1 論文式試験問題集
2 [民法・商法・民事訴訟法]
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4 - 1 -
5
6 [民
7
8 法]
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10 次の文章を読んで,後記の〔設問〕に答えなさい。
11 【事実】
12 1.Aは,自宅の一部を作業場として印刷業を営んでいたが,疾病により約3年間休業を余儀なく
13 され,平成27年1月11日に死亡した。Aには,自宅で同居している妻B及び商社に勤務して
14 いて海外に赴任中の子Cがいた。Aの財産に関しては,遺贈により,Aの印刷機械一式(以下「甲
15 機械」という。)は,学生の頃にAの作業をよく手伝っていたCが取得し,自宅及びその他の財
16 産は,Bが取得することとなった。
17 2.その後,Bが甲機械の状況を確認したところ,休業中に数箇所の故障が発生していることが判
18 明した。Bは,現在海外に赴任しているCとしても甲機械を使用するつもりはないだろうと考え,
19 型落ち等による減価が生じないうちに処分をすることにした。
20 そこで,Bは,平成27年5月22日,近隣で印刷業を営む知人のDに対し,甲機械を500
21 万円で売却した(以下では,この売買契約を「本件売買契約」という。)。この際,Bは,Dに対
22 し,甲機械の故障箇所を示した上で,これを稼働させるためには修理が必要であることを説明し
23 たほか,甲機械の所有者はCであること,甲機械の売却について,Cの許諾はまだ得ていないも
24 のの,確実に許諾を得られるはずなので特に問題はないことを説明した。同日,本件売買契約に
25 基づき,甲機械の引渡しと代金全額の支払がされた。
26 3.Dは,甲機械の引渡しを受けた後,30万円をかけて甲機械を修理し,Dが営む印刷工場内で
27 甲機械を稼働させた。
28 4.Cは,平成27年8月に海外赴任を終えて帰国したが,同年9月22日,Bの住む実家に立ち
29 寄った際に,甲機械がBによって無断でDに譲渡されていたことに気が付いた。そこで,Cは,
30 Dに対し,甲機械を直ちに返還するように求めた。
31 Dは,甲機械を取得できる見込みはないと考え,同月30日,Cに甲機械を返還した上で,B
32 に対し,本件売買契約を解除すると伝えた。
33 その後,Dは,甲機械に代替する機械設備として,Eから,甲機械の同等品で稼働可能な中古
34 の印刷機械一式(以下「乙機械」という。)を540万円で購入した。
35 5.Dは,Bに対し,支払済みの代金500万円について返還を請求するとともに,甲機械に代え
36 て乙機械を購入するために要した増加代金分の費用(40万円)について支払を求めた。さらに,
37 Dは,B及びCに対し,甲機械の修理をしたことに関し,修理による甲機械の価値増加分(50
38 万円)について支払を求めた。
39 これに対し,Bは,本件売買契約の代金500万円の返還義務があることは認めるが,その余
40 の請求は理由がないと主張し,Cは,Dの請求は理由がないと主張している。さらに,B及びC
41 は,甲機械の使用期間に応じた使用料相当額(25万円)を支払うようDに求めることができる
42 はずであるとして,Dに対し,仮にDの請求が認められるとしても,Dの請求が認められる額か
43 らこの分を控除すべきであると主張している。
44 〔設問〕
45 【事実】5におけるDのBに対する請求及びDのCに対する請求のそれぞれについて,その法
46 的構成を明らかにした上で,それぞれの請求並びに【事実】5におけるB及びCの主張が認めら
47 れるかどうかを検討しなさい。
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49 - 2 -
50
51 [商
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53 法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,3:7)
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55 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
56 1.甲株式会社(以下「甲社」という。)は,平成18年9月に設立された株式会社であり,太陽
57 光発電システムの販売・施工業を営んでいる。甲社の発行済株式の総数は1000株であり,そ
58 のうちAが800株,Bが200株を有している。甲社は,設立以来,AとBを取締役とし,A
59 を代表取締役としてきた。なお,甲社は,取締役会設置会社ではない。
60 2.Aは,前妻と死別していたが,平成20年末に,甲社の経理事務員であるCと再婚した。甲社
