1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の【事例】について,
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 なお,
21 解答に当たっては,
22 文中において特定されている日時にかかわらず,
23 試験時に施行されて
24 いる法令に基づいて答えなさい。
25
26
27 【事
28
29 例】
30 A株式会社(以下「A社」という。
31
32 )は,
33 工作機械の部品の製造を業とする株式会社であり,
34
35
36 B株式会社(以下「B社」という。
37
38 )の完全子会社であって,
39 α地方をその営業地域としてい
40 た。
41
42
43 A社は,
44 令和2年6月頃,
45 α地方の製造業の業績悪化のあおりを受け,
46 急激に財務状況が悪
47 化していた。
48
49
50 しかし,
51 A社は,
52 C銀行から,
53 令和2年7月1日,
54 6000万円の運転資金を借り受け,
55 そ
56 の営業を継続した。
57
58 また,
59 A社は,
60 同月10日,
61 自動車販売会社であるD株式会社(以下「D
62 社」という。
63
64 )から,
65 事業用車両1台(以下「本件事業用車両」という。
66
67 )を代金1000万
68 円で月々50万円を各月15日に支払う旨の割賦払いの約定で所有権留保特約の下,
69 購入した。
70
71
72 なお,
73 本件事業用車両は,
74 D社名義で登録されている。
75
76
77 一方,
78 B社も業績が悪化し,
79 運転資金が欠乏するに至り,
80 B社は,
81 E銀行から,
82 令和2年7
83 月16日,
84 5000万円の運転資金を借り受けた。
85
86
87 ところが,
88 A社が部品を卸していた主たる取引先が令和2年8月14日,
89 破産手続開始の決
90 定を受けた。
91
92 この事態に至り,
93 A社の代表取締役であるXは,
94 同年9月1日,
95 C銀行に対し,
96
97 運転資金の追加融資を依頼したが断られた。
98
99 そのため,
100 A社は,
101 同月4日,
102 全ての債権者に対
103 し,
104 「当社は,
105 資金繰りに行き詰まり,
106 本日までにお支払いをすべき債務の支払ができなくな
107 り,
108 今後,
109 支払ができる見込みもありません。
110
111 そのため,
112 関係各位には,
113 ご迷惑をお掛けいた
114 しますが,
115 近々破産の申立てをする予定です。
116
117 」と記載された通知書(以下「本件通知書」と
118 いう。
119
120 )を郵送した。
121
122
123 A社が本件通知書を発したことを知ったE銀行は,
124 親会社であるB社の資金繰りにも不安を
125 抱き,
126 B社に対し,
127 E銀行に対する債務5000万円について担保の提供を求めた。
128
129 そこで,
130
131 B社の依頼を受けたA社は,
132 令和2年9月10日,
133 B社のE銀行に対する債務5000万円を
134 担保するため,
135 A社の所有する甲土地に抵当権を設定し(以下「本件担保提供」という。
136
137 ),
138
139 同月14日,
140 当該抵当権設定登記(以下「本件抵当権設定登記」という。
141
142 )が経由された。
143
144 な
145 お,
146 A社は,
147 甲土地以外の不動産を所有しておらず,
148 他にみるべき財産を有していない。
149
150
151 また,
152 A社は,
153 本件事業用車両の代金につき9月分以降の分割代金を支払うことができなか
154 ったため,
155 令和2年9月23日,
156 本件事業用車両の残代金900万円の支払に代えて,
157 D社に
158 対し,
159 本件事業用車両を代物弁済に供した。
160
161 その当時の本件事業用車両の評価額は,
162 750万
163 円であった。
164
165
166 A社は,
167 令和2年12月1日,
168 α地方裁判所に破産手続開始の申立てを行い,
169 同月2日午後
170 5時,
171 破産手続開始の決定がされ,
172 破産管財人Yが選任された。
173
174
175 〔設
176
177 問〕
178
179 以下の1から3については,
180 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
181
182
183
184 1.【事例】において,
185 仮に,
186 C銀行が令和2年11月2日,
187 本件担保提供について,
188 詐害行
189 為取消権に基づき,
190 E銀行に対し,
191 α地方裁判所に本件抵当権設定登記の抹消登記手続請求
192 訴訟(以下「本件訴訟1」という。
193
194 )を提起し,
195 同年12月2日現在,
196 同裁判所に係属中で
197 あったとする。
198
199 本件訴訟1は,
200 A社に対する破産手続開始の決定により,
201 どのような取扱い
202 を受けるか,
203 論じなさい。
204
205
206 - 2 -
207
208 2.【事例】において,
209 仮に,
210 破産管財人Yが本件担保提供について,
211 破産法第160条第1項
212 又は第162条第1項に基づき否認するとして,
213 E銀行に対し,
214 α地方裁判所に本件抵当権設
215 定登記の抹消登記手続請求訴訟(以下「本件訴訟2」という。
216
217 )を提起したとする。
218
219 本件訴訟
220 2における破産管財人Yの上記主張の当否について,
221 本件担保提供がA社の債務を担保するた
222 めではなく,
223 A社の親会社であるB社の債務を担保するためのものであることに留意して論じ
224 なさい。
225
226
227 3.【事例】において,
228 仮に,
229 破産管財人Yが令和2年9月23日にD社に対してされた本件
230 事業用車両による代物弁済について,
231 破産法第162条第1項に基づき否認するとして,
232 D
233 社に対し,
234 α地方裁判所に本件事業用車両の引渡請求訴訟(以下「本件訴訟3」という。
235
236 )
237 を提起したとする。
238
239 本件訴訟3における破産管財人Yの上記主張の当否について,
240 論じなさ
241 い。
242
243
244
245 - 3 -
246
247 〔第2問〕(配点:50)
248 次の【事例】について,
249 以下の設問に答えなさい。
250
251
252 なお,
253 解答に当たっては,
254 文中において特定されている日時にかかわらず,
255 試験時に施行されて
256 いる法令に基づいて答えなさい。
257
258
259 【事
260
261 例】
262 A株式会社(以下「A社」という。
263
264 )は,
265 精密機械の製造を業とする会社であり,
266 その所有
267
268 する土地上に精密機械を製造する工場(以下「本件工場」という。
269
270 )を建築し所有している。
271
272
273 A社は,
274 令和2年4月頃,
275 それまでの過剰な設備投資に起因する借入金の増加が原因となって
276 苦境に陥っていた。
277
278 A社の令和2年4月30日時点での資産の総額は10億円,
279 債務の総額は
280 13億円である。
281
282
283 A社の代表取締役であるBは,
284 自社の資金繰りが悪化し,
285 新規の借入れも困難になったこと
286 から,
287 自力での再建を断念し,
288 法的倒産手続により精密機械の製造に係る事業(以下「本件事
289 業」という。
290
291 )を譲渡するための方法について相談するため,
292 令和2年5月1日,
293 C弁護士を
294 訪ねた。
295
296 A社と親密な関係にあり,
297 財務状態が良好な同業のD株式会社(以下「D社」とい
298 う。
299
300 )は,
301 A社が法的倒産手続に入った場合には,
302 本件事業を譲り受ける意向を表明しており,
303
304 債権者(後述のE銀行を除く。
305
306 )は,
307 D社がA社から本件事業を譲り受けることにつき,
308 その
309 譲渡代金額を含め賛成している。
310
311
312 〔設
313
314 問〕
315 【事例】に加え,
316 下記〔A社に関する事情〕が令和2年4月30日時点で存するとき,
317 A社
318
319 の相談を受けたC弁護士は,
320 本件事業を維持継続した上で社に譲渡するためには,
321 破産手続
322 開始又は再生手続開始のいずれを申し立てるのが相当であるとBに助言すべきか。
323
324
325 解答に当たっては,
326 @法的倒産手続の申立て後手続開始前に資金援助をするD社に対して優
327 先的に弁済をするための方策,
328 A本件工場及び敷地に設定されたE銀行の抵当権について,
329 そ
330 の実行を阻止し又はこれを消滅させるための方策,
331 BF社との取引関係を維持するための方策
332 について,
333 【事例】及び〔A社に関する事情〕を踏まえ,
334 破産手続による場合と再生手続によ
335 る場合とを比較して論じなさい。
336
337
338 〔A社に関する事情〕
339 A社は,
340 資金繰りが悪化し,
341 本件事業を維持継続することが困難になっている。
342
343 そこで,
344 D
345 社は,
346 A社が法的倒産手続の申立てをすれば,
347 A社の資金繰りを支えるため,
348 法的倒産手続の
349 開始前に最大で3000万円の資金援助を直ちに行う旨の意向を有しているが,
350 そのような資
351 金援助を行った場合に優先的に弁済を受けることができるのか心配している。
352
353
354 A社は,
355 E銀行から本件工場の建築資金3億円を借り入れる(以下「本件借入れ」という。
356
357 )
358 際,
359 本件借入れに係る債務を被担保債務として本件工場及び敷地に抵当権を設定していた。
360
361 本
362 件借入れの残高は,
363 令和2年4月30日時点で2億円であったところ,
364 同時点での本件工場及
365 び敷地の価額については,
366 A社が1億円であると主張する一方で,
367 E銀行は,
368 1億8000万
369 円であると主張し,
370 早期の債権回収を図るため担保権実行の方針を明らかにしている。
371
372
373 A社は,
374 本件事業に欠かせない部品の調達先であるF株式会社(以下「F社」という。
375
376 )か
377 ら,
378 代金につき毎月末日締め翌月15日払いとの約定で部品を仕入れており,
379 F社以外に当該
380 部品の調達先を確保するのが極めて困難な状況にある。
381
382 F社は,
383 A社に対し,
384 その代金が期限
385 までに支払われなければ直ちにA社との取引を打ち切る旨を明らかにしている。
386
387 A社は,
388 F社
389 に対し,
390 部品の代金としておおむね500万円前後を毎月支払っており,
391 令和2年5月15日
392 支払予定の代金額は480万円である。
393
394
395
396 - 4 -
397
398 論文式試験問題集[租
399
400 - 5 -
401
402 税
403
404 法]
405
406 [租
407
408 税
409
410 法]
411
412 〔第1問〕(配点:50)
413 競馬好きの個人Aは,
414 不動産賃貸業を営む傍ら,
415 インターネットを介して馬券を購入できるサ
416 ービスを利用して馬券を購入している。
417
418 Aの馬券購入方法は,
419 競走馬や騎手等の情報を収集・分
420 析した上で,
421 着順予想の確度と配当率の大小を組み合わせた購入パターンに従い,
422 年間を通じて
423 の収支(当たり馬券の払戻金の合計額と外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金との差額)で利益
424 が得られるように工夫しながら,
425 偶然性の影響を減殺するために年間を通じてほぼ全てのレース
426 で馬券を購入するというものである。
427
428 そして,
429 平成21年から平成25年までの5年間に,
430 年間
431 約3000レースのうちのほぼ全てのレースを対象として,
432 1年当たり5000万円程度の馬券
433 を購入し,
434 収支の上で毎年利益を得ていた。
435
436 利益の額は,
437 年によって大きく変動したものの,
438 平
439 均すると1年当たり200万円程度であった。
440
441
442 Aは,
443 自己のノウハウを基に競馬予想ソフトウェア(以下「ソフト」という。
444
445 )を開発し,
446 これ
447 にユーザーが独自の条件設定を行うことができる機能を付けて売り出せばより多くの利益を得ら
448 れるのではないかと考え,
449 平成26年から,
450 このソフトの小売販売事業を始めた。
451
452 もっとも,
453 こ
454 れと並行して上記の方法による馬券の購入も継続し,
455 従前と同程度の利益を上げながら,
456 そこで
457 得られる新たな競馬予想ノウハウをソフトのバージョンアップに取り入れていた。
458
459 平成28年に
460 は,
461 株式会社B(以下「B社」という。
462
463 )を設立して同社の代表取締役に就任し,
464 同社において,
465
466 株式会社C(以下「C社」という。
467
468 )その他の小売業者にソフトの卸売を行うこととした。
469
470
471 Aは,
472 個人で営む不動産賃貸業でも安定した収入を得ており,
473 所有する建物の一つを,
474 毎月の
475 賃料を当月末日に支払う約定でDに賃貸していた。
476
477 平成28年10月1日に借地借家法第32条
