1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [刑
7
8 法]
9
10 以下の事例に基づき,
11 甲の罪責について論じなさい(Aに対する詐欺(未遂)罪及び特別法違反の点は除く。
12
13
14 )
15 。
16
17
18 1 不動産業者甲は,
19 某月1日,
20 甲と私的な付き合いがあり,
21 海外に在住し日本国内に土地(以下「本件土地」
22 という。
23
24 時価3000万円)を所有する知人Vから,
25 Vが登記名義人である本件土地に抵当権を設定してV
26 のために1500万円を借りてほしいとの依頼を受けた。
27
28
29 甲は,
30 同日,
31 それを承諾し,
32 Vから同依頼に係る代理権を付与され,
33 本件土地の登記済証や委任事項欄の
34 記載がない白紙委任状等を預かった。
35
36
37 甲は,
38 銀行等から合計500万円の借金を負っており,
39 その返済期限を徒過し,
40 返済を迫られている状況
41 にあったことから,
42 本件土地の登記済証等をVから預かっていることやVが海外に在住していることを奇
43 貨として,
44 本件土地をVに無断で売却し,
45 その売却代金のうち1500万円を借入金と称してVに渡し,
46
47 残金を自己の借金の返済に充てようと考えた。
48
49
50 そこで,
51 甲は,
52 同月5日,
53 本件土地付近の土地を欲しがっていた知人Aに対し,
54
55 「知人のVが土地を売り
56 たがっていて,
57 自分が代理人としてその土地の売却を頼まれているんです。
58
59 その土地は,
60 Aさんが欲しが
61 っていた付近の土地で,
62 2000万円という安い値段なので買いませんか。
63
64
65 」と言い,
66 Aは,
67 甲の話を信用
68 して本件土地を購入することとした。
69
70
71 その際,
72 甲とAは,
73 同月16日にAが2000万円を甲に渡し,
74 それと引き換えに,
75 甲が所有権移転登記
76 に必要な書類をAに交付し,
77 同日に本件土地の所有権をAに移転させる旨合意した。
78
79 甲は,
80 同月6日,
81 A
82 方に行き,
83 同所で,
84 本件土地の売買契約書2部の売主欄にいずれも「V代理人甲」と署名してAに渡し,
85
86 Aがそれらを確認していずれの買主欄にも署名し,
87 このように完成させた本件土地の売買契約書
88 2部のうち1部を甲に戻した(甲のAとの間の行為について表見代理に関する規定の適用はない
89 ものとする。
90
91 )。
92
93
94 2 その後,
95 Vは,
96 同月13日,
97 所用により急遽帰国したが,
98 同日,
99 Aから本件土地に関する問い合わせを受
100 けたことで甲の行動を知って激怒し,
101 同月14日,
102 甲を呼び付け,
103 甲に預けていた本件土地の登記済証や白
104 紙委任状等を回収した。
105
106 その際,
107 Vは,
108 甲に対し,
109
110 「俺の土地を勝手に売りやがって。
111
112 今すぐAの所に行っ
113 て売買契約書を回収してこい。
114
115 明後日までに回収できなければ,
116 お前のことを警察に通報するからな。
117
118
119 」と
120 怒鳴った。
121
122
123 甲は,
124 同月14日,
125 Aに会いに行き,
126 本件土地の売買契約書を回収させてほしいと伝えたが,
127 Aからこ
128 れを断られた。
129
130
131 3
132
133 甲は,
134 自己に対して怒鳴っていたVの様子から,
135 同売買契約書をAから回収できなかったことをVに伝
136 えれば,
137 間違いなくVから警察に通報され,
138 逮捕されることになるし,
139 不動産業(宅地建物取引業)の免許
140 を取り消されることになるなどと考え,
141 それらを免れるには,
142 Vを殺すしかないと考えた。
143
144
145 そこで,
146 甲は,
147 Vを呼び出した上,
148 Vの首を絞めて殺害し,
149 その死体を海中に捨てることを計画し,
150 同
151 月15日午後10時頃,
152 電話でVに「話がある。
153
154
155 」と言って,
156 日本におけるVの居住地の近くにある公園に
157 Vを呼び出し,
158 その頃,
159 同所で,
160 Vの首を背後から力いっぱいロープで絞めた。
161
162
163 それによりVは失神したが,
164 甲は,
165 Vが死亡したものと軽信し,
166 その状態のVを自車に載せた上,
167 同車
168 で前記公園から約1キロメートル離れた港に運び,
169 同日午後10時半頃,
170 同所で,
