1 論文式試験問題集[刑事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 以下の【事例1】から【事例3】までを読んで,
8 後記〔設問1〕から〔設問3〕までについて,
9
10 答えなさい。
11
12
13 【事例1】
14 甲(男性,
15 25歳)は,
16 他人名義の預金口座のキャッシュカードを入手した上,
17 その口座内の預
18 金を無断で引き出して現金を得ようと考え,
19 某日,
20 金融庁職員に成りすまして,
21 見ず知らずのA
22 (女性,
23 80歳)方に電話をかけ,
24 応対したAに対し,
25 「あなたの預金口座が不正引き出しの被害
26 に遭っています。
27
28 うちの職員がお宅に行くのでキャッシュカードを確認させてください。
29
30 」と告げ,
31
32 Aの住所及びA名義の預金口座の開設先を聞き出した。
33
34
35 同日,
36 甲は,
37 キャッシュカードと同じ形状のプラスチックカードを入れた封筒(以下「ダミー封
38 筒」という。
39
40 )と,
41 それと同種の空の封筒をあらかじめ用意してA方を訪問し,
42 その玄関先で,
43 A
44 に対し,
45 「キャッシュカードを証拠品として保管しておいてもらう必要があります。
46
47 後日,
48 お預か
49 りする可能性があるので,
50 念のため,
51 暗証番号を書いたメモも同封してください。
52
53 」と言った。
54
55 A
56 は,
57 それを信用し,
58 B銀行に開設されたA名義の普通預金口座のキャッシュカード及び同口座の暗
59 証番号を記載したメモ紙(以下「本件キャッシュカード等」という。
60
61 )を甲に手渡し,
62 甲は,
63 本件
64 キャッシュカード等をAが見ている前で空の封筒内に入れた。
65
66 その際,
67 甲は,
68 Aに対し,
69 「この封
70 筒に封印をするために印鑑を持ってきてください。
71
72 」と申し向け,
73 Aが玄関近くの居間に印鑑を取
74 りに行っている隙に,
75 本件キャッシュカード等が入った封筒とダミー封筒をすり替え,
76 本件キャッ
77 シュカード等が入った封筒を自らが持参したショルダーバッグ内に隠し入れた。
78
79 Aが印鑑を持って
80 玄関先に戻って来ると,
81 甲は,
82 ダミー封筒をAに示し,
83 その口を閉じて封印をさせた上でAに手渡
84 し,
85 「後日,
86 こちらから連絡があるまで絶対に開封せずに保管しておいてください。
87
88 」と言い残して,
89
90 本件キャッシュカード等が入った封筒をそのままA方から持ち去った。
91
92
93 その数時間後,
94 甲の一連の行動を不審に感じたAが前記事情を警察に相談したことから,
95 甲の犯
96 行が発覚し,
97 警察から要請を受けたB銀行は,
98 同日中に前記口座を凍結(取引停止措置)すること
99 に応じた。
100
101
102 翌日,
103 甲は,
104 自宅近くのコンビニエンスストアに行き,
105 同店内に設置されていた現金自動預払機
106 (以下「ATM」という。
107
108 )に前記キャッシュカードを挿入して現金を引き出そうとしたが,
109 既に
110 前記口座が凍結されていたため,
111 引き出しができなかった。
112
113
114 〔設問1〕
115
116 【事例1】における甲のAに対する罪責について,
117 論じなさい(住居侵入罪及び特別
118
119 法違反の点は除く。
120
121 )。
122
123
124 【事例2】(
125 【事例1】の事実に続けて,
126 以下の事実があったものとする。
127
128 )
129 甲は,
130 現金の引き出しができなかったため,
131 ATMの前で携帯電話を使ってA方に電話をかけて
132 Aと会話していた。
133
134 同店内において,
135 そのやり取りを聞いていた店員C(男性,
136 20歳)は,
137 不審
138 に思い,
139 電話を切ってそそくさと立ち去ろうとする甲に対し,
140 甲が肩から掛けていたショルダーバ
141 ッグを手でつかんで声をかけた。
142
143 甲は,
144 不正に現金を引き出そうとしたことで警察に突き出される
145 のではないかと思い,
146 Cによる逮捕を免れるため,
147 Cに対し,
148 「引っ込んでろ。
149
150 その手を離せ。
151
152 」と
153 言ったが,
154 Cは,
