1 論文式試験問題集[刑事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 以下の【事例1】及び【事例2】を読んで,
8 後記〔設問1〕及び〔設問2〕について,
9 答えなさ
10 い。
11
12
13 【事例1】
14 1
15
16 甲及びその後輩の乙は,
17 それぞれ金に困り,
18 2人で腕時計販売店に押し入って腕時計を強奪し
19 ようと計画していた。
20
21 甲は,
22 腕時計販売を業とするA株式会社(以下「A社」という。
23
24 )が直営
25 するB腕時計店(以下「B店」という。
26
27 )で働いている親友の丙に対し,
28 警備体制に関する情報
29 の提供など上記計画への協力を求めた。
30
31
32
33 2
34
35 丙は,
36 B店の副店長として自ら接客に従事するほか,
37 アルバイトの採用や従業員の勤怠状況の
38 管理を行い,
39 B店の帳簿作成や売上金管理等の業務も担当していた。
40
41 売上金管理業務として,
42 丙
43 には,
44 各営業日の閉店後,
45 当日の売上金額をA社本社に報告することのほか,
46 各営業日の開店前
47 に,
48 前日の売上金をA社名義の預金口座に入金することが義務付けられていた。
49
50 また,
51 商品の仕
52 入れ,
53 店外への持ち出し及び価格設定について,
54 丙に権限はなく,
55 全て店長Cの承認を得る必要
56 があるとされていた。
57
58
59 B店の売場に陳列されている商品は,
60 ショーケース内に保管されていたが,
61 その陳列方法は全
62 て丙が決定していた。
63
64 このショーケースは,
65 接客に必要なときを除いて常時施錠され,
66 その鍵は,
67
68 C及び丙のみが所持していた。
69
70 また,
71 B店の売場及び従業員控室には,
72 複数の防犯カメラが設置
73 され,
74 その様子が常時くまなく音声付きで撮影録画されていたほか,
75 警備会社を通じ,
76 警察に非
77 常事態の発生を知らせるための押しボタン式通報システムも設置されていた。
78
79
80
81 3
82
83 金に困っていた丙は,
84 甲からの話を聞いて,
85 いっそのことB店の腕時計が強奪されたように装
86 い,
87 これを自分たちのものにしようと思い付き,
88 某月1日,
89 甲に対し,
90 前記2の事実関係を説明
91 した上,
92 「午前11時の開店時は,
93 普段だとめったに客も来ないし,
94 明後日は俺しかいないから,
95
96 その時,
97 店に来て刃物を出して,
98 ショーケースを開けろと言ってくれ。
99
100 俺は後で怪しまれないよ
101 うに拒むふりをするけど,
102 最後はショーケースを開けるから,
103 すぐに時計を持って行ってくれ。
104
105
106 ただ,
107 俺も通報しないわけにはいかないので,
108 急いで逃げろよ。
109
110 時計は後で分けよう。
111
112 それと,
113
114 会ったことのない乙は信用できないから,
115 今の話は内緒にしてくれ。
116
117 」と持ち掛けたところ,
118 こ
119 れを甲は承諾した。
120
121
122
123 4
124
125 甲は,
126 同月2日,
127 丙と内通している事実を秘したまま,
128 乙に対し,
129 「明日,
130 俺がB店の開店と
131 同時に中に入って店員に刃物を突き付けて時計を奪い取ってくる。
132
133 その間,
134 お前は近くに停めた
135 車で周囲を見張り,
136 俺が戻って来たらすぐに車を出してくれ。
137
138 帰ってから時計を分けよう。
139
140 」と
141 持ち掛けたところ,
142 これを乙は承諾した。
143
144
145
146 5
147
148 甲は,
149 同月3日午前10時59分,
150 乙の運転する自動車でB店前路上に到着し,
151 同日午前11
152 時,
153 その開店と同時に,
154 覆面をかぶり,
155 サバイバルナイフ(刃体の長さ約20センチメートル。
156
157
158 以下「本件ナイフ」という。
159
160 )及びボストンバッグ(以下「本件バッグ」という。
161
162 )を持って同
163 車から降り,
164 B店に向かった。
165
166
167 甲は,
168 B店内に入ると,
169 丙に対し,
170 本件ナイフを示し,
171 「殺されたくなかったら,
172 これに時計
173 を入れろ。
174
175 」と言い,
176 ショーケース内に陳列されている腕時計を本件バッグに入れるように要求
