1 令和元年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨
2 [憲
3
4 法]
5
6 次の文章を読んで,
7 後記の〔設問〕に答えなさい。
8
9
10 甲市は,
11 農業や農産品の加工を主産業とする小さな町である。
12
13 近年,
14 同市ではこれらの産業に
15 従事する外国人が急増しているが,
16 そのほとんどはA国出身の者である。
17
18 甲市立乙中学校は,
19 A国
20 民の集住地区を学区としており,
21 小規模校であることもあって生徒の4分の1がA国民となってい
22 る。
23
24 A国民のほとんどはB教という宗教の信者である。
25
26
27 XはA国民の女性であり,
28 乙中学校を卒業し,
29 甲市内の農産品加工工場で働いている。
30
31 Xの親
32 もA国民であり,
33 Xと同じ工場に勤務している。
34
35 この両名(以下「Xら」という。
36
37 )は熱心なB教
38 徒であり,
39 その戒律を忠実に守り,
40 礼拝も欠かさない。
41
42 B教の戒律によれば,
43 女性は家庭内以外に
44 おいては,
45 顔面や手など一部を除き,
46 肌や髪を露出し,
47 あるいは体型がはっきり分かるような服装
48 をしてはならない。
49
50 これはB教における重要な戒律であるとされている。
51
52
53 ところで,
54 Xが工場に勤務するようになった経緯として,
55 次のようなことがあった。
56
57 Xらは,
58
59 Xの中学校入学当初より毎年,
60 保健体育科目のうち水泳については,
61 戒律との関係で水着(学校指
62 定のものはもちろん,
63 肌の露出を最小限にしたものも含む。
64
65 )を着用することができず参加できな
66 いので,
67 プールサイドでの見学及びレポートの提出という代替措置をとるように要望していた。
68
69 な
70 お,
71 Xは,
72 水泳以外の保健体育の授業及びその他の学校生活については,
73 服装に関して特例が認め
74 られた上で他の生徒と同様に参加している。
75
76
77 しかし,
78 乙中学校の校長は,
79 検討の上,
80 水泳の授業については,
81 代替措置を一切とらないこと
82 とした。
83
84 その理由として,
85 まず,
86 信仰に配慮して代替措置をとることは教育の中立性に反するおそ
87 れがあり,
88 また,
89 代替措置の要望が真に信仰を理由とするものなのかどうかの判断が困難であると
90 した。
91
92 さらに,
93 上記のように,
94 乙中学校の生徒にはB教徒も相当割合含まれているところ,
95 戒律と
96 の関係で葛藤を抱きつつも水泳授業に参加している女子生徒もおり,
97 校長は,
98 Xらの要望に応える
99 ことはその意味でも公平性を欠くし,
100 仮にXらの要望に応えるとすると,
101 他のB教徒の女子生徒も
102 次々に同様の要望を行う可能性が高く,
103 それにも応えるとすれば,
104 見学者が増える一方で水泳実技
105 への参加者が減少して水泳授業の実施や成績評価に支障が生じるおそれがあるとも述べた。
106
107
108 Xは,
109 3年間の中学校在籍中に行われた水泳の授業には参加しなかったが,
110 自主的に見学をして
111 レポートを提出していた。
112
113 担当教員はこれを受領したものの,
114 成績評価の際には考慮しなかった。
115
116
117 調査書(一般に「内申書」と呼ばれるもの)における3年間の保健体育の評定はいずれも,
118 5段階
119 評価で低い方から2段階目の「2」であった。
120
121 Xは運動を比較的得意としているため,
122 こうした低
123 評価には上記の不参加が影響していることは明らかであり,
124 学校側もそのような説明を行っている。
125
126
127 Xは近隣の県立高校への進学を希望していたが,
128 入学試験において調査書の低評価により合格最低
129 点に僅かに及ばず不合格となり,
130 経済的な事情もあって私立高校に進学することもできず,
131 冒頭に
132 述べたとおり就労の道を選んだ。
133
134 客観的に見て,
135 保健体育科目で上記の要望が受け入れられていれ
136 ば,
137 Xは志望の県立高校に合格することができたと考えられる。
138
139
140 Xは,
141 戒律に従っただけであるのに中学校からこのような評価を受けたことに不満を持っており,
142
143 法的措置をとろうと考えている。
144
145
146 〔設問〕
147 必要に応じて対立する見解にも触れつつ,
148 この事例に含まれる憲法上の問題を論じなさい。
149
150
151 なお,
152 Xらに永住資格はないが,
153 適法に滞在しているものとする。
154
155 また,
156 学習指導要領上,
157 水泳
158
159 実技は中学校の各学年につき必修とされているものとする。
160
161
162
163 (出題の趣旨)
164 本問では,
165 主として@信教の自由に基づく一般的な義務の免除の可否,
166 A代替措
167 置を講じることの政教分離原則との関係など具体的な検討が問題となるほか,B教
168 育を受ける権利,
169 C外国人の人権享有主体性や未成年者の人権等の論点が含まれる。
170
171
172 判例としては,
173 剣道受講拒否事件(最高裁判所第二小法廷平成8年3月8日判決,
174
175 民集50巻3号469頁)を意識することが求められる。
176
177 もっとも,
178 事案には異な
179 るところが少なくないので,
180 直接参考になるとは限らず,
181 同事件との異同を意識し
182 つつ,
183 事案に即した検討が必要である。
184
185
186 @については,
187 水泳実技への参加とB教の教義との関係,
188 代替措置が認められな
189 いことによる結果の重大性などを事案に即して把握し,
190 信教の自由への影響の大き
191 さを的確に把握して,
192 判断枠組みを設定することが求められる。
193
194
195 Aは,
196 @で設定した判断枠組みに基づく具体的検討に当たるものである。
197
198 政教分
199 離原則との関係の点も含め,
200 代替措置をとらないことについて校長が示した理由が
201 詳しく述べられているので,
202 それに即して分析を進めることが必要である。
203
204
205 以上が必ず論じてもらいたい内容であり,
206 BCはそれに比較すると優先度は落ち
207 るが,
208 詳しく検討するためには必要な点である。
209
210 特に,
211 本件は,
212 正面からその侵害
213 を問題とするかどうかはともかく,
214 社会権である教育を受ける権利が関わってくる
215 事案である。
216
217 社会権は外国人には保障されないという一般論が,
218 学習権を背景とす
219 る教育を受ける権利との関係でも妥当するかという問題意識を感じてもらいたいと
220 ころである。
221
222
223
224 [行政法]
225 屋外広告物法は,
226 都道府県が条例により「屋外広告物」(常時又は一定の期間継続して屋外で公
227 衆に表示されるものであって,
228 看板,
229 立看板,
230 はり紙及びはり札並びに広告塔,
231 広告板,
232 建物その
233 他の工作物等に掲出され,
234 又は表示されたもの並びにこれらに類するもの)を規制することを認め
235 ており,
236 これを受けて,
237 A県は,
238 屋外広告物(以下「広告物」という。
239
240 )を規制するため,
241 A県屋
242 外広告物条例(以下「条例」という。
243
244 )を制定している。
245
246 条例は,
247 一定の地域,
248 区域又は場所につ
249 いて,
250 広告物又は広告物を掲出する物件(以下「広告物等」という。
251
252 )の表示又は設置が禁止され
253 ている禁止地域等としているが,
254 それ以外の条例第6条第1項各号所定の地域,
255 区域又は場所(以
256 下「許可地域等」という。
257
258 )についても,
259 広告物等の表示又は設置には,
260 同項により,
261 知事の許可
262 を要するものとしている。
263
264 そして,
265 同項及び第9条の委任を受けて定められたA県屋外広告物条例
266 施行規則(以下「規則」という。
267
268 )第10条第1項及び別表第4は,
269 各広告物等に共通する許可基
270 準を定め,
271 規則第10条第2項及び別表第5二は,
272 建築物等から独立した広告物等の許可基準を定
273 めている。
274
275
276 広告事業者であるBは,
277 A県内の土地を賃借し,
278 依頼主の広告を表示するため,
279 建築物等から
280 独立した広告物等である広告用電光掲示板(大型ディスプレイを使い,
281 店舗や商品のコマーシャル
282 映像を放映するもの。
283
284 以下「本件広告物」という。
285
286 )の設置を計画した。
287
288 そして,
289 当該土地が都市
290 計画区域内であり,
291 条例第6条第1項第1号所定の許可地域等に含まれているため,
292 Bは,
293 A県知
294 事に対し,
295 同項による許可の申請(以下「本件申請」という。
296
297 )をした。
298
299
300 本件広告物の設置が申請された地点(以下「本件申請地点」という。
301
302 )の付近には鉄道の線路が
303 あり,
304 その一部区間の線路と本件申請地点との距離は100メートル未満である。
305
306 もっとも,
307 当該
308 区間の線路は地下にあるため,
309 設置予定の本件広告物を電車内から見通すことはできない。
310
311 また,
312
313 本件申請地点は商業地域ではなく,
314 本件広告物は「自己の事務所等に自己の名称等を表示する広告
315 物等」には該当しない。
316
317 これらのことから,
318 A県の担当課は,
319 本件申請について,
320 規則別表第5二
321 (ハ)の基準(以下「基準1」という。
322
323 )に適合しない旨の判断をした。
324
325 他方,
326 規則別表第4及び
327 第5のその他の基準については適合するとの判断がされたことから,
328 担当課は,
329 Bに対し,
330 本件広
331 告物の設置場所の変更を指導したものの,
332 Bは,
333 これに納得せず,
334 設置場所の変更には応じていな
335 い。
336
337
338 一方,
339 本件申請がされたことは,
340 本件申請地点の隣地に居住するCの知るところとなった。
341
342 そ
343 して,
344 Cは,
345 本件広告物について,
346 派手な色彩や動きの速い動画が表示されることにより,
347 落ちつ
348 いた住宅地である周辺の景観を害し,
349 また,
350 明るすぎる映像が深夜まで表示されることにより,
351 本
352 件広告物に面した寝室を用いるCの安眠を害するおそれがあり,
353 規則別表第4二の基準(以下「基
354 準2」という。
355
356 )に適合しないとして,
357 これを許可しないよう,
358 A県の担当課に強く申し入れてい
359 る。
360
361
362 以上を前提として,
363 以下の設問に答えなさい。
364
365
366 なお,
367 条例及び規則の抜粋を【資料】として掲げるので,
368 適宜参照しなさい。
369
370
371 〔設問1〕
372 A県知事が本件申請に対して許可処分(以下「本件許可処分」という。
373
374 )をした場合,
375 Cは,
376 こ
377 れが基準2に適合しないとして,
378 本件許可処分の取消訴訟(以下「本件取消訴訟1」という。
379
380 )の
381 提起を予定している。
382
383 Cは,
384 本件取消訴訟1における自己の原告適格について,
385 どのような主張を
386 すべきか。
387
388 想定されるA県の反論を踏まえながら,
389 検討しなさい。
390
391
392 〔設問2〕
393
394 A県知事が本件広告物の基準1への違反を理由として本件申請に対して不許可処分(以下「本
395 件不許可処分」という。
396
397 )をした場合,
398 Bは,
399 本件不許可処分の取消訴訟(以下「本件取消訴訟2」
400 という。
401
402 )の提起を予定している。
403
404 Bは,
405 本件取消訴訟2において,
406 本件不許可処分の違法事由と
407 して,
408 基準1が条例に反して無効である旨を主張したい。
409
410 この点につき,
411 Bがすべき主張を検討し
412 なさい。
413
414
415
416 【資料】
417 ○
418
419 A県屋外広告物条例(抜粋)
420
421 (目的)
422 第1条
423
424 この条例は,
425 屋外広告物法に基づき,
426 屋外広告物(以下「広告物」という。
427
428 )及び屋外広告
429
430 業について必要な規制を行い,
431 もって良好な景観を形成し,
432 及び風致を維持し,
433 並びに公衆に対
434 する危害を防止することを目的とする。
