1 論文式試験問題集[民事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [民事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕,
7 〔設問2〕及び〔設問3〕の配点は,
8 35:25:40〕)
9 次の文章を読んで,
10 後記の〔設問1〕,
11 〔設問2〕及び〔設問3〕に答えなさい。
12
13
14 なお,
15 解答に当たっては,
16 文中において特定されている日時にかかわらず,
17 試験時に施行されて
18 いる法令に基づいて答えなさい。
19
20
21 T
22 【事実】
23 1.令和2年4月10日,
24 Aが所有する工作機械甲が盗まれ,
25 行方不明となった。
26
27
28 2.令和2年4月25日,
29 土木業を営むBは,
30 空き地に放置されている甲を発見し,
31 所有者が廃
32 棄したものだろうと考えて,
33 甲を持ち帰った。
34
35
36 3.令和2年5月1日,
37 Bは,
38 Cとの間で,
39 期間を6か月間として甲を無償で貸す契約を締結し,
40
41 同日,
42 甲をCに引き渡した。
43
44 Cは,
45 その際,
46 【事実】1及び2を知らなかった。
47
48
49 4.令和2年5月15日,
50 Bは,
51 弁済期が到来していたDに対する借入金債務の弁済に代えて,
52
53 甲をCに貸与したままDに譲渡した。
54
55 その際,
56 Bは,
57 Dに「甲は中古機械の販売業者から買っ
58 た。
59
60 」と虚偽の説明をした。
61
62 また,
63 甲に所有者を示すプレート等はなく,
64 他に不審な点もなか
65 ったので,
66 Dは,
67 Bの説明を信じた。
68
69 同日,
70 Bは,
71 Cに対して,
72 甲をDに譲渡したので,
73 以後
74 はDのために占有し,
75 同年11月1日に甲をDに返却するよう指示し,
76 Dは,
77 このような方法
78 によりBから甲の引渡しを受けることを了承した。
79
80
81 5.Aは,
82 Cが甲を使用している事実を知り,
83 令和2年10月15日,
84 Cに対して【事実】1の
85 経緯を説明し,
86 甲の返還を求める(以下「請求1」という。
87
88 )とともに,
89 同年5月1日から甲
90 がAに返還されるまでの間の使用料相当額の支払を求めた(以下「請求2」という。
91
92 )ところ,
93
94 Cは,
95 自分は,
96 甲の所有権を取得したDから甲を借りていると主張して,
97 Aの請求に応じな
98 い。
99
100 これに対して,
101 Aは,
102 BからDへの譲渡後もCが甲を現実に支配する状態に変わりがな
103 い以上,
104 Dは甲の所有権を取得したとはいえず,
105 いずれにせよ【事実】1に照らすと,
106 Cは
107 Aの請求に応じるべきであると反論した。
108
109
110 〔設問1〕
111 【事実】1から5までを前提として,
112 次の問いに答えなさい。
113
114
115 下線部におけるCの主張並びに下線部及びにおけるAの主張の根拠を明らかにし,
116 これら
117 の主張の当否を検討した上で,
118 請求1及び請求2の可否について論じなさい。
119
120 なお,
121 不法行為に基
122 づく構成について検討する必要はない。
123
124
125 U
126
127 【事実】1から5までに加え,
128 以下の【事実】6から14までの経緯があった。
129
130
131
132 【事実】
133 6.Aは,
134 個人で事業を営んでいたところ,
135 従業員の技能の向上のため,
136 毎年11月に実施され
137 る業界の技能検定試験である「○○検定1級」(以下「乙検定」という。
138
139 )に従業員を合格さ
140 せる方針を打ち出した。
141
142 そこで,
143 Aは,
144 乙検定の高い合格実績をうたって通学講座を開設して
145 いるEに対して,
146 Aの従業員専用の出張講座の開設を依頼した。
147
148 A及びEは,
149 令和3年5月1
150 0日,
151 Eが,
152 同年6月から10月までの5か月間,
153 Aの事業所にて出張講座を開設し,
154 週4日,
155
156 授業を行うこと,
157 Aが,
158 月額報酬60万円,
159 及び同年の乙検定の合格者数に応じた成功報酬を
160 支払うことを合意した(以下「契約@」という。
161
162 )。
163
164 なお,
165 月額60万円は,
166 Eの他の出張講
167 座よりも高額であった。
168
169
170 7.Eは,
171 契約@の出張講座(以下「本件講座」という。
172
173 )に専念するため,
174 新たな出張講座の
175 - 2 -
176
177 依頼は受けないこととし,
178 また,
179 通学講座のための代替の講師を手配し,
180 これらをAに伝えた。
181
182
183 8.Aの従業員で,
184 乙検定の合格レベルの技能を有しない30名が本件講座を受講することにな
185 った。
186
187 滑り出しは順調であり,
188 開講から1か月後に実施された模擬試験では,
189 受講生の技能は
190 顕著な伸びを見せた。
191
192
193 9.ところが,
194 Eが本件講座の受講生に求める課題の量が膨大で,
195 受講生の大半が汲々としてお
196 り,
197 引き続き技能を伸ばす受講生が相当数いた反面で,
198 課題の不提出についてEに叱責される
199 などしたため,
200 止めたいと言い出す受講生も現れた。
201
202 令和3年8月6日,
203 Aは,
204 Eに対し善処
205 を求めたが,
206 Eから「こちらはプロなのだから任せてほしい。
207
208 」と言われた。
209
210 Aは,
211 Eの態度
212 に失望し,
213 「このままの状況が続くようであれば同年8月末で本件講座を取りやめることも考
214 える。
215
216 」と伝えた。
