつ,
1892 業務請負事業も行っていた。
1893
1894 Y1社は,
1895 自動車製造を
1896 業とするY2社とは平成18年頃から業務請負契約を締結して取引を行っていた。
1897
1898 当該業務請負
1899 契約の契約書によれば,
1900 契約期間は6か月とされ,
1901 Y1社がY2社から設備,
1902 事務所等を無償で
1903 借り受け,
1904 Y1社の雇用する従業員をY2社A工場(以下「A工場」という。
1905
1906 )の自動車組立て
1907 ラインに派遣して組立て作業に従事させ,
1908 Y2社は月間生産台数に応じた額の報酬をY1社に毎
1909 月支払うものとされていた。
1910
1911 Y1社・Y2社間に資本関係や人的関係はない上,
1912 Y1社の取引先
1913 はY2社に限られておらず,
1914 また,
1915 Y1社によるXを含む作業員(以下「Xら」という。
1916
1917 )の採
1918 用面接にY2社の社員が立ち会ったなどの事情は認められない。
1919
1920
1921 Xらは,
1922 Y1社との間で雇用期間6か月,
1923 就労開始日を平成20年4月1日とする雇用契約を
1924 締結し,
1925 雇用契約で指定されたA工場の就業場所において自動車組立て作業に従事すること,
1926 こ
1927 れに対してY1社はXらにY1社就業規則に定めた給与を支給することとされていた。
1928
1929 雇用期間
1930 の始期と終期は,
1931 Y1社・Y2社間の業務請負期間のそれと一致していた。
1932
1933 Xらは,
1934 自動車組立
1935 てラインにおいて自動車部品をY2社作成のマニュアルに従って取り付ける作業を行い,
1936 同ライ
1937 ンにおいてY2社の従業員と一緒に作業していた。
1938
1939 A工場にはY1社の正社員が常駐していたが,
1940
1941 Xらは作業についてY2社の社員からも直接指示を受けていた。
1942
1943
1944 Y1社及びY2社は,
1945 平成22年9月1日,
1946 A工場の所在する地域を管轄する労働局から,
1947 A
1948 工場におけるXらの勤務実態は業務請負ではなく労働者派遣であり,
1949 労働者派遣事業の適正な運
1950 営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。
1951
1952 )違反の事実が
1953 あると認定され,
1954 業務請負契約を解消して新たに労働者派遣契約を締結するようにとの行政指導
1955 を受けた。
1956
1957
1958 これを受けて,
1959 Y1社及びY2社は業務請負契約の期間満了日である同年9月30日をもって
1960 業務請負契約を終了し,
1961 同年10月1日から新たに6か月の契約期間を定めた労働者派遣契約を
1962 締結した。
1963
1964 それと同時に,
1965 Y1社はXらを派遣労働者とする雇用契約を締結した。
1966
1967 新たな雇用契
1968 約は,
1969 従前と同一の労働条件で同一の就業場所において同一の作業に従事することを内容とした
1970 ものであった。
1971
1972 Xらは,
1973 同年10月1日から就労を開始し,
1974 その後,
1975 同一内容の雇用契約を反復
1976 更新した。
1977
1978
1979 ところが,
1980 Y2社は,
1981 平成24年秋からY2社を取り巻く経営環境の悪化により生産規模の縮
1982 小を余儀なくされ,
1983 平成24年12月10日に,
1984 Y1社との労働者派遣契約に定める規定に基づ
1985 き,
1986 平成25年1月20日をもって労働者派遣契約を解約する旨Y1社に通知した。
1987
1988 そこで,
1989 Y
1990 1社は,
1991 A工場で作業を行うXらの雇用契約が同年3月31日をもって期間満了とされていたこ
1992 とから,
1993 Xらに対し,
1994 別の就業場所を紹介してそこで作業を行うよう打診したところ,
1995 Xは,
1996 期
1997 間満了後も引き続きA工場で同一の作業に従事することを希望し,
1998 同打診を断ったが,
1999 Xらのう
2000 ちX以外の者は,
2001 いずれも同打診を受け入れた。
2002
2003 Y1社は,
2004 Y2社が同年1月20日に労働者派
2005 遣契約を解約したためXの就労する場所がない上,
2006 他の発注先からの契約打切りによりY1社の
2007 財務状況が急速に悪化した事情もあり,
2008 30日間の予告期間を置いた上で,
2009 同年2月28日付け
2010 でXを解雇した。
2011
2012
2013
2014 - 22 -
2015
2016 〔設
2017
2018 問〕
2019
2020 1.Xは,
2021 本件就労は労働者派遣法違反であるのでY1社との雇用契約は無効であり,
2022 Y2社と
2023 の間に雇用契約が成立していたと主張し,
2024 Y2社との雇用関係上の地位の確認を請求して訴え
2025 を提起した。
2026
2027 予想されるY2社からの反論を踏まえつつ,
2028 法的な論点を指摘して,
2029 Xの請求の
2030 当否を論じなさい。
2031
2032
2033 2.Xは,
2034 Y1社に対して,
2035 平成25年2月28日の解雇が無効として,
2036 Y1社との間の雇用関
2037 係上の地位の確認を請求して訴えを提起した。
2038
2039 この請求の当否を論じなさい。
2040
2041
2042 3.仮に,
2043 前記【事例】において,
2044 Y1社が,
2045 Xを解雇せず,
2046 平成25年3月31日をもって期
2047 間満了によりXとの雇用契約が終了したものと扱い,
2048 これに対してXがY1社との間の雇用関
2049 係上の地位の確認を請求して訴えを提起した場合におけるその請求の当否を論じなさい。
2050
2051
2052
2053 - 23 -
2054
2055 〔第2問〕(配点:50)
2056 次の事例を読んで,
2057 後記の設問に答えなさい。
2058
2059
2060 【事
2061
2062 例】
2063 Y社は,
2064 クッキー,
2065 チョコレート,
2066 アメ等多品種の菓子を製造・販売する株式会社であり,
2067 多
2068
2069 くのパートタイマーを活用することで人件費を抑制し,
2070 多大な利益を上げてきた。
2071
2072 Y社は,
2073 正社
2074 員300名のほか,
2075 パートタイマー850名を雇用しており,
2076 大阪市の本社のほかに全国各地に
2077 計8か所の営業所及び計3か所の工場を有していた。
2078
2079 Y社には,
2080 正社員とパートタイマーの双方
2081 が加盟する労働組合(以下「労組」という。
2082
2083 )があり,
2084 Y社との間に,
