1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [刑
7
8 法]
9
10 以下の事例に基づき,
11 甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。
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13 )。
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18 甲(40歳,
19 男性)と乙(35歳,
20 男性)は,
21 数年来の遊び仲間で,
22 働かずに遊んで暮らし
23 ていた。
24
25 甲は,
26 住宅街にある甲所有の2階建て木造一軒家(以下「甲宅」という。
27
28 )で一人で
29 暮らしており,
30 乙も,
31 甲がそのような甲宅に一人で住んでいることを承知していた。
32
33 乙は,
34
35 宅街にある乙所有の2階建て木造一軒家(以下「乙宅」という。
36
37 )で内妻Aと二人で暮らして
38 おり,
39 甲も,
40 乙がそのような乙宅にAと二人で住んでいることを承知していた。
41
42 甲宅と乙宅は,
43
44 直線距離で約2キロメートル離れていた。
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50 甲と乙は,
51 某年8月下旬頃,
52 働かずに遊びに使う金を手に入れたいと考え,
53 その相談をした。
54
55
56 そして,
57 甲と乙は,
58 同年9月1日に更に話合いをし,
59 設定した時間に発火し,
60 その火を周囲の
61 物に燃え移らせる装置(以下「発火装置」という。
62
63 )を製作し,
64 これを使って甲宅と乙宅に放
65 火した後,
66 正当な請求と見せ掛けて,
67 甲宅と乙宅にそれぞれ掛けてある火災保険の保険金の支
68 払を請求して保険会社から保険金をだまし取り,
69 これを折半することにした。
70
71 その後,
72 甲と乙
73 は,
74 二人でその製作作業をして,
75 同月5日,
76 同じ性能の発火装置2台(以下,
77 それぞれ「X発
78 火装置」,
79 「Y発火装置」という。
80
81 )を完成させた上,
82 甲宅と乙宅に放火する日を,
83 Aが旅行に
84 出掛けて乙宅を留守にしている同月8日の夜に決めた。
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90 Aは,
91 同日昼,
92 旅行に出掛けて乙宅を留守にした。
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97
98 甲と乙は,
99 同日午後7時,
100 二人で,
101 甲宅内にX発火装置を運び込んで甲宅の1階の居間の木
102 製の床板上に置き,
103 同日午後9時に発火するように設定した。
104
105 その時,
106 甲宅の2階の部屋には,
107
108 甲宅内に勝手に入り込んで寝ていた甲の知人Bがいたが,
109 甲と乙は,
110 Bが甲宅にいることには
111 気付かなかった。
112
113
114 その後,
115 甲と乙は,
116 同日午後7時30分,
117 二人で,
118 乙宅の敷地内にあって普段から物置とし
119 て使用している乙所有の木造の小屋(以下「乙物置」という。
120
121 )内にY発火装置を運び込んで,
122
123 乙物置内の床に置かれていた,
124 洋服が入った段ボール箱(いずれも乙所有)上に置き,
125 同日午
126 後9時30分に発火するように設定した。
127
128 なお,
129 乙物置は,
130 乙宅とは屋根付きの長さ約3メー
131 トルの木造の渡り廊下でつながっており,
132 甲と乙は,
133 そのような構造で乙宅と乙物置がつなが
134 っていることや,
135 乙物置及び渡り廊下がいずれも木造であることを承知していた。
136
137
138 その後,
139 甲と乙は,
140 乙宅の敷地内から出て別れた。
141
142
143
144
145
146 甲宅の2階の部屋で寝ていたBは,
147 同日午後8時50分に目を覚まし,
148 甲宅の1階の居間に
149 行ってテレビを見ていた。
150
151 すると,
152 X発火装置が,
153 同日午後9時,
154 設定したとおりに作動して
155 発火した。
156
157 Bは,
158 その様子を見て驚き,
159 すぐに甲宅から逃げ出した。
160
161 その後,
162 X発火装置から
163 出た火は,
164 同装置そばの木製の床板に燃え移り,
165 同床板が燃え始めたものの,
166 その燃え移った
167 火は,
168 同床板の表面の約10センチメートル四方まで燃え広がったところで自然に消えた。
169
170
171 お,
172 甲と乙は,
173 終始,
174 Bが甲宅にいたことに気付かなかった。
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176
177
178
179
180 Y発火装置は,
181 同日午後9時30分,
182 設定したとおりに作動して発火した。
183
184 乙は,
185 その時,
186
187 乙宅の付近でうろついて様子をうかがっていたが,
