1 論文式試験問題集[民事系科目第1問]
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3 - 1 -
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5 [民事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕の配点は,40:25:35〕)
7 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕に答えなさい。
8 なお,解答に当たっては,文中において特定されている日時にかかわらず,試験時に施行され
9 ている法令に基づいて答えなさい。
10 T
11 【事実】
12 1.Aは,甲土地上に乙建物を所有して居住していたが,令和2年5月20日,Bとの間で,
13 甲土地及び乙建物をBに売却する契約(以下「契約@」という。)を締結した。Bは乙建物内
14 でチェロの練習をする予定であったため,AB間において,乙建物が特に優れた防音性能を
15 備えた物件であることが合意の内容とされ,代金額が6000万円と定められた。
16 2.契約@において,Bは,契約時に1000万円を支払い,残額を甲土地及び乙建物の引渡
17 しがされた日から1か月以内に支払うこと,残代金の完済後直ちに甲土地及び乙建物につき
18 AからBへの所有権移転登記手続を行うこととされた。
19 3.Aは,令和2年7月25日,契約@に基づく残代金債権(5000万円)をCに代金45
20 00万円で売却し,Cへの債権譲渡を通知する旨の内容証明郵便が同月30日にBに到達し
21 た。
22 4.令和2年9月25日,Bは甲土地及び乙建物の引渡しを受けた。その後,Bは,昼間に乙
23 建物内でチェロの練習をしていたところ,近隣住民から,音が漏れ聞こえてうるさいと苦情
24 を申し立てられ,その際,以前Aとの間でも同様のトラブルがあったと言われた。
25 5.令和2年10月10日,Bが業者に点検させたところ,乙建物が契約@において合意され
26 た防音性能を備えていないことが判明した。
27 6.そこで,Bは,Aに対し,契約@で定められた防音性能を乙建物に備えさせるための工事
28 に要する費用の見積書を提示し,費用を負担するか,工事を自ら手配するかを選択して履行
29 するよう求めたが,Aからの応答はない。
30 7.令和2年10月30日,Cは,Bに対して契約@の残代金5000万円の支払を求めた。
31 〔設問1〕
32 【事実】1から7までを前提として,次の問いに答えなさい。
33 Bは,乙建物に住み続けることを前提に,上記【事実】5の防音性能の不備を理由としてCへ
34 の支払額を少なくしたいと考えている。このとき,契約@に基づくBの主張として考えられるもの
35 を複数挙げ,それぞれその主張が認められるかを検討しなさい。
36 U
37
38 【事実】1から7までに加え,以下の【事実】8から12までの経緯があった。なお,本件にお
39 ける土地の位置関係は別紙図面のとおりである。
40
41 【事実】
42 8.ところで,甲土地は,鉄道駅から徒歩圏内の住宅地にある。甲土地は,かつて,その隣地
43 である丙土地と一筆の土地でありDが所有していたが,分割されて袋地になり,DからAに
44 売却されていた。
45 9.Aから甲土地を購入したBは,丙土地の端のa部分(幅1メートル)を公道に至るための
46 徒歩での通行路として利用していた。その後,Bは,自家用車の購入を計画したが,a部分
47 の道幅は車両の通行には十分でなかったため,令和3年1月10日,Dとの間で,丙土地の
48 a部分及びこれに隣接するb部分(幅2メートル。以下,a部分とb部分を合わせて「c部
49 - 2 -
50
51 分」という。)につき,通行を目的とする地役権を甲土地のために設定すること,Bは毎年1
52 月に2万円をDに支払うことに合意した(以下「契約A」という。)。Bは,同日,Dに対し
53 て2万円を支払い,以後,c部分を徒歩及び自家用車で通行している。
54 10.令和4年以降,Bは,毎年2万円の支払をしなくなった。
55 11.令和6年3月1日,Bが毎年2万円を支払わないのであればc部分を花壇として利用した
56 いと考えたDは,Bに支払を催告し,1週間以内に支払わなければ契約Aを解除する旨の意
57 思表示をしたが,同月8日を経過しても,Bは支払に応じなかった。
58 12.Bは,「c部分,少なくともそのうちのa部分については,Bは,Dによる地役権の設定
59 がなくても通行する権利がある。」,「仮に,地役権の設定がなければc部分を通行できないと
