1 平成27年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨
2 [憲
3
4 法]
5
6 違憲審査権の憲法上の根拠や限界について,
7 後記の〔設問〕にそれぞれ答えなさい。
8
9
10 〔設問1〕
11 違憲審査権に関し,
12 次のような見解がある。
13
14
15 「憲法第81条は,
16 最高裁判所に,
17 いわゆる違憲審査権を認めている。
18
19 ただし,
20 この条文が
21 なくても,
22 一層根本的な考え方からすれば,
23 憲法の最高法規性を規定する憲法第98条,
24 裁判
25 官は憲法に拘束されると規定する憲法第76条第3項,
26 そして裁判官の憲法尊重擁護義務を規
27 定する憲法第99条から,
28 違憲審査権は十分に抽出され得る。
29
30
31 上記見解に列挙されている各条文に即して検討しつつ,
32 違憲審査権をめぐる上記見解の妥当
33 性について,
34 あなた自身の見解を述べなさい。
35
36 (配点:20点)
37 〔設問2〕
38 内閣は,
39 日本経済のグローバル化を推進するために農産物の市場開放を推し進め,
40 何よりも
41 X国との間での貿易摩擦を解消することを目的として,
42 X国との間で農産物の貿易自由化に関
43 する条約(以下「本条約」という。
44
45 )を締結した。
46
47 国会では,
48 本条約の承認をめぐって議論が紛
49 糾したために,
50 事前の承認は得られなかった。
51
52 国会は,
53 これを事後に承認した。
54
55
56 内閣が本条約上の義務を履行する措置を講じた結果,
57 X国からの農産物輸入量が飛躍的に増
58 加し,
59 日本の食料自給率は20パーセントを下回るまでになることが予想される状況となった。
60
61
62 ちなみに,
63 X国の食料自給率は100パーセントを超えており,
64 世界的に見ても60から70
65 パーセントが平均的な数字で,
66 先進国で20パーセントを切る国はない。
67
68
69 農業を営むAは,
70 X国から輸入が増大したものと同じ種類の農産物を生産していたが,
71 X国
72 と日本とでは農地の規模が異なるため大量生産ができず,
73 価格競争力において劣るため,
74 農業
75 を継続することが困難な状況にある。
76
77 Aは,
78 本条約は,
79 農業を営む者の生存権や職業選択の自
80 由を侵害するのみならず,
81 国民生活の安定にとって不可欠な食料自給体制を崩壊させる違憲な
82 条約であるとして訴訟を提起した。
83
84 これに対して,
85 被告となった国から本条約は違憲審査の対
86 象とならない旨の主張がなされ,
87 この点が争点となった。
88
89
90 本条約が違憲審査の対象となるか否か,
91 及び本条約について憲法判断を行うべきか否かに関し
92 て,
93 Aの主張及び想定される国の主張を簡潔に指摘し,
94 その上でこれらの点に関するあなた自身
95 の見解を述べなさい。
96
97 (配点:30点)
98
99 (出題趣旨)
100 本年は,
101 憲法上の基本的論点である,
102 裁判所の違憲審査権の憲法上の根拠及び限
103 界に関する問題である。
104
105
106 設問1は,
107 裁判所の違憲審査権の憲法上の根拠に関する問題である。
108
109 日本国憲法
110 は,
111 アメリカ合衆国憲法とは異なり,
112 裁判所の違憲審査権に関する明文の規定とし
113 て第81条を置いている。
114
115 もっとも,
116 昭和23年最高裁判決(最大判昭和23年7
117 月8日刑集2巻8号801頁)は,
118 アメリカのマーベリー対マディソン判決(18
119 03年)を引きつつ,
120 第81条の規定がなくとも,
121 日本国憲法の他の規定から裁判
122 所の違憲審査権が導かれると判示した。
123
124 設問1は,
125 この判示を題材として,
126 憲法の
127
128 条文解釈として,
129 裁判所の違憲審査権の根拠に関する論述を求めるものである。
130
131
132 文解釈は,
133 法曹が有すべき基礎的能力として当然に求められるものである。
134
135 設問1
136 では,
137 その問題文にも明記されているとおり,
138 条文から離れた観念的・抽象的な議
139 論ではなく,
140 具体的な条文の文言及びその解釈を踏まえた論述が求められる。
141
142
143 次に,
144 判例は,
145 司法権に関する第76条があって,
146 その上での第81条であると
147 位置付けていることからすると,
148 司法権の限界が違憲審査権の限界でもあることに
149 なる。
150
151 設問2は,
152 憲法と条約の関係という基本的問題を題材として,
153 その限界を問
154 う事例問題である。
155
156 設問2では,
157 その問題文にも明記されているとおり,
158 本条約が
159 そもそも違憲審査の対象となるか否か,
160 対象となるとして本条約について憲法判断
161 を行うべきか否かに関して,
162 判例及び学説に関する基本的な知識を踏まえて検討す
163 ることが求められる。
164
165 すなわち,
166 判例及び多数の学説が肯定するいわゆる統治行為
167 論を含め,
168 憲法と条約の関係や本条約に対する違憲審査の可否等につき,
169 一般的理
170 論の論拠及びその射程範囲,
171 その上での事案の内容に応じた具体的検討についての
172 論述が求められる。
173
174
175
176 [行政法]
177 A県に存するB川の河川管理者であるA県知事は,
178 1983年,
179 B川につき,
180 河川法第6条第
181 1項第3号に基づく河川区域の指定(以下「本件指定」という。
182
183 )を行い,
184 公示した。
185
186 本件指定は,
187
188 縮尺2500分の1の地図に河川区域の境界を表示した図面(以下「本件図面」という。
189
190 )によっ
191 て行われた。
192
193
194 Cは,
195 2000年,
196 B川流水域の渓谷にキャンプ場(以下「本件キャンプ場」という。
197
198 )を設置
199 し,
200 本件キャンプ場内にコテージ1棟(以下「本件コテージ」という。
201
202 )を建築した。
203
204 その際,
205
206 は,
207 本件コテージの位置につき,
208 本件図面が作成された1983年当時と土地の形状が変化してい
209 るため不明確ではあるものの,
210 本件図面に表示された河川区域の境界から数メートル離れており,
211
212 河川区域外にあると判断し,
213 本件コテージの建築につき河川法に基づく許可を受けなかった。
214
215 そし
216 て,
217 河川法上の問題について,
218 2014年7月に至るまで,
219 A県知事から指摘を受けることはなか
220 った。
221
222
223 2013年6月,
224 A県知事は,
225 Cに対し,
226 本件コテージにつき建築基準法違反があるとして是正
227 の指導(以下「本件指導」という。
228
229 )をした。
230
231 Cは,
232 本件指導に従うには本件コテージの大規模な
233 改築が必要となり多額の費用を要するため,
234 ちゅうちょしたが,
235 本件指導に従わなければ建築基準
236 法に基づく是正命令を発すると迫られ,
237 やむなく本件指導に従って本件コテージを改築した。
238
239 Cは,
240
241 本件コテージの改築を決断する際,
242 本件指導に携わるA県の建築指導課の職員Dに対し,
243 「本件コ
244 テージは河川区域外にあると理解しているが間違いないか。
245
246 」と尋ねた。
247
248 Dは,
249 A県の河川課の担
250 当職員Eに照会したところ,
251 Eから「測量をしないと正確なことは言えないが,
252 今のところ,
253 本件
254 コテージは河川区域外にあると判断している。
255
256 」旨の回答を受けたので,
257 その旨をCに伝えた。
258
259
260 2014年7月,
261 A県外にある他のキャンプ場で河川の急激な増水による事故が発生したことを
262 契機として,
263 A県知事は本件コテージの設置場所について調査した。
264
265 そして,
266 本件コテージは,
267
268 件指定による河川区域内にあると判断するに至った。
269
270 そこで,
271 A県知事は,
272 Cに対し,
273 行政手続法
274 上の手続を執った上で,
275 本件コテージの除却命令(以下「本件命令」という。
276
277 )を発した。
278
279
280 Cは,
281 本件命令の取消しを求める訴訟(以下「本件取消訴訟」という。
282
283 )を提起し,
284 本件コテー
285 ジが本件指定による河川区域外にあることを主張している。
286
287 さらに,
288 Cは,
289 このような主張に加え
290 て,
291 本件コテージが本件指定による河川区域内にあると仮定した場合にも,
292 本件命令の何らかの違
293 法事由を主張することができるか,
294 また,
295 本件取消訴訟以外に何らかの行政訴訟を提起することが
296 できるかという点を,
297 明確にしておきたいと考え,
298 弁護士Fに相談した。
299
300 Fの立場に立って,
301 以下
302 の設問に答えなさい。
303
304 なお,
305 河川法及び同法施行令の抜粋を資料として掲げるので,
306 適宜参照しな
307 さい。
308
309
310 〔設問1〕
311 本件取消訴訟以外にCが提起できる行政訴訟があるかを判断する前提として,
312 本件指定が抗告
313 訴訟の対象となる処分に当たるか否かを検討する必要がある。
314
315 本件指定の処分性の有無に絞り,
316
317 河川法及び同法施行令の規定に即して検討しなさい。
318
319 なお,
320 本件取消訴訟以外にCが提起できる
321 行政訴訟の有無までは,
322 検討しなくてよい。
323
324
325 〔設問2〕
326 本件コテージが本件指定による河川区域内にあり,
327 本件指定に瑕疵はないと仮定した場合,
328
329 は,
330 本件取消訴訟において,
331 本件命令のどのような違法事由を主張することが考えられるか。
332
333
334 た,
335 当該違法事由は認められるか。
336
337
338
339 【資
340
341
342 料】
343 河川法(昭和39年7月10日法律第167号)(抜粋)
344
345 (河川区域)
346 第6条
347
348
349 この法律において「河川区域」とは,
350 次の各号に掲げる区域をいう。
351
352
353 河川の流水が継続して存する土地及び地形,
354 草木の生茂の状況その他その状況が河川の流水が
355
356 継続して存する土地に類する状況を呈している土地(中略)の区域
357
358
359 (略)
360
361
362
363 堤外の土地(中略)の区域のうち,
364 第1号に掲げる区域と一体として管理を行う必要があるも
365 のとして河川管理者が指定した区域 〔注:「堤外の土地」とは,
366 堤防から見て流水の存する側の
367 土地をいう。
368
369
370
371 2・3
372
373
374 (略)
375
376 河川管理者は,
377 第1項第3号の区域(中略)を指定するときは,
378 国土交通省令で定めるところに
379 より,
380 その旨を公示しなければならない。
381
382 これを変更し,
383 又は廃止するときも,
384 同様とする。
385
386
387
388 5・6
389
390 (略)
391
392 (河川の台帳)
393 第12条
394
395 河川管理者は,
396 その管理する河川の台帳を調製し,
397 これを保管しなければならない。
398
399
400
401
402
403 河川の台帳は,
404 河川現況台帳及び水利台帳とする。
405
406
407
408
409
410 河川の台帳の記載事項その他その調製及び保管に関し必要な事項は,
