1 論文式試験問題集[民事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [民事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕の配点は,
7 40:25:35〕)
8 次の文章を読んで,
9 後記の〔設問1〕,
10 〔設問2〕及び〔設問3〕に答えなさい。
11
12
13 なお,
14 解答に当たっては,
15 文中において特定されている日時にかかわらず,
16 試験時に施行され
17 ている法令に基づいて答えなさい。
18
19
20 T
21 【事実】
22 1.Aは,
23 甲土地上に乙建物を所有して居住していたが,
24 令和2年5月20日,
25 Bとの間で,
26
27 甲土地及び乙建物をBに売却する契約(以下「契約@」という。
28
29 )を締結した。
30
31 Bは乙建物内
32 でチェロの練習をする予定であったため,
33 AB間において,
34 乙建物が特に優れた防音性能を
35 備えた物件であることが合意の内容とされ,
36 代金額が6000万円と定められた。
37
38
39 2.契約@において,
40 Bは,
41 契約時に1000万円を支払い,
42 残額を甲土地及び乙建物の引渡
43 しがされた日から1か月以内に支払うこと,
44 残代金の完済後直ちに甲土地及び乙建物につき
45 AからBへの所有権移転登記手続を行うこととされた。
46
47
48 3.Aは,
49 令和2年7月25日,
50 契約@に基づく残代金債権(5000万円)をCに代金45
51 00万円で売却し,
52 Cへの債権譲渡を通知する旨の内容証明郵便が同月30日にBに到達し
53 た。
54
55
56 4.令和2年9月25日,
57 Bは甲土地及び乙建物の引渡しを受けた。
58
59 その後,
60 Bは,
61 昼間に乙
62 建物内でチェロの練習をしていたところ,
63 近隣住民から,
64 音が漏れ聞こえてうるさいと苦情
65 を申し立てられ,
66 その際,
67 以前Aとの間でも同様のトラブルがあったと言われた。
68
69
70 5.令和2年10月10日,
71 Bが業者に点検させたところ,
72 乙建物が契約@において合意され
73 た防音性能を備えていないことが判明した。
74
75
76 6.そこで,
77 Bは,
78 Aに対し,
79 契約@で定められた防音性能を乙建物に備えさせるための工事
80 に要する費用の見積書を提示し,
81 費用を負担するか,
82 工事を自ら手配するかを選択して履行
83 するよう求めたが,
84 Aからの応答はない。
85
86
87 7.令和2年10月30日,
88 Cは,
89 Bに対して契約@の残代金5000万円の支払を求めた。
90
91
92 〔設問1〕
93 【事実】1から7までを前提として,
94 次の問いに答えなさい。
95
96
97 Bは,
98 乙建物に住み続けることを前提に,
99 上記【事実】5の防音性能の不備を理由としてCへ
100 の支払額を少なくしたいと考えている。
101
102 このとき,
103 契約@に基づくBの主張として考えられるもの
104 を複数挙げ,
105 それぞれその主張が認められるかを検討しなさい。
106
107
108 U
109
110 【事実】1から7までに加え,
111 以下の【事実】8から12までの経緯があった。
112
113 なお,
114 本件にお
115 ける土地の位置関係は別紙図面のとおりである。
116
117
118
119 【事実】
120 8.ところで,
121 甲土地は,
122 鉄道駅から徒歩圏内の住宅地にある。
123
124 甲土地は,
125 かつて,
126 その隣地
127 である丙土地と一筆の土地でありDが所有していたが,
128 分割されて袋地になり,
129 DからAに
130 売却されていた。
131
132
133 9.Aから甲土地を購入したBは,
134 丙土地の端のa部分(幅1メートル)を公道に至るための
135 徒歩での通行路として利用していた。
136
137 その後,
138 Bは,
139 自家用車の購入を計画したが,
140 a部分
141 の道幅は車両の通行には十分でなかったため,
142 令和3年1月10日,
143 Dとの間で,
144 丙土地の
145 a部分及びこれに隣接するb部分(幅2メートル。
146
147 以下,
148 a部分とb部分を合わせて「c部
149 - 2 -
150
151 分」という。
152
153 )につき,
154 通行を目的とする地役権を甲土地のために設定すること,
155 Bは毎年1
156 月に2万円をDに支払うことに合意した(以下「契約A」という。
157
158 )。
159
160 Bは,
161 同日,
162 Dに対し
163 て2万円を支払い,
164 以後,
165 c部分を徒歩及び自家用車で通行している。
166
167
168 10.令和4年以降,
169 Bは,
170 毎年2万円の支払をしなくなった。
171
172
173 11.令和6年3月1日,
174 Bが毎年2万円を支払わないのであればc部分を花壇として利用した
175 いと考えたDは,
176 Bに支払を催告し,
177 1週間以内に支払わなければ契約Aを解除する旨の意
178 思表示をしたが,
179 同月8日を経過しても,
