1 論文式試験問題集[刑事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 次の【事例】を読んで,
8 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までについて,
9 具体的な事実を指摘し
10 つつ答えなさい。
11
12
13 【事例1】
14
15
16 甲(男性,
17 17歳)は,
18 私立A高校(以下「A高校」という。
19
20 )に通う高校2年生であり,
21
22 高校のPTA会長を務める父乙(40歳)と二人で暮らしていた。
23
24
25
26
27
28 7月某日,
29 甲は,
30 他校の生徒と殴り合いのけんかをして帰宅した際,
31 乙から,
32 顔が腫れている
33 理由を尋ねられ,
34 他校の生徒とけんかをしたことを隠そうと思い,
35 とっさに乙に対し,
36 「数学の
37 丙先生から,
38 試験のときにカンニングを疑われた。
39
40 カンニングなんかしていないと説明したのに,
41
42 丙先生から顔を殴られた。
43
44 」とうその話をしたところ,
45 乙は,
46 その話を信じた。
47
48
49 乙は,
50 かねてから丙に対する個人的な恨みを抱いていたことから,
51 この機会に恨みを晴らそう
52 と思い,
53 丙が甲に暴力を振るったことをA高校のPTA役員会で問題にし,
54 そのことを多くの人
55 に広めようと考えた。
56
57 そこで,
58 乙は,
59 PTA役員会を招集した上,
60 同役員会において,
61 「2年生
62 の数学を担当する教員がうちの子の顔を殴った。
63
64 徹底的に調査すべきである。
65
66 」と発言した。
67
68
69 お,
70 同役員会の出席者は,
71 乙を含む保護者4名とA高校の校長であり,
72 また,
73 A高校2年生の数
74 学を担当する教員は,
75 丙だけであった。
76
77
78
79
80
81 前記PTA役員会での乙の発言を受けて,
82 A高校の校長が丙やその他の教員に対する聞き取り
83 調査を行った結果,
84 A高校の教員25名全員に丙が甲に暴力を振るったとの話が広まった。
85
86 丙は,
87
88 同校長に対し,
89 甲に暴力を振るったことを否定したが,
90 当分の間,
91 授業を行うことや甲及び乙と
92 接触することを禁止された。
93
94
95
96 〔設問1〕
97
98 【事例1】における乙の罪責について,
99 論じなさい(業務妨害罪及び特別法違反の点
100
101 は除く。
102
103 )。
104
105
106 なお,
107 乙には,
108 公益を図る目的はなかったものとする。
109
110
111 【事例2】
112
113
114 丙は,
115 甲及び乙との接触を禁止されていたが,
116 乙に対し,
117 前記PTA役員会での乙の発言の理
118 由を直接尋ねたいと考え,
119 8月某日午後10時に乙を町外れの山道脇の駐車場に呼び出した。
120
121
122 乙は,
123 丙と直接話をするに当たり,
124 甲が丙から顔を殴られたことについて,
125 甲に改めて確認し
126 ておこうと思い,
127 甲に対し,
128 「今日の午後10時に山道脇の駐車場で丙と会うことになった。
129
130
131 の話は本当だよな。
132
133 」と尋ねた。
134
135 甲は,
136 乙と丙が直接話合いをすることを知り,
137 このままうそを
138 つき通すことはできないと思い,
139 乙に対し,
140 うそであることを認めて謝った。
141
142 乙は,
143 甲がうそを
144 ついていたことに怒り,
145 「なぜ,
146 うそをついたんだ。
147
148 」と怒鳴りながら,
149 甲の顔を複数回殴って叱
150 責した。
151
152
153
154
155
156 同日午後10時頃,
157 乙は,
158 自動車を運転して,
159 前記駐車場まで行き,
160 同駐車場に自動車を駐車
161 して自動車から降りると,
162 同駐車場において,
163 既に到着していた丙と向かい合って,
164 話を始めた。
165
166
167 そして,
168 丙が乙に前記PTA役員会での乙の発言の理由を尋ねたところ,
169 乙は,
170 「息子もうそだ
171 と認めたので,
172 この話は,
173 これで終わりだ。
174
175 」と言い,
176 一方的に話を終わらせ,
177 自己の自動車の
178 方に向かって歩き出した。
179
180 丙は,
181 乙の態度に納得できずに「まだ話は終わっていない。
182
183 」と言っ
184 て乙を追い掛けたところ,
185 乙は,
186 急いで自動車に乗り込もうとした際,
187 石につまずいて転倒し,
188
189 額をコンクリートブロックに強く打ち付け,
190 額から血を流して意識を失った。
