1 平成28年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨
2 [憲
3
4 法]
5
6 次の文章を読んで,
7 後記の〔設問〕に答えなさい。
8
9
10 A市は,
11 10年前に,
12 少子化による人口減少に歯止めをかけるためA市少子化対策条例(以下
13 「本件条例」という。
14
15 )を制定し,
16 それ以降,
17 様々な施策を講じてきた。
18
19 その一つに,
20 結婚を希望
21 する独身男女に出会いの場を提供したり,
22 結婚相談に応じたりする事業(以下これらを「結婚支援
23 事業」という。
24
25 )を行うNPO法人等に対する助成があった。
26
27 しかし,
28 A市では,
29 近年,
30 他市町村
31 に比べ少子化が急速に進行したため,
32 本件条例の在り方が見直されることになった。
33
34 その結果,
35
36 件条例は,
37 未婚化・晩婚化の克服と,
38 安心して家庭や子どもを持つことができる社会の実現を目指
39 す内容に改正され,
40 結婚支援事業を行うNPO法人等に対する助成についても,
41 これまで十分な効
42 果を上げてこなかったことを踏まえ,
43 成婚数を上げることを重視する方向で改められた。
44
45 これに伴
46 い,
47 助成の実施について定めるA市結婚支援事業推進補助金交付要綱も改正され,
48 助成に際し,
49
50 「申請者は,
51 法律婚が,
52 経済的安定をもたらし,
53 子どもを生みやすく,
54 育てやすい環境の形成に資
55 することに鑑み,
56 自らの活動を通じ,
57 法律婚を積極的に推進し,
58 成婚数を上げるよう力を尽くしま
59 す。
60
61 」という書面(以下「本件誓約書」という。
62
63 )を提出することが新たに義務付けられた。
64
65
66 結婚支援事業を行っているNPO法人Xは,
67 本件条例の制定当初から助成を受けており,
68 助成は
69 活動資金の大部分を占めていた。
70
71 しかし,
72 Xは,
73 結婚に関する価値観は個人の自由な選択に委ねる
74 べきであるから,
75 結婚の形にはこだわらない活動方針を採用しており,
76 法律婚だけでなく,
77 事実婚
78 を望む者に対しても,
79 広く男女の出会いの場を提供し,
80 相談に応じる事業を行っていた。
81
82 このため,
83
84 Xは,
85 改正後の本件条例に基づく助成の申請に際し,
86 本件誓約書を提出できず,
87 申請を断念したの
88 で,
89 A市からの助成は受けられなくなった。
90
91
92 そこで,
93 Xは,
94 A市が助成の要件として本件誓約書を提出させることは,
95 自らの方針に沿わない
96 見解を表明させるものであり,
97 また,
98 助成が受けられなくなる結果を招き,
99 Xの活動を著しく困難
100 にさせるため,
101 いずれも憲法上問題があるとして,
102 訴訟を提起しようとしている。
103
104
105 〔設問〕
106 Xの立場からの憲法上の主張とこれに対して想定される反論との対立点を明確にしつつ,
107 あな
108 た自身の見解を述べなさい。
109
110 なお,
111 条例と要綱の関係及び訴訟形態の問題については論じなくて
112 よい。
113
114
115
116 (出題の趣旨)
117 本問は,
118 消極的表現の自由(憲法第21条第1項)及び結社の活動の自由(同)
119 に対する制約の合憲性に関する出題である。
120
121 ただし,
122 ここでは,
123 私的団体の活動に
124 対する政府による助成の条件付けが論点となっており,
125 これを踏まえた検討が求め
126 られる。
127
128 現代国家において,
129 国や地方自治体は様々な給付活動を行うが,
130 その際,
131
132 一定の条件を付すことがあり,
133 その条件付けが,
134 私人の憲法上の権利への制約とな
135 る場合があることに注意する必要がある。
136
137
138 Xとしては,
139 まず,
140 @結婚に関する価値観は個人の自由な選択に委ねるべきであ
141 るとして,
142 結婚という形にはこだわらない活動方針を採用しているところ,
143 本件誓
144 約書により法律婚の推進を積極的に支持するよう求められることについては,
145 その
146
147 法人・団体の基本方針に沿わない見解を表明させるものであって,
148 Xの消極的表現
149 の自由を侵害する,
150 との意見主張が考えられる。
151
152 他の議論も考えられないではない
153 が,
154 そうした主張が最も直裁であり,
155 的を得たものとなろう。
156
157 次に,
158 A本件誓約書
159 を提出することができず,
160 その結果助成が受けられなかったことについては,
161 Xの
162 活動の自由を著しく困難にさせ,
163 結社としての活動の自由を侵害する,
164 との違憲主
165 張が考えられる。
166
167
168 これに対し,
169 解答者としては,
170 A市の側から想定される反論を,
171 助成の性質を踏
172 まえつつ明確にした上で,
173 基本的な判例・学説の知識を前提にしながら,
174 説得力の
175 ある形で自身の見解を述べることが求められる。
176
177
178
179 [行政法]
180 株式会社X(代表取締役はA)は,
181 Y県で飲食店Bを経営しているところ,
182 平成28年3月1日,
183
184 B店において,
185 Xの従業員Cが未成年者(20歳未満の者)であるDら4名(以下「Dら」とい
186 う。
187
188 )にビールやワイン等の酒類を提供するという事件が起きた。
189
190
191 Y県公安委員会は,
192 Xに対し,
193 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 す る 法 律 (以
194 下「法」という。
195
196 【資料1】参照。
197
198 )第34条第2項に基づく営業停止処分をするに当たり,
199 法第
200 41条及び行政手続法所定の聴聞手続を実施した。
201
202 聴聞手続においては,
203 以下のとおりの事実が明
204 らかになった。
205
206
207 @
208
209 未成年者の飲酒に起因する事故等が社会的な問題となり,
210 飲食店業界においても,
211 未成年者
212 の飲酒防止のために積極的な取組が行われているところ,
213 B店では,
214 未成年者に酒類を提供し
215 ないよう,
216 客に自動車運転免許証等を提示させて厳格に年齢確認を実施していた。
217
218
219
220 A
221
222 事件当日には,
223 未成年者であるDらとその友人の成年者であるEら4名(以下「Eら」とい
224 う。
225
226 )が一緒に来店したために,
227 Cは,
228 Dらが未成年者であることを確認した上で,
229 Dらのグ
230 ループとEらのグループを分けて,
231 それぞれ別のテーブルに案内した。
232
233
234
235 B
236
237 Cは,
238 Dらのテーブルには酒類を運ばないようにしたが,
239 二つのテーブルが隣接していた上
240 に,
241 Cの監視が行き届かなかったこともあって,
242 DらはEらから酒類を回してもらい,
243 飲酒に
244 及んだ。
245
246
247
248 C
249
250 その後,
251 B店では,
252 このような酒類の回し飲みを防ぐために,
253 未成年者と成年者とでフロア
254 を分けるといった対策を実施した。
255
256
257
258 聴聞手続に出頭したAも,
259 これらの事実について,
260 特に争うところはないと陳述した。
261
262 その後,
263
264 聴聞手続の結果を受けて,
265 Y県公安委員会は,
266 法第34条第2項に基づき,
267 Xに対し,
268 B店に係る
269 飲食店営業の全部を3か月間停止することを命じる行政処分(以下「本件処分」という。
270
271 )をした。
272
273
274 その際,
275 本件処分に係る処分決定通知書には,
276 「根拠法令等」として「法第32条第3項,
277 第2
278 2条第6号違反により,
279 法第34条第2項を適用」,
280 「処分の内容」として「平成28年5月1日
281 から同年7月31日までの間(3か月間),
282 B店に係る飲食店営業の全部の停止を命ずる。
283
284 」,
285
286 「処分の理由」として,
287 「Xは,
288 平成28年3月1日,
289 B店において,
290 同店従業員Cをして,
291 Dら
292 に対し,
293 同人らが未成年者であることを知りながら,
294 酒類であるビール及びワイン等を提供したも
295 のである。
296
297 」と記されてあった。
298
299
300 Y県公安委員会は,
301 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令
302 等の基準」(以下「本件基準」という。
303
304 【資料2】参照)を定めて公表しているところ,
305 本件基準
306 によれば,
307 未成年者に対する酒類提供禁止違反(法第32条第3項,
308 第22条第6号)の量定は
309 「Bランク」であり,
310 「40日以上6月以下の営業停止命令。
311
312 基準期間は,
313 3月。
314
315 」と定められて
316 いた(本件基準1,
317 別表[飲食店営業]〈法(中略)の規定に違反する行為〉(10))。
318
319
320 Aは,
321 処分決定通知書を本件基準と照らし合わせてみても,
322 どうしてこのように重い処分になる
323 のか分からないとして,
324 本件処分に強い不満を覚えるとともに,
325 仮に,
326 B店で再び未成年者に酒類
327 が提供されて再度の営業停止処分を受ける事態になった場合には,
328 本件基準2の定める加重規定で
329 ある「最近3年間に営業停止命令を受けた者に対し営業停止命令を行う場合の量定は,
330 (中略)当
331 該営業停止命令の処分事由について1に定める量定の長期及び短期にそれぞれ最近3年間に営業停
332 止命令を受けた回数の2倍の数を乗じた期間を長期及び短期とする。
333
334 」が適用され,
335 Xの経営に深
336 刻な影響が及ぶおそれがあるかもしれないことを危惧した。
337
338
339 そこで,
340 Xは,
341 直ちに,
342 Y県を被告として本件処分の取消訴訟を提起するとともに,
343 執行停止の
344
345 申立てをしたが,
346 裁判所は「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」とは認められないとして,
347
348 この申立てを却下した。
349
350
351 Xの立場に立って,
352 以下の設問に答えなさい。
353
354
355 なお,
356 法の抜粋を【資料1】,
357 本件基準の抜粋を【資料2】として掲げるので,
358 適宜参照しなさ
359 い。
360
361
362 〔設問1〕
363 本件処分の取消訴訟の係属中に営業停止期間が満了した後には,
364 いかなる訴訟要件が問題とな
365 り得るか。
366
367 また,
368 当該訴訟要件が満たされるためにXはどのような主張をすべきか,
369 想定される
370 Y県の反論を踏まえつつ検討しなさい。
371
372
373 〔設問2〕
374 本件処分の取消訴訟につき,
375 本案の違法事由としてXはどのような主張をすべきか,
376 手続上の
377 違法性と実体上の違法性に分けて,
378 想定されるY県の反論を踏まえつつ検討しなさい。
379
380 なお,
381
382 件処分について行政手続法が適用されること,
383 問題文中の@からCまでの各事実については当事
384 者間に争いがないことをそれぞれ前提にすること。
385
386
387
388 【資料1】
389
390
391 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)
392 (抜粋)
393
394 (禁止行為)
395 第22条
396
397 風俗営業を営む者は,
398 次に掲げる行為をしてはならない。
399
400
401
402 一〜五
403
404
405 (略)
406
407 営業所で二十歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること。