478 に基づく賃料増額請求権を行使してDに対し賃料を月額20万円から25万円に増額するよう求
479 めたところ,
480 Dがこれに応じず,
481 民事調停も整わなかったため,
482 AはE地方裁判所(以下「E地
483 裁」という。
484
485 )に賃料増額請求の訴訟を提起した。
486
487 その結果,
488 E地裁は,
489 Aの請求を一部認容して
490 賃料を月額23万円とする判決を言い渡し,
491 この判決は平成29年12月28日に確定した。
492
493 そ
494 のため,
495 Dは,
496 平成30年1月4日にAに対し,
497 月額23万円で計算した平成28年10月1日
498 以降の増額分の未払賃料及び遅延損害金(以下,
499 両者を併せて「本件未払賃料等」という。
500
501 )を全
502 額支払った。
503
504
505 他方で,
506 B社の経営も順調であったが,
507 ソフトの卸売先であるC社の資金繰りが悪化し,
508 同社
509 から,
510 同社の所有する甲土地をB社に売却するので,
511 その売買代金を未払のソフト仕入代金と同
512 額にして相殺処理してほしいとの申出を受けた。
513
514 B社は,
515 C社への資金援助になると考えてこれ
516 を承諾し,
517 平成30年8月1日にC社との間で,
518 時価3000万円相当の甲土地を代金4000
519 万円で買い受ける旨の売買契約を締結し,
520 その売買代金債務とC社のB社に対する未払のソフト
521 仕入代金債務4000万円とを相殺して,
522 同日にC社の費用負担で甲土地の所有権移転登記を受
523 けた。
524
525
526 Aは,
527 令和2年5月1日にB社から甲土地を時価と同額の代金3300万円で買い取り,
528 これ
529 を不動産賃貸業の用に供した。
530
531
532 なお,
533 B社もC社も,
534 毎年1月1日から12月31日までの期間を事業年度としている。
535
536
537 以上の事案について,
538 以下の設問に答えなさい。
539
540
541 〔設
542
543 問〕
544
545 1
546
547 Aが平成25年に得た当たり馬券の払戻金に係る所得は,
548 Aの同年分の所得税の計算上ど
549 の所得に分類されるか,
550 説明しなさい。
551
552
553
554
555
556 Aが平成26年に得た当たり馬券の払戻金に係る所得は,
557 Aの同年分の所得税の計算上ど
558 の所得に分類されるか,
559 説明しなさい。
560
561
562 - 6 -
563
564 2
565
566 AがDから得た本件未払賃料等に係る収入は,
567 Aの所得税の計算上いつの年分の不動産所得
568 に係る総収入金額に算入されるか,
569 説明しなさい。
570
571
572
573 3
574
575 B社によるC社からの平成30年8月1日の甲土地の買受けに関して,
576 B社の同日を含む
577 事業年度の法人税の計算上,
578 損金の額への計上はどのようにすべきか,
579 説明しなさい。
580
581
582
583
584
585 B社によるAへの令和2年5月1日の甲土地の売却に関して,
586 B社の同日を含む事業年度
587 の法人税の計算上,
588 益金の額及び損金の額への計上はどのようにすべきか,
589 説明しなさい。
590
591
592
593 - 7 -
594
595 〔第2問〕(配点:50)
596 個人Aは,
597 食品卸売業を目的とする株式会社B(以下「B社」という。
598
599 )の創業者であるCの子
600 で,
601 同社の使用人であった。
602
603 平成23年にCが死亡し,
604 遺産分割協議の結果,
605 Aの姉のDがB社株
606 式の大半を相続して経営を引き継ぎ,
607 Aは少数の同社株式を相続した上で,
608 同社の取締役に就任し,
609
610 事業年度ごとに決められる毎月一定額の役員給与(以下「本件役員給与」という。
611
612 )の支給を受け
613 ることとされた。
614
615 しかし,
616 Dが経営を独占したため,
617 毎月開催される取締役会に形式的に出席する
618 ほかは,
619 B社にはAの行うべき業務はなかった。
620
621 そこでAは,
622 B社勤務中の経験をいかし,
623 B社の
624 取締役に就任したまま,
625 平成24年中に,
626 冷凍食品の小売販売店を個人で開業することとした。
627
628
629 この開業以来Aの店で働いていたEは,
630 Eにとって唯一の親族である高齢の父親F(妻(Eの母
631 親)とは死別)と同居してその介護をしていたところ,
632 平成26年中にFの症状が進んでEの手に
633 負えなくなったことから,
634 Fを介護付有料老人ホームに入所させたいと考えるようになったが,
635 E
636 が適切と考える施設の入居一時金を支払うにはFの全財産である貯金を使っても300万円不足す
637 るため,
638 特に貯金のないEは同年半ばに,
639 Aに300万円の借金を申し込んだ。
640
641 この申込みを受け
642 たAは,
643 これまでのEの誠実な働きぶりを高く評価していたため,
644 「Eさんの働きぶりにはいつも
645 感心しています。
646
647 これからも長くこの店で働いてくださいね。
648
649 」と言って,
650 低利・無担保でこの借
651 金の申入れに応じて貸し付けることとした(以下,
652 この貸付金を「本件貸付金」という。
653
654 )。
655
656 Eは平
657 成26年及び平成27年にはAに対して約定の元利支払を行ったが,
658 平成27年末にFが亡くなっ
659 た際の心労などから病気になり,
660 平成28年中に病死した。
661
662 Aに対するEの債務は元本が200万
663 円残っており,
664 また,
665 Eが病死するまでの期間に相当する平成28年分の利息1万円が未払のまま
666 であったが,
667 Fの介護にお金をつぎ込んでいたEには貯金はなく,
668 自動車などのめぼしい財産もな
669 かった。
670
671
672 Aは,
673 開業以来事業の用に供していた冷凍庫付軽自動車甲を平成28年末に同業のGに譲渡して,
674
675 その譲渡による利益を,
676 平成29年3月14日に提出した平成28年分の所得税の確定申告書にお
677 いて,
678 所得に含めて申告した。
679
680 平成29年3月中にGから,
681 甲が契約した性能を満たしていないか
682 ら契約を解除するとの連絡があったが,
683 Aがこの主張を認めなかったため,
684 AとGの間で民事訴訟
685 (以下「本件訴訟」という。
686
687 )となり,
688 平成30年6月15日にA敗訴の判決が確定した。
689
690 同日,
691
692 Aは代金等をGに払い戻し,
693 甲の引渡しを受けた。
694
695
696 本件訴訟係属中の平成29年8月には,
697 開業以来のAの所得についての税務調査が行われ,
698 その
699 結果に基づいて平成25年分から平成28年分のAの事業所得につき,
700 収入の計上漏れなどを理由
701 とする増額更正処分が,
702 平成29年12月に行われた。
703
704 Aはこの処分について不服申立てを行って
705 いない。
706
707
708 以上の事案について,
709 以下の設問に答えなさい。
710
711
712 〔設
713
714 問〕
715
716 1
717
718 本件役員給与の課税関係について,
719 以下の問いに答えなさい。
720
721
722
723
724 B社が本件役員給与を損金に算入し得る場合の根拠規定とその趣旨及び適用関係を,
725 簡潔
726 に説明しなさい。
727
728
729
730
731
732 本件役員給与に不相当に高額な部分がある場合,
733 B社の所轄税務署長Hが,
734 法人税法第3
735 4条第2項(以下「本件規定」という。
736
737 )に基づいて本件役員給与の一部の損金算入を否認す
738 る処分を行うことは適法か。
739
740 本件規定の括弧書に「前項……の適用があるものを除く。
741
742 」と規
743 定されている点を考慮した上で,
744 本件規定の適用関係に触れつつ,
745 簡潔に説明しなさい。
746
747
748
749 - 8 -
750
751 2
752
753 本件貸付金に関する課税関係について,
754 以下の問いに答えなさい。
755
756
757
758
759 AがEから受け取った本件貸付金の利息と未収受の利息は,
760 Aの所得税の計算上どのよう
761 に扱われるか,
762 簡潔に説明しなさい。
763
764
765
766
767
768 平成28年にEが病死したという事情は,
769 Aの所得税の計算上どのように扱われるか,
770 説
771 明しなさい。
772
773
774
775 3
776
777 Aを敗訴させた本件訴訟の判決が平成30年6月15日に確定したことにより,
778 Aのいつの年
779 分のどの所得分類に係る所得額がどのように変化するか。
780
781 また,
782 Aは,
783 その変化をどのような
784 手続によって自分の所得税の計算に反映させることができるか。
785
786 条文上の根拠を摘示しつつ説
787 明しなさい。
788
789
790
791 - 9 -
792
793 - 10 -
794
795 論文式試験問題集[経
796
797 - 11 -
798
799 済
800
801 法]
802
803 [経
804
805 済
806
807 法]
808
809 〔第1問〕(配点:50)
810 X社は,
811 電子部品である甲(以下「甲部品」という。
812
813 )のメーカーである。
814
815 Y社は,
816 電子機器で
817 ある乙(以下「乙機器」という。
818
819 )のメーカーである。
820
821 X社及びY社は,
822 Y社がX社の全株式を取
823 得することを計画している(以下「本件計画」という。
824
825 )。
826
827
828 甲部品は,
829 乙機器の製造に不可欠な重要部品の一つである。
830
831 乙機器の製造原価に占める甲部品の
832 仕入原価の割合は大きくない。
833
834 乙機器は装置である丙(以下「丙装置」という。
835
836 )に組み込まれた
837 後に,
838 世界中の産業需要家に販売される。
839
840 丙装置の製造原価に占める乙機器の仕入原価の割合はご
841 く僅かである。
842
843 甲部品には,
844 乙機器メーカーを需要者とする組込品のほか,
845 乙機器や丙装置の修理
846 のための交換品も存在するが,
847 交換品の取引規模は小さい。
848
849 また,
850 甲部品が乙機器以外の製品の製
851 造に用いられることもあるが,
852 それら製品の製造に係る甲部品の取引規模は僅少である。
853
854 Y社が乙
855 機器以外のそれら製品を製造することはない。
856
857
858 X社やY社を含む甲部品及び乙機器の各メーカーは,
859 複数の国に製造,
860 配送の拠点を有している。
861
862
863 また,
864 甲部品及び乙機器ともに,
865 重量に比して価格が高いとの特徴から,
866 輸送費が価格に占める割
867 合は低く,
868 輸送費が取引上の障壁とはならない。
869
870 そのため,
871 甲部品及び乙機器について,
872 日本を含
873 む世界中の需要者(甲部品については乙機器メーカー,
874 乙機器については丙装置メーカー)は,
875 供
876 給者の所在する国を問わず発注しており,
877 供給者もそれに応じ得る状況にある。
878
879 次に見る乙機器の
880 仕様の差異に基づく価格差を除けば,
881 甲部品及び乙機器ともに,
882 地域にかかわらず世界における販
883 売価格は実質的に同一である。
884
885
886 最終製品である丙装置は,
887 メーカーの違いにより機能や性能に大きな差異はないが,
888 メーカーご
889 とに仕様が異なる。
890
891 丙装置の仕様ごとに,
892 乙機器の仕様も若干異なる。
893
894 ただし,
895 仕様が異なっても,
896
897 乙機器に係る基本的な製造設備や製造工程は同じであり,
898 製造のために特別な技術を要することも
899 ない。
900
901 丙装置の仕様に応じた乙機器の製造設備の調整の費用は大きなものではないが,
902 製造設備の
903 調整から商業的な乙機器の製造まで2か月から3か月を要する。
904
905 それら調整は製造設備ごとに行わ
906 れ,
907 各製造拠点において,
908 丙装置の仕様に対応した仕様の異なる乙機器の製造が可能である。
909
910 丙装
911 置メーカーは,
912 乙機器メーカーに対して取引上の立場が強い。
913
914 甲部品は,
915 メーカーの違いにより機
916 能や性能に差異はないほか,
917 丙装置や乙機器とは異なり,
918 いずれのメーカーの仕様も同じである。
919
920
921 全世界における甲部品の販売状況(販売額に基づく市場シェア)は,
922 X社が約50パーセント,
923
924 A社が約45パーセント,
925 B社及びC社がそれぞれ約5パーセント未満である。
926
927 これらメーカー間
928 では活発な競争が行われてきたところ,
929 製造設備の更新期にあったA社は,
930 工場を新設するなどし
931 て製造設備を増強した。
932
933 その結果,
934 A社には十分な製造余力がある。
935
936 また,
937 B社にも若干の製造余
938 力がある。
939
940 他方,
941 X社及びC社に製造余力はない。
942
943 甲部品の製造には高額な設備を要することから,
944
945 投下資本を回収するために製造設備の稼働率を高く維持することが,
946 甲部品の各メーカーにとって,
