1 論文式試験問題集[民事系科目第1問]
2
3 -1-
4
5 [民事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕,
7 〔設問2〕及び〔設問3〕の配点は,
8 35:30:35〕)
9 次の文章を読んで,
10 後記の〔設問1〕,
11 〔設問2〕及び〔設問3〕に答えなさい。
12
13
14 T
15 【事実】
16 1.平成29年5月10日,
17 注文者Aと請負人Bは,
18 A所有の土地に,
19 Bが鉄骨鉄筋コンクリー
20 ト造9階建ての建物を代金3億6000万円で建築する旨の請負契約(以下「本件契約」とい
21 う。
22
23 )を締結した。
24
25 本件契約では,
26 代金について,
27 契約日に10%,
28 着工日に30%,
29 棟上げ
30 日に40%,
31 引渡日に20%を支払うこととされ,
32 引渡日は,
33 平成30年6月11日とされた。
34
35
36 2.Aは,
37 本件契約に従い,
38 Bに対し,
39 請負代金債務の履行として,
40 平成29年5月10日(契
41 約日)に3600万円,
42 同月17日(着工日)に1億800万円,
43 同年8月9日(棟上げ日)
44 に1億4400万円を支払った。
45
46
47 3.Bは,
48 必要な材料を全て自ら調達し,
49 平成30年6月1日,
50 本件契約で定められた仕様どお
51 りに,
52 建物(以下「甲建物」という。
53
54 )を完成させた。
55
56
57 4.平成30年6月7日,
58 この地域で発生した震度5弱の地震により,
59 甲建物の一部が損傷して
60 落下し,
61 甲建物に面する道路を歩行していたCを負傷させた(以下「本件事故」という。
62
63 )。
64
65
66 れにより,
67 Cは,
68 治療費の支出を余儀なくされた。
69
70
71 5.甲建物の一部損傷をもたらした原因は,
72 甲建物に用いられていた建築資材の欠陥にあった。
73
74
75 この資材は,
76 定評があり,
77 多くの新築建物に用いられていたが,
78 本件事故を契機とした調査を
79 通じて,
80 その製造業者において検査漏れがあったこと,
81 そのため,
82 必要な強度を有しない欠陥
83 品が出荷され,
84 甲建物にはたまたまそのようなものが用いられていたことが,
85 判明した。
86
87
88 〔設問1〕
89 【事実】1から5までを前提として,
90 本件事故が発生した時点における甲建物の所有者は誰か,
91
92 また,
93 仮にその所有者が注文者Aであるとした場合,
94 Cは,
95 Aに対し,
96 所有者としての責任を追及
97 して,
98 本件事故による損害の賠償を請求することができるか,
99 理由を付して解答しなさい。
100
101
102 U
103 【事実】
104 6.Dが所有する建物(以下「乙建物」という。
105
106 )につき,
107 D名義の所有権の保存の登記がされ
108 ていた。
109
110
111 7.平成24年10月1日,
112 DとE県との間で,
113 DがEに対し乙建物を期間20年,
114 賃料月額2
115 5万円で賃貸する契約(以下「本件賃貸借契約」という。
116
117 )が締結された。
118
119 同日,
120 Eは同月分
121 の賃料を支払い,
122 Dは乙建物をEに引き渡した。
123
124 同年11月分以降の賃料については,
125 本件賃
126 貸借契約において,
127 Eは前月末日までにDが指定する銀行口座に振り込んで支払うこととされ
128 ていた。
129
130 Eは,
131 これに従い,
132 同年11月分以降の賃料を,
133 前月末日までにDが指定した銀行口
134 座に振り込んで支払っていた。
135
136
137 8.平成28年8月3日,
138 Dは,
139 Eから事前に了解を得て,
140 Fとの間で,
141 FのDに対する貸金3
142 600万円の回収を目的として,
143 本件賃貸借契約に係る同年9月分から平成40年(※令和1
144 0年に相当)8月分までの賃料債権をFに譲渡する旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。
145
146
147 を締結した。
148
149
150 平成28年8月3日,
151 Dは,
152 Eに対し,
153 本件譲渡契約を締結したこと,
154 及び,
155 同年9月分以
156 降の賃料をF名義の銀行口座に振り込んで支払うべきことを内容証明郵便で通知した。
157
158 この通
159 知は,
160 翌日Eに到達した。
161
162
163 -2-
164
165 9.Eは,
166 平成28年9月分以降の賃料を,
167 【事実】8のDからの通知に従い,
168 F名義の銀行口
169 座に振り込んで支払った。
170
171
172 10.平成29年12月1日,
173 Dは,
174 Gから,
175 Gに対する弁済期が経過した債務6000万円(以
176 下「本件債務」という。
177
178 )の弁済を求められた。
179
180
181 Dは,
182 古くからの友人であるHに相談し,
183 D,
184 G及びHの間で協議が行われた。
185
186 Dは,
187 Gに,
188
189 財産と呼べるものは乙建物と本件賃貸借契約に基づきEから取得する賃料だけであるが,
190 その
191 賃料に関してFとの間で本件譲渡契約をした旨述べた。
