1 平成30年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨
2
3
4 行政法に関し,
5 誤記の訂正についての記載が追記されています。
6
7
8
9 [憲
10
11 法]
12
13 次の文章を読んで,
14 後記の〔設問〕に答えなさい。
15
16
17 A市教育委員会(以下「市教委」という。
18
19 )は,
20 同市立中学校で使用する社会科教科書の採択に
21 ついて,
22 B社が発行する教科書を採択することを決定した。
23
24 A市議会議員のXは,
25 A市議会の文教
26 委員会の委員を務めていたところ,
27 市教委がB社の教科書を採択する過程で,
28 ある市議会議員が関
29 与していた疑いがあるとの情報を,
30 旧知の新聞記者Cから入手した。
31
32 そこで,
33 Xは,
34 市教委に対し
35 て資料の提出や説明を求め,
36 関係者と面談するなどして,
37 独自の調査を行った。
38
39
40 Xの調査とCの取材活動により,
41 教科書採択の過程で,
42 A市議会議員のDが,
43 B社の発行する教
44 科書が採択されるよう,
45 市教委の委員に対して強く圧力を掛けていた疑いが強まった。
46
47 Cの所属す
48 る新聞社は,
49 このDに関する疑いを報道し,
50 他方で,
51 Xは,
52 A市議会で本格的にこの疑いを追及す
53 べきであると考え,
54 A市議会の文教委員会において,
55 「Dは,
56 市教委の教科書採択に関し,
57 特定の
58 教科書を採択させるため,
59 市教委の委員に不当に圧力を掛けた。
60
61 」との発言(以下「本件発言」と
62 いう。
63
64 )をした。
65
66
67 これに対し,
68 Dは,
69 自身が教科書採択の過程で市教委の委員に圧力を掛けた事実はなく,
70 Xの本
71 件発言は,
72 Dを侮辱するものであるとして,
73 A市議会に対し,
74 Xの処分を求めた(地方自治法第1
75 33条参照)。
76
77
78 その後,
79 Dが教科書採択の過程で市教委の委員に圧力を掛けたという疑いが誤りであったことが
80 判明し,
81 Cの所属する新聞社は訂正報道を行った。
82
83 A市議会においても,
84 所定の手続を経た上で,
85
86 本会議において,
87 Xに対し,
88 「私は,
89 Dについて,
90 事実に反する発言を行い,
91 もってDを侮辱しま
92 した。
93
94 ここに深く陳謝いたします。
95
96 」との内容の陳謝文を公開の議場において朗読させる陳謝の懲
97 罰(地方自治法第135条第1項第2号参照)を科すことを決定し,
98 議長がその懲罰の宣告をした
99 (この陳謝の懲罰を以下「処分1」という。
100
101 )。
102
103
104 しかし,
105 Xが陳謝文の朗読を拒否したため,
106 D及びDが所属する会派のA市議会議員らは,
107 Xが
108 処分1に従わないことは議会に対する重大な侮辱であるとの理由で,
109 A市議会に対し,
110 懲罰の動議
111 を提出した。
112
113 A市議会は,
114 所定の手続を経た上で,
115 本会議において,
116 Xに対し,
117 除名の懲罰(地方
118 自治法第135条第1項第4号参照)を科すことを決定し,
119 議長がその懲罰の宣告をした(この除
120 名の懲罰を以下「処分2」という。
121
122 )。
123
124
125 Xは,
126 Dに関する疑いは誤りであったものの,
127 本件発言は,
128 文教委員会の委員の活動として,
129
130 時一定の調査による相応の根拠に基づいて行った正当なものであるから,
131 @自己の意に反して陳謝
132 文を公開の議場で朗読させる処分1は,
133 憲法第19条で保障されるべき思想・良心の自由を侵害す
134 るものであること,
135 A議会における本件発言を理由に処分1を科し,
136 それに従わないことを理由に
137 処分2の懲罰を科すことは,
138 憲法第21条で保障されるべき議員としての活動の自由を侵害するも
139 のであることを理由として,
140 処分2の取消しを求める訴えを提起しようとしている。
141
142
143 〔設問〕
144 Xの提起しようとしている訴えの法律上の争訟性について言及した上で,
145 Xの憲法上の主張とこ
146 れに対して想定される反論との対立点を明確にしつつ,
147 あなた自身の見解を述べなさい。
148
149
150
151 【資料】地方自治法(昭和22年法律第67号)(抄録)
152 第133条
153
154 普通地方公共団体の議会の会議又は委員会において,
155 侮辱を受けた議員は,
156 これを議
157
158 会に訴えて処分を求めることができる。
159
160
161 第134条
162
163 普通地方公共団体の議会は,
164 この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反
165
166 した議員に対し,
167 議決により懲罰を科することができる。
168
169
170 A
171
172 (略)
173
174 第135条
175
176 懲罰は,
177 左の通りとする。
178
179
180
181
182
183 公開の議場における戒告
184
185
186
187 公開の議場における陳謝
188
189
190
191 一定期間の出席停止
192
193
194
195 除名
196
197 A・B(略)
198
199 (出題の趣旨)
200 本問は,
201 地方議会の内部における紛争について,
202 @その法律上の争訟性を論じた
203 上で,
204 A陳謝の懲罰(処分1)を科すことがXの良心の自由を侵害し,
205 憲法第19
206 条に反しないか,
207 B処分1に従わなかったことを理由とする除名の懲罰(処分2)
208 を科すことが,
209 Xの議員としての活動の自由を侵害し,
210 憲法第21条に反しないか
211 を論ずることを求める問題である。
212
213 @については,
214 地方議会における除名処分が司
215 法審査の対象となることを示した最高裁判例(最高裁昭和35年10月19日大法
216 廷判決,
217 民集第14巻第12号2633頁等)を踏まえて検討することが求められ
218 る。
219
220 Aは,
221 最高裁判例(謝罪広告事件・最高裁昭和31年7月4日大法廷判決,
222
223 集第10巻7号785頁)を参照しながら,
224 本問における事情の下で,
225 Xの良心の
226 自由を侵害するものであるかを論ずる必要があろう。
227
228 Bは,
229 地方議会の議員として
230 の活動の自由が憲法第21条で保障されるかを論じた上で,
231 議会における発言を理
232 由として科された処分1に従わなかったことを理由として,
233 議員としての身分を剥
234 奪する処分2が科されたことについて,
235 その合憲性を検討することが求められる。
236
237
238 A・Bについては,
239 いずれも,
240 地方議会に自律権として認められている懲罰権を意
241 識しながら論ずることが重要である。
242
243
244
245 [行政法]
246 XはY県において浄水器の販売業を営む株式会社であるところ,
247 Y県に対して「Xが消費者に対
248 して浄水器の購入の勧誘を執拗に繰り返している。
249
250 」との苦情が多数寄せられた。
251
252 Y県による実態
253 調査の結果,
254 Xの従業員の一部が,
255 購入を断っている消費者に対して,
256 (ア)「水道水に含まれる化学
257 物質は健康に有害ですよ。
258
259 」,
260 (イ)「今月のノルマが達成できないと会社を首になるんです。
261
262 人助けだ
263 と思って買ってください。
264
265 」と繰り返し述べて浄水器の購入を勧誘していたことが判明した。
266
267
268 そこでY県の知事(以下「知事」という。
269
270 )は,
271 Xに対してY県消費生活条例(以下「条例」と
272 いう。
273
274 )第48条に基づき勧告を行うこととし,
275 条例第49条に基づきXに意見陳述の機会を与え
276 た。
277
278 Xは,
279 この意見陳述において,
280 @Xの従業員がした勧誘は不適正なものではなかったこと,
281 A
282 仮にそれが不適正なものに当たるとしても,
283 そのような勧誘をしたのは従業員の一部にすぎないこ
284 と,
285 B今後は適正な勧誘をするよう従業員に対する指導教育をしたことの3点を主張した。
286
287
288 しかし知事は,
289 Xのこれらの主張を受け入れず,
290 Xに対し,
291 条例第25条第4号に違反して不適
292 正な取引行為を行ったことを理由として,
293 条例第48条に基づく勧告(以下「本件勧告」という。
294
295
296 をした。
297
298 本件勧告の内容は,
299 「Xは浄水器の販売に際し,
300 条例第25条第4号の定める不適正な取
301 引行為をしないこと」であった。
302
303
304 本件勧告は対外的に周知されることはなかったものの,
305 Xに対して多額の融資をしていた金融機
306 関Aは,
307 Xの勧誘についてY県に多数の苦情が寄せられていることを知り,
308 Xに対し,
309 Xが法令違
310 反を理由に何らかの行政上の措置を受けて信用を失墜すれば,
311 融資を停止せざるを得ない旨を通告
312 した。
313
314
315 Xは,
316 融資が停止されると経営に深刻な影響が及ぶことになるため,
317 Y県に対し,
318 本件勧告の取
319 消しを求めて取消訴訟を提起したが,
320 さらに,
321 条例第50条に基づく公表(以下「本件公表」とい
322 う。
323
324 )がされることも予想されたことから,
325 本件公表の差止めを求めて差止訴訟を提起した。
326
327
328 以上を前提として,
329 以下の設問に答えなさい。
330
331
332 なお,
333 条例の抜粋を【資料】として掲げるので,
334 適宜参照しなさい。
335
336
337 〔設問1〕
338 Xは,
339 本件勧告及び本件公表が抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当た
340 る行為」に当たることについて,
341 どのような主張をすべきか。
342
343 本件勧告及び本件公表のそれぞれに
344 ついて,
345 想定されるY県の反論を踏まえて検討しなさい。
346
347
348 〔設問2〕
349 Xは,
350 本件勧告の取消訴訟において,
351 本件勧告が違法であることについてどのような主張をすべ
352 きか。
353
354 想定されるY県の反論を踏まえて検討しなさい(本件勧告の取消訴訟が適法に係属している
355 こと,
356 また,
357 条例が適法なものであることを前提とすること)。
358
359
360
361 【資料】
362
363
364 Y県消費生活条例
365
366 (不適正な取引行為の禁止)
367 第25条
368
369 事業者は,
370 事業者が消費者との間で行う取引(中略)に関して,
371 次のいずれかに該当する
372
373 不適正な取引行為をしてはならない。
374
375
376 一〜三
377
378
379 (略)
380
381 消費者を威迫して困惑させる方法で,
382 消費者に迷惑を覚えさせるような方法で,
383 又は消費者を
384 心理的に不安な状態若しくは正常な判断ができない状態に陥らせる方法で,
385 契約の締結を勧誘し,
386
387 又は契約を締結させること。
388
389
390
391 五〜九
392
393 (略)
394
395 (指導及び勧告)
396 第48条
397
398 知事は,
399 事業者が第25条の規定に違反した場合において,
400 消費者の利益が害されるおそ
401
402 れがあると認めるときは,
403 当該事業者に対し,
404 当該違反の是正をするよう指導し,
405 又は勧告するこ
406 とができる。
407
408
409 (意見陳述の機会の付与)
410 第49条
411
412 知事は,
413 前条の規定による勧告をしようとするときは,
414 当該勧告に係る事業者に対し,
415
416
417 該事案について意見を述べ,
418 証拠を提示する機会を与えなければならない。
419
420
421 (公表)
422 第50条
423
424 知事は,
425 事業者が第48条の規定による勧告に従わないときは,
426 その旨を公表するものと
427
428 する。
429
430
431 (注)Y県消費生活条例においては,
432 資料として掲げた条文のほかに,
433 事業者が第48条の規定によ
434 る勧告に従わなかった場合や第50条の規定による公表がされた後も不適正な取引行為を継続し
435 た場合に,
436 当該事業者に罰則等の制裁を科する規定は存在しない。
437
438
439
