1 論文式試験問題集[倒
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3 - 1 -
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5 産
6
7 法]
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9 [倒
10
11 産
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13 法]
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15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の【事例】について,以下の設問に答えなさい。
17 なお,解答に当たっては,文中において特定されている日時にかかわらず,試験時に施行されて
18 いる法令に基づいて答えなさい。
19 【事
20
21 例】
22 A株式会社(以下「A社」という。)は,工作機械の部品の製造を業とする株式会社であり,
23
24 B株式会社(以下「B社」という。)の完全子会社であって,α地方をその営業地域としてい
25 た。
26 A社は,令和2年6月頃,α地方の製造業の業績悪化のあおりを受け,急激に財務状況が悪
27 化していた。
28 しかし,A社は,C銀行から,令和2年7月1日,6000万円の運転資金を借り受け,そ
29 の営業を継続した。また,A社は,同月10日,自動車販売会社であるD株式会社(以下「D
30 社」という。)から,事業用車両1台(以下「本件事業用車両」という。)を代金1000万
31 円で月々50万円を各月15日に支払う旨の割賦払いの約定で所有権留保特約の下,購入した。
32 なお,本件事業用車両は,D社名義で登録されている。
33 一方,B社も業績が悪化し,運転資金が欠乏するに至り,B社は,E銀行から,令和2年7
34 月16日,5000万円の運転資金を借り受けた。
35 ところが,A社が部品を卸していた主たる取引先が令和2年8月14日,破産手続開始の決
36 定を受けた。この事態に至り,A社の代表取締役であるXは,同年9月1日,C銀行に対し,
37 運転資金の追加融資を依頼したが断られた。そのため,A社は,同月4日,全ての債権者に対
38 し,「当社は,資金繰りに行き詰まり,本日までにお支払いをすべき債務の支払ができなくな
39 り,今後,支払ができる見込みもありません。そのため,関係各位には,ご迷惑をお掛けいた
40 しますが,近々破産の申立てをする予定です。」と記載された通知書(以下「本件通知書」と
41 いう。)を郵送した。
42 A社が本件通知書を発したことを知ったE銀行は,親会社であるB社の資金繰りにも不安を
43 抱き,B社に対し,E銀行に対する債務5000万円について担保の提供を求めた。そこで,
44 B社の依頼を受けたA社は,令和2年9月10日,B社のE銀行に対する債務5000万円を
45 担保するため,A社の所有する甲土地に抵当権を設定し(以下「本件担保提供」という。),
46 同月14日,当該抵当権設定登記(以下「本件抵当権設定登記」という。)が経由された。な
47 お,A社は,甲土地以外の不動産を所有しておらず,他にみるべき財産を有していない。
48 また,A社は,本件事業用車両の代金につき9月分以降の分割代金を支払うことができなか
49 ったため,令和2年9月23日,本件事業用車両の残代金900万円の支払に代えて,D社に
50 対し,本件事業用車両を代物弁済に供した。その当時の本件事業用車両の評価額は,750万
51 円であった。
52 A社は,令和2年12月1日,α地方裁判所に破産手続開始の申立てを行い,同月2日午後
53 5時,破産手続開始の決定がされ,破産管財人Yが選任された。
54 〔設
55
56 問〕
57
58 以下の1から3については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
59
60 1.【事例】において,仮に,C銀行が令和2年11月2日,本件担保提供について,詐害行
61 為取消権に基づき,E銀行に対し,α地方裁判所に本件抵当権設定登記の抹消登記手続請求
62 訴訟(以下「本件訴訟1」という。)を提起し,同年12月2日現在,同裁判所に係属中で
63 あったとする。本件訴訟1は,A社に対する破産手続開始の決定により,どのような取扱い
64 を受けるか,論じなさい。
65 - 2 -
66
67 2.【事例】において,仮に,破産管財人Yが本件担保提供について,破産法第160条第1項
68 又は第162条第1項に基づき否認するとして,E銀行に対し,α地方裁判所に本件抵当権設
69 定登記の抹消登記手続請求訴訟(以下「本件訴訟2」という。)を提起したとする。本件訴訟
70 2における破産管財人Yの上記主張の当否について,本件担保提供がA社の債務を担保するた
71 めではなく,A社の親会社であるB社の債務を担保するためのものであることに留意して論じ
72 なさい。
73 3.【事例】において,仮に,破産管財人Yが令和2年9月23日にD社に対してされた本件
74 事業用車両による代物弁済について,破産法第162条第1項に基づき否認するとして,D
75 社に対し,α地方裁判所に本件事業用車両の引渡請求訴訟(以下「本件訴訟3」という。)
76 を提起したとする。本件訴訟3における破産管財人Yの上記主張の当否について,論じなさ
77 い。
78
79 - 3 -
80
81 〔第2問〕(配点:50)
82 次の【事例】について,以下の設問に答えなさい。
83 なお,解答に当たっては,文中において特定されている日時にかかわらず,試験時に施行されて
84 いる法令に基づいて答えなさい。
85 【事
86
87 例】
88 A株式会社(以下「A社」という。)は,精密機械の製造を業とする会社であり,その所有
89
90 する土地上に精密機械を製造する工場(以下「本件工場」という。)を建築し所有している。
91 A社は,令和2年4月頃,それまでの過剰な設備投資に起因する借入金の増加が原因となって
92 苦境に陥っていた。A社の令和2年4月30日時点での資産の総額は10億円,債務の総額は
93 13億円である。
94 A社の代表取締役であるBは,自社の資金繰りが悪化し,新規の借入れも困難になったこと
95 から,自力での再建を断念し,法的倒産手続により精密機械の製造に係る事業(以下「本件事
96 業」という。)を譲渡するための方法について相談するため,令和2年5月1日,C弁護士を
97 訪ねた。A社と親密な関係にあり,財務状態が良好な同業のD株式会社(以下「D社」とい
98 う。)は,A社が法的倒産手続に入った場合には,本件事業を譲り受ける意向を表明しており,
99 債権者(後述のE銀行を除く。)は,D社がA社から本件事業を譲り受けることにつき,その
100 譲渡代金額を含め賛成している。
101 〔設
102
103 問〕
104 【事例】に加え,下記〔A社に関する事情〕が令和2年4月30日時点で存するとき,A社
105
106 の相談を受けたC弁護士は,本件事業を維持継続した上で社に譲渡するためには,破産手続
107 開始又は再生手続開始のいずれを申し立てるのが相当であるとBに助言すべきか。
108 解答に当たっては,@法的倒産手続の申立て後手続開始前に資金援助をするD社に対して優
109 先的に弁済をするための方策,A本件工場及び敷地に設定されたE銀行の抵当権について,そ
110 の実行を阻止し又はこれを消滅させるための方策,BF社との取引関係を維持するための方策
111 について,【事例】及び〔A社に関する事情〕を踏まえ,破産手続による場合と再生手続によ
112 る場合とを比較して論じなさい。
113 〔A社に関する事情〕
114 A社は,資金繰りが悪化し,本件事業を維持継続することが困難になっている。そこで,D
115 社は,A社が法的倒産手続の申立てをすれば,A社の資金繰りを支えるため,法的倒産手続の
116 開始前に最大で3000万円の資金援助を直ちに行う旨の意向を有しているが,そのような資
117 金援助を行った場合に優先的に弁済を受けることができるのか心配している。
118 A社は,E銀行から本件工場の建築資金3億円を借り入れる(以下「本件借入れ」という。)
119 際,本件借入れに係る債務を被担保債務として本件工場及び敷地に抵当権を設定していた。本
120 件借入れの残高は,令和2年4月30日時点で2億円であったところ,同時点での本件工場及
121 び敷地の価額については,A社が1億円であると主張する一方で,E銀行は,1億8000万
122 円であると主張し,早期の債権回収を図るため担保権実行の方針を明らかにしている。
123 A社は,本件事業に欠かせない部品の調達先であるF株式会社(以下「F社」という。)か
124 ら,代金につき毎月末日締め翌月15日払いとの約定で部品を仕入れており,F社以外に当該
125 部品の調達先を確保するのが極めて困難な状況にある。F社は,A社に対し,その代金が期限
126 までに支払われなければ直ちにA社との取引を打ち切る旨を明らかにしている。A社は,F社
127 に対し,部品の代金としておおむね500万円前後を毎月支払っており,令和2年5月15日
128 支払予定の代金額は480万円である。
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130 - 4 -
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132 論文式試験問題集[租
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136 税
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138 法]
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142 税
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144 法]
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146 〔第1問〕(配点:50)
147 競馬好きの個人Aは,不動産賃貸業を営む傍ら,インターネットを介して馬券を購入できるサ
148 ービスを利用して馬券を購入している。Aの馬券購入方法は,競走馬や騎手等の情報を収集・分
149 析した上で,着順予想の確度と配当率の大小を組み合わせた購入パターンに従い,年間を通じて
150 の収支(当たり馬券の払戻金の合計額と外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金との差額)で利益
151 が得られるように工夫しながら,偶然性の影響を減殺するために年間を通じてほぼ全てのレース