191
192 丙は,
193 乙が額から
194 血を流して意識を失ったことに驚き,
195 その場から立ち去った。
196
197
198 - 2 -
199
200
201
202 甲は,
203 乙と丙の話合いがどうなったかが気になり,
204 同日午後10時30分頃,
205 バイクを運転し
206 て前記駐車場に向かい,
207 同駐車場で倒れている乙を発見した。
208
209 甲は,
210 同駐車場に止めたバイクに
211 またがったまま,
212 乙に「親父。
213
214 大丈夫か。
215
216 」と声を掛けたところ,
217 これにより乙が意識を取り戻
218 して立ち上がった。
219
220 乙は,
221 甲が同駐車場にいることには気付かず,
222 自己の自動車を駐車した場所
223 に向かおうとしたが,
224 意識がはっきりとしていなかったため,
225 その場所とは反対方向の崖に向か
226 って歩き出し,
227 約10メートル歩いた崖近くで転倒して意識を失った。
228
229
230 山道脇の駐車場には,
231 街灯がなく,
232 夜になると車や人の出入りがほとんどなかった。
233
234 さらに,
235
236 乙が転倒した場所は,
237 草木に覆われており,
238 山道及び同駐車場からは倒れている乙が見えなかっ
239 た。
240
241 もっとも,
242 乙が崖近くで転倒した時点では,
243 乙の怪我の程度は軽傷であり,
244 その怪我により
245 乙が死亡する危険はなかった。
246
247 しかし,
248 乙が転倒した場所のすぐそばが崖となっており,
249 崖から
250 約5メートル下の岩場に乙が転落する危険があった。
251
252
253
254
255
256 甲は,
257 バイクから降りて,
258 乙に近づいて乙の様子を見ており,
259 乙の怪我が軽傷であること,
260
261 が転倒した場所のすぐそばが崖となっており,
262 崖下の岩場に乙が転落する危険があることを認識
263 していた。
264
265 また,
266 乙が崖近くで転倒した時点で,
267 同駐車場に駐車中の乙の自動車の中に乙を連れ
268 て行くなどすれば,
269 乙が崖下に転落することを確実に防止することができたし,
270 甲は,
271 それを容
272 易に行うことができた。
273
274
275 しかし,
276 甲は,
277 丙から顔を殴られたという話がうそであることを認めて謝ったのに,
278 乙から顔
279 を複数回殴られ叱責されたことを思い出し,
280 乙を助けるのをやめようと考え,
281 乙の救助を一切行
282 うことなく,
283 その場からバイクで走り去った。
284
285
286
287
288
289 その後,
290 甲が自宅に到着した頃,
291 乙は,
292 意識を取り戻して起き上がろうとしたが,
293 崖に向かっ
294 て体を動かしたため,
295 崖下に転がり落ち,
296 後頭部を岩に強く打ち付け,
297 後頭部から出血して意識
298 を失った。
299
300 この時点で,
301 乙の怪我の程度は重傷であり,
302 乙が意識を失ったまま崖下に放置されれ
303 ば,
304 その怪我により乙が死亡する危険があった。
305
306
307
308
309
310 同日午後11時30分頃,
311 乙は,
312 意識を取り戻し,
313 自己の携帯電話機で119番通報を行い,
314
315 臨場した救急隊員により救助され,
316 搬送先の病院で緊急手術を受けて一命を取り留めた。
317
318
319
320 〔設問2〕 【事例2】における甲の罪責について,
321 以下の及びに言及しつつ,
322 論じなさい
323 (特別法違反の点は除く。
324
325 )。
326
327
328
329
330 不作為による殺人未遂罪が成立するとの立場からは,
331 どのような説明が考えられるか。
332
333
334
335
336
337 保護責任者遺棄等罪(同致傷罪を含む。
338
339 )にとどまるとの立場からは,
340 不作為による殺人未
341 遂罪が成立するとの立場に対し,
342 どのような反論が考えられるか。
343
344
345
346 〔設問3〕
347 10
348
349 【事例2】の6から9までの事実が以下の10及び11の事実であったとする。
350
351
352
353 甲は,
354 乙と丙の話合いがどうなったかが気になり,
355 同日午後10時30分頃,
356 バイクを運転
357 して山道脇の駐車場に向かい,
358 同駐車場で意識を失って倒れている丁を発見した。
359
360 丁は,
361 甲と
362 は無関係な者であるが,
363 その怪我の程度は重傷であり,
364 そのまま放置されれば,
365 その怪我によ
366 り死亡する危険があった。
367
368
369 甲は,