411 政令で定める。
412
413
414
415
416
417 河川管理者は,
418 河川の台帳の閲覧を求められた場合においては,
419 正当な理由がなければ,
420 これを
421 拒むことができない。
422
423
424
425 (工作物の新築等の許可)
426 第26条
427
428 河川区域内の土地において工作物を新築し,
429 改築し,
430 又は除却しようとする者は,
431 国土
432
433 交通省令で定めるところにより,
434 河川管理者の許可を受けなければならない。
435
436 (以下略)
437 2〜5
438
439 (略)
440
441 (河川管理者の監督処分)
442 第75条
443
444 河川管理者は,
445 次の各号のいずれかに該当する者に対して,
446 (中略)工事その他の行為の
447
448 中止,
449 工作物の改築若しくは除却(中略),
450 工事その他の行為若しくは工作物により生じた若しく
451 は生ずべき損害を除去し,
452 若しくは予防するために必要な施設の設置その他の措置をとること若し
453 くは河川を原状に回復することを命ずることができる。
454
455
456
457
458 この法律(中略)の規定(中略)に違反した者(以下略)
459
460 二・三
461
462 (略)
463
464 2〜10
465
466 (略)
467
468 第102条
469
470 次の各号のいずれかに該当する者は,
471 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
472
473
474
475
476
477 (略)
478
479
480
481 第26条第1項の規定に違反して,
482 工作物の新築,
483 改築又は除却をした者
484
485
486
487 (略)
488
489
490
491 河川法施行令(昭和40年2月11日政令第14号)(抜粋)
492
493 (河川現況台帳)
494 第5条
495
496
497 (略)
498
499 河川現況台帳の図面は,
500 付近の地形及び方位を表示した縮尺2500分の1以上(中略)の平面
501 図(中略)に,
502 次に掲げる事項について記載をして調製するものとする。
503
504
505
506
507 河川区域の境界
508
509 二〜九
510
511 (略)
512
513 (出題趣旨)
514 本問は,
515 事案及び関係行政法規に即して,
516 行政訴訟及び行政法の一般原則につい
517 ての基本的な知識及び理解を運用する能力を試す趣旨の問題である。
518
519 設問1は,
520
521 川管理者による河川区域の指定の処分性を問うものである。
522
523 特定の者を名宛人とせ
524 ずに特定の区域における土地利用を制限する行政庁の決定の処分性に関する最高裁
525 判所の判例の趣旨を踏まえ,
526 河川区域の指定の法的効果を河川法及び同法施行令の
527 規定に即して検討し,
528 処分性認定の要件に結びつけて論じることが求められる。
529
530
531 問2は,
532 河川区域内に無許可で設置され改築された工作物の除却命令の違法性を問
533 うものである。
534
535 最高裁判所昭和62年10月30日第三小法廷判決(判時1262
536 号91頁)の趣旨を踏まえ,
537 河川区域内における工作物の設置を規制する河川法の
538 趣旨との関係で,
539 信義則が適用されるのはどのような場合か,
540 そして,
541 信義則の適
542 用に当たっては,
543 行政庁による公的見解の表示の有無,
544 相手方が当該表示を信頼し
545 たことについての帰責事由の有無等の考慮が不可欠ではないかを検討した上で,
546
547 問の具体的な事実関係に即して,
548 信義則の適用により除却命令が違法となるか否か
549 について論じることが求められる。
550
551
552
553 [民
554
555 法]
556
557 次の文章を読んで,
558 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
559
560
561 【事実】
562 1.Aは,
563 A所有の甲建物において手作りの伝統工芸品を製作し,
564 これを販売業者に納入する事業
565 を営んできたが,
566 高齢により思うように仕事ができなくなったため,
567 引退することにした。
568
569
570 は,
571 かねてより,
572 長年事業を支えてきた弟子のBを後継者にしたいと考えていた。
573
574 そこで,
575
576 は,
577 平成26年4月20日,
578 Bとの間で,
579 甲建物をBに贈与する旨の契約(以下「本件贈与契
580 約」という。
581
582 )を書面をもって締結し,
583 本件贈与契約に基づき甲建物をBに引き渡した。
584
585 本件贈
586 与契約では,
587 甲建物の所有権移転登記手続は,
588 同年7月18日に行うこととされていたが,
589
590 は,
591 同年6月25日に疾病により死亡した。
592
593 Aには,
594 亡妻との間に,
595 子C,
596 D及びEがいるが,
597
598 他に相続人はいない。
599
600 なお,
601 Aは,
602 遺言をしておらず,
603 また,
604 Aには,
605 甲建物のほかにも,
606
607 宅建物等の不動産や預金債権等の財産があったため,
608 甲建物の贈与によっても,
609 C,
610 D及びE
611 の遺留分は侵害されていない。
612
613 また,
614 Aの死亡後も,
615 Bは,
616 甲建物において伝統工芸品の製作
617 を継続していた。
618
619
620 2.C及びDは,
621 兄弟でレストランを経営していたが,
622 その資金繰りに窮していたことから,
623 平成
624 26年10月12日,
625 Fとの間で,
626 甲建物をFに代金2000万円で売り渡す旨の契約(以下
627 「本件売買契約」という。
628
629 )を締結した。
630
631 本件売買契約では,
632 甲建物の所有権移転登記手続は,
633
634 同月20日に代金の支払と引換えに行うこととされていた。
635
636 本件売買契約を締結する際,
637 C及
638 びDは,
639 Fに対し,
640 C,
641 D及びEの間では甲建物をC及びDが取得することで協議が成立して
642 いると説明し,
643 その旨を確認するE名義の書面を提示するなどしたが,
644 実際には,
645 Eはそのよ
646 うな話は全く聞いておらず,
647 この書面もC及びDが偽造したものであった。
648
649
650 3.C及びDは,
651 平成26年10月20日,
652 Fに対し,
653 Eが遠方に居住していて登記の申請に必
654 要な書類が揃わなかったこと等を説明した上で謝罪し,
655 とりあえずC及びDの法定相続分に相
656 当する3分の2の持分について所有権移転登記をすることで許してもらいたいと懇願した。
657
658
659 れに対し,
660 Fは,
661 約束が違うとして一旦はこれを拒絶したが,
662 C及びDから,
663 取引先に対する
664 支払期限が迫っており,
665 その支払を遅滞すると仕入れができなくなってレストランの経営が困
666 難になるので,
667 せめて代金の一部のみでも支払ってもらいたいと重ねて懇願されたことから,
668
669 甲建物の3分の2の持分についてFへの移転の登記をした上で,
670 代金のうち1000万円を支
671 払うこととし,
672 その残額については,
673 残りの3分の1の持分と引換えに行うことに合意した。
674
675
676 そこで,
677 同月末までに,
678 C及びDは,
679 甲建物について相続を原因として,
680 C,
681 D及びEが各自
682 3分の1の持分を有する旨の登記をした上で,
683 この合意に従い,
684 C及びDの各持分について,
685
686 それぞれFへの移転の登記をした。
687
688
689 4.Fは,
690 平成26年12月12日,
691 甲建物を占有しているBに対し,
692 甲建物の明渡しを求めた。
693
694
695 Fは,
696 Bとの交渉を進めるうちに,
697 本件贈与契約が締結されたことや,
698 【事実】2の協議はされ
699 ていなかったことを知るに至った。
700
701
702 Fは,
703 その後も,
704 話し合いによりBとの紛争を解決することを望み,
705 Bに対し,
706 数回にわたり,
707
708 明渡猶予期間や立退料の支払等の条件を提示したが,
709 Bは,
710 甲建物において現在も伝統工芸品
711 の製作を行っており,
712 甲建物からの退去を前提とする交渉には応じられないとして,
713 Fの提案
714 をいずれも拒絶した。
715
716
717 5.Eは,
718 その後本件贈与契約の存在を知るに至り,
719 平成27年2月12日,
720 甲建物の3分の1
721 の持分について,
722 EからBへの移転の登記をした。
723
724
725 6.Fは,
726 Bが【事実】4のFの提案をいずれも拒絶したことから,
727 平成27年3月6日,
728 Bに
729
730 対し,
731 甲建物の明渡しを求める訴えを提起した。
732
733
734 〔設問1〕
735 FのBに対する【事実】6の請求が認められるかどうかを検討しなさい。
736
737
738 〔設問2〕
739 Bは,
740 Eに対し,
741 甲建物の全部については所有権移転登記がされていないことによって受けた
742 損害について賠償を求めることができるかどうかを検討しなさい。
743
744 なお,
745 本件贈与契約の解除に
746 ついて検討する必要はない。
747
748
749
750 (出題趣旨)
751 設問1は,
752 甲建物に関する権利関係を明らかにした上で,
753 甲建物の過半数の持分
754 を有する者が他の共有持分権者に対して明渡しを求めることができる場合があるか
755 どうかを問うものであり,
756 これにより,
757 事案に即した分析能力や論理的思考力を試
758 すものである。
759
760 また,
761 設問2は,
762 本件贈与契約において贈与者が負う債務の法的性
763 質や,
764 共同相続人にその債務がどのように承継されるかを明らかにした上で,
765 甲建
766 物全部の所有権移転登記手続がされなかったことについて,
767 共同相続人の一人にそ
768 の損害の全部の賠償を求めることができるかどうかを問うものであり,
769 これにより,
770
771 法的知識の正確性や論理的思考力を試すものである。
772
773
774
775 [商
776
777 法]
778
779 次の文章を読んで,
780 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
781
782
783 1.X株式会社(以下「X社」という。
784
785 )は,
786 昭和60年に設立され,
787 「甲荘」という名称のホテル
788 を経営していたが,
789 平成20年から新たに高級弁当の製造販売事業を始め,
790 これを全国の百貨
791 店で販売するようになった。
792
793 X社の平成26年3月末現在の資本金は5000万円,
794 純資産額
795 は1億円であり,
796 平成25年4月から平成26年3月末までの売上高は20億円,
797 当期純利益
798 は5000万円である。
799
800
801 X社は,
802 取締役会設置会社であり,
803 その代表取締役は,
804 創業時からAのみが務めている。
805
806
807 た,
808 X社の発行済株式は,
809 A及びその親族がその70%を,
810 Bが残り30%をいずれも創業時
811 から保有している。
812
813 なお,
814 Bは,
815 X社の役員ではない。
816
817
818 2.X社の取締役であり,
819 弁当事業部門本部長を務めるCは,
820 消費期限が切れて百貨店から回収せ