435
436
437 (広告物の在り方)
438 第2条
439
440 広告物又は広告物を掲出する物件(以下「広告物等」という。
441
442 )は,
443 良好な景観の形成を阻
444
445 害し,
446 及び風致を害し,
447 並びに公衆に対し危害を及ぼすおそれのないものでなければならない。
448
449
450 (許可地域等)
451 第6条
452
453 次の各号に掲げる地域,
454 区域又は場所(禁止地域等を除く。
455
456 以下「許可地域等」という。
457
458 )
459
460 において,
461 広告物等を表示し,
462 又は設置しようとする者は,
463 規則で定めるところにより,
464 知事の
465 許可を受けなければならない。
466
467
468 一
469
470 都市計画区域
471
472 二
473
474 道路及び鉄道等に接続し,
475 かつ,
476 当該道路及び鉄道等から展望できる地域のうち,
477 知事が交
478 通の安全を妨げるおそれがあり,
479 又は自然の景観を害するおそれがあると認めて指定する区域
480 (第1号の区域を除く。
481
482 )
483
484 三,
485 四
486 五
487
488 略
489
490 前各号に掲げるもののほか,
491 知事が良好な景観を形成し,
492 若しくは風致を維持し,
493 又は公衆
494 に対する危害を防止するため必要と認めて指定する地域又は場所
495
496 2
497
498 略
499
500 (許可の基準)
501 第9条
502 ○
503
504 第6条第1項の規定による許可の基準は,
505 規則で定める。
506
507
508
509 A県屋外広告物条例施行規則(抜粋)
510
511 (趣旨)
512 第1条
513
514 この規則は,
515 A県屋外広告物条例(以下「条例」という。
516
517 )に基づき,
518 条例の施行に関し必
519
520 要な事項を定めるものとする。
521
522
523 (許可の基準)
524 第10条
525
526 条例第6条第1項の規定による許可の基準のうち,
527 各広告物等に共通する基準は,
528 別表第
529
530 4のとおりとする。
531
532
533 2
534
535 前項に規定するもののほか,
536 条例第6条第1項の規定による許可の基準は別表第5のとおりとす
537 る。
538
539
540
541 別表第4(第10条第1項関係)
542 一
543
544 地色に黒色又は原色(赤,
545 青及び黄の色をいう。
546
547 )を使用したことにより,
548 良好な景観の形成を
549 阻害し,
550 若しくは風致を害し,
551 又は交通の安全を妨げるものでないこと。
552
553
554
555 二
556
557 蛍光塗料,
558 発光塗料又は反射の著しい材料等を使用したこと等により,
559 良好な景観の形成を阻害
560 し,
561 若しくは風致を害し,
562 又は交通の安全を妨げるものでないこと。
563
564
565
566 別表第5(第10条第2項関係)
567 一
568
569 略
570
571 二
572
573 建築物等から独立した広告物等
574
575 (イ)
576
577 一表示面積は,
578 30平方メートル以下であること。
579
580
581
582 (ロ)
583
584 上端の高さは,
585 15メートル以下であること。
586
587
588
589 (ハ)
590
591 自己の事務所等に自己の名称等を表示する広告物等以外の広告物等について,
592 鉄道等までの
593 距離は,
594 100メートル(商業地域にあっては,
595 20メートル)以上であること。
596
597
598
599 三〜九
600
601 略
602
603 (出題の趣旨)
604 設問1においては,
605 A県屋外広告物条例(以下「条例」という。
606
607 )に基づく広告
608 物設置等の許可処分(以下「本件許可処分」という。
609
610 )について,
611 それにより景観
612 や生活・健康が害されることを主張する隣地居住者の原告適格を,
613 当該原告の立場
614 から検討することが求められる。
615
616
617 まず,
618 行政事件訴訟法第9条第1項所定の「法律上の利益を有する者」に関する
619 最高裁判例で示されてきた判断基準について,
620 第三者の原告適格の判断に即して,
621
622 正しく説明されなければならない。
623
624
625 その上で,
626 原告が主張する景観と生活・健康(安眠)に関する利益について,
627 そ
628 れぞれ,
629 本件許可処分の根拠法規である条例やA県屋外広告物条例施行規則(以下
630 「規則」という。
631
632 )によって保護されているものであることが,
633 許可の要件や目的
634 などに即して,
635 具体的に説明されなければならない。
636
637
638 さらに,
639 これらの利益について,
640 それらが一般的な公益に解消しきれない個別的
641 利益といえることが,
642 その利益の内容や範囲等の具体的な検討を通じて,
643 説明され
644 なければならない。
645
646
647 設問2においては,
648 許可地域等において広告物等と鉄道等との距離を要件とする
649 規則所定の許可基準について,
650 条例がこれを委任した趣旨に適合し委任の範囲内に
651 あるかを,
652 その無効を主張する原告の立場から検討することが求められる。
653
654
655 まず,
656 この規則が定める許可基準が条例の委任に基づいて定められた委任命令で
657 あり,
658 条例の委任の趣旨に反すれば無効となることが明確にされなければならない。
659
660
661 つぎに,
662 条例の委任の趣旨,
663 言い換えれば条例が許可制度を設けた趣旨について,
664
665 目的規定,
666 許可地域等の定め方など,
667 条例の規定に照らして,
668 具体的に検討されな
669 ければならない。
670
671
672 最後に,
673 こうした目的に照らして,
674 鉄道から広告物等が見通せるか否かを問題に
675 することなく,
676 それとの距離を要件とする許可基準の定め方につき,
677 これが条例の
678 委任の趣旨と矛盾することから,
679 これを定める規則が無効であるとの結論が導かれ
680 るべきこととなる。
681
682
683
684 [民
685
686 法]
687
688 次の文章を読んで,
689 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
690
691
692 【事実】
693 1.Aは早くに妻と死別したが,
694 成人した一人息子のBはAのもとから離れ,
695 音信がなくなってい
696 た。
697
698 Aは,
699 いとこのCに家業の手伝いをしてもらっていたが,
700 平成20年4月1日,
701 長年のCの
702 支援に対する感謝として,
703 ほとんど利用していなかったA所有の更地(時価2000万円。
704
705 以下
706 「本件土地」という。
707
708 )をCに贈与した。
709
710 同日,
711 本件土地はAからCに引き渡されたが,
712 本件土
713 地の所有権の移転の登記はされなかった。
714
715
716 2.Cは,
717 平成20年8月21日までに本件土地上に居住用建物(以下「本件建物」という。
718
719 )を
720 建築して居住を開始し,
721 同月31日には,
722 本件建物についてCを所有者とする所有権の保存の
723 登記がされた。
724
725
726 3.平成28年3月15日,
727 Aが遺言なしに死亡し,
728 唯一の相続人であるBがAを相続した。
729
730 Bは,
731
732 Aの財産を調べたところ,
733 Aが居住していた土地建物のほかに,
734 A所有名義の本件土地がある
735 こと,
736 また,
737 本件土地上にはCが居住するC所有名義の本件建物があることを知った。
738
739
740 4.Bは,
741 多くの借金を抱えており,
742 更なる借入れのための担保を確保しなければならなかった。
743
744
745 そこで,
746 Bは,
747 平成28年4月1日,
748 本件土地について相続を原因とするAからBへの所有権の
749 移転の登記をした。
750
751 さらに,
752 同年6月1日,
753 Bは,
754 知人であるDとの間で,
755 1000万円を借り
756 受ける旨の金銭消費貸借契約を締結し,
757 1000万円を受領するとともに,
758 これによってDに対
759 して負う債務(以下「本件債務」という。
760
761 )の担保のために本件土地に抵当権を設定する旨の抵
762 当権設定契約を締結し,
763 同日,
764 Dを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされた。
765
766
767 5.BD間で【事実】4の金銭消費貸借契約及び抵当権設定契約が締結された際,
768 Bは,
769 Dに対し,
770
771 本件建物を所有するCは本件土地を無償で借りているに過ぎないと説明した。
772
773 しかし,
774 Dは,
775
776 Cが本件土地の贈与を受けていたことは知らなかったものの,
777 念のため,
778 対抗力のある借地権
779 の負担があるものとして本件土地の担保価値を評価し,
780 Bに対する貸付額を決定した。
781
782
783 〔設問1〕
784 Bが本件債務の履行を怠ったため,
785 平成29年3月1日,
786 Dは,
787 本件土地について抵当権の実
788 行としての競売の申立てをした。
789
790 競売手続の結果,
791 本件土地は,
792 D自らが950万円(本件債務の
793 残額とほぼ同額)で買い受けることとなり,
794 同年12月1日,
795 本件土地についてDへの所有権の移
796 転の登記がされた。
797
798 同月15日,
799 Dが,
800 Cに対し,
801 本件建物を収去して本件土地を明け渡すよう請
802 求する訴訟を提起したところ,
803 Cは,
804 Dの抵当権が設定される前に,
805 Aから本件土地を贈与された
806 のであるから,
807 自分こそが本件土地の所有者である,
808 仮に,
809 Dが本件土地の所有者であるとしても,
810
811 自分には本件建物を存続させるための法律上の占有権原が認められるはずであると主張した。
812
813
814 この場合において,
815 DのCに対する請求は認められるか。
816
817 なお,
818 民事執行法上の問題について
819 は論じなくてよい。
820
821
822 【事実(続き)】(
823 〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
824
825 )
826 6.平成30年10月1日,
827 Cは,
828 本件土地の所有権の移転の登記をしようと考え,
829 本件土地の登
830 記事項証明書を入手したところ,
831 AからBへの所有権の移転の登記及びDを抵当権者とする抵
832 当権の設定の登記がされていることを知った。
833
834
835 〔設問2〕
836
837 平成30年11月1日,
838 Cは,
839 Bに対し,
840 本件土地の所有権移転登記手続を請求する訴訟を,
841
842 Dに対し,
843 本件土地の抵当権設定登記の抹消登記手続を請求する訴訟を,
844 それぞれ提起した。
845
846
847 このうち,
848 CのDに対する請求は認められるか。
849
850
851
852 (出題の趣旨)
853 設問1は,
854 同一不動産をめぐって多重の取引がされた事案を題材として,
855 不動産
856 物権変動の優劣に関する基本的な知識・理解を問うとともに,
857 事案に即した分析能
858 力や法的思考力を試すものである。
859
860
861 解答に当たっては,
862 所有権に基づく物権的返還請求権の各要件を検討する必要が
863 あり,
864 特に,
865 抵当権設定と贈与による所有権移転との対抗関係を丁寧に説明するこ
866 とが求められる。
867
868 また,
869 Cの占有権原の有無については,
870 法定地上権の成否が特に
871 問われるが,
872 その制度趣旨や事案に現れている諸事情を踏まえて検討することが求
873 められる。
874
875
876 設問2は,
877 不動産が10年間以上占有された事案を題材として,
878 取得時効の要件
879 に関する基本的な知識・理解を問うとともに,
880 取得時効の効果等について,
881 事案に
882 即した分析能力を試すものである。
883
884
885 解答に当たっては,
886 所有権に基づく妨害排除請求権の各要件を検討する必要があ
887 るが,
888 短期取得時効の各要件について当てはめを行った上で,
889 取得時効の効果は抵
890 当権の消滅を伴うものであるのか,
891 仮に消滅を伴う場合にはこれを主張するために
892 登記が必要となるのかなどについて論じることが求められる。
893
894
895
896 [商
897
898 法]
