1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 【事
21
22 例】
23 A株式会社(以下「A社」という。
24
25 )は,
26 主に個人向けの住宅や企業向けのビルの設計・建築
27
28 を手掛けている会社である。
29
30
31 A社は,
32 営業地域全体の人口減少等による市場規模の縮小により,
33 苦しい経営を続けていたが,
34
35 A社が設計・建築を請け負ったビルの外壁タイルが剥がれ落ち,
36 通行人が怪我をするという事故
37 が発生したことが契機となって,
38 住宅やビルの設計・建築の注文が減って売上げが激減した。
39
40 そ
41 の結果,
42 平成30年3月初め頃,
43 同月末日を納期限とする租税債権(300万円)だけでなく,
44
45 同日を支払期日とする多くの取引先に対する債務の弁済に充てる資金がないことが判明した。
46
47
48 そこで,
49 A社は,
50 古くからの取引先であるB株式会社(以下「B社」という。
51
52 )に依頼して,
53
54 平成30年3月20日,
55 当該租税債権を納付(代位弁済)してもらった。
56
57 その後,
58 A社は,
59 同月
60 26日,
61 裁判所に対して破産手続開始の申立てをし,
62 同月29日,
63 破産手続開始の決定(以下
64 「本件破産手続開始決定」という。
65
66 )を受け,
67 破産管財人として弁護士Xが選任された。
68
69
70 〔設
71
72 問〕
73
74 以下の1から3については,
75 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
76
77
78
79 1.B社は,
80 A社の破産手続との関係で,
81 どのように権利行使をすることができるか,
82 想定され
83 る破産管財人Xの主張を踏まえて,
84 論じなさい。
85
86
87 2.A社は,
88 Cとの間で,
89 平成29年9月30日,
90 請負代金2000万円で住宅(以下「本件住
91 宅」という。
92
93 )を建築すること(以下「本件建築工事」という。
94
95 )を請負い,
96 Cは,
97 契約締結時
98 に上記請負代金の内金として1200万円,
99 建物完成時に800万円を支払うことを内容とす
100 る請負契約を締結し(以下「本件建築工事請負契約」という。
101
102 ),
103 同日,
104 A社に対し1200万
105 円を支払った。
106
107 ところが,
108 本件建築工事の出来高が6割程度に達したところで,
109 A社が本件破
110 産手続開始決定を受けた。
111
112
113
114
115 破産管財人Xは,
116 A社において本件建築工事を完成させることが可能であり,
117 それが破産
118 財団の利益となるものと判断する場合,
119 本件建築工事請負契約について,
120 どのように処理す
121 るべきか,
122 論じなさい。
123
124
125
126
127
128 破産管財人Xは,
129 平成30年4月20日,
130 Cに対して本件建築工事請負契約を解除する旨
131 の意思表示をしたが,
132 A社による本件建築工事によって生じていた建築廃材は,
133 その現場に
134 放置されていた。
135
136 そこで,
137 Cは,
138 同年5月7日,
139 D株式会社(以下「D社」という。
140
141 )との
142 間で,
143 @D社が本件住宅を完成させるための残工事を請負い,
144 その請負代金として1000
145 万円を支払うことを内容とする請負契約を締結し,
146 それとともに,
147 AD社が上記建築廃材の
148 撤去を行い,
149 その費用として100万円を支払うことを内容とする契約を締結した。
150
151 そして,
152
153 Cは,
154 同月8日,
155 合計1100万円をD社に支払った。
156
157 この場合,
158 Cは,
159 A社の破産手続と
160 の関係で,
161 どのように権利行使をすることができるか,
162 論じなさい。
163
164
165
166 3.平成30年3月26日時点におけるE銀行のA社に対する貸付残高は6750万円であった
167 が,
168 同月27日,
169 A社の当該債務の連帯保証人であるFは,
170 E銀行に対して300万円を弁済
171 し,
172 さらに,
173 同年4月2日,
174 200万円を弁済した。
175
176
177 A社の破産手続において,
178 Fが,
179 破産債権額として500万円を届け出たところ,
180 同じく破
181 産債権の届出をしているE銀行が異議を述べ,
182 これに対し,
183 Fは,
184 査定の申立てを行った。
185
186 査
187 定決定において,
188 裁判所は,
189 どのように判断すべきか,
190 論じなさい。
191
192
193
194 - 2 -
195
196 〔第2問〕(配点:50)
197 次の事例について,
198 以下の設問に答えなさい。
199
200
201 【事
202
203 例】
204 機械メーカーであるA株式会社(以下「A社」という。
205
206 )(資本金1億円)は,
207 平成29年末に
208
209 債務超過となり,
210 支払不能となった。
211
212 その後,
213 A社は,
214 平成30年1月18日に再生手続開始の
215 申立てをし,
216 裁判所は,
217 同年1月25日に再生手続開始の決定をした。
218
219
220 A社は,
221 B株式会社(以下「B社」という。
222
223 )の完全子会社で,
224 B社は,
225 A社に対して貸金債
226 権20億円を有している。
227
228 A社は,
229 平成20年の初め頃にB社の完全子会社となって以来,
230 その
231 取締役の過半数はB社からの出向者であり,
232 現在のA社社長を含む歴代の社長もB社が指名して
233 きた。
234
235
236 A社が支払不能になったのは,
237 @平成23年頃からB社の指示により無謀な設備投資を続けて
238 資金繰りが悪化したこと,
239 A同じくB社の指示により平成29年8月から取引を開始した甲株式
240 会社について同年11月に破産手続が開始され,
241 同社に対する売掛債権が回収不能となったこと
242 が主たる原因であった。
243
244
245 一方,
246 C株式会社(以下「C社」という。
247
248 )は,
249 A社に継続的に部品を納入していたが,
250 A社
251 による無謀な設備投資に危惧を抱き,
252 平成29年1月にA社との取引を停止した。
253
254 しかし,
255 C社
256 は,
257 同年7月,
258 「当社がA社の支援を続けるから協力願いたい」とのB社からの説得を受け,
259 同
260 月から取引を再開した結果,
261 平成30年1月前半までに納入した部品に係る売掛債権10億円を
262 有するに至った。
263
264
265 A社の再生手続開始を受け,
266 平成30年3月1日,
267 B社は貸金債権20億円を,
268 C社は売掛債
269 権10億円をそれぞれ再生債権として届け出た。
270
271 A社は,
272 B社及びC社が届け出た再生債権をい
273 ずれも認めた。
274
275 なお,
276 B社,
277 C社以外に再生債権者はいない。
278
279
280 〔設
281
282 問〕
283
284 以下の1,
285 2については,
286 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
287
288
289
290 1.A社は,
291 財産評定を完了し,
292 平成30年4月25日,
293 裁判所に対し財産目録及び貸借対照表
294 を提出したが,
295 これらに基づく予想清算配当率は10パーセントであった。
296
297
298 しかし,A社は,再生手続開始後,
299 顧客離れが進んだため売上げが振るわず,
300 再生計画案提出
301 直前の業績及び財産状況を前提とすると,
302 想定される再生計画認可決定の日を基準とする予想
303 清算配当率は5パーセントと見込まれた。
304
305
306 A社は,
307 裁判所に対し,
308 平成30年5月16日, 要旨,
309 次のような再生計画案を提出した。
310
311
312 @
313
314 再生債権の元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金の合計額のう
315 ち再生計画の認可決定確定時にその95パーセントの免除を受ける。
316
317
318
319 A
320
321 再生手続開始決定日以後の利息及び遅延損害金は,
322 再生計画の認可决定確定時に全額の免
323 除を受ける。
324
325
326
327 B
328
329 上記@の権利変更後の債権額(5パーセント)は,
330 再生計画の認可決定確定日から3か月
331 以内に半額を,
332 1年3か月以内に残額を,
333 それぞれ支払う。
334
335
336 上記の再生計画案に対して,
337 C社は,
338 (a)清算価値保障原則に違反している,
339 (b)A社の
340
341 完全親会社であり,
342 かつA社の破綻に責任のあるB社の再生債権はC社の再生債権よりも劣後
343 して扱うべきである,
344 との趣旨の意見書を裁判所に提出した。
345
346
347 裁判所は,
348 この再生計画案を付議することができるか,
349 民事再生法第169条第1項第3号
350 に照らし,
351 C社の上記(a)及び(b)の主張ごとに問題となる条文を摘示して論じなさい。
352
353
354 2.A社の事業には同業の乙株式会社(以下「乙社」という。
355
356 )が関心を持っており,
357 A社の事
358 業を譲り受けたいと考えている。
359
360 乙社は,
361 平成30年2月25日,
362 顧客離れに伴うA社の事業
363 価値の毀損を防ぐため,
364 再生計画によらずに早期にA社の全ての事業を譲り受けることをA社
365 に対して申し入れた。
366
367
368 - 3 -
369
370 以上の事実を前提に,
371 以下の,
372 について,
373 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
374
375
376
377
378 A社は,
379 平成30年3月1日,
380 乙社からの申入れについてB社とC社に説明したところ,
381
382 B社はこれに強硬に反対し,
383 C社は賛成の意向を示した。
384
385 A社が乙社からの申入れを受け,
386
387 再生計画によらずに乙社へA社の全ての事業を譲渡する場合の手続について説明しなさい。
388
389
390
391
392
393 A社は,
394 乙社へ事業を譲渡することなく自力で再建する方針を固め,
395 平成30年5月16
396 日,
397 再生計画案を裁判所に提出するとともに,
398 B社とC社に説明した。
399
400 当該再生計画案では,
401
402 B社とC社の再生債権のいずれについても85パーセントの免除を受け,
403 15パーセントを
404 分割弁済するものとされている。
405
406 また,
407 乙社へ事業を譲渡することなく,
408 引き続きB社の完
409 全子会社として再建していく方針が示されている。
410
411
412 A社の提出に係る当該再生計画案が付議されたとして(他に再生計画案は提出されていな
413 いものとする。
414
415 ),
416 これにC社が債権者集会において同意しなかった場合のその後の再生手続
417 の帰すうについて,
418 論じなさい。
419
420
421
422 - 4 -
423
424 論文式試験問題集[租
425
426 - 5 -
427
428 税
429
430 法]
431
432 [租
433
434 税
435
436 法]
437
438 〔第1問〕(配点:50)
439 甲は,
440 インテリア雑貨の輸入販売の事業を行う株式会社A(以下「A社」という。
441
442 )の創業者で
443 あり,
444 その代表取締役である。
445
446 乙は甲の長男である。
447
448
449 乙は,
450 平成26年3月にB大学商学部を卒業した後,
451 A社に入社し,
452 経理の事務を担当した。
453
454 乙
455 の給与は月額30万円であった。
456
457 乙は,
458 A社への入社に際しワンルームマンションを借り,
459 甲とは
460 生計を別にした独立した生活を始めた。
461
462 乙は,
463 A社での仕事になじめず,
464 平成29年1月に,
465 甲に
466 対して,
467 A社を退社したい旨,
468 打ち明けた。
469
470 甲は乙に「A社での勤務を続け,
471 いずれは跡を継いで
472 ほしい。
473
474 」と説得したが,
475 乙の決意は固く,
476 乙は平成29年3月31日にA社を退社し,
477 同社の退
478 職金規程に基づく退職金を受領した。
479
480
481 A社の退職金規程によると,
482 3年間の勤務で受け取る退職金は微々たる金額であった。
483
484 そのため,
485
486 A社退社後の乙の生活を心配した甲は,
487 乙の退職に際して,
488 A社が従業員の福利厚生目的で保有し
489 ていた,
490 著名なリゾート地C町に所在する戸建別荘(以下,
491 別荘の建物を「本件建物」,
492 別荘の土
493 地建物を併せて「本件不動産」という。
494
495 )を,
496 A社から乙に対して,
497 本件不動産の帳簿価格300
498 0万円で売却し,
499 乙がそれを賃貸して得られる収入によって乙の生活の足しにできるようにしてや
500 ろうと考えた。
501
502 そこで,
503 A社は,
504 取締役会決議を経た上で,
505 平成29年3月31日に,
506 本件不動産
507 の売買契約を乙と締結し,
508 同日,
509 乙は,
510 A社に対して,
511 銀行からの借入金を原資として,
512 売買代金
513 3000万円を支払った。
514
515
516 本件不動産の時価は,
517 近年のC町の地価高騰の結果,
518 平成29年3月31日時点では4000万
519 円にまで値上がりしていた。
520
521
522 乙は,
523 平成29年5月1日から,
524 本件不動産を,
525 丙に対し,
526 月額10万円で賃貸したところ,
527 翌
528 30年3月,
529 C町で記録的な暴風雪が発生し,
530 その結果,
531 本件建物の屋根が損傷する被害が生じた。
532
533
534 被害発生直前の本件建物の時価・帳簿価格はともに800万円であったが,
535 本件建物の被害割合は
