1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒
10
11
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 【事
21
22
23 例】
24 A株式会社(以下「A社」という。
25
26 )は,
27 複数のビルを所有して不動産賃貸業を営む株式会
28 社であり,
29 その代表取締役はBである。
30
31
32 A社は,
33 平成20年夏頃,
34 甲ビル及びその敷地(以下「本件不動産」という。
35
36 )を購入する
37 こととし,
38 C銀行から3億円を借り入れ,
39 その担保として本件不動産にC銀行を1番抵当権者
40 とする抵当権を設定し,
41 その旨の登記がされた。
42
43
44 A社は,
45 平成23年4月1日,
46 Dに対し,
47 賃貸期間を10年,
48 賃料を月額100万円と定め
49 て,
50 甲ビルを貸し渡した(以下,
51 この契約を「本件賃貸借契約」という。
52
53 )。
54
55 その際,
56 Dは,
57
58 社に対し,
59 敷金1000万円を交付した。
60
61
62
63
64
65 A社は,
66 平成27年頃から,
67 借り手のつかない所有ビルが多くなってきたことや,
68 かねてよ
69 り手掛けていた株式取引の失敗等が重なったことにより,
70 次第に経営が悪化し,
71 所有するビル
72 のメンテナンス費用の捻出や借入金の返済にも窮するようになった。
73
74 そこで,
75 A社は,
76 平成2
77 8年秋頃,
78 E信用金庫から5000万円を借り入れ,
79 その担保として本件不動産にE信用金庫
80 を2番抵当権者とする抵当権を設定し,
81 その旨の登記がされた。
82
83
84 しかし,
85 A社は,
86 その後も一向に経営状態が好転せず,
87 平成30年1月末には,
88 従業員に対
89 する給料も支払えない事態に陥った。
90
91 また,
92 A社は,
93 同年2月末日を支払期日とする多数の取
94 引先に対する債務の弁済に充てる資金がない状態にあることが判明した。
95
96 そこで,
97 A社は,
98
99 月26日,
100 裁判所に破産手続開始の申立てをした。
101
102
103 申立てを受けた裁判所は,
104 同月27日,
105 破産手続開始の決定を行い,
106 A社の破産管財人とし
107 てXを選任した。
108
109
110 A社が破産手続開始の決定を受けた時点におけるC銀行が有する貸金債権の額は2億500
111 0万円,
112 E信用金庫が有する貸金債権の額は4000万円であり,
113 他方で,
114 本件不動産の評価
115 額は2億円であった。
116
117
118
119 〔設問1〕
120
121
122 A社の破産手続が開始された後も,
123 本件賃貸借契約は継続され,
124 Dは,
125 そのまま甲ビルを使
126 用していた。
127
128 この場合に,
129 Dは,
130 A社に対して有する敷金返還請求権を自働債権として,
131 毎月
132 の賃料債務と相殺することができるか,
133 論じなさい。
134
135 また,
136 相殺することができないとした場
137 合に,
138 敷金返還請求権の保全のためにDが採ることのできる法的手段として,
139 どのようなもの
140 があるか,
141 論じなさい。
142
143
144
145
146
147 上記のとおり,
148 A社の破産手続開始後も本件賃貸借契約が継続されていたところ,
149 C銀行
150 が,
151 A社のDに対する賃料債権を物上代位により差し押さえた。
152
153 この場合に,
154 Dは,
155 で論じ
156 た敷金返還請求権の保全のための法的手段を採ることができるかどうかについて,
157 理由を付し
158 た上で論じなさい。
159
160
161
162 〔設問2〕
163
164
165 A社の破産管財人Xは,
166 本件不動産を除き,
167 破産財団に属する財産の換価を終了した。
168
169 Xは,
170
171 本件不動産をそのまま管理していても,
172 担保余剰がなく,
173 固定資産税や管理費用が掛かるだけ
174 で破産債権者にとって何のメリットもないため,
175 本件不動産を破産財団から放棄した上,
176 早期
177 に配当を実施したいと考えている。
178
179 この場合に,
180 Xは,
181 本件不動産を破産財団から放棄するた
182 めに,
183 どのような手続を採る必要があるか,
184 また,
185 破産財団から放棄された本件不動産は,
186
187 - 2 -
188
189 に帰属するか,
190 説明しなさい。
191
192
193
194
195 Xは,
196 上記の手続を行って,
197 本件不動産を破産財団から放棄した。
198
199 その後,
200 E信用金庫は,
201
202 本件不動産からは到底その貸金債権4000万円を回収する見込みはないと考えた。
203
204 この場合
205 に,
206 E信用金庫がA社の破産手続に参加して配当を受けるためには,
207 どのような手続を採る必
208 要があるか。
209
210 破産手続開始の時において破産財団に属する不動産に抵当権を有する者が,
211 破産
212 手続において行使することができる破産債権の額についての原則,
213 及び,
214 E信用金庫が採るべ
215 き手続の相手方に触れつつ,
216 論じなさい。
217
218
219
220 - 3 -
221
222 〔第2問〕(配点:50)
223 次の事例について,
224 以下の設問に答えなさい。
225
226
227 【事
228
229 例】
230 食品製造業を営むA株式会社(以下「A社」という。
231
232 )は,
233 味に定評のある老舗であり,
234 自ら
235
236 が所有する甲食品工場で弁当等を生産し,
237 特に定番の総菜商品は有名デパートを含む得意先各社
238 から受注を得ていた。
239
240 しかし,
241 A社は,
242 平成30年正月に向けて発売した期待の新商品が不人気
243 に終わり,
244 不良在庫を抱えて資金繰りが悪化した。
245
246 折悪しく大口の売掛先から受け取っていた同
247 年3月末日を満期とする手形が不渡りとなったことから,
248 A社は資金繰りに窮して破綻が決定的
249 となり,
250 A社代表取締役社長B(以下「B社長」という。
251
252 )は,
253 C弁護士に民事再生手続による
254 事業再生を依頼した。
255
256
257 A社は,
258 自ら振り出した同年4月25日を満期とする手形を決済できないことが確実になった
259 ことから,
260 同月20日,
261 C弁護士が申立代理人となって再生手続開始の申立てをし,
262 必要な手続
263 費用を予納した。
264
265 同日,
266 この申立てが受理されて,
267 裁判所は監督委員としてD弁護士を選任した。
268
269
270 A社には,
271 税金の滞納や労働債権の未払は生じていない。
272
273 B社長は,
274 従来どおり甲食品工場を生
275 産拠点として事業を継続し,
276 得られる収益によって再生債権を弁済する内容の再生計画案を想定
277 している。
278
279
280 C弁護士は,
281 同月21日にA社の主要債権者である以下の3者に連絡したところ,
282 以下のとお
283 りのコメントを得たので,
284 その旨を裁判所に報告した。
285
286
287 <コメント@:E銀行>
288 E銀行は,
289 A社の総債権者の中で唯一の担保権者であり,
290 甲食品工場に抵当権を有している。
291
292
293 A社の再生手続開始の申立時に判明している全ての債権者が再生債権者としてその権利を行使す
294 ることが見込まれる額の総額(以下「総権利行使見込額」という。
295
296 )に対して,
297 E銀行が再生債
298 権者としてその権利を行使することが見込まれる額が占める割合は30%である。
299
300
301 E銀行のコメントは,
302 「突然の申立てに困惑して行内の考えもまとまっておらず,
303 現時点で手
304 続に賛成とは到底申し上げられない。
305
306 担保権の行使についてはこれから検討する。
307
308 」とのことで
309 あった。
310
311
312 <コメントA:F株式会社(以下「F社」という。
313
314 )>
315 F社は,
316 A社の最大の仕入先である。
317
318 総権利行使見込額に対して,
319 F社が再生債権者としてそ
320 の権利を行使することが見込まれる額が占める割合は15%である。
321
322
323 F社のコメントは,
324 「どうせ再建はできないと思うので,
325 協力することは考えていない。
326
327 」との
328 ことであった。
329
330
331 <コメントB:G株式会社(以下「G社」という。
332
333 )>
334 G社は,
335 F社に次ぐA社の仕入先である。
336
337 総権利行使見込額に対して,
338 G社が再生債権者とし
339 てその権利を行使することが見込まれる額が占める割合は10%である。
340
341
342 G社のコメントは,
343 「定番の総菜を中心にすれば,
344 A社の業績回復も不可能ではないと思う。
345
346
347 自社の債権については,
348 再生債権として再生計画に基づく弁済を受けることは仕方がないが,
349
350 生手続開始の申立て後も取引を継続して新たに食材をA社に卸した場合,
351 その代金までも回収す
352 ることができないとすれば被害が拡大してしまうので,
353 不安である。
354
355 」とのことであった。
356
357
358 〔設問1〕
359
360
361 裁判所が再生手続開始の決定をすることができるかどうかについて,
362 E銀行,
363 F社及びG社
364 のコメントを踏まえ,
365 理由を付した上で論じなさい。
366
367
368
369
370
371 A社は,
372 G社に食材の取引を継続してもらえるようにするため,
373 どのような方策を採ること
374 が考えられるか。
375
376
377
378 - 4 -
379
380 【事
381
382 例(続き)】
383 裁判所は,
384 平成30年4月30日,
385 再生手続開始の決定をした。
386
387 当該決定がされた後に,
388 監督
389
390 委員D宛てにB社長の不正を知らせる匿名の通知があり,
391 これを契機として以下の事実が判明し
392 た。
393
394
395 <判明した事実@>
396 A社の仕入先であるH株式会社(以下「H社」という。
397
398 )は,
399 同年3月末日現在,
400 A社に対し
401 食材等に係る売掛債権を有していた。
402
403 A社の手形不渡りが確実であることを知ったH社は,
404 同年
405 4月19日,
406 A社と協議し,
407 再生手続開始の申立て後もA社との取引を継続することを約束する
408 一方,
409 A社は,
410 在庫として保有する食材をH社に代物弁済した。
411
412
413 <判明した事実A>
414 A社は,
415 長年にわたりF社から食材を仕入れてきた。
416
417 平成25年頃,
418 F社はA社に対して代金
419 の割引を申し出た。
420
421 しかし,
422 B社長は,
423 これを断り,
424 F社に対し,
425 仕入価額はそのまま据え置き
426 つつ,
427 F社が申し出た割引額に相当する額をバックマージンとしてB社長の妻への顧問料の名目
428 で支払うように求め,
429 再生手続開始の申立ての直前まで,
430 B社長の妻名義の預金口座に毎月送金
431 させていた。
432
433 B社長の妻がF社の顧問となっている実態はなく,
434 B社長が当該預金口座を実質的
435 に管理しており,
436 当該預金口座に送金された金銭は,
437 B社長の個人的な遊興費に充てられていた。
438
439
440 〔設問2〕
441
442
443 <判明した事実@>について,
444 A社が行った代物弁済につき,
445 監督委員Dが訴え又は否認の
446 請求によって否認権を行使してH社に価額の償還を求めるためには,
447 A社は,
448 どのような手続
449 を採る必要があるか。
450
451 また,
452 そのような手続を採ることが必要とされる理由についても,
453 管財
454 人が選任されている場合と対比しつつ論じなさい。
455
456
457
458
459
460 <判明した事実A>について,
461 A社は,
462 B社長に対して,
463 F社からB社長の妻名義の預金口
464 座に送金された金額に相当する額の支払を求めることとしたが,
465 B社長は,
466 C弁護士の説得に
467 もかかわらず,
468 これを任意に支払おうとはしなかった。
469
470 この事情を知ったG社は,
471 「A社の主
472 張どおり,
473 B社長はA社に当該額を支払うべきだが,
474 このままではB社長がこれを支払わずに
475 費消してしまうおそれがある。
476
477 C弁護士の説得を待っていてはらちが明かない。
478
479 」と考えた。
480
481
482 この場合に,
483 G社は,
484 A社の再生手続において,
485 どのような方策を採ることが考えられるか。
486
487
488
489 - 5 -
490
491 - 6 -
492
493 論文式試験問題集[租
494
495 - 7 -
496
497
498
499 法]
500
501 [租
502
503
504
505 法]
506
507 〔第1問〕(配点:50)
508
509
510 甲株式会社(以下「甲社」という。
511
512 )に会社員として勤務するXは,
513 かねてからのギャンブル
514 好きが高じ,
515 甲社からの給与収入だけでは生活費にすら事欠く状態となり,
516 消費者金融会社等か
517 ら借金をしては,
518 これをギャンブルや利息の返済に充てることを繰り返す自転車操業状態に陥っ
519 ていた。
520
521
522 Xは,
523 そのような折りのある日,