947
948 経営上重要になっている。
949
950
951 次に,
952 全世界における乙機器の販売状況(販売額に基づく市場シェア)は,
953 D社が約40パーセ
954 ント,
955 Y社が約30パーセント,
956 E社が約20パーセント,
957 F社が約10パーセントである。
958
959 D社
960 は甲部品のほとんどをA社から購入している。
961
962 Y社は甲部品の多くをX社から購入しているが,
963 安
964 定調達の観点から,
965 A社,
966 B社及びC社から購入する分もある。
967
968 E社及びF社は,
969 いずれも甲部品
970 のほとんどをX社から購入している。
971
972 Y社及びF社に製造余力がない一方で,
973 D社及びE社には若
974 干の製造余力がある。
975
976 D社及びE社は,
977 製造余力を活用すべく,
978 甲部品を含む乙機器の製造に要す
979 る部品について,
980 入札手続の導入等によるより良い条件での調達を模索している。
981
982 さらに,
983 E社は,
984
985 必要となる甲部品の一部を自ら製造することを計画しており,
986 今後2年以内に,
987 少量ではあるがそ
988 の商業的な製造が開始される見込みである。
989
990
991 なお,
992 F社は,
993 X社から,
994 甲部品以外の製品を相当量購入している。
995
996 X社におけるF社との取引
997 - 12 -
998
999 の多くは,
1000 甲部品以外の製品に係る取引で占められており,
1001 X社にとってF社は,
1002 甲部品以外の製
1003 品について極めて重要な顧客である。
1004
1005 他方,
1006 それら甲部品以外の製品について,
1007 F社がX社以外の
1008 取引先を確保することは容易である。
1009
1010
1011 〔設
1012
1013 問〕
1014
1015 本件計画について,
1016 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」と
1017 いう。
1018
1019 )上の問題点を検討しなさい。
1020
1021
1022
1023 - 13 -
1024
1025 〔第2問〕(配点:50)
1026 A県浄化槽協会(以下「協会」という。
1027
1028 )は,
1029 トイレから発生するし尿や台所,
1030 風呂,
1031 洗濯機等
1032 からの生活雑排水を微生物を利用して浄化した後,
1033 側溝等に放流する設備である浄化槽の普及を図
1034 ることにより,
1035 生活環境の保全と公衆衛生の向上に寄与することを目的とする一般社団法人である。
1036
1037
1038 協会は,
1039 A県内で浄化槽の製造,
1040 施工,
1041 保守点検又は清掃を行う事業者を主な会員(以下,
1042 協会に
1043 所属する者を「会員」といい,
1044 所属しない者を「非会員」という。
1045
1046 )とする県内唯一の団体であり,
1047
1048 会員数は約450名である。
1049
1050 協会には,
1051 会員である各事業者がそれぞれ所属する製造,
1052 施工,
1053 保守
1054 点検及び清掃の各部会があり,
1055 保守点検部会の会員は140名,
1056 清掃部会の会員は70名である。
1057
1058
1059 協会は,
1060 社員総会及び理事会を置き,
1061 社員総会で各部会の入会基準を決定し,
1062 各部会において,
1063
1064 それら入会基準に基づき,
1065 入会申請者の入会の可否を決定している。
1066
1067 各部会への入会を認められた
1068 者は,
1069 自動的に協会への入会が認められる。
1070
1071 協会は,
1072 浄化槽に関する説明会や講習会を開催し,
1073 そ
1074 の際,
1075 住宅や事業所等に浄化槽の設置を希望する者に対して会員を優先して紹介し,
1076 会員に対して
1077 も公民館や学校等の浄化槽に係る大口の取引を優先的に斡旋するため,
1078 A県内で浄化槽の製造,
1079 施
1080 工,
1081 清掃を行う各事業者は,
1082 全て会員である。
1083
1084 保守点検を行う事業者については,
1085 140名の会員
1086 のほか,
1087 非会員であるBら15名が存在する。
1088
1089 A県の保守点検業者全体の契約件数及び売上高に占
1090 める保守点検業者である会員の契約件数及び売上高の割合は,
1091 いずれも約9割である。
1092
1093
1094 住宅や事業所等に浄化槽を設置した者は,
1095 法令上,
1096 年3回以上の保守点検(機器の調整点検,
1097 水
1098 質検査,
1099 消毒剤の補充及び害虫駆除等を行うこと),
1100 年1回以上の清掃(汚泥を槽外に引き抜き,
1101
1102 浄化槽を洗浄すること),
1103 年1回の法定検査(A県においては,
1104 A県職員が浄化後の水質検査や機
1105 器の適正作動の確認を行うこと)を受けなければならない。
1106
1107 また,
1108 法令上,
1109 保守点検を行った者は,
1110
1111 保守点検の度に検査結果を記録票に記載しなければならず,
1112 浄化槽設置者は,
1113 これを3年間保管し,
1114
1115 年1回の法定検査の際,
1116 これを提示する必要がある。
1117
1118 その結果,
1119 不良な保守点検を行う者が発見さ
1120 れた場合,
1121 都道府県知事は,
1122 その者に対し,
1123 必要な助言,
1124 指導,
1125 勧告又は改善命令を行うことがで
1126 きる。
1127
1128
1129 A県内で保守点検業を行うためには,
1130 法令や条例上,
1131 A県知事の登録を受けなければならず,
1132 そ
1133 の登録の有効期間は3年である。
1134
1135 また,
1136 条例上,
1137 その登録(更新を含む。
1138
1139 以下同じ。
1140
1141 )の申請を行
1142 おうとする者は,
1143 自らが浄化槽の清掃業の許可を受けていない限り,
1144 業務を行おうとする区域にお
1145 いて現に清掃業の許可を受けている浄化槽清掃業者と提携していることを証明する書類を提出しな
1146 ければならない。
1147
1148 浄化槽の清掃業の許可は,
1149 法令上,
1150 業務区域を管轄する市町村長により行われる
1151 ところ,
1152 A県下の市町村においては,
1153 清掃によって生じる汚泥等の一般廃棄物の処理業の許可を受
1154 けていることを浄化槽の清掃業の許可基準の一つとしている。
1155
1156 一般廃棄物の処理業については,
1157 処
1158 理業務の総量を超える業者の参入を認める必要はなく,
1159 A県内では,
1160 処理業務の総量に見合った許
1161 可が既にされているため,
1162 新規に許可がされる見込みはない。
1163
1164 その結果,
1165 A県において浄化槽の保
1166 守点検業の登録を受けようとする場合,
1167 その者が清掃業の許可を受けておらず,
1168 かつ,
1169 一般廃棄物
1170 処理業の許可も受けていなければ,
1171 新たに清掃業の許可を受けられる見込みが乏しいため,
1172 A県内
1173 の清掃業者と提携するほかない。
1174
1175
1176 ところで,
1177 数年前から,
1178 A県内の河川は,
1179 その水質が全国で最も汚濁の著しいものの一つとして
1180 報道されるようになった。
1181
1182 A県では浄化槽の保守点検業者が相当数に上るにもかかわらず,
1183 新規に
1184 浄化槽を設置する住宅や事業所等は減少している。
1185
1186 こうした事情から,
1187 協会は,
1188 浄化槽の保守点検
1189 をめぐる競争が激化して過度な低料金化が進むと,
1190 環境保全と公衆衛生に十分配慮した事業活動が
1191 できなくなるという理由で,
1192 保守点検業者である会員に対して,
1193 会員間で既存の取引先を尊重して
1194 奪い合わないよう,
1195 協会からの除名を示唆しながら強く指導し続けている。
1196
1197 また,
1198 協会は,
1199 平成2
1200 8年4月の社員総会において,
1201 上記と同様の理由で,
1202 A県内で浄化槽の保守点検を行う他の事業者
1203 の顧客を低料金を提示して奪おうとする者から申請があっても入会を認めないこと,
1204 清掃業の許可
1205 を受けていない非会員が保守点検業を行うためA県知事に登録を申請する際,
1206 清掃業者である会員
1207 - 14 -
1208
1209 が,
1210 有償であると無償であるとを問わず,
1211 当該登録申請者と提携してはならないこと,
1212 ただし,
1213 そ
1214 の者が低料金を提示して会員の既存の顧客を奪わないと確約した場合には,
1215 有償で提携してよいこ
1216 とをそれぞれ決定した。
1217
1218 さらに,
1219 協会は,
1220 平成28年4月以降,
1221 上記と同様の理由で,
1222 A県内の保
1223 守点検業者が使用する水質検査薬や消毒剤のほとんど全てを供給するメーカーに対して,
1224 A県内で
1225 非会員にそれらを供給しないよう働き掛け,
1226 これに同意させている。
1227
1228 これらのメーカーは,
1229 非会員
1230 に販売すると会員に対する販売を妨害されるおそれがあるため,
1231 それぞれ,
1232 協会の要求に同意する
1233 ことを余儀なくされている。
1234
1235 非会員が別の販路や方法で浄化槽用の水質検査薬や消毒剤を入手する
1236 ことはできない。
1237
1238 なお,
1239 平成28年4月以降も,
1240 A県内の浄化槽の保守点検をめぐる競争は激化し
1241 ているため,
1242 その料金は一貫して下落し続けている。
1243
1244
1245 A県内の浄化槽保守点検業者である非会員のBら15名は,
1246 清掃業の許可も一般廃棄物処理業の
1247 許可も受けていない者であるが,
1248 平成28年10月から平成30年10月までの間に3回ないし5
1249 回の入会申込みをそれぞれ行ったところ,
1250 他の事業者の顧客を低料金を提示して奪おうとする者で
1251 あり,
1252 生活環境の保全と公衆衛生の向上に配慮した事業活動を行うことができないことを理由に,
1253
1254 保守点検部会において,
1255 Bらの入会申込みはいずれも否決された。
1256
1257 Bらは,
1258 協会に入会することが
1259 できないため,
1260 水質検査薬や消毒剤の入手が困難となっているほか,
1261 登録期間の満了後には,
1262 保守
1263 点検業の登録の申請に必要な浄化槽清掃業者との提携を受けられなくなるため,
1264 保守点検業を継続
1265 して営むことはできなくなると見込まれる。
1266
1267 なお,
1268 Bらが,
1269 これまでに不良な保守点検を行ったと
1270 してA県知事から行政指導及び行政処分を受けたことはない。
1271
1272
1273 〔設
1274
1275 問〕
1276
1277 問題文において,
1278 独占禁止法に違反する行為は認められるか,
1279 認められるとすれば,
1280 誰のどの
1281 ような行為か,
1282 適用条文も含めて検討しなさい。
1283
1284
1285
1286 - 15 -
1287
1288 - 16 -
1289
1290 論文式試験問題集[知的財産法]
1291
1292 - 17 -
1293
1294 [知的財産法]
1295 〔第1問〕(配点:50)
1296 医療機器メーカーX社は,
1297 カプセル内視鏡Lを開発した。
1298
1299 カプセル内視鏡とは,
1300 小型カメラ,
1301 ラ
1302 イト,
1303 モーターなどを内蔵したカプセル状の内視鏡であり,
1304 患者が飲み込むと消化器官の内部を順
1305 次撮影し,
1306 画像を体外に送信した後,
1307 肛門から自然排出されるものである。
1308
1309 光ファイバーなどで体
1310 外とつながれた従来の内視鏡(いわゆる胃カメラなど)よりも患者への負担が少なく,
1311 これまで経
1312 口挿入が困難であった小腸も容易に撮影できるという利点がある。
1313
1314
1315 以上の事実関係を前提として,
1316 以下の設問1ないし3に答えなさい。
1317
1318 なお,
1319 設問1ないし3及び
1320 設問1のとはそれぞれ独立したものであり,
1321 相互に関係はないものとする。
1322
1323
1324 〔設
1325
1326 問〕
1327
1328 1. Xは,
1329 カプセル内視鏡Lの発明について,
1330 社内の職務発明規程に基づき特許を受ける権利を
1331 原始取得した上で特許出願をし,
1332 さらに査定前に同権利をY社に有償で譲渡した。
1333
1334 Yは,
1335 特許
1336 を受ける権利を譲り受けてから,
1337 補正や出願の変更をしていない。
1338
1339
1340
1341
1342 Yが査定を受ける前に,
1343 XからYへの上記譲渡契約は,
1344 Yによる代金の不払により,
1345 債務
1346 不履行を理由に解除された。
1347
1348 特許庁がまだ査定をしていない段階で,
1349 Xは,
1350 どのような手段
1351 でYから特許出願人としての地位を回復することができるか。
1352
1353
1354
1355
1356
1357 Yに対して特許権が付与された後に,
1358 Yは更にZ社に特許権を譲渡した。
1359
1360 その後,
1361 ZがL
1362 を製造販売して利益を得ていたところ,