821 ざるを得ない弁当が多いことに頭を悩ませており,
822 回収された弁当の食材の一部を再利用する
823 よう,
824 弁当製造工場の責任者Dに指示していた。
825
826
827 3.平成26年4月,
828 上記2の指示についてDから相談を受けたAは,
829 Cから事情を聞いた。
830
831 Cは,
832
833 食材の再利用をDに指示していることを認めた上で,
834 「再利用する食材は新鮮なもののみに限定
835 しており,
836 かつ,
837 衛生面には万全を期している。
838
839 また,
840 食材の再利用によって食材費をかなり
841 節約できる。
842
843 」などとAに説明した。
844
845 これに対し,
846 Aは,
847
848 「衛生面には十分に気を付けるように。
849
850
851 と述べただけであった。
852
853
854 4.平成26年8月,
855 X社が製造した弁当を食べた人々におう吐,
856 腹痛といった症状が現れたため,
857
858 X社の弁当製造工場は,
859 直ちに保健所の調査を受けた。
860
861 その結果,
862 上記症状の原因は,
863 再利用
864 した食材に大腸菌が付着していたことによる食中毒であったことが明らかとなり,
865 X社の弁当
866 製造工場は,
867 食品衛生法違反により10日間の操業停止となった。
868
869
870 5.X社は,
871 損害賠償金の支払と事業継続のための資金を確保する目的で,
872 「甲荘」の名称で営む
873 ホテル事業の売却先を探すこととした。
874
875 その結果,
876 平成26年10月,
877 Y株式会社(以下「Y
878 社」という。
879
880 )に対し,
881 ホテル事業を1億円で譲渡することとなった。
882
883 X社は,
884 その取締役会決
885 議を経て,
886 株主総会を開催し,
887 ホテル事業をY社に譲渡することに係る契約について特別決議
888 による承認を得た。
889
890 当該特別決議は,
891 Bを含むX社の株主全員の賛成で成立した。
892
893 なお,
894 X社
895 とその株主は,
896 いずれもY社の株式を保有しておらず,
897 X社の役員とY社の役員を兼任してい
898 る者はいない。
899
900 また,
901 X社及びY社は,
902 いずれもその商号中に「甲荘」の文字を使用していな
903 い。
904
905
906 6.その後,
907 Y社は,
908 譲渡代金1億円をX社に支払い,
909 ホテル事業に係る資産と従業員を継承し,
910
911 かつ,
912 ホテル事業に係る取引上の債務を引き受けてホテル事業を承継し,
913 「甲荘」の経営を続け
914 ている。
915
916 1億円の譲渡代金は,
917 債務の引受けを前提としたホテル事業の価値に見合う適正な価
918 額であった。
919
920
921 7.X社は,
922 弁当の製造販売事業を継続していたが,
923 売上げが伸びず,
924 かつ,
925 食中毒の被害者とし
926 てX社に損害賠償を請求する者の数が予想を大幅に超え,
927 ホテル事業の譲渡代金を含めたX社
928 の資産の全額によっても,
929 被害者であるEらに対して損害の全額を賠償することができず,
930
931 引先への弁済もできないことが明らかとなった。
932
933 そこで,
934 X社は,
935 平成27年1月,
936 破産手続
937 開始の申立てを行った。
938
939
940 8.Eらは,
941 食中毒により被った損害のうち,
942 なお1億円相当の額について賠償を受けられないで
943 いる。
944
945 また,
946 X社の株式は,
947 X社に係る破産手続開始の決定により,
948 無価値となった。
949
950
951 9.Bは,
952 X社の破産手続開始後,
953 上記3の事実を知るに至った。
954
955
956
957 〔設問1〕
958 A及びCは,
959 食中毒の被害者であるEらに対し,
960 会社法上の損害賠償責任を負うかについて,
961
962 じなさい。
963
964
965 A及びCは,
966 X社の株主であるBに対し,
967 会社法上の損害賠償責任を負うかについて,
968 論じなさ
969 い。
970
971
972 〔設問2〕
973 ホテル事業をX社から承継したY社は,
974 X社のEらに対する損害賠償債務を弁済する責任を負
975 うかについて,
976 論じなさい。
977
978
979
980 (出題趣旨)
981 本問は,
982 役員等の第三者に対する損害賠償責任(会社法第429条)について基
983 本的な知識・理解を前提に事例に則した分析・検討を求めるとともに,
984 事業を譲り
985 受けた会社が事業を譲渡した会社の商号を引き続き使用しない場合であっても,
986
987 渡会社の損害賠償債務につき譲受会社がその弁済責任を負うことがあるかどうかに
988 ついての検討を求めるものである。
989
990 解答に際しては,
991 @会社法第429条に基づく
992 損害賠償責任の意義,
993 A取締役C及び代表取締役Aにそれぞれ求められる任務の具
994 体的内容と任務懈怠の有無,
995 B代表取締役Aの任務懈怠とEらの損害との因果関係,
996
997 C株主Bに生じた損害の内容について,
998 設問の事実関係を踏まえて,
999 正しく論述す
1000 るとともに,
1001 D株主が役員等の第三者に対する損害賠償責任(会社法第429条)
1002 を追及することの可否について検討することが求められる。
1003
1004 さらに,
1005 EY社がX社
1006 の損害賠償債務について弁済する責任を負うかどうかにつき,
1007 会社法第22条を類
1008 推適用することの可否,
1009 FX社のEらに対する損害賠償債務が「譲渡会社の事業に
1010 よって生じた債務」に該当するかどうか等について,
1011 設問の事実関係を踏まえて,
1012
1013 説得的な論述を展開することが求められる。
1014
1015
1016
1017 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,
1018 1:1)
1019 次の文章を読んで,
1020 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい(なお,
1021 解答に当たっては,
1022
1023 遅延損害金について考慮する必要はない。
1024
1025 )。
1026
1027
1028 【事例】
1029 弁護士Aは,
1030 交通事故の被害者Xから法律相談を受け,
1031 次のような事実関係を聴き取り,
1032 加害者
1033 Yに対する損害賠償請求訴訟事件を受任することになった。
1034
1035
1036 1.事故の概要
1037 Xが運転する普通自動二輪車が直進中,
1038 信号機のない前方交差点左側から右折のために同交差
1039 点に進入してきたY運転の普通乗用自動車を避けられず,
1040 同車と接触し,
1041 転倒した。
1042
1043 Yには,
1044
1045 差点に進入する際の安全確認を怠った過失があったが,
1046 他方,
1047 Xにも前方注視を怠った過失があ
1048 った。
1049
1050
1051 2.Xが主張する損害の内容
1052 人的損害による損害額合計
1053
1054 1000万円
1055
1056 (内訳)
1057
1058
1059 財産的損害
1060
1061 治療費・休業損害等の額の合計
1062
1063
1064
1065 精神的損害
1066
1067 傷害慰謝料
1068
1069 700万円
1070
1071 300万円
1072
1073 〔設問1〕
1074 本件交通事故によるXの人的損害には,
1075 財産的損害と精神的損害があるが,
1076 これらの損害をま
1077 とめて不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した場合について,
1078 訴訟物は一つであると
1079 するのが,
1080 判例(最高裁判所昭和48年4月5日第一小法廷判決・民集27巻3号419頁)の
1081 立場である。
1082
1083 判例の考え方の理論的な理由を説明した上,
1084 そのように考えることによる利点につ
1085 いて,
1086 上記の事例に即して説明しなさい。
1087
1088
1089 〔設問2〕
1090 弁護士Aは,
1091 本件の事故態様等から,
1092 過失相殺によって損害額から少なくとも3割は減額され
1093 ると考え,
1094 損害総額1000万円のうち,
1095 一部請求であることを明示して3割減額した700万
1096 円の損害賠償を求める訴えを提起することにした。
1097
1098 本件において,
1099 弁護士Aがこのような選択を
1100 した理由について説明しなさい。
1101
1102
1103
1104 (出題趣旨)
1105 交通事故に基づく損害賠償請求の事例において,
1106 訴訟物の特定基準(設問1)や
1107 一部請求(設問2)に関する判例等の基礎理論を理解し,
1108 これを応用できるかを問
1109 う問題である。
1110
1111
1112 設問1は,
1113 判例は,
1114 いわゆる旧訴訟物理論を基礎とし,
1115 交通事故に基づく損害賠
1116 償請求について,
1117 原因事実及び被侵害利益に着目して,
1118 人的損害における財産的損
1119 害と精神的損害については,
1120 その賠償の請求権は1個であり,
1121 訴訟物も1個である
1122 としているが(最高裁昭和48年4月5日第一小法廷判決・民集27巻3号419
1123 頁),
1124 その理論的根拠(説明)を,
1125 そのように解することの実務上の利点(いわゆ
1126 る費目の流用が可能となること)を含めて理解しているかを問う問題であり,
1127 実務
1128 上の利点を論ずるに当たっては,
1129 訴訟物を2個と捉えた場合との差違を念頭に置き
1130
1131 ながら論ずる必要がある。
1132
1133
1134 設問2は,
1135 いわゆる一部請求の問題のうち,
1136 一部請求を許容すべき必要性及び明
1137 示の一部請求における過失相殺の判断方法(いわゆる外側説。
1138
1139 前掲最高裁昭和48
1140 年4月5日判決)について理解していることを前提に,
1141 具体的な事例において原告
1142 訴訟代理人の立場でこれらを応用して考えた上で,
1143 全部請求ではなく,
1144 一部請求を
1145 選択した理由を的確に説明することができるかを問う問題である。
1146
1147
1148
1149 [刑
1150
1151 法]
1152 以下の事例に基づき,
1153 甲,
1154 乙,
1155 丙及び丁の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。
1156
1157 )。
1158
1159
1160
1161
1162
1163 甲は,
1164 建設業等を営むA株式会社(以下「A社」という。
1165
1166 )の社員であり,
1167 同社の総務部長
1168 として同部を統括していた。
1169
1170 また,
1171 甲は,
1172 総務部長として,
1173 用度品購入に充てるための現金(以
1174 下「用度品購入用現金」という。
1175
1176 )を手提げ金庫に入れて管理しており,
1177 甲は,
1178 用度品を購入
1179 する場合に限って,
1180 その権限において,
1181 用度品購入用現金を支出することが認められていた。
1182
1183
1184 乙は,
1185 A社の社員であり,
1186 同社の営業部長として同部を統括していた。
1187
1188 また,
1189 乙は,
1190 甲の職
1191 場の先輩であり,
1192 以前営業部の部員であった頃,
1193 同じく同部員であった甲の営業成績を向上さ
1194 せるため,
1195 甲に客を紹介するなどして甲を助けたことがあった。
