1 短答式試験問題集[刑法]
2
3 - 1 -
4
5 [刑法]
6 〔第1問〕(配点:2)
7 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
8 正しいものはどれか。
9
10 (解答欄
11 は,
12 [No.1])
13 1.甲は,
14 Xに対し,
15 暴行や脅迫を用いて,
16 自殺するように執拗に要求し,
17 要求に応じて崖から
18 海に飛び込んで自殺するしかないとの精神状態に陥らせた上で,
19 Xを崖から海に飛び込ませて
20 死亡させた。
21
22 この場合,
23 甲に,
24 Xに対する殺人罪は成立しない。
25
26
27 2.甲は,
28 追死する意思がないのにあるように装い,
29 その旨誤信したXに心中を決意させた上で,
30
31 毒物を渡し,
32 それを飲み込ませて死亡させた。
33
34 この場合,
35 甲に,
36 Xに対する殺人罪は成立しな
37 い。
38
39
40 3.甲は,
41 財物を奪取するために,
42 当該財物の占有者Xに対し,
43 反抗を抑圧するに足りる程度の
44 暴行や脅迫を用いて,
45 当該財物を差し出すしかないとの精神状態に陥らせた上で,
46 当該財物を
47 差し出させた。
48
49 この場合,
50 甲に,
51 Xに対する強盗罪は成立せず,
52 窃盗罪の間接正犯が成立する。
53
54
55 4.甲は,
56 日頃から暴行を加えて自己の意のままに従わせて万引きをさせていた満12歳の実子
57 Xに対し,
58 これまでと同様に万引きを命じて実行させた。
59
60 この場合,
61 Xが是非善悪の判断能力
62 を有する者であれば,
63 甲に,
64 窃盗罪の間接正犯は成立せず,
65 Xとの間で同罪の共同正犯が成立
66 する。
67
68
69 5.甲は,
70 Xが管理する工事現場に保管されている同人所有の機械を,
71 同人に成り済まして,
72
73 をXであると誤信した中古機械買取業者Yに売却し,
74 同人に同機械を同所から搬出させた。
75
76
77 の場合,
78 甲に,
79 Xに対する窃盗罪の間接正犯が成立する。
80
81
82 〔第2問〕(配点:3)
83 横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
84 誤っているも
85 のを2個選びなさい。
86
87 (解答欄は,
88 [No.2],
89 [No.3]順不同)
90 1.甲は,
91 乙からの委託に基づき,
92 同人所有の衣類が入った,
93 施錠されていたスーツケース1個
94 を預かり保管していたところ,
95 衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え,
96 勝手に
97 開錠し,
98 中から衣類を取り出した。
99
100 この場合,
101 遅くとも衣類を取り出した時点で不法領得の意
102 思の発現と認められる外部的行為があったといえるから,
103 甲には,
104 横領罪が成立する。
105
106
107 2.甲は,
108 乙と共に一定の目的で積み立てていた現金を1個の金庫の中に入れて共同保管してい
109 たところ,
110 乙に無断でその現金全てを抜き取り,
111 自己の遊興費に費消した。
112
113 この場合,
114 甲には,
115
116 横領罪が成立する。
117
118
119 3.株式会社の取締役経理部長甲は,
120 同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として
121 自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。
122
123 この場合,
124 甲が,
125 会社の不利益を回
126 避する意図を有していたとしても,
127 当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うも
128 ので,
129 甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど,
130 専ら会社のためにしたとは認められな
131 いときは,
132 甲には,
133 業務上横領罪が成立する。
134
135
136 4.甲は,
137 乙から某日までに製茶を買い付けてほしい旨の依頼を受け,
138 その買付資金として現金
139 を預かっていたところ,
140 その現金を確実に補填するあてがなかったにもかかわらず,
141 後日補填
142 するつもりで自己の遊興費に費消した。
143
144 この場合,
145 甲がたまたま補填することができ,
146 約定ど
147 おりに製茶の買い付けを行ったとしても,
148 甲には,
149 横領罪が成立する。
150
151
152 5.甲は,
153 自己が所有し,
154 その旨登記されている土地を乙に売却し,
155 その代金を受領したにもか
156 かわらず,
157 乙への移転登記が完了する前に,
158 同土地に自己を債務者とし丙を抵当権者とする抵
159 当権を設定し,
160 その登記が完了した。
161
162 この場合,
163 同抵当権が実行されることなく,
164 後日,
165 その
166 登記が抹消されたとしても,
167 甲には,
168 横領罪が成立する。
169
170
171 - 2 -
172
173 〔第3問〕(配点:2)
174 学生A及びBは,
175 過剰防衛に関する次の【事例】について,
176 後記【会話】のとおり議論している。
177
178
179 【会話】の中の@からCまでの(
180
181 )内から適切なものを選んだ場合,
182 正しいものの組合せは,
183
184
185 記1から5までのうちどれか。
186
187 (解答欄は,
188 [No.4])
189 【事
190
191 例】
192
193 T.甲は,
194 同じ居室にいた乙が机を押し倒してきたため,
195 反撃として,
196 同机を乙に向けて押し返
197 した。
198
199 これにより,
200 乙は転倒し,
201 左手中指の腱を断裂した。
202
203 乙は,
204 机の下敷きになっており,
205
206 直ちに強い攻撃はできなかったが,
207 体勢を立て直せば間もなく攻撃を再開できる状況であっ
208 た。
209
210 甲は,
211 引き続き,
212 防衛の意思で,
213 必要な限度を超えて,
214 乙の顔面を殴ったが,
215 これによ
216 り乙に怪我は生じなかった。
217
218
219 U.甲は,
220 乙からいきなり殴られ,
221 更に攻撃を加えられそうになったので,
222 反撃として,
223 乙の顔
224 面を殴った。
225
226 乙は転倒して頭部を地面に打ち付け,
227 意識を失って動かなくなったが,
228 腹が立
229 っていた甲は,
230 引き続き,
231 専ら攻撃の意思で,
232 倒れている乙の胸部を蹴り付け,
233 肋骨骨折を
234 負わせた。
235
236 その後,
237 乙は,
238 頭部を地面に打ち付けた際に生じた脳内出血が原因で死亡した。
239
240
241 【会
242
243 話】
244
245 学生A. Tの事例で,
246 甲が机を押し返した行為は,
247 急迫不正の侵害に対する反撃だけど,
248 その行
249 為と乙の顔面を殴った行為との関係は,
250 どのように考えるべきだろうか。
251
252
253 学生B.その点は,
254 時間的・場所的な関係や甲の主観面等に照らし,
255 @(a.別個の行為・b.
