1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
17 【事
18
19 例】
20
21 A商事株式会社(以下「A社」という。)は,長年,食品製造機械メーカーであるB社及びC
22 社から機械を仕入れ,得意先の食品製造会社であるD社やE社らに販売していた。
23 A社は,市場の縮小傾向により,徐々に経営が苦しくなり,ここ数年は赤字決算を繰り返して
24 いたが,平成28年3月末日の資金繰りに窮し,同月25日,取締役会において破産手続開始の
25 申立てを行う旨決議し,支払を停止した。その後,A社は,同年4月1日,破産手続開始の申立
26 てを行い,同月5日,破産手続開始の決定を受け,破産管財人Xが選任された。
27 〔設
28
29 問〕
30
31 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
32
33 1.A社は,平成27年12月10日,B社から機械αを代金1000万円で購入し,同日,そ
34 の引渡しを受けたが,代金の支払期日は平成28年3月末日とされていた。A社は,この機械
35 αの売却先を探していたところ,同月15日,D社との間で,機械αを1500万円で売却す
36 る売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結することができた。なお,機械αの引渡
37 し及び代金の支払期日は,D社の買取り資金の調達の都合により,いずれも1か月後の同年4
38 月15日とされ,所有権の移転時期も同日とされていた。
39 A社の破産手続開始時において,本件売買契約に基づくA社及びD社の各債務は,双方とも
40 履行されておらず,機械αはA社の自社倉庫内に保管されていた。破産管財人Xは,選任され
41 た直後,B社からは,機械αの代金1000万円を支払うか,それができないとすれば機械α
42 を返還するよう求められ,D社からは,本件売買契約に従い機械αを引き渡すよう求められた。
43
44
45 B社は,機械αの代金1000万円を回収したいと考えている。この債権の回収につき,
46
47 考えられる法的根拠及び権利行使の方法を論じなさい。なお,B社は,本件売買契約の存在
48 を知らないこととする。
49
50
51 Xは,機械αの代金1500万円をD社から回収し,破産財団を増殖したいと考えている。
52
53 Xがこの代金を回収する場合に,破産手続上必要とされる手続及び効果について,その制度
54 趣旨を踏まえて,論じなさい。
55
56
57 Xは,の手続を経て,D社から機械αの代金1500万円を回収した。その後,この事
58
59 実を知ったB社は,破産財団から優先的に機械αの代金相当額である1000万円の弁済を
60 受けたいと考えた。B社は,破産財団から優先的に弁済を受けることができるか。予想され
61 るXからの反論を踏まえて,論じなさい。
62 2.A社は,かねてからC社に運転資金の融通を求めていたところ,C社は,これに応じ,平成
63 27年9月25日,A社に対し,弁済期を平成28年9月末日として,2500万円を貸し付
64 けた(以下,この貸付に係る債権を「本件貸付金債権」という。)。
65 A社は,平成28年1月20日,C社から機械βを代金2000万円で購入し,同日,その
66 引渡しを受けたが,代金の支払期日は同年3月末日とされていた。そこで,A社は,C社の要
67 請に応え,この売買契約の締結と同時に,C社との間で,C社のA社に対する売買代金債権2
68 000万円を担保するため,機械βにつき譲渡担保権を設定する内容の譲渡担保契約(以下「本
69 件譲渡担保契約」という。)を締結した。本件譲渡担保契約には,A社が支払を停止したとき
70 は当然に期限の利益を喪失し,C社は譲渡担保権の実行として,自ら機械βを売却し,清算を
71 するとの約定があった。
72 A社の支払停止時,機械βはA社の自社倉庫内に保管されていたが,A社の支払停止を知っ
73 たC社は,本件譲渡担保契約に基づき,直ちにA社の同意を得て機械βを引き揚げた(なお,
74 - 2 -
75
76 この引揚げは適法なものとする。)。
77 A社の破産手続開始後,得意先であったE社は,C社が機械βを引き揚げたとの情報を得,
78 C社に対し,是非購入したいと申し入れた。そこで,C社は,E社に機械βを売却することと
79 したが,一旦商品として出荷された機械の価値は中古市場においては半減することが通常であ
80 るため,その売却価格は,A社の通常販売価格である3000万円の半額程度とされてもやむ
81 を得ないと考えていた。ところが,交渉の結果,E社への売却価格は,通常販売価格の8割に
82 相当する2400万円となり,これによって,C社は,A社に対する売買代金債権2000万
83 円を全額回収できた上,期待していなかった剰余金400万円が生じた。本件譲渡担保契約は,
84 前記の約定のとおりいわゆる処分清算型とされており,C社はこの剰余金400万円をA社に
85 返還する債務を負うこととなった。
86 そこで,C社としては,A社のC社に対する剰余金返還債権400万円と本件貸付金債権2
87 500万円との相殺をしたいと考えている。C社の相殺は認められるか。破産法の条文の構造
88 と予想されるXの反論を踏まえて,論じなさい。
89
90 - 3 -
91
92 〔第2問〕(配点:50)
93 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
94 【事
95
96 例】
97 X社は,平成9年に設立された建設資材の輸入・販売を業とする株式会社である。Aは,X社
98
99 の代表取締役であり,同社に自己資金を貸し付け,これを運転資金に充てていた。Y社は,X社
100 の発行済株式の70パーセントを有するいわゆる支配株主であり,同社に運転資金も融通してい
101 た。Bは,Y社の代表取締役であり,同社の発行済株式の全てを有している。Z社は,同じくB
102 が代表取締役を務める建設会社であり,X社の得意先である。X社とZ社との取引は,Bの主導
103 によって開始されたものであり,X社のZ社に対する平成25年3月末期の売上は,X社の総売
104 上高の30パーセント余りを占めていた。
105 X社は,平成25年末頃から始まった円安の影響を受けて業績不振に陥っていたところ,平成
106 26年3月に入ると,Z社がBの放漫経営により破綻したため,同社に対する売掛金の回収がで
107 きなくなった。その結果,X社は,同月末日の資金繰りに窮することとなった。
108 X社は,以上のような経緯から,破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとして,
109 平成26年3月20日に再生手続開始の申立てをした。同日,X社について監督命令が発せられ,
110 弁護士Kが監督委員に選任された。
111 平成26年3月28日,X社について再生手続開始の決定がされた。
112 〔設
113
114 問〕
115
116 1.X社は,Z社に代わる新たな得意先を獲得する見込みの下で事業計画を作成し,この事業計
117 画が実現可能であり,計画弁済の履行が可能であると見込まれたことから,平成26年7月7
118 日,裁判所に対し,再生債権者の権利の変更に関する定めとして下記の条項のある再生計画案
119 (以下「本件再生計画案」という。)を提出した。
120 記
121 1
122
123 確定再生債権額
124 元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金
125 合計2億0121万7591円
126 再生手続開始決定日以降の利息及び遅延損害金
127 合計32万6055円及び額未定
128 なお,未確定の再生債権及び不足額が確定していない別除権付債権はない。
129
130 2
131
132 権利変更の一般的基準
133 @
134
135 全 て の 確 定 再 生 債 権 に つ き,再 生 手 続 開 始 決 定 日 以 降 の 利 息 及 び 遅 延 損 害 金 は ,
136 再 生 計 画 の 認 可 の 決 定 が 確 定 し た 時 ( 以 下 「 認 可 決 定 確 定 時 」 と い う 。) に 全 額
137 の免除を受ける。
138
139 A
140
141 確定再生債権の元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害
142 金の合計額は,次のB及びCの確定再生債権を除き,10万円までの部分は免除
143 を受けず,10万円を超える部分は認可決定確定時にその80パーセントの免除
144 を受ける。
145
146 B
147
148 Aの確定再生債権のうち,元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及
149 び遅延損害金の合計額は,認可決定確定時にその全額の免除を受ける。
150
151 C
152
153 Y社の確定再生債権のうち,元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息
154 及び遅延損害金の合計額は,10万円までの部分は免除を受けず,10万円を超
155 える部分は認可決定確定時にその85パーセントの免除を受ける。
156 - 4 -
157
158 3
159
160 弁済方法
161 権利変更後の金額のうち,10万円までの部分は,再生計画の認可の決定が確定
162 した日から1か月を経過した日の属する月の末日までに支払い,その余の部分は,
163 10回に均等分割して平成27年から平成36年まで毎年4月末日限り支払う。
164
165 4
166
167 個別条項
168 (略)
169
170 本件再生計画案の提出を受けた裁判所は,これを決議に付する旨の決定をすることができる
171 か。本件再生計画案2@からCまでの各条項について,民事再生法上の問題点を踏まえて,論
