1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [刑
7
8 法]
9
10 以下の事例に基づき,
11 甲の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。
12
13 )。
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18 甲(28歳,
19 男性,
20 身長165センチメートル,
21 体重60キログラム)は,
22 2年前に養子縁組
23 によって氏を変更し,
24 当該変更後の氏名(以下「変更後の氏名」という。
25
26 )を用いて暴力団X組
27 組員として活動を始めた。
28
29 甲は,
30 自営していた人材派遣業や日常生活においては,
31 専ら当該変更
32 前の氏名(以下「変更前の氏名」という。
33
34 )を用いていた。
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39
40 甲は,
41 X組と抗争中の暴力団Y組の組長乙を襲撃する計画を立てていたところ,
42 乙が,
43 交際中
44 のA宅に足繁く通っているとの情報を入手した。
45
46 甲は,
47 A宅を監視する目的で,
48 A宅の向かい
49 にあるB所有のマンション居室(以下「本件居室」という。
50
51 )を借りるため,
52 某月1日,
53 Bに会
54 い,
55 「部屋を借りたい。
56
57 」と申し込んだ。
58
59 Bは,
60 暴力団員やその関係者とは本件居室の賃貸借契
61 約を締結する意思はなく,
62 準備していた賃貸借契約書にも「賃借人は暴力団員又はその関係者
63 ではなく,
64 本物件を暴力団と関係する活動に使いません。
65
66 賃借人が以上に反した場合,
67 何らの
68 催告も要せずして本契約を解除することに同意します。
69
70 」との条項(以下「本件条項」という。
71
72
73 を設けていた。
74
75 Bは,
76 甲に対し,
77 本件条項の内容を説明した上,
78 身分や資力を証明する書類の
79 提示のほか,
80 家賃の引落しで使用する口座の指定を求めた。
81
82
83 甲は,
84 自己がX組組員であり,
85 A宅を監視する目的で本件居室を使用する予定である旨告げ
86 れば,
87 前記契約の締結ができないと考え,
88 Bに対し,
89 X組組員であることは告げず,
90 その目的
91 を秘しつつ本件居室を人材派遣業の事務所として使用する予定である旨告げた。
92
93 甲は,
94 Bに変
95 更後の氏名を名乗れば,
96 暴力団員であることが発覚する可能性があると考え,
97 Bに対し,
98 変更
99 前の氏名を名乗った上,
100 養子縁組前に取得し,
101 氏名欄に変更前の氏名が記載された正規の有効
102 な自動車運転免許証を示した。
103
104 また,
105 甲は,
106 養子縁組前に開設し,
107 口座名義を変更していない
108 預金口座の通帳に十分な残高が記帳されていたため,
109 Bに対し,
110 同通帳を示し,
111 同口座を家賃
112 の引落しで使用する口座として指定した。
113
114 甲は,
115 同日,
116 前記契約書の賃借人欄に現住所及び変
117 更前の氏名を記入した上,
118 その認印を押し,
119 同契約書をBに渡した。
120
121 Bは,
122 甲が暴力団員やそ
123 の関係者でなく,
124 本件居室を暴力団と関係する活動に使うつもりもない旨誤信し,
125 甲との間で
126 上記契約を締結した。
127
128 この際,
129 甲には家賃等必要な費用を支払う意思も資力もあった。
130
131
132 なお,
133 前記マンションが所在する某県では,
134 暴力団排除の観点から,
135 不動産賃貸借契約には本
136 件条項を設けることが推奨されていた。
137
138 また,
139 実際にも,
140 同県の不動産賃貸借契約においては,
141
142 暴力団員又はその関係者が不動産を賃借して居住することによりその資産価値が低下するのを避
143 けたいとの賃貸人側の意向も踏まえ,
144 本件条項が設けられるのが一般的であった。
145
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148
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150 乙の警護役であるY組組員の丙(20歳,
151 男性,
152 身長180センチメートル,
153 体重85キログ
154 ラム)は,
155 同月9日午前1時頃,
156 A宅前路上に停めた自動車に乗り,
157 A宅にいた乙を待ってい
158 たところ,
159 前記マンション敷地から同路上に出てきた甲を見掛けた。
160
161 その際,
162 丙は,
163 甲のこと
164 を,
165 風貌が甲と酷似する後輩の丁と勘違いし,
166 甲に対し,
167
168 「おい,
169 こんな時間にどこに行くんだ。
170
171
172 と声を掛けた。
173
174 これに対し,
175 甲は,
176 無言で上記路上から立ち去ろうとした。
177
178 これを見た丙は,
179
180 丁に無視されたと思い込み,
181 同車から降りて甲を追い掛け,