152 で馬券を購入するというものである。そして,平成21年から平成25年までの5年間に,年間
153 約3000レースのうちのほぼ全てのレースを対象として,1年当たり5000万円程度の馬券
154 を購入し,収支の上で毎年利益を得ていた。利益の額は,年によって大きく変動したものの,平
155 均すると1年当たり200万円程度であった。
156 Aは,自己のノウハウを基に競馬予想ソフトウェア(以下「ソフト」という。)を開発し,これ
157 にユーザーが独自の条件設定を行うことができる機能を付けて売り出せばより多くの利益を得ら
158 れるのではないかと考え,平成26年から,このソフトの小売販売事業を始めた。もっとも,こ
159 れと並行して上記の方法による馬券の購入も継続し,従前と同程度の利益を上げながら,そこで
160 得られる新たな競馬予想ノウハウをソフトのバージョンアップに取り入れていた。平成28年に
161 は,株式会社B(以下「B社」という。)を設立して同社の代表取締役に就任し,同社において,
162 株式会社C(以下「C社」という。)その他の小売業者にソフトの卸売を行うこととした。
163 Aは,個人で営む不動産賃貸業でも安定した収入を得ており,所有する建物の一つを,毎月の
164 賃料を当月末日に支払う約定でDに賃貸していた。平成28年10月1日に借地借家法第32条
165 に基づく賃料増額請求権を行使してDに対し賃料を月額20万円から25万円に増額するよう求
166 めたところ,Dがこれに応じず,民事調停も整わなかったため,AはE地方裁判所(以下「E地
167 裁」という。)に賃料増額請求の訴訟を提起した。その結果,E地裁は,Aの請求を一部認容して
168 賃料を月額23万円とする判決を言い渡し,この判決は平成29年12月28日に確定した。そ
169 のため,Dは,平成30年1月4日にAに対し,月額23万円で計算した平成28年10月1日
170 以降の増額分の未払賃料及び遅延損害金(以下,両者を併せて「本件未払賃料等」という。)を全
171 額支払った。
172 他方で,B社の経営も順調であったが,ソフトの卸売先であるC社の資金繰りが悪化し,同社
173 から,同社の所有する甲土地をB社に売却するので,その売買代金を未払のソフト仕入代金と同
174 額にして相殺処理してほしいとの申出を受けた。B社は,C社への資金援助になると考えてこれ
175 を承諾し,平成30年8月1日にC社との間で,時価3000万円相当の甲土地を代金4000
176 万円で買い受ける旨の売買契約を締結し,その売買代金債務とC社のB社に対する未払のソフト
177 仕入代金債務4000万円とを相殺して,同日にC社の費用負担で甲土地の所有権移転登記を受
178 けた。
179 Aは,令和2年5月1日にB社から甲土地を時価と同額の代金3300万円で買い取り,これ
180 を不動産賃貸業の用に供した。
181 なお,B社もC社も,毎年1月1日から12月31日までの期間を事業年度としている。
182 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。
183 〔設
184
185 問〕
186
187 1
188
189 Aが平成25年に得た当たり馬券の払戻金に係る所得は,Aの同年分の所得税の計算上ど
190 の所得に分類されるか,説明しなさい。
191
192
193
194 Aが平成26年に得た当たり馬券の払戻金に係る所得は,Aの同年分の所得税の計算上ど
195 の所得に分類されるか,説明しなさい。
196 - 6 -
197
198 2
199
200 AがDから得た本件未払賃料等に係る収入は,Aの所得税の計算上いつの年分の不動産所得
201 に係る総収入金額に算入されるか,説明しなさい。
202
203 3
204
205 B社によるC社からの平成30年8月1日の甲土地の買受けに関して,B社の同日を含む
206 事業年度の法人税の計算上,損金の額への計上はどのようにすべきか,説明しなさい。
207
208
209
210 B社によるAへの令和2年5月1日の甲土地の売却に関して,B社の同日を含む事業年度
211 の法人税の計算上,益金の額及び損金の額への計上はどのようにすべきか,説明しなさい。
212
213 - 7 -
214
215 〔第2問〕(配点:50)
216 個人Aは,食品卸売業を目的とする株式会社B(以下「B社」という。)の創業者であるCの子
217 で,同社の使用人であった。平成23年にCが死亡し,遺産分割協議の結果,Aの姉のDがB社株
218 式の大半を相続して経営を引き継ぎ,Aは少数の同社株式を相続した上で,同社の取締役に就任し,
219 事業年度ごとに決められる毎月一定額の役員給与(以下「本件役員給与」という。)の支給を受け
220 ることとされた。しかし,Dが経営を独占したため,毎月開催される取締役会に形式的に出席する
221 ほかは,B社にはAの行うべき業務はなかった。そこでAは,B社勤務中の経験をいかし,B社の
222 取締役に就任したまま,平成24年中に,冷凍食品の小売販売店を個人で開業することとした。
223 この開業以来Aの店で働いていたEは,Eにとって唯一の親族である高齢の父親F(妻(Eの母
224 親)とは死別)と同居してその介護をしていたところ,平成26年中にFの症状が進んでEの手に
225 負えなくなったことから,Fを介護付有料老人ホームに入所させたいと考えるようになったが,E
226 が適切と考える施設の入居一時金を支払うにはFの全財産である貯金を使っても300万円不足す
227 るため,特に貯金のないEは同年半ばに,Aに300万円の借金を申し込んだ。この申込みを受け
228 たAは,これまでのEの誠実な働きぶりを高く評価していたため,「Eさんの働きぶりにはいつも
229 感心しています。これからも長くこの店で働いてくださいね。」と言って,低利・無担保でこの借
230 金の申入れに応じて貸し付けることとした(以下,この貸付金を「本件貸付金」という。)。Eは平
231 成26年及び平成27年にはAに対して約定の元利支払を行ったが,平成27年末にFが亡くなっ
232 た際の心労などから病気になり,平成28年中に病死した。Aに対するEの債務は元本が200万
233 円残っており,また,Eが病死するまでの期間に相当する平成28年分の利息1万円が未払のまま
234 であったが,Fの介護にお金をつぎ込んでいたEには貯金はなく,自動車などのめぼしい財産もな
235 かった。
236 Aは,開業以来事業の用に供していた冷凍庫付軽自動車甲を平成28年末に同業のGに譲渡して,
237 その譲渡による利益を,平成29年3月14日に提出した平成28年分の所得税の確定申告書にお
238 いて,所得に含めて申告した。平成29年3月中にGから,甲が契約した性能を満たしていないか
239 ら契約を解除するとの連絡があったが,Aがこの主張を認めなかったため,AとGの間で民事訴訟
240 (以下「本件訴訟」という。)となり,平成30年6月15日にA敗訴の判決が確定した。同日,
241 Aは代金等をGに払い戻し,甲の引渡しを受けた。
242 本件訴訟係属中の平成29年8月には,開業以来のAの所得についての税務調査が行われ,その
243 結果に基づいて平成25年分から平成28年分のAの事業所得につき,収入の計上漏れなどを理由
244 とする増額更正処分が,平成29年12月に行われた。Aはこの処分について不服申立てを行って
245 いない。
246 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。
247 〔設
248
249 問〕
250
251 1
252
253 本件役員給与の課税関係について,以下の問いに答えなさい。
254
255
256 B社が本件役員給与を損金に算入し得る場合の根拠規定とその趣旨及び適用関係を,簡潔
257 に説明しなさい。
258
259
260
261 本件役員給与に不相当に高額な部分がある場合,B社の所轄税務署長Hが,法人税法第3
262 4条第2項(以下「本件規定」という。)に基づいて本件役員給与の一部の損金算入を否認す
263 る処分を行うことは適法か。本件規定の括弧書に「前項……の適用があるものを除く。」と規
264 定されている点を考慮した上で,本件規定の適用関係に触れつつ,簡潔に説明しなさい。
265
266 - 8 -
267
268 2
269
270 本件貸付金に関する課税関係について,以下の問いに答えなさい。
271
272
273 AがEから受け取った本件貸付金の利息と未収受の利息は,Aの所得税の計算上どのよう
274 に扱われるか,簡潔に説明しなさい。
275
276
277
278 平成28年にEが病死したという事情は,Aの所得税の計算上どのように扱われるか,説
279 明しなさい。
280
281 3
282
283 Aを敗訴させた本件訴訟の判決が平成30年6月15日に確定したことにより,Aのいつの年
284 分のどの所得分類に係る所得額がどのように変化するか。また,Aは,その変化をどのような
285 手続によって自分の所得税の計算に反映させることができるか。条文上の根拠を摘示しつつ説
286 明しなさい。
287
288 - 9 -
289
290 - 10 -
291
292 論文式試験問題集[経
293
294 - 11 -
295
296 済
297
298 法]
299
300 [経
301
302 済
303
304 法]
305
306 〔第1問〕(配点:50)
307 X社は,電子部品である甲(以下「甲部品」という。)のメーカーである。Y社は,電子機器で
308 ある乙(以下「乙機器」という。)のメーカーである。X社及びY社は,Y社がX社の全株式を取
309 得することを計画している(以下「本件計画」という。)。
310 甲部品は,乙機器の製造に不可欠な重要部品の一つである。乙機器の製造原価に占める甲部品の
311 仕入原価の割合は大きくない。乙機器は装置である丙(以下「丙装置」という。)に組み込まれた
312 後に,世界中の産業需要家に販売される。丙装置の製造原価に占める乙機器の仕入原価の割合はご
313 く僅かである。甲部品には,乙機器メーカーを需要者とする組込品のほか,乙機器や丙装置の修理
314 のための交換品も存在するが,交換品の取引規模は小さい。また,甲部品が乙機器以外の製品の製
315 造に用いられることもあるが,それら製品の製造に係る甲部品の取引規模は僅少である。Y社が乙
316 機器以外のそれら製品を製造することはない。
317 X社やY社を含む甲部品及び乙機器の各メーカーは,複数の国に製造,配送の拠点を有している。
318 また,甲部品及び乙機器ともに,重量に比して価格が高いとの特徴から,輸送費が価格に占める割
319 合は低く,輸送費が取引上の障壁とはならない。そのため,甲部品及び乙機器について,日本を含
320 む世界中の需要者(甲部品については乙機器メーカー,乙機器については丙装置メーカー)は,供