1363 XからYへの特許を受ける権利の譲渡契約は,
1364 Yに
1365 よる代金の不払により,
1366 債務不履行を理由に解除された。
1367
1368 ここで,
1369 Zは,
1370 Yから特許権を譲
1371 り受ける時点で,
1372 YのXに対する債務不履行の事実について善意であった。
1373
1374 Xは,
1375 Zに対し
1376 て,
1377 訴訟上どのような請求が可能か。
1378
1379 異なる見解にも留意しつつ論じなさい。
1380
1381
1382
1383 2. Xは,
1384 さらに,
1385 カプセル内視鏡Lを用いて小腸の疾病αの発症の有無を診断する方法Mを開
1386 発した。
1387
1388 この診断方法Mを用いると,
1389 疾病αの発症を20%の確率で発見できるが,
1390 疾病αの
1391 初期徴候は患者によって多様であるため,
1392 残る80%についてはなお発見できない。
1393
1394 また,
1395 診
1396 断方法Mを用いると,
1397 下痢などの副作用が必ず生じることも分かっている。
1398
1399
1400 この診断方法Mは,
1401 特許法上,
1402 「発明」に当たるか。
1403
1404 また,
1405 当該方法は,
1406 特許法上,
1407 「産業
1408 上利用することができる」ものに当たるか。
1409
1410
1411 3. Xは,
1412 カプセル内視鏡Lを製造販売しているところ,
1413 このLには,
1414 撮影した消化器官内部の
1415 画像を効率よく逐次に体外へ送信する部品が内蔵されている。
1416
1417 また,
1418 この部品には,
1419 通信機器
1420 メーカーW社が特許権Pを有するデータ送信装置の発明が用いられている。
1421
1422
1423 ここで,
1424 Lは,
1425 医療機器における通信システムQの普及を目的とした日本の民間標準化団体
1426 Rが策定した通信規格Sに準拠した製品である。
1427
1428 また,
1429 Wは,
1430 Rの会員として,
1431 Rの知的財産
1432 権ポリシーに従い,
1433 Rに対して,
1434 特許権Pが通信規格Sの必須特許である旨を通知するととも
1435 に,
1436 Pについて「公正,
1437 合理的,
1438 かつ非差別的な条件」(本件条件)で取消不能なライセンス
1439 を誰にでも許諾する用意がある旨の宣言(本件宣言)をしていた。
1440
1441
1442 Wは,
1443 Xに対して,
1444 特許権Pに基づき,
1445 Lの製造販売の差止めと損害賠償をそれぞれ請求す
1446 ることができるか。
1447
1448
1449
1450 - 18 -
1451
1452 〔第2問〕(配点:50)
1453 作家甲は,
1454 少年αが主人公として登場し,
1455 ボーイスカウト活動に参加しつつ青春を謳歌するとい
1456 う内容の小説Pを執筆した。
1457
1458 Pの出版後,
1459 漫画家乙は,
1460 甲の許諾を得て,
1461 Pに基づいて漫画Qを作
1462 成した。
1463
1464 Qには,
1465 αについて,
1466 その髪型や髪の色,
1467 瞳の色,
1468 顔の形,
1469 眉や目鼻立ち,
1470 ボーイスカウ
1471 トの制服,
1472 体型などの特徴(以下「本件特徴」という。
1473
1474 )が,
1475 生き生きと描かれていた。
1476
1477 他方,
1478 P
1479 には,
1480 本件特徴を含むαの絵画的側面の具体的,
1481 詳細な記載がされていなかった。
1482
1483
1484 以上の事実関係を前提として,
1485 以下の設問に答えなさい。
1486
1487 なお,
1488 各設問はそれぞれ独立したもの
1489 であり,
1490 相互に関係はないものとする。
1491
1492 また,
1493 著作者人格権について触れる必要はない。
1494
1495
1496 〔設
1497
1498 問〕
1499
1500 1.Qを見た画家丙は,
1501 乙の許諾を得ただけで,
1502 甲の許諾を得ずに,
1503 本件特徴をよく捉えたαの
1504 肖像画R1を作成した。
1505
1506 丙は,
1507 R1の複製物を製造して販売しようとしている。
1508
1509
1510 甲は,
1511 丙に対して,
1512 R1の複製物の販売行為につき,
1513 著作権侵害に基づく差止めを請求する
1514 ことができるか。
1515
1516 異なる見解にも留意しつつ論じなさい。
1517
1518
1519 2.乙は,
1520 本件特徴をよく捉えたαの肖像画R2を作成した。
1521
1522 その後,
1523 乙はR2の原作品(縦4
1524 0p×横20p)を譲渡したが,
1525 R2については贋作が出回った。
1526
1527 そこで,
1528 R2の原作品を所
1529 有するに至った美術商丁は,
1530 その真贋について,
1531 これを真作であると鑑定し,
1532 当該原作品を店
1533 内で展示した上,
1534 今後当該原作品と所在を共にして流通させるべく,
1535 鑑定証書Sを1通作成し
1536 た。
1537
1538
1539 丁は,
1540 鑑定対象である絵画を特定するため,
1541 R2の原作品を20%の面積に縮小し,
1542 縦16
1543 p×横10pのサイズにしたカラーコピー(以下「本件コピー」という。
1544
1545 )を作成して,
1546 Sに
1547 貼り付けた。
1548
1549 Sの大きさは,
1550 縦20p×横10pであり,
1551 その表面には,
1552 「鑑定証書」との表
1553 題の下に,
1554 「下記の本肖像画については,
1555 丁による厳正な鑑定の結果,
1556 乙が描き下ろした真作
1557 であると認められることを証明する。
1558
1559 」との記載がされ,
1560 「記」と記載されたその下部に,
1561 本
1562 件コピーが大きなスペースをとって貼り付けられ,
1563 最下部に,
1564 R2の著作者が乙である旨の記
1565 載がされていたが,
1566 裏面には丁の屋号や連絡先の記載がされているのみであった。
1567
1568 また,
1569 Sは,
1570
1571 表裏一体のものとしてラミネート加工がされていたが,
1572 本件コピーの部分は取り外しができる
1573 構造となっていた。
1574
1575 さらに,
1576 鑑定証書に鑑定対象である絵画のコピーを貼り付けることは,
1577 そ
1578 れまで丁の同業者の間でほとんど行われていなかった。
1579
1580
1581 丁は,
1582 Sを,
1583 R2の原作品とともに譲渡しようとしていたため,
1584 乙は,
1585 丁に対し,
1586 Sの譲渡
1587 行為につき著作権侵害に基づく差止めを請求する訴訟を提起した。
1588
1589 これに対する丁の反論とし
1590 て,
1591 どのような主張が考えられるか。
1592
1593 その妥当性についても論じなさい。
1594
1595
1596 3.乙は,
1597 Qが匿名の第三者により無断でインターネット上の電子掲示板に投稿されたため,
1598 当
1599 該掲示板の運営者戊に対し,
1600 そのことを伝えるとともに,
1601 Qの売上げが激減し乙が経済的打撃
1602 を受けており,
1603 受領後3日以内にその送信の停止を要請するとの内容証明郵便を送付した。
1604
1605 戊
1606 は,
1607 掲示板運営者として当該掲示板に掲載された投稿の最終的な送信停止の権限を有しており,
1608
1609 実際にも必要があれば直ちに送信停止を行うことができた。
1610
1611
1612 戊の運営する当該掲示板は,
1613 プロの小説家や漫画家を志す人からの投稿を募る掲示板として
1614 始まり,
1615 公的機関からも表彰されるなど,
1616 良質の掲示板であるとして雑誌等にも紹介され,
1617 戊
1618 も,
1619 当該掲示板に,
1620 著作権を侵害する投稿は厳禁とする旨の注意書きを掲載し,
1621 送信停止の要
1622 請があった場合にも公正な調査を心掛けてその要否を決するなど丁寧に対応していた。
1623
1624 しかし,
1625
1626 当該掲示板の人気が高まり,
1627 大量の投稿がされるようになるにつれて,
1628 戊には,
1629 日々数百件も
1630 の送信停止の要請が寄せられ,
1631 戊はその対応に追われるようになっていた。
1632
1633 また,
1634 戊は,
1635 当該
1636 掲示板について,
1637 広告収入を得ていたが,
1638 掲示板の運営費がかさみ,
1639 わずかの利益を得るにと
1640 どまっていた。
1641
1642 このような中で,
1643 乙の上記内容証明郵便が送付され,
1644 戊は,
1645 これを受領し閲読
1646 - 19 -
1647
1648 したものの,
1649 特段の是正措置を採らずに,
1650 3週間,
1651 放置していた。
1652
1653
1654 乙は,
1655 戊に対して,
1656 Qを送信する行為につき,
1657 著作権侵害に基づく差止めを請求することが
1658 できるか。
1659
1660 戊が運営する掲示板は,
1661 著作権を侵害しない用途に使用され得るものであることに
1662 留意しつつ論じなさい。
1663
1664
1665
1666 - 20 -
1667
1668 論文式試験問題集[労
1669
1670 - 21 -
1671
1672 働
1673
1674 法]
1675
1676 [労
1677
1678 働
1679
1680 法]
1681
1682 〔第1問〕(配点:50)
1683 次の事例を読んで,
1684 後記の設問に答えなさい。
1685
1686
1687 【事
1688
1689 例】
1690 情報技術を用いた情報処理を業とするY社は,
1691 平成29年5月1日,
1692 Xとの間で,
1693 基本給を月
1694
1695 額40万円とし,
1696 雇用期間を同30年10月31日までとする期間の定めのある雇用契約(以下
1697 「本件雇用契約」という。
1698
1699 )を締結した。
1700
1701 Y社の就業規則は,
1702 労働時間を1日8時間,
1703 1週40時
1704 間と,
1705 休日を土曜日・日曜日・国民の祝日などとそれぞれ定め,
1706 賃金の計算期間を毎月1日から末
1707 日までとし,
1708 毎月10日に前月分の賃金を支払うことを定めていた。
1709
1710
1711 本件雇用契約には,
1712 基本給を前記のとおりとした上で,
1713 1か月間の労働時間の合計(以下「月
1714 間総労働時間」という。
1715
1716 )が180時間を超えた場合には,
1717 その超えた時間数に対して1時間当た
1718 りの一定額(2500円)を乗じて得た額の賃金を,
1719 基本給に加えて支払うこととし,
1720 月間総労働
1721 時間が140時間に満たない場合には,
1722 その満たない時間数に対して一定額(2500円)を乗じ
1723 て得た額を,
1724 当該月の基本給額から控除して支給する旨の約定(以下「本件約定」という。
1725
1726 )が付
1727 されていた。
1728
1729 その趣旨は,
1730 本件約定が適用される者については,
1731 1月から12月までの月ごとの休
1732 日を除く勤務すべき日数の多寡にかかわらず,
1733 標準の月間総労働時間を160時間とし,
1734 被用者の
1735 月間総労働時間がこれに満たない場合であっても,
1736 140時間を下回らない限りは,
1737 基本給の額を
1738 支給することとする一方で,
1739 標準の月間総労働時間を超えて勤務をしても,
1740 180時間を超えない
1741 限りは,
1742 基本給に時間外勤務手当が上乗せされないというものであった。
1743
1744
1745 Xは,
1746 本件約定の存在を認識し,
1747 その内容を理解した上で,
1748 前記の内容が明記された本件雇用
1749 契約の契約書に,
1750 署名・押印をした。
1751
1752 Xが署名・押印をしたのは,
1753 前記の基本給は比較的高額であ
1754 ると評価できたこと,
1755 本件約定による労働時間制は変則的ではあるものの,
1756 160時間を標準の月
1757 間総労働時間として念頭に置きつつ,
1758 自分の勤務時間を適宜調節する柔軟性があるように思われた
1759 ことなどからであった。
1760
1761
1762 Xは,
1763 平成29年5月1日から同30年10月31日までの間の各月において,
1764 いずれも1週間
1765 当たり40時間を超える労働又は1日当たり8時間を超える労働を行った。
1766
1767 同期間の各月の月間総
1768 労働時間は,
1769 平成29年6月にあっては180時間を超えたが,
1770 それ以外の各月にあっては180
1771 時間以内であり,
1772 140時間に満たない月はなかった。
1773
1774 Y社は,
1775 Xに対し,
1776 平成29年6月分につ
1777 いては本件約定に基づき月間総労働時間数のうち180時間を超える時間数に2500円を乗じた
1778 額の時間外勤務手当を基本給に加えて支給したが,
1779 それ以外の各月については基本給の額のみを支
1780 払った。
1781
1782 Xは,
1783 平成30年10月31日にY社を退職した。
1784
1785 Y社では,
1786 Xの在職期間中,
1787 本件約定
1788 のほかに,
1789 変形労働時間制やフレックスタイム制は採用していなかった。
1790
1791
1792 なお,
1793 Xの在職期間中の各月について1日8時間の勤務をした場合のそれぞれの月間総労働時