177 した。
178
179 これに対し,
180 丙は,
181 前記通報システムを作動させ,
182 甲に対し,
183 「通報したから警察が来る
184 ぞ。
185
186 」と言い,
187 上記要求を拒否するふりをしたので,
188 甲は,
189 丙に対し,
190 「いいからやれ。
191
192 刺す
193 ぞ。
194
195 」と語気を強めて言った。
196
197 その直後,
198 丙は,
199 ショーケースを解錠し,
200 その中にあった腕時計
201 100点(時価合計3000万円相当)を甲から受け取った本件バッグに入れ,
202 これを甲に差し
203 出した。
204
205 甲は,
206 同日午前11時3分,
207 本件バッグを丙から受け取ると,
208 B店内から出て前記車両
209 - 2 -
210
211 に乗り込み,
212 乙の運転する同車で逃走した。
213
214
215 乙は,
216 甲が前記車両を降りてから戻って来るまでの間,
217 通行人が甲を警戒したり,
218 警察官らが
219 駆けつけたりする様子があれば,
220 これを甲に知らせるつもりで,
221 同車運転席から周囲を見張って
222 いた。
223
224
225 6
226
227 甲は,
228 同日,
229 乙に対し,
230 その取り分として前記腕時計100点のうち20点(時価合計400
231 万円相当)を手渡し,
232 さらに,
233 同月4日,
234 丙に対し,
235 その取り分として残りの腕時計のうち40
236 点(時価合計1300万円相当。
237
238 以下「本件腕時計40点」という。
239
240 )が入った本件バッグを手
241 渡した。
242
243
244
245 7
246
247 丙は,
248 同月5日,
249 本件バッグを交際中の丁の自宅に隠すこととし,
250 これをその押し入れ内にし
251 まうと,
252 丁に対し,
253 「バッグの中は見るな。
254
255 しばらく預かっておいてくれ。
256
257 」と言った。
258
259 これに
260 従い,
261 丁は,
262 本件バッグを押し入れ内に放置していたが,
263 同月10日,
264 片付けのため本件バッグ
265 を手に持った際,
266 想像以上の重量であったので,
267 不審に思い,
268 その中を見たところ,
269 本件腕時計
270 40点を発見した。
271
272 その時,
273 丁は,
274 本件腕時計40点全てに値札が付いていたことから,
275 丙が自
276 分のものにするためにB店から無断で持ち出した商品であろうと認識したが,
277 丙のために,
278 本件
279 バッグを預かり続けることとし,
280 これを元の位置に戻した。
281
282 丁は,
283 同月25日に本件バッグを丙
284 に返すまでの間,
285 これを押し入れ内に置き続けた。
286
287
288
289 〔設問1〕
290
291 【事例1】における甲,
292 乙,
293 丙及び丁の罪責について,
294 論じなさい(住居等侵入罪
295
296 (刑法第130条)及び特別法違反の点は除く。
297
298 )。
299
300
301 【事例2】(【事例1】の事実に続けて,
302 以下の事実があったものとする。
303
304 )
305 8
306
307 乙は,
308 甲から受け取った腕時計20点を換金したが,
309 浪費して再び金に困り,
310 同月30日午後
311 7時,
312 甲に電話を掛け,
313 「時計をもっと分けてください。
314
315 」などと執ように迫った。
316
317 甲は,
318 当時,
319
320 自宅で丙と飲酒中であったが,
321 乙の態度を面倒に感じ,
322 酒の勢いもあって,
323 「実は,
324 B店の店員
325 と通じてやったんだ。
326
327 今も一緒に飲んでいる。
328
329 残りは俺とそいつで半分ずつに分けたから,
330 お前
331 にやる分はもうない。
332
333 」と言った。
334
335 これを聞いた乙は,
336 興奮し,
337 「そんなのうそでしょ。
338
339 」と言
340 った。
341
342 甲は,
343 「うそだと思うなら,
344 うちに来いよ。
345
346 」と言い,
347 電話を切った。
348
349 甲は,
350 乙の態度に
351 立腹し,
352 丙に状況を説明した上,
353 「乙は生意気だから,
354 懲らしめてやろう。
355
356 多少怪我をさせても
357 構わない。