370 丁の体格や着衣が乙に似ていたこと,
371 同駐車場に乙の自動車が駐車されていたこと,
372
373 夜間で同駐車場には街灯がなく暗かったことから,
374 丁を乙と誤認した。
375
376
377
378 11
379
380 甲は,
381 重傷を負った乙が死んでも構わないと思いつつ,
382 乙と誤認した丁の救助を一切行うこ
383 となく,
384 その場からバイクで走り去った。
385
386 その後,
387 丁は,
388 意識を取り戻し,
389 自己の携帯電話機
390 で119番通報を行い,
391 臨場した救急隊員により救助され,
392 搬送先の病院で緊急手術を受けて
393 一命を取り留めた。
394
395
396 なお,
397 甲と同じ立場にいる一般人でも,
398 丁を乙と誤認する可能性が十分に存在した。
399
400 また,
401
402 - 3 -
403
404 同駐車場には,
405 丁以外にも負傷した乙が倒れており,
406 甲は,
407 乙の存在に気付いていなかったが,
408
409 丁を救助するために丁に近づけば,
410 容易に乙を発見することができた。
411
412
413 この場合,
414 甲には無関係の丁を救助する義務は認められないので殺人未遂罪は成立しないとの
415 主張に対し,
416 親に生じた危難について子は親を救助する義務を負うとの立場を前提に,
417 甲に同罪
418 が成立すると反論するには,
419 どのような構成が考えられるかについて,
420 論じなさい。
421
422
423
424 - 4 -
425
426 論文式試験問題集[刑事系科目第2問]
427
428 - 1 -
429
430 [刑事系科目]
431 〔第2問〕(配点:100)
432 次の【事例】を読んで,
433 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
434
435
436 【事
437
438
439 例】
440 平成30年1月10日午前10時頃,
441 A工務店の者と名乗る男が,
442 H県I市J町のV方を訪問し,
443
444
445 V(70歳,
446 女性)に対し,
447 無料でV方の修繕箇所の有無を点検する旨申し向け,
448 Vの了解を得て,
449
450 V方を点検した。
451
452 その男は,
453 実際には特段修繕を要する箇所などなかったにもかかわらず,
454 Vに対
455 し,
456 「屋根裏に耐震金具は付いていますが,
457 耐震金具に不具合があって,
458 このまま放っておくと,
459
460 地震が来たら屋根が潰れてしまいます。
461
462 すぐに工事をしないと大変なことになります。
463
464 代金は10
465 0万円です。
466
467 お金を用意できるのであれば,
468 今日工事をすることも可能です。
469
470 」などと嘘を言って
471 Vをだまし,
472 V方の屋根裏の修繕工事を代金100万円で請け負った。
473
474 その男は,
475 Vから,
476 「昼過
477 ぎであれば100万円を用意できるので,
478 今日工事をしてほしい。
479
480 」と言われたため,
481 同日午後1
482 時頃,
483 再度,
484 V方を訪問し,
485 Vから工事代金として現金100万円を受領し,
486 領収書(以下「本件
487 領収書」という。
488
489 )をVに交付した。
490
491 その後,
492 その男は,
493 V方の修繕工事を実施したかのように見
494 せ掛けるため,
495 形だけの作業を行った上で,
496 Vに対し,
497 工事が終了した旨告げて立ち去った。
498
499
500 本件領収書の記載内容は【資料1】のとおりであり,
501 の部分にA工務店の代表者として甲の名
502 字が刻された認め印が押されているほかは,
503 全てプリンターで印字されたものであった。
504
505
506
507
508 Vは,
509 同日午後7時頃,
510 Vの長男WがV方を訪問した際に前記工事の話をしたことを契機に,
511
512 欺の被害に遭ったことに気付き,
513 Wから,
514 犯人が言った内容を記載しておいた方がよいと言われた
515 ため,
516 その場で,
517 メモ用紙にその内容を記載した(以下「本件メモ」という。
518
519 )。
520
521
522 本件メモの記載内容は【資料2】のとおりであり,
523 全ての記載がVによる手書き文字であった。
524
525
526 翌11日,
527 V及びWは,
528 警察署に相談に訪れた。
529
530 Vは,
531 司法警察員Pに対し,
532 本件領収書及び本
533 件メモを提出した上で,
534 「100万円の詐欺の被害に遭いました。
535
536 犯人から言われた内容は,
537 被害
538 当日にメモに書きました。
539
540 犯人は中肉中背の男でしたが,