188 Y発火装置の発火時間となって,
189 「このま
190 まだと自分の家が燃えてしまうが,
191 やはりAには迷惑を掛けたくない。
192
193 それに,
194 その火が隣の
195 家に燃え移ったら危ないし,
196 近所にも迷惑を掛けたくない。
197
198 こんなことはやめよう。
199
200 」と考え,
201
202 火を消すために乙物置内に入った。
203
204 すると,
205 Y発火装置から出た火が同装置が置いてある前記
206 段ボール箱に燃え移っていたので,
207 乙は,
208 乙物置内にある消火器を使って消火活動をし,
209 同日
210 午後9時35分,
211 その火を消し止めた。
212
213 乙物置内で燃えたものは,
214 Y発火装置のほか,
215 同段ボ
216 ール箱の一部と同箱内の洋服の一部のみで,
217 乙物置には,
218 床,
219 壁,
220 天井等を含め火は燃え移ら
221
222 - 2 -
223
224 ず,
225 焦げた箇所もなかった。
226
227 また,
228 前記渡り廊下及び乙宅にも,
229 火は燃え移らず,
230 焦げた箇所
231 もなかった。
232
233
234
235
236 その後,
237 甲と乙は,
238 甲宅と乙宅にそれぞれ掛けてある火災保険の保険金を手に入れることを
239 諦め,
240 保険会社に対する保険金の支払の請求をしなかった。
241
242
243
244 - 3 -
245
246 [刑事訴訟法]
247 次の【事例】を読んで,
248 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
249
250
251 【事
252
253 例】
254 平成28年3月1日,
255 H県J市内のV方が放火される事件が発生した。
256
257 その際,
258 V方玄関内から
259
260 火の手が上がるのを見た通行人Wは,
261 その直前に男が慌てた様子でV方玄関から出てきて走り去る
262 のを目撃した。
263
264
265 V方の実況見分により,
266 放火にはウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶が使用されたこ
267 と,
268 V方居間にあった美術品の彫刻1点が盗まれていることが判明した。
269
270
271 捜査の過程で,
272 平成21年1月に住宅に侵入して美術品の彫刻を盗みウィスキー瓶にガソリンを
273 入れた手製の火炎瓶を使用して同住宅に放火したとの事件により,
274 同年4月に懲役6年の有罪判決
275 を受けた前科(以下「本件前科」という。
276
277 )を有する甲が,
278 平成27年4月に服役を終え,
279 J市に
280 隣接するH県K市内に単身居住していることが判明した。
281
282 そこで,
283 警察官が,
284 甲の写真を含む多数
285 の人物写真をWに示したところ,
286 Wは,
287 甲の写真を指し示し,
288 「私が目撃したのはこの男に間違い
289 ありません。
290
291 」と述べた。
292
293
294 甲は,
295 平成28年3月23日,
296 V方に侵入して彫刻1点を盗みV方に放火した旨の被疑事実(以
297 下「本件被疑事実」という。
298
299 )により逮捕され,
300 同月25日から同年4月13日まで勾留されたが,
301
302 この間,
303 一貫して本件被疑事実を否認し,
304 他に甲が本件被疑事実の犯人であることを示す証拠が発
305 見されなかったことから,
306 同月13日,
307 処分保留で釈放された。
308
309
310 警察官は,
311 甲が釈放された後も捜査を続けていたところ,
312 甲が,
313 同年3月5日に,
314 V方で盗まれ
315 た彫刻1点を,
316 H県から離れたL県内の古美術店に売却していたことが判明した。
317
318
319 @甲は,
320 同年5月9日,
321 本件被疑事実により逮捕され,
322 同月11日から勾留された。
323
324 間もなく甲
325 は,
326 自白に転じ,
327 V方に侵入して,
328 居間にあった彫刻1点を盗み,
329 ウィスキー瓶にガソリンを入れ
330 た手製の火炎瓶を玄関ホールの床板にたたきつけてV方に放火した旨供述した。
331
332 検察官は,
333 同月2
334 0日,
335 甲を本件被疑事実と同旨の公訴事実により公判請求した。
336
337
338 公判前整理手続において,
339 甲及びその弁護人は,
340 「V方に侵入したことも放火したこともない。
341
342
343 彫刻は,
344 甲が盗んだものではなく,
345 友人から依頼されて売却したものである。
346
347 」旨主張した。
348
349
350 そこで,
351 検察官は,
352 甲が前記公訴事実の犯人であることを立証するため,
353 A本件前科の内容が記
354 載された判決書謄本の証拠調べを請求した。
355
356
357 〔設問1〕
358 @の逮捕及び勾留の適法性について論じなさい。
359
360
361 〔設問2〕
362 Aの判決書謄本を甲が前記公訴事実の犯人であることを立証するために用いることが許される
363 かについて論じなさい。
364
365
366
367 - 4 -
368
369