61 は,ここ数年,乙株式会社(以下「乙社」という。)が新規に開発した太陽光パネルを主たる取
62 扱商品とすることで,その業績を大きく伸ばしていた。ところが,平成27年12月20日,A
63 は,心筋梗塞の発作を起こし,意識不明のまま病院に救急搬送され,そのまま入院することとな
64 ったが,甲社は,Aの入院を取引先等に伏せていた。
65 3.平成27年12月25日は,甲社が乙社から仕入れた太陽光パネルの代金2000万円の支払
66 日であった。かねてより,Aの指示に従って,手形を作成して取引先に交付することもあったC
67 は,当該代金の支払のため,日頃から保管していた手形用紙及び甲社の代表者印等を独断で用い
68 て,手形金額欄に2000万円,振出日欄に平成27年12月25日,満期欄に平成28年4月
69 25日,受取人欄に乙社と記載するなど必要な事項を記載し,振出人欄に「甲株式会社代表取締
70 役A」の記名捺印をして,約束手形(以下「本件手形」という。)を作成し,集金に来た乙社の
71 従業員に交付した。
72 乙社は,平成28年1月15日,自社の原材料の仕入先である丙株式会社(以下「丙社」とい
73 う。)に,その代金支払のために本件手形を裏書して譲渡した。
74 4.Aは,意識を回復することのないまま,平成28年1月18日に死亡した。これにより,Bが
75 適法に甲社の代表権を有することとなったが,甲社の業績は,Aの急死により,急速に悪化し始
76 めた。
77 Bは,Cと相談の上,丁株式会社(以下「丁社」という。)に甲社を吸収合併してもらうこと
78 によって窮地を脱しようと考え,丁社と交渉したところ,平成28年4月下旬には,丁社を吸収
79 合併存続会社,甲社を吸収合併消滅会社とし,合併対価を丁社株式,効力発生日を同年6月1日
80 とする吸収合併契約(以下「本件吸収合併契約」という。)を締結するに至った。
81 5.Aには前妻との間に生まれたD及びEの2人の子がおり,Aの法定相続人は,C,D及びEの
82 3人である。Aが遺言をせずに急死したため,Aの遺産分割協議は紛糾した。そして,平成28
83 年4月下旬頃には,C,D及びEの3人は,何の合意にも達しないまま,互いに口もきかなくな
84 っていた。
85 6.Bは,本件吸収合併契約について,C,D及びEの各人にそれぞれ詳しく説明し,賛否の意向
86 を打診したところ,Cからは直ちに賛成の意向を示してもらったが,DとEからは賛成の意向を
87 示してもらうことができなかった。
88 7.甲社は,本件吸収合併契約の承認を得るために,平成28年5月15日に株主総会(以下「本
89 件株主総会」という。)を開催した。Bは,甲社の代表者として,本件株主総会の招集通知をB
90 とCのみに送付し,本件株主総会には,これを受領したBとCのみが出席した。A名義の株式に
91 ついて権利行使者の指定及び通知はされていなかったが,Cは,議決権行使に関する甲社の同意
92 を得て,A名義の全株式につき賛成する旨の議決権行使をした。甲社は,B及びCの賛成の議決
93 権行使により本件吸収合併契約の承認決議が成立したものとして,丁社との吸収合併の手続を進
94 めている。なお,甲社の定款には,株主総会の定足数及び決議要件について,別段の定めはない。
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96 - 3 -
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98 〔設問1〕
99 丙社が本件手形の満期に適法な支払呈示をした場合に,甲社は,本件手形に係る手形金支払請求
100 を拒むことができるか。
101 〔設問2〕
102 このような吸収合併が行われることに不服があるDが会社法に基づき採ることができる手段につ
103 いて,吸収合併の効力発生の前と後に分けて論じなさい。なお,これを論ずるに当たっては,本件
104 株主総会の招集手続の瑕疵の有無についても,言及しなさい。
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106 - 4 -
107
108 [民事訴訟法]
109
110 〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,3:2)
111 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
112 【事例】
113 Xは,XからY,YからYへと経由された甲土地の各所有権移転登記について,甲土地の所有権
114 に基づき,Y及びY(以下「Yら」という。
115 )を被告として,各所有権移転登記の抹消登記手続を
116 求める訴えを提起した(以下,当該訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。)。本件訴訟におけるX