172 じなさい。
173 なお,各条項はいずれも民事再生法第174条第2項第4号には該当しないこと,Aは2B
174 の免除に同意していること,Y社は2Cの免除には同意していないことを前提とする。
175 2.本件再生計画案は,平成26年7月14日,決議に付する旨の決定がされ,同年9月3日に
176 開催された債権者集会において可決された(以下,可決された本件再生計画案を「本件再生計
177 画」という。)。同日,本件再生計画について認可決定がされ,同月29日に確定した。
178 X社は,本件再生計画の認可決定が確定した後も,事業計画で見込んでいたZ社に代わる新
179 たな得意先の獲得ができなかったことなどから,事業計画どおりには業績を上げることができ
180 なかった。そのため,X社は,平成27年4月末日までの本件再生計画に基づく弁済は何とか
181 行ったものの(総額520万4000円),平成28年1月末日現在,同年4月末日の弁済の
182 見込みは立たなかった。とりわけ,最も大口の債権を有するG銀行(確定再生債権額8000
183 万円)に対する弁済資金の確保は困難であることが判明した。
184
185
186 再生計画認可後の再生手続においてX社及びKが果たすべき役割について述べた上で,X
187 社として採り得る方策を論じなさい。
188
189
190
191 G銀行は,本件再生計画に基づき,平成27年4月末日までに合計169万8000円の
192 弁済を受けたものの,結局,平成28年4月末日に支払われるべき159万8000円の弁
193 済は受けられなかった。この場合にG銀行として採り得る方策を論じなさい。
194
195 - 5 -
196
197 - 6 -
198
199 論文式試験問題集[租
200
201 - 7 -
202
203 税
204
205 法]
206
207 [租
208
209 税
210
211 法]
212
213 〔第1問〕(配点:50)
214 【注】
215
216 本問は,問題文中において特許法上の規定を引用しているが,同法の解釈を問うものでは
217 ない。
218 なお,特許法については,平成二十八年一月二十二日政令第十七号「特許法等の一部を改
219 正する法律の施行期日を定める政令」に基づいて,平成二十八年四月一日付けで「特許法等
220 の一部を改正する法律(平成二十七年法律第五十五号)」が施行されているが,問題文中で
221 引用しているものは,同改正前の規定である。
222
223 Aは,平成2年4月に食品メーカーであるB株式会社(以下「B社」という。)に入社し,平成
224 3年4月からB社のC研究所に研究員として勤務し,食品の研究開発に従事していた。
225 Aは,C研究所にいた平成17年に健康食品に関する甲という発明を行った。甲は,その性質上
226 B社の業務範囲に属し,その発明をするに至ったAの行為はその現在の職務に属するものであった
227 (特許法(司法試験用法文を参照。)第35条第1項参照。)。
228 B社は,平成5年6月1日付けで,同日以降に従業員がした職務発明について,職務発明取扱規
229 程(以下「本件規程」という。)を定めており,その主要な条項は下記のとおりであった(その後
230 の改訂はなかった。)。
231
232 第1条
233
234 職務発明に関する特許を受ける権利(以下「特許を受ける権利」という。)は,会社が
235
236 これを承継する。ただし,会社がその権利を承継する必要がないと認めたときは,この限
237 りでない。
238 第2条
239
240 会社は,従業員がした発明が職務発明であるか否かの認定をし,職務発明であると認定
241
242 した場合は,その発明について特許を受ける権利を会社が承継するか否かの決定をするこ
243 ととする。
244 第3条
245
246 発明を完成した従業員(以下「発明者」という。)は,前条の規定によりその発明者の
247
248 発明について特許を受ける権利を会社が承継すると決定したときは,その権利を会社に譲
249 渡することとする。
250 第4条
251
252 会社は,発明者から特許を受ける権利を承継したときは,速やかに出願することとする。
253
254 第5条
255
256 特許を受ける権利の承継につき,会社が発明者に対して支払う報償金の時期及び額は以
257
258 下のとおりとする。
259 1
260
261 出願したとき
262 出願報償金
263
264 2
265
266 1万円
267
268 特許権を第三者に実施許諾し又は譲渡して収入を得たとき
269 実績報償金
270
271 第三者から受領した額の5パーセント
272
273 B社は,平成18年3月,本件規程第1条本文及び第3条に基づき,Aから,甲に係る特許を受
274 ける権利を承継し,同月中に特許の出願をしたため,本件規程第5条第1号に基づき,同月中にA
275 に対し,出願報償金1万円(以下「本件出願報償金」という。)を支払った。
276 平成22年8月,甲に係る特許の設定登録がされた。B社は,平成24年10月,食品メーカー
277 であるD株式会社(以下「D社」という。)との間で甲に係る特許権の譲渡契約を締結し,同月中
278 に代金1億円の支払を受けたため,本件規程第5条第2号に基づき,同年12月,Aに対し実績報
279 償金として500万円(以下「本件実績報償金」といい,本件出願報償金と併せて「本件各報償金」
280 - 8 -
281
282 という。)を支払った。
283 Aは,平成25年7月にB社を退社した。Aは,平成26年4月,B社を被告として,本件規程
284 第5条により特許を受ける権利の対価を支払うことは不合理である旨主張し,特許法第35条第3
285 項及び第5項に基づき,「相当の対価」から既に支払を受けた本件各報償金合計501万円を差し
286 引いた残額として4000万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める訴えを提起した。B社
287 は,同訴訟において,本件規程第5条により特許を受ける権利の対価を支払うことは不合理とは認
288 められず,また,仮に不合理と認められるとしても「相当の対価」の額は既払い額501万円を上
289 回ることはない旨主張し,全面的に争った。その後の平成27年12月1日,裁判所の和解勧告に
290 基づき,AとB社との間で,「相当の対価」の残額として2000万円(以下「本件和解金」とい
291 う。)を支払う旨の訴訟上の和解が成立し,平成28年1月20日,B社はAに対し同額を支払っ
292 た。
293 他方,D社は,B社から取得した甲に係る特許権を利用して乙という健康食品を製造し,平成2
294 6年3月から1箱1万円での販売を開始した。D社の創業者であり,その発行済株式総数の70パー
295 セントを所有し,いわゆるワンマン社長として同社の実権を掌握していた代表取締役社長Eは,同
296 年4月,自ら及び家族が使用する目的で,部下に命じて乙50箱(以下「本件食品」という。)を
297 無償で入手し,これを自宅に持ち帰って,その後家族とともに費消した。
298 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。
299 〔設
300
301 問〕
302
303 1
304
305 本件出願報償金は,所得税法上,いかなる所得に分類されるか,異なる見解にも言及しつつ
306 自説を述べなさい。また,本件実績報償金が本件出願報償金とは別の所得に分類されるかにつ
307 いても,理由を付して述べなさい。
308
309
310 2
311
312 本件和解金は,所得税法上,いつの年分のいかなる所得に分類されるか,自説を述べなさい。
313 D社は,本件食品の価額(50万円)を損金の額に算入することができるか,根拠条文と理由
314
315 を付して述べなさい。ただし,同族会社等の行為又は計算の否認の規定の適用はないものとする。
316
317 - 9 -
318
319 〔第2問〕(配点:50)
320 P市に居住するAは,将来,海の近くに別荘を建てる予定で,平成元年1月10日,Q市のR海
321 岸線沿いにある100坪の甲土地を2000万円で購入し,同日,所有権移転登記も行った。とこ
322 ろが,その直後にAは病に倒れ,別荘計画は実行に移されることなく,平成2年11月20日にA
323 はこの世を去った。その時点における甲土地の時価は2500万円であった。Aと同居していた一
324 人息子Bが,甲土地を含むAの全財産を相続により取得した。
325 S市に居住するCは,平成元年3月1日から,甲土地に隣接する乙土地に事務所用建物と艇庫を
326 建築し,そこでサーフショップを個人で営んでいた。Cは,甲土地の所有者が一度もR海岸にやっ
327 て来ないのをよいことに,悪いとは思いながらも,平成2年1月5日から,甲土地を上記サーフシ
328 ョップの駐車場として使用することにした。Bは,海沿いの別荘に全く興味がなかったので,相続
329 後も甲土地を訪れることはなく,Cが自分の土地を勝手に使用していることにも気付かないままで
330 あった。
331 Cは,平成23年1月20日,Bに対して甲土地に関する取得時効を援用して甲土地の所有権の
332 取得を主張し,Bに対して甲土地の所有権移転登記を求めたが,Bはこれを拒否した。時効援用時
333 における甲土地の時価は5000万円であった。そこで,Cは,同年3月1日,Bを被告として,
334 甲土地の所有権確認及び平成2年1月5日時効取得を原因とする所有権移転登記手続を請求する訴
335 訟をP地方裁判所に提起した。この訴訟の中で,Bは時効の完成を争ったが,P地方裁判所は平成
336 23年11月30日にCの請求を全面的に認容する判決を言い渡し,同年12月20日に同判決は
337 確定した。この時点における甲土地の時価も5000万円であった。その後,Cは,甲土地につい