155 甲のショルダーバッグをつかんだまま,
156 甲が店外に出られないように引き止めて
157 いた。
158
159
160 その頃,
161 同店に買物に来た乙(男性,
162 25歳)は,
163 一緒に万引きをしたことのあった友人甲が店
164 員のCともめている様子を見て,
165 甲が同店の商品をショルダーバッグ内に盗み入れてCからとがめ
166 - 2 -
167
168 られているのだろうと思い,
169 甲に対し,
170 「またやったのか。
171
172 」と尋ねた。
173
174 甲は,
175 自分が万引きをした
176 と乙が勘違いしていることに気付きつつ,
177 自分がこの場から逃げるために乙がCの反抗を抑圧して
178 くれることを期待して,
179 乙に対し,
180 うなずき返して,
181 「こいつをなんとかしてくれ。
182
183 」と言った。
184
185 乙
186 は,
187 甲がショルダーバッグ内の商品を取り返されないようにしてやるため,
188 Cに向かってナイフ
189 (刃体の長さ約10センチメートル)を示しながら,
190 「離せ。
191
192 ぶっ殺すぞ。
193
194 」と言い,
195 それによって
196 Cが甲のショルダーバッグから手を離して後ずさりした隙に,
197 甲と乙は,
198 同店から立ち去った。
199
200
201 〔設問2〕
202
203 【事例1】において甲が現金を引き出そうとした行為に窃盗未遂罪が成立することを
204
205 前提として,
206 【事例2】における乙の罪責について,
207 論じなさい(特別法違反の点は除く。
208
209 )。
210
211
212 なお,
213 論述に際しては,
214 以下の@及びAの双方に言及し,
215 自らの見解(@及びAで記載した立
216 場に限られない)を根拠とともに示すこと。
217
218
219 @
220
221 乙に事後強盗の罪の共同正犯が成立するとの立場からは,
222 どのような説明が考えられるか。
223
224
225
226 A
227
228 乙に脅迫罪の限度で共同正犯が成立するとの立場からは,
229 どのような説明が考えられるか。
230
231
232
233 【事例3】(【事例1】の事実に続けて,
234 【事例2】の事実ではなく,
235 以下の事実があったものとす
236 る。
237
238 )
239 甲は,
240 現金の引き出しができなかったため,
241 同店の売上金を奪おうと考え,
242 同店内において,
243 レ
244 ジカウンター内に一人でいた同店経営者D(男性,
245 50歳)に対し,
246 レジカウンターを挟んで向か
247 い合った状態で,
248 ナイフ(刃体の長さ約10センチメートル)をちらつかせながら,
249 「金を出せ。
250
251 」
252 と言って,
253 レジ内の現金を出すよう要求した。
254
255 それに対し,
256 Dが「それはできない。
257
258 」と言って甲
259 の要求に応じずにいたところ,
260 甲は,
261 「本当に刺すぞ。
262
263 」と怒鳴り,
264 レジカウンターに身を乗り出し
265 てナイフの刃先をDの胸元に突き出したが,
266 それでも,
267 Dは甲の要求に応じる素振りさえ見せなか
268 った。
269
270
271 同店に客として来ておりそのやり取りを目撃していた丙(女性,
272 30歳)は,
273 Dを助けるため,
274
275 間近に陳列されていたボトルワインを手に取り,
276 甲に向かって力一杯投げ付けた。
277
278 ところが,
279 狙い
280 が外れ,
281 ボトルワインがDの頭部に直撃し,
282 Dは,
283 加療約3週間を要する頭部裂傷の傷害を負った。
284
285
286 なお,
287 ボトルワインを投げ付ける行為は,
288 丙が採り得る唯一の手段であった。
289
290
291 〔設問3〕
292
293 【事例3】において,
294 丙がDの傷害結果に関する刑事責任を負わないとするには,
295 ど
296
297 のような理論上の説明が考えられるか,
298 各々の説明の難点はどこかについて,
299 論じなさい。
300
301
302
303 - 3 -
304
305 論文式試験問題集[刑事系科目第2問]
306
307 - 1 -
308
309 [刑事系科目]
310 〔第2問〕(配点:100)
311 次の【事例】を読んで,
312 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
