1 論文式試験問題集
2 [民法・商法・民事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [民
7
8 法]
9
10 次の文章を読んで,
11 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
12
13
14 【事実】
15 1.Aは,
16 個人で建築業を営むBに雇用された従業員である。
17
18 同じく個人で建築業を営むCは,
19 3
20 階建の家屋(以下「本件家屋」という。
21
22 )の解体を請け負ったが,
23 Bは,
24 その作業の一部をCか
25 ら請け負い,
26 Cが雇用する従業員及びAと共に,
27 解体作業に従事していた。
28
29 Cは,
30 A及びBに対
31 し,
32 建物解体用の重機,
33 器具等を提供し,
34 Cの従業員に対するのと同様に,
35 作業の場所,
36 内容及
37 び具体的方法について指示を与えていた。
38
39
40 2.Cは,
41 平成26年2月1日,
42 Aに対し,
43 本件家屋の3階ベランダ(地上7メートル)に設置さ
44 れた柵を撤去するよう指示し,
45 Bに対し,
46 Aの撤去作業が終了したことを確認した上で上記ベ
47 ランダの直下に位置する1階壁面を重機で破壊するよう指示した。
48
49
50 Aは,
51 同日,
52 Cの指示に従って,
53 本件家屋の3階ベランダに設置された柵の撤去作業を開始し
54 た。
55
56 ところが,
57 Bは,
58 Aの撤去作業が終了しないうちに,
59 本件家屋の1階壁面を重機で破壊し始
60 めた。
61
62 これにより強い振動が生じたため,
63 Aは,
64 バランスを崩して地上に転落し,
65 重傷を負った
66 (以下「本件事故」という。
67
68 )。
69
70 なお,
71 Cは,
72 このような事故を防ぐための命綱や安全ネットを用
73 意していなかった。
74
75
76 3.Aは,
77 転落の際に頭を強く打ったため,
78 本件家屋の解体作業に従事していたことに関する記憶
79 を全て失った。
80
81 しかし,
82 Aは,
83 平成26年10月1日,
84 仕事仲間のDから聞いて,
85 本件事故は
86 【事実】2の経緯によるものであることを知った。
87
88
89 4.その後,
90 Bは,
91 Aに対して本件事故についての損害を賠償することなく,
92 行方不明となった。
93
94
95 そこで,
96 Aは,
97 平成29年5月1日,
98 Cに対し,
99 損害賠償を求めたが,
100 Cは,
101 AもBもCの従業
102 員ではないのだから責任はないし,
103 そもそも今頃になって責任を追及されてもCには応じる義務
104 がないとして拒絶した。
105
106
107 5.Aは,
108 平成29年6月1日,
109 弁護士Eに対し,
110 弁護士費用(事案の難易等に照らし,
111 妥当な額
112 であった。
113
114 )の支払を約して訴訟提起を委任した。
115
116 Eは,
117 Aを代理して,
118 同月30日,
119 Cに対し,
120
121 @債務不履行又はA不法行為に基づき,
122 損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を請求
123 する訴訟を提起した。
124
125
126 〔設問1〕
127 AのCに対する請求の根拠はどのようなものか,
128
129 【事実】5に記した@とAのそれぞれについて,
130
131 具体的に説明せよ。
132
133 また,
134 【事実】5に記した@とAとで,
135 Aにとっての有利・不利があるかどう
136 かについて検討せよ。
137
138 なお,
139 労災保険給付による損害填補について考慮する必要はない。
140
141
142 【事実(続き)】
143 6.Cは,
144 本件事故の前から,
145 妻Fと共に,
146 自己所有の土地(以下「本件土地」という。
147
148 )の上に
149 建てられた自己所有の家屋(以下「本件建物」という。
150
151 )において,
152 円満に暮らしていた。
153
154 本件
155 土地はCがFとの婚姻前から所有していたものであり,
156 本件建物は,
157 CがFと婚姻して約10
158 年後にFの協力の下に建築したものである。
159
160
161 7.Cは,
162 Aからの損害賠償請求を受け,
163 平成29年7月10日,
164 Fに対し,
165 【事実】1及び2を
166 説明するとともに,
167 「このままでは本件土地及び本件建物を差し押さえられてしまうので,
168 離婚
169 しよう。
170
171 本件建物は本来夫婦で平等に分けるべきものだが,
172 Fに本件土地及び本件建物の全部
173 を財産分与し,
174 確定的にFのものとした上で,
175 引き続き本件建物で家族として生活したい。
176
177 」と