899
900 次の文章を読んで,
901 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
902
903
904 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
905
906 )は,
907 加工食品の輸入販売業を営む取締役会設置会社であり,
908
909 かつ,
910 監査役設置会社である。
911
912 甲社は,
913 種類株式発行会社ではなく,
914 その定款には,
915 譲渡による甲
916 社株式の取得について甲社の取締役会の承認を要する旨の定めがあるが,
917 株主総会の定足数及び決
918 議要件について,
919 別段の定めはない。
920
921
922 2.甲社の発行済株式の総数は200株であり,
923 平成28年12月1日に創業者Aが急死するまでは,
924
925 Aが100株を,
926 Aの妻Bが全株式を有し代表取締役を務める乙株式会社(以下「乙社」という。
927
928 )
929 が40株を,
930 Aの長男Cが30株を,
931 Aの長女Dが20株を,
932 Aの二女Eが10株を,
933 それぞれ有
934 していた。
935
936
937 3.甲社の定款には,
938 取締役は3人以上,
939 監査役は1人以上とする旨の定めがあり,
940 また,
941 取締役及
942 び監査役の任期をいずれも選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株
943 主総会の終結の時までとする旨の定めがある。
944
945 Aが死亡する直前では,
946 A及びCが甲社の代表取締
947 役を,
948 D及びEが取締役を,
949 甲社の従業員出身Fが監査役を,
950 それぞれ務めていた。
951
952 甲社の役員構
953 成については,
954 Aの死亡後も,
955 Aが死亡により取締役を退任したこと以外に変更はない。
956
957
958 4.Aの死亡後,
959 Aの全相続人であるB,
960 C,
961 D及びEが出席した遺産分割協議の場において,
962 Cは,
963
964 Aが有していた甲社株式100株を全てCが相続する案を提示した。
965
966 しかし,
967 Dが強く反対したた
968 め遺産分割協議が調わず,
969 当該株式については株主名簿の名義書換や共有株式についての権利を行
970 使すべき者の指定がされないままであった。
971
972
973 5.この頃から甲社の経営方針をめぐるCとDの対立が激しくなった。
974
975 Cは,
976 何かにつけてDを疎ん
977 じ,
978 甲社の経営を独断で行うようになった。
979
980 Cは,
981 甲社の経営の多角化を積極的に進めるために,
982
983 知人の経営コンサルタントに多額の報酬を支払って雑貨の輸入販売業にも進出した。
984
985 しかし,
986 その
987 業績は思うように伸びず,
988 ついには多額の損失が生ずるようになった。
989
990 Dは,
991 このままでは甲社の
992 経営が破綻するのではないかと恐れ,
993 平成31年3月頃,
994 Cの経営手腕の未熟さについてBに訴え
995 た。
996
997 Bは,
998 CとDが協力して甲社を経営していくことを望んでいたが,
999 他方では,
1000 Cの経営手腕に
1001 不安を抱いていたので,
1002 この際,
1003 DがCに代わって甲社の経営を担うのもやむを得ないとの考えに
1004 至り,
1005 Dを支援することとした。
1006
1007
1008 6.平成31年4月22日,
1009 乙社は,
1010 Dが全株式を有し代表取締役を務める丙株式会社(以下「丙社」
1011 という。
1012
1013 )との間で,
1014 乙社を分割会社,
1015 丙社を承継会社とする吸収分割(以下「本件会社分割」と
1016 いう。
1017
1018 )を行い,
1019 これにより,
1020 乙社が有する甲社株式40株を全て丙社に承継させた。
1021
1022 丙社は甲社
1023 に対して株主名簿の名義書換請求をしたが,
1024 Cは甲社を代表して本件会社分割による甲社株式の取
1025 得が甲社の取締役会の承認を得ていないことを理由にこれを拒絶した。
1026
1027 このことがあってから,
1028 C
1029 は,
1030 Dを強く警戒するようになり,
1031 Dを甲社の経営から排除することを考え始めた。
1032
1033
1034 7.令和元年5月9日にCの招集により開催された甲社の取締役会には,
1035 C,
1036 D,
1037 E及びFが出席し
1038 た。
1039
1040 定例の報告が終わった後,
1041 Cは,
1042 決議事項として予定されていなかったDの取締役からの解任
1043 を目的とする臨時株主総会の開催を提案した。
1044
1045 驚いたDは激しく抵抗したが,
1046 Cは決議について特
1047 別の利害関係を有するという理由でDを議決に参加させることなく,
1048 C及びEの賛成をもって,
1049 D
1050 の取締役からの解任を目的とする臨時株主総会を同月20日午前10時に甲社本店会議室で開催す
1051 ることを決議した(以下「本件取締役会決議」という。
1052
1053 )。
1054
1055
1056 〔設問1〕
1057 上記1から7までを前提として,
1058 本件取締役会決議の効力を争うためにDの立場において考えら
1059
1060 れる主張及びその主張の当否について,
1061 論じなさい。
1062
1063
1064 8.Cは,
1065 令和元年5月10日,
1066 本件取締役会決議に基づき,
1067 乙社,
1068 C,
1069 D及びEに対し,
1070 臨時株主
1071 総会の招集通知を発した。
1072
1073 同月20日午前10時に甲社本店会議室で開催された臨時株主総会(以
1074 下「本件株主総会」という。
1075
1076 )には,
1077 C,
1078 D及びEが出席したが,
1079 乙社を代表するBは病気と称し
1080 て出席しなかった。
1081
1082 本件株主総会では,
1083 定款の定めに基づき,
1084 Cが議長となり,
1085 Dを取締役から解
1086 任する旨の議案につき,
1087 C及びEは賛成し,
1088 Dは反対した。
1089
1090 Dは,
1091 丙社を代表して丙社が本件会社
1092 分割により取得した甲社株式40株についても議決権を行使して当該議案につき反対する旨主張し
1093 た。
1094
1095 しかし,
1096 議長であるCは,
1097 これを認めず,
1098 行使された議決権60個のうち40個の賛成があっ
1099 たとして,
1100 Dを取締役から解任する旨の決議の成立を宣言した(以下「本件株主総会決議」という。
1101
1102 )。
1103
1104
1105 〔設問2〕
1106 本件株主総会決議の効力を否定するためにDの立場において考えられる主張(〔設問1〕の本件
1107 取締役会決議の効力に関する事項を除く。
1108
1109 )及びその主張の当否について,
1110 論じなさい。
1111
1112
1113
1114 (出題の趣旨)
1115 本問は,
1116 取締役の解任を目的とする株主総会の招集を決定する取締役会決議の効
1117 力(〔設問1〕)及び取締役を解任する株主総会決議の効力(〔設問2〕)を,
1118 それぞ
1119 れその効力を否定する立場からの主張とその当否という形で問うものである。
1120
1121
1122 設問1では,
1123 Dは,
1124 まず,
1125 本件取締役会決議が予定されていなかった事項に関す
1126 る決議であった点が違法であると主張することが考えられるが,
1127 会社業務に関し臨
1128 機応変に対応すべき取締役会では,
1129 決議事項として予定されていなかった事項であ
1130 っても必要に応じ決議することができると解される。
1131
1132 次に,
1133 Dは,
1134 Dを特別利害関
1135 係人(会社法第369条第2項)に当たるとして議決に参加させなかった点が違法
1136 であると主張することが考えられる。
1137
1138 代表取締役を解職する取締役会決議について
1139 は,
1140 当該決議の対象となる代表取締役は特別利害関係人に当たるとする判例(最判
1141 昭和44年3月28日民集23巻3号645頁)があり,
1142 これとの距離感を踏まえ
1143 て検討することが求められる。
1144
1145 そして,
1146 Dが特別利害関係人に当たるとする場合に
1147 は,
1148 本件取締役会決議が成立要件(同条第1項)を満たしているか,
1149 当たらないと
1150 する場合には,
1151 瑕疵のある取締役会決議の効力が問題となる。
1152
1153
1154 設問2では,
1155 Dは,
1156 株主総会決議の取消しの訴え(会社法第831条第1項)を
1157 提起するため,
1158 取消事由として,
1159 まず,
1160 Aが保有していた甲社株式100株を定足
1161 数要件の分母に算入すれば定足数(同法第341条)を満たさないため,
1162 決議の方
1163 法の法令違反に当たる(同法第831条第1項第1号)と主張することが考えられ
1164 る。
1165
1166 当該100株については,
1167 遺産分割未了のまま相続人B,
1168 C,
1169 D及びEの共有
1170 状態にあり,
1171 権利行使者の指定・通知がないので,
1172 甲社の同意がない限り議決権を
1173 行使することができない(同法第106条)ため,
1174 「議決権を行使することができ
1175 る株主の議決権」(定足数要件の分母。
1176
1177 同法第341条)には含まれないと文言上
1178 は考えられるが,
1179 他方,
1180 共有株式は権利行使者の指定・通知があるまで暫定的に議
1181 決権を行使できないだけで,
1182 定足数要件の分母には含まれるという解釈があり,
1183 こ
1184 のような解釈も踏まえつつ検討することが求められる。
1185
1186 次に,
1187 Dは,
1188 取消事由とし
1189
1190 て,
1191 本件会社分割による譲渡制限株式の承継は譲渡承認を要しない「一般承継」(同
1192 法第134条第4号)に該当するから,
1193 株主名簿の名義書換の不当拒絶があり,
1194 丙
1195 社は名義書換がなくとも自己が株主であることを甲社に対抗できるため,
1196 丙社に招
1197 集通知を発しなかった点は招集の手続の法令違反に,
1198 丙社の議決権を認めなかった
1199 点は決議の方法の法令違反に,
1200 それぞれ当たる(同法第831条第1項第1号)と
1201 主張することが考えられる。
1202
1203 会社分割は,
1204 合併と同じく組織再編の一形態とされて
1205 いるが,
1206 他方,
1207 合併と異なり分割会社は依然として存続し,
1208 承継される権利義務の
1209 範囲は当事会社の裁量に委ねられており,
1210 このような異同も踏まえつつ検討するこ
1211 とが求められる。
1212
1213
1214
1215 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,
1216 1:1)
1217 次の文章を読んで,
1218 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1219
1220
1221 【事例】
1222 Y株式会社(以下「Y」という。
1223
1224 )は,
1225 甲土地を所有していた。
1226
1227 X1は,
1228 自宅兼店舗を建築する
1229 予定で土地を探し,
1230 甲土地が空き地となっていたことから,
1231 購入を考えた。
1232
1233 X1は,
1234 娘Aの夫で事
1235 業を引き継がせようと考えていたX2に相談し,
1236 共同で購入することとして,
1237 甲土地の購入を決め
1238 た。
1239
1240 X1は,
1241 甲土地の購入に当たり,
1242 Yの代表取締役Bと交渉し,
1243 X1とX2(以下「X1ら」と
1244 いう。
1245
1246 )は,
1247 Yとの間で甲土地の売買契約を締結した。
1248
1249 X1らは,
1250 売買代金を支払ったが,
1251 Yの方
1252 で登記手続を全く進めようとしない。
1253
1254 そこで,
1255 X1らは,
1256 Yを相手取って,
1257 甲土地について,
1258 売買
1259 契約に基づく所有権移転登記手続を求める訴え(以下「本件訴え」という。
1260
1261 )を提起した。
1262
1263
1264 〔設問1〕
1265 X1は,
1266 本件訴えの提起に際して,
1267 体調が優れなかったこともあり,
1268 X2に訴訟への対応を任せ
1269 ることとした。
1270
1271 そのため,
1272 専らX2がX1らの訴訟代理人である弁護士Lとの打合せを行って本件
1273 訴えを提起したが,
1274 X1は,
1275 Yに訴状が送達される前に急死してしまった。