321 給者の所在する国を問わず発注しており,供給者もそれに応じ得る状況にある。次に見る乙機器の
322 仕様の差異に基づく価格差を除けば,甲部品及び乙機器ともに,地域にかかわらず世界における販
323 売価格は実質的に同一である。
324 最終製品である丙装置は,メーカーの違いにより機能や性能に大きな差異はないが,メーカーご
325 とに仕様が異なる。丙装置の仕様ごとに,乙機器の仕様も若干異なる。ただし,仕様が異なっても,
326 乙機器に係る基本的な製造設備や製造工程は同じであり,製造のために特別な技術を要することも
327 ない。丙装置の仕様に応じた乙機器の製造設備の調整の費用は大きなものではないが,製造設備の
328 調整から商業的な乙機器の製造まで2か月から3か月を要する。それら調整は製造設備ごとに行わ
329 れ,各製造拠点において,丙装置の仕様に対応した仕様の異なる乙機器の製造が可能である。丙装
330 置メーカーは,乙機器メーカーに対して取引上の立場が強い。甲部品は,メーカーの違いにより機
331 能や性能に差異はないほか,丙装置や乙機器とは異なり,いずれのメーカーの仕様も同じである。
332 全世界における甲部品の販売状況(販売額に基づく市場シェア)は,X社が約50パーセント,
333 A社が約45パーセント,B社及びC社がそれぞれ約5パーセント未満である。これらメーカー間
334 では活発な競争が行われてきたところ,製造設備の更新期にあったA社は,工場を新設するなどし
335 て製造設備を増強した。その結果,A社には十分な製造余力がある。また,B社にも若干の製造余
336 力がある。他方,X社及びC社に製造余力はない。甲部品の製造には高額な設備を要することから,
337 投下資本を回収するために製造設備の稼働率を高く維持することが,甲部品の各メーカーにとって,
338 経営上重要になっている。
339 次に,全世界における乙機器の販売状況(販売額に基づく市場シェア)は,D社が約40パーセ
340 ント,Y社が約30パーセント,E社が約20パーセント,F社が約10パーセントである。D社
341 は甲部品のほとんどをA社から購入している。Y社は甲部品の多くをX社から購入しているが,安
342 定調達の観点から,A社,B社及びC社から購入する分もある。E社及びF社は,いずれも甲部品
343 のほとんどをX社から購入している。Y社及びF社に製造余力がない一方で,D社及びE社には若
344 干の製造余力がある。D社及びE社は,製造余力を活用すべく,甲部品を含む乙機器の製造に要す
345 る部品について,入札手続の導入等によるより良い条件での調達を模索している。さらに,E社は,
346 必要となる甲部品の一部を自ら製造することを計画しており,今後2年以内に,少量ではあるがそ
347 の商業的な製造が開始される見込みである。
348 なお,F社は,X社から,甲部品以外の製品を相当量購入している。X社におけるF社との取引
349 - 12 -
350
351 の多くは,甲部品以外の製品に係る取引で占められており,X社にとってF社は,甲部品以外の製
352 品について極めて重要な顧客である。他方,それら甲部品以外の製品について,F社がX社以外の
353 取引先を確保することは容易である。
354 〔設
355
356 問〕
357
358 本件計画について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」と
359 いう。)上の問題点を検討しなさい。
360
361 - 13 -
362
363 〔第2問〕(配点:50)
364 A県浄化槽協会(以下「協会」という。)は,トイレから発生するし尿や台所,風呂,洗濯機等
365 からの生活雑排水を微生物を利用して浄化した後,側溝等に放流する設備である浄化槽の普及を図
366 ることにより,生活環境の保全と公衆衛生の向上に寄与することを目的とする一般社団法人である。
367 協会は,A県内で浄化槽の製造,施工,保守点検又は清掃を行う事業者を主な会員(以下,協会に
368 所属する者を「会員」といい,所属しない者を「非会員」という。)とする県内唯一の団体であり,
369 会員数は約450名である。協会には,会員である各事業者がそれぞれ所属する製造,施工,保守
370 点検及び清掃の各部会があり,保守点検部会の会員は140名,清掃部会の会員は70名である。
371 協会は,社員総会及び理事会を置き,社員総会で各部会の入会基準を決定し,各部会において,
372 それら入会基準に基づき,入会申請者の入会の可否を決定している。各部会への入会を認められた
373 者は,自動的に協会への入会が認められる。協会は,浄化槽に関する説明会や講習会を開催し,そ
374 の際,住宅や事業所等に浄化槽の設置を希望する者に対して会員を優先して紹介し,会員に対して
375 も公民館や学校等の浄化槽に係る大口の取引を優先的に斡旋するため,A県内で浄化槽の製造,施
376 工,清掃を行う各事業者は,全て会員である。保守点検を行う事業者については,140名の会員
377 のほか,非会員であるBら15名が存在する。A県の保守点検業者全体の契約件数及び売上高に占
378 める保守点検業者である会員の契約件数及び売上高の割合は,いずれも約9割である。
379 住宅や事業所等に浄化槽を設置した者は,法令上,年3回以上の保守点検(機器の調整点検,水
380 質検査,消毒剤の補充及び害虫駆除等を行うこと),年1回以上の清掃(汚泥を槽外に引き抜き,
381 浄化槽を洗浄すること),年1回の法定検査(A県においては,A県職員が浄化後の水質検査や機
382 器の適正作動の確認を行うこと)を受けなければならない。また,法令上,保守点検を行った者は,
383 保守点検の度に検査結果を記録票に記載しなければならず,浄化槽設置者は,これを3年間保管し,
384 年1回の法定検査の際,これを提示する必要がある。その結果,不良な保守点検を行う者が発見さ
385 れた場合,都道府県知事は,その者に対し,必要な助言,指導,勧告又は改善命令を行うことがで
386 きる。
387 A県内で保守点検業を行うためには,法令や条例上,A県知事の登録を受けなければならず,そ
388 の登録の有効期間は3年である。また,条例上,その登録(更新を含む。以下同じ。)の申請を行
389 おうとする者は,自らが浄化槽の清掃業の許可を受けていない限り,業務を行おうとする区域にお
390 いて現に清掃業の許可を受けている浄化槽清掃業者と提携していることを証明する書類を提出しな
391 ければならない。浄化槽の清掃業の許可は,法令上,業務区域を管轄する市町村長により行われる
392 ところ,A県下の市町村においては,清掃によって生じる汚泥等の一般廃棄物の処理業の許可を受
393 けていることを浄化槽の清掃業の許可基準の一つとしている。一般廃棄物の処理業については,処
394 理業務の総量を超える業者の参入を認める必要はなく,A県内では,処理業務の総量に見合った許
395 可が既にされているため,新規に許可がされる見込みはない。その結果,A県において浄化槽の保
396 守点検業の登録を受けようとする場合,その者が清掃業の許可を受けておらず,かつ,一般廃棄物
397 処理業の許可も受けていなければ,新たに清掃業の許可を受けられる見込みが乏しいため,A県内
398 の清掃業者と提携するほかない。
399 ところで,数年前から,A県内の河川は,その水質が全国で最も汚濁の著しいものの一つとして
400 報道されるようになった。A県では浄化槽の保守点検業者が相当数に上るにもかかわらず,新規に
401 浄化槽を設置する住宅や事業所等は減少している。こうした事情から,協会は,浄化槽の保守点検
402 をめぐる競争が激化して過度な低料金化が進むと,環境保全と公衆衛生に十分配慮した事業活動が
403 できなくなるという理由で,保守点検業者である会員に対して,会員間で既存の取引先を尊重して
404 奪い合わないよう,協会からの除名を示唆しながら強く指導し続けている。また,協会は,平成2
405 8年4月の社員総会において,上記と同様の理由で,A県内で浄化槽の保守点検を行う他の事業者
406 の顧客を低料金を提示して奪おうとする者から申請があっても入会を認めないこと,清掃業の許可
407 を受けていない非会員が保守点検業を行うためA県知事に登録を申請する際,清掃業者である会員
408 - 14 -
409
410 が,有償であると無償であるとを問わず,当該登録申請者と提携してはならないこと,ただし,そ
411 の者が低料金を提示して会員の既存の顧客を奪わないと確約した場合には,有償で提携してよいこ
412 とをそれぞれ決定した。さらに,協会は,平成28年4月以降,上記と同様の理由で,A県内の保
413 守点検業者が使用する水質検査薬や消毒剤のほとんど全てを供給するメーカーに対して,A県内で
414 非会員にそれらを供給しないよう働き掛け,これに同意させている。これらのメーカーは,非会員
415 に販売すると会員に対する販売を妨害されるおそれがあるため,それぞれ,協会の要求に同意する
416 ことを余儀なくされている。非会員が別の販路や方法で浄化槽用の水質検査薬や消毒剤を入手する
417 ことはできない。なお,平成28年4月以降も,A県内の浄化槽の保守点検をめぐる競争は激化し
418 ているため,その料金は一貫して下落し続けている。
419 A県内の浄化槽保守点検業者である非会員のBら15名は,清掃業の許可も一般廃棄物処理業の
420 許可も受けていない者であるが,平成28年10月から平成30年10月までの間に3回ないし5
421 回の入会申込みをそれぞれ行ったところ,他の事業者の顧客を低料金を提示して奪おうとする者で
422 あり,生活環境の保全と公衆衛生の向上に配慮した事業活動を行うことができないことを理由に,
423 保守点検部会において,Bらの入会申込みはいずれも否決された。Bらは,協会に入会することが
424 できないため,水質検査薬や消毒剤の入手が困難となっているほか,登録期間の満了後には,保守
425 点検業の登録の申請に必要な浄化槽清掃業者との提携を受けられなくなるため,保守点検業を継続
426 して営むことはできなくなると見込まれる。なお,Bらが,これまでに不良な保守点検を行ったと
427 してA県知事から行政指導及び行政処分を受けたことはない。
428 〔設
429
430 問〕
431
432 問題文において,独占禁止法に違反する行為は認められるか,認められるとすれば,誰のどの
433 ような行為か,適用条文も含めて検討しなさい。
434
435 - 15 -
436
437 - 16 -
438
439 論文式試験問題集[知的財産法]
440
441 - 17 -
442
443 [知的財産法]
444 〔第1問〕(配点:50)
445 医療機器メーカーX社は,カプセル内視鏡Lを開発した。カプセル内視鏡とは,小型カメラ,ラ
446 イト,モーターなどを内蔵したカプセル状の内視鏡であり,患者が飲み込むと消化器官の内部を順
447 次撮影し,画像を体外に送信した後,肛門から自然排出されるものである。光ファイバーなどで体
