1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒
10
11
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 【事
21
22 例】
23
24 A商事株式会社(以下「A社」という。
25
26 )は,
27 長年,
28 食品製造機械メーカーであるB社及びC
29 社から機械を仕入れ,
30 得意先の食品製造会社であるD社やE社らに販売していた。
31
32
33 A社は,
34 市場の縮小傾向により,
35 徐々に経営が苦しくなり,
36 ここ数年は赤字決算を繰り返して
37 いたが,
38 平成28年3月末日の資金繰りに窮し,
39 同月25日,
40 取締役会において破産手続開始の
41 申立てを行う旨決議し,
42 支払を停止した。
43
44 その後,
45 A社は,
46 同年4月1日,
47 破産手続開始の申立
48 てを行い,
49 同月5日,
50 破産手続開始の決定を受け,
51 破産管財人Xが選任された。
52
53
54 〔設
55
56 問〕
57
58 以下の1及び2については,
59 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
60
61
62
63 1.A社は,
64 平成27年12月10日,
65 B社から機械αを代金1000万円で購入し,
66 同日,
67
68 の引渡しを受けたが,
69 代金の支払期日は平成28年3月末日とされていた。
70
71 A社は,
72 この機械
73 αの売却先を探していたところ,
74 同月15日,
75 D社との間で,
76 機械αを1500万円で売却す
77 る売買契約(以下「本件売買契約」という。
78
79 )を締結することができた。
80
81 なお,
82 機械αの引渡
83 し及び代金の支払期日は,
84 D社の買取り資金の調達の都合により,
85 いずれも1か月後の同年4
86 月15日とされ,
87 所有権の移転時期も同日とされていた。
88
89
90 A社の破産手続開始時において,
91 本件売買契約に基づくA社及びD社の各債務は,
92 双方とも
93 履行されておらず,
94 機械αはA社の自社倉庫内に保管されていた。
95
96 破産管財人Xは,
97 選任され
98 た直後,
99 B社からは,
100 機械αの代金1000万円を支払うか,
101 それができないとすれば機械α
102 を返還するよう求められ,
103 D社からは,
104 本件売買契約に従い機械αを引き渡すよう求められた。
105
106
107
108
109 B社は,
110 機械αの代金1000万円を回収したいと考えている。
111
112 この債権の回収につき,
113
114
115 考えられる法的根拠及び権利行使の方法を論じなさい。
116
117 なお,
118 B社は,
119 本件売買契約の存在
120 を知らないこととする。
121
122
123
124
125 Xは,
126 機械αの代金1500万円をD社から回収し,
127 破産財団を増殖したいと考えている。
128
129
130
131 Xがこの代金を回収する場合に,
132 破産手続上必要とされる手続及び効果について,
133 その制度
134 趣旨を踏まえて,
135 論じなさい。
136
137
138
139
140 Xは,
141 の手続を経て,
142 D社から機械αの代金1500万円を回収した。
143
144 その後,
145 この事
146
147 実を知ったB社は,
148 破産財団から優先的に機械αの代金相当額である1000万円の弁済を
149 受けたいと考えた。
150
151 B社は,
152 破産財団から優先的に弁済を受けることができるか。
153
154 予想され
155 るXからの反論を踏まえて,
156 論じなさい。
157
158
159 2.A社は,
160 かねてからC社に運転資金の融通を求めていたところ,
161 C社は,
162 これに応じ,
163 平成
164 27年9月25日,
165 A社に対し,
166 弁済期を平成28年9月末日として,
167 2500万円を貸し付
168 けた(以下,
169 この貸付に係る債権を「本件貸付金債権」という。
170
171 )。
172
173
174 A社は,
175 平成28年1月20日,
176 C社から機械βを代金2000万円で購入し,
177 同日,
178 その
179 引渡しを受けたが,
180 代金の支払期日は同年3月末日とされていた。
181
182 そこで,
183 A社は,
184 C社の要
185 請に応え,
186 この売買契約の締結と同時に,
187 C社との間で,
188 C社のA社に対する売買代金債権2
189 000万円を担保するため,
190 機械βにつき譲渡担保権を設定する内容の譲渡担保契約(以下「本
191 件譲渡担保契約」という。
192
193 )を締結した。
194
195 本件譲渡担保契約には,
196 A社が支払を停止したとき
197 は当然に期限の利益を喪失し,
198 C社は譲渡担保権の実行として,
199 自ら機械βを売却し,
200 清算を
201 するとの約定があった。
202
203
204 A社の支払停止時,
205 機械βはA社の自社倉庫内に保管されていたが,
206 A社の支払停止を知っ
207 たC社は,
208 本件譲渡担保契約に基づき,
209 直ちにA社の同意を得て機械βを引き揚げた(なお,
210
211 - 2 -
212
213 この引揚げは適法なものとする。
214
215 )。
216
217
218 A社の破産手続開始後,
219 得意先であったE社は,
220 C社が機械βを引き揚げたとの情報を得,
221
222 C社に対し,
223 是非購入したいと申し入れた。
224
225 そこで,
226 C社は,
227 E社に機械βを売却することと
228 したが,
229 一旦商品として出荷された機械の価値は中古市場においては半減することが通常であ
230 るため,
231 その売却価格は,
232 A社の通常販売価格である3000万円の半額程度とされてもやむ
233 を得ないと考えていた。
234
235 ところが,
236 交渉の結果,
237 E社への売却価格は,
238 通常販売価格の8割に
239 相当する2400万円となり,
240 これによって,
241 C社は,
242 A社に対する売買代金債権2000万
243 円を全額回収できた上,
244 期待していなかった剰余金400万円が生じた。
245
246 本件譲渡担保契約は,
247
248 前記の約定のとおりいわゆる処分清算型とされており,
249 C社はこの剰余金400万円をA社に
250 返還する債務を負うこととなった。
251
252
253 そこで,
254 C社としては,
255 A社のC社に対する剰余金返還債権400万円と本件貸付金債権2
256 500万円との相殺をしたいと考えている。
257
258 C社の相殺は認められるか。
259
260 破産法の条文の構造
261 と予想されるXの反論を踏まえて,
262 論じなさい。
263
264
265
266 - 3 -
267
268 〔第2問〕(配点:50)
269 次の事例について,
270 以下の設問に答えなさい。
271
272
273 【事
274
275 例】
276 X社は,
277 平成9年に設立された建設資材の輸入・販売を業とする株式会社である。
278
279 Aは,
280 X社
281
282 の代表取締役であり,
283 同社に自己資金を貸し付け,
284 これを運転資金に充てていた。
285
286 Y社は,
287 X社
288 の発行済株式の70パーセントを有するいわゆる支配株主であり,
289 同社に運転資金も融通してい
290 た。
291
292 Bは,
293 Y社の代表取締役であり,
294 同社の発行済株式の全てを有している。
295
296 Z社は,
297 同じくB
298 が代表取締役を務める建設会社であり,
299 X社の得意先である。
300
301 X社とZ社との取引は,
302 Bの主導
303 によって開始されたものであり,
304 X社のZ社に対する平成25年3月末期の売上は,
305 X社の総売
306 上高の30パーセント余りを占めていた。
307
308
309 X社は,
310 平成25年末頃から始まった円安の影響を受けて業績不振に陥っていたところ,
311 平成
312 26年3月に入ると,
313 Z社がBの放漫経営により破綻したため,
314 同社に対する売掛金の回収がで
315 きなくなった。
316
317 その結果,
318 X社は,
319 同月末日の資金繰りに窮することとなった。
320
321
322 X社は,
323 以上のような経緯から,
324 破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとして,
325
326 平成26年3月20日に再生手続開始の申立てをした。
327
328 同日,
329 X社について監督命令が発せられ,
330
331 弁護士Kが監督委員に選任された。
332
333
334 平成26年3月28日,
335 X社について再生手続開始の決定がされた。
336
337
338 〔設
339
340 問〕
341
342 1.X社は,
343 Z社に代わる新たな得意先を獲得する見込みの下で事業計画を作成し,
344 この事業計
345 画が実現可能であり,
346 計画弁済の履行が可能であると見込まれたことから,
347 平成26年7月7
348 日,
349 裁判所に対し,
350 再生債権者の権利の変更に関する定めとして下記の条項のある再生計画案
351 (以下「本件再生計画案」という。
352
353 )を提出した。
354
355
356
357
358
359 確定再生債権額
360 元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金
361 合計2億0121万7591円
362 再生手続開始決定日以降の利息及び遅延損害金
363 合計32万6055円及び額未定
364 なお,
365 未確定の再生債権及び不足額が確定していない別除権付債権はない。
366
367
368
369
370
371 権利変更の一般的基準
372 @
373
374 全 て の 確 定 再 生 債 権 に つ き,
375 再 生 手 続 開 始 決 定 日 以 降 の 利 息 及 び 遅 延 損 害 金 は ,
376
377 再 生 計 画 の 認 可 の 決 定 が 確 定 し た 時 ( 以 下 「 認 可 決 定 確 定 時 」 と い う 。
378
379 ) に 全 額
380 の免除を受ける。
381
382
383
384 A
385
386 確定再生債権の元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害
387 金の合計額は,
388 次のB及びCの確定再生債権を除き,
389 10万円までの部分は免除
390 を受けず,
391 10万円を超える部分は認可決定確定時にその80パーセントの免除
392 を受ける。
393
394
395
396 B
397
398 Aの確定再生債権のうち,
399 元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及
400 び遅延損害金の合計額は,
401 認可決定確定時にその全額の免除を受ける。
402
403
404
405 C
406
407 Y社の確定再生債権のうち,
408 元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息
409 及び遅延損害金の合計額は,
410 10万円までの部分は免除を受けず,
411 10万円を超
412 える部分は認可決定確定時にその85パーセントの免除を受ける。
413
414
415 - 4 -
416
417
418
419 弁済方法
420 権利変更後の金額のうち,
421 10万円までの部分は,
422 再生計画の認可の決定が確定
423 した日から1か月を経過した日の属する月の末日までに支払い,
424 その余の部分は,
425
426 10回に均等分割して平成27年から平成36年まで毎年4月末日限り支払う。
427
428
429
430
431
432 個別条項
433 (略)
434
435 本件再生計画案の提出を受けた裁判所は,
436 これを決議に付する旨の決定をすることができる
437 か。
438
439 本件再生計画案2@からCまでの各条項について,
440 民事再生法上の問題点を踏まえて,
441
442 じなさい。
443
444
445 なお,
446 各条項はいずれも民事再生法第174条第2項第4号には該当しないこと,
447 Aは2B
