1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の【事例】について、
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 なお、
21 解答に当たっては、
22 文中において特定されている日時にかかわらず、
23 試験時に施行されて
24 いる法令に基づいて答えなさい。
25
26
27 【事
28
29 例】
30
31 A株式会社(以下「A社」という。
32
33 )は、
34 缶詰の製造販売を業とする株式会社である。
35
36 A社の
37 主な販売先の一つとして水産物加工業者のB株式会社(以下「B社」という。
38
39 )があり、
40 また、
41
42 主な仕入先の一つとしてB社のグループ会社である水産物卸売業者のC株式会社(以下「C社」
43 という。
44
45 )がある。
46
47 A社は、
48 B社及びC社との間でそれぞれ継続的な取引を行っており、
49 B社に
50 対しては常に数百万円程度の売掛金債権を有する一方、
51 C社に対しては常に数百万円程度の買掛
52 金債務を負担する関係にあった。
53
54
55 A社は、
56 その代表者Dが所有する甲土地上に乙建物を所有し、
57 原材料や完成品を保管する倉庫
58 として利用していた。
59
60 そして、
61 A社は、
62 令和2年3月1日、
63 メインバンクであるE銀行から運転
64 資金として1億円を借り入れ、
65 A社とDは、
66 E銀行のA社に対するこの貸金債権(以下、
67 利息及
68 び損害金を含めて「本件貸金債権」という。
69
70 )を被担保債権として、
71 同日、
72 E銀行のために、
73 甲
74 土地及び乙建物に抵当権を設定した。
75
76
77 A社は、
78 令和3年8月頃から経営状況が悪化していたところ、
79 同年10月15日に事業を停止
80 してF地方裁判所に破産手続開始の申立てをし、
81 同月25日、
82 A社に対して破産手続開始の決定
83 がされ(以下、
84 同決定に基づく破産手続を「本件破産手続」という。
85
86 )、
87 破産管財人Xが選任さ
88 れた。
89
90
91 A社は、
92 令和3年10月25日現在、
93 B社に対し、
94 缶詰代金等として合計500万円の売掛金
95 債権(以下「債権@」という。
96
97 )を有しており、
98 その一方で、
99 C社は、
100 A社に対し、
101 缶詰の原材
102 料の代金として合計400万円の売掛金債権(以下「債権A」という。
103
104 )を有していた。
105
106 また、
107
108 同日現在、
109 本件貸金債権の残額は8000万円であった。
110
111 その後、
112 E銀行は、
113 F地方裁判所に対
114 し、
115 甲土地及び乙建物につき抵当権実行の申立てをした(以下「本件抵当権実行」という。
116
117 ) 。
118
119
120 〔設
121
122 問〕
123
124 以下の1及び2については、
125 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
126
127
128
129 1.Xは、
130 債権@の弁済期である令和3年11月15日が到来してもB社から債権@に対する支
131 払がなかったので、
132 B社に対してその支払を催促した。
133
134 これに対し、
135 B社は、
136 Xに対し、
137 債権
138 @に係る残債務500万円のうち400万円について、
139 相殺を理由に支払を拒絶する旨の通知
140 をした。
141
142 以下の各場合について、
143 相殺に係る自働債権が本件破産手続上いかなる債権として取
144 り扱われるかに触れつつ、
145 B社による相殺の可否を論じなさい。
146
147 なお、
148 C社は、
149 債権Aにつき
150 破産債権の届出をしていないものとする。
151
152
153
154
155 B社は、
156 令和3年11月1日、
157 C社から債権Aを譲り受け、
158 当該債権を自働債権として相
159 殺を主張している場合
160
161
162
163 B社は、
164 令和3年3月1日、
165 A社の委託を受け、
166 C社との間で債権Aに係る債務を保証す
167 る旨の保証契約を締結し、
168 同年11月1日、
169 同契約に基づいてC社に全額の弁済をし、
170 これ
171 により生じた求償権400万円を自働債権として相殺を主張している場合
172
173
174
175 B社は、
176 令和3年3月1日、
177 A社の委託を受けないで、
178 C社との間で債権Aに係る債務を
179 保証する旨の保証契約を締結し、
180 同年11月1日、
181 同契約に基づいてC社に全額の弁済をし、
182
183 これにより生じた求償権400万円を自働債権として相殺を主張している場合(なお、
184 A社
185 は、
186 B社とC社との間の上記保証契約の存在を全く知らされていなかったものとする。
187
188 )
189
190 - 2 -
191
192 2.E銀行は、
193 本件抵当権実行による配当では本件貸金債権の全額につき満足を受けることはで
194 きないと考え、
195 本件破産手続において、
196 本件貸金債権につき、
197 破産法の規定に従い破産債権の
198 届出をした。
199
200 なお、
201 中間配当の手続は行われなかったものとする。
202
203
204
205
206 E銀行が、
207 破産債権の届出をした本件貸金債権について、
208 本件破産手続の最後配当の手続
209 に参加するためには、
210 どのような手続をとる必要があるか、
211 説明しなさい。
212
213
214
215
216
217 本件破産手続の最後配当の手続に先立ち、
218 本件抵当権実行の手続が終了し、
219 その競売手続
220 において、
221 E銀行は、
222 本件貸金債権に対する弁済として、
223 甲土地の売却代金から4000万
224 円、
225 乙建物の売却代金から1000万円の配当を受けた。
226
227 この場合に、
228 本件破産手続の最後
229 配当において所要の手続をとったE銀行への配当について、
230 配当額の計算の基礎となる破産
231 債権の額はいくらか。
232
233 E銀行が本件抵当権実行により各不動産の売却代金から配当を受けた
234 額が、
235 令和3年10月25日時点における本件貸金債権の残額から控除され、
236 又は控除され
237 ない理由とともに、
238 説明しなさい。
239
240 ただし、
241 破産手続開始後の利息及び損害金は考慮しない
242 ものとする。
243
244
245
246 - 3 -
247
248 〔第2問〕(配点:50)
249 次の【事例】について、
250 以下の設問に答えなさい。
251
252
253 なお、
254 解答に当たっては、
255 文中において特定されている日時にかかわらず、
256 試験時に施行されて
257 いる法令に基づいて答えなさい。
258
259
260 【事
261
262 例】
263 A株式会社(以下「A社」という。
264
265 )は、
266 主に、
267 ラーメンの製造販売を業とする株式会社であ
268
269 り、
270 その代表取締役はBである。
271
272 A社は、
273 創業者であるBが、
274 個人で屋台を引いてラーメンの販
275 売を始めた会社であったが、
276 多数の支店を出店して無計画に事業を拡大したため、
277 近年は業績不
278 振に陥っていた。
279
280 A社は、
281 支店の敷地・建物などの資産を順次処分するなどして、
282 これにより得
283 た資金を負債の返済に充てたが、
284 思うように業績は回復しなかった。
285
286 そこで、
287 A社は、
288 メインバ
289 ンクであるC信用金庫(以下「C信金」という。
290
291 )に対して借入金の弁済の猶予を求めたが、
292 こ
293 れを断られた上、
294 D銀行を始めとする他の金融機関からもつなぎの融資を断られた。
295
296 これにより、
297
298 令和4年4月末日の時点で、
299 同年5月末日に予定しているC信金に対する借入金の弁済の見込み
300 が立たない状況にあった。
301
302
303 そこで、
304 A社は、
305 令和4年5月9日、
306 E地方裁判所に対し、
307 予納金を納付した上、
308 弁護士Fを
309 代理人として再生手続開始の申立てをしたところ、
310 同裁判所は、
311 同日、
312 弁護士Gを監督委員とす
313 る監督命令を発令した。
314
315
316 〔設問1〕
317 【事例】に加え、
318 A社について以下の@又はAの事情がある場合に、
319 E地方裁判所は、
320 A社に
321 つき、
322 再生手続開始の決定をすることができるか。
323
324 @、
325 Aのそれぞれにつき、
326 民事再生法所定の
327 再生手続開始に関する要件及びその趣旨を踏まえ、
328 論じなさい。
329
330 なお、
331 各事情はそれぞれ独立し
332 たものであるとする。
333
334
335 @
336
337 A社は、
338 Bの強い希望で、
339 これまでの資産処分により残した本店にて事業を継続し、
340 その収
341 益を弁済原資とする再生計画案の作成を検討している。
342
343 もっとも、
344 今後も本店での収益は低額
345 にとどまると見込まれ、
346 むしろ、
347 本店は立地がよいことから、
348 A社所有の本店建物を取り壊し、
349
350 A社所有の敷地を更地にして売却すれば、
351 その売却代金は、
352 再生計画に基づく弁済額よりもは
353 るかに高額となることが期待できる。
354
355 そこで、
356 C信金はA社に本店敷地の売却を勧めたが、
357 B
358 が事業の継続にこだわったため、
359 C信金は、
360 E地方裁判所に対し、
361 A社の債権者として既に破
362 産手続開始の申立てをしている。
363
364
365
366 A
367
368 A社は、
369 H株式会社(以下「H社」という。
370
371 )に事業譲渡を行い、
372 その譲渡代金を弁済原資
373 とする再生計画案の作成を検討している。
374
375 もっとも、
376 A社は法人税及び消費税を滞納しており、
377
378 H社が提示している譲渡代金の額では、
379 上記滞納分の全額を支払うことができない状況にある
380 が、
381 その一方で、
382 A社は、
383 弁護士F及び顧問税理士Iから、
384 次のような報告を受けている。
385
386 そ
387 れによれば、
388 滞納国税については、
389 J税務署と交渉をした結果、
390 J税務署も再生手続による再
391 建に理解を示しており、
392 延滞税について分納の合意ができる見込みがある、
393 この分納の合意に
394 より、
395 再生計画案の決議に至るまでの資金繰りにも見通しが立つ、
396 事業譲渡代金についても、
397
398 今後、
399 原材料の仕入れルートの見直しや、
400 経理、
401 人事に関わる本社機能のH社本社への集約等
402 によって、
403 H社からの提示金額が増額される見込みは十分にあるとのことである。
404
405
406 なお、
407 資金提供に応じてくれそうなものはH社のみであり、
408 同社以外の会社が今後名乗りを
409 上げる可能性はない。
410
411
412
413 【事
414
415 例(続き)】
416 E地方裁判所は、
417 令和4年5月16日、
418 A社について再生手続開始の決定をしたが、
419 その後、
420
421
422 - 4 -
423
424 以下のような事実が判明した。
425
426
427 A社は、
428 業績不振となる以前からD銀行と以下の条項(以下「本件条項」という。
429
430 )を含む銀
431 行取引約定を締結していた。
432
433
434 A社がD銀行に対する債務を履行しなかった場合、
435 D銀行は担保及びその占有している
436 動産、
437 手形その他の有価証券について、
438 必ずしも法定の手続によらず一般に適当と認めら
439 れる方法、
440 時期、
441 価格等により取立て又は処分の上、
442 その取得金から諸費用を差し引いた
443 残額を法定の順序にかかわらずA社の債務の弁済に充当することができる。
444
445
446 D銀行は、
447 A社の再生手続開始の申立て前に、
448 A社から、
449 満期を令和4年5月17日とする約
450 束手形(以下「本件手形」という。
451
452 )について、
453 取立委任のための裏書譲渡を受けていた。
454
455 また、
456
457 A社は、
458 D銀行に対し、
459 3000万円の当座貸越債務(以下「本件債務」という。
460
461 )を負担して
462 おり、
463 再生手続開始の申立て時に、
464 本件債務の弁済期が到来し、
465 D銀行は本件手形について商事
466 留置権を有することとなった。
467
468
469 D銀行は、
470 令和4年5月17日、
471 満期となった本件手形を本件条項に基づいて取り立てて、
472 取
473 立金1000万円(以下「本件取立金」という。
474
475 )を受領した。
476
477 そこで、
478 A社は、
479 D銀行に対し
480 て本件取立金相当額の支払を求めた。
481
482 これに対し、
483 D銀行は、
484 「再生手続開始の決定後もなお本
485 件手形に商事留置権を有しており、
486 本件手形が取立てにより取立金に変じた場合も、
487 その取立金
488 を商事留置権に基づいて留置することができる。
489
490 」と主張した。
491
492
493 〔設問2〕
494 【事例】において、
495 仮に、
496 D銀行の主張するとおり、
497 本件取立金に商事留置権に基づく効力が
498 認められるとした場合に、
499 D銀行は、
500 本件条項に基づいて本件取立金を本件債務の弁済に充当す
501 ることができるか、
502 A社について開始された手続が破産手続である場合との相違を踏まえて論じ
503 なさい。
504
505 ただし、
506 相殺禁止について言及する必要はない。
507
508
509
510 - 5 -
511
512 - 6 -
513
514 論文式試験問題集[租
515
516 - 7 -
517
518 税
519
520 法]
521
522 [租
523
524 税
525
526 法]
527
528 〔第1問〕(配点:50)
529 平成20年1月1日、
530 A及びAの長男Bは、
531 隣接する同様の二筆の土地(更地である甲土地及び
532 乙土地)を代金合計3000万円で(Aが甲土地を1500万円で、
533 Bが乙土地を1500万円で)
534 購入した。
535
536 A及びBは、
537 甲土地及び乙土地を更地のまま月極駐車場として賃貸していた。
538
539
540 平成22年1月1日、
541 Aが死亡した。
542
543 Aの相続人はBと次男Cのみであった。
544
545 Aからの相続財産
546 でめぼしいものは甲土地のみであった。
547
548 BとCは、
549 相続を単純承認し、
550 遺産分割協議を行った。
551
552 平
553 成22年4月1日、
554 Bが甲土地を単独で取得し、
555 BがCに対して代償金900万円(当時の甲土地
556 の時価相当額の半分)を支払う旨の遺産分割協議が成立した。
557
558 遺産の額が基礎控除額以下であった
559 ため、
560 Aからの相続について相続税の納税義務は発生しなかった。
561
562 Bは、
563 代償金900万円のほか、
564
565 相続登記費用として16万円を支払い、
566 同日、
567 甲土地の相続登記手続を完了した。
568
569
570 Bは、
571 平成23年1月1日、
572 税理士であるDと法律婚をし、
573 生計を一にして暮らしていた。
574
575 Dは、
576
577 自らが営む税理士事務所のために使用している複数の自動車の駐車場を探していたが、
578 甲土地がD
579 にとって好都合であったので、
580 甲土地を借りたいとBに申し込んだ。
581
582 Bは、
583 平成23年末までに甲
584 土地の利用者との契約を終了させ、
585 平成24年1月1日から、
586 Dに甲土地を適正賃料で賃貸した。
587
588
589 Bは、
590 会社勤めのサラリーマンとして働く傍ら、
591 甲土地及び乙土地を駐車場として賃貸し、
592 その
593 賃料を得ていたが、
594 Bの大学時代からの友人Eから、
595 土地売買の相談を受けた。
596
597 Eは、
598 小売業を営
599 む株式会社F(以下「F社」という。
600
601 )の代表取締役である。
602
603 Eは、
604 甲土地をF社の店舗用地とし
605 たいと考えた。
606
607 Bは、
608 親しくしていたEからの依頼を断ることもできず、
609 平成28年4月30日に
610 Dとの甲土地賃貸借契約を終了させ、
611 同年5月1日、
612 甲土地をF社に当時の時価相当額である20
613 00万円で売却した。
614
615
616 F社は、
617 平成28年6月1日、
618 金融機関G(以下「G社」という。
619
620 )から3000万円を借り入
621 れ、
622 甲土地上に店舗を新築した。
623
624
625 Bは、
626 平成29年3月31日、
627 それまで勤務してきた会社を退職し、
628 同年4月1日、
629 F社の取締
630 役に就任した。
631
632
633 F社の経営状態は次第に悪化した。
634
635 Bは、
636 Eから懇願されて、
637 平成30年4月1日、
638 G社とは別
639 の貸金業者H(以下「H社」という。
640
641 )からの借入金1000万円の連帯保証人となった。
642
643 その後、
644
645 F社はH社からの借入金の返済が困難になったため、
646 Bは、
647 令和2年4月1日、
648 乙土地を当時の時
649 価相当額である2600万円で第三者に売却した上、
650 その売却代金のうち1000万円をもって連
651 帯保証債務を履行し、
652 H社からの借入金の残債務1000万円を全額弁済した。