358
359 俺が木刀で殴ってやる。
360
361 その時,
362 乙を押さえていてくれ。
363
364 」と言ったところ,
365 最初は
366 嫌がっていた丙も,
367 最終的にはそれに応じた。
368
369
370
371 9
372
373 甲は,
374 自宅物置内から木刀を持ち出し,
375 丙と共に自宅前で乙を待っていたところ,
376 同日午後8
377 時,
378 乙が到着するや否や,
379 丙が背後から乙を羽交い締めにした。
380
381 甲は,
382 「お前,
383 調子に乗るな
384 よ。
385
386 」と言い,
387 乙の頭部を木刀で1回殴った。
388
389 すると,
390 乙は,
391 「やめてください。
392
393 やめてくれな
394 いなら,
395 全部警察にばらしますよ。
396
397 」と言い出した。
398
399 乙の発言について,
400 甲は,
401 乙の真意でない
402 と考えたが,
403 丙は,
404 そのように考えず,
405 乙に暴行を加え続けて警察に真相を話すのを思いとどま
406 らせようと考え,
407 「もっと痛い目に遭わないと分からないのか。
408
409 」と言い,
410 乙の顔面や腹部を手
411 拳で多数回殴った。
412
413
414 これを見た甲は,
415 丙の余りの勢いに驚き,
416 丙に対し,
417 「乙が警察にばらすはずはない。
418
419 落ち着
420 け。
421
422 」と言い,
423 丙をいさめて暴行を終了させようとした。
424
425 しかし,
426 丙は,
427 暴行を提案した甲から
428 止められたことに立腹し,
429 甲の頭部を手拳で殴ったところ,
430 転倒した甲が頭部を路面に打ち付け
431 て気絶した。
432
433 丙は,
434 そのことを認識しつつ,
435 この機会に,
436 乙に暴行を加えて警察に真相を話さな
437 いと約束させようと考え,
438 同日午後8時5分,
439 甲から取り上げた木刀で乙の頭部を1回殴ったと
440 ころ,
441 乙は逃げ出した。
442
443
444
445 10
446
447 乙は,
448 全治約3週間を要する頭部裂傷のほか,
449 全治約1週間を要する顔面打撲及び腹部打撲の
450 傷害を負った。
451
452 そのうち全治約3週間を要する頭部裂傷の傷害は,
453 甲又は丙の木刀による殴打行
454 - 3 -
455
456 為のいずれか一方だけによって形成されたことは明らかであるが,
457 いずれの殴打行為から形成さ
458 れたものか不明であった。
459
460
461 〔設問2〕
462
463 【事例2】における甲の罪責に関し,
464 以下の及びについて,
465 答えなさい。
466
467 なお,
468
469
470 及びのいずれについても,
471 自らの見解を問うものではない。
472
473
474
475
476 甲は乙の頭部裂傷の傷害結果に関する刑事責任を負わないとの立場からは,
477 その結論を導くた
478 めに,
479 どのような説明が考えられるか。
480
481 論点ごとに論拠を示しつつ説明すること。
482
483
484
485
486
487 甲は乙の頭部裂傷の傷害結果に関する刑事責任を負うとの立場からは,
488 前記の説明に対し,
489
490 どのような反論が考えられるか。
491
492 論点ごとに論拠を示しつつ反論すること。
493
494
495
496 - 4 -
497
498 論文式試験問題集[刑事系科目第2問]
499
500 - 1 -
501
502 [刑事系科目]
503 〔第2問〕(配点:100)
504 次の【事例】を読んで,
505 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
506
507
508 【事
509 1
510
511 例】
512 令和2年8月4日午前9時30分,
513 H県I市内の一戸建て家屋に住む女性V(当時77歳)の自
514
515 宅に電話が掛かってきた。
516
517 電話を掛けてきた男は,
518 S銀行の職員を装い,
519 Vに対し,
520 「Vさんの預
521 金口座が犯罪組織に利用されており,
522 このままでは預金が全て引き出されてしまいます。
523
524 本人確認
525 が必要ですので,
526 これから私が質問する内容に正確にお答えください。
527
528 」と言った。
529
530 Vは,
531 S銀行
532 I支店に多額の預金をしていたこともあって,
533 電話の相手をS銀行の職員であると信じ,