440 (出題の趣旨)
441 設問1は,
442 Y県消費生活条例(以下「条例」という)に基づく勧告と公表のそ
443 れぞれについて,
444 その処分性(行政事件訴訟法第3条第2項にいう「行政庁の処
445 分その他公権力の行使に当たる行為」への該当性)の有無の検討を求めるもので
446 ある。
447
448
449 まず,
450 最高裁判所昭和39年10月29日判決(民集18巻8号1809頁。
451
452
453 大田区ゴミ焼却場事件)などで示された処分性の一般論を正しく説明し,
454 処分性
455 の有無を判定する際の考慮要素を挙げることが求められる。
456
457 また,
458 最高裁判所平
459 成20年9月10日判決(民集62巻8号2029頁。
460
461 土地区画整理事業計画事
462 件)などの近時の判例では,
463 実効的な権利救済を図るという観点を考慮する場合
464 もあるが,
465 このような実効的な権利救済について指摘することは加点事由となる。
466
467
468 その上で,
469 勧告の処分性については ,
470 「公表を受け得る地位に立たされる」とい
471 う法効果が認められるか否か,
472 条例第49条(※当初掲載した出題の趣旨では条
473 例第48条と記載していましたが,
474 条例第49条の誤りでしたので訂正しました。
475
476
477 に基づく手続保障の存在が処分性を基礎付けるか否か,
478 勧告段階での実効的な救
479 済の必要が認められるか否か,
480 の3点について当事者の主張を展開することが求
481
482 められる。
483
484
485 同様に,
486 公表の処分性についても,
487 公表のもたらす信用毀損等が法的な効果に
488 当たるか否か,
489 公表に制裁的機能が認められるか否か,
490 公表に対する差止訴訟を
491 認めることが実効的な権利救済の観点から必要か否か,
492 の3点について当事者の
493 主張を展開することが求められる。
494
495
496 設問2は,
497 勧告に処分性が認められることを前提にした上で,
498 勧告の違法性につ
499 いて検討を求めるものである。
500
501
502 まず,
503 条例の文言の抽象性,
504 侵害される権利利益の性質・重大性,
505 専門的判断の
506 必要性の3つを踏まえて,
507 行政庁の裁量権が認められるか否かについて,
508 当事者の
509 主張を展開することが求められる。
510
511
512 次に,
513 Xがした勧誘行為が条例第25条に掲げる「不適正な取引行為」の類型に
514 当てはまるか否かの検討が必要となる。
515
516 具体的には,
517 同条第4号にいう「威迫して
518 困惑させること」,
519 「迷惑を覚えさせること」,
520 「心理的に不安な状態若しくは正常な
521 判断ができない状態にすること」の3つの要件の該当性を検討することが求められ
522 る。
523
524
525 また,
526 条例第48条にいう「消費者の利益が害されるおそれ」の要件については,
527
528 将来において違反行為が繰り返される可能性を踏まえて,
529 その有無を検討すること
530 が求められる。
531
532
533 3つ目として,
534 仮に要件該当性が認められるとしても,
535 その効果として,
536 勧告を
537 行うことが比例原則に反するか否か,
538 あるいは裁量権の逸脱・濫用に当たるか否か
539 の検討が求められる。
540
541 具体的には,
542 前者については,
543 比例原則に関する一般論を展
544 開した上で,
545 Xの違反行為の態様やその後の対応,
546 Xが受ける不利益の程度を考慮
547 に入れて当事者の主張を展開することが求められる。
548
549 また,
550 後者については,
551 裁量
552 権の逸脱・濫用に関する一般論を展開した上で,
553 Xの違反行為の態様やその後の対
554 応,
555 Xが受ける不利益の程度を考慮に入れて当事者の主張を展開することが求めら
556 れる。
557
558
559
560 [民
561
562 法]
563
564 次の文章を読んで,
565 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
566
567
568 【事実】
569 1.Aは,
570 個人で建築業を営むBに雇用された従業員である。
571
572 同じく個人で建築業を営むCは,
573
574 階建の家屋(以下「本件家屋」という。
575
576 )の解体を請け負ったが,
577 Bは,
578 その作業の一部をCか
579 ら請け負い,
580 Cが雇用する従業員及びAと共に,
581 解体作業に従事していた。
582
583 Cは,
584 A及びBに対
585 し,
586 建物解体用の重機,
587 器具等を提供し,
588 Cの従業員に対するのと同様に,
589 作業の場所,
590 内容及
591 び具体的方法について指示を与えていた。
592
593
594 2.Cは,
595 平成26年2月1日,
596 Aに対し,
597 本件家屋の3階ベランダ(地上7メートル)に設置さ
598 れた柵を撤去するよう指示し,
599 Bに対し,
600 Aの撤去作業が終了したことを確認した上で上記ベ
601 ランダの直下に位置する1階壁面を重機で破壊するよう指示した。
602
603
604 Aは,
605 同日,
606 Cの指示に従って,
607 本件家屋の3階ベランダに設置された柵の撤去作業を開始し
608 た。
609
610 ところが,
611 Bは,
612 Aの撤去作業が終了しないうちに,
613 本件家屋の1階壁面を重機で破壊し始
614 めた。
615
616 これにより強い振動が生じたため,
617 Aは,
618 バランスを崩して地上に転落し,
619 重傷を負った
620 (以下「本件事故」という。
621
622 )。
623
624 なお,
625 Cは,
626 このような事故を防ぐための命綱や安全ネットを用
627 意していなかった。
628
629
630 3.Aは,
631 転落の際に頭を強く打ったため,
632 本件家屋の解体作業に従事していたことに関する記憶
633 を全て失った。
634
635 しかし,
636 Aは,
637 平成26年10月1日,
638 仕事仲間のDから聞いて,
639 本件事故は
640 【事実】2の経緯によるものであることを知った。
641
642
643 4.その後,
644 Bは,
645 Aに対して本件事故についての損害を賠償することなく,
646 行方不明となった。
647
648
649 そこで,
650 Aは,
651 平成29年5月1日,
652 Cに対し,
653 損害賠償を求めたが,
654 Cは,
655 AもBもCの従業
656 員ではないのだから責任はないし,
657 そもそも今頃になって責任を追及されてもCには応じる義務
658 がないとして拒絶した。
659
660
661 5.Aは,
662 平成29年6月1日,
663 弁護士Eに対し,
664 弁護士費用(事案の難易等に照らし,
665 妥当な額
666 であった。
667
668 )の支払を約して訴訟提起を委任した。
669
670 Eは,
671 Aを代理して,
672 同月30日,
673 Cに対し,
674
675 @債務不履行又はA不法行為に基づき,
676 損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を請求
677 する訴訟を提起した。
678
679
680 〔設問1〕
681 AのCに対する請求の根拠はどのようなものか,
682
683 【事実】5に記した@とAのそれぞれについて,
684
685 具体的に説明せよ。
686
687 また,
688 【事実】5に記した@とAとで,
689 Aにとっての有利・不利があるかどう
690 かについて検討せよ。
691
692 なお,
693 労災保険給付による損害填補について考慮する必要はない。
694
695
696 【事実(続き)】
697 6.Cは,
698 本件事故の前から,
699 妻Fと共に,
700 自己所有の土地(以下「本件土地」という。
701
702 )の上に
703 建てられた自己所有の家屋(以下「本件建物」という。
704
705 )において,
706 円満に暮らしていた。
707
708 本件
709 土地はCがFとの婚姻前から所有していたものであり,
710 本件建物は,
711 CがFと婚姻して約10
712 年後にFの協力の下に建築したものである。
713
714
715 7.Cは,
716 Aからの損害賠償請求を受け,
717 平成29年7月10日,
718 Fに対し,
719 【事実】1及び2を
720 説明するとともに,
721 「このままでは本件土地及び本件建物を差し押さえられてしまうので,
722 離婚
723 しよう。
724
725 本件建物は本来夫婦で平等に分けるべきものだが,
726 Fに本件土地及び本件建物の全部
727 を財産分与し,
728 確定的にFのものとした上で,
729 引き続き本件建物で家族として生活したい。
730
731 」と
732
733 申し出たところ,
734 Fは,
735 これを承諾した。
736
737
738 8.Cは,
739 平成29年7月31日,
740 Fと共に適式な離婚届を提出した上で,
741 Fに対し,
742 財産分与を
743 原因として本件土地及び本件建物の所有権移転登記手続をした。
744
745 Cは,
746 上記離婚届提出時には,
747
748 本件土地及び本件建物の他にめぼしい財産を持っていなかった。
749
750
751 CとFとは,
752 その後も,
753 本件建物において,
754 以前と同様の共同生活を続けている。
755
756
757 〔設問2〕
758 Eは,
759 平成30年5月1日,
760 Aから,
761 CとFとは実質的な婚姻生活を続けていて離婚が認めら
762 れないから,
763 CからFへの財産分与は無効ではないか,
764 仮に財産分与が有効であるとしても,
765
766 件土地及び本件建物の財産分与のいずれについても,
767 Aが全部取り消すことができるのではないか,
768
769 と質問された。
770
771
772 本件事故についてAがCに対して損害賠償請求権を有し,
773 その額が本件土地及び本件建物の価
774 格の総額を上回っているとした場合,
775 Eは,
776 弁護士として,
777 とのそれぞれにつき,
778 どのように
779 回答するのが適切かを説明せよ。
780
781
782
783 (出題の趣旨)
784 設問1は,
785 労働災害の事案を題材として,
786 安全配慮義務違反を理由とする債務不
787 履行責任や不法行為責任に関する基本的な知識・理解を問うとともに,
788 債務不履行
789 に基づく損害賠償と不法行為に基づく損害賠償とでどのような具体的規律の相違が
790 あるかについて,
791 事案に応じた分析を行う能力を試すものである。
792
793
794 請求の根拠に関する解答に当たっては,
795 債務不履行については直接の契約関係に
796 ない当事者間における安全配慮義務の成否等に関し,
797 不法行為については注文者・
798 請負人間の使用者責任の成否等に関し,
799 自説を論理的に展開し,
800 事案に応じた当て
801 はめを行うことが求められる。
802
803 また,
804 有利・不利に関する解答に当たっては,
805 消滅
806 時効,
807 帰責事由や過失の主張立証責任,
808 遅延損害金の起算点等につき,
809 事案に即し
810 た評価を行うことが求められる。
811
812
813 設問2は,
814 仮装離婚及びこれに伴う財産分与による責任財産の隠匿について,
815
816 議離婚及び財産分与の有効性に関する基本的な知識・理解を問うとともに,
817 財産分
818 与の詐害行為該当性や取消しの範囲について,
819 事案に応じた分析を行う能力を試す
820 ものである。
821
822
823 離婚及び財産分与の有効性に関する解答に当たっては,
824 離婚をする意思の意義・
825 内容に関する解釈を展開した上で,
826 離婚の有効性と財産分与の有効性とを論ずるこ
827 とが求められる。
828
829 また,
830 詐害行為に関する解答に当たっては,
831 財産分与制度の趣旨
832 を踏まえつつ,
833 最高裁昭和58年12月19日判決・民集37巻10号1532頁
834 も意識して,
835 事案に応じた当てはめを行うことが求められる。
836
837
838
839 [商
840
841 法]
842
843 次の文章を読んで,
844 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
845
846
847 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
848
849 )は,
850 トラックによる自動車運送事業を主たる目的とする会
851 社法上の公開会社であり,
852 かつ,
853 監査等委員会設置会社である。