117 及びYらの主張は次のとおりであった。
118 X の 主 張:甲土地は,Xの所有であるところ,Yらは根拠なく所有権移転登記を経た。
119 Yらが主張するとおり,XはYに対して1000万円の貸金返還債務を負っていた
120 ことがあったが,当該債務は,XがYから借り受けた1000万円の金員を支払うこと
121 によって完済している。
122 仮に,Yらが主張するように,甲土地について代物弁済によるYへの所有権の移転
123 が認められるとしても,Xは,その際,Yとの間で,代金1000万円でYから甲土
124 地を買い戻す旨の合意をしており,その合意に基づき,上記の1000万円の金員をY
125 に支払うことによって,Yから甲土地を買い戻した。
126 Yらの主張:甲土地は,かつてXの所有であったが,XがYに対して負担していた1000万円の
127 貸金返還債務の代物弁済により,XからYに所有権が移転した。これにより,Yは所
128 有権移転登記を経た。
129 その後,YがYに対して甲土地の買受けを申し出たので,Yは甲土地を代金100
130 0万円でYに売り渡したが,その際,Yは,Xとの間で,Xが所定の期間内にYに代
131 金1000万円を支払うことにより甲土地をXに売り渡す旨の合意をした。しかし,X
132 は期間内に代金をYに対して支払わなかったため,Yは所有権移転登記を経た。
133 〔設問1〕
134 本件訴訟における証拠調べの結果,次のような事実が明らかになった。
135 「Yは,XがYに対して負担していた1000万円の貸金返還債務の代物弁済により甲土地の
136 所有権をXから取得した。その後,Xは,Yから借り受けた1000万円の金員をYに対して支
137 払うことによって甲土地をYから買い戻したが,その際,所定の期間内に借り受けた1000万円
138 をYに対して返済することで甲土地を取り戻し得るとの約定で甲土地をYのために譲渡担保に供
139 した。しかし,Xは,当該約定の期間内に1000万円を返済しなかったことから,甲土地の受戻
140 権を失い,他方で,Yが甲土地の所有権を確定的に取得した。
141
142 以下は,本件訴訟の口頭弁論終結前においてされた第一審裁判所の裁判官Aと司法修習生Bとの
143 間の会話である。
144 修習生B:証拠調べの結果明らかになった事実からすれば,本件訴訟ではXの各請求をいずれも
145 棄却する旨の判決をすることができると考えます。
146 裁判官A:しかし,それでは,@当事者の主張していない事実を基礎とする判決をすることにな
147 り,弁論主義に違反することにはなりませんか。
148 修習生B:はい。弁論主義違反と考える立場もあります。しかし,本件訴訟では,判決の基礎と
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150 - 5 -
151
152 なるべき事実は弁論に現れており,それについての法律構成が当事者と裁判所との間で
153 異なっているに過ぎないと見ることができると思います。
154 裁判官A:なるほど。そうだとしても,それで訴訟関係が明瞭になっていると言えるでしょうか。
155 Aあなたが考えるように,本件訴訟において,弁論主義違反の問題は生じず,当事者と
156 裁判所との間で法律構成に差異が生じているに過ぎないと見たとして,直ちに本件訴訟
157 の口頭弁論を終結して判決をすることが適法であると言ってよいでしょうか。検討して
158 みてください。
159 修習生B:分かりました。
160 (1) 下線部@に関し,証拠調べの結果明らかになった事実に基づきXの各請求をいずれも棄却す
161 る旨の判決をすることは弁論主義違反であるとの立場から,その理由を事案に即して説明しな
162 さい。
163 (2) 下線部Aに関し,裁判官Aから与えられた課題について,事案に即して検討しなさい。
164 〔設問2〕
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166 〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
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168 第一審裁判所は,本件訴訟について審理した結果,Xの主張を全面的に認めてXの各請求をいず
169 れも認容する旨の判決を言い渡し,当該判決は,控訴期間の満了により確定した。
170 このとき,本件訴訟の口頭弁論終結後に,Yが甲土地をZに売り渡し,Zが所有権移転登記を経
171 た場合,本件訴訟の確定判決の既判力はZに対して及ぶか,検討しなさい。
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