1 論文式試験問題集
2 [法律実務基礎科目(民事・刑事)]
3
4 - 1 -
5
6 [民
7
8 事]
9
10 司法試験予備試験用法文を適宜参照して,
11 以下の各設問に答えなさい。
12
13
14 〔設問1〕
15 弁護士Pは,
16 Xから次のような相談を受けた。
17
18
19 【Xの相談内容】
20 「私は,
21 自宅を建築するために,
22 平成27年6月1日,
23 甲土地の所有者であったAから,
24 売買
25 代金1000万円で甲土地を買い受け(以下「本件第1売買契約」という。
26
27 ),
28 同月30日に売買
29 代金を支払い,
30 売買代金の支払と引換えに私宛てに所有権移転登記をすることを合意しました。
31
32
33 私は,
34 平成27年6月30日,
35 売買代金1000万円を持参してAと会い,
36 Aに対して甲土地
37 の所有権移転登記を求めましたが,
38 Aから,
39 登記識別情報通知書を紛失したので,
40 もうしばらく
41 所有権移転登記を待ってほしい,
42 事業資金が必要で,
43 必ず登記をするので先にお金を払ってほし
44 いと懇願されました。
45
46 Aは,
47 大学時代の先輩で,
48 私の結婚に際し仲人をしてくれるなど,
49 長年お
50 世話になっていたので,
51 Aの言うことを信じ,
52 登記識別情報通知書が見つかり次第,
53 所有権移転
54 登記をすることを確約してもらい,
55 代金を支払いました。
56
57 しかし,
58 その後,
59 Aからの連絡はあり
60 ませんでした。
61
62
63 ところが,
64 平成27年8月上旬頃から,
65 Yが私に無断で甲土地全体を占有し始め,
66 現在も占有
67 しています。
68
69
70 私は,
71 平成27年9月1日,
72 Yが甲土地を占有していることを確認した上で,
73 Yに対してすぐ
74 に甲土地を明け渡すよう求めました。
75
76 これに対して,
77 Yは,
78 Aが甲土地の所有者であったこと,
79
80 自分が甲土地を占有していることは認めましたが,
81 Aから甲土地を買い受けて所有権移転登記を
82 経由したので,
83 自分が甲土地の所有者であるとして,
84 甲土地の明渡しを拒否し,
85 私に対して甲土
86 地の買取りを求めてきました。
87
88
89 甲土地の所有者は私ですので,
90 Yに対し,
91 甲土地について,
92 所有権移転登記と明渡しを求めた
93 いと考えています。
94
95
96 弁護士Pは,
97 【Xの相談内容】を受けて甲土地の登記事項証明書を取り寄せたところ,
98 平成27
99 年8月1日付け売買を原因とするAからYへの所有権移転登記(詳細省略)がされていることが判
100 明した。
101
102 弁護士Pは,
103 【Xの相談内容】を前提に,
104 Xの訴訟代理人として,
105 Yに対し,
106 所有権に基
107 づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権及び所有権に基づく返還請求権としての土地明
108 渡請求権を訴訟物として,
109 甲土地について所有権移転登記及び甲土地の明渡しを求める訴訟(以下
110 「本件訴訟」という。
111
112 )を提起することにした。
113
114
115 以上を前提に,
116 以下の問いに答えなさい。
117
118
119 (1)
120
121 弁護士Pは,
122 本件訴訟に先立って,
123 Yに対し,
124 甲土地の登記名義の変更,
125 新たな権利の設定及
126 び甲土地の占有移転などの行為に備え,
127 事前に講じておくべき法的手段を検討することとした。
128
129
130 弁護士Pが採るべき法的手段を2つ挙げ,
131 そのように考えた理由について,
132 それらの法的手段を
133 講じない場合に生じる問題にも言及しながら説明しなさい。
134
135
136
137 (2)
138
139 弁護士Pが,
140 本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。
141
142 )において記載すべき請求の趣旨(民
143 事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい(附帯請求及び付随的申立てを考慮する必要