408
409
410
411 (深夜における飲食店営業の規制等)
412 第32条
413 1・2
414
415
416 (略)
417
418 第22条(第3号を除く。
419
420 )の規定は,
421 飲食店営業を営む者について準用する。
422
423 (以下略)
424
425 (指示等)
426 第34条
427
428
429 (略)
430
431
432
433 公安委員会は,
434 飲食店営業者〔(注)「飲食店営業者」とは,
435 「飲食店営業を営む者」をいう。
436
437
438 若しくはその代理人等が当該営業に関し法令(中略)の規定に違反した場合において,
439 (中略)少
440 年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき(中略)は,
441 当該飲食店営業者に対し,
442
443 当該施設を用いて営む飲食店営業について,
444 6月を超えない範囲内で期間を定めて営業の全部又は
445 一部の停止を命ずることができる。
446
447
448
449 (聴聞の特例)
450 第41条
451
452 公安委員会は,
453 (中略)第34条第2項,
454 (中略)の規定により営業の停止を(中略)命
455
456 じようとするときは,
457 行政手続法 (平成5年法律第88号)第13条第1項の規定による意見陳
458 述のための手続の区分にかかわらず,
459 聴聞を行わなければならない。
460
461
462 2〜4(略)
463 【資料2】
464
465
466 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令等の基準(抜粋)
467
468 [飲食店営業]
469 (量定)
470
471
472 営業停止命令の量定の区分は,
473 次のとおりとし,
474 各処分事由に係る量定は,
475 別表に定めるところ
476 によるものとする。
477
478
479 Aランク
480
481 6月の営業停止命令。
482
483
484
485 Bランク
486
487 40日以上6月以下の営業停止命令。
488
489 基準期間は3月。
490
491
492
493 Cランク〜H3ランク
494
495 (略)
496
497 (常習違反加重)
498
499
500 最近3年間に営業停止命令を受けた者に対し営業停止命令を行う場合の量定は,
501 その処分事由に
502 係る量定がAランクに相当するときを除き,
503 当該営業停止命令の処分事由について1に定める量定
504 の長期及び短期にそれぞれ最近3年間に営業停止命令を受けた回数の2倍の数を乗じた期間を長期
505 及び短期とする。
506
507 ただし,
508 その長期は,
509 法定の期間を超えることができない。
510
511
512
513 (営業停止命令に係る期間の決定)
514
515
516 営業停止命令により営業の停止を命ずる期間は,
517 次のとおりとする。
518
519
520 (1) 原則として,
521 量定がAランクに相当するもの以外のものについて営業停止命令を行う場合は,
522
523 1に定める基準期間(2に規定する場合は当該処分事由について定められた基準期間の2倍の期
524
525 間を基準期間とする。
526
527 )によることとする。
528
529
530 (2) 量定がAランクに相当するもの以外のものについて営業停止命令を行う場合において次に掲げ
531 るような処分を加重し,
532 又は軽減すべき事由があるときは,
533 (1)にかかわらず,
534 情状により,
535
536 に定める量定の範囲内において加重し,
537 又は軽減するものとする。
538
539
540
541
542 処分を加重すべき事由とは,
543 例えば,
544 次のようなものである。
545
546
547 (ア) 最近3年間に同一の処分事由により行政処分に処せられたこと。
548
549
550 (イ) 指示処分の期間中にその処分事由に係る法令違反行為と同種の法令違反行為を行ったこと。
551
552
553 (ウ) 処分事由に係る行為の態様が著しく悪質であること。
554
555
556 (エ) 従業者の大多数が法令違反行為に加担していること。
557
558
559 (オ) 悔悛の情が見られないこと。
560
561
562 (カ) 付近の住民からの苦情が多数あること。
563
564
565 (キ) 結果が重大であり,
566 社会的反響が著しく大きいこと。
567
568
569 (ク) 16歳未満の者の福祉を害する法令違反行為であること。
570
571
572
573
574
575 処分を軽減すべき事由とは,
576 例えば,
577 次のようなものである。
578
579
580 (ア) 他人に強いられて法令違反行為を行ったこと。
581
582
583 (イ) 営業者(法人にあっては役員)の関与がほとんどなく,
584 かつ,
585 処分事由に係る法令違反行
586 為を防止できなかったことについて過失がないと認められること。
587
588
589 (ウ) 最近3年間に処分事由に係る法令違反行為を行ったことがなく,
590 悔悛の情が著しいこと。
591
592
593 (エ) 具体的な営業の改善措置を自主的に行っていること。
594
595
596
597 (3) 量定がAランクに相当するもの以外のものについて,
598 処分を軽減すべき事由が複数あり,
599 営業
600 停止処分を行うことが著しく不合理であると認められるときは,
601 (1)(2)にかかわらず,
602 営業停止
603 処分を行わないこととする。
604
605
606 別表(抜粋)
607 [飲食店営業]
608 <法若しくは法に基づく命令又は法に基づく条例の規定に違反する行為>
609 (10)
610
611 未成年者に対する酒類・たばこ提供禁止違反(第32条第3項,
612 第22条第6号)の量定
613
614
615
616 ランク
617
618 (出題の趣旨)
619 本問は,
620 公安委員会が,
621 未成年者に酒類を提供した飲食店に対して行った風俗営
622 業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。
623
624 )に基づく
625 営業停止処分に関する法的争点について検討させるものである。
626
627
628 設問1は,
629 営業停止期間の経過により狭義の訴えの利益(行政事件訴訟法第9条
630 第1項括弧書き)が消滅するか否かを問うものである。
631
632 狭義の訴えの利益に関する
633 一般論を展開した上で,
634 過去の一定期間内に処分を受けたことを理由として処分を
635 加重する旨の加重規定が法令ではなく,
636 処分基準に定められている場合において,
637
638 処分の直接的効果が営業停止期間の経過によりなくなった後においても,
639 なお当該
640 処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものといえるかを検討する
641 ことが求められている。
642
643
644 この論点に関する近時の重要判例として最高裁判所平成27年3月3日第三小法
645 廷判決・民集69巻2号143頁がある。
646
647 同判決は,
648 本問と同様に,
649 処分の加重規
650 定が処分基準に定められている事案であり,
651 行政手続法第12条第1項により定め
652
653 られ公にされている処分基準に一種の拘束力を認めて,
654 処分の直接的効果が期間の
655 経過によりなくなった後においても,
656 なお一定の期間,
657 狭義の訴えの利益が存続す
658 ることを明らかにしたものである。
659
660 同判決の正しい理解を前提として,
661 処分基準の
662 内容及び性質を踏まえた検討を加えていることは加点事由となる。
663
664
665 設問2は,
666 営業停止処分の適法性について問うものであるが,
667 手続的瑕疵と実体
668 的瑕疵の二つに分けて検討することが求められている。
669
670
671 手続的瑕疵については,
672 不利益処分の理由提示に関する重要判例である最高裁判
673 所平成23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁を踏まえて,
674
675 政手続法第14条第1項本文に基づき要求される理由提示の程度に関する一般論を
676 展開した上で,
677 営業停止処分につき処分基準の適用関係が示されていない本件の事
678 情の下,
679 理由提示の瑕疵が認められるか否かや,
680 理由提示の瑕疵を肯定する場合に
681 はこれが処分の取消事由となるかを検討することが求められている。
682
683 上記平成23
684 年判決の事例との相違について検討を加えていることは加点事由となる。
685
686
687 また,
688 実体的瑕疵については,
689 公安委員会がした営業停止処分が処分基準に即し
690 ているか否かを検討した上で,
691 処分基準からの逸脱が裁量の逸脱・濫用を導くか否
692 かについて検討することが求められている。
693
694
695 処分基準は行政規則にすぎないとはいえ,
696 合理的な理由なく処分基準から逸脱す
697 ることは,
698 信義則や平等原則の観点から処分の違法をもたらすとも考えられる。
699
700
701 のような観点から,
702 Xに有利となる事情とXに不利となる事情をそれぞれ踏まえた
703 上で,
704 処分基準に即して裁量権の逸脱・濫用の有無を検討することが求められてい
705 る。
706
707
708
709 [民
710
711 法]
712
713 次の文章を読んで,
714 後記の〔設問〕に答えなさい。
715
716
717 【事実】
718 1.Aは,
719 自宅の一部を作業場として印刷業を営んでいたが,
720 疾病により約3年間休業を余儀なく
721 され,
722 平成27年1月11日に死亡した。
723
724 Aには,
725 自宅で同居している妻B及び商社に勤務して
726 いて海外に赴任中の子Cがいた。
727
728 Aの財産に関しては,
729 遺贈により,
730 Aの印刷機械一式(以下「甲
731 機械」という。
732
733 )は,
734 学生の頃にAの作業をよく手伝っていたCが取得し,
735 自宅及びその他の財
736 産は,
737 Bが取得することとなった。
738
739
740 2.その後,
741 Bが甲機械の状況を確認したところ,
742 休業中に数箇所の故障が発生していることが判
743 明した。
744
745 Bは,
746 現在海外に赴任しているCとしても甲機械を使用するつもりはないだろうと考え,
747
748 型落ち等による減価が生じないうちに処分をすることにした。
749
750
751 そこで,
752 Bは,
753 平成27年5月22日,
754 近隣で印刷業を営む知人のDに対し,
755 甲機械を500
756 万円で売却した(以下では,
757 この売買契約を「本件売買契約」という。
758
759 )。
760
761 この際,
762 Bは,
763 Dに対
764 し,
765 甲機械の故障箇所を示した上で,
766 これを稼働させるためには修理が必要であることを説明し
767 たほか,
768 甲機械の所有者はCであること,
769 甲機械の売却について,
770 Cの許諾はまだ得ていないも
771 のの,
772 確実に許諾を得られるはずなので特に問題はないことを説明した。
773
774 同日,
775 本件売買契約に
776 基づき,
777 甲機械の引渡しと代金全額の支払がされた。
778
779
780 3.Dは,
781 甲機械の引渡しを受けた後,
782 30万円をかけて甲機械を修理し,
783 Dが営む印刷工場内で
784 甲機械を稼働させた。
785
786
787 4.Cは,
788 平成27年8月に海外赴任を終えて帰国したが,
789 同年9月22日,
790 Bの住む実家に立ち
791 寄った際に,
792 甲機械がBによって無断でDに譲渡されていたことに気が付いた。
793
794 そこで,
795 Cは,
796
797 Dに対し,
798 甲機械を直ちに返還するように求めた。
799
800
801 Dは,
802 甲機械を取得できる見込みはないと考え,
803 同月30日,
804 Cに甲機械を返還した上で,
805
806 に対し,
807 本件売買契約を解除すると伝えた。
808
809
810 その後,
811 Dは,