524 大金をつぎ込んだギャンブルに失敗し,
525 腹いせに酒を飲んだ
526 後,
527 自動車を運転して帰宅途中,
528 ハンドル操作を誤り,
529 バイク及びトラックと相次いで衝突する
530 交通事故を起こした(以下「本件事故」という。
531
532 )。
533
534
535 本件事故により,
536 バイクを運転していたAが怪我をしたほか,
537 A所有のバイク及びB株式会社
538 (以下「B社」という。
539
540 )所有のトラックが破損する被害が生じた。
541
542
543
544
545
546 Aは,
547 取引先から仕入れた弁当をバイクで宅配する事業を個人で営んでおり,
548 本件事故時はそ
549 の日の弁当の配達を全て終えて事務所に戻る途中であった。
550
551
552 Aの宅配用のバイクは,
553 本件事故当日に修理が完了し,
554 翌日からの弁当の配達に使うことがで
555 きる状態となったが,
556 Aは,
557 通院して治療を受けるため完治までの間に合計5日間にわたり弁当
558 の宅配業を終日臨時休業せざるを得なかった。
559
560
561 Aは,
562 通院治療の費用として10万円,
563 宅配用のバイクの修理費用として10万円をそれぞれ
564 支出した。
565
566 また,
567 Aの1日当たりの平均的な利益を基に算出した5日分の休業補償として相当な
568 金額は10万円であった。
569
570
571 Aは,
572 Xとは以前からの知り合いであったことから,
573 Xのためを思い,
574 人身事故よりも行政処
575 分や刑事処分が軽い物損事故として警察に届け出ていたが,
576 損害賠償金は多めにもらってやろう
577 と考え,
578 Xに対し,
579 「30万円払ってもらえば実費の弁償としては足りるのだが,
580 怪我のことを
581 警察に黙っていてやったのだから,
582 後はそっちで考えてほしいな。
583
584 」と告げた。
585
586
587 Xは,
588 物損事故として届け出てくれたAに恩義を感じていたことから,
589 慰謝料を考慮に入れて
590 も損害賠償金としては明らかに多いとは思いつつ,
591 Aに対し,
592 「100万円払おう。
593
594 」と申し出た
595 ところ,
596 Aがこれを承諾したので,
597 「Xは,
598 Aに対し,
599 本件事故の損害賠償金として100万円
600 を支払う。
601
602 」と明記した示談書をAと取り交わし,
603 100万円をAに支払った。
604
605
606
607
608
609 B社は,
610 Xに対し,
611 本件事故直後から,
612 訴訟外で,
613 トラックの修理に要した費用の賠償として
614 400万円の支払を求めていたが,
615 Xは,
616 言を左右にして支払を拒んでいた。
617
618
619 Xは,
620 飲酒運転により本件事故を起こしたことを理由に甲社から懲戒解雇された後は定職に就
621 かず,
622 時折アルバイトやギャンブルで収入を得るほかは無収入で,
623 銀行に30万円の定期預金(以
624 下「本件定期預金」という。
625
626 )があるほかは,
627 他にみるべき資産も有していない状態であった。
628
629
630 B社は,
631 一時はXを被告とする損害賠償請求訴訟の提起を弁護士に依頼することも検討したが,
632
633 Xの経済状態が好転する兆しはなく,
634 仮に勝訴判決を得てもXが任意に支払に応じる見込みはな
635 い上,
636 本件定期預金に対する強制執行の手続を採っても,
637 訴訟及び強制執行手続を依頼した弁護
638 士に対する費用や報酬の支払に少なくとも40万円を要すると見込まれた。
639
640
641 そこで,
642 B社は,
643 トラックの修理費用の回収を断念し,
644 本件事故の翌事業年度において,
645 40
646 0万円の損害賠償請求権の全額を貸倒損失として経理処理をした。
647
648
649 以上の事案について,
650 以下の設問に答えなさい。
651
652
653 なお,
654 保険金(いわゆる自賠責保険及び任意保険に基づくもの)の支払はないものとする。
655
656
657
658 〔設
659
660 問〕
661
662 1.Aの精神的苦痛に対する慰謝料としてはせいぜい15万円が相当であったとした場合,
663 AがX
664 から損害賠償金として受け取った100万円について,
665 所得税法における所得の概念を踏まえつ
666 - 8 -
667
668 つ,
669 Aが所得税を課税される範囲を説明しなさい。
670
671
672 2.B社が貸倒損失として経理処理した400万円について,
673 参考となる最高裁判所の判決の内容
674 を指摘しつつ,
675 B社の法人税の計算上,
676 その全額を損金の額に算入することができるか否かを論
677 じなさい。
678
679
680 (参照条文)所得税法施行令
681 (非課税とされる保険金,
682 損害賠償金等)
683 第30条
684
685 法第9条第1項第17号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(こ
686
687 れらに類するものを含む。
688
689 )は,
690 次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額の
691 うちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするた
692 めの金額が含まれている場合には,
693 当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
694
695
696
697
698 (前略)心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基
699 因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受ける
700 ものを含む。
701
702
703
704
705
706 (前略)不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠
707 償金(これらのうち第94条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するものを
708 除く。
709
710
711
712
713
714 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第94条の規定に該当する
715 ものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。
716
717
718
719 - 9 -
720
721 〔第2問〕(配点:50)
722 X社は,
723 カキ養殖業を営む資本金1000万円の株式会社で,
724 A,
725 B及びCの3姉弟(以下,
726
727 の3人を併せて,
728 「Aら」という。
729
730 )が,
731 それぞれ発行済株式総数の60%,
732 20%,
733 20%を保有
734 している同族会社である。
735
736 X社はAらの父Dが100%出資して設立した会社で,
737 Dの死亡後,
738
739 らがX社株式をDから相続により取得したものである。
740
741 しかし,
742 B及びCはカキ養殖業に興味を持
743 たず,
744 別の分野の職業に就いたため,
745 X社の取締役はA,
746 B及びCの3名で構成されているものの,
747
748 X社において定期的に取締役会が開催されることはなく,
749 Aが代表取締役として,
750 経理を含むX社
751 の業務全般を掌握していた。
752
753 Aらは毎年,
754 暦年を事業年度とするX社の事業年度末を経過した2月
755 中に「株主総会」と称して集まり,
756 AからX社の業績等について説明を受けてこれを了承していた
757 が,
758 B及びCの関心はどちらかと言えばX社についての説明ではなく,
759 その後にAらの家族を交え
760 て,
761 X社が養殖したカキを使った焼きガキや土手鍋を「美味しい遺産ね。
762
763
764 「今年の配当も美味いぞ。
765
766
767 などと言いつつ賞味することにあった。
768
769
770 X社のこのような状況を奇貨としたAは,
771 平成27年中に,
772 自ら,
773 帳簿に架空の外注費を計上し,
774
775 その支払を装って1000万円をX社の銀行口座から自分が管理する銀行口座に移して(以下,
776
777 の1000万円の移動を,
778 「本件資金移動」という。
779
780 ),
781 遊興等で生じた借金の弁済に充てた。
782
783
784 平成29年中に行われたX社に対する税務調査で,
785 本件資金移動の事実が判明したため,
786 所轄税
787 務署長Eは,
788 この1000万円を平成27年にAがX社から与えられた賞与と考え,
789 X社に対して
790 源泉所得税の納税告知処分(以下,
791 この納税告知処分を,
792 「本件納税告知処分」という。
793
794 )を行うと
795 ともに,
796 平成27事業年度(平成27年12月末に終了する事業年度を指す。
797
798 )の法人税につき,
799
800 課税所得を1000万円増額させる修正申告を勧奨したが,
801 X社がこれを拒否したため,
802 勧奨した
803 修正申告と同じ内容の増額更正処分(以下,
804 この増額更正処分を,
805 「本件更正処分」という。
806
807 )を行
808 った。
809
810
811 上記の税務調査後の平成30年2月中にX社の「株主総会」が開催され,
812 その場でAは,
813 @X社
814 の代表取締役の地位を濫用し,
815 X社の資金を引き出して私的な支払に充てたこと(以下「本件横領」
816 という。
817
818 )を認めるとともに,
819 Aその弁償を約束し,
820 これがB及びCに了承された。
821
822 その後平成3
823 0年5月に,
824 AがX社に対して1000万円を支払うべき債務を負担していることを確認し,
825 これ
826 を平成31年(2019年)末までに弁済する旨の債務分割弁済契約公正証書が作成された。
827
828
829 以上の事案について,
830 以下の設問に答えなさい。
831
832
833 〔設
834
835 問〕
836
837 1.X社が本件納税告知処分に従って税額を納付することを拒否した場合,
838 税務署長Eは当該税額
839 をAから徴収することができるか否かを,
840 源泉徴収の法律関係を簡潔に説明しつつ論じなさい。
841
842
843 2.Aらは,
844 平成27年にX社が,
845 本件横領により1000万円の損失を被ったとの見解で一致し
846 ている。
847
848 この見解の下で,
849 本件更正処分の適法性について論じなさい。
850
851 ただし,
852 同族会社の行為
853 計算否認規定は考慮しなくてよい。
854
855
856 3.本件納税告知処分の適法性について,
857 結論を異にする見解にも言及しつつ,
858 自説を述べなさい。
859
860
861 なお,
862 本件納税告知処分に,
863 手続法上の瑕疵はないものとする。
864
865
866
867 - 10 -
868
869 論文式試験問題集[経
870
871 - 11 -
872
873
874
875 法]
876
877 [経
878
879
880
881 法]
882
883 〔第1問〕(配点:50)
884 A社は,
885 各種の合成樹脂を原料としたパイプやホースなどの管を製造販売する会社であり,
886 資本
887 金は200億円,
888 年間売上げは2000億円,
889 従業員の人数は2500人である。
890
891 A社の主力商品
892 の中には,
893 X製品とY製品があり,
894 両製品は合成樹脂を原料とした管製品であるが,
895 X製品は専ら
896 家庭用に用いられる一方で,
897 Y製品は主として工場配管用に用いられる。
898
899 また,
900 原料価格の差を反
901 映して,
902 X製品はY製品の約2倍の価格となっている。
903
904 なお,
905 A社は,
906 過去に,
907 私的独占の禁止及
908 び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。
909
910 )違反で排除措置命令や課徴金納付
911 命令等の行政処分を受けたことはない。
912
913
914 ところで,
915 平成30年4月1日午前,
916 公正取引委員会の審査官がA社を訪問し,
917 X製品とY製品
918 の価格カルテルの疑いで立入検査を開始した。
919
920
921 その上で,
922 審査官は,
923 両製品の担当営業部長甲について,
924 任意の事情聴取を行うために公正取引
925 委員会への出頭を求めたが,
926 甲は出張中でこれに直ちには応じられなかった。
927
928
929 同日午後になって,
930 A社から委任を受けた弁護士乙は,
931 甲の携帯電話に電話をかけて,
932 事実関係
933 を確認したところ,
934 甲から,
935 次のような説明を受けた。
936
937
938
939
940 甲がA社を代表して参加した平成29年1月中旬の業界団体の営業部長会合で,
941 X製品とY製
942 品の市況が話題になった。
943
944 同会合には,
945 A社ないしF社の6社の各営業部長が出席していた。
946
947
948 お,
949 我が国における市場占有率は,
950 X製品とY製品のいずれについても,
951 ここ10年ほど,
952 A社
953 20パーセント,
954 B社25パーセント,
955 C社10パーセント,
956 D社15パーセント,
957 E社15パ
958 ーセント,
959 F社10パーセントとなっているほか,
960 輸入製品が5パーセントとなっている。
961
962
963
964
965
966 同会合において,
967 B社部長が,
968
969 「最近,
970 X製品の主要な原材料Zの価格が値上がり傾向にあり,
971
972 このままでは各社とも採算が悪化してしまう。