144 はない。
145
146 )。
147
148
149
150 (3)
151
152 弁護士Pは,
153 本件訴状において,
154 甲土地の明渡請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条
155
156 - 2 -
157
158 第1項)として,
159 次の各事実を主張した。
160
161
162
163
164 Aは,
165 平成27年6月1日当時,
166 甲土地を所有していた。
167
168
169
170
171
172
173
174
175
176
177
178
179
180
181
182 上記イ及びウに入る具体的事実を,
183 それぞれ答えなさい。
184
185
186 〔設問2〕
187 弁護士Qは,
188 本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。
189
190
191 【Yの相談内容】
192 「Aは,
193 私の知人です。
194
195 Aは,
196 平成27年7月上旬頃,
197 事業資金が必要なので甲土地を500
198 万円で買わないかと私に持ちかけてきました。
199
200 私は,
201 同年8月1日,
202 Aから甲土地を代金500
203 万円で買い受け(以下「本件第2売買契約」という。
204
205 ),
206 売買代金を支払って所有権移転登記を経
207 由し,
208 甲土地を資材置場として使用しています。
209
210 したがって,
211 甲土地の所有者は私です。
212
213
214 上記【Yの相談内容】を前提に,
215 以下の問いに答えなさい。
216
217
218 弁護士Qは,
219 本件訴訟における答弁書(以下「本件答弁書」という。
220
221 )を作成するに当たり,
222
223 抗弁となり得る法的主張を検討した。
224
225 弁護士QがYの訴訟代理人として主張すべき抗弁の内容(当
226 該抗弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。
227
228 )を述べるとともに,
229 それが抗弁となる理
230 由について説明しなさい。
231
232
233 〔設問3〕
234 本件答弁書を受け取った弁護士Pは,
235 Xに事実関係を確認した。
236
237 Xの相談内容は以下のとおりで
238 ある。
239
240
241 【Xの相談内容】
242 「Yは,
243 既に甲土地について所有権移転登記を経由しており,
244 自分が甲土地の所有者であると
245 して,
246 平成27年9月1日,
247 甲土地を2000万円で買い取るよう求めてきました。
248
249 Yは,
250 事情
251 を知りながら,
252 甲土地を私に高値で買い取らせる目的で,
253 本件第2売買契約をして所有権移転登
254 記をしたことに間違いありません。
255
256 このようなYが甲土地の所有権を取得したことを認めること
257 はできません。
258
259
260 上記【Xの相談内容】を前提に,
261 弁護士Pは,
262 再抗弁として,
263 以下の事実を記載した準備書面を
264 作成して提出した。
265
266
267
268
269
270
271
272
273
274
275 Yは,
276 本件第2売買契約の際,
277 Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していた。
278
279
280
281 以上を前提に,
282 以下の問いに答えなさい。
283
284
285 上記エに入る具体的事実を答え,
286 そのように考えた理由を説明しなさい。
287
288
289 〔設問4〕
290 第1回口頭弁論期日において,
291 本件訴状と本件答弁書が陳述され,
292 第1回弁論準備手続期日にお
293 いて,
294 弁護士P及び弁護士Qがそれぞれ作成した準備書面が提出され,
295 弁護士Qは,
296 〔設問3〕の
297 エ及びオの各事実を否認し,
298 弁護士Pは,
299 以下の念書(斜体部分は全て手書きである。
300
301 以下「本件
302 - 3 -
303
304 念書」という。
305
306 )を提出し,