192
193 これに対し,
194 Gは,
195 乙建物を売りに出
196 せば,
197 買主は長期の安定した賃料収入を見込めることもあり相当な価格で容易に売れるのでは
198 ないかと述べ,
199 その売却によって得られる代金から本件債務を弁済するよう求めた。
200
201 Hは,
202
203 本件譲渡契約にかかわらず,
204 乙建物の所有権を取得し登記を備えることによって,
205 Eから本件
206 賃貸借契約に係るそれ以後の賃料の支払を受けることができると考え,
207 自ら乙建物を購入する
208 こととし,
209 D及びGとの間で,
210 後日正式に契約をする前提で以下の合意をした。
211
212
213 @
214
215 Dは,
216 Hに,
217 乙建物を,
218 その収益性を勘案した価格である6000万円で売却する。
219
220
221
222 A
223
224 Hは,
225 Dに対して@の売買代金の支払をするのではなく,
226 DのGに対する本件債務の
227 弁済を引き受けることによって,
228 @の売買代金債務を消滅させるものとする。
229
230
231
232 B
233
234 Gは,
235 Dの本件債務を免除する。
236
237
238
239 C
240
241 Hは,
242 Aで引き受ける債務の弁済として,
243 Gに対し,
244 @の売買契約の締結後直ちに3
245 600万円を支払い,
246 また,
247 以後10年間,
248 毎月20万円を支払う。
249
250
251
252 11.平成30年2月14日,
253 【事実】10の@からCまでの合意に従って,
254 DとHとの間で乙建物
255 の売買契約(以下「本件売買契約」という。
256
257 )が,
258 GとHとの間で本件債務に係る免責的債務
259 引受契約(以下「本件債務引受契約」という。
260
261 )が,
262 それぞれ締結された。
263
264 また,
265 Gが,
266 Dに
267 対し,
268 本件債務引受契約を締結した旨を伝えた。
269
270 さらに,
271 Hは,
272 Gに対し,
273 3600万円を支
274 払った。
275
276
277 同月20日,
278 乙建物について,
279 本件売買契約を原因とするDからHへの所有権の移転の登記
280 がされた。
281
282
283 12.平成30年2月21日,
284 Dは,
285 Eに対し,
286 乙建物をHに売却したこと,
287 及び,
288 同年3月分以
289 降の賃料をH名義の銀行口座に振り込んで支払うべきことを通知した。
290
291
292 13.平成30年2月22日,
293 Eは,
294 Fに対し,
295
296 【事実】12の通知が来たことを知らせた。
297
298 Fは,
299
300 本件売買契約にかかわらず,
301 本件賃貸借契約に係る賃料の支払を受けることができると考え,
302
303 Eに対し,
304 同年3月分以降の賃料を引き続きF名義の銀行口座に振り込んで支払うことを求め
305 た。
306
307
308 〔設問2〕
309 【事実】6から13までを前提として,
310 【事実】10の下線部を根拠付けるためにHがどのような
311 主張をすることが考えられるか,
312 【事実】13の下線部を根拠付けるためにFがどのような主張を
313 することが考えられるかを述べた上で,
314 下線部と下線部のいずれが正当であるかを検討しなさ
315 い。
316
317
318 〔設問3〕
319 【事実】6から13までを前提として,
320 仮に【事実】13の下線部が正当であるとした場合,
321 Hは
322 本件債務引受契約の無効を主張することができるか,
323 理由を付して解答しなさい。
324
325
326
327 -3-
328
329 論文式試験問題集[民事系科目第2問]
330
331 -1-
332
333 [民事系科目]
334 〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,
335 30:50:20〕)
336 次の文章を読んで,
337 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
338
339
340 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
341
342 )は,
343 事務用品の製造及び販売等を目的とする会社法上の
344 公開会社である監査役会設置会社であり,
345 金融商品取引所にその発行する株式を上場している。
346
347
348 甲社は,
349 種類株式発行会社でない。
350
351 甲社の資本金の額は20億円,
352 総資産額は250億円,
353 直近
354 数年の平均的な年間売上高は300億円である。
355
356 甲社の取締役は10人であり,
357 代表取締役社長
358 はAである。
359
360
361 2.甲社は5年前からその製造拠点の海外移転を進め,
362 甲社の国内物流拠点の役割は大きく変化してき
363 ている。
364
365 甲社は大型倉庫を二つ所有しているが,
366 そのうちP県に所在する倉庫(以下「P倉庫」とい
367 う。
368
369
370 )は2年前からほぼ使用されていなかった。
371
372 1年前にP倉庫の近隣に高速道路のインターチェン
373 ジが設置されることが決まってから近隣の不動産価格が上昇し,