448 の免除に同意していること,
449 Y社は2Cの免除には同意していないことを前提とする。
450
451
452 2.本件再生計画案は,
453 平成26年7月14日,
454 決議に付する旨の決定がされ,
455 同年9月3日に
456 開催された債権者集会において可決された(以下,
457 可決された本件再生計画案を「本件再生計
458 画」という。
459
460 )。
461
462 同日,
463 本件再生計画について認可決定がされ,
464 同月29日に確定した。
465
466
467 X社は,
468 本件再生計画の認可決定が確定した後も,
469 事業計画で見込んでいたZ社に代わる新
470 たな得意先の獲得ができなかったことなどから,
471 事業計画どおりには業績を上げることができ
472 なかった。
473
474 そのため,
475 X社は,
476 平成27年4月末日までの本件再生計画に基づく弁済は何とか
477 行ったものの(総額520万4000円),
478 平成28年1月末日現在,
479 同年4月末日の弁済の
480 見込みは立たなかった。
481
482 とりわけ,
483 最も大口の債権を有するG銀行(確定再生債権額8000
484 万円)に対する弁済資金の確保は困難であることが判明した。
485
486
487
488
489 再生計画認可後の再生手続においてX社及びKが果たすべき役割について述べた上で,
490
491 社として採り得る方策を論じなさい。
492
493
494
495
496
497 G銀行は,
498 本件再生計画に基づき,
499 平成27年4月末日までに合計169万8000円の
500 弁済を受けたものの,
501 結局,
502 平成28年4月末日に支払われるべき159万8000円の弁
503 済は受けられなかった。
504
505 この場合にG銀行として採り得る方策を論じなさい。
506
507
508
509 - 5 -
510
511 - 6 -
512
513 論文式試験問題集[租
514
515 - 7 -
516
517
518
519 法]
520
521 [租
522
523
524
525 法]
526
527 〔第1問〕(配点:50)
528 【注】
529
530 本問は,
531 問題文中において特許法上の規定を引用しているが,
532 同法の解釈を問うものでは
533 ない。
534
535
536 なお,
537 特許法については,
538 平成二十八年一月二十二日政令第十七号「特許法等の一部を改
539 正する法律の施行期日を定める政令」に基づいて,
540 平成二十八年四月一日付けで「特許法等
541 の一部を改正する法律(平成二十七年法律第五十五号)」が施行されているが,
542 問題文中で
543 引用しているものは,
544 同改正前の規定である。
545
546
547
548 Aは,
549 平成2年4月に食品メーカーであるB株式会社(以下「B社」という。
550
551 )に入社し,
552 平成
553 3年4月からB社のC研究所に研究員として勤務し,
554 食品の研究開発に従事していた。
555
556
557 Aは,
558 C研究所にいた平成17年に健康食品に関する甲という発明を行った。
559
560 甲は,
561 その性質上
562 B社の業務範囲に属し,
563 その発明をするに至ったAの行為はその現在の職務に属するものであった
564 (特許法(司法試験用法文を参照。
565
566 )第35条第1項参照。
567
568 )。
569
570
571 B社は,
572 平成5年6月1日付けで,
573 同日以降に従業員がした職務発明について,
574 職務発明取扱規
575 程(以下「本件規程」という。
576
577 )を定めており,
578 その主要な条項は下記のとおりであった(その後
579 の改訂はなかった。
580
581 )。
582
583
584
585 第1条
586
587 職務発明に関する特許を受ける権利(以下「特許を受ける権利」という。
588
589 )は,
590 会社が
591
592 これを承継する。
593
594 ただし,
595 会社がその権利を承継する必要がないと認めたときは,
596 この限
597 りでない。
598
599
600 第2条
601
602 会社は,
603 従業員がした発明が職務発明であるか否かの認定をし,
604 職務発明であると認定
605
606 した場合は,
607 その発明について特許を受ける権利を会社が承継するか否かの決定をするこ
608 ととする。
609
610
611 第3条
612
613 発明を完成した従業員(以下「発明者」という。
614
615 )は,
616 前条の規定によりその発明者の
617
618 発明について特許を受ける権利を会社が承継すると決定したときは,
619 その権利を会社に譲
620 渡することとする。
621
622
623 第4条
624
625 会社は,
626 発明者から特許を受ける権利を承継したときは,
627 速やかに出願することとする。
628
629
630
631 第5条
632
633 特許を受ける権利の承継につき,
634 会社が発明者に対して支払う報償金の時期及び額は以
635
636 下のとおりとする。
637
638
639
640
641 出願したとき
642 出願報償金
643
644
645
646 1万円
647
648 特許権を第三者に実施許諾し又は譲渡して収入を得たとき
649 実績報償金
650
651 第三者から受領した額の5パーセント
652
653 B社は,
654 平成18年3月,
655 本件規程第1条本文及び第3条に基づき,
656 Aから,
657 甲に係る特許を受
658 ける権利を承継し,
659 同月中に特許の出願をしたため,
660 本件規程第5条第1号に基づき,
661 同月中にA
662 に対し,
663 出願報償金1万円(以下「本件出願報償金」という。
664
665 )を支払った。
666
667
668 平成22年8月,
669 甲に係る特許の設定登録がされた。
670
671 B社は,
672 平成24年10月,
673 食品メーカー
674 であるD株式会社(以下「D社」という。
675
676 )との間で甲に係る特許権の譲渡契約を締結し,
677 同月中
678 に代金1億円の支払を受けたため,
679 本件規程第5条第2号に基づき,
680 同年12月,
681 Aに対し実績報
682 償金として500万円(以下「本件実績報償金」といい,
683 本件出願報償金と併せて「本件各報償金」
684 - 8 -
685
686 という。
687
688 )を支払った。
689
690
691 Aは,
692 平成25年7月にB社を退社した。
693
694 Aは,
695 平成26年4月,
696 B社を被告として,
697 本件規程
698 第5条により特許を受ける権利の対価を支払うことは不合理である旨主張し,
699 特許法第35条第3
700 項及び第5項に基づき,
701 「相当の対価」から既に支払を受けた本件各報償金合計501万円を差し
702 引いた残額として4000万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める訴えを提起した。
703
704 B社
705 は,
706 同訴訟において,
707 本件規程第5条により特許を受ける権利の対価を支払うことは不合理とは認
708 められず,
709 また,
710 仮に不合理と認められるとしても「相当の対価」の額は既払い額501万円を上
711 回ることはない旨主張し,
712 全面的に争った。
713
714 その後の平成27年12月1日,
715 裁判所の和解勧告に
716 基づき,
717 AとB社との間で,
718 「相当の対価」の残額として2000万円(以下「本件和解金」とい
719 う。
720
721 )を支払う旨の訴訟上の和解が成立し,
722 平成28年1月20日,
723 B社はAに対し同額を支払っ
724 た。
725
726
727 他方,
728 D社は,
729 B社から取得した甲に係る特許権を利用して乙という健康食品を製造し,
730 平成2
731 6年3月から1箱1万円での販売を開始した。
732
733 D社の創業者であり,
734 その発行済株式総数の70パー
735 セントを所有し,
736 いわゆるワンマン社長として同社の実権を掌握していた代表取締役社長Eは,
737
738 年4月,
739 自ら及び家族が使用する目的で,
740 部下に命じて乙50箱(以下「本件食品」という。
741
742 )を
743 無償で入手し,
744 これを自宅に持ち帰って,
745 その後家族とともに費消した。
746
747
748 以上の事案について,
749 以下の設問に答えなさい。
750
751
752 〔設
753
754 問〕
755
756
757
758 本件出願報償金は,
759 所得税法上,
760 いかなる所得に分類されるか,
761 異なる見解にも言及しつつ
762 自説を述べなさい。
763
764 また,
765 本件実績報償金が本件出願報償金とは別の所得に分類されるかにつ
766 いても,
767 理由を付して述べなさい。
768
769
770
771
772
773
774 本件和解金は,
775 所得税法上,
776 いつの年分のいかなる所得に分類されるか,
777 自説を述べなさい。
778
779
780 D社は,
781 本件食品の価額(50万円)を損金の額に算入することができるか,
782 根拠条文と理由
783
784 を付して述べなさい。
785
786 ただし,
787 同族会社等の行為又は計算の否認の規定の適用はないものとする。
788
789
790
791 - 9 -
792
793 〔第2問〕(配点:50)
794 P市に居住するAは,
795 将来,
796 海の近くに別荘を建てる予定で,
797 平成元年1月10日,
798 Q市のR海
799 岸線沿いにある100坪の甲土地を2000万円で購入し,
800 同日,
801 所有権移転登記も行った。
802
803 とこ
804 ろが,
805 その直後にAは病に倒れ,
806 別荘計画は実行に移されることなく,
807 平成2年11月20日にA
808 はこの世を去った。
809
810 その時点における甲土地の時価は2500万円であった。
811
812 Aと同居していた一
813 人息子Bが,
814 甲土地を含むAの全財産を相続により取得した。
815
816
817 S市に居住するCは,
818 平成元年3月1日から,
819 甲土地に隣接する乙土地に事務所用建物と艇庫を
820 建築し,
821 そこでサーフショップを個人で営んでいた。
822
823 Cは,
824 甲土地の所有者が一度もR海岸にやっ
825 て来ないのをよいことに,
826 悪いとは思いながらも,
827 平成2年1月5日から,
828 甲土地を上記サーフシ
829 ョップの駐車場として使用することにした。
830
831 Bは,
832 海沿いの別荘に全く興味がなかったので,
833 相続
834 後も甲土地を訪れることはなく,
835 Cが自分の土地を勝手に使用していることにも気付かないままで
836 あった。
837
838
839 Cは,
840 平成23年1月20日,
841 Bに対して甲土地に関する取得時効を援用して甲土地の所有権の
842 取得を主張し,
843 Bに対して甲土地の所有権移転登記を求めたが,
844 Bはこれを拒否した。
845
846 時効援用時
847 における甲土地の時価は5000万円であった。
848
849 そこで,
850 Cは,
851 同年3月1日,
852 Bを被告として,
853
854 甲土地の所有権確認及び平成2年1月5日時効取得を原因とする所有権移転登記手続を請求する訴
855 訟をP地方裁判所に提起した。
856
857 この訴訟の中で,
858 Bは時効の完成を争ったが,
859 P地方裁判所は平成
860 23年11月30日にCの請求を全面的に認容する判決を言い渡し,
861 同年12月20日に同判決は
862 確定した。
863
864 この時点における甲土地の時価も5000万円であった。
865
866 その後,
867 Cは,
868 甲土地につい
869 て所有権移転登記を経由した上で,
870 平成27年12月1日,
871 Dに対して甲土地を当時の時価である
872 5500万円で譲渡した。
873
874
875 以上の事案について,
876 以下の設問に答えなさい。
877
878
879 〔設問1〕
880 甲土地を時効取得したことによるCの利益は,
881 所得税法上,
882 いかなる所得に分類されるか述べな
883 さい。
884
885
886 〔設問2〕
887 甲土地については,
888 Aが取得してからBが時効により所有権を喪失するまでの間に含み益が生じ
889 ている。