307 証拠として取り調べられた。
308
309 なお,
310 弁護士Qは,
311 本件念書の成立の真
312 正を認めた。
313
314
315 その後,
316 2回の弁論準備手続期日を経た後,
317 第2回口頭弁論期日において,
318 本人尋問が実施され,
319
320 Xは,
321 下記【Xの供述内容】のとおり,
322 Yは,
323 下記【Yの供述内容】のとおり,
324 それぞれ供述した
325 (なお,
326 Aの証人尋問は実施されていない。
327
328 )。
329
330
331
332 念書
333 A殿
334
335 今般,
336 貴殿より甲土地を買い受けましたが,
337 売却して利益が生じた
338 ときにはその3割を謝礼としてお渡しします。
339
340
341 平成27年8月1日
342
343
344 Y印
345
346 【Xの供述内容】
347 「Yは,
348 建築業者で,
349 今でも甲土地を占有し,
350 資材置場として使用しているようですが,
351 置か
352 れている資材は大した分量ではなく,
353 それ以外に運搬用のトラックが2台止まっているにすぎま
354 せん。
355
356
357 不動産業者に確認したところ,
358 平成27年7月当時の甲土地の時価は,
359 1000万円程度との
360 ことでした。
361
362
363 私は,
364 平成27年9月1日,
365 Y宅を訪れて,
366 甲土地の明渡しを求めたところ,
367 Yはこれを拒絶
368 して,
369 逆に私に2000万円で甲土地を買い取るよう求めてきましたが,
370 私は納得できませんで
371 したので,
372 その場でYの要求を拒絶しました。
373
374
375 その後,
376 私は,
377 Aに対し,
378 Yとのやりとりを説明して,
379 Aが本件第2売買契約をして,
380 甲土地
381 をYに引き渡したことについて苦情を述べました。
382
383 すると,
384 Aは,
385 私に対して謝罪し,
386 『事業資
387 金が必要だったので,
388 やむなくYに甲土地を売却してしまった。
389
390 その際,
391 既にXに甲土地を売却
392 していることをYに対して説明したが,
393 Yはそれでも構わないと言っていた。
394
395 Yから,
396 代金50
397 0万円は安いが,
398 甲土地を高く売却できたら謝礼をあげると言われたので,
399 Yにその内容の書面
400 を作成してもらった。
401
402 』と事情を説明して,
403 私に本件念書を渡してくれました。
404
405 ただ,
406 それ以降,
407
408 Aとは連絡が取れなくなりました。
409
410
411 【Yの供述内容】
412 「私は,
413 建築業者で,
414 現在,
415 甲土地を資材置場として使用しています。
416
417 本件第2売買契約に際
418 して不動産業者に確認したところ,
419 当時の甲土地の時価は,
420 1000万円程度とのことでした。
421
422
423 私は,
424 平成27年9月1日,
425 Xが自宅を訪れた際,
426 甲土地を2000万円で買い取るよう求め
427 たことはありません。
428
429 Xと話し合って,
430 Xが希望する価格で買い取ってもらえればと思って話を
431 しただけで,
432 例えば2000万円くらいではどうかと話したことはありますが,
433 最終的にXとの
434 間で折り合いがつきませんでした。
435
436
437 Aは,
438 本件第2売買契約をした時,
439 甲土地を高く転売できたときには謝礼がほしいと言うので,
440
441 本件念書を作成してAに渡しました。
442
443 その際,
444 AがXに甲土地を売却していたという話は聞いて
445 - 4 -
446
447 いません。
448
449
450 以上を前提に,
451 以下の問いに答えなさい。
452
453
454 弁護士Pは,
455 本件訴訟の第3回口頭弁論期日までに,
456 準備書面を提出することを予定している。
457
458
459 その準備書面において,
460 弁護士Pは,
461 前記【Xの供述内容】及び【Yの供述内容】と同内容のX
462 Yの本人尋問における供述並びに本件念書に基づいて,