60 しても,Dは契約Aを解除することはできない。すなわち,確かに,Bは毎年2万円を支払
61 っていないが,地役権設定契約によって設定者が債務を負うことはなく,Dは契約Aによ
62 って債務を負っていない以上,解除をすることはできない。」と述べている。
63 これに対して,Dは,Bが毎年2万円を支払わない以上,契約AによってDが債務を負
64 っていなかったとしても,Dは契約Aを解除することができるはずであるし,また,そもそ
65 も地役権設定契約によって設定者は債務を負い,したがって,契約AによってDも債務を負
66 っていたと述べている。
67 〔設問2〕
68 【事実】8から12までを前提として,以下の(1)及び(2)に答えなさい。
69 (1) 【事実】12の下線部のBの発言は,正当であると認められるか。a部分及びc部分のそれぞ
70 れにつき,検討しなさい。
71 (2) 【事実】12の下線部及びにつき,B及びDが地役権設定契約の性質をどう捉え,それを踏
72 まえて契約Aの債権債務関係をどのように分析し,また,解除の制度趣旨についてどのような
73 理解を基礎としているのかをそれぞれ発言者ごとに明らかにした上で,Dが契約Aを解除する
74 ことができるかを検討しなさい。
75 V
76
77 【事実】1から12までに加え,以下の【事実】13から21までの経緯があった。
78
79 【事実】
80 13.Bは,甲土地に隣接する丁土地を購入することで,車の通行の問題を解決しようと考えた。
81 14.丁土地はEの所有地であり,その旨の登記がされていた。
82 15.Eは長期入院加療中であったため,Eの財産の管理は,Eから依頼があったわけではない
83 が,事実上,Eの妻FがEの姉Gに相談して行っていた。Bから丁土地の売買の申入れを受
84 けたFは,丁土地はEが相続により取得したが誰も利用しておらず,また,Eの医療費が今
85 後更に必要なことから,前向きに考え,Gに相談した。Gは,売却に賛成し,もし売却する
86 ならGの事業の資金のために売却金の一部を使わせてほしいと,Fに申し入れた。
87 16.Eには子がなく,Eの親族はFとGのみであり,EもFも日頃からGを頼りにしていた。
88 そこで,Fは,Eの医療費に充てるほか,代金の一部をGの事業の資金に充てるために,丁
89 土地を売却することにした。
90 17.令和6年7月10日,Bは,Eから丁土地を2000万円で購入する契約(以下「契約B」
91 という。)を締結したが,この契約は,FがEの代理人として締結したものであり,その締結
92 の場にはFの求めに応じてGも同席した。Fは,Eの委任状及び印鑑登録証明書をBに示し
93 たが,実は,FはEに対して丁土地の売却のことを知らせておらず,丁土地に関してEから
94 Fに代理権が授与されたことはなく,委任状は自宅に保管されていたEの実印をFが勝手に
95 利用して作成したものであり,Eの印鑑登録証明書はFが取り寄せたものであった。Fは,
96 Bに対し,Eが入院加療中であって医療費が必要であること,丁土地の売却にはEの親族の
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98
99 了解も得ていることを話し,Bは,夫が入院加療中であるから妻が取引をするのは通常のこ
100 とと考え,それ以上にEに確認するなどの措置は採らなかった。
101 18.契約Bにおいて,Bは契約時に400万円を支払うこと,残代金の支払及び丁土地の所有
102 権移転登記手続は令和6年9月20日に行うこととされた。Bは,これに従ってFに400
103 万円を交付し,Fは,このうち200万円をEの医療費に備えて取り置き,残る200万円
104 をGの指定した銀行口座に振り込んだ。
105 19.令和6年7月24日,Eは,容態が急変して契約Bについて知らずに死亡した。最期まで
106 Eの判断力に衰えは見られなかった。その後,Fは相続を放棄し,Gは,同年8月24日,
107 E名義の預金口座を解約して全額の払戻しを受けて,Eの医療費を弁済した。
108 20.令和6年9月13日,Gは不動産業者から丁土地を2600万円で売ってほしい旨の打診
109 を受けた。
110 21.令和6年9月20日,Bは,Gに対し,残代金を提供した上,契約Bに基づき丁土地の所
111 有権移転登記手続を求めたが,Gはこれを拒絶した。
112 〔設問3〕
113 【事実】13から21までを前提として,次の問いに答えなさい。
114 契約Bに基づくBのGに対する所有権移転登記手続請求は認められるか。FがEの配偶者であ
115 ることを踏まえて,検討しなさい。