653
654 Bは、
655 F社に対し
656 て1000万円を求償することも検討したが、
657 当時、
658 F社は債務超過の状態にあり、
659 求償債務の弁
660 済が不可能であったため、
661 求償権の行使を断念した。
662
663
664 以上の事案について、
665 以下の設問に答えなさい。
666
667 ただし、
668 租税特別措置法の適用は考えなくてよ
669 い。
670
671
672 〔設
673 1
674
675 問〕
676 Bが納付した甲土地及び乙土地に係る平成24年度の固定資産税の所得税法上の扱いについ
677
678 て説明しなさい。
679
680
681 2
682
683 平成28年分のBの甲土地に係る譲渡益の計算に関し、
684 代償金の取得費算入の可否について
685 争いがあり、
686 民法第909条本文に沿った法律構成で計算する説(以下「P説」という。
687
688 )と、
689
690 P説に反対する説(以下「Q説」という。
691
692 )がある。
693
694 なお、
695 設問2では判例がP説かQ説かに
696 ついては説明しなくてよい。
697
698
699
700
701 P説を前提として、
702 平成28年分のBの甲土地に係る譲渡益がどのように計算されるか、
703
704 また、
705 どのようにBの課税総所得金額に算入されるか、
706 説明しなさい。
707
708
709
710 - 8 -
711
712
713
714 Q説を前提として、
715 平成28年分のBの甲土地に係る譲渡益がどのように計算されるか、
716
717 また、
718 どのようにBの課税総所得金額に算入されるか、
719 説明しなさい。
720
721
722
723
724
725 P説とQ説とで場合分けした上で、
726 平成22年にCに甲土地に係る譲渡益が生じるか、
727 生
728 じるならば幾らか、
729 説明しなさい。
730
731 なお、
732 と異なり、
733 仮に譲渡益が生じるとしても、
734 ど
735 のようにCの課税総所得金額に算入されるかについては説明しなくてよい。
736
737
738
739 3
740
741 令和2年分のBの乙土地に係る譲渡益がどのようにBの課税総所得金額に算入されるか、
742 そ
743 の根拠規定の趣旨及び適用関係を、
744 説明しなさい。
745
746
747
748 - 9 -
749
750 〔第2問〕(配点:50)
751 Aは、
752 B電力株式会社(以下「B社」という。
753
754 )との間で委託検針契約を締結している検針員で
755 ある。
756
757 Aの業務内容についてはB社が責任を負い、
758 AはB社から身分証明書の交付を受け、
759 社名入
760 り作業衣等が貸与され、
761 定例日制のため検針日が定められている。
762
763 また、
764 Aは月1回程度、
765 B社会
766 議室での打合せに出席しなければならず、
767 委託手数料もB社の一般従業員の給与に相応し、
768 毎年夏
769 冬の2回には特別謝礼金、
770 契約終了時に解約謝礼金が支払われている。
771
772 他方でAは、
773 契約で定めら
774 れた事項によってのみB社に従属しており、
775 委託手数料は検針業務及び付随業務に応じた出来高制
776 で、
777 就業時間は定例検針日の日数と受持件数次第で異なり、
778 主要な交通手段であるバイクの購入、
779
780 維持費等はAの個人負担であり、
781 検針作業を第三者に代行させることも禁止されていない。
782
783
784 C株式会社(以下「C社」という。
785
786 )は、
787 自動車部品の製造等を業とする株式会社であり、
788 B社
789 との間で電力供給契約を締結し、
790 電力の供給を受けてきた。
791
792 令和元年12月に、
793 B社の事業拡張に
794 伴い、
795 B社とC社との間で電力供給契約の内容が一部変更されたが、
796 その際に、
797 Aによって電力計
798 量装置の設定が誤って行われた。
799
800 そのために、
801 B社は、
802 それ以後1年間にわたり、
803 本来契約上支払
804 うべき電気料金の2倍の金額をC社に対して請求した。
805
806 C社は、
807 令和2年1月から同年12月まで
808 の間、
809 B社から請求された金額をそのまま支払い、
810 その金額を、
811 同年1月1日から同年12月31
812 日までの事業年度に係る所得の金額の計算上、
813 損金の額に算入して、
814 同事業年度の法人税の申告納
815 付を行った。
816
817 なお、
818 Aによる当該電力計量装置の設定変更は、
819 本来の手順と異なる手順で行われた
820 ことから、
821 その変更内容をB社で把握することができず、
822 C社にとっても過大に徴収されているこ
823 とを直ちに発見することは事実上不可能であった。
824
825
826 令和3年1月15日に、
827 C社の従業員Dは、
828 令和2年分の電気料金が、
829 事業拡張を考慮しても例
830 年と比較して高額であったことから、
831 B社に対してその点の問い合わせを行った。
832
833 それを契機とし
834 て、
835 同月30日に、
836 Aは当該電力計量装置の設定の誤りを発見し、
837 直ちにそのことをB社に報告し
838 た。
839
840 B社は、
841 社内に保存されていた資料を基に、
842 過収電気料金の額を算出した。
843
844 令和3年4月15
845 日、
846 B社の管轄営業所所長ほかが、
847 C社に対し、
848 当該電力計量装置の誤設定を原因とする過収電気
849 料金相当額の精算金(令和2年1月から同年12月までのもの)が500万円となることを説明し、
850
851 令和3年5月末日に返還したい旨申し入れ、
852 C社の承諾を得た。
853
854 精算金500万円は、
855 令和3年5
856 月31日にB社からC社の銀行口座に振り込む方法にて支払われた。
857
858
859 B社には、
860 前記の過収電気料金の返戻に関する調査及びC社との交渉のために、
861 50万円の費用
862 がかかった。
863
864 令和3年11月2日、
865 B社とAとの話し合いの結果、
866 50万円のうち40万円をAが
867 B社に解決金として支払う旨合意し、
868 同日、
869 AはB社に40万円を支払った。
870
871
872 また、
873 Dは、
874 令和3年8月末、
875 C社を退職し、
876 同年9月1日、
877 C社は、
878 Dに対し、
879 退職金規程に
880 基づき退職一時金1000万円を支払った。
881
882
883 以上の事案について、
884 以下の設問に答えなさい。
885
886 なお、
887 B社及びC社は、
888 毎年1月1日から12
889 月31日までの期間を事業年度としている。
890
891
892 〔設
893
894 問〕
895
896 1 AがB社から支給された委託手数料は、
897 所得税法上、
898 いずれの所得に分類されるか、
899 説明しなさ
900 い。
901
902
903 2 AがB社に支払った解決金40万円が損害賠償額として相当であり、
904 かつ、
905 電力計量装置の設定
906 の誤りについてAに重過失があるものとした場合、
907 AがB社に支払った40万円について、
908 Aの所
909 得税の課税関係はどうなるか、
910 説明しなさい。
911
912
913 3 C社がB社に過大に支払った電気料金と、
914 B社から受け取った500万円の精算金について、
915 C
916 社の法人税の課税関係はどうなるか、
917 説明しなさい。
918
919
920 4 B社がC社から過大に受け取った電気料金と、
921 その精算金の支払について、
922 B社の法人税の課税
923
924 - 10 -
925
926 関係はどうなるか、
927 説明しなさい。
928
929
930 5 令和3年分のDの退職所得について、
931 退職所得という所得の種類が所得税法に設けられている趣
932 旨・目的を明らかにした上で、
933 その金額と所得税の徴収の手続について、
934 簡潔に説明しなさい。
935
936 た
937 だし、
938 税額の計算は不要とする。
939
940 なお、
941 Dの勤続期間は13年とする。
942
943
944 (参照条文)所得税法施行令
945 (必要経費に算入されない貨物割に係る延滞税等の範囲)
946 第98条
947 1
948
949 略
950
951 2
952
953 法第45条第1項第8号に規定する政令で定める損害賠償金(これに類するものを含む。
954
955 )
956 は、
957 同項第1号に掲げる経費に該当する損害賠償金(これに類するものを含む。
958
959 以下この項に
960 おいて同じ。
961
962 )のほか、
963 不動産所得、
964 事業所得、
965 山林所得又は雑所得を生ずべき業務に関連し
966 て、
967 故意又は重大な過失によって他人の権利を侵害したことにより支払う損害賠償金とする。
968
969
970
971 - 11 -
972
973 - 12 -
974
975 論文式試験問題集[経
976
977 - 13 -
978
979 済
980
981 法]
982
983 [経
984
985 済
986
987 法]
988
989 〔第1問〕(配点:50)
990 Y社は、
991 家庭用電化製品甲(以下、
992 単に「甲」という。
993
994 )の日本国内メーカーである。
995
996 Y社のほ
997 か、
998 日本国内メーカーであるA社、
999 B社及びC社が甲を製造販売している。
1000
1001 甲に代替する製品は存
1002 在しない。
1003
1004 日本における甲の販売金額に基づく割合(シェア)は、
1005 Y社が約20パーセント、
1006 A社
1007 が約30パーセント、
1008 B社及びC社がそれぞれ約25パーセントである。
1009
1010 新たに甲の製造販売を計
1011 画するものはいない。
1012
1013 また、
1014 輸送費などの関係から甲の輸入品は存在せず、
1015 輸入される見込みもな
1016 い。
1017
1018 限られた個人売買を除いて、
1019 中古品甲の取引は行われていない。
1020
1021
1022 甲を使用するためには、
1023 交換部品乙(以下、
1024 単に「乙」という。
1025
1026 )が必要である。
1027
1028 甲とは異なり、
1029
1030 乙はそれほど高額ではなく、
1031 甲と乙の価格差は大きい。
1032
1033 Y社製甲を使用するためには、
1034 取付け部分
1035 の形状等から、
1036 Y社製甲に専用の乙が必要である。
1037
1038 このようなY社製甲向け乙については、
1039 Y社が
1040 製造販売する純正品のほか、
1041 甲を製造していないX社、
1042 D社及びE社が製造販売する非純正品があ
1043 る。
1044
1045
1046 同様に、
1047 Y社以外の3社が製造販売する甲についても、
1048 それぞれ専用の乙が必要である。
1049
1050 A社、
1051
1052 B社及びC社がそれぞれ自社製甲向け乙を製造販売するほか、
1053 X社、
1054 D社及びE社も、
1055 それぞれA
1056 社、
1057 B社及びC社製甲向け乙を製造販売している。
1058
1059 輸送費などの関係から乙の輸入品は存在しない。
1060
1061
1062 Y社、
1063 A社、
1064 B社及びC社が自社製甲向け以外の乙を製造販売する計画はない。
1065
1066 また、
1067 新たに非純
1068 正品の乙の製造販売又は輸入を計画するものはいない。
1069
1070
1071 日本におけるY社製甲向け乙の販売金額に基づく割合(シェア)は、
1072 Y社、
1073 すなわち純正品が約
1074 40パーセントであり、
1075 X社、
1076 D社及びE社、
1077 すなわち非純正品が合計約60パーセントである。
1078
1079
1080 Y社製甲向け以外の乙に関しても同様の状況にあり、
1081 乙全体で見た場合、
1082 X社、
1083 D社及びE社のシ
1084 ェアは合計約60パーセントとなっている。
1085
1086 X社、
1087 D社及びE社のシェアは、
1088 甲のメーカーごとに
1089 多少の差異はあるものの、
1090 それぞれほぼ同一(約20パーセント)である。
1091
1092
1093 甲の買換え時期や乙の交換頻度は、
1094 ユーザーにより大きく異なる。
1095
1096 甲の販売について、
1097 Y社、
1098 A
1099 社、
1100 B社及びC社間の競争は活発である。
1101
1102 Y社製甲向けを含めた乙の製造販売について、
1103 かつて純
1104 正品が50パーセントを超えるシェアを有していたところ、
1105 近年、
1106 低価格を武器に、
1107 上記のとおり
1108 非純正品が約60パーセントのシェアを有するようになっている。
1109
1110 なお、
1111 甲の購入者は、
1112 甲の購入
1113 時には、
1114 乙の交換費用や交換時期を十分に認識していない。
1115
1116 また、
1117 甲の購入者は、
1118 乙の交換時には、
1119
1120 純正品又は非純正品を自ら選択して購入している。
1121
1122
1123 ところで、
1124 C社製甲について、
1125 E社製乙を使用することによる数件の発火事故がメディアで報道
1126 された。
1127
1128 調査の結果、
1129 これらの原因はC社製甲とE社製乙の取付け部分の接触不良にあり、
1130 特にE
1131 社製乙の設計上の問題であることが明らかとなった。
1132
1133 しかし、
1134 E社がC社製甲向け乙の取付け部分
1135 を調整することにより、
1136 同問題は解決された。
1137
1138 また、
1139 C社製甲向けのE社製乙以外には、
1140 同様の問
1141 題はないことが確認されている。
1142
1143
1144 その後も、
1145 Y社製甲については、
1146 同様の発火事故や非純正品の乙の使用に起因する作動不具合が
1147 報告されたことはなかったが、
1148 Y社は、
1149 新規に製造販売する自社製の甲及び乙に電子部品を新たに
1150 取り付けることにより、
1151 自社製の乙が使用された場合にのみ自社製の甲が作動するようにした(以
1152 下「本件行為」という。
1153
1154 )。
1155
1156
1157 Y社が本件行為を実行した結果、
1158 X社、
1159 D社及びE社共に、
1160 本件行為後に製造販売されたY社製
1161 甲向けの乙の製造販売が以後不可能となった。
1162
1163 X社は、
1164 本件行為前に、
1165 Y社製甲向け以外の乙の製
1166 造設備について、
1167 その一部を近年シェアを伸ばしつつあったY社製甲向け乙の製造のために変更し
1168 たところであり、
1169 このため、
1170 本件行為後、
1171 X社の売上高は大きく減少することが予想された。
1172
1173 また、
1174
1175 結局、
1176 販売できないY社製甲向け乙の在庫が生ずることが予想された。
1177
1178
1179 X社は、
1180 Y社製甲向け乙の製造設備をそれ以外の乙の製造設備に変更することも資金的に困難で
1181
1182 - 14 -
1183
1184 あることから、
1185 Y社に対して本件行為を取りやめるよう求めたが、
1186 Y社は、
1187 これを拒否している。
1188
1189
1190 そこで、
1191 X社は、
1192 本件行為について、
1193 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独
1194 占禁止法」という。
1195
1196 )に基づき、
1197 Y社に対する差止請求訴訟を提起することを検討している。
1198
1199
1200 〔設
1201
1202 問〕
1203 上記の差止請求について、
1204 以下のY社の主張に留意しつつ、
1205 独占禁止法上の問題点を検討しな
1206
1207 さい。
1208
1209
1210 Y社の主張:「当社は、
1211 甲の製造販売について約20パーセントのシェアを有するにすぎず、
1212
1213 独占禁止法違反行為を行い得る力を有していない。
1214
1215 また、
1216 非純正品の安全性には疑問がある。
1217
1218 製
1219 品の安全性を確保することは何よりも重要であるはずだ。
1220
1221 」
1222
1223 - 15 -
1224
1225 〔第2問〕(配点:50)
1226 【前
1227
1228 提】
1229 甲製品は、
1230 特有の効用を有する比較的高額な家庭用機器であり、
1231 代替する製品はない。
1232
1233 その機能
1234
1235 やサイズ等に応じて、
1236 多様な機種がある。
1237
1238
1239 日本では、
1240 X社及びY社を含む5社のメーカーが甲製品を製造しており、
1241 それらは小売業者を通
1242 してユーザーに販売されている。
1243
1244 ユーザーは、
1245 小売業者の店舗において、
1246 装備されている機能や使
1247 用方法等に関する説明を受けながら甲製品のメーカーや機種を選定して購入することが一般的であ
1248 る。
1249
1250 小売業者は、
1251 通常、
1252 複数のメーカーの甲製品を取り扱っており、
1253 甲製品のメーカーと小売業者
1254 の間に資本関係等はない。
1255
1256
1257 甲製品のメーカーは、
1258 それぞれの甲製品の機種ごとに希望小売価格を設定し、
1259 取引先小売業者に
1260 通知している。
1261
1262 各メーカーの甲製品の希望小売価格は、
1263 他社の同等の機種の希望小売価格を参照し
1264 つつ設定されており、
1265 その水準に大きな違いはない。
1266
1267
1268 日本における甲製品全体の販売台数に占めるX社製甲製品の割合(シェア)は、
1269 約30パーセン
1270 トで第1位である。
1271
1272 また、
1273 Y社製甲製品は、