1276
1277 X1の唯一の相続人は
1278 Aであった。
1279
1280
1281 X2は,
1282 X1から自分に訴訟対応を任されたという意識があったため,
1283 X1の死亡の事実をLに
1284 伝えなかった。
1285
1286 訴訟の手続はそのまま進行したが,
1287 Yは,
1288 争点整理手続終了近くになって,
1289 X1の
1290 死亡の事実を知った。
1291
1292
1293 Yは,
1294 X1の死亡の事実を知って,
1295 「本件訴えは却下されるべきである。
1296
1297 」と主張した。
1298
1299
1300 このYの主張に対し,
1301 X2側としてどのような対応をすべきであるかについて,
1302 論じなさい。
1303
1304
1305 【事例(続き)】(
1306 〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
1307
1308 )
1309 本件訴えに係る訴訟(以下「前訴」という。
1310
1311 )においては,
1312 唯一の争点として甲土地の売買契約
1313 の成否が争われた。
1314
1315 裁判所は,
1316 X1ら主張の売買契約の成立を認め,
1317 X1らの請求を全て認容する
1318 判決(以下「前訴判決」という。
1319
1320 )を言い渡し,
1321 この判決は確定した。
1322
1323
1324 しかし,
1325 Bは,
1326 前訴の口頭弁論終結前に,
1327 甲土地について処分禁止の仮処分がされていないこと
1328 を奇貨として,
1329 強制執行を免れる目的で,
1330 Bの息子Zと通謀し,
1331 YからZに対する贈与を原因とす
1332 る所有権移転登記手続をした。
1333
1334 X1らは,
1335 前訴判決の確定後にその事実を知った。
1336
1337 そこで,
1338 X1ら
1339 は,
1340 YとZとの間の贈与契約は虚偽表示によりされたものであると主張し,
1341 Zに対して甲土地の所
1342 有権移転登記手続を求める訴え(以下,
1343 この訴えに係る訴訟を「後訴」という。
1344
1345 )を提起した。
1346
1347 Z
1348 は,
1349 後訴においてX1らとYとの間の売買契約は成立していないと主張した。
1350
1351
1352 〔設問2〕
1353 X1らは,
1354 上記のようなZの主張は前訴判決によって排斥されるべきであると考えている。
1355
1356 X1
1357 らの立場から,
1358 Zの主張を排斥する理論構成を展開しなさい。
1359
1360 ただし,
1361 「信義則違反」及び「争点
1362 効」には触れなくてよい。
1363
1364
1365
1366 (出題の趣旨)
1367 本問は,
1368 当事者に生じた事情変更に関する諸問題についての理解を問うものであ
1369 る。
1370
1371 そして,
1372 具体的な事実関係を的確に読み込み,
1373 一方当事者側(本問では原告側)
1374
1375 から問題を処理し得る理論構成ができるかを評価するものである。
1376
1377
1378 設問1では,
1379 訴え提起後訴訟係属前に共同原告の一人が死亡してしまった場合に,
1380
1381 残った原告側の対応が問題となっている。
1382
1383 具体的には,
1384 判例の立場では固有必要的
1385 共同訴訟とされる本件共同訴訟の性質を踏まえつつ,
1386 原告側での死者名義訴訟の処
1387 理について検討することが求められている。
1388
1389
1390 設問2は,
1391 前訴判決の既判力を第三者に拡張できるかを問うものである。
1392
1393 問題文
1394 では,
1395 原告らが売買を理由とする土地の移転登記手続を求めていた前訴の口頭弁論
1396 終結前に登記が被告から第三者に移転しており,
1397 その移転を原告らが知り得ないま
1398 ま,
1399 原告ら勝訴判決を得て,
1400 それが確定した。
1401
1402 その後,
1403 原告らが当該第三者への登
1404 記移転の事実を知り,
1405 当該第三者に対して所有権移転登記請求訴訟を提起した場合
1406 に,
1407 前訴判決の既判力が当該第三者に及ぶとする(原告ら側からの)理論構成を問
1408 うものである。
1409
1410 主に,
1411 民事訴訟法第115条第1項第4号(目的物の所持者)の類
1412 推適用可能性が問われている。
1413
1414
1415
1416 [刑
1417
1418 法]
1419
1420 以下の事例に基づき,
1421 甲の罪責について論じなさい(Aに対する詐欺(未遂)罪及び特別法違反の点は除く。
1422
1423
1424 )
1425 。
1426
1427
1428 1 不動産業者甲は,
1429 某月1日,
1430 甲と私的な付き合いがあり,
1431 海外に在住し日本国内に土地(以下「本件土地」
1432 という。
1433
1434 時価3000万円)を所有する知人Vから,
1435 Vが登記名義人である本件土地に抵当権を設定してV
1436 のために1500万円を借りてほしいとの依頼を受けた。
1437
1438
1439 甲は,
1440 同日,
1441 それを承諾し,
1442 Vから同依頼に係る代理権を付与され,
1443 本件土地の登記済証や委任事項欄の
1444 記載がない白紙委任状等を預かった。
1445
1446
1447 甲は,
1448 銀行等から合計500万円の借金を負っており,
1449 その返済期限を徒過し,
1450 返済を迫られている状況
1451 にあったことから,
1452 本件土地の登記済証等をVから預かっていることやVが海外に在住していることを奇
1453 貨として,
1454 本件土地をVに無断で売却し,
1455 その売却代金のうち1500万円を借入金と称してVに渡し,
1456
1457 残金を自己の借金の返済に充てようと考えた。
1458
1459
1460 そこで,
1461 甲は,
1462 同月5日,
1463 本件土地付近の土地を欲しがっていた知人Aに対し,
1464
1465 「知人のVが土地を売り
1466 たがっていて,
1467 自分が代理人としてその土地の売却を頼まれているんです。
1468
1469 その土地は,
1470 Aさんが欲しが
1471 っていた付近の土地で,
1472 2000万円という安い値段なので買いませんか。
1473
1474
1475 」と言い,
1476 Aは,
1477 甲の話を信用
1478 して本件土地を購入することとした。
1479
1480
1481 その際,
1482 甲とAは,
1483 同月16日にAが2000万円を甲に渡し,
1484 それと引き換えに,
1485 甲が所有権移転登記
1486 に必要な書類をAに交付し,
1487 同日に本件土地の所有権をAに移転させる旨合意した。
1488
1489 甲は,
1490 同月6日,
1491 A
1492 方に行き,
1493 同所で,
1494 本件土地の売買契約書2部の売主欄にいずれも「V代理人甲」と署名してAに渡し,
1495
1496 Aがそれらを確認していずれの買主欄にも署名し,
1497 このように完成させた本件土地の売買契約書
1498 2部のうち1部を甲に戻した(甲のAとの間の行為について表見代理に関する規定の適用はない
1499 ものとする。
1500
1501 )。
1502
1503
1504 2 その後,
1505 Vは,
1506 同月13日,
1507 所用により急遽帰国したが,
1508 同日,
1509 Aから本件土地に関する問い合わせを受
1510 けたことで甲の行動を知って激怒し,
1511 同月14日,
1512 甲を呼び付け,
1513 甲に預けていた本件土地の登記済証や白
1514 紙委任状等を回収した。
1515
1516 その際,
1517 Vは,
1518 甲に対し,
1519
1520 「俺の土地を勝手に売りやがって。
1521
1522 今すぐAの所に行っ
1523 て売買契約書を回収してこい。
1524
1525 明後日までに回収できなければ,
1526 お前のことを警察に通報するからな。
1527
1528
1529 」と
1530 怒鳴った。
1531
1532
1533 甲は,
1534 同月14日,
1535 Aに会いに行き,
1536 本件土地の売買契約書を回収させてほしいと伝えたが,
1537 Aからこ
1538 れを断られた。
1539
1540
1541 3
1542
1543 甲は,
1544 自己に対して怒鳴っていたVの様子から,
1545 同売買契約書をAから回収できなかったことをVに伝
1546 えれば,
1547 間違いなくVから警察に通報され,
1548 逮捕されることになるし,
1549 不動産業(宅地建物取引業)の免許
1550 を取り消されることになるなどと考え,
1551 それらを免れるには,
1552 Vを殺すしかないと考えた。
1553
1554
1555 そこで,
1556 甲は,
1557 Vを呼び出した上,
1558 Vの首を絞めて殺害し,
1559 その死体を海中に捨てることを計画し,
1560 同
1561 月15日午後10時頃,
1562 電話でVに「話がある。
1563
1564
1565 」と言って,
1566 日本におけるVの居住地の近くにある公園に
1567 Vを呼び出し,
1568 その頃,
1569 同所で,
1570 Vの首を背後から力いっぱいロープで絞めた。
1571
1572
1573 それによりVは失神したが,
1574 甲は,
1575 Vが死亡したものと軽信し,
1576 その状態のVを自車に載せた上,
1577 同車
1578 で前記公園から約1キロメートル離れた港に運び,
1579 同日午後10時半頃,
1580 同所で,
1581 Vを海に落とした。
1582
1583 そ
1584 の時点で,
1585 Vは,
1586 失神していただけであったが,
1587 その状態で海に落とされたことにより間もなく溺死した。
1588
1589
1590
1591 (出題の趣旨)
1592 本問は,
1593 甲が,
1594 (1)Vから本件土地に対する抵当権設定の代理権しか付与されて
1595 いなかったのに,
1596 Aに本件土地を売る旨の売買契約書2部に「V代理人甲」と署名
1597 した上,
1598 その内容をAに確認させるなどしたこと,
1599 (2)Vに無断で本件土地の売買
1600
1601 契約をAと締結したこと,
1602 (3)(2)に関して,
1603 逮捕を免れるなどのために,
1604 Vを殺害
1605 してその死体を海中に捨てることを計画し,
1606 実際にVの首を絞めたが,
1607 それにより
1608 失神したVが死亡したものと軽信し,
1609 その状態のVを海に落とし溺死させたことを
1610 内容とする事例について,
1611 甲の罪責に関する論述を求めるものである。
1612
1613
1614 (1)については,
1615 本件土地の売買契約書の作成権限が与えられていなかった甲に
1616 よる同契約書の作成が代理権限の逸脱に当たることを前提に,
1617 有印私文書偽造罪・
1618 同行使罪の成否について,
1619 文書の名義人に関する擬律判断を含め,
1620 その構成要件該
1621 当性を検討する必要がある。
1622
1623
1624 また,
1625 (2)については,
1626 主に論ずべき点として,
1627 横領罪と背任罪の関係を踏まえ
1628 て,
1629 本件土地に関する(横領罪における)占有が甲に認められるか,
1630 それが認めら
1631 れるとした場合に甲の行為が「横領」と評価できるか(既遂時期),
1632 仮に横領罪の
1633 成立が否定された場合に背任罪の成否を検討すべきかについて,
1634 本事例における事
1635 実関係を基に検討する必要がある。
1636
1637
1638 (3)については,
1639 行為者が第1行為(Vの首を絞める行為)により死亡結果が発
1640 生すると予見していたのに,
1641 実際は結果が発生せず,
1642 第2行為(失神したVを海に
1643 落とした行為)により死亡結果が発生した場合(いわゆる遅すぎた構成要件の実現)
1644 の殺人既遂罪の成否に関し,
1645 第1行為と死亡結果との因果関係の有無及び因果関係
1646 の錯誤の処理,
1647 並びに,
1648 第2行為の擬律(抽象的事実の錯誤,
1649 過失致死罪の成否)
1650 について,
1651 また,
1652 第1行為と第2行為を1個の行為(一連の実行行為)と捉えた場
1653 合は,
1654 1個の行為と評価する根拠について,
1655 それぞれ検討する必要がある。
1656
1657
1658 いずれについても,
1659 各構成要件等の正確な知識,
1660 基本的理解や,
1661 本事例にある事
1662 実を丁寧に拾って的確に分析した上,
1663 当てはめを行う能力が求められる。
1664
1665
1666
1667 [刑事訴訟法]
1668 次の【事例】を読んで,
1669 後記〔設問〕に答えなさい。
1670
1671
1672 【事例】
1673 令和元年6月5日午後2時頃,
1674 H市L町内のV方において,
1675 住居侵入,
1676 窃盗事件(以下「本件
1677 事件」という。
1678