890
891 最高裁判例が示した清算課税説を前提とするならば,
892 この含み益に対する所得税法上の取
893 扱いには,
894 どのような問題点があるか述べなさい。
895
896 その際には,
897 時効取得した者の取得費について
898 も,
899 相続による資産の取得の場合と対比した上で,
900 言及しなさい。
901
902
903
904 - 10 -
905
906 論文式試験問題集[経
907
908 - 11 -
909
910
911
912 法]
913
914 [経
915
916
917
918 法]
919
920 〔第1問〕(配点:50)
921 A社は,
922 日本で一般消費者向け電子機器甲(以下「甲」という。
923
924 )の製造販売に従事する事業者
925 である。
926
927 甲は,
928 平成21年に初めて販売された画期的な製品であり,
929 世界全体で甲を製造販売して
930 いる事業者は,
931 現時点で,
932 A社以外には,
933 やはり日本に拠点を置くB社しか存在しない。
934
935 A社とB
936 社は激しくシェアを争っており,
937 各社のシェアの年による変動は大きい。
938
939 C社及びD社は,
940 いずれ
941 も,
942 日本で電子機器等に使用される部品の製造販売に従事する事業者である。
943
944 平成24年に,
945 A社
946 は,
947 甲の新しいバージョンを開発するに際し,
948 C社に対して,
949 甲の主要な部品乙(以下「乙」とい
950 う。
951
952 )の開発・製造を依頼し,
953 そのために必要な技術情報を開示することを申し出た。
954
955 C社は,
956
957 の依頼を受け,
958 A社が製造する新しいバージョンの甲向けに乙を開発・製造した上で,
959 平成25年
960 度から1四半期当たり約200万個から300万個の乙をA社に納入するようになった。
961
962 平成25
963 年には,
964 A社は,
965 D社に対しても,
966 同様の依頼と申出を行い,
967 D社は,
968 この依頼を受けて,
969 平成2
970 6年度から1四半期当たり約150万個から200万個の乙をA社に納入するようになった。
971
972 A社
973 が製造する甲に用いられる乙は,
974 固有の仕様と性能を求められるため,
975 A社が製造する甲以外の電
976 子機器に転用することは不可能である。
977
978 C社及びD社以外に,
979 世界で乙の製造販売に従事する事業
980 者としては,
981 中国に拠点を置くE社が存在し,
982 E社は,
983 B社が製造する甲向けに乙を製造し,
984 B社
985 に納入していた。
986
987
988 平成26年12月頃,
989 取引先の拡大を図ろうとしたE社は,
990 A社に接近し,
991 従来品と性能は同じ
992 だがより安価な乙を,
993 A社が製造する甲向けにも開発できると持ち掛けた。
994
995 その結果,
996 A社は,
997
998 社に対しても乙の開発・製造を依頼し,
999 必要な技術情報をE社に提供した。
1000
1001 E社のA社に対する乙
1002 の納入開始は,
1003 平成27年12月頃に予定されている。
1004
1005 E社がA社から乙の開発・製造の依頼を受
1006 けたことは,
1007 A社の調達担当者からの情報として,
1008 平成26年の年末までにはC社及びD社の取締
1009 役会において紹介されていた。
1010
1011
1012 平成27年1月初旬,
1013 C社の営業担当取締役rとD社の営業担当取締役sは,
1014 C社とD社が共に
1015 参加する商品展示会に赴いた際の雑談の中で,
1016 従来のA社による乙の価格引下げ要求は極めて理不
1017 尽であり,
1018 原材料費が高騰している中でそのような要求がまかり通れば,
1019 乙の生産基盤が日本から
1020 失われかねないので,
1021 両社が一致協力してA社との交渉に当たるべきであるとの認識で一致した。
1022
1023
1024 そして,
1025 両社の協力の具体化のため,
1026 平成27年4月〜6月期(以下「本期」という。
1027
1028 )における
1029 乙の納入に関してA社と商談をする前に,
1030 互いにA社に提示する乙の価格について意見を交換し,
1031
1032 かつ,
1033 A社との商談の内容について情報を交換する仕組みを構築することで一致した。
1034
1035 なお,
1036 rと
1037 sは,
1038 それぞれC社とD社において,
1039 乙の価格を決定する権限を有していた。
1040
1041
1042 これを受けて,
1043 平成27年2月初旬から,
1044 C社の営業課長tとD社の営業課長uは,
1045 それぞれ,
1046
1047 上司であるrとsの指示を受けて,
1048 A社に提示する乙の価格及びA社との商談の様子について,
1049
1050 子メール(以下「メール」という。
1051
1052 )による情報交換を始めた。
1053
1054 その後tとuとの間でやり取りさ
1055 れたメールの宛名には常にrとsのメールアドレスも含まれており,
1056 rとsは,
1057 tとuとの間で交
1058 わされたメールの内容を把握していたが,
1059 自ら情報交換に加わることはなかった。
1060
1061 uは,
1062 同月15
1063 日にtに送信したメールの中で,
1064 乙の単価(1個当たりの納入価格)について,
1065 従来は2800円
1066 とされてきたが,
1067 原材料費の高騰に鑑みて,
1068 本期分は3000円を提示したいと考えている旨を伝
1069 えた。
1070
1071 tは,
1072 同日,
1073 これに対する返信メールの中で,
1074 乙の単価が2950円であっても,
1075 受注数量
1076 が200万個以上であれば採算が取れることから,
1077 A社との交渉では,
1078 2950円を下回らない範
1079 囲であれば許容範囲であると答えた。
1080
1081 uは,
1082 同日,
1083 これに対する返信メールの中で,
1084 自分も同意見
1085 である旨を伝えた。
1086
1087
1088 この意見交換の後,
1089 本期分の乙の単価として,
1090 C社は2990円を,
1091 D社は3000円をA社に
1092 提示した。
1093
1094 A社は,
1095 C社及びD社との交渉の中で,
1096 B社との競争の厳しさを強調し,
1097 C社及びD社
1098 - 12 -
1099
1100 に対する発注数量の配分を大幅に見直す可能性にも言及しつつ,
1101 当該単価を2930円以下とする
1102 よう強く求めたが,
1103 C社及びD社の両社とも,
1104 原材料費高騰のため,
1105 その水準では採算が取れない
1106 として,
1107 これに激しく抵抗した。
1108
1109 それぞれA社と交渉した結果,
1110 平成27年3月初旬に,
1111 本期分の
1112 乙の単価について,
1113 C社は2960円で,
1114 D社は2970円でA社と妥結した。
1115
1116 tとuは,
1117 C社と
1118 D社がA社との間で交渉妥結に至るまでの状況を,
1119 逐一,
1120 メールで知らせ合い,
1121 その内容は上司の
1122 rとsにも伝わっていた。
1123
1124 C社とD社は,
1125 それぞれA社と妥結した単価で本期分の乙を受注し,
1126
1127 の受注数量は,
1128 C社が270万個,
1129 D社が200万個であった。
1130
1131
1132 〔設
1133
1134 問〕
1135 C社及びD社の上記行為について,
1136 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独
1137
1138 占禁止法」という。
1139
1140 )上の問題点を分析して検討しなさい。
1141
1142
1143
1144 - 13 -
1145
1146 〔第2問〕(配点:50)
1147 【前
1148
1149 提】
1150 A社,
1151 B社及びC社は,それぞれ健康維持のための消耗品である甲(以下「甲」という。
1152
1153 )の製造
1154
1155 業者である。
1156
1157 日本には,
1158 これら3社のほか甲の製造業者が数社ある。
1159
1160 各社の甲の販売金額が日本に
1161 おける甲全体の販売金額に占める割合(シェア)は,
1162 A社が55パーセント程度,
1163 B社とC社はい
1164 ずれもおよそ10パーセントから15パーセント程度である。
1165
1166 A社,
1167 B社及びC社以外の甲の製造
1168 業者のシェアはいずれも10パーセント未満である。
1169
1170 日本において,
1171 甲の輸入品はほとんど流通し
1172 ていない。
1173
1174 過去において各社の順位やシェアに大きな変動はない。
1175
1176
1177 甲の製造業者は,
1178 自社の製造した甲を小売業者に販売し,
1179 小売業者は,
1180 甲を一般消費者に対して
1181 販売している。
1182
1183 小売業者は,
1184 小売業者の店舗に来店する一般消費者に対して販売する方法をとって
1185 いる。
1186
1187 A社は,
1188 製造した甲を小売業者に対して出荷するに際して,
1189 甲に書面(以下「納品書」とい
1190 う。
1191
1192 )を添付し,
1193 小売業者に納入する製品の名称(甲)やその数量,
1194 出荷する製品(甲)の小売業
1195 者に対する販売価格,
1196 支払期限等を通知している。
1197
1198
1199 一度A社製の甲を購入して使用したほとんどの一般消費者は,
1200 A社製の甲を店頭で指定し,
1201 継続
1202 的に購入することが通常である。
1203
1204 このようにA社製の甲は一般消費者に高い評価を得ており,
1205 甲を
1206 販売する小売業者にとって,
1207 A社製の甲を取り扱うことは,
1208 その営業上不可欠となっている。
1209
1210
1211 〔設
1212
1213
1214 問〕下記及びの設問に答えなさい。
1215
1216
1217 上記の【前提】に加え,
1218 以下の事情がある場合に,
1219 A社の行為について,
1220 独占禁止法上の問題
1221 点を分析して検討しなさい。
1222
1223
1224 A社は,
1225 自社製の甲を取り扱う小売業者を全国的な範囲で相当数確保し,
1226 維持するために,
1227 A社
1228
1229 の取引先である小売業者の全てがある程度の利益を確保できることが,
1230 必須であると考えていた。
1231
1232
1233 ところが,
1234 ある時期から,
1235 小売業者のうち,
1236 特に規模の大きい小売業者(以下「大規模小売業者」
1237 という。
1238
1239 )が,
1240 甲の1個当たりの利益を少なくして一般消費者に対する販売価格(以下「小売価格」
1241 という。
1242
1243 )を低くする一方,
1244 数量を多く販売することによってある程度の利益を確保する戦略によ
1245 り甲を販売し,
1246 A社製の甲もその対象とするとともに,
1247 そのように低めに設定した甲の小売価格に
1248 ついて,
1249 一般消費者に対して大々的に広告を行って一般消費者に訴求することが常態化した。
1250
1251
1252 A社は,
1253 小売業者による甲の小売価格の自由な広告は,
1254 規模の小さい小売業者をも全国的な範囲
1255 で相当数確保し,
1256 維持することが自社にとって利益になるというA社の考えに反する結果をもたら
1257 すと考え,
1258 自社の取引先小売業者が広告において一般消費者に対しA社製の甲の小売価格の表示を
1259 行った場合には,
1260 当該小売業者に対してそのような表示を行わないことを求め,
1261 これに従わない場
1262 合には,
1263 当該小売業者に対して甲の出荷を停止することを決定した。
1264
1265
1266 かかる決定に基づき,
1267 A社は,
1268 納品書にあらかじめ「広告に小売価格を記載しないでください。
1269
1270
1271 との文言を記載し,
1272 甲の出荷の度ごとに小売業者に通知した。
1273
1274 また,
1275 A社の営業担当者は,
1276 取引先
1277 である大規模小売業者を度々訪問し,
1278 一般消費者に対する広告においてA社製の甲の小売価格の表