256 一連一体の行為)と捉えるべきだろう。
257
258
259 学生A.そうすると,
260 甲には,
261 どのような犯罪が成立するだろうか。
262
263
264 学生B.甲には,
265 A(c.過剰防衛としての傷害罪が成立する・d.暴行罪のみが成立する)だ
266 ろう。
267
268
269 学生A.Uの事例でも,
270 甲が乙の顔面を殴った行為は,
271 急迫不正の侵害に対する反撃であること
272 に変わりないよね。
273
274 甲には,
275 どのような犯罪が成立するだろうか。
276
277
278 学生B.乙が意識を失って動かなくなっているのに,
279 専ら攻撃の意思で蹴り付けているのだから,
280
281 顔面を殴る行為と胸部を蹴り付ける行為の間には断絶があると思う。
282
283 甲には,
284 B(e.過
285 剰防衛としての傷害致死罪が成立する・f.傷害罪のみが成立する)という結論が妥当だ
286 ろう。
287
288
289 学生A.Uの事例で,
290 B君のように,
291 両暴行の間に断絶があると解すると,
292 C(g.違法性が否
293 定されるべき行為が遡って違法と評価されることになる・h.専ら攻撃の意思で胸部を蹴
294 り付けた場合の方が,
295 防衛の意思で胸部を蹴り付けた場合より軽い罪が成立する)という
296 問題が生じるのではないか。
297
298
299 学生B.その点は,
300 量刑上考慮すれば足りるという説明が可能なのではないか。
301
302
303 1.@a
304
305 Be
306
307 2.@b
308
309 Cg
310
311 3.Ad
312
313 Be
314
315 - 3 -
316
317 4.Ac
318
319 Cg
320
321 5.Bf
322
323 Ch
324
325 〔第4問〕(配点:3)
326 遺棄の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
327 正しいものを
328 2個選びなさい。
329
330 (解答欄は,
331 [No.5],
332 [No.6]順不同)
333 1.遺棄罪(刑法第217条)の成立には,
334 生命に対する危険の発生が必要である。
335
336
337 2.妊婦の依頼を受け,
338 母体保護法上,
339 許されない堕胎を行った産婦人科医師が,
340 それにより出
341 生した未熟児について,
342 医療設備の整った病院に搬送することが容易であり,
343 同病院の医療を
344 受けさせれば,
345 同児が短期間内に死亡することはなく,
346 むしろ生育する可能性がある場合にお
347 いて,
348 そのことを認識しながら,
349 生存に必要な保護を行わず同児を死亡させたときは,
350 同医師
351 に,
352 保護責任者遺棄等致死罪(刑法第219条,
353 第218条)が成立し得る。
354
355
356 3.保護責任者遺棄等罪(刑法第218条)にいう「老年者,
357 幼年者,
358 身体障害者又は病者」は,
359
360 例示列挙であり,
361 同罪の客体はそれらの者に限られず,
362 扶助を必要とする者であれば足りる。
363
364
365 4.保護責任者遺棄等致傷罪(刑法第219条,
366 第218条)には,
367 傷害結果に故意がある場合
368 は含まれない。
369
370
371 5.保護責任者遺棄等罪(刑法第218条)における遺棄には,
372 置き去りは含まれない。
373
374
375 〔第5問〕(配点:2)
376 共犯と錯誤に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
377 正しいもの
378 の個数を後記1から5までの中から選びなさい。
379
380 (解答欄は,
381 [No.7])
382 ア.甲及び乙がAに対する暴行を共謀したが,
383 Aの態度に激高した甲が殺意をもってAを殺害し
384 た場合,
385 甲及び乙に殺人罪の共同正犯が成立するが,
386 乙は傷害致死罪の刑で処断される。
387
388
389 イ.甲及び乙がAに対する強盗を共謀したが,
390 その強盗の機会に,
391 甲が過失によってAに傷害を
392 負わせた場合,
393 甲及び乙に強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
394
395
396 ウ.甲及び乙が共謀して,
397 公務員Aに虚偽の内容の公文書の作成を教唆することにしたが,
398 乙は
399 Aを買収することに失敗したため,
400 甲に無断で,
401 Bに公文書を偽造することを教唆し,
402 Bが公
403 文書を偽造した場合,
404 甲に虚偽公文書作成罪の教唆犯が成立する。
405
406
407 エ.甲が乙にA方に侵入して金品を窃取するように教唆して,
408 その犯行を決意させたが,
409 乙はA
410 方と誤認して隣のB方に侵入してしまい,
411 B方から金品を窃取した場合,
412 甲にB方への住居侵
413 入罪及びBに対する窃盗罪の教唆犯は成立しない。
414
415
416 オ.甲が乙の傷害行為を幇助する意思で,
417 乙に包丁を貸与したところ,
418 乙が殺意をもってその包
419 丁でAを刺殺した場合,
420 甲に殺人罪の幇助犯が成立し,
421 傷害致死罪の幇助犯は成立しない。
422
423
424 1.0個
425
426 2.1個
427
428 3.2個
429
430 4.3個
431
432 - 4 -
433
434 5.4個
435
436 〔第6問〕(配点:2)
437 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
438 誤っているものはどれか。
439
440 (解
441 答欄は,
442 [No.8])
443 1.甲は,
444 乙から,
445 大学の入学試験を代わりに受けてほしいと頼まれてこれを引き受け,
446 乙に成
447 り済まして入学試験を受け,
448 乙名義で答案を作成して提出した。
449
450 この場合,
451 甲に有印私文書偽
452 造罪が成立する。
453
454
455 2.甲は,
456 架空請求により金銭をだまし取るために使おうと考え,
457 実在しない「法務局民事訴訟
458 管理センター」名義で,
459 契約不履行による民事訴訟が提起されているので連絡をされたい旨記
460 載されたはがきを印刷し,
461 一般人をして実在する公務所が権限内で作成した公文書であると誤
462 信させるに足りる程度の形式・外観を備えた文書を作成した。
463
464 この場合,
465 甲に有印公文書偽造
466 罪が成立する。
467
468
469 3. 甲は,
470 X市立病院の事務長を務める公務員であるが,
471 同病院のために発注書を作成する権限
472 を授与されていないのに,