1679 )が発生した。
1680
1681 外出先から帰宅したVは,
1682 犯人がV方の机の引出しからV名義のク
1683 レジットカードを盗んでいるのを目撃し,
1684 警察に通報したが,
1685 犯人はV方から逃走した。
1686
1687
1688 警察官PとQは,
1689 同月6日午前2時30分頃,
1690 V方から8キロメートル離れたL町の隣町の路
1691 上を徘徊する,
1692 人相及び着衣が犯人と酷似する甲を認め,
1693 本件事件の犯人ではないかと考え,
1694 警
1695 察官の応援要請をするとともに,
1696 甲を呼び止め,
1697 「ここで何をしているのか。
1698
1699 」などと尋ねたとこ
1700 ろ,
1701 甲は,
1702 「仕事も家もなく,
1703 寝泊りする場所を探しているところだ。
1704
1705 」と答えた。
1706
1707 また,
1708 Pが甲
1709 に,
1710 「昨日の午後2時頃,
1711 何をしていたか。
1712
1713 」と尋ねたのに対し,
1714 甲は,
1715 「覚えていない。
1716
1717 」旨曖昧
1718 な答えに終始した。
1719
1720 Pは,
1721 最寄りのH警察署で本件事件について甲の取調べをしようと考え,
1722 同
1723 月6日午前3時頃,
1724 「事情聴取したいので,
1725 H警察署まで来てくれ。
1726
1727 」と甲に言ったが,
1728 甲は,
1729 黙
1730 ったまま立ち去ろうとした。
1731
1732 その際,
1733 甲のズボンのポケットから,
1734 V名義のクレジットカードが
1735 路上に落ちたため,
1736 Pが,
1737 「このカードはどうやって手に入れたのか。
1738
1739 」と甲に尋ねたところ,
1740 甲
1741 は,
1742 「散歩中に拾った。
1743
1744 落とし物として届けるつもりだった。
1745
1746 」と述べて立ち去ろうとした。
1747
1748 そこ
1749 で,
1750 Pらは,
1751 同日午前3時5分頃,
1752 応援の警察官を含む4名の警察官で甲を取り囲んでパトカー
1753 に乗車させようとしたが,
1754 甲が,
1755 「俺は行かないぞ。
1756
1757 」と言い,
1758 パトカーの屋根を両手でつかんで
1759 抵抗したので,
1760 Qが,
1761 先にパトカーの後部座席に乗り込み,
1762 甲の片腕を車内から引っ張り,
1763 Pが,
1764
1765 甲の背中を押し,
1766 後部座席中央に甲を座らせ,
1767 その両側にPとQが甲を挟むようにして座った上,
1768
1769 パトカーを出発させ,
1770 同日午前3時20分頃,
1771 H警察署に到着した。
1772
1773
1774 Pは,
1775 H警察署の取調室において,
1776 本件事件の概要と黙秘権を告げて甲の取調べを開始した。
1777
1778
1779 甲は,
1780 取調室から退出できないものと諦めて取調べには応じたものの,
1781 本件事件への関与を否認
1782 し続けた。
1783
1784 Pは,
1785 同日午前7時頃,
1786 H警察署に来てもらったVに,
1787 取調室にいた甲を見せ,
1788 甲が
1789 本件事件の犯人に間違いない旨のVの供述を得た。
1790
1791 Pらは,
1792 甲の発見時の状況やVの供述をまと
1793 めた捜査報告書等の疎明資料を直ちに準備し,
1794 同日午前8時,
1795 H簡易裁判所に本件事件を被疑事
1796 実として通常逮捕状の請求を行い,
1797 同日午前9時,
1798 その発付を受け,
1799 同日午前9時10分,
1800 甲を
1801 通常逮捕した。
1802
1803
1804 甲は,
1805 同月7日午前8時30分,
1806 H地方検察庁検察官に送致され,
1807 送致を受けた検察官は,
1808 同日
1809 午後1時,
1810 H地方裁判所裁判官に甲の勾留を請求し,
1811 同日,
1812 甲は,
1813 同被疑事実により,
1814 勾留された。
1815
1816
1817 〔設問〕
1818 下線部の勾留の適法性について論じなさい。
1819
1820 ただし,
1821 刑事訴訟法第60条第1項各号該当性及
1822 び勾留の必要性については論じなくてよい。
1823
1824
1825
1826 (出題の趣旨)
1827 本問は,
1828 民家で発生した窃盗事件について,
1829 翌日の未明に,
1830 警察官PとQが,
1831 路
1832 上で,
1833 人相及び着衣が犯人と酷似する甲を認め,
1834 職務質問を開始したところ,
1835 甲の
1836 ズボンのポケットからV名義のクレジットカードが路上に落ちたことから,
1837 抵抗す
1838 る甲をパトカーに押し込んでH警察署に連れて行き,
1839 その後,
1840 甲を通常逮捕して,
1841
1842 勾留したとの事例において,
1843 甲の勾留の適法性の検討を通じ,
1844 刑事訴訟法の基本的
1845 な学識の有無及び具体的事案における応用力を試すものである。
1846
1847
1848
1849 刑事訴訟法上,
1850 逮捕と勾留は別個の処分であるが,
1851 先行する逮捕手続(さらに,
1852
1853 同行の過程)に違法がある場合,
1854 引き続く勾留の適法性に影響を及ぼすことがある
1855 との理解が一般的であり,
1856 甲の勾留の適法性を検討するに当たっては,
1857 先行手続の
1858 違法が問題となる。
1859
1860 もっとも,
1861 この点については,
1862 勾留の理由や必要(刑事訴訟法
1863 第207条第1項,
1864 第60条第1項,
1865 第87条)と異なり,
1866 明文で要件とされてい
1867 るわけではなく,
1868 逮捕手続の違法についても,
1869 逮捕後の時間的制限の不遵守がある
1870 場合に勾留請求を却下すべきとする(刑事訴訟法第206条第2項,
1871 第207条第
1872 5項)にとどまるため,
1873 なぜ先行手続の違法が勾留の適法性に影響を及ぼすのかに
1874 ついて,
1875 具体的根拠を示して論ずることが求められる。
1876
1877 他方,
1878 先行手続の違法が軽
1879 微であっても直ちに勾留が違法となるとすれば,
1880 被疑者の逃亡や罪証隠滅を防いだ
1881 状態で捜査を続行することが困難となるのであって,
1882 先行手続の違法が勾留の適法
1883 性に影響を及ぼすと考えるとしても,
1884 いかなる場合に勾留が違法となるか,
1885 その判
1886 断基準を明らかにすることも必要である。
1887
1888
1889 本問では,
1890 先行手続として,
1891 警察官が甲をパトカーに押し込んでH警察署に連れ
1892 て行った行為について,
1893 実質的な逮捕であり違法ではないかが問題となる。
1894
1895 ここで
1896 は,
1897 任意同行と実質的な逮捕とを区別する基準を示した上で,
1898 警察官の行為が実質
1899 的逮捕であるか否かを判断することが求められる。
1900
1901 そして,
1902 警察官の上記行為が実
1903 質的な逮捕であり違法と評価される場合,
1904 その違法が勾留の適法性に影響するのか,
1905
1906 影響するのであれば,
1907 勾留が違法となる場合に当たるかについて,
1908 判断基準を示し
1909 て検討することが求められる。
1910
1911 また,
1912 この点について,
1913 先行手続の違法の程度(重
1914 大か否か)に着目するのであれば,
1915 【事例】において侵害された法益の質・程度や
1916 本来可能であった適法行為からの逸脱の程度(例えば,
1917 実質的な逮捕がなされた時
1918 点において緊急逮捕の要件を実質的に満たしていたか,
1919 満たしていたとして,
1920 その
1921 時点から起算して被疑者が検察官に送致され,
1922 また勾留を請求するまでの時間的制
1923 限を超過していないか,
1924 また,
1925 実質的な逮捕から約5時間後,
1926 甲の取調べ等を挟ん
1927 で通常逮捕の手続が取られていることをどう評価するか)などに関わる具体的事情
1928 を考慮した上で,
1929 先行手続の違法の程度を吟味し,
1930 勾留が違法と評価されるか否か
1931 について論述することが求められる。
1932
1933
1934
1935 [民
1936
1937 事]
1938
1939 司法試験予備試験用法文を適宜参照して,
1940 以下の各設問に答えなさい。
1941
1942
1943 〔設問1〕
1944 弁護士Pは,
1945 Xから次のような相談を受けた。
1946
1947
1948 【Xの相談内容】
1949 「Aは,
1950 知人のBに対し,
1951 平成29年9月1日,
1952 弁済期を平成30年6月15日,
1953 無利息で
1954 損害金を年10%として,
1955 200万円を貸し渡しました。
1956
1957 AとBは,
1958 平成29年9月1日,
1959 上
1960 記の内容があらかじめ記載されている「金銭借用証書」との題の書面に,
1961 それぞれ署名・押印
1962 をしたとのことです(以下,
1963 この書面を「本件借用証書」という。
1964
1965 )。
1966
1967 加えて,
1968 本件借用証書に
1969 は,
1970 「Yが,
1971 BのAからの上記の借入れにつき,
1972 Aに対し,
1973 Bと連帯して保証する。
1974
1975 」旨の文言
1976 が記載されていました。
1977
1978 AがBから聞いたところによれば,
1979 Yは,
1980 あらかじめ,
1981 本件借用証書
1982 の「連帯保証人」欄に署名・押印をして,
1983 Bに渡しており,
1984 平成29年9月1日に上記の借入
1985 れにつき,
1986 Bと連帯して保証したとのことです。
1987
1988 なお,
1989 YはBのいとこであると聞いています。
1990
1991
1992 ところが,
1993 弁済期である平成30年6月15日を過ぎても,
1994 BもYも,
1995 Aに何ら支払をしま
1996 せんでした。
1997
1998
1999 私(X)は,
2000 Aから懇願されて,
2001 平成31年1月9日,
2002 この200万円の貸金債権とこれに
2003 関する遅延損害金債権を,
2004 代金200万円で,
2005 Aから買い受けました。
2006
2007 Aは,
2008 Bに対し,
2009 私に
2010 これらの債権を売ったことを記載した内容証明郵便(平成31年1月11日付け)を送り,
2011 同
2012 郵便は同月15日にBに届いたとのことです。
2013
2014
2015 ところが,
2016 その後も,
2017 BもYも,
2018 一向に支払をせず,
2019 Yは行方不明になってしまいました。
2020
2021
2022 私は,
2023 まずは自分で,
2024 Bに対する訴訟を提起し,
2025 既に勝訴判決を得ましたが,
2026 全く回収するこ
2027 とができていません。
2028
2029 今般,
2030 Yの住所が分かりましたので,
2031 Yに対しても訴訟を提起して,
2032 貸
2033 金の元金だけでなく,
2034 その返済が遅れたことについての損害金全てにつき,
2035 Yから回収したい
2036 と考えています。
2037
2038 」
2039 弁護士Pは,
2040 【Xの相談内容】を前提に,
2041 Xの訴訟代理人として,
2042 Yに対し,
2043 Xの希望する金員
2044 の支払を求める訴訟(以下「本件訴訟」という。
2045
2046 )を提起することを検討することとした。
2047
2048
2049 以上を前提に,
2050 以下の各問いに答えなさい。
2051
2052
2053 (1)
2054
2055 弁護士Pが,
2056 本件訴訟において,
2057 Xの希望を実現するために選択すると考えられる訴訟物を記
2058 載しなさい。
2059
2060
2061
2062 (2)
2063
2064 弁護士Pが,
2065 本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。
2066
2067 )において記載すべき請求の趣旨(民
2068 事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい。
2069
2070 なお,
2071 付随的申立てについては,
2072 考慮す
2073 る必要はない。
2074
2075
2076
2077 (3)
2078
2079 弁護士Pは,
2080 本件訴状において,
2081 請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)とし
2082 て,
2083 以下の各事実を主張した。
2084
2085
2086
2087 (あ)
2088
2089 Aは,
2090 Bに対し,
2091 平成29年9月1日,
2092 弁済期を平成30年6月15日,
2093 損害金の割合を年
2094 10%として,