812 甲機械に代替する機械設備として,
813 Eから,
814 甲機械の同等品で稼働可能な中古
815 の印刷機械一式(以下「乙機械」という。
816
817 )を540万円で購入した。
818
819
820 5.Dは,
821 Bに対し,
822 支払済みの代金500万円について返還を請求するとともに,
823 甲機械に代え
824 て乙機械を購入するために要した増加代金分の費用(40万円)について支払を求めた。
825
826 さらに,
827
828 Dは,
829 B及びCに対し,
830 甲機械の修理をしたことに関し,
831 修理による甲機械の価値増加分(50
832 万円)について支払を求めた。
833
834
835 これに対し,
836 Bは,
837 本件売買契約の代金500万円の返還義務があることは認めるが,
838 その余
839 の請求は理由がないと主張し,
840 Cは,
841 Dの請求は理由がないと主張している。
842
843 さらに,
844 B及びC
845 は,
846 甲機械の使用期間に応じた使用料相当額(25万円)を支払うようDに求めることができる
847 はずであるとして,
848 Dに対し,
849 仮にDの請求が認められるとしても,
850 Dの請求が認められる額か
851 らこの分を控除すべきであると主張している。
852
853
854 〔設問〕
855 【事実】5におけるDのBに対する請求及びDのCに対する請求のそれぞれについて,
856 その法
857 的構成を明らかにした上で,
858 それぞれの請求並びに【事実】5におけるB及びCの主張が認めら
859 れるかどうかを検討しなさい。
860
861
862
863 (出題の趣旨)
864 本設問は,
865 @他人物売買において売主が権利を買主に移転することができなかっ
866 たことを理由に買主が契約を解除した場合に,
867 買主は,
868 売主に対してどのような請
869 求をすることができるか(特に,
870 他人物売買であることについて買主が悪意である
871 が,
872 売主から確実に権利を移転することができると説明されていた点をどのように
873 評価するか,
874 ),
875 A他人物売買が解除された場合に,
876 買主と目的物の所有者との間で
877 は,
878 どのような清算をするのが相当か,
879 さらには,
880 Bこれらの検討を通じて,
881 他人
882 物売買の売主,
883 買主,
884 目的物の所有者の三者間の利害調整をいかにして図るのが相
885 当かを問うものであり,
886 これにより,
887 幅広い法的知識や,
888 事案に即した分析能力,
889
890 論理的な思考力があるかどうかを試すものである。
891
892
893
894 [商
895
896 法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,
897 3:7)
898
899 次の文章を読んで,
900 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
901
902
903 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
904
905 )は,
906 平成18年9月に設立された株式会社であり,
907 太陽
908 光発電システムの販売・施工業を営んでいる。
909
910 甲社の発行済株式の総数は1000株であり,
911
912 のうちAが800株,
913 Bが200株を有している。
914
915 甲社は,
916 設立以来,
917 AとBを取締役とし,
918
919 を代表取締役としてきた。
920
921 なお,
922 甲社は,
923 取締役会設置会社ではない。
924
925
926 2.Aは,
927 前妻と死別していたが,
928 平成20年末に,
929 甲社の経理事務員であるCと再婚した。
930
931 甲社
932 は,
933 ここ数年,
934 乙株式会社(以下「乙社」という。
935
936 )が新規に開発した太陽光パネルを主たる取
937 扱商品とすることで,
938 その業績を大きく伸ばしていた。
939
940 ところが,
941 平成27年12月20日,
942
943 は,
944 心筋梗塞の発作を起こし,
945 意識不明のまま病院に救急搬送され,
946 そのまま入院することとな
947 ったが,
948 甲社は,
949 Aの入院を取引先等に伏せていた。
950
951
952 3.平成27年12月25日は,
953 甲社が乙社から仕入れた太陽光パネルの代金2000万円の支払
954 日であった。
955
956 かねてより,
957 Aの指示に従って,
958 手形を作成して取引先に交付することもあったC
959 は,
960 当該代金の支払のため,
961 日頃から保管していた手形用紙及び甲社の代表者印等を独断で用い
962 て,
963 手形金額欄に2000万円,
964 振出日欄に平成27年12月25日,
965 満期欄に平成28年4月
966 25日,
967 受取人欄に乙社と記載するなど必要な事項を記載し,
968 振出人欄に「甲株式会社代表取締
969 役A」の記名捺印をして,
970 約束手形(以下「本件手形」という。
971
972 )を作成し,
973 集金に来た乙社の
974 従業員に交付した。
975
976
977 乙社は,
978 平成28年1月15日,
979 自社の原材料の仕入先である丙株式会社(以下「丙社」とい
980 う。
981
982 )に,
983 その代金支払のために本件手形を裏書して譲渡した。
984
985
986 4.Aは,
987 意識を回復することのないまま,
988 平成28年1月18日に死亡した。
989
990 これにより,
991 Bが
992 適法に甲社の代表権を有することとなったが,
993 甲社の業績は,
994 Aの急死により,
995 急速に悪化し始
996 めた。
997
998
999 Bは,
1000 Cと相談の上,
1001 丁株式会社(以下「丁社」という。
1002
1003 )に甲社を吸収合併してもらうこと
1004 によって窮地を脱しようと考え,
1005 丁社と交渉したところ,
1006 平成28年4月下旬には,
1007 丁社を吸収
1008 合併存続会社,
1009 甲社を吸収合併消滅会社とし,
1010 合併対価を丁社株式,
1011 効力発生日を同年6月1日
1012 とする吸収合併契約(以下「本件吸収合併契約」という。
1013
1014 )を締結するに至った。
1015
1016
1017 5.Aには前妻との間に生まれたD及びEの2人の子がおり,
1018 Aの法定相続人は,
1019 C,
1020 D及びEの
1021 3人である。
1022
1023 Aが遺言をせずに急死したため,
1024 Aの遺産分割協議は紛糾した。
1025
1026 そして,
1027 平成28
1028 年4月下旬頃には,
1029 C,
1030 D及びEの3人は,
1031 何の合意にも達しないまま,
1032 互いに口もきかなくな
1033 っていた。
1034
1035
1036 6.Bは,
1037 本件吸収合併契約について,
1038 C,
1039 D及びEの各人にそれぞれ詳しく説明し,
1040 賛否の意向
1041 を打診したところ,
1042 Cからは直ちに賛成の意向を示してもらったが,
1043 DとEからは賛成の意向を
1044 示してもらうことができなかった。
1045
1046
1047 7.甲社は,
1048 本件吸収合併契約の承認を得るために,
1049 平成28年5月15日に株主総会(以下「本
1050 件株主総会」という。
1051
1052 )を開催した。
1053
1054 Bは,
1055 甲社の代表者として,
1056 本件株主総会の招集通知をB
1057 とCのみに送付し,
1058 本件株主総会には,
1059 これを受領したBとCのみが出席した。
1060
1061 A名義の株式に
1062 ついて権利行使者の指定及び通知はされていなかったが,
1063 Cは,
1064 議決権行使に関する甲社の同意
1065 を得て,
1066 A名義の全株式につき賛成する旨の議決権行使をした。
1067
1068 甲社は,
1069 B及びCの賛成の議決
1070 権行使により本件吸収合併契約の承認決議が成立したものとして,
1071 丁社との吸収合併の手続を進
1072 めている。
1073
1074 なお,
1075 甲社の定款には,
1076 株主総会の定足数及び決議要件について,
1077 別段の定めはない。
1078
1079
1080
1081 〔設問1〕
1082 丙社が本件手形の満期に適法な支払呈示をした場合に,
1083 甲社は,
1084 本件手形に係る手形金支払請求
1085 を拒むことができるか。
1086
1087
1088 〔設問2〕
1089 このような吸収合併が行われることに不服があるDが会社法に基づき採ることができる手段につ
1090 いて,
1091 吸収合併の効力発生の前と後に分けて論じなさい。
1092
1093 なお,
1094 これを論ずるに当たっては,
1095 本件
1096 株主総会の招集手続の瑕疵の有無についても,
1097 言及しなさい。
1098
1099
1100
1101 (出題の趣旨)
1102 本問は,
1103 他人による手形振出の効力,
1104 株式の共有者に対する会社からの通知,
1105
1106 式が共有されている場合における株主権の行使方法,
1107 株主総会の決議の瑕疵を争う
1108 訴え,
1109 合併の差止請求,
1110 合併無効の訴え等についての基本的な知識・理解等を問う
1111 ものである。
1112
1113
1114 解答に際しては,
1115 設問1については,
1116 手形署名(記名捺印)の代行による手形行
1117 為の有効性及び有効でないとした場合における被偽造者の手形債務の負担の有無を,
1118
1119 設問2については,
1120 株主総会の招集通知についての会社法第126条第4項の規定
1121 の適用及び株式の共有者のうちの一人による議決権の行使につき会社が同意した場
1122 合(会社法第106条ただし書)に当該議決権の行使が適法とされるための要件(最
1123 高裁平成27年2月19日判決・民集69巻1号25頁参照)を前提に,
1124 吸収合併
1125 の効力発生前においては株主総会の決議の取消しの訴え(会社法第831条第1項
1126 第1号)の可否及び合併の差止請求(会社法第784条の2)の可否等を,
1127 吸収合
1128 併の効力発生後においては合併無効の訴え(会社法第828条第1項第7号)の可
1129 否等を,
1130 それぞれ事案に即して整合的に論述することが求められる。
1131
1132
1133
1134 [民事訴訟法]
1135
1136 〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,
1137 3:2)
1138 次の文章を読んで,
1139 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1140
1141
1142 【事例】
1143 Xは,
1144 XからY,
1145 YからYへと経由された甲土地の各所有権移転登記について,
1146 甲土地の所有権
1147 に基づき,
1148 Y及びY(以下「Yら」という。
1149
1150
1151 )を被告として,
1152 各所有権移転登記の抹消登記手続を
1153 求める訴えを提起した(以下,
1154 当該訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。
1155
1156 )。
1157
1158 本件訴訟におけるX
1159 及びYらの主張は次のとおりであった。
1160
1161
1162 X の 主 張:甲土地は,
1163 Xの所有であるところ,
1164 Yらは根拠なく所有権移転登記を経た。
1165
1166
1167 Yらが主張するとおり,
1168 XはYに対して1000万円の貸金返還債務を負っていた
1169 ことがあったが,
1170 当該債務は,
1171 XがYから借り受けた1000万円の金員を支払うこと
1172 によって完済している。
1173
1174
1175 仮に,
1176 Yらが主張するように,
1177 甲土地について代物弁済によるYへの所有権の移転
1178 が認められるとしても,
1179 Xは,
1180 その際,
1181 Yとの間で,
1182 代金1000万円でYから甲土
1183 地を買い戻す旨の合意をしており,
1184 その合意に基づき,
1185 上記の1000万円の金員をY