854
855 甲社は種類株式発行会社ではなく,
856
857 平成24年から平成29年5月31日までの間,
858 その発行済株式の総数は100万株であった。
859
860
861 社は,
862 近い将来その発行する株式を金融商品取引所に上場する準備を進めており,
863 その発行する株
864 式について,
865 100株をもって1単元の株式とする旨を定款で定めている。
866
867 なお,
868 甲社には,
869 単元
870 未満株主は存在せず,
871 また,
872 会社法第308条第1項括弧書き及び第2項の規定により議決権を有
873 しない株主は存在しない。
874
875
876 2.甲社の定款には,
877 監査等委員である取締役の員数は3名以上5名以内とすること,
878 事業年度は毎
879 年4月1日から翌年3月31日までの1年とすること及び毎年3月31日の最終の株主名簿に記載
880 された議決権を有する株主をもってその事業年度に関する定時株主総会において議決権を行使する
881 ことができる株主とすることが定められている。
882
883
884 3.甲社の監査等委員である取締役は,
885 社内出身者A,
886 甲社の主要取引先の一つである乙株式会社の
887 前会長B及び弁護士Cであり,
888 いずれも平成28年6月29日に開催された定時株主総会において
889 選任された。
890
891 なお,
892 B及びCは,
893 社外取締役である。
894
895
896 4.Dは,平成24年から継続して甲社の株式1万株を有する株主として株主名簿に記載されている。
897
898
899 Dは,
900 甲社の株式の上場には財務及び会計に関する知見を有する社外取締役を選任することなどに
901 よるコーポレート・ガバナンスの強化が必要であると考え,
902 AからCまでに加えて,
903 新たに監査等
904 委員である取締役を選任するための株主提案をすることとした。
905
906 Dは,
907 平成29年4月10日に,
908
909 甲社の代表取締役Eに対し,
910 監査等委員である取締役の選任を同年6月末に開催される定時株主総
911 会の目的(以下「議題」という。
912
913 )とすること及び公認会計士Fを監査等委員である取締役に選任
914 する旨の議案の要領を定時株主総会の招集通知に記載することを請求した。
915
916
917 5.他方で,
918 甲社は,
919 トラックによる運送需要の増加によって,
920 その業績が好調な状況にあったこと
921 から,
922 迅速かつ積極的に事業の拡大を図ることとし,
923 これに必要となるトラックの購入や駐車場用
924 地の確保のための資金に充てる目的で,
925 平成29年5月8日に取締役会の決議を経た上,
926 募集株式
927 の数を20万株,
928 募集株式の払込金額を5000円,
929 募集株式の払込みの期日を同年6月1日,
930
931 社の主要取引先の一つである丙株式会社(以下「丙社」という。
932
933 )を募集株式の総数の引受人とし
934 て,
935 募集株式を発行した。
936
937 この募集株式の払込金額は丙社に特に有利な金額ではなく,
938 また,
939 その
940 発行手続に法令違反はなかった。
941
942 そして,
943 甲社は,
944 丙社からの要請もあり,
945 この募集株式20万株
946 について,
947 丙社を同月29日に開催する定時株主総会における議決権を行使することができる者と
948 定めた。
949
950
951 6.甲社は,
952 平成29年6月29日に開催した定時株主総会(以下「本件株主総会」という。
953
954 )の招
955 集通知に上記4の議題及び議案の要領を記載しなかった。
956
957
958 〔設問1〕
959 株主Dから上記4の請求を受けた甲社が本件株主総会の招集通知に上記4の議題及び議案の要
960 領を記載しなかったことの当否について,
961 論じなさい。
962
963 なお,
964 甲社の定款には,
965 株主提案権の行
966 使要件に関する別段の定めはないものとする。
967
968
969 7.甲社の監査等委員である取締役としてのBの報酬等は,
970 1年間当たり金銭報酬として600万円
971 のみである。
972
973 また,
974 Bは,
975 甲社の監査等委員である取締役に就任するに当たり,
976 定款の定めに基づ
977
978 き,
979 会社法第423条第1項の責任について,
980 Bが職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない
981 ときは,
982 同法第425条第1項の最低責任限度額を限度とする旨の契約を甲社と締結した。
983
984
985 8.その後,
986 甲社には本店所在地近辺においてトラックの駐車場用地を確保する必要が生じたが,
987
988 社は適当な土地を見付けることができない状況にあったところ,
989 Bが全部の持分を有する丁合同会
990 社(以下「丁社」という。
991
992 )の保有する土地が,
993 場所及び広さ共に甲社が必要とする駐車場用地と
994 して適当であったことから,
995 甲社は丁社からこの土地をトラックの駐車場として賃借することとし
996 た。
997
998 甲社の代表取締役Eは,
999 甲社の事業の都合上,
1000 本店所在地近辺における駐車場用地の確保が急
1001 務であったことから,
1002 賃料の決定に際して丁社の全部の持分を有するBの意向を尊重する姿勢をと
1003 っていた。
1004
1005 平成29年7月1日,
1006 Eが甲社を代表して,
1007 Bが代表する丁社との間で,
1008 この土地につ
1009 いて,
1010 賃貸期間を同日から平成30年6月30日まで,
1011 賃料を1か月300万円とする賃貸借契約
1012 (以下「本件賃貸借契約」という。
1013
1014 )を締結した。
1015
1016 なお,
1017 本件賃貸借契約の締結に当たり,
1018 甲社は,
1019
1020 会社法上必要な手続を経ていた。
1021
1022 本件賃貸借契約の賃料は周辺の相場の2倍というかなり高額なも
1023 のであったが,
1024 甲社は平成30年6月30日までの間に丁社に対して同月分までの賃料を支払った。
1025
1026
1027 〔設問2〕
1028 上記8の事実に関するBの甲社に対する会社法上の損害賠償責任の有無及びその額について,
1029
1030 じなさい。
1031
1032
1033
1034 (出題の趣旨)
1035 本問は,
1036 株主提案権の行使要件と新株発行による総議決権数の変動との関係及び
1037 利益相反取引(直接取引)に基づく取締役の任務懈怠責任と責任限定契約との関係
1038 を問うものである。
1039
1040
1041 設問1は,
1042 公開会社かつ取締役会設置会社であって単元株式制度を採用している
1043 株式会社における株主提案権(議題提案権(会社法第303条)及び議案要領通知
1044 請求権(同法第305条))の行使要件を指摘した上で,
1045 どの時点で議決権保有要
1046 件を充足する必要があるかを検討しなければならない。
1047
1048 株主提案権行使時点では議
1049 決権保有要件を充足するが,
1050 株主提案権行使後の新株発行及び議決権付与(同法第
1051 124条第4項本文)により株主総会の時点では議決権保有要件を充足しない場合
1052 に,
1053 当該議題及び議案の要領を招集通知に記載しなかった会社の取扱いの当否を検
1054 討することになる。
1055
1056 会社法にはこのような場合を規律する直接明文の規定がないた
1057 め,
1058 適切な規範を定立して事案に当てはめる必要がある。
1059
1060
1061 設問2は,
1062 監査等委員会設置会社における利益相反取引をした社外取締役の損害
1063 賠償責任(会社法第423条第1項)の発生要件につき,
1064 同条第3項及び第4項や
1065 会社が被った損害額にも触れた上で,
1066 損害賠償責任の有無を事案に即して検討する
1067 ことが求められる。
1068
1069 その検討に当たっては,
1070 同法第428条第1項及び第2項の適
1071 用があるかを判断するために,
1072 本件賃貸借契約が同法第356条第1項第2号の直
1073 接取引のうち「自己のため」又は「第三者のため」のいずれに該当するかを認定す
1074 る必要がある。
1075
1076 前者とする場合には,
1077 帰責事由がないことをもって同法第423条
1078 第1項の責任を免れることができず(同法第428条第1項),
1079 また,
1080 同法第42
1081 7条の責任限定契約による責任軽減が認められないことになる(同法第428条第
1082 2項)。
1083
1084 他方,
1085 後者とする場合には,
1086 同契約による責任軽減の可否が問題となり,
1087
1088 同契約で限度として定めた最低責任限度額(同法第425条第1項第1号ハ)の算
1089
1090 定が必要となる。
1091
1092 ただし,
1093 職務を行うにつき悪意又は重大な過失があるときは,
1094
1095 任軽減は認められない(同法第427条第1項)。
1096
1097 いずれの場合でも,
1098 損害賠償責
1099 任が発生するとしたときは,
1100 具体的な賠償責任額を算定しなければならない。
1101
1102
1103
1104 [民事訴訟法](〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,
1105 2:2:1)
1106 次の文章を読んで,
1107 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
1108
1109
1110 【事例】
1111 Xは,
1112 弁護士L1に対し,
1113 下記〔Xの言い分〕のとおりの相談を行った。
1114
1115
1116 〔Xの言い分〕
1117 私は,
1118 Yに対し,
1119 所有する絵画(以下「本件絵画」という。
1120
1121 )を代金300万円で売り渡しまし
1122 た。
1123
1124 売買代金については,
1125 その一部として100万円が支払われましたが,
1126 残代金200万円が
1127 支払われませんでした。
1128
1129
1130 そこで,
1131 私は,
1132 Yに対し,
1133 残代金200万円の支払を請求したのですが,
1134 Yは,
1135 弁護士L2を
1136 代理人として選任した上,
1137 同代理人名義で,
1138 売買契約の成立を否認する旨の通知書を送付してき
1139 ました。
1140
1141
1142 その通知書には,
1143 売買契約の成立を否認する理由として,
1144 本件絵画はYが代表取締役をしてい
1145 る株式会社Zの応接間に掛けるために購入したものであり,
1146 そのことについてはXに説明してい
1147 たこと,
1148 Xに支払済みの代金は株式会社Zの資金によるものであり,
1149 かつ,
1150 株式会社Z宛ての領
1151 収書が発行されていること及びYがXに交付した名刺は株式会社Zの代表取締役としての名刺で
1152 あることから,
1153 Yは買主ではない旨が記載されていました(以下,
1154 これらの記載を「売買契約成
1155 立の否認の理由」という。
1156
1157 )。
1158
1159
1160 私としては,
1161 残代金の支払を求めたいと思います。
1162
1163
1164 〔設問1〕
1165 Xから訴訟委任を受けた弁護士L1は,
1166 Xの訴訟代理人として,
1167 【事例】における本件絵画に
1168 係る売買契約に基づく代金の支払を求める訴えを提起することとしたが,
1169 その訴えの提起に当
1170 たっては,
1171 同一の訴状によってY及び株式会社Zを被告とすることを考えている。
1172
1173
1174 このような訴えを提起するに当たり,
1175 Y及び株式会社Zに対する請求相互の関係を踏まえつ
1176 つ,
1177 弁護士L1として考え得る手段を検討し,
1178 それぞれの手段につき,
1179 その可否を論じなさい。
1180
1181
1182 なお,
1183 設問の解答に当たっては,
1184 遅延損害金については,
1185 考慮しなくてよい(〔設問2〕及び
1186 〔設問3〕についても同じ。
1187
1188 )。
1189
1190
1191 【事例(続き)】(
1192 〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
1193
1194
1195 以下は,
1196 【事例】において弁護士L1がXから相談を受けた際の,
1197 弁護士L1と司法修習生P
1198 との会話である。
1199
1200
1201 弁護士L1:本件で,
1202 仮に,
1203 訴え提起前に売買契約成立の否認の理由の通知を受けていなかっ
1204 たとすると,