1279 示を行わないように要請するとともに,
1280 表示を継続する場合には出荷を停止する旨を説明した。
1281
1282
1283 このようなA社の納品書の記載と営業担当者の説明により,
1284 A社の取引先である大規模小売業者
1285 は,
1286 おおむね,
1287 A社製の甲の小売価格を広告において表示しなくなった。
1288
1289
1290
1291
1292 上記の【前提】に加え,
1293 以下の事情がある場合(記載の事情はない)に,
1294 A社の行為につい
1295 て,
1296 独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
1297
1298
1299
1300 - 14 -
1301
1302 A社は,
1303 自社の甲の機能を改良し,
1304 現行の甲と比較して健康維持機能を20パーセント以上向上
1305 させ,
1306 他社製の甲に比べて高い顧客満足度を見込む甲の新製品(以下,
1307 A社製の甲の新製品を「新
1308 製品甲」という。
1309
1310 )を開発した。
1311
1312 A社は,
1313 新製品甲の販売開始に当たり,
1314 小売業者に対し,
1315 一般消
1316 費者に新製品甲の機能を説明することを求めることとし,
1317 具体的には小売業者の販売員がA社の定
1318 める研修を受講すること,
1319 そのように研修を受講した小売業者の販売員が一般消費者に対して新製
1320 品甲の機能や取扱方法の説明を行うこと,
1321 小売業者の販売員が新製品甲の機能の説明を行うために
1322 必要な機材を購入することを,
1323 全ての取引先小売業者に義務付け,
1324 これに応じない小売業者とは新
1325 製品甲の取引を行わないことを決定した(以下「本決定」という。
1326
1327 )。
1328
1329
1330 これ以前にA社が,
1331 取引先小売業者に対し,
1332 A社製の甲の販売に際して甲の健康維持機能や取扱
1333 方法の説明を消費者に行うことを求めたり,
1334 義務付けたりすることはなかった。
1335
1336
1337 A社が本決定を行うに至ったのは,
1338 第一に,
1339 近時B社及びC社も,
1340 それぞれ自社の従来の甲の機
1341 能を改良した新製品を発売し,
1342 一般消費者を引き付け始めており,
1343 このまま放置しておくと,
1344 近い
1345 将来,
1346 現在のA社のシェアを維持できなくなるおそれが生じていること,
1347 第二に,
1348 新製品甲の健康
1349 維持機能の向上を強く打ち出し,
1350 販売に当たって一般消費者に対して丁寧に説明することが,
1351 A社
1352 製の甲の一般消費者に対する訴求力を向上させ,
1353 A社製の甲を指定して購入する一般消費者を一層
1354 増加させると考えたことによる。
1355
1356
1357 もっともA社の取引先小売業者の中には,
1358 本決定に従うと,
1359 販売コストが上昇し,
1360 それを小売価
1361 格に転嫁すると新製品甲の小売価格を引き上げざるを得ないことに懸念を有する者もいた。
1362
1363
1364 このようなA社の取引先小売業者の懸念にもかかわらず,
1365 A社が本決定を小売業者に対して実施
1366 したところ,
1367 これに従ったA社の取引先小売業者の新製品甲の販売コストが上昇し,
1368 本決定がなかっ
1369 た場合に想定していた小売価格よりも高い小売価格で新製品甲を販売する小売業者も少なくなかっ
1370 た。
1371
1372
1373
1374 - 15 -
1375
1376 - 16 -
1377
1378 論文式試験問題集[知的財産法]
1379
1380 - 17 -
1381
1382 [知的財産法]
1383 〔第1問〕(配点:50)
1384 X1とX2(以下,
1385 併せて「Xら」という。
1386
1387 )は,
1388 使用されている貸コインロッカーに顧客が誤っ
1389 て硬貨を入れないようにする装置を共同で開発し,
1390 その発明について共同で特許出願し,
1391 特許権と
1392 しての登録を得た(以下,
1393 この登録された特許を「本件特許」という。
1394
1395 )。
1396
1397 本件特許の特許請求の範
1398 囲は,
1399 「鍵を抜き取った状態において硬貨の投入行為を妨げる手段を設けたことを特徴とする貸ロ
1400 ッカーの硬貨誤投入防止装置」という文言からなる。
1401
1402 本件特許の明細書の記載及び図面(以下「明
1403 細書等」という。
1404
1405 )には,
1406 鍵の抜き差しに伴って金属製の遮蔽板を回転させ,
1407 もって硬貨投入口の
1408 開閉を行う旨の具体的な実施例が記載されているが,
1409 他には具体的な実施例の記載はない。
1410
1411 同実施
1412 例では,
1413 鍵が抜かれた状態では回転してきた金属製の遮蔽板が硬貨投入口を全体的に塞ぎ,
1414 硬貨が
1415 入らない構成となっている。
1416
1417 Zは,
1418 Xらから許諾を受けて本件特許権について通常実施権を有して
1419 いる。
1420
1421
1422 Yは,
1423 貸コインロッカーの製造販売をしているが,
1424 いずれの貸コインロッカーにも鍵が抜かれた
1425 状態では硬貨が投入されないようにした装置が実装されている。
1426
1427 その製品には製品Aと製品Bの2
1428 種類があり,
1429 製品Aは本件特許の実施例とほぼ同じ構成を有しているが,
1430 遮蔽板は樹脂製であり,
1431
1432 回転するようにはなっておらず,
1433 遮蔽板が上下することにより硬貨投入口を開閉する構成となって
1434 いる。
1435
1436 製品Bは,
1437 遮蔽板を使うことはなく,
1438 鍵が抜かれた状態で硬貨を投入しようとすると警告音
1439 が鳴るように構成されている。
1440
1441 なお,
1442 かかる製品Bの構成は,
1443 本件特許の実施例を含む明細書等を
1444 読んだだけでは,
1445 当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に
1446 想到し得ないものである。
1447
1448
1449 以上の事実関係を前提として,
1450 以下の設問に答えなさい。
1451
1452
1453 〔設
1454
1455 問〕
1456
1457 1.Xらは,
1458 Yに対して,
1459 本件特許権に基づき,
1460 製品Aと製品Bの製造販売の差止め及び損害賠
1461 償を求める訴訟を共同で提起した。
1462
1463 Xらの請求に対するYの考えられる反論とその妥当性に
1464 ついて論じなさい。
1465
1466
1467 2.
1468
1469
1470 Yは,
1471 前記訴訟が提起された後,
1472 本件特許に対する無効審判を請求した。
1473
1474 Xらはこれを争っ
1475 たが,
1476 同時に特許請求の範囲を減縮すれば無効理由がなくなるので,
1477 これを減縮したいと
1478 考えた。
1479
1480 Xらは,
1481 当該無効審判において,
1482 どのような手続をとればよいか論じなさい。
1483
1484
1485 た,
1486 同様の無効理由についてYが前記訴訟において特許法第104条の3の抗弁を主張し
1487 ている場合,
1488 Xらはどのように対抗できるかについて論じなさい。
1489
1490
1491
1492
1493
1494 の無効審判請求について,
1495 仮に特許庁が本件特許を無効とする旨の審決を行ったとして,
1496
1497 この審決に対してX1のみが単独で審決取消訴訟を提起する場合の問題点について論じな
1498 さい。
1499
1500
1501
1502 3.前記訴訟において,
1503 Yの製品が本件特許を侵害したとして,
1504 Xらの差止請求及び損害賠償請
1505 求が認められ,
1506 その判決が確定したため,
1507 Yは侵害行為を中止し,
1508 Xらに対して損害賠償を
1509 行った。
1510
1511 その後,
1512 Yが請求した無効審判により,
1513 本件特許を無効とする旨の審決が確定した。
1514
1515
1516 この場合,
1517 Yは,
1518 Xらに対して支払った損害賠償金を取り戻せるか否かについて論じなさい。
1519
1520
1521 また差止めの効力について論じなさい。
1522
1523
1524
1525 - 18 -
1526
1527 〔第2問〕(配点:50)
1528 作家Xは,
1529 米国の作家Aが創作した「Days of the full-scale sprint like a tornado」という
1530 題号(以下「題号a」という。
1531
1532 )の英語の世界的ベストセラー小説(以下「小説a」という。
1533
1534 )につ
1535 き,
1536 Aから日本語に翻訳する権利を得た。
1537
1538 小説aは,
1539 恵まれない環境に育った少年が苦学を重ね,
1540
1541 大企業に入社し,
1542 持ち前の馬力と攻撃的性格で並み居るライバルに競り勝ちついに大企業のトップ
1543 となるというサクセスストーリーである。
1544
1545 Xは小説aを翻訳するに当たり,
1546 その大部分は直訳であ
1547 るものの,
1548 日本人には分かりにくい英語の表現や各場面設定につき,
1549 独特の意訳をするなど創意工
1550 夫を凝らし,
1551 その結果,
1552 日本語の小説として原作にも負けない流ちょうで生き生きとした表現の小
1553 説(以下「小説b」という。
1554
1555 )を完成させた。
1556
1557 小説bは,
1558 題号aを直訳した「竜巻のごとく全力疾
1559 走した日々」との日本語の題号(以下「題号b」という。
1560
1561 )を付した上,
1562 出版された。
1563
1564 小説bのブ
1565 ックカバー(以下「ブックカバーb」という。
1566
1567 )はXが自ら独自にデザインしたもので,
1568 青と白を
1569 基調とし,
1570 左下から右上に風が吹き抜けるようなしま模様とともに,
1571 金色の題号が中央で大きく渦
1572 を巻きながら天に昇るように描かれているものであった。
1573
1574
1575 以上の事実関係を前提として,
1576 以下の設問に答えなさい。
1577
1578
1579 〔設
1580
1581 問〕
1582
1583 1.作家Yは,
1584 小説a及び小説bに描かれた内容を批評するとともに同小説の描く世界観を揶揄
1585 することを通じて,
1586 競争社会のゆがみを風刺する趣旨で,
1587 小説a及び小説bの全体の構成,
1588
1589 各場面設定及び物語の展開の特色を一見して分かるように残しながら,
1590 主人公がライバルと
1591 の競争に競り負け最後には挫折するという内容の日本語の小説(以下「小説c」という。
1592
1593 )を
1594 書き,
1595 これに「つむじ風のごとく疾走して転んだ日々」という題号(以下「題号c」という。
1596
1597
1598 を付した上,
1599 これを自費出版した。
1600
1601 ただし,
1602 小説cは,
1603 小説aの直訳としての日本語の表現
1604 において小説bと類似する部分があるものの,
1605 小説bでXが創意工夫を凝らした日本語の表
1606 現は使用していない。
1607
1608 また,
1609 小説cのブックカバー(以下「ブックカバーc」という。
1610
1611 )はY
1612 が自らデザインしたもので,
1613 ブックカバーbの色合い,
1614 構図及び文字の配置の特色が一見し
1615 て分かるように残されており,
1616 左下から右上に風が吹き抜けるようなしま模様とともに,
1617
1618 色の題号が中央で小さく渦を巻きながら徐々に消滅するように描かれていた。
1619
1620
1621 Xは,
1622 Yに対し,
1623 小説c,
1624 題号c及びブックカバーcはXの著作権及び著作者人格権を侵
1625 害するものであるとして,
1626 小説c,
1627 題号c及びブックカバーcの複製・頒布の差止め及び損
1628 害賠償を求める訴訟を提起した。
1629
1630
1631 Xはどのような主張をすることができるか。
1632
1633 これに対するYの反論としてどのような主張
1634 が考えられるか。
1635
1636 双方の主張の妥当性についても論じなさい。
1637
1638
1639 2.