217
218
219 10.Eはその指導方法を維持したまま,
220 令和3年8月31日となった。
221
222 この時点で,
223 本件講座に
224 継続して出席している受講生は20名となっていた。
225
226 Aは,
227 同日,
228 Eに対し,
229 契約@を解除す
230 る旨の意思表示をし,
231 これによって本件講座は閉鎖された。
232
233
234 11.Eは,
235 令和3年9月及び10月に【事実】7により手配した講師の報酬として合計40万円
236 を支出した。
237
238 また,
239 Eは,
240 同年10月に別の企業において2週間の出張講座を行い,
241 その報酬
242 として15万円を得た。
243
244
245 12.本件講座の閉鎖後,
246 受講生30名は,
247 全員が,
248 Aから費用の補助を受けて他者の開設する通
249 学講座を受講して,
250 令和3年11月,
251 乙検定を受験し,
252 その6割である18名が合格した。
253
254
255 検定の当年の全体の合格率は4割であり,
256 Eの通学講座の受講生の合格率は6割程度であった。
257
258
259 13.Aは,
260 令和3年8月分以降の月額報酬等の支払をしていない。
261
262
263 14.Eは,
264 令和3年12月,
265 Aに対し,
266 同年8月分の月額報酬60万円の支払を求める(以下
267 「請求3」という。
268
269 )とともに,
270 同年9月及び10月に関する損害賠償金120万円(【事
271 実】11で支出した40万円を含む。
272
273 )の支払を求め(以下「請求4」という。
274
275 ),
276 更に,
277 乙検
278 定の合格者数に応じた成功報酬の支払も求めた。
279
280
281 これに対し,
282 Aは,
283 【事実】9及び10の経緯などを指摘して支払を拒絶した。
284
285
286 〔設問2〕
287 【事実】6から14までを前提として,
288 次の及びの問いに答えなさい。
289
290
291
292
293 契約@によるEの債務の内容及び契約@の性質を,
294 理由を示して明らかにしなさい。
295
296
297
298
299
300 における契約@の性質を踏まえて,
301 請求3及び請求4の可否について,
302 Aの反論を考慮しつ
303 つ,
304 論じなさい。
305
306
307
308 V
309
310 【事実】1から14までに加え,
311 以下の【事実】15から21までの経緯があった。
312
313
314
315 【事実】
316 15.Aには,
317 子F及びGがいた。
318
319 Fは,
320 長らくAとの交流を断っていた。
321
322
323 16.令和4年3月,
324 Aは,
325 難病を発症した妻の治療費を捻出するため,
326 友人であるHに500万
327 円の借入れを懇請したところ,
328 Hは,
329 Gが連帯保証をすることを条件にこれに応じた。
330
331 同年4
332 月1日,
333 Hは,
334 Aとの間で,
335 弁済期を令和10年4月1日としてAに500万円を貸し付ける
336 旨の契約(以下「契約A」という。
337
338 )を,
339 またGとの間で,
340 契約Aに基づくAの借入金債務
341 (以下「本件債務」という。
342
343 )につきGが連帯保証をする旨の契約を,
344 それぞれ書面により締
345 結し,
346 令和4年4月2日,
347 契約Aに基づき500万円をAに交付した。
348
349
350 17.Aは,
351 更なる治療費の支出に備えて,
352 令和4年8月9日,
353 Hに対して自己所有の絵画丙を1
354 00万円で買い取ってほしいと頼んだ。
355
356
357 18.令和4年8月15日,
358 HとAとの間で,
359 Hが同月31日までに代金100万円を支払うこと
360 等を内容とする丙の売買契約が締結され,
361 丙がAからHに引き渡された。
362
363
364 - 3 -
365
366 19.一方,
367 【事実】17からAの資力に不安を感じたHは,
368 Gに対して,
369 本件債務について連帯保
370 証人をもう一人増やしてほしいと告げた。
371
372 そこで,
373 GがFに依頼した結果,
374 令和4年8月22
375 日,
376 FとHとの間で,
377 Aに知らせないまま,
378 本件債務をFが連帯保証する旨の契約(以下「契
379 約B」という。
380
381 )が書面により締結された。
382
383 なお,
384 FG間の内部的負担割合に関する合意はな
385 い。
386
387
388 20.令和10年6月20日,
389 Aは,
390 Hに対して本件債務の弁済の猶予を求める書面を送付したが,
391
392 Fはこの事実を知らなかった。
393
394
395 21.令和15年5月10日,
396 Hは,
397 契約Bに基づき,
398 Fに対して500万円の支払を求めた(以
399 下「請求5」という。
400
401 )。
402
403
404 〔設問3〕
405 【事実】15から21までを前提として,
406 次の及びの問いに答えなさい。
407
408
409
410
411 Hは丙の売買代金を全くAに支払っていないものとする。
412
413 この場合,
414 Fは,
415 令和15年5月1
416 1日の時点で,
417 Hに対して500万円全額又は丙の売買代金100万円分につき支払を拒むこと
418 ができるか。
419
420
421
422
423
424 Hは丙の売買代金全額を期日までにAに支払っていたとする。
425
426 令和15年5月11日,
427 請求5
428 につきFとHが話し合い,
429 FがHに300万円を支払い,
430 Hはその余の支払を免除した。
431
432 この場
433 合,
434 Fは,
435 A及びGに対して各々求償をすることができるか。
436
437 また,
438 求償をすることができると