541 顔はよく覚えていません。
542
543 ただ,
544 犯人が,
545
546 『A工務店』と書かれたステッカーが貼られた赤色の工具箱を持っていたことは覚えています。
547
548
549 テッカーは,
550 直径5センチメートルくらいの小さな円形のもので,
551 工具箱の側面に貼られていまし
552 た。
553
554 」と説明した。
555
556 Wは,
557 Pに対し,
558 「提出したメモは,
559 昨夜,
560 母が,
561 私の目の前で記載したもので
562 す。
563
564 そのメモに書かれていることは,
565 母が私に話した内容と同じです。
566
567 」と説明した。
568
569
570
571
572
573 Pらが所要の捜査を行ったところ,
574 本件領収書に記載された住所には,
575 実際にA工務店の事務所
576 (以下「本件事務所」という。
577
578 )が存在することが判明した。
579
580
581 本件事務所は,
582 前面が公道に面した平屋建ての建物で,
583 玄関ドアから外に出るとすぐに公道とな
584 っていた。
585
586 また,
587 同事務所の前面の腰高窓にはブラインドカーテンが下ろされており,
588 両隣には建
589 物が接しているため,
590 公道からは同事務所内を見ることができなかった。
591
592
593 Pらは,
594 同月15日午前10時頃,
595 本件事務所付近の公道上に止めた車両内から同事務所の玄関
596 先の様子を見ていたところ,
597 同事務所の玄関ドアの鍵を開けて中に入っていく中肉中背の男を目撃
598 した。
599
600 その男が甲又はA工務店の従業員である可能性があると考え,
601 @Pは,
602 同日午前11時頃,
603
604 その男が同事務所から出てきた際に,
605 同車内に設置していたビデオカメラでその様子を撮影した。
606
607
608 Pが撮影した映像は全体で約20秒間のものであり,
609 男が同事務所の玄関ドアに向かって立ち,
610
611 アの鍵を掛けた後,
612 振り返って歩き出す姿が,
613 容ぼうも含めて映っているものであった。
614
615
616 Pがその映像をVに見せたところ,
617 Vは,
618 「この映像の男は,
619 犯人に似ているような気がします
620 が,
621 同一人物かどうかは自信がありません。
622
623 」と述べた。
624
625
626 その後の捜査の結果,
627 A工務店の代表者が甲という氏名であること及び前記映像に映っている男
628 が甲であることが判明した。
629
630
631 Pらは,
632 引き続き本件事務所を1週間にわたって監視したが,
633 甲の出入りは何度か確認できたも
634 - 2 -
635
636 のの,
637 他の者の出入りはなかったため,
638 A工務店には甲のほかに従業員はいないものと判断して監
639 視を終えた。
640
641
642 Pらは,
643 その監視の最終日,
644 甲が赤色の工具箱を持って本件事務所に入っていくのを目撃した。
645
646
647 Pらは,
648 同工具箱に「A工務店」と書かれたステッカーが貼られていることが確認できれば,
649 甲が
650 犯人であることの有力な証拠になると考えたが,
651 ステッカーが小さく,
652 甲が持ち歩いている状態で
653 はステッカーの有無を確認することが困難であった。
654
655 そこで,
656 Pらは,
657 同事務所内に置かれた状態
658 の工具箱を確認できないかと考えた。
659
660 しかし,
661 公道からは同事務所内の様子を見ることができなか
662 ったので,
663 玄関上部にある採光用の小窓から内部を見ることができないかと考え,
664 向かい側のマン
665 ションの管理人に断った上で同マンション2階通路に上がったところ,
666 同小窓を通して同事務所内
667 を見通すことができ,
668 同事務所内の机上に赤色の工具箱が置かれているのが見えた。
669
670 そして,
671 Pが
672 望遠レンズ付きのビデオカメラで同工具箱を見たところ,
673 同工具箱の側面に,
674 「A工務店」と記載
675 された小さな円形のステッカーが貼られているのが見えたことから,
676 APは,
677 同ビデオカメラで,
678
679 同工具箱を約5秒間にわたって撮影した。
680
681 Pが撮影したこの映像には,
682 同事務所内の机上に工具箱
683 が置かれている様子が映っているのみで,
684 甲の姿は映っていなかった。
685
686
687 Pがその映像をVに見せたところ,
688 Vは,
689 「犯人が持っていた工具箱は,
690 この映像に映っている
691 工具箱に間違いありません。
692
693 」と述べた。
694
695
696 その後,
697 Pは,