374 P倉庫の市場価格は平成29年12
375 月の時点で約15億円であった。
376
377
378 3.乙合同会社(以下「乙社」という。
379
380
381 )は,
382 日本企業への投資を目的とする投資ファンドである。
383
384
385 社の代表社員Bは,
386 甲社がP倉庫を始めとする多くの遊休資産を有しているため,
387 これらを売却する
388 ことにより剰余金の配当を増額すべきであると考えている。
389
390 乙社は,
391 市場において甲社の株式を買い
392 集め,
393 平成29年5月の時点で甲社の総株主の議決権の4%を,
394 同年9月の時点で同9.8%を,
395
396 成30年1月の時点で同15%を保有するに至った。
397
398
399 4.甲社の定款には,
400 以下の定めがあるが,
401 他に株主総会の招集及び株主提案について別段の定めはな
402 い。
403
404
405 甲社定款(抜粋)
406 (招集)
407 第12条
408
409 当会社の定時株主総会は,
410 毎年6月にこれを招集し,
411 臨時株主総会は,
412 必要があると
413
414 きに随時これを招集する。
415
416
417 (定時株主総会の基準日)
418 第13条
419
420 当会社の定時株主総会の議決権の基準日は,
421 毎年3月31日とする。
422
423
424
425 (招集権者及び議長)
426 第14条
427
428
429 株主総会は,
430 取締役社長がこれを招集し,
431 議長となる。
432
433
434
435 取締役社長に事故があるときは,
436 取締役会においてあらかじめ定めた順序に従い,
437 他の取締
438
439 役が株主総会を招集し,
440 議長となる。
441
442
443 (事業年度)
444 第36条
445 〔設問1〕
446
447 当会社の事業年度は,
448 毎年4月1日から翌年3月31日までの1年とする。
449
450
451 乙社は,
452 平成30年1月,
453 甲社の株主として,
454 株主総会において,
455 株主総会の権限に
456
457 属する一定の事項を提案することを検討していた。
458
459 上記1から4までを前提として,
460 乙社が,
461
462 のために採ることができる会社法上の手段について,
463 甲社の臨時株主総会を自ら招集する場合と
464 平成30年6月の甲社の定時株主総会の開催に当たり株主提案権を行使する場合のそれぞれの手
465 続を説明し,
466 比較検討した上で,
467 論じなさい。
468
469 ただし,
470 社債,
471 株式等の振替に関する法律上の手
472 続については,
473 説明しなくてよい。
474
475
476 5.乙社は,
477 平成30年3月31日の時点で,
478 甲社の総株主の議決権の20%を保有しており,
479 同年4
480
481 -2-
482
483 月25日,
484 以下のとおり,
485 定款変更及びP倉庫の売却を甲社の定時株主総会の議題とすることを請求
486 するとともに,
487 各議案の要領を定時株主総会の招集通知に記載することを請求した(以下「本件株主
488 提案」という。
489
490
491
492
493
494
495 議題1
496
497 定款変更の件
498
499 議案の要領
500
501 現行定款に「当会社の財産の処分は,
502 株主総会の決議によってもすることができ
503
504 る。
505
506 当該株主総会の決議は,
507 当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権
508 の過半数を有する株主が出席し,
509 出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
510
511 」という条
512 項を追加する。
513
514
515 提案の理由
516
517 甲社の株主総会において,
518 甲社の遊休資産等の財産の処分を決定することができ
519
520 るようにする。
521
522 甲社は,
523 現在,
524 市場価格が上昇しているが,
525 ほぼ使用されていないP倉庫を始め
526 とする多くの遊休資産を有している。
527
528 甲社がこのような財産を継続して保有すべきか否かについ
529 て,
530 株主の意向を反映すべきである。
531
532
533 議題2
534
535 P倉庫の売却の件
536
537 議案の要領
538
539 甲社の取締役会は,
540 遅くとも平成30年度中にP倉庫を近隣の不動産価格に照ら
541
542 し適正な価格で売却する。
543
544
545 提案の理由
546
547 P倉庫については,
548 他社から過去に現状のまま購入したいという申出が多数あっ
549
550 たが,
551 甲社は合理的な理由なく売却を渋っている。
552
553 現在,
554 約15億円まで市場価格が上昇してい
555 るP倉庫を売却することにより剰余金の配当を増額すべきである。
556
557
558 6.本件株主提案を受け,
559 甲社の取締役会において,
560 本件株主提案及び乙社による甲社の株式の取
561 得への対応について審議された。
562
563
564 甲社の取締役会においては,
565 P倉庫については,
566 今後,
567 活用する可能性が十分にあるとして,
568
569 本件株主提案に反対する意見が多かった。