1205 Yのみを被告として訴えることが考えられます。
1206
1207 これを前提として,
1208
1209 もし,
1210 その訴訟の途中で,
1211 売買契約成立の否認の理由が主張されたとすると,
1212 どの
1213 ような方法を採ることが考えられますか。
1214
1215
1216 修習生P
1217
1218 :第1の方法として,
1219 Yを被告とする訴訟において,
1220 敗訴に備え,
1221 株式会社Zに訴
1222 訟告知をする方法が考えられます。
1223
1224
1225
1226 弁護士L1:ほかにどのような方法が考えられますか。
1227
1228
1229 修習生P
1230
1231 :第2の方法として,
1232 Yを被告とする訴訟が係属する裁判所に対し,
1233 Xは,
1234 株式会
1235 社Zを被告として,
1236 XZ間の売買契約に基づく代金の支払を求める別訴を提起し,
1237
1238 Yを被告とする訴訟との弁論の併合を裁判所に求める方法が考えられます。
1239
1240
1241
1242 弁護士L1:それでは,
1243 それぞれの方法の適否を検討しましょう。
1244
1245 まず,
1246 第1の方法を採った
1247
1248 として,
1249 仮に,
1250 Yを被告とする訴訟で,
1251 株式会社Zが補助参加せず,
1252 かつ,
1253 買主は
1254 株式会社ZであってXY間の売買契約は成立していないという理由で請求を棄却す
1255 る判決が確定したとします。
1256
1257 この場合には,
1258 Xは,
1259 株式会社Zを被告として,
1260 XZ
1261 間の売買契約に基づく代金の支払を求める訴え(以下「後訴」という。
1262
1263 )を提起す
1264 ることになると思います。
1265
1266 では,
1267 @Xは,
1268 後訴で,
1269 Yを被告とする訴訟の判決の効
1270 力を用いることは可能ですか。
1271
1272
1273 修習生P
1274
1275 :はい。
1276
1277 検討します。
1278
1279
1280
1281 弁護士L1:また,
1282 第2の方法を採ったところ,
1283 弁論の併合がされたとします。
1284
1285 その後,
1286 裁判
1287 所が弁論を分離しようとした場合には,
1288 私としては,
1289 「その弁論の分離は,
1290 裁判所
1291 の裁量の範囲を逸脱して違法である」と主張したいと思います。
1292
1293 では,
1294 Aその主張
1295 の根拠となり得る事情としては,
1296 どのようなものが考えられるでしょうか。
1297
1298
1299 修習生P
1300
1301 :はい。
1302
1303 検討します。
1304
1305
1306
1307 〔設問2〕
1308 下線部@の課題について,
1309 事案に即して結論と理由を論じなさい。
1310
1311
1312 〔設問3〕
1313 下線部Aの課題について,
1314 事案に即して答えなさい。
1315
1316
1317
1318 (出題の趣旨)
1319 本問は,
1320 絵画の売買がされ残代金が未払であるところ,
1321 買主が法人の代表者個人
1322 か法人のどちらかであるかが問題となっている場合に,
1323 いわゆる両負けを避けるた
1324 めに原告として取るべき手段を問うものである。
1325
1326 設問1では,
1327 いずれをも被告とす
1328 る場合の手段の可否が問われている。
1329
1330 念頭に置かれているのは,
1331 単純併合,
1332 同時審
1333 判申出共同訴訟及び主観的予備的併合である。
1334
1335 これに対し,
1336 設問2では,
1337 一方のみ
1338 を被告とした場合で訴訟告知をしたものの補助参加がされないとき,
1339 後訴で前訴の
1340 判決の効力を用いることができるかが問われている。
1341
1342 主として補助参加の利益及び
1343 参加的効力の客観的範囲を論じることが必要である。
1344
1345 設問3では,
1346 双方を個々に訴
1347 えたのちに弁論が併合された後の弁論の分離について問われている。
1348
1349 いずれの設問
1350 も,
1351 事案に即して,
1352 かつ,
1353 各設問における論述同士の整合性に注意を払いつつ論じ
1354 る必要がある。
1355
1356
1357
1358 [刑
1359
1360 法]
1361
1362 以下の事例に基づき,
1363 甲及び乙の罪責について論じなさい(住居等侵入罪及び特別法違反の点を除
1364 く。
1365
1366 )。
1367
1368
1369
1370
1371 甲は,
1372 新たに投資会社を立ち上げることを計画し,
1373 その設立に向けた具体的な準備を進めてい
1374 たところ,
1375 同会社設立後の事業資金をあらかじめ募って確保しておこうと考え,
1376 某年7月1日,
1377
1378 知人のVに対し,
1379 同年10月頃の同会社設立後に予定している投資話を持ち掛け,
1380 その投資のた
1381 めの前渡金として,
1382 Vから現金500万円を預かった。
1383
1384 その際,
1385 甲とVの間では,
1386 前記500万
1387 円について,
1388 同会社による投資のみに充てることを確認するとともに,
1389 実際にその投資に充てる
1390 までの間,
1391 甲は前記500万円を甲名義の定期預金口座に預け入れた上,
1392 同定期預金証書(原本)
1393 をVに渡し,
1394 同定期預金証書はVにおいて保管しておくとの約定を取り交わした。
1395
1396 同日,
1397 甲は,
1398
1399 この約定に従い,
1400 Vから預かった前記500万円をA銀行B支店に開設した甲名義の定期預金口
1401 座に預け入れた上,
1402 同定期預金証書をVに渡した。
1403
1404 なお,
1405 同定期預金預入れの際に使用した届出
1406 印は,
1407 甲において保管していた。
1408
1409
1410
1411
1412
1413 甲は,
1414 約1年前に無登録貸金業者の乙から1000万円の借入れをしたまま,
1415 全く返済をして
1416 いなかったところ,
1417 同年7月31日,
1418 乙から返済を迫られたため,
1419 Vに無断で前記定期預金を払
1420 い戻して乙への返済に流用しようと考えた。
1421
1422 そこで,
1423 同年8月1日,
1424 甲は,
1425 A銀行B支店に行き,
1426
1427 同支店窓口係員のCに対し,
1428 「定期預金を解約したい。
1429
1430 届出印は持っているものの,
1431 肝心の証書
1432 を紛失してしまった。
1433
1434 」などとうその話をして,
1435 同定期預金の払戻しを申し入れた。
1436
1437 Cは,
1438 甲の
1439 話を信用し,
1440 甲の申入れに応じて,
1441 A銀行の定期預金規定に従って甲の本人確認手続をした後,
1442
1443 定期預金証書の再発行手続を経て,
1444 同定期預金の解約手続を行い,
1445 甲に対し,
1446 払戻金である現金
1447 500万円を交付した。
1448
1449 甲は,
1450 その足で乙のところへ行き,
1451 受け取った現金500万円を乙に直
1452 接手渡して,
1453 自らの借入金の返済に充てた。
1454
1455 なお,
1456 この時点で,
1457 乙は,
1458 甲が返済に充てた500
1459 万円は甲の自己資金であると思っており,
1460 甲がVから預かった現金500万円をVに無断で自ら
1461 への返済金に流用したという事情は全く知らないまま,
1462 その後数日のうちに甲から返済された5
1463 00万円を自己の事業資金や生活費等に全額費消した。
1464
1465
1466
1467
1468
1469 同年9月1日,
1470 Vは,
1471 事情が変わったため甲の投資話から手を引こうと考え,
1472 甲に対し,
1473 投資
1474 のための前渡金として甲に預けた500万円を返してほしいと申し入れたところ,
1475 甲は,
1476 Vに無
1477 断で自らの借入金の返済に流用したことを打ち明けた。
1478
1479 これを聞いたVは,
1480 激怒し,
1481 甲に対し,
1482
1483 「直ちに500万円全額を返してくれ。
1484
1485 さもないと,
1486 裁判を起こして出るところに出るぞ。
1487
1488 」と
1489 言って500万円を返すよう強く迫った。
1490
1491 甲は,
1492 その場ではなんとかVをなだめたものの,
1493 Vか
1494 ら1週間以内に500万円を全額返すよう念押しされてVと別れた。
1495
1496 その後すぐに,
1497 甲は,
1498 乙と
1499 連絡を取り,
1500 甲がVから預かった現金500万円をVに無断で乙への返済金に流用したことを打
1501 ち明けた。
1502
1503 その際,
1504 乙が,
1505 甲に対し,
1506 甲と乙の2人でV方に押し掛け,
1507 Vを刃物で脅して,
1508 「甲
1509 とVの間には一切の債権債務関係はない」という内容の念書をVに無理矢理作成させて債権放棄
1510 させることを提案したところ,
1511 甲は,
1512 「わかった。
1513
1514 ただし,
1515 あくまで脅すだけだ。
1516
1517 絶対に手は出
1518 さないでくれ。
1519
1520 」と言って了承した。
1521
1522
1523
1524
1525
1526 同月5日,
1527 甲と乙は,
1528 V方を訪れ,
1529 あらかじめ甲が用意したサバイバルナイフを各々手に持っ
1530 てVの目の前に示しながら,
1531 甲が,
1532 Vに対し,
1533 「投資話を反故にした違約金として500万円を
1534 出してもらう。
1535
1536 流用した500万円はそれでちゃらだ。
1537
1538 今すぐここで念書を書け。
1539
1540 」と言ったが,
1541
1542 Vは,
1543 念書の作成を拒絶した。
1544
1545 乙は,
1546 Vの態度に立腹し,
1547 念書に加え現金も取ろうと考え,
1548 Vに
1549 対し,
1550 「さっさと書け。
1551
1552 面倒かけやがって。
1553
1554 迷惑料として俺たちに10万円払え。
1555
1556 」と言って,
1557
1558 の胸倉をつかんでVの喉元にサバイバルナイフの刃先を突き付けた。
1559
1560 Vは,
1561 このまま甲らの要求
1562
1563 に応じなければ本当に刺し殺されてしまうのではないかとの恐怖を感じ,
1564 甲らの要求どおり,
1565
1566 「甲
1567 とVの間には一切の債権債務関係はない」という内容の念書を作成して,
1568 これを甲に手渡した。
1569
1570
1571 そこで,
1572 甲がV方から立ち去ろうとしたところ,
1573 乙は,
1574 甲に対し,
1575 「ちょっと待て。
1576
1577 迷惑料の
1578 10万円も払わせよう。
1579
1580 」と持ち掛けた。
1581
1582 甲は,
1583 乙に対し,
1584 「念書が取れたんだからいいだろ。
1585
1586
1587 もうやめよう。
1588
1589 手は出さないでくれと言ったはずだ。
1590
1591 」と言って,
1592 乙の手を引いてV方から外へ
1593 連れ出した上,
1594 乙から同ナイフを取り上げて立ち去った。
1595
1596
1597
1598
1599 その直後,
1600 乙は,
1601 再びV方内に入り,
1602 恐怖のあまり身動きできないでいるVの目の前で,
1603 その
1604 場にあったV所有の財布から現金10万円を抜き取って立ち去った。
1605
1606
1607
1608 (出題の趣旨)
1609 本問は,
1610 甲が,
1611 Vから投資のための前渡金として預かった現金500万円を,
1612
1613 Vとの約定により甲名義の定期預金口座に預け入れて保管していたところ,
1614 Vに無
1615 断で前記定期預金を解約し,
1616 その払戻金を自らの借入金の返済に充てて流用したこ
1617 と,
1618 その後,
1619 Vから前記500万円の返還を迫られた甲が乙と共にV方を訪れ,
1620
1621 各々手に持ったサバイバルナイフをVの目の前に示したり,
1622 乙がVの胸倉をつかん
1623 でVの喉元に同ナイフの刃先を突き付けたりして,
1624 「甲とVの間には一切の債権債
1625 務関係はない」という内容の念書をVに無理矢理作成させたこと,
1626 その際,
1627 乙が
1628 Vに迷惑料として10万円の支払を要求したところ,
1629 甲は,
1630 これを制止し,
1631 乙をV
1632 方から外へ連れ出した上,
1633 同ナイフを取り上げて立ち去ったものの,