1274 そのシェアが約20パーセント(第3位)とやや低い
1275 ものの、
1276 その特有の機能が一部のユーザーから高く評価されており、
1277 ユーザーの中にはY社を指名
1278 して購入しようとするものも少なくない。
1279
1280 このため、
1281 甲製品の小売業者にとっては、
1282 X社製及びY
1283 社製の甲製品を取り扱うことが営業上有利である。
1284
1285 なお、
1286 甲製品の各メーカーのシェアに大きな変
1287 動はない状況が続いている。
1288
1289
1290 〔設
1291
1292
1293 問〕下記及びの設問に解答しなさい。
1294
1295
1296 上記の【前提】に加え、
1297 以下の事情がある場合に、
1298 X社のそれぞれの行為について、
1299 独占禁止
1300 法に違反するか、
1301 違反する場合には違反行為期間を含めて、
1302 検討しなさい。
1303
1304
1305 X社は、
1306 従来、
1307 X社製甲製品の機種ごとに設定している希望小売価格について、
1308 それが参考であ
1309
1310 る旨明記してきていた。
1311
1312 X社の取引先小売業者は、
1313 通知された希望小売価格を参考に、
1314 それぞれの
1315 判断で販売価格を設定してきており、
1316 平均販売価格は希望小売価格をやや下回る水準で推移してき
1317 ていた。
1318
1319 そうした中で、
1320 X社は、
1321 平成28年4月、
1322 取引先小売業者に対し、
1323 新機種を含めた全機種
1324 の希望小売価格を通知する際に、
1325 X社製甲製品の性能やブランド力からみて、
1326 希望小売価格で販売
1327 することが十分可能であることを強調する説明を加えた。
1328
1329
1330 その後、
1331 X社の取引先小売業者の中に、
1332 X社製甲製品について希望小売価格からの値引き幅を強
1333 調して販売するものが出てきた。
1334
1335 このため、
1336 X社は、
1337 X社製甲製品の販売価格を調査することとし、
1338
1339 令和元年10月、
1340 取引先小売業者に対し、
1341 機種ごとの希望小売価格を明記した調査表に実際の販売
1342 価格を記入する方法で回答することを求めた。
1343
1344 その調査表には、
1345 販売価格に関する回答の正確性を
1346 確認することがある旨付記されていた。
1347
1348
1349 X社が実施した価格調査の結果、
1350 大幅な値引き販売を行う取引先小売業者は少ないものの、
1351 ある
1352 程度の値引き販売を行う取引先小売業者が相当数存在することが判明した。
1353
1354 このため、
1355 X社は、
1356 X
1357 社製甲製品の販売価格の管理を強めることとし、
1358 令和2年4月、
1359 全機種について、
1360 従来の「希望小
1361 売価格」に代えて「販価」と表記し、
1362 また、
1363 参考である旨の記述を削除して、
1364 取引先小売業者に通
1365 知した。
1366
1367 この通知には、
1368 必要に応じ、
1369 X社において取引先小売業者の販売価格の調査を行う旨明記
1370 されていた。
1371
1372 X社の取引先小売業者の多くは、
1373 X社からの通知が販価どおりの価格で販売してほし
1374 いという趣旨であることを理解した。
1375
1376
1377 しかし、
1378 X社が令和2年4月の通知の直後に調査会社に委託して実施した価格調査の結果、
1379 引き
1380 続きX社製甲製品を販価から値引きして販売している取引先小売業者が一部存在することが判明し、
1381
1382 その後も変わりなかった。
1383
1384 このため、
1385 X社は、
1386 令和2年10月、
1387 取引先小売業者に対し、
1388 販価どお
1389
1390 - 16 -
1391
1392 りに販売するよう改めて要請し、
1393 この要請に反した取引先小売業者に対してはX社製甲製品の出荷
1394 を制限することがある旨通知した。
1395
1396 また、
1397 この通知の直後に、
1398 X社は、
1399 従来から値引き販売を行っ
1400 ていた取引先小売業者に対して、
1401 実際に出荷を制限する措置を講じた。
1402
1403 この措置が取引先小売業者
1404 の間に広く知られたこともあり、
1405 出荷制限を受けることを恐れて、
1406 取引先小売業者がX社製甲製品
1407 を値引きして販売することはほとんど見られなくなった。
1408
1409
1410 その後、
1411 X社は、
1412 令和4年1月、
1413 取引先小売業者に対し、
1414 販売価格に関する従前の通知や要請、
1415
1416 措置等を全て廃止することを表明した上で、
1417 参考である旨明記した「希望小売価格」を改めて通知
1418 したが、
1419 その価格は令和2年4月に通知した販価と全く同じであった。
1420
1421 通知を受けた取引先小売業
1422 者は、
1423 X社からの通知の内容を理解したものの、
1424 現在に至るまで、
1425 値引き販売はほとんど行われて
1426 いない。
1427
1428
1429
1430
1431 上記の【前提】に加え、
1432 以下の事情がある場合に、
1433 Y社の行為について、
1434 独占禁止法に違反す
1435 るか検討しなさい。
1436
1437
1438 Y社は、
1439 Y社製甲製品が他のメーカーの甲製品にはない機能を有しており、
1440 取引先小売業者がユ
1441
1442 ーザー(潜在的なユーザーを含む。
1443
1444 )に対してY社製甲製品の特有の機能を含めて使用方法等を十
1445 分説明することが不可欠であり、
1446 また、
1447 それが甲製品の新たなユーザーを発掘するとともに、
1448 Y社
1449 製甲製品に対する評価を高め、
1450 Y社を指名して購入するユーザーを増やすことにつながると考えて
1451 いる。
1452
1453
1454 しかし、
1455 甲製品が普及するにつれて、
1456 特に買換えをしようとするユーザーの中には、
1457 小売業者に
1458 よる甲製品の使用方法等の説明が不要であり、
1459 あるいは煩わしいと感じるものもいるようになって
1460 きている。
1461
1462 また、
1463 甲製品の小売業者の中にも、
1464 甲製品の使用方法等に関する説明を丁寧に行おうと
1465 すると費用が掛かることから、
1466 こうした説明を省略し、
1467 むしろ低価格を訴求した販売を行いたいと
1468 考えるものが出てきている。
1469
1470
1471 こうした中で、
1472 Y社は、
1473 令和3年4月、
1474 取引先小売業者に対し、
1475 上記のようなY社の考えを改め
1476 て説明した上で、
1477 来店するユーザーに対してY社製甲製品の使用方法等を説明することを義務付け
1478 る条項を取引先小売業者との取引契約に追加することとし、
1479 これを実施している。
1480
1481 この条項におい
1482 ては、
1483 来店するユーザーの甲製品やY社製甲製品の使用歴等に応じて説明すべき事項が設定されて
1484 おり、
1485 例えば、
1486 甲製品を既に使用しているユーザーに対してはY社製甲製品の特有の機能を説明す
1487 ることで足りるものとされている。
1488
1489
1490
1491 - 17 -
1492
1493 - 18 -
1494
1495 論文式試験問題集[知的財産法]
1496
1497 - 19 -
1498
1499 [知的財産法]
1500 〔第1問〕(配点:50)
1501 精米業者であるXは、
1502 「成分Aを多く含む精白米及びその製造方法」との名称の発明(以下「X
1503 発明」という。
1504
1505 )について特許権(以下「X特許権」という。
1506
1507 )を保有している。
1508
1509 X特許権に係る
1510 特許請求の範囲は2つの請求項からなり、
1511 請求項1には「玄米粒の第1層から第4層までを精米機
1512 によって除去した後、
1513 第5層の85〜95パーセントが残るように同層の表層側の部分を削り取る
1514 ことにより製造される米」と記載されている(本問において、
1515 玄米粒は表皮から中心部に向かって、
1516
1517 第1層(表皮)から第6層までの6つの層で構成されるものとする。
1518
1519 )。
1520
1521 請求項2記載の発明は、
1522
1523 第5層の表層側の部分を削り取る具体的な工程(以下「工程α」という。
1524
1525 )を含むことを特徴とす
1526 る、
1527 請求項1記載の米を製造する方法についての発明である(以下、
1528 請求項1記載の発明を「X発
1529 明1」、
1530 請求項2記載の発明を「X発明2」といい、
1531 X発明1に係るX特許権を「X特許権1」、
1532
1533 X発明2に係るX特許権を「X特許権2」という。
1534
1535 )。
1536
1537
1538 X発明の出願に関連する事情は次のとおりである。
1539
1540 従来の精白米は、
1541 玄米粒の第1層から第5層
1542 までを除去し、
1543 第6層のみを残す方法で精米されていた。
1544
1545 X発明の発明者は、
1546 第5層の表層付近部
1547 分に米の味を悪くする成分Bが多く含まれる一方で、
1548 第5層のそれ以外の部分には米の味を良くす
1549 る成分Aが多く含まれていることを見出し、
1550 この層の85〜95パーセントが残るように表層側の
1551 部分を削り取る方法を開発した。
1552
1553 この方法が工程αである。
1554
1555 また、
1556 このようにして製造された米は
1557 従来の精白米よりも多くの成分Aを含んでおり、
1558 このような米自体が新規であると調査の上判断し
1559 たXは、
1560 この米についても特許権を取得することとし、
1561 これを請求項1に記載する発明とした。
1562
1563 実
1564 際に、
1565 第5層の表層側の部分を除いた同層の残り85〜95パーセントの部分と第6層の2つの層
1566 のみから構成される米は、
1567 X発明の出願時点においてX以外の者によって製造も販売もされたこと
1568 はなく、
1569 公表された刊行物等に記載されたこともなかった。
1570
1571
1572 精米業者であるYは、
1573 第5層の表層側の部分を除いた同層の残り90パーセントの部分と第6層
1574 の2つの層のみから構成される米(以下「Y商品」という。
1575
1576 )を製造し、
1577 販売している。
1578
1579
1580 XはYに対し、
1581 YによるY商品の製造・販売がX特許権を侵害するとして、
1582 差止めを求めて訴訟
1583 を提起した。
1584
1585
1586 以上の事実関係を前提として、
1587 以下の設問に答えなさい。
1588
1589 なお、
1590 各設問はそれぞれ独立したもの
1591 であり、
1592 相互に関係はないものとする。
1593
1594
1595 1.XはY商品を購入し分析をした上で、
1596 訴訟において、
1597 @X特許権1に関しY商品の構造につい
1598 て、
1599 AX特許権2に関しY商品の製造方法について、
1600 それぞれ具体的に主張した。
1601
1602
1603
1604
1605 Xの前記@の主張に対して、
1606 Yが単に否認するのみで具体的な主張をしない場合、
1607 Yのこの
1608 ような態度は特許法上Yに課されている義務を果たすものといえるか、
1609 簡潔に説明しなさい。
1610
1611
1612
1613
1614
1615 Xの前記主張に対して、
1616 Yが、
1617 前記@の主張に対しては、
1618 X主張のとおりであると認める一
1619 方で、
1620 前記Aの主張に対しては、
1621 単に否認するのみで具体的な主張をしない場合、
1622 Xは、
1623 X特
1624 許権2に関し、
1625 特許法上どのような主張をすることが考えられるか、
1626 簡潔に説明しなさい。
1627
1628
1629
1630 2.Y商品は、
1631 玄米粒の第1層から第4層までを精米機により除去した後に、
1632 特殊な液体に浸すこ
1633 とで第5層の表層側の部分を溶かす方法によって製造されている。
1634
1635
1636
1637
1638 Y商品がX発明1の技術的範囲に属するか否かについて論じなさい。
1639
1640
1641
1642
1643
1644 YはX特許権1に関して、
1645 特許法第104条の3第1項の抗弁を主張している。
1646
1647 この抗弁の
1648 具体的内容としては、
1649 どのようなものが考えられるか、
1650 論じなさい。
1651
1652 また、
1653 この抗弁に対して、
1654
1655 Xはどのような主張をすべきか、
1656 論じなさい。
1657
1658
1659
1660 - 20 -
1661
1662 3.Xは、
1663 X発明が出願された日の2日前にX発明2の方法により製造した米を袋詰めにしたもの
1664 (以下「X商品」という。
1665
1666 )を大量に近隣のスーパーに出荷した。
1667
1668 X商品は、
1669 その出荷の翌日に
1670 は同スーパーの店頭で販売されたが、
1671 X発明の出願時点において1袋も売れていなかった。
1672
1673 この
1674 とき、
1675 X特許権1及びX特許権2に関して、
1676 Yはそれぞれどのような主張をすべきか。
1677
1678 その主張
1679 の妥当性についても、
1680 Xからの反論に留意しつつ論じなさい。
1681
1682
1683 4.X発明が出願される1か月前に第三者により出願され、
1684 X発明の出願後に出願公開がされた出
1685 願βは、
1686 炊飯方法の発明についての特許出願である。
1687
1688 出願βの願書に最初に添付した明細書には、
1689
1690 「第1層から第4層までを精米機により取り除いた上、
1691 さらに第5層のほとんどが残るように同
1692 層の表層側の部分を削り取った米を使用することにより、
1693 炊飯後の米により旨みを感じることが
1694 できるようになる。
1695
1696 」との記載がある。
1697
1698 このとき、
1699 X特許権1に関して、
1700 Yはどのような主張を
1701 すべきか。
1702
1703 その主張の妥当性についても、
1704 Xからの反論に留意しつつ論じなさい。
1705
1706 なお、
1707 出願β
1708 の願書に最初に添付した明細書、
1709 特許請求の範囲及び図面のいずれにも、
1710 上記記載以外に米の構
1711 造や精米方法に関連する記載はないものとする。
1712
1713
1714
1715 - 21 -
1716
1717 〔第2問〕(配点:50)
1718 漫画家であるXとYは、
1719 甲を主人公とする漫画(以下「漫画α」という。
1720
1721 )を共同で制作した。
1722
1723
1724 漫画αのストーリーの大筋は二人が話し合って決定し、
1725 Xが脚本形式の原稿を制作し、
1726 Yが原稿を
1727 ネーム(注)に起こし、
1728 Xと協議してネームを確定させた。
1729
1730 漫画αの作画については、
1731 甲を含む人
1732 物のイラストをXが、
1733 背景をYが担当して制作し、
1734 互いに意見を出し合いながら、
1735 適宜修正を加え
1736 つつ、
1737 完成させた。
1738
1739 その後、
1740 漫画αは出版された。
1741
1742
1743 以上の事実関係を前提にして、
1744 以下の設問に答えなさい。
1745
1746 なお、
1747 著作者人格権に関しては論じる
1748 必要はない。
1749
1750 また、
1751 各設問はそれぞれ独立したものであり、
1752 相互に関係はないものとする。
1753
1754
1755 (注)ネームとは、
1756 漫画を描く際のコマ割り、
1757 構図、
1758 セリフ、
1759 キャラクターの配置などを大まかに描
1760 いたものをいう。
1761
1762 本件のネームでは、
1763 登場人物は○などの記号で特定されているだけで、
1764 イラス
1765 ト化されていない。
1766
1767
1768 [設問1]
1769 大学Aの美術部に所属している学生Bは、
1770 美術部の企画に係る学園祭用の展示物として、
1771 甲の
1772 模型(以下「模型β」という。
1773
1774 )を作成し、
1775 これを所有している。
1776
1777 模型βは、
1778 漫画αに描かれた
1779 甲の特徴を忠実に再現しつつ、
1780 衣装やポーズに独自の工夫を凝らして制作されたものである。
1781
1782 模
1783 型βは、
1784 学園祭の間、
1785 美術部の展示室に設置され、
1786 一般の観覧に供された。
1787
1788 大学祭に来場してい
1789 た玩具製造業者であるCは、
1790 模型βの出来栄えに感銘を受け、
1791 Bから模型βの譲渡を受け、
1792 模型
1793 βを精巧に模倣したフィギュアを制作し、
1794 販売した。
1795
1796 Cは、
1797 漫画αの存在を知らず、
1798 模型βをB
1799 の完全なオリジナル作品と思い込んでいた。
1800
1801
1802
1803 X、
1804 Yは、
1805 それぞれBに対して、
1806 著作権法上どのような請求をすることができるか、
1807 論じなさ
1808 い。
1809
1810
1811
1812 X、
1813 Yは、
1814 それぞれCに対して、
1815 著作権法上どのような請求をすることができるか、
1816 論じなさ
1817 い。
1818
1819
1820 [設問2]
1821 Dは、
1822 我が国を代表するアニメの制作・配信を行う会社である。
1823
1824 DのプロデューサーであるE
1825 は、
1826 漫画αのアニメ映画(以下「映画γ」という。
1827
1828 )の制作を企画し、
1829 XとYにアニメ化の許諾
1830 を求めた。
1831
1832 Xは、
1833 漫画αの出版後十年ほどが経過しているため、