1640
1641 事業者Z1は,
1642 書籍の購入者の依頼により,
1643 同書籍をその購入者のタブレット端末で読
1644 めるように電子ファイル化するという有償のサービスを業とする者である。
1645
1646 そのサービス
1647 の手順は次のとおりである。
1648
1649 すなわち,
1650 まず,
1651 書籍を購入した利用者がZ1に書籍の電子
1652 ファイル化を申し込み,
1653 自ら購入した書籍をZ1に送付する,
1654 次に,
1655 Z1はその書籍を裁
1656 断して自ら管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化する,
1657 そして,
1658 Z1は,
1659 完成
1660 した電子ファイルを記録した電子記憶媒体を裁断した書籍とともに利用者に送付する,
1661
1662 いうものである。
1663
1664 Z1は,
1665 上記の手順により,
1666 小説bの不特定多数の購入者の依頼に応じ
1667 て小説bの電子ファイル化を続けている。
1668
1669
1670
1671
1672
1673 事業者Z2は,
1674 小説bを自ら複数冊購入してそれらを裁断した上で,
1675 それを読み込む専
1676 用スキャナーが設置されている自社の店舗内の書棚に並べ,
1677 小説bを電子ファイル化した
1678 い不特定多数の利用者に,
1679 店舗外への持ち出しを禁止した上で裁断済みの小説bを貸し出
1680 し,
1681 それを利用者に上記店舗内のスキャナーで自ら電子ファイル化させ,
1682 その電子ファイ
1683 ルを利用者に取得させるという有償のサービスを業として提供している。
1684
1685
1686 - 19 -
1687
1688 Xは,
1689 Z1及びZ2に対し,
1690 上記及びの行為はそれぞれXの著作権を侵害するもので
1691 あるとして,
1692 それらの行為の差止め及び損害賠償を求める訴訟をそれぞれ提起した。
1693
1694 これら
1695 の訴訟において,
1696 Xはどのような主張をすることができるか。
1697
1698 これに対するZ1及びZ2の
1699 反論としてどのような主張が考えられるか。
1700
1701 それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。
1702
1703
1704
1705 - 20 -
1706
1707 論文式試験問題集[労
1708
1709 - 21 -
1710
1711
1712
1713 法]
1714
1715 [労
1716
1717
1718
1719 法]
1720
1721 〔第1問〕(配点:50)
1722 次の事例を読んで,
1723 後記の設問に答えなさい。
1724
1725
1726 【事
1727
1728 例】
1729 Xは,
1730 平成20年3月に大学の理工学部を卒業後,
1731 同年4月,
1732 Y社と,
1733 職種を限定せずに,
1734 期間
1735
1736 の定めのない労働契約を締結して入社し,
1737 本社の研究開発部門に配属された。
1738
1739 Xは,
1740 平成25年4
1741 月にY社のA工場に異動となり,
1742 液晶生産事業部(以下「本件配属部」という。
1743
1744 )の技術部門を担
1745 当する課に配属となった。
1746
1747
1748 Y社は電気機器製造を業とする株式会社であり,
1749 東京本社のほか,
1750 全国に複数の工場,
1751 支社を配
1752 置し,
1753 5000人以上の従業員を擁していた。
1754
1755 Y社は,
1756 平成25年11月,
1757 A工場において,
1758 当時
1759 世界最大のサイズの液晶ディスプレイの製造ラインを構築するプロジェクト(以下「本件プロジェ
1760 クト」という。
1761
1762 )を立ち上げた。
1763
1764 本件プロジェクトにおけるXを含む技術担当者の主な業務は,
1765
1766 品の製造装置の効率性を高める運転条件を調整する作業であった。
1767
1768 Xは,
1769 本件プロジェクトの一つ
1770 の工程において初めてプロジェクトのリーダーになった。
1771
1772
1773 本件プロジェクトのリーダーは,
1774 常時,
1775 複雑な担当業務を多く抱え,
1776 時間外労働(法定労働時間
1777 を超える時間の労働をいう。
1778
1779 以下同じ。
1780
1781 )を余儀なくされており,
1782 Xは,
1783 本件プロジェクトが立ち
1784 上がってから平成26年4月までの間に,
1785 休日出勤を繰り返し,
1786 帰宅が午後11時を過ぎることも
1787 あった。
1788
1789 Xは,
1790 平成25年12月から平成26年4月までの間,
1791 毎月80時間から100時間,
1792
1793 平均90時間程度の時間外労働を行っていた。
1794
1795
1796 Xは,
1797 平成25年12月から,
1798 頭痛,
1799 めまい,
1800 不眠の症状が現れ,
1801 平成26年3月のY社の定期
1802 健康診断で不眠を訴え,
1803 同年4月2日,
1804 A工場の診療所で産業医から不眠症と診断されて薬を処方
1805 された。
1806
1807 また,
1808 Xは,
1809 同月30日,
1810 自宅近くの心療内科の医院(以下「本件医院」という。
1811
1812 )でう
1813 つ的症状と診断され,
1814 抑うつ及び睡眠障害に適応のある薬を処方された。
1815
1816 ただし,
1817 うつ病に罹患し
1818 ているとの確定的な診断はなされなかった。
1819
1820 なお,
1821 Xには精神疾患の既往歴はなかった。
1822
1823 Xは,
1824
1825 婚で両親と同居しており,
1826 私生活上のトラブルはなかった。
1827
1828
1829 平成26年4月1日,
1830 本件プロジェクトの要員削減が行われ,
1831 同年5月9日,
1832 Xは,
1833 これまでの
1834 業務に加え,
1835 別の製品の開発業務も担当するよう上司Bから打診された。
1836
1837 これに対して,
1838 Xは,
1839
1840 調不良を理由に難色を示したが,
1841 上司Bに受け入れられず,
1842 結局,
1843 その業務についても担当となっ
1844 た。
1845
1846 一方,
1847 その頃,
1848 Xは,
1849 担当業務に遅延が生じていることにつき,
1850 上司Bから,
1851 本件配属部の会
1852 議で度々厳しい叱責を受けた。
1853
1854
1855 Xは,
1856 平成26年5月中旬から,
1857 頭痛のために眠ることができず,
1858 頭痛薬を連日服用するように
1859 なった。
1860
1861 Xは,
1862 その頃,
1863 同僚の技術担当者から,
1864 元気がなく席に座って放心したような状態である
1865 など,
1866 普段とは違う様子であると認識され,
1867 「大丈夫か。
1868
1869 」と声を掛けられたことがあった。
1870
1871 Xは,
1872
1873 同年6月下旬,
1874 体調不良のため,
1875 上司Bに対し,
1876 別の製品の開発業務の担当から外してもらうよう
1877 求めたが,
1878 了解を得ることができなかった。
1879
1880 Xは,
1881 その頃,
1882 本件医院の主治医から,
1883 しばらく休ん
1884 で療養するようにと助言されたのを受けて,
1885 同年7月3日,
1886 約1か月間の休養を要する旨の本件医
1887 院の診断書を提出し,
1888 同月31日まで欠勤した。
1889
1890
1891 その後,
1892 Xは,
1893 平成26年8月1日から1週間にわたり出勤したが,
1894 頭痛が生じたため再び療養
1895 することとし,
1896 同月以降,
1897 同年11月までの毎月初旬に,
1898 抑うつ状態で約1か月間の休養を要する
1899 旨の本件医院の診断書を提出して,
1900 欠勤を続けた。
1901
1902
1903 上司Bは,
1904 Xの欠勤中,
1905 度々,
1906 Xに対し,
1907 職場復帰するか,
1908 又は休職申請するかを問い合わせて
1909 いたが,
1910 Xは,
1911 現状では勤務を再開する状況にない旨の本件医院の診断書を提出したのみで職場復
1912 帰する意思を示さず,
1913 休職の申請も行わなかった。
1914
1915
1916 - 22 -
1917
1918 なお,
1919 Y社の就業規則(抜粋)は,
1920 後記のとおりである。
1921
1922
1923 〔設
1924
1925 問〕
1926
1927 1.Y社は,
1928 平成26年11月10日,
1929 Xに対し,
1930 同年12月15日をもって解雇する旨を通知し
1931 た上,
1932 同日,
1933 就業規則第27条第4号の規定に基づき,
1934 Xを解雇した。
1935
1936
1937 Xは,
1938 この解雇が無効であるとして,
1939 Y社に対して労働契約上の地位の確認を請求して訴えを
1940 提起した。
1941
1942 検討すべき法律上の論点を挙げて,
1943 Xの請求の当否を論じなさい。
1944
1945
1946 2.設問1とは異なり,
1947 Y社は,
1948 平成26年11月10日,
1949 Xを解雇せずに,
1950 就業規則第24条第
1951 1項の規定に基づき,
1952 Xに対して傷病休職を発令した。
1953
1954 Xは,
1955 定期的な上司Bとの面談等を続け
1956 たが,
1957 Y社は,
1958 平成27年10月6日,
1959 Xに対し,
1960 同年11月11日をもって休職期間の満了に
1961 より退職扱いとする旨を通知した。
1962
1963
1964 一方,
1965 Xは,
1966 平成27年10月9日,
1967 本件医院の主治医が作成した同月7日付けの診断書(以
1968 下「本件診断書」という。
1969
1970 )をY社に提出して,
1971 休職前に従事した職場以外の部署への配置換え
1972 を申請した。
1973
1974 本件診断書には,
1975 「気分,
1976 意欲とも改善して,
1977 通常の勤務は可能である。
1978
1979 ただし,
1980
1981 当初は時間外労働は避ける必要がある。
1982
1983 」との所見が記載されていた。
1984
1985
1986 Y社は,
1987 平成27年10月20日,
1988 Xに対し,
1989 休職前の職場以外の部署への配置換えを拒否す
1990 る旨を口頭で伝えた。
1991
1992 そして,
1993 Y社は,
1994 同年11月11日,
1995 Xに対し,
1996 同日をもって退職になっ
1997 た旨を記載した書面を交付した。
1998
1999
2000 Xは,
2001 退職扱いは不当であって,
2002 雇用関係は終了していないとして,
2003 Y社に対して労働契約上
2004 の地位の確認を請求して訴えを提起した。
2005
2006 検討すべき法律上の論点を挙げて,
2007 Xの請求の当否を
2008 論じなさい。
2009
2010
2011 【就業規則(抜粋)】
2012 第24条
2013
2014 傷病休職
2015
2016 1.傷病により勤務に堪え得ない場合には,
2017 休職を命ずることができる。
2018
2019
2020 2.休職期間は1年を超えることはできない。
2021
2022
2023 3.第1項の規定により休職を命ぜられた者は,
2024 その休職期間が満了した時点をもって退職とする。
2025
2026
2027 第25条
2028
2029 復職
2030
2031 1.前条第1項の規定により休職を命ぜられた者につき,
2032 休職期間中において休職事由が消滅し就業
2033 が可能であると認められたときは,
2034 復職を命ずる。
2035
2036
2037 2.(略)
2038 第27条
2039
2040 解雇
2041
2042 以下の事由に該当する場合は,