463 〔設問3〕の再抗弁について,
464 オの事実
465 (「Yは,
466 本件第2売買契約の際,
467 Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していた。
468
469 」)
470 が認められること(Yに有利な事実に対する反論も含む。
471
472 )を中心に,
473 〔設問3〕の再抗弁につい
474 ての主張を展開したいと考えている。
475
476 弁護士Pにおいて,
477 上記準備書面に記載すべき内容を答案
478 用紙1頁程度の分量で記載しなさい。
479
480
481
482 - 5 -
483
484 [刑
485
486 事]
487
488 次の【事例】を読んで,
489 後記〔設問〕に答えなさい。
490
491
492 【事
493
494
495 例】
496 A(男性,
497 32歳,
498 暴力団甲組組員)は,
499 平成28年2月12日,
500 V(男性,
501 40歳,
502 暴力
503 団乙組幹部組員)を被害者とする殺人未遂罪の被疑事実で逮捕され,
504 同月14日から勾留され
505 た後,
506 同年3月4日にI地方裁判所に同罪で公判請求された。
507
508
509 上記公判請求に係る起訴状の公訴事実には「被告人は,
510 平成27年11月1日午後2時頃,
511
512 H県I市J町1丁目1番3号に所在する暴力団乙組事務所前路上において,
513 同事務所玄関ドア
514 前に立っていたVに対し,
515 殺意をもって,
516 持っていた回転弾倉式拳銃で弾丸3発を発射したが,
517
518 いずれも命中しなかったため,
519 同人を殺害するに至らなかった。
520
521 」旨記載されている。
522
523
524
525
526
527 公判請求までに収集された主な証拠とその概要は次のとおりであった。
528
529
530 証拠@
531
532 Vの検察官調書
533 「私は,
534 平成27年11月1日午後2時頃,
535 配下のWを連れて乙組事務所から出掛け
536 ることとした。
537
538 Wが先に玄関ドアから外に出たので,
539 私が少し遅れて玄関ドアから外に
540 出て,
541 歩き出そうとした瞬間,
542 私の左側に立っていたWが私の上半身を両腕で抱え,
543
544 の方に引っ張ったので,
545 私は,
546 W共々左側に倒れ込んだ。
547
548 倒れ込むと同時に,
549 拳銃の発
550 射音が何発か聞こえた。
551
552 玄関ドアの南側正面には道路に面した門扉があるが,
553 私は,
554
555 関ドアから出て倒れるまで,
556 門扉の方を見ていなかったし,
557 倒れた後には,
558 門扉の向こ
559 う側には誰もいなかった。
560
561 私の身長は180センチメートルである。
562
563
564
565 証拠A
566
567 W(男性,
568 25歳,
569 暴力団乙組組員)の検察官調書
570 「私は,
571 平成27年11月1日午後2時頃,
572 私が先に乙組事務所の玄関ドアから外に
573 出て,
574 左手の隅によけ,
575 Vが出てくるのを待っていた。
576
577 しばらくしてVが玄関ドアから
578 出てきたが,
579 ふと玄関ドアの南側正面にある門扉の方を見ると,
580 門扉の向こう側の右側
581 からマスクをした男が走り出てきて,
582 門扉の正面で止まり,
583 拳銃を両手で持って,
584 玄関
585 ドア前に立っていたVに銃口を向けて構えた。
586
587 私は,
588 Vが撃たれると思い,
589 とっさにV
590 の上半身に抱き付き,
591 私の方に引き倒すように引っ張った。
592
593 私とVが倒れるのと前後し
594 て,
595 『死ね。
596
597 』という男の声と同時に,
598 拳銃の発射音が複数回した。
599
600 倒れてから門扉の方
601 を見たが,
602 既に誰もいなかった。
603
604 拳銃を撃った男が誰かは分からない。
605
606
607
608 証拠B
609
610 実況見分調書(平成27年11月1日付け,
611 立会人W)
612 「本件現場は,
613 H県I市J町1丁目1番3号に所在する暴力団乙組事務所(以下「事