178
179 - 2 -
180
181 申し出たところ,
182 Fは,
183 これを承諾した。
184
185
186 8.Cは,
187 平成29年7月31日,
188 Fと共に適式な離婚届を提出した上で,
189 Fに対し,
190 財産分与を
191 原因として本件土地及び本件建物の所有権移転登記手続をした。
192
193 Cは,
194 上記離婚届提出時には,
195
196 本件土地及び本件建物の他にめぼしい財産を持っていなかった。
197
198
199 CとFとは,
200 その後も,
201 本件建物において,
202 以前と同様の共同生活を続けている。
203
204
205 〔設問2〕
206 Eは,
207 平成30年5月1日,
208 Aから,
209 CとFとは実質的な婚姻生活を続けていて離婚が認めら
210 れないから,
211 CからFへの財産分与は無効ではないか,
212 仮に財産分与が有効であるとしても,
213 本
214 件土地及び本件建物の財産分与のいずれについても,
215 Aが全部取り消すことができるのではないか,
216
217 と質問された。
218
219
220 本件事故についてAがCに対して損害賠償請求権を有し,
221 その額が本件土地及び本件建物の価
222 格の総額を上回っているとした場合,
223 Eは,
224 弁護士として,
225 とのそれぞれにつき,
226 どのように
227 回答するのが適切かを説明せよ。
228
229
230
231 - 3 -
232
233 [商
234
235 法]
236
237 次の文章を読んで,
238 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
239
240
241 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
242
243 )は,
244 トラックによる自動車運送事業を主たる目的とする会
245 社法上の公開会社であり,
246 かつ,
247 監査等委員会設置会社である。
248
249 甲社は種類株式発行会社ではなく,
250
251 平成24年から平成29年5月31日までの間,
252 その発行済株式の総数は100万株であった。
253
254 甲
255 社は,
256 近い将来その発行する株式を金融商品取引所に上場する準備を進めており,
257 その発行する株
258 式について,
259 100株をもって1単元の株式とする旨を定款で定めている。
260
261 なお,
262 甲社には,
263 単元
264 未満株主は存在せず,
265 また,
266 会社法第308条第1項括弧書き及び第2項の規定により議決権を有
267 しない株主は存在しない。
268
269
270 2.甲社の定款には,
271 監査等委員である取締役の員数は3名以上5名以内とすること,
272 事業年度は毎
273 年4月1日から翌年3月31日までの1年とすること及び毎年3月31日の最終の株主名簿に記載
274 された議決権を有する株主をもってその事業年度に関する定時株主総会において議決権を行使する
275 ことができる株主とすることが定められている。
276
277
278 3.甲社の監査等委員である取締役は,
279 社内出身者A,
280 甲社の主要取引先の一つである乙株式会社の
281 前会長B及び弁護士Cであり,
282 いずれも平成28年6月29日に開催された定時株主総会において
283 選任された。
284
285 なお,
286 B及びCは,
287 社外取締役である。
288
289
290 4.Dは,平成24年から継続して甲社の株式1万株を有する株主として株主名簿に記載されている。
291
292
293 Dは,
294 甲社の株式の上場には財務及び会計に関する知見を有する社外取締役を選任することなどに
295 よるコーポレート・ガバナンスの強化が必要であると考え,
296 AからCまでに加えて,
297 新たに監査等
298 委員である取締役を選任するための株主提案をすることとした。
299
300 Dは,
301 平成29年4月10日に,
302
303 甲社の代表取締役Eに対し,
304 監査等委員である取締役の選任を同年6月末に開催される定時株主総
305 会の目的(以下「議題」という。
306
307 )とすること及び公認会計士Fを監査等委員である取締役に選任
308 する旨の議案の要領を定時株主総会の招集通知に記載することを請求した。
309
310
311 5.他方で,
312 甲社は,
313 トラックによる運送需要の増加によって,
314 その業績が好調な状況にあったこと
315 から,
316 迅速かつ積極的に事業の拡大を図ることとし,
317 これに必要となるトラックの購入や駐車場用
318 地の確保のための資金に充てる目的で,
319 平成29年5月8日に取締役会の決議を経た上,
320 募集株式
321 の数を20万株,
322 募集株式の払込金額を5000円,
323 募集株式の払込みの期日を同年6月1日,