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118
119 (別紙図面)
120
121 私有地
122
123 私有地
124
125 甲土地
126
127 丁土地
128
129 丙土地
130
131 公道
132
133 b部分
134 a部分
135
136 c部分
137
138 私有地
139
140 公道
141
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144 論文式試験問題集[民事系科目第2問]
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147
148 [民事系科目]
149 〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点の割合は,60:40〕)
150 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
151 1.甲株式会社(以下「甲社」という。)は,電子機器部品の製造及び販売等を目的とする会社法
152 上の公開会社でない会社であり,取締役会,監査役及び会計監査人を置いており,一種類の株
153 式(以下「本件普通株式」という。)のみを発行している。甲社の資本金の額は10億円,発行
154 可能株式総数は20万株,発行済株式の総数は8万株であり,Aが5万1000株を,Bが2
155 万9000株を,それぞれ保有している。甲社の取締役はA,C及びDの3人であり,Aが代
156 表取締役会長を,Cが代表取締役社長を,それぞれ務めている。なお,Bは,甲社の役員に就
157 任していない。
158 2.甲社は,規模はそれほど大きくないが,高い技術力を持っていた。甲社の業績は,約10年前
159 の設立以来,堅調に推移してきたため,2年前までは,毎事業年度,欠かさずに剰余金の配当
160 をしてきた。しかし,近時は,支払が遅延する取引先が増えたため,甲社は仕入資金の調達が
161 必要になったが,金融機関が満足な融資をしてくれないため,資金繰りに窮するようになった。
162 3.このような状況で,Aは,令和元年12月頃,甲社の資金繰りの改善を図ることが急務であり,
163 少なくとも2億円の資金調達が必須であると考えた。甲社は,銀行から借入れをすることが困
164 難であったため,Aは,株式の発行が最善であると考えたが,普通株式では引受人を見付ける
165 ことができない可能性が高かったため,議決権のある剰余金配当優先株式(以下「本件優先株
166 式」という。)を新たに発行することによって2億円の資金調達をすることを計画した。
167 4.Aが本件優先株式を引き受けて出資してくれそうな者を探したところ,Aの叔父Pとその友人
168 Qがそれぞれ1億円ずつ出資してもよいという意向を示した。そこで,Aが,令和2年2月中
169 旬に,中立的な専門機関に対し,甲社の事業計画や財務状況を示す資料を提供して,本件優先
170 株式について合理的な方法による評価額の算定を依頼したところ,本件優先株式の評価額は1
171 株当たり4万円と算定された。
172 5.これを受けて,Aが,P及びQに対し,1株当たりの払込金額を4万円として,本件優先株式
173 をP及びQにそれぞれ2500株ずつ(合計5000株)発行することを打診したところ,P
174 及びQは,少なくともそれぞれ甲社の発行済株式の総数の5%ずつを保有したいため,1株当
175 たりの払込金額を2万円として,本件優先株式をP及びQにそれぞれ5000株ずつ(合計1
176 万株)発行するように主張して譲らなかった。
177 6.そこで,AがC及びDに意見を聞いたところ,2人とも2億円の資金調達を実現するためには,
178 P及びQの主張を受け入れる以外に選択肢がないが,Bが反対して計画が挫折する可能性が小
179 さくないという意見であった。
180 7.Aは,令和2年3月17日,甲社の取締役会(以下「本件取締役会」という。)を招集して,
181 役員の全員が出席の上で,対応策を協議したところ,A,C及びDは,2億円の資金調達を実
182 現するためには,株主総会の場で何とかしてBの同意を取り付けるほかないという意見で一致
183 した。その上で,本件取締役会では,同月25日に甲社の本社で定時株主総会(以下「本件定
184 時総会」という。)を開催すること,「計算書類の報告の件」及び「事業報告の報告の件」を会
185 議の目的事項とすること,「定款変更の件」を会議の目的事項として,本件優先株式の内容等の
186 所要の事項を定める定款変更を行う旨の議案(以下「本件議案1」という。)を本件定時総会に