180 Bは支払に応じなかった。
181
182
183 12.Bは,
184 「c部分,
185 少なくともそのうちのa部分については,
186 Bは,
187 Dによる地役権の設定
188 がなくても通行する権利がある。
189
190 」,
191 「仮に,
192 地役権の設定がなければc部分を通行できないと
193 しても,
194 Dは契約Aを解除することはできない。
195
196 すなわち,
197 確かに,
198 Bは毎年2万円を支払
199 っていないが,
200 地役権設定契約によって設定者が債務を負うことはなく,
201 Dは契約Aによ
202 って債務を負っていない以上,
203 解除をすることはできない。
204
205 」と述べている。
206
207
208 これに対して,
209 Dは,
210 Bが毎年2万円を支払わない以上,
211 契約AによってDが債務を負
212 っていなかったとしても,
213 Dは契約Aを解除することができるはずであるし,
214 また,
215 そもそ
216 も地役権設定契約によって設定者は債務を負い,
217 したがって,
218 契約AによってDも債務を負
219 っていたと述べている。
220
221
222 〔設問2〕
223 【事実】8から12までを前提として,
224 以下の(1)及び(2)に答えなさい。
225
226
227 (1) 【事実】12の下線部のBの発言は,
228 正当であると認められるか。
229
230 a部分及びc部分のそれぞ
231 れにつき,
232 検討しなさい。
233
234
235 (2) 【事実】12の下線部及びにつき,
236 B及びDが地役権設定契約の性質をどう捉え,
237 それを踏
238 まえて契約Aの債権債務関係をどのように分析し,
239 また,
240 解除の制度趣旨についてどのような
241 理解を基礎としているのかをそれぞれ発言者ごとに明らかにした上で,
242 Dが契約Aを解除する
243 ことができるかを検討しなさい。
244
245
246 V
247
248 【事実】1から12までに加え,
249 以下の【事実】13から21までの経緯があった。
250
251
252
253 【事実】
254 13.Bは,
255 甲土地に隣接する丁土地を購入することで,
256 車の通行の問題を解決しようと考えた。
257
258
259 14.丁土地はEの所有地であり,
260 その旨の登記がされていた。
261
262
263 15.Eは長期入院加療中であったため,
264 Eの財産の管理は,
265 Eから依頼があったわけではない
266 が,
267 事実上,
268 Eの妻FがEの姉Gに相談して行っていた。
269
270 Bから丁土地の売買の申入れを受
271 けたFは,
272 丁土地はEが相続により取得したが誰も利用しておらず,
273 また,
274 Eの医療費が今
275 後更に必要なことから,
276 前向きに考え,
277 Gに相談した。
278
279 Gは,
280 売却に賛成し,
281 もし売却する
282 ならGの事業の資金のために売却金の一部を使わせてほしいと,
283 Fに申し入れた。
284
285
286 16.Eには子がなく,
287 Eの親族はFとGのみであり,
288 EもFも日頃からGを頼りにしていた。
289
290
291 そこで,
292 Fは,
293 Eの医療費に充てるほか,
294 代金の一部をGの事業の資金に充てるために,
295 丁
296 土地を売却することにした。
297
298
299 17.令和6年7月10日,
300 Bは,
301 Eから丁土地を2000万円で購入する契約(以下「契約B」
302 という。
303
304 )を締結したが,
305 この契約は,
306 FがEの代理人として締結したものであり,
307 その締結
308 の場にはFの求めに応じてGも同席した。
309
310 Fは,
311 Eの委任状及び印鑑登録証明書をBに示し
312 たが,
313 実は,
314 FはEに対して丁土地の売却のことを知らせておらず,
315 丁土地に関してEから
316 Fに代理権が授与されたことはなく,
317 委任状は自宅に保管されていたEの実印をFが勝手に
318 利用して作成したものであり,
319 Eの印鑑登録証明書はFが取り寄せたものであった。
320
321 Fは,
322
323 Bに対し,
324 Eが入院加療中であって医療費が必要であること,
325 丁土地の売却にはEの親族の
326 - 3 -
327
328 了解も得ていることを話し,
329 Bは,
330 夫が入院加療中であるから妻が取引をするのは通常のこ
331 とと考え,
332 それ以上にEに確認するなどの措置は採らなかった。
333
334
335 18.契約Bにおいて,
336 Bは契約時に400万円を支払うこと,
337 残代金の支払及び丁土地の所有
338 権移転登記手続は令和6年9月20日に行うこととされた。
339
340 Bは,
341 これに従ってFに400
342 万円を交付し,
343 Fは,
344 このうち200万円をEの医療費に備えて取り置き,
345 残る200万円
346 をGの指定した銀行口座に振り込んだ。
347
348
349 19.令和6年7月24日,
350 Eは,
351 容態が急変して契約Bについて知らずに死亡した。