2043 解雇することができる。
2044
2045
2046 一〜三
2047
2048
2049 (略)
2050
2051 傷病等により勤務に堪え得ず,
2052 復職の見込みがない場合
2053
2054 五〜八
2055
2056 (略)
2057
2058 - 23 -
2059
2060 〔第2問〕(配点:50)
2061 次の事例を読んで,
2062 後記の設問に答えなさい。
2063
2064
2065 【事
2066
2067 例】
2068 Y社は,
2069 バス車両100台により,
2070 路線バス事業を営む株式会社である。
2071
2072
2073 Y社の従業員は,
2074 300名であり,
2075 うち200名の従業員により組織されるX労働組合(以下「X
2076
2077 組合」という。
2078
2079 )があり,
2080 近年においても,
2081 毎年,
2082 Y社に新規採用される従業員は,
2083 採用後1年以
2084 内にその3分の2程度の者がX組合に加入していた。
2085
2086
2087 Y社の従業員の賃金は,
2088 基本給と諸手当で構成されている。
2089
2090 Y社では,
2091 新規採用者の基本給の額
2092 は,
2093 バス車両の運転をする「運転職」,
2094 バス車両の点検・整備をする「整備職」,
2095 本社における管理
2096 業務,
2097 営業所の窓口業務,
2098 営業活動等を担当する「事務職」という各職種別に定められていた。
2099
2100
2101 して,
2102 従業員の新規採用年度後の基本給は,
2103 新規採用時の基本給の額を基に,
2104 毎年度の定期昇給分
2105 とベースアップ分を加算して決定されていた。
2106
2107
2108 X組合は,
2109 上記のとおりY社の新規採用者の3分の2程度の者が採用後間もなくX組合に加入し
2110 て組合員となっており,
2111 また,
2112 従業員の基本給は,
2113 新規採用時の基本給の額を基に決定されている
2114 ことから,
2115 毎年度の春闘における団体交渉の際,
2116 Y社に対し,
2117 当年度の新規採用者の基本給の額は
2118 前年度の新規採用者の基本給に当年度のベースアップ分を上乗せした金額とするよう求め,
2119 これま
2120 で,
2121 Y社は,
2122 これに応じてきた。
2123
2124
2125 Y社は,
2126 近年,
2127 自動車の普及,
2128 営業区域における住民の高齢化・減少等に伴い,
2129 旅客数が減少し
2130 て旅客運賃収入が落ち込み,
2131 厳しい経営状態となってきていることから,
2132 運賃の値上げ,
2133 各種経費
2134 の削減等の経営合理化を進めてきたが,
2135 その一環として,
2136 今般,
2137 人件費を削減することとした。
2138
2139
2140 だ,
2141 Y社としては,
2142 現在の従業員の賃金を減額することは困難であると思われたので,
2143 新規採用者
2144 の基本給の額を引き下げることによって対応しようと考えた。
2145
2146
2147 そこで,
2148 Y社は,
2149 平成28年2月1日,
2150 X組合に対し,
2151 平成28年度の新規採用者の基本給につ
2152 いて,
2153 平成27年度の新規採用者の基本給の額に比して各職種一律にその10パーセントを減額し
2154 た額とすること(以下「本件基本給引下げ」という。
2155
2156 )を通知した。
2157
2158 X組合は,
2159 本件基本給引下げ
2160 の実施後に採用された従業員がX組合に加入した場合,
2161 それより前に採用された組合員との間で賃
2162 金格差が生じ,
2163 同一職種内で異なる賃金水準の集団が併存することになる上,
2164 本件基本給引下げよ
2165 り前に採用された組合員が退職するに従って組合員全体の賃金水準が低下していくことになるなど
2166 として,
2167 本件基本給引下げに反対することを決定し,
2168 同月10日,
2169 Y社に対し,
2170 本件基本給引下げ
2171 について団体交渉を開催するよう要求した。
2172
2173
2174 Y社は,
2175 平成28年2月15日,
2176 X組合に対し,
2177 新規採用者の基本給の額の決定は,
2178 使用者であ
2179 るY社の裁量に委ねられている上,
2180 本件基本給引下げはX組合の組合員を含む在職者の賃金に影響
2181 を与えるものではなく,
2182 これから採用する者については,
2183 いまだX組合の組合員ともなっていない
2184 のであるから,
2185 本件基本給引下げは団体交渉の対象事項とはならない旨回答して,
2186 団体交渉を拒否
2187 した。
2188
2189 その後も,
2190 X組合は,
2191 Y社に対し,
2192 繰り返し,
2193 本件基本給引下げについて団体交渉を開催す
2194 るよう要求したが,
2195 Y社は,
2196 一貫して,
2197 同様の回答をして団体交渉を拒否した。
2198
2199
2200 そこで,
2201 X組合は,
2202 本件基本給引下げの撤回とこれについての団体交渉を求めて平成28年3月
2203 8日の終日,
2204 更には,
2205 Y社の回答がX組合の要求を全く受け入れないものであるときは同月15日
2206 の終日,
2207 ストライキを予定することとし,
2208 同月2日,
2209 Y社に対し,
2210 その旨を通知した。
2211
2212 ストライキ
2213 は,
2214 「運転職」の組合員についてのみ行うものであった。
2215
2216
2217 これに対し,
2218 Y社は,
2219 引き続き,
2220 本件基本給引下げについての団体交渉を拒否するとともに,
2221
2222 成28年3月7日,
2223 社長名で,
2224 「我が社が厳しい経営状態にある中,
2225 X組合の皆さんになるべく迷
2226 惑を掛けないよう,
2227 組合員の皆さんの基本給は引き下げずに,
2228 新規採用者の基本給を引き下げると
2229 いう決断をしたものです。
2230
2231 これ以外にY社の存続はあり得ないと考えています。
2232
2233 ところが,
2234 X組合
2235 - 24 -
2236
2237 の幹部の皆さんは,
2238 会社の誠意をどう評価されたのか分かりませんが,
2239 これを団体交渉の対象とし
2240 なければならない事柄であると強弁し,
2241 会社が団体交渉を拒否したとして,
2242 ストライキに入ると宣
2243 言しました。
2244
2245 これは,
2246 ストのためのストであって,
2247 甚だ遺憾なことであり,
2248 会社としては,
2249 重大な
2250 決意をせざるを得ません。
2251
2252 」と記載した声明文を,
2253 Y社の全事業所に一斉に掲示した。
2254
2255
2256 X組合の組合員の間では,
2257 上記声明文に対して,
2258 先行きに不安を感ずるという意見を述べる者は
2259 いたが,
2260 X組合の執行部を批判したり,
2261 ストライキの実施に反対したりする者はいなかった。
2262
2263 そし
2264 て,
2265 X組合は,
2266 平成28年3月8日の終日,
2267 予定どおり,
2268 ストライキを行った。
2269
2270 このストライキ後
2271 も,
2272 Y社は,
2273 本件基本給引下げについての団体交渉を拒否したことから,
2274 X組合は,
2275 同月15日に
2276 も,
2277 終日ストライキを行った。
2278
2279 Y社は,
2280 同月8日のストライキの際,
2281 バス車両の3分の1について,
2282
2283 「運転職」の非組合員により運行したが,
2284 その余のバス車両の運行はできず,
2285 運行できなかったバ
2286 ス車両の所属する営業所においてはバス車両の点検・整備をする必要がなくなるという状態となっ
2287 た。
2288
2289 そのため,
2290 Y社は,
2291 同月15日のストライキに際し,
2292 同月14日,
2293 X組合の組合員であるZら
2294 を含む,
2295 これらの営業所に所属する「整備職」の従業員に対し,
2296 同月15日の終日ストライキの間,
2297
2298 休業することを命じた。
2299
2300 これに対して,
2301 Zらは,
2302 Y社に抗議をしたが,
2303 Y社は,
2304 同日終日,
2305 就業を
2306 認めず,
2307 Zらに対し,
2308 同日分の賃金を支払わなかった。
2309
2310
2311 〔設
2312
2313 問〕
2314
2315 1.X組合は,
2316 Y社の団体交渉拒否や社長名の声明文の掲示がいずれも不当であると考えている。
2317
2318
2319 X組合として救済を求めるには,
2320 どのような機関にどのような救済を求めることが考えられるか。
2321
2322
2323 検討すべき法律上の論点を挙げて論じなさい。
2324
2325 なお,
2326 X組合が労働組合法上の労働組合に該当す
2327 ることを前提に論じてよい。
2328
2329
2330 2.休業することを命じられたZらは,
2331 平成28年3月15日分の賃金が支払われなかったのは不
2332 当であると考え,
2333 Y社に対し,
2334 賃金及び休業手当を請求する訴えを提起した。
2335
2336 検討すべき法律上
2337 の論点を挙げて,
2338 Zらの請求の当否を論じなさい。
2339
2340
2341
2342 - 25 -
2343
2344 - 26 -
2345
2346 論文式試験問題集[環
2347
2348 - 27 -
2349
2350
2351
2352 法]
2353
2354 [環
2355
2356
2357
2358 法]
2359
2360 〔第1問〕(配点:50)
2361 A社は,
2362 電力事業の規制緩和に伴い,
2363 B県C市において,
2364 D発電所(石炭火力,
2365 出力17万キロ
2366 ワット)の設置を計画した。
2367
2368
2369 これに対して,
2370 同計画予定地付近の住民Eは,
2371 D発電所が稼働すれば,
2372 その居住地の窒素酸化物
2373 濃度について,
2374 近隣に所在するF社のG発電所からのばい煙と複合して,
2375 環境基準を超えることが
2376 予想され,
2377 健康被害が発生すると危惧している。
2378
2379
2380 この場合において,
2381 以下の設問に答えよ。
2382
2383
2384 〔設問1〕
2385 D発電所の設置工事の事業は,
2386 環境影響評価法が定める第一種事業に当たり,
2387 A社は,
2388 同法に
2389 基づく環境影響評価手続を開始した。
2390
2391 B県知事とEは,
2392 環境影響評価手続において,
2393 意見書を提
2394 出したいと考えているが,
2395 それぞれどのような機会があるかを述べよ。
2396
2397
2398 なお,
2399 電気事業法が定める環境影響評価に関する特例については,
2400 考慮しなくてよい。
2401
2402
2403 〔設問2〕
2404 その後,
2405 D発電所の工事計画は経済産業大臣の認可を受け,
2406 D発電所が操業を開始したところ,
2407
2408 Eの居住地において,
2409 窒素酸化物の濃度が,
2410 常時環境基準を25%超えていることが確認される
2411 ようになった。
2412
2413 健康被害が発生すると危惧するEは,
2414 A社及びF社に対してどのような訴訟上の
2415 請求をすることが考えられるか。
2416
2417 また,
2418 その場合の法律上の問題点について論ぜよ。
2419
2420
2421 〔設問3〕
2422 F社は,
2423 地球温暖化対策の推進に関する法律第21条の2に規定する特定排出者として,
2424 G発
2425 電所の温室効果ガス算定排出量の報告義務を負っている。
2426
2427 当該報告に係る事項を集計した結果は
2428 公表され,
