1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [刑
7
8 法]
9
10 以下の事例に基づき,
11 甲及び乙の罪責について論じなさい(住居等侵入罪及び特別法違反の点を除
12 く。
13
14 )。
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19 甲は,
20 新たに投資会社を立ち上げることを計画し,
21 その設立に向けた具体的な準備を進めてい
22 たところ,
23 同会社設立後の事業資金をあらかじめ募って確保しておこうと考え,
24 某年7月1日,
25
26 知人のVに対し,
27 同年10月頃の同会社設立後に予定している投資話を持ち掛け,
28 その投資のた
29 めの前渡金として,
30 Vから現金500万円を預かった。
31
32 その際,
33 甲とVの間では,
34 前記500万
35 円について,
36 同会社による投資のみに充てることを確認するとともに,
37 実際にその投資に充てる
38 までの間,
39 甲は前記500万円を甲名義の定期預金口座に預け入れた上,
40 同定期預金証書(原本)
41 をVに渡し,
42 同定期預金証書はVにおいて保管しておくとの約定を取り交わした。
43
44 同日,
45 甲は,
46
47 この約定に従い,
48 Vから預かった前記500万円をA銀行B支店に開設した甲名義の定期預金口
49 座に預け入れた上,
50 同定期預金証書をVに渡した。
51
52 なお,
53 同定期預金預入れの際に使用した届出
54 印は,
55 甲において保管していた。
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58
59
60
61 甲は,
62 約1年前に無登録貸金業者の乙から1000万円の借入れをしたまま,
63 全く返済をして
64 いなかったところ,
65 同年7月31日,
66 乙から返済を迫られたため,
67 Vに無断で前記定期預金を払
68 い戻して乙への返済に流用しようと考えた。
69
70 そこで,
71 同年8月1日,
72 甲は,
73 A銀行B支店に行き,
74
75 同支店窓口係員のCに対し,
76 「定期預金を解約したい。
77
78 届出印は持っているものの,
79 肝心の証書
80 を紛失してしまった。
81
82 」などとうその話をして,
83 同定期預金の払戻しを申し入れた。
84
85 Cは,
86 甲の
87 話を信用し,
88 甲の申入れに応じて,
89 A銀行の定期預金規定に従って甲の本人確認手続をした後,
90
91 定期預金証書の再発行手続を経て,
92 同定期預金の解約手続を行い,
93 甲に対し,
94 払戻金である現金
95 500万円を交付した。
96
97 甲は,
98 その足で乙のところへ行き,
99 受け取った現金500万円を乙に直
100 接手渡して,
101 自らの借入金の返済に充てた。
102
103 なお,
104 この時点で,
105 乙は,
106 甲が返済に充てた500
107 万円は甲の自己資金であると思っており,
108 甲がVから預かった現金500万円をVに無断で自ら
109 への返済金に流用したという事情は全く知らないまま,
110 その後数日のうちに甲から返済された5
111 00万円を自己の事業資金や生活費等に全額費消した。
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116
117 同年9月1日,
118 Vは,
119 事情が変わったため甲の投資話から手を引こうと考え,
120 甲に対し,
121 投資
122 のための前渡金として甲に預けた500万円を返してほしいと申し入れたところ,
123 甲は,
124 Vに無
125 断で自らの借入金の返済に流用したことを打ち明けた。
126
127 これを聞いたVは,
128 激怒し,
129 甲に対し,
130
131 「直ちに500万円全額を返してくれ。
132
133 さもないと,
134 裁判を起こして出るところに出るぞ。
135
136 」と
137 言って500万円を返すよう強く迫った。
138
139 甲は,
140 その場ではなんとかVをなだめたものの,
141 Vか
142 ら1週間以内に500万円を全額返すよう念押しされてVと別れた。
143
144 その後すぐに,
145 甲は,
146 乙と
147 連絡を取り,
148 甲がVから預かった現金500万円をVに無断で乙への返済金に流用したことを打
149 ち明けた。
150
151 その際,
152 乙が,
153 甲に対し,
154 甲と乙の2人でV方に押し掛け,
155 Vを刃物で脅して,
156 「甲
157 とVの間には一切の債権債務関係はない」という内容の念書をVに無理矢理作成させて債権放棄
158 させることを提案したところ,
159 甲は,
160 「わかった。
161
162 ただし,
163 あくまで脅すだけだ。
164
165 絶対に手は出
166 さないでくれ。
167
168 」と言って了承した。
169
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171
172
173
174 同月5日,
175 甲と乙は,
176 V方を訪れ,
177 あらかじめ甲が用意したサバイバルナイフを各々手に持っ
178 てVの目の前に示しながら,
179 甲が,
180 Vに対し,
181 「投資話を反故にした違約金として500万円を
182 出してもらう。
183
184 流用した500万円はそれでちゃらだ。
185
186 今すぐここで念書を書け。
187
188 」と言ったが,
189
190 Vは,
191 念書の作成を拒絶した。
192
193 乙は,
194 Vの態度に立腹し,