313
314
315 【事
316 1
317
318 例】
319 平成31年2月1日,
320 G市内の路上において,
321 徒歩で通行中のV(70歳,
322 女性)が,
323 原動機付
324
325 自転車に乗った犯人からバッグを引っ張られて路上に転倒し,
326 バッグを奪われた上,
327 同月2日,
328 被
329 害時に頭部を路上に強打した際に生じた脳挫傷により死亡する強盗致死事件が発生した(以下「本
330 件強盗致死事件」という。
331
332 )。
333
334 Vは,
335 被害直後,
336 臨場した警察官に対し,
337 「バッグに50万円を入れ
338 ていた。
339
340 犯人は,
341 ナンバーが『G市(ひらがなは不明)1234』で黒色の原動機付自転車に乗っ
342 ていた。
343
344 」旨供述した。
345
346
347 2
348
349 司法警察員P及びQが本件強盗致死事件について捜査した結果,
350 上記ナンバーに合致する黒色の
351 原動機付自転車は,
352 甲(23歳,
353 男性)名義のもののほか2台あることが判明した。
354
355 そこで,
356 Pら
357 が甲について捜査したところ,
358 甲は,
359 アパートで単身生活していること,
360 平成30年12月末にX
361 社を退職した後は無職であったこと,
362 平成31年2月1日における甲名義の銀行口座の残高は1万
363 円であったものの,
364 同月2日に甲が同口座に現金30万円を入金したことが判明したが,
365 甲方アパ
366 ート駐輪場には甲名義の原動機付自転車は見当たらなかった。
367
368
369 Pは,
370 本件強盗致死事件で甲を逮捕するには証拠が不十分であるため,
371 何か別の犯罪の嫌疑がな
372 いかと考え,
373 X社社長から聴取したところ,
374 同社長から,
375 「甲は,
376 売掛金の集金及び経理業務を担
377 当していたが,
378 平成30年11月20日に顧客Aから集金した3万円を着服したことが発覚して同
379 年末に退職した。
380
381 」旨の供述が得られた。
382
383 そこで,
384 Pは,
385 同社長に対し,
386 甲による現金3万円の業
387 務上横領の被害届を出すよう求めたが,
388 同社長は,
389 被害額が少額であることや世間体を気にして,
390
391 被害届の提出を渋ったため,
392 Pは,
393 繰り返し説得を続け,
394 同社長から被害届の提出を受けた(以下
395 「本件業務上横領事件」という。
396
397 )。
398
399
400
401 3
402
403 その後,
404 Pらは,
405 本件業務上横領事件の捜査を行い,
406 上記内容のX社社長の供述調書のほか,
407
408 「平成30年11月20日,
409 自宅に集金に来た甲に3万円を渡した。
410
411 領収書は捨ててしまった。
412
413 」
414 旨のAの供述調書や,
415 Aから集金した3万円がX社に入金されたことを裏付ける帳簿類は見当たら
416 なかった旨の捜査報告書等を疎明資料として,
417 甲に対する逮捕状の発付を受け,
418 @平成31年2月
419 28日,
420 甲を本件業務上横領の被疑事実で通常逮捕した。
421
422 同年3月1日,
423 検察官Rは,
424 同事実で甲
425 の勾留を請求し,
426 同日,
427 甲は,
428 同事実で勾留された。
429
430 甲は,
431 PやRによる弁解録取手続や裁判官に
432 よる勾留質問において,
433 「平成30年11月20日にAから集金したかどうかは覚えていない。
434
435 」旨
436 供述した。
437
438 なお,
439 甲の送致に先立ち,
440 Rは,
441 Pから,
442 甲に本件強盗致死事件の嫌疑がある旨を聞き,
443
444 同事件での逮捕も視野に入れて,
445 両事件の捜査を並行して行うこととした。
446
447
448 平成31年3月2日以降の捜査経過は,
449 以下のとおりである(なお,
450 その概要は,
451 資料1記載の
452 とおり。
453
454 )。
455
456
457
458 4
459
460 Pは,
461 同月2日,
462 3日及び5日,
463 本件業務上横領事件について甲を取り調べたが,
464 甲は,
465 前同様
466 の供述を繰り返した。
467
468 また,