534 尋ねられ
535 るままに,
536 住所がH県I市K町3丁目45番地,
537 生年月日が昭和18年4月10日,
538 夫と死別し,
539
540 一人暮らしで,
541 一人息子は他県に住んでいること,
542 S銀行I支店に約2000万円の預金があり,
543
544 台所の食器棚にいわゆるタンス預金として現金500万円があることを話した。
545
546 電話の相手は,
547 V
548 に対し,
549 「午前中に私どもの職員がお宅に伺います。
550
551 」と伝え,
552 電話を切った。
553
554
555 その2時間後,
556 S銀行の職員を装った1名の男がV方を訪れ,
557 Vによって玄関ドアの鍵が開けら
558 れると同時にV方内に押し入り,
559 いきなりVの顔面に催涙スプレーを吹き付けた。
560
561 そして,
562 同男は,
563
564 持っていたロープでVの身体を後ろ手に緊縛し,
565 さらに,
566 持っていたガムテープで,
567 Vの鼻を塞が
568 ないようにしてその口を塞いだ上,
569 台所の食器棚から現金500万円を取り出してこれを強奪した。
570
571
572 その後,
573 同男は,
574 ロープでVの両足を縛り,
575 逃走した(以上の事件を,
576 以下「本件住居侵入強盗」
577 という。
578
579 )。
580
581
582 2
583
584 その30分後,
585 たまたまV方を訪れたVの息子が,
586 ロープで緊縛されて倒れているVを発見し,
587
588 直ちにVを助けるとともに,
589 110番通報をした。
590
591
592 その後,
593 H県警察は,
594 事件当時V方周辺に駐車されていた不審車両に関する情報を基に,
595 犯行の
596 際に使用されたレンタカーを割り出し,
597 同車を借りたのが甲であることを突き止めた。
598
599
600 H県警察司法警察員Pらは,
601 甲方の捜索差押許可状の発付を受けた上で,
602 同許可状に基づき,
603 令
604 和2年8月5日午前9時から,
605 H県M市内にある一人暮らしの甲方の捜索を実施し,
606 引き続き,
607 甲
608 をH県M警察署に任意同行した。
609
610 そして,
611 Pらが本件住居侵入強盗について甲から事情を聴くと,
612
613 甲は,
614 「Vさん方に押し入り,
615 Vさんを縛り上げて500万円を奪ったのは私です。
616
617 」と述べた。
618
619
620 そこで,
621 Pは,
622 その旨を録取した供述調書1通を作成した。
623
624
625 また,
626 甲は,
627 「私は,
628 乙の指示で今回の強盗を行い,
629 500万円は乙に全額手渡しました。
630
631 私た
632 ちは,
633 H県I市内のAビル21号室をアジトとしており,
634 そこには私と乙だけが出入りし,
635 そこか
636 ら乙が強盗のターゲットになる相手に携帯電話で電話を掛けていました。
637
638 昨日は,
639 午前10時30
640 分,
641 乙に呼び出されてそのアジトに行きました。
642
643 そして,
644 乙から,
645 Vさんに関する情報や犯行に使
646 う道具などについて印字された紙を見せられ,
647 その説明を受けました。
648
649 その後,
650 私はVさんの家に
651 向かったのです。
652
653 」「アジトには,
654 パソコンとプリンターのほか,
655 強盗のターゲットになる人の氏
656 名と電話番号の入った名簿データが保存されているUSBメモリがあります。
657
658 その名簿には,
659 Vさ
660 んの氏名と電話番号もあるのではないかと思います。
661
662 このUSBメモリは,
663 パスワードが掛けられ
664 ていて,
665 一度でも間違えると初期化されてしまいます。
666
667 パスワードは8桁の数字で,
668 乙しか知りま
669 せん。
670
671 また,
672 乙の背後には,
673 警察と敵対し,
674 捜査に一切協力しない指定暴力団である丙組がいて,
675
676 乙は,
677 その幹部に,
678 犯行で得た金の一部を貢いでいます。
679
680 」と供述したものの,
681 「私が乙や丙組の
682 ことを警察に話したと分かると,
683 私の身が危ないので,
684 調書の作成には応じられません。
685
686 」と述べ
687 たことから,
688 以上の供述についての供述調書は作成されなかった。
689
690
691
692 3
693