1186 に支払うことによって,
1187 Yから甲土地を買い戻した。
1188
1189
1190 Yらの主張:甲土地は,
1191 かつてXの所有であったが,
1192 XがYに対して負担していた1000万円の
1193 貸金返還債務の代物弁済により,
1194 XからYに所有権が移転した。
1195
1196 これにより,
1197 Yは所
1198 有権移転登記を経た。
1199
1200
1201 その後,
1202 YがYに対して甲土地の買受けを申し出たので,
1203 Yは甲土地を代金100
1204 0万円でYに売り渡したが,
1205 その際,
1206 Yは,
1207 Xとの間で,
1208 Xが所定の期間内にYに代
1209 金1000万円を支払うことにより甲土地をXに売り渡す旨の合意をした。
1210
1211 しかし,
1212
1213 は期間内に代金をYに対して支払わなかったため,
1214 Yは所有権移転登記を経た。
1215
1216
1217 〔設問1〕
1218 本件訴訟における証拠調べの結果,
1219 次のような事実が明らかになった。
1220
1221
1222 「Yは,
1223 XがYに対して負担していた1000万円の貸金返還債務の代物弁済により甲土地の
1224 所有権をXから取得した。
1225
1226 その後,
1227 Xは,
1228 Yから借り受けた1000万円の金員をYに対して支
1229 払うことによって甲土地をYから買い戻したが,
1230 その際,
1231 所定の期間内に借り受けた1000万円
1232 をYに対して返済することで甲土地を取り戻し得るとの約定で甲土地をYのために譲渡担保に供
1233 した。
1234
1235 しかし,
1236 Xは,
1237 当該約定の期間内に1000万円を返済しなかったことから,
1238 甲土地の受戻
1239 権を失い,
1240 他方で,
1241 Yが甲土地の所有権を確定的に取得した。
1242
1243
1244
1245 以下は,
1246 本件訴訟の口頭弁論終結前においてされた第一審裁判所の裁判官Aと司法修習生Bとの
1247 間の会話である。
1248
1249
1250 修習生B:証拠調べの結果明らかになった事実からすれば,
1251 本件訴訟ではXの各請求をいずれも
1252 棄却する旨の判決をすることができると考えます。
1253
1254
1255 裁判官A:しかし,
1256 それでは,
1257 @当事者の主張していない事実を基礎とする判決をすることにな
1258 り,
1259 弁論主義に違反することにはなりませんか。
1260
1261
1262 修習生B:はい。
1263
1264 弁論主義違反と考える立場もあります。
1265
1266 しかし,
1267 本件訴訟では,
1268 判決の基礎と
1269
1270 なるべき事実は弁論に現れており,
1271 それについての法律構成が当事者と裁判所との間で
1272 異なっているに過ぎないと見ることができると思います。
1273
1274
1275 裁判官A:なるほど。
1276
1277 そうだとしても,
1278 それで訴訟関係が明瞭になっていると言えるでしょうか。
1279
1280
1281 Aあなたが考えるように,
1282 本件訴訟において,
1283 弁論主義違反の問題は生じず,
1284 当事者と
1285 裁判所との間で法律構成に差異が生じているに過ぎないと見たとして,
1286 直ちに本件訴訟
1287 の口頭弁論を終結して判決をすることが適法であると言ってよいでしょうか。
1288
1289 検討して
1290 みてください。
1291
1292
1293 修習生B:分かりました。
1294
1295
1296 (1) 下線部@に関し,
1297 証拠調べの結果明らかになった事実に基づきXの各請求をいずれも棄却す
1298 る旨の判決をすることは弁論主義違反であるとの立場から,
1299 その理由を事案に即して説明しな
1300 さい。
1301
1302
1303 (2) 下線部Aに関し,
1304 裁判官Aから与えられた課題について,
1305 事案に即して検討しなさい。
1306
1307
1308 〔設問2〕〔
1309 ( 設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
1310
1311
1312
1313 第一審裁判所は,
1314 本件訴訟について審理した結果,
1315 Xの主張を全面的に認めてXの各請求をいず
1316 れも認容する旨の判決を言い渡し,
1317 当該判決は,
1318 控訴期間の満了により確定した。
1319
1320
1321 このとき,
1322 本件訴訟の口頭弁論終結後に,
1323 Yが甲土地をZに売り渡し,
1324 Zが所有権移転登記を経
1325 た場合,
1326 本件訴訟の確定判決の既判力はZに対して及ぶか,
1327 検討しなさい。
1328
1329
1330
1331 (出題の趣旨)
1332 設問1は,
1333 本件訴訟において裁判所が当事者の主張していない所有権の取得経過
1334 (X・Y間の譲渡担保に基づく所有権移転)を判決の基礎とすることの適否を問
1335 う問題である。
1336
1337 (1)では,
1338 弁論主義の適用範囲や事実の分類等に関する基本的な理
1339 解を踏まえて,
1340 本件において問題となっている事実が弁論主義の適用を受ける事実
1341 であることを的確に論じる必要がある。
1342
1343 また,
1344 (2)では,
1345 当事者の弁論権の保障や
1346 不意打ち防止の観点から,
1347 本件における釈明義務ないし法的観点指摘義務の有無に
1348 ついて,
1349 事案に即した考察が求められている。
1350
1351
1352 設問2は,
1353 口頭弁論終結後の承継人に対する既判力の拡張に関する問題である。
1354
1355
1356 本件におけるZは前訴の訴訟物たる権利義務自体の承継人ではないが,
1357 このような
1358 第三者であっても民訴法第115条第1項第3号の「承継人」に該当するか否かが
1359 問われている。
1360
1361 承継人に既判力が拡張される根拠ないし趣旨を踏まえて,
1362 同号にい
1363 う「承継人」の範囲を明らかにした上で,
1364 Zの「承継人」該当性について論じるこ
1365 とが求められている。
1366
1367
1368
1369 [刑
1370
1371 法]
1372
1373 以下の事例に基づき,
1374 甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。
1375
1376 )。
1377
1378
1379
1380
1381 甲(40歳,
1382 男性)と乙(35歳,
1383 男性)は,
1384 数年来の遊び仲間で,
1385 働かずに遊んで暮らし
1386 ていた。
1387
1388 甲は,
1389 住宅街にある甲所有の2階建て木造一軒家(以下「甲宅」という。
1390
1391 )で一人で
1392 暮らしており,
1393 乙も,
1394 甲がそのような甲宅に一人で住んでいることを承知していた。
1395
1396 乙は,
1397
1398 宅街にある乙所有の2階建て木造一軒家(以下「乙宅」という。
1399
1400 )で内妻Aと二人で暮らして
1401 おり,
1402 甲も,
1403 乙がそのような乙宅にAと二人で住んでいることを承知していた。
1404
1405 甲宅と乙宅は,
1406
1407 直線距離で約2キロメートル離れていた。
1408
1409
1410
1411
1412
1413 甲と乙は,
1414 某年8月下旬頃,
1415 働かずに遊びに使う金を手に入れたいと考え,
1416 その相談をした。
1417
1418
1419 そして,
1420 甲と乙は,
1421 同年9月1日に更に話合いをし,
1422 設定した時間に発火し,
1423 その火を周囲の
1424 物に燃え移らせる装置(以下「発火装置」という。
1425
1426 )を製作し,
1427 これを使って甲宅と乙宅に放
1428 火した後,
1429 正当な請求と見せ掛けて,
1430 甲宅と乙宅にそれぞれ掛けてある火災保険の保険金の支
1431 払を請求して保険会社から保険金をだまし取り,
1432 これを折半することにした。
1433
1434 その後,
1435 甲と乙
1436 は,
1437 二人でその製作作業をして,
1438 同月5日,
1439 同じ性能の発火装置2台(以下,
1440 それぞれ「X発
1441 火装置」,
1442 「Y発火装置」という。
1443
1444 )を完成させた上,
1445 甲宅と乙宅に放火する日を,
1446 Aが旅行に
1447 出掛けて乙宅を留守にしている同月8日の夜に決めた。
1448
1449
1450
1451
1452
1453 Aは,
1454 同日昼,
1455 旅行に出掛けて乙宅を留守にした。
1456
1457
1458
1459
1460
1461 甲と乙は,
1462 同日午後7時,
1463 二人で,
1464 甲宅内にX発火装置を運び込んで甲宅の1階の居間の木
1465 製の床板上に置き,
1466 同日午後9時に発火するように設定した。
1467
1468 その時,
1469 甲宅の2階の部屋には,
1470
1471 甲宅内に勝手に入り込んで寝ていた甲の知人Bがいたが,
1472 甲と乙は,
1473 Bが甲宅にいることには
1474 気付かなかった。
1475
1476
1477 その後,
1478 甲と乙は,
1479 同日午後7時30分,
1480 二人で,
1481 乙宅の敷地内にあって普段から物置とし
1482 て使用している乙所有の木造の小屋(以下「乙物置」という。
1483
1484 )内にY発火装置を運び込んで,
1485
1486 乙物置内の床に置かれていた,
1487 洋服が入った段ボール箱(いずれも乙所有)上に置き,
1488 同日午
1489 後9時30分に発火するように設定した。
1490
1491 なお,
1492 乙物置は,
1493 乙宅とは屋根付きの長さ約3メー
1494 トルの木造の渡り廊下でつながっており,
1495 甲と乙は,
1496 そのような構造で乙宅と乙物置がつなが
1497 っていることや,
1498 乙物置及び渡り廊下がいずれも木造であることを承知していた。
1499
1500
1501 その後,
1502 甲と乙は,
1503 乙宅の敷地内から出て別れた。
1504
1505
1506
1507
1508
1509 甲宅の2階の部屋で寝ていたBは,
1510 同日午後8時50分に目を覚まし,
1511 甲宅の1階の居間に
1512 行ってテレビを見ていた。
1513
1514 すると,
1515 X発火装置が,
1516 同日午後9時,
1517 設定したとおりに作動して
1518 発火した。
1519
1520 Bは,
1521 その様子を見て驚き,
1522 すぐに甲宅から逃げ出した。
1523
1524 その後,
1525 X発火装置から
1526 出た火は,
1527 同装置そばの木製の床板に燃え移り,
1528 同床板が燃え始めたものの,
1529 その燃え移った
1530 火は,
1531 同床板の表面の約10センチメートル四方まで燃え広がったところで自然に消えた。
1532
1533
1534 お,
1535 甲と乙は,
1536 終始,
1537 Bが甲宅にいたことに気付かなかった。
1538
1539
1540
1541
1542
1543 Y発火装置は,
1544 同日午後9時30分,
1545 設定したとおりに作動して発火した。
1546
1547 乙は,
1548 その時,
1549
1550 乙宅の付近でうろついて様子をうかがっていたが,
1551 Y発火装置の発火時間となって,
1552 「このま
1553 まだと自分の家が燃えてしまうが,
1554 やはりAには迷惑を掛けたくない。
1555
1556 それに,
1557 その火が隣の
1558 家に燃え移ったら危ないし,
1559 近所にも迷惑を掛けたくない。
1560
1561 こんなことはやめよう。
1562
1563 」と考え,
1564
1565 火を消すために乙物置内に入った。
1566
1567 すると,
1568 Y発火装置から出た火が同装置が置いてある前記
1569 段ボール箱に燃え移っていたので,
1570 乙は,
1571 乙物置内にある消火器を使って消火活動をし,
1572 同日
1573 午後9時35分,
1574 その火を消し止めた。
1575
1576 乙物置内で燃えたものは,
1577 Y発火装置のほか,
1578 同段ボ
1579 ール箱の一部と同箱内の洋服の一部のみで,
1580 乙物置には,