614 務所」という。
615
616 )玄関ドア付近である。
617
618 事務所は3階建てのビルであり,
619 南側に玄関ド
620 アがある。
621
622 事務所の敷地の周囲には高さ約2.5メートルの塀があるが,
623 南側には塀に
624 設置された門扉があり,
625 門扉の高さは約1.3メートルである。
626
627 事務所敷地南側は道路
628 に面しており,
629 門扉の正面の路上に立つと,
630 事務所玄関ドアが門扉越しに遮る物なく北
631 方向正面に見える。
632
633 門扉と玄関ドアとの距離は,
634 約3メートルである。
635
636 玄関ドアは防弾
637 仕様であり,
638 玄関ドアの中央(玄関ドア東端から西方へ約1メートルから約1.3メー
639 トル,
640 玄関ドア下端から上方へ約1.3メートルから約1.4メートルの範囲)に,
641
642 丸3個がめり込んでいた。
643
644 Wは,
645 『私がVに抱き付く前に,
646 Vはこの位置に立ってお
647 り,
648 私はこの位置に立っていた。
649
650 』と言って,
651 玄関ドア前にV役の警察官Y(身長18
652 0センチメートル)を立たせ,
653 自らは玄関ドア前の脇に立ったので,
654 それぞれの位置を
655 計測したところ,
656 V役Yの位置は,
657 玄関ドアから南側に約50センチメートル,
658 門扉か
659 ら約2.5メートルの玄関ドア正面であり,
660 門扉の南側路上から見ると,
661 弾丸の玄関ド
662
663 - 6 -
664
665 ア着弾位置はYの胸部の後方となった。
666
667 Wの位置は,
668 玄関ドア東端から東方へ約30セ
669 ンチメートル,
670 事務所建物壁から南方へ約1メートルの位置であった。
671
672 Wは,
673 『犯人
674 は,
675 門扉の外の路上に立ち,
676 拳銃を玄関ドア方向に向けて真っすぐ構えていた。
677
678 』と言
679 ったので,
680 Wが犯人と同じくらいの身長の者として選んだ犯人役の警察官Z(身長17
681 5センチメートル)を,
682 Wの説明どおりに門扉の南側路上に立たせ,
683 模擬拳銃を玄関ド
684 ア方向に真っすぐ構えさせたところ,
685 犯人役Zの立ち位置は,
686 門扉の中央正面(門扉東
687 端から西方へ約1メートル,
688 門扉から南方へ約1メートルの位置)であり,
689 銃口は門扉
690 の上端から約10センチメートル上方であり,
691 銃口から玄関ドアまでは約3メートルで
692 あった。
693
694
695 証拠C
696
697 弾丸3個
698
699 証拠D
700
701 捜査報告書
702 「暴力団乙組事務所玄関ドア東側付近に設置されていた防犯カメラの平成27年11
703 月1日午後2時頃の映像は,
704 次のとおりである。
705
706 午後1時57分頃,
707 Wが事務所玄関ド
708 アから出て,
709 同ドアの東側脇に立つ。
710
711 午後2時頃,
712 Vが同ドアから出て,
713 同ドア前に立
714 った後,
715 WがVを抱えるようにして東側に倒れ込み,
716 その直後,
717 高速度で物体が玄関ド
718 アに当たり,
719 玄関ドア表面から煙かほこりのようなものが立ち上るとともに,
720 映像が激
721 しく乱れた。
722
723 なお,
724 同カメラの映像は,
725 玄関ドア周辺しか撮影されていない。
726
727
728
729 証拠E
730
731 B(男性,
732 20歳,
733 青果店手伝い)の検察官調書
734 「私は,
735 平成27年11月1日当時,
736 甲組の組員見習として同組組員であるAの運転
737 手をしていたが,
738 同日,
739 私は,
740 Aの指示で,
741 AをH県I市J町まで車で送った。
742
743 私がA
744 の指示どおりJ町の路上に車を止めると,
745 Aは,
746 『すぐ戻ってくるから。
747
748 』と言って車か
749 ら降り,
750 どこかに行った。
751
752 その時間は午後2時頃だった。
753
754 5分ほど経過して,
755 少し遠く
756 で『パン,
757 パン』という音が聞こえ,
758 間もなく,