2429 当該報告に係る事項は開示請求の対象となっている。
2430
2431 この仕組みは,
2432 環境法政策の手
2433 法としてどのように説明され,
2434 規制的手法と比較してどのような特質があるか述べよ。
2435
2436
2437
2438 - 28 -
2439
2440 〔第2問〕(配点:50)
2441 環境基本法第4条は,
2442 持続的に発展することができる社会が構築されるための環境の保全の在り
2443 方について,
2444 社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環
2445 境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようにな
2446 るべき旨の基本理念を規定している。
2447
2448
2449 環境法の分野の各法において,
2450 環境への負荷のできる限りの低減とすべての者の公平な役割分担
2451 とを柱とする上記の基本理念はどのように表れているかという観点から,
2452 以下の各設問に答えよ。
2453
2454
2455 〔設問1〕
2456
2457
2458 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(以下「容器包装リサイクル法」
2459 という。
2460
2461 )第4条が事業者及び消費者の責務を定めている趣旨を,
2462 地球温暖化対策の推進に関
2463 する法律第20条の6第1項が定める責務との異同及びその理由に言及しつつ,
2464 説明せよ。
2465
2466
2467
2468
2469
2470 容器包装リサイクル法第10条の2が指定法人又は認定特定事業者から市町村への金銭の支
2471 払義務を定めている趣旨を,
2472 同法が定める特定事業者の義務並びに同法及び他の関連法が定め
2473 る市町村の役割を踏まえつつ,
2474 説明せよ。
2475
2476
2477
2478 〔設問2〕
2479
2480
2481 自然公園法が,
2482 国立公園内の特別地域及び海域公園地区における一定の行為について,
2483 環境
2484 大臣の許可を受けなければ行ってはならないものとしている趣旨を,
2485 許可を受けられない場合
2486 における制度的手当にも触れつつ,
2487 説明せよ。
2488
2489
2490
2491
2492
2493 地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律が,
2494 地域
2495 自然環境保全等事業を実施する区域内に立ち入る者から「入域料」を収受することができるも
2496 のとしている趣旨を,
2497 【資料】を参照しつつ,
2498 説明せよ。
2499
2500
2501
2502 【資
2503
2504
2505 料】
2506 地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(平成26年
2507
2508 法律第85号)(抜粋)
2509 (目的)
2510 第1条
2511
2512 この法律は,
2513 入域料をその経費に充てて実施する事業又は自然環境トラスト活動を促進する
2514
2515 事業を通じて自然環境を保全し,
2516 及びその持続可能な利用を推進することの重要性に鑑み,
2517 地域
2518 自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関し,
2519 基本方針の策定,
2520 地域
2521 計画の作成等について定めるところにより,
2522 地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続
2523 可能な利用の推進を図り,
2524 もって地域社会の健全な発展に資することを目的とする。
2525
2526
2527 (定義)
2528 第2条
2529
2530 この法律において「地域自然環境保全等事業」とは,
2531 都道府県又は市町村が,
2532 自然公園法(昭
2533
2534 和32年法律第161号)第2条第2号に規定する国立公園(以下「国立公園」という。
2535
2536 ),
2537 同条
2538 第3号に規定する国定公園(以下「国定公園」という。
2539
2540 )等の自然の風景地,
2541 文化財保護法(昭和
2542 25年法律第214号)第2条第1項第4号に規定する記念物に係る名勝地その他の自然環境の
2543 保全及び持続可能な利用の推進を図る上で重要な地域において,
2544 当該地域の自然環境を地域住民
2545 の資産として保全し,
2546 及びその持続可能な利用を推進するために実施する事業であって,
2547 当該事
2548 業を実施する区域内への立入りについて,
2549 当該区域内に立ち入る者から収受する料金(次条第2
2550 項第1号及び第4条第2項第1号ハにおいて「入域料」という。
2551
2552 )をその経費に充てるものをいう。
2553
2554
2555
2556
2557 この法律において「自然環境トラスト活動」とは,
2558 自然環境の保全及び持続可能な利用の推進を
2559 図ることを目的とする一般社団法人若しくは一般財団法人若しくは特定非営利活動促進法(平成
2560 10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくはこれらに準ずる者とし
2561 - 29 -
2562
2563 て環境省令・文部科学省令で定めるもの(以下「一般社団法人等」という。
2564
2565 )又は都道府県若しく
2566 は市町村が行う次に掲げる活動をいう。
2567
2568
2569
2570
2571 自然環境の保全及び持続可能な利用の推進を目的として前項に規定する地域内の土地(その
2572 土地の定着物を含む。
2573
2574 次号において同じ。
2575
2576 )を取得すること。
2577
2578
2579
2580
2581
2582 前号に掲げるもののほか,
2583 前項に規定する地域内の土地に係る活動であって自然環境の保全
2584 及び持続可能な利用の推進を目的とするものとして環境省令・文部科学省令で定めるもの
2585
2586
2587
2588 この法律において「自然環境トラスト活動促進事業」とは,
2589 都道府県又は市町村が,
2590 当該都道府
2591 県又は市町村の区域における自然環境を地域住民の資産として保全し,
2592 及びその持続可能な利用
2593 を推進するため,
2594 自然環境トラスト活動を促進する事業をいう。
2595
2596
2597
2598
2599
2600 この法律において「地域自然資産区域」とは,
2601 地域自然環境保全等事業が実施される区域及び自
2602 然環境トラスト活動促進事業に係る自然環境トラスト活動が行われる区域をいう。
2603
2604
2605
2606 - 30 -
2607
2608 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
2609
2610 - 31 -
2611
2612 [国際関係法(公法系)]
2613 〔第1問〕(配点:50)
2614 A国とB国は同じ海洋に面して陸で隣接する二つの国である。
2615
2616 いずれも1960年代に独立し,
2617
2618 直ちに国際連合(以下「国連」という。
2619
2620 )に加盟した。
2621
2622 独立以来両国間には国境をめぐる紛争は発
2623 生してこなかったが,
2624 2000年代に入って,
2625 A国の沿岸の一番近い地点から約50キロメートル,
2626
2627 B国の沿岸の一番近い地点から約30キロメートルの位置にある小島X島の帰属をめぐって紛争が
2628 生じた。
2629
2630 X島は古くからA国の漁業者が漁業活動の拠点として使用してきた。
2631
2632 A国は独立の際X島
2633 を自国の領域に編入する措置をとり,
2634 以来X島周辺での漁業活動に関する規制や数百人のX島住民
2635 に対する住民登録,
2636 徴税等の行政権を行使してきた。
2637
2638 このA国の行動についてB国からは特段の抗
2639 議等はなかった。
2640
2641 しかし,
2642 B国は2002年頃からX島が地理的にA国よりもB国に近接している
2643 ことを理由にX島に対して領有権を主張するようになり,
2644 2006年にはB国の国内法に基づいて
2645 領域編入を行った。
2646
2647 A国は直ちにこれに抗議した。
2648
2649 その後X島の帰属をめぐって両国間で外交交渉
2650 が断続的に持たれたが進展はみられなかった。
2651
2652
2653 2015年6月22日,
2654 B国の軍隊がX島に上陸して島を占拠し,
2655 A国の漁業者及び住民を島か
2656 ら強制的に退去させ軍の一部を常駐させた。
2657
2658 翌23日,
2659 A国は国連の安全保障理事会(以下「安保
2660 理」という。
2661
2662 )の開催を要請した。
2663
2664 同月24日に開催された安保理では,
2665 上記の事態を議題として
2666 取り上げ,
2667 その中で,
2668 B国の軍事行動を非難し,
2669 直ちに軍をX島から撤退させ,
2670 A国の漁業者及び
2671 住民の帰島を可能にするようB国に要求する決定を内容とする決議案が,
2672 複数の理事国によって共
2673 同提案された。
2674
2675
2676 以上の事実を基に,
2677 以下の設問に答えなさい。
2678
2679 なお,
2680 A国及びB国は,
2681 いずれも安保理の理事国
2682 ではない。
2683
2684 また,
2685 両国とも国連以外の安全保障や紛争解決に関する条約には参加していない。
2686
2687
2688 〔設
2689
2690 問〕
2691
2692 1.前記の安保理決議案について,
2693 投票の結果が仮に賛成10,
2694 反対3,
2695 棄権2であり,
2696 5つの
2697 常任理事国のうち4か国は決議案に賛成したが,
2698 B国と友好関係にあるC国は棄権した場合,
2699
2700 同決議案は採択されるか,
2701 それとも否決されるか,
2702 理由を付して答えなさい。
2703
2704
2705 2.前記の安保理決議案においてB国の軍事行動を非難する国際法上の根拠について,
2706 論じなさ
2707 い。
2708
2709
2710 3.前記の安保理決議案が仮に全会一致で採択された場合,
2711 B国はX島から軍を直ちに撤退さ
2712 せ,
2713 A国の漁業者及び住民の帰島を可能にする措置をとるべき国際法上の義務が生ずるかどう
2714 か,
2715 また,
2716 B国が決議を無視して軍を駐留させ続け漁業者等の帰島を可能にしなかった場合,
2717
2718 安保理は国際連合憲章上どのような行動をとることができるかについて,
2719 答えなさい。
2720
2721
2722 4.前記の安保理決議案が仮に必要な賛成票が得られず否決された場合,
2723 国連総会がこの事態を
2724 議題として取り上げ,
2725 同様の内容の決議を採択することができるか,
2726 論じなさい。
2727
2728
2729
2730 - 32 -
2731
2732 〔第2問〕(配点:50)
2733 A国に所在するB国大使館(以下「B国大使館」という。
2734
2735 )に勤務するB国の外交官Xが,
2736 A国
2737 内の首都近郊の道路で自動車を運転中,
2738 制限速度を大幅に超過していたためカーブを曲がり切れず
2739 に歩道に突っ込み,
2740 歩道を歩いていたA国籍の小学生十数名を死傷させるという重大な交通事故を
2741 起こし,
2742 事故現場からそのまま逃走した。
2743
2744
2745 A国の警察当局は,
2746 Xが自宅には戻らずB国大使館の館内にとどまっていることが判明したため,
2747
2748 A国外務省を通じて,
2749 A国に駐在するB国大使Yに対し,
2750 Xの身柄の引渡しと本件事故の捜査への
2751 協力を要求した。
2752
2753 これに対し,
2754 Y大使は,