473 行使の目的で,
474 同病院が業者Aに医療器具を発注していないにもか
475 かわらず,
476 それを発注した旨を記載した内容虚偽の「X市立病院事務長甲」名義の発注書を作
477 成した。
478
479 この場合,
480 甲に虚偽有印公文書作成罪が成立する。
481
482
483 4.甲は,
484 支払督促制度を悪用して乙の財産を不正に差し押さえるなどして金銭を得ようと考え,
485
486 乙に対する内容虚偽の支払督促を簡易裁判所に申し立てた上,
487 乙宛ての支払督促正本等を配達
488 しようとした郵便配達員に対し,
489 乙本人を装い,
490 郵便送達報告書の「受領者の押印又は署名」
491 欄に乙の氏名を記載して提出し,
492 支払督促正本等を受領した。
493
494 この場合,
495 甲に有印私文書偽造
496 罪が成立する。
497
498
499 5.甲は,
500 消費者金融業者に提出する目的で,
501 公文書である乙の国民健康保険被保険者証の氏名
502 欄に自己の氏名が印刷された紙を貼り付けた上で,
503 複写機を使用してこれをコピーし,
504 一般人
505 をして甲の国民健康保険被保険者証の真正なコピーであると誤信させるに足りる程度の形式・
506 外観を備えたものを作成した。
507
508 この場合,
509 甲に有印公文書偽造罪が成立する。
510
511
512
513 - 5 -
514
515 〔第7問〕(配点:2)
516 学生A,
517 B及びCは,
518 後記【会話】のとおり議論している。
519
520 【会話】中の@からDまでの(
521
522
523
524 内から適切なものを選んだ場合,
525 正しいものの組合せは,
526 後記1から5までのうちどれか。
527
528 (解答
529 欄は,
530 [No.9])
531 【会
532
533 話】
534
535 学生A.人に意図的に害悪を加えることは,
536 本来であれば許されないはずです。
537
538 それにもかかわ
539 らず,
540 刑罰という苦痛を人に与えることが正当化される実質的な根拠は何でしょうか。
541
542
543 学生B.私は,
544 刑罰は犯罪に対する非難を含むもので,
545 その意味で@(a.応報・b.社会統制
546 の手段)としての性質を持ち,
547 A(c.犯罪者の改善更生・d.正義の実現)という観点
548 に照らして,
549 犯罪に対する反作用であること自体に刑罰の正当化根拠を見いだすことがで
550 きると考えます。
551
552 もう少し詳しく言うと,
553 自らの意思で犯罪行為を行うことを決意し実行
554 した犯罪者に対して,
555 その意思決定を回顧的に非難する点に刑罰の正当化根拠があるとい
556 うことです。
557
558
559 学生C.B君は,
560 B(e.非決定論・f.決定論)の立場を前提にしているのですね。
561
562 しかし,
563
564 (@)としての刑罰自体に刑罰を正当化する根拠があるという説明では,
565 刑罰を科すこと
566 それ自体が目的ということになりませんか。
567
568 刑罰は,
569 国家の制度の一種なのだから,
570 国民
571 の現実的な利益を実現する手段として合目的性の観点から正当化されるべきではないでし
572 ょうか。
573
574 私は,
575 刑罰を科すことが許される根拠は,
576 C(g.被害感情の緩和・h.犯罪の
577 予防)にあると思います。
578
579 犯罪によって得られる快楽を上回る苦痛を刑罰として予告すれ
580 ば,
581 一般人に対する威嚇的な効果があるからです。
582
583 刑罰は(C)という公的利益の達成に
584 資するために,
585 人に科すことが正当化されるのだと思います。
586
587
588 学生A.私も,
589 基本的にC君の考えに賛成ですが,
590 (C)の観点を強調しすぎると,
591 D(i.責任
592 ・j.被害感情)の程度を超える刑罰を科すことも肯定されかねず,
593 刑法の基本原則に反
594 する帰結をもたらすことになるのではないでしょうか。
595
596
597 1.@a
598
599 Bf
600
601 2.@b
602
603 Dj
604
605 3.Ad
606
607 Ch
608
609 - 6 -
610
611 4.Ac
612
613 Di
614
615 5.Be
616
617 Cg
618
619 〔第8問〕(配点:4)
620 公務執行妨害罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,
621 正しい場合に
622 は1を,
623 誤っている場合には2を選びなさい。
624
625 (解答欄は,
626 アからオの順に[No.10]から[No.
627 14])
628 ア.甲は,
629 市役所の生活保護係職員乙による生活保護に関する説明に不満を抱き,
630 同人に罵声
631 を浴びせながら抗議するとともに,
632 丸めたパンフレットを同人の顔面付近に2,
633 3回突き付
634 け,
635 そのうち1回はパンフレットの先端が同人の顎に触れ,
636 さらに,
637 約2回にわたり,
638 乙が
639 座っている椅子を両手で持って椅子の前脚を床から持ち上げては落とすことによりその身体
640 を揺さぶった。
641
642 甲の行為は,
643 公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たらないので,
644 甲に公務執
645 行妨害罪は成立しない。
646
647 [No.10]
648 イ.甲は,
649 警察官乙らが捜索差押許可状に基づき甲方の捜索に来た際,
650 乙らにより甲方玄関ドア
651 の鍵が開けられる前に,
652 居室内にあった覚醒剤入りの注射器を足で踏み付けて壊した。
653
654 甲の行
655 為は,
656 公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たらないので,
657 甲に公務執行妨害罪は成立しない。
658
659
660 [No.11]
661 ウ.窃盗犯人甲は,
662 その窃盗行為を目撃した制服警察官乙から追跡されている途中で,
663 逮捕を免
664 れるため,
665 同人に対し,
666 その反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて抵抗し,
667 そのまま逃
668 走した。
669
670 甲には事後強盗罪のみが成立し,
671 公務執行妨害罪は成立しない。
672
673 [No.12]
674 エ.甲は,
675 日本国内にある外国大使館の職員乙がその大使館の業務に従事していた際に,
676 同人の
677 顔面を殴った。
678
679 乙は「公務員」に当たらないので,
680 甲に公務執行妨害罪は成立しない。
681
682 [No.