171 Vを海に落とした。
172
173 そ
174 の時点で,
175 Vは,
176 失神していただけであったが,
177 その状態で海に落とされたことにより間もなく溺死した。
178
179
180
181 - 2 -
182
183 [刑事訴訟法]
184 次の【事例】を読んで,
185 後記〔設問〕に答えなさい。
186
187
188 【事例】
189 令和元年6月5日午後2時頃,
190 H市L町内のV方において,
191 住居侵入,
192 窃盗事件(以下「本件
193 事件」という。
194
195 )が発生した。
196
197 外出先から帰宅したVは,
198 犯人がV方の机の引出しからV名義のク
199 レジットカードを盗んでいるのを目撃し,
200 警察に通報したが,
201 犯人はV方から逃走した。
202
203
204 警察官PとQは,
205 同月6日午前2時30分頃,
206 V方から8キロメートル離れたL町の隣町の路
207 上を徘徊する,
208 人相及び着衣が犯人と酷似する甲を認め,
209 本件事件の犯人ではないかと考え,
210 警
211 察官の応援要請をするとともに,
212 甲を呼び止め,
213 「ここで何をしているのか。
214
215 」などと尋ねたとこ
216 ろ,
217 甲は,
218 「仕事も家もなく,
219 寝泊りする場所を探しているところだ。
220
221 」と答えた。
222
223 また,
224 Pが甲
225 に,
226 「昨日の午後2時頃,
227 何をしていたか。
228
229 」と尋ねたのに対し,
230 甲は,
231 「覚えていない。
232
233 」旨曖昧
234 な答えに終始した。
235
236 Pは,
237 最寄りのH警察署で本件事件について甲の取調べをしようと考え,
238 同
239 月6日午前3時頃,
240 「事情聴取したいので,
241 H警察署まで来てくれ。
242
243 」と甲に言ったが,
244 甲は,
245 黙
246 ったまま立ち去ろうとした。
247
248 その際,
249 甲のズボンのポケットから,
250 V名義のクレジットカードが
251 路上に落ちたため,
252 Pが,
253 「このカードはどうやって手に入れたのか。
254
255 」と甲に尋ねたところ,
256 甲
257 は,
258 「散歩中に拾った。
259
260 落とし物として届けるつもりだった。
261
262 」と述べて立ち去ろうとした。
263
264 そこ
265 で,
266 Pらは,
267 同日午前3時5分頃,
268 応援の警察官を含む4名の警察官で甲を取り囲んでパトカー
269 に乗車させようとしたが,
270 甲が,
271 「俺は行かないぞ。
272
273 」と言い,
274 パトカーの屋根を両手でつかんで
275 抵抗したので,
276 Qが,
277 先にパトカーの後部座席に乗り込み,
278 甲の片腕を車内から引っ張り,
279 Pが,
280
281 甲の背中を押し,
282 後部座席中央に甲を座らせ,
283 その両側にPとQが甲を挟むようにして座った上,
284
285 パトカーを出発させ,
286 同日午前3時20分頃,
287 H警察署に到着した。
288
289
290 Pは,
291 H警察署の取調室において,
292 本件事件の概要と黙秘権を告げて甲の取調べを開始した。
293
294
295 甲は,
296 取調室から退出できないものと諦めて取調べには応じたものの,
297 本件事件への関与を否認
298 し続けた。
299
300 Pは,
301 同日午前7時頃,
302 H警察署に来てもらったVに,
303 取調室にいた甲を見せ,
304 甲が
305 本件事件の犯人に間違いない旨のVの供述を得た。
306
307 Pらは,
308 甲の発見時の状況やVの供述をまと
309 めた捜査報告書等の疎明資料を直ちに準備し,
310 同日午前8時,
311 H簡易裁判所に本件事件を被疑事
312 実として通常逮捕状の請求を行い,
313 同日午前9時,
314 その発付を受け,
315 同日午前9時10分,
316 甲を
317 通常逮捕した。
318
319
320 甲は,
321 同月7日午前8時30分,
322 H地方検察庁検察官に送致され,
323 送致を受けた検察官は,
324 同日
325 午後1時,
326 H地方裁判所裁判官に甲の勾留を請求し,
327 同日,
328 甲は,
329 同被疑事実により,
330 勾留された。
331
332
333 〔設問〕
334 下線部の勾留の適法性について論じなさい。
335
336 ただし,
337 刑事訴訟法第60条第1項各号該当性及
338 び勾留の必要性については論じなくてよい。
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