536 5%であり被害額は40万円であった。
537
538 乙は,
539 本件建物について,
540 損害に備えるための保険契約を
541 締結していなかった。
542
543 また,
544 本件不動産以外には,
545 土地建物などのみるべき財産を乙は所有してい
546 なかった。
547
548
549 以上の事案について,
550 以下の設問に答えなさい。
551
552
553 〔設
554
555 問〕
556
557 1.A社の平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度の所得の金額の計算にお
558 いて,
559 乙への本件不動産の売却に関して,
560 益金の額への計上はどのようにすべきかにつき,
561 関連
562 する条文とその趣旨に触れつつ,
563 益金となる金額とその理由を述べなさい。
564
565
566 2.A社の平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度の所得の金額の計算にお
567 いて,
568 乙への本件不動産の売却に関して,
569 損金の額への計上はどのようにすべきかにつき,
570 関連
571 する条文とその趣旨に触れつつ,
572 損金となる金額とその理由を述べなさい。
573
574
575 3.乙の平成30年分の所得税に関して,
576 乙の同年分の総所得金額,
577 退職所得金額及び山林所得金
578 額の合計額が330万円であった場合,
579 暴風雪により発生した本件建物の被害について,
580 所得税
581 法上,
582 どのように取り扱われるか,
583 説明しなさい。
584
585 なお,
586 本件建物の被害に直接関連してなされ
587 た支出はない。
588
589
590 4.一般に,
591 事業活動で生じた「損失」についての所得税法上の取扱いと法人税法上の取扱いとの
592 最も特徴的な差異とその理由について,
593 所得税法及び法人税法の関係条文を指摘した上で,
594 簡潔
595 に述べなさい。
596
597
598
599 - 6 -
600
601 (参照条文)
602 所得税法施行令
603 (災害の範囲)
604 第9条
605
606 法第2条第1項第27号(災害の意義)に規定する政令で定める災害は,
607 冷害,
608 雪害,
609 干害,
610
611
612 落雷,
613 噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害,
614 火薬類の爆発その他の人為による異常な
615 災害並びに害虫,
616 害獣その他の生物による異常な災害とする。
617
618
619 (生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等)
620 第178条
621
622 法第62条第1項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する政令で定
623
624 めるものは,
625 次に掲げる資産とする。
626
627
628 一
629
630 競走馬(その規模,
631 収益の状況その他の事情に照らし事業と認められるものの用に供されるも
632 のを除く。
633
634 )その他射こう的行為の手段となる動産
635
636 二
637
638 通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味,
639 娯楽又は
640 保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味,
641 娯楽,
642 保養又は鑑賞の目的で所有す
643 る資産(前号又は次号に掲げる動産を除く。
644
645 )
646
647 三
648
649 生活の用に供する動産で第25条(譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲)の規
650 定に該当しないもの
651
652 2
653
654 (後略)
655 (雑損控除の対象となる雑損失の範囲等)
656
657 第206条
658 (略)
659 3
660
661 法第72条第1項の規定を適用する場合には,
662 同項に規定する資産について受けた損失の金額は,
663
664 当該損失を生じた時の直前におけるその資産の価額(その資産が法第38条第2項(譲渡所得の金
665 額の計算上控除する取得費)に規定する資産である場合には,
666 当該価額又は当該損失の生じた日に
667 その資産の譲渡があつたものとみなして同項の規定(その資産が昭和27年12月31日以前から
668 引き続き所有していたものである場合には,
669 法第61条第3項(昭和27年12月31日以前に取
670 得した資産の取得費等)の規定)を適用した場合にその資産の取得費とされる金額に相当する金
671 額)を基礎として計算するものとする。
672
673
674
675 法人税法施行令
676 (特殊関係使用人の範囲)
677 第72条
678
679 法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)に規定する政令で定める特殊の関係のある
680
681 使用人は,
682 次に掲げる者とする。
683
684
685 一
686
687 役員の親族
688
689 二
690
691 役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者
692
693 三
694
695 前二号に掲げる者以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
696
697 四
698
699 前二号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
700
701 (過大な使用人給与の額)
702 第72条の2
703
704 法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は,
705 内国
706
707 法人が各事業年度においてその使用人に対して支給した給与の額が,
708 当該使用人の職務の内容,
709 そ
710 の内国法人の収益及び他の使用人に対する給与の支給の状況,
711 その内国法人と同種の事業を営む法
712 人でその事業規模が類似するものの使用人に対する給与の支給の状況等に照らし,
713 当該使用人の職
714 務に対する対価として相当であると認められる金額(退職給与にあつては,
715 当該使用人のその内国
716 法人の業務に従事した期間,
717 その退職の事情,
718 その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規
719 模が類似するものの使用人に対する退職給与の支給の状況等に照らし,
720 その退職した使用人に対す
721 る退職給与として相当であると認められる金額)を超える場合におけるその超える部分の金額とす
722 る。
723
724
725 - 7 -
726
727 〔第2問〕(配点:50)
728 個人Xは,
729 平成10年に甲土地を個人Aから対価1000万円で購入した。
730
731 甲土地は,
732 昭和56
733 年にAが時価である1400万円で購入したもので,
734 平成10年当時の時価は2200万円であっ
735 た。
736
737 このXによる甲土地の購入に関する事情は,
738 以下のとおりである。
739
740
741 @
742
743 昭和56年に勤務先を定年退職したAは,
744 入手した甲土地を小公園として整備し,
745 付近の子供
746 たちの遊び場として開放して,
747 子供たちからも「公園のおじいさん」として親しまれていた。
748
749
750
751 A
752
753 平成10年初めに体調を崩し,
754 余命幾ばくもないと診断されたAは,
755 病院に入院するに当たっ
756 て,
757 甲土地が小公園として維持管理され続けることを願い,
758 Xに甲土地を売り渡した。
759
760 なぜなら,
761
762 Xが,
763 これまで暇を見付けては公園の掃除の手伝いをしたり,
764 子供たちの遊び相手になったりし
765 ていたという事情があったからである。
766
767
768
769 B
770
771 XとAは,
772 Xがすぐに払える金額として代金を1000万円と決め,
773 Xは,
774 所有権移転登記の
775 費用を自ら負担して,
776 甲土地の所有権を得た。
777
778
779 この後,
780 程なくしてAが亡くなり,
781 XはAの遺志を継いで甲土地を小公園として維持し,
782 子供た
783
784 ちの遊び相手をしていた。
785
786 Xは,
787 近年,
788 高齢のため体力の衰えを強く意識したが,
789 平成28年から
790 は,
791 医師の勧めで多種類のサプリメント(以下「本件サプリメント」という。
792
793 )を使用したところ,
794
795 若干体調が戻り,
796 その効果を実感した。
797
798
799 そんなXも,
800 寄る年波には勝てず平成30年にはそろそろ「公園のおじいさん(二代目)」から
801 の引退を考えていたところ,
802 甲に隣接する乙土地をB株式会社(以下「B社」という。
803
804 )が購入し,
805
806 そこに保育所を開設することになったのを知って,
807 甲土地を保育所の庭としてB社に買ってもらい
808 たいと思うようになった。
809
810 「甲土地が保育所の庭となってそこで子供たちが遊ぶのであれば,
811 子供
812 好きだったAの遺志にも沿う」と考えたからである。
813
814 また,
815 仮にB社が甲土地を買ってくれるなら
816 ば,
817 その対価として1000万円もらえば十分だと考えている(甲土地の平成30年における時価
818 は2500万円である。
819
820 )。
821
822 これは,
823 Xが,
824 甲土地の売買により自分が得をすることを嫌い,
825 Aから
826 譲ってもらった時に支払ったのと同額で甲土地を売りたいと考えたものである。
827
828
829 以上の事案について,
830 以下の設問に答えなさい。
831
832
833 〔設問1〕
834 平成30年にXがB社に甲土地を対価1000万円で売った場合,
835 そのことは同年分のXの所得
836 税の計算上どのように扱われるかを,
837 根拠条文に触れつつ説明しなさい。
838
839 なお,
840 租税特別措置法に
841 ついて考える必要はない。
842
843
844 〔設問2〕
845 平成30年にB社がXから甲土地を対価1000万円で購入する取引をした場合,
846 そのことは,
847
848 この取引の日を含む同社の事業年度の法人税の計算上どのように扱われるかを説明しなさい。
849
850 その
851 説明に当たっては,
852 法人税法第22条第2項が,
853 「有償による資産の譲受け」との文言を含んでい
854 ないことに留意し,
855 この取引が同項のどの文言に該当するかを明らかにすること。
856
857
858 〔設問3〕
859 所得税の医療費控除について色々と調べたXは,
860 本件サプリメントの購入費用について,
861 同控除
862 の適用を受けるつもりである。
863
864 その前提としてXは,
865 所得税法第73条第2項及び所得税法施行令
866 第207条第2号に規定されている「医薬品」とは,
867 「医薬品,
868 医療機器等の品質,
869 有効性及び安
870 全性の確保等に関する法律」第2条第1項にいう「医薬品」に該当するものを指すと考えている。
871
872
873 Xが前提としているこの考え方を,
874 租税法の解釈手法の立場から評価しなさい。
875
876 なお,
877 本件サプリ
878 メントの購入費用が医療費控除の対象となるか否かについて,
879 言及する必要はない。
880
881
882
883 - 8 -
884
885 (参照条文)
886 所得税法施行令
887 (時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)
888 第169条
889
890 法第59条第1項第2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める
891
892 額は,
893 同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満
894 たない金額とする。
895
896
897 (医療費の範囲)
898 第207条
899
900 法第73条第2項(医療費の範囲)に規定する政令で定める対価は,
901 次に掲げるものの
902
903 対価のうち,
904 その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超え
905 ない部分の金額とする。
906
907
908 一
909
910 (略)
911
912 二
913
914 治療又は療養に必要な医薬品の購入
915
916 三〜七
917
918 (略)
919
920 医薬品,
921 医療機器等の品質,
922 有効性及び安全性の確保等に関する法律
923 (目的)
924 第1条
925
926 この法律は,
927 医薬品,
928 医薬部外品,
929 化粧品,
930 医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品
931
932 等」という。
933
934 )の品質,
935 有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発
936 生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに,
937 指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか,
938
939 医療上特にその必要性が高い医薬品,
940 医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要
941 な措置を講ずることにより,
942 保健衛生の向上を図ることを目的とする。
943
944
945 (定義)
946 第2条
947 一
948 二
949
950 この法律で「医薬品」とは,
951 次に掲げる物をいう。
952
953
954 (略)
955 人又は動物の疾病の診断,
956 治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて,
957 機
958
959 械器具等(機械器具,
960 歯科材料,
961 医療用品,
962 衛生用品並びにプログラム(略)及びこれを記録し
963 た記録媒体をいう。
964
965 以下同じ。
966