1581 床,
1582 壁,
1583 天井等を含め火は燃え移ら
1584
1585 ず,
1586 焦げた箇所もなかった。
1587
1588 また,
1589 前記渡り廊下及び乙宅にも,
1590 火は燃え移らず,
1591 焦げた箇所
1592 もなかった。
1593
1594
1595
1596
1597 その後,
1598 甲と乙は,
1599 甲宅と乙宅にそれぞれ掛けてある火災保険の保険金を手に入れることを
1600 諦め,
1601 保険会社に対する保険金の支払の請求をしなかった。
1602
1603
1604
1605 (出題の趣旨)
1606 本問は,
1607 数年来の遊び仲間である甲と乙が共謀して,
1608 各々の自宅建物に掛けてあ
1609 る火災保険金をだまし取ろうと考え,
1610 甲が一人で暮らす甲宅内と,
1611 乙が内妻Aと二
1612 人で暮らす乙宅(Aは旅行のため留守)と木造の渡り廊下で繋がっている物置内に
1613 それぞれ発火装置を設置したところ,
1614 甲宅内に設置した発火装置から出た火はその
1615 床板を燃やしたところで消え(なお,
1616 同発火装置の設置及び発火の際,
1617 甲宅には甲
1618 の知人Bがいたが,
1619 甲及び乙はBの存在に全く気付かなかった ),
1620 乙宅の物置内に
1621 設置した発火装置から出た火は,
1622 本件を後悔して物置に戻ってきた乙によって消し
1623 止められ,
1624 発火装置下の段ボール箱及び同箱内の衣服の一部を燃やしたにとどまっ
1625 たことから,
1626 甲と乙は火災保険金の請求を諦めたという事例を素材として,
1627 事実を
1628 的確に分析する能力を問うとともに,
1629 放火罪,
1630 抽象的事実の錯誤,
1631 中止犯の成否及
1632 びこれが成立する場合に共犯へ及ぼす影響等に関する基本的理解と事例への当ては
1633 めが論理的一貫性を保って行われているかを問うものである。
1634
1635
1636
1637 [刑事訴訟法]
1638 次の【事例】を読んで,
1639 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1640
1641
1642 【事
1643
1644 例】
1645 平成28年3月1日,
1646 H県J市内のV方が放火される事件が発生した。
1647
1648 その際,
1649 V方玄関内から
1650
1651 火の手が上がるのを見た通行人Wは,
1652 その直前に男が慌てた様子でV方玄関から出てきて走り去る
1653 のを目撃した。
1654
1655
1656 V方の実況見分により,
1657 放火にはウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶が使用されたこ
1658 と,
1659 V方居間にあった美術品の彫刻1点が盗まれていることが判明した。
1660
1661
1662 捜査の過程で,
1663 平成21年1月に住宅に侵入して美術品の彫刻を盗みウィスキー瓶にガソリンを
1664 入れた手製の火炎瓶を使用して同住宅に放火したとの事件により,
1665 同年4月に懲役6年の有罪判決
1666 を受けた前科(以下「本件前科」という。
1667
1668 )を有する甲が,
1669 平成27年4月に服役を終え,
1670 J市に
1671 隣接するH県K市内に単身居住していることが判明した。
1672
1673 そこで,
1674 警察官が,
1675 甲の写真を含む多数
1676 の人物写真をWに示したところ,
1677 Wは,
1678 甲の写真を指し示し,
1679 「私が目撃したのはこの男に間違い
1680 ありません。
1681
1682 」と述べた。
1683
1684
1685 甲は,
1686 平成28年3月23日,
1687 V方に侵入して彫刻1点を盗みV方に放火した旨の被疑事実(以
1688 下「本件被疑事実」という。
1689
1690 )により逮捕され,
1691 同月25日から同年4月13日まで勾留されたが,
1692
1693 この間,
1694 一貫して本件被疑事実を否認し,
1695 他に甲が本件被疑事実の犯人であることを示す証拠が発
1696 見されなかったことから,
1697 同月13日,
1698 処分保留で釈放された。
1699
1700
1701 警察官は,
1702 甲が釈放された後も捜査を続けていたところ,
1703 甲が,
1704 同年3月5日に,
1705 V方で盗まれ
1706 た彫刻1点を,
1707 H県から離れたL県内の古美術店に売却していたことが判明した。
1708
1709
1710 @甲は,
1711 同年5月9日,
1712 本件被疑事実により逮捕され,
1713 同月11日から勾留された。
1714
1715 間もなく甲
1716 は,
1717 自白に転じ,
1718 V方に侵入して,
1719 居間にあった彫刻1点を盗み,
1720 ウィスキー瓶にガソリンを入れ
1721 た手製の火炎瓶を玄関ホールの床板にたたきつけてV方に放火した旨供述した。
1722
1723 検察官は,
1724 同月2
1725 0日,
1726 甲を本件被疑事実と同旨の公訴事実により公判請求した。
1727
1728
1729 公判前整理手続において,
1730 甲及びその弁護人は,
1731 「V方に侵入したことも放火したこともない。
1732
1733
1734 彫刻は,
1735 甲が盗んだものではなく,
1736 友人から依頼されて売却したものである。
1737
1738 」旨主張した。
1739
1740
1741 そこで,
1742 検察官は,
1743 甲が前記公訴事実の犯人であることを立証するため,
1744 A本件前科の内容が記
1745 載された判決書謄本の証拠調べを請求した。
1746
1747
1748 〔設問1〕
1749 @の逮捕及び勾留の適法性について論じなさい。
1750
1751
1752 〔設問2〕
1753 Aの判決書謄本を甲が前記公訴事実の犯人であることを立証するために用いることが許される
1754 かについて論じなさい。
1755
1756
1757
1758 (出題の趣旨)
1759 本問は,
1760 犯人がV方に侵入し,
1761 彫刻1点を窃取し,
1762 手製の火炎瓶を用いて同方へ
1763 の放火に及んだ事件について,
1764 上記被疑事実で逮捕・勾留されるも処分保留で釈放
1765 された甲が,
1766 再逮捕・再勾留された後,
1767 同事実で公判請求され,
1768 検察官が同種前科
1769 の内容が記載された判決書謄本の証拠調べ請求を行ったとの事例において,
1770 同一被
1771 疑事実による再逮捕・再勾留の可否及び前科証拠による犯人性の立証の可否並びに
1772
1773 これらが認められる場合の要件を検討させることにより(なお,
1774 前科証拠による犯
1775 人性の立証の可否等に関し,
1776 最判平成24年9月7日刑集66巻9号907頁参
1777 照。
1778
1779 ),
1780 被疑者に対する身柄拘束処分及び証拠の関連性に関する各問題点について,
1781
1782 基本的な学識の有無及び具体的事案における応用力を試すものである。
1783
1784
1785
1786 [法律実務基礎科目(民事)]
1787 司法試験予備試験用法文を適宜参照して,
1788 以下の各設問に答えなさい。
1789
1790
1791 〔設問1〕
1792 弁護士Pは,
1793 Xから次のような相談を受けた。
1794
1795
1796 【Xの相談内容】
1797 「私は,
1798 自宅を建築するために,
1799 平成27年6月1日,
1800 甲土地の所有者であったAから,
1801 売買
1802 代金1000万円で甲土地を買い受け(以下「本件第1売買契約」という。
1803
1804 ),
1805 同月30日に売買
1806 代金を支払い,
1807 売買代金の支払と引換えに私宛てに所有権移転登記をすることを合意しました。
1808
1809
1810 私は,
1811 平成27年6月30日,
1812 売買代金1000万円を持参してAと会い,
1813 Aに対して甲土地
1814 の所有権移転登記を求めましたが,
1815 Aから,
1816 登記識別情報通知書を紛失したので,
1817 もうしばらく
1818 所有権移転登記を待ってほしい,
1819 事業資金が必要で,
1820 必ず登記をするので先にお金を払ってほし
1821 いと懇願されました。
1822
1823 Aは,
1824 大学時代の先輩で,
1825 私の結婚に際し仲人をしてくれるなど,
1826 長年お
1827 世話になっていたので,
1828 Aの言うことを信じ,
1829 登記識別情報通知書が見つかり次第,
1830 所有権移転
1831 登記をすることを確約してもらい,
1832 代金を支払いました。
1833
1834 しかし,
1835 その後,
1836 Aからの連絡はあり
1837 ませんでした。
1838
1839
1840 ところが,
1841 平成27年8月上旬頃から,
1842 Yが私に無断で甲土地全体を占有し始め,
1843 現在も占有
1844 しています。
1845
1846
1847 私は,
1848 平成27年9月1日,
1849 Yが甲土地を占有していることを確認した上で,
1850 Yに対してすぐ
1851 に甲土地を明け渡すよう求めました。
1852
1853 これに対して,
1854 Yは,
1855 Aが甲土地の所有者であったこと,
1856
1857 自分が甲土地を占有していることは認めましたが,
1858 Aから甲土地を買い受けて所有権移転登記を
1859 経由したので,
1860 自分が甲土地の所有者であるとして,
1861 甲土地の明渡しを拒否し,
1862 私に対して甲土
1863 地の買取りを求めてきました。
1864
1865
1866 甲土地の所有者は私ですので,
1867 Yに対し,
1868 甲土地について,
1869 所有権移転登記と明渡しを求めた
1870 いと考えています。
1871
1872
1873 弁護士Pは,
1874 【Xの相談内容】を受けて甲土地の登記事項証明書を取り寄せたところ,
1875 平成27
1876 年8月1日付け売買を原因とするAからYへの所有権移転登記(詳細省略)がされていることが判
1877 明した。
1878
1879 弁護士Pは,
1880 【Xの相談内容】を前提に,
1881 Xの訴訟代理人として,
1882 Yに対し,
1883 所有権に基
1884 づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権及び所有権に基づく返還請求権としての土地明
1885 渡請求権を訴訟物として,
1886 甲土地について所有権移転登記及び甲土地の明渡しを求める訴訟(以下
1887 「本件訴訟」という。
1888
1889 )を提起することにした。
1890
1891
1892 以上を前提に,
1893 以下の問いに答えなさい。
1894
1895
1896 (1)
1897
1898 弁護士Pは,
1899 本件訴訟に先立って,
1900 Yに対し,
1901 甲土地の登記名義の変更,
1902 新たな権利の設定及
1903
1904 び甲土地の占有移転などの行為に備え,
1905 事前に講じておくべき法的手段を検討することとした。
1906
1907
1908 弁護士Pが採るべき法的手段を2つ挙げ,
1909 そのように考えた理由について,
1910 それらの法的手段を
1911 講じない場合に生じる問題にも言及しながら説明しなさい。
1912
1913
1914 (2)
1915
1916 弁護士Pが,
1917 本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。
1918
1919 )において記載すべき請求の趣旨(民
1920
1921 事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい(附帯請求及び付随的申立てを考慮する必要
1922 はない。
1923
1924 )。
1925
1926
1927 (3)
1928
1929 弁護士Pは,
1930 本件訴状において,
1931 甲土地の明渡請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条
1932
1933 第1項)として,
1934 次の各事実を主張した。
1935
1936
1937
1938
1939 Aは,
1940 平成27年6月1日当時,
1941 甲土地を所有していた。
1942
1943
1944
1945
1946
1947
1948
1949
1950