187 提出すること,「新株式発行の件」を会議の目的事項として,本件優先株式の発行(以下「本件
188 株式発行」という。)を行う旨の議案(以下「本件議案2」という。)を本件定時総会に提出す
189 ることなどが決議された。なお,本件議案2は,@募集株式は本件優先株式1万株とすること,
190 A1株当たりの払込金額は2万円(払込金額の合計は2億円)とすること,B払込期日は同年
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192
193 4月10日とすること,C増加する資本金と資本準備金の額はいずれも1億円とすること,D
194 本件優先株式をP及びQにそれぞれ5000株ずつ割り当てることを内容とするものであった。
195 8.Cは,令和2年3月17日,A及びBに対し,本件定時総会の招集通知(以下「本件招集通知」
196 という。)を書面で発した。本件招集通知には,本件定時総会の開催日時及び開催場所のほか,
197 会議の目的事項として「計算書類の報告の件」及び「事業報告の報告の件」が記載されており,
198 当該目的事項との関係で必要とされる書類も,計算書類や事業報告を始め,全て添付されてい
199 た。しかし,本件招集通知には,本件議案1及び本件議案2に関する記載がなく,また,「定款
200 変更の件」という会議の目的事項及び「新株式発行の件」という会議の目的事項がいずれも記
201 載されていなかった。
202 9.令和2年3月25日に開催された本件定時総会には,役員の全員が出席しており,また,株主
203 であるA及びBのいずれもが出席した。Cが「定款変更の件」について本件議案1を,「新株式
204 発行の件」について本件議案2を,それぞれ本件定時総会に上程したところ,Bは,本件議案
205 1及び本件議案2のことを初めて知って驚いた。しかし,Bは,Cから,2億円の資金調達が
206 急務であること,そのためには,事実上,本件株式発行以外に選択肢がないこと,2万円とい
207 う1株当たりの払込金額は中立的な専門機関が合理的な方法によって算定した評価額に相当す
208 る額である旨を説明されて,そのような事情であれば本件株式発行によって自己の持株比率が
209 下がるのもやむを得ないと考えて,渋々ながら賛成したため,本件議案1及び本件議案2がい
210 ずれも可決された(以下,本件議案1に関する本件定時総会の決議を「本件決議1」といい,
211 本件議案2に関する本件定時総会の決議を「本件決議2」という。)。
212 10.その後,Cが会社法所定の手続を行い,P及びQが払込期日である令和2年4月10日にそれ
213 ぞれ1億円ずつを払い込んだことにより,P及びQに対する本件株式発行が行われた。なお,
214 上記4の本件優先株式の客観的な評価額の算定後,払込期日までの間に,本件優先株式の価値
215 を著しく変動させるような事情はなかった。
216 〔設問1〕
217
218 Bは,本件株式発行の効力の発生後になって初めて,中立的な専門機関が合理的な方
219
220 法によって算定した本件優先株式の評価額が1株当たり4万円であったことを知った。Bは,
221 本件決議1及び本件決議2には瑕疵があり,そのことが本件株式発行の効力に影響を及ぼすと
222 考えている。Bは,令和2年5月14日の時点で,どのような訴えを提起して,どのような主
223 張をすることが考えられるかを検討した上で,その主張の当否について,論じなさい。
224 下記11及び12では,上記8及び9とは異なり,本件株式発行が適法に行われたことを前提として,
225 〔設問2〕に答えなさい。
226 11.本件株式発行によって甲社の資金繰りは改善した。しかし,その後,約2年が経過し,甲社の
227 資金繰りは再び苦しくなってきた。甲社は,P及びQの要望により,毎事業年度,本件優先株
228 式について剰余金の配当をしてきたが,資金繰りが苦しい中,甲社にとっては,本件優先株式
229 に係る剰余金の配当が重荷になってきた。なお,本件優先株式は,その発行後,P及びQがそ
230 れぞれ5000株ずつを保有し続けている。
231 また,甲社の定款では,本件優先株式の内容として,発行可能種類株式総数のほか,@甲社
232 が剰余金の配当をするときは,本件優先株式の株主に対し,本件普通株式の株主に先立ち,各
233 事業年度に,本件優先株式1株につき1000円(以下「配当優先額」という。)を配当するこ
234 と,A本件優先株式について配当優先額の配当をした後に,更に分配可能額がある場合には,
235 本件優先株式の株主は本件普通株式の株主と共に株式数に応じて配当を受けることができるこ