439 すれば,
440 その額は各々いくらか。
441
442
443
444 - 4 -
445
446 論文式試験問題集[民事系科目第2問]
447
448 - 1 -
449
450 [民事系科目]
451 〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,
452 35:25:40〕)
453 次の文章を読んで,
454 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
455
456
457 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
458
459 )は,
460 和食器の製造・販売を業とする株式会社であり,
461
462 締役会及び監査役を置いているが,
463 会社法上の公開会社ではなく,
464 平成28年3月31日現在,
465
466 資本金は1億円,
467 負債額は2億円,
468 総資産額は10億円,
469 当該事業年度の経常利益は2000万
470 円であった。
471
472 甲社の取締役は,
473 Aほか3名であり,
474 Aが代表取締役を務めている。
475
476
477 甲社の和食器は,
478 伝統美の中に現代的なテイストを取り入れる点が評価され,
479 人気が高まって
480 いたが,
481 甲社は,
482 厳格な品質管理体制を有し,
483 信頼できる代理店のみを通じて販売する方針を堅
484 持していた。
485
486
487 2.高級食器の販売を業とする乙株式会社(取締役会を設置しておらず,
488 株主はBのみである。
489
490
491 下「乙社」という。
492
493 )の代表取締役Bは,
494 Aに対し,
495 甲社の和食器を販売させてほしいと再三申
496 し入れていたが,
497 断られていた。
498
499
500 3.Aは,
501 平成28年5月頃,
502 Bに対し,
503 「私個人でレストランを開業するので,
504 下見に同行して
505 ほしい。
506
507 」と頼んだ。
508
509 Aは,
510 同行したBに対し,
511 「レストランでは甲社の和食器を利用するので,
512
513 気に入った客が乙社を通じて購入できるようにするのはどうか。
514
515 」と持ち掛けるとともに,
516 「こ
517 の計画の実現には5000万円資金が足りない。
518
519 」と漏らした。
520
521 Bは,
522 これを機に甲社との取引
523 関係を深めようと思い,
524 前記1の事項を含む甲社の財務状況の概要をAに確認した上で,
525 乙社と
526 してAに5000万円を融資することとし,
527 Aに対し,
528 「我が社にお任せください。
529
530 ただ,
531 個人
532 に事業上の融資をした実績がないので,
533 甲社の連帯保証を付けてください。
534
535 」と述べたところ,
536
537 Aは,
538 「分かった。
539
540 」と答えた。
541
542 Bは,
543 後日,
544 Aに対し,
545 「連帯保証についての甲社の取締役会
546 の議事録の写しをもらえれば,
547 すぐに融資できます。
548
549 」と述べた。
550
551
552 4.このレストラン業は,
553 Aが甲社の事業として提案したところ,
554 採算がとれる見通しがないこと
555 を理由に他の取締役らに反対されたものであった。
556
557 このような経緯から,
558 Aは,
559 甲社が連帯保証
560 することについて,
561 他の取締役らの賛成を得ることはできないと考え,
562 取締役会の議事録の写し
563 ではなく,
564 甲社代表取締役A名義でAの乙社に対する債務を連帯保証することについて取締役会
565 の承認がある旨の確認書(以下「本件確認書」という。
566
567 )を作成し,
568 これをBに交付することと
569 した。
570
571
572 5.Aは,
573 平成28年5月25日,
574 Bに対し,
575 「社内規定により,
576 取締役会の議事録は金融機関以
577 外の第三者には公開していない。
578
579 他の取引先にも取締役会の議事録を見せたことはない。
580
581 」と述
582 べて,
583 本件確認書を交付した。
584
585 しかし,
586 Aの言う社内規定は存在しなかった。
587
588 Bは,
589 Aが知名度
590 の高い甲社の評判を傷つけるようなことはしないであろうし,
591 甲社の和食器を取り扱うことによ
592 る利益が期待できる一方で,
593 自分のような小さな会社の経営者がAに取締役会の議事録の写しを
594 強く求めれば,
595 Aの機嫌を損ねて取引の機会を失ってしまうなどと考え,
596 これ以上の確認をせず,
597
598 乙社内で必要な手続を経た。
599
600
601 6.Aは,
602 平成28年6月1日,
603 乙社から5000万円を借り受ける旨の金銭消費貸借契約(利息
604 は,
605 年1%として1年ごとに後払いとするものとされ,
606 最後の利息と元本の返済期日は,
607 平成3
608 1年(令和元年)9月30日とされた。
609
610 )を締結するとともに,
611 甲社取締役会の承認を受けない
612 まま,
613 甲社を代表して,
614 書面により,
615 乙社との間でAの乙社に対する前記金銭消費貸借契約に基
616 づく債務を連帯して保証する旨の合意をした(以下「本件連帯保証契約」という。
617
618 )。
619
620 なお,
621
622 から甲社に対して本件連帯保証契約に係る保証料は支払われていない。
623
624
625 7.Aは,
626 乙社に対し,
627 1年目の利息は支払ったものの,
628 その後の支払を怠り,
629 返済期日に元本の
630 返済もしなかった。
631
632 そこで,
633 乙社は,
634 令和元年10月頃,
635 甲社に対し,
636 本件連帯保証契約に基づ
637 - 2 -
638