683 13]
684 オ.甲は,
685 税務調査を免れるため,
686 同調査のため甲方に来た所轄税務署職員乙の顔面を殴った。
687
688
689 その際,
690 乙は,
691 規則により調査時に携帯が義務付けられている検査章を携帯していなかったが,
692
693 甲がその呈示を求めることはなかった。
694
695 乙に規則違反があった以上,
696 乙の調査は職務の権限外
697 の行為であり,
698 甲に公務執行妨害罪は成立しない。
699
700 [No.14]
701
702 - 7 -
703
704 〔第9問〕(配点:2)
705 原因において自由な行為に関する次の各【見解】に従って後記の各【事例】における甲の罪責を
706 検討した場合,
707 後記1から5までの各【記述】のうち,
708 誤っているものはどれか。
709
710
711 (解答欄は,
712
713 [No.
714 15])
715 【見
716
717 解】
718
719 A.責任能力がある状態で行われた原因行為を実行行為と捉える。
720
721
722 B.責任能力を欠いた状態で行われた結果行為を実行行為と捉えつつ,
723 責任能力は意思決定時に
724 存在すれば足り,
725 必ずしも実行行為時に存在することは必要ない。
726
727
728 【事
729
730 例】
731
732 T.甲は,
733 X宅に赴いて同人を殺害しようと決意し,
734 心神喪失状態に陥る可能性があることを認
735 識しつつ,
736 自宅において景気づけのために覚醒剤を使用したところ,
737 心神喪失状態に陥り,
738
739 初の計画どおりXを殺害した。
740
741
742 U.甲は,
743 X宅に赴いて同人を殺害しようと決意し,
744 心神喪失状態に陥る可能性があることを認
745 識しつつ,
746 自宅において景気づけのために覚醒剤を使用したところ,
747 心神喪失状態に陥ったが,
748
749 X宅には赴かず,
750 Xの殺害には及ばなかった。
751
752
753 V.甲は,
754 覚醒剤を使用すると粗暴になり周囲に暴行を加える習癖があると知りつつ,
755 覚醒剤を
756 使用した結果,
757 心神喪失状態に陥り,
758 Xと口論になり,
759 殺意を生じて同人を殺害した。
760
761
762 【記
763
764 述】
765
766 1.Aの見解によれば,
767 事例Tでは,
768 甲に,
769 Xに対する殺人既遂罪が成立し得る。
770
771
772 2.Aの見解を採った上で,
773 未遂犯の成立時期は結果発生の現実的な危険性が生じた段階に求め
774 られるべきで,
775 それが常に実行行為の開始段階に認められる必然性はないと考えれば,
776 事例U
777 では,
778 甲に,
779 Xに対する殺人未遂罪は成立しない。
780
781
782 3.Aの見解によれば,
783 事例Vでは,
784 甲に,
785 Xに対する殺人既遂罪が成立し得る。
786
787
788 4.Bの見解によれば,
789 事例Tでは,
790 甲に,
791 Xに対する殺人既遂罪が成立し得る。
792
793
794 5.Bの見解によれば,
795 事例Uでは,
796 甲に,
797 Xに対する殺人未遂罪は成立しない。
798
799
800
801 - 8 -
802
803 〔第10問〕(配点:2)
804 親族間の犯罪に関する特例について次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場
805 合,
806 誤っているものはどれか。
807
808 (解答欄は,
809 [No.16])
810 1.甲が,
811 実母乙の使用するタンスから,
812 乙がその友人丙から預かり同タンスに保管していた丙
813 所有の宝石を窃取した場合,
814 甲の窃取行為について刑は免除されない。
815
816
817 2.甲が,
818 実父乙の内縁の妻である丙が乙から預かり保管していた乙所有の時計を窃取した場合,
819
820 甲の窃取行為について刑は免除されない。
821
822
823 3.甲は,
824 家庭裁判所から実父乙の成年後見人に選任されていたところ,
825 後見の事務として業務
826 上預かり保管中の乙の預金を引き出して自己の借金の返済に充てた場合,
827 甲の横領行為につい
828 て刑は免除されない。
829
830
831 4.甲が,
832 友人乙を教唆して,
833 乙の実父丙が所有し,
834 管理している自動車を窃取させた場合,
835
836 の窃盗教唆行為について刑は免除されない。
837
838
839 5.甲が,
840 同居していない祖父乙を恐喝して同人から現金の交付を受けた場合,
841 甲の恐喝行為に
842 ついて刑は免除されない。
843
844
845 〔第11問〕(配点:4)
846 次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,
847 正しい場合には1を,
848 誤っている場合
849 には2を選びなさい。
850
851 (解答欄は,
852 アからオの順に[No.17]から[No.21])
853 ア.甲及び乙は,
854 深夜,
855 路上を一人で歩いていたV女を見付け,
856 約6キロメートル先のひとけの
857 ない工事現場にV女を連れ込んで強制的にV女と性交しようと決意し,
858 二人でV女の背後から
859 その身体を抱きかかえながら,
860 付近に停めていた自動車にV女を押し込んで乗せ,
861 同車を発進
862 させたが,
863 性交には至らなかった。
864
865 甲及び乙には,
866 強制性交等未遂罪の共同正犯が成立する。
867
868
869 [No.17]
870 イ.甲は,
871 強制的にV女と性交しようと決意し,
872 深夜,
873 路上において,
874 V女を押さえ付けて反抗
875 を抑圧したが,
876 付近から人の声が聞こえたため性交を諦めて,
877 V女のハンドバッグから財布を
878 奪い取ろうと考え,
879 「騒ぐな。
880
881 殺すぞ。
882
883 」と申し向けてV女の畏怖心を強めた上,
884 財布を奪い取
885 った。
886
887 甲には,
888 強盗・強制性交等未遂罪が成立する。
889
890 [No.18]
891 ウ.甲は,
892 Vが居住する木造家屋に火をつけて焼損しようと考え,
893 同家屋台所において,
894 プロパ
895 ンガスを多量かつ長時間にわたり放出するとともに,
896 ガソリン約18リットルを撒布したが,
897
898 点火行為には至らなかった。
899
900 甲には,
901 現住建造物等放火未遂罪が成立する。
902
903 [No.19]
904 エ.甲は,