973
974 どうにか,
975 原材料の値上がり分だけでも,
976 平成2
977 9年4月1日以降のX製品の価格に転嫁できるよう努力したい。
978
979 また,
980 Y製品の価格も,
981 通常X
982 製品の価格と連動して決まるので,
983 同時に値上げをしたい。
984
985 皆さんの考えを聞きたい。
986
987 」と発言
988 した。
989
990
991
992
993
994 C社部長は,
995 こうした話題について競争事業者と話をすることは社内で禁じられているとして,
996
997 退席した。
998
999 甲は,
1000 「当社では,
1001 製品価格について他社と合意をすることは禁止されているため,
1002
1003 皆さんとの間での合意には参加できません。
1004
1005 しかし,
1006 会議に参加することまでは禁止されていま
1007 せん。
1008
1009 」と述べて同会合にとどまった。
1010
1011 甲は,
1012 X製品の原材料Zの価格上昇にどう対応するのか
1013 日頃から悩んでいたこともあり,
1014 他社がどのようにコスト上昇分を製品価格に転嫁しようとして
1015 いるのか知りたかったため,
1016 各社の議論を注意深く聞いていた。
1017
1018 また,
1019 甲が他社から退席を求め
1020 られることもなかった。
1021
1022
1023
1024
1025
1026 D社部長は,
1027 X製品の値上げについては原材料Zの値上がりを理由に顧客の理解を得られるだ
1028 ろうが,
1029 Y製品の値上げについては難しいだろうとの意見を述べた。
1030
1031 E社部長とF社部長は,
1032
1033 製品とY製品のいずれについても,
1034 是非とも積極的に値上げを目指したいと発言した。
1035
1036
1037
1038
1039
1040 同会合の最後に,
1041 B社部長から,
1042 「大体皆さんの意見は分かりました。
1043
1044 どうにか,
1045 原材料の値
1046 上がり分だけでも,
1047 うまく製品価格に転嫁できるように頑張りましょう。
1048
1049 」という発言があり,
1050
1051 散会となった。
1052
1053 この1回を除くと,
1054 競争事業者間でX製品とY製品の値上げの議論をしたことは
1055 ない。
1056
1057
1058
1059
1060
1061 甲は,
1062 X製品については他社も基本的には値上げの意向であると確信し,
1063 Y製品についても少
1064 なくともB社,
1065 E社及びF社の3社は値上げの意向であると判断して,
1066 これに同調すべく両製品
1067 の値上げの準備を開始した。
1068
1069 そして,
1070 同会合の約1か月後の平成29年2月中旬に,
1071 B社がX・
1072 Y両製品について10パーセントの値上げを公表したのに続いて,
1073 同年3月1日,
1074 A社はX製品
1075 について10パーセント,
1076 Y製品について5パーセントの値上げを顧客に通告した。
1077
1078 ほぼ同時期
1079 - 12 -
1080
1081 に,
1082 C社もX・Y両製品について5パーセント,
1083 D社はX製品のみ10パーセント,
1084 E社及びF
1085 社はX・Y両製品について7パーセントの値上げを打ち出し,
1086 顧客との間での値上げ交渉に入っ
1087 た。
1088
1089 なお,
1090 各社とも値上げ予定日を同年4月1日としていた。
1091
1092
1093
1094
1095 甲は,
1096 この間の経緯をまとめた資料を自宅のパソコンに保管している。
1097
1098
1099 A社におけるX製品とY製品の各売上げについては,
1100 平成29年1月中旬の業界団体の営業部長
1101
1102 会合での話合いの翌日から平成30年3月31日までの間の総額は,
1103 X製品が100億円でY製品
1104 が80億円,
1105 値上げ予定日である平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間の総額は,
1106
1107 X製品が90億円でY製品が70億円であった。
1108
1109 ただし,
1110 顧客側の値上げへの抵抗も強く,
1111 平成2
1112 9年4月1日の時点で,
1113 X製品については平均で5パーセントの値上げしか実現せず,
1114 Y製品につ
1115 いてはほとんど値上げが実現しなかった。
1116
1117
1118 〔設
1119
1120
1121 問〕
1122 上記の甲の説明内容が全て真実であることを前提として,
1123 A社ないしF社の6社の行為につ
1124 いて,
1125 独占禁止法に違反するといえるか論点を挙げて検討しなさい(同法第8条について言及
1126 する必要はない。
1127
1128 )。
1129
1130
1131
1132
1133
1134 仮にA社が独占禁止法に違反したと考えられる場合,
1135 想定されるA社の課徴金の金額を算出
1136 しなさい(立入検査の日の前日を課徴金算定の基礎となる実行期間の終期と仮定する。
1137
1138 )。
1139
1140 また,
1141
1142 弁護士乙として,
1143 A社に対して,
1144 同社の責任を軽減するために採るべき手段及びそれに必要な
1145 行為に関して助言すべき内容を検討しなさい(助言日は平成30年4月1日とする。
1146
1147 )。
1148
1149
1150
1151 - 13 -
1152
1153 〔第2問〕(配点:50)
1154 個人旅行や仕事上の出張のためにホテルや旅館等,
1155 国内の宿泊施設を予約する方法は,
1156 近年様変
1157 わりしている。
1158
1159 宿泊日数ベースで見ると,
1160 インターネットを通じて予約するものが40パーセント,
1161
1162 旅行業者を通じて予約するものが35パーセント,
1163 電話やファクシミリで直接予約するものが15
1164 パーセント,
1165 その他が10パーセントである。
1166
1167 インターネットを通じて予約する場合には,
1168 直接,
1169
1170 ホテルや旅館のウェブサイト(以下「サイト」という。
1171
1172 )において行うこともできるが,
1173 インター
1174 ネット上で宿泊施設を検索,
1175 比較して予約できるサービスを提供するオンライン旅行予約サービス
1176 事業者(以下「OTA」という。
1177
1178 )を通じて予約することもできる(その割合は,
1179 OTAを通じて
1180 予約するものが9割,
1181 宿泊施設のサイトで直接予約するものが1割である。
1182
1183 )。
1184
1185 国内の宿泊施設の予
1186 約について前年度にOTAが仲介した取扱高のシェア(宿泊日数ベース)は,
1187 A社35パーセント,
1188
1189 B社30パーセント,
1190 C社20パーセント,
1191 D社10パーセント,
1192 E社5パーセントである。
1193
1194 OT
1195 A各社は,
1196 国内の主要なホテルや旅館等と契約を結び,
1197 OTAを通じてユーザーが予約できるよう
1198 にしている。
1199
1200 国内の宿泊施設は,
1201 大規模なホテルチェーンも存在するが,
1202 大部分は中小事業者であ
1203 る。
1204
1205
1206 OTAは,
1207 ホテルや旅館等の宿泊施設から委託を受けて,
1208 当該宿泊施設の写真や動画,
1209 文字デー
1210 タ等をOTAのサイト上に掲示する。
1211
1212 宿泊施設は,
1213 ユーザーがOTAを通じて当該宿泊施設に予約
1214 した場合に,
1215 宿泊料金の一定割合に当たる手数料を当該OTAに支払う。
1216
1217 宿泊施設は,
1218 通常,
1219 複数
1220 のOTAと契約を結ぶとともに,
1221 自らのサイトでもユーザーの予約を受け付けるものが多い。
1222
1223 他方,
1224
1225 OTAは,
1226 ユーザーに対して,
1227 ユーザーが宿泊を予定する日に一定地域内の宿泊施設を利用できる
1228 かどうかを検索し,
1229 他の宿泊施設と比較して予約することを可能にするサービスを無料で提供して
1230 いる。
1231
1232 これらのサービスを提供するため,
1233 OTAは,
1234 相当の費用を掛けて自社のサーバーやコンピ
1235 ュータシステムを開発・保有・運用している。
1236
1237 ユーザーがOTAを通じて特定の宿泊施設を選択し
1238 て予約した場合,
1239 契約はユーザーと宿泊施設の間に成立する。
1240
1241 また,
1242 OTA各社は,
1243 自社のサイト
1244 を通じて予約したユーザーに対して成約額の一定割合をポイントとして付与し,
1245 次回以降,
1246 宿泊料
1247 金の全部又は一部をポイントで支払うことを可能にすることにより,
1248 自社を通じた予約を促そうと
1249 している(ポイントは宿泊施設のサイトで直接予約した場合には使えない。
1250
1251 )。
1252
1253
1254 ところで,
1255 A社は,
1256 宿泊料金の10パーセントを手数料として受領しているところ,
1257 最近,
1258 低い
1259 手数料しか受け取らないことにより安い宿泊料金をホテルや旅館等に提示させようとする事業者が
1260 この分野に新規参入の準備をしていること,
1261 また,
1262 ホテルや旅館等がOTA各社のサイト上で提示
1263 するものより5パーセント程度安い宿泊料金やユーザーに有利なキャンセル条件等を当該宿泊施設
1264 自身のサイト上に提示している場合があることに気付いた。
1265
1266 これらを放置しておくと,
1267
1268
1269
1270 オンライン旅行予約をめぐる競争が激化する
1271
1272
1273
1274 OTAのサイトを利用して宿泊施設を検索,
1275 比較しておきながら,
1276 予約は当該宿泊施設のサイ
1277 トにおいて行うユーザーが増え,
1278 検索・比較サービスは無料で利用されるのにOTAには手数料
1279 が入らない
1280
1281 ことから,
1282 その対策として,
1283 A社は次の2つの案を検討している。
1284
1285
1286 第1案は,
1287 ホテルや旅館などA社と契約する宿泊施設は,
1288 A社のサイト上で提示する当該宿泊施
1289 設の宿泊料金,
1290 朝食の有無,
1291 提供される部屋の数と等級,
1292 キャンセル条件等(以下「宿泊料金等」
1293 という。
1294
1295 )が,
1296 当該宿泊施設自身のサイト上で提示するもの,
1297 及び,
1298 新規参入事業者を含む他のO
1299 TAのサイト上で提示するものと同じか,
1300 より有利になる(例えば宿泊料金でいえば,
1301 A社のサイ
1302 ト上で提示される料金が他の全てのサイト上の料金と同じかそれより安くなる)ようにしなければ
1303 ならない旨の契約条項を導入するというものである。
1304
1305
1306 第2案は,
1307 上記イの対策として,
1308 A社と契約する宿泊施設は,
1309 A社のサイト上で提示する当該宿
1310 泊施設の宿泊料金等が,
1311 当該宿泊施設自身のサイト上で提示するものと同じか,
1312 より有利になるよ
1313 うにしなければならない旨の契約条項を導入するというものである。
1314
1315
1316 - 14 -
1317
1318 A社がいずれかを導入すると,
1319 B社及びC社も同様の契約条項を盛り込むことが予測される。
1320
1321
1322 社及びE社も上記イの問題に気付いたが,
1323 通常の手数料とは別に,
1324 ユーザーが検索・比較サービス
1325 を利用する際に自社に発生する費用を,
1326 毎月,
1327 取引相手であるホテルや旅館等に「サービス利用料」
1328 として支払ってもらうことを検討している。
1329
1330
1331 〔設
1332
1333 問〕
1334 A社が検討している上記の両案について,
1335 独占禁止法第2条第9項第6号ニに基づく一般指定
1336
1337 第12項に該当するかどうか,
1338 【資料】も参照しながら検討しなさい。
1339
1340
1341 なお,
1342 解答に当たっては,
1343 複数のOTAの提供するサイトを横断的に検索して,
1344 これらのサイ
1345 ト上の情報を一覧できるサービスを提供するメタサーチサービス事業者や検索エンジンといわれ
1346 る一般的な検索サービスを提供する事業者を考慮する必要はない。
1347
1348 また,
1349 外国の宿泊施設やユー
1350 ザーについても考慮する必要はない。
1351
1352
1353 【資
1354
1355
1356 料】
1357 公正取引委員会事務局「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(抄)
1358
1359 第1部
1360
1361
1362 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準
1363
1364
1365 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準についての考え方
1366 垂直的制限行為は,
1367 (略)競争に様々な影響を及ぼすものであるが,
1368 公正な競争を阻害するお
1369 それがある場合に,
1370 不公正な取引方法として禁止されることとなる。
1371
1372 垂直的制限行為に公正な競
1373 争を阻害するおそれがあるかどうかの判断に当たっては,
1374 具体的行為や取引の対象・地域・態様
1375 等に応じて,
1376 当該行為に係る取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討した上で,
1377 次の事項を
1378 総合的に考慮して判断することとなる。
1379
1380
1381 なお,
1382 この判断に当たっては,