352
353 最期まで
354 Eの判断力に衰えは見られなかった。
355
356 その後,
357 Fは相続を放棄し,
358 Gは,
359 同年8月24日,
360
361 E名義の預金口座を解約して全額の払戻しを受けて,
362 Eの医療費を弁済した。
363
364
365 20.令和6年9月13日,
366 Gは不動産業者から丁土地を2600万円で売ってほしい旨の打診
367 を受けた。
368
369
370 21.令和6年9月20日,
371 Bは,
372 Gに対し,
373 残代金を提供した上,
374 契約Bに基づき丁土地の所
375 有権移転登記手続を求めたが,
376 Gはこれを拒絶した。
377
378
379 〔設問3〕
380 【事実】13から21までを前提として,
381 次の問いに答えなさい。
382
383
384 契約Bに基づくBのGに対する所有権移転登記手続請求は認められるか。
385
386 FがEの配偶者であ
387 ることを踏まえて,
388 検討しなさい。
389
390
391
392 - 4 -
393
394 (別紙図面)
395
396 私有地
397
398 私有地
399
400 甲土地
401
402 丁土地
403
404 丙土地
405
406 公道
407
408 b部分
409 a部分
410
411 c部分
412
413 私有地
414
415 公道
416
417 - 5 -
418
419 論文式試験問題集[民事系科目第2問]
420
421 - 1 -
422
423 [民事系科目]
424 〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点の割合は,
425 60:40〕)
426 次の文章を読んで,
427 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
428
429
430 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
431
432 )は,
433 電子機器部品の製造及び販売等を目的とする会社法
434 上の公開会社でない会社であり,
435 取締役会,
436 監査役及び会計監査人を置いており,
437 一種類の株
438 式(以下「本件普通株式」という。
439
440 )のみを発行している。
441
442 甲社の資本金の額は10億円,
443 発行
444 可能株式総数は20万株,
445 発行済株式の総数は8万株であり,
446 Aが5万1000株を,
447 Bが2
448 万9000株を,
449 それぞれ保有している。
450
451 甲社の取締役はA,
452 C及びDの3人であり,
453 Aが代
454 表取締役会長を,
455 Cが代表取締役社長を,
456 それぞれ務めている。
457
458 なお,
459 Bは,
460 甲社の役員に就
461 任していない。
462
463
464 2.甲社は,
465 規模はそれほど大きくないが,
466 高い技術力を持っていた。
467
468 甲社の業績は,
469 約10年前
470 の設立以来,
471 堅調に推移してきたため,
472 2年前までは,
473 毎事業年度,
474 欠かさずに剰余金の配当
475 をしてきた。
476
477 しかし,
478 近時は,
479 支払が遅延する取引先が増えたため,
480 甲社は仕入資金の調達が
481 必要になったが,
482 金融機関が満足な融資をしてくれないため,
483 資金繰りに窮するようになった。
484
485
486 3.このような状況で,
487 Aは,
488 令和元年12月頃,
489 甲社の資金繰りの改善を図ることが急務であり,
490
491 少なくとも2億円の資金調達が必須であると考えた。
492
493 甲社は,
494 銀行から借入れをすることが困
495 難であったため,
496 Aは,
497 株式の発行が最善であると考えたが,
498 普通株式では引受人を見付ける
499 ことができない可能性が高かったため,
500 議決権のある剰余金配当優先株式(以下「本件優先株
501 式」という。
502
503 )を新たに発行することによって2億円の資金調達をすることを計画した。
504
505
506 4.Aが本件優先株式を引き受けて出資してくれそうな者を探したところ,
507 Aの叔父Pとその友人
508 Qがそれぞれ1億円ずつ出資してもよいという意向を示した。
509
510 そこで,
511 Aが,
512 令和2年2月中
513 旬に,
514 中立的な専門機関に対し,
515 甲社の事業計画や財務状況を示す資料を提供して,
516 本件優先
517 株式について合理的な方法による評価額の算定を依頼したところ,
518 本件優先株式の評価額は1
519 株当たり4万円と算定された。
520
521
522 5.これを受けて,
523 Aが,
524 P及びQに対し,
525 1株当たりの払込金額を4万円として,
526 本件優先株式
527 をP及びQにそれぞれ2500株ずつ(合計5000株)発行することを打診したところ,
528 P
529 及びQは,
530 少なくともそれぞれ甲社の発行済株式の総数の5%ずつを保有したいため,
531 1株当
532 たりの払込金額を2万円として,