324 甲
325 社の主要取引先の一つである丙株式会社(以下「丙社」という。
326
327 )を募集株式の総数の引受人とし
328 て,
329 募集株式を発行した。
330
331 この募集株式の払込金額は丙社に特に有利な金額ではなく,
332 また,
333 その
334 発行手続に法令違反はなかった。
335
336 そして,
337 甲社は,
338 丙社からの要請もあり,
339 この募集株式20万株
340 について,
341 丙社を同月29日に開催する定時株主総会における議決権を行使することができる者と
342 定めた。
343
344
345 6.甲社は,
346 平成29年6月29日に開催した定時株主総会(以下「本件株主総会」という。
347
348 )の招
349 集通知に上記4の議題及び議案の要領を記載しなかった。
350
351
352 〔設問1〕
353 株主Dから上記4の請求を受けた甲社が本件株主総会の招集通知に上記4の議題及び議案の要
354 領を記載しなかったことの当否について,
355 論じなさい。
356
357 なお,
358 甲社の定款には,
359 株主提案権の行
360 使要件に関する別段の定めはないものとする。
361
362
363 7.甲社の監査等委員である取締役としてのBの報酬等は,
364 1年間当たり金銭報酬として600万円
365 のみである。
366
367 また,
368 Bは,
369 甲社の監査等委員である取締役に就任するに当たり,
370 定款の定めに基づ
371
372 - 4 -
373
374 き,
375 会社法第423条第1項の責任について,
376 Bが職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない
377 ときは,
378 同法第425条第1項の最低責任限度額を限度とする旨の契約を甲社と締結した。
379
380
381 8.その後,
382 甲社には本店所在地近辺においてトラックの駐車場用地を確保する必要が生じたが,
383 甲
384 社は適当な土地を見付けることができない状況にあったところ,
385 Bが全部の持分を有する丁合同会
386 社(以下「丁社」という。
387
388 )の保有する土地が,
389 場所及び広さ共に甲社が必要とする駐車場用地と
390 して適当であったことから,
391 甲社は丁社からこの土地をトラックの駐車場として賃借することとし
392 た。
393
394 甲社の代表取締役Eは,
395 甲社の事業の都合上,
396 本店所在地近辺における駐車場用地の確保が急
397 務であったことから,
398 賃料の決定に際して丁社の全部の持分を有するBの意向を尊重する姿勢をと
399 っていた。
400
401 平成29年7月1日,
402 Eが甲社を代表して,
403 Bが代表する丁社との間で,
404 この土地につ
405 いて,
406 賃貸期間を同日から平成30年6月30日まで,
407 賃料を1か月300万円とする賃貸借契約
408 (以下「本件賃貸借契約」という。
409
410 )を締結した。
411
412 なお,
413 本件賃貸借契約の締結に当たり,
414 甲社は,
415
416 会社法上必要な手続を経ていた。
417
418 本件賃貸借契約の賃料は周辺の相場の2倍というかなり高額なも
419 のであったが,
420 甲社は平成30年6月30日までの間に丁社に対して同月分までの賃料を支払った。
421
422
423 〔設問2〕
424 上記8の事実に関するBの甲社に対する会社法上の損害賠償責任の有無及びその額について,
425 論
426 じなさい。
427
428
429
430 - 5 -
431
432 [民事訴訟法](〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,
433 2:2:1)
434 次の文章を読んで,
435 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
436
437
438 【事例】
439 Xは,
440 弁護士L1に対し,
441 下記〔Xの言い分〕のとおりの相談を行った。
442
443
444 〔Xの言い分〕
445 私は,
446 Yに対し,
447 所有する絵画(以下「本件絵画」という。
448
449 )を代金300万円で売り渡しまし
450 た。
451
452 売買代金については,
453 その一部として100万円が支払われましたが,
454 残代金200万円が
455 支払われませんでした。
456
457
458 そこで,
459 私は,
460 Yに対し,
461 残代金200万円の支払を請求したのですが,
462 Yは,
463 弁護士L2を
464 代理人として選任した上,
465 同代理人名義で,
466 売買契約の成立を否認する旨の通知書を送付してき
467 ました。
468
469
470 その通知書には,
471 売買契約の成立を否認する理由として,
472 本件絵画はYが代表取締役をしてい