1196
1197 甲はそのことに恩義を感じて
1198 いたし,
1199 乙においても,
1200 甲が自己に恩義を感じていることを認識していた。
1201
1202
1203 丙は,
1204 B市職員であり,
1205 公共工事に関して業者を選定し,
1206 B市として契約を締結する職務に
1207 従事していた。
1208
1209 なお,
1210 甲と丙は同じ高校の同級生であり,
1211 それ以来の付き合いをしていた。
1212
1213
1214 丁は,
1215 丙の妻であった。
1216
1217
1218
1219
1220
1221 乙は,
1222 1年前に営業部長に就任したが,
1223 その就任頃からA社の売上げが下降していった。
1224
1225
1226 は,
1227 某年5月28日,
1228 A社の社長室に呼び出され,
1229 社長から,
1230 「6月の営業成績が向上しなか
1231 った場合,
1232 君を降格する。
1233
1234 」と言い渡された。
1235
1236
1237
1238
1239
1240 乙は,
1241 甲に対して,
1242 社長から言われた内容を話した上,
1243 「お前はB市職員の丙と同級生なん
1244 だろう。
1245
1246 丙に,
1247 お礼を渡すからA社と公共工事の契約をしてほしいと頼んでくれ。
1248
1249 お礼として
1250 渡す金は,
1251 お前が総務部長として用度品を買うために管理している現金から,
1252 用度品を購入し
1253 たことにして流用してくれないか。
1254
1255 昔は,
1256 お前を随分助けたじゃないか。
1257
1258 」などと言った。
1259
1260
1261 は,
1262 乙に対して恩義を感じていたことから,
1263 専ら乙を助けることを目的として,
1264 自己が管理す
1265 る用度品購入用現金の中から50万円を謝礼として丙に渡すことで,
1266 A社との間で公共工事の
1267 契約をしてもらえるよう丙に頼もうと決心し,
1268 乙にその旨を告げた。
1269
1270
1271
1272
1273
1274 甲は,
1275 同年6月3日,
1276 丙と会って,
1277 「今度発注予定の公共工事についてA社と契約してほし
1278 い。
1279
1280 もし,
1281 契約を取ることができたら,
1282 そのお礼として50万円を渡したい。
1283
1284 」などと言った。
1285
1286
1287 丙は,
1288 甲の頼みを受け入れ,
1289 甲に対し,
1290 「分かった。
1291
1292 何とかしてあげよう。
1293
1294 」などと言った。
1295
1296
1297 丙は,
1298 公共工事の受注業者としてA社を選定し,
1299 同月21日,
1300 B市としてA社との間で契約
1301 を締結した。
1302
1303 なお,
1304 その契約の内容や締結手続については,
1305 法令上も内規上も何ら問題がなか
1306 った。
1307
1308
1309
1310
1311
1312 乙は,
1313 B市と契約することができたことによって降格を免れた。
1314
1315
1316 甲は,
1317 丙に対して謝礼として50万円を渡すため,
1318 同月27日,
1319 手提げ金庫の用度品購入用
1320 現金の中から50万円を取り出して封筒に入れ,
1321 これを持って丙方を訪問した。
1322
1323 しかし,
1324 丙は
1325 外出しており不在であったため,
1326 甲は,
1327 応対に出た丁に対し,
1328 これまでの経緯を話した上,
1329
1330 「御
1331 主人と約束していたお礼のお金を持参しましたので,
1332 御主人にお渡しください。
1333
1334 」と頼んだ。
1335
1336
1337 丁は,
1338 外出中の丙に電話で連絡を取り,
1339 丙に対して,
1340 甲が来訪したことや契約締結の謝礼を渡
1341 そうとしていることを伝えたところ,
1342 丙は,
1343 丁に対して,
1344
1345 「私の代わりにもらっておいてくれ。
1346
1347
1348 と言った。
1349
1350
1351 そこで,
1352 丁は,
1353 甲から封筒に入った50万円を受領し,
1354 これを帰宅した丙に封筒のまま渡し
1355 た。
1356
1357
1358
1359 (出題趣旨)
1360 本問は,
1361 建設業等を営むA株式会社の総務部長である甲が,
1362 同社営業部長である
1363 乙からの要請を受け,
1364 B市職員であり,
1365 同市発注の公共工事に関する業者の選定及
1366 び契約締結権限を持つ丙に対し,
1367 業者選定の際に同社を有利に取り計らってほしい
1368 との趣旨であることを了解したその妻丁を介して,
1369 総務部長として管理する用度品
1370 購入に充てるための現金の中から50万円を供与したという事案を素材として,
1371
1372 実を的確に分析する能力を問うとともに,
1373 共同正犯,
1374 共犯と身分,
1375 贈収賄罪,
1376 業務
1377 上横領罪等に関する基本的理解とその事例への当てはめが論理的一貫性を保って行
1378 われているかを問うものである。
1379
1380
1381
1382 [刑事訴訟法]
1383 次の【事例】を読んで,
1384 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1385
1386
1387 【事
1388
1389 例】
1390 甲は,
1391 平成27年2月1日,
1392 L県M市内の路上において,
1393 肩が触れて口論となったVに対し,
1394
1395
1396 帯していたサバイバルナイフで左腕を切り付け,
1397 1か月間の加療を要する傷害を負わせた。
1398
1399 司法警
1400 察員Pらは,
1401 前記事実で逮捕状及び捜索差押許可状(捜索すべき場所及び差し押さえるべき物の記
1402 載内容は,
1403 後記のとおり)の発付を受けた上,
1404 同月2日,
1405 甲を立ち回り先で逮捕した。
1406
1407 また,
1408 Pら
1409 は,
1410 同日,
1411 甲と同居する乙を立会人として,
1412 甲方の捜索を行った。
1413
1414
1415 甲方の捜索に際し,
1416 Pは,
1417 玄関内において,
1418 乙に捜索差押許可状を呈示するとともに,
1419 部下の司
1420 法警察員Qに指示して,
1421 呈示された同許可状を乙が見ている状況を写真撮影した(@)。
1422
1423 続いて,
1424
1425 Pは,
1426 玄関脇の寝室に立ち入ったが,
1427 同寝室内には,
1428 机とベッドが置かれていた。
1429
1430 Pは,
1431 Qに指示
1432 して,
1433 同寝室内全体の写真を撮影した上,
1434 前記机の上段の引出しを開けたが,
1435 その際,
1436 引出し内の
1437 手前側中央付近に,
1438 血の付いたサバイバルナイフを発見し,
1439 その左横に,
1440 甲名義の運転免許証及び
1441 健康保険証を認めた。
1442
1443 Pは,
1444 その状況を写真撮影することとし,
1445 Qに指示して,
1446 前記サバイバルナ
1447 イフ及び運転免許証等を1枚の写真に収まる形で近接撮影した(A)。
1448
1449 Pは,
1450 引き続き,
1451 前記机の
1452 下段の引出しを開けたところ,
1453 覚せい剤の使用をうかがわせる注射器5本及び空のビニール小袋1
1454 枚を認めた。
1455
1456 そこで,
1457 Pは,
1458 Qに指示して,
1459 前記注射器及びビニール小袋を1枚の写真に収まる形
1460 で近接撮影した(B)。
1461
1462 その後,
1463 Pは,
1464 前記サバイバルナイフを押収し,
1465 捜索を終了した。
1466
1467
1468 前記サバイバルナイフに付いた血がVのものと判明したことなどから,
1469 検察官Rは,
1470 同月20日,
1471
1472 L地方裁判所に甲を傷害罪で公判請求した。
1473
1474 甲は,
1475 「身に覚えがない。
1476
1477 サバイバルナイフは乙の物
1478 だ。
1479
1480 」旨供述して犯行を否認している。
1481
1482
1483 (捜索すべき場所及び差し押さえるべき物の記載内容)
1484 捜索すべき場所
1485
1486 L県M市N町○○番地甲方
1487
1488 差し押さえるべき物
1489
1490 サバイバルナイフ
1491
1492 〔設問1〕
1493 【事例】中の@からBに記載された各写真撮影の適法性について論じなさい。
1494
1495
1496 〔設問2〕
1497 Pは,
1498 捜索終了後,
1499 「甲方の寝室内には,
1500 机及びベッドが置かれていた。
1501
1502 机には,
1503 上下2段の
1504 引出しがあり,
1505 このうち,
1506 上段の引出しを開けたところ,
1507 手前側中央付近に,
1508 サバイバルナイフ
1509 1本が置かれており,
1510 その刃の部分には血液が付着していた。
1511
1512 そして,
1513 同サバイバルナイフの左
1514 横に,
1515 甲名義の運転免許証及び健康保険証があった。
1516
1517 」旨の説明文を記した上,
1518 【事例】中のAの
1519 写真を添付した書面を作成した。
1520
1521 Rは,
1522 同書面によって前記サバイバルナイフと甲との結び付き
1523 を立証したいと考えた。
1524
1525 同書面の証拠能力について論じなさい(Aに記載された写真撮影の適否
1526 が与える影響については,
1527 論じなくてよい。
1528
1529 )。
1530
1531
1532
1533 (出題趣旨)
1534 本問は,
1535 サバイバルナイフを用いた傷害事件について,
1536 司法警察員が,
1537 捜索すべ
1538 き場所を被疑者方,
1539 差し押さえるべき物をサバイバルナイフとする捜索差押許可状
1540 による捜索を実施した際,
1541 @玄関内において,
1542 呈示された同許可状を被疑者と同居
1543 する乙が見ている状況を写真撮影し,
1544 A寝室の机の上段の引き出しから発見された
1545 血の付いたサバイバルナイフ並びに被疑者名義の運転免許証及び健康保険証を1枚
1546 の写真に収まる形で近接撮影し,
1547 B同机の下段の引き出しから発見された注射器及
1548 びビニール小袋を1枚の写真に収まる形で近接撮影するという各写真撮影を行った
1549 上,
1550 捜索終了後,
1551 捜索実施時の前記寝室内の机等の配置状況,
1552 前記サバイバルナイ
1553 フの発見状況並びにその際の同ナイフの状態及び前記運転免許証等との位置関係を
1554 記載し,
1555 前記Aの写真を添付した書面を作成したとの事例において,
1556 前記@ないし
1557 Bの各写真撮影の適法性及び前記書面を被疑者とサバイバルナイフの結び付きを立
1558 証するための証拠として用いる場合の証拠能力に関わる問題点を検討させることに
1559 より,
1560 捜索差押許可状の執行現場における写真撮影行為の性質及びその適法性,
1561
1562 聞法則とその例外について,
1563 基本的な学識の有無及び具体的事案における応用力を
1564 試すものである。
1565
1566
1567
1568 [法律実務基礎科目(民事)]
1569 (〔設問1〕から〔設問4〕までの配点の割合は,
1570 14:10:18:8)
1571 司法試験予備試験用法文を適宜参照して,
1572 以下の各設問に答えなさい。
1573
1574
1575 〔設問1〕
1576 弁護士Pは,
1577 Xから次のような相談を受けた。
1578
1579
1580 なお,
1581 別紙の不動産売買契約書「不動産の表示」記載の土地を以下「本件土地」といい,
1582 解答に
1583 おいても,