1634 その直後に乙
1635 がV方内に戻り,
1636 Vの下から現金10万円を持ち去ったことを内容とする事例につ
1637 いて,
1638 甲及び乙の罪責に関する論述を求めるものである。
1639
1640
1641 については,
1642 甲には銀行に対する正当な払戻権限があることを踏まえて,
1643 甲に
1644 おける現金500万円に対する横領罪の成否について,
1645 預金の占有に関する擬律判
1646 断を含め,
1647 その構成要件該当性を検討し,
1648 及びについては,
1649 甲及び乙における
1650 念書及び現金10万円に対する強盗罪の成否について,
1651 各構成要件該当性のほか,
1652
1653 甲・乙間における共謀に基づく共同正犯の成立範囲や共犯関係の解消の有無を検討
1654 する必要があるところ,
1655 事実を的確に分析するとともに,
1656 横領罪及び強盗罪の各構
1657 成要件,
1658 共犯者による過剰行為がなされた場合の共同正犯の成否等に関する基本的
1659 理解と具体的事例への当てはめが論理的一貫性を保って行われていることが求めら
1660 れる。
1661
1662
1663
1664 [刑事訴訟法]
1665 次の【事例】を読んで,
1666 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1667
1668
1669 【事例】
1670 警察官PとQが,
1671 平成30年5月10日午前3時頃,
1672 凶器を使用した強盗等犯罪が多発してい
1673 るH県I市J町を警らしていたところ,
1674 路地にたたずんでいた甲が,
1675 Pと目が合うや,
1676 急に慌てた
1677 様子で走り出した。
1678
1679 そこで,
1680 Pが,
1681 甲に,
1682 「ちょっと待ってください。
1683
1684 」と声をかけて停止を求めた
1685 ところ,
1686 甲が同町1丁目2番3号先路上で停止したため,
1687 同所において,
1688 職務質問を開始した。
1689
1690
1691 Pは,
1692 甲のシャツのへそ付近が不自然に膨らんでいることに気付き,
1693 甲に対し,
1694 「服の下に何か
1695 持っていませんか。
1696
1697 」と質問した。
1698
1699 これに対し,
1700 甲は,
1701 何も答えずにPらを押しのけて歩き出した
1702 ため,
1703 甲の腹部がPの右手に一瞬当たった。
1704
1705 このとき,
1706 Pは,
1707 右手に何か固い物が触れた感覚があ
1708 ったことから,
1709 甲が服の下に凶器等の危険物を隠している可能性があると考え,
1710 甲に対し,
1711 「お腹
1712 の辺りに何か持ってますね。
1713
1714 服の上から触らせてもらうよ。
1715
1716 」と言って,
1717 @そのまま立ち去ろうと
1718 した甲のシャツの上からへそ付近を右手で触ったところ,
1719 ペンケースくらいの大きさの物が入って
1720 いる感触があった。
1721
1722
1723 Pは,
1724 その感触から,
1725 凶器の可能性は低いと考えたが,
1726 他方,
1727 規制薬物等犯罪に関わる物を隠
1728 し持っている可能性があると考え,
1729 甲の前に立ち塞がり,
1730 「服の下に隠している物を出しなさい。
1731
1732
1733 と言った。
1734
1735 すると,
1736 甲は,
1737 「嫌だ。
1738
1739 」と言って,
1740 腹部を両手で押さえたことから,
1741 AQが,
1742 背後から
1743 甲を羽交い締めにして甲の両腕を腹部から引き離すとともに,
1744 Pが,
1745 甲のシャツの中に手を差し入
1746 れて,
1747 ズボンのウエスト部分に挟まれていた物を取り出した。
1748
1749
1750 Pが取り出した物は,
1751 結晶様のものが入ったチャック付きポリ袋1袋と注射器1本在中のプラ
1752 スチックケースであり,
1753 検査の結果,
1754 結晶様のものは覚せい剤であることが判明した(以下「本件
1755 覚せい剤」という。
1756
1757 )。
1758
1759 そこで,
1760 Pは,
1761 甲を覚せい剤取締法違反(所持)の現行犯人として逮捕する
1762 とともに,
1763 本件覚せい剤等を差し押さえた。
1764
1765
1766 その後,
1767 検察官は,
1768 所要の捜査を遂げた上,
1769 本件覚せい剤を所持したとの事実で,
1770 甲を起訴し
1771 た。
1772
1773
1774 第1回公判期日において,
1775 甲及び弁護人は無罪を主張し,
1776 検察官の本件覚せい剤の取調べ請求
1777 に対し,
1778 取調べに異議があるとの証拠意見を述べた。
1779
1780
1781 〔設問1〕
1782 下線部@及びAの各行為の適法性について論じなさい。
1783
1784
1785 〔設問2〕
1786 本件覚せい剤の証拠能力について論じなさい。
1787
1788
1789 (参照条文)
1790
1791 覚せい剤取締法
1792
1793 第41条の2第1項
1794
1795 覚せい剤を,
1796 みだりに,
1797 所持し,
1798 譲り渡し,
1799 又は譲り受けた者(略)は,
1800
1801
1802 10年以下の懲役に処する。
1803
1804
1805
1806 (出題の趣旨)
1807 本問は,
1808 深夜,
1809 強盗等犯罪の多発する地域を警ら中の警察官が,
1810 甲に停止を求め
1811 て職務質問した際,
1812 @立ち去ろうとした甲のシャツの上からへそ付近に触れるとの
1813 方法,
1814 及びA背後から甲を羽交い締めにした上,
1815 甲のシャツの中に手を差し入れ,
1816
1817
1818 ズボンのウエスト部分に挟まれていたプラスチックケースを取り出すとの方法によ
1819 り所持品検査を実施したところ,
1820 同ケース中に覚せい剤を発見したことから,
1821 甲を
1822 覚せい剤取締法違反(所持)の現行犯人として逮捕するとともに,
1823 上記覚せい剤を
1824 差し押さえ,
1825 その後,
1826 甲を同所持の事実により起訴したとの事例において,
1827 上記各
1828 所持品検査の適法性及び上記覚せい剤の証拠能力について検討させることにより,
1829
1830 基本的な学識の有無及び具体的事案における応用力を試すものである。
1831
1832
1833 設問1においては,
1834 最高裁判所の判例(最判昭和53年6月20日刑集32巻4
1835 号670頁等)に留意しつつ,
1836 対象者の承諾のない所持品検査が許容されることが
1837 あるか否かについて,
1838 その根拠も含めて検討した上,
1839 これが肯定されるとして,
1840
1841 かなる態様の行為がいかなる状況において許容されるのか,
1842 その基準を提示し,
1843
1844 問における各所持品検査の適法性について論述することが求められる。
1845
1846
1847 設問2においては,
1848 本件覚せい剤の発見をもたらした上記Aの方法による所持品
1849 検査が違法であることを前提に,
1850 最高裁判所の判例(最判昭和53年9月7日刑集
1851 32巻6号1672頁等)に留意しつつ,
1852 違法に収集された証拠物の証拠能力が否
1853 定される場合があるか否か,
1854 否定される場合があるとしていかなる基準により判断
1855 されるべきかを提示した上,
1856 本件覚せい剤の証拠能力について論述することが求め
1857 られる。
1858
1859
1860
1861 [民
1862
1863 事]
1864
1865 司法試験予備試験用法文を適宜参照して,
1866 以下の各設問に答えなさい。
1867
1868
1869 〔設問1〕
1870 弁護士Pは,
1871 Xから次のような相談を受けた。
1872
1873
1874 【Xの相談内容】
1875 「私(X)とYは,
1876 かつて同じ大学に通っており,
1877 それ以来の知り合いです。
1878
1879 私は,
1880 平成2
1881 7年8月頃,
1882 Yから,
1883 『配偶者が病気のため,
1884 急に入院したりして,
1885 お金に困っている。
1886
1887 他に頼
1888 める人もおらず,
1889 悪いが100万円程度を貸してくれないか。
1890
1891 』と頼まれました。
1892
1893 私は,
1894 会社勤
1895 めで,
1896 さほど余裕があるわけでもないので,
1897 迷いましたが,
1898 困っているYの姿を見て放っておく
1899 わけにはいかず,
1900 友人のよしみで,
1901 1年後くらいには返してもらうという前提で,
1902 Yに100万
1903 円を貸してもよいと考えました。
1904
1905 私とYは,
1906 平成27年9月15日に会いましたが,
1907 その際,
1908
1909 は,
1910 『100万円借り受けました。
1911
1912 平成28年9月30日までに必ず返済します。
1913
1914 』と書いた借用
1915 証書を準備しており,
1916 これを私に渡し,
1917 私も,
1918 その内容を了解して,
1919 Yに現金100万円を渡し
1920 ました。
1921
1922 なお,
1923 友人同士でもあり,
1924 利息を支払ってもらう話は出ませんでした。
1925
1926
1927 ところが,
1928 返済期限が過ぎても,
1929 Yは,
1930 一向に返済しません。
1931
1932 私は,
1933 直ちに100万円を返し
1934 てほしいですし,
1935 返済が遅れたことについての損害金も全て支払ってほしいです。
1936
1937
1938 なお,
1939 Yは,
1940 平成29年7月末頃までは会社勤めでしたが,
1941 同年8月頃から現在まで,
1942 個人
1943 で自営業をしています。
1944
1945 Yは,
1946 現在,
1947 顧客であるAに対して80万円の売買代金債権を持ってい
1948 るものの,
1949 それ以外にめぼしい資産はないようです。
1950
1951
1952 弁護士Pは,
1953 【Xの相談内容】を前提に,
1954 Xの訴訟代理人として,
1955 Yに対し,
1956 Xの希望する金員
1957 の支払を求める訴訟(以下「本件訴訟」という。
1958
1959 )を提起することを検討することとした。
1960
1961
1962 以上を前提に,
1963 以下の各問いに答えなさい。
1964
1965
1966 (1)
1967
1968 弁護士Pは,
1969 勝訴判決を得た場合の強制執行を確実に行うために,
1970 本件訴訟に先立ってXが事
1971 前に講じておくべき法的手段を検討した。
1972
1973 Xが採り得る法的手段を一つ挙げなさい。
1974
1975 また,
1976 その
1977 手段を講じなかった場合に生じる問題について,
1978 その手段の有する効力に言及した上で説明しな
1979 さい。
1980
1981
1982
1983 (2)
1984
1985 弁護士Pが,
1986 本件訴訟において,
1987 Xの希望を実現するために選択すると考えられる訴訟物を記
1988 載しなさい。
1989
1990
1991
1992 (3)
1993
1994 弁護士Pが,
1995 本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。
1996
1997 )において記載すべき請求の趣旨(民
1998 事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい。
1999
2000 なお,
2001 付随的申立てについては,
2002 考慮す
2003 る必要はない。
2004
2005
2006
2007 (4)
2008
2009 弁護士Pが,
2010 本件訴状において,
2011 請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)とし
2012 て主張すると考えられる具体的事実を記載しなさい。
2013
2014
2015
2016 〔設問2〕
2017 弁護士Qは,
2018 本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。
2019
2020
2021 【Yの相談内容】
2022 「確かに,
2023 私(Y)は,
2024 Xが主張する時期に,
2025 借用証書を作成した上で,
2026 Xから100万円
2027
2028 を借りたことはあります。
2029
2030 しかし,
2031 私は,
2032 返済期限の平成28年9月30日に,
2033 全額をXに返済
2034 しました。
2035
2036
2037 平成29年に入って,
2038 私とXは,
2039 大学の同窓会の幹事を担当するようになったのですが,