967 )でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。
968
969 )
970 三
971 2
972
973 (略)
974 (後略)
975
976 - 9 -
977
978 - 10 -
979
980 論文式試験問題集[経
981
982 - 11 -
983
984 済
985
986 法]
987
988 [経
989
990 済
991
992 法]
993
994 〔第1問〕(配点:50)
995 A,
996 B,
997 C,
998 D,
999 E,
1000 F,
1001 G,
1002 H,
1003 I,
1004 Jの10社(以下「10社」という。
1005
1006 )は,
1007 各地の農業
1008 協同組合(以下「農協」という。
1009
1010 )が競争入札等の方法により発注する穀物の乾燥・調製・貯蔵施
1011 設及び精米施設(以下「穀物貯蔵等施設」という。
1012
1013 )の建設を請け負う事業者であり,
1014 他に当該建
1015 設を請け負う事業者は存在しない。
1016
1017 A,
1018 B,
1019 C,
1020 D,
1021 E,
1022 F,
1023 Gの7社(以下「7社」ともい
1024 う。
1025
1026 )は,
1027 一定の技術的水準を満たした農業施設を建設できる能力を有し,
1028 かねてより,
1029 穀物貯蔵
1030 等施設工事の指名競争入札においては,
1031 7社のうち複数の者が指名されることが多かった。
1032
1033 10社
1034 は穀物貯蔵等施設以外の施設・設備の建設工事も行っており,
1035 特にH,
1036 I,
1037 Jの3社(以下「3
1038 社」ともいう。
1039
1040 )は,
1041 穀物貯蔵等施設を建設することもできるが,
1042 主たる事業分野は農業施設以外
1043 の建設工事であり,
1044 穀物貯蔵等施設の建設能力は相対的に低かった。
1045
1046
1047 穀物貯蔵等施設工事に当たっては,
1048 農業振興のための補助金が平成28年度から3年間の予定で
1049 国や都道府県から農協に交付されることとなった(以下,
1050 当該補助金が交付される穀物貯蔵等施設
1051 工事を「特定農業施設工事」という。
1052
1053 )。
1054
1055 当該補助金の交付を受けるための条件として,
1056 農協は3者
1057 以上の事業者を指名して行う競争入札を実施することが必要であり,
1058 補助金事業として3年間に相
1059 当数の特定農業施設工事の指名競争入札が実施される見込みとなった。
1060
1061
1062 これを受けて,
1063 A,
1064 B,
1065 C,
1066 D,
1067 E,
1068 F,
1069 Gの7社は,
1070 平成27年12月から数次の会合を経て,
1071
1072 平成28年1月30日の会合で,
1073 特定農業施設工事の入札について,
1074 均等な受注機会の確保と受注
1075 価格の低落防止を図るため,
1076
1077
1078
1079 指名を受けた事業者(以下「指名業者」という。
1080
1081 )は,
1082 Aに当該特定農業施設工事を受注する
1083 意思の有無を連絡する
1084
1085
1086
1087 受注を希望する者が1社の場合は,
1088 その者が受注予定者となり,
1089 受注を希望する者が複数の場
1090 合は,
1091 会合を開いた上,
1092 7社において受注予定者を決定する
1093
1094
1095
1096 受注予定者以外の指名業者が入札すべき価格は,
1097 受注予定者が定めてAに連絡する
1098
1099
1100
1101 Aは受注予定者以外の指名業者に,
1102 受注予定者が定めた価格で入札するよう連絡する
1103
1104 などにより,
1105 受注予定者を決定し,
1106 受注予定者が受注できるようにすることに合意した(以下「本
1107 件合意」という。
1108
1109 )。
1110
1111
1112 H,
1113 I,
1114 Jの3社は,
1115 平成27年12月,
1116 Aから,
1117 特定農業施設工事の入札について競合事業者
1118 が集まって話合いを行うので出席するよう持ちかけられたが,
1119 3社の担当者は言葉を濁して出席す
1120 ることを見合わせた。
1121
1122 3社は,
1123 それぞれ,
1124 工事の規模や技術力の点から自社も受注できると考えた
1125 特定農業施設工事の入札に指名された場合には,
1126 積極的に落札を目指して低価格で入札を行おうと
1127 考えていた。
1128
1129 一方,
1130 3社は,
1131 それぞれ,
1132 特定農業施設工事以外の分野の入札において競合事業者か
1133 ら協力を得たいと考えていたため,
1134 自社が受注を希望しない特定農業施設工事について,
1135 競合事業
1136 者の間で受注予定者が決定されている場合には,
1137 要請があれば,
1138 指定された価格で入札するなどの
1139 方法により当該受注予定者の落札に協力するつもりであった。
1140
1141
1142 Aは,
1143 3社が特定農業施設工事の入札に指名されることは少ないと考えたが,
1144 念のため,
1145 特定農
1146 業施設工事の発注が行われるたび3社に指名の有無と受注の意思を確認し,
1147 協力が得られる場合に
1148 は,
1149 3社に入札価格を連絡することとし,
1150 その方針を平成28年1月30日の上記会合でA以外の
1151 6社に伝えた。
1152
1153
1154 平成28年6月に行われた甲農協発注の特定農業施設工事の指名競争入札(以下「第1回入札」
1155 という。
1156
1157 )では,
1158 A,
1159 B,
1160 C,
1161 Dが指名され,
1162 A,
1163 B,
1164 Cが受注を希望したため開かれた会合で,
1165
1166 Aが受注予定者に決定し,
1167 入札では,
1168 会合での調整の結果どおり,
1169 Aが落札した。
1170
1171
1172 平成28年11月に行われた乙農協発注の特定農業施設工事の指名競争入札(以下「第2回入
1173 札」という。
1174
1175 )では,
1176 B,
1177 C,
1178 D,
1179 Eが指名され,
1180 B,
1181 C,
1182 Dが受注を希望したため開かれた会合
1183 - 12 -
1184
1185 で,
1186 Dが受注予定者に決定し,
1187 入札では,
1188 会合での調整の結果どおり,
1189 Dが落札した。
1190
1191
1192 平成29年6月に行われた丙農協発注の特定農業施設工事の指名競争入札(以下「第3回入札」
1193 という。
1194
1195 )では,
1196 E,
1197 G,
1198 Jが指名された。
1199
1200 Jは,
1201 第1回入札及び第2回入札に際してAからの問
1202 合せに対し指名を受けていないことを回答していたところ,
1203 第3回入札に際しても,
1204 Aからの問合
1205 せに対し,
1206 指名を受けたこと及び落札を目指していないことを回答した。
1207
1208 そして,
1209 EとGが受注を
1210 希望したため開かれた会合で,
1211 Gが受注予定者に決定し,
1212 入札では,
1213 会合での調整の結果どおり,
1214
1215 Gが落札した。
1216
1217 Jは,
1218 Aから指示されたとおりの価格で入札して,
1219 Gの落札に協力した。
1220
1221
1222 平成29年11月に行われた丁農協発注の特定農業施設工事の指名競争入札(以下「第4回入
1223 札」という。
1224
1225 )では,
1226 D,
1227 F,
1228 Iが指名を受けたが,
1229 受注希望者はFのみであったため,
1230 会合は開
1231 かれず,
1232 DとIがAから指示されたとおりの価格で入札した結果,
1233 Fが落札した。
1234
1235
1236 平成30年7月30日に指名競争入札(以下「第5回入札」という。
1237
1238 )が行われた戊農協発注の
1239 特定農業施設工事は,
1240 第4回入札の対象であった丁農協発注の特定農業施設工事と工事の規模や必
1241 要とされる技術力がほぼ同じであった。
1242
1243 この第5回入札では,
1244 B,
1245 C,
1246 Jが指名されたが,
1247 それま
1248 での入札で受注予定者になることができなかったBとCは,
1249 これを必ず落札したいと考えた。
1250
1251 第5
1252 回入札の受注予定者を決定するために平成30年6月15日に開かれた会合には7社が出席し,
1253 長
1254 時間の話合いの結果,
1255 B以外の6社は,
1256 Cを受注予定者とすることに決したところ,
1257 その場でBの
1258 担当者は,
1259 「今度は本気で勝負する。
1260
1261 値下げ競争になっても必ず仕事を取る。
1262
1263 」,
1264 「今後,
1265 一切,
1266 受注
1267 予定者を話し合って決めるつもりはない。
1268
1269 」,
1270 「二度とこの会合には戻らない。
1271
1272 」と発言し,
1273 Cの担当
1274 者と激しい口論になった。
1275
1276 その後,
1277 Aは,
1278 Jに連絡し,
1279 Jから第5回入札の指名を受けたこと及び
1280 落札を目指していないことを確認すると,
1281 Cの落札に協力するよう要請し,
1282 Jが承諾したことから,
1283
1284 Jが入札すべき価格を伝達した。
1285
1286 第5回入札において,
1287 JはCに協力するためにAから指示された
1288 とおりの価格で入札し,
1289 一方,
1290 BはJに協力を依頼しないで入札を行った結果,
1291 Bが落札した。
1292
1293 そ
1294 のため,
1295 7社のうちBを除く6社は,
1296 平成30年8月1日,
1297 本件合意のメンバーからBを除名する
1298 ことを決定した。
1299
1300
1301 その後,
1302 Eは,
1303 このような入札談合はもはや維持できないと考え,
1304 平成30年8月10日,
1305 私的
1306 独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。
1307
1308 )第7条の2第10項
1309 に基づいて公正取引委員会に事実の報告等を行い,
1310 それを受けて,
1311 公正取引委員会は,
1312 平成30年
1313 9月20日,
1314 関係各社に対する一斉の立入検査を実施した。
1315
1316 以後,
1317 7社は本件合意に基づく会合を
1318 開いていない。
1319
1320
1321 各回の入札における指名業者の入札価格及び農協が設定した予定価格は,
1322 以下の表のとおりであ
1323 る。
1324
1325
1326 入札
1327
1328 入札価格
1329
1330 予定価格
1331
1332 第1回
1333
1334 A:2.91億円
1335
1336 B:2.94億円
1337
1338 C:2.97億円
1339
1340 D:3.06億円
1341
1342 3億円
1343
1344 第2回
1345
1346 B:2.97億円
1347
1348 C:3.03億円
1349
1350 D:2.94億円
1351
1352 E:3.06億円
1353
1354 3億円
1355
1356 第3回
1357
1358 E:1.94億円
1359
1360 G:1.90億円
1361
1362 J:2.02億円
1363
1364 ―
1365
1366 2億円
1367
1368 第4回
1369
1370 D:0.98億円
1371
1372 F:0.96億円
1373
1374 I:1.03億円
1375
1376 ―
1377
1378 1億円
1379
1380 第5回
1381
1382 B:0.72億円
1383
1384 C:0.75億円
1385
1386 J:0.90億円
1387
1388 ―
1389
1390 1億円
1391
1392 〔設
1393
1394 問〕
1395 上記のB及びJの行為について,
1396 独占禁止法に違反するか,
1397 違反する場合には,
1398 違反する行為
1399
1400 がなくなった時期も含めて検討しなさい。
1401
1402
1403
1404 - 13 -
1405
1406 〔第2問〕(配点:50)
1407 各種の医療・ヘルスケア製品の研究,
1408 開発,
1409 製造及び販売を行うX社及びY社(以下「当事会社
1410 2社」という。
1411
1412 )が,
1413 Y社を存続会社とする吸収合併を行う計画(以下「本件計画」という。
1414
1415 )を検
1416 討している。
1417
1418 当事会社2社は,
1419 日本法人であり,
1420 国内外に製造及び販売拠点を有し,
1421 国内外での販
1422 売拠点を経由して,
1423 製品を国内外の医療機関等に販売している。
1424
1425
1426 点滴静脈注射(以下「点滴」という。
1427
1428 )の器具(以下「点滴関連製品」という。
1429
1430 )としては,
1431 点滴
1432 容器,
1433 点滴チューブ,
1434 点滴針等があり,
1435 点滴容器と点滴チューブと点滴針を組み立てて点滴は実施
1436 される。
1437
1438 点滴針のうち針甲は,
1439 一時的かつ短時間の点滴に用いられる。
1440
1441 針甲以外に,
1442 持続的に点滴
1443 を行う目的で使用される点滴針である針乙が存在するが,
1444 針甲とは形状も異なり,
1445 針乙を用いて一
1446 時的かつ短時間の点滴を行うことはできない。
1447
1448
1449 点滴針の流通は,
1450 製造販売業者から流通業者を経て,
1451 需要者である病院等の医療機関が購入する
1452 という実態にある。
1453
1454 点滴針について,
1455 国内の製造販売業者,
1456 国外の製造販売業者の日本法人又は輸
1457 入総代理店が個々の製品を国内で販売するためには,
1458 それぞれ,
1459 点滴針の種類別に用途を特定して,
1460
1461 法律に基づく承認(以下「販売承認」という。
1462
1463 )を受けなければならない。
1464
1465 したがって,
1466 国内での
1467 販売が認められる針甲は,
1468 販売承認を受けたものに限定されており,
1469 需要者である医療機関も,
1470 販
1471 売承認を受けた製品のみを購入・使用している。
1472