2085 労使協議や団体交渉等の
2086 ルールについて規定した期間の定めのない労働協約を締結していた。
2087
2088 労組には,
2089 全正社員の8割
2090 に当たる非管理職の正社員全員,
2091 パートタイマーの2割が加入しており,
2092 本社及び全ての営業所・
2093 工場に分会を有していた。
2094
2095
2096 Y社では,
2097 平成20年のいわゆるリーマンショックによる売上げの激減により,
2098 経営状況が目
2099 に見えて悪化し,
2100 賃金も全く増額できなくなったほか,
2101 いくつかの菓子製造ラインが閉鎖される
2102 など事業の縮小が目立つようになり,
2103 転職のために辞めていく従業員も次第に増えていった。
2104
2105
2106 Zは,
2107 労組の委員長であったが,
2108 この様子を見て危機感を覚え,
2109 他の執行部のメンバーと相談
2110 し,
2111 会社との間に,
2112 雇用の維持を認めさせる新たな協約を締結することを目指して,
2113 平成26年
2114 5月にY社の社長甲らと内密の懇談の場を数回持った。
2115
2116 Zは,
2117 自分が委員長に選出された選挙の
2118 折,
2119 甲が自分を推薦して「我が社の労組にはZが委員長としてふさわしい。
2120
2121 」との発言を繰り返
2122 していたこと,
2123 自分が委員長に選出されてからも親しい交流を続けていたことなどから,
2124 甲が自
2125 分の要請を理解してくれるものと期待していた。
2126
2127
2128 上記の懇談の場において甲は,
2129 「5%の基本給カットをのんでくれるなら,
2130 少なくとも正社員
2131 については雇用は維持できるよう会社としても最大限の努力をする。
2132
2133 」とZに伝えた。
2134
2135 賃金カッ
2136 トをのめば組合員の雇用の維持を保障する協約を結べると判断したZら執行部は,
2137 組合規約に定
2138 められた「協約締結権限」を早急に取得する必要があると考え,
2139 執行部内で対応を協議したとこ
2140 ろ,
2141 組合規約には,
2142 「協約締結権限を執行部が得るためには組合大会を開催し,
2143 全組合員の過半
2144 数の賛成を得る必要がある。
2145
2146 」と規定されていた。
2147
2148 しかし,
2149 全組合員の招集をはかるには時間と
2150 手数がかかりすぎると判断した執行部は,
2151 「重要事項に該当しない問題については各分会におけ
2152 る単純多数決の結果を集約し,
2153 組合全体として賛成が多数であれば執行部に協約締結権限が付与
2154 されたものとする。
2155
2156 」という組合規約の規定に着目し,
2157 かつ,
2158 実際には労働協約の締結権限につ
2159 いても,
2160 ここ10年内に5回締結された労働協約は全てこの方式で締結権限が認められてきた事
2161 実を確認した上で,
2162 今回もこの方式により,
2163 全分会における単純多数決の結果を集約したところ,
2164
2165 全組合員の過半数がZら執行部の方針を了承したことを確認した。
2166
2167
2168 その後,
2169 平成26年7月10日付けで労組とY社との間に労働協約が締結され,
2170 予定どおり5
2171 %の基本給カットが規定されたが,
2172 同カットは平成27年4月から行うこととされ,
2173 また,
2174 「平
2175 成26年冬の賞与を前年より5%アップすることで緩和措置とする。
2176
2177 」との規定も設けられてい
2178 た。
2179
2180 さらに,
2181 「会社は可能な限り雇用の維持に努め,
2182 人員整理の必要性が生じた場合は組合と協
2183 議の上,
2184 対応を決定するものとする。
2185
2186 」との規定もあった。
2187
2188
2189 菓子を製造するA工場の分会に所属する組合員であるXは協約内容を見て,
2190 不満を抱き,
2191 Zに
2192 「組合大会も開催せずに,
2193 5%の基本給カットをのんだことは許し難い。
2194
2195 」と問い詰めたところ,
2196
2197 Zは,
2198 「確かに組合大会は開催していないが,
2199 従来の慣行に従って分会における単純多数決の結
2200 果を集約しているので問題はない。
2201
2202 」と回答した。
2203
2204
2205 そこで,
2206 Xは,
2207 5%の基本給カットの実施に不安や疑問を抱いていた他の5名の組合員と相談
2208 し,
2209 Zら執行部の了承を得ずに独断で「刷新派」と称するグループを結成した。
2210
2211 これに対し,
2212 甲
2213 はXを呼んで,
2214 「労組を混乱させてはいけない。
2215
2216 刷新派などと称するグループは解散しなさい。
2217
2218 」
2219 と強く命じたが,
2220 Xは「お断りします。
2221
2222 」と答えた。
2223
2224 その後,
2225 刷新派は,
2226 自分たちの主張を広め
2227
2228 - 24 -
2229
2230 るため,
2231 「賃金カットは許さない」,
2232 「会社は5%の基本給カットを撤回せよ」などと記載した縦
2233 10センチメートル,
2234 横2センチメートルのリボンを左胸部に着装して始業時刻から30分間業
2235 務に従事し,
2236 30分後には当該リボンを取り外すという行動に出た。
2237
2238 リボンを着装した組合員は,
2239
2240 Xを含め全員がA工場の菓子製造のラインで働いていた。
2241
2242
2243 Y社はこれに対し,
2244 Zら執行部にXらの行動が労組の指導によるものでないことを確認した上
2245 で,
2246 リボンの着装をやめるようXらに業務命令を発したが,
2247 Xらがこれに従わなかったため,
2248 就
2249 業規則第12条に基づき,
2250 リボンを着装して業務に従事した組合員全員を戒告の懲戒処分に処し
2251 た。
2252
2253
2254 〔設
2255
2256 問〕
2257
2258 1.Xが,
2259 平成27年4月以降の賃金につき,
2260 5%カットされた基本給分の差額を請求して訴訟
2261 を提起した場合,
2262 この請求は認められるか。
2263
2264 想定される論点を検討した上で結論を示しなさい。
2265
2266
2267 2.Xらは,
2268 戒告の懲戒処分は不当であると考えている。
2269
2270 Xらがこの懲戒処分につき救済を求め
2271 るには,
2272 どのような機関にどのような救済を求めることが考えられるか。
2273
2274 想定される論点を検
2275 討した上で結論を示しなさい。
2276
2277
2278 【Y社就業規則(抜粋)】