1794 間は,
1795 当該各月において休日を除く勤務すべき日数が異なることに伴い変動するものの,
1796 おおむね
1797 140時間から180時間までの間であった。
1798
1799 また,
1800 月間総労働時間が180時間を超えた場合に
1801 おいて支払われた前記の一定額は,
1802 通常の賃金の時間単価額の125%増しの額に対して,
1803 月間総
1804 労働時間のうち180時間を超えた時間数を乗じた額を超える額であった。
1805
1806 さらに,
1807 Xの時間外労
1808 働時間(
1809 「時間外労働」とは,
1810 法定労働時間を超える時間の労働をいう。
1811
1812 以下同じ。
1813
1814 )の合計が60
1815 時間を超える月はなかった。
1816
1817
1818 Xは,
1819 月間総労働時間が180時間を超えた月の労働時間のうち180時間を超えない部分にお
1820 ける時間外労働及び月間総労働時間が180時間を超えなかった月の労働時間における時間外労働
1821 (以下「月間180時間以内の労働時間中の時間外労働」という。
1822
1823 )に対する割増賃金が支払われ
1824 ていないとして,
1825 Y社に対して,
1826 当該割増賃金の支払いを請求した。
1827
1828
1829 - 22 -
1830
1831 〔設
1832
1833 問〕
1834
1835 1.Xの主張に対して,
1836 Y社は,
1837 月間180時間以内の労働時間中の時間外労働に対する割増
1838 賃金は,
1839 本件約定により,
1840 基本給に組み入れられており,
1841 未払いの割増賃金はないと反論し
1842 た。
1843
1844 このようなY社の反論を踏まえつつ,
1845 Xの請求の当否について論じなさい。
1846
1847
1848 2.さらに,
1849 Y社は,
1850 仮に月間180時間以内の労働時間中の時間外労働に対する割増賃金の
1851 請求権がXに発生し得ると考えたとしても,
1852 Xは,
1853 本件約定を含む本件雇用契約を締結した
1854 ことにより,
1855 Y社に対して当該割増賃金を請求する債権を放棄したと反論した。
1856
1857 このような
1858 Y社の反論を踏まえ,
1859 Xの請求の当否について論じなさい。
1860
1861
1862 なお,
1863 1,
1864 2を通して,
1865 割増賃金債権の消滅時効については論じなくてよい。
1866
1867
1868
1869 - 23 -
1870
1871 〔第2問〕(配点:50)
1872 次の事例を読んで,
1873 後記の設問に答えなさい。
1874
1875
1876 【事
1877
1878 例】
1879 家庭用電化製品の製造・販売等を業とするA社においては,
1880 その総従業員数の85%に当たる
1881
1882 従業員が組合員として加入するB労働組合(以下「B組合」という。
1883
1884 )が組織されており,
1885 A社と
1886 B組合の間には,
1887 ユニオン・ショップ協定及びチェック・オフ協定を含む労働協約が締結されてい
1888 た。
1889
1890
1891 Cは,
1892 大学卒業後,
1893 A社に入社し,
1894 22年の勤務を経て営業第二課長となった。
1895
1896 その後,
1897 Cが,
1898
1899 その部下であるDを,
1900 営業成績が一向に上がらないことについて強い口調で叱責し,
1901 これを気に病
1902 んだDがA社を辞職するという事態に至った。
1903
1904 この事態を問題視したA社は,
1905 B組合との労働協約
1906 に基づいて設置され,
1907 A社の管理職員とB組合の執行役員によって構成される懲戒委員会に,
1908 この
1909 件を付議した。
1910
1911 懲戒委員会は,
1912 この件について事実調査を行い,
1913 CのDに対する叱責等の行為は減
1914 給処分に相当するとの決定をした。
1915
1916 この決定を受け,
1917 A社は,
1918 同社の就業規則の規定に基づき,
1919 C
1920 を減給処分とした。
1921
1922
1923 この処分に不満を持ったCは,
1924 入社以来加入しているB組合に相談をしたが,
1925 B組合の執行部
1926 から「この処分は,
1927 当組合の執行役員も参加した懲戒委員会の調査と決定に基づくものであり,
1928 既
1929 に解決済みである。
1930
1931 」と返答され,
1932 全く取り合ってもらえなかった。
1933
1934
1935 このようなB組合の対応に対しても不満を持ったCは,
1936 B組合を脱退せず,
1937 同組合の組合員と
1938 しての地位を維持したまま,
1939 いわゆる地域合同労組であるE労働組合(以下「E組合」という。
1940
1941 )
1942 に加入した。
1943
1944 この際,
1945 Cと同様にA社の従業員であり,
1946 かつ,
1947 B組合の組合員であって,
1948 この件に
1949 ついてのA社とB組合の対応に不満を持ったF及びGの2名も,
1950 Cに共感し,
1951 Cと共にE組合に加
1952 入した。
1953
1954
1955 前記の減給処分についてCから相談を受けたE組合は,
1956 A社に対し,
1957 「当組合員Cの減給処分に
1958 関する件」を交渉事項とする団体交渉申入書を送付した。
1959
1960 この申入書には,
1961 E組合の名称,
1962 所在地
1963 及び執行役員名と共に,
1964 「貴社が雇用する組合員」として,
1965 「貴社営業第二課長Cのほか貴社従業員
1966 数名」との記載があった。
1967
1968 また,
1969 同申入書には,
1970 E組合の組合規約も添付されていた。
1971
1972
1973 これに対し,
1974 A社は,
1975 「弊社に労働組合として団体交渉を求めるのであれば,
1976 貴組合の組合員名
1977 簿をご提出ください。
1978
1979 少なくとも,
1980 貴組合の組合員のうち弊社の従業員である者の全ての氏名を明
1981 らかにしていただかなければ,
1982 弊社としては,
1983 貴組合と責任を持って団体交渉を行うことができま
1984 せん。
1985
1986 また,
1987 Cは,
1988 弊社内の労働組合であるB組合にも加入しており,
1989 二重交渉となる可能性があ
1990 る以上,
1991 Cに関する貴組合からの団体交渉の申入れには応じることができません。
1992
1993 さらに,
1994 Cは,
1995
1996 弊社の管理職員(営業第二課長)であるため,
1997 貴組合は,
1998 適法な労働組合とは認められないものと
1999 思料します。
2000
2001 」との書面をE組合に送付した。
2002
2003
2004 これを受けて,
2005 E組合は,
2006 A社に対し,
2007 「本団体交渉を行うに当たり,
2008 組合員名簿の提出は必要
2009 ありません。
2010
2011 確かにCはB組合にも加入していますが,
2012 B組合は本件について『既に解決済み』と
2013 の対応を採っています。
2014
2015 Cが貴社の営業第二課長であることも,
2016 本団体交渉を拒否する理由にはな
2017 りません。
2018
2019 」との書面を送付した。
2020
2021 しかし,
2022 A社は,
2023 その後もE組合からの団体交渉の申入れに応
2024 じていない。
2025
2026
2027 なお,
2028 A社におけるCの営業第二課長としての勤務内容及び処遇は,
2029 @営業第二課の課員の人
2030 事考課を行い,
2031 人事考課表を同社の人事課に提出する,
2032 A営業第二課の課員それぞれから,
2033 人事異
2034 動についての希望を聴取し,
2035 聴取した事項を取りまとめて同社の人事課に提出する,
2036 B営業第二課
2037 の営業方針と計画についての原案を作成し,
2038 営業統括部長に提出する,
2039 CA社の経営方針の決定機
2040 関である経営会議と取締役会には,
2041 営業第二課に関わる案件がある場合にのみ出席し,
2042 必要な説明
2043 を行うが,
2044 議事に参加する権限や議決権はない,
2045 D月額12万円の役職(課長)手当が支給される
2046 - 24 -
2047
2048 一方,
2049 時間外・休日労働に対する割増賃金は支給されない,
2050 E課員と同様に出社時及び退社時にタ
2051 イムカードの打刻をするが,
2052 出勤・退勤時間について拘束はなく,
2053 遅刻・早退に対する賃金カット
2054 はないというものであった。
2055
2056
2057 〔設 問〕
2058 1.E組合は,
2059 A社を相手方として,
2060 どのような機関に,
2061 どのような法的根拠で,
2062 どのような内容
2063 の救済を求めることが考えられるか。
2064
2065 救済の内容について検討すべき法律上の論点を挙げつつ,
2066
2067 論じなさい。
2068
2069
2070 2.1で述べた救済は,
2071 認められるか。
2072
2073 検討すべき法律上の論点を挙げて論じなさい。
2074
2075
2076
2077 - 25 -
2078
2079 - 26 -
2080
2081 論文式試験問題集[環
2082
2083 - 27 -
2084
2085 境
2086
2087 法]
2088
2089 [環
2090
2091 境
2092
2093 法]
2094
2095 〔第1問〕(配点:50)
2096 A社は,
2097 B県内に所有する自社の事業所の敷地に,
2098 製造プラント工場を数棟保有し稼働させて
2099 いたが,
2100 このうちにはトリクロロエチレンなどの揮発性有機化合物を使用し,
2101 これらを含む排水を
2102 排出する施設(水質汚濁防止法第2条第2項にいう特定施設に該当するものとする。
2103
2104 )を伴う甲工
2105 場があったところ,
2106 A社は,
2107 事業の見直しに伴って,
2108 この甲工場を廃止して解体・撤去した。
2109
2110 しか
2111 し,
2112 この際に,
2113 A社は,
2114 何らの措置を採ることなく,
2115 甲工場の跡地の区画(公道で区切られること
2116 なく,
2117 かつ,
2118 事業所関係者以外の立入りはない。
2119
2120 )をそのまま引き続き自社の将来の事業用地とし
2121 て保有し続けていた。
2122
2123
2124 A社は数年後に,
2125 この甲工場跡地に新たに乙工場を建設することを計画し,
2126 そのため甲工場跡
2127 地を,
2128 約1500平方メートルにわたって深さ数メートル程度掘り下げ,
2129 ここで発生した土壌を,
2130
2131 自社の従業員に運搬させ,
2132 乙工場建設現場から離れており,
2133 事業所敷地内ではあるが敷地境界近く
2134 にある自社用地で長年空き地のままに放置されていた広場に運んで積み上げ保管した。
2135
2136
2137 ところで,
2138 この広場の敷地境界を挟んだ隣地には,
2139 C市によって児童公園が設置されており,
2140
2141 公園内の井戸の揚水機によってくみ上げた井戸水はB県の地域防災計画により災害時の用水として
2142 利用されることとされていたほか,
2143 さらに,
2144 井戸水を利用した池も設置されていて,
2145 夏には近所に
2146 住むDらの子を含む子どもたちがこの池で泳いだり,
2147 水遊びをしていた(なお,
2148 C市は,
2149 土壌汚染
2150 対策法(以下「土対法」という。
2151
2152 )第64条による権限の委任を受けていない。
2153
2154 )。
2155
2156
2157 〔設問1〕
2158 土対法の下で,
2159 A社がこの甲工場を廃止し,
2160 解体・撤去をした後に,
2161 本来採るべきであっ
2162 た措置は何か。
2163
2164 また,
2165 その措置が免除されるのは,
2166 どのような場合か。
2167
2168 数年後に,
2169 乙工場の
2170 設置準備のための工事を行った際,
2171 A社が本来採るべきであった措置は何か。
2172
2173 それぞれにつき,
2174
2175 資料も参照の上で,
2176 説明せよ。
2177
2178
2179 〔設問2〕
2180 A社が広場に積み上げて保管していた土壌に含まれていたトリクロロエチレンなどの発がん
2181 性のある揮発性有機化合物が,
2182 地下に浸透して地下水を汚染し,
2183 隣接する公園内の井戸水等を
2184 経由して,
2185 公園内の池の水をも汚染していることが新聞で報じられたため,
2186 Dらは不安を感じ
2187 ている。
2188
2189 この場合にDらから相談を受けたB県知事は,
2190 A社に対していかなる法的措置を採り
2191 得るか,
2192 説明せよ。
2193
2194
2195 〔設問3〕
2196 Dらが,
2197 直接,
2198 A社に対して採ることが可能な法的請求があるか,
2199 論ぜよ。
2200
2201
2202
2203 - 28 -
2204
2205 【資
2206 〇
2207
2208 料】
2209 土壌汚染対策法施行令(平成14年11月13日政令第336号)(抜粋)
2210
2211 (土壌汚染状況調査の対象となる土地の基準)
2212 第3条
2213 一
2214
2215 法第5条第1項の政令で定める基準は,
2216 次の各号のいずれにも該当することとする。
2217
2218
2219 次のいずれかに該当すること。
2220
2221
2222
2223 イ
2224
2225 当該土地の土壌の特定有害物質(法第2条第1項に規定する特定有害物質をいう。