639 く保証債務の履行を請求したが,
640 これにより,
641 本件連帯保証契約の存在を甲社の他の取締役らが
642 知ることとなった。
643
644
645 〔設問1〕
646
647 乙社からの本件連帯保証契約に基づく保証債務の履行の請求を拒むために甲社の立場
648
649 において考えられる主張及びその主張の当否について,
650 論じなさい。
651
652
653 8.甲社の設立当時の株主名簿上の株主及びその保有株式数は,
654 Aの父親であるCが10万株,
655
656 の祖母でありCの母親でもあるDが20万株,
657 甲社の仕入先であり創業資金を出資した丙株式会
658 社(以下「丙社」という。
659
660 )が10万株であった。
661
662 甲社では,
663 平成24年6月開催の定時株主総
664 会の決議を経て新たに10万株(以下「本件株式」という。
665
666 )が発行され,
667 本件株式の株主名簿
668 上の株主はAであった。
669
670 なお,
671 甲社は,
672 株券発行会社でも種類株式発行会社でもない。
673
674
675 9.本件株式が発行された経緯は,
676 次のとおりであった。
677
678 すなわち,
679 Aは,
680 平成24年3月頃,
681
682 社の代表取締役であったCの要請に従い,
683 家業である甲社を継ぐため,
684 大学卒業後に就職した会
685 社を辞めて実家に戻ることとした。
686
687 Cは,
688 実家に戻ったAに対し,
689 次の株主総会でAを甲社の取
690 締役に就任させる予定である旨を伝え,
691 「いずれ社長になる身として,
692 従業員や取引先の手前,
693
694 多少の株を持っておく必要がある。
695
696 金のことは心配しなくていい。
697
698 」と述べたが,
699 それ以上のや
700 り取りはされなかった。
701
702 そして,
703 前記8の定時株主総会において,
704 Aを取締役に選任するととも
705 に,
706 本件株式をAに発行する旨の決議がされたが,
707 本件株式の発行に必要な事務手続は,
708 Cの指
709 示に基づいて,
710 甲社の総務部が進め,
711 株式の申込みに必要な書面等におけるAの記名押印もAが
712 甲社に預けていた印章を用いて総務部が行った。
713
714 また,
715 払込金額である2000万円は,
716 全てC
717 の貯金によって賄われた。
718
719
720 10.本件株式に係る剰余金配当は,
721 C名義の株式に係る分と併せてC名義の銀行口座に振り込まれ
722 ており,
723 これらの剰余金配当についてはCの所得としてCのみが確定申告をしていた。
724
725 A及びC
726 宛ての株主総会の招集通知等は,
727 Cの指示により,
728 いずれも甲社の総務部に留め置かれ,
729 本件株
730 式に係る株主総会の議決権についても,
731 甲社の総務部が,
732 C名義の株式に係る議決権と併せて,
733
734 会社提案に賛成するものとして事務処理がされた。
735
736 Cは,
737 平成27年6月に取締役を退任し,
738
739 後は,
740 Aが代表取締役の地位にあったが,
741 前記のような事務処理は継続された。
742
743
744 11.Cは,
745 令和元年10月頃,
746 本件連帯保証契約の件を耳にし,
747 甲社の将来を憂慮するようになり,
748
749 Aに対し,
750 「君は,
751 しばらく代表取締役を降りたほうがよい。
752
753 次の定時株主総会で私が再び取締
754 役に戻り,
755 代表取締役として甲社の経営を仕切り直すから,
756 そのように株主総会の準備を進めな
757 さい。
758
759 」と伝えたが,
760 Aは,
761 これに応じなかった。
762
763 そこで,
764 Cは,
765 Aに対し,
766 本件株式の株主の
767 地位はCに帰属するものであると主張したが,
768 Aは,
769 本件株式の株主の地位はAに帰属すると主
770 張して譲らなかった。
771
772
773 〔設問2〕
774
775 CがAに対して本件株式に係る株主の地位の確認を求める訴えを提起した場合に,
776
777
778 の立場において考えられる主張及びその主張の当否について,
779 論じなさい。
780
781
782 12.AとCは,
783 令和元年12月頃,
784 @AがCに対して一定額の解決金を支払うこと,
785 A本件株式は
786 Aに帰属することを確認することを内容とする和解契約を締結したが,
787 甲社の経営をめぐる意見
788 の対立は続いていた。
789
790 この和解契約により,
791 甲社の株主構成は,
792 Aが10万株,
793 Cが10万株,
794
795 Dが20万株,
796 丙社が10万株となった。
797
798
799 13.甲社においては,
800 令和2年6月,
801 Aの取締役としての任期満了に伴う取締役1名選任の件を議
802 題とし(他の取締役の任期は満了していない。
803
804 ),
805 Aを取締役に選任することを議案(以下「本
806 件選任議案」という。
807
808 )とする定時株主総会(以下「本件株主総会」という。
809
810 )を招集すること
811 が取締役会において決定され,
812 必要事項が記載された書面にて各株主に通知された。
813
814 なお,
815 甲社
816 - 3 -
817
818 の定款には「株主は,
819 当会社の議決権を行使することができる他の株主1名を代理人として,
820
821 の議決権を行使することができる。
822
823 」旨の定めがある。
824
825
826 14.丙社(公開会社である取締役会設置会社であり,
827 多数の株主が存在する。
828
829 )の内規においては,
830
831 総資産に占める帳簿価格の割合が1%未満である政策保有株式の議決権行使は,
832 総務担当の代表
833 取締役専務に委ねられていた。
834
835 丙社の甲社への売上げが丙社の総売上げに占める割合は0.3%