1473 このような承認制度の下,
1474 現時点で販売承認を受
1475 けた針甲を国内向けに供給している製造販売業者は,
1476 当事会社2社及びA社の合計3社である。
1477
1478
1479 平成30年度における針甲のメーカー別国内販売シェアは,
1480 A社が45パーセント,
1481 X社が30
1482 パーセント,
1483 Y社が25パーセントである。
1484
1485 針甲以外にも,
1486 当事会社2社のいずれもが製造販売し
1487 ている製品はいくつか存在するが,
1488 それらの製品については,
1489 当事会社2社のシェアは小さく順位
1490 も低く,
1491 当事会社2社以外に競合事業者が多数存在している。
1492
1493
1494 A社は,
1495 国外で販売する針甲を国内向けに振り向けることで国内向け供給量を増やすことができ
1496 る。
1497
1498 ただし,
1499 針甲の全世界でのメーカー別販売シェアを見ると,
1500 当事会社2社の合算シェアは65
1501 パーセント,
1502 A社のシェアは20パーセントであり,
1503 A社の国内向けの供給余力は十分ではない。
1504
1505
1506 A社が針甲の生産を第三者に委託することで,
1507 国内向け供給量を増やすことは可能であるが,
1508 かか
1509 る第三者は現時点では見当たらない。
1510
1511
1512 現在,
1513 国外において当事会社2社及びA社以外に針甲を製造販売している事業者は,
1514 少数である。
1515
1516
1517 また,
1518 当該事業者が製造する針甲については,
1519 これまで国内で販売実績はない。
1520
1521 一般に,
1522 国内の医
1523 療機関は,
1524 国内で販売実績のない医療製品を購入することはまれである。
1525
1526
1527 新規参入事業者が針甲を開発して国内で販売しようとする場合,
1528 当事会社2社及びA社の既存製
1529 品と同等の機能では,
1530 実績のない新規参入事業者から針甲を調達する医療機関は少ないため,
1531 新規
1532 参入には既存製品にはない機能を付加して参入する必要があると考えられている。
1533
1534 しかしながら,
1535
1536 そのような新製品の開発には一定の期間や投資を必要とする。
1537
1538
1539 一定規模以上の病院では,
1540 医療製品の購入に際して,
1541 見積り合わせ等による競争的な購入方法を
1542 採ることが一般的である。
1543
1544 医療機関は,
1545 このような購入方法により低価格での購入を試みている。
1546
1547
1548 反面,
1549 医療機関としての規模の大小にかかわらず,
1550 実際の製品選択は使用者である看護師等の意見
1551 を聞きながら医師が行っている場合が多く,
1552 医師は製品の品質及び使い慣れを重視して製品を選択
1553 する傾向がある。
1554
1555 針甲についても,
1556 異なる製造販売業者の製品の間で使用方法に若干の違いがある
1557 ことから,
1558 医師は頻繁には他の製造販売業者の製品に変更しない傾向がある。
1559
1560
1561 〔設問1〕
1562 本件計画について,
1563 独占禁止法上の問題点を検討しなさい(企業結合に関する独占禁止法上の
1564 届出基準は充足されているものとする。
1565
1566 )。
1567
1568
1569
1570 - 14 -
1571
1572 〔設問2〕
1573 公正取引委員会の企業結合審査において,
1574 企業結合により独占禁止法上の問題が生ずると判断
1575 される場合,
1576 当該問題を解消するために企業結合当事者が企業結合計画の修正を試みることがあ
1577 る。
1578
1579 上記設例において,
1580 公正取引委員会が本件計画に対して独占禁止法上の問題が生ずると判断
1581 した場合,
1582 当事会社2社が本件計画についてどのような修正を試みることによって独占禁止法上
1583 の問題を解消できるか,
1584 以下の事実を前提に,
1585 当該修正が競争に及ぼす影響を踏まえて検討しな
1586 さい。
1587
1588
1589 点滴関連製品を取り扱っている国内流通業者6社(以下「6社」という。
1590
1591 )のうちの1社であ
1592 るM社は,
1593 針甲と同時に使用される点滴関連製品である点滴チューブ丙について15パーセント
1594 の販売シェアを有している。
1595
1596 6社の取扱製品には差異はあるものの,
1597 針甲及び点滴チューブ丙を
1598 含む点滴関連製品については競合流通業者の間で激しい販売競争が展開されており,
1599 シェアの変
1600 動もある。
1601
1602 このような競争状況を反映して,
1603 点滴関連製品の製造販売業者も,
1604 取引先流通業者の
1605 変更や取引内容の随時見直しを行うことが可能である。
1606
1607
1608 本件計画が検討されている現時点において,
1609 M社は,
1610 針甲の製造も販売も行っていない。
1611
1612 しか
1613 し,
1614 M社は,
1615 過去にX社製の針甲を販売し,
1616 一定のシェアを獲得した実績もあり,
1617 針甲の販売を
1618 行う十分な経験及び能力を有している。
1619
1620 なお,
1621 X社製の針甲の販売に関するノウハウの蓄積があ
1622 れば,
1623 他社製の針甲についても,
1624 競合事業者との競争の中で販売を行うことは可能である。
1625
1626 また,
1627
1628 M社は,
1629 針甲の製造経験はないものの,
1630 製造を行うための設備や人材,
1631 ノウハウ等を包括的に取
1632 得できれば,
1633 それらを有効に活用する能力を有している。
1634
1635
1636 M社は,
1637 点滴関連製品の国内販売で豊富な実績を有していたが,
1638 点滴に必要な一連の器具のう
1639 ち点滴針の品ぞろえに弱点があった。
1640
1641 M社が,
1642 針甲の製造を含む供給手段を獲得し,
1643 針甲を取り
1644 扱うこととなれば,
1645 かかる弱点を克服することができる。
1646
1647 そのため,
1648 M社が針甲の事業を営もう
1649 とするインセンティブは高い。
1650
1651
1652 M社は,
1653 当事会社2社及びA社との間に,
1654 株式の保有や役員兼任等の資本関係・人的関係を有
1655 していない。
1656
1657
1658
1659 - 15 -
1660
1661 - 16 -
1662
1663 論文式試験問題集[知的財産法]
1664
1665 - 17 -
1666
1667 [知的財産法]
1668 〔第1問〕(配点:50)
1669 食品加工会社Xは,
1670 特許請求の範囲に「工程aと工程bを含むことを特徴とする食品中の成分P
1671 含有量の測定方法」(以下「本件発明」という。
1672
1673 )と記載された特許権(以下「本件特許権」とい
1674 う。
1675
1676 )を有している。
1677
1678 成分Pは,
1679 一般に健康に良いとされ,
1680 従来,
1681 食品中の成分P含有量の測定方
1682 法としては,
1683 工程aのみを含むものが広く使用されていたが,
1684 本件発明は,
1685 工程bの追加により全
1686 体の測定時間を顕著に短縮させたものである。
1687
1688 また,
1689 本件発明は,
1690 Xの研究開発部門に所属してい
1691 た甲がXにおける勤務時間中にXの施設においてXの資材を用いて完成させたものであり,
1692 本件発
1693 明完成時点のXの職務発明規程には,
1694 職務発明について,
1695 その発明が完成した時にXが特許を受け
1696 る権利を取得する旨が定められていた。
1697
1698
1699 Xが本件特許権に係る特許出願(以下「本件出願」という。
1700
1701 )をした後,
1702 甲は,
1703 Xを退職し,
1704 食
1705 品加工,
1706 測定機器の製造販売等を業とする会社Yに転職した。
1707
1708 その後,
1709 Yは,
1710 加工食品の製造工程
1711 に,
1712 本件発明の技術的範囲に属する測定方法(以下「Y方法」という。
1713
1714 )を使用して成分P含有量
1715 を測定する工程を組み込み,
1716 測定の結果,
1717 成分P含有量が基準値以上であることを確認した加工食
1718 品のみを成分P含有量の豊富な食品である旨を表示して販売している(以下,
1719 Y方法による測定を
1720 経てYが販売している加工食品を「Y製品」という。
1721
1722 )。
1723
1724
1725 以上の事実関係を前提として,
1726 以下の設問に答えなさい。
1727
1728 なお,
1729 各問はそれぞれ独立したもので
1730 あり,
1731 相互に関係はないものとする。
1732
1733
1734 〔設
1735
1736 問〕
1737
1738 1.Yは,
1739 Xから特許権侵害の警告を受けたため,
1740 本件発明の完成の経緯を甲に確認したところ,
1741
1742 甲は,
1743 上司に反対された研究を甲独自の判断で進める中で本件発明を完成させたのであるから,
1744
1745 本件発明の完成はXから期待されておらず,
1746 甲が特許を受ける権利を有していると説明した。
1747
1748
1749 そのため,
1750 Yは,
1751 Y方法の使用を続けたところ,
1752 Xは,
1753 Yに対して,
1754 本件特許権に基づき,
1755 Y
1756 製品の製造販売の差止め及びY製品の廃棄を求める訴訟を提起した。
1757
1758 Xの請求に対するYの考
1759 えられる反論とその妥当性について論じなさい。
1760
1761
1762 2.本件出願の特許請求の範囲には,
1763 出願当初,
1764 「工程aを含むことを特徴とする食品中の成分
1765 P含有量の測定方法」(以下「本件当初発明」という。
1766
1767 )と記載されており,
1768 Xは,
1769 本件出願の
1770 出願公開後に本件当初発明の内容を記載した書面を提示してYに警告をした。
1771
1772 しかし,
1773 本件出
1774 願前から工程aのみを含む食品中の成分P含有量の測定方法が広く使用されていたことを知る
1775 Yは,
1776 Y方法の使用を続けた。
1777
1778
1779
1780
1781 仮にXが本件当初発明について特許権の設定登録を受け,
1782 Yに対して出願公開の効果とし
1783 ての補償金の支払を請求した場合,
1784 Yは,
1785 どのように反論すべきか。
1786
1787
1788
1789
1790
1791 特許請求の範囲に本件当初発明が記載された本件出願について拒絶理由通知を受けたXは,
1792
1793 特許請求の範囲を本件発明のとおり補正したが,
1794 補正後にYに対して再度の警告をしなかっ
1795 た。
1796
1797 その後,
1798 Xは,
1799 本件特許権の設定登録を受け,
1800 Yに対して出願公開の効果としての補償
1801 金の支払を求める訴訟を提起した。
1802
1803 Xの請求に対するYの考えられる反論とその妥当性につ
1804 いて論じなさい。
1805
1806
1807
1808 3.Yは,
1809 本件発明の実施にのみ用いられる測定機器Mを製造し,
1810 それら全てを貿易会社Zに国
1811 内で販売している。
1812
1813 Zは,
1814 それら全てを外国に輸出している。
1815
1816 Xは,
1817 Yに対して,
1818 本件特許権
1819 に基づき,
1820 Mの製造及び販売の差止めを請求することができるか。
1821
1822
1823
1824 - 18 -
1825
1826 〔第2問〕(配点:50)
1827 仏師X1は,
1828 宗教法人Y1寺からの依頼に応じて,
1829 青銅製の仏像彫刻作品A一体を作成し,
1830 Y1
1831 け
1832
1833 さ
1834
1835 に納めた。
1836
1837 Aは,
1838 高さ3メートルの仏像で,
1839 手脚を含む全身のポーズ,
1840 顔の表情,
1841 袈裟(着衣)の
1842 デザインなどについて仏教美術の仕来りに従いつつも,
1843 X1独自の世界観・宗教観を反映した外観
1844 の表現αを有している。
1845
1846
1847 Y1は,
1848 恒久的に展示・管理するとの条件でX1から許諾を得て,
1849 Y1の境内の屋外にAを設置
1850 し,
1851 門徒や観光客の参拝に供した。
1852
1853 Aの姿は公道からは見えないが,
1854 毎日午前9時から午後5時ま
1855 での間は誰でもY1境内に立ち入り,
1856 Aを見ることができる。
1857
1858
1859 以上の事実関係を前提として,
1860 以下の設問に答えなさい。
1861
1862 なお,
1863 各問はそれぞれ独立したもので
1864 あり,
1865 相互に関係はないものとする。
1866
1867
1868 〔設
1869
1870 問〕
1871
1872 1.仏像彫刻作品Aの外観の表現αの著作物性について,
1873 どのような点が問題となり,
1874 その点を
1875 いかに考えるかを説明しなさい。
1876
1877
1878 また,
1879 商品として大量生産され,
1880 家庭内の仏壇に設置される,
1881 高さ20センチメートルの仏
1882 像彫刻Bの外観の表現βの著作物性について,
1883 更にどのような点が問題となり,
1884 その点をいか
1885 に考えるかを説明しなさい。
1886
1887 ここで,
1888 βはαをそのまま縮小したものであり,
1889 両者はその大き
1890 さ以外は同一であるものとする。
1891
1892
1893 2.Aが「Y1大仏」と称されて人気を博したため,
1894 Y1は,
1895 Aの正面写真をその中心に大きく
1896 配置した絵はがきPを自ら製造し,
1897 観光客に境内で販売するとともに,
1898 Y2を含む複数の土産
1899 物店にも販売した。
1900
1901 次ののそれぞれにおいて,
1902 X1は,
1903 Y2に対して,
1904 著作権に基づき,
1905
1906 絵はがきPの販売の差止めを請求することができるか。
1907
1908 いずれもαが美術の著作物であり,
1909 A
1910 がその原作品であることを前提に説明しなさい。
1911
1912
1913
1914
1915 絵はがきPの製造販売についてX1がY1に許諾しておらず,
1916 その事情をY2はY1から
1917 のPの購入時に知らなかったが,
1918 知らないことについて過失があった。
1919