236 と,Bある事業年度において本件優先株式の株主に対してする1株当たりの配当の額が配当優
237 先額に達しない場合には,当該不足額は翌事業年度以降に累積すること,C本件優先株式の株
238 - 3 -
239
240 主は,株主総会における決議事項の全部について議決権を行使することができること,D本件
241 優先株式の譲渡による取得には,甲社の承認を要すること,E会社法第322条第2項に基づ
242 き,同条第1項の規定による種類株主総会の決議を要しないことが定められていた。
243 12.このような状況で,甲社は,本件優先株式についてのみ株式の併合をすること(以下「本件株
244 式併合」という。)を計画し,取締役会で,役員の全員が出席の上で,臨時株主総会(以下「本
245 件臨時総会」という。)を開催すること,「株式併合の件」を会議の目的事項として,@本件優
246 先株式のみを2株につき1株の割合で併合すること,A本件株式併合の効力発生日,B効力発
247 生日における発行可能株式総数について定める議案(以下「本件議案3」という。)を本件臨時
248 総会に提出することなどを決議した。
249 甲社は,この取締役会の決議に従い,招集手続を経て,本件臨時総会を開催した。本件臨時
250 総会では,Cが,本件優先株式に係る甲社の剰余金の配当の負担を軽減するためには本件株式
251 併合が必要である旨を説明した上で,本件議案3について審議したところ,P及びQが強く反
252 対したが,A及びBが賛成したため,本件議案3が可決された(以下,本件議案3に関する本
253 件臨時総会の決議を「本件決議3」という。)。なお,甲社は,本件臨時総会の開催に先立ち,
254 株主に対する会社法所定の通知をするとともに,本件株式併合に関する事項を記載した会社法
255 所定の書面を本店に備え置いた。また,Pは,本件臨時総会に先立ち,本件株式併合に反対す
256 る旨を甲社に対し書面で通知した。
257 〔設問2〕
258
259
260 本件株式併合の効力の発生によって,Pには,どのような不利益が生じ,又は生じるおそれ
261
262 があると考えられるかについて,説明しなさい。
263
264
265 Pは,本件決議3に従い,本件株式併合の効力が発生することによって,自己に不利益が
266 生じ,又は生じるおそれがあることに強い不満を感じている。Pは,本件株式併合の効力の
267 発生前の時点で,どのような会社法上の手段を採ることが考えられるかについて,論じなさ
268 い。なお,損害賠償を請求するという手段については,論じなくてよい。
269
270 - 4 -
271
272 論文式試験問題集[民事系科目第3問]
273
274 - 1 -
275
276 [民事系科目]
277 〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,40:20:40])
278 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
279 なお,解答に当たっては,文中において特定されている日時にかかわらず,試験時に施行されて
280 いる法令に基づいて答えなさい。
281 【事
282
283 例】
284
285 1.Xは,旧友Aとの間で,Xが所有する賃貸用建物(以下「本件建物」という。)について,賃
286 料月額20万円,期間の定めなしとの約定でAに賃貸するとの賃貸借契約(以下「本件契約」
287 という。)を締結し,Aに対し,本件契約に基づき,本件建物を引き渡した。
288 2.Aは,本件建物で書店を経営し,Aの子であるY1及びY2(以下「Yら」という。)が書店
289 を手伝っていた。
290 3.Aは,5月に死亡した。Aの配偶者は,既に死亡しており,Aの相続人は,Yらのみである。
291 Yらは,まだAの遺産についての遺産分割をしていない。
292 4.Xは,7月末,Yらに対し,「XとAは,今年の4月1日,本件契約について9月30日をも
293 って終了するとの解約の合意をした。Aは,その際,Xに対し,9月30日までに本件建物を
294 明け渡すと言った。」と述べた上で,本件建物の明渡しの具体的な時期を問い合わせた。
295 5.Y1とY2は,8月初め頃に話合いをした。この話合いの場において,Y1は,「Aから本件
296 契約の解約の合意をしたとは聞いていない。Y1とY2は,相続によってAから本件建物の賃
297 借権を承継し,書店の経営も引き継いでいる。Y1は,Xに対し,Aの死亡後,Y1が本件契
298 約に基づく賃料の請求先となったことを知らせたが,Xは,本件契約が終了するとは言わずに,