533 本件優先株式をP及びQにそれぞれ5000株ずつ(合計1
534 万株)発行するように主張して譲らなかった。
535
536
537 6.そこで,
538 AがC及びDに意見を聞いたところ,
539 2人とも2億円の資金調達を実現するためには,
540
541 P及びQの主張を受け入れる以外に選択肢がないが,
542 Bが反対して計画が挫折する可能性が小
543 さくないという意見であった。
544
545
546 7.Aは,
547 令和2年3月17日,
548 甲社の取締役会(以下「本件取締役会」という。
549
550 )を招集して,
551
552 役員の全員が出席の上で,
553 対応策を協議したところ,
554 A,
555 C及びDは,
556 2億円の資金調達を実
557 現するためには,
558 株主総会の場で何とかしてBの同意を取り付けるほかないという意見で一致
559 した。
560
561 その上で,
562 本件取締役会では,
563 同月25日に甲社の本社で定時株主総会(以下「本件定
564 時総会」という。
565
566 )を開催すること,
567 「計算書類の報告の件」及び「事業報告の報告の件」を会
568 議の目的事項とすること,
569 「定款変更の件」を会議の目的事項として,
570 本件優先株式の内容等の
571 所要の事項を定める定款変更を行う旨の議案(以下「本件議案1」という。
572
573 )を本件定時総会に
574 提出すること,
575 「新株式発行の件」を会議の目的事項として,
576 本件優先株式の発行(以下「本件
577 株式発行」という。
578
579 )を行う旨の議案(以下「本件議案2」という。
580
581 )を本件定時総会に提出す
582 ることなどが決議された。
583
584 なお,
585 本件議案2は,
586 @募集株式は本件優先株式1万株とすること,
587
588 A1株当たりの払込金額は2万円(払込金額の合計は2億円)とすること,
589 B払込期日は同年
590 - 2 -
591
592 4月10日とすること,
593 C増加する資本金と資本準備金の額はいずれも1億円とすること,
594 D
595 本件優先株式をP及びQにそれぞれ5000株ずつ割り当てることを内容とするものであった。
596
597
598 8.Cは,
599 令和2年3月17日,
600 A及びBに対し,
601 本件定時総会の招集通知(以下「本件招集通知」
602 という。
603
604 )を書面で発した。
605
606 本件招集通知には,
607 本件定時総会の開催日時及び開催場所のほか,
608
609 会議の目的事項として「計算書類の報告の件」及び「事業報告の報告の件」が記載されており,
610
611 当該目的事項との関係で必要とされる書類も,
612 計算書類や事業報告を始め,
613 全て添付されてい
614 た。
615
616 しかし,
617 本件招集通知には,
618 本件議案1及び本件議案2に関する記載がなく,
619 また,
620 「定款
621 変更の件」という会議の目的事項及び「新株式発行の件」という会議の目的事項がいずれも記
622 載されていなかった。
623
624
625 9.令和2年3月25日に開催された本件定時総会には,
626 役員の全員が出席しており,
627 また,
628 株主
629 であるA及びBのいずれもが出席した。
630
631 Cが「定款変更の件」について本件議案1を,
632 「新株式
633 発行の件」について本件議案2を,
634 それぞれ本件定時総会に上程したところ,
635 Bは,
636 本件議案
637 1及び本件議案2のことを初めて知って驚いた。
638
639 しかし,
640 Bは,
641 Cから,
642 2億円の資金調達が
643 急務であること,
644 そのためには,
645 事実上,
646 本件株式発行以外に選択肢がないこと,
647 2万円とい
648 う1株当たりの払込金額は中立的な専門機関が合理的な方法によって算定した評価額に相当す
649 る額である旨を説明されて,
650 そのような事情であれば本件株式発行によって自己の持株比率が
651 下がるのもやむを得ないと考えて,
652 渋々ながら賛成したため,
653 本件議案1及び本件議案2がい
654 ずれも可決された(以下,
655 本件議案1に関する本件定時総会の決議を「本件決議1」といい,
656
657 本件議案2に関する本件定時総会の決議を「本件決議2」という。
658
659 )。
660
661
662 10.その後,
663 Cが会社法所定の手続を行い,
664 P及びQが払込期日である令和2年4月10日にそれ
665 ぞれ1億円ずつを払い込んだことにより,
666 P及びQに対する本件株式発行が行われた。
667
668 なお,
669
670 上記4の本件優先株式の客観的な評価額の算定後,
671 払込期日までの間に,
672 本件優先株式の価値
673 を著しく変動させるような事情はなかった。
674
675
676 〔設問1〕
677
678 Bは,
679 本件株式発行の効力の発生後になって初めて,
680 中立的な専門機関が合理的な方
681
682 法によって算定した本件優先株式の評価額が1株当たり4万円であったことを知った。
683
684 Bは,
685
686 本件決議1及び本件決議2には瑕疵があり,