182 「無視すんなよ。
183
184 こら。
185
186 」と威圧的
187 に言い,
188 上記路上から約30メートル先の路上において,
189 甲の前に立ち塞がった。
190
191 丙は,
192 その
193 時,
194 甲が丁でないことに気付くとともに,
195 暴力団員風で見慣れない人物であったことから,
196
197 の行動を不審に思い,
198 乙に電話で報告しようと考え,
199 着衣のポケットからスマートフォンを取
200 り出した。
201
202 他方,
203 甲は,
204 丙が取り出したものがスタンガン(高電圧によって相手にショックを
205 与える護身具)であると勘違いし,
206 それまでの丙の態度から,
207 直ちにスタンガンで攻撃され,
208
209 火傷を負わされたり,
210 意識を失わされたりするのではないかと思い込み,
211 同日午前1時3分頃,
212
213
214 - 2 -
215
216 自己の身を守るため,
217 丙に対し,
218 とっさに拳でその顔面を1回殴ったところ,
219 丙は,
220 転倒して
221 路面に頭部を強く打ち付け,
222 急性硬膜下血腫の傷害を負い,
223 そのまま意識を失った。
224
225 なお,
226
227 は,
228 丙の態度を注視していれば,
229 丙が取り出したものがスマートフォンであり,
230 丙が直ちに自
231 己に暴行を加える意思がないことを容易に認識することができた。
232
233
234 甲は,
235 同日午前1時4分頃,
236 丙が身動きせず,
237 意識を失っていることを認識したが,
238 丙に対
239 する怒りから,
240 丙に対し,
241 足でその腹部を3回蹴り,
242 丙に加療約1週間を要する腹部打撲の傷
243 害を負わせた。
244
245
246 丙は,
247 同日午前9時頃,
248 搬送先の病院において,
249 前記急性硬膜下血腫により死亡したが,
250 甲の
251 足蹴り行為により死期が早まることはなかった。
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255 - 3 -
256
257 [刑事訴訟法]
258 次の【事例】を読んで,
259 後記〔設問〕に答えなさい。
260
261
262 【事例】
263 甲は,
264 @「被告人は,
265 令和元年6月1日,
266 H県I市内の自宅において,
267 交際相手の乙に対し,
268
269 その顔面を平手で数回殴るなどの暴行を加え,
270 よって,
271 同人に加療約5日間を要する顔面挫傷等
272 の傷害を負わせたものである。
273
274 」との傷害罪の公訴事実により,
275 同月20日,
276 H地方裁判所に起訴
277 された。
278
279
280 同事件について,
281 同年8月1日,
282 甲に対し,
283 同公訴事実の傷害罪により有罪判決が宣告され,
284
285 同月16日,
286 同判決が確定した。
287
288
289 ところが,
290 前記判決が確定した後,
291 甲が同年5月15日に路上で見ず知らずの通行人丙に傷害
292 を負わせる事件を起こしていたことが判明し,
293 同事件について,
294 甲は,
295 A「被告人は,
296 令和元年
297 5月15日,
298 J県L市内の路上において,
299 丙に対し,
300 その顔面,
301 頭部を拳骨で多数回殴るなどの
302 暴行を加え,
303 よって,
304 同人に加療約6か月間を要する脳挫傷等の傷害を負わせたものである。
305
306 」と
307 の傷害罪の公訴事実により,
308 同年12月20日,
309 J地方裁判所に起訴された。
310
311
312 公判において,
313 甲の弁護人は,
314 「Aの起訴の事件は,
315 既に有罪判決が確定した@の起訴の事件と
316 共に常習傷害罪の包括一罪を構成する。
317
318 よって,
319 免訴の判決を求める。
320
321 」旨の主張をした。
322
323
324 〔設問〕
325 前記の弁護人の主張について,
326 裁判所は,
327 どのように判断すべきか。
328
329
330 仮に,
331 @の起訴が,
332 「被告人は,
333 常習として,
334 令和元年6月1日,
335 H県I市内の自宅において,
336
337 交際相手の乙に対し,
338 その顔面を平手で数回殴るなどの暴行を加え,
339 よって,
340 同人に加療約5日間
341 を要する顔面挫傷等の傷害を負わせたものである。
342
343 」との常習傷害罪の公訴事実で行われ,
344 同公訴
345 事実の常習傷害罪により有罪判決が確定していた場合であればどうか。
346
347
348 (参照条文)
349
350 暴力行為等処罰ニ関スル法律
351
352 第1条ノ3第1項
353
354 常習トシテ刑法第204条,
355 第208条,
356 第222条又ハ第261条ノ罪ヲ犯シ
357
358 タル者人ヲ傷害シタルモノナルトキハ1年以上15年以下ノ懲役ニ処シ其ノ他ノ場合ニ在リテハ3
359 月以上5年以下ノ懲役ニ処ス
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361 - 4 -
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