473 る株式会社Zの応接間に掛けるために購入したものであり,
474 そのことについてはXに説明してい
475 たこと,
476 Xに支払済みの代金は株式会社Zの資金によるものであり,
477 かつ,
478 株式会社Z宛ての領
479 収書が発行されていること及びYがXに交付した名刺は株式会社Zの代表取締役としての名刺で
480 あることから,
481 Yは買主ではない旨が記載されていました(以下,
482 これらの記載を「売買契約成
483 立の否認の理由」という。
484
485 )。
486
487
488 私としては,
489 残代金の支払を求めたいと思います。
490
491
492 〔設問1〕
493 Xから訴訟委任を受けた弁護士L1は,
494 Xの訴訟代理人として,
495 【事例】における本件絵画に
496 係る売買契約に基づく代金の支払を求める訴えを提起することとしたが,
497 その訴えの提起に当
498 たっては,
499 同一の訴状によってY及び株式会社Zを被告とすることを考えている。
500
501
502 このような訴えを提起するに当たり,
503 Y及び株式会社Zに対する請求相互の関係を踏まえつ
504 つ,
505 弁護士L1として考え得る手段を検討し,
506 それぞれの手段につき,
507 その可否を論じなさい。
508
509
510 なお,
511 設問の解答に当たっては,
512 遅延損害金については,
513 考慮しなくてよい(〔設問2〕及び
514 〔設問3〕についても同じ。
515
516 )。
517
518
519 【事例(続き)】(
520 〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
521
522 )
523 以下は,
524 【事例】において弁護士L1がXから相談を受けた際の,
525 弁護士L1と司法修習生P
526 との会話である。
527
528
529 弁護士L1:本件で,
530 仮に,
531 訴え提起前に売買契約成立の否認の理由の通知を受けていなかっ
532 たとすると,
533 Yのみを被告として訴えることが考えられます。
534
535 これを前提として,
536
537 もし,
538 その訴訟の途中で,
539 売買契約成立の否認の理由が主張されたとすると,
540 どの
541 ような方法を採ることが考えられますか。
542
543
544 修習生P
545
546 :第1の方法として,
547 Yを被告とする訴訟において,
548 敗訴に備え,
549 株式会社Zに訴
550 訟告知をする方法が考えられます。
551
552
553
554 弁護士L1:ほかにどのような方法が考えられますか。
555
556
557 修習生P
558
559 :第2の方法として,
560 Yを被告とする訴訟が係属する裁判所に対し,
561 Xは,
562 株式会
563 社Zを被告として,
564 XZ間の売買契約に基づく代金の支払を求める別訴を提起し,
565
566 Yを被告とする訴訟との弁論の併合を裁判所に求める方法が考えられます。
567
568
569
570 弁護士L1:それでは,
571 それぞれの方法の適否を検討しましょう。
572
573 まず,
574 第1の方法を採った
575
576 - 6 -
577
578 として,
579 仮に,
580 Yを被告とする訴訟で,
581 株式会社Zが補助参加せず,
582 かつ,
583 買主は
584 株式会社ZであってXY間の売買契約は成立していないという理由で請求を棄却す
585 る判決が確定したとします。
586
587 この場合には,
588 Xは,
589 株式会社Zを被告として,
590 XZ
591 間の売買契約に基づく代金の支払を求める訴え(以下「後訴」という。
592
593 )を提起す
594 ることになると思います。
595
596 では,
597 @Xは,
598 後訴で,
599 Yを被告とする訴訟の判決の効
600 力を用いることは可能ですか。
601
602
603 修習生P
604
605 :はい。
606
607 検討します。
608
609
610
611 弁護士L1:また,
612 第2の方法を採ったところ,
613 弁論の併合がされたとします。
614
615 その後,
616 裁判
617 所が弁論を分離しようとした場合には,
618 私としては,
619 「その弁論の分離は,
620 裁判所
621 の裁量の範囲を逸脱して違法である」と主張したいと思います。
622
623 では,
624 Aその主張
625 の根拠となり得る事情としては,
626 どのようなものが考えられるでしょうか。
627
628
629 修習生P
630
631 :はい。
632
633 検討します。
634
635
636
637 〔設問2〕
638 下線部@の課題について,
639 事案に即して結論と理由を論じなさい。
640
641
642 〔設問3〕
643 下線部Aの課題について,
644 事案に即して答えなさい。
645
646
647
648 - 7 -
649
650