1920 その後,
1921 X1がY2
1922 に対して警告をしたために,
1923 Y2は,
1924 当該事情を知り,
1925 以後はPを購入することをやめたが,
1926
1927 現在,
1928 それ以前に購入したPを観光客に販売している。
1929
1930
1931
1932
1933
1934 X1とY1は,
1935 X1がY1に絵はがきPの製造販売を許諾し,
1936 Y1がX1にPの売上げの
1937 5%を支払う旨の契約を締結していたところ,
1938 Y1はPの販売後も一切の金銭をX1に支払
1939 っていない。
1940
1941 Y2は,
1942 この不払の事情を知りつつY1からPを購入して観光客に販売してい
1943 る。
1944
1945 ここで,
1946 X1とY1の間で,
1947 Pの製造販売許諾契約は解除されていないものとする。
1948
1949
1950
1951 3.Aの顔つきは怒りを含んだ厳しい表情であるため,
1952 Y1の内部では不評であった。
1953
1954 そこで,
1955
1956 X1の死後すぐに,
1957 Y1は,
1958 より柔和な表情をした仏頭Cを自ら作り直し,
1959 Aの頭部を切り離
1960 してCとすげ替えた。
1961
1962 ここで,
1963 切り離されたAの頭部は,
1964 そのまま梱包されてY1内に保管さ
1965 れている。
1966
1967 X1の遺族である配偶者X2は,
1968 Y1に対して名誉回復等の措置を請求することが
1969 できるか。
1970
1971 αが美術の著作物であり,
1972 Aがその原作品であることを前提に説明しなさい。
1973
1974
1975
1976 - 19 -
1977
1978 - 20 -
1979
1980 論文式試験問題集[労
1981
1982 - 21 -
1983
1984 働
1985
1986 法]
1987
1988 [労
1989
1990 働
1991
1992 法]
1993
1994 〔第1問〕(配点:50)
1995 次の事例を読んで,
1996 後記の設問に答えなさい。
1997
1998
1999 【事
2000
2001 例】
2002 Xは,
2003 数軒の飲食店と娯楽施設を経営するY社に中途採用で雇用され,
2004 飲食店の1つで接客係と
2005
2006 して勤務していた。
2007
2008 当初は6か月の期間を定めた契約社員であったが,
2009 契約を更新し,
2010 採用から1
2011 年が過ぎたところで期間の定めのない常勤スタッフとなり,
2012 頑張れば将来は店長や本部のマネージ
2013 ャーに昇進することも可能と言われていた。
2014
2015 ところが,
2016 その1年後,
2017 新たな店長としてPが着任す
2018 ると,
2019 なぜか折り合いが悪く,
2020 ささいなミスや客からのクレームを理由に,
2021 しばしば叱責を受ける
2022 ようになった。
2023
2024 半期ごとの成績評価でも,
2025 それまでの「標準,
2026 やや良」(B+)から「要改善」
2027 (C)へと低下したため,
2028 Pとの面談の際に納得できない旨を伝えたが,
2029 「その自覚のなさは絶望
2030 的だな。
2031
2032 次回,
2033 不良(D)がつくと居場所はなくなるぞ。
2034
2035 」と言われるだけであった。
2036
2037 Xとしては,
2038
2039 他の同僚と同等以上の仕事をしているのにPに狙い撃ちにされているように思われ,
2040 ストレスが高
2041 まった。
2042
2043
2044 そのような中で,
2045 ある日の始業時のスタッフ・ミーティングの際,
2046 全員が集まったところで,
2047 P
2048 がXを前に呼び出し,
2049 前日に生じた客との小さなトラブルを非難して「勤務改善の誓い」と題され
2050 た1枚の文書にサインするよう求めたため,
2051 Xは「いい加減にしてください。
2052
2053 」と大声で叫び,
2054 同
2055 文書を破り捨てた。
2056
2057 すると,
2058 Pは,
2059 そのまま自分の勤務に就こうとしたXにオフィスで待機するよ
2060 う命じ,
2061 直ちに本社に連絡をして親戚に当たる社長Qの了解を得た上で,
2062 Xに即日解雇を言い渡し
2063 た。
2064
2065 Xが,
2066 どのような解雇理由なのかと尋ねると,
2067 Pは,
2068 「勤務成績不良と上司への反抗。
2069
2070 本来な
2071 ら懲戒解雇にしてもよいところであるが,
2072 温情措置として普通解雇の扱いとしてもらった。
2073
2074 後で人
2075 事部から連絡があるはずだ。
2076
2077 」と言い,
2078 ロッカーの私物をまとめてすぐに帰宅するよう命じた。
2079
2080 そ
2081 の日の午後,
2082 Y社の人事部からXの携帯電話にメールで,
2083 @本日付けでY社はXを解雇する,
2084 A解
2085 雇理由は就業規則第32条第2号,
2086 第4号及び第7号である,
2087 B就業規則第33条ただし書に該当
2088 するので,
2089 同条本文の予告及び予告手当の支払は行わない,
2090 C退職手当は後日Xの銀行口座に振り
2091 込む,
2092 という4点が記された文書(解雇通知書)が送られてきた。
2093
2094
2095 Xは翌日,
2096 Y社の人事部に電話をし,
2097 一晩考えてみたがやはりひどすぎると解雇の撤回を求めた
2098 が,
2099 担当者からは,
2100 解雇通知書に記した理由による正当な解雇である,
2101 それ以上に説明することは
2102 ない,
2103 との回答しか得られなかった。
2104
2105 また,
2106 Xは勤務していた店舗に出向いてPに面談を求めたが,
2107
2108 Pは不在とのことであった。
2109
2110 Xはやむなく立ち去ったが,
2111 帰り際,
2112 副店長のRに「こんな解雇は承
2113 服できない。
2114
2115 知り合いの弁護士に頼んで裁判を起こしてやる。
2116
2117 」と言った。
2118
2119 Rは後刻,
2120 これをPに
2121 報告した。
2122
2123
2124 【Y社就業規則(抜粋)】
2125 第20条(退職手当)
2126 従業員が死亡又は退職したときには,
2127 別に定める規程(略)に従い,
2128 退職手当を支払う。
2129
2130
2131 第32条(解雇)
2132 従業員が,
2133 次の事由の一つに該当するときには,
2134 解雇する。
2135
2136
2137 1
2138
2139 (略)
2140
2141 2
2142
2143 能力不足又は勤務成績が不良で改善の見込みがないとき。
2144
2145
2146
2147 3
2148
2149 (略)
2150
2151 4
2152
2153 協調性又は責任感を欠き,
2154 従業員として不適格と認められるとき。
2155
2156
2157
2158 5・6
2159
2160 (略)
2161 - 22 -
2162
2163 7
2164
2165 その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき。
2166
2167
2168
2169 第33条(解雇の予告)
2170 前条の解雇に当たっては,
2171 少なくとも30日前に予告をするか,
2172 予告に代えて平均賃金の30日分
2173 以上の解雇予告手当を支払う。
2174
2175 但し,
2176 本人の責めに帰すべき事由による解雇については,
2177 この限りで
2178 はない。
2179
2180
2181 第40条(懲戒解雇)
2182 従業員が,
2183 次の事由の一つに該当するときには,
2184 懲戒解雇を行う。
2185
2186 この場合,
2187 第20条に定める退
2188 職手当は支給しない。
2189
2190
2191 1
2192
2193 重要な経歴を詐称して,
2194 又は不正な方法により,
2195 採用されたとき。
2196
2197
2198
2199 2・3
2200 4
2201
2202 (略)
2203
2204 業務命令に従わず,
2205 会社の規律又は正常な業務を妨害したとき。
2206
2207
2208
2209 5〜7
2210 〔設
2211
2212 (略)
2213 問〕
2214
2215 1.Xから解雇を争いたいという相談を受けた弁護士は,
2216 本件解雇の適法性や効力について,
2217 どの
2218 ように考えるべきか。
2219
2220 請求や主張の仕方にも触れながら,
2221 あなたの意見を述べなさい。
2222
2223
2224 2.Xが訴訟を起こすかもしれないというPからの連絡に基づき,
2225 Y社の人事部が,
2226 保存してあっ
2227 たXの採用時の応募書類をチェックしてみると,
2228 ホテル専門学校を卒業したとして添付されてい
2229 た証明書のコピーに不審な点が見つかった。
2230
2231 そこで調査を行ったところ,
2232 このコピーは偽造であ
2233 り,
2234 Xは当該専門学校に入学したものの,
2235 中途で退学していたことが判明した。
2236
2237
2238 Xが本件解雇の無効を主張してY社を相手に訴訟を提起した場合,
2239 Y社は,
2240 この応募書類の問
2241 題について,
2242 どのような対応を採ることが考えられるか。
2243
2244 検討すべき法律上の論点を挙げて,
2245 あ
2246 なたの意見を述べなさい。
2247
2248
2249
2250 - 23 -
2251
2252 〔第2問〕(配点:50)
2253 次の事例を読んで,
2254 後記の設問に答えなさい。
2255
2256
2257 【事
2258
2259 例】
2260 加工食品の製造販売を行うY社には,
2261 正社員で組織するX労働組合(以下「X組合」という。
2262
2263 )
2264
2265 が存在し,
2266 組合員資格のない管理職等を除けば,
2267 正社員のほぼ全員がこれに加入していた。
2268
2269
2270 Y社とX組合は毎年,
2271 春闘の団体交渉により,
2272 賃金改定や夏冬の賞与などの労働条件を合意し,
2273
2274 4月1日付けで期間1年の労働協約を締結してきた。
2275
2276 また,
2277 上記労働協約とは別に,
2278 組合費のチェ
2279 ックオフ,
2280 掲示板の貸与及び苦情処理委員会等,
2281 労使間のルールに関する期間の定めのない労働協
2282 約(以下「本件労働協約」という。
2283
2284 )があった。
2285
2286 本件労働協約には,
2287 第27条から第29条までに
2288 掲示板の貸与についての規定が置かれていたほか,
2289 労使各3名の委員で構成される苦情処理委員会
2290 に関する規定が置かれており,
2291 人事評価,
2292 昇給・降給,
2293 賞与査定等について,
2294 同委員会で組合員か
2295 らの苦情を受け付けて,
2296 労使の委員で協議するものとされていた。
2297
2298 また,
2299 第51条に苦情処理委員
2300 会の運営に関する定めがあった。
2301
2302
2303 ところで,
2304 Y社の賞与には,
2305 固定部分と変動部分があり,
2306 固定部分について労使交渉で基準支給
2307 率を定めた上で,
2308 変動部分については,
2309 固定部分の額の20%を上限として,
2310 上司による賞与査定
2311 に応じて加算される仕組みとなっていた。
2312
2313
2314 X組合の組合員である女性社員Aは,
2315 平成30年冬期賞与支給に際して,
2316 変動部分における加算
2317 をゼロとされたため,
2318 以前に上司からの飲食の誘いを何度か断ったことが原因ではないかとして,
2319
2320 X組合に相談の上,
2321 平成31年2月,
2322 苦情処理委員会に申立てをした。
2323
2324
2325 苦情処理委員会で,
2326 会社側委員は,
2327 上司からの事前のヒアリングを基に,
2328 Aの賞与査定が低い理
2329 由は,
2330 Aが電車が遅れたと言っては度々5分ないし10分の遅刻をしたこと,
2331 業務上のミスが多か
2332 ったことであると説明した。
2333
2334 これに対し,
2335 X組合側委員は,
2336 遅刻やミスの事実はあるがいずれも加
2337 算ゼロとするほどの問題ではない,
2338 Aが上司の誘いを断ったことが真の原因ではないか,
2339 そうだと
2340 すると低査定は対価型セクシュアルハラスメントに該当すると主張し,
2341 事実無根である,
2342 二人きり
2343 の飲食に誘った事実はないと聞いているとする会社側委員と議論になり,
2344 長時間を費やしたが,
2345 協
2346 議は平行線のままで終了した。
2347
2348
2349 そこで,
2350 X組合は,
2351 Aの賞与査定の問題に関して改めて団体交渉を要求したが,
2352 Y社は,
2353 そもそ
2354 も個人の査定等の問題は集団的労使交渉にはなじまないから,
2355 労使合意により苦情処理委員会を設
2356 置したのであり,
2357 また,
2358 苦情処理委員会で労使の委員が長時間にわたって議論した結果,
2359 物別れに
2360 終わっており,
2361 これ以上説明することはないとして団体交渉に応じなかった。
2362
2363
2364 Y社の態度に反発したX組合は,
2365 掲示板を利用して組合員に状況を報告することとし,
2366 苦情処理
2367 委員会におけるY社側の主張を紹介した上で,
2368 不当な賞与査定である,
2369 上司によるセクハラ行為で
2370 ある,
2371 Y社の対応はセクハラを隠蔽しようとするものでコンプライアンス上重大な問題がある,
2372 Y
2373 社は正当な理由なく団体交渉を拒否していると非難するビラを作成し,
2374 掲示板に掲示した。
2375
2376
2377 Y社は,
2378 X組合に対し,
2379 当該ビラ掲示は,
2380 本件労働協約に違反するものであるから直ちに掲示を
2381 中止するよう通告したが,
2382 X組合が対応しなかったため,
2383 翌日,
2384 本件労働協約第29条に基づき当
2385 該ビラを撤去した。
2386
2387
2388 X組合がこれに猛然と反発したため,
2389 春闘の団体交渉は難航し,
2390 合意に至らなかったところ,
2391 Y
2392 社は,
2393 労使間の信頼関係は既に破壊されているとして,
2394 本件労働協約について,
2395 書面により90日
2396 前の解約予告をした。
2397
2398 また,
2399 Y社は,
2400 本件労働協約が失効すれば,