1584 「本件土地」の表記を使用してよい。
1585
1586
1587 【Xの相談内容】
1588 「私は,
1589 平成26年9月1日,
1590 Yが所有し,
1591 占有していた本件土地を,
1592 Yから,
1593 代金250万
1594 円で買い,
1595 同月30日限り,
1596 代金の支払と引き換えに,
1597 本件土地の所有権移転登記を行うこと
1598 を合意しました。
1599
1600
1601 この合意に至るまでの経緯についてお話しすると,
1602 私は,
1603 平成26年8月中旬頃,
1604 かねてか
1605 らの知り合いであったAからYが所有する本件土地を買わないかと持ちかけられました。
1606
1607 当初,
1608
1609 私は代金額として200万円を提示し,
1610 Yの代理人であったAは350万円を希望したのです
1611 が,
1612 同年9月1日のAとの交渉の結果,
1613 代金額を250万円とする話がまとまったので,
1614 別紙
1615 のとおりの不動産売買契約書(以下「本件売買契約書」という。
1616
1617 )を作成しました。
1618
1619 Aは,
1620 その
1621 交渉の際に,
1622 Yの記名右横に実印を押印済みの本件売買契約書を持参していましたが,
1623 本件売
1624 買契約書の金額欄と日付欄(別紙の斜体部分)は空欄でした。
1625
1626 Aは,
1627 その場で,
1628 交渉の結果を
1629 踏まえて,
1630 金額欄と日付欄に手書きで記入をし,
1631 その後で,
1632 私が自分の記名右横に実印を押印
1633 しました。
1634
1635
1636 平成26年9月30日の朝,
1637 Aが自宅を訪れ,
1638 登記関係書類は夕方までに交付するので,
1639
1640 金を先に支払ってほしいと懇願されました。
1641
1642 私は,
1643 旧友であるAを信用して,
1644 Yの代理人であ
1645 るAに対し,
1646 本件土地の売買代金額250万円全額を支払いました。
1647
1648 ところが,
1649 Aは登記関係
1650 書類を持ってこなかったので,
1651 何度か催促をしたのですが,
1652 そのうちに連絡が取れなくなって
1653 しまいました。
1654
1655 そこで,
1656 私は,
1657 同年10月10日,
1658 改めてYに対し,
1659 所有権移転登記を行うよ
1660 うに求めましたが,
1661 Yはこれに応じませんでした。
1662
1663
1664 このようなことから,
1665 私は,
1666 Yに対し,
1667 本件土地の所有権移転登記と引渡しを請求したいと
1668 考えています。
1669
1670
1671 上記【Xの相談内容】を前提に,
1672 弁護士Pは,
1673 平成27年1月20日,
1674 Xの訴訟代理人として,
1675
1676 Yに対し,
1677 本件土地の売買契約に基づく所有権移転登記請求権及び引渡請求権を訴訟物として,
1678
1679 件土地の所有権移転登記及び引渡しを求める訴え(以下「本件訴訟」という。
1680
1681 )を提起することに
1682 した。
1683
1684
1685 弁護士Pは,
1686 本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。
1687
1688 )を作成し,
1689 その請求の原因欄に,
1690
1691 の@からCまでのとおり記載した。
1692
1693 なお,
1694 @からBまでの記載は,
1695 請求を理由づける事実(民事訴
1696 訟規則第53条第1項)として必要かつ十分であることを前提として考えてよい。
1697
1698
1699 @ Aは,
1700 平成26年9月1日,
1701 Xに対し,
1702 本件土地を代金250万円で売った(以下「本件売買契
1703 約」という。
1704
1705
1706
1707
1708
1709
1710 A Aは,
1711 本件売買契約の際,
1712 Yのためにすることを示した。
1713
1714
1715 B Yは,
1716 本件売買契約に先立って,
1717 Aに対し,
1718 本件売買契約締結に係る代理権を授与した。
1719
1720
1721 C よって,
1722 Xは,
1723 Yに対し,
1724 本件売買契約に基づき,
1725
1726 (以下記載省略)を求める。
1727
1728
1729
1730 以上を前提に,
1731 以下の各問いに答えなさい。
1732
1733
1734 (1)
1735
1736 本件訴状における請求の趣旨(民事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい(付随的
1737 申立てを記載する必要はない。
1738
1739 )。
1740
1741
1742
1743 (2)
1744
1745 弁護士Pが,
1746 本件訴状の請求を理由づける事実として,
1747 上記@からBまでのとおり記載したの
1748 はなぜか,
1749 理由を答えなさい。
1750
1751
1752
1753 〔設問2〕
1754 弁護士Qは,
1755 本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。
1756
1757
1758 【Yの相談内容】
1759 T
1760
1761 「私は,
1762 Aに対し,
1763 私が所有し,
1764 占有している本件土地の売買に関する交渉を任せました
1765 が,
1766 当初希望していた代金額は350万円であり,
1767 Xの希望額である200万円とは隔たり
1768 がありました。
1769
1770 その後,
1771 Aから交渉の経過を聞いたところ,
1772 Xは代金額を上げてくれそうだ
1773 ということでした。
1774
1775 そこで,
1776 私は,
1777 Aに対し,
1778 280万円以上であれば本件土地を売却して
1779 よいと依頼しました。
1780
1781 しかし,
1782 私が,
1783 平成26年9月1日までに,
1784 Aに対して本件土地を2
1785 50万円で売却することを承諾したことはありません。
1786
1787 ですから,
1788 Xが主張している本件売
1789 買契約は,
1790 Aの無権代理行為によるものであって,
1791 私が本件売買契約に基づく責任を負うこ
1792 とはないと思います。
1793
1794
1795
1796 U
1797
1798 「Xは,
1799 平成26年10月10日に本件売買契約に基づいて,
1800 代金250万円を支払った
1801 ので,
1802 所有権移転登記を行うように求めてきました。
1803
1804 しかし,
1805 私は,
1806 Xから本件土地の売買
1807 代金の支払を受けていません。
1808
1809 そこで,
1810 私は,
1811 念のため,
1812 Xに対し,
1813 同年11月1日到着の
1814 書面で,
1815 1週間以内にXの主張する本件売買契約の代金全額を支払うように催促した上で,
1816
1817 同月15日到着の書面で,
1818 本件売買契約を解除すると通知しました。
1819
1820 ですから,
1821 私が本件売
1822 買契約に基づく責任を負うことはないと思います。
1823
1824
1825
1826 上記【Yの相談内容】を前提に,
1827 弁護士Qは,
1828 本件訴訟における答弁書(以下「本件答弁書」
1829 という。
1830
1831 )を作成した。
1832
1833
1834 以上を前提に,
1835 以下の各問いに答えなさい。
1836
1837 なお,
1838 各問いにおいて抗弁に該当する具体的事実
1839 を記載する必要はない。
1840
1841
1842 (1)
1843
1844 弁護士Qが前記Tの事実を主張した場合,
1845 裁判所は,
1846 その事実のみをもって,
1847 本件訴訟におけ
1848 る抗弁として扱うべきか否かについて,
1849 結論と理由を述べなさい。
1850
1851
1852
1853 (2)
1854
1855 弁護士Qが前記Uの事実を主張した場合,
1856 裁判所は,
1857 その事実のみをもって,
1858 本件訴訟におけ
1859 る抗弁として扱うべきか否かについて,
1860 結論と理由を述べなさい。
1861
1862
1863
1864 〔設問3〕
1865 本件訴訟の第1回口頭弁論期日において,
1866 本件訴状と本件答弁書が陳述された。
1867
1868 また,
1869 その口頭
1870 弁論期日において,
1871 弁護士Pは,
1872 XとAが作成した文書として本件売買契約書を書証として提出し,
1873
1874 これが取り調べられたところ,
1875 弁護士Qは,
1876 本件売買契約書の成立を認める旨を陳述し,
1877 その旨の
1878 陳述が口頭弁論調書に記載された。
1879
1880
1881 そして,
1882 本件訴訟の弁論準備手続が行われた後,
1883 第2回口頭弁論期日において,
1884 本人尋問が実
1885 施され,
1886 Xは,
1887
1888 【Xの供述内容】のとおり,
1889 Yは,
1890
1891 【Yの供述内容】のとおり,
1892 それぞれ供述した(A
1893 の証人尋問は実施されていない。
1894
1895 )。
1896
1897
1898 その後,
1899 弁護士Pと弁護士Qは,
1900 本件訴訟の第3回口頭弁論期日までに,
1901 準備書面を提出する
1902
1903 ことになった。
1904
1905
1906 【Xの供述内容】
1907 「私は,
1908 本件売買契約に関する交渉を始めた際に,
1909 Aから,
1910 Aが本件土地の売買に関するす
1911 べてをYから任されていると聞きました。
1912
1913 また,
1914 Aから,
1915 それ以前にも,
1916 Yの土地取引の代理
1917 人となったことがあったと聞きました。
1918
1919 ただし,
1920 Aから代理人であるという委任状を見せられ
1921 たことはありません。
1922
1923
1924 当初,
1925 私は代金額として200万円を提示し,
1926 Yの代理人であったAは350万円を希望し
1927 ており,
1928 双方の希望額には隔たりがありました。
1929
1930 その後,
1931 Aは,
1932 Yの希望額を300万円に引
1933 き下げると伝えてきたので,
1934 私は,
1935 250万円でないと資金繰りが困難であると返答しました。
1936
1937
1938 私とAは,
1939 平成26年9月1日に交渉したところ,
1940 Aは,
1941 何とか280万円にしてほしいと要
1942 求してきました。
1943
1944 しかし,
1945 私が,
1946 それでは購入を諦めると述べたところ,
1947 最終的には,
1948 本件土
1949 地の代金額を250万円とする話がまとまりました。
1950
1951
1952 Aは,
1953 その交渉の際に,
1954 Yの記名右横に実印を押印済みの本件売買契約書を持参していまし
1955 たが,
1956 本件売買契約書の金額欄と日付欄(別紙の斜体部分)は空欄でした。
1957
1958 Aは,
1959 Yが実印を
1960 押印したのは250万円で本件土地を売却することを承諾した証であると述べていたので,
1961
1962 が委任状を提示していないことを気にすることはありませんでした。
1963
1964 そして,
1965 Aは,
1966 その場で,
1967
1968 金額欄と日付欄に手書きで記入をし,
1969 その後で,
1970 私が自分の記名右横に実印を押印しました。
1971
1972
1973 【Yの供述内容】
1974 「私は,
1975 Aに本件土地の売買に関する交渉を任せましたが,
1976 当初希望していた代金額は35
1977 0万円であり,
1978 Xの希望額である200万円とは隔たりがありました。
1979
1980 私は,
1981 それ以前に,