759 マスクをしたAが車に走って戻ってき
760 て,
761 後部座席に乗り込んだ。
762
763 その際,
764 Aは,
765 右手に拳銃を持っていた。
766
767 その後,
768 私は,
769
770 Aの指示どおりAをA方に送った。
771
772 翌2日,
773 Aの指示で,
774 AをH県K市内のレンタルボ
775 ックス店まで車で送った。
776
777
778
779 証拠F
780
781 捜査報告書
782 「Bの供述からH県K市内のレンタルボックス店を特定し,
783 同店に照会した結果,
784
785 成27年11月2日に,
786 A名義で同店のレンタルボックスを借りた者がいることが判明
787 した。
788
789 そこで,
790 平成28年1月5日,
791 捜索差押許可状に基づき,
792 A名義で賃借中の上記
793 レンタルボックスを捜索したところ,
794 封筒に入れられた回転弾倉式拳銃1丁が発見され
795 た。
796
797
798
799 証拠G
800
801 回転弾倉式拳銃1丁
802
803 証拠H
804
805 鑑定書
806 「証拠Cの弾丸3個は,
807 口径9o△△型回転弾倉式拳銃用実包の弾丸であり,
808 発射時
809 に刻まれた擦過痕が一致しているため,
810 同一の拳銃で発射されたものと認められる。
811
812
813 拠Gの回転弾倉式拳銃1丁は,
814 口径9oの△△型回転弾倉式拳銃である。
815
816 科学警察研究
817 所の技官が,
818 証拠Gの拳銃で試射し,
819 試射弾丸と証拠Cの弾丸を対照した結果,
820 試射弾
821 丸と証拠Cの弾丸の発射時の擦過痕が一致した。
822
823 よって,
824 証拠Cの弾丸3個は,
825 証拠G
826 の拳銃から発射されたものと認められる。
827
828
829
830 証拠I
831
832 捜索差押調書
833 「平成28年2月12日,
834 捜索差押許可状に基づきA方の捜索を実施したところ,
835
836 モ帳1冊が発見され,
837 本件に関係すると思料される記載があったため,
838 これを押収した。
839
840
841
842 証拠J
843
844 メモ帳1冊(2頁目に『11/1
845
846 J町1−1−3』という手書きの記載があり,
847
848
849 の下に乙組事務所周辺に似た手書きの地図が記載されている。
850
851 その他の頁は白紙である
852 - 7 -
853
854 が,
855 表紙の裏にAとCが一緒に写っている写真シールが貼付されている。
856
857
858 証拠K
859
860 C(女性,
861 25歳,
862 飲食店従業員)の警察官調書
863 「私は,
864 平成27年2月頃からAと交際しており,
865 Aが私の家に泊まっていくことも
866 ある。
867
868 Aといつ会ったかなど,
869 いちいち覚えていない。
870
871
872
873 証拠L
874
875 Aの上申書(平成28年2月26日付け)
876 (A4版のコピー用紙に証拠Jのメモ帳の2頁目を複写した書面の余白に以下の記載
877 がある。
878
879
880 「これは私が書いた犯行計画のメモに間違いない。
881
882 実行予定日と乙組事務所の住所と
883 その周辺の地図を記載した。
884
885
886
887 証拠M
888
889 Aの検察官調書(平成28年3月1日付け)
890 「事件の1週間前,
891 乙組の組員が甲組や私の悪口を言っていたという話を聞いたので,
892
893 私は頭に来て,
894 拳銃を撃って乙組の連中を脅そうと思った。
895
896 そこで,
897 私は,
898 知人から拳
899 銃を入手し,
900 平成27年11月1日,
901 Bに運転させて,
902 乙組の事務所近くまで車で行き,
903
904 午後2時頃,
905 私だけ車から降りて乙組事務所に向かった。
906
907 私は,
908 乙組事務所の門扉に近
909 づくと,
910 ズボンのポケットに入れていた拳銃を取り出し,
911 門扉前の路上から門扉の向こ
912 う側正面にある乙組事務所玄関付近を狙って拳銃を3発撃った。
913
914 目を閉じて撃ったため
915 人が事務所から出てきたことに気付かなかった。
916
917
918
919
920