687 そのことが本件株式発行の効力に影響を及ぼすと
688 考えている。
689
690 Bは,
691 令和2年5月14日の時点で,
692 どのような訴えを提起して,
693 どのような主
694 張をすることが考えられるかを検討した上で,
695 その主張の当否について,
696 論じなさい。
697
698
699 下記11及び12では,
700 上記8及び9とは異なり,
701 本件株式発行が適法に行われたことを前提として,
702
703 〔設問2〕に答えなさい。
704
705
706 11.本件株式発行によって甲社の資金繰りは改善した。
707
708 しかし,
709 その後,
710 約2年が経過し,
711 甲社の
712 資金繰りは再び苦しくなってきた。
713
714 甲社は,
715 P及びQの要望により,
716 毎事業年度,
717 本件優先株
718 式について剰余金の配当をしてきたが,
719 資金繰りが苦しい中,
720 甲社にとっては,
721 本件優先株式
722 に係る剰余金の配当が重荷になってきた。
723
724 なお,
725 本件優先株式は,
726 その発行後,
727 P及びQがそ
728 れぞれ5000株ずつを保有し続けている。
729
730
731 また,
732 甲社の定款では,
733 本件優先株式の内容として,
734 発行可能種類株式総数のほか,
735 @甲社
736 が剰余金の配当をするときは,
737 本件優先株式の株主に対し,
738 本件普通株式の株主に先立ち,
739 各
740 事業年度に,
741 本件優先株式1株につき1000円(以下「配当優先額」という。
742
743 )を配当するこ
744 と,
745 A本件優先株式について配当優先額の配当をした後に,
746 更に分配可能額がある場合には,
747
748 本件優先株式の株主は本件普通株式の株主と共に株式数に応じて配当を受けることができるこ
749 と,
750 Bある事業年度において本件優先株式の株主に対してする1株当たりの配当の額が配当優
751 先額に達しない場合には,
752 当該不足額は翌事業年度以降に累積すること,
753 C本件優先株式の株
754 - 3 -
755
756 主は,
757 株主総会における決議事項の全部について議決権を行使することができること,
758 D本件
759 優先株式の譲渡による取得には,
760 甲社の承認を要すること,
761 E会社法第322条第2項に基づ
762 き,
763 同条第1項の規定による種類株主総会の決議を要しないことが定められていた。
764
765
766 12.このような状況で,
767 甲社は,
768 本件優先株式についてのみ株式の併合をすること(以下「本件株
769 式併合」という。
770
771 )を計画し,
772 取締役会で,
773 役員の全員が出席の上で,
774 臨時株主総会(以下「本
775 件臨時総会」という。
776
777 )を開催すること,
778 「株式併合の件」を会議の目的事項として,
779 @本件優
780 先株式のみを2株につき1株の割合で併合すること,
781 A本件株式併合の効力発生日,
782 B効力発
783 生日における発行可能株式総数について定める議案(以下「本件議案3」という。
784
785 )を本件臨時
786 総会に提出することなどを決議した。
787
788
789 甲社は,
790 この取締役会の決議に従い,
791 招集手続を経て,
792 本件臨時総会を開催した。
793
794 本件臨時
795 総会では,
796 Cが,
797 本件優先株式に係る甲社の剰余金の配当の負担を軽減するためには本件株式
798 併合が必要である旨を説明した上で,
799 本件議案3について審議したところ,
800 P及びQが強く反
801 対したが,
802 A及びBが賛成したため,
803 本件議案3が可決された(以下,
804 本件議案3に関する本
805 件臨時総会の決議を「本件決議3」という。
806
807 )。
808
809 なお,
810 甲社は,
811 本件臨時総会の開催に先立ち,
812
813 株主に対する会社法所定の通知をするとともに,
814 本件株式併合に関する事項を記載した会社法
815 所定の書面を本店に備え置いた。
816
817 また,
818 Pは,
819 本件臨時総会に先立ち,
820 本件株式併合に反対す
821 る旨を甲社に対し書面で通知した。
822
823
824 〔設問2〕
825
826
827 本件株式併合の効力の発生によって,
828 Pには,
829 どのような不利益が生じ,
830 又は生じるおそれ
831
832 があると考えられるかについて,
833 説明しなさい。
834
835
836
837
838 Pは,
839 本件決議3に従い,
840 本件株式併合の効力が発生することによって,
841 自己に不利益が
842 生じ,
843 又は生じるおそれがあることに強い不満を感じている。
844
845 Pは,
846 本件株式併合の効力の
847 発生前の時点で,
848 どのような会社法上の手段を採ることが考えられるかについて,
849 論じなさ
850 い。
851
852 なお,
853 損害賠償を請求するという手段については,
854 論じなくてよい。
855
856
857
858 - 4 -