1383 垂直的制限行為によって生じ得るブランド間競争やブランド内
1384 競争の減少・消滅といった競争を阻害する効果に加え,
1385 競争を促進する効果(略)も考慮する。
1386
1387
1388 また,
1389 競争を阻害する効果及び競争を促進する効果を考慮する際は,
1390 各取引段階における潜在的
1391 競争者への影響も踏まえる必要がある。
1392
1393
1394 @
1395
1396 ブランド間競争の状況(市場集中度,
1397 商品特性,
1398 製品差別化の程度,
1399 流通経路,
1400 新規参入の
1401 難易性等)
1402
1403 A
1404
1405 ブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況,
1406 当該商品を取り扱っている流通業者等の業
1407 態等)
1408
1409 B
1410
1411 垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア,
1412 順位,
1413 ブランド力等)
1414
1415 C
1416
1417 垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程度・態様等)
1418
1419 D
1420
1421 垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位
1422 各事項の重要性は個別具体的な事例ごとに異なり,
1423 垂直的制限行為を行う事業者の事業内容等
1424
1425 に応じて,
1426 各事項の内容も検討する必要がある。
1427
1428 例えば,
1429 プラットフォーム事業者が行う垂直的
1430 制限行為による競争への影響については,
1431 プラットフォーム事業者間の競争の状況や,
1432 ネットワ
1433 ーク効果等を踏まえたプラットフォーム事業者の市場における地位等を考慮する必要がある。
1434
1435
1436 (略)
1437
1438 - 15 -
1439
1440 - 16 -
1441
1442 論文式試験問題集[知的財産法]
1443
1444 - 17 -
1445
1446 [知的財産法]
1447 〔第1問〕(配点:50)
1448 甲は,
1449 発明aについて特許出願(以下「本件特許出願」という。
1450
1451 )をし,
1452 設定登録を受けた(以
1453 下,
1454 これによる権利を「本件特許権」といい,
1455 その登録された特許を「本件特許」という。
1456
1457 )。
1458
1459 これ
1460 に対して乙は,
1461 発明aは本件特許出願前に乙が学会で研究発表したことにより公然知られた発明b
1462 に基づいて,
1463 その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。
1464
1465
1466 が容易に発明することができたものであること,
1467 及び,
1468 発明aは乙と甲による共同発明であるにも
1469 かかわらず,
1470 甲が単独で本件特許出願をしたことを理由として,
1471 特許無効審判(以下「本件審判」
1472 という。
1473
1474 )を請求した。
1475
1476 本件審判を審理した特許庁は,
1477 発明aは乙の学会研究発表に係る発明bに
1478 基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを理由として,
1479 その余については判
1480 断するまでもなく「本件特許を無効とする」との審決(以下「本件審決」という。
1481
1482 )をした。
1483
1484
1485 以上の事実関係を前提として,
1486 以下の設問に答えなさい。
1487
1488 なお,
1489 各設問はそれぞれ独立したもの
1490 であり,
1491 相互に関係はないものとする。
1492
1493
1494 〔設
1495
1496 問〕
1497
1498 1.甲は,
1499 本件審決に対して審決取消訴訟を提起し,
1500 当業者が発明bに基づいて発明aを容易に
1501 発明することはできなかったことの立証に成功したが,
1502 乙は,
1503 発明aは乙と甲による共同発明
1504 であるにもかかわらず,
1505 甲が単独で本件特許出願をしたことを主張している。
1506
1507 このような乙の
1508 主張が上記審決取消訴訟において許されるか否かについて,
1509 甲及び乙は,
1510 それぞれどのように
1511 主張することが考えられるか。
1512
1513 その妥当性についても論じなさい。
1514
1515
1516 2.甲は,
1517 本件審決に対して審決取消訴訟を提起したところ,
1518 本件審決は発明bと発明aとの技
1519 術内容の認定を誤り,
1520 その異同点の認定を誤ったものであって違法であることを理由として,
1521
1522 本件審決を取り消す判決が確定した。
1523
1524 そこで,
1525 特許庁は再度の審理をし,
1526 本件審判の請求を不
1527 成立とする第二次審決をしたため,
1528 乙がこれに対して第二次審決取消訴訟を提起した。
1529
1530 この中
1531 で乙は,
1532 本件特許出願前の公知技術についての新たな証拠cを提出して発明bの技術内容を明
1533 確化し,
1534 これによれば,
1535 発明aは発明bに基づいて当業者が容易に発明することができたもの
1536 であると主張している。
1537
1538 このような乙の主張が上記第二次審決取消訴訟において許されるか否
1539 かについて,
1540 甲及び乙は,
1541 それぞれどのように主張することが考えられるか。
1542
1543 その妥当性につ
1544 いても論じなさい。
1545
1546
1547 3.甲は,
1548 本件審決に対して審決取消訴訟を提起したところ,
1549 当業者が発明bに基づいて発明a
1550 を容易に発明することはできなかったことを理由として本件審決を取り消す判決が確定した。
1551
1552
1553 そこで,
1554 特許庁は再度の審理をし,
1555 本件審判の請求を不成立とする第二次審決をし,
1556 これが確
1557 定した。
1558
1559 その後,
1560 甲は,
1561 発明aを甲に無断で業として実施している乙に対して,
1562 本件特許権に
1563 基づき特許権侵害訴訟を提起した。
1564
1565 この中で乙は,
1566 発明aは発明bに基づいて容易に発明する
1567 ことができたため,
1568 本件特許は無効にされるべきものであるから,
1569 甲は本件特許権を行使する
1570 ことができないと主張している。
1571
1572 このような乙の主張が上記特許権侵害訴訟において許される
1573 か否かについて,
1574 甲及び乙は,
1575 それぞれどのように主張することが考えられるか。
1576
1577 その妥当性
1578 についても論じなさい。
1579
1580
1581 4.甲は,
1582 発明aを甲に無断で業として実施している丙に対して,
1583 本件特許権に基づき特許権侵
1584 害訴訟を提起した。
1585
1586 この中で丙は,
1587 発明aは甲と乙との共同発明であるにもかかわらず,
1588 甲が
1589 単独で本件特許出願をしているため,
1590 本件特許は無効にされるべきものであるから,
1591 甲は本件
1592 特許権を行使することはできないと主張している。
1593
1594 このような丙の主張が許されるか否かにつ
1595 いて論じなさい。
1596
1597
1598
1599 - 18 -
1600
1601 〔第2問〕(配点:50)
1602 観光都市であるK市の市バス運転手であったXは,
1603 K市を退職後,
1604 K市のガイドマップを作成し
1605 て販売することを思い立ち,
1606 市バスだけを利用して巡ることができる知られざる観光スポットを厳
1607 選したガイドマップというコンセプトを考えた。
1608
1609 ガイドマップに載せる観光スポットを探す作業は,
1610
1611 K市を退職した後輩のYが担当し,
1612 Yは3か月をかけてK市を歩き回って,
1613 市バスの停留所近くの
1614 知られざる小さな寺社など多くの観光スポットを探し出し,
1615 その中から人気が出そうなガイドマッ
1616 プに載せるべき観光スポット50か所(以下「本件観光スポット50か所」という。
1617
1618 )を厳選した。
1619
1620
1621 Yは,
1622 K市が作成し無料で自由な使用を認めている標準的なK市の地図に,
1623 本件観光スポット50
1624 か所を書き入れるとともに,
1625 市バスの路線図と停留所名も詳細に書き込んで,
1626 一枚物のガイドマッ
1627 プAを作成した。
1628
1629 なお,
1630 ガイドマップAには,
1631 X及びYの氏名は表示されていない。
1632
1633
1634 以上の事実関係を前提として,
1635 以下の設問に答えなさい。
1636
1637 なお,
1638 設問1及び設問2は,
1639 それぞれ
1640 独立したものであり,
1641 相互に関係はないものとする。
1642
1643
1644 〔設
1645
1646 問〕
1647
1648 1.ガイドマップAは,
1649 イラストなどは一切載っておらず,
1650 通常の地図の表記ルールに従った表
1651 現の域を出ていないが,
1652 市バスの路線図と停留所名が詳細に書き込まれ,
1653 K市の知られざる魅
1654 力的な観光スポットが満載であるとして,
1655 発売後たちまち人気が出た。
1656
1657 Zは,
1658 X及びYに無断
1659 でガイドマップAを利用し,
1660 本件観光スポット50か所をイラストとして表現したほかは,
1661
1662 イドマップAと全く同じ地図Mを作成し,
1663 その販売を開始した。
1664
1665 Xは,
1666 Zに対して,
1667 地図Mの
1668 販売はXの著作権を侵害するものであるとして,
1669 地図Mの販売の差止めを求める訴訟を提起し
1670 た。
1671
1672 Xは,
1673 どのような主張をすべきか。
1674
1675 これに対するZの反論として,
1676 どのような主張が考え
1677 られるか。
1678
1679 それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。
1680
1681
1682 2.ガイドマップAは,
1683 イラストを多用しており,
1684 それらのイラストは,
1685 XとYが同程度の貢献
1686 をして協力して描いた個性的な図柄のものであった。
1687
1688
1689
1690
1691 Yは,
1692 ガイドマップAをインターネット上で配信し,
1693 その際,
1694 XとYの氏名を著作者名と
1695 して表示した。
1696
1697 インターネット配信によってガイドマップAは世間に広く知られることとな
1698 ったため,
1699 ガイドマップAの売上げは飛躍的に伸びた。
1700
1701 Yは,
1702 この配信についてあらかじめ
1703 Xと協議をしたものの,
1704 Xは,
1705 インターネット配信により自分の名前が世界中に知られるこ
1706 とに不安を感じ,
1707 配信に同意していなかった。
1708
1709 Xは,
1710 Yに対して,
1711 YのガイドマップAの配
1712 信行為はXの著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして,
1713 配信行為の差止めを求
1714 める訴訟を提起した。
1715
1716 Xはどのような主張をすべきか。
1717
1718 これに対するYの反論として,
1719 どの
1720 ような主張が考えられるか。
1721
1722 それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。
1723
1724
1725
1726
1727
1728 K市に所在するタクシー会社Sは,
1729 社内で観光タクシー運転手になるための資格試験を実
1730 施しているところ,
1731 今年度の試験は,
1732 ガイドマップAの中の本件観光スポット50か所の名
1733 称を空欄にし,
1734 この空欄に正解の名称を書き入れるように求める問題(以下「本件出題」と
1735 いう。
1736
1737 )であった。
1738
1739 なお,
1740 本件出題に係るガイドマップAにX及びYの氏名は表示されてい
1741 ない。
1742
1743 また,
1744 Sは,
1745 本件出題も含む過去20回分の試験の全問題とその解答(解説は付いて
1746 いない)を年度順に掲載した『観光タクシー資格試験問題集』
1747 (以下「本件問題集」という。
1748
1749
1750 を発行し,
1751 社内の希望者に配付しているが,
1752 本件問題集においてガイドマップAが使用され
1753 た問題は,
1754 今年度分のみであった。
1755
1756 Sは,
1757 本件出題及び本件問題集の発行について,
1758 X及び
1759 Yに無断で行っている。
1760
1761 X及びYは,
1762 Sに対して,
1763 本件出題及び本件問題集にガイドマップ
1764 Aを利用したことは,
1765 X及びYの著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして,
1766
1767 害賠償を求める訴えを提起した。
1768
1769 これに対するSの反論として,
1770 どのような主張が考えられ
1771 るか。
1772
1773 その妥当性についても論じなさい。
1774
1775 なお,
1776 損害額については論じなくてよい。
1777
1778
1779
1780 - 19 -
1781
1782 - 20 -
1783
1784 論文式試験問題集[労
1785
1786 - 21 -
1787
1788
1789
1790 法]
1791
1792 [労
1793
1794
1795
1796 法]
1797
1798 〔第1問〕(配点:50)