570
571
572 また,
573 甲社の取締役らからは,
574 乙社について,
575 比較的短期間で株式を売買し,
576 その売買益を得
577 る投資手法を採っていることや,
578 敵対的な買収により対象会社の支配権を取得し,
579 経営陣を入れ
580 替え,
581 対象会社の財産を切り売りする投資手法を採ったことがあることなどの事実,
582 乙社の代表
583 社員Bについて,
584 ソーシャル・ネットワーキング・サービスで,
585 甲社の事業に関して「社会のデ
586 ジタル化に伴い,
587 事務用品は早晩なくなるであろう。
588
589 」と述べるなど,
590 甲社の事業に対して理解
591 がないことが指摘された。
592
593
594 そして,
595 甲社の取締役らからは,
596 仮に,
597 乙社が甲社の支配権を取得すれば,
598 甲社の財産を切り
599 売りするのではないかという懸念や,
600 乙社は,
601 このまま甲社の株式を買い増し,
602 経営陣を入れ替
603 える可能性が高いという懸念が示された。
604
605
606 7.審議の結果,
607 甲社の取締役会においては,
608 乙社によるこれ以上の甲社の株式の買い増しを防止
609 し,
610 乙社による甲社の支配権の取得を阻止すべきであるという意見が大勢を占めた。
611
612 そして,
613
614 社の取締役らは,
615 乙社の持株比率を低下させる新株予約権無償割当てを行うことで意見が一致し
616 た。
617
618 もっとも,
619 甲社の取締役から,
620 このような新株予約権無償割当ては株主との対話を重視して
621 乙社の意向を見極めた上で行うべきであるという意見も述べられたため,
622 これを新株予約権の内
623 容に反映させることとした。
624
625 さらに,
626 甲社の社外取締役から,
627 取締役会限りでこのような重大な
628 決定をすることには問題があるという意見が述べられたため,
629 甲社の取締役らは,
630 株主総会の決
631 議による承認を受けることでも意見が一致した。
632
633
634 8.そこで,
635 甲社の取締役会は,
636 以下の概要の新株予約権無償割当て(以下「本件新株予約権無償
637 割当て」という。
638
639 )を,
640 株主総会の決議による承認を受けることを条件として行うことを決定し
641
642 -3-
643
644 た(以下「本件取締役会決議」という。
645
646 )。
647
648
649 本件新株予約権無償割当ての概要
650
651
652 割当ての方法及び割当先:新株予約権無償割当ての方法により,
653 基準日(下記第3項で定義
654
655 される。
656
657 以下同じ。
658
659 )の最終の株主名簿に記録された株主に対して,
660 その有する甲社の株式1
661 株につき2個の割合で新株予約権を割り当てる。
662
663
664
665
666 新株予約権の総数:基準日の最終の発行済株式(自己株式を除く。
667
668 )の総数の2倍の数と同
669
670 数とする。
671
672
673
674
675 基準日:平成30年7月24日
676
677
678
679 本件新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日:平成30年7月25日
680
681
682
683 新株予約権の目的である株式の数:新株予約権1個の行使により甲社が普通株式を新たに発
684
685 行又はこれに代えて甲社の有する甲社の普通株式を処分(以下甲社の普通株式の発行又は処分
686 を「交付」という。
687
688 )する数は,
689 1株とする。
690
691
692
693
694 新株予約権の行使により甲社がその普通株式を交付する場合における株式1株当たりの払込
695
696 金額は,
697 1円とする。
698
699
700
701
702 新株予約権を行使することができる期間(以下「行使期間」という。
703
704 ):平成30年11月1
705
706 日から同月30日まで
707
708
709 乙社を「非適格者」とする。
710
711 非適格者は,
712 新株予約権を行使することができないものとする。
713
714
715
716
717
718 新株予約権の譲渡に際しては甲社の取締役会の承認を要する。
719
720
721
722
723
724 甲社の取締役会は,
725 行使期間開始日までの日であって取締役会が別に定める日に,
726 その決議
727
728 により,
729 新株予約権を取得することができる。
730
731 取得の対価は,
732 非適格者以外の株主については
733 新株予約権1個につき甲社の普通株式1株とし,
734 非適格者については1円とする。
735
736
737 ただし,
738 甲社は,
739 乙社に対し,
740 これ以上の甲社の株式の買い増しを行わないように要請する。
741
742
743 その結果,
744 行使期間開始日までの日であって甲社の取締役会が別に定める日までに,
745 乙社がこ
746 れ以上の甲社の株式の買い増しを行わない旨を確約した場合には,
747 甲社の取締役会は,
748 取締役
749 会が別に定める日に,
750 その決議により,
751 本件新株予約権無償割当てにより株主に割り当てた新
752 株予約権の全部を無償で取得することができる。
753
754
755 そして,
