1 論文式試験問題集
2 [民法・商法・民事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [民
7
8 法]
9
10 次の文章を読んで,
11 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
12
13
14 【事実】
15 1.Aは早くに妻と死別したが,
16 成人した一人息子のBはAのもとから離れ,
17 音信がなくなってい
18 た。
19
20 Aは,
21 いとこのCに家業の手伝いをしてもらっていたが,
22 平成20年4月1日,
23 長年のCの
24 支援に対する感謝として,
25 ほとんど利用していなかったA所有の更地(時価2000万円。
26
27 以下
28 「本件土地」という。
29
30 )をCに贈与した。
31
32 同日,
33 本件土地はAからCに引き渡されたが,
34 本件土
35 地の所有権の移転の登記はされなかった。
36
37
38 2.Cは,
39 平成20年8月21日までに本件土地上に居住用建物(以下「本件建物」という。
40
41 )を
42 建築して居住を開始し,
43 同月31日には,
44 本件建物についてCを所有者とする所有権の保存の
45 登記がされた。
46
47
48 3.平成28年3月15日,
49 Aが遺言なしに死亡し,
50 唯一の相続人であるBがAを相続した。
51
52 Bは,
53
54 Aの財産を調べたところ,
55 Aが居住していた土地建物のほかに,
56 A所有名義の本件土地がある
57 こと,
58 また,
59 本件土地上にはCが居住するC所有名義の本件建物があることを知った。
60
61
62 4.Bは,
63 多くの借金を抱えており,
64 更なる借入れのための担保を確保しなければならなかった。
65
66
67 そこで,
68 Bは,
69 平成28年4月1日,
70 本件土地について相続を原因とするAからBへの所有権の
71 移転の登記をした。
72
73 さらに,
74 同年6月1日,
75 Bは,
76 知人であるDとの間で,
77 1000万円を借り
78 受ける旨の金銭消費貸借契約を締結し,
79 1000万円を受領するとともに,
80 これによってDに対
81 して負う債務(以下「本件債務」という。
82
83 )の担保のために本件土地に抵当権を設定する旨の抵
84 当権設定契約を締結し,
85 同日,
86 Dを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされた。
87
88
89 5.BD間で【事実】4の金銭消費貸借契約及び抵当権設定契約が締結された際,
90 Bは,
91 Dに対し,
92
93 本件建物を所有するCは本件土地を無償で借りているに過ぎないと説明した。
94
95 しかし,
96 Dは,
97
98 Cが本件土地の贈与を受けていたことは知らなかったものの,
99 念のため,
100 対抗力のある借地権
101 の負担があるものとして本件土地の担保価値を評価し,
102 Bに対する貸付額を決定した。
103
104
105 〔設問1〕
106 Bが本件債務の履行を怠ったため,
107 平成29年3月1日,
108 Dは,
109 本件土地について抵当権の実
110 行としての競売の申立てをした。
111
112 競売手続の結果,
113 本件土地は,
114 D自らが950万円(本件債務の
115 残額とほぼ同額)で買い受けることとなり,
116 同年12月1日,
117 本件土地についてDへの所有権の移
118 転の登記がされた。
119
120 同月15日,
121 Dが,
122 Cに対し,
123 本件建物を収去して本件土地を明け渡すよう請
124 求する訴訟を提起したところ,
125 Cは,
126 Dの抵当権が設定される前に,
127 Aから本件土地を贈与された
128 のであるから,
129 自分こそが本件土地の所有者である,
130 仮に,
131 Dが本件土地の所有者であるとしても,
132
133 自分には本件建物を存続させるための法律上の占有権原が認められるはずであると主張した。
134
135
136 この場合において,
137 DのCに対する請求は認められるか。
138
139 なお,
140 民事執行法上の問題について
141 は論じなくてよい。
142
143
144 【事実(続き)】(
145 〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
146
147
148 6.平成30年10月1日,
149 Cは,
150 本件土地の所有権の移転の登記をしようと考え,
151 本件土地の登
152 記事項証明書を入手したところ,
153 AからBへの所有権の移転の登記及びDを抵当権者とする抵
154 当権の設定の登記がされていることを知った。
155
156
157 〔設問2〕
158
159 - 2 -
160
161 平成30年11月1日,
162 Cは,
163 Bに対し,
164 本件土地の所有権移転登記手続を請求する訴訟を,
165
166 Dに対し,
167 本件土地の抵当権設定登記の抹消登記手続を請求する訴訟を,
168 それぞれ提起した。
169
170
171 このうち,
172 CのDに対する請求は認められるか。
173
174
175
176 - 3 -
177
178 [商
179
180 法]
181
182 次の文章を読んで,
183 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
184
185
186 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