1834 アニメ化は漫画αの人気を浮上
1835 させるよいきっかけになると考え、
1836 アニメ化を了承したが、
1837 Yは、
1838 漫画αの出版後、
1839 Xとの関係
1840 が悪化していたことから、
1841 これ以上Xと関わりを持ちたくないと考え、
1842 アニメ化に反対した。
1843
1844 E
1845 は、
1846 Yに対し、
1847 Xからアニメ化の承諾を得たことを述べた上で、
1848 Yと何度も交渉を重ね、
1849 またY
1850 が反対の意向を示していることを考慮し、
1851 業界の相場を大幅に超える原作使用料を提示したが、
1852
1853 Yは承諾しなかった。
1854
1855 そこで、
1856 Eは、
1857 Xと相談の上、
1858 Yの承諾を得ないまま、
1859 映画γを制作した。
1860
1861
1862 Yがインターネット上で映画γを配信しようとしているDに対して著作権侵害に基づく差止め
1863 を請求する場合、
1864 どのような主張をすべきか。
1865
1866 Dはそれに対してどのような反論をすることが考
1867 えられるか。
1868
1869 それぞれの主張の当否についても論じなさい。
1870
1871
1872 [設問3]
1873 Fは、
1874 民間の漫画教室を主宰する者であり、
1875 インターネット上に開設したホームページで教室
1876 の宣伝を行って受講生を募集し、
1877 有料で作画の指導を行っている。
1878
1879 Fは、
1880 漫画αの出版物を1冊
1881 購入し、
1882 そこから作画の練習に最適と思われるコマ絵を十数枚程度選び出してコピーし、
1883 当該コ
1884 ピーを用いてコマ絵を一つ一つスライドで映し出して、
1885 キャラクターや背景の描き方、
1886 構図、
1887 コ
1888
1889 - 22 -
1890
1891 マ割りなどの作画のポイントを詳細に説明し、
1892 また、
1893 コマ絵を4倍の大きさに拡大したコピーを
1894 受講生に配布し、
1895 コマ絵の模写を行わせ、
1896 生徒の模写の出来栄えを評価するなどしている。
1897
1898
1899
1900 Fが漫画αのコマ絵のコピーを作成する行為、
1901 当該コピーを用いてコマ絵をスライドに映し出
1902 して受講生に見せる行為、
1903 漫画αのコマ絵の拡大コピーを受講生に配布する行為は、
1904 Xの著作権
1905 を侵害するかについて論じなさい。
1906
1907
1908
1909 Xが、
1910 Fに対して、
1911 Fの主宰する漫画教室において、
1912 受講生に漫画αのコマ絵の模写を行わせ
1913 ることに関して差止めを請求する場合、
1914 Xはどのような主張をすべきか。
1915
1916 Fはそれに対してどの
1917 ような反論をすることが考えられるか。
1918
1919 それぞれの主張の当否についても論じなさい。
1920
1921
1922
1923 - 23 -
1924
1925 - 24 -
1926
1927 論文式試験問題集[労
1928
1929 - 25 -
1930
1931 働
1932
1933 法]
1934
1935 [労
1936
1937 働
1938
1939 法]
1940
1941 〔第1問〕(配点:50)
1942 次の事例を読んで、
1943 後記の設問に答えなさい。
1944
1945
1946 【事
1947 1
1948
1949 例】
1950 貨物自動車運送事業等を営むY社は、
1951 令和元年10月1日、
1952 それまでに他の運送事業者におい
1953 て約10年間勤務し、
1954 その間に運行管理業務等に従事した経験を有するX1を、
1955 それらの経験や
1956 運行管理者の資格(注)を有する点を評価し、
1957 正社員として採用した。
1958
1959 その際に締結された労働
1960 契約には、
1961 期間の定めはなく、
1962 職種や業務を限定する定めもなかった。
1963
1964 採用決定時、
1965 Y社はX1
1966 に対して「当面は運行管理者をお願いする。
1967
1968 」と口頭で告げ、
1969 X1は以後運行管理者としてY社
1970 において運行管理業務に従事した。
1971
1972
1973 X2は、
1974 平成29年5月1日、
1975 契約期間を1年とし、
1976 職種を乗務員とする有期労働契約をY社
1977 との間で締結し、
1978 Y社で勤務していた。
1979
1980 X2の有期労働契約は、
1981 平成30年5月1日、
1982 令和元年
1983 5月1日及び令和2年5月1日に、
1984 それぞれ同一の内容で更新されたが、
1985 契約期間を通算した期
1986 間が5年を超えて更新することはないとされており、
1987 X2は、
1988 このことについて採用時に説明を
1989 受けていた。
1990
1991
1992
1993 2
1994
1995 Y社は、
1996 X1が運行管理業務に従事するようになってから乗務員による高速道路の使用が増加
1997 し、
1998 その費用がかなり高額になっていることを気に掛けていたところ、
1999 乗務員の間にX1による
2000 乗務指示の割り振りに対する不満がたまっているとの情報に接したことから、
2001 X1の運行管理者
2002 としての適性に疑問を持ち、
2003 令和2年9月、
2004 X1と面談することとした。
2005
2006 X1は、
2007 同面談におい
2008 て、
2009 乗務員の不満の原因は人員の不足とそれに起因する業務過多にあり、
2010 乗務員の労働条件を改
2011 善し、
2012 離職を防止するためには、
2013 高速道路を使用させることは不可欠であるし、
2014 それにより輸送
2015 事故のリスクも下がることとなる、
2016 と説明した。
2017
2018
2019 Y社は、
2020 X2を含む乗務員数人とも面談したところ、
2021 前記の情報のとおり、
2022 多くの乗務員がX
2023 1の乗務指示の割り振りに不満を持っていることが確認された。
2024
2025 この面談の際、
2026 X2は、
2027 Y社に
2028 対して、
2029 納入先からの帰路に、
2030 軽微ではあるが事故を起こしてしまい、
2031 それ以降、
2032 いつか大きな
2033 事故を起こすかもしれないと不安で乗務に集中できないことがある、
2034 乗務員以外の仕事に代わる
2035 ことができるのであれば代わりたい旨、
2036 心情を吐露した。
2037
2038
2039
2040 3
2041
2042 Y社は、
2043 X1及びX2らとの面談の結果を踏まえ、
2044 X1には運行管理者としての適性が十分に
2045 備わっているといえず、
2046 引き続き運行管理業務に従事させるのは不適当であると判断し、
2047 運行管
2048 理者資格を有する者をほかに手配できる見通しがあったため、
2049 X1の業務を運行管理業務以外の
2050 業務に変更することにした。
2051
2052 また、
2053 X2についても、
2054 輸送事故への不安を持ったまま乗務員を続
2055 けさせるのはリスク管理の点から問題であると判断した。
2056
2057 Y社は、
2058 折から、
2059 倉庫部門の倉庫作業
2060 員数名の有期労働契約が終了し、
2061 倉庫作業員が4名不足する見通しであったことから、
2062 X1とX
2063 2を、
2064 倉庫部門において倉庫業務に就かせることとし、
2065 X1に対しては、
2066 Y社就業規則の規定に
2067 基づき、
2068 令和2年10月1日付けで倉庫部門への配置転換を命じ、
2069 X2に対しては、
2070 倉庫作業員
2071 への職種変更の申込みをし、
2072 X2は同日付けでこれに応じる意思表示をした。
2073
2074 なお、
2075 X1が運行
2076 管理業務を行っていた場所と倉庫部門の倉庫作業員として業務に従事することとなる倉庫は、
2077 Y
2078 社の同一敷地内にあった。
2079
2080 また、
2081 当該配置転換によりX1の基本給等の所定内賃金には変更はな
2082 かったが、
2083 倉庫部門では時間外労働がほとんどないため、
2084 その分の賃金の減少が見込まれた。
2085
2086
2087
2088 4
2089
2090 X1は、
2091 運行管理業務から離れることには不満があったものの、
2092 Y社から、
2093 倉庫部門において
2094 はその作業の管理も任せるとの説明を受けていたため、
2095 配置転換命令に従うこととしたのであっ
2096 たが、
2097 倉庫部門での勤務を実際に開始すると、
2098 作業の管理を行うためのシステムや設備が存在せ
2099 ず、
2100 仕分けや積込み等の作業しかなかった。
2101
2102 また、
2103 倉庫部門の中で、
2104 正社員はX1ただ一人であ
2105
2106 - 26 -
2107
2108 り、
2109 他の倉庫作業員は全て有期労働契約で業務に従事する者であった。
2110
2111 X1は、
2112 それらの状況を
2113 知ってモチベーションが下がり、
2114 肉体的疲労も強かったため、
2115 この配置転換に強い不満を抱くに
2116 至った。
2117
2118
2119 その一方で、
2120 X2は、
2121 乗務員であった時期に輸送した物品に関する豊富な知識があったことか
2122 ら、
2123 職種変更後の倉庫業務にやりがいを感じ、
2124 その知識をいかして同僚にも有効なアドバイスを
2125 するようになり、
2126 次第に周囲から頼られる存在となった。
2127
2128
2129 5
2130
2131 令和3年4月、
2132 Y社は、
2133 X2に対し、
2134 同年5月1日からの有期労働契約書を提示した。
2135
2136 同契約
2137 書には、
2138 契約期間は同日から令和4年4月30日までの1年間であること、
2139 更新はないこと、
2140 職
2141 種は倉庫作業員であることが記載されていた。
2142
2143 X2は、
2144 職種変更により通算で更新可能な期間が
2145 リセットされると思い、
2146 同年5月以降も働けることを事務担当者に確認したところ、
2147 同事務担当
2148 者は、
2149 「それは難しいと思いますが、
2150 1年先の話ですから、
2151 今後、
2152 確認されてはどうですか。
2153
2154 」
2155 と言い、
2156 それを聞いたX2は、
2157 確かに今確認する必要はないと思い、
2158 同契約書に署名した。
2159
2160
2161 その後約1年が経過した令和4年4月、
2162 X2は、
2163 Y社に対して、
2164 労働契約の更新を求めたが、
2165
2166 Y社はこれを拒否した。
2167
2168 X2とY社との間の労働契約は、
2169 同月30日をもって契約期間が満了し
2170 たが、
2171 翌5月1日時点で、
2172 倉庫作業員は2名不足していた。
2173
2174
2175
2176 (注)
2177
2178 運行管理者は、
2179 道路運送法及び貨物自動車運送事業法に基づき、
2180 事業用自動車の運転者の
2181 乗務割の作成、
2182 休憩・睡眠施設の保守管理、
2183 運転者の指導監督、
2184 点呼による運転者の疲労・
2185 健康状態等の把握や安全運行の指示等、
2186 事業用自動車の運行の安全を確保するための運行管
2187 理業務を行う専門職であり、
2188 その資格を得るには、
2189 @事業用自動車の運行管理に関する5年
2190 以上の実務経験を有し、
2191 かつ、
2192 その間に所定の講習を5回以上受講していること等の要件を
2193 満たすこと、
2194 又はA運行管理者試験に合格することが必要である。
2195
2196 自動車運送事業者は、
2197 営
2198 業所ごとに保有車両数に応じた一定の人数以上の運行管理者を選任しなければならない。
2199
2200
2201
2202 〔設
2203
2204 問〕
2205
2206 1.X1は、
2207 倉庫部門への配置転換は不当であり、
2208 運行管理業務に戻すべきであると主張している。
2209
2210 こ
2211 のX1の見解の当否について、
2212 検討すべき法律上の論点を挙げて、
2213 あなたの意見を述べなさい。
2214
2215
2216 2.X2は、
2217 Y社の契約更新拒否は不当であり、
2218 令和4年5月1日以降もY社に雇用され続けてい
2219 ると考えている。
2220
2221 このX2の見解の当否について、
2222 検討すべき法律上の論点を挙げて、
2223 あなたの
2224 意見を述べなさい。
2225
2226
2227
2228 - 27 -
2229
2230 〔第2問〕(配点:50)
2231 次の事例を読んで、
2232 後記の設問に答えなさい。
2233
2234
2235 【事
2236
2237 例】
2238 食品の製造販売業を営むY社は、
2239 同社の全ての事業場で労働者の過半数を組織するA労働組合と
2240
2241 の間で30年前になされた書面化されていない合意に基づき、
2242 同社の正社員(無期労働契約で雇用
2243 されている労働者)に対し、
2244 7月と12月の年に2回、
2245 それぞれ基本給月額の2か月分の賞与を支
2246 給してきた。
2247
2248 その支給要件は、
2249 7月に支給される賞与については前年度の10月から3月までの期
2250 間、
2251 12月に支給される賞与については当年度の4月から9月までの期間に、
2252 所定労働日数の9割
2253 以上出勤し、
2254 賞与支給日に在籍していることとされ、
2255 30年間、
2256 この取扱いが同社内で問題とされ
2257 ることはなかった。
2258
2259 その間、
2260 同社の正社員に適用される正社員就業規則(後述する令和2年の改定
2261 の前のもの)には、
2262 賞与の支給に関しては、
2263 「会社は、
2264 会社の業績や経営状況等により、
2265 7月と1
2266 2月の年に2回、
2267 賞与の支給日に在籍している正社員に対し、
2268 賞与を支給することがある。
2269
2270 」との
2271 規定が置かれているのみであった。
2272
2273 一方、
2274 同社の契約社員(有期労働契約で雇用されている労働者)
2275 に適用される契約社員就業規則(後述する令和2年の改定の前のもの)には、
2276 賞与の支給に関する
2277 規定はなく、
2278 同社の契約社員には賞与は支給されていなかった。
2279
2280
2281 Y社は、
2282 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71
2283 号)による「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成5年法律
2284 第76号)の改正(同改正により同法の題名も改められた。
2285
2286 )が令和2年4月1日に施行されるこ
2287 とに合わせて、
2288 同年7月から、
2289 契約社員にも賞与を支給する方針を固めた。
2290
2291 Y社は、
2292 令和元年10
2293 月から令和2年3月にかけてA労働組合と団体交渉を重ね、
2294 同月27日に、
2295 A労働組合との間で、
2296
2297 「令和2年7月以降の賞与は、
2298 正社員については基本給月額の1.8か月分とし、
2299 契約社員につい
2300 ては基本給月額の0.5か月分とする。
2301
2302 」との書面による労働協約を締結した。
2303
2304 なお、
2305 同社は、
2306 同
2307 年3月末時点で、
2308 200人の正社員と125人の契約社員を雇用しており、
2309 正社員である労働者は、
2310
2311 ユニオン・ショップ協定に基づき、
2312 取締役を兼務する部長6名と総務部の次長・課長2名以外の全
2313 員がA労働組合に加入しているが、
2314 同社の契約社員は、
2315 ユニオン・ショップ協定の対象外とされ、
2316
2317 A労働組合に加入していない。
2318
2319
2320 Y社は、
2321 同労働協約の締結後、
2322 正社員就業規則の前記の賞与規定を改定して、
2323 「会社は、
2324 7月と
2325 12月の年に2回、
2326 7月に支給される賞与については前年度の10月から3月までの期間、
2327 12月
2328 に支給される賞与については当年度の4月から9月までの期間に、
2329 所定労働日数の9割以上出勤し、
2330
2331 賞与支給日に在籍している正社員に対し、
2332 基本給月額の1.8か月分の賞与を支給する。
2333
2334 」との規
2335 定を設け、
2336 契約社員就業規則には、
2337 新たに、
2338 「会社は、
2339 7月と12月の年に2回、
2340 7月に支給され
2341 る賞与については前年度の10月から3月までの期間、
2342 12月に支給される賞与については当年度
2343 の4月から9月までの期間に、
2344 所定労働日数の9割以上出勤し、
2345 賞与支給日に在籍している契約社
2346 員に対し、
2347 基本給月額の0.5か月分の賞与を支給する。
2348
2349 」との規定を設けた。
2350
2351 Y社は、
2352 A労働組
2353 合から、
2354 「各就業規則改定に賛成する」旨の意見を聴取し、
2355 令和2年3月31日、
2356 所轄の労働基準
2357 監督署長に改定後の各就業規則の届出をした上で、
2358 同社の全ての労働者に対し、
2359 社内電子メールを
2360 送付して改定後の各就業規則を周知した。
2361
2362
2363 Y社の正社員でA労働組合の組合員であるX1は、
2364 令和2年7月に支給された賞与が従来支給さ
2365 れていた基本給月額の2か月分から1.8か月分に減額されたことに不満を持っている。
2366
2367
2368 また、
2369 平成29年4月1日に契約期間1年の有期労働契約でY社に雇用された契約社員であるX
2370 2は、
2371 同契約を3回更新され、
2372 令和2年7月を迎えたが、
2373 同月に支給された賞与が基本給月額の0.