469 同月4日から6日にかけて,
470 Pは,
471 甲に対し,
472 任意の取調べとして行
473 う旨を説明した上で本件強盗致死事件について取り調べたが,
474 甲は,
475 「やっていない。
476
477 平成31年
478 2月1日に何をしていたか覚えていない。
479
480 」旨の供述に終始した。
481
482
483 また,
484 Qは,
485 同年3月2日から6日にかけて,
486 本件業務上横領事件及び本件強盗致死事件に関す
487 る捜査として,
488 甲の周辺者から聞き込みを行うとともに,
489 逮捕時に押収した甲のスマートフォンに
490 保存されたメール等を精査した結果,
491 甲は,
492 平成30年秋頃,
493 Yから借金の返済を迫られていたこ
494 と,
495 同年11月23日にYと待ち合わせる約束をしていたことが判明した。
496
497 そこで,
498 Qは,
499 本件業
500 務上横領事件の犯行日の特定や被害金額の裏付けとしてYの取調べが必要と考え,
501 Yに連絡したが,
502
503 Yの出張等の都合により,
504 平成31年3月16日にYを取り調べることとなった。
505
506
507 - 2 -
508
509 同月7日,
510 Rが本件業務上横領事件について甲を取り調べたところ,
511 甲は,
512 「事件当日は,
513 終日,
514
515 パチンコ店のH店かI店にいたような気もする。
516
517 」旨供述したことから,
518 Rは,
519 Pらに対し,
520 同店
521 での裏付け捜査を指示した。
522
523
524 そこで,
525 Qは,
526 同月8日から10日にかけて,
527 H店及びI店において裏付け捜査したところ,
528 H
529 店では,
530 防犯カメラ画像で犯行日に甲が来店していないことが確認できたが,
531 I店では,
532 防犯カメ
533 ラが同月14日まで修理中だったため,
534 修理後にその画像を確認することとなった。
535
536
537 他方,
538 Pは,
539 同月8日から10日にかけて,
540 連日,
541 本件強盗致死事件について甲を取り調べたが,
542
543 甲は前同様の供述を繰り返して否認し続けた。
544
545
546 Rは,
547 更に本件業務上横領事件の捜査が必要と判断し,
548 同月10日,
549 甲の勾留期間の延長を請求
550 し,
551 勾留期間は,
552 同月20日まで延長された。
553
554
555 5
556
557 同月11日及び12日,
558 Qが,
559 Aの供述を客観的に裏付けるため,
560 甲がX社の業務で使用してい
561 た甲所有のパソコンのデータを精査したところ,
562 金額の記載はないものの,
563 A宛ての平成30年1
564 1月20日付け領収書のデータが発見された。
565
566 そこで,
567 Pは,
568 平成31年3月13日,
569 取調べにお
570 いて同データについて追及したが,
571 甲は,
572 「日付はとりあえず記入しただけで,
573 その日にA方に行
574 ったかは分からない。
575
576 」旨供述した。
577
578
579 また,
580 同月14日,
581 Qが,
582 I店の防犯カメラ画像を確認したところ,
583 犯行日に甲が来店していな
584 いことが判明した。
585
586 そこで,
587 Pは,
588 同月15日,
589 取調べにおいてH店等での裏付け捜査を踏まえて
590 追及したところ,
591 甲は,
592 「平成30年11月20日にAから集金したが,
593 金額はよく覚えていな
594 い。
595
596 」旨供述した。
597
598
599 平成31年3月16日,
600 QがYを取り調べたところ,
601 Yが,
602 「甲に10万円を貸していたが,
603 平
604 成30年11月23日に3万円の返済を受けた。
605
606 その後,
607 甲は,
608 金がないと言っていたのに,
609 平成
610 31年2月初め頃だったと思うが,
611 『臨時収入があったから金を返す。
612
613 』と電話をかけてきて,
614 甲か
615 ら7万円の返済を受けた。
616
617 」旨供述したため,
618 Qは,
619 その旨の供述調書を作成した。
620
621
622 その後,
623 RがYに確認したところ,
624 返済日及び金額を記載した手帳があることが判明した。
625
626 そこ
627 で,