338 て所有権移転登記を経由した上で,平成27年12月1日,Dに対して甲土地を当時の時価である
339 5500万円で譲渡した。
340 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。
341 〔設問1〕
342 甲土地を時効取得したことによるCの利益は,所得税法上,いかなる所得に分類されるか述べな
343 さい。
344 〔設問2〕
345 甲土地については,Aが取得してからBが時効により所有権を喪失するまでの間に含み益が生じ
346 ている。最高裁判例が示した清算課税説を前提とするならば,この含み益に対する所得税法上の取
347 扱いには,どのような問題点があるか述べなさい。その際には,時効取得した者の取得費について
348 も,相続による資産の取得の場合と対比した上で,言及しなさい。
349
350 - 10 -
351
352 論文式試験問題集[経
353
354 - 11 -
355
356 済
357
358 法]
359
360 [経
361
362 済
363
364 法]
365
366 〔第1問〕(配点:50)
367 A社は,日本で一般消費者向け電子機器甲(以下「甲」という。)の製造販売に従事する事業者
368 である。甲は,平成21年に初めて販売された画期的な製品であり,世界全体で甲を製造販売して
369 いる事業者は,現時点で,A社以外には,やはり日本に拠点を置くB社しか存在しない。A社とB
370 社は激しくシェアを争っており,各社のシェアの年による変動は大きい。C社及びD社は,いずれ
371 も,日本で電子機器等に使用される部品の製造販売に従事する事業者である。平成24年に,A社
372 は,甲の新しいバージョンを開発するに際し,C社に対して,甲の主要な部品乙(以下「乙」とい
373 う。)の開発・製造を依頼し,そのために必要な技術情報を開示することを申し出た。C社は,こ
374 の依頼を受け,A社が製造する新しいバージョンの甲向けに乙を開発・製造した上で,平成25年
375 度から1四半期当たり約200万個から300万個の乙をA社に納入するようになった。平成25
376 年には,A社は,D社に対しても,同様の依頼と申出を行い,D社は,この依頼を受けて,平成2
377 6年度から1四半期当たり約150万個から200万個の乙をA社に納入するようになった。A社
378 が製造する甲に用いられる乙は,固有の仕様と性能を求められるため,A社が製造する甲以外の電
379 子機器に転用することは不可能である。C社及びD社以外に,世界で乙の製造販売に従事する事業
380 者としては,中国に拠点を置くE社が存在し,E社は,B社が製造する甲向けに乙を製造し,B社
381 に納入していた。
382 平成26年12月頃,取引先の拡大を図ろうとしたE社は,A社に接近し,従来品と性能は同じ
383 だがより安価な乙を,A社が製造する甲向けにも開発できると持ち掛けた。その結果,A社は,E
384 社に対しても乙の開発・製造を依頼し,必要な技術情報をE社に提供した。E社のA社に対する乙
385 の納入開始は,平成27年12月頃に予定されている。E社がA社から乙の開発・製造の依頼を受
386 けたことは,A社の調達担当者からの情報として,平成26年の年末までにはC社及びD社の取締
387 役会において紹介されていた。
388 平成27年1月初旬,C社の営業担当取締役rとD社の営業担当取締役sは,C社とD社が共に
389 参加する商品展示会に赴いた際の雑談の中で,従来のA社による乙の価格引下げ要求は極めて理不
390 尽であり,原材料費が高騰している中でそのような要求がまかり通れば,乙の生産基盤が日本から
391 失われかねないので,両社が一致協力してA社との交渉に当たるべきであるとの認識で一致した。
392 そして,両社の協力の具体化のため,平成27年4月〜6月期(以下「本期」という。)における
393 乙の納入に関してA社と商談をする前に,互いにA社に提示する乙の価格について意見を交換し,
394 かつ,A社との商談の内容について情報を交換する仕組みを構築することで一致した。なお,rと
395 sは,それぞれC社とD社において,乙の価格を決定する権限を有していた。
396 これを受けて,平成27年2月初旬から,C社の営業課長tとD社の営業課長uは,それぞれ,
397 上司であるrとsの指示を受けて,A社に提示する乙の価格及びA社との商談の様子について,電
398 子メール(以下「メール」という。)による情報交換を始めた。その後tとuとの間でやり取りさ
399 れたメールの宛名には常にrとsのメールアドレスも含まれており,rとsは,tとuとの間で交
400 わされたメールの内容を把握していたが,自ら情報交換に加わることはなかった。uは,同月15
401 日にtに送信したメールの中で,乙の単価(1個当たりの納入価格)について,従来は2800円
402 とされてきたが,原材料費の高騰に鑑みて,本期分は3000円を提示したいと考えている旨を伝
403 えた。tは,同日,これに対する返信メールの中で,乙の単価が2950円であっても,受注数量
404 が200万個以上であれば採算が取れることから,A社との交渉では,2950円を下回らない範
405 囲であれば許容範囲であると答えた。uは,同日,これに対する返信メールの中で,自分も同意見
406 である旨を伝えた。
407 この意見交換の後,本期分の乙の単価として,C社は2990円を,D社は3000円をA社に
408 提示した。A社は,C社及びD社との交渉の中で,B社との競争の厳しさを強調し,C社及びD社
409 - 12 -
410
411 に対する発注数量の配分を大幅に見直す可能性にも言及しつつ,当該単価を2930円以下とする
412 よう強く求めたが,C社及びD社の両社とも,原材料費高騰のため,その水準では採算が取れない
413 として,これに激しく抵抗した。それぞれA社と交渉した結果,平成27年3月初旬に,本期分の
414 乙の単価について,C社は2960円で,D社は2970円でA社と妥結した。tとuは,C社と
415 D社がA社との間で交渉妥結に至るまでの状況を,逐一,メールで知らせ合い,その内容は上司の
416 rとsにも伝わっていた。C社とD社は,それぞれA社と妥結した単価で本期分の乙を受注し,そ
417 の受注数量は,C社が270万個,D社が200万個であった。
418 〔設
419
420 問〕
421 C社及びD社の上記行為について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独
422
423 占禁止法」という。)上の問題点を分析して検討しなさい。
424
425 - 13 -
426
427 〔第2問〕(配点:50)
428 【前
429
430 提】
431 A社,B社及びC社は,それぞれ健康維持のための消耗品である甲(以下「甲」という。)の製造
432
433 業者である。日本には,これら3社のほか甲の製造業者が数社ある。各社の甲の販売金額が日本に
434 おける甲全体の販売金額に占める割合(シェア)は,A社が55パーセント程度,B社とC社はい
435 ずれもおよそ10パーセントから15パーセント程度である。A社,B社及びC社以外の甲の製造
436 業者のシェアはいずれも10パーセント未満である。日本において,甲の輸入品はほとんど流通し
437 ていない。過去において各社の順位やシェアに大きな変動はない。
438 甲の製造業者は,自社の製造した甲を小売業者に販売し,小売業者は,甲を一般消費者に対して
439 販売している。小売業者は,小売業者の店舗に来店する一般消費者に対して販売する方法をとって
440 いる。A社は,製造した甲を小売業者に対して出荷するに際して,甲に書面(以下「納品書」とい
441 う。)を添付し,小売業者に納入する製品の名称(甲)やその数量,出荷する製品(甲)の小売業
442 者に対する販売価格,支払期限等を通知している。
443 一度A社製の甲を購入して使用したほとんどの一般消費者は,A社製の甲を店頭で指定し,継続
444 的に購入することが通常である。このようにA社製の甲は一般消費者に高い評価を得ており,甲を
445 販売する小売業者にとって,A社製の甲を取り扱うことは,その営業上不可欠となっている。
446 〔設
447
448
449 問〕下記及びの設問に答えなさい。
450 上記の【前提】に加え,以下の事情がある場合に,A社の行為について,独占禁止法上の問題
451 点を分析して検討しなさい。
452 A社は,自社製の甲を取り扱う小売業者を全国的な範囲で相当数確保し,維持するために,A社
453
454 の取引先である小売業者の全てがある程度の利益を確保できることが,必須であると考えていた。
455 ところが,ある時期から,小売業者のうち,特に規模の大きい小売業者(以下「大規模小売業者」
456 という。)が,甲の1個当たりの利益を少なくして一般消費者に対する販売価格(以下「小売価格」
457 という。)を低くする一方,数量を多く販売することによってある程度の利益を確保する戦略によ
458 り甲を販売し,A社製の甲もその対象とするとともに,そのように低めに設定した甲の小売価格に
459 ついて,一般消費者に対して大々的に広告を行って一般消費者に訴求することが常態化した。
460 A社は,小売業者による甲の小売価格の自由な広告は,規模の小さい小売業者をも全国的な範囲
461 で相当数確保し,維持することが自社にとって利益になるというA社の考えに反する結果をもたら
462 すと考え,自社の取引先小売業者が広告において一般消費者に対しA社製の甲の小売価格の表示を
463 行った場合には,当該小売業者に対してそのような表示を行わないことを求め,これに従わない場
464 合には,当該小売業者に対して甲の出荷を停止することを決定した。
465 かかる決定に基づき,A社は,納品書にあらかじめ「広告に小売価格を記載しないでください。」
466 との文言を記載し,甲の出荷の度ごとに小売業者に通知した。また,A社の営業担当者は,取引先