2401 使用者が組合費について賃金控
2402 除を行う法的根拠が失われると主張して,
2403 X組合に対して,
2404 本件労働協約の失効後は組合費のチェ
2405 ックオフを中止する旨を通告した。
2406
2407
2408
2409 - 24 -
2410
2411 【本件労働協約(抜粋)】
2412 第27条
2413
2414 会社は,
2415 X組合に対し,
2416 X組合が組合活動に必要な宣伝,
2417 報道,
2418 告知を行うための掲示板
2419
2420 を貸与する。
2421
2422
2423 第28条
2424
2425 掲示物は,
2426 会社の信用を傷つけ,
2427 政治活動を目的とし,
2428 個人をひぼうし,
2429 事実に反し,
2430 又
2431
2432 は職場規律を乱すものであってはならない。
2433
2434
2435 第29条
2436
2437 会社は,
2438 X組合が前条の規定に違反した場合は,
2439 掲示物を撤去し,
2440 掲示板の貸与を取り消
2441
2442 すことができる。
2443
2444
2445 第51条
2446
2447 苦情処理委員会は非公開とし,
2448 委員会の委員及び関係者(苦情を申し立てた者,
2449 委員会に
2450
2451 よるヒアリングの対象となった者を含む。
2452
2453 )は,
2454 苦情処理に関して知り得た秘密を漏らしてはなら
2455 ない。
2456
2457
2458 〔設
2459
2460 問〕
2461
2462 1.X組合が,
2463 Y社の本件労働協約第29条に基づくビラの撤去について争う場合,
2464 どのような機
2465 関にどのような救済を求めることができるか。
2466
2467 検討すべき法律上の論点を挙げて論じなさい。
2468
2469
2470 2.Y社が,
2471 解約予告から3か月後の給与支給日以降,
2472 実際にチェックオフを中止した場合,
2473 X組
2474 合は,
2475 どのような機関にどのような救済を求めることができるか。
2476
2477 検討すべき法律上の論点を挙
2478 げて論じなさい。
2479
2480
2481
2482 - 25 -
2483
2484 - 26 -
2485
2486 論文式試験問題集[環
2487
2488 - 27 -
2489
2490 境
2491
2492 法]
2493
2494 [環
2495
2496 境
2497
2498 法]
2499
2500 〔第1問〕(配点:50)
2501 A県を流れるB川上流域には農村地帯が広がっており,
2502 中流域には大小多数の旅館やホテルが立
2503 ち並ぶ観光地がある。
2504
2505 そして,
2506 B川は,
2507 下流域の人口密集地と河口部の電気めっき工場の集積地を
2508 通り,
2509 A県最大の内湾であるC湾に流れ込んでいる。
2510
2511 現在,
2512 C湾においては,
2513 人の健康の保護に関
2514 する環境基準に関しては,
2515 カドミウム,
2516 全シアン等,
2517 全項目について基準を達成している。
2518
2519 これに
2520 対し,
2521 生活環境の保全に関する環境基準に関しては,
2522 水域の利用目的に関し,
2523 水浴,
2524 自然環境保全
2525 等を目的としてA類型に指定されている海域Dにおいて,
2526 化学的酸素要求量(COD)について基
2527 準を達成していない。
2528
2529 また,
2530 自然環境保全等を目的としてT類型に指定されている海域Eにおいて,
2531
2532 全窒素と全燐について基準を達成していない。
2533
2534 さらに,
2535 水生生物の生息状況に関し,
2536 水生生物の産
2537 卵場等として生物特A類型に指定されている海域Fにおいて,
2538 全亜鉛について基準を達成していな
2539 い。
2540
2541
2542 〔設問1〕
2543 水質の汚濁に係る環境上の条件について,
2544 人の健康の保護に関する環境基準と生活環境の保全
2545 に関する環境基準とでは,
2546 基準の設定の仕方がどのように異なるかについて,
2547 【資料1】も参照
2548 しつつ,
2549 その理由も含めて説明しなさい。
2550
2551
2552 〔設問2〕
2553 A県においては,
2554 従来,
2555 水質汚濁防止法第3条第1項に基づく排水基準が適用されてきた。
2556
2557 し
2558 かし,
2559 C湾において,
2560 COD,
2561 全窒素及び全燐に関する環境基準が一部海域において未達成であ
2562 るという状況は20年以上にわたって続いており,
2563 その発生源は,
2564 水質汚濁防止法の特定事業場
2565 のほか,
2566 生活排水,
2567 農地等であると考えられている。
2568
2569 また,
2570 全亜鉛については,
2571 水生生物保全の
2572 観点から,
2573 平成18年に同条同項に基づく亜鉛の排水基準が強化されたものの(5mg/lから
2574 2mg/l),
2575 電気めっき業については,
2576 この基準に直ちに対応することが困難であるとして,
2577
2578 現在に至るまで同条同項に基づく環境省令の附則による暫定排水基準(5mg/l)が適用され
2579 ている。
2580
2581 A県は,
2582 C湾において,
2583 COD,
2584 全窒素,
2585 全燐及び全亜鉛の環境基準を達成するため,
2586
2587 従来の対策に加え,
2588 どのような措置を採ることができるか。
2589
2590 水質汚濁防止法の規定を踏まえ,
2591
2592 【資料2】も参照しつつ論じなさい。
2593
2594
2595 〔設問3〕
2596 水質汚濁に係る環境基準が設定されていない物質Pについて,
2597 近年,
2598 発がん性と催奇形性があ
2599 るとの研究結果が相次いで報告されている。
2600
2601 そこで,
2602 環境団体等が国に対して環境基準の設定及
2603 び規制を求めているが,
2604 未だ実現していない。
2605
2606 Pを含む水を排出している特定事業場が多数存在
2607 しているA県G市が,
2608 条例により独自の排水基準を設定することの可否について,
2609 水質汚濁防止
2610 法の規定を踏まえて論じなさい。
2611
2612
2613 【資料1】
2614 ○
2615
2616 水質汚濁に係る環境基準について(昭和46年12月28日号外環境庁告示第59号)(抜粋)
2617
2618 第1
2619
2620 環境基準
2621 公共用水域の水質汚濁に係る環境基準は,
2622 人の健康の保護および生活環境の保全に関し,
2623 それぞ
2624
2625 れ次のとおりとする。
2626
2627
2628 1
2629
2630 人の健康の保護に関する環境基準
2631 人の健康の保護に関する環境基準は,
2632 全公共用水域につき,
2633 別表1の項目の欄に掲げる項目ご
2634 - 28 -
2635
2636 とに,
2637 同表の基準値の欄に掲げるとおりとする。
2638
2639
2640 2
2641
2642 生活環境の保全に関する環境基準
2643
2644
2645 生活環境の保全に関する環境基準は,
2646 各公共用水域につき,
2647 別表2の水域類型の欄に掲げる
2648 水域類型のうち当該公共用水域が該当する水域類型ごとに,
2649 同表の基準値の欄に掲げるとおり
2650 とする。
2651
2652
2653
2654
2655
2656 水域類型の指定を行うに当たつては,
2657 次に掲げる事項によること。
2658
2659
2660 ア
2661
2662 水質汚濁に係る公害が著しくなつており,
2663 又は著しくなるおそれのある水域を優先するこ
2664 と。
2665
2666
2667
2668 イ
2669
2670 当該水域における水質汚濁の状況,
2671 水質汚濁源の立地状況等を勘案すること。
2672
2673
2674
2675 ウ
2676
2677 当該水域の利用目的及び将来の利用目的に配慮すること。
2678
2679
2680
2681 エ
2682
2683 当該水域の水質が現状よりも少なくとも悪化することを許容することとならないように配
2684 慮すること。
2685
2686
2687
2688 第3
2689
2690 オ
2691
2692 目標達成のための施策との関連に留意し,
2693 達成期間を設定すること。
2694
2695
2696
2697 カ
2698
2699 (略)
2700
2701 環境基準の達成期間等
2702 環境基準の達成に必要な期間およびこの期間が長期間である場合の措置は,
2703 次のとおりとする。
2704
2705
2706
2707 1
2708
2709 人の健康の保護に関する環境基準
2710 これについては,
2711 設定後直ちに達成され,
2712 維持されるように努めるものとする。
2713
2714
2715
2716 2
2717
2718 生活環境の保全に関する環境基準
2719 これについては,
2720 各公共用水域ごとに,
2721 おおむね次の区分により,
2722 施策の推進とあいまちつつ,
2723
2724 可及的速かにその達成維持を図るものとする。
2725
2726
2727
2728
2729 現に著しい人口集中,
2730 大規模な工業開発等が進行している地域に係る水域で著しい水質汚濁
2731 が生じているものまたは生じつつあるものについては,
2732 5年以内に達成することを目途とする。
2733
2734
2735 (以下,
2736 略)
2737
2738
2739
2740 水質汚濁防止を図る必要のある公共用水域のうち,
2741 (1)の水域以外の水域については,
2742 設定
2743
2744 後直ちに達成され,
2745 維持されるよう水質汚濁の防止に努めることとする。
2746
2747
2748 別表1
2749
2750 (略)
2751
2752 別表2
2753
2754 生活環境の保全に関する環境基準
2755
2756 1
2757
2758 河川
2759
2760
2761 河川(湖沼を除く。
2762
2763 )
2764
2765
2766
2767 湖沼
2768
2769 (略)
2770
2771 (略)
2772
2773 2
2774
2775 海域
2776
2777 *
2778
2779 別表2のうち,
2780 海域に関する部分の概要
2781
2782
2783 (略)
2784 利用目的の適応性等に応じ,
2785 以下の水域類型の欄が掲げられている。
2786
2787
2788
2789 ア
2790
2791 COD等5項目について
2792
2793 A,
2794 B,
2795 Cの3類型
2796
2797 イ
2798
2799 全窒素,
2800 全燐について
2801
2802 T,
2803 U,
2804 V,
2805 Wの4類型
2806
2807 ウ
2808
2809 全亜鉛等3項目について
2810
2811 生物A,
2812 生物特Aの2類型
2813
2814
2815
2816 上記各水域類型ごとの基準値の欄に掲げられている基準値として,
2817 以下のようなものがあ
2818 る。
2819
2820
2821 ア
2822
2823 A類型(水浴,
2824 自然環境保全等を利用目的とする水域)
2825 CODの基準値
2826
2827 イ
2828
2829 ウ
2830
2831 2mg/l以下
2832
2833 T類型(自然環境保全等を利用目的とする水域)
2834 全窒素の基準値
2835
2836 0.2mg/l以下
2837
2838 全燐の基準値
2839
2840 0.02mg/l以下
2841
2842 生物特A類型(水生生物の産卵場等として特に保全が必要な水域)
2843 - 29 -
2844
2845 全亜鉛の基準値
2846
2847 0.01mg/l以下
2848
2849 【資料2】
2850 ○
2851
2852 水質汚濁防止法施行令(昭和46年政令第188号)(抜粋)
2853
2854 (特定施設)
2855 第1条
2856
2857 水質汚濁防止法(以下「法」という。
2858
2859 )第2条第2項の政令で定める施設は,
2860 別表第1に掲
2861
2862 げる施設とする。
2863
2864
2865 (水素イオン濃度等の項目)
2866 第3条
2867
2868 法第2条第2項第2号の政令で定める項目は,
2869 次に掲げる項目とする。
2870
2871
2872
2873 一
2874
2875 水素イオン濃度
2876
2877 二
2878
2879 生物化学的酸素要求量及び化学的酸素要求量
2880
2881 三〜六
2882 七
2883
2884 (略)
2885
2886 亜鉛含有量
2887
2888 八〜十一
2889 十二
2890 2
2891
2892 (略)
2893
2894 窒素又はりんの含有量 (以下,
2895 略)
2896
2897 (略)
2898
2899 (排水基準に関する条例の基準)
2900 第4条
2901
2902 法第3条第3項の政令で定める基準は,
2903 水質の汚濁に係る環境上の条件についての環境基本
2904
2905 法(平成5年法律第91号)第16条第1項の基準(以下「水質環境基準」という。
2906
2907 )が定められ
2908 ているときは,
2909 法第3条第3項の規定による条例(農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和
2910 45年法律第139号)第3条第1項の規定により指定された対策地域における農用地の土壌の同
2911 法第2条第3項の特定有害物質による汚染を防止するため水質環境基準を基準とせず定められる条
2912 例の規定を除く。
2913
2914 )においては,
2915 水質環境基準が維持されるため必要かつ十分な程度の許容限度を
2916 定めることとする。
2917
2918
2919 別表第1(第1条関係)
2920 一〜六十五
2921 六十六
2922
2923 (略)
2924
2925 電気めつき施設
2926
2927 六十六の二
2928
2929 (略)
2930
2931 六十六の三
2932
2933 旅館業(旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第1項に規定するもの(下宿
2934
2935 営業を除く。
2936
2937 )をいう。
2938
2939 )の用に供する施設であつて,
2940 次に掲げるもの
2941 イ
2942
2943 ちゆう房施設
2944
2945 ロ
2946
2947 洗濯施設
2948
2949 ハ
2950
2951 入浴施設
2952
2953 六十六の四〜七十四