2095 200万円を貸し付けた(以下「本件貸付」という。
2096
2097 )。
2098
2099
2100
2101 (い)
2102
2103 Yは,
2104 Aとの間で,
2105 平成29年9月1日,
2106 〔@〕。
2107
2108
2109
2110 (う)
2111
2112 (い)の〔A〕は,
2113 〔B〕による。
2114
2115
2116
2117 (え)
2118
2119 平成30年6月15日は経過した。
2120
2121
2122
2123 (お)
2124
2125 平成31年1月〔C〕。
2126
2127
2128 上記@からCまでに入る具体的事実を,
2129 それぞれ記載しなさい。
2130
2131
2132
2133 (4)
2134
2135 仮に,
2136 Xが,
2137 本件訴訟において,
2138 その請求を全部認容する判決を得て,
2139 その判決は確定したが,
2140
2141 Yは任意に支払わず,
2142 かつ,
2143 Yは甲土地を所有しているが,
2144 それ以外のめぼしい財産はないとす
2145 る。
2146
2147 Xの代理人である弁護士Pは,
2148 この確定判決を用いてYから回収するために,
2149 どのような手
2150 続を経て,
2151 どのような申立てをすべきか,
2152 それぞれ簡潔に記載しなさい。
2153
2154
2155
2156 〔設問2〕
2157 弁護士Qは,
2158 本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。
2159
2160
2161 【Yの相談内容】
2162 「(a)
2163
2164 私(Y)はBのいとこに当たります。
2165
2166
2167 確かに,
2168 Bからは,
2169 Bが,
2170 Xの主張する時期に,
2171 Aから200万円を借りたことはあ
2172 ると聞いています。
2173
2174 また,
2175 Bは,
2176 Xの主張するような内容証明郵便を受け取ったと言っ
2177 ていました。
2178
2179 しかし,
2180 私が,
2181 Bの債務を保証したことは決してありません。
2182
2183 私は,
2184 本件
2185 借用証書の「連帯保証人」欄に氏名を書いていませんし,
2186 誰かに指示して書かせたこと
2187 もありません。
2188
2189 同欄に押されている印は,
2190 私が持っている実印とよく似ていますが,
2191 私
2192 が押したり,
2193 また,
2194 誰かに指示して押させたりしたこともありません。
2195
2196
2197
2198 (b)
2199
2200 Bによれば,
2201 この200万円の借入れの際,
2202 AとBは,
2203 AのBに対する債権をAは他
2204
2205 の者には譲渡しないと約束し,
2206 Xも,
2207 債権譲受時には,
2208 そのような約束があったことを
2209 知っていたとのことです。
2210
2211
2212 (c)
2213
2214 また,
2215 仮に,
2216 (b)のような約束がなかったとしても,
2217 Bは,
2218 既に全ての責任を果たし
2219
2220 ているはずです。
2221
2222
2223 Bは,
2224 乙絵画を所有していたのですが,
2225 平成31年3月1日,
2226 乙絵画をXの自宅に持
2227 っていって,
2228 Xに譲り渡したとのことです。
2229
2230 Bは,
2231 乙絵画をとても気に入っていたとこ
2232 ろ,
2233 何の理由もなくこれを手放すことはあり得ないので,
2234 この200万円の借入れとそ
2235 の損害金の支払に代えて,
2236 乙絵画を譲り渡したに違いありません。
2237
2238 」
2239 以上を前提に,
2240 以下の各問いに答えなさい。
2241
2242
2243 (1)
2244
2245 @弁護士Qは,
2246 【Yの相談内容】(b)を踏まえて,
2247 Yの訴訟代理人として,
2248 答弁書(以下「本件
2249 答弁書」という。
2250
2251 )において,
2252 どのような抗弁を記載するか,
2253 記載しなさい(当該抗弁を構成す
2254 る具体的事実を記載する必要はない。
2255
2256 )。
2257
2258 Aそれが抗弁となる理由を説明しなさい。
2259
2260
2261
2262 (2)
2263
2264 弁護士Qは,
2265
2266 【Yの相談内容】(c)を踏まえて,
2267 本件答弁書において,
2268 以下のとおり,
2269 記載した。
2270
2271
2272
2273 (ア)
2274
2275 Bは,
2276 Xとの間で,
2277 平成31年3月1日,
2278 本件貸付の貸金元金及びこれに対する同日までの
2279 遅延損害金の弁済に代えて,
2280 乙絵画の所有権を移転するとの合意をした。
2281
2282
2283
2284 (イ)
2285
2286 (ア)の当時,
2287 〔
2288 上記〔
2289
2290 (3)
2291
2292 〕。
2293
2294
2295
2296 〕に入る事実を記載しなさい。
2297
2298
2299
2300 @弁護士Qは,
2301 本件答弁書において,
2302
2303 【Yの相談内容】(c)に関する抗弁を主張するために,
2304 (2)
2305 の(ア)及び(イ)に加えて,
2306 Bが,
2307 Xに対し,
2308 本件絵画を引き渡したことに係る事実を主張するこ
2309 とが必要か不要か,
2310 記載しなさい。
2311
2312 Aその理由を簡潔に説明しなさい。
2313
2314
2315
2316 〔設問3〕
2317 Yが,
2318 下記のように述べているとする。
2319
2320 @弁護士Qは,
2321 本件答弁書において,
2322 その言い分を抗弁
2323 として主張すべきか否か,
2324 その結論を記載しなさい。
2325
2326 Aその結論を導いた理由を,
2327 その言い分が抗
2328 弁を構成するかどうかに言及しながら,
2329 説明しなさい。
2330
2331
2332
2333 記
2334 Aが本件の貸金債権や損害金をXに譲渡したのだとしても,
2335 私は,
2336 譲渡を承諾していませんし,
2337
2338 Aからそのような通知を受けたことはありません。
2339
2340 確かに,
2341 Bからは,
2342 「Bは,
2343 Aから,
2344 AはXに
2345 対して債権を売ったなどと記載された内容証明郵便を受け取った。
2346
2347 」旨を聞いていますが,
2348 私に対
2349 する通知がない以上,
2350 Xが債権者であると認めることはできません。
2351
2352
2353 〔設問4〕
2354 第1回口頭弁論期日において,
2355 本件訴状と本件答弁書が陳述された。
2356
2357 同期日において,
2358 弁護士P
2359 は,
2360 本件借用証書を書証として提出し,
2361 それが取り調べられ,
2362 弁護士Qは,
2363 本件借用証書のY作成
2364 部分につき,
2365 成立の真正を否認し,
2366 「Y名下の印影がYの印章によることは認めるが,
2367 Bが盗用し
2368 た。
2369
2370 」と主張した。
2371
2372
2373 その後,
2374 2回の弁論準備手続期日を経た後,
2375 第2回口頭弁論期日において,
2376 本人尋問が実施され,
2377
2378 Y名義の保証につき,
2379 Yは,
2380 下記【Yの供述内容】のとおり,
2381 Xは,
2382 下記【Xの供述内容】のとお
2383 り,
2384 それぞれ供述した(なお,
2385 それ以外の者の尋問は実施されていない。
2386
2387 )。
2388
2389
2390 【Yの供述内容】
2391 「私とBは,
2392 1歳違いのいとこです。
2393
2394 私とBは,
2395 幼少時から近所に住んでおり,
2396 家族のように
2397 仲良くしていました。
2398
2399 Bは,
2400 よく私の自宅(今も私はその家に住んでいます。
2401
2402 )に遊びに来てい
2403 ました。
2404
2405
2406 Bは,
2407 大学進学と同時に,
2408 他の県に引っ越し,
2409 大学卒業後も,
2410 その県で就職したので,
2411 行き
2412 来は少なくなりましたが,
2413 気が合うので,
2414 近所に来た際には会うなどしていました。
2415
2416
2417 平成29年8月中旬だったと思いますが,
2418 Bが急に私の自宅に泊まりに来て,
2419 2日間,
2420 滞在
2421 していきました。
2422
2423 今から思えば,
2424 その際に,
2425 本件借用証書をあらかじめ準備して,
2426 連帯保証人
2427 欄に私の印鑑を勝手に押したのだと思います。
2428
2429 私が小さい頃から,
2430 私の自宅では,
2431 印鑑を含む
2432 大事なものを寝室にあるタンスの一番上の引き出しにしまっていましたし,
2433 私の印鑑はフルネ
2434 ームのものなので,
2435 Bは,
2436 私の印鑑を容易に見つけられたと思います。
2437
2438 この印鑑は,
2439 印鑑登録
2440 をしている実印です。
2441
2442 Bが滞在した2日間,
2443 私が買物などで出かけて,
2444 B一人になったことが
2445 あったので,
2446 その際にBが私の印鑑を探し出したのだと思います。
2447
2448
2449 私は,
2450 出版関係の会社に正社員として勤務しています。
2451
2452 会社の業績は余り芳しくなく,
2453 最近は
2454 ボーナスの額も減ってしまいました。
2455
2456 私には,
2457 さしたる貯蓄はなく,
2458 保証をするはずもありませ
2459 ん。
2460
2461
2462 私は,
2463 平成29年当時,
2464 Bから,
2465 保証の件につき相談を受けたことすらなく,
2466 また,
2467 Aから,
2468
2469 保証人となることでよいかなどの連絡を受けたこともありませんでした。
2470
2471
2472 なお,
2473 本件訴訟が提起されて少し経った頃から,
2474 Bと連絡が取れなくなってしまい,
2475 今に至
2476 っています。
2477
2478 」
2479 【Xの供述内容】
2480 「YとBがいとこ同士であるとは聞いています。
2481
2482 YとBとの付き合いの程度などは,
2483 詳しく
2484 は知りません。
2485
2486
2487 Bが,
2488 平成29年8月中旬頃,
2489 Yの自宅に泊まりに来て,
2490 2日間滞在したかは分かりません
2491 が,
2492 仮に,
2493 滞在したとしても,
2494 そんなに簡単に印鑑を見つけ出せるとは思いません。
2495
2496
2497 なお,
2498 Aに確認しましたら,
2499 Aは,
2500 Yの保証意思を確認するため,
2501 平成29年8月下旬,
2502 Yの
2503 自宅に確認のための電話をしたところ,
2504 Y本人とは話をすることができませんでしたが,
2505 電話に
2506 出たYの母親に保証の件について説明したら,
2507 『Yからそのような話を聞いている。
2508
2509 』と言われた
2510 とのことです。
2511
2512 」
2513
2514 以上を前提に,
2515 以下の問いに答えなさい。
2516
2517
2518 弁護士Pは,
2519 本件訴訟の第3回口頭弁論期日までに,
2520 準備書面を提出することを予定している。
2521
2522
2523 その準備書面において,
2524 弁護士Pは,
2525 前記の提出された書証並びに前記【Yの供述内容】及び【X
2526 の供述内容】と同内容のY及びXの本人尋問における供述に基づいて,
2527 Yが保証契約を締結した事
2528 実が認められることにつき,
2529 主張を展開したいと考えている。
2530
2531 弁護士Pにおいて,
2532 上記準備書面に
2533 記載すべき内容を,
2534 提出された書証や両者の供述から認定することができる事実を踏まえて,
2535 答案
2536 用紙1頁程度の分量で記載しなさい。
2537
2538 なお,
2539 記載に際しては,
2540 本件借用証書のY作成部分の成立の
2541 真正に関する争いについても言及すること。
2542
2543
2544
2545 (出題の趣旨)
2546 設問1は,
2547 保証契約に基づく保証債務履行請求権が問題となる訴訟において,
2548 原
2549 告の求めに応じた訴訟物,
2550 請求の趣旨及び請求原因事実の説明を求めるとともに,
2551
2552 確定判決に基づく民事執行手続の基本を問うものである。
2553
2554 保証契約や債権譲渡に関
2555 する法律要件について,
2556 正確な理解を確認するものである。
2557
2558
2559 設問2は,
2560 2つの抗弁主張に関し,
2561 譲渡禁止特約(譲受人が悪意である場合),
2562
2563 代物弁済等についての民事実体法の要件・効果を踏まえ,