1982
1983 を私の所有する土地取引の代理人としたことがありましたが,
1984 その際はAを代理人に選任する
1985 旨の委任状を作成していました。
1986
1987 しかし,
1988 本件売買契約については,
1989 そのような委任状を作成
1990 したことはありません。
1991
1992
1993 その後,
1994 私が希望額を300万円に値下げしたところ,
1995 Aから,
1996 Xは代金額を増額してくれ
1997 そうだと聞きました。
1998
1999 たしか,
2000 250万円を希望しており,
2001 資金繰りの関係で,
2002 それ以上の増
2003 額は難しいという話でした。
2004
2005
2006 そこで,
2007 私は,
2008 Aに対し,
2009 280万円以上であれば本件土地を売却してよいと依頼しました。
2010
2011
2012 しかし,
2013 私が,
2014 本件土地を250万円で売却することを承諾したことは一度もありません。
2015
2016
2017 Aから,
2018 平成26年9月1日よりも前に,
2019 完成前の本件売買契約書を見せられましたが,
2020
2021 額欄と日付欄は空欄であり,
2022 売主欄と買主欄の押印はいずれもありませんでした。
2023
2024 本件売買契
2025 約書の売主欄には私の実印が押印されていることは認めますが,
2026 私が押印したものではありま
2027 せん。
2028
2029 私は,
2030 実印を自宅の鍵付きの金庫に保管しており,
2031 Aが持ち出すことは不可能です。
2032
2033
2034 だ,
2035 同年8月頃,
2036 別の取引のために実印をAに預けたことがあったので,
2037 その際に,
2038 Aが勝手
2039 に本件売買契約書に押印したに違いありません。
2040
2041 もっとも,
2042 その別の取引は,
2043 交渉が決裂して
2044 しまったので,
2045 その取引に関する契約書を裁判所に提出することはできません。
2046
2047 Aは,
2048 現在行
2049 方不明になっており,
2050 連絡が付きません。
2051
2052
2053 以上を前提に,
2054 以下の各問いに答えなさい。
2055
2056
2057 (1)
2058
2059 裁判所が,
2060 本件売買契約書をAが作成したと認めることができるか否かについて,
2061 結論と理由
2062 を記載しなさい。
2063
2064
2065
2066 (2)
2067
2068 弁護士Pは,
2069 第3回口頭弁論期日までに提出予定の準備書面において,
2070 前記【Xの供述内容】
2071 及び【Yの供述内容】と同内容のXYの本人尋問における供述,
2072 並びに本件売買契約書に基づ
2073 いて,
2074 次の【事実】が認められると主張したいと考えている。
2075
2076 弁護士Pが,
2077 上記準備書面に記
2078
2079 載すべき内容を答案用紙1頁程度の分量で記載しなさい(なお,
2080 解答において,
2081
2082 〔設問2〕の【Y
2083 の相談内容】については考慮しないこと。
2084
2085 )。
2086
2087
2088 【事実】
2089 「Yが,
2090 Aに対し,
2091 平成26年9月1日までに,
2092 本件土地を250万円で売却することを承
2093 諾した事実」
2094 〔設問4〕
2095 弁護士Pは,
2096 訴え提起前の平成26年12月1日,
2097 Xに相談することなく,
2098 Yに対し,
2099 差出人を
2100 「弁護士P」とする要旨以下の内容の「通知書」と題する文書を,
2101 内容証明郵便により,
2102 Yが勤務
2103 するZ社に対し,
2104 送付した。
2105
2106
2107 通知書
2108 平成26年12月1日
2109 被通知人Y
2110 弁護士P
2111 当職は,
2112 X(以下「通知人」という。
2113
2114 )の依頼を受けて,
2115 以下のとおり通知する。
2116
2117
2118 通知人は,
2119 平成26年9月1日,
2120 貴殿の代理人であるAを通じて,
2121 本件土地を代金
2122 250万円で買い受け,
2123 同月30日,
2124 Aに対し,
2125 売買代金250万円全額を支払い,
2126
2127 同年10月10日,
2128 貴殿に対し,
2129 本件土地の所有権移転登記を求めた。
2130
2131
2132 ところが,
2133 貴殿は,
2134 「売買代金を受領していない。
2135
2136 」などと虚偽の弁解をして,
2137 不当
2138 に移転登記を拒否している。
2139
2140 その不遜極まりない態度は到底許されるものではなく,
2141
2142 貴殿はAと共謀して上記代金をだまし取ったとも考えられる。
2143
2144
2145 以上より,
2146 当職は,
2147 本書面において,
2148 改めて本件土地の所有権移転登記に応ずるよ
2149 う要求する。
2150
2151
2152 なお,
2153 貴殿が上記要求に応じない場合は,
2154 貴殿に対し,
2155 所有権移転登記請求訴訟を
2156 提起するとともに,
2157 刑事告訴を行う所存である。
2158
2159
2160
2161
2162
2163
2164 以上を前提に,
2165 以下の問いに答えなさい。
2166
2167
2168 弁護士Pの行為は弁護士倫理上どのような問題があるか,
2169 司法試験予備試験用法文中の弁護士職
2170 務基本規程を適宜参照して答えなさい。
2171
2172
2173
2174 別紙
2175 (注)
2176
2177 斜体部分は手書きである。
2178
2179
2180 不動産売買契約書
2181
2182 売主Yと買主Xは,
2183 後記不動産の表示記載のとおりの土地(本件土地)に関して,
2184 下記条項のとお
2185 り,
2186 売買契約を締結した。
2187
2188
2189
2190 第1条
2191
2192 Yは本件土地をXに売り渡し,
2193 Xはこれを買い受けることとする。
2194
2195
2196
2197 第2条
2198
2199 本件土地の売買代金額は
2200
2201 第3条
2202
2203 Xは,
2204 平成
2205
2206 250 万円とする。
2207
2208
2209
2210 26 年
2211
2212 9 月 30 日限り,
2213 Yに対し,
2214 本件土地の所有権移転登
2215
2216 記と引き換えに,
2217 売買代金全額を支払う。
2218
2219
2220 第4条
2221
2222 Yは,
2223 平成
2224
2225 26 年
2226
2227 9 月 30 日限り,
2228 Xに対し,
2229 売買代金全額の支払と引
2230
2231 き換えに,
2232 本件土地の所有権移転登記を行う。
2233
2234
2235 (以下記載省略)
2236 以上のとおり契約を締結したので,
2237 本契約書を弐通作成の上,
2238 後の証としてYXが各壱通を所持す
2239 る。
2240
2241
2242
2243 26 年
2244
2245 平成
2246
2247 9 月
2248
2249 1 日
2250
2251
2252
2253
2254
2255
2256
2257
2258
2259
2260
2261
2262
2263
2264
2265
2266
2267
2268
2269
2270
2271
2272 ○○県○○市○○
2273
2274
2275 Y印
2276
2277 ○○県○○市○○
2278
2279
2280 X印
2281
2282 不動産の表示
2283
2284
2285
2286
2287 ○○市○○
2288
2289
2290
2291
2292
2293 ○○番
2294
2295
2296
2297
2298
2299 宅地
2300
2301
2302
2303
2304
2305 ○○○.○○u
2306
2307 (出題趣旨)
2308 設問1は,
2309 売買契約に基づく所有権移転登記請求権及び土地引渡請求権を訴訟物
2310 とする訴訟において,
2311 原告代理人が作成すべき訴状における請求の趣旨及び請求を
2312 理由づける事実について説明を求めるものであり,
2313 債権的請求権及び代理の特殊性
2314 に留意して説明することが求められる。
2315
2316
2317 設問2は,
2318 被告本人の相談内容に基づく被告代理人の各主張に関し,
2319 裁判所が本
2320 件訴訟における抗弁として扱うべきか否かについて結論とその理由を問うものであ
2321 り,
2322 無権代理の主張の位置づけや解除の主張と同時履行の抗弁権の関係に留意して
2323 説明することが求められる。
2324
2325
2326 設問3は,
2327 当事者本人尋問の結果を踏まえ,
2328 代理人が署名代理の方法により文書
2329
2330 を作成した場合における文書の成立の真正や代理権の授与に関して準備書面に記載
2331 すべき事項について問うものである。
2332
2333
2334 設問4は,
2335 弁護士倫理の問題であり,
2336 原告代理人が依頼者に相談することなく,
2337
2338 相手方本人の就業先に不適切な内容の文書を送付した行為の問題点について,
2339 弁護
2340 士職務基本規程の規律に留意しつつ検討することが求められる。
2341
2342
2343
2344 [法律実務基礎科目(刑事)]
2345 次の【事例】を読んで,
2346 後記〔設問〕に答えなさい。
2347
2348
2349 【事
2350
2351
2352 例】
2353 A(男性,
2354 24歳)は,
2355 平成27年3月14日,
2356 V(男性,
2357 19歳)を被害者とする傷害罪
2358 の被疑事実で逮捕され,
2359 翌15日から勾留された後,
2360 同年4月3日にI地方裁判所に同罪で公
2361 判請求された。
2362
2363
2364 上記公判請求に係る起訴状の公訴事実には「被告人は,
2365 平成27年2月1日午後11時頃,
2366
2367 H県I市J町1丁目1番3号所在のK駐車場において,
2368 V(当時19歳)に対し,
2369 拳骨でそ
2370 の左顔面を殴打し,
2371 持っていた飛び出しナイフでその左腹部を突き刺し,
2372 よって,
2373 同人に加
2374 療約1か月間を要する左腹部刺創の傷害を負わせた。
2375
2376 」旨記載されている。
2377
2378
2379
2380
2381
2382 受訴裁判所は,
2383 平成27年4月10日,
2384 Aに対する傷害被告事件を公判前整理手続に付する
2385 決定をした。
2386
2387 検察官は,
2388 同月24日,
2389 証明予定事実記載書を同裁判所及びAの弁護人に提出・
2390 送付するとともに,
2391 同裁判所に証拠の取調べを請求し,
2392 Aの弁護人に当該証拠を開示した。
2393
2394
2395 察官が請求した証拠の概要は,
2396 次のとおりであった。
2397
2398
2399 (1)
2400
2401 甲第1号証
2402
2403 診断書
2404
2405 「Vの診断結果は左腹部刺創であり,
2406 平成27年2月2日午前零時頃,
2407 Vが救急搬送さ
2408 れ,
2409 直ちに緊急手術をした。
2410
2411 加療期間は約1か月間である。
2412
2413
2414 (2)
2415
2416 甲第2号証
2417
2418 Vの検察官調書
2419
2420 「私は,
2421 平成27年2月1日の夜,
2422 交際中のB子に呼び出され,
2423 同日午後11時頃,
2424
2425 駐車場に行ったところ,
2426 黒色の目出し帽を被った男が車の陰から現れ,
2427 @『お前か。
2428
2429 人の
2430 女に手を出すんじゃねー。
2431
2432 』と言って,
2433 いきなり私の左顔面を1回拳骨で殴った。
2434
2435 私は,
2436