628 Rは,
629 同年3月19日,
630 Yの持参した手帳を確認しながらYを取り調べ,
631 Yが,
632 甲から平成3
633 0年11月23日に3万円,
634 平成31年2月6日に7万円の返済を受けた旨の供述調書を作成した。
635
636
637 Yの上記取調べに引き続き,
638 Rが本件業務上横領事件について甲を取り調べたところ,
639 甲が,
640 「平
641 成30年11月20日にAから3万円を集金し,
642 これを自分のものとした。
643
644 その3万円はYへの借
645 金返済に充てた。
646
647 」旨供述したため,
648 Rは,
649 その旨の供述調書を作成した。
650
651
652
653 6
654
655 一方,
656 Qは,
657 平成31年3月15日,
658 甲の家賃の支払状況等についてアパートの大家を取り調べ,
659
660 平成30年12月以降家賃を滞納していた甲が,
661 平成31年2月2日に2か月分の家賃として10
662 万円を支払った旨の供述調書を作成した。
663
664
665 また,
666 同年3月17日,
667 Qが,
668 甲の周辺者から,
669 甲名義の原動機付自転車の所在について聞き込
670 みをした結果,
671 甲が,
672 同年2月初旬に同原動機付自転車を知人に1万円で売却したことが判明した。
673
674
675 Pは,
676 同年3月11日,
677 12日,
678 14日及び16日から18日まで,
679 本件強盗致死事件について
680 甲を取り調べた。
681
682 Pは,
683 X社を退職した後の生活費等の入手先や,
684 同年2月1日の行動について追
685 及したが,
686 甲は,
687 「どの店かは忘れたが,
688 パチンコで勝った金で生活していた。
689
690 」「2月1日は何を
691 していたか覚えていない。
692
693 」旨の供述を繰り返し,
694 同年3月17日まで否認し続けた。
695
696 しかし,
697 同
698 月18日,
699 甲は,
700 Pから,
701 家賃の支払状況や銀行口座への30万円の入金について追及されたのを
702 契機に,
703 本件強盗致死事件に及んだ旨自白したため,
704 Pは,
705 その旨の供述調書を作成した。
706
707
708
709 7
710
711 Rは,
712 同月20日,
713 甲を本件業務上横領の事実でG地方裁判所に公判請求した(公訴事実は資料
714 2記載の公訴事実1のとおり。
715
716 )。
717
718
719
720 8
721
722 その後,
723 甲は,
724 本件強盗致死の被疑事実で逮捕,
725 勾留され,
726 Rは,
727 同年4月16日,
728 甲を本件強
729 盗致死の事実でG地方裁判所に公判請求した。
730
731 同裁判所は,
732 本件強盗致死事件と本件業務上横領事
733 件を併合して審理することとし,
734 公判前整理手続に付した。
735
736 公判前整理手続の結果,
737 各公訴事実に
738 - 3 -
739
740 争いはなく,
741 量刑のみが争点とされたほか,
742 本件業務上横領事件も裁判員裁判で審理されることを
743 考慮し,
744 X社社長及びAの証人尋問を実施することが決定された。
745
746 なお,
747 公判前整理手続において,
748
749 弁護人から,
750 甲の集金権限に関する主張はなかった。
751
752
753 しかし,
754 公判期日において,
755 同社長は,
756 「これまで警察官及び検察官に話していなかったが,
757 よ
758 く思い出してみると,
759 甲が無断欠勤するようになったので集金等の業務を任せられないと考え,
760 別
761 の部署に異動させたので,
762 平成30年11月20日当時,
763 甲には集金権限がなかった。
764
765 急な異動の
766 ため,
767 甲が担当していたAなどのお客様への連絡が遅くなってしまった。
768
769 」旨証言した。
770
771 また,
772 A
773 は,
774 「平成30年11月20日に集金に来たのは甲である。
775
776 当時,
777 甲に集金権限がないことは知ら
778 なかった。
779
780 甲は,
781 いつものように,
782 『集金に来ました。
783
784 合計で3万円です。
785
786 』と言ったので,
787 甲がX
788 社の集金担当者だと思い,