836 程度であり,
837 丙社が保有する甲社株式の帳簿価額が丙社の総資産に占める割合は0.1%程度で
838 あった。
839
840 本件株主総会の招集通知には,
841 例年と同様,
842 本件株主総会における議決権の行使その他
843 一切の事項について甲社代表取締役に委任する旨の包括委任状用紙が同封されていた。
844
845 そこで,
846
847 丙社の総務担当の代表取締役専務であるEは,
848 例年と同様,
849 前記包括委任状用紙に必要事項を記
850 載し,
851 甲社に送った。
852
853
854 15.前記14の丙社の内規を知らないCは,
855 この機会にAを甲社の経営から排除しようと考え,
856 丙社
857 の営業担当の代表取締役副社長であり,
858 大学の同窓生であるFに相談し,
859 本件株主総会において,
860
861 Cを取締役に選任する旨の修正動議を提出してこれに賛成することを示し合わせた。
862
863 Fは,
864 Eが
865 いつものように包括委任状を提出していることを知りながら,
866 本件株主総会に出席することをC
867 に約束した。
868
869
870 16.Dは,
871 甲社の定時株主総会に毎年出席していたが,
872 AとCがもめていることを知り,
873 一方にの
874 み肩入れすることを避けるため,
875 弁護士G(甲社の株主ではない。
876
877 )に代わりに出席してもらう
878 こととし,
879 本件株主総会における議決権の行使その他一切の事項についてGに委任する旨の委任
880 状を作成し,
881 Gに交付した。
882
883
884 17.FとGは,
885 本件株主総会の当日,
886 受付担当者に対し,
887 議場への入場を求めたところ,
888 受付担当
889 者は,
890 株主名簿の記載,
891 Fの名刺及び前記16のDのGに対する委任状を確認し,
892 FとGを議場へ
893 案内した。
894
895 その後,
896 A及びCが議場に入り,
897 Aが議事を進めようとしたところ,
898 Cは,
899 「Aは,
900
901 本件連帯保証契約について説明を果たす立場にもあるから,
902 私が議長を務める。
903
904 」との動議を提
905 出した。
906
907 Aは,
908 本件連帯保証契約の件もあることから,
909 ひとまず父親の顔を立てようと考え,
910
911 議に賛成し,
912 ほかに異論もなく,
913 Cが議長となった。
914
915
916 18.議長となったCは,
917 「Gには出席資格がない。
918
919 」と述べるとともに,
920 「Fには丙社代表者とし
921 ての出席を認めます。
922
923 」と述べた。
924
925 これらに対し,
926 AとGが異論を唱えたが,
927 Cが取り合わなか
928 ったため,
929 Gは,
930 仕方なく退場した。
931
932 Cが議事を進めると,
933 Fは,
934 本件選任議案に対する修正動
935 議として,
936 Cを取締役に選任する旨の議案(以下「本件修正議案」という。
937
938 )を提出した。
939
940 これ
941 を受けて,
942 Cは,
943 「取締役1名の選任が議題となっているので,
944 候補者ごとに採決をするのでは
945 なく,
946 取締役として選任すべき者としてAとCのいずれかの氏名を記載するという方法で採決を
947 することとしたい。
948
949 」と提案したところ,
950 誰も異論を唱えなかった。
951
952 そこで,
953 Cがあらかじめ用
954 意した投票用紙と投票箱により投票が実施された。
955
956
957 各株主の議決権の行使状況は,
958 次のとおりであった。
959
960 すなわち,
961 Aは,
962 Aの議決権についてA
963 を取締役に選任すべき旨の投票をするとともに,
964 丙社の代理人として丙社の議決権についてAを
965 取締役に選任すべき旨の投票をした(下表の「Aによる投票」欄参照。
966
967 )。
968
969 Cは,
970 Cの議決権に
971 ついてCを取締役に選任すべき旨の投票をした。
972
973 Gは,
974 退場したため,
975 Dの代理人としてDの議
976 決権について投票することはできなかった。
977
978 Fは,
979 丙社の代表取締役副社長として丙社の議決権
980 についてCを取締役に選任すべき旨の投票をした(下表の「Fによる投票」欄参照。
981
982 )。
983
984
985 株主の氏名又は名称
986
987
988
989
990
991
992
993 丙社
994
995 議決権の数(万個)
996
997 10
998
999 10
1000
1001 20
1002
1003 10
1004
1005 取締役として選任すべき
1006
1007
1008
1009
1010
1011 者として記載した氏名
1012
1013 - 4 -
1014
1015 Aによる投票
1016
1017 Fによる投票
1018
1019
1020
1021
1022
1023 19.投票用紙の集計後,
1024 Cは,
1025 丙社の議決権の行使については,
1026 Fによる投票が有効であり,
1027 Aに
1028 よる投票が無効であることを前提に,
1029 Cが取締役として選任された旨を宣言して(以下「本件決
1030 議」という。
1031
1032 ),
1033 本件株主総会を閉会した。
1034
1035
1036 20.Fが,
1037 丙社の代表者として,
1038 本件株主総会に出席した上で本件修正議案を提出して議決権を行
1039 使したことは,
1040 独断によるものであった。
1041
1042 また,
1043 AもCも,
1044 前記14の内規の存在を知らなかった。
1045
1046
1047 〔設問3〕
1048
1049 Aは,
1050 令和2年7月,
1051 本件株式の株主として本件決議の取消しを求める訴えを提起し
1052