2279 (懲戒)
2280 第12条
2281
2282 従業員が次のいずれかに該当するときは,
2283 情状に応じ,
2284 けん責,
2285 戒告又は減給とする。
2286
2287
2288
2289 @
2290
2291 業務中に許可なく職場を離れ,
2292 又は,
2293 業務と関係のない行為を行ったとき。
2294
2295
2296
2297 A
2298
2299 業務命令に反したとき。
2300
2301
2302
2303 (以下略)
2304
2305 - 25 -
2306
2307 - 26 -
2308
2309 論文式試験問題集[環
2310
2311 - 27 -
2312
2313 境
2314
2315 法]
2316
2317 [環
2318
2319 境
2320
2321 法]
2322
2323 〔第1問〕(配点:50)
2324 総合建設業者であるA社は,
2325 同社が元請け施工する全てのマンション建設現場から排出される産
2326 業廃棄物(特別管理産業廃棄物ではない。
2327
2328 )の収集運搬及び中間処理を,
2329 廃棄物の処理及び清掃に
2330 関する法律(以下「廃棄物処理法」という。
2331
2332 )に基づいて,
2333 B県知事からそれぞれに係る産業廃棄
2334 物処理業の許可を受けたC社に委託していた。
2335
2336
2337 この場合において,
2338 【資料】を参照しつつ,
2339 以下の設問に答えよ。
2340
2341 なお,
2342 設問はいずれも,
2343 独立
2344 したものである。
2345
2346
2347 〔設問1〕
2348 A社は,
2349 産業廃棄物の排出に当たって,
2350 C社に対して,
2351 紙の産業廃棄物管理票(以下「マニフ
2352 ェスト」という。
2353
2354 )を適切に交付し,
2355 写しの送付を確認していた。
2356
2357 ところが,
2358 交付したマニフェ
2359 ストについて,
2360 収集運搬に係る写しは適切に送付されてきていたものの,
2361 2005年5月頃から,
2362
2363 中間処理に係る写しは,
2364 C社からの適時の送付が滞り始め,
2365 2008年からは,
2366 半年分が一度に
2367 送られてくるようになった。
2368
2369 しかし,
2370 A社は,
2371 これまで特段の問題は発生していなかったことか
2372 ら,
2373 それについて何の対応もせず放置していた。
2374
2375
2376 そうしたところ,
2377 C社が当該マニフェストに係る産業廃棄物を不法投棄していることが明らか
2378 になった。
2379
2380 C社は,
2381 利潤追求に走る余り,
2382 A社以外からも,
2383 その処理能力を超える産業廃棄物の
2384 処理を受託しており,
2385 処理施設に運搬した後,
2386 処理しきれない産業廃棄物を,
2387 A社と取引があっ
2388 たDが所有する土地(以下「本件土地」という。
2389
2390 )に投棄していたのであった。
2391
2392
2393 C社は,
2394 Dからは資材置場として用いるという名目で本件土地を賃借していた。
2395
2396 Dは,
2397 一度本
2398 件土地に行った際に,
2399 産業廃棄物らしいものが投棄されていると気付いてはいたが,
2400 賃料収入が
2401 あることから,
2402 C社の行為を黙認していた。
2403
2404
2405 本件土地の隣には,
2406 農民Eの畑があり,
2407 農作物を栽培している。
2408
2409 不法投棄量が増えるにつれて,
2410
2411 不法投棄された産業廃棄物に起因する異臭のする液体が,
2412 Eの畑に流入するようになった。
2413
2414
2415 2010年5月になって,
2416 農作物への影響を心配するEが当該液体を採取して調査会社に持ち込
2417 んだところ,
2418 0.1mg/lの鉛(なお,
2419 土壌の汚染に係る環境基準値は,
2420 0.01mg/l以
2421 下である。
2422
2423 )が検出された。
2424
2425 驚いたEは,
2426 同年6月,
2427 B県知事に通報した。
2428
2429 この事実を確認した
2430 B県知事は,
2431 四囲の状況から判断して,
2432 原因は本件土地に不法投棄された産業廃棄物であると考
2433 えている。
2434
2435
2436 この場合において,
2437 B県知事は,
2438 廃棄物処理法上,
2439 どのような法的措置を講ずることができる
2440 かを説明せよ。
2441
2442 なお,
2443 C社に対する法的措置については考えなくてよい。
2444
2445
2446 〔設問2〕
2447 A社は,
2448 産業廃棄物の処理の委託先を,
2449 C社から,
2450 C社と同様の許可を受けたF社に変更した。
2451
2452
2453 ほどなく,
2454 A社の経営が,
2455 極度に悪化してきた。
2456
2457 そこで,
2458 A社は,
2459 F社に対して,
2460 委託料金の大
2461 幅な値引きを求めるようになった。
2462
2463 その額は,
2464 B県内での同種処理の平均的料金の40%であっ
2465 た。
2466
2467
2468 最初は難色を示していたF社であったが,
2469 同社も業績が悪化していたし,
2470 処理委託される産業
2471 廃棄物の量が多いためにそれなりの利益は得られると考え,
2472 結局はA社の要求を受け入れた。
2473
2474 そ
2475 して,
2476 新たな契約に基づき,
2477 2012年5月頃から,
2478 以前の料金の40%の価格で処理を受託し
2479 ていた。
2480
2481 このような料金では,
2482 適正処理は無理なことが程なく判明したが,
2483 値上げ交渉は困難と
2484 考え,
2485 契約条件を変えないままでいた。
2486
2487
2488 A社のマンション工事現場からは,
2489 産業廃棄物が排出され続けている。
2490
2491 収集運搬後の処理に困っ
2492
2493 - 28 -
2494
2495 たF社は,
2496 2013年5月頃から,
2497 中間処理はしたという虚偽のマニフェストの写しをA社に送
2498 付する一方で,
2499 B県内の山林に産業廃棄物を不法投棄するようになった。
2500
2501 2015年1月になっ
2502 て,
2503 F社は事実上倒産したため,
2504 A社の委託は停止された。
2505
2506
2507 不法投棄されたA社の産業廃棄物は,
2508 相当の高さに積み上がっている。
2509
2510 この不法投棄地のすぐ
2511 そばには,
2512 かねてより地元住民が日常的に散策を楽しんでいた遊歩道がある。
2513
2514 堆積された産業廃