1799 次の事例を読んで,
1800 後記の設問に答えなさい。
1801
1802
1803 【事
1804
1805 例】
1806 Y社は,
1807 建物の管理及び警備の請負等を目的とする株式会社であり,
1808 A病院から保安及び管理業
1809
1810 務を請け負っている。
1811
1812 Xは,
1813 Y社の従業員であり,
1814 平成27年4月以降,
1815 A病院に警備員として配
1816 置され,
1817 病棟等の複数の医療関連施設内外のモニター監視,
1818 病院施設全体の巡回監視並びに病院施
1819 設の空調設備及び医療関連設備の点検及び管理のほか,
1820 災害や事故等の突発的事態への緊急対応業
1821 務に従事している。
1822
1823
1824 Y社の就業規則が定める変形労働時間制による勤務シフトにより,
1825 Xは,
1826 二人一組の体制で,
1827
1828 前9時から翌朝の午前9時までの24時間勤務に就いていた(以下このような勤務体制を「二人勤
1829 務体制」という。
1830
1831 )。
1832
1833 二人勤務体制については,
1834 24時間勤務に対して,
1835 1時間の休憩時間のほかに
1836 7時間の仮眠時間が与えられるところ,
1837 二人が交代で仮眠時間を取ることとし,
1838 一人が仮眠時間を
1839 取っているときは,
1840 原則として,
1841 もう一人が守衛室でモニター監視を行うとともに,
1842 適宜病院施設
1843 の巡回及び点検を行うこととするが,
1844 緊急対応の必要がある突発的事態が生じた場合には,
1845 仮眠時
1846 間中の者も随時その対応に当たることとされていた。
1847
1848 守衛室には,
1849 監視用モニター機器,
1850 病院施設
1851 内の設備管理関係機器のほか,
1852 給湯設備があり,
1853 守衛室に隣接した小部屋に仮眠用ベッド等が備え
1854 られ,
1855 この小部屋が休憩・仮眠室とされており,
1856 守衛室と休憩・仮眠室のいずれも,
1857 飲酒及び喫煙
1858 は禁止されていた。
1859
1860 警備員は,
1861 24時間勤務に従事している間は,
1862 病院施設からの外出は禁止され
1863 ており,
1864 休憩又は仮眠時間中は,
1865 通常,
1866 守衛室か休憩・仮眠室で過ごし,
1867 食事も休憩又は仮眠時間
1868 中に守衛室か休憩・仮眠室で取っていた。
1869
1870 なお,
1871 Y社は,
1872 仮眠時間を就業規則所定の労働時間に算
1873 入していなかったが,
1874 これに対応するものとして,
1875 「泊まり勤務手当」(1勤務につき3000円)
1876 を支給していた。
1877
1878 ただし,
1879 仮眠時間中に突発的業務に対応した場合は,
1880 従業員が申告をすれば,
1881
1882 の実作業時間に対して時間外勤務手当を支給する取扱いにしていた。
1883
1884
1885 平成29年5月10日午前2時頃,
1886 Xの仮眠時間中に,
1887 突然,
1888 病院の全施設が停電となった。
1889
1890
1891 の相方勤務者であるBは,
1892 直ちに非常用電源への切替え,
1893 停止した監視用モニター機器の復旧,
1894
1895 院内各室の電気系統機器の作動確認等の種々の緊急措置を講じるとともに,
1896 仮眠中のXを起こし,
1897
1898 守衛室で待機して関係部署との連絡調整に当たることを指示した上,
1899 守衛室から出て,
1900 病院内にい
1901 る看護師及び技師と協力しながら複数の病棟内の入院患者の安全確認や各施設設備の点検作業を行
1902 った。
1903
1904 そして,
1905 ほぼ平常の状態に復した約30分後,
1906 Bが守衛室に戻ったところ,
1907 Xは待機してお
1908 らず,
1909 休憩・仮眠室の仮眠用ベッドで眠っていた。
1910
1911 Bは,
1912 緊急事態は解消されたので,
1913 Xに声を掛
1914 けることなく,
1915 再び通常の監視業務に就いた。
1916
1917 しかし,
1918 夜が明けてから,
1919 A病院に,
1920 複数の入院患
1921 者らから,
1922 未明の停電中,
1923 守衛室に問い合わせをしても誰も応対してくれなかった,
1924 守衛室には缶
1925 ビールの空き缶があった等の苦情が寄せられた。
1926
1927 そこで,
1928 A病院は,
1929 Y社にこの苦情を伝え,
1930 厳正
1931 な対処を求めた。
1932
1933
1934 ところで,
1935 Y社では,
1936 同年4月末に,
1937 C労働基準監督署(以下「C労基署」という。
1938
1939 )から警備
1940 員の仮眠時間の取扱いについて同年5月中旬に調査に入る旨の連絡を受け,
1941 人事課長Dがその対応
1942 に当たっていたが,
1943 D課長は,
1944 この対応の準備の過程で,
1945 Xが匿名の電子メールでY社の警備員の
1946 仮眠時間の取扱いには問題があるのではないかとC労基署に相談していたことを把握していた。
1947
1948
1949 こで,
1950 D課長は,
1951 X及びBの両人と個別に面談をして,
1952 A病院における同月10日の停電対応につ
1953 いて事情を聴取した。
1954
1955 この事情聴取において,
1956 Xは,
1957 これまで仮眠時間中に緊急事態が発生して仮
1958 眠を中断したことはほとんどなかったので油断して缶ビールを飲んで寝入ってしまい,
1959 停電時に守
1960 衛室で待機していなかった旨述べた上で,
1961 反省の態度を示した。
1962
1963 しかし,
1964 Xの普段の勤務状況を聞
1965 - 22 -
1966
1967 かれたBの応答から,
1968 Xが過去にも複数回にわたり休憩・仮眠室で缶ビールを飲んでいたことが明
1969 らかとなった。
1970
1971
1972 この事情聴取の後,
1973 D課長は,
1974 今回のA病院の停電時におけるXの行動は重大な失態であり,
1975
1976 労基署への匿名相談を含めてXの勤務態度には問題があるので懲戒処分が必要である旨,
1977 人事部長
1978 Eに報告した。
1979
1980 これを受けて,
1981 Y社は,
1982 同年7月1日付けで,
1983 Y社の就業規則第60条第3号及び
1984 第65条第5号に基づき,
1985 Xを14日間の出勤停止処分に付した。
1986
1987
1988 【Y社就業規則(抜粋)】
1989 第60条
1990
1991 懲戒は,
1992 次の5種類とする。
1993
1994
1995
1996
1997
1998 けん責
1999
2000 始末書を取り,
2001 将来を戒める。
2002
2003
2004
2005
2006
2007 減給
2008
2009 始末書を取り,
2010 1回につき平均給与1日分の2分の1以内を減額する。
2011
2012 ただし,
2013 処分
2014 が2回以上にわたる場合においても,
2015 減額の総額が1給与支払期における給与総額の1
2016 0分の1以内とする。
2017
2018
2019
2020
2021
2022 出勤停止
2023
2024 始末書を取り,
2025 14日以内を限度として出勤を停止し,
2026 その期間の給与を支払わない。
2027
2028
2029
2030
2031
2032 諭旨退職
2033
2034 退職届を提出するよう勧告する。
2035
2036 退職届を提出しない場合は,
2037 次号の懲戒解雇とする。
2038
2039
2040
2041
2042
2043 懲戒解雇
2044
2045 所轄労働基準監督署長の認定を受け,
2046 予告期間を設けないで即時解雇し,
2047 原則として
2048 退職金は支給しない。
2049
2050
2051
2052 第65条
2053
2054 社員が次の各号のいずれかに該当するときは,
2055 減給又は出勤停止に処する。
2056
2057 ただし,
2058 情状
2059
2060 によりけん責にとどめることがある。
2061
2062
2063 1〜4
2064
2065
2066 (略)
2067
2068 自己の職責を怠り,
2069 誠実に勤務しない等の不適切な行為があったとき。
2070
2071
2072
2073 6〜8
2074 〔設
2075
2076 (略)
2077 問〕
2078
2079 1.Xは,
2080 仮眠時間は労働時間に当たるので,
2081 突発的業務の有無にかかわらず賃金を請求できると
2082 考えている。
2083
2084 このXの見解の当否について,
2085 検討すべき法律上の論点を挙げて,
2086 あなたの意見を
2087 述べなさい。
2088
2089
2090 2.Xは,
2091 出勤停止処分は不当であり,
2092 無効であるとして提訴した。
2093
2094 この出勤停止処分の有効性に
2095 ついて,
2096 検討すべき法律上の論点を挙げて,
2097 あなたの意見を述べなさい。
2098
2099 ただし,
2100 公益通報者保
2101 護法について触れる必要はない。
2102
2103
2104
2105 - 23 -
2106
2107 〔第2問〕(配点:50)
2108 次の事例を読んで,
2109 後記の設問に答えなさい。
2110
2111
2112 【事
2113
2114 例】
2115 医療機器の製造及び販売等を行うY社には,
2116 従業員で組織するZ労働組合(以下「Z組合」とい
2117
2118 う。
2119
2120 )が存在し,
2121 かつては管理職を除く全従業員が加入していたが,
2122 近年は加入率が低下して60
2123 パーセント前後となっている。
2124
2125 Y社とZ組合との間には,
2126 労使関係に関する基本協定が期間の定め
2127 のない形で締結され,
2128 同協定において,
2129 組合事務所及び掲示板の貸与並びに組合費のチェックオフ
2130 等が定められている。
2131
2132 また,
2133 Y社とZ組合は,
2134 毎年1月から3月にかけて,
2135 賃金及び一時金等に関
2136 する団体交渉を行っており,
2137 例年,
2138 遅くとも3月中旬までに交渉が妥結して労働協約が締結され,
2139
2140 Y社は同月内に,
2141 その内容を反映した就業規則の改訂を行ってきた。
2142
2143
2144 Y社の業績は,
2145 ここ数年,
2146 辛うじて赤字は免れているものの,
2147 低迷が続いており,
2148 平成29年秋,
2149
2150 投資ファンドを運営するP社がY社の株式の過半数を取得すると,
2151 経営陣を大幅に入れ替え,
2152 他の
2153 業界からスカウトしてきたAを社長に就任させた。
2154
2155 Aは,
2156 着任時の従業員へのメッセージの中で,
2157
2158 @Y社の近年の業績不振の原因は,
2159 厳しさを増す経営環境に対して労使とも危機意識を持たないま
2160 ま,
2161 ぬるま湯的な経営を行ってきたことにある,
2162 Aこれを抜本的に改めるため,
2163 来年度から2年間,
2164
2165 全従業員の基本給を10パーセント削減する,
2166 Bただし,
2167 経営改革による生産性向上によって業績
2168 が好転した場合には,
2169 2年目以降,
2170 個々の労働者の成果に応じる形で夏季・年末一時金の中に反映
2171 させていく,
2172 という方針を打ち出した。
2173
2174
2175 これを受けて,
2176 平成30年1月に始まった第1回目の団体交渉の冒頭,
2177 人事部長Bを従えて自ら
2178 出席したAは,
2179 Z組合が提出した3パーセントの賃上げ要求は認識が甘すぎると批判し,
2180 同年4月
2181 から2年間,
2182 基本給を10パーセント引き下げる旨の労働協約案を提示して,
2183 直ちに受諾するよう
2184 求めた。
2185
2186 Z組合側は反発し,
2187 副委員長Cが,
2188 これまで賃金引下げは行われたことはなく,
2189 今それが
2190 必要であることの説明も全く不十分だと指摘し,
2191 強い言葉で協約案の撤回を求めたが,
2192 Aは,
2193 経営
2194 再建のために不可欠な措置であると反論し,
2195 そのまま物別れに終わった。
2196
2197 次の第2回目の団体交渉
2198 でも同様のやり取りが行われ,
2199 苛立ったCが,
2200 Y社やAを激しく非難する発言をすると,
2201 Aは,
2202
2203 「Z
2204 組合がそのような態度を取り続けるならば,
2205 基本協定の解消を含む労使関係そのもののリセットを
2206 考えざるを得ない。
2207
2208 」と述べた。
2209
2210
2211 その後,
2212 Z組合は執行委員会を開催し,
2213 今後の団体交渉の進め方について協議した。
2214
2215 Cは,
2216 争議
2217 行為も辞さない覚悟で強く闘うべきだと主張したが,
2218 委員長Dが,
2219 「組合員の多くもY社の方針は
2220 やむを得ないと考えているようであり,
2221 このまま強硬な態度を取れば脱退者が続出しかねない。
2222
2223
2224 は我慢の時ではないか。
2225
2226 」と述べて,
2227 2年間に限定した基本給の10パーセント削減に応じる態度
2228 を示した。
2229
2230 Cは驚き反対したが,
2231 他の出席者からは,
2232 Dの考えを支持する発言が相次ぎ,
2233 今後,
2234
2235 返りとして他の条件の改善を求めることが可能かどうか,
2236 交渉の中で探っていくこととなった。
2237
2238
2239 しかし,
2240 Cはこれに納得できず,
2241 親しい友人であるZ組合の組合員E及びFと共に,
2242 Y社を批判
2243 するビラを作成した。
2244
2245 C,
2246 E及びFの3名(以下「Cら」という。
2247
2248 )は,
2249 翌朝,
2250 勤務時間の開始前
2251 に,
2252 オフィス街にあるY社の本社社屋の前で,
2253 Z組合の組合旗とのぼりを立て,