756 甲社の取締役会は,
757 以下のとおり,
758 本件新株予約権無償割当てを行うことの承認を平
759 成30年6月25日に開催する甲社の定時株主総会(以下「本件株主総会」という。
760
761 )の議題及
762 び議案(以下「本件会社提案」という。
763
764 )とすることを決定した。
765
766
767 議題3
768
769 新株予約権無償割当てを行うことの承認の件
770
771 議案の概要
772
773 本件取締役会決議に係る本件新株予約権無償割当てを行うことを承認する。
774
775
776
777 提案の理由
778
779 本件新株予約権無償割当ては,
780 乙社による甲社の支配権の取得を阻止するために
781
782 行うものである。
783
784 甲社の定款上,
785 新株予約権無償割当てを行うことについて株主総会の決議によ
786 る承認を要するという条項はない。
787
788 しかし,
789 本件新株予約権無償割当ては,
790 乙社によるこれ以上
791 の甲社の株式の買い増しが甲社の企業価値を毀損し,
792 株主の共同の利益を害するものであるとい
793 う判断に基づくものであり,
794 このような判断は,
795 最終的には株主の意思によりされるべきである。
796
797
798 なお,
799 本件新株予約権無償割当てを行うことにより乙社に生じ得る不利益は,
800 乙社がこれ以上の
801 甲社の株式の買い増しを行わない旨を確約した場合には,
802 甲社の取締役会が解消することができ
803 る仕組みとなっており,
804 乙社の利益を不当に害するものでない。
805
806
807 9.平成30年6月25日に開催された本件株主総会には,
808 甲社の総株主の議決権の90%を有す
809 る株主が出席し,
810 本件株主総会において,
811 本件会社提案に係る議案は出席株主の67%の賛成に
812 -4-
813
814 より可決され,
815 本件株主提案に係る議案はいずれも否決された。
816
817
818 〔設問2〕
819
820 乙社は,
821 平成30年6月26日,
822 本件新株予約権無償割当ての差止めを請求すること
823
824 を検討している。
825
826 乙社が採ることができる会社法上の手段について,
827 乙社の立場において考えら
828 れる主張及びその主張の当否を検討した上で,
829 論じなさい。
830
831 なお,
832 本件株主総会の招集の手続及
833 び議事は,
834 適法であったものとする。
835
836
837 下記 10 及び 11 では,
838 上記9と異なり,
839 平成30年6月25日に開催された本件株主総会におい
840 て本件会社提案に係る議案が否決され,
841 本件株主提案に係る議案がいずれも可決されたこと(以
842 下議題1(定款変更の件)に関する本件株主総会の決議を「本件決議1」といい,
843 議題2(P倉
844 庫の売却の件)に関する本件株主総会の決議を「本件決議2」という。
845
846 ),
847 本件株主総会の招集の
848 手続及び議事は適法であったことを前提として,
849 〔設問3〕に答えなさい。
850
851
852 10.本件決議1及び本件決議2を受け,
853 甲社はP倉庫の売却の相手方候補数社と交渉を開始し,
854
855 成30年度中にP倉庫を近隣の不動産価格に照らし適正な価格で売却することができる見込みが
856 付いた。
857
858 ところが,
859 平成31年1月,
860 甲社が所有するもう一つの大型倉庫(以下「Q倉庫」とい
861 う。
862
863 )が所在するQ県において発生した大地震により,
864 Q倉庫が倒壊したため,
865 海外から到着す
866 る貨物をP倉庫において保管しなければならず,
867 P倉庫を売却すると,
868 競合他社に多数の顧客を
869 奪われるなど,
870 50億円を下らない損害が甲社に生ずることが見込まれた。
871
872 他方で,
873 P倉庫の近
874 隣の不動産価格が下落する兆候は,
875 うかがわれなかった。
876
877
878 11.その後の甲社の取締役会においては,
879 改めて本件決議1及び本件決議2への対応について,
880
881 締役らから,
882
883 「そもそも本件株主提案の内容は,
884 業務執行の具体的な決定に係るものである以上,
885
886 これに従う必要はないのではないか。
887
888 」という意見や,
889 「適法な株主総会の決議を遵守することは
890 取締役の義務であろうが,
891 本件決議2については,
892 これに従いP倉庫を売却することにより,
893
894 害が発生し,
895 他方で,
896 P倉庫の売却の交渉を中止しても,
897 P倉庫の資産価値は維持されるし,
898
899 時点では,
900 違約金等の負担も生じないので,
901 遵守することにこだわるべきでない。
902
903 」という意見
904 が述べられ,
905 さらに,
906 社外取締役から,
907 「適法な株主総会の決議は,
908 常に遵守すべきである。
909
910 」と
911 いう意見が述べられるなど,
912 様々な意見が述べられたが,
913 代表取締役社長Aが本件決議2に従い
914 P倉庫を売却する旨の議案を提案し,
915 当該議案が代表取締役社長Aの賛成を含む賛成多数により
916 可決された。
917
918
919 そこで,
920 代表取締役社長Aは,