2515 棄物の一部が,
2516 遊歩道上に少しずつ崩落している状態にある。
2517
2518
2519 この場合において,
2520 B県知事は,
2521 廃棄物処理法上,
2522 どのような法的措置を講ずることができる
2523 か。
2524
2525 この措置が設けられた趣旨を踏まえつつ論ぜよ。
2526
2527
2528 【資
2529 ○
2530
2531 料】
2532 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年9月23日厚生省令第35号)
2533 (抜粋)
2534
2535 (管理票の写しの送付を受けるまでの期間)
2536 第8条の28
2537
2538 法第12条の3第8項の環境省令で定める期間は,
2539 次の各号に掲げる区分に応じ,
2540 そ
2541
2542 れぞれ当該各号に定めるものとする。
2543
2544
2545 一
2546
2547 法第12条の3第3項前段又は第4項前段の規定による管理票の写しの送付
2548
2549 管理票の交付
2550
2551 の日から90日(特別管理産業廃棄物に係る管理票にあつては,
2552 60日)
2553 二
2554
2555 法第12条の3第5項又は第12条の5第5項の規定による最終処分が終了した旨が記載さ
2556
2557 れた管理票の写しの送付
2558 ○
2559
2560 管理票の交付の日から180日
2561
2562 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長「行政処分の指針について(通知)」
2563 (平
2564 成25年3月29日環廃産発第1303299号)(抜粋)
2565
2566
2567 排出事業者等が当該産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき,
2568 当該処理が行
2569 われることを知り,
2570 又は知ることができたときその他法第12条第7項,
2571 第12条の2第7項及
2572 び第15条の4の3第3項の規定の趣旨に照らし排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせる
2573 ことが適当であるとき(同条第1項第2号)
2574 @
2575
2576 「適正な対価を負担していないとき」とは,
2577 不適正処理された産業廃棄物(中間処理後の産
2578 業廃棄物にあっては事業活動に伴って生じた段階からのすべての産業廃棄物)を一般的に行わ
2579 れている方法で処理するために必要とされる処理料金からみて著しく低廉な料金で委託するこ
2580 と(実質的に著しく低廉な処理費用を負担している場合を含む。
2581
2582 )をいうものであること。
2583
2584
2585 「適正な対価」であるか否かを判断するに当たっては,
2586 まずは都道府県において,
2587 可能な範
2588 囲内でその地域における当該産業廃棄物の一般的な処理料金の範囲を客観的に把握すること。
2589
2590
2591 そして,
2592 その処理料金の半値程度又はそれを下回るような料金で処理委託を行っている排出事
2593 業者については,
2594 当該料金に合理性があることを排出事業者において示すことができない限り
2595 は,
2596 「適正な対価を負担していないとき」に該当するものと解して差し支えないこと。
2597
2598 なお,
2599
2600 当該処理料金の半値程度よりも高額の料金で処理委託をした場合においても,
2601 これに該当する
2602 場合があることは言うまでもないことから,
2603 排出事業者が一般的な料金よりも安い価格で委託
2604 しても適正処理がなされると判断した理由について,
2605 随時報告徴収を実施するなどして把握す
2606 るように努めること。
2607
2608
2609
2610 - 29 -
2611
2612 〔第2問〕(配点:50)
2613 A社は,
2614 B県内の土地(以下「本件土地」という。
2615
2616 )を所有している。
2617
2618 本件土地では長らくC社
2619 が化学工場(有害物質使用特定施設が設置されている。
2620
2621 )を操業していたが,
2622 A社は本件土地をC
2623 社から2013年に購入した。
2624
2625 その後,
2626 A社は同工場を自ら操業することなく閉鎖した。
2627
2628 ところが,
2629
2630 A社が同工場を解体して本件土地を更地にした際に土壌汚染対策法第3条第1項に基づく調査をし
2631 たところ,
2632 砒素による汚染が発見された。
2633
2634 調査を受託した会社によれば,
2635 砒素による汚染の程度は,
2636
2637 土壌汚染対策法第6条第1項第1号の環境省令で定める基準を超えていた。
2638
2639 この汚染はC社の化学
2640 工場の操業によって発生したものと考えられる。
2641
2642 C社は汚染のおそれを認識していたため,
2643 A社の
2644 本件土地の購入価格はその市場価格よりも著しく安かった。
2645
2646 本件土地の西隣にはD井戸があり,
2647 住
2648 民E及びFが飲用に供してきた。
2649
2650 A社から本件土地の汚染について報告を受けたB県知事が2014
2651 年にD井戸を調査したところ,
2652 水質汚濁に係る環境基準の1000倍の砒素が検出された。
2653
2654
2655 この場合において,
2656 以下の設問に答えよ。
2657
2658
2659 〔設問1〕
2660 B県知事は,
2661 誰に対してどのような法的措置を講ずることができるか。
2662
2663
2664 〔設問2〕
2665 D井戸から西に100メートルのところにG井戸がある。
2666
2667 本文において,
2668 B県は2010年の
2669 時点で,
2670 法定の水質汚濁状況の監視作業を通じて,
2671 G井戸から水質環境基準の100倍の砒素が
2672 検出された事実を把握していたとする。
2673
2674 しかし,
2675 B県はこれを自然由来の局所的汚染であると即
2676 断し,
2677 近くにD井戸が存在している事実を把握していたにもかかわらず,
2678 更なる原因究明のため
2679 の調査も付近の井戸の調査も行わず,
2680 また,
2681 周辺住民への周知もしなかった。
2682
2683 本文における
2684 2014年のD井戸の調査結果を踏まえ,
2685 更にB県知事が調査した結果,
2686 2015年になって,
2687
2688 D井戸にもG井戸にも本件土地からの汚染が広がっていたことが判明した。
2689
2690 EはD井戸の水を長
2691 年飲んだことによって末梢神経に異常をきたしており,
2692 また,
2693 そのことを知ったFは自分もいつ
2694 発症するかと考え不安な日々を送っている。
