1 論文式試験問題集
2 [憲法・行政法]
3
4 - 1 -
5
6 [憲
7
8 法]
9 違憲審査権の憲法上の根拠や限界について,
10 後記の〔設問〕にそれぞれ答えなさい。
11
12
13
14 〔設問1〕
15 違憲審査権に関し,
16 次のような見解がある。
17
18
19 「憲法第81条は,
20 最高裁判所に,
21 いわゆる違憲審査権を認めている。
22
23 ただし,
24 この条文がな
25 くても,
26 一層根本的な考え方からすれば,
27 憲法の最高法規性を規定する憲法第98条,
28 裁判官は
29 憲法に拘束されると規定する憲法第76条第3項,
30 そして裁判官の憲法尊重擁護義務を規定する
31 憲法第99条から,
32 違憲審査権は十分に抽出され得る。
33
34 」
35 上記見解に列挙されている各条文に即して検討しつつ,
36 違憲審査権をめぐる上記見解の妥当性
37 について,
38 あなた自身の見解を述べなさい。
39
40 (配点:20点)
41 〔設問2〕
42 内閣は,
43 日本経済のグローバル化を推進するために農産物の市場開放を推し進め,
44 何よりもX
45 国との間での貿易摩擦を解消することを目的として,
46 X国との間で農産物の貿易自由化に関する
47 条約(以下「本条約」という。
48
49 )を締結した。
50
51 国会では,
52 本条約の承認をめぐって議論が紛糾し
53 たために,
54 事前の承認は得られなかった。
55
56 国会は,
57 これを事後に承認した。
58
59
60 内閣が本条約上の義務を履行する措置を講じた結果,
61 X国からの農産物輸入量が飛躍的に増加
62 し,
63 日本の食料自給率は20パーセントを下回るまでになることが予想される状況となった。
64
65 ち
66 なみに,
67 X国の食料自給率は100パーセントを超えており,
68 世界的に見ても60から70パー
69 セントが平均的な数字で,
70 先進国で20パーセントを切る国はない。
71
72
73 農業を営むAは,
74 X国から輸入が増大したものと同じ種類の農産物を生産していたが,
75 X国と
76 日本とでは農地の規模が異なるため大量生産ができず,
77 価格競争力において劣るため,
78 農業を継
79 続することが困難な状況にある。
80
81 Aは,
82 本条約は,
83 農業を営む者の生存権や職業選択の自由を侵
84 害するのみならず,
85 国民生活の安定にとって不可欠な食料自給体制を崩壊させる違憲な条約であ
86 るとして訴訟を提起した。
87
88 これに対して,
89 被告となった国から本条約は違憲審査の対象とならな
90 い旨の主張がなされ,
91 この点が争点となった。
92
93
94 本条約が違憲審査の対象となるか否か,
95 及び本条約について憲法判断を行うべきか否かに関し
96 て,
97 Aの主張及び想定される国の主張を簡潔に指摘し,
98 その上でこれらの点に関するあなた自身
99 の見解を述べなさい。
100
101 (配点:30点)
102
103 - 2 -
104
105 [行政法]
106 A県に存するB川の河川管理者であるA県知事は,
107 1983年,
108 B川につき,
109 河川法第6条第1
110 項第3号に基づく河川区域の指定(以下「本件指定」という。
111
112 )を行い,
113 公示した。
114
115 本件指定は,
116
117 縮尺2500分の1の地図に河川区域の境界を表示した図面(以下「本件図面」という。
118
119 )によっ
120 て行われた。
121
122
123 Cは,
124 2000年,
125 B川流水域の渓谷にキャンプ場(以下「本件キャンプ場」という。
126
127 )を設置
128 し,
129 本件キャンプ場内にコテージ1棟(以下「本件コテージ」という。
130
131 )を建築した。
132
133 その際,
134 C
135 は,
136 本件コテージの位置につき,
137 本件図面が作成された1983年当時と土地の形状が変化してい
138 るため不明確ではあるものの,
139 本件図面に表示された河川区域の境界から数メートル離れており,
140
141 河川区域外にあると判断し,
142 本件コテージの建築につき河川法に基づく許可を受けなかった。
143
144 そし
145 て,
146 河川法上の問題について,
147 2014年7月に至るまで,
148 A県知事から指摘を受けることはなか
149 った。
150
151
152 2013年6月,
153 A県知事は,
154 Cに対し,
155 本件コテージにつき建築基準法違反があるとして是正
156 の指導(以下「本件指導」という。
157
158 )をした。
159
160 Cは,
161 本件指導に従うには本件コテージの大規模な
162 改築が必要となり多額の費用を要するため,
163 ちゅうちょしたが,
164 本件指導に従わなければ建築基準
165 法に基づく是正命令を発すると迫られ,
166 やむなく本件指導に従って本件コテージを改築した。
167
168 Cは,
169
170 本件コテージの改築を決断する際,
171 本件指導に携わるA県の建築指導課の職員Dに対し,
172 「本件コ
173 テージは河川区域外にあると理解しているが間違いないか。
174
175 」と尋ねた。
176
177 Dは,
178 A県の河川課の担
179 当職員Eに照会したところ,
180 Eから「測量をしないと正確なことは言えないが,
181 今のところ,
182 本件
183 コテージは河川区域外にあると判断している。
184
185 」旨の回答を受けたので,
186 その旨をCに伝えた。
187
188
189 2014年7月,
190 A県外にある他のキャンプ場で河川の急激な増水による事故が発生したことを
191 契機として,
192 A県知事は本件コテージの設置場所について調査した。
193
194 そして,
195 本件コテージは,
196 本
197 件指定による河川区域内にあると判断するに至った。
198
199 そこで,
200 A県知事は,
201 Cに対し,
202 行政手続法
203 上の手続を執った上で,