905 Vを殺害する意思で,
906 毒入りの菓子を箱詰めし,
907 それをV宅に宛てて宅配便で発送し
908 た。
909
910 しかし,
911 仕事に嫌気が差した配達員により,
912 その菓子は配達途中に川に捨てられた。
913
914 甲に
915 は,
916 殺人未遂罪が成立する。
917
918 [No.20]
919 オ.甲は,
920 V宅に侵入し,
921 金品を強取しようと決意し,
922 Vを脅すためのナイフを入手した上,
923
924 れを携行してV宅に向かった。
925
926 しかし,
927 V宅に至る手前で,
928 罪悪感を覚え,
929 計画を中止するこ
930 とに決め,
931 自宅に引き返した。
932
933 甲には,
934 強盗予備罪の中止犯が成立する。
935
936 [No.21]
937
938 - 9 -
939
940 〔第12問〕(配点:2)
941 業務妨害罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
942 誤っている
943 ものはどれか。
944
945 (解答欄は,
946 [No.22])
947 1.利用客のキャッシュカードの暗証番号等を盗撮する目的で,
948 現金自動預払機が2台設置さ
949 れている銀行の無人出張所において,
950 そのうち1台にカメラを設置し,
951 当該現金自動預払機
952 に客を誘導する意図で,
953 一般客を装い,
954 もう1台の現金自動預払機を2時間占拠した場合,
955
956 偽計業務妨害罪が成立する。
957
958
959 2.講演会の主催者が閲覧する可能性を認識した上,
960 インターネット上の掲示板に,
961 当該講演
962 会の会場に放火するという趣旨の書き込みをし,
963 当該主催者に閲覧させた結果,
964 当該講演会
965 を中止させた場合,
966 威力業務妨害罪が成立する。
967
968
969 3.公職選挙法上の選挙長による立候補届出受理事務を妨害する目的で,
970 その届出場所において,
971
972 突如大声を発し,
973 ボールペンを机にたたき付けるという暴行・脅迫に至らない言動を用いてそ
974 の事務を滞らせた場合,
975 威力業務妨害罪が成立する。
976
977
978 4.知人Aに対する嫌がらせの目的で,
979 同人に成り済まし,
980 同人に無断で宅配ピザ店に電話をか
981 けてピザ50枚を注文し,
982 これを同人宅まで配達することを依頼して,
983 同店店員にピザ50枚
984 を作らせ,
985 配達させた場合,
986 偽計業務妨害罪が成立する。
987
988
989 5.弁護士Xの弁護士としての活動を困難にさせる目的で,
990 同人から,
991 同人が携行し,
992 その業務
993 にとって重要な訴訟記録等が入ったかばんを奪い取った上,
994 自宅に保管した場合,
995 偽計業務妨
996 害罪が成立する。
997
998
999
1000 - 10 -
1001
1002 〔第13問〕(配点:2)
1003 幇助犯の成否について,
1004 学生A及びBが次の【会話】のとおり議論している。
1005
1006 【会話】中の@か
1007 らDまでの(
1008
1009 )内に後記アからオまでの【事例群】から適切な事例を入れた場合,
1010 正しいものの
1011
1012 組合せは,
1013 後記1から5までのうちどれか。
1014
1015 (解答欄は,
1016 [No.23])
1017 【会
1018
1019 話】
1020
1021 学生A. (@) に,
1022 乙に幇助犯は成立すると思うか。
1023
1024
1025 学生B.幇助行為と結果との間に,
1026 物理的因果性も心理的因果性もないと思うので,
1027 乙に幇助犯
1028 は成立しないだろう。
1029
1030
1031 学生A. (A) は,
1032 どうだろうか。
1033
1034
1035 学生B.乙の行為の有無にかかわらず,
1036 生じた結果は同じだったと考えると,
1037 共犯行為と結果と
1038 の間の因果関係に欠けるという結論になるようにも思えるね。
1039
1040
1041 学生A.しかし,
1042 幇助犯は,
1043 正犯の実行が容易になり,
1044 結果の発生が促進されたという関係さえ
1045 あれば,
1046 行為と結果との因果関係を認めるのが判例だろう。
1047
1048
1049 学生B.なるほど。
1050
1051 乙がいることで甲が安心でき,
1052 精神的に後押ししたという心理的因果性があ
1053 りそうなので,
1054 乙に幇助犯の成立を認めるべきだね。
1055
1056
1057 学生A. (B) は,
1058 どうだろうか。
1059
1060
1061 学生B. (A) と同じ理由で,
1062 乙に幇助犯の成立が認められるように思う。
1063
1064 ただ,
1065 教唆犯の成立
1066 を認める余地もあるかもしれないね。
1067
1068
1069 学生A. (C) は,
1070 どうだろうか。
1071
1072
1073 学生B.判例は片面的幇助を肯定する以上,
1074 乙に幇助犯が成立するんじゃないか。
1075
1076
1077 学生A. (D) は,
1078 どうだろうか。
1079
1080
1081 学生B.この場合,
1082 乙の立場を考えれば,
1083 幇助犯が成立すると思うよ。
1084
1085
1086 【事例群】
1087 ア.乙が,
1088 甲が空き巣に入ろうとしていることを知りながら,
1089 甲に黙ってV方玄関の施錠を外し
1090 たところ,
1091 甲が玄関からV方に侵入し,
1092 空き巣に成功した場合
1093 イ.乙が,
1094 空き巣に入ろうと決意していた甲から頼まれ,
1095 甲が空き巣に入る際,
1096 見張りをしてい
1097 たところ,
1098 特に何も起きないまま,
1099 甲が空き巣に成功した場合
1100 ウ.甲が万引きをしようとしていることを目撃した店員乙が,
1101 甲と意思を通じることなく,
1102 甲の
1103 万引きを黙認し,
1104 甲が万引きに成功した場合
1105 エ.甲が空き巣に入ることを知り,
1106 乙が甲に黙って見張りをしていたが,
1107 特に何も起きないまま,
1108
1109 甲が空き巣に成功した場合
1110 オ.乙が空き巣に使うことができるものとしてV方の合鍵を甲に渡したため,
1111 甲がV方に行った
1112 が,
1113 無施錠であったため合鍵を使わず,
1114 空き巣に成功した場合
1115 1.@イ
1116
1117 Aエ
1118
1119 Bア
1120
1121 Cウ
1122
1123 Dオ
1124