921 平成30年度中にP倉庫を近隣の不動産価格に照らし適正な価
922 格で売却したが,
923 それにより,
924 多数の顧客を奪われるなどした結果,
925 多大な損害が甲社に発生し
926 た。
927
928
929 〔設問3〕
930
931 甲社の代表取締役社長Aの会社法第423条第1項の責任について,
932 本件決議1の効
933
934 力を検討した上で,
935 論じなさい。
936
937
938
939 -5-
940
941 論文式試験問題集[民事系科目第3問]
942
943 -1-
944
945 [民事系科目]
946 〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,
947 35:40:25])
948 次の文章を読んで,
949 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
950
951
952 【事
953
954 例】
955 Xは,
956 A県A市(以下「A市」という。
957
958 )に住む会社員であり,
959 夫と3人の小学生の子供がい
960 る。
961
962 X一家はキャンプ好きのアクティブな一家である。
963
964 Yは,
965 自動車製造会社であるS社の系列
966 会社であり,
967 S社の製造するワゴン車等をキャンピングカーに改造して販売している。
968
969 Yは,
970
971 店がB県B市(以下「B市」という。
972
973 )にあり,
974 全国各地に支店を有する。
975
976
977 Xは,
978 ある日,
979 A市内にあるYのA支店において,
980 Yとの間で,
981 甲というシリーズ名の新車の
982 キャンピングカーを400万円で買うとの売買契約(以下「本件契約」という。
983
984 )を締結し,
985
986 00万円を支払った。
987
988 Xは,
989 本件契約を締結する際,
990 YのA支店の従業員から,
991 甲シリーズのキ
992 ャンピングカーは,
993 耐荷重180kgの上段ベッドシステムがリビング部の上に設置されており,
994
995 成人男性で言えばリビング部に3名,
996 上段ベッドに2名の合計5名が就寝可能であるという仕様
997 (以下「本件仕様」という。
998
999 )を有しているとの説明を受けた。
1000
1001 また,
1002 本件契約の対象となるキ
1003 ャンピングカーが本件仕様を有することは,
1004 本件契約の契約書にも明記されていた。
1005
1006
1007 本件契約の契約書は,
1008 Yが用意したものであり,
1009 そこには他に「本件契約に関する一切の紛争
1010 は,
1011 B地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする」との定め(以下「本件定め」という。
1012
1013 )が記載
1014 されていた。
1015
1016 B地方裁判所は,
1017 Yの本店があるB市を管轄する裁判所である。
1018
1019
1020 Xは,
1021 本件契約に定められた納入日にキャンピングカーの引渡しを受けた(以下,
1022 Xが引渡し
1023 を受けたキャンピングカーを「本件車両」という。
1024
1025 )。
1026
1027 引渡しを受けた当日,
1028 Xの子供3人が本件
1029 車両の上段ベッドに乗ったところ,
1030 この上段ベッドシステムと車本体の接合部分が破損して上段
1031 ベッドが落下した(以下,
1032 この事件を「本件事故」という。
1033
1034 )。
1035
1036 幸い3人の子供にけがはなかった
1037 が,
1038 本件事故により5名が就寝可能なキャンピングカーとして本件車両を利用することが不可能
1039 になった。
1040
1041 XがYに本件車両の引取りと本件車両の代わりに本件仕様を有する別のキャンピング
1042 カーの引渡しを要求したところ,
1043 YのA支店の従業員は,
1044 子供が上段ベッド上で激しく動き過ぎ
1045 たために仕様上の想定を超えた負荷が掛かり上段ベッドが落下したのではないかなどと主張し,
1046
1047 これに応じなかった。
1048
1049 そのため,
1050 Xは,
1051 以後,
1052 本件車両を自宅車庫にて保管している。
1053
1054
1055 Xの委任を受けた弁護士Lは,
1056 Xの訴訟代理人として,
1057 Xを原告,
1058 Yを被告とし,
1059 履行遅滞に
1060 よる本件契約の解除に基づく原状回復義務の履行として支払済みの代金400万円の返還を求め
1061 る訴えを,
1062 A市を管轄するA地方裁判所に提起し(以下,
1063 この訴えに係る訴訟を「本件訴訟」と
1064 いう。
1065
1066 ),
1067 訴状において以下の@からFまでの事実を主張した。
1068
1069
1070
1071 @ XがYとの間で,
1072 本件仕様を有するキャンピングカーを目的物とする本件契約を締結した
1073 事実
1074 A XがYに対して本件契約に基づき400万円を支払った事実
1075 B YがXに対して本件契約の履行として本件車両を引き渡した事実
1076 C 本件事故が起きた事実
1077 D 本件車両が本件仕様を有していなかった事実
1078 E XがYに対して本件仕様を有するキャンピングカーを引き渡すように催告をし,
1079 それから