467 である大規模小売業者を度々訪問し,一般消費者に対する広告においてA社製の甲の小売価格の表
468 示を行わないように要請するとともに,表示を継続する場合には出荷を停止する旨を説明した。
469 このようなA社の納品書の記載と営業担当者の説明により,A社の取引先である大規模小売業者
470 は,おおむね,A社製の甲の小売価格を広告において表示しなくなった。
471
472
473 上記の【前提】に加え,以下の事情がある場合(記載の事情はない)に,A社の行為につい
474 て,独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
475
476 - 14 -
477
478 A社は,自社の甲の機能を改良し,現行の甲と比較して健康維持機能を20パーセント以上向上
479 させ,他社製の甲に比べて高い顧客満足度を見込む甲の新製品(以下,A社製の甲の新製品を「新
480 製品甲」という。)を開発した。A社は,新製品甲の販売開始に当たり,小売業者に対し,一般消
481 費者に新製品甲の機能を説明することを求めることとし,具体的には小売業者の販売員がA社の定
482 める研修を受講すること,そのように研修を受講した小売業者の販売員が一般消費者に対して新製
483 品甲の機能や取扱方法の説明を行うこと,小売業者の販売員が新製品甲の機能の説明を行うために
484 必要な機材を購入することを,全ての取引先小売業者に義務付け,これに応じない小売業者とは新
485 製品甲の取引を行わないことを決定した(以下「本決定」という。)。
486 これ以前にA社が,取引先小売業者に対し,A社製の甲の販売に際して甲の健康維持機能や取扱
487 方法の説明を消費者に行うことを求めたり,義務付けたりすることはなかった。
488 A社が本決定を行うに至ったのは,第一に,近時B社及びC社も,それぞれ自社の従来の甲の機
489 能を改良した新製品を発売し,一般消費者を引き付け始めており,このまま放置しておくと,近い
490 将来,現在のA社のシェアを維持できなくなるおそれが生じていること,第二に,新製品甲の健康
491 維持機能の向上を強く打ち出し,販売に当たって一般消費者に対して丁寧に説明することが,A社
492 製の甲の一般消費者に対する訴求力を向上させ,A社製の甲を指定して購入する一般消費者を一層
493 増加させると考えたことによる。
494 もっともA社の取引先小売業者の中には,本決定に従うと,販売コストが上昇し,それを小売価
495 格に転嫁すると新製品甲の小売価格を引き上げざるを得ないことに懸念を有する者もいた。
496 このようなA社の取引先小売業者の懸念にもかかわらず,A社が本決定を小売業者に対して実施
497 したところ,これに従ったA社の取引先小売業者の新製品甲の販売コストが上昇し,本決定がなかっ
498 た場合に想定していた小売価格よりも高い小売価格で新製品甲を販売する小売業者も少なくなかっ
499 た。
500
501 - 15 -
502
503 - 16 -
504
505 論文式試験問題集[知的財産法]
506
507 - 17 -
508
509 [知的財産法]
510 〔第1問〕(配点:50)
511 X1とX2(以下,併せて「Xら」という。)は,使用されている貸コインロッカーに顧客が誤っ
512 て硬貨を入れないようにする装置を共同で開発し,その発明について共同で特許出願し,特許権と
513 しての登録を得た(以下,この登録された特許を「本件特許」という。)。本件特許の特許請求の範
514 囲は,「鍵を抜き取った状態において硬貨の投入行為を妨げる手段を設けたことを特徴とする貸ロ
515 ッカーの硬貨誤投入防止装置」という文言からなる。本件特許の明細書の記載及び図面(以下「明
516 細書等」という。)には,鍵の抜き差しに伴って金属製の遮蔽板を回転させ,もって硬貨投入口の
517 開閉を行う旨の具体的な実施例が記載されているが,他には具体的な実施例の記載はない。同実施
518 例では,鍵が抜かれた状態では回転してきた金属製の遮蔽板が硬貨投入口を全体的に塞ぎ,硬貨が
519 入らない構成となっている。Zは,Xらから許諾を受けて本件特許権について通常実施権を有して
520 いる。
521 Yは,貸コインロッカーの製造販売をしているが,いずれの貸コインロッカーにも鍵が抜かれた
522 状態では硬貨が投入されないようにした装置が実装されている。その製品には製品Aと製品Bの2
523 種類があり,製品Aは本件特許の実施例とほぼ同じ構成を有しているが,遮蔽板は樹脂製であり,
524 回転するようにはなっておらず,遮蔽板が上下することにより硬貨投入口を開閉する構成となって
525 いる。製品Bは,遮蔽板を使うことはなく,鍵が抜かれた状態で硬貨を投入しようとすると警告音
526 が鳴るように構成されている。なお,かかる製品Bの構成は,本件特許の実施例を含む明細書等を
527 読んだだけでは,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に
528 想到し得ないものである。
529 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。
530 〔設
531
532 問〕
533
534 1.Xらは,Yに対して,本件特許権に基づき,製品Aと製品Bの製造販売の差止め及び損害賠
535 償を求める訴訟を共同で提起した。Xらの請求に対するYの考えられる反論とその妥当性に
536 ついて論じなさい。
537 2.
538
539
540 Yは,前記訴訟が提起された後,本件特許に対する無効審判を請求した。Xらはこれを争っ
541 たが,同時に特許請求の範囲を減縮すれば無効理由がなくなるので,これを減縮したいと
542 考えた。Xらは,当該無効審判において,どのような手続をとればよいか論じなさい。ま
543 た,同様の無効理由についてYが前記訴訟において特許法第104条の3の抗弁を主張し
544 ている場合,Xらはどのように対抗できるかについて論じなさい。
545
546
547
548 の無効審判請求について,仮に特許庁が本件特許を無効とする旨の審決を行ったとして,
549 この審決に対してX1のみが単独で審決取消訴訟を提起する場合の問題点について論じな
550 さい。
551
552 3.前記訴訟において,Yの製品が本件特許を侵害したとして,Xらの差止請求及び損害賠償請
553 求が認められ,その判決が確定したため,Yは侵害行為を中止し,Xらに対して損害賠償を
554 行った。その後,Yが請求した無効審判により,本件特許を無効とする旨の審決が確定した。
555 この場合,Yは,Xらに対して支払った損害賠償金を取り戻せるか否かについて論じなさい。
556 また差止めの効力について論じなさい。
557
558 - 18 -
559
560 〔第2問〕(配点:50)
561 作家Xは,米国の作家Aが創作した「Days of the full-scale sprint like a tornado」という
562 題号(以下「題号a」という。)の英語の世界的ベストセラー小説(以下「小説a」という。)につ
563 き,Aから日本語に翻訳する権利を得た。小説aは,恵まれない環境に育った少年が苦学を重ね,
564 大企業に入社し,持ち前の馬力と攻撃的性格で並み居るライバルに競り勝ちついに大企業のトップ
565 となるというサクセスストーリーである。Xは小説aを翻訳するに当たり,その大部分は直訳であ
566 るものの,日本人には分かりにくい英語の表現や各場面設定につき,独特の意訳をするなど創意工
567 夫を凝らし,その結果,日本語の小説として原作にも負けない流ちょうで生き生きとした表現の小
568 説(以下「小説b」という。)を完成させた。小説bは,題号aを直訳した「竜巻のごとく全力疾
569 走した日々」との日本語の題号(以下「題号b」という。)を付した上,出版された。小説bのブ
570 ックカバー(以下「ブックカバーb」という。)はXが自ら独自にデザインしたもので,青と白を
571 基調とし,左下から右上に風が吹き抜けるようなしま模様とともに,金色の題号が中央で大きく渦
572 を巻きながら天に昇るように描かれているものであった。
573 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。
574 〔設
575
576 問〕
577
578 1.作家Yは,小説a及び小説bに描かれた内容を批評するとともに同小説の描く世界観を揶揄
579 することを通じて,競争社会のゆがみを風刺する趣旨で,小説a及び小説bの全体の構成,
580 各場面設定及び物語の展開の特色を一見して分かるように残しながら,主人公がライバルと
581 の競争に競り負け最後には挫折するという内容の日本語の小説(以下「小説c」という。)を
582 書き,これに「つむじ風のごとく疾走して転んだ日々」という題号(以下「題号c」という。)
583 を付した上,これを自費出版した。ただし,小説cは,小説aの直訳としての日本語の表現
584 において小説bと類似する部分があるものの,小説bでXが創意工夫を凝らした日本語の表
585 現は使用していない。また,小説cのブックカバー(以下「ブックカバーc」という。)はY
586 が自らデザインしたもので,ブックカバーbの色合い,構図及び文字の配置の特色が一見し
587 て分かるように残されており,左下から右上に風が吹き抜けるようなしま模様とともに,灰
588 色の題号が中央で小さく渦を巻きながら徐々に消滅するように描かれていた。
589 Xは,Yに対し,小説c,題号c及びブックカバーcはXの著作権及び著作者人格権を侵
590 害するものであるとして,小説c,題号c及びブックカバーcの複製・頒布の差止め及び損
591 害賠償を求める訴訟を提起した。
592 Xはどのような主張をすることができるか。これに対するYの反論としてどのような主張
593 が考えられるか。双方の主張の妥当性についても論じなさい。
594 2.