1951
1952
1953
1954
1955
1956
1957 上記イ及びウに入る具体的事実を,
1958 それぞれ答えなさい。
1959
1960
1961 〔設問2〕
1962 弁護士Qは,
1963 本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。
1964
1965
1966 【Yの相談内容】
1967 「Aは,
1968 私の知人です。
1969
1970 Aは,
1971 平成27年7月上旬頃,
1972 事業資金が必要なので甲土地を500
1973 万円で買わないかと私に持ちかけてきました。
1974
1975 私は,
1976 同年8月1日,
1977 Aから甲土地を代金500
1978 万円で買い受け(以下「本件第2売買契約」という。
1979
1980 ),
1981 売買代金を支払って所有権移転登記を経
1982 由し,
1983 甲土地を資材置場として使用しています。
1984
1985 したがって,
1986 甲土地の所有者は私です。
1987
1988
1989 上記【Yの相談内容】を前提に,
1990 以下の問いに答えなさい。
1991
1992
1993 弁護士Qは,
1994 本件訴訟における答弁書(以下「本件答弁書」という。
1995
1996 )を作成するに当たり,
1997
1998 抗弁となり得る法的主張を検討した。
1999
2000 弁護士QがYの訴訟代理人として主張すべき抗弁の内容(当
2001 該抗弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。
2002
2003 )を述べるとともに,
2004 それが抗弁となる理
2005 由について説明しなさい。
2006
2007
2008 〔設問3〕
2009 本件答弁書を受け取った弁護士Pは,
2010 Xに事実関係を確認した。
2011
2012 Xの相談内容は以下のとおりで
2013 ある。
2014
2015
2016 【Xの相談内容】
2017 「Yは,
2018 既に甲土地について所有権移転登記を経由しており,
2019 自分が甲土地の所有者であると
2020 して,
2021 平成27年9月1日,
2022 甲土地を2000万円で買い取るよう求めてきました。
2023
2024 Yは,
2025 事情
2026 を知りながら,
2027 甲土地を私に高値で買い取らせる目的で,
2028 本件第2売買契約をして所有権移転登
2029 記をしたことに間違いありません。
2030
2031 このようなYが甲土地の所有権を取得したことを認めること
2032 はできません。
2033
2034
2035 上記【Xの相談内容】を前提に,
2036 弁護士Pは,
2037 再抗弁として,
2038 以下の事実を記載した準備書面を
2039 作成して提出した。
2040
2041
2042
2043
2044
2045
2046
2047
2048
2049
2050 Yは,
2051 本件第2売買契約の際,
2052 Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していた。
2053
2054
2055
2056 以上を前提に,
2057 以下の問いに答えなさい。
2058
2059
2060 上記エに入る具体的事実を答え,
2061 そのように考えた理由を説明しなさい。
2062
2063
2064 〔設問4〕
2065 第1回口頭弁論期日において,
2066 本件訴状と本件答弁書が陳述され,
2067 第1回弁論準備手続期日にお
2068 いて,
2069 弁護士P及び弁護士Qがそれぞれ作成した準備書面が提出され,
2070 弁護士Qは,
2071 〔設問3〕の
2072 エ及びオの各事実を否認し,
2073 弁護士Pは,
2074 以下の念書(斜体部分は全て手書きである。
2075
2076 以下「本件
2077
2078 念書」という。
2079
2080 )を提出し,
2081 証拠として取り調べられた。
2082
2083 なお,
2084 弁護士Qは,
2085 本件念書の成立の真
2086 正を認めた。
2087
2088
2089 その後,
2090 2回の弁論準備手続期日を経た後,
2091 第2回口頭弁論期日において,
2092 本人尋問が実施され,
2093
2094 Xは,
2095 下記【Xの供述内容】のとおり,
2096 Yは,
2097 下記【Yの供述内容】のとおり,
2098 それぞれ供述した
2099 (なお,
2100 Aの証人尋問は実施されていない。
2101
2102 )。
2103
2104
2105
2106 念書
2107 A殿
2108 今般,
2109 貴殿より甲土地を買い受けましたが,
2110 売却して利益が生じた
2111 ときにはその3割を謝礼としてお渡しします。
2112
2113
2114 平成27年8月1日
2115
2116
2117 Y印
2118
2119 【Xの供述内容】
2120 「Yは,
2121 建築業者で,
2122 今でも甲土地を占有し,
2123 資材置場として使用しているようですが,
2124 置か
2125 れている資材は大した分量ではなく,
2126 それ以外に運搬用のトラックが2台止まっているにすぎま
2127 せん。
2128
2129
2130 不動産業者に確認したところ,
2131 平成27年7月当時の甲土地の時価は,
2132 1000万円程度との
2133 ことでした。
2134
2135
2136 私は,
2137 平成27年9月1日,
2138 Y宅を訪れて,
2139 甲土地の明渡しを求めたところ,
2140 Yはこれを拒絶
2141 して,
2142 逆に私に2000万円で甲土地を買い取るよう求めてきましたが,
2143 私は納得できませんで
2144 したので,
2145 その場でYの要求を拒絶しました。
2146
2147
2148 その後,
2149 私は,
2150 Aに対し,
2151 Yとのやりとりを説明して,
2152 Aが本件第2売買契約をして,
2153 甲土地
2154 をYに引き渡したことについて苦情を述べました。
2155
2156 すると,
2157 Aは,
2158 私に対して謝罪し,
2159 『事業資
2160 金が必要だったので,
2161 やむなくYに甲土地を売却してしまった。
2162
2163 その際,
2164 既にXに甲土地を売却
2165 していることをYに対して説明したが,
2166 Yはそれでも構わないと言っていた。
2167
2168 Yから,
2169 代金50
2170 0万円は安いが,
2171 甲土地を高く売却できたら謝礼をあげると言われたので,
2172 Yにその内容の書面
2173 を作成してもらった。
2174
2175 』と事情を説明して,
2176 私に本件念書を渡してくれました。
2177
2178 ただ,
2179 それ以降,
2180
2181 Aとは連絡が取れなくなりました。
2182
2183
2184 【Yの供述内容】
2185 「私は,
2186 建築業者で,
2187 現在,
2188 甲土地を資材置場として使用しています。
2189
2190 本件第2売買契約に際
2191 して不動産業者に確認したところ,
2192 当時の甲土地の時価は,
2193 1000万円程度とのことでした。
2194
2195
2196 私は,
2197 平成27年9月1日,
2198 Xが自宅を訪れた際,
2199 甲土地を2000万円で買い取るよう求め
2200 たことはありません。
2201
2202 Xと話し合って,
2203 Xが希望する価格で買い取ってもらえればと思って話を
2204 しただけで,
2205 例えば2000万円くらいではどうかと話したことはありますが,
2206 最終的にXとの
2207 間で折り合いがつきませんでした。
2208
2209
2210 Aは,
2211 本件第2売買契約をした時,
2212 甲土地を高く転売できたときには謝礼がほしいと言うので,
2213
2214 本件念書を作成してAに渡しました。
2215
2216 その際,
2217 AがXに甲土地を売却していたという話は聞いて
2218
2219 いません。
2220
2221
2222 以上を前提に,
2223 以下の問いに答えなさい。
2224
2225
2226 弁護士Pは,
2227 本件訴訟の第3回口頭弁論期日までに,
2228 準備書面を提出することを予定している。
2229
2230
2231 その準備書面において,
2232 弁護士Pは,
2233 前記【Xの供述内容】及び【Yの供述内容】と同内容のX
2234 Yの本人尋問における供述並びに本件念書に基づいて,
2235 〔設問3〕の再抗弁について,
2236 オの事実
2237 (「Yは,
2238 本件第2売買契約の際,
2239 Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していた。
2240
2241 」)
2242 が認められること(Yに有利な事実に対する反論も含む。
2243
2244 )を中心に,
2245 〔設問3〕の再抗弁につい
2246 ての主張を展開したいと考えている。
2247
2248 弁護士Pにおいて,
2249 上記準備書面に記載すべき内容を答案
2250 用紙1頁程度の分量で記載しなさい。
2251
2252
2253
2254 (出題の趣旨)
2255 設問1は,
2256 不動産に係る登記請求及び明渡請求が問題となる訴訟において,
2257 原告
2258 代理人があらかじめ講ずべき法的手段とともに,
2259 訴状における請求の趣旨及び請求
2260 を理由付ける事実について説明を求めるものであり,
2261 民事保全の基本的理解に加え
2262 て,
2263 所有権に基づく物権的請求権の法律要件に留意して説明することが求められる。
2264
2265
2266 設問2は,
2267 不動産の二重譲渡事案における実体法上の権利関係に留意しつつ,
2268
2269 告本人の主張を適切に法律構成した上で,
2270 抗弁となる理由を説明することが求めら
2271 れる。
2272
2273
2274 設問3は,
2275 再抗弁の事実について問うものである。
2276
2277 判例で示された当該再抗弁に
2278 係る要件事実に即して,
2279 原告の主張内容から必要な事実を選択し,
2280 他の主張事実と
2281 の関係にも留意することが求められる。
2282
2283
2284 設問4は,
2285 上記の再抗弁の主張について,
2286 書証と人証の双方を検討し,
2287 必要な事
2288 実を抽出した上で,
2289 どの事実がいかなる理由から再抗弁に係る評価を根拠付ける際
2290 に重要であるかに留意して,
2291 準備書面に記載すべき事項を問うものである。
2292
2293
2294
2295 [法律実務基礎科目(刑事)]
2296 次の【事例】を読んで,
2297 後記〔設問〕に答えなさい。
2298
2299
2300 【事
2301
2302
2303 例】
2304 A(男性,
2305 32歳,
2306 暴力団甲組組員)は,
2307 平成28年2月12日,
2308 V(男性,
2309 40歳,
2310 暴力
2311 団乙組幹部組員)を被害者とする殺人未遂罪の被疑事実で逮捕され,
2312 同月14日から勾留され
2313 た後,
2314 同年3月4日にI地方裁判所に同罪で公判請求された。
2315
2316
2317 上記公判請求に係る起訴状の公訴事実には「被告人は,
2318 平成27年11月1日午後2時頃,
2319
2320 H県I市J町1丁目1番3号に所在する暴力団乙組事務所前路上において,
2321 同事務所玄関ドア
2322 前に立っていたVに対し,
2323 殺意をもって,
2324 持っていた回転弾倉式拳銃で弾丸3発を発射したが,
2325
2326 いずれも命中しなかったため,
2327 同人を殺害するに至らなかった。
2328
2329 」旨記載されている。
2330
2331
2332
2333
2334
2335 公判請求までに収集された主な証拠とその概要は次のとおりであった。
2336
2337
2338 証拠@
2339
2340 Vの検察官調書
2341 「私は,
2342 平成27年11月1日午後2時頃,
2343 配下のWを連れて乙組事務所から出掛け
2344 ることとした。
2345
2346 Wが先に玄関ドアから外に出たので,
2347 私が少し遅れて玄関ドアから外に
2348 出て,
2349 歩き出そうとした瞬間,
2350 私の左側に立っていたWが私の上半身を両腕で抱え,
2351
2352 の方に引っ張ったので,
2353 私は,
2354 W共々左側に倒れ込んだ。
2355
2356 倒れ込むと同時に,