2040
2041 年9月半ば頃に,
2042 私の発言をきっかけにXが幹事を辞任しなければならなくなり,
2043 関係が悪化し
2044 てしまったのです。
2045
2046 そのようなこともあって,
2047 Xは,
2048 突然,
2049 返したものを返していないなどと言
2050 い出したのだと思います。
2051
2052
2053 また,
2054 今回,
2055 Xから請求を受けて思い返してみたのですが,
2056 私とXが大学を卒業した直後で
2057 ある平成19年10月1日,
2058 私は,
2059 Xから懇願されて,
2060 気に入っていたカメラ(以下「本件カメ
2061 ラ」という。
2062
2063 )を8万円で売って,
2064 同日,
2065 Xに本件カメラを渡したことがありました。
2066
2067 その後,
2068
2069 忙しくて,
2070 Xに催促しそびれて,
2071 お金を受け取らないまま現在に至っています。
2072
2073 100万円を返
2074 す必要は全くないと考えていますが,
2075 万一,
2076 その主張が認められなかったとしても,
2077 少なくとも
2078 前記8万円分を支払う必要はないと思います。
2079
2080
2081 弁護士Qは,
2082 【Yの相談内容】を前提に,
2083 Yの訴訟代理人として,
2084 弁済の抗弁と相殺の抗弁を主
2085 張することとし,
2086 これらが記載された本件訴訟における答弁書(以下「本件答弁書」という。
2087
2088 )を作
2089 成した。
2090
2091 弁護士Qは,
2092 本件答弁書の提出に先立ち,
2093 Xに対し,
2094 Xの請求を全面的に争うとともに,
2095
2096 8万円分の相殺の抗弁を主張する旨を詳しく記載した内容証明郵便を発送し,
2097 Xは,
2098 平成30年2
2099 月2日,
2100 弁護士Pを経由して,
2101 同内容証明郵便を受領した。
2102
2103
2104 以上を前提に,
2105 以下の各問いに答えなさい。
2106
2107 なお,
2108 〔設問2〕以下においては,
2109 遅延損害金の請
2110 求やこれについての主張を考慮する必要はない。
2111
2112
2113 (1)
2114
2115 弁護士Qは,
2116 本件答弁書に記載した弁済の抗弁につき,
2117 次の事実を主張した。
2118
2119
2120 Yは,
2121 Xに対し,
2122 〔@〕。
2123
2124
2125 上記〔@〕に入る具体的事実を記載しなさい。
2126
2127
2128
2129 (2)
2130
2131 弁護士Qは,
2132 本件答弁書に記載した相殺の抗弁につき,
2133 次の各事実を主張することを検討した。
2134
2135
2136
2137
2138 Yは,
2139 Xに対し,
2140 平成19年10月1日,
2141 本件カメラを代金8万円で売った。
2142
2143
2144
2145
2146
2147 Yは,
2148 Xに対し,
2149 平成30年2月2日,
2150 〔A〕。
2151
2152
2153
2154 (@) 上記〔A〕に入る具体的事実を記載しなさい。
2155
2156
2157 (A) 弁護士Qとして,
2158 上記ア及びイの各事実に加えて,
2159 「Yは,
2160 Xに対し,
2161 平成19年10月1
2162 日,
2163 アの売買契約に基づき,
2164 本件カメラを引き渡した。
2165
2166 」との事実を主張することが必要か否
2167 か。
2168
2169 結論とその理由を述べなさい。
2170
2171
2172 〔設問3〕
2173 弁護士Pは,
2174 相殺の抗弁に対して,
2175 下記の主張をできないか検討したが,
2176 下記の主張は認められ
2177 ない可能性が高いとして断念した。
2178
2179 弁護士Pが断念した理由を説明しなさい。
2180
2181
2182
2183 YのXに対する本件カメラの売買代金債権につき,
2184 消滅時効が成立しているところ,
2185 Xは同時効
2186 を援用する。
2187
2188
2189 〔設問4〕
2190 第1回口頭弁論期日において,
2191 本件訴状と本件答弁書が陳述され,
2192 弁護士Pは,
2193 弁済の抗弁に係
2194 る事実を否認した。
2195
2196 第1回弁論準備手続期日において,
2197 弁護士Qは,
2198 書証として下記@及びAを提
2199 出し,
2200 いずれも取り調べられ,
2201 弁護士Pはいずれも成立の真正を認めた。
2202
2203
2204
2205
2206 @
2207
2208 銀行預金口座(Y名義)から,
2209 平成28年9月28日に現金50万円,
2210 同月29日に現金50万
2211 円がそれぞれ引き出された旨が記載された預金通帳(本件通帳)
2212
2213 A
2214
2215 現在のYの住所につき,
2216 「住所を定めた日
2217
2218 平成29年8月31日転入」との記載がある住民票
2219
2220 写し(本件住民票)
2221 その後,
2222 2回の弁論準備手続期日を経た後,
2223 第2回口頭弁論期日において,
2224 本人尋問が実施され,
2225
2226 Xは,
2227 下記【Xの供述内容】のとおり,
2228 Yは,
2229 下記【Yの供述内容】のとおり,
2230 それぞれ供述した。
2231
2232
2233 【Xの供述内容】
2234 「今回,
2235 Yから,
2236 Yの配偶者が急な病気のため入院して,
2237 お金に困っていると泣き付かれまし
2238 た。
2239
2240 私には小さい子供が2人おり,
2241 家計のやりくりは楽ではないのですが,
2242 困っているYを見
2243 捨てるわけにもいかず,
2244 お金を貸しました。
2245
2246
2247 Yから食事をおごられた記憶はあります。
2248
2249 Yのいうとおり,
2250 平成28年9月30日だったかも
2251 しれません。
2252
2253 ただし,
2254 その際にお金を返してもらったということは絶対にありません。
2255
2256
2257 私も色々と忙しかったので,
2258 私が初めてYにお金の返済を求めたのは,
2259 平成29年10月だ
2260 ったと思います。
2261
2262 確かに,
2263 同年9月半ば頃,
2264 私は,
2265 同窓会の経理につき,
2266 他の幹事たちの面前
2267 で,
2268 Yから指摘を受けたことはありますが,
2269 私が同窓会の幹事を辞任したのは,
2270 それとは無関
2271 係の理由ですので,
2272 私がYを恨みに思っているということはありません。
2273
2274
2275 時期までは聞いていませんが,
2276 Yが引っ越しをしたことは聞いています。
2277
2278 でも,
2279 だからとい
2280 って,
2281 Yがいうように領収書を処分してしまうということは普通は考えられません。
2282
2283 そもそも,
2284
2285 Yは私に返済していないのですから,
2286 Yのいうような領収書が存在するわけもないのです。
2287
2288
2289 【Yの供述内容】
2290 「私は,
2291 配偶者が急に病気になり,
2292 入院するなどしたため,
2293 一時期,
2294 お金に困り,
2295 Xに相談
2296 しました。
2297
2298 Xは快くお金を貸してくれて,
2299 本当に助かりました。
2300
2301
2302 幸い,
2303 私の配偶者は,
2304 一時期の入院を経て元気になり,
2305 私たちは生活を立て直すことができ
2306 ました。
2307
2308
2309 私は,
2310 返済期限である平成28年9月30日に,
2311 Xと会って,
2312 レストランで食事をおごると
2313 ともに,
2314 前々日と前日に銀行預金口座から引き出しておいた合計100万円をXに渡しました。
2315
2316
2317 Xも私もあらかじめ書面は用意していなかったのですが,
2318 Xが,
2319 その場で自分の手帳から紙
2320 を1枚切り取って,
2321 そこに,
2322 『領収書
2323
2324 確かに100万円を受け取りました。
2325
2326 』との文言と,
2327
2328
2329 付と,
2330 Xの氏名を記載して,
2331 私に渡してくれました。
2332
2333 私は,
2334 平成29年8月31日に現在の住
2335 所に引っ越したのですが,
2336 返済して1年近く経っていたこともあり,
2337 その引っ越しの際に,
2338
2339 の不要な書類とともに先ほど述べた領収書を処分してしまったので,
2340 今回の訴訟にこの領収書
2341 を証拠として提出していません。
2342
2343
2344 平成29年に入って,
2345 私とXは,
2346 大学の同窓会の幹事を担当するようになったのですが,
2347
2348 年9月半ば頃,
2349 Xが同窓会費を使い込んでいたことが判明したため,
2350 私が,
2351 他の幹事たちの面
2352 前で,
2353 その点をXに指摘し,
2354 それをきっかけにXが幹事を辞任したことがあったため,
2355 Xは,
2356
2357 私を恨みに思っているようでした。
2358
2359 そのようなこともあって,
2360 同年10月に,
2361 返したものを返
2362 していないなどと言い出し,
2363 請求し始めたのだと思います。
2364
2365
2366 以上を前提に,
2367 以下の問いに答えなさい。
2368
2369
2370 弁護士Qは,
2371 本件訴訟の第3回口頭弁論期日までに,
2372 準備書面を提出することを予定している。
2373
2374
2375 その準備書面において,
2376 弁護士Qは,
2377 前記の提出された各書証並びに前記【Xの供述内容】及び【Y
2378
2379 の供述内容】と同内容のX及びYの本人尋問における供述に基づいて,
2380 弁済の抗弁が認められるこ
2381 とにつき主張を展開したいと考えている。
2382
2383 弁護士Qにおいて,
2384 上記準備書面に記載すべき内容を答
2385 案用紙1頁程度の分量で記載しなさい。
2386
2387
2388
2389 (出題の趣旨)
2390 設問1は,
2391 消費貸借契約に基づく貸金返還請求等が問題となる訴訟において,
2392
2393 告代理人があらかじめ講ずべき法的手段とともに,
2394 原告の求める各請求に対応した
2395 訴訟物や請求の趣旨,
2396 請求を理由付ける事実について説明を求めるものである。
2397
2398
2399 権を対象とする民事保全の効力について検討を行うほか,
2400 消費貸借契約に基づく貸
2401 金返還請求の法律要件につき,
2402 附帯請求に係るものを含め,
2403 正確な理解が問われる。
2404
2405
2406 設問2は,
2407 金銭請求に対する典型的な抗弁事実に関し,
2408 民事実体法及び要件事実
2409 の理解を問うものである。
2410
2411 相殺の抗弁については,
2412 自働債権が双務契約に基づいて
2413 発生したことを踏まえ,
2414 本件の事案に即して,
2415 自説を的確に論ずることが求められ
2416 る。
2417
2418
2419 設問3は,
2420 原告代理人の訴訟活動上の選択につき,
2421 理由を説明するものである。
2422
2423
2424 相殺と消滅時効に関する実体法上の規律を前提に,
2425 本件の事案に適切に当てはめて
2426 論ずることが求められる。
2427
2428
2429 設問4は,
2430 被告代理人の立場から,
2431 弁済の抗弁について準備書面に記載すべき事
2432 項を問うものである。
2433
2434 書証及び当事者尋問の結果を検討し,
2435 いかなる証拠によりい
2436 かなる事実を認定することができるかを示すとともに,
2437 各認定事実に基づく推認の
2438 過程を,
2439 本件の具体的な事案に応じて,
2440 説得的に論述することが求められる。
2441
2442
2443
2444 [刑
2445
2446 事]
2447
2448 次の【事例】を読んで,
2449 後記〔設問〕に答えなさい。
2450
2451
2452 【事例】
2453
2454
2455 A(21歳,
2456 男性)は,
2457 平成30年5月30日,
2458 「氏名不詳者と共謀の上,
2459 平成30年4月
2460 2日午前4時頃,
2461 H県I市J町2丁目3番K駐車場において,
2462 同所に駐車されていたV所有
2463 の普通乗用自動車(以下「本件自動車」という。
2464
2465 )の運転席側窓ガラスを割るなどして,
2466 同車
2467 を損壊した上,
2468 同車内にあったV所有の現金200万円在中の鞄1個及びカーナビゲーショ
2469 ンシステム1台(以下「本件カーナビ」という。
2470