698 Vの供述調書を作成するためにVの取調べを実施しようとしたが,
699 その直前にV
700 が脳梗塞で倒れたため,
701 Vの取調べを実施することはできなかった。
702
703 Vの担当医師は,
704 Vの容体に
705 ついて,
706 「今後,
707 Vの意識が回復する見込みはないし,
708 仮に意識が回復したとしても,
709 記憶障害が
710 残り,
711 Vの取調べをすることは不可能である。
712
713 」との意見を述べたため,
714 Pは,
715 Vの供述調書の作
716 成を断念した。
717
718
719
720
721 Pらは,
722 同年2月19日,
723 甲を前記1記載の事実に係る詐欺罪で通常逮捕するとともに,
724 本件事
725 務所等の捜索を実施し,
726 甲の名字が刻された認め印等を押収した。
727
728 そして,
729 甲は,
730 同月21日,
731
732 察官に送致され,
733 引き続き勾留された。
734
735
736 甲は,
737 検察官Qによる取調べにおいて,
738 「V方に行ったことはありません。
739
740 」と述べて犯行を否認
741 した。
742
743
744 その後,
745 捜査を遂げた結果,
746 本件領収書から検出された指紋が,
747 逮捕後に採取した甲の指紋と合
748 致するとともに,
749 本件領収書の印影と前記認め印の印影が合致したことなどから,
750 Qは,
751 同年3月
752 12日,
753 甲を前記詐欺の事実で公判請求した。
754
755
756
757
758
759 甲は,
760 同年4月23日に行われた第1回公判期日において,
761 前同様の弁解を述べて犯行を否認し
762 た。
763
764
765 Qは,
766 本件領収書の印影と前記認め印の印影が合致する旨の鑑定書,
767 本件領収書から検出された
768 指紋と甲の指紋が合致する旨の捜査報告書,
769 Vから本件メモ及び本件領収書の任意提出を受けた旨
770 の任意提出書等のほか,
771 B本件メモ及びC本件領収書の取調べを請求した。
772
773 Qは,
774 本件メモの立証
775 趣旨については,
776 「甲が,
777 平成30年1月10日,
778 Vに対し,
779 本件メモに記載された内容の文言を
780 申し向けたこと」,
781 本件領収書の立証趣旨については,
782 「甲が平成30年1月10日にVから屋根裏
783 工事代金として100万円を受け取ったこと」であると述べた。
784
785
786 弁護人は,
787 前記鑑定書,
788 前記捜査報告書及び前記任意提出書等については同意したが,
789 本件メモ
790 については不同意,
791 本件領収書については不同意かつ取調べに異議があるとの証拠意見を述べた。
792
793
794 その後,
795 Wの証人尋問が実施され,
796 Wは,
797 前記2のWがPに対して行った説明と同旨の証言をした。
798
799
800
801 〔設問1〕 下線部@及びAの各捜査の適法性について,
802 具体的事実を摘示しつつ論じなさい。
803
804
805 〔設問2〕
806 1.下線部Bの本件メモの証拠能力について,
807 立証趣旨を踏まえ,
808 具体的事実を摘示しつつ論じな
809 さい。
810
811
812 - 3 -
813
814 2.下線部Cの本件領収書の証拠能力について,
815 立証趣旨を踏まえ,
816 立証上の使用方法を複数想定
817 し,
818 具体的事実を摘示しつつ論じなさい。
819
820 ただし,
821 本件領収書の作成者が甲であり,
822 本件領収書
823 が甲からVに交付されたものであることは,
824 証拠上認定できるものとする。
825
826
827
828 - 4 -
829
830 【資料1】
831
832 領収書
833 V
834
835
836
837 平成30年1月10日
838
839 ¥ 1,
840 000,
841 000 (税込)
842 但 屋根裏工事代金として
843 上記正に領収いたしました
844
845 〒 ○○○−○○○○
846
847 H県I市K町1−2−3
848 TEL ○○○−○○○−○○○○
849
850 A工務店 代表
851
852
853
854
855
856 【資料2】
857 1/10
858 (今日午前10時,
859 A工務店と名乗る男性が訪問してきた。
860
861 そのとき言われたこと。
862
863
864 屋根裏に耐震金具は付いているが,
865 耐震金具に不具合がある。
866
867
868 地震が来たら,
869 屋根が潰れる。
870
871 すぐに工事しないと大変なことになる。
872
873
874 工事代金は100万円。
875
876
877 お金が用意できるのであれば,
878 今日工事をすることも可能。
879
880
881
882 - 5 -
883
884