859
860 論文式試験問題集[民事系科目第3問]
861
862 - 1 -
863
864 [民事系科目]
865 〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,
866 40:20:40])
867 次の文章を読んで,
868 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
869
870
871 なお,
872 解答に当たっては,
873 文中において特定されている日時にかかわらず,
874 試験時に施行されて
875 いる法令に基づいて答えなさい。
876
877
878 【事
879
880 例】
881
882 1.Xは,
883 旧友Aとの間で,
884 Xが所有する賃貸用建物(以下「本件建物」という。
885
886 )について,
887 賃
888 料月額20万円,
889 期間の定めなしとの約定でAに賃貸するとの賃貸借契約(以下「本件契約」
890 という。
891
892 )を締結し,
893 Aに対し,
894 本件契約に基づき,
895 本件建物を引き渡した。
896
897
898 2.Aは,
899 本件建物で書店を経営し,
900 Aの子であるY1及びY2(以下「Yら」という。
901
902 )が書店
903 を手伝っていた。
904
905
906 3.Aは,
907 5月に死亡した。
908
909 Aの配偶者は,
910 既に死亡しており,
911 Aの相続人は,
912 Yらのみである。
913
914
915 Yらは,
916 まだAの遺産についての遺産分割をしていない。
917
918
919 4.Xは,
920 7月末,
921 Yらに対し,
922 「XとAは,
923 今年の4月1日,
924 本件契約について9月30日をも
925 って終了するとの解約の合意をした。
926
927 Aは,
928 その際,
929 Xに対し,
930 9月30日までに本件建物を
931 明け渡すと言った。
932
933 」と述べた上で,
934 本件建物の明渡しの具体的な時期を問い合わせた。
935
936
937 5.Y1とY2は,
938 8月初め頃に話合いをした。
939
940 この話合いの場において,
941 Y1は,
942 「Aから本件
943 契約の解約の合意をしたとは聞いていない。
944
945 Y1とY2は,
946 相続によってAから本件建物の賃
947 借権を承継し,
948 書店の経営も引き継いでいる。
949
950 Y1は,
951 Xに対し,
952 Aの死亡後,
953 Y1が本件契
954 約に基づく賃料の請求先となったことを知らせたが,
955 Xは,
956 本件契約が終了するとは言わずに,
957
958 これを了承した。
959
960 また,
961 本件契約に基づく賃料は,
962 現在まで滞りなく支払ってきた。
963
964 」とし,
965 本
966 件建物を明け渡す必要はないと述べた。
967
968 これに対し,
969 Y2は,
970 「本件建物を明け渡し,
971 敷金を返
972 還してもらった方がよい。
973
974 Y2は,
975 Aの生前,
976 Aから,
977 Xに敷金を差し入れてあると聞いてい
978 た。
979
980 実際に,
981 本件契約を締結した頃の日付で120万円を受領した旨のX名義の受領書がAの
982 遺品の中にあった。
983
984 この受領書が敷金の差し入れの証拠になる。
985
986 」と述べた。
987
988
989 6.Y2が8月中旬に,
990 Xに対して敷金が全額返還されるか問い合わせたところ,
991 Xは,
992 Y2に
993 対し,
994 「8月分まで賃料の滞納はなく,
995 本件建物をきれいに使ってくれて修繕の必要もない。
996
997 し
998 かし,
999 Aから本件契約の締結時に受け取ったのは礼金であって,
1000 返還の必要のある敷金ではな
1001 い。
1002
1003 」と述べた。
1004
1005
1006 7.そこで,
1007 Y2は,
1008 その翌日,
1009 かねてより相談していた弁護士Lに,
1010 上記1から6までの経緯
1011 を説明した上で,
1012 Xから敷金を返還してもらうことができるかどうかを検討してもらうことと
1013 した。
1014
1015
1016 以下は,
1017 弁護士Lと司法修習生Pとの間の会話である。
1018
1019
1020 L:Y2は本件建物を明け渡して敷金を返還してもらうことを希望しています。
1021
1022 Y1が本件契約の
1023 解約の合意を争っているため,
1024 本件建物の明渡しの見通しはついていませんが,
1025 Xに対し敷金返
1026 還を請求する訴えを提起した場合に,
1027 本件建物の明渡しをしないままの状態であっても,
1028 本案判
1029 決を得ることはできるでしょうか。
1030
1031 ここでは,
1032 敷金返還請求権は,
1033 賃貸借終了後,
1034 不動産が明け
1035 渡されたときに,
1036 敷金によって担保されるそれまでに生じた一切の債務の額を控除した残額につ
1037 き発生するものと考えましょう。
1038
1039
1040 P:そうすると,