2374 5か月分であったことに不満を持っている。
2375
2376 X2が、
2377 Y社に対し、
2378 正社員と契約社員の間の賞与の
2379 相違とその理由について説明を求めたところ、
2380 Y社の総務部長は、
2381 X2に対し、
2382 「会社の就業規則
2383 にそう規定されています。
2384
2385 」と述べて、
2386 同社の正社員就業規則と契約社員就業規則の該当規定を提
2387
2388 - 28 -
2389
2390 示した。
2391
2392
2393 なお、
2394 X2は、
2395 Y社で食品衛生管理に関する事務作業に従事しているが、
2396 その職務の内容は、
2397 同
2398 じ部署で働いている入社3年目の正社員と同じであり、
2399 同部署の入社1年目の正社員に対して、
2400 業
2401 務遂行について教育指導を行うこともあった。
2402
2403 Y社の契約社員の基本給は時間給制であり、
2404 契約社
2405 員には勤務地の変更を伴う配置転換はない。
2406
2407 Y社の正社員の基本給は経験と能力に応じた職能給
2408 (月給)制であり、
2409 正社員には勤務地の変更を伴う配置転換があるほか、
2410 同社の幹部になることを
2411 視野に入れ、
2412 長期的に人材育成がなされるものとされていた。
2413
2414 Y社には、
2415 契約社員から正社員に登
2416 用される制度はない。
2417
2418
2419 〔設
2420
2421 問〕
2422
2423 1.X1は、
2424 Y社に対し、
2425 基本給月額2か月分の賞与の支払を請求することができるか。
2426
2427 考えられ
2428 る論点を挙げて検討し、
2429 あなたの見解を述べなさい。
2430
2431
2432 2.X2は、
2433 Y社に対し、
2434 正社員と契約社員の間の令和2年7月以降の賞与の相違について、
2435 何ら
2436 かの請求をすることができるか。
2437
2438 考えられる論点を挙げて検討し、
2439 あなたの見解を述べなさい。
2440
2441
2442
2443 - 29 -
2444
2445 - 30 -
2446
2447 論文式試験問題集[環
2448
2449 - 31 -
2450
2451 境
2452
2453 法]
2454
2455 [環
2456
2457 境
2458
2459 法]
2460
2461 〔第1問〕 (配点:50)
2462 株式会社A(以下「A社」という。
2463
2464 )は、
2465 B県内のC工場において金属の精錬の用に供するため
2466 にコークス炉(以下「炉」という。
2467
2468 )を設置するため、
2469 大気汚染防止法(以下「法」という。
2470
2471 )に
2472 基づいて、
2473 ばい煙発生施設の届出をし、
2474 炉の稼働をしてきた。
2475
2476 C工場は、
2477 稼働の当初は法の定めに
2478 従って、
2479 測定を実施し、
2480 法の定める規制基準は遵守されていることを確認し、
2481 記録を保存してきた。
2482
2483
2484 しかしながら、
2485 炉の老朽化に伴って公害発生防止設備の機能が低下したため、
2486 ばい煙に含まれる法
2487 の規制対象物質、
2488 特に、
2489 いおう酸化物とベンゼンの濃度が上昇し、
2490 平成10年代の中頃には、
2491 いお
2492 う酸化物については基準値の10倍、
2493 ベンゼンについても基準値の1.5倍の値が恒常的に測定さ
2494 れるようになった(当時の測定記録はC工場に保管されていたため、
2495 後述のB県の立入調査の際に
2496 B県に提出された。
2497
2498 )。
2499
2500 それにもかかわらず、
2501 C工場の工場長は、
2502 費用の点から炉の改修を忌避し、
2503
2504 ついには測定及び記録の保存そのものを平成20年(2008年)頃に独断で中止した(後にC工
2505 場関係者の証言等により判明した経緯からは、
2506 その後も長期にわたり法令違反が継続していたこと
2507 が確認されている。
2508
2509 )。
2510
2511 令和3年(2021年)夏に入って、
2512 C工場の法令違反に関する匿名の通
2513 報がB県に寄せられ、
2514 これを受けてB県環境部の担当者がC工場の立入調査を実施したことから、
2515
2516 C工場の法令違反が発覚するに至った。
2517
2518
2519 〔設問1〕
2520 本件設例において、
2521 いおう酸化物の基準値超過が問題となったのはK値規制基準に関してであ
2522 る。
2523
2524 【資料1】のK値規制基準の計算式においてHe(一定の補正を受けた煙突の排出口の高さ)
2525 が用いられた趣旨について説明しなさい(Heの値の算出方法及びHeについて2乗とされた根
2526 拠については問わない。
2527
2528 )。
2529
2530
2531 〔設問2〕
2532 いおう酸化物に関するC工場の法令違反に対してB県はどのように対応すべきかを関係規定を
2533 示しつつ説明しなさい。
2534
2535
2536 〔設問3〕
2537 ベンゼンは有害大気汚染物質であり、
2538 指定物質抑制基準が定められている物質でもある(【資
2539 料2】)。
2540
2541 有害大気汚染物質対策の制度が設けられた趣旨を説明しなさい。
2542
2543 その上で、
2544 指定物質
2545 抑制基準が設けられているベンゼンに関するC工場の基準値超過に対してB県はどのように対応
2546 すべきかを関係規定を示しつつ説明しなさい(ベンゼンは揮発性有機化合物であるが、
2547 法第2章
2548 の2「揮発性有機化合物の排出の規制等」については本問において検討しなくてよい。
2549
2550 )。
2551
2552
2553 〔設問4〕
2554 本件設例において、
2555 A社は、
2556 立入調査時には施設の点検等を通じていおう酸化物及びベンゼン
2557 の基準値超過を解消しており、
2558 B県の調査方法に問題があったと考えている。
2559
2560 〔設問2〕〔設問
2561 3〕において解答した対応をB県が実施しようとし、
2562 かつ、
2563 ベンゼンに関する基準値超過を含め
2564 てB県がその対応を公表しようと計画している時点において、
2565 A社はどのような法的請求を選択
2566 肢に入れて検討すべきかを説明しなさい(損害賠償請求は考えなくてよい。
2567
2568 行政手続法上の手段、
2569
2570 仮の救済・仮処分及び本案の主張は問わない。
2571
2572 )。
2573
2574
2575
2576 - 32 -
2577
2578 【資料1】
2579 K値規制基準は、
2580 大気汚染防止法施行規則(昭和46年厚生省・通商産業省令第1号)第3条第1
2581 項において、
2582 次のように規定されている。
2583
2584
2585 q=K×10−3He2
2586 (この式において、
2587 q、
2588 K及びHeは、
2589 それぞれ次の値を表わすものとする。
2590
2591
2592 q
2593
2594 いおう酸化物の量(単位
2595
2596 K
2597
2598 法第3条第2項第1号の政令で定める地域ごとに別表第1の下欄に掲げる値
2599
2600 He
2601
2602 温度零度、
2603 圧力一気圧の状態に換算した立方メートル毎時)
2604
2605 次項に規定する方法により補正された排出口の高さ(単位
2606
2607 メートル))
2608
2609 【資料2】
2610 ○
2611
2612 ベンゼンは大気汚染防止法施行令附則第3項により、
2613 同法附則第9項に規定する指定物質とされ
2614
2615 ており、
2616 ベンゼンに関する指定物質抑制基準は定められて公表されている(コークス炉に関する指
2617 定物質抑制基準は省略する。
2618
2619 )。
2620
2621
2622 ○
2623
2624 大気汚染防止法施行令(昭和43年政令第329号)附則(抜粋)
2625
2626 (指定物質)
2627 3
2628 一
2629
2630 法附則第9項の政令で定める物質は、
2631 次に掲げる物質とする。
2632
2633
2634 ベンゼン(以下、
2635 略)
2636
2637 - 33 -
2638
2639 〔第2問〕 (配点:50)
2640 Aは、
2641 B県において物質Cを使用・処理する施設を設置している。
2642
2643 Aの施設は、
2644 水質汚濁防止法
2645 上の特定施設である。
2646
2647 以下の設問に答えなさい。
2648
2649
2650 〔設問1〕
2651 本件設例において、
2652 Cはトリクロロエチレンであるとする。
2653
2654 地下水汚染防止のため、
2655 水質汚濁
2656 防止法上、
2657 Aにはどのような義務が課されているか。
2658
2659 【資料1】 を参照しつつ、
2660 答えなさい。
2661
2662
2663 〔設問2〕
2664 本件設例において、
2665 Cはトリクロロエチレンであるとする。
2666
2667 Aの施設からCが排出され又は漏
2668 えいし、
2669 地下水等が汚染され、
2670 さらに周辺のD及びEの所有地の土壌も汚染されたことが判明し
2671 た。
2672
2673 この場合において、
2674 B県知事は、
2675 Aに対してどのような措置を採ることができるか。
2676
2677 【資料
2678 2】を参照しつつ、
2679 水質汚濁防止法と土壌汚染対策法の地下水汚染対策に対する考え方の相違を
2680 踏まえて答えなさい。
2681
2682
2683 〔設問3〕
2684 本件設例において、
2685 Cはトリクロロエチレンであるとする。
2686
2687 Aは、
2688 令和2年(2020年)に、
2689
2690 自己の施設のある土地のCによる土壌汚染に対してB県知事の指示に基づく汚染除去等の措置を
2691 完了していたところ、
2692 令和3年(2021年)に、
2693 トリクロロエチレンに関する土壌の汚染に係
2694 る環境基準(以下「土壌環境基準」という。
2695
2696 )が(検液1Lにつき)0.03mg以下から0.