2254 拡声器を使って演
2255 説を行いながら,
2256 1時間にわたり,
2257 このビラを通行人に配布した。
2258
2259 ビラには,
2260 「Y社の驚くべき賃
2261 下げ提案を糾弾する!」というタイトルの下に,
2262 「A社長の独断専行」,
2263 「経営の責任を転嫁」,
2264 「あ
2265 れが誠実団交か?」,
2266 「企業再生の美名と内実」などの見出しが並び,
2267 Y社とAのほか,
2268 P社及びそ
2269 の代表を務めるQに対する批判も書かれており,
2270 末尾に「Z組合有志」と記載されていた。
2271
2272 また,
2273
2274 C個人の管理するウェブサイトに,
2275 ビラの全文や抗議活動の写真を,
2276 誰でも見ることができる形で
2277 掲載した。
2278
2279
2280 Y社は,
2281 Z組合に対し,
2282 A名義の文書で,
2283 @Cらの行動は就業規則の懲戒事由(会社の名誉・信
2284 用を失墜させる行為)に該当するので,
2285 戒告の懲戒処分に付する予定であるが,
2286 Y社とZ組合の信
2287 - 24 -
2288
2289 頼関係も大きく損なわれてしまった,
2290 Aこの信頼関係を回復させるためには,
2291 Cらについて,
2292 Z組
2293 合自身が一定の処分を行うなど,
2294 毅然とした対応を示すことが必要である,
2295 と通告した。
2296
2297
2298 これを受けたDは,
2299 現在の状況を考えると,
2300 Cらに対し,
2301 Z組合としても何らかの処分を行う必
2302 要があると考えている。
2303
2304 また,
2305 Cを団体交渉の担当から外すとともに,
2306 これ以上交渉が長引くと更
2307 に組合内部で分断が拡大しかねないので,
2308 平成30年3月中旬に予定されている次回の団体交渉の
2309 席で,
2310 Y社の提示した労働協約案を受け入れて調印することを決意した。
2311
2312
2313 なお,
2314 Z組合の組合規約には,
2315 次のような規定がある。
2316
2317
2318 第3条
2319 第10条
2320
2321 委員長は組合を代表してその業務を統括する。
2322
2323
2324 組合員が次の各号のいずれかに該当したときは統制処分の対象とする。
2325
2326
2327
2328
2329
2330 組合規約又は機関の決定に違反したとき。
2331
2332
2333
2334
2335
2336 組合の統制秩序を乱したとき。
2337
2338
2339
2340
2341
2342 組合の運営,
2343 事業の発展を阻害する行為のあったとき。
2344
2345
2346
2347 第11条
2348
2349 統制処分は戒告,
2350 権利の一時停止,
2351 解任,
2352 除名の4種とする。
2353
2354
2355
2356 第12条
2357
2358 統制処分は組合大会の決議により行う。
2359
2360 ただし,
2361 事態急迫の場合には執行委員会の決議
2362
2363 により行うこともできる。
2364
2365 この場合には,
2366 次の組合大会で報告して承認を得るものとする。
2367
2368
2369 〔設
2370
2371 問〕
2372
2373 1.Cらは,
2374 Y社が自分たちに懲戒処分を行うことは不当労働行為に当たると主張している。
2375
2376 これ
2377 に関して検討すべき法律上の論点を挙げて,
2378 あなたの意見を述べなさい。
2379
2380
2381 2.Dは,
2382 Y社との関係を修復するために,
2383 Cらに権利の一時停止の統制処分を行おうと考えてい
2384 る。
2385
2386 その場合に検討すべき法律上の論点を挙げて,
2387 あなたの意見を述べなさい。
2388
2389
2390 3.Dが次回の交渉の席でY社の労働協約案に調印した場合,
2391 Z組合の組合員に対していかなる効
2392 力が生じるかについて,
2393 検討すべき法律上の論点を挙げて,
2394 あなたの意見を述べなさい。
2395
2396 なお,
2397
2398 調印後に予想されるY社の就業規則の変更について論じる必要はない。
2399
2400
2401
2402 - 25 -
2403
2404 - 26 -
2405
2406 論文式試験問題集[環
2407
2408 - 27 -
2409
2410
2411
2412 法]
2413
2414 [環
2415
2416
2417
2418 法]
2419
2420 〔第1問〕(配点:50)
2421 A県に所在する山地に電力会社B社がダムを設置して管理しているところ,
2422 連日続いた集中豪雨
2423 によりダム湖に急激に大量の土砂が堆積し,
2424 ダムの機能が維持できないおそれが生じた。
2425
2426 B社は,
2427
2428 二次災害を防止するため,
2429 ダムから放流水とともに土砂等の大量の堆積物を川に排出した。
2430
2431 その結
2432 果,
2433 川の下流域と河口付近の沿岸海域に急激に濁りが生じた。
2434
2435
2436 また,
2437 C社が設置していた金属加工工場から,
2438 その敷地に漏れ出して堆積していたセレン化合物
2439 が上記集中豪雨により堤防の割れ目を通じて同じ川に排出され,
2440 環境基準の100倍を超えるセレ
2441 ン化合物が上記の濁水に押し流されて沿岸海域に流出した。
2442
2443
2444 Dは,
2445 同じ川の河口から約1キロメートルの海域ではまちの養殖業を営んでいたが,
2446 ダムから堆
2447 積物が排出された数日後に5000匹のはまちが第1いけす内で全滅した。
2448
2449 第1いけすから更に3
2450 00メートル離れた海域にある第2いけすには,
2451 現在もはまち1万匹が養殖されている。
2452
2453
2454 また,
2455 ダムから堆積物が排出された数日後に,
2456 一般消費者であるEは,
2457 第2いけすで養殖された
2458 はまちを食べたところ,
2459 吐き気,
2460 激しい腹痛等の健康被害の症状を発症した。
2461
2462 Eは同じ場所で養殖
2463 されたはまちを食べて同様の症状を発症した者が他に100人程度いると報道で聞いている。
2464
2465
2466 この場合において,
2467 【資料】を参照しつつ,
2468 以下の設問に答えよ。
2469
2470
2471 〔設問1〕
2472
2473
2474 Dは,
2475 B社及びC社に対して,
2476 それぞれどのような法的手段を採ることが考えられるか。
2477
2478
2479 の場合の法律上の問題点について論ぜよ。
2480
2481
2482
2483
2484
2485 Eは,
2486 B社及びC社に対して,
2487 それぞれどのような法的手段を採ることが考えられるか。
2488
2489
2490 の場合の法律上の問題点について論ぜよ。
2491
2492
2493
2494 〔設問2〕
2495 Eは,
2496 専門的・科学的調査を実施して自ら因果関係を立証するのは負担が大きく困難だと思っ
2497 ている。
2498
2499 そのような負担を軽減するにはどのような手続を活用することが考えられるか。
2500
2501 その理
2502 由についても述べよ。
2503
2504
2505 【資
2506
2507
2508 料】
2509 水質汚濁防止法施行令(昭和46年6月17日政令第188号)(抜粋)
2510
2511 第2条
2512
2513 法第2条第2項第1号の政令で定める物質は,
2514 次に掲げる物質とする。
2515
2516
2517
2518 一〜二十二
2519 二十三
2520
2521 (略)
2522
2523 セレン及びその化合物
2524
2525 二十四〜二十八
2526
2527
2528 (略)
2529
2530 公害紛争処理法(昭和45年6月1日法律第108号)(抜粋)
2531 (定義)
2532
2533 第2条
2534
2535 この法律において「公害」とは,
2536 環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項に規定
2537
2538 する公害をいう。
2539
2540
2541 (公害等調整委員会)
2542 第3条
2543
2544 公害等調整委員会(以下「中央委員会」という。
2545
2546 )は,
2547 この法律の定めるところにより公害
2548
2549 に係る紛争についてあつせん,
2550 調停,
2551 仲裁及び裁定を行うとともに,
2552 地方公共団体が行う公害に関
2553 する苦情の処理について指導等を行う。
2554
2555
2556 (裁定委員の指名等)
2557 - 28 -
2558
2559 第42条の2
2560
2561 中央委員会による裁定は,
2562 3人又は5人の裁定委員からなる裁定委員会を設けて行な
2563
2564 う。
2565
2566
2567 2,
2568
2569
2570 (略)
2571
2572 第2款
2573
2574 責任裁定
2575
2576 (申請)
2577 第42条の12
2578
2579 公害に係る被害について,
2580 損害賠償に関する紛争が生じた場合においては,
2581 その賠
2582
2583 償を請求する者は,
2584 公害等調整委員会規則で定めるところにより,
2585 書面をもつて,
2586 中央委員会に対
2587 し,
2588 損害賠償の責任に関する裁定(以下「責任裁定」という。
2589
2590 )を申請することができる。
2591
2592
2593 2,
2594
2595
2596 (略)
2597
2598 (証拠調べ)
2599 第42条の16
2600
2601 裁定委員会は,
2602 申立てにより,
2603 又は職権で,
2604 次の各号に掲げる証拠調べをすること
2605
2606 ができる。
2607
2608
2609
2610
2611 当事者又は参考人に出頭を命じて陳述させること。
2612
2613
2614
2615
2616
2617 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
2618
2619
2620
2621
2622
2623 事件に関係のある文書又は物件の所持人に対し,
2624 当該文書若しくは物件の提出を命じ,
2625 又は提
2626 出された文書若しくは物件を留め置くこと。
2627
2628
2629
2630
2631
2632 事件に関係のある場所に立ち入つて,
2633 文書又は物件を検査すること。
2634
2635
2636
2637
2638
2639 (略)
2640
2641
2642
2643 裁定委員会は,
2644 職権で証拠調べをしたときは,
2645 その結果について,
2646 当事者の意見をきかなければ
2647 ならない。
2648
2649
2650
2651 4,
2652
2653
2654
2655 (略)
2656
2657 裁定委員会は,
2658 第1項第4号の規定による立入検査について,
2659 専門委員をして補助させることが
2660 できる。
2661
2662
2663 (事実の調査)
2664
2665 第42条の18
2666
2667 裁定委員会は,
2668 必要があると認めるときは,
2669 自ら事実の調査をし,
2670 又は中央委員会
2671
2672 の事務局の職員をしてこれを行なわせることができる。
2673
2674
2675
2676
2677 裁定委員会が前項の事実の調査をする場合において必要があると認めるときは,
2678 裁定委員会又は
2679 その命を受けた中央委員会の事務局の職員は,
2680 当事者の占有する工場,
2681 事業場その他事件に関係の
2682 ある場所に立ち入つて,
2683 事件に関係のある文書又は物件を検査することができる。
2684
2685
2686
2687
2688
2689 裁定委員会は,
2690 事実の調査の結果を責任裁定の資料とするときは,
2691 その事実の調査の結果につい
2692 て,
2693 当事者の意見をきかなければならない。
2694
2695
2696
2697
2698
2699 裁定委員会は,
2700 第2項の規定による立入検査について,
2701 専門委員をして補助させることができる。
2702
2703
2704
2705 第3款
2706
2707 原因裁定
2708
2709 (申請)
2710 第42条の27
2711
2712 公害に係る被害について,
2713 損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争が生じた場
2714
2715 合において,
2716 当事者の一方の行為に因り被害が生じたことについて争いがあるときは,
2717 当事者は,
2718
2719 公害等調整委員会規則で定めるところにより,
2720 書面をもつて,
2721 中央委員会に対し,
2722 被害の原因に関
2723 する裁定(以下「原因裁定」という。
2724
2725 )を申請することができる。
2726
2727
2728
2729
2730 (略)
2731 (裁定事項等)
2732
2733 第42条の30
2734
2735 裁定委員会は,
2736 被害の原因を明らかにするため特に必要があると認めるときは,
2737
2738
2739 因裁定において,
2740 原因裁定の申請をした者が裁定を求めた事項以外の事項についても,
2741 裁定するこ
2742 とができる。
2743
2744
2745
2746
2747 前項の場合において,
2748 裁定の結果について利害関係を有する第三者があるときは,
2749 裁定委員会は,
2750
2751 その第三者若しくは当事者の申立てにより,
2752 又は職権で,
2753 決定をもつて,
2754 相手方としてその第三者
2755 - 29 -
2756
2757 を原因裁定の手続に参加させることができる。
2758
2759
2760
2761
2762 裁定委員会は,
2763 前項の決定をするときは,
2764 あらかじめ,
2765 その第三者及び当事者の意見をきかなけ
2766 ればならない。