2226
2227 以下同
2228 じ。
2229
2230 )による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないことが明らかであり,
2231 当該土壌の
2232 特定有害物質による汚染に起因して現に環境省令で定める限度を超える地下水の水質の汚濁
2233 が生じ,
2234 又は生ずることが確実であると認められ,
2235 かつ,
2236 当該土地又はその周辺の土地にあ
2237 る地下水の利用状況その他の状況が環境省令で定める要件に該当すること。
2238
2239
2240
2241 ロ
2242
2243 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態がイの環境省令で定める基準に適合しない
2244 おそれがあり,
2245 当該土壌の特定有害物質による汚染に起因して現にイの環境省令で定める限
2246 度を超える地下水の水質の汚濁が生じていると認められ,
2247 かつ,
2248 当該土地又はその周辺の土
2249 地にある地下水の利用状況その他の状況がイの環境省令で定める要件に該当すること。
2250
2251
2252
2253 ハ
2254 二
2255
2256 (略)
2257 次のいずれにも該当しないこと。
2258
2259
2260
2261 イ
2262
2263 法第7条第4項に規定する技術的基準に適合する汚染の除去等の措置(法第6条第1項に
2264 規定する汚染の除去等の措置をいう。
2265
2266 以下同じ。
2267
2268 )が講じられていること。
2269
2270
2271
2272 ロ
2273 〇
2274
2275 (略)
2276
2277 土壌汚染対策法施行規則(平成14年12月26日環境省令第29号)(抜粋)
2278
2279 (使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の調査)
2280 第1条
2281
2282 土壌汚染対策法(平成14年法律第53号。
2283
2284 以下「法」という。
2285
2286 )第3条第1項本文の報告
2287
2288 は,
2289 次の各号に掲げる場合の区分に応じ,
2290 当該各号に定める日から起算して120日以内に行わな
2291 ければならない。
2292
2293 ただし,
2294 当該期間内に当該報告を行うことができない特別の事情があると認めら
2295 れるときは,
2296 都道府県知事(土壌汚染対策法施行令(平成14年政令第336号。
2297
2298 以下「令」とい
2299 う。
2300
2301 )第10条に規定する市にあっては,
2302 市長。
2303
2304 以下同じ。
2305
2306 )は,
2307 当該土地の所有者等(法第3条第
2308 1項本文に規定する所有者等をいう。
2309
2310 以下同じ。
2311
2312 )の申請により,
2313 その期限を延長することができ
2314 る。
2315
2316
2317 一
2318
2319 当該土地の所有者等が当該有害物質使用特定施設(法第3条第1項に規定する有害物質使用特
2320 定施設をいう。
2321
2322 以下同じ。
2323
2324 )を設置していた者である場合(同項ただし書の確認を受けた場合を
2325 除く。
2326
2327 )
2328
2329 二,
2330 三
2331 2,
2332 3
2333
2334 当該有害物質使用特定施設の使用が廃止された日
2335 (略)
2336
2337 (略)
2338
2339 (人の健康に係る被害が生ずるおそれがない旨の確認)
2340 第16条
2341
2342 法第3条第1項ただし書の確認を受けようとする土地の所有者等は,
2343 次に掲げる事項を記
2344
2345 載した様式第三による申請書を提出しなければならない。
2346
2347
2348 一〜五
2349
2350 (略)
2351
2352 2
2353
2354 (略)
2355
2356 3
2357
2358 都道府県知事は,
2359 第1項の申請に係る同項第4号の土地の場所が次のいずれかに該当することが
2360 確実であると認められる場合に限り,
2361 当該土地の場所について,
2362 法第3条第1項ただし書の確認を
2363 するものとする。
2364
2365
2366 一
2367
2368 工場又は事業場(当該有害物質使用特定施設を設置していたもの,
2369 当該工場又は事業場に係る
2370 事業に従事する者その他の関係者以外の者が立ち入ることができないものに限る。
2371
2372 )の敷地とし
2373 て利用されること。
2374
2375
2376 - 29 -
2377
2378 二
2379
2380 当該有害物質使用特定施設を設置していた小規模な工場又は事業場において,
2381 事業の用に供さ
2382 れている建築物と当該工場又は事業場の設置者(その者が法人である場合にあっては,
2383 その代
2384 表者)の居住の用に供されている建築物とが同一のものであり,
2385 又は近接して設置されており,
2386
2387 かつ,
2388 当該居住の用に供されている建築物が引き続き当該設置者の居住の用に供される場合に
2389 おいて,
2390 当該居住の用に供されている建築物の敷地(これと一体として管理される土地を含む。
2391
2392 )
2393 として利用されること。
2394
2395
2396
2397 三
2398
2399 (略)
2400
2401 4,
2402 5
2403
2404 (略)
2405
2406 (法第4条第1項の土地の形質の変更の届出の対象となる土地の規模)
2407 第22条
2408
2409 法第4条第1項の環境省令で定める規模は,
2410 3000平方メートルとする。
2411
2412 ただし,
2413 現に
2414
2415 有害物質使用特定施設が設置されている工場若しくは事業場の敷地又は法第3条第1項本文に規定
2416 する使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場若しくは事業場の敷地(同項本文の報告を
2417 した工場若しくは事業場の敷地又は同項ただし書の確認を受けた土地を除く。
2418
2419 )の土地の形質の変
2420 更にあっては,
2421 900平方メートルとする。
2422
2423
2424 (法第4条第1項の土地の形質の変更の届出を要しない行為)
2425 第25条
2426 一
2427
2428 法第4条第1項第2号の環境省令で定める行為は,
2429 次に掲げる行為とする。
2430
2431
2432
2433 次のいずれにも該当しない行為
2434 イ
2435
2436 土壌を当該土地の形質の変更の対象となる土地の区域外へ搬出すること。
2437
2438
2439
2440 ロ
2441
2442 土壌の飛散又は流出を伴う土地の形質の変更を行うこと。
2443
2444
2445
2446 ハ
2447
2448 土地の形質の変更に係る部分の深さが50センチメートル以上であること。
2449
2450
2451
2452 二〜五
2453
2454 (略)
2455
2456 (土壌汚染状況調査の対象となる土地の土壌の特定有害物質による汚染状態に係る基準)
2457 第28条
2458 2
2459
2460 令第3条第1号イの環境省令で定める基準は,
2461 土壌溶出量基準とする。
2462
2463
2464
2465 令第3条第1号ハの環境省令で定める基準は,
2466 土壌含有量基準とする。
2467
2468
2469
2470 (地下水の水質の汚濁に係る限度)
2471 第29条
2472
2473 令第3条第1号イの環境省令で定める限度は,
2474 地下水基準とする。
2475
2476
2477
2478 (地下水の利用状況等に係る要件)
2479 第30条
2480
2481 令第3条第1号イの環境省令で定める要件は,
2482 地下水の流動の状況等からみて,
2483 地下水汚
2484
2485 染(地下水から検出された特定有害物質が地下水基準に適合しないものであることをいう。
2486
2487 以下同
2488 じ。
2489
2490 )が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域に,
2491 次の各号の
2492 いずれかの地点があることとする。
2493
2494
2495 一
2496
2497 地下水を人の飲用に供するために用い,
2498 又は用いることが確実である井戸のストレーナー,
2499 揚
2500 水機の取水口その他の地下水の取水口
2501
2502 二
2503
2504 (略)
2505
2506 三
2507
2508 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第40条第1項の都道府県地域防災計画等に基
2509 づき,
2510 災害時において地下水を人の飲用に供するために用いるものとされている井戸のストレ
2511 ーナー,
2512 揚水機の取水口その他の地下水の取水口
2513
2514 四
2515 〇
2516
2517 (略)
2518 水質汚濁防止法施行令(昭和46年6月17日政令第188号)(抜粋)
2519
2520 (カドミウム等の物質)
2521 第2条
2522
2523 法第2条第2項第1号の政令で定める物質は,
2524 次に掲げる物質とする。
2525
2526
2527
2528 一〜八
2529 九
2530
2531 (略)
2532
2533 トリクロロエチレン(以下,
2534 略)
2535
2536 - 30 -
2537
2538 〔第2問〕(配点:50)
2539 Aは,
2540 B市郊外の道路沿いに所有する土地にホテルCを所有し,
2541 経営している。
2542
2543 ホテルCの周
2544 辺一帯には広大な原野が広がっており,
2545 近隣には道路沿いの店舗等が点在する程度である。
2546
2547 開業当
2548 時は小規模な民宿であったが,
2549 次第に原野の優れた自然の風景が注目されるようになり,
2550 内外から
2551 の観光客が急増したため,
2552 Aは資金を投じて民宿を3階建(高さ13メートル)の建物に改築し,
2553
2554 観光客向けのホテルCを開業した。
2555
2556 その後,
2557 周辺地域は国立公園の指定を受け,
2558 ホテルCの所在地
2559 は第一種特別地域に含まれるに至った。
2560
2561 ホテルCは屋根や壁面の色彩や形態が自然景観に調和して
2562 いると評価され,
2563 大いに繁盛した。
2564
2565
2566 ところが,
2567 B市周辺を震源とする大規模な地震が発生し,
2568 ホテルCにも内壁や外壁にひび割れな
2569 どの被害が生じた。
2570
2571 検査の結果,
2572 損壊は甚だしいものの,
2573 大規模な修繕をすれば元どおりの使用は
2574 可能であるとされたが,
2575 Aとしては,
2576 建物の老朽化も進んでおり,
2577 建物の価値を超える修繕費用を
2578 要することもあって,
2579 経営,
2580 安全の両面から,
2581 将来地域の復興が進んだ時点での営業再開を目指す
2582 こととし,
2583 ホテルCを解体した。
2584
2585
2586 それから3年を経過し,
2587 地域の復興も進んだことから,
2588 AはホテルCの元の所在地と同一の位置
2589 に,
2590 従前と全く同一の高さ,
2591 面積とデザインによる建物を建築する計画を立案した。
2592
2593
2594 〔設問1〕
2595 自然公園法は,
2596 国立公園の区域の陸域内における行為につき,
2597 特別地域と普通地域を区分し
2598 た上で,
2599 それぞれに応じた規制を定めている。
2600
2601 その規制手法・内容の違い及びそのような違い
2602 を設けている趣旨を説明せよ。
2603
2604
2605 〔設問2〕
2606 Aの計画に関して自然公園法上どのような問題点があるか。
2607
2608 問題文に現れた事情の限りで,
2609 資
2610 料を参照しつつ検討せよ。
2611
2612
2613 〔設問3〕
2614 Aは,
2615 仮にホテルCの建築が認められない場合にどのような救済を求め得るか,
2616 検討せよ。
2617
2618
2619
2620 - 31 -
2621
2622 【資
2623 〇
2624
2625 料】
2626 自然公園法施行規則(昭和32年10月11日厚生省令第41号)(抜粋)
2627
2628 第2章
2629
2630 保護及び利用
2631
2632 (特別地域の区分)
2633 第9条の2
2634
2635 国立公園又は国定公園に関する公園計画のうち,
2636 保護のための規制に関する計画を定め
2637
2638 るに当たつては,
2639 特別地域(特別保護地区を除く。
2640
2641 以下同じ。
2642
2643 )を次の各号のいずれかに掲げる地
2644 域に区分するものとする。
2645
2646
2647 一
2648
2649 第一種特別地域(特別保護地区に準ずる景観を有し,
2650 特別地域のうちでは風致を維持する必
2651
2652 要性が最も高い地域であつて,
2653 現在の景観を極力保護することが必要な地域をいう。
2654
2655 )
2656 二
2657
2658 第二種特別地域(第一種特別地域及び第三種特別地域以外の地域であつて,
2659 特に農林漁業活
2660
2661 動についてはつとめて調整を図ることが必要な地域をいう。
2662
2663 )
2664 三
2665
2666 第三種特別地域(特別地域のうちでは風致を維持する必要性が比較的低い地域であつて,
2667 特
2668
2669 に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ない地域を