694 同月5日午後1時,
695 Pらは,
696 甲を,
697 乙及び氏名不詳者と共謀の上,
698 本件住居侵入強盗に及んだ旨
699 の被疑事実で通常逮捕するとともに,
700 裁判官に対し,
701 同被疑事実で,
702 乙名義で借りていることが判
703 明した前記Aビル21号室の捜索差押許可状の発付を請求した。
704
705 裁判官は,
706 「捜索すべき場所」を
707 - 2 -
708
709 「H県I市N町2丁目3番4号Aビル21号室」とし,
710 「差し押さえるべき物」を「被害品と認め
711 られる現金,
712 本件に関係ありと思料される名簿,
713 マニュアル,
714 メモ,
715 名刺,
716 パーソナルコンピュー
717 タ及びその付属機器類,
718 電磁的記録媒体,
719 携帯電話機及び付属の充電器」とする捜索差押許可状を
720 発付した。
721
722
723 Pらは,
724 同許可状に基づき,
725 同日午後4時,
726 同室に居合わせた乙立会の下,
727 同室の捜索を開始し,
728
729 まず,
730 パーソナルコンピュータ及びプリンターを差し押さえるとともに,
731 @丙組の幹部丁の名刺1
732 枚(「丙組若頭丁」と印刷されたもの)を差し押さえた。
733
734 続いて,
735 Pらは,
736 【資料1】のとおり印
737 字されたメモ(以下「本件メモ1」という。
738
739 )を発見したことから,
740 これを差し押さえた。
741
742 さらに,
743
744 Pらは,
745 白色USBメモリ1本及び黒色USBメモリ1本を発見した。
746
747 これを見た乙は,
748 Pらに対
749 し,
750 「USBメモリの中身を調べずに全部持って行くのですか。
751
752 パスワードは全部『2222』に
753 していますから,
754 この場で確認してください。
755
756 」と申し出たが,
757 Pらは,
758 A前記USBメモリ合計
759 2本について,
760 いずれもその内容をその場で確認することなく差し押さえた。
761
762
763 なお,
764 同室から,
765 携帯電話機は1台も発見されなかった。
766
767
768 4
769
770 Pらは,
771 前記捜索を終えると,
772 乙にH県M警察署への任意同行を求め,
773 これに応じた乙は,
774 同日
775 午後7時30分,
776 同署において,
777 甲及び氏名不詳者と共謀の上,
778 本件住居侵入強盗に及んだ旨の被
779 疑事実で通常逮捕された。
780
781
782
783 5
784
785 翌6日,
786 Pらは,
787 差し押さえた前記USBメモリ2本につき,
788 H県警察本部の専門職員の協力を
789 得てその内容の確認作業をした。
790
791
792 すると,
793 前記黒色USBメモリには8桁のパスワードによるロックが掛かっており,
794 一致しない
795 パスワードが入力されると直ちに初期化されてしまう設定がされていることが判明した。
796
797 そして,
798
799 同USBメモリのロックを解除すると,
800 Vの氏名と電話番号を含む,
801 多数の者の氏名と電話番号が
802 記載された名簿データや,
803 本件メモ1の記載内容と同一内容のデータが保存されていることが明ら
804 かになった。
805
806 また,
807 同データに対する捜査の結果,
808 本件メモ1が作成されたのが同月4日午前10
809 時20分であったことも明らかになった。
810
811
812 一方,
813 前記白色USBメモリについては未使用であることが判明し,
814 また,
815 差し押さえた前記パ
816 ーソナルコンピュータ及びプリンターにも本件住居侵入強盗に関するデータが残存していないこと
817 が判明したため,
818 Pらは,
819 同月6日中にこれらを乙に還付した。
820
821
822
823 6
824
825 甲は,
826 逮捕後一貫して自己が本件住居侵入強盗を実行したことは認めたが,
827 乙及び丙組の関与を
828 うかがわせる事項は一切供述せず,
829 本件メモ1についても供述を拒んだ。
830
831
832 他方,
833 乙は,
834 逮捕後一貫して黙秘した。
835
836
837 その後,
838 H地方検察庁検察官Qは,
839 甲及び乙について,
840 両名共謀の上,
841 本件住居侵入強盗に及ん
842 だ旨の公訴事実で公訴を提起したが,
843 裁判所は,
844 公訴事実に対する認否の見込みを踏まえ,
845 併合審
846 理することなく,