448 外とつながれた従来の内視鏡(いわゆる胃カメラなど)よりも患者への負担が少なく,これまで経
449 口挿入が困難であった小腸も容易に撮影できるという利点がある。
450 以上の事実関係を前提として,以下の設問1ないし3に答えなさい。なお,設問1ないし3及び
451 設問1のとはそれぞれ独立したものであり,相互に関係はないものとする。
452 〔設
453
454 問〕
455
456 1. Xは,カプセル内視鏡Lの発明について,社内の職務発明規程に基づき特許を受ける権利を
457 原始取得した上で特許出願をし,さらに査定前に同権利をY社に有償で譲渡した。Yは,特許
458 を受ける権利を譲り受けてから,補正や出願の変更をしていない。
459
460
461 Yが査定を受ける前に,XからYへの上記譲渡契約は,Yによる代金の不払により,債務
462 不履行を理由に解除された。特許庁がまだ査定をしていない段階で,Xは,どのような手段
463 でYから特許出願人としての地位を回復することができるか。
464
465
466
467 Yに対して特許権が付与された後に,Yは更にZ社に特許権を譲渡した。その後,ZがL
468 を製造販売して利益を得ていたところ,XからYへの特許を受ける権利の譲渡契約は,Yに
469 よる代金の不払により,債務不履行を理由に解除された。ここで,Zは,Yから特許権を譲
470 り受ける時点で,YのXに対する債務不履行の事実について善意であった。Xは,Zに対し
471 て,訴訟上どのような請求が可能か。異なる見解にも留意しつつ論じなさい。
472
473 2. Xは,さらに,カプセル内視鏡Lを用いて小腸の疾病αの発症の有無を診断する方法Mを開
474 発した。この診断方法Mを用いると,疾病αの発症を20%の確率で発見できるが,疾病αの
475 初期徴候は患者によって多様であるため,残る80%についてはなお発見できない。また,診
476 断方法Mを用いると,下痢などの副作用が必ず生じることも分かっている。
477 この診断方法Mは,特許法上,「発明」に当たるか。また,当該方法は,特許法上,「産業
478 上利用することができる」ものに当たるか。
479 3. Xは,カプセル内視鏡Lを製造販売しているところ,このLには,撮影した消化器官内部の
480 画像を効率よく逐次に体外へ送信する部品が内蔵されている。また,この部品には,通信機器
481 メーカーW社が特許権Pを有するデータ送信装置の発明が用いられている。
482 ここで,Lは,医療機器における通信システムQの普及を目的とした日本の民間標準化団体
483 Rが策定した通信規格Sに準拠した製品である。また,Wは,Rの会員として,Rの知的財産
484 権ポリシーに従い,Rに対して,特許権Pが通信規格Sの必須特許である旨を通知するととも
485 に,Pについて「公正,合理的,かつ非差別的な条件」(本件条件)で取消不能なライセンス
486 を誰にでも許諾する用意がある旨の宣言(本件宣言)をしていた。
487 Wは,Xに対して,特許権Pに基づき,Lの製造販売の差止めと損害賠償をそれぞれ請求す
488 ることができるか。
489
490 - 18 -
491
492 〔第2問〕(配点:50)
493 作家甲は,少年αが主人公として登場し,ボーイスカウト活動に参加しつつ青春を謳歌するとい
494 う内容の小説Pを執筆した。Pの出版後,漫画家乙は,甲の許諾を得て,Pに基づいて漫画Qを作
495 成した。Qには,αについて,その髪型や髪の色,瞳の色,顔の形,眉や目鼻立ち,ボーイスカウ
496 トの制服,体型などの特徴(以下「本件特徴」という。)が,生き生きと描かれていた。他方,P
497 には,本件特徴を含むαの絵画的側面の具体的,詳細な記載がされていなかった。
498 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,各設問はそれぞれ独立したもの
499 であり,相互に関係はないものとする。また,著作者人格権について触れる必要はない。
500 〔設
501
502 問〕
503
504 1.Qを見た画家丙は,乙の許諾を得ただけで,甲の許諾を得ずに,本件特徴をよく捉えたαの
505 肖像画R1を作成した。丙は,R1の複製物を製造して販売しようとしている。
506 甲は,丙に対して,R1の複製物の販売行為につき,著作権侵害に基づく差止めを請求する
507 ことができるか。異なる見解にも留意しつつ論じなさい。
508 2.乙は,本件特徴をよく捉えたαの肖像画R2を作成した。その後,乙はR2の原作品(縦4
509 0p×横20p)を譲渡したが,R2については贋作が出回った。そこで,R2の原作品を所
510 有するに至った美術商丁は,その真贋について,これを真作であると鑑定し,当該原作品を店
511 内で展示した上,今後当該原作品と所在を共にして流通させるべく,鑑定証書Sを1通作成し
512 た。
513 丁は,鑑定対象である絵画を特定するため,R2の原作品を20%の面積に縮小し,縦16
514 p×横10pのサイズにしたカラーコピー(以下「本件コピー」という。)を作成して,Sに
515 貼り付けた。Sの大きさは,縦20p×横10pであり,その表面には,「鑑定証書」との表
516 題の下に,「下記の本肖像画については,丁による厳正な鑑定の結果,乙が描き下ろした真作
517 であると認められることを証明する。」との記載がされ,「記」と記載されたその下部に,本
518 件コピーが大きなスペースをとって貼り付けられ,最下部に,R2の著作者が乙である旨の記
519 載がされていたが,裏面には丁の屋号や連絡先の記載がされているのみであった。また,Sは,
520 表裏一体のものとしてラミネート加工がされていたが,本件コピーの部分は取り外しができる
521 構造となっていた。さらに,鑑定証書に鑑定対象である絵画のコピーを貼り付けることは,そ
522 れまで丁の同業者の間でほとんど行われていなかった。
523 丁は,Sを,R2の原作品とともに譲渡しようとしていたため,乙は,丁に対し,Sの譲渡
524 行為につき著作権侵害に基づく差止めを請求する訴訟を提起した。これに対する丁の反論とし
525 て,どのような主張が考えられるか。その妥当性についても論じなさい。
526 3.乙は,Qが匿名の第三者により無断でインターネット上の電子掲示板に投稿されたため,当
527 該掲示板の運営者戊に対し,そのことを伝えるとともに,Qの売上げが激減し乙が経済的打撃
528 を受けており,受領後3日以内にその送信の停止を要請するとの内容証明郵便を送付した。戊
529 は,掲示板運営者として当該掲示板に掲載された投稿の最終的な送信停止の権限を有しており,
530 実際にも必要があれば直ちに送信停止を行うことができた。
531 戊の運営する当該掲示板は,プロの小説家や漫画家を志す人からの投稿を募る掲示板として
532 始まり,公的機関からも表彰されるなど,良質の掲示板であるとして雑誌等にも紹介され,戊
533 も,当該掲示板に,著作権を侵害する投稿は厳禁とする旨の注意書きを掲載し,送信停止の要
534 請があった場合にも公正な調査を心掛けてその要否を決するなど丁寧に対応していた。しかし,
535 当該掲示板の人気が高まり,大量の投稿がされるようになるにつれて,戊には,日々数百件も
536 の送信停止の要請が寄せられ,戊はその対応に追われるようになっていた。また,戊は,当該
537 掲示板について,広告収入を得ていたが,掲示板の運営費がかさみ,わずかの利益を得るにと
538 どまっていた。このような中で,乙の上記内容証明郵便が送付され,戊は,これを受領し閲読
539 - 19 -
540
541 したものの,特段の是正措置を採らずに,3週間,放置していた。
542 乙は,戊に対して,Qを送信する行為につき,著作権侵害に基づく差止めを請求することが
543 できるか。戊が運営する掲示板は,著作権を侵害しない用途に使用され得るものであることに
544 留意しつつ論じなさい。
545
546 - 20 -
547
548 論文式試験問題集[労
549
550 - 21 -
551
552 働
553
554 法]
555
556 [労
557
558 働
559
560 法]
561
562 〔第1問〕(配点:50)
563 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
564 【事
565
566 例】
567 情報技術を用いた情報処理を業とするY社は,平成29年5月1日,Xとの間で,基本給を月
568
569 額40万円とし,雇用期間を同30年10月31日までとする期間の定めのある雇用契約(以下
570 「本件雇用契約」という。)を締結した。Y社の就業規則は,労働時間を1日8時間,1週40時
571 間と,休日を土曜日・日曜日・国民の祝日などとそれぞれ定め,賃金の計算期間を毎月1日から末
572 日までとし,毎月10日に前月分の賃金を支払うことを定めていた。
573 本件雇用契約には,基本給を前記のとおりとした上で,1か月間の労働時間の合計(以下「月
574 間総労働時間」という。)が180時間を超えた場合には,その超えた時間数に対して1時間当た
575 りの一定額(2500円)を乗じて得た額の賃金を,基本給に加えて支払うこととし,月間総労働
576 時間が140時間に満たない場合には,その満たない時間数に対して一定額(2500円)を乗じ
577 て得た額を,当該月の基本給額から控除して支給する旨の約定(以下「本件約定」という。)が付
578 されていた。その趣旨は,本件約定が適用される者については,1月から12月までの月ごとの休
579 日を除く勤務すべき日数の多寡にかかわらず,標準の月間総労働時間を160時間とし,被用者の
580 月間総労働時間がこれに満たない場合であっても,140時間を下回らない限りは,基本給の額を
581 支給することとする一方で,標準の月間総労働時間を超えて勤務をしても,180時間を超えない
582 限りは,基本給に時間外勤務手当が上乗せされないというものであった。
583 Xは,本件約定の存在を認識し,その内容を理解した上で,前記の内容が明記された本件雇用
584 契約の契約書に,署名・押印をした。Xが署名・押印をしたのは,前記の基本給は比較的高額であ
585 ると評価できたこと,本件約定による労働時間制は変則的ではあるものの,160時間を標準の月
586 間総労働時間として念頭に置きつつ,自分の勤務時間を適宜調節する柔軟性があるように思われた
587 ことなどからであった。
588 Xは,平成29年5月1日から同30年10月31日までの間の各月において,いずれも1週間
589 当たり40時間を超える労働又は1日当たり8時間を超える労働を行った。同期間の各月の月間総
590 労働時間は,平成29年6月にあっては180時間を超えたが,それ以外の各月にあっては180
591 時間以内であり,140時間に満たない月はなかった。Y社は,Xに対し,平成29年6月分につ