2697 01mg以下に強化された。
2698
2699 そのため、
2700 令和2年(2020年)にAが採った措置では、
2701 強化さ
2702 れた土壌環境基準に基づく「環境省令で定める基準」に適合しない状況になった。
2703
2704 B県知事は、
2705
2706 Aに対して土壌汚染に関して上記環境基準の強化を理由として汚染除去等の追加的措置を求める
2707 ことができるか。
2708
2709 【資料3】を参照しつつ、
2710 簡潔な理由を付して答えなさい。
2711
2712
2713 〔設問4〕
2714 本件設例において、
2715 Cは水溶性が高く、
2716 塩素に反応する有機化合物であるとする。
2717
2718 Aの施設か
2719 らCが河川に排出され、
2720 下流に流下し、
2721 浄水場における浄水過程で注入された塩素と反応し、
2722 消
2723 毒副生成物としてホルムアルデヒドが生成されてしまった。
2724
2725 浄水場では取水が停止され、
2726 浄水場
2727 が設置されていたF市では断水・減水が発生し、
2728 水道事業者としてのF市は拠点給水所の設置、
2729
2730 給水車の出動等による応急給水を余儀なくされた。
2731
2732 Cに関してはその当時、
2733 排水基準は設定され
2734 ていなかったとする。
2735
2736 この場合において、
2737 F市は、
2738 Aに対してどのような法的請求ができるか。
2739
2740
2741
2742 - 34 -
2743
2744 【資料1】
2745 ○
2746
2747 水質汚濁防止法施行令第2条 (昭和46年政令第188号)(抜粋)
2748
2749 (カドミウム等の物質)
2750 第2条
2751
2752 法第2条第2項第1号の政令で定める物質は、
2753 次に掲げる物質とする。
2754
2755
2756
2757 一〜八
2758 九
2759
2760 (略)
2761
2762 トリクロロエチレン(以下、
2763 略)
2764
2765 【資料2】
2766 ○ 「水質汚濁防止法の一部を改正する法律の施行について」(平成8年環水管第275号)(抜粋)
2767 地下水汚染から人の健康を保護するという観点から、
2768 措置命令は、
2769 水質汚濁防止法施行規則(昭
2770 和46年総理府・通商産業省令第2号。
2771
2772 以下「規則」という。
2773
2774 )第9条の3第2項に定められる浄
2775 化基準を超えて汚染された地下水に関し、
2776 次に掲げる地下水の利用等の状態に応じて、
2777 同項各号に
2778 定められる地点において浄化基準(汚染原因者が二以上ある場合には、
2779 削減目標)を達成することを
2780 限度として発することができることとされている。
2781
2782 (中略)
2783 人の飲用に供せられ、
2784 又は供せられることが確実である場合(規則第9条の3第2項第1号)
2785 (中略)
2786
2787
2788 水道法(昭和32年法律第177号)第3条第2項に規定する水道事業(同条第5項に規定
2789
2790 する水道用水供給事業者により供給される水道水のみをその用に供するものを除く。
2791
2792 )、
2793 同条
2794 第4項に規定する水道用水供給事業又は同条第6項に規定する専用水道のための原水として取
2795 水施設より取り入れられ、
2796 又は取り入れられることが確実である場合(規則第9条の3第2項
2797 第2号)(中略)
2798
2799
2800 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第40条第1項に規定する都道府県地域防災
2801
2802 計画等に基づき災害時において人の飲用に供せられる水の水源とされている場合(規則第9条
2803 の3第2項第3号)(中略)
2804
2805
2806 水質環境基準(有害物質に該当する物質に係るものに限る。
2807
2808 )が確保されない公共用水域の
2809
2810 水質の汚濁の主たる原因となり、
2811 又は原因となることが確実である場合(規則第9条の3第2
2812 項第4号)(以下、
2813 略)
2814 ○
2815
2816 土壌汚染対策法施行令第3条 (平成14年政令第336号)(抜粋)
2817
2818 (土壌汚染状況調査の対象となる土地の基準)
2819 第3条
2820
2821 法第5条第1項の政令で定める基準は、
2822 次の各号のいずれにも該当することとする。
2823
2824
2825
2826 一
2827
2828 次のいずれかに該当すること。
2829
2830
2831
2832 イ 当該土地の土壌の特定有害物質(法第2条第1項に規定する特定有害物質をいう。
2833
2834 以下同じ。
2835
2836 )
2837 による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないことが明らかであり、
2838 当該土壌の特定有
2839 害物質による汚染に起因して現に環境省令で定める限度を超える地下水の水質の汚濁が生じ、
2840
2841 又は生ずることが確実であると認められ、
2842 かつ、
2843 当該土地又はその周辺の土地にある地下水の
2844 利用状況その他の状況が環境省令で定める要件に該当すること。
2845
2846
2847 ロ
2848
2849 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態がイの環境省令で定める基準に適合しないお
2850
2851 それがあり、
2852 当該土壌の特定有害物質による汚染に起因して現にイの環境省令で定める限度を
2853 超える地下水の水質の汚濁が生じていると認められ、
2854 かつ、
2855 当該土地又はその周辺の土地にあ
2856 る地下水の利用状況その他の状況がイの環境省令で定める要件に該当すること。
2857
2858
2859 ハ
2860
2861 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合せず、
2862 又は適
2863
2864 合しないおそれがあると認められ、
2865 かつ、
2866 当該土地が人が立ち入ることができる土地(中略)
2867
2868 - 35 -
2869
2870 であること。
2871
2872
2873 二
2874
2875 次のいずれにも該当しないこと。
2876
2877
2878 イ、
2879 ロ(略)
2880
2881 ○
2882
2883 土壌汚染対策法施行規則第30条 (平成14年環境省令第29号)
2884
2885 (地下水の利用状況等に係る要件)
2886 第30条
2887
2888 令第3条第1号イの環境省令で定める要件は、
2889 地下水の流動の状況等からみて、
2890 地下水汚
2891
2892 染(地下水から検出された特定有害物質が地下水基準に適合しないものであることをいう。
2893
2894 以下同
2895 じ。
2896
2897 )が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域に、
2898 次の各号の
2899 いずれかの地点があることとする。
2900
2901
2902 一
2903
2904 地下水を人の飲用に供するために用い、
2905 又は用いることが確実である井戸のストレーナー、
2906 揚
2907 水機の取水口その他の地下水の取水口
2908
2909 二
2910
2911 地下水を水道法(昭和32年法律第177号)第3条第2項に規定する水道事業(同条第5項
2912 に規定する水道用水供給事業者により供給される水道水のみをその用に供するものを除く。
2913
2914 )、
2915
2916 同条第4項に規定する水道用水供給事業若しくは同条第6項に規定する専用水道のための原水と
2917 して取り入れるために用い、
2918 又は用いることが確実である取水施設の取水口
2919
2920 三
2921
2922 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第40条第1項の都道府県地域防災計画等に基
2923 づき、
2924 災害時において地下水を人の飲用に供するために用いるものとされている井戸のストレー
2925 ナー、
2926 揚水機の取水口その他の地下水の取水口
2927
2928 四
2929
2930 地下水基準に適合しない地下水のゆう出を主たる原因として、
2931 水質の汚濁に係る環境上の条件
2932 についての環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の基準が確保されない水質の汚
2933 濁が生じ、
2934 又は生ずることが確実である公共用水域の地点
2935
2936 【資料3】
2937 ○
2938
2939 中央環境審議会「土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直し
2940
2941 その他法の運用に関し必要な事項について(第4次答申)−カドミウム及びその化合物、
2942 トリクロ
2943 ロエチレン」 (令和2年1月)(抜粋)
2944 W
2945
2946 特定有害物質の基準の見直しに伴う法の制度運用について
2947
2948 1.基本的考え方
2949 特定有害物質の見直しに伴う法(注:ここにいう「法」とは、
2950 土壌汚染対策法をいう。
2951
2952 以下同
2953 じ。
2954
2955 )の制度運用については、
2956 「土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有
2957 害物質の見直しその他法の運用に関して必要な事項について(第2次答申)」(平成27年12
2958 月中央環境審議会)で基本的考えを整理しており、
2959 カドミウム等(注:ここにいう「カドミウム
2960 等」とは、
2961 カドミウム及びその化合物並びにトリクロロエチレンをいう。
2962
2963 以下同じ。
2964
2965 )の基準の
2966 見直しにおいても第2次答申の考え方を踏まえ、
2967 土地の所有者等に過剰な負担をかけないものと
2968 する必要がある。
2969
2970
2971 カドミウム等の基準が見直された後に、
2972 法第3条第1項の有害物質使用特定施設の廃止、
2973 法第
2974 3条第8項の調査の命令、
2975 法第4条第2項の報告、
2976 法第4条第3項の調査の命令、
2977 法第5条第1
2978 項の調査の命令、
2979 又は法第14条第1項の申請(以下「有害物質使用特定施設の廃止等」という。
2980
2981 )
2982 を行う場合の土壌汚染状況調査(法第14条第3項において土壌汚染状況調査とみなされるもの
2983 を含む。
2984
2985 以下同じ。
2986
2987 )においてカドミウム等を測定の対象とする場合には、
2988 見直し後の基準で評
2989 価を行うことが適当である。
2990
2991
2992 また、
2993 カドミウム等の基準が見直された後に行う、
2994 法第7条第1項の指示を受ける場合の汚染
2995 の除去等の措置に伴う土壌の分析及び地下水の測定並びに認定調査については、
2996 見直された後の
2997 基準で評価を行うことが適当である。
2998
2999 また、
3000 汚染土壌処理業に関する省令(平成21年環境省令
3001
3002 - 36 -
3003
3004 第10号)第5条第22号イに基づく調査(以下「浄化確認調査」という。
3005
3006 )におけるカドミウ
3007 ム等の測定においても、
3008 見直された後の基準で評価を行うことが適当である。
3009
3010
3011 カドミウム等の基準が見直される以前に、
3012 既に有害物質使用特定施設の廃止等が行われている
3013 場合にあっては、
3014 基準が見直されたことのみを理由に当該有害物質使用特定施設の廃止等に係る
3015 土壌汚染状況調査の再実施を求めないことが適当である。
3016
3017 同様に、
3018 カドミウム等の基準が見直さ
3019 れる以前に、
3020 カドミウム等により要措置区域に指定されている土地において都道府県知事の指示
3021 に基づく汚染の除去等の措置を講じている場合にあっては、
3022 見直される前の基準により評価を行
3023 っていることのみを理由に、
3024 当該措置の再実施を求めないことが適当である。
3025
3026
3027 ただし、
3028 見直し後の基準に適合せず、
3029 又は適合しないおそれがあると認められる土壌がある場
3030 合にあっては、
3031 土壌溶出量基準に適合しない場合は地下水の水質の汚濁の状況及び地下水の飲用
3032 利用の有無によって、
3033 土壌含有量基準に適合しない場合は人が立ち入ることができる土地である
3034 か否かによって、
3035 それぞれ人の健康に係る被害が生ずるおそれがある場合がある。
3036
3037 このため、
3038 基
3039 準見直し前に実施した土壌汚染状況調査その他の調査の結果において土壌溶出量又は土壌含有量
3040 が見直し後の基準に適合しておらず、
3041 特段の措置が講じられていない土壌が現に存在することが
3042 明らかな場合にあっては、
3043 都道府県知事は、
3044 地下水の水質の汚濁の状況若しくは地下水の飲用利
3045 用の有無又は人が立ち入ることができる土地であるか否かについて確認を行うことが適当である。
3046
3047
3048 その上で、
3049 法第5条第1項に基づく土壌汚染状況調査の対象となる土地の基準(令(注:ここに
3050 いう「令」とは、
3051 土壌汚染対策法施行令をいう。
3052
3053 )第3条)を満たす場合にあっては、
3054 都道府県
3055 知事は、
3056 指導により汚染の摂取経路を遮断するための措置を講じさせることや、
3057 同項の調査命令
3058 を発出することが適当である。
3059
3060 (以下、
3061 略)
3062
3063 - 37 -
3064
3065 - 38 -
3066
3067 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
3068
3069 - 39 -
3070
3071 [国際関係法(公法系)]
3072 〔第1問〕(配点:50)
3073 A国に隣接するB国では軍参謀総長]が軍事クーデターを起こしてB国大統領Yを解任しその身
3074 柄を拘束した。
3075
3076 その後、
3077 ]は最高軍事評議会を設置してその議長に就任し、
3078 B国の行政府、
3079 司法府
3080 及び立法府の機能を停止させ全権を掌握した。
3081
3082 この間、
3083 最高軍事評議会の指示を受けたB国軍がY
3084 を支持する政治団体Pを弾圧し、
3085 A国民を含むその主要メンバーの身柄を拘束して拷問を加えるな
3086 ど非人道的な行為を行った。
3087
3088 この弾圧を逃れるため、
3089 多くのPのメンバーが隣国のA国に逃れたも
3090 のの、
3091 これを追ってB国軍は国境を越えA国に侵入し、
3092 A国内の国境付近に所在する建物への砲撃
3093 を含む軍事活動を行った。
3094
3095
3096 B国軍による侵入を受けたA国は武力によりB国軍を国境外に撃退する軍事作戦を実施し、
3097 その
3098 状況を国際連合安全保障理事会に報告した。
3099
3100 A国と友好関係にあるC国もB国軍を撃退するために
3101 自国軍隊をA国に派遣することを計画したが、
3102 A国とC国との間では、
3103 相互の安全保障や軍事協力
3104 に関する合意は締結されていなかった。
3105
3106
3107 B国内で飲食業を営んでいたB国民のZは、
3108 このクーデターが発生する前から、
3109 B国内の治安が
3110 悪化していたことを心配し、
3111 念のために自分の資産の一部をC国の市中銀行にあるZ名義の口座に
3112 預けるとともに、
3113 B国籍を離脱して、
3114 一定額の資産がC国内に存在することでC国籍を取得できる
3115 同国の国籍法に基づきC国籍を取得していた。
3116
3117 軍事クーデター後、
3118 B国最高軍事評議会は、
3119 同国内
3120 に所在する自国民の財産のほか外国人の財産も全て収用する命令を発し、
3121 B国内に所在するZの資
3122 産も補償を受けることなくB国に収用された。
3123
3124 そこで、
3125 C国はB国に対してZが受けた損害につい
3126 て賠償を請求したが、
3127 B国はC国の請求を拒否した。
3128
3129
3130 その後、
3131 B国最高軍事評議会が内紛で崩壊して]はD国に逃亡し、
3132 Pを後ろ盾としてYが再び大
3133 統領に就任した。
3134
3135 A国は、
3136 自国民が拷問を受けたことを理由として自国国内法により]を訴追する
3137 ため、
3138 D国に]の身柄の引渡しを求めたところ、
3139 D国はこのA国の要請を拒否し、
3140 自国の裁判所へ
3141 の]の訴追も行わなかった。
3142
3143 C国もまたD国に対して]の身柄をA国に引き渡すよう求めたが、
3144 D
3145 国はこれにも応じなかったため、
3146 C国はこの問題を仲裁に付託することをD国に提案した。
3147
3148 しかし、
3149
3150 D国が半年以上もその提案を無視したことから、
3151 C国は、
3152 ]の身柄の引渡しを求めたA国の要請を
3153 D国が拒否し、
3154 D国自身の裁判所への]の訴追も行わなかったことは、
3155 1984年の拷問及び他の
3156 残虐な、
3157 非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(以下「拷問等禁止条約」と
3158 いう。
3159
3160 )に違反すると主張して、
3161 同条約第30条第1項に基づき国際司法裁判所(以下「ICJ」
3162 という。
3163
3164 )に紛争を付託した。
3165
3166
3167 また、
3168 Yが再び政権に就いた後、
3169 C国は、
3170 Zが受けた財産の損害について改めてB国に対して賠
3171 償を請求したが、
3172 B国は、
3173 Zへの侵害行為は最高軍事評議会が行ったことであり、
3174 現在のY政権は
3175 無関係であるとして、
3176 C国による損害賠償請求を拒否した。
3177
3178
3179 A国、
3180 B国、
3181 C国及びD国の4国はいずれも国際連合加盟国であり、
3182 拷問等禁止条約にも留保を
3183 付さずに締約国となっている。
3184
3185
3186 以上の事実を基に、
3187 以下の設問に答えなさい。
3188
3189
3190 〔設
3191
3192 問〕
3193
3194 1.B国軍によるA国への軍事活動に対して、
3195 A国は自国軍隊の武力行使を正当化するために、
3196