595
596 事業者Z1は,書籍の購入者の依頼により,同書籍をその購入者のタブレット端末で読
597 めるように電子ファイル化するという有償のサービスを業とする者である。そのサービス
598 の手順は次のとおりである。すなわち,まず,書籍を購入した利用者がZ1に書籍の電子
599 ファイル化を申し込み,自ら購入した書籍をZ1に送付する,次に,Z1はその書籍を裁
600 断して自ら管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化する,そして,Z1は,完成
601 した電子ファイルを記録した電子記憶媒体を裁断した書籍とともに利用者に送付する,と
602 いうものである。Z1は,上記の手順により,小説bの不特定多数の購入者の依頼に応じ
603 て小説bの電子ファイル化を続けている。
604
605
606
607 事業者Z2は,小説bを自ら複数冊購入してそれらを裁断した上で,それを読み込む専
608 用スキャナーが設置されている自社の店舗内の書棚に並べ,小説bを電子ファイル化した
609 い不特定多数の利用者に,店舗外への持ち出しを禁止した上で裁断済みの小説bを貸し出
610 し,それを利用者に上記店舗内のスキャナーで自ら電子ファイル化させ,その電子ファイ
611 ルを利用者に取得させるという有償のサービスを業として提供している。
612 - 19 -
613
614 Xは,Z1及びZ2に対し,上記及びの行為はそれぞれXの著作権を侵害するもので
615 あるとして,それらの行為の差止め及び損害賠償を求める訴訟をそれぞれ提起した。これら
616 の訴訟において,Xはどのような主張をすることができるか。これに対するZ1及びZ2の
617 反論としてどのような主張が考えられるか。それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。
618
619 - 20 -
620
621 論文式試験問題集[労
622
623 - 21 -
624
625 働
626
627 法]
628
629 [労
630
631 働
632
633 法]
634
635 〔第1問〕(配点:50)
636 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
637 【事
638
639 例】
640 Xは,平成20年3月に大学の理工学部を卒業後,同年4月,Y社と,職種を限定せずに,期間
641
642 の定めのない労働契約を締結して入社し,本社の研究開発部門に配属された。Xは,平成25年4
643 月にY社のA工場に異動となり,液晶生産事業部(以下「本件配属部」という。)の技術部門を担
644 当する課に配属となった。
645 Y社は電気機器製造を業とする株式会社であり,東京本社のほか,全国に複数の工場,支社を配
646 置し,5000人以上の従業員を擁していた。Y社は,平成25年11月,A工場において,当時
647 世界最大のサイズの液晶ディスプレイの製造ラインを構築するプロジェクト(以下「本件プロジェ
648 クト」という。)を立ち上げた。本件プロジェクトにおけるXを含む技術担当者の主な業務は,製
649 品の製造装置の効率性を高める運転条件を調整する作業であった。Xは,本件プロジェクトの一つ
650 の工程において初めてプロジェクトのリーダーになった。
651 本件プロジェクトのリーダーは,常時,複雑な担当業務を多く抱え,時間外労働(法定労働時間
652 を超える時間の労働をいう。以下同じ。)を余儀なくされており,Xは,本件プロジェクトが立ち
653 上がってから平成26年4月までの間に,休日出勤を繰り返し,帰宅が午後11時を過ぎることも
654 あった。Xは,平成25年12月から平成26年4月までの間,毎月80時間から100時間,月
655 平均90時間程度の時間外労働を行っていた。
656 Xは,平成25年12月から,頭痛,めまい,不眠の症状が現れ,平成26年3月のY社の定期
657 健康診断で不眠を訴え,同年4月2日,A工場の診療所で産業医から不眠症と診断されて薬を処方
658 された。また,Xは,同月30日,自宅近くの心療内科の医院(以下「本件医院」という。)でう
659 つ的症状と診断され,抑うつ及び睡眠障害に適応のある薬を処方された。ただし,うつ病に罹患し
660 ているとの確定的な診断はなされなかった。なお,Xには精神疾患の既往歴はなかった。Xは,未
661 婚で両親と同居しており,私生活上のトラブルはなかった。
662 平成26年4月1日,本件プロジェクトの要員削減が行われ,同年5月9日,Xは,これまでの
663 業務に加え,別の製品の開発業務も担当するよう上司Bから打診された。これに対して,Xは,体
664 調不良を理由に難色を示したが,上司Bに受け入れられず,結局,その業務についても担当となっ
665 た。一方,その頃,Xは,担当業務に遅延が生じていることにつき,上司Bから,本件配属部の会
666 議で度々厳しい叱責を受けた。
667 Xは,平成26年5月中旬から,頭痛のために眠ることができず,頭痛薬を連日服用するように
668 なった。Xは,その頃,同僚の技術担当者から,元気がなく席に座って放心したような状態である
669 など,普段とは違う様子であると認識され,「大丈夫か。」と声を掛けられたことがあった。Xは,
670 同年6月下旬,体調不良のため,上司Bに対し,別の製品の開発業務の担当から外してもらうよう
671 求めたが,了解を得ることができなかった。Xは,その頃,本件医院の主治医から,しばらく休ん
672 で療養するようにと助言されたのを受けて,同年7月3日,約1か月間の休養を要する旨の本件医
673 院の診断書を提出し,同月31日まで欠勤した。
674 その後,Xは,平成26年8月1日から1週間にわたり出勤したが,頭痛が生じたため再び療養
675 することとし,同月以降,同年11月までの毎月初旬に,抑うつ状態で約1か月間の休養を要する
676 旨の本件医院の診断書を提出して,欠勤を続けた。
677 上司Bは,Xの欠勤中,度々,Xに対し,職場復帰するか,又は休職申請するかを問い合わせて
678 いたが,Xは,現状では勤務を再開する状況にない旨の本件医院の診断書を提出したのみで職場復
679 帰する意思を示さず,休職の申請も行わなかった。
680 - 22 -
681
682 なお,Y社の就業規則(抜粋)は,後記のとおりである。
683 〔設
684
685 問〕
686
687 1.Y社は,平成26年11月10日,Xに対し,同年12月15日をもって解雇する旨を通知し
688 た上,同日,就業規則第27条第4号の規定に基づき,Xを解雇した。
689 Xは,この解雇が無効であるとして,Y社に対して労働契約上の地位の確認を請求して訴えを
690 提起した。検討すべき法律上の論点を挙げて,Xの請求の当否を論じなさい。
691 2.設問1とは異なり,Y社は,平成26年11月10日,Xを解雇せずに,就業規則第24条第
692 1項の規定に基づき,Xに対して傷病休職を発令した。Xは,定期的な上司Bとの面談等を続け
693 たが,Y社は,平成27年10月6日,Xに対し,同年11月11日をもって休職期間の満了に
694 より退職扱いとする旨を通知した。
695 一方,Xは,平成27年10月9日,本件医院の主治医が作成した同月7日付けの診断書(以
696 下「本件診断書」という。)をY社に提出して,休職前に従事した職場以外の部署への配置換え
697 を申請した。本件診断書には,「気分,意欲とも改善して,通常の勤務は可能である。ただし,
698 当初は時間外労働は避ける必要がある。」との所見が記載されていた。
699 Y社は,平成27年10月20日,Xに対し,休職前の職場以外の部署への配置換えを拒否す
700 る旨を口頭で伝えた。そして,Y社は,同年11月11日,Xに対し,同日をもって退職になっ
701 た旨を記載した書面を交付した。
702 Xは,退職扱いは不当であって,雇用関係は終了していないとして,Y社に対して労働契約上
703 の地位の確認を請求して訴えを提起した。検討すべき法律上の論点を挙げて,Xの請求の当否を
704 論じなさい。
705 【就業規則(抜粋)】
706 第24条
707
708 傷病休職
709
710 1.傷病により勤務に堪え得ない場合には,休職を命ずることができる。
711 2.休職期間は1年を超えることはできない。
712 3.第1項の規定により休職を命ぜられた者は,その休職期間が満了した時点をもって退職とする。
713 第25条
714
715 復職
716
717 1.前条第1項の規定により休職を命ぜられた者につき,休職期間中において休職事由が消滅し就業
718 が可能であると認められたときは,復職を命ずる。
719 2.(略)
720 第27条
721
722 解雇
723
724 以下の事由に該当する場合は,解雇することができる。
725 一〜三
726 四
727
728 (略)
729
730 傷病等により勤務に堪え得ず,復職の見込みがない場合
731
732 五〜八
733
734 (略)
735
736 - 23 -
737
738 〔第2問〕(配点:50)
739 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
740 【事
741
742 例】
743 Y社は,バス車両100台により,路線バス事業を営む株式会社である。