1080 相当期間が経過したので本件契約を解除する旨の意思表示をした事実
1081 F Xが自宅車庫に本件車両を保管している事実
1082 Yは,
1083 本案について弁論する前に,
1084 A地方裁判所に対し,
1085 本件定めによりB地方裁判所のみが
1086
1087 -2-
1088
1089 管轄裁判所となるとして,
1090 民事訴訟法第16条第1項に基づき,
1091 本件訴訟をB地方裁判所に移送
1092 するよう申し立てた。
1093
1094
1095 なお,
1096 Xの居住地,
1097 Lの事務所,
1098 YのA支店及びA地方裁判所は,
1099 いずれもA市中心部にあり,
1100
1101 Yの本店及びB地方裁判所は,
1102 いずれもB市中心部にある。
1103
1104 A市中心部とB市中心部との間の距
1105 離は,
1106 約600kmであり,
1107 新幹線,
1108 在来線等の公共交通機関を乗り継いで約4時間掛かる。
1109
1110
1111 以下は,
1112 Lと司法修習生Pとの間の会話である。
1113
1114
1115 L:Yの移送申立てに対して反論をする必要がありますが,
1116 反論にはどのような理由が考えられ
1117 ますか。
1118
1119
1120 P:Yは,
1121 本件定めがA地方裁判所を本件契約に関する紛争の管轄裁判所から排除することを内
1122 容とすると解釈しているようですが,
1123 本件定めがそのような内容の定めではないという理由が
1124 考えられます。
1125
1126
1127 L:そうですね。
1128
1129 そこで,
1130 Yの解釈の根拠も踏まえつつ,
1131 本件定めの内容についてYの解釈とは
1132 別の解釈を採るべきだとの立論を考えてください。
1133
1134 これを課題とします。
1135
1136 ところで,
1137 本件定
1138 めの内容についてのYの解釈を前提とすると,
1139 民事訴訟法第16条第1項が適用され,
1140 Xとし
1141 ては,
1142 本件訴訟の移送を受け入れなければならないのでしょうか。
1143
1144
1145 P:Xとしては何とかしてA地方裁判所での審理を求めたいところだと思います。
1146
1147
1148 L:そうですね。
1149
1150 本件定めの内容についてのYの解釈を前提とするとしても,
1151 本件訴訟はA地方
1152 裁判所で審理されるべきであるとの立論を考えてください。
1153
1154 これを課題とします。
1155
1156 本件の事
1157 例に即して検討することを心掛けてください。
1158
1159
1160 〔設問1〕
1161 あなたが司法修習生Pであるとして,
1162 Lから与えられた課題及び課題について答えなさい。
1163
1164
1165 【事
1166
1167 例(続き)】
1168 Yの移送申立てが却下され,
1169 本件訴訟はA地方裁判所で審理されることになった。
1170
1171 本件訴訟の
1172 第1回口頭弁論期日においてLが訴状を陳述したところ,
1173 Yは,
1174 上記@からFまでの事実のうち
1175 Dの事実以外の事実を認める陳述をする一方,
1176 上記Dの事実に関しては,
1177 本件仕様を有する本件
1178 車両を引き渡したと主張した。
1179
1180
1181 その後に行われた今後の訴訟方針についての打合せの際,
1182 Lは,
1183 Xから,
1184 本件事故が起きたと
1185 きに落下した上段ベッドの下敷きになりXが夫から結婚10周年の記念にもらった時価150万
1186 円の腕時計が損壊したこと(以下「本件損壊事実」という。
1187
1188 ),
1189 損壊した腕時計をXがメーカー修
1190 理に持ち込んだところ修理費用として100万円を請求され支払ったことを告げられた。
1191
1192 Xがこ
1193 れまで本件損壊事実を告げなかった理由について,
1194 LがXに尋ねたところ,
1195 メーカー保証により
1196 腕時計については無償修理ができると考えていたためであるとのことであった。
1197
1198 そこで,
1199 Lは,
1200
1201 本件訴訟において,
1202 Xの訴訟代理人として,
1203 Xを原告,
1204 Yを被告とし,
1205 本件契約の債務不履行に
1206 基づく損害賠償請求として100万円の支払を求める請求を追加し,
1207 G本件損壊事実及びHXが
1208 腕時計の修理費として100万円を支払った事実を追加主張した。
1209
1210
1211 Yの訴訟代理人は,
1212 100万円という高額の請求が後から追加されたことでXの主張する本件
1213 事故の発生経緯に疑いの目を向けるようになった。
1214
1215 そこで,
1216 Yの訴訟代理人は,
1217 その後に開かれ
1218 た口頭弁論期日においてCの事実に関する従前の認否を撤回し,
1219 C及びGの事実を否認し,
1220 Hの
1221 事実に対し不知との陳述をした。
1222
1223 これに対し,
1224 Lは,
1225 YがCの事実に対する認否を撤回すること
1226 は裁判上の自白の撤回に当たり,
1227 許されない旨異議を述べた。
1228
1229
1230 以下は,
1231 本件訴訟を担当する裁判官Jと司法修習生Qとの間の会話である。
1232
1233
1234 -3-
1235
1236 J:本件訴訟では,
1237 Xが訴えの変更をして請求を追加していますね。