2755 上記の事故はXが引き起こしたものであることは認めな
2756 がら,
2757 「Xは外交官の身分を有する者であり,
2758 外交関係に関するウィーン条約によれば,
2759 我が国は
2760 Xの身柄をA国政府に引き渡す義務を負わない」と述べ,
2761 警察当局の要求を拒否した。
2762
2763 これを受け,
2764
2765 上記交通事故で死亡した小学生の遺族数名が抗議のためB国大使館を訪れたところ,
2766 B国大使館側
2767 は面会を拒否して上記遺族を門前で追い返した。
2768
2769 これがマスコミによって大きく報じられると,
2770
2771 国国内ではB国政府に対する反発が強まった。
2772
2773
2774 その後,
2775 B国大使館がXをB国に帰国させたところ,
2776 これを知ったA国国民の間では,
2777 B国政府
2778 に対する反感が一層激化し,
2779 B国大使館の周辺で,
2780 B国政府の本件対応に抗議する大規模なデモが
2781 連日行われるようになった。
2782
2783 A国の警察当局は,
2784 多数の警察官を動員してB国大使館の警備に当た
2785 り,
2786 抗議集団がB国大使館に侵入することを阻止した。
2787
2788 しかし,
2789 抗議集団により,
2790 B国大使館には
2791 多くの石や卵が投げ付けられて,
2792 建物の窓が割れ,
2793 また,
2794 その敷地の外壁にはスプレーでB国を非
2795 難するスローガンが大きく落書きされた。
2796
2797 さらに,
2798 抗議集団の一部は,
2799 B国大使館の正門前の路上
2800 で,
2801 持参したB国国旗を燃やして気勢を上げたが,
2802 警備に当たるA国の警察官はこれを阻止しよう
2803 としなかった。
2804
2805
2806 B国大使館に対する大規模デモは数週間継続し,
2807 その間B国大使館では,
2808 館員が自由に出入りす
2809 ることができず,
2810 大使館としての業務を行うことが困難な状態が続いた。
2811
2812
2813 一方,
2814 Xは,
2815 A国からB国に帰国した直後にB国外務省を退職した。
2816
2817 その約1年後,
2818 Xが私用で
2819 海外渡航中にA国領域内を通過したところ,
2820 Xは,
2821 A国領域内で,
2822 A国警察当局によって上記死傷
2823 事故を発生させた容疑で身柄を拘束され,
2824 A国検察当局によって同容疑でA国の裁判所に訴追され
2825 た。
2826
2827
2828 なお,
2829 A国とB国は,
2830 いずれも国際連合加盟国であり,
2831 外交関係に関するウィーン条約の当事国
2832 である。
2833
2834
2835 〔設
2836
2837 問〕
2838
2839 1.「Xは外交官の身分を有する者であり,
2840 外交関係に関するウィーン条約によれば,
2841 我が国は
2842 Xの身柄をA国政府に引き渡す義務を負わない」というY大使の見解に対して,
2843 A国政府とし
2844 て国際法上どのような主張が可能であるかについて,
2845 論じなさい。
2846
2847
2848 2.B国大使館に対する抗議活動の結果生じた損害に関連して,
2849 B国政府はA国政府に対して国
2850 際法上どのような請求を行うことが可能であるかについて,
2851 A国政府側からの予想され得る反
2852 論も踏まえながら,
2853 論じなさい。
2854
2855
2856 3.A国の当局によってXが身柄を拘束され,
2857 A国裁判所に訴追されたことは,
2858 国際法上どのよ
2859 うに評価できるか。
2860
2861 Xが引き起こした交通事故が,
2862 @休暇中に私的な旅行のため自動車を運転
2863 中の事故であった場合,
2864 A緊急の公務のため自宅からB国大使館に駆けつける途中の事故で
2865 あった場合のそれぞれについて論じなさい。
2866
2867
2868
2869 - 33 -
2870
2871 - 34 -
2872
2873 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
2874
2875 - 35 -
2876
2877 [国際関係法(私法系)]
2878 〔第1問〕(配点:50)
2879 甲国人A男は,
2880 甲国人B女と甲国で適法に婚姻した。
2881
2882 その後,
2883 AとBの間に子C(甲国籍)が生
2884 まれ,
2885 翌年,
2886 A,
2887 B及びCの3人は,
2888 生活の拠点を日本に移し,
2889 その後日本でずっと暮らしている。
2890
2891
2892 Cは,
2893 現在15歳である。
2894
2895
2896 以上の事実に加え,
2897 日本国際私法の観点からみて,
2898 A及びBの婚姻は有効に成立し,
2899 CがAB夫
2900 婦の嫡出子であることを前提として,
2901 以下の設問に答えなさい。
2902
2903
2904 なお,
2905 甲国国際私法からの反致は成立せず,
2906 甲国民法は次の趣旨の規定を有している。
2907
2908
2909 【甲国民法】
2910 @
2911
2912 年齢18歳をもって,
2913 成年とする。
2914
2915
2916
2917 A
2918
2919 父母は,
2920 未成年の子を監護し教育する。
2921
2922
2923
2924 B
2925
2926 父母は,
2927 未成年の子がある場合には,
2928 子の最善の利益のために,
2929 子の財産を管理し,
2930 かつ,
2931
2932 の財産に関する法律行為についてその子を代表する。
2933
2934 ただし,
2935 父又は母から譲渡を受けた財産以
2936 外に子が財産を有するときは,
2937 父又は母は,
2938 その財産の管理処分のために,
2939 財産後見人の選任を
2940 検認裁判所に請求しなければならない。
2941
2942
2943
2944 C
2945
2946 検認裁判所は,
2947 Bただし書の規定に基づき,
2948 父又は母が財産後見人の選任を請求したときは,
2949
2950 子の最善の利益を考慮して,
2951 財産後見人を選任する。
2952
2953
2954
2955 D
2956
2957 財産後見人は,
2958 子の最善の利益のために,
2959 父母が管理権を有しない財産を管理処分する権利を
2960 有し,
2961 義務を負う。
2962
2963
2964
2965 〔設
2966
2967 問〕
2968
2969 1.Bは,
2970 日本において,
2971 D家電店で洗濯機を分割払いで購入する契約を締結した。
2972
2973 ところが,
2974
2975 Bの支払が次第に滞るようになった。
2976
2977 Dは,
2978 AとBは婚姻関係にあり,
2979 洗濯機の購入代金の支
2980 払はAB間の日常家事債務であり,
2981 夫婦であることから当然にAも連帯債務を負うとして,
2982
2983 に対してその支払を求めた。
2984
2985
2986 甲国法上,
2987 日本民法第761条に該当する規定はなく,
2988 夫婦の一方による日常の家事に関す
2989 る法律行為によって他方が当然に債務を負うことはない。
2990
2991
2992 Aが甲国法に基づきDからの請求を拒否することができるかについて,
2993 準拠法決定プロセス
2994 を踏まえて答えなさい。
2995
2996
2997 2. Cは,
2998 A及びB以外の者から日本に所在する不動産Pの贈与を受けた。
2999
3000 A及びBは,
3001 Cのた
3002 めに,
3003 不動産PをEに売却したいと考えている。
3004
3005 Cが不動産Pを所有していることを前提とし
3006 て,
3007 以下の小問に答えなさい。
3008
3009
3010
3011
3012 A及びBは,
3013 甲国法によると不動産Pについて父母が管理権を有しないことからA及びB
3014 がCのために不動産Pを売却することはできないのではないか,
3015 と考えている。
3016
3017 A及びBの
3018 このような考えは正しいか。
3019
3020 準拠法決定プロセスを踏まえて答えなさい。
3021
3022
3023
3024
3025
3026 において,
3027 A及びBには不動産Pを売却するための管理権がないと仮定する。
3028
3029 その場合,
3030
3031 Cのために不動産Pを売却するのに必要な法的措置に関する準拠法については,
3032 法の適用に
3033 関する通則法第32条によるべきとする見解と同法第35条によるべきとする見解との対立
3034 が見られる。
3035
3036 いずれの見解によるべきかの立場を明らかにした上で,
3037 どのような法的措置が
3038 必要であるかを答えなさい。
3039
3040
3041 なお,
3042 日本の裁判所で手続をとることを前提とし,
3043 手続上の問題点がある場合には,
3044 それ
3045 についても言及しなさい。
3046
3047
3048
3049 - 36 -
3050
3051 〔第2問〕(配点:50)
3052 旅行業を営む日本法人Y1会社は,
3053 甲国への旅行者が現地で必要とする各種サービスを円滑に提
3054 供するため,
3055 Y1会社全額出資の乙国法人Y2会社を甲国に隣接する乙国に設立した。
3056
3057 Y2会社代
3058 表者はY1会社代表者と同一人である。
3059
3060 Y2会社は乙国内にあるビルの一室を賃借して本店兼事務
3061 所としているが,
3062 さしたる資産はなく,
3063 事務を処理する日本人従業員1名がY1会社から出向し常
3064 駐するのみである。
3065
3066 Y1会社が日本で募集した甲国への旅行者が甲国内で必要とするサービスを手
3067 配するため,
3068 Y2会社は甲国法人X会社と包括的業務委託契約(以下「本件契約」という。
3069
3070 )を締
3071 結した。
3072
3073 本件契約では,
3074 @Y1会社が募集した旅行者のためにX会社が甲国内での各種サービス(交
3075 通,
3076 食事,
3077 宿泊等)を手配し,
3078 かつ,
3079 X会社が現地(甲国)のサービス提供者に現地通貨で立替払
3080 すること,
3081 AX会社及びY2会社の了解のもとにX会社のY2会社に対する請求書をX会社がY1
3082 会社に直接送付すること,
3083 B毎月末を支払期限とするY2会社の債務(立替金及びX会社の報酬の
3084 甲国通貨による支払)の履行地をX会社の主たる営業所(甲国)とすること,
3085 C本件契約の準拠法
3086 を日本法とすること等が定められていたが,
3087 国際裁判管轄権に関する合意はなかった。
3088
3089
3090 Y2会社が本件契約に基づく立替金及び報酬のX会社への支払を怠ったため,
3091 X会社は,
3092 Y2会
3093 社に対して本件契約に基づく金員の支払を求めるとともに,
3094 Y1会社に対しても,
3095 Y1会社とY2
3096 会社とは実質的に同一会社であり,
3097 Y2会社の法人格はY1会社との関係で否認されるべきである
3098 として,
3099 本件契約に基づく金員の支払を求める訴えを日本の裁判所に提起した。
3100
3101
3102 〔設
3103
3104 問〕
3105
3106 1.日本の裁判所はY1会社及びY2会社に対するX会社の訴えにつき,
3107 国際裁判管轄権を有す
3108 るか。
3109
3110 ただし,
3111 民事訴訟法第3条の9の規定の適用はないものとする。
3112
3113
3114 2.Y1会社がX会社に対して本件契約に基づく債務を負うか否かについては,
3115 いずれの国の法
3116 が適用されるか。
3117
3118
3119 3.X会社がY1会社に対して本件契約に基づく金員の支払を甲国通貨で求めた場合において,
3120
3121 Y1会社が日本円で弁済する権利を有するか否かについては,
3122 いずれの国の法が適用されるか。
3123
3124
3125
3126 - 37 -
3127
3128