2357 拳銃の発
2358 射音が何発か聞こえた。
2359
2360 玄関ドアの南側正面には道路に面した門扉があるが,
2361 私は,
2362
2363 関ドアから出て倒れるまで,
2364 門扉の方を見ていなかったし,
2365 倒れた後には,
2366 門扉の向こ
2367 う側には誰もいなかった。
2368
2369 私の身長は180センチメートルである。
2370
2371
2372
2373 証拠A
2374
2375 W(男性,
2376 25歳,
2377 暴力団乙組組員)の検察官調書
2378 「私は,
2379 平成27年11月1日午後2時頃,
2380 私が先に乙組事務所の玄関ドアから外に
2381 出て,
2382 左手の隅によけ,
2383 Vが出てくるのを待っていた。
2384
2385 しばらくしてVが玄関ドアから
2386 出てきたが,
2387 ふと玄関ドアの南側正面にある門扉の方を見ると,
2388 門扉の向こう側の右側
2389 からマスクをした男が走り出てきて,
2390 門扉の正面で止まり,
2391 拳銃を両手で持って,
2392 玄関
2393 ドア前に立っていたVに銃口を向けて構えた。
2394
2395 私は,
2396 Vが撃たれると思い,
2397 とっさにV
2398 の上半身に抱き付き,
2399 私の方に引き倒すように引っ張った。
2400
2401 私とVが倒れるのと前後し
2402 て,
2403 『死ね。
2404
2405 』という男の声と同時に,
2406 拳銃の発射音が複数回した。
2407
2408 倒れてから門扉の方
2409 を見たが,
2410 既に誰もいなかった。
2411
2412 拳銃を撃った男が誰かは分からない。
2413
2414
2415
2416 証拠B
2417
2418 実況見分調書(平成27年11月1日付け,
2419 立会人W)
2420 「本件現場は,
2421 H県I市J町1丁目1番3号に所在する暴力団乙組事務所(以下「事
2422 務所」という。
2423
2424 )玄関ドア付近である。
2425
2426 事務所は3階建てのビルであり,
2427 南側に玄関ド
2428 アがある。
2429
2430 事務所の敷地の周囲には高さ約2.5メートルの塀があるが,
2431 南側には塀に
2432 設置された門扉があり,
2433 門扉の高さは約1.3メートルである。
2434
2435 事務所敷地南側は道路
2436 に面しており,
2437 門扉の正面の路上に立つと,
2438 事務所玄関ドアが門扉越しに遮る物なく北
2439 方向正面に見える。
2440
2441 門扉と玄関ドアとの距離は,
2442 約3メートルである。
2443
2444 玄関ドアは防弾
2445 仕様であり,
2446 玄関ドアの中央(玄関ドア東端から西方へ約1メートルから約1.3メー
2447 トル,
2448 玄関ドア下端から上方へ約1.3メートルから約1.4メートルの範囲)に,
2449
2450 丸3個がめり込んでいた。
2451
2452 Wは,
2453 『私がVに抱き付く前に,
2454 Vはこの位置に立ってお
2455 り,
2456 私はこの位置に立っていた。
2457
2458 』と言って,
2459 玄関ドア前にV役の警察官Y(身長18
2460 0センチメートル)を立たせ,
2461 自らは玄関ドア前の脇に立ったので,
2462 それぞれの位置を
2463 計測したところ,
2464 V役Yの位置は,
2465 玄関ドアから南側に約50センチメートル,
2466 門扉か
2467 ら約2.5メートルの玄関ドア正面であり,
2468 門扉の南側路上から見ると,
2469 弾丸の玄関ド
2470
2471 ア着弾位置はYの胸部の後方となった。
2472
2473 Wの位置は,
2474 玄関ドア東端から東方へ約30セ
2475 ンチメートル,
2476 事務所建物壁から南方へ約1メートルの位置であった。
2477
2478 Wは,
2479 『犯人
2480 は,
2481 門扉の外の路上に立ち,
2482 拳銃を玄関ドア方向に向けて真っすぐ構えていた。
2483
2484 』と言
2485 ったので,
2486 Wが犯人と同じくらいの身長の者として選んだ犯人役の警察官Z(身長17
2487 5センチメートル)を,
2488 Wの説明どおりに門扉の南側路上に立たせ,
2489 模擬拳銃を玄関ド
2490 ア方向に真っすぐ構えさせたところ,
2491 犯人役Zの立ち位置は,
2492 門扉の中央正面(門扉東
2493 端から西方へ約1メートル,
2494 門扉から南方へ約1メートルの位置)であり,
2495 銃口は門扉
2496 の上端から約10センチメートル上方であり,
2497 銃口から玄関ドアまでは約3メートルで
2498 あった。
2499
2500
2501 証拠C
2502
2503 弾丸3個
2504
2505 証拠D
2506
2507 捜査報告書
2508 「暴力団乙組事務所玄関ドア東側付近に設置されていた防犯カメラの平成27年11
2509 月1日午後2時頃の映像は,
2510 次のとおりである。
2511
2512 午後1時57分頃,
2513 Wが事務所玄関ド
2514 アから出て,
2515 同ドアの東側脇に立つ。
2516
2517 午後2時頃,
2518 Vが同ドアから出て,
2519 同ドア前に立
2520 った後,
2521 WがVを抱えるようにして東側に倒れ込み,
2522 その直後,
2523 高速度で物体が玄関ド
2524 アに当たり,
2525 玄関ドア表面から煙かほこりのようなものが立ち上るとともに,
2526 映像が激
2527 しく乱れた。
2528
2529 なお,
2530 同カメラの映像は,
2531 玄関ドア周辺しか撮影されていない。
2532
2533
2534
2535 証拠E
2536
2537 B(男性,
2538 20歳,
2539 青果店手伝い)の検察官調書
2540 「私は,
2541 平成27年11月1日当時,
2542 甲組の組員見習として同組組員であるAの運転
2543 手をしていたが,
2544 同日,
2545 私は,
2546 Aの指示で,
2547 AをH県I市J町まで車で送った。
2548
2549 私がA
2550 の指示どおりJ町の路上に車を止めると,
2551 Aは,
2552 『すぐ戻ってくるから。
2553
2554 』と言って車か
2555 ら降り,
2556 どこかに行った。
2557
2558 その時間は午後2時頃だった。
2559
2560 5分ほど経過して,
2561 少し遠く
2562 で『パン,
2563 パン』という音が聞こえ,
2564 間もなく,
2565 マスクをしたAが車に走って戻ってき
2566 て,
2567 後部座席に乗り込んだ。
2568
2569 その際,
2570 Aは,
2571 右手に拳銃を持っていた。
2572
2573 その後,
2574 私は,
2575
2576 Aの指示どおりAをA方に送った。
2577
2578 翌2日,
2579 Aの指示で,
2580 AをH県K市内のレンタルボ
2581 ックス店まで車で送った。
2582
2583
2584
2585 証拠F
2586
2587 捜査報告書
2588 「Bの供述からH県K市内のレンタルボックス店を特定し,
2589 同店に照会した結果,
2590
2591 成27年11月2日に,
2592 A名義で同店のレンタルボックスを借りた者がいることが判明
2593 した。
2594
2595 そこで,
2596 平成28年1月5日,
2597 捜索差押許可状に基づき,
2598 A名義で賃借中の上記
2599 レンタルボックスを捜索したところ,
2600 封筒に入れられた回転弾倉式拳銃1丁が発見され
2601 た。
2602
2603
2604
2605 証拠G
2606
2607 回転弾倉式拳銃1丁
2608
2609 証拠H
2610
2611 鑑定書
2612 「証拠Cの弾丸3個は,
2613 口径9o△△型回転弾倉式拳銃用実包の弾丸であり,
2614 発射時
2615 に刻まれた擦過痕が一致しているため,
2616 同一の拳銃で発射されたものと認められる。
2617
2618
2619 拠Gの回転弾倉式拳銃1丁は,
2620 口径9oの△△型回転弾倉式拳銃である。
2621
2622 科学警察研究
2623 所の技官が,
2624 証拠Gの拳銃で試射し,
2625 試射弾丸と証拠Cの弾丸を対照した結果,
2626 試射弾
2627 丸と証拠Cの弾丸の発射時の擦過痕が一致した。
2628
2629 よって,
2630 証拠Cの弾丸3個は,
2631 証拠G
2632 の拳銃から発射されたものと認められる。
2633
2634
2635
2636 証拠I
2637
2638 捜索差押調書
2639 「平成28年2月12日,
2640 捜索差押許可状に基づきA方の捜索を実施したところ,
2641
2642 モ帳1冊が発見され,
2643 本件に関係すると思料される記載があったため,
2644 これを押収した。
2645
2646
2647
2648 証拠J
2649
2650 メモ帳1冊(2頁目に『11/1
2651
2652 J町1−1−3』という手書きの記載があり,
2653
2654
2655 の下に乙組事務所周辺に似た手書きの地図が記載されている。
2656
2657 その他の頁は白紙である
2658
2659 が,
2660 表紙の裏にAとCが一緒に写っている写真シールが貼付されている。
2661
2662
2663 証拠K
2664
2665 C(女性,
2666 25歳,
2667 飲食店従業員)の警察官調書
2668 「私は,
2669 平成27年2月頃からAと交際しており,
2670 Aが私の家に泊まっていくことも
2671 ある。
2672
2673 Aといつ会ったかなど,
2674 いちいち覚えていない。
2675
2676
2677
2678 証拠L
2679
2680 Aの上申書(平成28年2月26日付け)
2681 (A4版のコピー用紙に証拠Jのメモ帳の2頁目を複写した書面の余白に以下の記載
2682 がある。
2683
2684
2685 「これは私が書いた犯行計画のメモに間違いない。
2686
2687 実行予定日と乙組事務所の住所と
2688 その周辺の地図を記載した。
2689
2690
2691
2692 証拠M
2693
2694 Aの検察官調書(平成28年3月1日付け)
2695 「事件の1週間前,
2696 乙組の組員が甲組や私の悪口を言っていたという話を聞いたので,
2697
2698 私は頭に来て,
2699 拳銃を撃って乙組の連中を脅そうと思った。
2700
2701 そこで,
2702 私は,
2703 知人から拳
2704 銃を入手し,
2705 平成27年11月1日,
2706 Bに運転させて,
2707 乙組の事務所近くまで車で行き,
2708
2709 午後2時頃,
2710 私だけ車から降りて乙組事務所に向かった。
2711
2712 私は,
2713 乙組事務所の門扉に近
2714 づくと,
2715 ズボンのポケットに入れていた拳銃を取り出し,
2716 門扉前の路上から門扉の向こ
2717 う側正面にある乙組事務所玄関付近を狙って拳銃を3発撃った。
2718
2719 目を閉じて撃ったため
2720 人が事務所から出てきたことに気付かなかった。
2721
2722
2723
2724
2725
2726 受訴裁判所は,
2727 平成28年3月7日,
2728 Aに対する殺人未遂被告事件を公判前整理手続に付す
2729 る決定をした。
2730
2731 検察官は,
2732 同月18日,
2733 証明予定事実記載書を同裁判所及びAの弁護人に提出
2734 ・送付するとともに,
2735 同裁判所に証拠@ないしH及びMの取調べを請求し,
2736 Aの弁護人に当
2737 該証拠を開示し,
2738 Aの弁護人は,
2739 同月23日,
2740 同証拠の閲覧・謄写をした。
2741
2742 Aの弁護人は,
2743
2744 年4月6日,
2745 検察官に類型証拠の開示請求をし,
2746 検察官は,
2747 同月11日,
2748 同証拠を開示した。
2749
2750
2751 Aの弁護人は,
2752 逮捕直後からAとの接見を繰り返していたが,
2753 当初からAが証拠Mと同旨の
2754 供述をしていたため,
2755 同月20日の公判前整理手続期日において,
2756 「Aが拳銃を撃った犯人
2757 であること(以下「犯人性」という。
2758
2759 )は争わないが,
2760 殺意を争う。
2761
2762 」旨の予定主張を裁判所及
2763 び検察官に明示するとともに,
2764 検察官請求証拠に対する意見を述べた。
2765
2766
2767
2768
2769
2770 同月30日,