187
188 )は,
189 加工食品の輸入販売業を営む取締役会設置会社であり,
190
191 かつ,
192 監査役設置会社である。
193
194 甲社は,
195 種類株式発行会社ではなく,
196 その定款には,
197 譲渡による甲
198 社株式の取得について甲社の取締役会の承認を要する旨の定めがあるが,
199 株主総会の定足数及び決
200 議要件について,
201 別段の定めはない。
202
203
204 2.甲社の発行済株式の総数は200株であり,
205 平成28年12月1日に創業者Aが急死するまでは,
206
207 Aが100株を,
208 Aの妻Bが全株式を有し代表取締役を務める乙株式会社(以下「乙社」という。
209
210
211 が40株を,
212 Aの長男Cが30株を,
213 Aの長女Dが20株を,
214 Aの二女Eが10株を,
215 それぞれ有
216 していた。
217
218
219 3.甲社の定款には,
220 取締役は3人以上,
221 監査役は1人以上とする旨の定めがあり,
222 また,
223 取締役及
224 び監査役の任期をいずれも選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株
225 主総会の終結の時までとする旨の定めがある。
226
227 Aが死亡する直前では,
228 A及びCが甲社の代表取締
229 役を,
230 D及びEが取締役を,
231 甲社の従業員出身Fが監査役を,
232 それぞれ務めていた。
233
234 甲社の役員構
235 成については,
236 Aの死亡後も,
237 Aが死亡により取締役を退任したこと以外に変更はない。
238
239
240 4.Aの死亡後,
241 Aの全相続人であるB,
242 C,
243 D及びEが出席した遺産分割協議の場において,
244 Cは,
245
246 Aが有していた甲社株式100株を全てCが相続する案を提示した。
247
248 しかし,
249 Dが強く反対したた
250 め遺産分割協議が調わず,
251 当該株式については株主名簿の名義書換や共有株式についての権利を行
252 使すべき者の指定がされないままであった。
253
254
255 5.この頃から甲社の経営方針をめぐるCとDの対立が激しくなった。
256
257 Cは,
258 何かにつけてDを疎ん
259 じ,
260 甲社の経営を独断で行うようになった。
261
262 Cは,
263 甲社の経営の多角化を積極的に進めるために,
264
265 知人の経営コンサルタントに多額の報酬を支払って雑貨の輸入販売業にも進出した。
266
267 しかし,
268 その
269 業績は思うように伸びず,
270 ついには多額の損失が生ずるようになった。
271
272 Dは,
273 このままでは甲社の
274 経営が破綻するのではないかと恐れ,
275 平成31年3月頃,
276 Cの経営手腕の未熟さについてBに訴え
277 た。
278
279 Bは,
280 CとDが協力して甲社を経営していくことを望んでいたが,
281 他方では,
282 Cの経営手腕に
283 不安を抱いていたので,
284 この際,
285 DがCに代わって甲社の経営を担うのもやむを得ないとの考えに
286 至り,
287 Dを支援することとした。
288
289
290 6.平成31年4月22日,
291 乙社は,
292 Dが全株式を有し代表取締役を務める丙株式会社(以下「丙社」
293 という。
294
295 )との間で,
296 乙社を分割会社,
297 丙社を承継会社とする吸収分割(以下「本件会社分割」と
298 いう。
299
300 )を行い,
301 これにより,
302 乙社が有する甲社株式40株を全て丙社に承継させた。
303
304 丙社は甲社
305 に対して株主名簿の名義書換請求をしたが,
306 Cは甲社を代表して本件会社分割による甲社株式の取
307 得が甲社の取締役会の承認を得ていないことを理由にこれを拒絶した。
308
309 このことがあってから,
310
311 は,
312 Dを強く警戒するようになり,
313 Dを甲社の経営から排除することを考え始めた。
314
315
316 7.令和元年5月9日にCの招集により開催された甲社の取締役会には,
317 C,
318 D,
319 E及びFが出席し
320 た。
321
322 定例の報告が終わった後,
323 Cは,
324 決議事項として予定されていなかったDの取締役からの解任
325 を目的とする臨時株主総会の開催を提案した。
326
327 驚いたDは激しく抵抗したが,
328 Cは決議について特
329 別の利害関係を有するという理由でDを議決に参加させることなく,
330 C及びEの賛成をもって,
331
332 の取締役からの解任を目的とする臨時株主総会を同月20日午前10時に甲社本店会議室で開催す
333 ることを決議した(以下「本件取締役会決議」という。
334
335 )。
336
337
338 〔設問1〕
339 上記1から7までを前提として,
340 本件取締役会決議の効力を争うためにDの立場において考えら
341
342 - 4 -
343
344 れる主張及びその主張の当否について,
345 論じなさい。
346
347
348 8.Cは,
349 令和元年5月10日,
350 本件取締役会決議に基づき,
351 乙社,
352 C,
353 D及びEに対し,
354 臨時株主
355 総会の招集通知を発した。
356
357 同月20日午前10時に甲社本店会議室で開催された臨時株主総会(以
358 下「本件株主総会」という。
359
360 )には,
361 C,
362 D及びEが出席したが,