592 いては本件約定に基づき月間総労働時間数のうち180時間を超える時間数に2500円を乗じた
593 額の時間外勤務手当を基本給に加えて支給したが,それ以外の各月については基本給の額のみを支
594 払った。Xは,平成30年10月31日にY社を退職した。Y社では,Xの在職期間中,本件約定
595 のほかに,変形労働時間制やフレックスタイム制は採用していなかった。
596 なお,Xの在職期間中の各月について1日8時間の勤務をした場合のそれぞれの月間総労働時
597 間は,当該各月において休日を除く勤務すべき日数が異なることに伴い変動するものの,おおむね
598 140時間から180時間までの間であった。また,月間総労働時間が180時間を超えた場合に
599 おいて支払われた前記の一定額は,通常の賃金の時間単価額の125%増しの額に対して,月間総
600 労働時間のうち180時間を超えた時間数を乗じた額を超える額であった。さらに,Xの時間外労
601 働時間(
602 「時間外労働」とは,法定労働時間を超える時間の労働をいう。以下同じ。)の合計が60
603 時間を超える月はなかった。
604 Xは,月間総労働時間が180時間を超えた月の労働時間のうち180時間を超えない部分にお
605 ける時間外労働及び月間総労働時間が180時間を超えなかった月の労働時間における時間外労働
606 (以下「月間180時間以内の労働時間中の時間外労働」という。)に対する割増賃金が支払われ
607 ていないとして,Y社に対して,当該割増賃金の支払いを請求した。
608 - 22 -
609
610 〔設
611
612 問〕
613
614 1.Xの主張に対して,Y社は,月間180時間以内の労働時間中の時間外労働に対する割増
615 賃金は,本件約定により,基本給に組み入れられており,未払いの割増賃金はないと反論し
616 た。このようなY社の反論を踏まえつつ,Xの請求の当否について論じなさい。
617 2.さらに,Y社は,仮に月間180時間以内の労働時間中の時間外労働に対する割増賃金の
618 請求権がXに発生し得ると考えたとしても,Xは,本件約定を含む本件雇用契約を締結した
619 ことにより,Y社に対して当該割増賃金を請求する債権を放棄したと反論した。このような
620 Y社の反論を踏まえ,Xの請求の当否について論じなさい。
621 なお,1,2を通して,割増賃金債権の消滅時効については論じなくてよい。
622
623 - 23 -
624
625 〔第2問〕(配点:50)
626 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
627 【事
628
629 例】
630 家庭用電化製品の製造・販売等を業とするA社においては,その総従業員数の85%に当たる
631
632 従業員が組合員として加入するB労働組合(以下「B組合」という。)が組織されており,A社と
633 B組合の間には,ユニオン・ショップ協定及びチェック・オフ協定を含む労働協約が締結されてい
634 た。
635 Cは,大学卒業後,A社に入社し,22年の勤務を経て営業第二課長となった。その後,Cが,
636 その部下であるDを,営業成績が一向に上がらないことについて強い口調で叱責し,これを気に病
637 んだDがA社を辞職するという事態に至った。この事態を問題視したA社は,B組合との労働協約
638 に基づいて設置され,A社の管理職員とB組合の執行役員によって構成される懲戒委員会に,この
639 件を付議した。懲戒委員会は,この件について事実調査を行い,CのDに対する叱責等の行為は減
640 給処分に相当するとの決定をした。この決定を受け,A社は,同社の就業規則の規定に基づき,C
641 を減給処分とした。
642 この処分に不満を持ったCは,入社以来加入しているB組合に相談をしたが,B組合の執行部
643 から「この処分は,当組合の執行役員も参加した懲戒委員会の調査と決定に基づくものであり,既
644 に解決済みである。」と返答され,全く取り合ってもらえなかった。
645 このようなB組合の対応に対しても不満を持ったCは,B組合を脱退せず,同組合の組合員と
646 しての地位を維持したまま,いわゆる地域合同労組であるE労働組合(以下「E組合」という。)
647 に加入した。この際,Cと同様にA社の従業員であり,かつ,B組合の組合員であって,この件に
648 ついてのA社とB組合の対応に不満を持ったF及びGの2名も,Cに共感し,Cと共にE組合に加
649 入した。
650 前記の減給処分についてCから相談を受けたE組合は,A社に対し,「当組合員Cの減給処分に
651 関する件」を交渉事項とする団体交渉申入書を送付した。この申入書には,E組合の名称,所在地
652 及び執行役員名と共に,「貴社が雇用する組合員」として,「貴社営業第二課長Cのほか貴社従業員
653 数名」との記載があった。また,同申入書には,E組合の組合規約も添付されていた。
654 これに対し,A社は,「弊社に労働組合として団体交渉を求めるのであれば,貴組合の組合員名
655 簿をご提出ください。少なくとも,貴組合の組合員のうち弊社の従業員である者の全ての氏名を明
656 らかにしていただかなければ,弊社としては,貴組合と責任を持って団体交渉を行うことができま
657 せん。また,Cは,弊社内の労働組合であるB組合にも加入しており,二重交渉となる可能性があ
658 る以上,Cに関する貴組合からの団体交渉の申入れには応じることができません。さらに,Cは,
659 弊社の管理職員(営業第二課長)であるため,貴組合は,適法な労働組合とは認められないものと
660 思料します。」との書面をE組合に送付した。
661 これを受けて,E組合は,A社に対し,「本団体交渉を行うに当たり,組合員名簿の提出は必要
662 ありません。確かにCはB組合にも加入していますが,B組合は本件について『既に解決済み』と
663 の対応を採っています。Cが貴社の営業第二課長であることも,本団体交渉を拒否する理由にはな
664 りません。」との書面を送付した。しかし,A社は,その後もE組合からの団体交渉の申入れに応
665 じていない。
666 なお,A社におけるCの営業第二課長としての勤務内容及び処遇は,@営業第二課の課員の人
667 事考課を行い,人事考課表を同社の人事課に提出する,A営業第二課の課員それぞれから,人事異
668 動についての希望を聴取し,聴取した事項を取りまとめて同社の人事課に提出する,B営業第二課
669 の営業方針と計画についての原案を作成し,営業統括部長に提出する,CA社の経営方針の決定機
670 関である経営会議と取締役会には,営業第二課に関わる案件がある場合にのみ出席し,必要な説明
671 を行うが,議事に参加する権限や議決権はない,D月額12万円の役職(課長)手当が支給される
672 - 24 -
673
674 一方,時間外・休日労働に対する割増賃金は支給されない,E課員と同様に出社時及び退社時にタ
675 イムカードの打刻をするが,出勤・退勤時間について拘束はなく,遅刻・早退に対する賃金カット
676 はないというものであった。
677 〔設 問〕
678 1.E組合は,A社を相手方として,どのような機関に,どのような法的根拠で,どのような内容
679 の救済を求めることが考えられるか。救済の内容について検討すべき法律上の論点を挙げつつ,
680 論じなさい。
681 2.1で述べた救済は,認められるか。検討すべき法律上の論点を挙げて論じなさい。
682
683 - 25 -
684
685 - 26 -
686
687 論文式試験問題集[環
688
689 - 27 -
690
691 境
692
693 法]
694
695 [環
696
697 境
698
699 法]
700
701 〔第1問〕(配点:50)
702 A社は,B県内に所有する自社の事業所の敷地に,製造プラント工場を数棟保有し稼働させて
703 いたが,このうちにはトリクロロエチレンなどの揮発性有機化合物を使用し,これらを含む排水を
704 排出する施設(水質汚濁防止法第2条第2項にいう特定施設に該当するものとする。)を伴う甲工
705 場があったところ,A社は,事業の見直しに伴って,この甲工場を廃止して解体・撤去した。しか
706 し,この際に,A社は,何らの措置を採ることなく,甲工場の跡地の区画(公道で区切られること
707 なく,かつ,事業所関係者以外の立入りはない。)をそのまま引き続き自社の将来の事業用地とし
708 て保有し続けていた。
709 A社は数年後に,この甲工場跡地に新たに乙工場を建設することを計画し,そのため甲工場跡
710 地を,約1500平方メートルにわたって深さ数メートル程度掘り下げ,ここで発生した土壌を,
711 自社の従業員に運搬させ,乙工場建設現場から離れており,事業所敷地内ではあるが敷地境界近く
712 にある自社用地で長年空き地のままに放置されていた広場に運んで積み上げ保管した。
713 ところで,この広場の敷地境界を挟んだ隣地には,C市によって児童公園が設置されており,
714 公園内の井戸の揚水機によってくみ上げた井戸水はB県の地域防災計画により災害時の用水として
715 利用されることとされていたほか,さらに,井戸水を利用した池も設置されていて,夏には近所に
716 住むDらの子を含む子どもたちがこの池で泳いだり,水遊びをしていた(なお,C市は,土壌汚染
717 対策法(以下「土対法」という。)第64条による権限の委任を受けていない。)。
718 〔設問1〕
719 土対法の下で,A社がこの甲工場を廃止し,解体・撤去をした後に,本来採るべきであっ
720 た措置は何か。また,その措置が免除されるのは,どのような場合か。数年後に,乙工場の
721 設置準備のための工事を行った際,A社が本来採るべきであった措置は何か。それぞれにつき,
722 資料も参照の上で,説明せよ。
723 〔設問2〕
724 A社が広場に積み上げて保管していた土壌に含まれていたトリクロロエチレンなどの発がん
725 性のある揮発性有機化合物が,地下に浸透して地下水を汚染し,隣接する公園内の井戸水等を
726 経由して,公園内の池の水をも汚染していることが新聞で報じられたため,Dらは不安を感じ
727 ている。この場合にDらから相談を受けたB県知事は,A社に対していかなる法的措置を採り
728 得るか,説明せよ。
729 〔設問3〕
730 Dらが,直接,A社に対して採ることが可能な法的請求があるか,論ぜよ。
731
732 - 28 -
733
734 【資
735 〇
736
737 料】
738 土壌汚染対策法施行令(平成14年11月13日政令第336号)(抜粋)
739
740 (土壌汚染状況調査の対象となる土地の基準)
741 第3条
742 一
743
744 法第5条第1項の政令で定める基準は,次の各号のいずれにも該当することとする。
745 次のいずれかに該当すること。
746
747 イ
748
749 当該土地の土壌の特定有害物質(法第2条第1項に規定する特定有害物質をいう。以下同