2695
2696 この場合において,
2697 E及びFは,
2698 誰に対してどのよ
2699 うな請求ができるか。
2700
2701 なお,
2702 時効については考えなくてよい。
2703
2704
2705
2706 - 30 -
2707
2708 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
2709
2710 - 31 -
2711
2712 [国際関係法(公法系)]
2713 〔第1問〕(配点:50)
2714 X国,
2715 Y国及びZ国は国際連合(以下「国連」という。
2716
2717 )加盟国で,
2718 Y国は国連安全保障理事会
2719 (以下「国連安保理」という。
2720
2721 )の常任理事国である。
2722
2723 X国,
2724 Y国及びZ国は,
2725 いずれも「民間航
2726 空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」(以下「モントリオール条約」という。
2727
2728 )の当事
2729 国であり,
2730 いずれもモントリオール条約批准時に同条約第1条に定義する行為を国内刑法上の犯罪
2731 とし,
2732 当該犯罪行為に重い刑罰を科すとともに,
2733 同条約第5条1及び2に定める場合に,
2734 上記犯罪
2735 行為に自国の裁判権を設定するための必要な国内法改正を行っていた。
2736
2737 また,
2738 Z国は同国の国内法
2739 で,
2740 上記犯罪が国外で自国の国民に対して行われた場合も自国の裁判権を行使することを定めてい
2741 たが,
2742 X国及びY国の国内法はこのような裁判権の設定をしていない。
2743
2744
2745 Y国法人が運航するY国登録の民間航空機が,
2746 Y国からZ国に向けて飛行中に公海上空で爆破さ
2747 れ,
2748 Y国籍の乗員乗客150名とZ国籍の乗客10名が死亡した。
2749
2750 4年後,
2751 同事件の実行犯がX国
2752 籍の甲であり,
2753 甲がX国領域内に所在することを突き止めたY国及びZ国の各警察当局は,
2754 当該犯
2755 罪行為がモントリオール条約第1条1(b)に定める業務中の航空機を破壊する行為に当たるとし
2756 て,
2757 それぞれ,
2758 同行為を犯罪化した自国の刑法を適用して甲の逮捕状の発付を受けた。
2759
2760 X国とY国
2761 の間及びX国とZ国の間には犯罪人引渡条約は締結されていなかったが,
2762 Y国とZ国はそれぞれX
2763 国に対して甲の仮拘禁を要請し,
2764 それに続いて甲の引渡しを請求した。
2765
2766 X国の逃亡犯罪人引渡法は,
2767
2768 犯罪人引渡条約の存在を引渡しの条件としていないが,
2769 同法は自国民の引渡しを禁止している。
2770
2771 X
2772 国の警察当局は,
2773 自国の法令に基づき甲を仮拘禁した後,
2774 事実についての予備調査を行う一方,
2775 甲
2776 が自国民であるので,
2777 甲のY国及びZ国への引渡しについては拒否した。
2778
2779 しかし,
2780 X国の警察当局
2781 は,
2782 その後3年を経ても,
2783 同国における財政事情により十分な捜査人員を確保できていないとして,
2784
2785 甲に関する事件を,
2786 訴追のために検察当局へ付託しなかった。
2787
2788
2789 そこで,
2790 Y国は,
2791 政府内で,
2792 「国連安保理に『安全保障理事会は,
2793 X国による甲の引渡し及び訴
2794 追の拒否が国際の平和と安全に対する脅威を構成すると決定し,
2795 国連憲章第7章の下に行動して,
2796
2797 X国に対して甲をY国に引き渡すよう決定する』という決議案を提出し,
2798 その決定を受けて甲の身
2799 柄を確保すべきである」という強い意見もあったものの,
2800 最終的には,
2801 モントリオール条約第14
2802 条1に従い,
2803 X国を相手として本事件を国際司法裁判所(以下「ICJ」という。
2804
2805 )に提訴するこ
2806 とを決定した。
2807
2808 そして,
2809 Y国は,
2810 ICJに「@X国は甲が本件犯罪行為の容疑者であることを認識
2811 しながら甲のY国への引渡しを拒否し,
2812 その後3年を経ても,
2813 X国の財政事情を口実にして,
2814 甲を
2815 訴追するために,
2816 権限のあるX国当局に当該事件を付託することを怠っていることにより,
2817 モント
2818 リオール条約第7条に継続的に違反していること,
2819 Aしたがって,
2820 甲を直ちにY国に引き渡すこと
2821 によって国際違法行為を停止する義務があること」を宣言するように請求した。
2822
2823
2824 Z国も,
2825 モントリオール条約第14条1に従い,
2826 X国を相手として,
2827 X国による同条約第7条の
2828 継続的違反行為の停止を請求する訴えをICJに提起した。
2829
2830 この訴えにおいて,
2831 Z国は自国の原告
2832 適格につき,
2833 「被害者の国籍に関係なく,
2834 Z国がモントリオール条約の当事国であることに基づい
2835 て,
2836 X国による継続的違反行為の停止を請求する原告適格を有する」と主張した。
2837
2838
2839 以上を踏まえて,
2840 下記の設問に答えなさい。
2841
2842
2843 〔設
2844
2845 問〕
2846
2847 1.ICJに対するY国の請求に対して,
2848 ICJはどのような判決を出し得るかを論じなさい。
2849
2850
2851 管轄権の問題は論じなくてよい。
2852
2853
2854 2.Y国政府内で強い意見があったとされている国連安保理決議案を,
2855 Y国が実際に国連安保理
2856 に提出し,
2857 同案が国連安保理決定として採択されたとする。
2858
2859 これに対し,
2860 X国が「X国とY国
2861 の間にはモントリオール条約が締結されているから,
2862 甲のY国への引渡しについては,
2863 X国は
2864
2865 - 32 -
2866
2867 同条約の規定に従って対応する権利を有している」と主張した場合に,
2868 Y国はどのような反論
2869 ができるかを論じなさい。
2870
2871
2872 3.原告適格に関するZ国の主張を国際法に照らして評価しなさい。
2873
2874
2875 【参考資料】モントリオール条約
2876 この条約の締約国は,
2877
2878 民間航空の安全に対する不法な行為が人及び財産の安全を害し,
2879 航空業務の運営に深刻な影響を及
2880 ぼし,
2881 また,
2882 民間航空の安全に対する世界の諸国民の信頼を損なうものであることを考慮し,