363 乙社を代表するBは病気と称し
364 て出席しなかった。
365
366 本件株主総会では,
367 定款の定めに基づき,
368 Cが議長となり,
369 Dを取締役から解
370 任する旨の議案につき,
371 C及びEは賛成し,
372 Dは反対した。
373
374 Dは,
375 丙社を代表して丙社が本件会社
376 分割により取得した甲社株式40株についても議決権を行使して当該議案につき反対する旨主張し
377 た。
378
379 しかし,
380 議長であるCは,
381 これを認めず,
382 行使された議決権60個のうち40個の賛成があっ
383 たとして,
384 Dを取締役から解任する旨の決議の成立を宣言した(以下「本件株主総会決議」という。
385
386 )。
387
388
389 〔設問2〕
390 本件株主総会決議の効力を否定するためにDの立場において考えられる主張(〔設問1〕の本件
391 取締役会決議の効力に関する事項を除く。
392
393 )及びその主張の当否について,
394 論じなさい。
395
396
397
398 - 5 -
399
400 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,
401 1:1)
402 次の文章を読んで,
403 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
404
405
406 【事例】
407 Y株式会社(以下「Y」という。
408
409 )は,
410 甲土地を所有していた。
411
412 X1は,
413 自宅兼店舗を建築する
414 予定で土地を探し,
415 甲土地が空き地となっていたことから,
416 購入を考えた。
417
418 X1は,
419 娘Aの夫で事
420 業を引き継がせようと考えていたX2に相談し,
421 共同で購入することとして,
422 甲土地の購入を決め
423 た。
424
425 X1は,
426 甲土地の購入に当たり,
427 Yの代表取締役Bと交渉し,
428 X1とX2(以下「X1ら」と
429 いう。
430
431 )は,
432 Yとの間で甲土地の売買契約を締結した。
433
434 X1らは,
435 売買代金を支払ったが,
436 Yの方
437 で登記手続を全く進めようとしない。
438
439 そこで,
440 X1らは,
441 Yを相手取って,
442 甲土地について,
443 売買
444 契約に基づく所有権移転登記手続を求める訴え(以下「本件訴え」という。
445
446 )を提起した。
447
448
449 〔設問1〕
450 X1は,
451 本件訴えの提起に際して,
452 体調が優れなかったこともあり,
453 X2に訴訟への対応を任せ
454 ることとした。
455
456 そのため,
457 専らX2がX1らの訴訟代理人である弁護士Lとの打合せを行って本件
458 訴えを提起したが,
459 X1は,
460 Yに訴状が送達される前に急死してしまった。
461
462 X1の唯一の相続人は
463 Aであった。
464
465
466 X2は,
467 X1から自分に訴訟対応を任されたという意識があったため,
468 X1の死亡の事実をLに
469 伝えなかった。
470
471 訴訟の手続はそのまま進行したが,
472 Yは,
473 争点整理手続終了近くになって,
474 X1の
475 死亡の事実を知った。
476
477
478 Yは,
479 X1の死亡の事実を知って,
480 「本件訴えは却下されるべきである。
481
482 」と主張した。
483
484
485 このYの主張に対し,
486 X2側としてどのような対応をすべきであるかについて,
487 論じなさい。
488
489
490 【事例(続き)】(
491 〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
492
493
494 本件訴えに係る訴訟(以下「前訴」という。
495
496 )においては,
497 唯一の争点として甲土地の売買契約
498 の成否が争われた。
499
500 裁判所は,
501 X1ら主張の売買契約の成立を認め,
502 X1らの請求を全て認容する
503 判決(以下「前訴判決」という。
504
505 )を言い渡し,
506 この判決は確定した。
507
508
509 しかし,
510 Bは,
511 前訴の口頭弁論終結前に,
512 甲土地について処分禁止の仮処分がされていないこと
513 を奇貨として,
514 強制執行を免れる目的で,
515 Bの息子Zと通謀し,
516 YからZに対する贈与を原因とす
517 る所有権移転登記手続をした。
518
519 X1らは,
520 前訴判決の確定後にその事実を知った。
521
522 そこで,
523 X1ら
524 は,
525 YとZとの間の贈与契約は虚偽表示によりされたものであると主張し,
526 Zに対して甲土地の所
527 有権移転登記手続を求める訴え(以下,
528 この訴えに係る訴訟を「後訴」という。
529
530 )を提起した。
531
532
533 は,
534 後訴においてX1らとYとの間の売買契約は成立していないと主張した。
535
536
537 〔設問2〕
538 X1らは,
539 上記のようなZの主張は前訴判決によって排斥されるべきであると考えている。
540
541 X1
542 らの立場から,
543 Zの主張を排斥する理論構成を展開しなさい。
544
545 ただし,
546 「信義則違反」及び「争点
547 効」には触れなくてよい。
548
549
550
551 - 6 -
552
553