2437 いきなり殴られてカッとなり,
2438 『何すんだ。
2439
2440 』と怒鳴ったところ,
2441 その男は,
2442 どこからかナ
2443 イフを取り出したようで,
2444 右手にナイフを持っていた。
2445
2446 私が刺されると思うや否や,
2447 その
2448 男は,
2449 『この野郎。
2450
2451 』と言いながら,
2452 私に向かってナイフを持った右手を伸ばし,
2453 私の左脇
2454 腹にナイフを突き刺した。
2455
2456 その後,
2457 その男は駐車場から走って逃げていったが,
2458 私は,
2459
2460 識がもうろうとしてしまい,
2461 気付いたら病院で寝ていた。
2462
2463
2464 私を刺した犯人の顔は見ていないが,
2465 Aが犯人ではないかと思う。
2466
2467 私は,
2468 アルバイト先
2469 の喫茶店でアルバイト仲間だったB子を好きになり,
2470 平成26年12月初旬頃から,
2471 3,
2472
2473 4回B子とデートをした。
2474
2475 平成27年1月中旬頃,
2476 B子に,
2477 きちんと付き合ってほしいと
2478 言ったところ,
2479 B子も承諾してくれた。
2480
2481 しかし,
2482 その後,
2483 私と一緒にいる時に,
2484 B子の携
2485 帯電話に頻繁にメールや電話が来るので,
2486 不審に思ってB子に尋ねると,
2487 B子は,
2488 『実は,
2489
2490 前の彼氏であるAからよりを戻そうとしつこく言われている。
2491
2492 Aとは,
2493 以前数箇月間同棲
2494 していたことがあるが,
2495 異常なほど焼き餅焼きで,
2496 私が男友達とメールのやり取りをして
2497 いても怒り,
2498 私を殴ったりするので,
2499 付いていけないと思い,
2500 同棲していたA方から飛び
2501 出して1人暮らしを始め,
2502 電話番号もメールアドレスも変えた。
2503
2504 ところが,
2505 Aが私の友人
2506 から新しい電話番号やメールアドレスを聞き出したようで,
2507 頻繁に電話を掛けてくるよう
2508 になった。
2509
2510 新しい彼氏ができたと話したが,
2511 お前は俺のものだと言って聞く耳を持たない。
2512
2513
2514 どうやら新しい住所も知られているようで怖い。
2515
2516 』と言っていた。
2517
2518 その際,
2519 B子はAの写
2520 真を見せてくれたので,
2521 B子の前の彼氏が逮捕されたAであることに間違いない。
2522
2523 私は,
2524
2525 B子のことは好きだったが,
2526 前の彼氏とのトラブルに巻き込まれたくないと思い,
2527 B子か
2528 らデートに誘われても最近は断りがちで,
2529 中途半端な付き合いになっていた。
2530
2531 そのような
2532 状況だった平成27年2月1日の午後8時頃,
2533 私は,
2534 B子から,
2535 相談したいことがあるの
2536
2537 で,
2538 どうしても会ってほしいという内容のメールをもらい,
2539 B子に会うことにし,
2540 B子に
2541 指定されたとおり,
2542 同日午後11時頃,
2543 K駐車場に行った。
2544
2545 ところが,
2546 現れたのはB子で
2547 はなく,
2548 先ほど話した黒色目出し帽の男だった。
2549
2550 B子が私と会う約束をしたことを知って,
2551
2552 Aが私を待ち伏せしていたのではないかと思う。
2553
2554 他に恨みを買うような相手に心当たりは
2555 ない。
2556
2557
2558 (3)
2559
2560 甲第3号証
2561
2562 捜査報告書
2563
2564 「平成27年2月1日午後11時10分頃,
2565 氏名不詳の女性から『黒色目出し帽の男が
2566 K駐車場で人を刺した。
2567
2568 』旨の110番通報があり,
2569 同日午後11時25分頃,
2570 K駐車場
2571 に司法警察員が臨場し,
2572 付近の検索を行ったところ,
2573 同駐車場出入口から北側約10メー
2574 トルの地点の歩道脇に,
2575 飛び出しナイフ1丁が落ちており,
2576 犯人の遺留品の可能性がある
2577 と思料されたため,
2578 同日,
2579 これを領置した。
2580
2581
2582 (4)
2583
2584 甲第4号証
2585
2586 飛び出しナイフ1丁(平成27年2月1日領置のもの)
2587
2588 (5)
2589
2590 甲第5号証
2591
2592 捜査報告書
2593
2594 「平成27年2月1日に領置した飛び出しナイフ1丁の柄から採取された指紋1個が,
2595
2596 Aの右手母指の指紋と一致した。
2597
2598
2599 (6)
2600
2601 甲第6号証
2602
2603 捜査報告書
2604
2605 「平成27年2月1日に領置した飛び出しナイフ1丁の刃に人血が付着しており,
2606 その
2607 DNA型が,
2608 Vから採取した血液のDNA型と一致した。
2609
2610
2611 (7)
2612
2613 甲第7号証
2614
2615 B子の検察官調書
2616
2617 「私は,
2618 以前AとA方で同棲していたが,
2619 Aの束縛が激しい上,
2620 私が男友達とメールの
2621 やり取りをしているだけでも嫉妬して私を殴るなどするので嫌になり,
2622 平成26年9月頃,
2623
2624 A方から逃げ出して,
2625 電話番号やメールアドレスを変え,
2626 1人暮らしを始めた。
2627
2628 その後,
2629
2630 Vと知り合い,
2631 平成27年1月頃,
2632 Vとの交際を始めた。
2633
2634 ところが,
2635 Aは,
2636 私の電話番号,
2637
2638 メールアドレスを探り出し,
2639 私に何度も電話やメールを寄越して復縁を迫るようになった。
2640
2641
2642 私が更に電話番号やメールアドレスを変えると,
2643 今度は私の自宅を突き止めたようで,
2644
2645 の自宅に頻繁に来るようになった。
2646
2647 私は,
2648 Aに,
2649 他に好きな人ができたので復縁するつも
2650 りはないと言ったが,
2651 Aは納得せず,
2652 『そいつと会わせろ。
2653
2654 』と言っていた。
2655
2656 私は,
2657 AがV
2658 に暴力を振るうかもしれないと思ったので,
2659 AにはVの詳しい情報を教えなかった。
2660
2661 私は,
2662
2663 Aから逃げられないという恐ろしさを感じ,
2664 VにAとの関係やAに付きまとわれている状
2665 況を全部打ち明けた。
2666
2667 しかし,
2668 Vは,
2669 次第に私との距離を置くようになってしまった。
2670
2671
2672 は,
2673 私から距離を置こうとするVに腹が立ち,
2674 どうしていいのか分からなくなった。
2675
2676 私は,
2677
2678 2人を引き合わせればVの態度もはっきりするだろう,
2679 Vが私を捨てるなら私も覚悟を決
2680 めようと思った。
2681
2682 そこで,
2683 私は,
2684 平成27年2月1日午後8時頃,
2685 Vに『今日の午後11
2686 時頃にK駐車場に来てほしい。
2687
2688 』という内容のメールを送ってVを呼び出し,
2689 その後,
2690
2691 に,
2692 電話で,
2693 私がVを呼び出したことを伝えた。
2694
2695 Aは,
2696 『俺が行って話を付けてくるから,
2697
2698 お前は家にいろ。
2699
2700 』と言っていた。
2701
2702 しかし,
2703 私は,
2704 Vの態度を見たかったので,
2705 同日午後
2706 11時前頃,
2707 K駐車場付近に行き,
2708 2人が現れるのをこっそり待っていた。
2709
2710 すると,
2711 Aが
2712 現れてK駐車場に入っていき,
2713 しばらくするとVが現れてK駐車場に入っていった。
2714
2715 私は,
2716
2717 K駐車場のフェンス脇まで近付き,
2718 K駐車場内の様子を見ると,
2719 Vが黒色の目出し帽を被
2720 った男に顔を殴られているところだった。
2721
2722 私は,
2723 目出し帽を被った男の服装が先ほど駐車
2724 場に入っていったAの服装と同じだったので,
2725 Aだと分かった。
2726
2727 Aは,
2728 右手にナイフを持
2729 ち,
2730 Vのお腹の辺りに右手を突き出した。
2731
2732 私は,
2733 Vが刺されたと思い,
2734 怖くなってその場
2735 から走って逃げ出し,
2736 200メートルくらい離れた場所から匿名で110番通報をした。
2737
2738
2739 私は,
2740 そのまま自宅に帰ったので,
2741 その後2人がどうなったのか見ていない。
2742
2743
2744 翌日の2月2日,
2745 Aから私に電話があり,
2746 Aは,
2747 A『Vをナイフで刺した。
2748
2749 走って逃げ
2750
2751 ている時に,
2752 そのナイフを落としてしまった。
2753
2754 』と言っていた。
2755
2756
2757 平成27年2月1日に警察官が領置したという飛び出しナイフを見せてもらったが,
2758
2759 のナイフは,
2760 Aと同棲していた時に,
2761 A方で見たことがある。
2762
2763 ナイフの柄にある傷に見覚
2764 えがあるので,
2765 Aが持っていたナイフに間違いない。
2766
2767
2768 私は,
2769 Aに自宅を知られているが,
2770 引っ越し費用を工面する余裕がなく,
2771 転居できる見
2772 込みがない。
2773
2774 だから,
2775 怖くて仕方がない。
2776
2777
2778 (8)
2779
2780 乙第1号証
2781
2782 Aの司法警察員調書
2783
2784 「私は,
2785 現在,
2786 H県I市内で母と2人で暮らしている。
2787
2788 両親は,
2789 私が中学生の時に離婚
2790 し,
2791 私は母に引き取られた。
2792
2793 それ以降,
2794 父とは一度も会っていない。
2795
2796 私には兄弟はいない。
2797
2798
2799 私は,
2800 21歳の時から1人暮らしをしていたが,
2801 平成26年5月頃から私の家でB子と同
2802 棲していた。
2803
2804 しかし,
2805 同年9月頃にB子が家を出ていき,
2806 それから2週間くらい後の同年
2807 10月頃,
2808 母が交通事故に遭って,
2809 脳挫傷の傷害を負い,
2810 左手と左足に麻痺が残ったため,
2811
2812 私は母が退院した同年12月上旬から実家に戻り,
2813 母と同居している。
2814
2815
2816 私は,
2817 高校卒業後,
2818 建設作業員として建築会社を転々としたが,
2819 現場で塗装工をしてい
2820 るCさんと知り合い,
2821 1年半くらい前からCさんの下で働いている。
2822
2823 Cさんの下で働いて
2824 いるのは私だけなので,
2825 私が長期間不在にすると,
2826 受注していた現場の仕事を工期内に終
2827 わらせることができなくなる。
2828
2829 母は1人では日常生活に支障があり,
2830 私の手助けが必要だ
2831 し,
2832 Cさんにも迷惑を掛けたくないので,
2833 早く家に戻りたい。
2834
2835
2836 私には,
2837 前科前歴はなく,
2838 暴力団関係者との付き合いもない。
2839
2840
2841
2842
2843 Aの弁護人は,
2844 前記の検察官請求証拠を閲覧・謄写した後,
2845 平成27年5月3日,
2846 Aと接見
2847 したところ,
2848 Aは,