3197 国際法上どのような主張を行わなければならないかについて論じなさい。
3198
3199 また、
3200 C国がA国に
3201 自国軍隊を単独で派遣し同国内での武力行使を正当化するためには、
3202 国際法上いかなる要件が
3203 満たされなければならないかについても論じなさい。
3204
3205
3206 2.C国は、
3207 D国の拷問等禁止条約違反の認定をICJに求めるためにいかなる主張が可能かに
3208 ついて論じなさい。
3209
3210
3211
3212 - 40 -
3213
3214 3.B国によりZが受けた損害に関して、
3215 Yの政権復帰後、
3216 C国はいかなる国際法上の根拠に基
3217 づき損害賠償をB国に主張し得るかについて論じなさい。
3218
3219
3220
3221 【参考資料】拷問等禁止条約(抜粋)
3222 第4条
3223 1
3224
3225 締約国は、
3226 拷問に当たるすべての行為を自国の刑法上の犯罪とすることを確保する。
3227
3228 拷問の未
3229 遂についても同様とし、
3230 拷問の共謀又は拷問への加担に当たる行為についても同様とする。
3231
3232
3233
3234 2
3235
3236 締約国は、
3237 1の犯罪について、
3238 その重大性を考慮した適当な刑罰を科することができるように
3239 する。
3240
3241
3242
3243 第5条
3244 1
3245
3246 締約国は、
3247 次の場合において前条の犯罪についての自国の裁判権を設定するため、
3248 必要な措置
3249 をとる。
3250
3251
3252
3253 (a)
3254
3255 犯罪が自国の管轄の下にある領域内で又は自国において登録された船舶若しくは航空機内
3256
3257 で行われる場合
3258 (b)
3259
3260 容疑者が自国の国民である場合
3261
3262 (c)
3263
3264 自国が適当と認めるときは、
3265 被害者が自国の国民である場合
3266
3267 2
3268
3269 締約国は、
3270 容疑者が自国の管轄の下にある領域内に所在し、
3271 かつ、
3272 自国が1のいずれの締約国
3273 に対しても第8条の規定による当該容疑者の引渡しを行わない場合において前条の犯罪について
3274 の自国の裁判権を設定するため、
3275 同様に、
3276 必要な措置をとる。
3277
3278
3279
3280 3
3281
3282 この条約は、
3283 国内法に従って行使される刑事裁判権を排除するものではない。
3284
3285
3286
3287 第7条
3288 1
3289
3290 第4条の犯罪の容疑者がその管轄の下にある領域内で発見された締約国は、
3291 第5条の規定に該
3292 当する場合において、
3293 当該容疑者を引き渡さないときは、
3294 訴追のため自国の権限のある当局に事
3295 件を付託する。
3296
3297
3298
3299 2
3300
3301 1の当局は、
3302 自国の法令に規定する通常の重大な犯罪の場合と同様の方法で決定を行う。
3303
3304 第5
3305 条2の規定に該当する場合における訴追及び有罪の言渡しに必要な証拠の基準は、
3306 同条1の規定
3307 に該当する場合において適用される基準よりも緩やかなものであってはならない。
3308
3309
3310
3311 3
3312
3313 いずれの者も、
3314 自己につき第4条の犯罪のいずれかに関して訴訟手続がとられている場合には、
3315
3316 そのすべての段階において公正な取扱いを保障される。
3317
3318
3319
3320 第8条
3321 1
3322
3323 第4条の犯罪は、
3324 締約国間の現行の犯罪人引渡条約における引渡犯罪とみなされる。
3325
3326 締約国は、
3327
3328 相互間で将来締結されるすべての犯罪人引渡条約に同条の犯罪を引渡犯罪として含めることを約
3329 束する。
3330
3331
3332
3333 2〜4
3334
3335 (略)
3336
3337 第30条
3338 1
3339
3340 この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によって解決することができないもの
3341 は、
3342 いずれかの紛争当事国の要請により、
3343 仲裁に付される。
3344
3345 仲裁の要請の日から6箇月以内に仲
3346 裁の組織について紛争当事国が合意に達しない場合には、
3347 いずれの紛争当事国も、
3348 国際司法裁判
3349 所規程に従って国際司法裁判所に紛争を付託することができる。
3350
3351
3352
3353 2
3354
3355 各国は、
3356 この条約の署名若しくは批准又はこの条約への加入の際に、
3357 1の規定に拘束されない
3358
3359 - 41 -
3360
3361 旨を宣言することができる。
3362
3363 他の締約国は、
3364 そのような留保を付した締約国との関係において1
3365 の規定に拘束されない。
3366
3367
3368 3
3369
3370 2の規定に従って留保を付した締約国は、
3371 国際連合事務総長に対する通告により、
3372 いつでもそ
3373 の留保を撤回することができる。
3374
3375
3376
3377 - 42 -
3378
3379 〔第2問〕(配点:50)
3380 山脈を国境として隣接するA国とB国は、
3381 かつては類似の政治思想を持った友好国であり、
3382 共に
3383 指導者の権限の強い権威主義体制の下にあった。
3384
3385
3386 両国は良好な外交関係を維持していたが、
3387 古くに締結した二国間の犯罪人引渡条約もその表れの
3388 一つであった。
3389
3390 これによると、
3391 それぞれ互いの国に逃亡した犯罪人を引き渡すこと、
3392 相手国からの
3393 引渡請求に対しては10日以内に自国の手続を開始することなどが規定されていた。
3394
3395 また、
3396 軽微な
3397 犯罪であっても引渡対象とされる一方で、
3398 例外として「政治犯についてはこの限りではない」との
3399 規定が置かれ、
3400 何が「政治犯」に当たるかについての詳細な規定はなかった。
3401
3402 同条約に基づいて、
3403
3404 それぞれの国に逃げた犯罪人は相手国へ引き渡されることが慣行となっていた。
3405
3406
3407 ところが、
3408 10年ほど前にA国で革命が起き、
3409 権威主義体制から民主主義体制へと移行した。
3410
3411 も
3412 ともとA国は歴史的に日本法の影響を強く受けてきた国であったが、
3413 取り分け民主主義政権誕生後
3414 は日本の法整備支援を受けつつ、
3415 特に日本を意識した国家建設を開始した。
3416
3417 例えば憲法でも日本と
3418 同様の仕方で国際法を尊重することをうたい、
3419 国際法と国内法の関係についても、
3420 日本と同様の立
3421 場を採っていた。
3422
3423
3424 この革命を契機に、
3425 AB両国間のこれまでの友好的関係は崩れ、
3426 微妙な外交的緊張が続くことと
3427 なった。
3428
3429 あるとき、
3430 A国はB国に逃亡したA国民たる犯罪人Xの引渡しを求めたが、
3431 B国は条約に
3432 定める期間を大幅に経過しても自国内の手続を開始しなかった。
3433
3434 B国は、
3435 度重なるA国による要請
3436 を無視し続けていたが、
3437 最初の要請から半年ほど経ってから、
3438 履行する意向は全くないと連絡し、
3439
3440 条約は終了したと宣言した。
3441
3442 B国は、
3443 その理由として、
3444 両国間の犯罪人引渡条約はAB両国が類似
3445 の政治思想を持ったある種の共同体であったから締結したのであって、
3446 締結時における事情が根本
3447 的に変化したのだと主張した。
3448
3449 さらに、
3450 A国の古くからある特定の法律に、
3451 他国への犯罪人引渡し
3452 を禁止する条項があると指摘し、
3453 これを重大な条約違反だとも主張した。
3454
3455 A国は対応に苦慮し、
3456 B
3457 国が主張するようにB国が犯罪人引渡条約の終了を宣言することが可能か否かについて検討を開始
3458 したが、
3459 A国政権内の混乱もあり、
3460 容易に結論は出なかった。
3461
3462
3463 AB両国間の外交関係はこう着状態に陥った。
3464
3465 そのような中、
3466 A国の革命成功に触発されてB国
3467 でも民主化運動が進展していたが、
3468 中でも、
3469 いずれもB国民であるYとZの両名が主導して以降、
3470
3471 運動は一層過激なものとなった。
3472
3473 両名は新聞その他の媒体を用いて当局の政策を痛烈に非難し、
3474 仲
3475 間と共に広範な民主化デモを組織するなどした。
3476
3477 B国当局は、
3478 YとZを体制維持のための障害とみ
3479 なすようになっていた。
3480
3481
3482 ある時、
3483 B国警察が治安維持の一環としてYとZの身柄を拘束しようと試みたが、
3484 この情報が漏
3485 れ、
3486 二人はA国に逃れようとした。
3487
3488 Yが運転するトラックにZを乗せて国境を越えようとしたが、
3489
3490 途中でB国警官に見つかり、
3491 猛スピードで反対車線に出たり道路標識にぶつかったりするなどした。
3492
3493
3494 激しい逃走劇の最中、
3495 Zはトラックから転落してしまい、
3496 混乱の中、
3497 Yのみが国境を越えてA国に
3498 逃れた。
3499
3500 Zも山間部の国境を抜けようとしたが、
3501 YがA国に逃れた後は厳しい検問が敷かれ、
3502 それ
3503 は困難となった。
3504
3505 数日間逃げ回った後、
3506 Zは近くに飛行場があることに思い当たり、
3507 B国民間人が
3508 多数搭乗するB国登録航空機を乗っ取り、
3509 パイロットを脅してA国へと向かわせた。
3510
3511 しかし、
3512 航空
3513 機がA国飛行場に到着後、
3514 Zは逃亡生活の疲れから昏倒して乗客達に取り押さえられ、
3515 あえなくA
3516 国警察に逮捕されるに至った。
3517
3518 ほぼ同時期に、
3519 先に逃げていたYも、
3520 A国警察に逮捕された。
3521
3522
3523 この事態に至って、
3524 B国は、
3525 二国間の犯罪人引渡条約は依然として有効であると宣言して、
3526 従来
3527 の態度を翻し、
3528 A国が求めていたXの引渡しに応ずる姿勢を示した上で、
3529 これと引換えにYとZの
3530 自国への引渡しを強く求めた。
3531
3532 Yについては逃走時のB国「交通法」違反での処罰、
3533 Zについては
3534 B国航空機不法奪取によるB国「公共交通危険取締法」違反での処罰を理由としており、
3535 最高刑は
3536 前者が懲役4年、
3537 後者は懲役15年であった。
3538
3539 A国においても、
3540 B国「交通法」、
3541 B国「公共交通
3542 危険取締法」と同様の罰則が法律に定められており、
3543 その刑罰の重さはB国とほぼ同等であった。
3544
3545
3546 また、
3547 B国は、
3548 これら以外の罪でYとZを罰しないことを公式に表明した。
3549
3550 A国はB国が態度を変
3551
3552 - 43 -
3553
3554 更したことに戸惑ったが、
3555 犯罪人引渡条約を維持すること自体は国益にかなうとの政治的判断によ
3556 って、
3557 同条約の終了や運用停止を宣言しないことを決めた。
3558
3559
3560 その後、
3561 A国内では、
3562 犯罪人引渡条約の有効性を前提としつつ、
3563 YとZの引渡しの可否を裁判所
3564 で決するべく手続が進行した。
3565
3566 A国裁判所の裁判官らにとって大きな困難となったのは、
3567 A国には
3568 逃亡犯罪人に関する国内法が制定されていなかったことであった。
3569
3570 また、
3571 以前B国が主張していた
3572 ように、
3573 特定の法律の一部に犯罪人引渡しを禁止する規定が存し、
3574 これがYとZの引渡しをも禁止
3575 する趣旨を含み得ることもあり、
3576 関連する国際法の適用関係をめぐって議論が錯綜した。
3577
3578 議論の末、
3579
3580 A国裁判所の裁判官らは、
3581 引渡しの可否について、
3582 日本の裁判所における同種の決定例に倣って判
3583 断することとした。
3584
3585
3586 なお、
3587 AB両国はいずれも、
3588 条約法に関するウィーン条約(以下「条約法条約」という。
3589
3590 )の当
3591 事国である。
3592
3593 また、
3594 犯罪人引渡しに関する国際条約としては、
3595 AB両国間の犯罪人引渡条約のみを
3596 考えるものとする。
3597
3598
3599 以上の事実を基に、
3600 以下の設問に答えなさい。
3601
3602
3603 〔設
3604
3605 問〕
3606
3607 1.Xの引渡しをめぐってB国がかつて行っていた犯罪人引渡条約を終了させる宣言は、
3608 認める
3609 ことができるか。
3610
3611 また、
3612 A国は実際にはそうしなかったものの、
3613 B国が上記宣言を行ったとき
3614 に、
3615 むしろA国側から終了を宣言できたか。
3616
3617 いずれも、
3618 条約法条約の終了原因に照らして論じ
3619 なさい。
3620
3621
3622 2.特にA国国内法秩序における国際法の位置付けに言及しつつ、
3623 A国裁判所が引渡しを認めな
3624 いための立論をYとZの立場から論じなさい。
3625
3626
3627 3.A国裁判所の判断の結果、
3628 YとZはB国に引き渡されることになるかについて論じなさい。
3629
3630
3631
3632 - 44 -
3633
3634 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
3635
3636 - 45 -
3637
3638 [国際関係法(私法系)]
3639 〔第1問〕(配点:50)
3640 A男(甲国籍)とB女(日本国籍)は20年前に日本で適法に婚姻し、
3641 その後も日本で婚姻生活
3642 を営んでいた。
3643
3644 婚姻から5年後にAB間に生まれた子C(出生時は甲国と日本の重国籍者であった
3645 が、
3646 既に甲国籍を選択した。
3647
3648 )は、
3649 現在14歳である。
3650
3651 Aは、
3652 5年前に日本で交通事故に遭って重
3653 傷を負い、
3654 頭部への受傷に起因する精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況となって、
3655
3656 回復は絶望的な状態に陥った。
3657
3658 この時点におけるAの所有財産として、
3659 日本国内には不動産、
3660 動産、
3661
3662 預金債権及び有価証券が、
3663 甲国内には不動産があった。
3664
3665
3666 以上の事実に加え、
3667 甲国民法は年齢18歳をもって成年とする旨の規定を有していることを前提
3668 として、
3669 以下の設問に答えなさい。
3670
3671 なお、
3672 各問は独立した問いであり、
3673 全ての問いにおいて、
3674 反致
3675 については検討を要しない。
3676
3677
3678 〔設問1〕
3679 Bは、
3680 日本の家庭裁判所にAの後見開始の審判の申立てをすると同時に、
3681 Aの後見人の選任を
3682 申し立てた。
3683
3684 この場合において、
3685 後見開始の審判と後見人の選任の審判のそれぞれにつき、
3686 日本
3687 の家庭裁判所の国際裁判管轄権は認められるか。
3688
3689 また、
3690 日本の家庭裁判所が国際裁判管轄権を有
3691 すると仮定した場合には、
3692 Aの後見開始の審判及びAの後見人の選任の審判について、
3693 それぞれ
3694 いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。
3695
3696
3697 〔設問2〕
3698 交通事故後のAの容態は一進一退を繰り返していたが、
3699 結果的に臓器の損傷が原因となって日
3700 本の病院で死亡した。
3701
3702 Aの死後、
3703 Bは日本でCを監護養育していたが、
3704 Bもまた重篤な病を得て
3705 死亡した。
3706
3707 Bの死後、
3708 Bの母であるD(日本国籍)がCを引き取り、
3709 Dは継続してCを日本で監
3710 護養育している。
3711
3712 Dは、
3713 日本の家庭裁判所にCの後見人の選任を申し立てた。
3714
3715 Dは、
3716 自らになつ
3717 いているCの後見人になることを希望しており、
3718 後見人となる能力にも問題はない。
3719
3720
3721 Cの後見人選任の審判事件について、
3722 日本の家庭裁判所が国際裁判管轄権を有すると仮定する。
3723
3724
3725 この場合において、
3726 Cの後見人としてDを選任することができるか否かについて、
3727 準拠法の決定
3728 過程を示しつつ、
3729 答えなさい。
3730
3731
3732 なお、
3733 甲国民法は、
3734 次の@〜Bの趣旨の規定を有している。
3735
3736
3737 @
3738
3739 成年に達しない子は、
3740 父母の親権に服する。
3741
3742 親権は、
3743 父母の婚姻中は、
3744 父母が共同して行
3745 う。
3746
3747 ただし、
3748 父母の一方が親権を行うことができないときは、
3749 他の一方が行う。
3750
3751
3752
3753 A
3754
3755 後見は、
3756 次に掲げる場合に開始する。
3757
3758
3759 未成年者に対して親権を行う者がないとき、
3760 又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
3761
3762
3763
3764 B
3765
3766 未成年者の父若しくは母が死亡しているか又は親権を喪失したときは、
3767 次に掲げる者が、
3768
3769 第1号から第3号の順序で、
3770 特別の手続を要することなく当然に後見人となる。
3771
3772
3773
3774 第1号:祖父母
3775 第2号:兄、
3776 姉
3777 第3号:その他の親族
3778 〔設問3〕
3779 交通事故後のAの容態は一進一退を繰り返していたが、