1053 たいと考えているが,
1054 本件決議の効力を争うためにAの立場において考えられる主張及びその主
1055 張の当否について,
1056 論じなさい。
1057
1058
1059
1060 - 5 -
1061
1062 論文式試験問題集[民事系科目第3問]
1063
1064 - 1 -
1065
1066 [民事系科目]
1067 〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,
1068 40:20:40])
1069 次の文章を読んで,
1070 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
1071
1072
1073 なお,
1074 解答に当たっては,
1075 文中において特定されている日時にかかわらず,
1076 試験時に施行されて
1077 いる法令に基づいて答えなさい。
1078
1079
1080 【事
1081
1082 例】
1083 AとBは,
1084 Aを貸主,
1085 Bを借主として,
1086 Aの所有する土地(以下「本件土地」という。
1087
1088 )につ
1089 いて,
1090 期間を30年,
1091 賃料を1か月30万円,
1092 目的を建物所有とする賃貸借契約(以下「本件契
1093 約」という。
1094
1095 なお,
1096 本件契約は,
1097 事業用定期借地権を設定するものではない。
1098
1099 )を締結した。
1100
1101
1102 Bは,
1103 本件土地上に,
1104 レストラン経営のための店舗建物(以下「本件建物」という。
1105
1106 )を建築
1107 し,
1108 本件建物でレストラン(以下「本件レストラン」という。
1109
1110 )を経営してきた。
1111
1112 Bが本件契約
1113 の締結から20年後に死亡すると,
1114 その子であるYが相続により本件土地の賃借人としての地位
1115 を承継し,
1116 本件レストランの経営を引き継いだ。
1117
1118 また,
1119 Bの死亡と同じ時期に,
1120 AがXに本件土
1121 地を譲渡したことから,
1122 Xが本件土地の賃貸人としての地位を承継した。
1123
1124
1125 Yは,
1126 本件契約の期間満了の3か月前に,
1127 Xと面談し,
1128 本件契約が期間満了後も更新されるこ
1129 との確認を求めたが,
1130 Xは,
1131 その場で,
1132 以下のように主張しつつ,
1133 本件契約の更新を拒絶した。
1134
1135
1136
1137 1.Xの息子Cは,
1138 歯科医であり,
1139 開業を予定している。
1140
1141 本件土地は,
1142 Cが歯科医院を営むのに最
1143 適の立地条件であることから,
1144 本件土地上に歯科医院用の建物を建築することを計画している。
1145
1146
1147 2.XはYに対して立退料として1000万円程度を支払う用意がある。
1148
1149
1150 XY間での交渉はまとまらず,
1151 Xは,
1152 本件契約の期間満了の直後,
1153 本件契約の終了に基づき,
1154
1155 「Yは,
1156 Xから1000万円の支払を受けるのと引換えに,
1157 Xに対し,
1158 本件建物を収去して本件
1159 土地を明け渡せ。
1160
1161 」との判決を求めて,
1162 訴え(この訴えに係る訴訟を,
1163 以下「本件訴訟」とい
1164 う。
1165
1166 )を提起した。
1167
1168
1169 本件訴訟の第1回口頭弁論期日においては,
1170 XとYの双方が出頭し,
1171 Xが前記1と2記載の主
1172 張をしたのに対して,
1173 Yは,
1174 本件レストランの経営継続を予定しているところ,
1175 離れた地に移転
1176 してしまうと経営が成り立たず,
1177 近隣において適当な土地を取得することは困難である旨及びX
1178 から申出があった程度の立退料では本件レストランの収入喪失まで補償するには全く不十分であ
1179 る旨を主張した。
1180
1181
1182 また,
1183 この期日において,
1184 裁判官Jは,
1185 訴状の請求の趣旨には,
1186 「1000万円の支払を受け
1187 るのと引換えに」と記載してあるが,
1188 他方で,
1189 Xが1000万円程度を支払う用意がある旨を申
1190 し出た旨を主張していることから,
1191 1000万円という額にどの程度のこだわりがあるかという
1192 点についてXに釈明を求めた。
1193
1194 これに対して,
1195 Xは,
1196 「1000万円という額に強いこだわりは
1197 ありません。
1198
1199 この額は,
1200 早期解決の趣旨で若干多めに提示したものですので,
1201 早期解決の目がな
1202 くなった以上,
1203 より少ない額が適切であると思っておりますが,
1204 本件土地を明け渡してもらうの
1205 が一番大事ですから,
1206 裁判所がより多額の立退料の支払が必要であると考えるならば,
1207 検討する
1208 用意があります。
1209
1210 」と陳述し,
1211 その要旨は口頭弁論調書にも記載された。
1212
1213
1214 以下は,
1215 裁判官Jと司法修習生Pとの間の会話である。
1216
1217
1218 J:Xは,
1219 立退料の支払を申し出ていますね。
1220
1221 立退料は,
1222 借地借家法第6条の正当事由の有無を判
1223 断する上で,
1224 どのような役割を担うのでしょうか。
1225
1226
1227 P:借家に関してですが,
1228 判例は,
1229 立退料は他の諸般の事情と総合考慮され,
1230 相互に補充しあって
1231 - 2 -
1232
1233 正当事由の判断の基礎となるものであるとしています(最高裁判所昭和46年11月25日第一
1234 小法廷判決・民集25巻8号1343頁。
1235
1236 以下「最判昭和46年」という。