744 Y社の従業員は,300名であり,うち200名の従業員により組織されるX労働組合(以下「X
745
746 組合」という。)があり,近年においても,毎年,Y社に新規採用される従業員は,採用後1年以
747 内にその3分の2程度の者がX組合に加入していた。
748 Y社の従業員の賃金は,基本給と諸手当で構成されている。Y社では,新規採用者の基本給の額
749 は,バス車両の運転をする「運転職」,バス車両の点検・整備をする「整備職」,本社における管理
750 業務,営業所の窓口業務,営業活動等を担当する「事務職」という各職種別に定められていた。そ
751 して,従業員の新規採用年度後の基本給は,新規採用時の基本給の額を基に,毎年度の定期昇給分
752 とベースアップ分を加算して決定されていた。
753 X組合は,上記のとおりY社の新規採用者の3分の2程度の者が採用後間もなくX組合に加入し
754 て組合員となっており,また,従業員の基本給は,新規採用時の基本給の額を基に決定されている
755 ことから,毎年度の春闘における団体交渉の際,Y社に対し,当年度の新規採用者の基本給の額は
756 前年度の新規採用者の基本給に当年度のベースアップ分を上乗せした金額とするよう求め,これま
757 で,Y社は,これに応じてきた。
758 Y社は,近年,自動車の普及,営業区域における住民の高齢化・減少等に伴い,旅客数が減少し
759 て旅客運賃収入が落ち込み,厳しい経営状態となってきていることから,運賃の値上げ,各種経費
760 の削減等の経営合理化を進めてきたが,その一環として,今般,人件費を削減することとした。た
761 だ,Y社としては,現在の従業員の賃金を減額することは困難であると思われたので,新規採用者
762 の基本給の額を引き下げることによって対応しようと考えた。
763 そこで,Y社は,平成28年2月1日,X組合に対し,平成28年度の新規採用者の基本給につ
764 いて,平成27年度の新規採用者の基本給の額に比して各職種一律にその10パーセントを減額し
765 た額とすること(以下「本件基本給引下げ」という。)を通知した。X組合は,本件基本給引下げ
766 の実施後に採用された従業員がX組合に加入した場合,それより前に採用された組合員との間で賃
767 金格差が生じ,同一職種内で異なる賃金水準の集団が併存することになる上,本件基本給引下げよ
768 り前に採用された組合員が退職するに従って組合員全体の賃金水準が低下していくことになるなど
769 として,本件基本給引下げに反対することを決定し,同月10日,Y社に対し,本件基本給引下げ
770 について団体交渉を開催するよう要求した。
771 Y社は,平成28年2月15日,X組合に対し,新規採用者の基本給の額の決定は,使用者であ
772 るY社の裁量に委ねられている上,本件基本給引下げはX組合の組合員を含む在職者の賃金に影響
773 を与えるものではなく,これから採用する者については,いまだX組合の組合員ともなっていない
774 のであるから,本件基本給引下げは団体交渉の対象事項とはならない旨回答して,団体交渉を拒否
775 した。その後も,X組合は,Y社に対し,繰り返し,本件基本給引下げについて団体交渉を開催す
776 るよう要求したが,Y社は,一貫して,同様の回答をして団体交渉を拒否した。
777 そこで,X組合は,本件基本給引下げの撤回とこれについての団体交渉を求めて平成28年3月
778 8日の終日,更には,Y社の回答がX組合の要求を全く受け入れないものであるときは同月15日
779 の終日,ストライキを予定することとし,同月2日,Y社に対し,その旨を通知した。ストライキ
780 は,「運転職」の組合員についてのみ行うものであった。
781 これに対し,Y社は,引き続き,本件基本給引下げについての団体交渉を拒否するとともに,平
782 成28年3月7日,社長名で,「我が社が厳しい経営状態にある中,X組合の皆さんになるべく迷
783 惑を掛けないよう,組合員の皆さんの基本給は引き下げずに,新規採用者の基本給を引き下げると
784 いう決断をしたものです。これ以外にY社の存続はあり得ないと考えています。ところが,X組合
785 - 24 -
786
787 の幹部の皆さんは,会社の誠意をどう評価されたのか分かりませんが,これを団体交渉の対象とし
788 なければならない事柄であると強弁し,会社が団体交渉を拒否したとして,ストライキに入ると宣
789 言しました。これは,ストのためのストであって,甚だ遺憾なことであり,会社としては,重大な
790 決意をせざるを得ません。」と記載した声明文を,Y社の全事業所に一斉に掲示した。
791 X組合の組合員の間では,上記声明文に対して,先行きに不安を感ずるという意見を述べる者は
792 いたが,X組合の執行部を批判したり,ストライキの実施に反対したりする者はいなかった。そし
793 て,X組合は,平成28年3月8日の終日,予定どおり,ストライキを行った。このストライキ後
794 も,Y社は,本件基本給引下げについての団体交渉を拒否したことから,X組合は,同月15日に
795 も,終日ストライキを行った。Y社は,同月8日のストライキの際,バス車両の3分の1について,
796 「運転職」の非組合員により運行したが,その余のバス車両の運行はできず,運行できなかったバ
797 ス車両の所属する営業所においてはバス車両の点検・整備をする必要がなくなるという状態となっ
798 た。そのため,Y社は,同月15日のストライキに際し,同月14日,X組合の組合員であるZら
799 を含む,これらの営業所に所属する「整備職」の従業員に対し,同月15日の終日ストライキの間,
800 休業することを命じた。これに対して,Zらは,Y社に抗議をしたが,Y社は,同日終日,就業を
801 認めず,Zらに対し,同日分の賃金を支払わなかった。
802 〔設
803
804 問〕
805
806 1.X組合は,Y社の団体交渉拒否や社長名の声明文の掲示がいずれも不当であると考えている。
807 X組合として救済を求めるには,どのような機関にどのような救済を求めることが考えられるか。
808 検討すべき法律上の論点を挙げて論じなさい。なお,X組合が労働組合法上の労働組合に該当す
809 ることを前提に論じてよい。
810 2.休業することを命じられたZらは,平成28年3月15日分の賃金が支払われなかったのは不
811 当であると考え,Y社に対し,賃金及び休業手当を請求する訴えを提起した。検討すべき法律上
812 の論点を挙げて,Zらの請求の当否を論じなさい。
813
814 - 25 -
815
816 - 26 -
817
818 論文式試験問題集[環
819
820 - 27 -
821
822 境
823
824 法]
825
826 [環
827
828 境
829
830 法]
831
832 〔第1問〕(配点:50)
833 A社は,電力事業の規制緩和に伴い,B県C市において,D発電所(石炭火力,出力17万キロ
834 ワット)の設置を計画した。
835 これに対して,同計画予定地付近の住民Eは,D発電所が稼働すれば,その居住地の窒素酸化物
836 濃度について,近隣に所在するF社のG発電所からのばい煙と複合して,環境基準を超えることが
837 予想され,健康被害が発生すると危惧している。
838 この場合において,以下の設問に答えよ。
839 〔設問1〕
840 D発電所の設置工事の事業は,環境影響評価法が定める第一種事業に当たり,A社は,同法に
841 基づく環境影響評価手続を開始した。B県知事とEは,環境影響評価手続において,意見書を提
842 出したいと考えているが,それぞれどのような機会があるかを述べよ。
843 なお,電気事業法が定める環境影響評価に関する特例については,考慮しなくてよい。
844 〔設問2〕
845 その後,D発電所の工事計画は経済産業大臣の認可を受け,D発電所が操業を開始したところ,
846 Eの居住地において,窒素酸化物の濃度が,常時環境基準を25%超えていることが確認される
847 ようになった。健康被害が発生すると危惧するEは,A社及びF社に対してどのような訴訟上の
848 請求をすることが考えられるか。また,その場合の法律上の問題点について論ぜよ。
849 〔設問3〕
850 F社は,地球温暖化対策の推進に関する法律第21条の2に規定する特定排出者として,G発
851 電所の温室効果ガス算定排出量の報告義務を負っている。当該報告に係る事項を集計した結果は
852 公表され,当該報告に係る事項は開示請求の対象となっている。この仕組みは,環境法政策の手
853 法としてどのように説明され,規制的手法と比較してどのような特質があるか述べよ。
854
855 - 28 -
856
857 〔第2問〕(配点:50)
858 環境基本法第4条は,持続的に発展することができる社会が構築されるための環境の保全の在り
859 方について,社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環
860 境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようにな
861 るべき旨の基本理念を規定している。
862 環境法の分野の各法において,環境への負荷のできる限りの低減とすべての者の公平な役割分担
863 とを柱とする上記の基本理念はどのように表れているかという観点から,以下の各設問に答えよ。
864 〔設問1〕
865
866