2849 「B子からVをK駐車場に呼び出したことは聞いたが,
2850 私は,
2851 K駐車場に
2852 は行っていない。
2853
2854 B子には未練があったので,
2855 B子の友達からB子の新しい電話番号などを聞
2856 き,
2857 連絡をしたことは事実だが,
2858 B子がVと付き合っていたのでB子のことは諦めた。
2859
2860 むしろ,
2861
2862 最近は,
2863 B子から『Vが自分から距離を置こうとしているように感じる。
2864
2865 』などと相談を持ち
2866 掛けられていた。
2867
2868 B子の家を知っているが,
2869 それはB子から相談を持ち掛けられて話をした後,
2870
2871 B子を家まで送っていったからで,
2872 B子に付きまとって家を突き止めたわけではない。
2873
2874 飛び出
2875 しナイフについては,
2876 全く身に覚えがなく,
2877 飛び出しナイフの柄になぜ私の指紋が付いていた
2878 のか分からない。
2879
2880 VとB子が私を陥れようとしているのではないか。
2881
2882 」と述べた。
2883
2884
2885
2886
2887
2888 Aの弁護人は,
2889 平成27年5月7日,
2890 検察官に類型証拠の開示請求をし,
2891 検察官は,
2892 同月1
2893 3日,
2894 同証拠を開示した。
2895
2896 Aの弁護人は,
2897 Aと犯人との同一性(犯人性)を争う方針を固め,
2898
2899 同月20日の公判前整理手続期日において,
2900 B甲第2号証,
2901 甲第5号証及び甲第7号証につい
2902 ては「不同意。
2903
2904 」,
2905 甲第4号証については「異議あり。
2906
2907 関連性なし。
2908
2909 」,
2910 その他の甲号証及び乙号
2911 証については「同意。
2912
2913 」との意見を述べた。
2914
2915
2916 その後,
2917 Aの弁護人は,
2918 Aと接見を重ねた結果,
2919 飛び出しナイフにAの指紋が付着していた
2920 事実自体は争わない方針に決め,
2921 同年6月1日の公判前整理手続期日において,
2922 甲第5号証に
2923 ついては「同意。
2924
2925 」,
2926 甲第4号証については「異議なし。
2927
2928 」との意見に変更した。
2929
2930
2931 そして,
2932 受訴裁判所は,
2933 同月15日に公判前整理手続を終了するに当たり,
2934 検察官及びAの
2935 弁護人との間で,
2936 争点は犯人性であり,
2937 証拠については,
2938 甲第2号証及び甲第7号証を除く甲
2939 号証,
2940 乙号証並びにV及びB子の各証人尋問が採用決定されたことを確認した。
2941
2942
2943 Aの弁護人は,
2944 公判前整理手続終了直後に,
2945 V及びB子とは接触しない旨のAの誓約書,
2946
2947 を引き続き雇用する旨のCの上申書及びAの母親の身柄引受書を保釈請求書に添付して,
2948 CA
2949 の保釈を請求したが,
2950 検察官はこれに反対意見を述べた。
2951
2952
2953 なお,
2954 検察官は,
2955 証拠開示に当たり,
2956 Aの弁護人に,
2957 Vの住所,
2958 電話番号をAに秘匿するよ
2959 う要請し,
2960 Aの弁護人もこれに応じて,
2961 Aにそれらを教えなかった。
2962
2963
2964
2965 〔設問1〕
2966 (1)
2967
2968 下線部Bに関し,
2969 Aの弁護人が,
2970 検察官請求証拠について意見を述べる法令上の義務はあ
2971
2972 るか,
2973 簡潔に答えなさい。
2974
2975
2976 (2)
2977
2978 下線部Bに関し,
2979 Aの弁護人が,
2980 甲第4号証の飛び出しナイフ1丁について「異議あり。
2981
2982
2983
2984 関連性なし。
2985
2986 」との意見を述べたため,
2987 裁判官は,
2988 検察官に関連性に関する釈明を求めた。
2989
2990
2991 察官は,
2992 関連性についてどのように釈明すべきか,
2993 論じなさい。
2994
2995
2996 (3)
2997
2998 甲第5号証の捜査報告書は,
2999 Aの犯人性を立証する上で,
3000 直接証拠又は間接証拠のいずれ
3001
3002 となるか,
3003 理由を付して論じなさい。
3004
3005
3006 〔設問2〕
3007 下線部Cに関し,
3008 Aの弁護人が保釈を請求するに当たり,
3009 検討すべき事項及びその検討結果を
3010 論じなさい。
3011
3012
3013 〔設問3〕
3014 (1)
3015
3016 公判期日に実施されたVの証人尋問において,
3017 検察官は,
3018 甲第2号証の下線部@のとおり
3019
3020 Vに証言させようと考え,
3021 同人に対し,
3022 「そのとき,
3023 犯人は,
3024 何と言っていましたか。
3025
3026 」とい
3027 う質問をしたところ,
3028 Vは,
3029 下線部@のとおり証言し始めた。
3030
3031 Aの弁護人が,
3032 「異議あり。
3033
3034
3035 聞供述を求める質問である。
3036
3037 」と述べたため,
3038 裁判官は,
3039 検察官に弁護人の異議に対する意見
3040 を求めた。
3041
3042 検察官は,
3043 どのような意見を述べるべきか,
3044 理由を付して論じなさい。
3045
3046
3047 (2)
3048
3049 公判期日に実施されたB子の証人尋問において,
3050 検察官は,
3051 甲第7号証の下線部Aのとお
3052
3053 りB子に証言させようと考え,
3054 同人に対し,
3055
3056 「Aは,
3057 電話でどのような話をしていましたか。
3058
3059
3060 という質問をしたところ,
3061 B子は,
3062 下線部Aのとおり証言し始めた。
3063
3064 Aの弁護人が,
3065 「異議あ
3066 り。
3067
3068 伝聞供述を求める質問である。
3069
3070 」と述べたため,
3071 裁判官は,
3072 検察官に弁護人の異議に対す
3073 る意見を求めた。
3074
3075 検察官は,
3076 どのような意見を述べるべきか,
3077 理由を付して論じなさい。
3078
3079
3080 〔設問4〕
3081 Aの弁護人は,
3082 弁論が予定されていた公判期日の前日,
3083 Aから「先生にだけは本当のことを話
3084 します。
3085
3086 本当は,
3087 私がVを刺した犯人です。
3088
3089 しかし,
3090 母を悲しませたくないので,
3091 明日の弁論は
3092 よろしくお願いします。
3093
3094 どうか無罪を勝ち取ってください。
3095
3096 」と言われ,
3097 同期日に,
3098 Aは無罪で
3099 ある旨の弁論を行った。
3100
3101 このAの弁護人の行為は,
3102 弁護士倫理上どのような問題があるか,
3103 司法
3104 試験予備試験用法文中の弁護士職務基本規程を適宜参照して論じなさい。
3105
3106
3107
3108 (出題趣旨)
3109 本問は,
3110 犯人性が争点となる傷害被告事件を題材に,
3111 弁護人として,
3112 検察官請求
3113 証拠に対する証拠意見を述べる法令上の義務の有無(設問1(1)),
3114 保釈請求に当た
3115 り検討すべき事項(設問2),
3116 被告人から自己が犯人である旨打ち明けられた場合
3117 に無罪弁論をすることの弁護士倫理上の問題点(設問4),
3118 検察官として,
3119 証拠物
3120 の関連性について釈明すべき内容(設問1(2)),
3121 公判証言に被告人等の発言内容が
3122 含まれている場合の伝聞法則の適用に関する意見(設問3)等を問うものである。
3123
3124
3125 保釈請求手続,
3126 公判前整理手続と証拠法,
3127 弁護士倫理等に関する基本的知識と理解
3128 を試すとともに,
3129 具体的事例において,
3130 これらの知識を活用し,
3131 当事者として考慮
3132 すべき事項や主張すべき意見を検討するなどの法律実務の基礎的素養を試すことを
3133 目的としている。
3134
3135
3136
3137 [一般教養科目]
3138 次の文章は,
3139 東ヨーロッパ諸国の社会主義体制が 1960 年代から 1970 年代に経験した困難に
3140 ついて述べたものである。
3141
3142 これを読んで,
3143 後記の各設問に答えなさい。
3144
3145
3146 (省
3147
3148 略)
3149
3150 〔設問1〕
3151 下線部から読み取れる内容を踏まえ,
3152 市場機構の機能に関する著者の見解を10行程度でまと
3153 めなさい。
3154
3155
3156 〔設問2〕
3157 20 世紀末の社会主義体制の瓦解後,
3158 市場機構は,
3159 名実ともに世界経済の中心的・主導的な機構
3160 となった。
3161
3162 その一方で,
3163 それが,
3164 各種の社会問題の温床となっているとの批判もある。
3165
3166 これに関
3167 連して,
3168 経済社会の在り方をめぐって,
3169 以下の2つの理論的立場が想定される。
3170
3171
3172 A:市場機構に,
3173 社会的な規制を加える必要はない。
3174
3175
3176 B:市場機構に,
3177 社会的な規制を加える必要がある。
3178
3179
3180 ここで,
3181 仮にBの立場を取るとすれば,
3182 その正当性はいかに主張できるであろうか。
3183
3184 具体的な
3185 事例(Bの主張の論拠となる事例)を取り上げつつ,
3186 15行程度で立論しなさい。
3187
3188
3189 【出典】猪木武徳『戦後世界経済史
3190
3191 自由と平等の視点から』
3192
3193 (出題趣旨)
3194 設問1は,
3195 東ヨーロッパ諸国の社会主義体制が20世紀後半に経験した困難につい
3196 ての記述を通じて,
3197 市場機構の機能に関する著者の見解を問うものである。
3198
3199 その内
3200 容を要約するには,
3201 社会主義計画経済が収集・管理できない「この種の知識」(下
3202 線部)とは何かを踏まえた上で,
3203 市場機構において価格が果たすメカニズムやその
3204 重要性を正確に把握する必要がある。
3205
3206 「この種の知識」がもたらす変化の指標が市
3207 場で形成される「価格」であり,
3208 これが各経済主体の意思決定にとって必要かつ十
3209 分な情報を圧縮した形で提供することから,
3210 市場機構には社会主義計画経済に対す
3211 る相対的優位性が認められることを明らかにすることが求められる。
3212
3213
3214 設問2では,
3215 市場機構にも一定の限界があり,
3216 これに対処するため社会的な規制
3217 が加えられる必要があるとの立場(Bの立場)から,
3218 その正当性を具体的な事例を
3219 使って説得的に論証する能力が問われている。
3220
3221 正当性の論証に際しては,
3222 設問1と
3223 同様に,
3224 価格の調整能力を特徴とする市場機構の機能を正確に理解した上で,
3225 価格
3226 が市場機構において重要な情報を圧縮して提供する機能の限界を示すような具体例,
3227
3228 例えば価格に反映されない情報があることや,
3229 あるいは価格が持つ情報の質にも限
3230 界があることを表す具体例を示し,
3231 自己の立場を積極的に正当化することが求めら
3232 れる。
3233
3234
3235 いずれの設問においても,
3236 全体として指定の分量内で簡明に記述する能力も求め
3237
3238 られる。
3239
3240
3241
3242