1237
1238 )。
1239
1240
1241 J:そうすると,
1242 裁判所が正当事由を認める上で必要と考える立退料額がXの申出額よりも多額で
1243 ある場合は,
1244 どういう判決をすることになりますか。
1245
1246
1247 P:最判昭和46年は,
1248 原告は「立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の
1249 範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し,
1250 かつその支払と引き換えに(中略)
1251 店舗の明渡を求めている」と述べた上で,
1252 申出額よりも多額である500万円の支払との引換給
1253 付判決をした原判決を是認しています。
1254
1255 本件でも,
1256 Xの第1回口頭弁論期日における陳述の内容
1257 から見て,
1258 Xの申出額と格段の相違のない範囲内で増額した立退料の支払との引換給付判決は許
1259 容されそうです。
1260
1261
1262 J:それはそうでしょうね。
1263
1264 それでは,
1265 申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の
1266 支払との引換給付判決はどうでしょうか。
1267
1268
1269 P:最判昭和46年に照らすと難しいと思います。
1270
1271
1272 J:そう結論を急がないでください。
1273
1274 最判昭和46年は,
1275 格段の相違のない範囲を超えて増額した
1276 立退料の支払との引換給付判決の許否について直接判断したものではありません。
1277
1278 また,
1279 格段の
1280 相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決を拒否するというのがXの意思
1281 であるとは直ちにはいえないように思います。
1282
1283
1284 P:確かにそうですね。
1285
1286
1287 J:それでは,
1288 引換給付判決をすることができないとすると,
1289 その場合にすべきことになる判決は
1290 どのようなものとなるのかを示し,
1291 その判決を,
1292 Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増
1293 額した立退料の支払との引換給付判決と対比した上で,
1294 後者のような引換給付判決をすることの
1295 許否を検討してください。
1296
1297 これを「課題1」とします。
1298
1299
1300 ところで,
1301 裁判所が正当事由を認める上で必要と考える立退料額がXの申出額よりも少ないと
1302 いうことも考えられます。
1303
1304 この場合には,
1305 Xの申出額よりも少額の立退料の支払との引換給付判
1306 決をすることはできるのでしょうか。
1307
1308
1309 P:それは,
1310 Xが求めている判決よりも有利な判決をXに与えることになりそうでやや違和感があ
1311 ります。
1312
1313 しかし,
1314 口頭弁論調書を見ると,
1315 Xはより少ない額が適切であるとも陳述していますね。
1316
1317
1318 J:こちらも額によるかもしれないですね。
1319
1320 それでは,
1321 第1回口頭弁論期日におけるXの陳述の内
1322 容にも留意しつつ,
1323 Xの申出額よりも少額の立退料の支払との引換給付判決をすることは許容さ
1324 れるかという点も検討してください。
1325
1326 これを「課題2」とします。
1327
1328
1329 なお,
1330 「課題1」及び「課題2」を検討するに当たっては,
1331 どのような事実を判決の基礎にす
1332 ることができるかという問題と借地借家法第6条に関する実体法上の解釈問題に言及する必要は
1333 ありません。
1334
1335
1336 〔設問1〕
1337 あなたが司法修習生Pであるとして,
1338 Jから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。
1339
1340
1341 【事
1342
1343 例(続き)】
1344 本件訴訟が第一審に係属中,
1345 弁護士に頼らず自ら訴訟を追行してきたYは,
1346 心労もあって健康
1347 を害し,
1348 以前から本件レストランの経営を手伝っていたZにレストラン経営を任せることとした。
1349
1350
1351 そこで,
1352 Yは,
1353 Zに本件建物を賃貸し,
1354 これに基づき本件建物を引き渡した。
1355
1356
1357 Xは,
1358 前記の事実を直ちに察知し,
1359 Zを本件建物から立ち退かせなければ,
1360 目的は達成するこ
1361 とができないと考え,
1362 Zに対する建物退去土地明渡請求を定立しつつ,
1363 Zが本件訴訟の係属中に
1364 Yから本件建物を賃借し,
1365 これに基づき本件建物の引渡しを受けたことを理由としてZを引受人
1366 とする訴訟引受けの申立てをした。
1367
1368
1369 - 3 -
1370
1371 以下は,
1372 裁判官Jと司法修習生Pとの間の会話である。
1373
1374
1375 J:本件で,
1376 民事訴訟法第50条の承継は認められるのでしょうか。
1377
1378
1379 P:同条の「訴訟の目的である義務」という文言を素直に捉えて,
1380 同条にいう承継とは訴訟物であ
1381 る義務の承継を指すと理解するのであれば,
1382 Zがこのような義務をYから承継したというのは難
1383 しいと思います。
1384
1385
1386 J:しかし,
1387 そのような承継の理解は狭すぎるように思います。
1388
1389 そこで,
1390 そのような理解を離れた
1391 上で,
1392 訴訟承継制度の趣旨を踏まえて,
1393 同条の承継の意味内容を具体的に明らかにし,