2883
2884 そのような行為の発生が重大な関心事であることを考慮し,
2885
2886 そのような行為を抑止する目的をもつて犯人の処罰のための適当な措置を緊急に講ずる必要がある
2887 ことを考慮して,
2888
2889 次のとおり協定した。
2890
2891
2892 第1条
2893
2894 1
2895
2896 不法かつ故意に行う次の行為は,
2897 犯罪とする。
2898
2899
2900
2901 (a)
2902
2903 (略)
2904
2905 (b)
2906
2907 業務中の航空機を破壊し,
2908 又は業務中の航空機に対しその飛行を不能にする損害若しくは
2909 飛行中のその安全を損なうおそれがある損害を与える行為
2910
2911 (c)〜(e)
2912 2
2913
2914 (略)
2915
2916 (略)
2917
2918 第5条
2919
2920 1
2921
2922 いずれの締約国も,
2923 次の場合には,
2924 犯罪行為につき自国の裁判権を設定するために必要
2925
2926 な措置をとる。
2927
2928
2929 (a)
2930
2931 犯罪行為が当該締約国の領域内において行われた場合
2932
2933 (b)
2934
2935 犯罪行為が当該締約国において登録された航空機に対し又はその機内で行われた場合
2936
2937 (c)
2938
2939 機内で犯罪行為の行われた航空機が容疑者を乗せたまま当該締約国の領域内に着陸する場
2940 合
2941
2942 (d)
2943
2944 犯罪行為が,
2945 当該締約国内に主たる営業所を有する賃借人若しくは主たる営業所を有しな
2946 いが当該締約国内に住所を有する賃借人に対して乗組員なしに賃貸された航空機に対し又は
2947 その機内で行われた場合
2948
2949 2
2950
2951 容疑者が領域内に所在する締約国は,
2952 1(a),
2953 (b),
2954 (c)又は(d)の場合に該当する他のい
2955 ずれの締約国に対しても第8条の規定に従つてその容疑者を引き渡さない場合に第1条1(a)か
2956 ら(c)までに定める犯罪行為及びこれらの犯罪行為に係る同条2に定める犯罪行為につき自国の
2957 裁判権を設定するため,
2958 必要な措置をとる。
2959
2960
2961
2962 3
2963
2964 この条約は,
2965 国内法に従つて行使される刑事裁判権を排除するものではない。
2966
2967
2968
2969 第6条
2970
2971 1
2972
2973 犯人又は容疑者が領域内に所在する締約国は,
2974 状況によつて正当であると認める場合に
2975
2976 は,
2977 その者の所在を確実にするため抑留その他の措置をとる。
2978
2979 この措置は,
2980 当該締約国の法令に定
2981 めるところによるものとするが,
2982 刑事訴訟手続又は犯罪人引渡手続を開始するために必要とする期
2983 間に限つて継続することができる。
2984
2985
2986 2
2987
2988 1の措置をとつた締約国は,
2989 事実について直ちに予備調査を行う。
2990
2991
2992
2993 3
2994
2995 1の規定に基づいて抑留された者は,
2996 その国籍国の最寄りの適当な代表と直ちに連絡をとるため
2997 の援助を与えられる。
2998
2999
3000
3001 4
3002
3003 いずれの国も,
3004 この条の規定に基づいていずれかの者を抑留する場合には,
3005 前条1(a),
3006
3007 (b),
3008
3009 (c)又は(d)の場合に該当する国,
3010 抑留された者の国籍国及び適当と認めるときはその他の利
3011 害関係国に対し,
3012 その者が抑留されている事実及びその抑留が正当とされる事情を直ちに通告する。
3013
3014
3015 2の予備調査を行つた国は,
3016 その結果をこれらの国に対して直ちに報告するものとし,
3017 かつ,
3018 自国
3019 が裁判権を行使する意図を有するかどうかを明示する。
3020
3021
3022
3023 第7条
3024
3025 容疑者が領域内で発見された締約国は,
3026 その容疑者を引き渡さない場合には,
3027 当該犯罪行為
3028
3029 - 33 -
3030
3031 が自国の領域内で行われたものであるかどうかを問わず,
3032 いかなる例外もなしに,
3033 訴追のため自国
3034 の権限ある当局に事件を付託する義務を負う。
3035
3036 その当局は,
3037 自国の法令に規定する通常の重大な犯
3038 罪の場合と同様の方法で決定を行う。
3039
3040
3041 第8条
3042 3
3043
3044 1,
3045 2
3046
3047 (略)
3048
3049 条約の存在を犯罪人引渡しの条件としない締約国は,
3050 犯罪人引渡しの請求を受けた国の法令に定
3051 める条件に従い,
3052 相互間で,
3053 犯罪行為を引渡犯罪と認める。
3054
3055
3056
3057 4
3058
3059 各犯罪行為は,
3060 締約国間の犯罪人引渡しに関しては,
3061 当該犯罪行為が行われた場所のみでなく,
3062
3063 第5条1(b),
3064 (c)又は(d)の規定に従つて裁判権を設定すべき国の領域内においても行われ
3065 たものとみなす。
3066
3067
3068
3069 第14条
3070
3071 1
3072
3073 この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によつて解決することができ
3074
3075 ないものは,
3076 それらの締約国のうちいずれか一国の要請によつて仲裁に付託される。
3077
3078 紛争当事国が
3079 仲裁の要請の日から六箇月以内に仲裁の組織について合意に達しない場合には,
3080 それらの紛争当事
3081 国のうちいずれの一国も,
3082 国際司法裁判所規程に従つて国際司法裁判所に紛争を付託することがで
3083 きる。
3084
3085
3086 2,
3087 3
3088
3089 (略)
3090
3091 - 34 -
3092
3093 〔第2問〕(配点:50)
3094 X国はY国に隣接する小国であり,
3095 Y国は,
3096 海洋に面した経済大国である。
3097
3098 Y国に所在するY国法人
3099 である会社甲社及び乙社は,
3100 Y国内の大規模な工場で石油からガソリンを精製し販売している。
3101
3102 X国に
3103 はガソリンを精製する会社がなく,
3104 ガソリンを甲社及び乙社からの輸入に全面的に依存している。
3105
3106 とこ
3107 ろが,
3108 甲社及び乙社は,
3109 談合の上,
3110 ガソリンの供給量を減少させた。