921 受訴裁判所は,
922 平成28年3月7日,
923 Aに対する殺人未遂被告事件を公判前整理手続に付す
924 る決定をした。
925
926 検察官は,
927 同月18日,
928 証明予定事実記載書を同裁判所及びAの弁護人に提出
929 ・送付するとともに,
930 同裁判所に証拠@ないしH及びMの取調べを請求し,
931 Aの弁護人に当
932 該証拠を開示し,
933 Aの弁護人は,
934 同月23日,
935 同証拠の閲覧・謄写をした。
936
937 Aの弁護人は,
938
939 年4月6日,
940 検察官に類型証拠の開示請求をし,
941 検察官は,
942 同月11日,
943 同証拠を開示した。
944
945
946 Aの弁護人は,
947 逮捕直後からAとの接見を繰り返していたが,
948 当初からAが証拠Mと同旨の
949 供述をしていたため,
950 同月20日の公判前整理手続期日において,
951 「Aが拳銃を撃った犯人
952 であること(以下「犯人性」という。
953
954 )は争わないが,
955 殺意を争う。
956
957 」旨の予定主張を裁判所及
958 び検察官に明示するとともに,
959 検察官請求証拠に対する意見を述べた。
960
961
962
963
964
965 同月30日,
966 Aの弁護人がAと接見したところ,
967 Aは,
968 これまでの供述を翻し,
969 「本当は,
970
971 自分はやっていない。
972
973 名前は言えないが世話になった人から頼まれて身代わりになった。
974
975 押収
976 されたメモ帳もその人のもので,
977 私はそのメモ帳には何も書いていない。
978
979 自分にはアリバイが
980 あり,
981 犯行当日は,
982 女友達のCと,
983 C方にずっと一緒にいた。
984
985 」旨述べた。
986
987 Aの弁護人は,
988
989 年5月1日,
990 Cから事情を聞いたところ,
991 Cは,
992 「平成27年11月1日は,
993 Aと自宅にずっ
994 と一緒にいた。
995
996 警察官から取調べを受け,
997 その日のAの行動について尋ねられたが,
998 覚えてい
999 ないという話をしたかもしれない。
1000
1001 」旨述べた。
1002
1003 Aの弁護人は,
1004 Cの警察官調書の開示請求を
1005 しておらず,
1006 証拠Kを閲覧していなかったが,
1007 上記の経過を受けて,
1008 殺意は争わないが,
1009
1010 人性を争う方針を固めた。
1011
1012
1013
1014
1015
1016 平成28年5月20日の公判前整理手続期日において,
1017 検察官は,
1018 犯人性が争点となった
1019 ため,
1020 証拠I,
1021 J及びLの取調べを追加請求したが,
1022 Aの弁護人は証拠Iについては同意し,
1023
1024 証拠Jについては異議あり,
1025 証拠Lについては不同意である旨意見を述べた。
1026
1027
1028 その後,
1029 数回の公判前整理手続期日を経て,
1030 同年6月15日に,
1031 裁判所は,
1032 証拠決定をし,
1033
1034 争点はAの犯人性であること及び証拠Eの採用を留保し,
1035 Bの証人尋問を実施すること等の証
1036 拠の整理結果を確認して審理計画を策定し,
1037 公判前整理手続を終結した。
1038
1039 公判期日は,
1040 同年7
1041 月1日から同月6日までと定められた。
1042
1043
1044
1045 〔設問1〕
1046 下線部に関し,
1047 Aの弁護人は,
1048 証拠Mと同旨のA供述を基に,
1049 Aの殺意について,
1050 どのような
1051 - 8 -
1052
1053 事実上の主張をすべきか,
1054 殺意の概念に言及しつつ答えなさい。
1055
1056
1057 〔設問2〕
1058 下線部に関し,
1059 検察官は,
1060 証拠Bの実況見分調書を「犯行現場の状況等」という立証趣旨で証
1061 拠請求したところ,
1062 Aの弁護人が下線部において,
1063 「下線部及びは立会人の現場供述である
1064 ため,
1065 証拠Bは不同意である。
1066
1067 なお,
1068 作成の真正も争う。
1069