1394 Zが同条
1395 にいう承継をしたといえるか否か検討してください。
1396
1397 これを「課題」とします。
1398
1399
1400 なお,
1401 検討に際しては,
1402 XのYに対する訴えの訴訟物は,
1403 賃貸借契約の終了に基づく目的物返
1404 還請求権としての建物収去土地明渡請求権であることを前提にしてください。
1405
1406
1407 〔設問2〕
1408 あなたが司法修習生Pであるとして,
1409 Jから与えられた課題について答えなさい。
1410
1411
1412 【事
1413
1414 例(続き)】
1415 本件訴訟では,
1416 弁論準備手続における争点及び証拠の整理が完了したことから弁論準備手続が
1417 終結となり,
1418 Cの証人尋問並びにX及びYの当事者尋問が実施され,
1419 口頭弁論の終結が予定され
1420 た口頭弁論期日(以下「最終期日」という。
1421
1422 )の指定がされた。
1423
1424 本件建物がYからZに対して賃
1425 貸され,
1426 引き渡されたのは,
1427 最終期日の指定がされた直後であり,
1428 Xの訴訟引受けの申立ては,
1429
1430 最終期日前に認められることとなった。
1431
1432
1433 本件訴訟に従前関わっていないZは,
1434 弁護士に頼らずに訴訟を追行するのは難しいと考え,
1435
1436 ちに弁護士Lに訴訟委任をした。
1437
1438 Lは,
1439 正当事由の判断の基準時が本件契約の期間満了時である
1440 としても,
1441 Yが本件レストランの経営から退いたことが,
1442 Yの従前の主張に関して不利にしんし
1443 ゃくされることもあり得ることから,
1444 更新拒絶に正当事由があると評価されるのを妨げる事実を
1445 追加して主張するのが適切であろうと考えた。
1446
1447
1448 そこで,
1449 Lが改めて本件レストラン経営に係る資料を調査すると,
1450 B名義の預金通帳(以下
1451 「本件通帳」という。
1452
1453 )に,
1454 本件契約締結の際にBがAの預金口座に対して1500万円を振り
1455 込んだ旨の記帳がされていることを発見した。
1456
1457 LがYに対してこれについて質問をすると,
1458 「B
1459 から,
1460 亡くなる直前に,
1461 本件契約の際に権利金としてAの口座にかなりの額を振り込んだ,
1462 本件
1463 土地の更新時にもめるといけないから,
1464 本件通帳はきちんと保管しておくように,
1465 と伝えられて
1466 いました。
1467
1468 言われたとおり,
1469 本件通帳は本件契約の契約書と共に厳重に保管し,
1470 本件訴訟の前に
1471 も本件通帳の中身を見てBからAへの振込みも把握していましたが,
1472 本件訴訟においてそれほど
1473 重要なものとは思っていませんでした。
1474
1475 」との回答を得た。
1476
1477 その後,
1478 Lは,
1479 近隣の土地の相場や
1480 賃料相場を調査した結果,
1481 BからAに支払われた権利金は,
1482 賃料の前払の性質だけではなく,
1483
1484 新料の前払の性質も含むものであったと思うに至った。
1485
1486
1487 以下は,
1488 弁護士Lと司法修習生Qとの間の会話である。
1489
1490
1491
1492 L:最終期日には,
1493 BからAに対して更新料の前払の性質も含む権利金が支払われていた旨の新主
1494 張(以下「本件新主張」という。
1495
1496 )をするとともに,
1497 この事実を立証するために本件通帳につい
1498 ての書証の申出とAの証人尋問の申出をしようと思います。
1499
1500 ただ,
1501 最終期日にAの証人尋問を実
1502 施するというのは無理がありますから,
1503 改めて期日を指定してもらうことになります。
1504
1505
1506 Q:Xは,
1507 これらの攻撃防御方法の提出は,
1508 時機に後れた攻撃防御方法であるとして,
1509 却下決定を
1510 申し立ててくるのではないでしょうか。
1511
1512
1513 L:その可能性は十分にあります。
1514
1515 そこで,
1516 差し当たり本件新主張が却下されるか否かについて考
1517 - 4 -
1518
1519 えてほしいのです。
1520
1521 Xは,
1522 @Y自身が最終期日に本件新主張をしたとしたら,
1523 時機に後れたもの
1524 として却下されるべきである,
1525 Aそうである以上,
1526 Zによる本件新主張も却下されるべきである,
1527
1528 と主張してくると思います。
1529
1530 まず,
1531 Xの立場から,
1532 @について,
1533 その結論を得るための理由を説
1534 明してください。
1535
1536 また,
1537 その際には,
1538 以後予想されるXとY双方の主張立証活動と,
1539 却下決定を
1540 得るのを容易にするためにXがYに対してすることができる訴訟法上の行為にも言及してくださ
1541 い。
1542
1543 これを「課題1」とします。
1544
1545
1546 その上で,
1547 Xの立場からAについてZによる本件新主張は却下されるべきであるという立論を
1548 して,
1549 さらに,
1550 Zの立場からこれに対する反論をしてください。
1551
1552 これを「課題2」とします。
1553
1554
1555 「課題2」の検討に当たっては,
1556 Y自身が本件新主張をしたとしたら,
1557 時機に後れたものとし
1558 て却下されるということを前提としてください。
1559
1560
1561 〔設問3〕
1562 あなたが司法修習生Qであるとして,
1563 Lから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。
1564
1565
1566
1567 - 5 -
1568
1569