2767
2768
2769 (受訴裁判所からの原因裁定の嘱託)
2770
2771 第42条の32
2772
2773 公害に係る被害に関する民事訴訟において,
2774 受訴裁判所は,
2775 必要があると認めると
2776
2777 きは,
2778 中央委員会に対し,
2779 その意見をきいたうえ,
2780 原因裁定をすることを嘱託することができる。
2781
2782
2783 2〜4
2784
2785 (略)
2786
2787 (準用規定)
2788 第42条の33
2789
2790 第42条の13から第42条の19まで,
2791 第42条の21,
2792 第42条の24及び第
2793
2794 42条の26の規定は,
2795 原因裁定について準用する。
2796
2797
2798 (紛争処理の手続に要する費用)
2799 第44条
2800
2801 中央委員会において行うあつせん,
2802 調停,
2803 仲裁,
2804 責任裁定,
2805 原因裁定又は証拠保全の手続
2806
2807 に要する費用は,
2808 政令で定めるものを除き,
2809 各当事者又は証拠保全の申立てをした者が負担する。
2810
2811
2812 2,
2813
2814
2815
2816 (略)
2817
2818 公害紛争処理法施行令(昭和45年8月31日政令第253号)(抜粋)
2819 (手続費用)
2820
2821 第17条
2822
2823
2824 法第44条第1項の政令で定める費用は,
2825 次の各号に掲げるものとする。
2826
2827
2828
2829 法第42条の16第1項第1号若しくは第2号の規定により陳述若しくは鑑定を命ぜられた参
2830 考人若しくは鑑定人又は公害等調整委員会規則の規定により陳述若しくは意見を求められ,
2831 若し
2832 くは鑑定を依頼された参考人若しくは鑑定人に支給する鉄道賃,
2833 船賃,
2834 車賃,
2835 日当,
2836 宿泊料又は
2837 鑑定料
2838
2839 二〜四
2840 2,
2841
2842
2843 (略)
2844 (略)
2845
2846 - 30 -
2847
2848 〔第2問〕(配点:50)
2849 A県に所在するB大学(以下「B」という。
2850
2851 )の昭和40年代後半に建設された研究棟(大学の
2852 敷地の端に立地していて,
2853 隣接地にはC保育所の園舎,
2854 運動場や他の民家がある。
2855
2856 )の大規模改造
2857 工事(以下「本件工事」という。
2858
2859 )がBによって計画された。
2860
2861 DがBから本件工事を受注したが,
2862
2863 Dは研究棟が建設された時期を考えると,
2864 吹付け石綿ないし石綿を含有する断熱材・耐火被覆材な
2865 どが使用されている可能性があると考えた。
2866
2867 ところが,
2868 Bの施設担当者は,
2869 以前に同じ建物の一部
2870 で石綿除去工事を行っていたことを前任者から申し送られていたことから建物の全部が安全である
2871 と誤認していたため,
2872 建物には石綿使用がないとDに述べた。
2873
2874 しかし,
2875 Dは念のために研究棟の一
2876 部について目視で調査を行ったところ,
2877 やはり石綿使用の懸念があったので,
2878 Bの担当者にこの旨
2879 を伝えたが,
2880 担当者は次年度の新学科設置に備えた大学全体の建物使用計画に間に合わせるために,
2881
2882 本件工事の着工を急ぐようDに指示した。
2883
2884
2885 そこで,
2886 石綿粉じんの発生を想定した設備を設けることなく本件工事が平成30年5月頃始まっ
2887 たが,
2888 その段階で,
2889 作業従事者Eは作業箇所での石綿含有建材の存在を強く疑い,
2890 石綿被害防止支
2891 援活動を行っている団体Fに,
2892 自らが現場で採取した試料を持ち込んで相談した。
2893
2894 Fが専門家に依
2895 頼して検査をした結果,
2896 Eの持ち込んだ試料には青石綿が高い濃度で含有されていると報告があっ
2897 たので,
2898 FからA県に対してその旨の通報がなされた。
2899
2900 なお,
2901 青石綿は,
2902 他の種類の白石綿などに
2903 比して人の健康への有害性が極めて高いことが知られている。
2904
2905
2906 この場合において,
2907 【資料】を参照しつつ,
2908 以下の設問に答えよ。
2909
2910
2911 〔設問1〕
2912 本件工事の着工に当たって,
2913 B及びDには,
2914 大気汚染防止法(以下「大防法」という。
2915
2916 )によれ
2917 ば,
2918 いかなる措置を講じる必要があったか述べよ。
2919
2920
2921 〔設問2〕
2922 本件の事案で,
2923 Fから通報を受けたA県が,
2924 大防法によって採り得る措置は何か述べよ。
2925
2926
2927 〔設問3〕
2928 本件工事による粉じんが,
2929 Bの敷地を超えて隣接地に流入するおそれがあったが,
2930 A県による大
2931 防法上の適切な措置が講じられていない場合に,
2932 C保育所の園児らは,
2933 誰に対して,
2934 いかなる法的
2935 措置を求めることができるか述べよ。
2936
2937
2938 〔設問4〕
2939 大防法の平成25年改正では,
2940 特定粉じん排出作業に係る規制に関して,
2941 廃棄物の処理及び清掃
2942 に関する法律の平成12年改正により新設された第19条の5第2号などと同様に,
2943 直接に汚染を
2944 引き起こした行為者でない者にも一定の責任を負わせる考え方を導入しているが,このような考え
2945 方が大防法の平成25年改正に取り入れられた趣旨を説明せよ。
2946
2947
2948 【資
2949
2950
2951 料】
2952 大気汚染防止法施行令(昭和43年11月30日政令第329号)(抜粋)
2953
2954 (特定建築材料)
2955 第3条の3
2956
2957 法第2条第11項の政令で定める建築材料は,
2958 次に掲げる建築材料とする。
2959
2960
2961
2962
2963
2964 吹付け石綿
2965
2966
2967
2968 石綿を含有する断熱材,
2969 保温材及び耐火被覆材(前号に掲げるものを除く。
2970
2971
2972
2973 (特定粉じん排出等作業)
2974 第3条の4
2975
2976 法第2条第11項の政令で定める作業は,
2977 次に掲げる作業とする。
2978
2979
2980 - 31 -
2981
2982
2983
2984 特定建築材料が使用されている建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。
2985
2986 )を解体す
2987 る作業
2988
2989
2990
2991 特定建築材料が使用されている建築物等を改造し,
2992 又は補修する作業
2993
2994 (報告及び検査)
2995 第12条
2996 1〜6
2997
2998
2999 (略)
3000
3001 環境大臣又は都道府県知事は,
3002 法第26条第1項の規定により,
3003 解体等工事の発注者に対し,
3004
3005 第18条の15第1項第4号から第7号までに掲げる事項,
3006 同条第3項の環境省令で定める事項及
3007 び法第18条の17第1項の規定による調査について報告を求めることができる。
3008
3009
3010
3011
3012
3013 環境大臣又は都道府県知事は,
3014 法第26条第1項の規定により,
3015 解体等工事の受注者に対し法第
3016 18条の17第1項の規定による調査について,
3017 自主施工者に対し法第18条の15第1項第4号
3018 から第7号までに掲げる事項,
3019 同条第3項の環境省令で定める事項及び法第18条の17第3項の
3020 規定による調査について,
3021 それぞれ報告を求め,
3022 又はその職員に,
3023 解体等工事に係る建築物等若し
3024 くは解体等工事の現場に立ち入り,
3025 解体等工事に係る建築物等,
3026 解体等工事により生じた廃棄物そ
3027 の他の物及び関係帳簿書類を検査させることができる。
3028
3029
3030
3031 9,
3032 10
3033
3034
3035 (略)
3036
3037 大気汚染防止法施行規則(昭和46年6月22日厚生省,
3038 通商産業省令第1号)(抜粋)
3039 (特定工事に該当しないことが明らかな建設工事)
3040
3041 第16条の5
3042
3043
3044 法第18条の17第1項の環境省令で定める建設工事は,
3045 次に掲げる建設工事とする。
3046
3047
3048
3049 平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した建築物等を解体し,
3050 改造し,
3051 又は補修する作
3052 業を伴う建設工事であつて,
3053 当該建築物等以外の建築物等を解体し,
3054 改造し,
3055 又は補修する作業
3056 を伴わないもの
3057
3058
3059
3060 建築物等のうち平成18年9月1日以後に改造又は補修の工事に着手した部分を改造し,
3061 又は
3062 補修する作業を伴う建設工事であつて,
3063 当該部分以外の部分を改造し,
3064 若しくは補修し,
3065 又は当
3066 該建築物等以外の建築物等(平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した建築物等を除く。
3067
3068
3069 を解体し,
3070 改造し,
3071 若しくは補修する作業を伴わないもの
3072
3073 (解体等工事に係る説明の時期)
3074 第16条の6
3075
3076 法第18条の17第1項の規定による説明は,
3077 解体等工事の開始の日までに(当該解
3078
3079 体等工事が特定工事に該当し,
3080 かつ,
3081 特定粉じん排出等作業を当該特定工事の開始の日から14日
3082 以内に開始する場合にあつては,
3083 当該特定粉じん排出等作業の開始の日の14日前までに)行うも
3084 のとする。
3085
3086 ただし,
3087 災害その他非常の事態の発生により解体等工事を緊急に行う必要がある場合に
3088 あつては,
3089 速やかに行うものとする。
3090
3091
3092 (解体等工事に係る掲示の方法)
3093 第16条の9
3094
3095 法第18条の17第4項の規定による掲示は,
3096 掲示板を設けることにより行うものと
3097
3098 する。
3099
3100
3101
3102 - 32 -
3103
3104 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
3105
3106 - 33 -
3107
3108 [国際関係法(公法系)]
3109 〔第1問〕(配点:50)
3110 A国(上流国)とB国(下流国)は,
3111 両国の国境を隔てて,
3112 A国の南側とB国の北側が隣接して
3113 おり,
3114 国際河川であるC川が両国を北から南に流れている。
3115
3116
3117 A国及びB国は,
3118 C川を利用した水力発電に関する共同事業を計画し,
3119 同計画に関するT条約を
3120 締結し,
3121 同条約は両国の批准を経て発効した。
3122
3123 T条約は,
3124 両国がB国北部のX地点に水力発電用の
3125 Xダムを共同で建設し,
3126 両国に送電することを内容としていた。
3127
3128 A国に隣接するB国北部は農業地
3129 帯であることから,
3130 XダムはC川の水量への影響が少ない方式で建設することも合意された。
3131
3132 Xダ
3133 ムからA国に送電されることになる電力は,
3134 A国の経済発展に不可欠の基礎となるものであった。
3135
3136
3137 なお,
3138 T条約には終了に関する規定はない。
3139
3140
3141 ところが,
3142 その後,
3143 B国において,
3144 農業団体から,
3145 計画を予定どおり実施した場合には農業用水
3146 にかなりの影響が生ずるとして,
3147 計画の見直しを求める声が高まった。
3148
3149 これを受けて,
3150 B国は既に
3151 開始していたXダムの建設を一方的に中止した。
3152
3153
3154 これに対してA国は,
3155 両国で建設予定であったXダムに代わるものとして,
3156 A国内のY地点にY
3157 ダムを建設し,
3158 水力発電を開始した。
3159
3160 Yダムは,
3161 C川を分流させ,
3162 C川の水量の減少を伴う方式で
3163 あった。
3164
3165 このため,
3166 B国領域内のC川の水量が激減した。
3167
3168 これに対して,
3169 B国は,
3170 T条約を一方的
3171 に終了させる意思をA国に通告した。
3172
3173
3174 この結果,
3175 農業用水の確保ができなくなったB国の農民が,
3176 B国の首都にあるA国大使館前でデ
3177 モを行う事態が連日生じた。
3178
3179 デモは日増しに激しさを増したが,
3180 B国政府は警備体制の強化を行わ
3181 なかった。
3182
3183 そうした中,
3184 ついに一部の農民がA国大使館を占拠し,
3185 大使館員を人質にとって立てこ
3186 もった。
3187
3188 A国は,
3189 B国に対して大使館員の安全確保と大使館の明渡しを要請したが,
3190 B国政府はこ
3191 れに積極的に対応しなかった。
3192
3193 こうした中,
3194 B国大統領は,
3195 大使館を占拠した農民の行動を支持す
3196 る声明を公式に発表した。
3197
3198
3199 A国とB国は,
3200 いずれも外交関係に関するウィーン条約及び条約法に関するウィーン条約の当事
3201 国である。
3202
3203
3204 以上の事実を基に,
3205 以下の設問に答えなさい。
3206
3207
3208 〔設
3209
3210 問〕