1070 」旨の意見を述べた。
1071
1072 これに対し,
1073 検察
1074 官は,
1075 証拠Bの証拠請求を維持したいと考えた。
1076
1077
1078 (1)
1079
1080 検察官は,
1081 裁判長から下線部及びが現場供述であるか否かについて意見を求められた場
1082
1083 合,
1084 どのような意見を述べるべきか,
1085 理由を付して答えなさい。
1086
1087
1088 (2)
1089
1090 Aの弁護人が,
1091 証拠Bの実況見分調書について不同意意見を維持した場合,
1092 検察官は,
1093 どの
1094
1095 ような対応をとるべきか,
1096 答えなさい。
1097
1098
1099 〔設問3〕
1100 Aの弁護人は,
1101 下線部の弁護方針の下,
1102 それまでの犯人性についての主張を変更し,
1103 Aが犯人
1104 ではない旨主張し,
1105 Cの証言により,
1106 Aが犯行当時C方にいた事実を立証したいと考えた。
1107
1108 Aの弁
1109 護人が,
1110 下線部以後の公判前整理手続において行うべき手続は何か。
1111
1112 公判前整理手続に関する条
1113 文上の根拠を挙げて,
1114 手続内容を簡潔に列挙しなさい。
1115
1116
1117 〔設問4〕
1118 (1)
1119
1120 下線部に関し,
1121 仮に証拠Lが存在しなかった場合,
1122 証拠I及びJから「Aが犯人である事
1123
1124 実」がどのように推認されるか。
1125
1126 証拠@ないしHから何者かが公訴事実記載の犯行に及んだこ
1127 とが認められることを前提に,
1128 検察官の想定する推認過程について答えなさい。
1129
1130 なお,
1131 証拠J
1132 の2頁の記載は,
1133 対照可能な特徴を有する文字が少ないため筆跡鑑定は実施できなかったもの
1134 とする。
1135
1136
1137 (2)
1138
1139 証拠I及びJに加えて,
1140 証拠Lも併せて考慮することによって,
1141 小問(1)で答えた「Aが犯人
1142
1143 である事実」を推認する過程にどのような違いが生じるか答えなさい。
1144
1145
1146 〔設問5〕
1147 (1)
1148
1149 第1回公判期日において,
1150 Bの証人尋問が実施され,
1151 検察官が尋問の冒頭で以下の質問をし
1152
1153 たところ,
1154 弁護人が誘導尋問である旨の異議を申し立てた。
1155
1156 検察官は,
1157 異議には理由がないと
1158 述べた場合,
1159 裁判所は,
1160 その申立てに対しどのような決定をすべきか,
1161 理由を付して答えなさ
1162 い。
1163
1164
1165 検察官:「それでは,
1166 証人が,
1167 平成27年11月1日に,
1168 被告人を乗せて車を運転したときのこ
1169 とについてお尋ねします。
1170
1171
1172 (2)
1173
1174 第2回公判期日において,
1175 Cの証人尋問が実施され,
1176 Cは,
1177 弁護人の主尋問において,
1178 「平成
1179
1180 27年11月1日,
1181 Aは,
1182 一日中,
1183 私の家で私と一緒におり,
1184 外出したこともなかった。
1185
1186 」旨証
1187 言し,
1188 検察官の反対尋問において,
1189 「Aが起訴される前に,
1190 私は警察官の取調べを受けたが,
1191
1192 のような話をしたのか覚えていないし,
1193 その時,
1194 警察官が調書を作成したかどうかも覚えてい
1195 ない。
1196
1197 」旨証言した。
1198
1199 検察官は,
1200 更にCの記憶喚起に努めたが,
1201 その証言内容に変更がなかった
1202 ため,
1203 裁判長に許可を求めることなく,
1204 Cに証拠KのCの署名押印部分を示そうとした。
1205
1206
1207 このような調書の一部を示す行為は,
1208 検察官の反対尋問において許されるか,
1209 条文上の根拠
1210 に言及しつつ結論とその理由を答えなさい。
1211
1212
1213
1214 - 9 -
1215
1216