847 それぞれ個別に審理することとした。
848
849
850
851 7
852
853 甲は,
854 自己の公判で,
855 自己が本件住居侵入強盗を実行したことは認めたが,
856 乙及び丙組の関与を
857 うかがわせる事項は一切供述せず,
858 本件メモ1についても全く供述しなかった。
859
860
861
862 8
863
864 他方,
865 乙は,
866 自己の公判において,
867 「全く身に覚えがない。
868
869 甲と住居侵入や強盗の共謀をしたこ
870 とも一切ない。
871
872 」旨述べて公訴事実を否認した。
873
874
875 その後の証拠調べ手続において,
876 BQが,
877 甲乙間において本件住居侵入強盗に関する共謀が存在
878 することを立証するため,
879 本件メモ1の証拠調べ請求をしたところ,
880 乙の弁護人は,
881 「不同意ない
882 し取調べに異議あり。
883
884 」との証拠意見を述べた。
885
886
887 その後,
888 甲の証人尋問が実施され,
889 甲は,
890 自己が本件住居侵入強盗を実行したことについては証
891 言したが,
892 本件メモ1の記載事項を含め,
893 乙との共謀に関する事項については,
894 一切の証言を拒絶
895 した。
896
897
898 〔設問1〕
899
900 下線部@及びAの各差押えの適法性について,
901 具体的事実を摘示しつつ論じなさい。
902
903
904 - 3 -
905
906 〔設問2〕
907 1.下線部Bで証拠調べ請求された本件メモ1の証拠能力について,
908 具体的事実を摘示しつつ論
909 じなさい。
910
911 ただし,
912 本件メモ1が乙作成のものであることは証拠上認定できるものとする。
913
914
915 2.仮に,
916 本件メモ1及びその記載と同一内容のデータのいずれもが発見されず,
917 他方で,
918 甲方
919 の前記捜索時に,
920 【資料2】記載のとおりの手書きのメモ(以下「本件メモ2」という。
921
922 )が,
923
924 机の施錠された引き出し内にあった甲使用の手帳の令和2年8月4日のページの部分に挟んで
925 ある状態で発見され,
926 差し押さえられたものとする。
927
928 また,
929 甲は,
930 捜査段階及び自己の公判を
931 通じて,
932 本件メモ2について全く供述しなかったものとする。
933
934
935 乙の公判の証拠調べ手続において,
936 CQが,
937 甲乙間において本件住居侵入強盗に関する共謀
938 が存在することを立証するため,
939 本件メモ2の証拠調べ請求をしたところ,
940 乙の弁護人は,
941
942 「不同意ないし取調べに異議あり。
943
944 」との証拠意見を述べた。
945
946 その後,
947 甲の証人尋問が,
948 甲と
949 乙との間及び甲と傍聴人との間の双方に遮へい措置を講じて実施された。
950
951 甲は,
952 自己が本件住
953 居侵入強盗を実行したことについては証言したが,
954 本件メモ2の記載事項及びその作成経緯を
955 含め,
956 乙との共謀に関する事項については,
957 「私は,
958 誰から何と言われようと証言しませんし,
959
960 今後も絶対に証言することはありません。
961
962 」と述べ,
963 一切の証言を拒絶した。
964
965
966 下線部Cで証拠調べ請求された本件メモ2の証拠能力について,
967 具体的事実を摘示しつつ論
968 じなさい。
969
970 ただし,
971 本件メモ2が甲作成のものであることは証拠上認定できるものとする。
972
973
974
975 - 4 -
976
977 【資料1】
978
979 V
980
981 K町3−45
982
983 S18.4.10
984 夫と死別
985 S銀行
986
987 一人暮らし
988
989 息子は県外
990
991 2000万
992
993 タンス預金500万
994
995 台所の食器棚
996
997 催涙スプレー
998
999 ガムテープ
1000
1001 ロープ
1002
1003 後ろ手
1004
1005 【資料2】
1006
1007 乙から指示されたこと
1008 V
1009
1010 K町3−45
1011
1012 家に一人
1013 よきん2000万
1014 タンス500万 台所しょっきだな
1015 さいるいスプレー ロープ ガムテープ
1016 後ろ手
1017 口だけ ハナ×
1018 両あし
1019
1020 - 5 -
1021
1022