3111
3112 この結果,
3113 X国及びY国における
3114 ガソリンの価格は2倍になった。
3115
3116 そこで,
3117 Y国の公正取引委員会は,
3118 甲社及び乙社の上記行為がY国の
3119 独占禁止法に違反する行為に当たるとして,
3120 甲社及び乙社に対して,
3121 制裁金を科すための審査手続を開
3122 始した。
3123
3124 他方,
3125 X国の公正取引委員会も,
3126 甲社及び乙社の行為がX国の独占禁止法に違反するとして,
3127
3128 Y国に所在する甲社及び乙社に対し,
3129 制裁金を科すための審査を開始すると決定した。
3130
3131 Y国は,
3132 X国に
3133 よる同国の独占禁止法の適用は国際法違反であると主張した。
3134
3135 それにもかかわらず,
3136 X国の公正取引委
3137 員会の担当官は,
3138 Y国に所在する甲社及び乙社に赴き,
3139 本件談合に係る可能性のある資料を提出するよ
3140 うに命じる書面を手交した。
3141
3142 X国の独占禁止法では,
3143 提出命令を拒否した場合には,
3144 制裁金が科される
3145 こととなっている。
3146
3147
3148 ところで,
3149 この事件の5年後に,
3150 甲社は,
3151 石油を用いてプラスチック製品を作る工場を,
3152 X国との国
3153 境付近のY国領域内に建設することを計画した。
3154
3155 Y国政府は,
3156 工場からの排水に含まれ得る有害物質に
3157 ついて,
3158 Y国の国内法に定める環境基準に照らし,
3159 十分な対策がとられていることを事前に確認の上,
3160
3161 その建設及び稼働を許可した。
3162
3163 そこで,
3164 甲社は計画に従って工場を完成させた上,
3165 同環境基準に従った
3166 操業を行っていた。
3167
3168 しかし,
3169 ある時,
3170 同工場で作業員によって同環境基準に違反する操業が行われた。
3171
3172
3173 このため,
3174 同工場から出された汚染排水が地下水を通じてX国に流入し,
3175 X国民に対し,
3176 重い健康被害
3177 を広範囲にもたらした。
3178
3179 そこで,
3180 X国政府は,
3181
3182 「X国民に被害が出た以上は,
3183 Y国は,
3184 発生した損害に
3185 ついて,
3186 Y国政府として責任を負わなければならない」と主張した。
3187
3188 その後,
3189 Y国政府は,
3190 甲社の上記
3191 工場からの排水について検査を行い,
3192 同国国内法に定める環境基準の遵守を徹底するように甲社に命令
3193 した。
3194
3195 これを受けて甲社は,
3196 直ちに同工場に当該環境基準の徹底遵守を指示するとともに,
3197 同工場に新
3198 しい排水浄化装置を設置した。
3199
3200 甲社は,
3201 新設した排水浄化装置は最先端の設備であり,
3202 現在の科学的知
3203 見に従えば,
3204 排出される有害物質の量は微小で,
3205 その人体への影響は完全に無視できるほど小さいと主
3206 張している。
3207
3208 これに対しX国は,
3209 甲社の主張に対抗する有力な科学的見解があり,
3210 同見解に従えば依然
3211 として健康被害が引き起こされる可能性は十分にあると主張している。
3212
3213 X国は,
3214 Y国を相手取り,
3215 甲社
3216 の上記工場の操業停止を求めて国際司法裁判所に提訴し,
3217 同時に,
3218 甲社の同工場の操業を直ちに差し止
3219 めるようにY国に命じる暫定措置を要請した。
3220
3221 X国とY国は,
3222 共に国際司法裁判所規程の当事国であり,
3223
3224 選択条項受諾宣言をしている。
3225
3226
3227 以上を踏まえて,
3228 下記の設問に答えなさい。
3229
3230
3231 〔設 問〕
3232 1.甲社及び乙社が談合の上ガソリンの供給量を減少させ価格を引き上げた行為に対してX国の独占
3233 禁止法を適用することは国際法違反であるというY国の主張に対して,
3234 X国はどのような反論をな
3235 し得るか論じなさい。
3236
3237
3238 また,
3239 X国の公正取引委員会の担当官が談合に係る可能性のある資料を提出するように命じる書
3240 面をY国において手交した行為に対して,
3241 Y国は,
3242 執行管轄権の観点からどのような主張ができる
3243 か論じなさい。
3244
3245
3246 2.X国政府の「X国民に被害が出た以上は,
3247 Y国は,
3248 発生した損害について,
3249 Y国政府として責任
3250 を負わなければならない」という主張に対して,
3251 Y国は,
3252 国際法上,
3253 どのような反論をなし得るか
3254 を論じなさい。
3255
3256 X国政府のこの主張以降にY国政府のとった措置は考慮しなくてよい。
3257
3258
3259 3.国際司法裁判所において,
3260 X国は,
3261 暫定措置を要請するに当たり,
3262 甲社の工場の操業を差し止め
3263 る必要性を,
3264 どのような根拠で主張し得るかについて論じなさい。
3265
3266
3267
3268 - 35 -
3269
3270 - 36 -
3271
3272 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
3273
3274 - 37 -
3275
3276 [国際関係法(私法系)]
3277 〔第1問〕(配点:50)
3278 共に甲国人であった男Xと女Yは,
3279 1995年に甲国において甲国法に従い婚姻した。
3280
3281 Xは,
3282 婚
3283 姻の直後に甲国に所在するA建物の所有権を取得した。
3284
3285 その後,
3286 2000年にXとYはともに来日
3287 し,
3288 飲食業を営みながら日本で婚姻生活を営んでいた。
3289
3290 その事業は順調に発展し,
3291 Xは,
3292 来日後約
3293 10年を経過した2010年に日本に所在するB土地の所有権を取得し,
3294 2012年には日本に所
3295 在するC土地の所有権も取得した。
3296
3297 なお,
3298 XとYは,
3299 C土地の所有権取得の前年である2011年
3300 に日本に帰化し,
3301 双方とも,
3302 日本の国籍だけを有するに至った。
3303
3304
3305 2015年にXが死亡し,
3306 Yが相続すべきXの財産の範囲を日本の裁判所は確定しなければなら
3307 ない。
3308
3309 XとYの婚姻は有効に成立しており,
3310 甲国法は次の規定を有しているものとして,
3311 以下の設
3312 問に答えなさい。