195 念書に加え現金も取ろうと考え,
196 Vに
197 対し,
198 「さっさと書け。
199
200 面倒かけやがって。
201
202 迷惑料として俺たちに10万円払え。
203
204 」と言って,
205
206 の胸倉をつかんでVの喉元にサバイバルナイフの刃先を突き付けた。
207
208 Vは,
209 このまま甲らの要求
210
211 - 2 -
212
213 に応じなければ本当に刺し殺されてしまうのではないかとの恐怖を感じ,
214 甲らの要求どおり,
215
216 「甲
217 とVの間には一切の債権債務関係はない」という内容の念書を作成して,
218 これを甲に手渡した。
219
220
221 そこで,
222 甲がV方から立ち去ろうとしたところ,
223 乙は,
224 甲に対し,
225 「ちょっと待て。
226
227 迷惑料の
228 10万円も払わせよう。
229
230 」と持ち掛けた。
231
232 甲は,
233 乙に対し,
234 「念書が取れたんだからいいだろ。
235
236
237 もうやめよう。
238
239 手は出さないでくれと言ったはずだ。
240
241 」と言って,
242 乙の手を引いてV方から外へ
243 連れ出した上,
244 乙から同ナイフを取り上げて立ち去った。
245
246
247
248
249 その直後,
250 乙は,
251 再びV方内に入り,
252 恐怖のあまり身動きできないでいるVの目の前で,
253 その
254 場にあったV所有の財布から現金10万円を抜き取って立ち去った。
255
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257
258 - 3 -
259
260 [刑事訴訟法]
261 次の【事例】を読んで,
262 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
263
264
265 【事例】
266 警察官PとQが,
267 平成30年5月10日午前3時頃,
268 凶器を使用した強盗等犯罪が多発してい
269 るH県I市J町を警らしていたところ,
270 路地にたたずんでいた甲が,
271 Pと目が合うや,
272 急に慌てた
273 様子で走り出した。
274
275 そこで,
276 Pが,
277 甲に,
278 「ちょっと待ってください。
279
280 」と声をかけて停止を求めた
281 ところ,
282 甲が同町1丁目2番3号先路上で停止したため,
283 同所において,
284 職務質問を開始した。
285
286
287 Pは,
288 甲のシャツのへそ付近が不自然に膨らんでいることに気付き,
289 甲に対し,
290 「服の下に何か
291 持っていませんか。
292
293 」と質問した。
294
295 これに対し,
296 甲は,
297 何も答えずにPらを押しのけて歩き出した
298 ため,
299 甲の腹部がPの右手に一瞬当たった。
300
301 このとき,
302 Pは,
303 右手に何か固い物が触れた感覚があ
304 ったことから,
305 甲が服の下に凶器等の危険物を隠している可能性があると考え,
306 甲に対し,
307 「お腹
308 の辺りに何か持ってますね。
309
310 服の上から触らせてもらうよ。
311
312 」と言って,
313 @そのまま立ち去ろうと
314 した甲のシャツの上からへそ付近を右手で触ったところ,
315 ペンケースくらいの大きさの物が入って
316 いる感触があった。
317
318
319 Pは,
320 その感触から,
321 凶器の可能性は低いと考えたが,
322 他方,
323 規制薬物等犯罪に関わる物を隠
324 し持っている可能性があると考え,
325 甲の前に立ち塞がり,
326 「服の下に隠している物を出しなさい。
327
328
329 と言った。
330
331 すると,
332 甲は,
333 「嫌だ。
334
335 」と言って,
336 腹部を両手で押さえたことから,
337 AQが,
338 背後から
339 甲を羽交い締めにして甲の両腕を腹部から引き離すとともに,
340 Pが,
341 甲のシャツの中に手を差し入
342 れて,
343 ズボンのウエスト部分に挟まれていた物を取り出した。
344
345
346 Pが取り出した物は,
347 結晶様のものが入ったチャック付きポリ袋1袋と注射器1本在中のプラ
348 スチックケースであり,
349 検査の結果,
350 結晶様のものは覚せい剤であることが判明した(以下「本件
351 覚せい剤」という。
352
353 )。
354
355 そこで,
356 Pは,
357 甲を覚せい剤取締法違反(所持)の現行犯人として逮捕する
358 とともに,
359 本件覚せい剤等を差し押さえた。
360
361
362 その後,
363 検察官は,
364 所要の捜査を遂げた上,
365 本件覚せい剤を所持したとの事実で,
366 甲を起訴し
367 た。
368
369
370 第1回公判期日において,
371 甲及び弁護人は無罪を主張し,
372 検察官の本件覚せい剤の取調べ請求
373 に対し,
374 取調べに異議があるとの証拠意見を述べた。
375
376
377 〔設問1〕
378 下線部@及びAの各行為の適法性について論じなさい。
379
380
381 〔設問2〕
382 本件覚せい剤の証拠能力について論じなさい。
383
384
385 (参照条文)
386
387 覚せい剤取締法
388
389 第41条の2第1項
390
391 覚せい剤を,
392 みだりに,
393 所持し,
394 譲り渡し,
395 又は譲り受けた者(略)は,
396
397
398 10年以下の懲役に処する。
399
400
401
402 - 4 -
403
404