2564 抗弁事実の内容やその理
2565 由について,
2566 自説の立場から丁寧に論ずることが求められる。
2567
2568
2569 設問3は,
2570 被告代理人の訴訟活動上の選択に関し,
2571 債権譲渡における債務者対抗
2572 要件や,
2573 保証契約の性質を踏まえながら、
2574 本件への当てはめを適切に検討すること
2575 が求められる。
2576
2577
2578 設問4は,
2579 まず,
2580 文書に作成名義人の印章により顕出された印影があることを踏
2581 まえ,
2582 いわゆる二段の推定が働くことや相手方の主張の位置付けについて,
2583 事案に
2584 即して適切な説明を加える必要がある。
2585
2586 その上で,
2587 認定根拠に言及しながら,
2588 原告
2589 に有利・不利な複数の事実を適切に分析・評価して,
2590 いわゆる二段の推定が働くこ
2591 ととの関係を意識しつつ,
2592 原告代理人の立場から説得的に論述することが求められ
2593 る。
2594
2595
2596
2597 [刑
2598
2599 事]
2600
2601 次の【事例】を読んで,
2602 後記〔設問〕に答えなさい。
2603
2604
2605 【事例】
2606 1
2607
2608 A(25歳,
2609 男性)及びB(22歳,
2610 男性)は,
2611 平成31年2月28日,
2612 「被疑者両名は,
2613
2614 共謀の上,
2615 平成31年2月1日午前1時頃,
2616 H県I市J町1番地先路上において,
2617 V(当時3
2618 5歳,
2619 男性)に対し,
2620 傘の先端でその腹部を2回突いた上,
2621 足でその腹部及び脇腹等の上半身
2622 を多数回蹴る暴行を加え,
2623 よって,
2624 同人に,
2625 全治約2か月間を要する肋骨骨折及び全治約3週
2626 間を要する腹部打撲傷の傷害を負わせた。
2627
2628 」旨の傷害罪の被疑事実(以下「本件被疑事実」と
2629 いう。
2630
2631 )で通常逮捕され,
2632 同年3月1日,
2633 検察官に送致された。
2634
2635
2636 送致記録に編綴された主な証拠の概要は以下のとおりである(以下,
2637 日付はいずれも平成3
2638 1年である。
2639
2640 )。
2641
2642
2643 @ Vの警察官面前の供述録取書
2644 「2月1日午前1時頃,
2645 H県I市J町1番地先路上を歩いていたところ,
2646 前から2人の男
2647 たちが歩いてきた。
2648
2649 その男たちのうち,
2650 1人は黒色のキャップを被り,
2651 両腕にアルファベッ
2652 トが描かれた赤色のジャンパーを着ており,
2653 もう1人は,
2654 茶髪で黒色のダウンジャケットを
2655 着ていた。
2656
2657 その男たちとすれ違う際,
2658 黒色キャップの男の持っていた鞄が私の体に当たった。
2659
2660
2661 しかし,
2662 その男は謝ることなく通り過ぎたので,
2663 私は,
2664 『待てよ。
2665
2666 』と言いながら,
2667 背後から
2668 黒色キャップの男の肩に手を掛けた。
2669
2670 すると,
2671 その男たちは振り向いて私と向かい合った。
2672
2673
2674 茶髪の男が,
2675 『喧嘩売ってんのか。
2676
2677 』などと怒鳴ってきたので,
2678 私が,
2679 『鞄が当たった。
2680
2681 謝れ
2682 よ。
2683
2684 』と言うと,
2685 黒色キャップの男が,
2686 『うるせえ。
2687
2688 』などと怒鳴りながら,
2689 持っていた傘の
2690 先端で私の腹部を突いた。
2691
2692 私が後ずさりすると,
2693 その男は,
2694 再度,
2695 傘の先端で私の腹部を強
2696 く突いたため,
2697 私は,
2698 痛くて両手で腹部を押さえながら前屈みになった。
2699
2700 すると,
2701 茶髪の男
2702 と黒色キャップの男が,
2703 私の腹部や脇腹等の上半身を足でそれぞれ多数回蹴った。
2704
2705 私が,
2706 路
2707 上にうずくまると,
2708 男たちは去って行った。
2709
2710 通行人が通報してくれて救急車で病院に搬送さ
2711 れた。
2712
2713 これらの暴行により,
2714 私は,
2715 全治約2か月間を要する肋骨骨折及び全治約3週間を要
2716 する腹部打撲傷を負った。
2717
2718
2719 犯人の男たちについて,
2720 黒色キャップの男は,
2721 目深にキャップを被っていたのでその顔は
2722 よく見えなかった。
2723
2724 また,
2725 私は,
2726 黒色キャップの男の方を主に見ていたので,
2727 茶髪の男の顔
2728 はよく覚えていない。
2729
2730 」
2731 A 診断書
2732 2月1日に,
2733 Vについて,
2734 全治約2か月間を要する肋骨骨折及び全治約3週間を要する腹
2735 部打撲傷と診断した旨が記載されている。
2736
2737
2738 B Wの警察官面前の供述録取書
2739 「2月1日午前1時頃,
2740 H県I市J町1番地先路上を歩いていたところ,
2741 怒鳴り声が聞こ
2742 えたので右後方を見ると,
2743 道路の反対側で,
2744 男が2人組の男たちと向かい合っていた。
2745
2746 2人
2747 組の男たちのうち,
2748 1人は,
2749 黒色のキャップを被り,
2750 両腕にアルファベットが描かれた赤色
2751 のジャンパーを着ており,
2752 もう1人は,
2753 茶髪で黒色のダウンジャケットを着ていた。
2754
2755 黒色キ
2756 ャップの男は,
2757 持っていた傘の先端を相手の男に向けて突き出し,
2758 相手の男の腹部を2回突
2759 いた。
2760
2761 すると,
2762 相手の男は両手で腹部を押さえながら前屈みになった。
2763
2764 さらに,
2765 茶髪の男と
2766 黒色キャップの男は,
2767 それぞれ足で相手の男の腹部や脇腹等の上半身を多数回蹴った。
2768
2769 相手
2770 の男がその場にうずくまると,
2771 2人組の男たちは,
2772 その場から立ち去って行った。
2773
2774 相手の男
2775 がうずくまったまま動かなかったので心配になって駆け寄り,
2776 救急車を呼んだ。
2777
2778
2779 2人組の男たちについて,
2780 黒色キャップの男の顔は,
2781 キャップのつばで陰になってよく見
2782 えなかった。
2783
2784 茶髪の男の顔は,
2785 近くにあった街灯の明かりでよく見えた。
2786
2787 今,
2788 警察官から,
2789
2790 この写真の中に犯人がいるかもしれないし,
2791 いないかもしれないという説明を受けた上,
2792 2
2793
2794 0枚の男の写真を見せてもらったが,
2795 2番の写真の男が,
2796 『茶髪の男』に間違いない。
2797
2798 警察
2799 官から,
2800 この男はBであると聞いたが,
2801 知らない人である。
2802
2803 」
2804 C W立会いの実況見分調書
2805 犯行現場の写真及び図面が添付されており,
2806 また,
2807 Wが2人組の男たちの暴行を目撃した
2808 位置から同人らがいた位置までの距離は約8メートルであり,
2809 その間に視界を遮るようなも
2810 のはなく,
2811 付近に街灯が設置されていた旨が記載されている。
2812
2813
2814 D A及びBが犯人として浮上した経緯に係る捜査報告書
2815 犯行現場から約100メートル離れたコンビニエンスストアに設置された防犯カメラで撮
2816 影された画像の写真が添付されており,
2817 同写真には,
2818 2月1日午前0時50分頃,
2819 黒色のキ
2820 ャップを被り,
2821 両腕にアルファベットが描かれた赤色のジャンパーを着た男と,
2822 茶髪で黒色
2823 のダウンジャケットを着た男の2人組が訪れた状況が撮影されている。
2824
2825 また,
2826 同画像につい
2827 て,
2828 警察官が同店の店員から聴取したところ,
2829 同人は,
2830 「以前,
2831 ここに映っている黒色キャ
2832 ップの男と茶髪の男が酔って来店し,
2833 店内で騒いだので通報した。
2834
2835 その際,
2836 臨場した警察官
2837 が,
2838 彼らの免許証などを確認していたので,
2839 その警察官なら彼らの名前などを知っていると
2840 思う。
2841
2842 」と供述したため,
2843 その臨場した警察官に確認したところ,
2844 黒色キャップの男がA,
2845
2846 茶髪の男がBであることが判明した旨が記載されている。
2847
2848
2849 E A方及びB方の捜索差押調書
2850 2月28日,
2851 A方及びB方の捜索を実施し,
2852 A方において,
2853 傘,
2854 黒色キャップ,
2855 両腕にア
2856 ルファベットが描かれた赤色のジャンパー及びA所有のスマートフォンを発見し,
2857 B方にお
2858 いて,
2859 黒色のダウンジャケット及びB所有のスマートフォンを発見し,
2860 これらを差し押さえ
2861 た旨がそれぞれ記載されている。
2862
2863
2864 F 押収したスマートフォンに保存されたデータに関する捜査報告書
2865 A所有及びB所有のスマートフォンのデータを精査した結果,
2866 2月2日にAがB宛てに
2867 送信した「昨日はカラオケ店にいたことにしよう。
2868
2869 」と記載されたメールや,
2870 同メールにB
2871 が返信した「防犯カメラとかで嘘とばれるかも。
2872
2873 誰かに頼んで一緒にいたことにしてもら
2874 うのは?」と記載されたメールが発見された旨が記載されている。
2875
2876
2877 G Aの警察官面前の弁解録取書
2878 「本件被疑事実について,
2879 私はやっていない。
2880
2881 昨年,
2882 傷害罪で懲役刑に処せられ,
2883 現在そ
2884 の刑の執行猶予中であるため,
2885 二度と手は出さないと決めている。
2886
2887 Bは,
2888 中学の後輩である。
2889
2890
2891 2月1日午前1時頃は犯行場所とは別の場所にいたが,
2892 詳しいことは言いたくない。
2893
2894 生活状
2895 況について,
2896 結婚はしておらず,
2897 無職である。
2898
2899 約1年前に家を出てからは,
2900 交際相手や友人
2901 宅を転々としている。
2902
2903 」
2904 H Aの前科調書
2905 平成30年に傷害罪で懲役刑に処せられ,
2906 3年間の執行猶予が付された旨が記載されて
2907 いる。
2908
2909
2910 I Bの警察官面前の弁解録取書
2911 「本件被疑事実については間違いない。
2912
2913 」
2914 2 検察官は,
2915 A及びBの弁解録取手続を行い,
2916 以下の弁解録取書を作成した。
2917
2918
2919 J Aの検察官面前の弁解録取書
2920 G記載の内容と同旨。
2921
2922
2923 K Bの検察官面前の弁解録取書
2924 「本件被疑事実については間違いない。
2925
2926 Vの態度に立腹し,
2927 Aが傘の先端でVの腹部を突
2928 いた後,
2929 私とAがVの腹部や脇腹等の上半身を足で蹴った。
2930
2931 犯行当時,
2932 私は,
2933 茶髪で黒色の
2934 ダウンジャケットを着ており,
2935 Aは,
2936 黒色のキャップを被り,
2937 両腕にアルファベットが描か
2938 れた赤色のジャンパーを着ていた。
2939
2940 Aは,
2941 中学の先輩で,
2942 その頃からの付き合いである。
2943
2944 も
2945 し自分がこのように話したことが知られると,
2946 Aやその仲間の先輩たちなどから報復される
2947 かもしれない。
2948
2949 生活状況について,
2950 結婚はしておらず,
2951 無職である。
2952
2953 自宅で両親と住んでい
2954
2955 る。
2956
2957 前科はない。
2958
2959 」
2960 検察官は,
2961 3月1日,
2962 両名につき勾留請求と併せて接見等禁止の裁判を請求し,
2963 同日,
2964 裁判
2965 官は,
2966 A及びBにつき本件被疑事実で勾留するとともに,
2967 Aにつき接見等を禁止する旨を決
2968 定した。
2969
2970
2971 なお,
2972 Aの勾留質問調書には,
2973 Aの供述として,
2974 「本件被疑事実については検察官に述べた
2975 とおり。
2976
2977 」と記載され,
2978 Bの勾留質問調書には,
2979 Bの供述として,
2980 「本件被疑事実については間
2981 違いない。
2982
2983 」と記載されている。
2984
2985
2986 3 3月2日,