1125 2.@イ
1126
1127 Aエ
1128
1129 Bオ
1130
1131 Cア
1132
1133 Dウ
1134
1135 3.@エ
1136
1137 Aイ
1138
1139 Bウ
1140
1141 Cオ
1142
1143 Dア
1144
1145 4.@エ
1146
1147 Aイ
1148
1149 Bオ
1150
1151 Cア
1152
1153 Dウ
1154
1155 5.@エ
1156
1157 Aイ
1158
1159 Bオ
1160
1161 Cウ
1162
1163 Dア
1164
1165 - 11 -
1166
1167 〔第14問〕(配点:3)
1168 放火罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
1169 正しいものを2
1170 個選びなさい。
1171
1172 (解答欄は,
1173 [No.24],
1174 [No.25]順不同)
1175 1.甲が自己の所有する空き家に放火したが,
1176 公共の危険が生じなかった場合,
1177 甲には,
1178 非現住
1179 建造物等放火未遂罪が成立する。
1180
1181
1182 2.甲が乙に頼まれて,
1183 乙所有の大型家具を,
1184 丙が居住する家屋に近接する甲所有の畑地で燃や
1185 し始めたところ,
1186 周辺に火の粉が飛び散り,
1187 予期に反して,
1188 同家屋の屋根のひさしに飛び火し
1189 て,
1190 同ひさしを焼損させたところで火が消し止められた場合,
1191 甲には,
1192 延焼罪が成立する。
1193
1194
1195 3.甲が住宅内にいる乙を殺害する目的で放火し,
1196 住宅が焼失した上,
1197 乙が死亡した場合,
1198 甲に
1199 は,
1200 殺人罪は成立せず,
1201 現住建造物等放火罪のみが成立する。
1202
1203
1204 4.甲が,
1205 一部の部屋のみが現に住居に使用されている木造の集合住宅の空き部屋に放火し,
1206
1207 室のみを焼損させた場合,
1208 甲には,
1209 現住建造物等放火罪が成立する。
1210
1211
1212 5.甲が憂さ晴らしの目的で,
1213 甲の世帯を含めて計30世帯が居住するマンション内部に設置さ
1214 れたエレベーターのかご内に,
1215 灯油を染み込ませて点火した新聞紙を投げ入れて放火したが,
1216
1217 エレベーターのかごの側壁を焼損したにとどまり,
1218 住居部分には延焼しなかった場合,
1219 甲には,
1220
1221 現住建造物等放火未遂罪が成立する。
1222
1223
1224 〔第15問〕(配点:3)
1225 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
1226 誤っているものを2個選びなさ
1227 い。
1228
1229 (解答欄は,
1230 [No.26],
1231 [No.27]順不同)
1232 1.甲は,
1233 火災保険金をだまし取る目的で,
1234 同居する家族が不在の間に,
1235 自宅に放火して焼失
1236 させ,
1237 その後,
1238 火災原因を偽って火災保険金の支払を受けた。
1239
1240 この場合,
1241 甲には,
1242 現住建造
1243 物等放火罪及び詐欺罪が成立し,
1244 これらは併合罪となる。
1245
1246
1247 2.甲は,
1248 強盗目的で,
1249 乙方に侵入した上,
1250 乙及び丙をそれぞれ殴打して緊縛し,
1251 その際,
1252 両名
1253 に怪我を負わせ,
1254 乙が管理していた現金100万円を強取した。
1255
1256 この場合,
1257 甲には,
1258 住居侵入
1259 罪及び1個の強盗致傷罪が成立し,
1260 これらは牽連犯となる。
1261
1262
1263 3.甲は,
1264 乙を教唆して丙占有の自動車を盗むことを決意させ,
1265 乙にこれを実行させた後,
1266 乙か
1267 ら頼まれて,
1268 同自動車を預かり保管した。
1269
1270 この場合,
1271 甲には,
1272 窃盗教唆罪及び盗品等保管罪が
1273 成立し,
1274 これらは牽連犯となる。
1275
1276
1277 4.甲は,
1278 乙を殺害して金品を強取しようと考え,
1279 甲の自宅内で乙を殺害して現金を強取した後,
1280
1281 引き続き,
1282 その死体を自宅の床下に埋めて遺棄した。
1283
1284 この場合,
1285 甲には,
1286 強盗殺人罪及び死体
1287 遺棄罪が成立し,
1288 これらは併合罪となる。
1289
1290
1291 5.甲は,
1292 乙名義で預金口座を開設する目的で,
1293 同人に成り済まし,
1294 同人名義で口座開設申込
1295 書を作成し,
1296 これを銀行の係員に提出して,
1297 乙名義の預金通帳の交付を受けた。
1298
1299 この場合,
1300
1301 甲には,
1302 有印私文書偽造罪,
1303 同行使罪及び詐欺罪が成立し,
1304 これらは牽連犯となる。
1305
1306
1307
1308 - 12 -
1309
1310 〔第16問〕(配点:2)
1311 名誉毀損罪及び侮辱罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
1312
1313 正しいものはどれか。
1314
1315 (解答欄は,
1316 [No.28])
1317 1.名誉毀損罪及び侮辱罪の保護法益は,
1318 いずれも人の外部的名誉であり,
1319 法人については,
1320
1321 辱罪の客体になり得ない。
1322
1323
1324 2.死者であっても,
1325 その外部的名誉を保護すべきことに変わりはないので,
1326 死者の名誉を毀損
1327 する事実が摘示された場合も,
1328 その事実の真偽にかかわらず,
1329 名誉毀損罪が成立し得る。
1330
1331
1332 3.特定かつ少数の者に特定人の名誉を毀損する事実を摘示した場合,
1333 その内容が拡散する可能
1334 性があったとしても,
1335 「公然と」事実を摘示したことにはならない。
1336
1337
1338 4.風評の形式を用いて人の社会的評価を低下させる事実が摘示された場合,
1339 刑法第230条の
1340 2にいう「真実であることの証明」の対象となるのは,
1341 風評が存在することではなく,
1342 そのよ
1343 うな風評の内容たる事実が存在することである。
1344
1345
1346 5.表現方法が嘲笑的であるとか,
1347 適切な調査がないまま他人の文章を転写しているなどといっ
1348 た,