1041 本件建物の明渡し前には敷金返還請求権は発生しないので,
1042 将来給付の訴えの適
1043 法性を検討せよということですね。
1044
1045 敷金返還請求権が本件建物の明渡しを条件とする条件付請
1046 求権ということであれば,
1047 将来給付の訴えの適法性が認められるのではないでしょうか。
1048
1049
1050 - 2 -
1051
1052 L:条件付請求権であっても,
1053 将来給付の訴えの適法性が認められるとは限りませんよ。
1054
1055 ここでは,
1056
1057 Y2の法定相続分が2分の1であることを考慮し,
1058 60万円のみの請求をすることとして,
1059 「X
1060 は,
1061 Yらから本件建物の明渡しを受けたときは,
1062 Y2に対し,
1063 60万円を支払え。
1064
1065 」との請求の
1066 趣旨による将来給付の訴えの適法性につき検討してもらいましょう。
1067
1068 これを「課題1」としま
1069 す。
1070
1071 検討の際には,
1072 本件の具体的状況を踏まえた上で,
1073 敷金返還請求権の特質のほか,
1074 当事者
1075 間の衡平の観点から,
1076 適法性が認められた場合の被告の負担を考慮する必要があります。
1077
1078 ただ
1079 し,
1080 応訴の負担は考慮する必要がありません。
1081
1082
1083 P:はい,
1084 分かりました。
1085
1086 ところで,
1087 もし,
1088 将来給付の訴えの適法性が認められないという結論に
1089 なるとすると,
1090 敷金に関する確認の訴えを提起することになるのでしょうか。
1091
1092
1093 L:良い機会ですから,
1094 将来給付の訴えが不適法とされる場合に備え,
1095 敷金に関する確認の訴えの
1096 利益についても考えましょう。
1097
1098 Y2の立場から,
1099 どのような訴えであれば確認の利益が認めら
1100 れるかを検討してください。
1101
1102 その際には,
1103 既判力により確定する必要性を考慮して,
1104 なぜその
1105 訴えであれば確認の利益が認められるのかについて説明してください。
1106
1107 これを「課題2」とし
1108 ます。
1109
1110
1111 〔設問1〕
1112 あなたが司法修習生Pであるとして,
1113 Lから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。
1114
1115
1116 【事
1117
1118 例(続き)】
1119
1120 8.Xは,
1121 Yらが9月30日を経過しても本件建物の明渡しをしないことから,
1122 Yらを被告とし
1123 て,
1124 本件契約の終了に基づく本件建物の明渡しを求める訴えを提起した(以下,
1125 この訴えに係
1126 る訴訟を「本件訴訟」という。
1127
1128 )。
1129
1130 Xは,
1131 訴状において,
1132 Yらの被相続人であり,
1133 本件契約の相
1134 手方当事者であったAとの間で本件契約の解約の合意がされた旨主張している。
1135
1136
1137 9.本件訴訟は,
1138 裁判官Jが単独で審理及び裁判をすることとなった。
1139
1140 本件訴訟の第1回口頭弁
1141 論期日において,
1142 Xは,
1143 訴状を陳述した。
1144
1145 これに対し,
1146 Yらはいずれも,
1147 請求を棄却するとの
1148 判決を求め,
1149 本件契約の解約の合意について,
1150 Y1は否認し,
1151 Y2は知らないとした。
1152
1153
1154 10.その後に指定された和解期日において,
1155 裁判官Jが他の当事者を退席させた上でX,
1156 Y1,
1157
1158 Y2を順次個別に面接する方式により,
1159 和解協議が実施された。
1160
1161 Y2は,
1162 その際,
1163 裁判官Jに
1164 対し,
1165 「Xは,
1166 Aが差し入れた敷金を礼金であるとして返還しようとしないが,
1167 敷金を返還して
1168 くれるのであれば,
1169 Y2は,
1170 Xに本件建物を明け渡してもよい。
1171
1172 Y2としては,
1173 無理に書店の
1174 経営を続けなくともよいのではないかと思っている。
1175
1176 今から思えば,
1177 Aも,
1178 日頃から店の経営
1179 不振に悩んでおり,
1180 Xに相談しているという話もしていた。
1181
1182 本件建物を明け渡して敷金が戻る
1183 ような和解が成立することを希望している。
1184
1185 」と述べた。
1186
1187 しかし,
1188 Y1が飽くまで本件契約の継
1189 続を希望したため,
1190 和解は成立しなかった。
1191
1192
1193 以下は,
1194 裁判官Jと司法修習生Qとの間の会話である。
1195
1196
1197 J:今日は和解成立には至りませんでした。
1198
1199 和解手続における当事者の発言内容をその後の判決に
1200 影響させることがないように,
1201 注意する必要があります。
1202
1203
1204 Q:それでは,