3211
3212 1.A国は,
3213 B国によるXダムの建設中止に対して,
3214 Yダムを建設し,
3215 水力発電を開始した。
3216
3217
3218 の行為は国際法上どのように評価されるかについて論じなさい。
3219
3220
3221 2.B国は,
3222 T条約の終了を国際法上正当化し得るか,
3223 理由を付して論じなさい。
3224
3225
3226 3.B国のA国大使館をめぐるB国政府ないしB国大統領がとった一連の対応は,
3227 国際法上のい
3228 かなる違反を犯していると考えられるかについて論じなさい。
3229
3230
3231
3232 - 34 -
3233
3234 〔第2問〕(配点:50)
3235 A国とB国は,
3236 国境を接する隣国であり,
3237 両国の国境地帯には急峻なX山脈の山々が連なってい
3238 る。
3239
3240 両国の国境地帯であるX山脈の山中には,
3241 無人の廃墟であるものの世界的に著名なY遺跡があ
3242 る。
3243
3244
3245 X山脈中のA国とB国の国境線は不明確な部分が多かったが,
3246 1930年に両国政府は国境画定
3247 条約を締結し,
3248 同条約は両国による批准を経て1931年に発効した。
3249
3250 同条約では,
3251 「A国とB国
3252 の国境線は,
3253 X山脈の分水嶺をたどるものとする」と条文中に明記された。
3254
3255 同条約の締結を受けて,
3256
3257 1931年,
3258 A国は,
3259 Y遺跡がX山脈の分水嶺のA国側に位置するとの理解を前提にY遺跡の領有
3260 を宣言したが,
3261 2018年に至るまでこの点についてB国から疑問や問題が提起されることはなか
3262 った。
3263
3264
3265 2018年,
3266 A国及びB国の地理学者から,
3267 X山脈の分水嶺の位置について問題が提起された。
3268
3269
3270 そこで,
3271 A国及びB国は共同で,
3272 両国の政府関係者と科学者から構成される調査団を結成し,
3273 Y遺
3274 跡周辺のX山脈の現地調査を実施した。
3275
3276 その結果,
3277 Y遺跡はX山脈の分水嶺のB国側に位置するこ
3278 とが明らかとなった。
3279
3280 これを受けて,
3281 B国外務省は,
3282 「1930年国境画定条約の条文に従えば,
3283
3284 AB両国間の国境線は『X山脈の分水嶺をたどるものとする』とされており,
3285 X山脈の分水嶺のB
3286 国側に位置するY遺跡は国際法上我が国の領土にある。
3287
3288 」との声明を発表した。
3289
3290 この声明の発表後
3291 直ちに,
3292 B国政府は,
3293 Y遺跡にB国の軍隊を派遣してこれを占拠した。
3294
3295 なお,
3296 B国軍隊が占拠した
3297 Y遺跡の周辺は無人であり,
3298 付近に居住している住民はいない。
3299
3300
3301 A国とB国は,
3302 いずれも国際連合加盟国であり,
3303 条約法に関するウィーン条約の当事国である。
3304
3305
3306 また,
3307 A国とB国は,
3308 いずれも国際司法裁判所規程の当事国であり,
3309 同規程第36条第2項の定め
3310 る受諾宣言を行っている。
3311
3312 なお,
3313 B国が行った受諾宣言には留保や条件が付されていないが,
3314 A国
3315 が行った受諾宣言には,
3316 「A国の国境に関する紛争であるとA国政府によって解釈される紛争を裁
3317 判所の管轄権の対象から除外する」という条件が付されている。
3318
3319
3320 以上の事実を基に,
3321 以下の設問に答えなさい。
3322
3323
3324 〔設
3325
3326 問〕
3327
3328 1.A国は,
3329 Y遺跡がA国の領土に所在することを国際法上どのような理由に基づいてB国に対
3330 して主張することができるかについて論じなさい。
3331
3332 なお,
3333 X山脈の分水嶺が2018年に行わ
3334 れたAB両国の共同調査の結果判明した位置にあることについては,
3335 両国間に争いがないもの
3336 とする。
3337
3338
3339 2.A国は,
3340 B国軍隊のY遺跡からの撤退を求めて,
3341 B国を相手取り国際司法裁判所に提訴した
3342 とする。
3343
3344 この場合,
3345 B国は,
3346 国際司法裁判所が当該請求に関して裁判管轄権を持たないことを
3347 どのような理由で主張することができるかについて論じなさい。
3348
3349
3350 3.A国による上記2の請求に関して,
3351 国際司法裁判所がB国軍隊のY遺跡からの撤退を命じる
3352 判決を下したにもかかわらず,
3353 B国がこの判決に従わなかったとする。
3354
3355 この場合,
3356 A国はどの
3357 ような国際法上の手段をとることができるかについて論じなさい。
3358
3359
3360
3361 - 35 -
3362
3363 - 36 -
3364
3365 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
3366
3367 - 37 -
3368
3369 [国際関係法(私法系)]
3370 〔第1問〕(配点:50)
3371 日本国籍のA男と甲国籍のB女は,
3372 婚姻していたが,
3373 平成16年に離婚をした。
3374
3375 その際,
3376 Aは,
3377
3378 AB間の嫡出子C(平成7年生まれ,
3379 日本国籍)の親権者となり,
3380 Cと共に日本で生活するように
3381 なった。
3382
3383 その後,
3384 Aは,
3385 日本に在住して事業を営んでいた甲国籍のD女と親しくなり,
3386 平成19年
3387 にDと婚姻し,
3388 以後,
3389 Cを含め3人で,
3390 日本で暮らしてきた。
3391
3392 しかし,
3393 Dは,
3394 平成29年,
3395 不幸に
3396 も事故に遭い,
3397 亡くなってしまった。
3398
3399 突然のことであったので,
3400 Dの遺言はないが,
3401 Dが所有して
3402 いた不動産が日本に残されている。
3403
3404
3405 以上の事実を前提とし,
3406 甲国の国際私法及び民法は次の@からFの趣旨の規定を有しているもの
3407 として,
3408 以下の設問に答えなさい。
3409
3410 なお,
3411 各問は独立した問いであり,
3412 全ての問いにおいて,
3413 反致
3414 及び国際裁判管轄権については検討を要しない。
3415
3416
3417 【甲国国際私法】
3418 @
3419
3420 婚姻の効力は,
3421 夫婦の常居所地法が同一であるときは,
3422 その法による。
3423
3424
3425
3426 A
3427
3428 出生及び準正による嫡出親子関係の成立は,
3429 婚姻の効力の準拠法による。
3430
3431
3432
3433 B
3434
3435 本法各条に定めるもののほか,
3436 親族関係の成立及びこれによって生ずる権利義務は,
3437 当事者の
3438 本国法による。
3439
3440
3441
3442 【甲国民法】
3443 C
3444
3445 夫婦が婚姻中に生まれた子は,
3446 その間の嫡出子と推定する。
3447
3448
3449
3450 D
3451
3452 親が再婚した場合,
3453 前婚の子は,
3454 後婚の嫡出子としての法的地位を取得する。
3455
3456
3457
3458 E
3459
3460 嫡出子及び配偶者は,
3461 第1順位の相続人である。
3462
3463
3464
3465 F
3466
3467 遺産分割前の相続財産は,
3468 共同相続人の合有とし,
3469 共同相続人全員の同意がなければその持分
3470 を処分することができない。
3471
3472
3473
3474 〔設問1〕
3475 日本の裁判所において,
3476 Dを被相続人とする遺産分割(以下「本件遺産分割」という。
3477
3478 )を行
3479 うこととなった。
3480
3481 本件遺産分割を行う前提としてのDC間の親子関係の成否を,
3482 準拠法の決定過
3483 程を明らかにしつつ,
3484 論じなさい。
3485
3486
3487 〔設問2〕
3488 本件遺産分割において,
3489 DC間の親子関係の成否に関する準拠法が甲国法になるとする。
3490
3491
3492 甲国においては,
3493 甲国民法Dの規定が平成22年12月31日をもって廃止され,
3494 かつ,
3495 それ
3496 までに甲国民法Dにより発生した親族関係は同日をもって消滅する,
3497 とする法改正がなされた。
3498
3499
3500 以上の経緯を前提にすると,
3501 Cは,
3502 Dの相続人になるか。
3503
3504
3505 〔設問3〕
3506 CがDの相続人になるとする。
3507
3508
3509 Dが所有していた日本に所在する不動産につき,
3510 Cは,
3511 本件遺産分割が行われる前に自らの持
3512 分を,
3513 他の共同相続人の同意を得ずに,
3514 日本の会社Eに売却し,
3515 その旨の持分移転登記がなされ
3516 た。
3517
3518 その後,
3519 Cが,
3520 甲国民法Fを理由として,
3521 この売買契約は無効であると主張し,
3522 Eに対しそ
3523 の登記の抹消を請求する訴えを日本の裁判所に提起した。
3524
3525 この請求は認められるか。
3526
3527 準拠法の決
3528 定過程を明らかにしつつ論じなさい。
3529
3530
3531
3532 - 38 -
3533
3534 〔第2問〕(配点:50)
3535 日本に在住する日本人Xは,
3536 絵画の収集を趣味としていた。
3537
3538 Xは,
3539 甲国に旅行に行った際,
3540 たま
3541 たま訪れた画商Yの店で,
3542 甲国では著名な画家Pの作品(以下「本件絵画」という。
3543
3544 )を見付けた。
3545
3546
3547 Xは,
3548 本件絵画を気に入り,
3549 Yに対し,
3550
3551 「これを日本の自宅に飾りたい。
3552
3553 」と言い,
3554 価格の交渉をし,
3555
3556 その交渉もまとまったことから,
3557 甲国の公用語ではなく英語で記載された契約書に,
3558 Yと共に署名
3559 した(以下,
3560 この契約書により締結された売買契約を「本件売買契約」という。
3561
3562 )。
3563
3564 この契約書には,
3565
3566 国際裁判管轄権及び準拠法に関する定めはなく,
3567 特定の国の法の条文への言及もなく,
3568 特定の国の
3569 法に特有な法律用語も使われていない。
3570
3571 また,
3572 Yは,
3573 個人で事業を営んでおり,
3574 甲国に在住し,
3575
3576 つ,
3577 甲国に営業所を有する画商であって,
3578 日本には営業所及び財産を有さず,
3579 日本への渡航歴もな
3580 い。
3581
3582
3583 以上の事実を前提として,
3584 以下の設問に答えなさい。
3585
3586 なお,
3587 各問は独立した問いである。
3588
3589
3590 〔設問1〕
3591 Xは,
3592 Yに対し本件絵画の代金を支払い,
3593 本件絵画を日本に持ち帰った。
3594
3595 ところが,
3596 その後,
3597
3598 Xが,
3599 甲国に在住する甲国絵画の専門家に問い合わせたところ,
3600 本件絵画はPの作品ではなく偽
3601 物であるとの回答を得た。
3602
3603 そこで,
3604 Xは,
3605 Yに対して,
3606 本件売買契約は無効であるとして,
3607 本件
3608 絵画の代金の返還を求める訴え(以下「本件訴え」という。
3609
3610 )を日本の裁判所に提起した。
3611
3612
3613 〔小問1〕
3614 本件訴えに関する国際裁判管轄権について論じなさい。
3615
3616
3617 〔小問2〕
3618 本件訴えについて日本の裁判所に国際裁判管轄権が認められるとして,
3619 本件売買契約の有効
3620 性に関する準拠法はいずれの国の法か。
3621
3622
3623 なお,
3624 本件売買契約の方式については検討を要しない。
3625
3626
3627 〔設問2〕
3628 甲国民法には,
3629 当事者間における動産の所有権の移転については,
3630 売買契約だけでは足りず,
3631
3632 その引渡しが必要である旨の定めがある。
3633
3634 本件絵画については,
3635 甲国において,
3636 XY間において
3637 本件売買契約が有効に成立したが,
3638 その際,
3639 本件絵画の引渡しまでは行われず,
3640 日本で本件絵画
3641 の引渡しが行われることとなった。
3642
3643 そこで,
3644 Yは,
3645 本件絵画について日本に向けて船便での配送
3646 の手配をした。
3647
3648
3649 その後,
3650 Yは,
3651 Zから,
3652 本件絵画をXより高額で買い取りたいとの申出を受けたことから,
3653
3654 件絵画を取り戻したいと考えるに至った。
3655
3656
3657 そこで,
3658 Yは,
3659 本件絵画の引渡しがなされていないことを理由として,
3660 本件絵画の所有権確認
3661 の訴えを日本の裁判所に提起した。
3662
3663 この訴えの口頭弁論終結時において,
3664 本件絵画は,
3665 日本に向
3666 けて公海上を航行中の船舶に積載されている。
3667
3668 この請求は認められるか。
3669
3670 準拠法の決定過程を明
3671 らかにしつつ論じなさい。
3672
3673
3674 なお,
3675 この訴えに関する国際裁判管轄権については検討を要しない。
3676
3677
3678
3679 - 39 -
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