750 じ。)による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないことが明らかであり,当該土壌の
751 特定有害物質による汚染に起因して現に環境省令で定める限度を超える地下水の水質の汚濁
752 が生じ,又は生ずることが確実であると認められ,かつ,当該土地又はその周辺の土地にあ
753 る地下水の利用状況その他の状況が環境省令で定める要件に該当すること。
754
755 ロ
756
757 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態がイの環境省令で定める基準に適合しない
758 おそれがあり,当該土壌の特定有害物質による汚染に起因して現にイの環境省令で定める限
759 度を超える地下水の水質の汚濁が生じていると認められ,かつ,当該土地又はその周辺の土
760 地にある地下水の利用状況その他の状況がイの環境省令で定める要件に該当すること。
761
762 ハ
763 二
764
765 (略)
766 次のいずれにも該当しないこと。
767
768 イ
769
770 法第7条第4項に規定する技術的基準に適合する汚染の除去等の措置(法第6条第1項に
771 規定する汚染の除去等の措置をいう。以下同じ。)が講じられていること。
772
773 ロ
774 〇
775
776 (略)
777
778 土壌汚染対策法施行規則(平成14年12月26日環境省令第29号)(抜粋)
779
780 (使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の調査)
781 第1条
782
783 土壌汚染対策法(平成14年法律第53号。以下「法」という。)第3条第1項本文の報告
784
785 は,次の各号に掲げる場合の区分に応じ,当該各号に定める日から起算して120日以内に行わな
786 ければならない。ただし,当該期間内に当該報告を行うことができない特別の事情があると認めら
787 れるときは,都道府県知事(土壌汚染対策法施行令(平成14年政令第336号。以下「令」とい
788 う。)第10条に規定する市にあっては,市長。以下同じ。)は,当該土地の所有者等(法第3条第
789 1項本文に規定する所有者等をいう。以下同じ。)の申請により,その期限を延長することができ
790 る。
791 一
792
793 当該土地の所有者等が当該有害物質使用特定施設(法第3条第1項に規定する有害物質使用特
794 定施設をいう。以下同じ。)を設置していた者である場合(同項ただし書の確認を受けた場合を
795 除く。)
796
797 二,三
798 2,3
799
800 当該有害物質使用特定施設の使用が廃止された日
801 (略)
802
803 (略)
804
805 (人の健康に係る被害が生ずるおそれがない旨の確認)
806 第16条
807
808 法第3条第1項ただし書の確認を受けようとする土地の所有者等は,次に掲げる事項を記
809
810 載した様式第三による申請書を提出しなければならない。
811 一〜五
812
813 (略)
814
815 2
816
817 (略)
818
819 3
820
821 都道府県知事は,第1項の申請に係る同項第4号の土地の場所が次のいずれかに該当することが
822 確実であると認められる場合に限り,当該土地の場所について,法第3条第1項ただし書の確認を
823 するものとする。
824 一
825
826 工場又は事業場(当該有害物質使用特定施設を設置していたもの,当該工場又は事業場に係る
827 事業に従事する者その他の関係者以外の者が立ち入ることができないものに限る。)の敷地とし
828 て利用されること。
829 - 29 -
830
831 二
832
833 当該有害物質使用特定施設を設置していた小規模な工場又は事業場において,事業の用に供さ
834 れている建築物と当該工場又は事業場の設置者(その者が法人である場合にあっては,その代
835 表者)の居住の用に供されている建築物とが同一のものであり,又は近接して設置されており,
836 かつ,当該居住の用に供されている建築物が引き続き当該設置者の居住の用に供される場合に
837 おいて,当該居住の用に供されている建築物の敷地(これと一体として管理される土地を含む。)
838 として利用されること。
839
840 三
841
842 (略)
843
844 4,5
845
846 (略)
847
848 (法第4条第1項の土地の形質の変更の届出の対象となる土地の規模)
849 第22条
850
851 法第4条第1項の環境省令で定める規模は,3000平方メートルとする。ただし,現に
852
853 有害物質使用特定施設が設置されている工場若しくは事業場の敷地又は法第3条第1項本文に規定
854 する使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場若しくは事業場の敷地(同項本文の報告を
855 した工場若しくは事業場の敷地又は同項ただし書の確認を受けた土地を除く。)の土地の形質の変
856 更にあっては,900平方メートルとする。
857 (法第4条第1項の土地の形質の変更の届出を要しない行為)
858 第25条
859 一
860
861 法第4条第1項第2号の環境省令で定める行為は,次に掲げる行為とする。
862
863 次のいずれにも該当しない行為
864 イ
865
866 土壌を当該土地の形質の変更の対象となる土地の区域外へ搬出すること。
867
868 ロ
869
870 土壌の飛散又は流出を伴う土地の形質の変更を行うこと。
871
872 ハ
873
874 土地の形質の変更に係る部分の深さが50センチメートル以上であること。
875
876 二〜五
877
878 (略)
879
880 (土壌汚染状況調査の対象となる土地の土壌の特定有害物質による汚染状態に係る基準)
881 第28条
882 2
883
884 令第3条第1号イの環境省令で定める基準は,土壌溶出量基準とする。
885
886 令第3条第1号ハの環境省令で定める基準は,土壌含有量基準とする。
887
888 (地下水の水質の汚濁に係る限度)
889 第29条
890
891 令第3条第1号イの環境省令で定める限度は,地下水基準とする。
892
893 (地下水の利用状況等に係る要件)
894 第30条
895
896 令第3条第1号イの環境省令で定める要件は,地下水の流動の状況等からみて,地下水汚
897
898 染(地下水から検出された特定有害物質が地下水基準に適合しないものであることをいう。以下同
899 じ。)が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域に,次の各号の
900 いずれかの地点があることとする。
901 一
902
903 地下水を人の飲用に供するために用い,又は用いることが確実である井戸のストレーナー,揚
904 水機の取水口その他の地下水の取水口
905
906 二
907
908 (略)
909
910 三
911
912 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第40条第1項の都道府県地域防災計画等に基
913 づき,災害時において地下水を人の飲用に供するために用いるものとされている井戸のストレ
914 ーナー,揚水機の取水口その他の地下水の取水口
915
916 四
917 〇
918
919 (略)
920 水質汚濁防止法施行令(昭和46年6月17日政令第188号)(抜粋)
921
922 (カドミウム等の物質)
923 第2条
924
925 法第2条第2項第1号の政令で定める物質は,次に掲げる物質とする。
926
927 一〜八
928 九
929
930 (略)
931
932 トリクロロエチレン(以下,略)
933
934 - 30 -
935
936 〔第2問〕(配点:50)
937 Aは,B市郊外の道路沿いに所有する土地にホテルCを所有し,経営している。ホテルCの周
938 辺一帯には広大な原野が広がっており,近隣には道路沿いの店舗等が点在する程度である。開業当
939 時は小規模な民宿であったが,次第に原野の優れた自然の風景が注目されるようになり,内外から
940 の観光客が急増したため,Aは資金を投じて民宿を3階建(高さ13メートル)の建物に改築し,
941 観光客向けのホテルCを開業した。その後,周辺地域は国立公園の指定を受け,ホテルCの所在地
942 は第一種特別地域に含まれるに至った。ホテルCは屋根や壁面の色彩や形態が自然景観に調和して
943 いると評価され,大いに繁盛した。
944 ところが,B市周辺を震源とする大規模な地震が発生し,ホテルCにも内壁や外壁にひび割れな
945 どの被害が生じた。検査の結果,損壊は甚だしいものの,大規模な修繕をすれば元どおりの使用は
946 可能であるとされたが,Aとしては,建物の老朽化も進んでおり,建物の価値を超える修繕費用を
947 要することもあって,経営,安全の両面から,将来地域の復興が進んだ時点での営業再開を目指す
948 こととし,ホテルCを解体した。
949 それから3年を経過し,地域の復興も進んだことから,AはホテルCの元の所在地と同一の位置
950 に,従前と全く同一の高さ,面積とデザインによる建物を建築する計画を立案した。
951 〔設問1〕
952 自然公園法は,国立公園の区域の陸域内における行為につき,特別地域と普通地域を区分し
953 た上で,それぞれに応じた規制を定めている。その規制手法・内容の違い及びそのような違い
954 を設けている趣旨を説明せよ。
955 〔設問2〕
956 Aの計画に関して自然公園法上どのような問題点があるか。問題文に現れた事情の限りで,資
957 料を参照しつつ検討せよ。
958 〔設問3〕
959 Aは,仮にホテルCの建築が認められない場合にどのような救済を求め得るか,検討せよ。
960
961 - 31 -
962
963 【資
964 〇
965
966 料】
967 自然公園法施行規則(昭和32年10月11日厚生省令第41号)(抜粋)
968
969 第2章
970
971 保護及び利用
972
973 (特別地域の区分)
974 第9条の2
975
976 国立公園又は国定公園に関する公園計画のうち,保護のための規制に関する計画を定め
977
978 るに当たつては,特別地域(特別保護地区を除く。以下同じ。)を次の各号のいずれかに掲げる地
979 域に区分するものとする。
980 一
981
982 第一種特別地域(特別保護地区に準ずる景観を有し,特別地域のうちでは風致を維持する必
983
984 要性が最も高い地域であつて,現在の景観を極力保護することが必要な地域をいう。)
985 二
986
987 第二種特別地域(第一種特別地域及び第三種特別地域以外の地域であつて,特に農林漁業活
988
989 動についてはつとめて調整を図ることが必要な地域をいう。)