299 これを了承した。また,本件契約に基づく賃料は,現在まで滞りなく支払ってきた。」とし,本
300 件建物を明け渡す必要はないと述べた。これに対し,Y2は,「本件建物を明け渡し,敷金を返
301 還してもらった方がよい。Y2は,Aの生前,Aから,Xに敷金を差し入れてあると聞いてい
302 た。実際に,本件契約を締結した頃の日付で120万円を受領した旨のX名義の受領書がAの
303 遺品の中にあった。この受領書が敷金の差し入れの証拠になる。」と述べた。
304 6.Y2が8月中旬に,Xに対して敷金が全額返還されるか問い合わせたところ,Xは,Y2に
305 対し,「8月分まで賃料の滞納はなく,本件建物をきれいに使ってくれて修繕の必要もない。し
306 かし,Aから本件契約の締結時に受け取ったのは礼金であって,返還の必要のある敷金ではな
307 い。」と述べた。
308 7.そこで,Y2は,その翌日,かねてより相談していた弁護士Lに,上記1から6までの経緯
309 を説明した上で,Xから敷金を返還してもらうことができるかどうかを検討してもらうことと
310 した。
311 以下は,弁護士Lと司法修習生Pとの間の会話である。
312 L:Y2は本件建物を明け渡して敷金を返還してもらうことを希望しています。Y1が本件契約の
313 解約の合意を争っているため,本件建物の明渡しの見通しはついていませんが,Xに対し敷金返
314 還を請求する訴えを提起した場合に,本件建物の明渡しをしないままの状態であっても,本案判
315 決を得ることはできるでしょうか。ここでは,敷金返還請求権は,賃貸借終了後,不動産が明け
316 渡されたときに,敷金によって担保されるそれまでに生じた一切の債務の額を控除した残額につ
317 き発生するものと考えましょう。
318 P:そうすると,本件建物の明渡し前には敷金返還請求権は発生しないので,将来給付の訴えの適
319 法性を検討せよということですね。敷金返還請求権が本件建物の明渡しを条件とする条件付請
320 求権ということであれば,将来給付の訴えの適法性が認められるのではないでしょうか。
321 - 2 -
322
323 L:条件付請求権であっても,将来給付の訴えの適法性が認められるとは限りませんよ。ここでは,
324 Y2の法定相続分が2分の1であることを考慮し,60万円のみの請求をすることとして,「X
325 は,Yらから本件建物の明渡しを受けたときは,Y2に対し,60万円を支払え。」との請求の
326 趣旨による将来給付の訴えの適法性につき検討してもらいましょう。これを「課題1」としま
327 す。検討の際には,本件の具体的状況を踏まえた上で,敷金返還請求権の特質のほか,当事者
328 間の衡平の観点から,適法性が認められた場合の被告の負担を考慮する必要があります。ただ
329 し,応訴の負担は考慮する必要がありません。
330 P:はい,分かりました。ところで,もし,将来給付の訴えの適法性が認められないという結論に
331 なるとすると,敷金に関する確認の訴えを提起することになるのでしょうか。
332 L:良い機会ですから,将来給付の訴えが不適法とされる場合に備え,敷金に関する確認の訴えの
333 利益についても考えましょう。Y2の立場から,どのような訴えであれば確認の利益が認めら
334 れるかを検討してください。その際には,既判力により確定する必要性を考慮して,なぜその
335 訴えであれば確認の利益が認められるのかについて説明してください。これを「課題2」とし
336 ます。
337 〔設問1〕
338 あなたが司法修習生Pであるとして,Lから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。
339 【事
340
341 例(続き)】
342
343 8.Xは,Yらが9月30日を経過しても本件建物の明渡しをしないことから,Yらを被告とし
344 て,本件契約の終了に基づく本件建物の明渡しを求める訴えを提起した(以下,この訴えに係
345 る訴訟を「本件訴訟」という。)。Xは,訴状において,Yらの被相続人であり,本件契約の相
346 手方当事者であったAとの間で本件契約の解約の合意がされた旨主張している。
347 9.本件訴訟は,裁判官Jが単独で審理及び裁判をすることとなった。本件訴訟の第1回口頭弁
348 論期日において,Xは,訴状を陳述した。これに対し,Yらはいずれも,請求を棄却するとの
349 判決を求め,本件契約の解約の合意について,Y1は否認し,Y2は知らないとした。
350 10.その後に指定された和解期日において,裁判官Jが他の当事者を退席させた上でX,Y1,
351 Y2を順次個別に面接する方式により,和解協議が実施された。Y2は,その際,裁判官Jに