2771 Aの弁護人がAと接見したところ,
2772 Aは,
2773 これまでの供述を翻し,
2774 「本当は,
2775
2776 自分はやっていない。
2777
2778 名前は言えないが世話になった人から頼まれて身代わりになった。
2779
2780 押収
2781 されたメモ帳もその人のもので,
2782 私はそのメモ帳には何も書いていない。
2783
2784 自分にはアリバイが
2785 あり,
2786 犯行当日は,
2787 女友達のCと,
2788 C方にずっと一緒にいた。
2789
2790 」旨述べた。
2791
2792 Aの弁護人は,
2793
2794 年5月1日,
2795 Cから事情を聞いたところ,
2796 Cは,
2797 「平成27年11月1日は,
2798 Aと自宅にずっ
2799 と一緒にいた。
2800
2801 警察官から取調べを受け,
2802 その日のAの行動について尋ねられたが,
2803 覚えてい
2804 ないという話をしたかもしれない。
2805
2806 」旨述べた。
2807
2808 Aの弁護人は,
2809 Cの警察官調書の開示請求を
2810 しておらず,
2811 証拠Kを閲覧していなかったが,
2812 上記の経過を受けて,
2813 殺意は争わないが,
2814
2815 人性を争う方針を固めた。
2816
2817
2818
2819
2820
2821 平成28年5月20日の公判前整理手続期日において,
2822 検察官は,
2823 犯人性が争点となった
2824 ため,
2825 証拠I,
2826 J及びLの取調べを追加請求したが,
2827 Aの弁護人は証拠Iについては同意し,
2828
2829 証拠Jについては異議あり,
2830 証拠Lについては不同意である旨意見を述べた。
2831
2832
2833 その後,
2834 数回の公判前整理手続期日を経て,
2835 同年6月15日に,
2836 裁判所は,
2837 証拠決定をし,
2838
2839 争点はAの犯人性であること及び証拠Eの採用を留保し,
2840 Bの証人尋問を実施すること等の証
2841 拠の整理結果を確認して審理計画を策定し,
2842 公判前整理手続を終結した。
2843
2844 公判期日は,
2845 同年7
2846 月1日から同月6日までと定められた。
2847
2848
2849
2850 〔設問1〕
2851 下線部に関し,
2852 Aの弁護人は,
2853 証拠Mと同旨のA供述を基に,
2854 Aの殺意について,
2855 どのような
2856
2857 事実上の主張をすべきか,
2858 殺意の概念に言及しつつ答えなさい。
2859
2860
2861 〔設問2〕
2862 下線部に関し,
2863 検察官は,
2864 証拠Bの実況見分調書を「犯行現場の状況等」という立証趣旨で証
2865 拠請求したところ,
2866 Aの弁護人が下線部において,
2867 「下線部及びは立会人の現場供述である
2868 ため,
2869 証拠Bは不同意である。
2870
2871 なお,
2872 作成の真正も争う。
2873
2874 」旨の意見を述べた。
2875
2876 これに対し,
2877 検察
2878 官は,
2879 証拠Bの証拠請求を維持したいと考えた。
2880
2881
2882 (1)
2883
2884 検察官は,
2885 裁判長から下線部及びが現場供述であるか否かについて意見を求められた場
2886
2887 合,
2888 どのような意見を述べるべきか,
2889 理由を付して答えなさい。
2890
2891
2892 (2)
2893
2894 Aの弁護人が,
2895 証拠Bの実況見分調書について不同意意見を維持した場合,
2896 検察官は,
2897 どの
2898
2899 ような対応をとるべきか,
2900 答えなさい。
2901
2902
2903 〔設問3〕
2904 Aの弁護人は,
2905 下線部の弁護方針の下,
2906 それまでの犯人性についての主張を変更し,
2907 Aが犯人
2908 ではない旨主張し,
2909 Cの証言により,
2910 Aが犯行当時C方にいた事実を立証したいと考えた。
2911
2912 Aの弁
2913 護人が,
2914 下線部以後の公判前整理手続において行うべき手続は何か。
2915
2916 公判前整理手続に関する条
2917 文上の根拠を挙げて,
2918 手続内容を簡潔に列挙しなさい。
2919
2920
2921 〔設問4〕
2922 (1)
2923
2924 下線部に関し,
2925 仮に証拠Lが存在しなかった場合,
2926 証拠I及びJから「Aが犯人である事
2927
2928 実」がどのように推認されるか。
2929
2930 証拠@ないしHから何者かが公訴事実記載の犯行に及んだこ
2931 とが認められることを前提に,
2932 検察官の想定する推認過程について答えなさい。
2933
2934 なお,
2935 証拠J
2936 の2頁の記載は,
2937 対照可能な特徴を有する文字が少ないため筆跡鑑定は実施できなかったもの
2938 とする。
2939
2940
2941 (2)
2942
2943 証拠I及びJに加えて,
2944 証拠Lも併せて考慮することによって,
2945 小問(1)で答えた「Aが犯人
2946
2947 である事実」を推認する過程にどのような違いが生じるか答えなさい。
2948
2949
2950 〔設問5〕
2951 (1)
2952
2953 第1回公判期日において,
2954 Bの証人尋問が実施され,
2955 検察官が尋問の冒頭で以下の質問をし
2956
2957 たところ,
2958 弁護人が誘導尋問である旨の異議を申し立てた。
2959
2960 検察官は,
2961 異議には理由がないと
2962 述べた場合,
2963 裁判所は,
2964 その申立てに対しどのような決定をすべきか,
2965 理由を付して答えなさ
2966 い。
2967
2968
2969 検察官:
2970 「それでは,
2971 証人が,
2972 平成27年11月1日に,
2973 被告人を乗せて車を運転したときのこ
2974 とについてお尋ねします。
2975
2976
2977 (2)
2978
2979 第2回公判期日において,
2980 Cの証人尋問が実施され,
2981 Cは,
2982 弁護人の主尋問において,
2983 「平成
2984
2985 27年11月1日,
2986 Aは,
2987 一日中,
2988 私の家で私と一緒におり,
2989 外出したこともなかった。
2990
2991 」旨証
2992 言し,
2993 検察官の反対尋問において,
2994 「Aが起訴される前に,
2995 私は警察官の取調べを受けたが,
2996
2997 のような話をしたのか覚えていないし,
2998 その時,
2999 警察官が調書を作成したかどうかも覚えてい
3000 ない。
3001
3002 」旨証言した。
3003
3004 検察官は,
3005 更にCの記憶喚起に努めたが,
3006 その証言内容に変更がなかった
3007 ため,
3008 裁判長に許可を求めることなく,
3009 Cに証拠KのCの署名押印部分を示そうとした。
3010
3011
3012 このような調書の一部を示す行為は,
3013 検察官の反対尋問において許されるか,
3014 条文上の根拠
3015 に言及しつつ結論とその理由を答えなさい。
3016
3017
3018
3019 (出題の趣旨)
3020 本問は,
3021 犯人性及び殺意の有無が争点となる殺人未遂被告事件を題材に,
3022 殺人罪
3023 の構成要件,
3024 証拠法,
3025 公判前整理手続,
3026 刑事事実認定の基本構造,
3027 証人尋問を含む
3028 公判手続についての基本的知識を活用して,
3029 殺意の有無に関する当事者の主張(設
3030 問1 ),
3031 実況見分調書の立会人の指示説明部分の証拠能力及びその立証方法(設問
3032 2 ),
3033 公判前整理手続において当事者が主張を変更する場合に採るべき具体的手続
3034 (設問3),
3035 証拠から犯人性を推認する場合の証拠構造(設問4),
3036 証人尋問の方法
3037 及び異議に対する裁判所の対応(設問5)について,
3038 問題に指定してある法曹三者
3039 それぞれの立場から主張すべき事実や採るべき対応を検討して回答することを求め
3040 ており ,
3041 【事例】に現れた証拠や事実,
3042 手続の経過に応じた法曹三者の適切な対応
3043 を具体的に検討させることにより,
3044 基本的知識の正確な理解及び基礎的実務能力を
3045 試すものである。
3046
3047
3048
3049 [一般教養科目]
3050 以下の[A][B]の文章を読んで,
3051 後記の各設問に答えなさい。
3052
3053
3054 [A]
3055
3056 インターネットの普及によって人々は,
3057 様々な情報に簡単にアクセスできるようになってき
3058 ている。
3059
3060 その一方で,
3061 「知識」と「情報」を概念的に区分することに固有の関心=利害(inter
3062 est)を持つ人々も,
3063 いまだに存在する。
3064
3065 例えば法律・医療・会計などの領域では,
3066 各種の専
3067 門家が一定の条件下で知識を独占的に運用し続けている。
3068
3069 個々の学問分野において研究者が果
3070 たしている役割も,
3071 基本的にこれと同じである。
3072
3073 すなわち研究者は,
3074 「斯界の権威」として学
3075 問的知識の生産や流通にコミットし続けている。
3076
3077
3078
3079 〔設問1〕
3080 一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには,
3081 何が求められるであろうか。
3082
3083 学問に
3084 おける専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割に触れつつ,
3085 15行程度で論述し
3086 なさい。
3087
3088
3089 [B]
3090
3091 インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と,
3092 手軽にコミュニケ
3093
3094 ーションを取ることが可能になってきている。
3095
3096 その一方で,
3097 (地理的・空間的に)身近な人々
3098 との関係が,
3099 より疎遠になる傾向が認められる。
3100
3101 人々が中間的な集団から解放されることを「個
3102 人化(individualization)」と呼ぶならば,
3103 グローバル化は個人化と軌を一にしている。
3104
3105 グロ
3106 ーバル化=個人化は今日,
3107 社会の各所に多大な影響を及ぼしつつある。
3108
3109 例えば家族や地域のコ
3110 ミュニティーは,
3111 その中で恒常的な解体圧力にさらされている。
3112
3113
3114 〔設問2〕
3115 グローバル化=個人化が進行する中で,
3116 「国家」はいかなる立場に置かれているであろうか。
3117
3118
3119 具体的な事象を取り上げつつ,
3120 15行程度で論述しなさい。
3121
3122
3123
3124 (出題の趣旨)
3125 設問1及び2は,
3126 共に,
3127 インターネットを始めとする情報技術の発展による今日
3128 の社会の様相の変化を題材とするものである。
3129
3130
3131 設問1は,
3132 情報技術の発展により専門的知識と情報一般の区別が曖昧になりつつあ
3133 る中,
3134 学問領域を例にとって,
3135 専門的知識と情報一般がどのように区分されるかに
3136 ついての一般的な理解を問うている。
3137
3138 学問的知識の存立要件のみならず,
3139 それが専
3140 門家集団によってどのように担保されているかについても的確に説明することが求
3141 められる。
3142
3143
3144 設問2では,
3145 グローバル社会においては,
3146 国家そのものが「中間的な集団」とし
3147 て位置付けられつつあることを前提に,
3148 グローバル化(個人化)が,
3149 国家的な結合
3150 を弱める側面と再強化する側面を併せ持つことにつき,
3151 適切な具体例を挙げつつ説
3152 明することが求められる。
3153
3154
3155 いずれの設問においても,
3156 全体として指定の分量内で簡明に記述する能力も求め
3157 られる。
3158
3159
3160
3161