990 三
991
992 第三種特別地域(特別地域のうちでは風致を維持する必要性が比較的低い地域であつて,特
993
994 に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ない地域を
995 いう。)
996 (特別地域,特別保護地区及び海域公園地区内の行為の許可基準)
997 第11条
998 1〜5
999 6
1000
1001 (略)
1002
1003 法第20条第3項第1号,第21条第3項第1号及び第22条第3項第1号に掲げる行為(前各
1004 項の規定の適用を受ける建築物の新築,改築又は増築以外の建築物の新築,改築又は増築に限る。)
1005 に係る許可基準は,第1項第2号から第5号まで並びに第4項第7号及び第9号から第11号まで
1006 の規定の例によるほか,次のとおりとする。ただし,第2項ただし書に規定する行為に該当するも
1007 のについては,この限りでない。
1008 一,二
1009
1010 7〜36
1011
1012 (略)
1013 (略)
1014
1015 【注:Aの計画する建物は,上記の「前各項の規定の適用を受ける建築物」に該当しないものとする。】
1016 37
1017
1018 法第20条第3項各号,第21条第3項各号及び第22条第3項各号に掲げる行為に係る許可
1019
1020 基準は,前各項に規定する基準のほか,次のとおりとする。
1021 一
1022
1023 申請に係る地域の自然的,社会経済的条件から判断して,当該行為による風致又は景観の
1024 維持上の支障を軽減するため必要な措置が講じられていると認められるものであること。
1025
1026 二
1027
1028 申請に係る場所又はその周辺の風致又は景観の維持に著しい支障を及ぼす特別な事由があ
1029 ると認められるものでないこと。
1030
1031 三
1032 *
1033
1034 (略)
1035
1036 本条6項が引用する本条各項の規定のうち,本問で検討すべきものを以下のとおり抜粋した。省略され
1037 た条項については検討を要しない。
1038 ・
1039
1040 第1項第2号
1041 次に掲げる地域(以下「特別保護地区等」という。)内において行われるものでないこと。
1042 イ
1043
1044 特別保護地区,第一種特別地域又は海域公園地区
1045
1046 ロ
1047
1048 (略)
1049
1050 ・
1051
1052 第1項第3号及び第4号
1053
1054 ・
1055
1056 第1項第5号
1057
1058 (略)
1059
1060 当該建築物の屋根及び壁面の色彩並びに形態がその周辺の風致又は景観と著しく不調和で
1061 ないこと。
1062 ・
1063
1064 第2項ただし書
1065 ただし,既存建築物の改築等であつて,前項第5号に掲げる基準に適合するものについて
1066 は,この限りでない。
1067 - 32 -
1068
1069 【注:「既存建築物の改築等」の定義は以下のとおり。
1070 既存の建築物の改築,既存の建築物の建替え若しくは災害により滅失した建築物の復旧のための新築
1071 (申請に係る建築物の規模が既存の建築物の規模を超えないもの又は既存の建築物が有していた機能を
1072 維持するためやむを得ず必要最小限の規模の拡大を行うものに限る。)又は学術研究その他公益上必要で
1073 あり,かつ,申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められる建築物
1074 の新築,改築若しくは増築】
1075 ・
1076
1077 第4項第7号及び第9号から第11号
1078
1079 (略)
1080
1081 - 33 -
1082
1083 - 34 -
1084
1085 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1086
1087 - 35 -
1088
1089 [国際関係法(公法系)]
1090 〔第1問〕(配点:50)
1091 A国の民間企業であるXは,B国との間で,B国政府に対してコンピュータを売り渡す旨の売買
1092 契約を締結した。XとB国との間の売買契約書には,当事者間に紛争が生じた場合には,A国の法
1093 律に基づき,A国の国内裁判所で裁判手続を行う旨の条項が挿入されていた。Xは,契約どおりに
1094 コンピュータを引き渡し,売主としての履行を完了した。ところが,Xが支払期日に支払を求めた
1095 ところ,B国は期日を過ぎてもXに対して売買代金を支払わなかったため,Xは,B国による売買
1096 代金の支払を求めて,A国の国内裁判所に訴えを提起した。これに対してB国は,応訴の意思を示
1097 さず,国家の裁判権免除を主張して訴えの却下を求めた。
1098 A国とB国との間には,特定の事項又は特定の事件に関して相手国の裁判所による裁判権の行使
1099 について同意する旨の国際的合意は存在しない。また,B国が,本件裁判手続における宣言や書面
1100 による通知によって,A国の裁判所による裁判権の行使に同意した事実も存在しない。
1101 原審は,絶対免除主義を適用して,B国に対して,A国の民事裁判権からの免除を認めた。この
1102 判決を不服としたXは,本件に相対(制限)免除主義の適用を求めて控訴した。これに対して控訴
1103 審は,Xの主張を認め,B国に対してA国の裁判権を行使できると判断し,B国に対してXに対す
1104 る売買代金の支払を命じた。
1105 しかし,この控訴審判決にもかかわらず,B国が当該判決の履行を拒否したため,Xは裁判所に
1106 対して判決の強制執行を求めた。なお,B国がA国内に保有する財産としては,B国の外交使節団
1107 の名義で開設されている口座の銀行預金があるのみである。
1108 ちなみに,A国とB国は,2004年に採択された「国及びその財産の裁判権からの免除に関す
1109 る国際連合条約」の締約国であるが,同条約は未発効である。
1110 以上の事実を基に,以下の設問に答えなさい。
1111 〔設
1112
1113 問〕
1114
1115 1.B国が主張した国家の裁判権免除について説明するとともに,絶対免除主義とはどのような
1116 考え方であるかを説明しなさい。裁判権免除を認めるべきであるとの立場から,B国はどのよ
1117 うな主張が可能かを論じなさい。
1118 2.相対(制限)免除主義とはどのような考え方であるかを説明しなさい。B国に対して裁判権
1119 免除を認めるべきでないとの立場から,Xはどのような主張が可能かを論じなさい。また,本
1120 件売買契約におけるA国の国内裁判所で裁判手続を行う旨の条項は,B国による国家の裁判権
1121 免除の放棄と考えられるかについて論じなさい。
1122 3.B国が履行を拒否している控訴審判決を強制執行するために,A国内にあるB国の外交使節
1123 団名義で開設されている口座の銀行預金が差押えの対象となるかについて論じなさい。
1124
1125 - 36 -
1126
1127 〔第2問〕(配点:50)
1128 A国とB国は,隣接する国家である。地理的に,A国はB国の北に位置している。A国の領域内
1129 のナーガ山脈を水源とするギリ川等のいくつかの川は,A国領域内のある地点で一つの川に合流す
1130 る。この合流点から下流の川がナーガ川であり,ギリ川は,ナーガ川となるいくつかの川の中で最
1131 も主要な川である。ナーガ川は,上流国A国から下流国B国を貫流する国際河川である。
1132 1975年,A国とB国は,「ナーガ川の利用と流域の環境の保護及び保全のための協力に関す
1133 る条約」(以下「1975年条約」という。)を締結した。1975年条約の主要な規定は,以下
1134 のとおりである。第4条は,両当事国にナーガ川流域の環境の保護及び保全の義務を課している。
1135 第5条は,両当事国にナーガ川の利用状況,水量及び水質等についての年次報告書を提出する義務
1136 を課している。第10条は,両国の政府代表と専門家が委員となる「ナーガ川の利用と流域の環境
1137 の保護及び保全のための委員会」(以下「ナーガ川委員会」という。)を設立する旨規定している。
1138 第11条は,ナーガ川委員会の任務の一つとして,両当事国が提出する年次報告書の受理及び審査
1139 を挙げている。また,第12条は,ナーガ川の利用に関する新たな計画の実施には,ナーガ川委員
1140 会に特別報告書を提出し,同委員会の許可を得ることが必要であると規定している。なお,第13
1141 条は,ナーガ川委員会の意思決定は全会一致によると定めている。さらに,第19条は,この条約
1142 の解釈又は適用に関する紛争で両当事国間の交渉によって解決できないものは,いずれかの当事国
1143 により国際司法裁判所に付託できると規定している。
1144 A国には十分な発電施設がなく,自国の火力発電所は必要な電力の10%しか供給できない状態
1145 であった。A国は,1980年にB国と「電力の安定供給に関する条約」を締結したほか,198
1146 2年には,A国の東側に位置し,B国と国境を接していないC国とも同じ内容の条約を締結した。
1147 これらの条約は,B国及びC国それぞれによる安定的な電力供給とA国による対価の支払の義務を
1148 規定している。また,それぞれの条約には条約と一体となる附属書が付され,毎年9月の当事国間
1149 の協議により,翌年の電力供給量を決定すると規定されている。この附属書により,例年A国は必
1150 要な電力量の約50%をB国から,約40%をC国から輸入していた。
1151 2012年9月,A国法人たる甲社が,ギリ川にダム及び水力発電所を建設し,発電事業を行う
1152 計画についての認可をA国に申請した。甲社は,この事業によりA国に必要な電力量の20%を供
1153 給できるとし,A国のエネルギー安全保障の観点からの重要性を強調した。2013年4月にこの
1154 計画は認可され,2018年10月に発電所が稼働を開始した。
1155 A国は,2013年1月にナーガ川委員会に提出した年次報告書で,ギリ川における甲社の計画
1156 について簡潔に言及したものの,ナーガ川の利用に関する新たな計画に当たらないので,第12条
1157 に基づく特別報告書を提出して,同委員会の許可を得る必要はないとの見解を示した。これに対し,
1158 B国は,この計画は下流のナーガ川に大きな影響をもたらす可能性があるため,ナーガ川委員会に
1159 計画の詳細と環境影響評価の結果に関する特別報告書を提出して,同委員会の許可を得るべきであ
1160 ると主張した。この計画をめぐるA国とB国の意見の対立が原因となって,ナーガ川委員会は20
1161 13年8月以降,実質的な活動ができなくなっている。なお,甲社がA国にこの計画の認可を申請
1162 した時から,国際的に定評のある環境団体が,甲社は必要な環境影響評価を実施していないと批判