2471 )を窃取した。
2472
2473 」旨の器物損壊・窃盗被告事
2474 件(以下「本件被告事件」という。
2475
2476 )でH地方裁判所に公訴提起された。
2477
2478
2479 Aの弁護人は,
2480 同年5月30日,
2481 Aについて保釈の請求をしたところ,
2482 H地方裁判所裁判
2483
2484 官は,
2485 刑事訴訟法第89条第4号に該当する事由があり,
2486 また,
2487 同法第90条に基づく職権に
2488 よる保釈を許すべき事情も認められないとして,
2489 同保釈請求を却下した。
2490
2491
2492
2493
2494 その後,
2495 本件被告事件は,
2496 公判前整理手続に付することが決定され,
2497 検察官は,
2498 同年6月1
2499 2日,
2500 証明予定事実記載書面を裁判所に提出するとともにAの弁護人に送付し,
2501 併せて,
2502
2503 拠の取調べを裁判所に請求し,
2504 当該証拠を同弁護人に開示した。
2505
2506 検察官が取調べを請求した
2507 証拠の概要は次のとおりである(以下,
2508 日付はいずれも平成30年である。
2509
2510 )。
2511
2512
2513
2514
2515 Vの告訴状(甲1号証)
2516 「本件自動車を壊して,
2517 車内にあった現金200万円が入った鞄や本件カーナビを盗ん
2518 だ犯人として,
2519 Aが逮捕されたと聞いたが,
2520 知らない人である。
2521
2522 盗難被害のほか,
2523 本件自
2524 動車の損壊についても,
2525 Aの厳しい処罰を求める。
2526
2527
2528
2529
2530
2531 K駐車場の実況見分調書(甲2号証)
2532 Vを立会人として行われたK駐車場の実況見分の結果を記載したものであり,
2533 同駐車場の
2534 位置や広さなどのほか,
2535 本件自動車の駐車状況及び被害後の状況を含めた被害現場の状況な
2536 どが記載されている。
2537
2538
2539
2540
2541
2542 Vの警察官面前の供述録取書(甲3号証)
2543 「4月1日午後8時頃,
2544 本件自動車をK駐車場に駐車した。
2545
2546 本件自動車及び同車内在中の
2547 鞄,
2548 現金,
2549 本件カーナビは,
2550 いずれも私が所有するものである。
2551
2552 主なもので,
2553 その日に銀行
2554 から下ろした現金200万円及び本件カーナビ(時価5万円)の損害のほか,
2555 本件自動車の
2556 修理代金として,
2557 約25万円の損害が発生しており,
2558 犯人を早く捕まえてほしい。
2559
2560
2561
2562
2563
2564 W1の警察官面前の供述録取書(甲4号証)
2565 「私は,
2566 L県内で中古電化製品販売店を営んでおり,
2567 中古電化製品の買取りも行っている。
2568
2569
2570 4月2日午前11時頃,
2571 Aとして身分確認をした男性からカーナビゲーションシステム1台
2572 を買い取った。
2573
2574 今刑事さんと一緒に買取台帳等を確認し,
2575 製品番号などから,
2576 このとき買い
2577 取ったカーナビゲーションシステムが,
2578 本件カーナビであることが分かった。
2579
2580 本件カーナビ
2581 は未販売であり,
2582 警察に提出する。
2583
2584 また,
2585 当店では,
2586 買取りに際し,
2587 自動車運転免許証等で
2588 身分確認をしており,
2589 本件カーナビを売却した男性についても,
2590 自動車運転免許証の提示を
2591 求めた上,
2592 その写しを作成して保管しているので,
2593 その写しや買取台帳の写しも提出する。
2594
2595
2596
2597
2598
2599 警察官作成の捜査報告書(甲5号証)
2600 W1から提出されたカーナビゲーションシステムの写真が添付されており,
2601 同カーナビゲ
2602 ーションシステムの製造番号が本件カーナビの製造番号と一致することなどが記載されてい
2603 る。
2604
2605
2606
2607
2608
2609 A名義の自動車運転免許証の写し(甲6号証)
2610
2611 W1から提出されたA名義の自動車運転免許証の写しであり,
2612 乙2号証の身上調査照会回
2613 答書記載のAの生年月日,
2614 住所地等と合致する記載がある。
2615
2616
2617
2618
2619 W1から提出された買取台帳の写し(甲7号証)
2620 「買取年月日
2621
2622 30年4月2日」,
2623 「顧客名
2624
2625 型番,
2626 製造番号)」,
2627 「買取代金
2628
2629
2630 A」,
2631 「商品
2632
2633 カーナビ1台(メーカー名,
2634
2635
2636 3万3000円」等の記載がある。
2637
2638
2639
2640 W2(男性)の検察官面前の供述録取書(甲8号証)
2641 「私は,
2642 自宅近くのコンビニエンスストアで買い物をして帰宅する途中の4月2日午前4
2643 時頃,
2644 K駐車場前の歩道を歩いていたところ,
2645 駐車場内に駐車されていた本件自動車の車内
2646 ランプが光っていることに気付き,
2647 注視しながら同車に近づいた。
2648
2649 同車まで約5メートルの
2650 距離まで近づいたところで,
2651 黒い上下のウィンドブレーカーを着た身長175センチメート
2652 ルくらいの男が,
2653 慌てた様子で,
2654 ティッシュペーパーの箱を2つ重ねたくらいの大きさの電
2655 化製品に見えるものを持って同車の運転席側のドアから降りてきて,
2656 1秒ほど私と目を合わ
2657 せた。
2658
2659 そして,
2660 その男が,
2661 同車の横に停車していた自動車の助手席に乗り込むや否や,
2662 その
2663 車は急発進し,
2664 私のすぐ左側を通り過ぎ,
2665 K駐車場から出て,
2666 左折して走り去った。
2667
2668 私は,
2669
2670 男たちの行動を不審に感じ,
2671 本件自動車に近づいてその様子を見ると,
2672 同車の運転席側の窓
2673 ガラスが割れていたので,
2674 先ほどの男たちが車上荒らしをしたのだと思い,
2675 110番通報を
2676 した。
2677
2678 本件自動車から降りてきた男については,
2679 1秒ほど目が合ったし,
2680 自動車が通り過ぎ
2681 る際にも助手席側の窓ガラス越しに顔を見たので,
2682 その男の顔は覚えている。
2683
2684 検事から,
2685
2686 『こ
2687 れらの写真に写っている男の中に,
2688 あなたが見た男がいるかもしれないし,
2689 いないかもしれ
2690 ない。
2691
2692 』と説明を受けた上で,
2693 30枚の男性の顔の写真が貼られたものを見せられたが,
2694
2695 2番の写真の男が,
2696 顔の輪郭や目鼻立ち,
2697 特につり上がった目の感じや左頬のあざなどから,
2698
2699 本件自動車から降りてきた男に間違いないと思う。
2700
2701 この12番の写真の男は,
2702 知り合いでは
2703 なく,
2704 4月2日に初めて見た男である。
2705
2706 また,
2707 急発進した自動車の運転席には,
2708 助手席に座
2709 っていた男とは別の人物が座っていたが,
2710 この人物の性別などは分からない。
2711
2712 12番の写真
2713 の男とは知り合いではないものの,
2714 私はK駐車場の直ぐ隣の一軒家に住んでおり,
2715 12番の
2716 写真の男がその気になれば,
2717 私のことを特定したり,
2718 私の家を知り得ると思うので,
2719 嫌がら
2720 せなどされないかが不安だ。
2721
2722 」(末尾に「12番」とされたAの写真が含まれた写真台帳が添
2723 付されている)。
2724
2725
2726
2727
2728
2729 Aの警察官面前の供述録取書(乙1号証)
2730 「私は,
2731 独身で,
2732 3か月前から一人で住所地のマンションに住んでおり,
2733 無職である。
2734
2735
2736 まに,
2737 工事現場のガードマンとして短期間のアルバイトをして,
2738 生活費を稼いでいる。
2739
2740 K駐
2741 車場には一度も行ったことがない。
2742
2743 本件カーナビをW1が経営する中古電化製品販売店に売
2744 ったことは間違いないが,
2745 それは,
2746 Bという友人から売却を頼まれて売ったのであり,
2747 本件
2748 カーナビや鞄などを盗んだのは私ではないし,
2749 本件自動車を壊したのも私ではない。
2750
2751 本件カ
2752 ーナビが盗品であることは知らなかった。
2753
2754 刑事さんから,
2755 犯行日時に,
2756 K駐車場で本件自動
2757 車から出てくる私を見た人がいると聞いたが,
2758 人違いではないかと思う。
2759
2760
2761
2762
2763
2764 Aの身上調査照会回答書(乙2号証)
2765 Aの氏名,
2766 生年月日,
2767 住所地などが記載されている。
2768
2769
2770
2771
2772
2773 Aの弁護人は,
2774 検察官請求証拠を閲覧・謄写した後,
2775 検察官に対して類型証拠の開示の請
2776 求をし,
2777 類型証拠として開示された証拠も閲覧・謄写するなどした上,
2778 「Aが,
2779 公訴事実記載
2780 の器物損壊や窃盗を行った事実はいずれもない。
2781
2782 Aは,
2783 友人Bから本件カーナビの売却の依頼
2784 を受けてこれを中古電化製品販売店に売却したが,
2785 盗品であることは知らなかった。
2786
2787 Aは,
2788
2789 訴事実記載の日時頃,
2790 K駐車場にはいなかった。
2791
2792 」旨の予定主張事実記載書を裁判所に提出す
2793 るとともに検察官に送付し,
2794 併せて,
2795 検察官に対して主張関連証拠の開示の請求をした。
2796
2797
2798
2799
2800
2801 検察官は,
2802 本件被告事件について,
2803 Aの公訴提起後も,
2804 Bなる人物の所在を捜査していたと
2805
2806 ころ,
2807 Bの所在が判明し,
2808 更に所要の捜査の結果,
2809 このBがAの共犯者であった疑いが濃厚と
2810 なった。
2811
2812 そうしたところ,
2813 6月26日に,
2814 Aに係る本件被告事件の第1回公判前整理手続期日
2815 が開かれたが,
2816 その後の7月5日,
2817 Bが,
2818 「Aと共謀の上,
2819 4月2日午前4時頃,
2820 H県I市J
2821 町2丁目3番K駐車場において,
2822 同所に駐車されていたV所有の本件自動車の運転席側窓ガラ
2823 スを割るなどして,
2824 同車を損壊した上,
2825 同車内にあったV所有の現金200万円在中の鞄1個
2826 及び本件カーナビを窃取した。
2827
2828 」旨の器物損壊・窃盗被疑事件で逮捕され,
2829 7月6日,
2830 H地方
2831 検察庁検察官に送致された。
2832
2833 Bは,
2834 その後,
2835 勾留中の取調べにおいて,
2836 友人Aと相談の上で,
2837
2838 本件自動車を壊して本件カーナビなどを盗んだことを認め,
2839 さらに,
2840 本件自動車から盗んだ鞄
2841 内には,
2842 現金200万円のほか,
2843 アイドルグループのCD1枚(以下「本件CD」という。
2844
2845
2846 が在中し,
2847 同CDを自宅に置いてある旨述べて,
2848 自宅にあったCDを,
2849 親族を通じて,
2850 警察に
2851 提出した。
2852
2853 検察官は,
2854 所要の捜査を遂げ,
2855 同月25日,
2856 Bについて,
2857 被害品を「現金200万
2858 円及び本件CD在中の鞄1個並びに本件カーナビ」と変更したほかは,
2859 逮捕事実と同じ事実で,
2860
2861 H地方裁判所に公訴提起した。
2862
2863
2864
2865
2866 その後,
2867 検察官は,
2868 Bに係る事件の捜査を踏まえて,
2869 既に公訴を提起していたAに係る本件
2870 被告事件について,
2871 AとBが共謀の上で行った事実である旨証明するに足りる証拠や本件CD
2872 も被害品である旨証明するに足りる証拠が収集できたものと判断し,
2873 所要の手続を順次行っ
2874 た上,
2875 本件被告事件について,
2876 下記の甲9号証及び甲10号証の証拠を追加で取調べ請求し,
2877
2878 それらの証拠をAの弁護人に開示した。
2879
2880
2881
2882
2883 Vの警察官面前の供述調書(甲9号証)