3780 結果的に臓器の損傷が原因となって日
3781 本の病院で死亡した。
3782
3783 Aは幼少期に甲国の社会福祉施設で育ち、
3784 その施設を運営する社会福祉法
3785 人Eにいつか恩返しをしたいと考えていた。
3786
3787 Eは、
3788 甲国にのみ事務所を有する甲国法人である。
3789
3790
3791 Aが7年前に日本において作成した遺言書には、
3792 「甲国所在の不動産をEに遺贈する。
3793
3794 」旨が記
3795
3796 - 46 -
3797
3798 載されている。
3799
3800 また、
3801 当該遺言書の作成に当たり、
3802 Aは、
3803 その全文、
3804 日付及び氏名を自書した上
3805 で、
3806 これに押印をした。
3807
3808 B及びCは、
3809 Aの死後に遺言書の存在を知ったところ、
3810 甲国における近
3811 年の不動産価値の高騰を踏まえてAの遺産を適正に評価すれば、
3812 Eに対する本件遺贈により自分
3813 たちの遺留分が侵害されていることとなる旨主張して、
3814 Eを被告として、
3815 日本の裁判所に、
3816 遺留
3817 分侵害額に相当する金銭の支払を請求する訴えを提起した。
3818
3819 なお、
3820 Aの遺言の成立時点及び死亡
3821 時点におけるその所有財産の所在地及び種類は、
3822 Aが交通事故に遭った時点と同じである。
3823
3824 もっ
3825 とも、
3826 Aが遺言を作成した後、
3827 交通事故に遭ってから死亡するまでの間に、
3828 Aの治療のために多
3829 額の費用を要し、
3830 その支払の原資にはAの所有する日本国内の財産が充てられたことから、
3831 Aの
3832 所有する日本国内の財産の合計額は大きく減少していた。
3833
3834
3835 〔小問1〕
3836 日本の裁判所が国際裁判管轄権を有すると仮定する。
3837
3838 この場合において、
3839 本件遺言は有効に
3840 成立しているか。
3841
3842 仮に、
3843 本件遺言が有効に成立しているとした場合には、
3844 本件遺言による贈与
3845 は有効に成立しているか。
3846
3847 いずれの問いについても準拠法の決定過程を示しつつ、
3848 答えなさい。
3849
3850
3851 なお、
3852 甲国民法は、
3853 次のC〜Fの趣旨の規定を有している。
3854
3855
3856 C
3857 D
3858
3859 遺言者は、
3860 包括又は特定の名義で、
3861 その財産の全部又は一部を処分することができる。
3862
3863
3864 15歳に達した者は、
3865 遺言をすることができる。
3866
3867 遺言者は、
3868 遺言をする時においてその
3869 能力を有しなければならない。
3870
3871
3872
3873 E
3874
3875 自筆証書遺言によって遺言をするには、
3876 遺言者が、
3877 その全文、
3878 日付及び氏名を自書し、
3879
3880 これに印を押さなければならない。
3881
3882
3883
3884 F
3885
3886 遺言は、
3887 遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
3888
3889
3890
3891 〔小問2〕
3892 B及びCが主張する遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求が認められるかどうかの問題に
3893 ついて、
3894 日本の裁判所は、
3895 いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。
3896
3897
3898
3899 - 47 -
3900
3901 〔第2問〕(配点:50)
3902 Xは、
3903 日本に住所を有する日本人であり、
3904 陶磁器製の食器の収集を趣味としている。
3905
3906 Xは、
3907 30
3908 年ほど前から毎年、
3909 陶磁器の生産が盛んな甲国に赴いて1週間ほど滞在し、
3910 甲国内の複数の陶磁器
3911 製造・販売業者(後出のY社、
3912 Z社を含む。
3913
3914 )の営業所を訪れて、
3915 気に入った食器の購入を行って
3916 いる。
3917
3918 Xは、
3919 10年ほど前からは、
3920 自身の趣味としての収集だけでなく、
3921 事業として、
3922 甲国内で仕
3923 入れた食器を日本国内の顧客向けに販売している(この事業を行うに当たっては、
3924 日本の自宅建物
3925 の一部を営業所として使用している。
3926
3927 )。
3928
3929
3930 Y社は、
3931 食器を中心とする陶磁器製品の製造・販売を業とする、
3932 甲国に本店を有する甲国の会社
3933 であり、
3934 甲国以外には営業所も財産も有していない。
3935
3936 Y社は、
3937 創業から長い歴史を有する老舗であ
3938 り、
3939 Y社製の食器は、
3940 世界的なブランドになっている。
3941
3942 Y社は、
3943 自社製の食器を他社には卸さず、
3944
3945 甲国内の自社の営業所でのみこれを販売するとの経営方針を採っており、
3946 世界各国のバイヤーは、
3947
3948 甲国内のY社の営業所に赴いてY社製の食器を仕入れた上で、
3949 それぞれ自国内の顧客向けにこれを
3950 販売している。
3951
3952 Y社とY社製の食器の買主との間で締結される売買契約においては、
3953 後述のとおり、
3954
3955 商品引渡地は定められていないものの、
3956 Y社は、
3957 買主から依頼があれば、
3958 買主の費用負担により、
3959
3960 買主の指定場所に宛てて商品を発送することとしている。
3961
3962 Y社製の商品の中でも、
3963 磁器製の皿の表
3964 面に甲国伝統の模様を顔料で描いた絵皿が特に有名であり、
3965 Y社は、
3966 毎年、
3967 模様を変えた新たな絵
3968 皿を発売している。
3969
3970
3971 Z社も、
3972 食器を中心とする陶磁器製品の製造・販売を業とする、
3973 甲国に本店を有する甲国の会社
3974 であり、
3975 Z社製の食器も、
3976 Y社製の食器と同様に世界的なブランドになっている。
3977
3978 Z社は、
3979 Y社と
3980 は異なり、
3981 自社製の食器を他社に卸しているほか、
3982 甲国以外の国にも営業所を展開するなどしてお
3983 り、
3984 世界各国のバイヤーは、
3985 様々な経路を通じてZ社製の食器を仕入れることができる。
3986
3987
3988 Y社では、
3989 一定金額以上の商品を販売する際には、
3990 Y社が用意した売買契約書2通にY社と買主
3991 の双方が署名した上で、
3992 それぞれが1通ずつを保管するという方法を採っている。
3993
3994 これは、
3995 甲国法
3996 上、
3997 一定金額以上の物品の売買については、
3998 当事者全員が署名した書面による契約書を作成してい
3999 なければ、
4000 当該売買契約は効力を生じないとされていることによるものである(後掲の甲国契約法
4001 P条を参照。
4002
4003 )。
4004
4005 Y社の売買契約書には、
4006 甲国法を契約準拠法とする旨の条項が置かれているが、
4007
4008 商品引渡地や代金支払地などの債務の履行地を定める条項、
4009 債務不履行による損害賠償債務の履行
4010 地を定める条項、
4011 裁判管轄や仲裁などの紛争解決方法に関する条項は、
4012 いずれも置かれていない。
4013
4014
4015 Y社は、
4016 新商品を含むY社の取扱商品の一覧表カタログを毎年発行し、
4017 それを優良顧客に宛てて
4018 送付しており、
4019 数年前からは、
4020 Xに対しても当該カタログを送付していた。
4021
4022
4023 新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延拡大していた令和3年において、
4024 Xは、
4025 Y社の営業
4026 所に赴くことなくY社の商品を購入したいと考えて、
4027 Y社に対して、
4028 インターネットを利用した映
4029 像と音声を送受信する方法によるオンライン会合を開催して商談を行うことを提案した。
4030
4031 Y社は、
4032
4033 Xが優良顧客であったことから、
4034 特別にこの提案に応じることとした。
4035
4036 オンライン会合において、
4037
4038 Xは、
4039 購入を希望するY社製の新商品である絵皿(以下「本件商品」という。
4040
4041 )のカタログ番号を
4042 Y社に伝え、
4043 これを受けてY社が示した本件商品のカタログ写真の映像を確認した上で、
4044 Y社との
4045 間で、
4046 本件商品を500セット購入する内容の売買契約(以下「本件契約」という。
4047
4048 )を口頭で締
4049 結した。
4050
4051 本件契約の締結に際して、
4052 XとY社の間で、
4053 Xが本件商品のカタログ記載の価格にXの住
4054 所までの送付費用を加えた売買代金全額をY社名義の甲国所在の銀行口座に振り込んで支払うこと
4055 が合意されたが、
4056 それ以外の事項については、
4057 従前からの取引を通じて、
4058 XにおいてもY社の売買
4059 契約書の記載内容を十分に承知していることを踏まえ、
4060 Y社の売買契約書の記載内容と同様の扱い
4061 をすること(本件契約の準拠法を甲国法と定めることのほか、
4062 本件商品の引渡地や紛争解決方法に
4063 ついては特段の定めをしないことなどが含まれる。
4064
4065 )が合意された。
4066
4067 なお、
4068 この時点では、
4069 XとY
4070 社は、
4071 本件契約に関する契約書を作成していない。
4072
4073
4074 XがY社から本件商品500セットを購入したのは、
4075 日本有数の百貨店チェーンであるA社から
4076
4077 - 48 -
4078
4079 の依頼に基づくものであった。
4080
4081 A社は、
4082 日本全国に展開する百貨店の各店舗において「甲国物産展」
4083 を行うことを予定しており、
4084 その目玉商品として甲国製の食器皿を販売することとし、
4085 その仕入れ
4086 をXに依頼していた。
4087
4088 Xは、
4089 本件契約の締結後、
4090 直ちにA社との間で本件商品500セットの売買
4091 契約(以下「転売契約」という。
4092
4093 )を締結していた。
4094
4095
4096 しかし、
4097 その後、
4098 本件商品について、
4099 使用されている顔料が人体の健康に重大な被害を及ぼすお
4100 それがあるとの報道が世界各国でなされた。
4101
4102 この報道を受けて、
4103 A社は、
4104 本件商品を「甲国物産展」
4105 の目玉商品とすることを断念し、
4106 品質に関する契約不適合を理由として、
4107 Xに転売契約の解除を通
4108 知した。
4109
4110
4111 以上の事実を前提として、
4112 以下の設問に答えなさい。
4113
4114 なお、
4115 各問は独立した問いである。
4116
4117
4118 また、
4119 甲国契約法には次の条文が置かれており、
4120 本件契約は、
4121 甲国契約法P条の「政令で定める
4122 一定金額以上の物品売買契約」に該当するものであった。
4123
4124
4125 【甲国契約法】
4126 P条(一定金額以上の売買契約の方式)
4127 政令で定める一定金額以上の物品売買契約は、
4128 当事者全員が署名した書面でしなければ、
4129 その効
4130 力を生じない。
4131
4132
4133 Q条(債務の履行の場所)
4134 契約上の債務の履行をすべき場所について別段の意思表示がないときは、
4135 特定物の引渡しは債権
4136 発生の時にその物が存在した場所において、
4137 その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所
4138 がない場合にあっては、
4139 その住所)において、
4140 それぞれしなければならない。
4141
4142
4143 [設問1]
4144 A社から転売契約の解除の通知を受けて、
4145 Xは、
4146 Y社に対し、
4147 Y社の債務不履行を理由に本件
4148 契約を解除する旨を通知した(この時点で、
4149 Y社は、
4150 Xに売却する予定の本件商品500セット
4151 について特定をしていなかった。
4152
4153 )。
4154
4155 そして、
4156 Xは、
4157 転売契約に係る自らの債務不履行責任の追
4158 及を避けるとともに、
4159 A社を取引先としてつなぎとめるため、
4160 本件商品に代わる「甲国物産展」
4161 の目玉商品となり得るものとして、
4162 急きょ、
4163 Z社製の食器皿500セットをZ社から購入し、
4164 転
4165 売契約と同一価格でA社に提供することとした。
4166
4167 このZ社製の食器皿は、
4168 本件商品と比べると高
4169 額であったが、
4170 A社との間の転売契約で定められていた納期までに入手できる甲国製の食器皿は、
4171
4172 Z社製の食器皿しかなかった。
4173
4174 A社は、
4175 このようなXの対応に満足し、
4176 XからZ社製の食器皿5
4177 00セットを購入することにしたが、
4178 Xは、
4179 結果的に多額の赤字を計上することとなった。
4180
4181
4182 そこで、
4183 Xは、
4184 Y社を被告として、
4185 本件契約に関するYの債務不履行によって被った損害の賠
4186 償を求める訴え(以下「本件訴え」という。
4187
4188 )を日本の裁判所に提起した。
4189
4190 本件訴えについて、
4191
4192 日本の裁判所に国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさい。
4193
4194
4195 なお、
4196 甲国は、
4197 「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(以下「ウィーン売買条約」とい
4198 う。
4199
4200 )の締約国ではない。
4201
4202 また、
4203 本件契約は、
4204 解除されるまで有効に成立していたものとする。
4205
4206
4207 [設問2]
4208 XとY社が口頭で本件契約を締結した当日に、
4209 Y社は、
4210 自らが署名した契約書2通をXの住所
4211 宛てに発送し、
4212 Xが署名した上で1通を返送するよう依頼した。
4213
4214 その翌日に、
4215 Xは、
4216 カタログ記
4217 載価格に送付費用を加えた売買代金全額を、
4218 X名義の日本所在の銀行口座からY社名義の甲国所
4219 在の銀行口座に振り込んで支払った。
4220
4221 その後、
4222 Y社の署名がされた契約書2通がXの住所に届い
4223 た。
4224
4225 しかし、
4226 その翌日に、
4227 本件商品に関する報道がなされ、
4228 A社は、
4229 直ちにXに転売契約の解除
4230 を通知した。
4231
4232
4233 そこで、
4234 Xは、
4235 届いた契約書には署名をしないまま、
4236 本件契約は甲国契約法P条の方式要件を
4237
4238 - 49 -
4239
4240 満たしていないから当初から効力を生じていないと主張し、
4241 Y社を被告として、
4242 支払済みの売買
4243 代金全額の返還を求める訴え(以下「本件訴え」という。
4244
4245 )を日本の裁判所に提起した。
4246
4247
4248 甲国がウィーン売買条約の締約国ではないとして、
4249 次の〔小問1〕及び〔小問2〕に答えなさ
4250 い。
4251
4252 なお、
4253 日本の裁判所の国際裁判管轄権について論じる必要はない。
4254
4255
4256 〔小問1〕
4257 XがY社にオンライン会合を求めたのは、
4258 Xが甲国に入国した直後に甲国内で外出禁止令が
4259 出されたことが理由であった。
4260
4261 Xは、
4262 甲国内で滞在していたホテルからY社とオンライン会合
4263 を行っていた。
4264
4265 この場合に、
4266 本件契約が当初から効力を生じていないとのXの主張が認められ
4267 るかどうかについて論じなさい。
4268
4269
4270 また、
4271 甲国において外国人の入国を全面的に制限する措置が採られていたために、
4272 甲国に渡
4273 航することができなかったXが、
4274 自宅からY社とオンライン会合を行っていた場合はどうか、
4275
4276 論じなさい。
4277
4278
4279 〔小問2〕
4280 Xが主張する支払済みの売買代金全額の返還請求が認められるかどうかの問題について、
4281 日
4282 本の裁判所は、
4283 いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。
4284
4285
4286 なお、
4287 本件訴えにおいて、
4288 本件契約が当初から効力を生じていないとのXの主張が認められ
4289 ることを前提とする。
4290
4291
4292 [設問3]
4293 甲国は、
4294 ウィーン売買条約の締約国であり、
4295 同条約で認められる留保宣言を一切行っていない。
4296
4297
4298 Xは、
4299 本件契約とは別途、
4300 自宅からY社とのオンライン会合を行い、
4301 Y社製の最高級ティーカッ
4302 プ・セットを1セット購入する内容の売買契約を口頭で締結していた。
4303
4304 Xが、
4305 日本の裁判所に係
4306 属する民事訴訟において、
4307 この契約は方式要件を満たしていないため当初から効力を生じていな
4308 いとの主張をしている場合に、
4309 日本の裁判所は、
4310 Xの当該主張が認められるかどうかの問題につ
4311 いて、
4312 ウィーン売買条約を適用して判断すべきか。
4313
4314 日本の裁判所の国際裁判管轄権は認められる
4315 ものとして、
4316 同条約第1条及び第2条の規定に触れつつ論じなさい(同条約のその他の条文につ
4317 いて論じる必要はない。
4318
4319 )。
4320
4321 なお、
4322 この契約を締結する際、
4323 Xは、
4324 配偶者へのプレゼントとして
4325 ティーカップ・セットを購入するものである旨をY社に伝えていた。
4326
4327
4328
4329 - 50 -
4330
4331