1163 し,計画への反対運動を行ってきた。
1164 2018年10月に甲社の発電所が稼働した後,ナーガ川の水量が40%減少した。またB国の
1165 調査によれば,水質も著しく悪化し,ナーガ川の水を水道水として利用してきたB国は,ダムの稼
1166 働後,新たな浄水施設を建設しなければならなくなった。このような状況を受けて,2019年3
1167 月,B国は,A国との「電力の安定供給に関する条約」を一方的に廃棄し,A国に対する電力供給
1168 を完全に停止した。
1169 A国とB国は,国連加盟国であり,条約法に関するウィーン条約の当事国である。なお,両国は,
1170 国際司法裁判所規程第36条第2項に基づく選択条項受諾宣言を行っていない。
1171 以上の事実を基に,以下の設問に答えなさい。
1172
1173 - 37 -
1174
1175 〔設
1176
1177 問〕
1178
1179 1.甲社の計画にA国が認可を与えたことが国際法に違反するとの立場から,B国は慣習国際法
1180 又は条約に基づきどのような主張をすることが可能かを論じなさい。
1181 2.B国による「電力の安定供給に関する条約」の一方的廃棄と電力供給の完全な停止が国際法
1182 に違反するとの立場から,A国はどのような主張をすることが可能かを論じなさい。
1183 3.B国が,A国との紛争を国際司法裁判所に付託する場合,どのような管轄権の根拠で,いか
1184 なる申立てが可能かを論じなさい。また,それに対して,A国はどのような管轄権に関する抗
1185 弁を主張できるかを論じなさい。
1186
1187 - 38 -
1188
1189 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1190
1191 - 39 -
1192
1193 [国際関係法(私法系)]
1194 〔第1問〕(配点:50)
1195 X女とY男の夫婦は日本に居住していた。ところが,その後その離婚が問題となった。以上の事実を
1196 基に,以下の設問に答えなさい。
1197
1198 〔設問1〕
1199 XとYは共に甲国人であり,現在もなお,共に日本に常居所を有している。XとYは離婚すること
1200 に合意した。財産分与についても合意が成立している。甲国には協議離婚制度はなく,裁判離婚主義
1201 が採られているので,XとYは,裁判所での手続によらなければならないと考え,また日本で生活し
1202 ているので日本の裁判所での手続により,その手続の中でも離婚訴訟ではなく調停手続により離婚を
1203 成立させることを希望して調停を申し立てた。XとYについて調停離婚を認めることができるかどう
1204 か,調停離婚が認められないとした場合には,日本の裁判所においていかなる手続によることができ
1205 るかについて論じなさい。
1206 なお,甲国民法には,下記のように,当事者間に離婚とその諸効果について合意が成立している場
1207 合に,原則的に当事者の合意を尊重する裁判手続がある。
1208 【甲国民法】
1209 @ 夫婦は,離婚及びその諸効果について合意した場合には,離婚の諸効果を定める合意書について
1210 裁判官の承認を得るべく,共同で離婚を請求することができる。
1211 A 裁判官は,夫婦の合意が真意に基づくものであり,自由になされ,かつ思慮あるものであるとの
1212 心証を得た場合には,その合意書を認可し,離婚を言い渡す。
1213 B 裁判官は,その合意書が子又は夫婦の一方の利益を保持するには不十分であると認定する場合に
1214 は,認可を拒否し,離婚を言い渡さないことができる。
1215 〔設問2〕
1216 XとYは共に乙国人であり,共に日本に常居所・住所を有していたが,Yは日本で出会った乙国人
1217 A女と不貞行為に及び,それがXに知られて,婚姻関係が破綻し,XとYは事実上別居し,YはAと
1218 同居するに至った。YとAはその後,共に乙国に帰国してしまい,現在は乙国に住所を有している(X
1219 は乙国内でのYの住所を知っている。
1220 )
1221 。他方,Xは現在も日本に住所を有している。
1222 Xは,もはやYと離婚するほかないと考え,日本の裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てた
1223 が,Yはこれに応じなかった。そこで,Xは日本の裁判所にYを被告として,離婚,財産分与,
1224 慰謝料を求めて訴訟を提起した。このうち,財産分与については,夫婦の財産の分配と清算につ
1225 いてのみ請求されている。また,慰謝料については,離婚せざるを得なくなったことについての
1226 精神的苦痛とYの不貞行為についての精神的苦痛への賠償の両方を含むものとして請求されてい
1227 る。
1228 〔小問1〕
1229 本件訴訟における上記各請求について,日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどう
1230 かについて論じなさい(調停事件の国際裁判管轄権について論じる必要はない。)。
1231 〔小問2〕
1232 仮に上記各請求について日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるものとした場合,上記
1233 各請求について判断するに当たり適用すべき準拠法の決定について論じなさい。
1234
1235 - 40 -
1236
1237 〔第2問〕(配点:50)
1238 Xは,建設資材の原材料などを販売する日本の株式会社であり,日本以外に営業所を有していな
1239 い。Yは,建設資材Mの製造・販売を目的とする甲国法人の会社であり,甲国以外に営業所を有し
1240 ていない。
1241 商品Gは,通常,建設資材Mを製造するための原材料として使用されるものであり,多数の企業
1242 が商品Gを販売している。各企業が販売している商品Gの強度には若干の相違があるが,いずれの
1243 商品Gであっても,建設資材Mの製造を行うことができる。ただし,ごく一部の先端的な設備を有
1244 する工場(Yの工場を含む。)では,品質の高い建設資材Mを製造しているため,一定以上の強度を
1245 有する商品Gを使用しなければ建設資材Mの製造を行うことができない。
1246 Yは,Xが販売する商品Gの価格が比較的低額であったことから,Xに対して商品Gのサンプル
1247 (=見本)を送付するよう求めた。Yの求めに応じて,Xは,Yに対して,商品Gのサンプルを送
1248 付した。Yがサンプルを使用してYの工場で建設資材Mの試験製造を行ったところ,建設資材Mの
1249 製造を行うことができた。そこで,Yは,Xとの間で,次のような内容の売買契約(以下「本件契
1250 約」という。)を締結した。
1251
1252
1253 Xは,Yに対して,200トンの商品Gを引き渡すものとする。
1254
1255
1256
1257 商品Gの引渡地は,甲国のK港とする。
1258
1259
1260
1261 Yは,Yが商品Gを甲国のK港で受領した日から7営業日以内に,Xが甲国に開設したX名
1262 義の銀行口座に振り込む方法で,代金を支払う。
1263
1264
1265
1266 代金は,1億円(1トン当たり50万円)とする。
1267
1268 本件契約には国際裁判管轄権に関する条項や仲裁条項はなかった。
1269 その後,Yは,甲国のK港で商品Gを受領した。Yが直ちに商品Gを検査したところ,その商品
1270 Gは,サンプルと比べて強度が不足しており,Yの工場では建設資材Mの製造のための原材料とし
1271 て使用できないことが判明した。そこで,Yは,Xに対して,検査結果を示すとともに受領した商
1272 品Gがサンプルと同等品質のものではなかった旨を通知し,他社から,サンプルと同じ強度の商品
1273 Gを200トン,代金1億6000万円で購入した。Yは,この購入代金と本件契約代金との差額
1274 である6000万円の損害を被ったとして,Xがその損害の賠償を行うべきであると主張し,本件
1275 契約代金全額の支払を拒んでいる。
1276 なお,甲国は,
1277 「国際物品売買契約に関する国際連合条約」
1278 (以下「ウィーン売買条約」という。)
1279 の締約国ではない。
1280 以上の事実を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,各問は独立した問いである。
1281 〔設問1〕
1282 Xは,Yを被告として,未払代金1億円の支払を求める訴えを日本の裁判所に提起した。この
1283 訴えについて,日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさい。
1284 なお,Yは,建設資材Mの製造方法に関連した発明について,甲国のほか日本でも特許権を有
1285 している(そのうち日本で登録されたYの特許権の評価額は,5000万円である。)。
1286 〔設問2〕
1287 Yは,Xを被告として,Xの契約違反によって被った損害の賠償を求める訴えを日本の裁判所
1288 に提起した。本件契約には,「
1289
1290 甲国法を準拠法とする。」との条項があったとする。
1291
1292 この訴訟において,X及びYのいずれも,Yによる損害賠償請求について,日本の民法の適用
1293 があることを前提にそれぞれの主張を行った。裁判所は,この請求について,日本の民法を適用
1294 して判断することができるかについて論じなさい(ウィーン売買条約の適用について論じる必要
1295 はない。)。
1296
1297 - 41 -
1298
1299 〔設問3〕
1300 Yは,Xを被告として,Xの契約違反によって被った損害の賠償を求める訴えを日本の裁判所
1301 に提起した。本件契約には,準拠法が明示的にも黙示的にも定められていなかったとする。
1302 〔小問1〕
1303 この訴訟において,裁判所は,Yによる損害賠償請求について,ウィーン売買条約第1条の
1304 規定に基づき,ウィーン売買条約を適用することとした。裁判所の判断の過程を説明しなさい
1305 (ウィーン売買条約第2条から第6条までの規定について論じる必要はない。)。
1306 〔小問2〕
1307 この訴訟において,裁判所は,Yによる損害賠償請求について,ウィーン売買条約を適用し
1308 た上で,Xが引き渡した商品Gが契約に適合しておらず,Xに契約上の義務の不履行があった
1309 ことを理由として,Yの上記請求を認めた。裁判所の判断の過程を説明しなさい(ウィーン売
1310 買条約第38条から第40条までの規定及び第74条から第77条までの規定について論じる
1311 必要はない。)。
1312 なお,Yは,Xに対して,商品Gを先端的な設備を有するYの工場で使用することなどの特
1313 定の目的を一切伝えていなかった。
1314
1315 - 42 -
1316
1317