2954 ○
2955
2956 (略)
2957
2958 排水基準を定める省令(昭和46年総理府令第35号)(抜粋)
2959
2960 (排水基準)
2961 第1条
2962
2963 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号。
2964
2965 以下「法」という。
2966
2967 )第3条第1項の排水基
2968
2969 準は,
2970 同条第2項の有害物質(以下「有害物質」という。
2971
2972 )による排出水の汚染状態については,
2973
2974 別表第1の上欄に掲げる有害物質の種類ごとに同表の下欄に掲げるとおりとし,
2975 その他の排出水の
2976 汚染状態については,
2977 別表第2の上欄に掲げる項目ごとに同表の下欄に掲げるとおりとする。
2978
2979
2980 *
2981
2982 別表第2の概要
2983 排水基準を定める省令第1条にいう「その他の排出水の汚染状態」について,
2984 水質汚濁防止法施
2985 行令第3条が掲げる項目が上欄に掲げられ,
2986 これに対応し,
2987 水素指数又は排出水一定単位当たりの
2988 許容量により定められた許容限度が下欄に掲げられている。
2989
2990
2991 同表の備考2では,
2992 同表に掲げる排出基準は,
2993 1日当たりの平均的な排出水の量が50立方メー
2994 - 30 -
2995
2996 トル以上である工場又は事業場に係る排出水について適用するとされている。
2997
2998
2999 附
3000
3001 則
3002
3003 (平成18年11月10日環境省令第33号)(抜粋)
3004
3005 (施行期日)
3006 第1条
3007
3008 この省令は,
3009 平成18年12月11日から施行する。
3010
3011
3012
3013 (経過措置)
3014 第2条
3015
3016 附則別表の上欄に掲げる項目につき同表の中欄に掲げる業種に属する特定事業場(水質汚濁
3017
3018 防止法第2条第6項に規定する特定事業場をいう。
3019
3020 以下この条及び次条において同じ。
3021
3022 )から公共
3023 用水域に排出される水(以下「排出水」という。
3024
3025 )の汚染状態についての水質汚濁防止法第3条第
3026 1項に規定する排水基準(以下単に「排水基準」という。
3027
3028 )については,
3029 この省令の施行の日(中
3030 略)から15年間は,
3031 第1条の規定による改正後の排水基準を定める省令(中略)第1条の規定に
3032 かかわらず,
3033 それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。
3034
3035
3036 2
3037
3038 (略)
3039
3040 3
3041
3042 (略)
3043
3044 *
3045
3046 附則(平成18年11月10日環境省令第33号)別表の概要
3047 電気めっき業等3業種について,
3048 亜鉛含有量の許容限度を5mg/lとする暫定基準が掲げられ
3049 ている。
3050
3051
3052
3053 - 31 -
3054
3055 〔第2問〕(配点:50)
3056 Aは,
3057 B県に所在し,
3058 エアコンやテレビ等の使用済み家庭用電気機器(以下「家電機器」とい
3059 う。
3060
3061 )を集めて,
3062 その中から金属類を取り出し,
3063 再資源化する業者である。
3064
3065 Aの再資源化工場は田
3066 地を転換して建設したものであって,
3067 周囲は今も田地であり稲作が行われている。
3068
3069
3070 〔設問1〕
3071 Aは,
3072 家電機器を解体する際に生じる大量の廃プラスチック片を,
3073 今までは廃棄していたが,
3074
3075 これを再資源化することを思い付いた。
3076
3077 しかし,
3078 廃プラスチック片には有害物を含む多くの不純
3079 物が混ざっており,
3080 そのままでは資源として使うことのできない性質のものであった。
3081
3082 そのため,
3083
3084 再資源化のためには特殊な加工が必要であり,
3085 かつ,
3086 資源として使用可能なものは,
3087 廃プラスチ
3088 ック片の全体量のほんの一部にすぎなかった。
3089
3090 そこで,
3091 自ら再資源化のための加工設備を持って
3092 いなかったAは,
3093 別の再資源化業者Cに費用を支払って廃プラスチック片の加工を委託した。
3094
3095 C
3096 はAから受け取った廃プラスチック片を他の者から入手したものと混同させることなく加工し,
3097
3098 資源として使用可能になったプラスチックのペレットを,
3099 廃プラスチック片の加工から生じる残
3100 渣とともにAに引き渡すこととした。
3101
3102
3103 AがCに廃プラスチック片の加工を委託することについて,
3104 廃棄物の処理及び清掃に関する法
3105 律上,
3106 どのような考慮が必要か。
3107
3108 AがCに委託することなく自ら廃プラスチック片を加工処理す
3109 る場合との異同を念頭に置いて論じなさい。
3110
3111
3112 〔設問2〕
3113
3114
3115 Aは,
3116 自らの再資源化工場の処理能力を超えて家電機器を集め続けていたため,
3117 Aの工場敷
3118 地内には,
3119 解体されないままの家電機器が山積みになっていた。
3120
3121 そして,
3122 Aによる家電機器の
3123 保管が適正ではなかったため,
3124 人の健康又は生活環境に係る被害が生じ得る状態にある。
3125
3126 B県
3127 知事がAに対して採り得る措置について論じなさい。
3128
3129
3130
3131
3132
3133 その後,
3134 Aの工場敷地内で山積みになっていた家電機器は更に放置され,
3135 再資源化のための
3136 処理がなされないまま,
3137 原形をとどめない程度にまで劣化・変色し,
3138 その下から液体が染み出
3139 して,
3140 Aの工場に接する農業用の用水路に流れ込んでいる状態になった。
3141
3142 Aの工場敷地内に放
3143 置された家電機器は,
3144 鉛,
3145 水銀,
3146 アンチモン,
3147 砒素,
3148 カドミウム等の有害物質を含むものであ
3149 り,
3150 Aの工場の周囲の田地で稲作に従事している農家のDらは,
3151 染み出している液体に含まれ
3152 る有害物質が生育中の稲を汚染することを危惧し,
3153 B県の環境担当部局に相談した。
3154
3155 この場合,
3156
3157 B県知事としては,
3158 Aに対してどのような措置が採れるか,
3159 また,
3160 DらはAに対して,
3161 いかな
3162 る法的請求が可能かを論じなさい。
3163
3164
3165
3166 - 32 -
3167
3168 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
3169
3170 - 33 -
3171
3172 [国際関係法(公法系)]
3173 〔第1問〕(配点:50)
3174 国連加盟国であるA国とB国は,
3175 共に国連海洋法条約の当事国であり,
3176 国際司法裁判所規程の選
3177 択条項受諾宣言を留保なしに行っていた。
3178
3179
3180 A国は,
3181 自国の排他的経済水域(以下「EEZ」という。
3182
3183 )におけるタラの漁獲量の減少に悩ん
3184 でいた。
3185
3186 タラはA国のEEZと公海をまたいで生息する魚種である。
3187
3188 A国は自国のEEZにおける
3189 タラの漁獲可能量につきA国漁民に対する規制を年々強め,
3190 A国漁民の間には不満が募っていた。
3191
3192
3193 他方,
3194 B国漁民はA国のEEZに隣接する公海でタラの漁獲に従事し,
3195 B国の漁獲量は年々増加し
3196 ていた。
3197
3198 そのため,
3199 A国の漁民は,
3200 A国政府に対し,
3201 タラの持続可能な漁業のために,
3202 B国政府を
3203 相手に公海における漁業規制を行うための交渉に入るように求めた。
3204
3205 これを受けてA国政府は,
3206 B
3207 国政府との交渉に入り,
3208 公海におけるタラの総漁獲可能量及び割当量を設定するため漁業規制を行
3209 うことを主張した。
3210
3211 しかし,
3212 B国政府は,
3213 タラの資源量は規制を必要とする水準にはなく総漁獲可
3214 能量及び割当量の設定は必要でないとして,
3215 漁業規制を行うこと自体に反対し,
3216 引き続き公海での
3217 タラ漁を継続することを主張した。
3218
3219
3220 これに対して,
3221 A国政府やA国漁民のみならず,
3222 海洋生物資源の保存活動に取り組むA国の環境
3223 保護団体Xも激しく反発した。
3224
3225 そして,
3226 ついに公海で操業しているB国漁船をA国漁船が取り囲み,
3227
3228 両国の漁民間が衝突する事態が生じた。
3229
3230 この事態を受けて,
3231 A国は,
3232 自国のEEZ及びこれに隣接
3233 する公海の一部においてタラ漁を禁止する禁漁区を一方的に設定した。
3234
3235 加えてA国は,
3236 タラ資源保
3237 存実施法を制定し,
3238 同禁漁区でタラを漁獲する外国漁船に対しては,
3239 これを拿捕し,
3240 当該漁船の船
3241 長や乗組員に対して罰金を科することができることを定めた。
3242
3243 B国は,
3244 A国の公海における禁漁区
3245 の設定とタラ資源保存実施法の制定は国連海洋法条約に違反するとして,
3246 これを非難した。
3247
3248
3249 そうした中,
3250 A国が設定した公海上の同禁漁区で,
3251 B国の漁船Yが従前どおりタラ漁を開始した。
3252
3253
3254 これに反発したA国の環境保護団体Xは,
3255 C国を旗国とする船舶を用い,
3256 公海上の同禁漁区でタラ
3257 漁を行っている漁船Yの航行を妨害するとともに,
3258 漁網を切断するなどの行為を行った。
3259
3260 B国政府
3261 は,
3262 環境保護団体Xの行為を海賊行為として取り締まるようにA国政府に要求したが,
3263 A国政府は
3264 環境保護団体Xの行為は海賊行為に当たらないとして,
3265 何らの取締りも行わなかった。
3266
3267 それどころ
3268 か,
3269 A国の海上警察機関が漁船Yをタラ資源保存実施法に違反したとして拿捕し,
3270 その船長と乗組
3271 員を逮捕した。
3272
3273
3274 大きな外交問題に発展したこの事件が国際司法裁判所(以下「ICJ」という。
3275
3276 )に提訴される
3277 ことを恐れたA国は,
3278 一旦,
3279 国際司法裁判所規程の選択条項受諾宣言を撤回した。
3280
3281 その後,
3282 A国は,
3283
3284 「タラに関するA国が制定した国内法及びこうした国内法の執行から生じた,
3285 またはそれらに関す
3286 る紛争」をICJの強制管轄権から除外する旨の留保を付した新たな選択条項受諾宣言を行った。
3287
3288
3289 これに対し,
3290 B国は,
3291 当初,
3292 外交交渉による問題の解決を目指したが,
3293 船長らの解放の見込みが
3294 ないと判断して,
3295 船長と乗組員の即時釈放を求める仮保全措置とA国の行為の国際法違反の認定と
3296 損害賠償を求めて,
3297 本事件をICJに提訴した。
3298
3299 これに対して,
3300 A国は,
3301 自らの留保を理由にIC
3302 Jの管轄権を争う先決的抗弁を提起した。
3303
3304
3305 以上の事実を基に,
3306 以下の設問に答えなさい。
3307
3308
3309 〔設
3310
3311 問〕
3312
3313 1.A国は,
3314 公海上に禁漁区を設定した上,
3315 タラ資源保存実施法に基づき,
3316 B国漁船Yを拿捕し,
3317
3318 その船長と乗組員を逮捕したが,
3319 これらのA国の行為は国際法上許容されるかについて論じな
3320 さい。
3321
3322
3323 2.環境保護団体Xの行為を海賊行為として取り締まるようにとのB国の主張に対して,
3324 A国の
3325 立場からは,
3326 国際法上,
3327 どのような反論が可能であるかについて論じなさい。
3328
3329
3330 3.A国が選択条項受諾宣言に付した留保による先決的抗弁が認められるかについて論じなさい。
3331
3332
3333 - 34 -
3334
3335 〔第2問〕(配点:50)
3336 A国は,
3337 総人口のうち60%がX民族,
3338 30%がY民族,
3339 残りの10%がそれ以外の民族によっ
3340 て構成されている国である。
3341
3342 A国と陸地の国境を接するB国は,
3343 Y民族が総人口の80%を占めて
3344 いる。
3345
3346 C国は,
3347 A国及びB国と地理的に遠く離れているが,
3348 B国とは歴史的な関係が深く,
3349 現在も
3350 政治的及び経済的に緊密な友好関係にある。
3351
3352 A国,
3353 B国及びC国は,
3354 いずれも国連加盟国である。
3355
3356
3357 A国では,
3358 長い間,
3359 Y民族を中心とする政権が続き,
3360 多様な民族の融和を図る政策が採られてい
3361 た。
3362
3363 A国とB国の間では,
3364 人の交流が活発であり,
3365 多くのB国籍のY民族の人々がA国に居住し,
3366
3367 経済活動を行っていた。
3368
3369 Y民族であるB国籍の甲も,
3370 A国の首都に長く居住し,
3371 幅広い経済活動を
3372 行っていた著名な企業経営者であった。
3373
3374
3375 しかし,
3376 近年になって,
3377 A国では,
3378 クーデターが起き,
3379 X民族主義を掲げる新政権が誕生した。
3380
3381
3382 A国の新政権は,
3383 その成立以降,
3384 X民族を優遇する政策を推し進めるようになり,
3385 A国に居住する
3386 B国籍のY民族の人々の経済活動にも様々な制限を課すようになった。
3387
3388 そして,
3389 A国の当局は,
3390 A
3391 国の外国為替法に違反する外国送金を行ったとの容疑で甲を逮捕した。
3392
3393 甲は,
3394 同法に何ら違反して
3395 いないと主張したが,
3396 その主張は認められず,