867 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(以下「容器包装リサイクル法」
868 という。)第4条が事業者及び消費者の責務を定めている趣旨を,地球温暖化対策の推進に関
869 する法律第20条の6第1項が定める責務との異同及びその理由に言及しつつ,説明せよ。
870
871
872
873 容器包装リサイクル法第10条の2が指定法人又は認定特定事業者から市町村への金銭の支
874 払義務を定めている趣旨を,同法が定める特定事業者の義務並びに同法及び他の関連法が定め
875 る市町村の役割を踏まえつつ,説明せよ。
876
877 〔設問2〕
878
879
880 自然公園法が,国立公園内の特別地域及び海域公園地区における一定の行為について,環境
881 大臣の許可を受けなければ行ってはならないものとしている趣旨を,許可を受けられない場合
882 における制度的手当にも触れつつ,説明せよ。
883
884
885
886 地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律が,地域
887 自然環境保全等事業を実施する区域内に立ち入る者から「入域料」を収受することができるも
888 のとしている趣旨を,【資料】を参照しつつ,説明せよ。
889
890 【資
891 ○
892
893 料】
894 地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(平成26年
895
896 法律第85号)(抜粋)
897 (目的)
898 第1条
899
900 この法律は,入域料をその経費に充てて実施する事業又は自然環境トラスト活動を促進する
901
902 事業を通じて自然環境を保全し,及びその持続可能な利用を推進することの重要性に鑑み,地域
903 自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関し,基本方針の策定,地域
904 計画の作成等について定めるところにより,地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続
905 可能な利用の推進を図り,もって地域社会の健全な発展に資することを目的とする。
906 (定義)
907 第2条
908
909 この法律において「地域自然環境保全等事業」とは,都道府県又は市町村が,自然公園法(昭
910
911 和32年法律第161号)第2条第2号に規定する国立公園(以下「国立公園」という。),同条
912 第3号に規定する国定公園(以下「国定公園」という。)等の自然の風景地,文化財保護法(昭和
913 25年法律第214号)第2条第1項第4号に規定する記念物に係る名勝地その他の自然環境の
914 保全及び持続可能な利用の推進を図る上で重要な地域において,当該地域の自然環境を地域住民
915 の資産として保全し,及びその持続可能な利用を推進するために実施する事業であって,当該事
916 業を実施する区域内への立入りについて,当該区域内に立ち入る者から収受する料金(次条第2
917 項第1号及び第4条第2項第1号ハにおいて「入域料」という。)をその経費に充てるものをいう。
918 2
919
920 この法律において「自然環境トラスト活動」とは,自然環境の保全及び持続可能な利用の推進を
921 図ることを目的とする一般社団法人若しくは一般財団法人若しくは特定非営利活動促進法(平成
922 10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくはこれらに準ずる者とし
923 - 29 -
924
925 て環境省令・文部科学省令で定めるもの(以下「一般社団法人等」という。)又は都道府県若しく
926 は市町村が行う次に掲げる活動をいう。
927 一
928
929 自然環境の保全及び持続可能な利用の推進を目的として前項に規定する地域内の土地(その
930 土地の定着物を含む。次号において同じ。)を取得すること。
931
932 二
933
934 前号に掲げるもののほか,前項に規定する地域内の土地に係る活動であって自然環境の保全
935 及び持続可能な利用の推進を目的とするものとして環境省令・文部科学省令で定めるもの
936
937 3
938
939 この法律において「自然環境トラスト活動促進事業」とは,都道府県又は市町村が,当該都道府
940 県又は市町村の区域における自然環境を地域住民の資産として保全し,及びその持続可能な利用
941 を推進するため,自然環境トラスト活動を促進する事業をいう。
942
943 4
944
945 この法律において「地域自然資産区域」とは,地域自然環境保全等事業が実施される区域及び自
946 然環境トラスト活動促進事業に係る自然環境トラスト活動が行われる区域をいう。
947
948 - 30 -
949
950 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
951
952 - 31 -
953
954 [国際関係法(公法系)]
955 〔第1問〕(配点:50)
956 A国とB国は同じ海洋に面して陸で隣接する二つの国である。いずれも1960年代に独立し,
957 直ちに国際連合(以下「国連」という。)に加盟した。独立以来両国間には国境をめぐる紛争は発
958 生してこなかったが,2000年代に入って,A国の沿岸の一番近い地点から約50キロメートル,
959 B国の沿岸の一番近い地点から約30キロメートルの位置にある小島X島の帰属をめぐって紛争が
960 生じた。X島は古くからA国の漁業者が漁業活動の拠点として使用してきた。A国は独立の際X島
961 を自国の領域に編入する措置をとり,以来X島周辺での漁業活動に関する規制や数百人のX島住民
962 に対する住民登録,徴税等の行政権を行使してきた。このA国の行動についてB国からは特段の抗
963 議等はなかった。しかし,B国は2002年頃からX島が地理的にA国よりもB国に近接している
964 ことを理由にX島に対して領有権を主張するようになり,2006年にはB国の国内法に基づいて
965 領域編入を行った。A国は直ちにこれに抗議した。その後X島の帰属をめぐって両国間で外交交渉
966 が断続的に持たれたが進展はみられなかった。
967 2015年6月22日,B国の軍隊がX島に上陸して島を占拠し,A国の漁業者及び住民を島か
968 ら強制的に退去させ軍の一部を常駐させた。翌23日,A国は国連の安全保障理事会(以下「安保
969 理」という。)の開催を要請した。同月24日に開催された安保理では,上記の事態を議題として
970 取り上げ,その中で,B国の軍事行動を非難し,直ちに軍をX島から撤退させ,A国の漁業者及び
971 住民の帰島を可能にするようB国に要求する決定を内容とする決議案が,複数の理事国によって共
972 同提案された。
973 以上の事実を基に,以下の設問に答えなさい。なお,A国及びB国は,いずれも安保理の理事国
974 ではない。また,両国とも国連以外の安全保障や紛争解決に関する条約には参加していない。
975 〔設
976
977 問〕
978
979 1.前記の安保理決議案について,投票の結果が仮に賛成10,反対3,棄権2であり,5つの
980 常任理事国のうち4か国は決議案に賛成したが,B国と友好関係にあるC国は棄権した場合,
981 同決議案は採択されるか,それとも否決されるか,理由を付して答えなさい。
982 2.前記の安保理決議案においてB国の軍事行動を非難する国際法上の根拠について,論じなさ
983 い。
984 3.前記の安保理決議案が仮に全会一致で採択された場合,B国はX島から軍を直ちに撤退さ
985 せ,A国の漁業者及び住民の帰島を可能にする措置をとるべき国際法上の義務が生ずるかどう
986 か,また,B国が決議を無視して軍を駐留させ続け漁業者等の帰島を可能にしなかった場合,
987 安保理は国際連合憲章上どのような行動をとることができるかについて,答えなさい。
988 4.前記の安保理決議案が仮に必要な賛成票が得られず否決された場合,国連総会がこの事態を
989 議題として取り上げ,同様の内容の決議を採択することができるか,論じなさい。
990
991 - 32 -
992
993 〔第2問〕(配点:50)
994 A国に所在するB国大使館(以下「B国大使館」という。)に勤務するB国の外交官Xが,A国
995 内の首都近郊の道路で自動車を運転中,制限速度を大幅に超過していたためカーブを曲がり切れず
996 に歩道に突っ込み,歩道を歩いていたA国籍の小学生十数名を死傷させるという重大な交通事故を
997 起こし,事故現場からそのまま逃走した。
998 A国の警察当局は,Xが自宅には戻らずB国大使館の館内にとどまっていることが判明したため,
999 A国外務省を通じて,A国に駐在するB国大使Yに対し,Xの身柄の引渡しと本件事故の捜査への
1000 協力を要求した。これに対し,Y大使は,上記の事故はXが引き起こしたものであることは認めな
1001 がら,「Xは外交官の身分を有する者であり,外交関係に関するウィーン条約によれば,我が国は
1002 Xの身柄をA国政府に引き渡す義務を負わない」と述べ,警察当局の要求を拒否した。これを受け,
1003 上記交通事故で死亡した小学生の遺族数名が抗議のためB国大使館を訪れたところ,B国大使館側