789 X社への支払として3万円を甲に渡した。
790
791 」旨証言した。
792
793 さらに,
794 甲は,
795
796 被告人質問において,
797 「確かに,
798 平成30年11月20日当時集金権限はなく,
799 それは分かってい
800 たが,
801 とにかく金が欲しかった。
802
803 」旨供述した。
804
805
806 その後,
807 検察官は,
808 A資料2記載の公訴事実2のとおり訴因変更する旨請求した。
809
810 なお,
811 検察官
812 及び弁護人から追加の証拠調べ請求はなかった。
813
814
815 〔設問1〕
816
817 下線部@の逮捕,
818 勾留及びこれに引き続く平成31年3月20日までの身体拘束の適
819
820 法性について,
821
822 1
823
824 具体的事実を摘示しつつ,
825 論じなさい。
826
827
828
829 2
830
831 1とは異なる結論を導く理論構成を想定し,
832 具体的事実を摘示しつつ,
833 論じなさい。
834
835 なお,
836
837 その際,
838 これを採用しない理由についても言及すること。
839
840
841
842 〔設問2〕
843
844 下線部Aの訴因変更の請求について,
845 裁判所はこれを許可すべきか。
846
847 公判前整理手続
848
849 を経ていることを踏まえつつ,
850 論じなさい。
851
852
853
854 - 4 -
855
856 資料1
857
858 年月日
859
860 甲の取調べ時間
861
862 その他の捜査
863
864 (平成31年3月)
865
866 本件業務上横領事件
867 2日
868
869 3時間
870
871 3日
872
873 3時間
874
875 4日
876 5日
877
878 2時間
879
880 本件業務上横領事件
881
882 本件強盗致死事件
883
884 スマートフォンのデータ精査
885 周辺者への聞き込み
886
887 5時間
888
889 6日
890 7日
891
892 本件強盗致死事件
893
894 2時間
895 3時間
896
897 3時間
898
899 8日
900
901 3時間
902
903 9日
904
905 2時間
906
907 10日
908
909 3時間
910
911 11日
912
913 5時間
914
915 12日
916
917 5時間
918
919 H店及びI店への
920 裏付け捜査
921
922 パソコンデータ精査
923
924 13日
925
926 3時間
927
928 14日
929 15日
930
931 3時間
932 3時間
933
934 大家の取調べ
935
936 16日
937
938 3時間
939
940 17日
941
942 3時間
943
944 18日
945
946 3時間
947
948 19日
949
950 Yの取調べ
951 原動機付自転車に関する捜査
952
953 Yの取調べ
954
955 3時間
956 本件業務上横領事件で公判請求
957
958 20日
959 合計時間
960
961 I店への裏付け捜査
962
963 20時間
964
965 40時間
966
967 - 5 -
968
969 資料2
970 公訴事実1
971 被告人は,
972 X社に勤務し,
973 同社の売掛金の集金業務等に従事していたものであるが,
974 平成30年1
975 1月20日,
976 同社の顧客であるAから売掛金の集金として受け取った現金3万円を同社のため業務上
977 預かり保管中,
978 同日,
979 G市J町1番地所在のA方付近において,
980 自己の用途に使う目的で,
981 着服して
982 横領したものである。
983
984
985 公訴事実2
986 被告人は,
987 平成30年11月20日,
988 G市J町1番地所在のA方において,
989 X社の顧客であるAに
990 対し,
991 真実は被告人に同社の売掛金を集金する権限がないのに,
992 これがあるように装い,
993 「集金に来
994 ました。
995
996 合計で3万円です。
997
998 」などとうそを言い,
999 Aをその旨誤信させ,
1000 よって,
1001 同日,
1002 同所におい
1003 て,
1004 同人から現金3万円の交付を受け,
1005 もって人を欺いて財物を交付させたものである。
1006
1007
1008
1009 - 6 -
1010
1011