3397 罰金と国外退去処分の判決を受けた。
3398
3399 さらに,
3400 甲が
3401 B国籍であることを理由に,
3402 上訴も認められず,
3403 この判決は確定した。
3404
3405 A国内の甲の財産は罰金の
3406 徴収のために差し押さえられ,
3407 甲は国外退去処分となった。
3408
3409 A国によるこれらの措置によって,
3410 甲
3411 が経営していたA国内の企業は実質的に破綻した。
3412
3413 なお,
3414 A国の法制度では,
3415 判決の確定後,
3416 これ
3417 に対する救済手段は,
3418 残されていない。
3419
3420
3421 他方,
3422 Y民族の旧政権を中心とする勢力は,
3423 クーデター後,
3424 A国において,
3425 「Y民族戦線」と名
3426 乗り,
3427 B国政府から戦闘の訓練,
3428 武器の供与及び大規模な財政的支援を受けた反政府活動を行うよ
3429 うになった。
3430
3431 これらの支援により,
3432 「Y民族戦線」は,
3433 B国と国境を接するA国領域内の地域を支
3434 配するようになった。
3435
3436 これに対し,
3437 A国政府は,
3438 反政府活動の鎮圧のために大規模な軍隊を同地域
3439 に派遣し,
3440 「Y民族戦線」との間の武力衝突が激化した。
3441
3442 これを受けて,
3443 A国との国境付近のB国
3444 の複数の町の住民(B国籍者)の中には,
3445 「Y民族戦線」の構成員をかくまったり,
3446 その戦闘に参
3447 加したりする者が出てきた。
3448
3449 これに対し,
3450 A国軍は,
3451 B国領域内のそれらの町を武力攻撃の対象と
3452 するようになり,
3453 その結果,
3454 B国の一般住民に多数の死傷者が出る事態が生じた。
3455
3456 この事態を受け
3457 て,
3458 B国は,
3459 A国による武力攻撃に関し,
3460 C国に対し軍事介入を要請した。
3461
3462 これに応じて,
3463 C国は,
3464
3465 B国に対する武力攻撃の根拠地となっているA国領域内のA国軍軍事基地を空爆した。
3466
3467
3468 以上の事実を基に,
3469 以下の設問に答えなさい。
3470
3471
3472 〔設
3473
3474 問〕
3475
3476 1.甲に対するA国の措置に関して,
3477 B国がA国に対してどのような国際法上の主張を行い得る
3478 かを論じなさい。
3479
3480
3481 2.「Y民族戦線」の活動について,
3482 B国が国際法上の責任を問われ得るかを論じなさい。
3483
3484
3485 3.C国によるA国領域内の軍事基地に対する空爆行為を国際法上どのように正当化できるかを,
3486
3487 C国の立場から論じなさい。
3488
3489
3490
3491 - 35 -
3492
3493 - 36 -
3494
3495 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
3496
3497 - 37 -
3498
3499 [国際関係法(私法系)]
3500 〔第1問〕(配点:50)
3501 共に日本に住所を有する夫婦AとBは,
3502 同じく日本に住所を有するCの非嫡出子D(満5歳)を
3503 養子に迎えたいと考えている。
3504
3505 Cも,
3506 それを承諾している。
3507
3508 国際裁判管轄権については日本にある
3509 ものとして,
3510 下記の設問に答えよ。
3511
3512
3513 〔設問1〕
3514 AとBが共に甲国籍を,
3515 Dが日本国籍をそれぞれ有する場合,
3516 AとBは,
3517 Dとの養子縁組を日
3518 本において有効に行うことができるか。
3519
3520 甲国民法が以下に記すような決定型養子縁組制度のみを
3521 定め,
3522 ここでは反致は成立しないものとして,
3523 準拠法に留意しつつ論じなさい。
3524
3525
3526 【甲国民法】
3527 @
3528
3529 養子縁組をするには,
3530 家事裁判所の決定によらなければならない。
3531
3532
3533
3534 A
3535
3536 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は,
3537 養子縁組によって終了する。
3538
3539
3540
3541 〔設問2〕
3542 AとDが日本国籍を,
3543 Bが甲国籍をそれぞれ有し,
3544 かつAとBは,
3545 Dとの養子縁組に当たり,
3546
3547 CとDの親子関係を維持したいと考えている。
3548
3549 AとBは,
3550 日本においてこのような養子縁組をD
3551 との間で行うことができるか。
3552
3553 上記の甲国民法に加えて,
3554 甲国国際私法が,
3555 養子縁組について,
3556
3557 以下に記すようないわゆる管轄権的アプローチ(管轄権的構成)を定めているものとして,
3558 準拠
3559 法に留意しつつ論じなさい。
3560
3561
3562 【甲国国際私法】
3563 B
3564
3565 裁判所は,
3566 養親となるべき者の住所が国内にある場合は,
3567 その養子縁組決定の国際裁判管轄
3568 権を有する。
3569
3570
3571
3572 C
3573
3574 養子縁組の決定は,
3575 法廷地法による。
3576
3577
3578
3579 〔設問3〕
3580 AとBが共に日本国籍を,
3581 Dが乙国籍をそれぞれ有し,
3582 AとBには,
3583 この養子縁組に反対して
3584 いる実子E(満15歳)がおり,
3585 さらには,
3586 乙国法が以下に記すような契約型養子縁組制度のみ
3587 を定めているものとして,
3588 下記の小問に答えなさい。
3589
3590
3591 【乙国国際私法】
3592 D
3593
3594 裁判所は,
3595 乙国国際私法の規定によって指定された国の実質法のみを適用する。
3596
3597
3598
3599 E
3600
3601 養子縁組は,
3602 養親となるべき者の本国法による。
3603
3604
3605
3606 【乙国民法】
3607 F
3608
3609 養子縁組は,
3610 合意した文書を届け出ることによって,
3611 その効力を生ずる。
3612
3613
3614
3615 G
3616
3617 養子となるべき者が満10歳未満の場合は,
3618 その実親が,
3619 養子に代わって養子縁組の承諾を
3620 することができる。
3621
3622
3623
3624 H
3625
3626 養親となるべき者に満10歳以上の子がいる場合,
3627 養子縁組をするには,
3628 その子の同意を得
3629 なければならない。
3630
3631
3632
3633 〔小問1〕
3634 この養子縁組には,
3635 いずれの国の法が適用されるか。
3636
3637
3638 〔小問2〕
3639 法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)第31条第1項後段に定める要件につ
3640 いて乙国法が適用されるとして,
3641 AとBは,
3642 この養子縁組を日本において有効に行うことがで
3643 きるか。
3644
3645
3646 - 38 -
3647
3648 〔第2問〕(配点:50)
3649 X男は甲国に常居所を有する甲国人詩人であり,
3650 Y女は日本に常居所を有する日本人である。
3651
3652 X
3653 の弟A男は日本に居住しており,
3654 Yは過去にAと交際していた。
3655
3656
3657 Yは,
3658 日本において日本語の小説(以下「被告小説」という。
3659
3660 )を執筆し,
3661 日本のインターネッ
3662 トコンテンツプロバイダーC社の運営しているブログにこれを公表した。
3663
3664 被告小説は,
3665 いわゆるモ
3666 デル小説であり,
3667 AやXをモデルとしている(Xがモデルであることには当事者間に争いがな
3668 い。
3669
3670 )。
3671
3672 被告小説中には,
3673 Xが甲国において出版した詩集に掲載されている詩(以下「本件詩」とい
3674 う。
3675
3676 )の日本語訳が無断で掲載されているほか,
3677 Xに窃盗癖があるとの記述や,
3678 Xが精神疾患を患
3679 っていたとの記述もあった。
3680
3681
3682 Xは,
3683 Cに対して被告小説の削除依頼をし,
3684 それは削除された。
3685
3686 しかし,
3687 被告小説は,
3688 削除され
3689 るまでの間,
3690 甲国及び日本において,
3691 Xの知人たちを含む多数の人々に閲覧されていた。
3692
3693 Xは,
3694 Y
3695 に損害賠償を求めて交渉したが,
3696 Yはこれに応じない。
3697
3698
3699 下記の〔設問1〕〔設問2〕は,
3700 それぞれ,
3701 この事件がこの後異なった経過をたどったことを前
3702 提とする独立の問題である。
3703
3704
3705 〔設問1〕
3706 Xは,
3707 Yに対して以下のような訴えを日本の裁判所に提起した。
3708
3709
3710 @
3711
3712 上記の窃盗癖の記述がXの名誉を毀損すると主張して慰謝料を請求した。
3713
3714
3715
3716 A
3717
3718 上記の精神疾患の記述がXのプライバシー権を侵害すると主張して慰謝料を請求した。
3719
3720
3721
3722 B
3723
3724 本件詩の翻訳の掲載がXの有していた本件詩に関する日本における著作権及び甲国における
3725 著作権(具体的には,
3726 著作権に含まれる支分権の1つである翻訳権)を侵害すると主張して,
3727
3728 損害賠償を請求した。
3729
3730
3731 上記の各請求について判断するに当たり適用すべき準拠法の決定について論じなさい。
3732
3733 国際裁
3734
3735 判管轄権について論じる必要はない。
3736
3737 なお,
3738 甲国は,
3739 文学的及び美術的著作物の保護に関するベ
3740 ルヌ条約パリ改正条約(昭和50年条約第4号)の同盟国である。
3741
3742
3743 (参照条文)文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(昭和50年条約第4
3744 号)(抜粋)
3745 第5条〔保護の原則〕
3746
3747
3748 著作者は,
3749 この条約によつて保護される著作物に関し,
3750 その著作物の本国以外の同盟国におい
3751 て,
3752 その国の法令が自国民に現在与えており又は将来与えることがある権利及びこの条約が特に
3753 与える権利を享有する。
3754
3755
3756
3757
3758
3759 の権利の享有及び行使には,
3760 いかなる方式の履行をも要しない。
3761
3762 その享有及び行使は,
3763 著作
3764 物の本国における保護の存在にかかわらない。
3765
3766 したがつて,
3767 保護の範囲及び著作者の権利を保全
3768 するため著作者に保障される救済の方法は,
3769 この条約の規定によるほか,
3770 専ら,
3771 保護が要求され
3772 る同盟国の法令の定めるところによる。
3773
3774
3775
3776
3777
3778 著作物の本国における保護は,
3779 その国の法令の定めるところによる。
3780
3781 もつとも,
3782 この条約によ
3783 つて保護される著作物の著作者がその著作物の本国の国民でない場合にも,
3784 その著作者は,
3785 その
3786 著作物の本国において内国著作者と同一の権利を享有する。
3787
3788
3789
3790 (以下略)
3791 〔設問2〕
3792 Xは,
3793 Yに対し,
3794 被告小説中のXの窃盗癖に関する記述がXの名誉を毀損すると主張して,
3795 甲
3796 国の裁判所に不法行為に基づく慰謝料を請求する訴えを提起した。
3797
3798
3799 - 39 -
3800
3801 Yは,
3802 これに応訴しないでいたところ,
3803 甲国裁判所は甲国法を準拠法として,
3804 X勝訴の判決
3805 (以下「本件外国判決」という。
3806
3807 )を言い渡し,
3808 本件外国判決は確定した。
3809
3810
3811 しかし,
3812 Yは甲国には財産を有していなかったので,
3813 Xは,
3814 日本の裁判所に本件外国判決に基
3815 づく執行判決を求める訴えを提起した。
3816
3817
3818 本件外国判決が日本における執行判決に係る他の要件を全て満たしているとして,
3819 次の各小問
3820 に答えなさい。
3821
3822 次の各小問は,
3823 いずれも独立した別個の問題である。
3824
3825
3826 〔小問1〕
3827 本件外国判決は,
3828 下記の甲国民法P条を適用し,
3829 慰謝料に加えてその3倍程度の金額の懲罰
3830 的損害賠償請求も認容したものであった。
3831
3832
3833 そこで,
3834 Xは,
3835 日本の裁判所において,
3836 本件外国判決に基づき,
3837 慰謝料及び懲罰的損害賠償
3838 の双方について執行判決を求めている。
3839
3840
3841 Xの執行判決請求は認められるか。
3842
3843
3844 なお,
3845 甲国法上,
3846 懲罰的損害賠償を得た者には,
3847 その一部を国,
3848 州その他の公的団体に納め
3849 る義務はなく,
3850 その使途にも制限はない。
3851
3852
3853 【甲国民法】
3854 P条
3855
3856 契約から生じる義務以外の義務への違反に基づく訴訟においては,
3857 明白かつ確信を抱く
3858
3859 に足る証拠によって,
3860 被告が抑圧,
3861 詐欺又は害意ある行為を犯したことが証明された場合に
3862 は,
3863 原告は,
3864 現実の損害に加えて,
3865 見せしめのため被告に懲罰を科すための損害賠償を請求
3866 することができる。
3867
3868
3869 〔小問2〕
3870 本件外国判決に係る訴訟の訴状及び期日呼出状は,
3871 甲国法に従い,
3872 いずれもXの代理人弁護
3873 士からYに対し,
3874 日本語への翻訳文を添付し,
3875 訴訟に対応できる時間的余裕をもって,
3876 国際書
3877 留郵便によって直接郵送されていた。
3878
3879
3880 Xの執行判決請求は認められるか。
3881
3882
3883
3884 - 40 -
3885
3886