1238
1239 このように訴えが追加的に
1240 変更された場合に,
1241 元の請求の訴訟資料と追加された請求の訴訟資料はどのような関係に立ち
1242 ますか。
1243
1244
1245 Q:元の請求についての訴訟資料は,
1246 特に援用がなくとも追加された請求についての訴訟資料に
1247 なると理解しています。
1248
1249
1250 J:元の請求の訴訟資料と追加された請求の訴訟資料の関係については異なる理解もあり得るか
1251 もしれませんが,
1252 ここではあなたの理解を前提としましょう。
1253
1254 Lの述べるとおり,
1255 Yは,
1256 Cの
1257 事実を認める旨の陳述を自由に撤回することができなくなっているのでしょうか。
1258
1259
1260 Q:裁判上の自白の成立要件に照らして検討してみる必要があると思います。
1261
1262
1263 J:そのとおりですね。
1264
1265 裁判上の自白の成立により,
1266 YがCの事実を認める旨の陳述を自由に撤
1267 回することができなくなっているかどうか,
1268 検討してみてください。
1269
1270 これを課題とします。
1271
1272
1273 件では,
1274 元の請求及び追加された請求のそれぞれにおけるCの事実の位置付けを考慮する必要
1275 がありますね。
1276
1277 その上で,
1278 Xが訴えの変更をした後にYが認否の撤回をした点が影響するかど
1279 うかも考えてみましょう。
1280
1281 なお,
1282 自由に撤回することができないとしても,
1283 例えば事実に反す
1284 ることを証明した場合など一定の事由があれば,
1285 撤回が許される場合がありますが,
1286 ここでは
1287 その事由があるかどうかまでは検討する必要がありません。
1288
1289
1290 〔設問2〕
1291 あなたが司法修習生Qであるとして,
1292 Jから与えられた課題について答えなさい。
1293
1294
1295 【事
1296
1297 例(続き)】
1298 本件訴訟の争点整理手続が行われている間,
1299 Lは,
1300 Yの元従業員から,
1301 同じくYの元従業員で
1302 Yにおいてワゴン車をキャンピングカーに改造するための設計に携わっていたTが,
1303 甲シリーズ
1304 のキャンピングカーの仕様について疑問を口にしていたことがあるとの情報を得た。
1305
1306
1307 LがTを訪ねたところ,
1308 Tの妻Zが応対し,
1309 Lに対し,
1310 以下の(ア)から(ウ)までの事情を述べた。
1311
1312
1313 (ア) Tは,
1314 Yにおいてワゴン車をキャンピングカーに改造するための設計に携わっていたが,
1315
1316 先日,
1317 死亡した。
1318
1319 Tの相続人はZだけである。
1320
1321
1322 (イ) Tは,
1323 生前日記を作成していた。
1324
1325 その日記は,
1326 今はZが保管しており,
1327 そこには,
1328 要約す
1329 ると,
1330 甲シリーズのキャンピングカーには上段ベッドシステム部分に設計上の無理があり,
1331
1332 その旨を上司に進言したが取り合ってもらえなかった,
1333 という内容の記載がある(以下,
1334
1335 の日記のうち,
1336 この内容が記載されている箇所を「本件日記」という。
1337
1338 )。
1339
1340
1341 (ウ) Zとしては,
1342 本件日記の詳しい内容はプライバシーに関わるから言えないし,
1343 その内容を
1344 直接見せたり証拠として提供したりすることもできない。
1345
1346
1347 そこで,
1348 Lは,
1349 Zを所持者として本件日記についての文書提出命令を申し立てた。
1350
1351 その申立書
1352 には,
1353 上記(ア)から(ウ)までの事情が記載されていた。
1354
1355
1356 以下は,
1357 Jと司法修習生Rとの間の会話である。
1358
1359
1360 J:あなたには,
1361 Zが本件日記の文書提出義務を負うかどうかを判断する際にどのような観点か
1362 らどのような事項を考慮すべきかを検討してもらいます。
1363
1364 文書提出義務の根拠条文に照らして
1365 検討する必要がありますが,
1366 申立書に記載されているもの以外の事情を仮定する必要はありま
1367 せん。
1368
1369 また,
1370 文書提出義務の有無についての結論までは示す必要はありません。
1371
1372 これを課題と
1373 します。
1374
1375
1376 R:本件日記に書かれている内容がキャンピングカーの上段ベッドシステム部分に係る設計上の
1377 ミスということなので,
1378 民事訴訟法第197条第1項第3号の「技術又は職業の秘密」に該当
1379 -4-
1380
1381 する可能性を考える必要はないでしょうか。
1382
1383
1384 J:ここでは「技術又は職業の秘密」に該当する事柄が記載してあることまで考える必要はあり
1385 ません。
1386
1387 今回の検討ではその点は除外して考えましょう。
1388
1389
1390 〔設問3〕
1391 あなたが司法修習生Rであるとして,
1392 Jから与えられた課題について答えなさい。
1393
1394
1395
1396 -5-
1397
1398