1205 先ほどの和解期日におけるY2の発言から,
1206 XA間の解約の合意は存在したという
1207 心証を得て,
1208 それに基づいて判決をすることはできないのですね。
1209
1210
1211 J:もちろん許されません。
1212
1213 それを理解してもらうために,
1214 まず,
1215 民事訴訟法においては,
1216 裁判所
1217 は何を心証形成の資料とすることができるとされているのかを示した上で,
1218 和解期日における
1219 Y2の発言がそれに当たらないことを説明してください。
1220
1221 また,
1222 和解手続における当事者の発
1223 言内容を心証形成の資料とすることができるとすると,
1224 どのような問題が生ずるかについて,
1225
1226 理由を示して検討してください。
1227
1228 これらを「課題」とします。
1229
1230
1231 - 3 -
1232
1233 〔設問2〕
1234 あなたが司法修習生Qであるとして,
1235 Jから与えられた課題について答えなさい。
1236
1237
1238 【事
1239
1240 例(続き)】
1241
1242 11.本件訴訟の第2回口頭弁論期日において,
1243 Xは,
1244 Aが生前にXとの間で本件契約の解約の合
1245 意をしていたことを裏付けるため,
1246 「Xは,
1247 4月3日,
1248 本件建物の内外を検分し,
1249 Aに対して,
1250
1251 『大変きれいに使ってくれていますね。
1252
1253 これなら修繕の必要はない。
1254
1255 』と述べるなど,
1256 Aとの間
1257 で本件建物の明渡しの準備について話をした。
1258
1259 Y2は,
1260 書店の手伝いをしていたことから,
1261 そ
1262 の際,
1263 XとAとの会話を聞いたはずである。
1264
1265 」と主張した。
1266
1267 これに対し,
1268 Y2は,
1269 「4月3日に
1270 Xが主張するXとAの会話を聞いた記憶はない。
1271
1272 Aが作成していた業務日誌を見ても,
1273 Xとの
1274 間で本件契約の解約や本件建物の明渡しを前提とした会話があったことは記載されていない。
1275
1276 」
1277 と主張し,
1278 Xが主張するような会話がなかったことを立証するため,
1279 Aが作成した同日の業務
1280 日誌(以下「本件日誌」という。
1281
1282 )を提出して書証の申出をした。
1283
1284 裁判所は,
1285 同期日において,
1286
1287 本件日誌を取り調べた。
1288
1289
1290 12.本件訴訟の第3回口頭弁論期日が指定された後,
1291 X,
1292 Y1及びY2は,
1293 訴訟外で解決に向け
1294 た協議をした。
1295
1296 その結果,
1297 XとY1の間では協議が整わなかったが,
1298 XとY2の間では,
1299 解決
1300 に向けた合意がされ,
1301 XがY2に対する訴えを取り下げることとなった。
1302
1303 そこで,
1304 Xは,
1305 裁判
1306 所に対し,
1307 Y2に対する訴えの取下書を提出し,
1308 それを受け,
1309 Y2は,
1310 裁判所に対し,
1311 Xの訴
1312 えの取下げに同意する旨の書面を提出した。
1313
1314
1315 以下は,
1316 裁判官Jと司法修習生Rとの間の会話である。
1317
1318
1319 J:XがY2に対する訴えの取下書を提出し,
1320 Y2もその同意書を提出しています。
1321
1322 XはY2に対
1323 する訴えのみを取り下げることができるのでしょうか。
1324
1325
1326 R:それを考えるに当たっては,
1327 まず,
1328 本件訴訟が共同訴訟のどの類型に当たるのかを考慮する必
1329 要があります。
1330
1331
1332 J:そうですね。
1333
1334 それでは,
1335 その結果を踏まえて,
1336 XはY2に対する訴えのみを取り下げることが
1337 できるのかを検討してください。
1338
1339 これを「課題1」とします。
1340
1341
1342 また,
1343 仮にXがY2に対する訴えのみを取り下げることができるとして,
1344 残されたXとY1
1345 のみの訴訟において本案判決がされる場合に,
1346 第2回口頭弁論期日にY2が提出した本件日誌
1347 の取調べの結果を事実認定に用いてよいかを,
1348 共同訴訟における証拠調べの効果及びそれが訴
1349 えの取下げによって影響を受けるかどうかを踏まえて検討してください。
1350
1351 これを「課題2」と
1352 します。
1353
1354
1355 〔設問3〕
1356 あなたが司法修習生Rであるとして,
1357 Jから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。
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1361 - 4 -
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