3313
3314
3315 【甲国国際私法】
3316 @
3317
3318 夫婦財産制は,
3319 夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により,
3320 その法がない場合におい
3321 て夫婦の本国法が同一であるときはその法による。
3322
3323
3324
3325 【甲国民法】
3326 A
3327
3328 夫婦の一方が婚姻中に取得した財産は,
3329 夫婦の共有に属する財産とする。
3330
3331
3332
3333 B
3334
3335 Aの規定にかかわらず,
3336 夫婦は,
3337 婚姻前又は婚姻中いつでも,
3338 その財産について書面により夫
3339 婦財産契約を締結できる。
3340
3341
3342
3343 〔設
3344
3345 問〕
3346
3347 1.XとYは,
3348 婚姻前からXの死亡までの全期間を通じて,
3349 その財産関係につきいかなる合意も
3350 していなかったとする。
3351
3352 次の物に関する夫婦財産制には,
3353 いずれの国の法が適用されるか。
3354
3355
3356
3357
3358 A建物
3359
3360
3361
3362 B土地
3363
3364
3365
3366 C土地
3367
3368 2.XとYは,
3369 婚姻後,
3370 来日する前に,
3371 「A建物の所有権はXの特有財産とする」旨の夫婦財産
3372 契約を甲国において書面により締結していたとすると,
3373 XとYとの間において,
3374 A建物の所有
3375 権はXの特有財産となり得るか。
3376
3377
3378 3.XとYは,
3379 来日直後に,
3380 双方の署名と日付のある書面により,
3381 「婚姻中に取得される財産に
3382 ついて,
3383 夫婦の財産関係は甲国法による」旨の合意をしていたとする。
3384
3385 XとYとの間における
3386 この合意の効力について,
3387 次の問いに答えなさい。
3388
3389
3390
3391
3392 この合意により,
3393 C土地の所有権に関するXとYの財産関係には,
3394 いずれの国の法が適用
3395 されるか。
3396
3397
3398
3399
3400
3401 この合意に,
3402 「ただし,
3403 日本に所在する土地については日本法による」との合意が付加さ
3404
3405 れていたとすると,
3406 B土地の所有権に関するXとYの財産関係には,
3407 いずれの国の法が適用
3408 されるか。
3409
3410
3411
3412 - 38 -
3413
3414 〔第2問〕(配点:50)
3415 Xは,
3416 日本に主たる営業所を有する日本法人であり,
3417 Yは,
3418 甲国に主たる営業所を有する甲国法
3419 人である。
3420
3421 XとYは,
3422 それぞれの国において,
3423 化粧品を製造・販売している。
3424
3425
3426 〔設
3427
3428 問〕
3429
3430 1.Yは,
3431 日本の市場に初めて進出するに際し,
3432 自社製品と近い商品を扱っているXが日本の顧
3433 客から注文をとる代理人として適切であると考え,
3434 Xとの間で次の趣旨の合意を含む委任契約
3435 を締結した。
3436
3437 すなわち,
3438 「Xは,
3439 日本における顧客との間で,
3440 Yの名前と計算により売買契約
3441 を締結する」,
3442
3443 「Yは,
3444 その商品を顧客に直接送付し,
3445 その代金のうちから手数料をXに支払う」
3446 というものである。
3447
3448 XとYは委任契約の準拠法として甲国法を選択したものとして,
3449 次の問い
3450 に答えなさい。
3451
3452
3453
3454
3455 XとYとの間において,
3456 Xが代理権を有するか否かは,
3457 いずれの国の法で判断すべきか。
3458
3459
3460
3461 日本における顧客である小売業者Tとの間でXがした売買契約の効力がYに及ぶか否かは,
3462
3463 いずれの国の法で判断すべきか。
3464
3465
3466 2.その後,
3467 日本の市場において自社製品が知られるようになったために,
3468 Yは,
3469 自社製品を日
3470 本において大量に販売すべく,
3471 Xとの間で次の趣旨の基本契約を締結した。
3472
3473 すなわち,
3474
3475 「Yは,
3476
3477 Xに対して,
3478 Xの名前と計算によりYの製品を日本において販売する権利を許諾する」,
3479
3480 「Yは,
3481
3482 10年の期間,
3483 日本においてはXのみを販売店とし,
3484 X以外の者を販売店とはしない」,
3485
3486 「Xは,
3487
3488 この基本契約に基づいて締結される個別の売買契約に従い,
3489 Yから商品を購入する」というも
3490 のである。
3491
3492 しかし,
3493 数年後,
3494 Xの販売実績に不満を持ったYは,
3495 日本に主たる営業所を有する
3496 日本法人Wを日本における販売店に加えた。
3497
3498 国際物品売買契約に関する国際連合条約の適用は
3499 ないものとして,
3500 次の問いに答えなさい。
3501
3502
3503
3504
3505 Xは,
3506 Wを販売店に加えることはXに日本における独占的販売権を認めた基本契約上の債
3507 務の不履行に該当するとして,
3508 Yに対して損害の賠償を求め,
3509 日本の裁判所に訴えを提起し
3510 た。
3511
3512
3513 ア.XとYとの間に国際裁判管轄につき合意がなかった場合において,
3514 日本の裁判所の国際
3515 裁判管轄権を基礎付ける事由を1つだけ挙げなさい。
3516
3517 なお,
3518 Yは,
3519 日本に営業所や財産を
3520 一切有していないものとする。
3521
3522
3523 イ.XとYとの間に,
3524 「本契約から発生する全ての紛争は,
3525 甲国裁判所が国際裁判管轄権を
3526 有する」との書面による合意があったとする。
3527
3528 日本の裁判所は国際裁判管轄権を有し得る
3529 か。
3530
3531
3532
3533
3534
3535 Xは,
3536 Yが日本におけるXの独占的販売権を侵害したとして,
3537 Yに対して不法行為に基づ
3538 く損害賠償を求めている。
3539
3540 XとYが基本契約の準拠法として甲国法を選択していた場合に,
3541
3542 この不法行為に基づく損害賠償請求には,
3543 いずれの国の法が適用されるか。
3544
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