1004 は面会を拒否して上記遺族を門前で追い返した。これがマスコミによって大きく報じられると,A
1005 国国内ではB国政府に対する反発が強まった。
1006 その後,B国大使館がXをB国に帰国させたところ,これを知ったA国国民の間では,B国政府
1007 に対する反感が一層激化し,B国大使館の周辺で,B国政府の本件対応に抗議する大規模なデモが
1008 連日行われるようになった。A国の警察当局は,多数の警察官を動員してB国大使館の警備に当た
1009 り,抗議集団がB国大使館に侵入することを阻止した。しかし,抗議集団により,B国大使館には
1010 多くの石や卵が投げ付けられて,建物の窓が割れ,また,その敷地の外壁にはスプレーでB国を非
1011 難するスローガンが大きく落書きされた。さらに,抗議集団の一部は,B国大使館の正門前の路上
1012 で,持参したB国国旗を燃やして気勢を上げたが,警備に当たるA国の警察官はこれを阻止しよう
1013 としなかった。
1014 B国大使館に対する大規模デモは数週間継続し,その間B国大使館では,館員が自由に出入りす
1015 ることができず,大使館としての業務を行うことが困難な状態が続いた。
1016 一方,Xは,A国からB国に帰国した直後にB国外務省を退職した。その約1年後,Xが私用で
1017 海外渡航中にA国領域内を通過したところ,Xは,A国領域内で,A国警察当局によって上記死傷
1018 事故を発生させた容疑で身柄を拘束され,A国検察当局によって同容疑でA国の裁判所に訴追され
1019 た。
1020 なお,A国とB国は,いずれも国際連合加盟国であり,外交関係に関するウィーン条約の当事国
1021 である。
1022 〔設
1023
1024 問〕
1025
1026 1.「Xは外交官の身分を有する者であり,外交関係に関するウィーン条約によれば,我が国は
1027 Xの身柄をA国政府に引き渡す義務を負わない」というY大使の見解に対して,A国政府とし
1028 て国際法上どのような主張が可能であるかについて,論じなさい。
1029 2.B国大使館に対する抗議活動の結果生じた損害に関連して,B国政府はA国政府に対して国
1030 際法上どのような請求を行うことが可能であるかについて,A国政府側からの予想され得る反
1031 論も踏まえながら,論じなさい。
1032 3.A国の当局によってXが身柄を拘束され,A国裁判所に訴追されたことは,国際法上どのよ
1033 うに評価できるか。Xが引き起こした交通事故が,@休暇中に私的な旅行のため自動車を運転
1034 中の事故であった場合,A緊急の公務のため自宅からB国大使館に駆けつける途中の事故で
1035 あった場合のそれぞれについて論じなさい。
1036
1037 - 33 -
1038
1039 - 34 -
1040
1041 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1042
1043 - 35 -
1044
1045 [国際関係法(私法系)]
1046 〔第1問〕(配点:50)
1047 甲国人A男は,甲国人B女と甲国で適法に婚姻した。その後,AとBの間に子C(甲国籍)が生
1048 まれ,翌年,A,B及びCの3人は,生活の拠点を日本に移し,その後日本でずっと暮らしている。
1049 Cは,現在15歳である。
1050 以上の事実に加え,日本国際私法の観点からみて,A及びBの婚姻は有効に成立し,CがAB夫
1051 婦の嫡出子であることを前提として,以下の設問に答えなさい。
1052 なお,甲国国際私法からの反致は成立せず,甲国民法は次の趣旨の規定を有している。
1053 【甲国民法】
1054 @
1055
1056 年齢18歳をもって,成年とする。
1057
1058 A
1059
1060 父母は,未成年の子を監護し教育する。
1061
1062 B
1063
1064 父母は,未成年の子がある場合には,子の最善の利益のために,子の財産を管理し,かつ,そ
1065 の財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし,父又は母から譲渡を受けた財産以
1066 外に子が財産を有するときは,父又は母は,その財産の管理処分のために,財産後見人の選任を
1067 検認裁判所に請求しなければならない。
1068
1069 C
1070
1071 検認裁判所は,Bただし書の規定に基づき,父又は母が財産後見人の選任を請求したときは,
1072 子の最善の利益を考慮して,財産後見人を選任する。
1073
1074 D
1075
1076 財産後見人は,子の最善の利益のために,父母が管理権を有しない財産を管理処分する権利を
1077 有し,義務を負う。
1078
1079 〔設
1080
1081 問〕
1082
1083 1.Bは,日本において,D家電店で洗濯機を分割払いで購入する契約を締結した。ところが,
1084 Bの支払が次第に滞るようになった。Dは,AとBは婚姻関係にあり,洗濯機の購入代金の支
1085 払はAB間の日常家事債務であり,夫婦であることから当然にAも連帯債務を負うとして,A
1086 に対してその支払を求めた。
1087 甲国法上,日本民法第761条に該当する規定はなく,夫婦の一方による日常の家事に関す
1088 る法律行為によって他方が当然に債務を負うことはない。
1089 Aが甲国法に基づきDからの請求を拒否することができるかについて,準拠法決定プロセス
1090 を踏まえて答えなさい。
1091 2. Cは,A及びB以外の者から日本に所在する不動産Pの贈与を受けた。A及びBは,Cのた
1092 めに,不動産PをEに売却したいと考えている。Cが不動産Pを所有していることを前提とし
1093 て,以下の小問に答えなさい。
1094
1095
1096 A及びBは,甲国法によると不動産Pについて父母が管理権を有しないことからA及びB
1097 がCのために不動産Pを売却することはできないのではないか,と考えている。A及びBの
1098 このような考えは正しいか。準拠法決定プロセスを踏まえて答えなさい。
1099
1100
1101
1102 において,A及びBには不動産Pを売却するための管理権がないと仮定する。その場合,
1103 Cのために不動産Pを売却するのに必要な法的措置に関する準拠法については,法の適用に
1104 関する通則法第32条によるべきとする見解と同法第35条によるべきとする見解との対立
1105 が見られる。いずれの見解によるべきかの立場を明らかにした上で,どのような法的措置が
1106 必要であるかを答えなさい。
1107 なお,日本の裁判所で手続をとることを前提とし,手続上の問題点がある場合には,それ
1108 についても言及しなさい。
1109
1110 - 36 -
1111
1112 〔第2問〕(配点:50)
1113 旅行業を営む日本法人Y1会社は,甲国への旅行者が現地で必要とする各種サービスを円滑に提
1114 供するため,Y1会社全額出資の乙国法人Y2会社を甲国に隣接する乙国に設立した。Y2会社代
1115 表者はY1会社代表者と同一人である。Y2会社は乙国内にあるビルの一室を賃借して本店兼事務
1116 所としているが,さしたる資産はなく,事務を処理する日本人従業員1名がY1会社から出向し常
1117 駐するのみである。Y1会社が日本で募集した甲国への旅行者が甲国内で必要とするサービスを手
1118 配するため,Y2会社は甲国法人X会社と包括的業務委託契約(以下「本件契約」という。)を締
1119 結した。本件契約では,@Y1会社が募集した旅行者のためにX会社が甲国内での各種サービス(交
1120 通,食事,宿泊等)を手配し,かつ,X会社が現地(甲国)のサービス提供者に現地通貨で立替払
1121 すること,AX会社及びY2会社の了解のもとにX会社のY2会社に対する請求書をX会社がY1
1122 会社に直接送付すること,B毎月末を支払期限とするY2会社の債務(立替金及びX会社の報酬の
1123 甲国通貨による支払)の履行地をX会社の主たる営業所(甲国)とすること,C本件契約の準拠法
1124 を日本法とすること等が定められていたが,国際裁判管轄権に関する合意はなかった。
1125 Y2会社が本件契約に基づく立替金及び報酬のX会社への支払を怠ったため,X会社は,Y2会
1126 社に対して本件契約に基づく金員の支払を求めるとともに,Y1会社に対しても,Y1会社とY2
1127 会社とは実質的に同一会社であり,Y2会社の法人格はY1会社との関係で否認されるべきである
1128 として,本件契約に基づく金員の支払を求める訴えを日本の裁判所に提起した。
1129 〔設
1130
1131 問〕
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1133 1.日本の裁判所はY1会社及びY2会社に対するX会社の訴えにつき,国際裁判管轄権を有す
1134 るか。ただし,民事訴訟法第3条の9の規定の適用はないものとする。
1135 2.Y1会社がX会社に対して本件契約に基づく債務を負うか否かについては,いずれの国の法
1136 が適用されるか。
1137 3.X会社がY1会社に対して本件契約に基づく金員の支払を甲国通貨で求めた場合において,
1138 Y1会社が日本円で弁済する権利を有するか否かについては,いずれの国の法が適用されるか。
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