352 対し,「Xは,Aが差し入れた敷金を礼金であるとして返還しようとしないが,敷金を返還して
353 くれるのであれば,Y2は,Xに本件建物を明け渡してもよい。Y2としては,無理に書店の
354 経営を続けなくともよいのではないかと思っている。今から思えば,Aも,日頃から店の経営
355 不振に悩んでおり,Xに相談しているという話もしていた。本件建物を明け渡して敷金が戻る
356 ような和解が成立することを希望している。」と述べた。しかし,Y1が飽くまで本件契約の継
357 続を希望したため,和解は成立しなかった。
358 以下は,裁判官Jと司法修習生Qとの間の会話である。
359 J:今日は和解成立には至りませんでした。和解手続における当事者の発言内容をその後の判決に
360 影響させることがないように,注意する必要があります。
361 Q:それでは,先ほどの和解期日におけるY2の発言から,XA間の解約の合意は存在したという
362 心証を得て,それに基づいて判決をすることはできないのですね。
363 J:もちろん許されません。それを理解してもらうために,まず,民事訴訟法においては,裁判所
364 は何を心証形成の資料とすることができるとされているのかを示した上で,和解期日における
365 Y2の発言がそれに当たらないことを説明してください。また,和解手続における当事者の発
366 言内容を心証形成の資料とすることができるとすると,どのような問題が生ずるかについて,
367 理由を示して検討してください。これらを「課題」とします。
368 - 3 -
369
370 〔設問2〕
371 あなたが司法修習生Qであるとして,Jから与えられた課題について答えなさい。
372 【事
373
374 例(続き)】
375
376 11.本件訴訟の第2回口頭弁論期日において,Xは,Aが生前にXとの間で本件契約の解約の合
377 意をしていたことを裏付けるため,「Xは,4月3日,本件建物の内外を検分し,Aに対して,
378 『大変きれいに使ってくれていますね。これなら修繕の必要はない。』と述べるなど,Aとの間
379 で本件建物の明渡しの準備について話をした。Y2は,書店の手伝いをしていたことから,そ
380 の際,XとAとの会話を聞いたはずである。」と主張した。これに対し,Y2は,「4月3日に
381 Xが主張するXとAの会話を聞いた記憶はない。Aが作成していた業務日誌を見ても,Xとの
382 間で本件契約の解約や本件建物の明渡しを前提とした会話があったことは記載されていない。」
383 と主張し,Xが主張するような会話がなかったことを立証するため,Aが作成した同日の業務
384 日誌(以下「本件日誌」という。)を提出して書証の申出をした。裁判所は,同期日において,
385 本件日誌を取り調べた。
386 12.本件訴訟の第3回口頭弁論期日が指定された後,X,Y1及びY2は,訴訟外で解決に向け
387 た協議をした。その結果,XとY1の間では協議が整わなかったが,XとY2の間では,解決
388 に向けた合意がされ,XがY2に対する訴えを取り下げることとなった。そこで,Xは,裁判
389 所に対し,Y2に対する訴えの取下書を提出し,それを受け,Y2は,裁判所に対し,Xの訴
390 えの取下げに同意する旨の書面を提出した。
391 以下は,裁判官Jと司法修習生Rとの間の会話である。
392 J:XがY2に対する訴えの取下書を提出し,Y2もその同意書を提出しています。XはY2に対
393 する訴えのみを取り下げることができるのでしょうか。
394 R:それを考えるに当たっては,まず,本件訴訟が共同訴訟のどの類型に当たるのかを考慮する必
395 要があります。
396 J:そうですね。それでは,その結果を踏まえて,XはY2に対する訴えのみを取り下げることが
397 できるのかを検討してください。これを「課題1」とします。
398 また,仮にXがY2に対する訴えのみを取り下げることができるとして,残されたXとY1
399 のみの訴訟において本案判決がされる場合に,第2回口頭弁論期日にY2が提出した本件日誌
400 の取調べの結果を事実認定に用いてよいかを,共同訴訟における証拠調べの効果及びそれが訴
401 えの取下げによって影響を受けるかどうかを踏まえて検討してください。これを「課題2」と
402 します。
403 〔設問3〕
404 あなたが司法修習生Rであるとして,Jから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。
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