2884 「Bの自宅にあったCDを刑事さんから見せてもらったが,
2885 私宛てで,
2886 私が一番好きなメ
2887 ンバーであるQのサインが書かれていることから,
2888 盗まれた私の鞄の中に入っていたものに
2889 間違いない。
2890
2891 見当たらなくなっていたので,
2892 もしかしたら盗まれた鞄に入っていたのかとも
2893 思っていたものの,
2894 確信が持てなかったので,
2895 当初は被害品として届けていなかった。
2896
2897
2898
2899
2900
2901 Bの検察官面前の供述調書(甲10号証)
2902 「友人であるAと相談して,
2903 いわゆる車上荒らしをやることにし,
2904 事前に役割分担を決め
2905 た。
2906
2907 具体的には,
2908 Aが,
2909 マイナスドライバーで,
2910 自動車の窓ガラスを割ってドアのロックを
2911 外し,
2912 車中にある金目の物のほか,
2913 カーナビを外して盗み出す役,
2914 私が,
2915 Aが助手席に乗る
2916 自動車を運転して,
2917 現場に行き,
2918 Aが金目の物やカーナビを盗む間に見張りをして,
2919 盗み終
2920 わった後も運転役をすることを決めた。
2921
2922 4月2日午前4時前頃,
2923 私が運転する私の自動車で
2924 K駐車場に行き,
2925 本件自動車の運転席側の隣に私の自動車を停めた。
2926
2927 その後,
2928 助手席から降
2929 りたAが,
2930 マイナスドライバーで,
2931 本件自動車の運転席側の窓ガラスを割ってドアのロック
2932 を外し,
2933 車中に入った。
2934
2935 私は,
2936 エンジンをかけた状態の私の自動車の運転席に座ったまま周
2937 囲に注意を払っていた。
2938
2939 その後,
2940 Aは,
2941 鞄1個のほか,
2942 本件カーナビを持って,
2943 車外に出て
2944 きたが,
2945 その際,
2946 一人の男性が,
2947 私の車の方に近づいてきたのが見えたため,
2948 私は,
2949 Aが助
2950 手席に飛び乗るや否や,
2951 私の自動車を急発進させて,
2952 K駐車場から逃走した。
2953
2954 本件カーナビ
2955 は,
2956 Aが,
2957 L県内の中古電化製品販売店に3万円くらいで売った。
2958
2959 現金200万円及びAが
2960 売却した本件カーナビの売却金については,
2961 Aと二等分した。
2962
2963 また,
2964 Aと盗んだ鞄の中には,
2965
2966 現金のほか,
2967 本件CDが入っていたが,
2968 Aが要らないと言ったので,
2969 私がもらって自宅に置
2970 いていた。
2971
2972 本件CDについても,
2973 Aと一緒に盗んだものに間違いない。
2974
2975
2976
2977
2978
2979 8月21日に開かれたAに係る本件被告事件の第2回公判前整理手続期日において,
2980 検察官
2981 請求証拠に対し,
2982 弁護人は,
2983 甲8号証及び甲10号証につき,
2984 いずれも「不同意」とし,
2985 その
2986 ほかの証拠については,
2987 いずれも「同意」と意見を述べた。
2988
2989
2990
2991
2992
2993 同期日において,
2994 Aに係る本件被告事件に関し,
2995 検察官は,
2996
2997 「共謀状況及び共同犯行状況等」
2998 を立証趣旨としてBの証人尋問を,
2999 「犯行目撃状況等」を立証趣旨としてW2の証人尋問を請
3000 求した。
3001
3002 裁判所は,
3003 争点を整理した上,
3004 弁護人が同意した証拠についていずれも証拠調べをす
3005
3006 る決定をし,
3007 弁護人に対して,
3008 B及びW2の証人尋問請求に対する意見を聞いたところ,
3009 弁護
3010 人は,
3011 Bについては,
3012
3013 「しかるべく」とし,
3014 W2については,
3015
3016 「必要がない」旨の意見を述べた。
3017
3018
3019 裁判長は,
3020 検察官に対し,
3021 「Bに加えてW2を尋問する必要性」について釈明を求め,
3022 検察
3023 官の釈明を聞いた上で,
3024 B及びW2につき,
3025 いずれも証人として尋問する旨の決定をするなど
3026 し,
3027 公判前整理手続を終結した。
3028
3029
3030
3031
3032 その後,
3033 Aに係る本件被告事件については,
3034 9月12日に開かれた第1回公判期日において,
3035
3036 B及びW2の証人尋問などが行われたところ,
3037 同証人尋問において,
3038 B及びW2は,
3039 それぞれ,
3040
3041 甲8号証,
3042 甲10号証のとおり証言した。
3043
3044 続いて,
3045 同月26日,
3046 第2回公判期日において,
3047
3048 告人質問等が行われ,
3049 10月17日,
3050 第3回公判期日において,
3051 検察官及び弁護人がそれぞれ
3052 意見を述べ,
3053 被告人の最終陳述等が行われた上で結審した。
3054
3055
3056
3057 〔設問1〕
3058 下線部に関し,
3059 裁判官が刑事訴訟法第89条第4号の「被告人が罪証を隠滅すると疑うに
3060 足りる相当な理由がある」と判断した思考過程を,
3061 その判断要素を踏まえ,
3062 具体的事実を指摘
3063 しつつ答えなさい。
3064
3065
3066 〔設問2〕
3067 下線部に関し,
3068 Aの弁護人は,
3069 刑事訴訟法第316条の15第1項柱書き中の「特定の検
3070 察官請求証拠」を甲8号証の「W2の検察官面前の供述録取書」とし,
3071 その「証明力を判断す
3072 るために重要であると認められるもの」に当たる証拠として
3073 @
3074
3075 本件被告事件の犯行現場の実況見分調書(W2が説明する目撃時の人物等の位置関係,
3076
3077 現場の照度などについて明らかにしたもの)
3078
3079 A
3080
3081 W2の警察官面前の供述録取書
3082
3083 B
3084
3085 本件被告事件の犯行日時頃,
3086 犯行現場付近に存在した者の供述録取書
3087
3088 の開示の請求をしようと考えた。
3089
3090 弁護人は,
3091 同請求に当たって,
3092 同条第3項第1号イ及びロに
3093 定める事項(同号イの「開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項」は除く。
3094
3095 )につき,
3096
3097 具体的にどのようなことを明らかにすべきか,
3098 @からBの証拠についてそれぞれ答えなさい。
3099
3100
3101 〔設問3〕
3102 下線部に関し,
3103 検察官が順次行った所要の手続について,
3104 条文上の根拠に言及しつつ,
3105
3106 潔に説明しなさい。
3107
3108
3109 〔設問4〕
3110 下線部に関し,
3111 以下の各問いについて答えなさい。
3112
3113
3114
3115
3116 検察官は,
3117 W2の供述によって「Aが公訴事実記載の器物損壊や窃取に及んだ」という事実
3118 を立証しようと考えている。
3119
3120 この場合,
3121 W2の供述は,
3122 直接証拠又は間接証拠のいずれに当た
3123 るか,
3124 具体的理由を付して答えなさい。
3125
3126
3127
3128
3129
3130 裁判長が,
3131 検察官に対し,
3132 「Bに加えてW2を尋問する必要性」について釈明を求めたのは
3133
3134 なぜか,
3135 条文上の根拠を示しつつ答えなさい。
3136
3137
3138
3139
3140 検察官は,
3141 W2を尋問する必要性について,
3142 どのように釈明すべきか答えなさい。
3143
3144
3145
3146 〔設問5〕
3147 Aに係る本件被告事件の公判前整理手続終結後,
3148 第1回公判期日前である8月28日,
3149 Bが
3150 Vに対して250万円を弁償し,
3151 同日,
3152 弁償金を受領した旨の領収証がVからBに交付された。
3153
3154
3155 Aの弁護人は,
3156 9月15日,
3157 同領収証の写しを入手したため,
3158 これを第2回公判期日において,
3159
3160
3161 取調べ請求したいと考えた。
3162
3163 この場合における,
3164 刑事訴訟法上及び弁護士倫理上の問題につい
3165 てそれぞれ論じなさい。
3166
3167
3168
3169 (出題の趣旨)
3170 本問は,
3171 犯人性が争点となる器物損壊,
3172 窃盗事件(共犯事件)を題材に,
3173 保釈に
3174 おける罪証隠滅のおそれの判断要素(設問1),
3175 類型証拠開示請求の要件(設問2),
3176
3177 訴因の変更の請求及び証明予定事実の追加・変更の手続(設問3),
3178 器物損壊事実
3179 及び窃取事実を認定する証拠構造,
3180 証拠の厳選,
3181 共犯者供述と第三者供述の信用性
3182 の相違に着目した証人尋問の必要性(設問4),
3183 公判前整理手続終了後の証拠調べ
3184 請求の制限,
3185 犯人性を否認している被告人の弁護において共犯者が行った弁償事実
3186 に関する証拠を取調べ請求する際の弁護士倫理上の問題点(設問5)について,
3187 【事
3188 例】に現れた証拠や事実,
3189 手続の経過を適切に把握した上で,
3190 法曹三者それぞれの
3191 立場から,
3192 主張・立証すべき事実やその対応についての思考過程を解答することを
3193 求めており,
3194 刑事事実認定の基本構造,
3195 証拠法及び公判手続等についての基本的知
3196 識の理解並びに基礎的実務能力を試すものである。
3197
3198
3199
3200 [一般教養科目]
3201 次の文章は,
3202 ナンシー・フレイザーとアクセル・ホネットとの論争の書である『再配分か承認
3203 か?』のうち,
3204 ナンシー・フレイザーによって書かれた文章の一部である。
3205
3206 これを読んで,
3207 後記の
3208 設問に答えよ。
3209
3210
3211 (省
3212
3213 略)
3214
3215 〔設問1〕
3216 筆者は,
3217 本文中で,
3218 社会正義の実現のための手段として,
3219 「再配分」と「承認」の2つを挙げて
3220 いる。
3221
3222 それぞれの特徴について,
3223 具体例を挙げつつ,
3224 15行程度で述べなさい。
3225
3226
3227 〔設問2〕
3228 筆者は,
3229 社会正義の実現のためには「再配分」と「承認」の両方が必要であり,
3230 そのいずれか一
3231 方だけでは十分ではないと主張している。
3232
3233
3234 この見解の論拠について考察した上で,
3235 筆者の主張に対するあなた自身の考えを20行程度で論
3236 じなさい。
3237
3238 なお,
3239 解答に当たっては,
3240 筆者の主張に対する賛否を明らかにするとともに,
3241 あなたの
3242 考えを裏付ける適切な具体例を踏まえること。
3243
3244
3245 【出典】ナンシー・フレイザー/アクセル・ホネット
3246 加藤泰史監訳『再配分か承認か? 政治・哲学論争』
3247
3248 (出題の趣旨)
3249 設問1は,
3250 社会正義の実現に関する記述を前提に,
3251 社会正義実現のための手段と
3252 しての「再配分」と「承認」についての理解を問うものである。
3253
3254
3255 回答に当たっては,
3256 「再配分」及び「承認」の意義を正確に読み解いた上で,
3257
3258 れぞれの特徴について,
3259 適切な具体例を挙げつつ,
3260 的確に説明することが求められ
3261 る。
3262
3263
3264 設問2は,
3265 「今日の正義は再配分と承認の両方を必要としている」という筆者の
3266 主張に対する,
3267 各自の見解を問うものである。
3268
3269
3270 上記のような筆者の主張の論拠については本文中で明確にされていないことから,
3271
3272 回答に当たっては,
3273 「再配分」と「承認」についての正確な理解を前提として,
3274
3275 者の関係について考察を深めることが求められる。
3276
3277 その上で,
3278 上記のような主張に
3279 対する賛否を明確にするとともに,
3280 適切な具体例を挙げつつ,
3281 自身の見解を的確に
3282 論じることが求められる。
3283
3284
3285 いずれの設問においても,
3286 全体として指定の分量で簡潔に記述する能力も求めら
3287 れる。
3288
3289
3290
3291