1349 事実を摘示する際の表現方法や事実調査の程度は,
1350 摘示された事実が刑法第230条の2
1351 にいう「公共の利害に関する事実」に当たるか否かを判断する際に考慮すべき要素の一つであ
1352 る。
1353
1354
1355 〔第17問〕(配点:2)
1356 緊急避難(刑法第37条第1項)に関する次の【記述】の中の@からEまでの(
1357 アからスまでの【語句群】から適切な語句を入れた場合,
1358
1359
1360 )内に,
1361 後記
1362
1363 )内に入るものの組合せとして正し
1364
1365 いものは,
1366 後記1から5までのうちどれか。
1367
1368 なお,
1369 @からEまでの(
1370
1371 )内にはそれぞれ異なる語
1372
1373 句が入る。
1374
1375 (解答欄は,
1376 [No.29])
1377 【記
1378
1379 述】
1380
1381 緊急避難を(@)と解する見解によれば,
1382 その不処罰の根拠は,
1383 切迫した心理状態のために適法
1384 な行為を期待し得ないことに求められる。
1385
1386 この見解によれば,
1387 緊急避難によって侵害を転嫁される
1388 第三者は緊急避難行為に対して(A)で対抗できることになる。
1389
1390 この見解に対しては,
1391 刑法第37
1392 条第1項が(B)を守るための緊急避難を認めていることと整合しないという批判がある。
1393
1394 他方,
1395
1396 緊急避難を(C)と解する見解によれば,
1397 その不処罰の根拠は,
1398 法益が衝突する状況下で被侵害法
1399 益と同等以上の法益を保全する行為は社会全体の利益を(D)させるものではないことに求められ
1400 る。
1401
1402 また,
1403 この見解に立つと,
1404 緊急避難行為に対して(A)で対抗することを認めるのは困難であ
1405 る。
1406
1407 さらに,
1408 緊急避難を基本的には(C)と解しつつ,
1409 保全法益と被侵害法益がいずれも生命であ
1410 る場合には,
1411 (@)であると解する見解もある。
1412
1413 この見解は,
1414 自己又は第三者の生命に対する危難
1415 を避けるために無関係の第三者の生命を犠牲にする行為を(E)と評価するのは不当であるという
1416 考え方に基づくものである。
1417
1418
1419 【語句群】
1420 ア.違法性阻却事由
1421 オ.他人の法益
1422 コ.正当防衛
1423
1424 イ.責任阻却事由
1425
1426 カ.自己の法益
1427 サ.緊急避難
1428
1429 1.@ア
1430
1431 Bウ
1432
1433 Dク
1434
1435 2.@イ
1436
1437 Bエ
1438
1439 Dキ
1440
1441 3.Aケ
1442
1443 Cア
1444
1445 Eス
1446
1447 4.Aコ
1448
1449 Dク
1450
1451 Eス
1452
1453 5.Bオ
1454
1455 Cア
1456
1457 Eシ
1458
1459 ウ.個人的法益
1460
1461 キ.増加
1462
1463 シ.違法
1464
1465 ク.減少
1466
1467 ス.違法でない
1468
1469 - 13 -
1470
1471 エ.社会的法益
1472 ケ.正当行為
1473
1474 〔第18問〕(配点:4)
1475 詐欺罪に関する次の【見解】についての後記アからオまでの各【記述】を検討し,
1476 正しい場合に
1477 は1を,
1478 誤っている場合には2を選びなさい。
1479
1480 (解答欄は,
1481 アからオの順に[No.30]から[No.
1482 34])
1483 【見
1484
1485 解】
1486
1487 規約上,
1488 会員である名義人のみがクレジットカードを利用できるものとされ,
1489 その利用者が会
1490 員本人であることの確認義務が加盟店に課されている場合,
1491 名義人に成り済まし,
1492 クレジットカ
1493 ードを利用して商品を購入する行為は,
1494 その利用が名義人から許されており,
1495 かつ,
1496 利用代金が
1497 規約に従い名義人において決済されることが見込まれるときであっても,
1498 詐欺罪が成立する。
1499
1500
1501 【記
1502
1503 述】
1504
1505 ア.この【見解】に対しては,
1506 名義人に依頼されてクレジットカードを利用して商品を購入し
1507 た場合,
1508 詐欺罪の実質的違法性がなく,
1509 財産犯として処罰するのは行き過ぎであるとの批判
1510 が可能である。
1511
1512 [No.30]
1513 イ.この【見解】は,
1514 クレジットカード利用者と名義人の同一性が加盟店にとって商品交付の
1515 判断の基礎となる重要な事項に当たると理解している。
1516
1517 [No.31]
1518 ウ.この【見解】によれば,
1519 名義人に成り済ましてクレジットカードを利用して商品を購入す
1520 る行為について,
1521 行為者が,
1522 当該名義人において現実に決済されるものと誤信していた場合
1523 でも,
1524 詐欺罪が成立し得ることとなる。
1525
1526 [No.32]
1527 エ.この【見解】は,
1528 名義人の個別的な信用を基礎としてクレジットカードシステムが構築さ
1529 れていることを前提に,
1530 個々の事案における詐欺罪の成否の判断において,
1531 加盟店の経済的
1532 損失の有無を重視するものである。
1533
1534 [No.33]
1535 オ.この【見解】に対しては,
1536 加盟店が名義人以外の利用であることを知りながら,
1537 クレジッ
1538 トカードの利用を認めた場合でも詐欺罪の既遂が成立することになり,
1539 妥当ではないとの批
1540 判が可能である。
1541
1542 [No.34]
1543
1544 - 14 -
1545
1546 〔第19問〕(配点:2)
1547 故意に関する次の各【見解】についての後記1から5までの各【記述】のうち,
1548 誤っているもの
1549 はどれか。
1550
1551 (解答欄は,
1552 [No.35])
1553 【見
1554
1555 解】
1556
1557 A.故意の有無については,
1558 構成要件を基準にして判断すべきであるところ,
1559 殺人罪においては,
1560
1561 行為者の認識した事実と発生した事実とが,
1562 「およそ人を殺す」という点で一致していれば故
1563 意が認められる。
1564
1565 また,
1566 行為者の認識した客体に対しても,