2670 いう。
2671
2672 )
2673 (特別地域,
2674 特別保護地区及び海域公園地区内の行為の許可基準)
2675 第11条
2676 1〜5
2677 6
2678
2679 (略)
2680
2681 法第20条第3項第1号,
2682 第21条第3項第1号及び第22条第3項第1号に掲げる行為(前各
2683 項の規定の適用を受ける建築物の新築,
2684 改築又は増築以外の建築物の新築,
2685 改築又は増築に限る。
2686
2687 )
2688 に係る許可基準は,
2689 第1項第2号から第5号まで並びに第4項第7号及び第9号から第11号まで
2690 の規定の例によるほか,
2691 次のとおりとする。
2692
2693 ただし,
2694 第2項ただし書に規定する行為に該当するも
2695 のについては,
2696 この限りでない。
2697
2698
2699 一,
2700 二
2701
2702 7〜36
2703
2704 (略)
2705 (略)
2706
2707 【注:Aの計画する建物は,
2708 上記の「前各項の規定の適用を受ける建築物」に該当しないものとする。
2709
2710 】
2711 37
2712
2713 法第20条第3項各号,
2714 第21条第3項各号及び第22条第3項各号に掲げる行為に係る許可
2715
2716 基準は,
2717 前各項に規定する基準のほか,
2718 次のとおりとする。
2719
2720
2721 一
2722
2723 申請に係る地域の自然的,
2724 社会経済的条件から判断して,
2725 当該行為による風致又は景観の
2726 維持上の支障を軽減するため必要な措置が講じられていると認められるものであること。
2727
2728
2729
2730 二
2731
2732 申請に係る場所又はその周辺の風致又は景観の維持に著しい支障を及ぼす特別な事由があ
2733 ると認められるものでないこと。
2734
2735
2736
2737 三
2738 *
2739
2740 (略)
2741
2742 本条6項が引用する本条各項の規定のうち,
2743 本問で検討すべきものを以下のとおり抜粋した。
2744
2745 省略され
2746 た条項については検討を要しない。
2747
2748
2749 ・
2750
2751 第1項第2号
2752 次に掲げる地域(以下「特別保護地区等」という。
2753
2754 )内において行われるものでないこと。
2755
2756
2757 イ
2758
2759 特別保護地区,
2760 第一種特別地域又は海域公園地区
2761
2762 ロ
2763
2764 (略)
2765
2766 ・
2767
2768 第1項第3号及び第4号
2769
2770 ・
2771
2772 第1項第5号
2773
2774 (略)
2775
2776 当該建築物の屋根及び壁面の色彩並びに形態がその周辺の風致又は景観と著しく不調和で
2777 ないこと。
2778
2779
2780 ・
2781
2782 第2項ただし書
2783 ただし,
2784 既存建築物の改築等であつて,
2785 前項第5号に掲げる基準に適合するものについて
2786 は,
2787 この限りでない。
2788
2789
2790 - 32 -
2791
2792 【注:「既存建築物の改築等」の定義は以下のとおり。
2793
2794
2795 既存の建築物の改築,
2796 既存の建築物の建替え若しくは災害により滅失した建築物の復旧のための新築
2797 (申請に係る建築物の規模が既存の建築物の規模を超えないもの又は既存の建築物が有していた機能を
2798 維持するためやむを得ず必要最小限の規模の拡大を行うものに限る。
2799
2800 )又は学術研究その他公益上必要で
2801 あり,
2802 かつ,
2803 申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められる建築物
2804 の新築,
2805 改築若しくは増築】
2806 ・
2807
2808 第4項第7号及び第9号から第11号
2809
2810 (略)
2811
2812 - 33 -
2813
2814 - 34 -
2815
2816 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
2817
2818 - 35 -
2819
2820 [国際関係法(公法系)]
2821 〔第1問〕(配点:50)
2822 A国の民間企業であるXは,
2823 B国との間で,
2824 B国政府に対してコンピュータを売り渡す旨の売買
2825 契約を締結した。
2826
2827 XとB国との間の売買契約書には,
2828 当事者間に紛争が生じた場合には,
2829 A国の法
2830 律に基づき,
2831 A国の国内裁判所で裁判手続を行う旨の条項が挿入されていた。
2832
2833 Xは,
2834 契約どおりに
2835 コンピュータを引き渡し,
2836 売主としての履行を完了した。
2837
2838 ところが,
2839 Xが支払期日に支払を求めた
2840 ところ,
2841 B国は期日を過ぎてもXに対して売買代金を支払わなかったため,
2842 Xは,
2843 B国による売買
2844 代金の支払を求めて,
2845 A国の国内裁判所に訴えを提起した。
2846
2847 これに対してB国は,
2848 応訴の意思を示
2849 さず,
2850 国家の裁判権免除を主張して訴えの却下を求めた。
2851
2852
2853 A国とB国との間には,
2854 特定の事項又は特定の事件に関して相手国の裁判所による裁判権の行使
2855 について同意する旨の国際的合意は存在しない。
2856
2857 また,
2858 B国が,
2859 本件裁判手続における宣言や書面
2860 による通知によって,
2861 A国の裁判所による裁判権の行使に同意した事実も存在しない。
2862
2863
2864 原審は,
2865 絶対免除主義を適用して,
2866 B国に対して,
2867 A国の民事裁判権からの免除を認めた。
2868
2869 この
2870 判決を不服としたXは,
2871 本件に相対(制限)免除主義の適用を求めて控訴した。
2872
2873 これに対して控訴
2874 審は,
2875 Xの主張を認め,
2876 B国に対してA国の裁判権を行使できると判断し,
2877 B国に対してXに対す
2878 る売買代金の支払を命じた。
2879
2880
2881 しかし,
2882 この控訴審判決にもかかわらず,
2883 B国が当該判決の履行を拒否したため,
2884 Xは裁判所に
2885 対して判決の強制執行を求めた。
2886
2887 なお,
2888 B国がA国内に保有する財産としては,
2889 B国の外交使節団
2890 の名義で開設されている口座の銀行預金があるのみである。
2891
2892
2893 ちなみに,
2894 A国とB国は,
2895 2004年に採択された「国及びその財産の裁判権からの免除に関す
2896 る国際連合条約」の締約国であるが,
2897 同条約は未発効である。
2898
2899
2900 以上の事実を基に,
2901 以下の設問に答えなさい。
2902
2903
2904 〔設
2905
2906 問〕
2907
2908 1.B国が主張した国家の裁判権免除について説明するとともに,
2909 絶対免除主義とはどのような
2910 考え方であるかを説明しなさい。
2911
2912 裁判権免除を認めるべきであるとの立場から,
2913 B国はどのよ
2914 うな主張が可能かを論じなさい。
2915
2916
2917 2.相対(制限)免除主義とはどのような考え方であるかを説明しなさい。
2918
2919 B国に対して裁判権
2920 免除を認めるべきでないとの立場から,
2921 Xはどのような主張が可能かを論じなさい。
2922
2923 また,
2924 本
2925 件売買契約におけるA国の国内裁判所で裁判手続を行う旨の条項は,
2926 B国による国家の裁判権
2927 免除の放棄と考えられるかについて論じなさい。
2928
2929
2930 3.B国が履行を拒否している控訴審判決を強制執行するために,
2931 A国内にあるB国の外交使節
2932 団名義で開設されている口座の銀行預金が差押えの対象となるかについて論じなさい。
2933
2934
2935
2936 - 36 -
2937
2938 〔第2問〕(配点:50)
2939 A国とB国は,
2940 隣接する国家である。
2941
2942 地理的に,
2943 A国はB国の北に位置している。
2944
2945 A国の領域内
2946 のナーガ山脈を水源とするギリ川等のいくつかの川は,
2947 A国領域内のある地点で一つの川に合流す
2948 る。
2949
2950 この合流点から下流の川がナーガ川であり,
2951 ギリ川は,
2952 ナーガ川となるいくつかの川の中で最
2953 も主要な川である。
2954
2955 ナーガ川は,
2956 上流国A国から下流国B国を貫流する国際河川である。
2957
2958
2959 1975年,
2960 A国とB国は,
2961 「ナーガ川の利用と流域の環境の保護及び保全のための協力に関す
2962 る条約」(以下「1975年条約」という。
2963
2964 )を締結した。
2965
2966 1975年条約の主要な規定は,
2967 以下
2968 のとおりである。
2969
2970 第4条は,
2971 両当事国にナーガ川流域の環境の保護及び保全の義務を課している。
2972
2973
2974 第5条は,
2975 両当事国にナーガ川の利用状況,
2976 水量及び水質等についての年次報告書を提出する義務
2977 を課している。
2978
2979 第10条は,
2980 両国の政府代表と専門家が委員となる「ナーガ川の利用と流域の環境
2981 の保護及び保全のための委員会」(以下「ナーガ川委員会」という。
2982
2983 )を設立する旨規定している。
2984
2985
2986 第11条は,
2987 ナーガ川委員会の任務の一つとして,
2988 両当事国が提出する年次報告書の受理及び審査
2989 を挙げている。
2990
2991 また,
2992 第12条は,
2993 ナーガ川の利用に関する新たな計画の実施には,
2994 ナーガ川委員
2995 会に特別報告書を提出し,
2996 同委員会の許可を得ることが必要であると規定している。
2997
2998 なお,
2999 第13
3000 条は,
3001 ナーガ川委員会の意思決定は全会一致によると定めている。
3002
3003 さらに,
3004 第19条は,
3005 この条約
3006 の解釈又は適用に関する紛争で両当事国間の交渉によって解決できないものは,
3007 いずれかの当事国
3008 により国際司法裁判所に付託できると規定している。
3009
3010
3011 A国には十分な発電施設がなく,
3012 自国の火力発電所は必要な電力の10%しか供給できない状態
3013 であった。
3014
3015 A国は,
3016 1980年にB国と「電力の安定供給に関する条約」を締結したほか,
3017 198
3018 2年には,
3019 A国の東側に位置し,
3020 B国と国境を接していないC国とも同じ内容の条約を締結した。
3021
3022
3023 これらの条約は,
3024 B国及びC国それぞれによる安定的な電力供給とA国による対価の支払の義務を
3025 規定している。
3026
3027 また,
3028 それぞれの条約には条約と一体となる附属書が付され,
3029 毎年9月の当事国間
3030 の協議により,
3031 翌年の電力供給量を決定すると規定されている。
3032
3033 この附属書により,
3034 例年A国は必
3035 要な電力量の約50%をB国から,
3036 約40%をC国から輸入していた。
3037
3038
3039 2012年9月,
3040 A国法人たる甲社が,
3041 ギリ川にダム及び水力発電所を建設し,
3042 発電事業を行う
3043 計画についての認可をA国に申請した。
3044
3045 甲社は,
3046 この事業によりA国に必要な電力量の20%を供
3047 給できるとし,
3048 A国のエネルギー安全保障の観点からの重要性を強調した。
3049
3050 2013年4月にこの
3051 計画は認可され,
3052 2018年10月に発電所が稼働を開始した。
3053
3054
3055 A国は,
3056 2013年1月にナーガ川委員会に提出した年次報告書で,
3057 ギリ川における甲社の計画
3058 について簡潔に言及したものの,
3059 ナーガ川の利用に関する新たな計画に当たらないので,
3060 第12条
3061 に基づく特別報告書を提出して,
3062 同委員会の許可を得る必要はないとの見解を示した。
3063
3064 これに対し,
3065
3066 B国は,
3067 この計画は下流のナーガ川に大きな影響をもたらす可能性があるため,
3068 ナーガ川委員会に
3069 計画の詳細と環境影響評価の結果に関する特別報告書を提出して,
3070 同委員会の許可を得るべきであ
3071 ると主張した。
3072
3073 この計画をめぐるA国とB国の意見の対立が原因となって,
3074 ナーガ川委員会は20
3075 13年8月以降,
3076 実質的な活動ができなくなっている。
3077
3078 なお,
3079 甲社がA国にこの計画の認可を申請
3080 した時から,
3081 国際的に定評のある環境団体が,
3082 甲社は必要な環境影響評価を実施していないと批判
3083 し,
3084 計画への反対運動を行ってきた。
3085
3086
3087 2018年10月に甲社の発電所が稼働した後,
3088 ナーガ川の水量が40%減少した。
3089
3090 またB国の
3091 調査によれば,
3092 水質も著しく悪化し,
3093 ナーガ川の水を水道水として利用してきたB国は,
3094 ダムの稼