2987 Aの弁護人は,
2988 勾留状の謄本に記載された本件被疑事実を確認した上,
2989 Aと接見
2990 したところ,
2991 Aは,
2992 「実は,
2993 Vに暴力を振るって怪我をさせた。
2994
2995 Bと歩いていると,
2996 いきな
2997 り後ろから肩を手でつかまれた。
2998
2999 驚いて勢いよく振り返ったところ,
3000 手に持っていた傘の先端
3001 が,
3002 偶然Vの腹部に1回当たり,
3003 私の肩をつかんでいたVの手が外れた。
3004
3005 傘が当たったことに
3006 腹を立てたVが,
3007 拳骨で殴り掛かってきたので,
3008 私は,
3009 自分がやられないように,
3010 足でVの腹
3011 部を蹴った。
3012
3013 それでもVは,
3014 『謝れよ。
3015
3016 』などと言いながら両手で私の両肩をつかんで離さなか
3017 ったため,
3018 私は,
3019 Vから逃げたい一心で更にVの腹部や脇腹等の上半身を足で多数回蹴った。
3020
3021
3022 このとき,
3023 Bも,
3024 私を助けようとして,
3025 Vの腹部や脇腹等の上半身を足で蹴った。
3026
3027 」旨話した。
3028
3029
3030 4 その後,
3031 検察官は,
3032 所要の捜査を行い,
3033 以下の供述録取書を作成した。
3034
3035
3036 L Aの検察官面前の供述録取書
3037 下線部記載の内容と同旨。
3038
3039
3040 M Bの検察官面前の供述録取書
3041 「自分が,
3042 Vの態度に立腹してVの腹部や脇腹等の上半身を足で多数回蹴って怪我をさせ
3043 たことは間違いない。
3044
3045 このとき,
3046 Aも一緒にいたが,
3047 Aが何をしていたのかは見ていないの
3048 で分からない。
3049
3050 」
3051 N Wの検察官面前の供述録取書
3052 B記載の内容と同旨。
3053
3054
3055 5 検察官は,
3056 所要の捜査を遂げ,
3057 A及びBにつき,
3058 本件被疑事実と同一の内容の公訴事実で
3059 公訴を提起した(以下,
3060 同公訴提起に係る傷害被告事件につき,
3061 「本件被告事件」という。
3062
3063 )。
3064
3065
3066 Aの弁護人は,
3067 検察官から開示された関係証拠を閲覧した上,
3068 再度Aと接見したところ,
3069 A
3070 は,
3071 「本当は,
3072 Vの態度に腹が立って,
3073 VやWが言っているとおりの暴行を加えた。
3074
3075 しかし,
3076
3077 自分は同種前科による執行猶予中なので,
3078 もし認めたら実刑になるだろうし,
3079 少しでも暴行を
3080 加えたことを認めてしまうと,
3081 Vから損害賠償請求されるかもしれない。
3082
3083 検察官には供述録取
3084 書記載のとおり話してしまったが,
3085 裁判では,
3086 犯行現場にはいたものの,
3087 一切暴行を加えてい
3088 ないとして無罪を主張したい。
3089
3090 」旨話した。
3091
3092
3093 6 第1回公判期日における冒頭手続において,
3094
3095 【事例】の5記載の接見内容を踏まえ,
3096 Aは「犯
3097 行現場にはいたものの,
3098 一切暴行を加えていない。
3099
3100 」旨述べ,
3101 Aの弁護人も無罪を主張した。
3102
3103
3104 一方,
3105 B及びBの弁護人は,
3106 公訴事実は争わないとした。
3107
3108
3109 その後,
3110 検察官が,
3111 @,
3112 A,
3113 CからF,
3114 H,
3115 JからL及びN記載の各証拠の取調べを請求
3116 したところ,
3117 Aの弁護人は,
3118 @,
3119 C,
3120 JからL及びN記載の各証拠について「不同意」とし,
3121
3122 その他の証拠については「同意」との意見を述べた。
3123
3124 また,
3125 Bの弁護人は,
3126 検察官請求証拠
3127 についてすべて「同意」との意見を述べた。
3128
3129
3130 裁判所は,
3131 A及びBに対する本件被告事件を分離して審理する旨を決定し,
3132 分離後のBに
3133 対する本件被告事件の審理を先行して行った。
3134
3135
3136 7 Bは,
3137 自身の審理における被告人質問において,
3138
3139 「Aと歩いていたところ,
3140 いきなりVが『待
3141 てよ。
3142
3143 』などと言ってきたので,
3144 何か因縁を付けられたと思った私は,
3145 『喧嘩売ってんのか。
3146
3147 』
3148 などと言った。
3149
3150 すると,
3151 Vは,
3152 『鞄が当たった。
3153
3154 謝れよ。
3155
3156 』などと言ってきたので,
3157 私は,
3158 そ
3159 の横柄な態度に腹が立った。
3160
3161 Aが,
3162 『うるせえ。
3163
3164 』などと怒鳴りながら,
3165 持っていた傘の先端
3166 でVの腹部を2回突き,
3167 私は,
3168 前屈みになったVの腹部や脇腹等の上半身を足で多数回蹴っ
3169 た。
3170
3171 Aも,
3172 Vの腹部や脇腹等の上半身を足で多数回蹴っていた。
3173
3174 このことは,
3175 逮捕された当
3176
3177 初も話していたが,
3178 途中からAに報復されるのが怖くなり,
3179 検察官にきちんと話すことがで
3180 きなかった。
3181
3182 しかし,
3183 今は,
3184 きちんと反省していることを分かってもらおうと思い,
3185 本当の
3186 ことを話した。
3187
3188 」旨供述し,
3189 後日,
3190 結審した。
3191
3192
3193 8 その後,
3194 分離後のAに対する本件被告事件の審理において,
3195 V及びWの証人尋問など所要
3196 の証拠調べが行われ,
3197 さらに,
3198 Bの証人尋問が行われた。
3199
3200 その際,
3201 Bは,
3202 一貫して「本件
3203 犯行時にAが一緒にいたことは間違いないが,
3204 Aが何をしていたのかは見ていないので分か
3205 らない。
3206
3207 」旨証言した。
3208
3209
3210 後日,
3211 Aは,
3212 被告人質問で,
3213 自身が暴行を加えたことを否認した。
3214
3215
3216 〔設問1〕
3217 下線部に関し,
3218 裁判官が,
3219 Aにつき,
3220 刑事訴訟法第207条第1項の準用する同法第81
3221 条の「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断した思考過程を,
3222 その判断要
3223 素を踏まえ,
3224 具体的事実を指摘しつつ答えなさい。
3225
3226
3227 〔設問2〕
3228 検察官は,
3229 勾留請求時,
3230 B記載のWの警察官面前の供述録取書は,
3231 本件被疑事実記載の暴行
3232 に及んだのがA及びBであることを立証する証拠となると考えた。
3233
3234 A及びBそれぞれについて,
3235
3236 同供述録取書は直接証拠に当たるか,
3237 具体的理由を付して答えなさい。
3238
3239 また,
3240 直接証拠に当た
3241 らない場合は,
3242 同供述録取書から,
3243 前記暴行に及んだのがAであること又は前記暴行に及んだ
3244 のがBであることが,
3245 どのように推認されるか,
3246 検察官が考えた推認過程についても答えなさ
3247 い。
3248
3249 なお,
3250 同供述録取書に記載された供述の信用性は認められることを前提とする。
3251
3252
3253 〔設問3〕
3254 Aの弁護人は,
3255 3月2日の時点で,
3256 下線部のAの話を踏まえ,
3257 仮にAが公訴提起された場
3258 合に冒頭手続でどのような主張をするか検討した。
3259
3260 本件被疑事実中,
3261 「傘の先端でその腹部を
3262 2回突いた」こと及び「足でその腹部及び脇腹等の上半身を多数回蹴る暴行を加え」たことに
3263 ついて,
3264 それぞれ考えられる主張を,
3265 具体的理由を付して答えなさい。
3266
3267
3268 〔設問4〕
3269 下線部に関し,
3270 Aの弁護人が無罪を主張したことについて,
3271 弁護士倫理上の問題はあるか,
3272
3273 司法試験予備試験用法文中の弁護士職務基本規程を適宜参照して論じなさい。
3274
3275
3276 〔設問5〕
3277 下線部のBの証人尋問の結果を踏まえ,
3278 検察官は,
3279 新たな証拠の取調べを請求しようと考
3280 えた。
3281
3282 この場合において,
3283 検察官が取調べを請求しようと考えた証拠を答えなさい。
3284
3285 また,
3286 そ
3287 の証拠について,
3288 弁護人が不同意とした場合に,
3289 検察官は,
3290 どのような対応をすべきか,
3291 根拠
3292 条文及びその要件該当性について言及しつつ答えなさい。
3293
3294
3295
3296 (出題の趣旨)
3297 本問は,
3298 犯人性が争点となる傷害事件(共犯事件)を題材に,
3299 接見等禁止におけ
3300 る罪証隠滅のおそれの判断要素(設問1),
3301 犯人性を認定する証拠構造(設問2),
3302
3303 被疑者の弁解等を踏まえた事実認定上及び法律上の主張(設問3),
3304 弁護士倫理上
3305 の問題点(設問4),
3306 刑事訴訟法第321条1項1号書面の証拠能力(設問5)に
3307 ついて,
3308 【事実】に現れた証拠や事実,
3309 手続の経過を適切に把握した上で,
3310 法曹三
3311
3312 者それぞれの立場から,
3313 主張・立証すべき事実,
3314 その対応についての思考過程や問
3315 題点を解答することを求めており,
3316 刑事事実認定の基本構造,
3317 刑事手続についての
3318 基本的知識の理解及び基礎的実務能力を試すものである。
3319
3320
3321
3322 [一般教養科目]
3323 次の文章は,
3324 ハーバート・スペンサー著『政府の適正領域』のうち,
3325 「第一の手紙」からの抜粋
3326 である。
3327
3328 これを読んで,
3329 後記の設問に答えなさい。
3330
3331
3332 (省
3333
3334 略)
3335
3336 〔設問1〕
3337 本文における著者の主張を,
3338 10行程度でまとめなさい。
3339
3340
3341 〔設問2〕
3342 本文を著者が記したのは1840年代前半である。
3343
3344 当時,
3345 イギリスにおいては義務教育も国営
3346 鉄道も存在せず,
3347 教育や鉄道事業は政府以外の機関・団体によって行われていた。
3348
3349
3350 本文における著者の主張は,
3351 今日の社会においてどのように評価し得るか,
3352 25行程度で論じ
3353 なさい。
3354
3355
3356 なお,
3357 論述に当たっては,
3358 以下のテーマのうち一つを取り上げ,
3359 それに対する政府の関与の在
3360 り方について,
3361 自らの見解を提示すること。
3362
3363
3364 @
3365
3366 商業の規制
3367
3368 A
3369
3370 教育
3371
3372 B
3373
3374 道路・鉄道の建設
3375
3376 【出典】ハーバート・スペンサー
3377 森村進編訳『ハーバート・スペンサー コレクション』
3378
3379 (出題の趣旨)
3380 設問1は,
3381 本文から読み取ることのできる著者の主張に関する正確な理解を問う
3382 ものである。
3383
3384 解答に当たっては,
3385 政府の成立やその在り方に関する著者の考え方を
3386 正確に理解した上で,
3387 自分の言葉で的確に論述することが求められる。
3388
3389
3390 設問2は,
3391 上記著者の主張の評価について,
3392 各自の見解を問うものである。
3393
3394 解答
3395 に当たっては,
3396 上記主張の根拠や時代的背景等を踏まえた上で,
3397 上記主張を今日の
3398 社会においてどのように評価し得るかにつき,
3399 自身が選択したテーマを題材に自身
3400 の立場を明確に示し,
3401 説得的に論述することが求められる。
3402
3403 また,
3404 本文が記された
3405 時代からの社会情勢の変化等を意識しつつ,
3406 人々の生活や民間の活動に政府が関与
3407 することの肯定的側面及び否定的側面について的確に分析し,
3408 両者を比較検討した
3409 上で,
3410 具体的かつ説得的な考察をすることが求められる。
3411
3412
3413 いずれの設問においても,
3414 全体として指定の分量で簡潔に記述する能力も求めら
3415 れる。
3416
3417
3418
3419