1567 結果が発生した客体に対しても故
1568 意犯が成立する。
1569
1570
1571 B.故意の有無については,
1572 構成要件を基準にして判断すべきであるところ,
1573 殺人罪においては,
1574
1575 行為者の認識した事実と発生した事実とが,
1576 「その人を殺す」という点で一致していなければ
1577 故意は認められない。
1578
1579
1580 【記
1581
1582 述】
1583
1584 1.甲が,
1585 Xを焼死させようと思い,
1586 Xの全身に灯油をかけて火をつけたところ,
1587 Xが熱さに耐
1588 えかね,
1589 火を消そうとして近くの湖に飛び込んで溺死したという事例においては,
1590 A,
1591 Bいず
1592 れの見解でも,
1593 甲に殺人既遂罪が成立する。
1594
1595
1596 2.Aの見解に対しては,
1597 甲が殺意をもってXを狙い拳銃を発射したところ,
1598 弾丸がXの腕を貫
1599 通した上,
1600 予想外にYの胸部にも当たり,
1601 Xを負傷させるとともにYを死亡させたという事例
1602 において,
1603 行為者に過剰な故意責任を課すことになり,
1604 責任主義に反するとの批判がある。
1605
1606
1607 3.Bの見解によれば,
1608 【記述】2の事例で,
1609 甲にYに対する殺人既遂罪が成立する。
1610
1611
1612 4.Bの見解に対しては,
1613 客体の錯誤と方法の錯誤のいずれに当たるのかが必ずしも明らかでは
1614 ない場合において,
1615 故意の有無につき,
1616 どのように判断するのか明確ではないとの批判がある。
1617
1618
1619 5.Bの見解によれば,
1620 甲がXを殺害しようと考え,
1621 Xと似た者を見付けて,
1622 Xと思い,
1623 その者
1624 をナイフで刺し殺したが,
1625 実際には,
1626 その者はYであったという事例において,
1627 甲にYに対す
1628 る殺人既遂罪が成立する。
1629
1630
1631
1632 - 15 -
1633
1634 〔第20問〕(配点:2)
1635 次の【事例】に関する後記アからエまでの各【記述】を判例の立場に従って検討した場合,
1636 正し
1637 いものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。
1638
1639 (解答欄は,
1640 [No.36])
1641 【事
1642
1643 例】
1644 甲は,
1645 某所公園内において,
1646 ベンチ上に置いてあるバッグ1個(以下「本件バッグ」という。
1647
1648
1649
1650 を発見し,
1651 誰かが置き忘れたものと考え,
1652 警察に届け出るため,
1653 これを手に取り,
1654 同公園から路
1655 上に出た。
1656
1657 一方,
1658 本件バッグをベンチに置き忘れたことに気付いたVは,
1659 同公園に戻ろうとして
1660 同路上に至ったところ,
1661 甲を発見した。
1662
1663 Vは,
1664 甲が本件バッグを盗んだと疑い,
1665
1666 「バッグを返せ。
1667
1668
1669 と言いながら,
1670 甲の腹部を2回足で蹴り,
1671 甲から本件バッグを奪い,
1672 さらに,
1673 甲を蹴り上げるよ
1674 うな仕草を続けた。
1675
1676 甲は,
1677 Vの暴行を避けようとして,
1678 その胸付近を1回平手で突いたところ,
1679
1680 その勢いでVが後方に転倒し,
1681 後頭部を路面に打ち付け,
1682 失神した。
1683
1684 甲は,
1685 その頃には,
1686 Vが本
1687 件バッグの所有者であると分かっていたが,
1688 Vの態度に怒りを覚えたことなどから,
1689 本件バッグ
1690 を自己のものにしようと考え,
1691 失神しているVからこれを取り上げて自宅に持ち帰った。
1692
1693
1694 その後,
1695 甲が本件バッグ内を確認したところ,
1696 V名義の預金口座のキャッシュカード等在中の
1697 財布,
1698 V所有の携帯電話機等の物品が入っていた。
1699
1700 甲は,
1701 これらを見て,
1702 Vの氏名,
1703 勤務先のほ
1704 か,
1705 携帯電話機にわいせつな盗撮画像が保存されていることを知り,
1706 これを奇貨とし,
1707 Vから上
1708 記キャッシュカードの暗証番号を聞き出して上記口座から預金を引き出そうと思い,
1709 勤務先にい
1710 たVに電話をかけ,
1711 「あんた盗撮してるな。
1712
1713 警察に携帯を持って行かれたくないなら,
1714 あんたの
1715 キャッシュカードの暗証番号を教えろ。
1716
1717 」と要求するなどした。
1718
1719 Vは,
1720 この要求を断れば,
1721 盗撮
1722 の事実が警察に露見すると思い,
1723 やむを得ず甲に同暗証番号を教えた。
1724
1725 その後,
1726 甲は,
1727 上記キャ
1728 ッシュカードを用いて現金自動預払機から現金50万円を引き出した。
1729
1730
1731 【記
1732
1733 述】
1734
1735 ア.甲が本件バッグを警察に届け出るために某所公園内から持ち出した行為は,
1736 Vによる占有の
1737 回復を困難にする行為であるため,
1738 窃盗罪又は占有離脱物横領罪が成立する。
1739
1740
1741 イ.Vは本件バッグを甲から取り返す目的で暴行を加えており,
1742 この暴行は正当行為に該当する
1743 ため,
1744 甲がVの胸付近を1回平手で突いた行為の違法性が阻却される余地はなく,
1745 甲には,
1746
1747 行罪又は傷害罪が成立する。
1748
1749
1750 ウ.甲が本件バッグをVから取り上げた行為は,
1751 甲の暴行に起因するVの失神状態に乗じて本件
1752 バッグの占有を取得したといえるため,
1753 強盗罪が成立する。
1754
1755
1756 エ.甲が現金自動預払機から現金50万円を引き出した行為は,
1757 甲が,
1758 これに先行してVから暗
1759 証番号を聞き出した時点で,
1760 Vの預金の払戻しを受け得る地位を得たことにより,
1761 その預金の
1762 占有を取得したといえるため,
1763 窃盗罪は成立しない。
1764
1765
1766 1.0個
1767
1768 2.1個
1769
1770 3.2個
1771
1772 4.3個
1773
1774 - 16 -
1775
1776 5.4個
1777
1778