3095 働後,
3096 新たな浄水施設を建設しなければならなくなった。
3097
3098 このような状況を受けて,
3099 2019年3
3100 月,
3101 B国は,
3102 A国との「電力の安定供給に関する条約」を一方的に廃棄し,
3103 A国に対する電力供給
3104 を完全に停止した。
3105
3106
3107 A国とB国は,
3108 国連加盟国であり,
3109 条約法に関するウィーン条約の当事国である。
3110
3111 なお,
3112 両国は,
3113
3114 国際司法裁判所規程第36条第2項に基づく選択条項受諾宣言を行っていない。
3115
3116
3117 以上の事実を基に,
3118 以下の設問に答えなさい。
3119
3120
3121
3122 - 37 -
3123
3124 〔設
3125
3126 問〕
3127
3128 1.甲社の計画にA国が認可を与えたことが国際法に違反するとの立場から,
3129 B国は慣習国際法
3130 又は条約に基づきどのような主張をすることが可能かを論じなさい。
3131
3132
3133 2.B国による「電力の安定供給に関する条約」の一方的廃棄と電力供給の完全な停止が国際法
3134 に違反するとの立場から,
3135 A国はどのような主張をすることが可能かを論じなさい。
3136
3137
3138 3.B国が,
3139 A国との紛争を国際司法裁判所に付託する場合,
3140 どのような管轄権の根拠で,
3141 いか
3142 なる申立てが可能かを論じなさい。
3143
3144 また,
3145 それに対して,
3146 A国はどのような管轄権に関する抗
3147 弁を主張できるかを論じなさい。
3148
3149
3150
3151 - 38 -
3152
3153 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
3154
3155 - 39 -
3156
3157 [国際関係法(私法系)]
3158 〔第1問〕(配点:50)
3159 X女とY男の夫婦は日本に居住していた。
3160
3161 ところが,
3162 その後その離婚が問題となった。
3163
3164 以上の事実を
3165 基に,
3166 以下の設問に答えなさい。
3167
3168
3169
3170 〔設問1〕
3171 XとYは共に甲国人であり,
3172 現在もなお,
3173 共に日本に常居所を有している。
3174
3175 XとYは離婚すること
3176 に合意した。
3177
3178 財産分与についても合意が成立している。
3179
3180 甲国には協議離婚制度はなく,
3181 裁判離婚主義
3182 が採られているので,
3183 XとYは,
3184 裁判所での手続によらなければならないと考え,
3185 また日本で生活し
3186 ているので日本の裁判所での手続により,
3187 その手続の中でも離婚訴訟ではなく調停手続により離婚を
3188 成立させることを希望して調停を申し立てた。
3189
3190 XとYについて調停離婚を認めることができるかどう
3191 か,
3192 調停離婚が認められないとした場合には,
3193 日本の裁判所においていかなる手続によることができ
3194 るかについて論じなさい。
3195
3196
3197 なお,
3198 甲国民法には,
3199 下記のように,
3200 当事者間に離婚とその諸効果について合意が成立している場
3201 合に,
3202 原則的に当事者の合意を尊重する裁判手続がある。
3203
3204
3205 【甲国民法】
3206 @ 夫婦は,
3207 離婚及びその諸効果について合意した場合には,
3208 離婚の諸効果を定める合意書について
3209 裁判官の承認を得るべく,
3210 共同で離婚を請求することができる。
3211
3212
3213 A 裁判官は,
3214 夫婦の合意が真意に基づくものであり,
3215 自由になされ,
3216 かつ思慮あるものであるとの
3217 心証を得た場合には,
3218 その合意書を認可し,
3219 離婚を言い渡す。
3220
3221
3222 B 裁判官は,
3223 その合意書が子又は夫婦の一方の利益を保持するには不十分であると認定する場合に
3224 は,
3225 認可を拒否し,
3226 離婚を言い渡さないことができる。
3227
3228
3229 〔設問2〕
3230 XとYは共に乙国人であり,
3231 共に日本に常居所・住所を有していたが,
3232 Yは日本で出会った乙国人
3233 A女と不貞行為に及び,
3234 それがXに知られて,
3235 婚姻関係が破綻し,
3236 XとYは事実上別居し,
3237 YはAと
3238 同居するに至った。
3239
3240 YとAはその後,
3241 共に乙国に帰国してしまい,
3242 現在は乙国に住所を有している(X
3243 は乙国内でのYの住所を知っている。
3244
3245
3246 )
3247 。
3248
3249 他方,
3250 Xは現在も日本に住所を有している。
3251
3252
3253 Xは,
3254 もはやYと離婚するほかないと考え,
3255 日本の裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てた
3256 が,
3257 Yはこれに応じなかった。
3258
3259 そこで,
3260 Xは日本の裁判所にYを被告として,
3261 離婚,
3262 財産分与,
3263
3264 慰謝料を求めて訴訟を提起した。
3265
3266 このうち,
3267 財産分与については,
3268 夫婦の財産の分配と清算につ
3269 いてのみ請求されている。
3270
3271 また,
3272 慰謝料については,
3273 離婚せざるを得なくなったことについての
3274 精神的苦痛とYの不貞行為についての精神的苦痛への賠償の両方を含むものとして請求されてい
3275 る。
3276
3277
3278 〔小問1〕
3279 本件訴訟における上記各請求について,
3280 日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどう
3281 かについて論じなさい(調停事件の国際裁判管轄権について論じる必要はない。
3282
3283 )。
3284
3285
3286 〔小問2〕
3287 仮に上記各請求について日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるものとした場合,
3288 上記
3289 各請求について判断するに当たり適用すべき準拠法の決定について論じなさい。
3290
3291
3292
3293 - 40 -
3294
3295 〔第2問〕(配点:50)
3296 Xは,
3297 建設資材の原材料などを販売する日本の株式会社であり,
3298 日本以外に営業所を有していな
3299 い。
3300
3301 Yは,
3302 建設資材Mの製造・販売を目的とする甲国法人の会社であり,
3303 甲国以外に営業所を有し
3304 ていない。
3305
3306
3307 商品Gは,
3308 通常,
3309 建設資材Mを製造するための原材料として使用されるものであり,
3310 多数の企業
3311 が商品Gを販売している。
3312
3313 各企業が販売している商品Gの強度には若干の相違があるが,
3314 いずれの
3315 商品Gであっても,
3316 建設資材Mの製造を行うことができる。
3317
3318 ただし,
3319 ごく一部の先端的な設備を有
3320 する工場(Yの工場を含む。
3321
3322 )では,
3323 品質の高い建設資材Mを製造しているため,
3324 一定以上の強度を
3325 有する商品Gを使用しなければ建設資材Mの製造を行うことができない。
3326
3327
3328 Yは,
3329 Xが販売する商品Gの価格が比較的低額であったことから,
3330 Xに対して商品Gのサンプル
3331 (=見本)を送付するよう求めた。
3332
3333 Yの求めに応じて,
3334 Xは,
3335 Yに対して,
3336 商品Gのサンプルを送
3337 付した。
3338
3339 Yがサンプルを使用してYの工場で建設資材Mの試験製造を行ったところ,
3340 建設資材Mの
3341 製造を行うことができた。
3342
3343 そこで,
3344 Yは,
3345 Xとの間で,
3346 次のような内容の売買契約(以下「本件契
3347 約」という。
3348
3349 )を締結した。
3350
3351
3352
3353
3354 Xは,
3355 Yに対して,
3356 200トンの商品Gを引き渡すものとする。
3357
3358
3359
3360
3361
3362 商品Gの引渡地は,
3363 甲国のK港とする。
3364
3365
3366
3367
3368
3369 Yは,
3370 Yが商品Gを甲国のK港で受領した日から7営業日以内に,
3371 Xが甲国に開設したX名
3372 義の銀行口座に振り込む方法で,
3373 代金を支払う。
3374
3375
3376
3377
3378
3379 代金は,
3380 1億円(1トン当たり50万円)とする。
3381
3382
3383
3384 本件契約には国際裁判管轄権に関する条項や仲裁条項はなかった。
3385
3386
3387 その後,
3388 Yは,
3389 甲国のK港で商品Gを受領した。
3390
3391 Yが直ちに商品Gを検査したところ,
3392 その商品
3393 Gは,
3394 サンプルと比べて強度が不足しており,
3395 Yの工場では建設資材Mの製造のための原材料とし
3396 て使用できないことが判明した。
3397
3398 そこで,
3399 Yは,
3400 Xに対して,
3401 検査結果を示すとともに受領した商
3402 品Gがサンプルと同等品質のものではなかった旨を通知し,
3403 他社から,
3404 サンプルと同じ強度の商品
3405 Gを200トン,
3406 代金1億6000万円で購入した。
3407
3408 Yは,
3409 この購入代金と本件契約代金との差額
3410 である6000万円の損害を被ったとして,
3411 Xがその損害の賠償を行うべきであると主張し,
3412 本件
3413 契約代金全額の支払を拒んでいる。
3414
3415
3416 なお,
3417 甲国は,
3418
3419 「国際物品売買契約に関する国際連合条約」
3420 (以下「ウィーン売買条約」という。
3421
3422 )
3423 の締約国ではない。
3424
3425
3426 以上の事実を前提として,
3427 以下の設問に答えなさい。
3428
3429 なお,
3430 各問は独立した問いである。
3431
3432
3433 〔設問1〕
3434 Xは,
3435 Yを被告として,
3436 未払代金1億円の支払を求める訴えを日本の裁判所に提起した。
3437
3438 この
3439 訴えについて,
3440 日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさい。
3441
3442
3443 なお,
3444 Yは,
3445 建設資材Mの製造方法に関連した発明について,
3446 甲国のほか日本でも特許権を有
3447 している(そのうち日本で登録されたYの特許権の評価額は,
3448 5000万円である。
3449
3450 )。
3451
3452
3453 〔設問2〕
3454 Yは,
3455 Xを被告として,
3456 Xの契約違反によって被った損害の賠償を求める訴えを日本の裁判所
3457 に提起した。
3458
3459 本件契約には,
3460 「
3461
3462 甲国法を準拠法とする。
3463
3464 」との条項があったとする。
3465
3466
3467
3468 この訴訟において,
3469 X及びYのいずれも,
3470 Yによる損害賠償請求について,
3471 日本の民法の適用
3472 があることを前提にそれぞれの主張を行った。
3473
3474 裁判所は,
3475 この請求について,
3476 日本の民法を適用
3477 して判断することができるかについて論じなさい(ウィーン売買条約の適用について論じる必要
3478 はない。
3479
3480 )。
3481
3482
3483
3484 - 41 -
3485
3486 〔設問3〕
3487 Yは,
3488 Xを被告として,
3489 Xの契約違反によって被った損害の賠償を求める訴えを日本の裁判所
3490 に提起した。
3491
3492 本件契約には,
3493 準拠法が明示的にも黙示的にも定められていなかったとする。
3494
3495
3496 〔小問1〕
3497 この訴訟において,
3498 裁判所は,
3499 Yによる損害賠償請求について,
3500 ウィーン売買条約第1条の
3501 規定に基づき,
3502 ウィーン売買条約を適用することとした。
3503
3504 裁判所の判断の過程を説明しなさい
3505 (ウィーン売買条約第2条から第6条までの規定について論じる必要はない。
3506
3507 )。
3508
3509
3510 〔小問2〕
3511 この訴訟において,
3512 裁判所は,
3513 Yによる損害賠償請求について,
3514 ウィーン売買条約を適用し
3515 た上で,
3516 Xが引き渡した商品Gが契約に適合しておらず,
3517 Xに契約上の義務の不履行があった
3518 ことを理由として,
3519 Yの上記請求を認めた。
3520
3521 裁判所の判断の過程を説明しなさい(ウィーン売
3522 買条約第38条から第40条までの規定及び第74条から第77条までの規定について論じる
3523 必要はない。
3524
3525 )。
3526
3527
3528 なお,
3529 Yは,
3530 Xに対して,
3531 商品Gを先端的な設備を有するYの工場で使用することなどの特
3532 定の目的を一切伝えていなかった。
3533
3534
3535
3536 - 42 -
3537
3538