204 本件コテージの除却命令(以下「本件命令」という。
205
206 )を発した。
207
208
209 Cは,
210 本件命令の取消しを求める訴訟(以下「本件取消訴訟」という。
211
212 )を提起し,
213 本件コテー
214 ジが本件指定による河川区域外にあることを主張している。
215
216 さらに,
217 Cは,
218 このような主張に加え
219 て,
220 本件コテージが本件指定による河川区域内にあると仮定した場合にも,
221 本件命令の何らかの違
222 法事由を主張することができるか,
223 また,
224 本件取消訴訟以外に何らかの行政訴訟を提起することが
225 できるかという点を,
226 明確にしておきたいと考え,
227 弁護士Fに相談した。
228
229 Fの立場に立って,
230 以下
231 の設問に答えなさい。
232
233 なお,
234 河川法及び同法施行令の抜粋を資料として掲げるので,
235 適宜参照しな
236 さい。
237
238
239 〔設問1〕
240 本件取消訴訟以外にCが提起できる行政訴訟があるかを判断する前提として,
241 本件指定が抗告
242 訴訟の対象となる処分に当たるか否かを検討する必要がある。
243
244 本件指定の処分性の有無に絞り,
245
246 河川法及び同法施行令の規定に即して検討しなさい。
247
248 なお,
249 本件取消訴訟以外にCが提起できる
250 行政訴訟の有無までは,
251 検討しなくてよい。
252
253
254 〔設問2〕
255 本件コテージが本件指定による河川区域内にあり,
256 本件指定に瑕疵はないと仮定した場合,
257 C
258 は,
259 本件取消訴訟において,
260 本件命令のどのような違法事由を主張することが考えられるか。
261
262 ま
263 た,
264 当該違法事由は認められるか。
265
266
267
268 - 3 -
269
270 【資
271 〇
272
273 料】
274 河川法(昭和39年7月10日法律第167号)(抜粋)
275
276 (河川区域)
277 第6条
278 一
279
280 この法律において「河川区域」とは,
281 次の各号に掲げる区域をいう。
282
283
284 河川の流水が継続して存する土地及び地形,
285 草木の生茂の状況その他その状況が河川の流水が
286
287 継続して存する土地に類する状況を呈している土地(中略)の区域
288 二
289
290 (略)
291
292 三
293
294 堤外の土地(中略)の区域のうち,
295 第1号に掲げる区域と一体として管理を行う必要があるも
296 のとして河川管理者が指定した区域〔注:「堤外の土地」とは,
297 堤防から見て流水の存する側の
298 土地をいう。
299
300 〕
301
302 2・3
303 4
304
305 (略)
306
307 河川管理者は,
308 第1項第3号の区域(中略)を指定するときは,
309 国土交通省令で定めるところに
310 より,
311 その旨を公示しなければならない。
312
313 これを変更し,
314 又は廃止するときも,
315 同様とする。
316
317
318
319 5・6
320
321 (略)
322
323 (河川の台帳)
324 第12条
325
326 河川管理者は,
327 その管理する河川の台帳を調製し,
328 これを保管しなければならない。
329
330
331
332 2
333
334 河川の台帳は,
335 河川現況台帳及び水利台帳とする。
336
337
338
339 3
340
341 河川の台帳の記載事項その他その調製及び保管に関し必要な事項は,
342 政令で定める。
343
344
345
346 4
347
348 河川管理者は,
349 河川の台帳の閲覧を求められた場合においては,
350 正当な理由がなければ,
351 これを
352 拒むことができない。
353
354
355
356 (工作物の新築等の許可)
357 第26条
358
359 河川区域内の土地において工作物を新築し,
360 改築し,
361 又は除却しようとする者は,
362 国土交
363
364 通省令で定めるところにより,
365 河川管理者の許可を受けなければならない。
366
367 (以下略)
368 2〜5
369
370 (略)
371
372 (河川管理者の監督処分)
373 第75条
374
375 河川管理者は,
376 次の各号のいずれかに該当する者に対して,
377 (中略)工事その他の行為の
378
379 中止,
380 工作物の改築若しくは除却(中略),
381 工事その他の行為若しくは工作物により生じた若しく
382 は生ずべき損害を除去し,
383 若しくは予防するために必要な施設の設置その他の措置をとること若し
384 くは河川を原状に回復することを命ずることができる。
385
386
387 一
388
389 この法律(中略)の規定(中略)に違反した者(以下略)
390
391 二・三
392
393 (略)
394
395 2〜10
396
397 (略)
398
399 第102条
400
401 次の各号のいずれかに該当する者は,
402 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
403
404
405
406 一
407
408 (略)
409
410 二
411
412 第26条第1項の規定に違反して,
413 工作物の新築,
414 改築又は除却をした者
415
416 三
417
418 (略)
419
420 〇
421
422 河川法施行令(昭和40年2月11日政令第14号)(抜粋)
423
424 (河川現況台帳)
425 第5条
426 2
427
428 (略)
429
430 河川現況台帳の図面は,
431 付近の地形及び方位を表示した縮尺2500分の1以上(中略)の平面
432 図(中略)に,
433 次に掲げる事項について記載をして調製するものとする。
434
435
436 一
437
438 河川区域の境界
439
440 二〜九
441
442 (略)
443
444 - 4 -
445
446