1 論文式試験問題集
2 [民法・商法・民事訴訟法]
3
4 - 1 - 2 -
5
6 [民
7
8 法]
9
10 次の文章を読んで、
11 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
12
13
14 解答に当たっては、
15 文中において特定されている日時にかかわらず、
16 試験時に施行されている法
17 令に基づいて答えなさい。
18
19 なお、
20 民法以外の法令の適用について検討する必要はない。
21
22
23 【事実】
24 1.Aは、
25 建築設計工事等を業とする株式会社である。
26
27 Bは、
28 複合商業施設の経営等を業とする株
29 式会社である。
30
31 Bは、
32 Aとの間で、
33 令和4年4月1日、
34 Bの所有する土地上にAが鉄筋コンクリ
35 ート造の5階建て店舗用建物(以下「甲建物」という。
36
37 )を報酬2億円で新築することを内容と
38 する建築請負契約(以下「本件請負契約」という。
39
40 )を締結した。
41
42
43 2.本件請負契約の締結に当たって、
44 Bは、
45 Aに対して、
46 「外壁の塗装には塗料αを使用してほし
47 い。
48
49 」と申し入れ、
50 Aはこれを了承した。
51
52 塗料αは、
53 極めて鮮やかなピンク色の外壁用塗料であ
54 る。
55
56
57 3.Aの担当者が近隣住民に建築計画の概要を説明した際に、
58 地域の美観を損ねるとして多数の住
59 民から反発を受けたため、
60 Aは、
61 周辺の景観に合致する、
62 より明度の低い同系色の外壁用塗料で
63 ある塗料βで甲建物の外壁を塗装することとした。
64
65
66 4.令和7年10月25日、
67 塗料βによる外壁塗装を含む甲建物の工事が完了した。
68
69 同月30日、
70
71 Aは、
72 Bに対して、
73 甲建物を引き渡した。
74
75
76 5.令和7年10月31日、
77 Bは、
78 Aに対して、
79 「塗料αは、
80 Bの運営する他の店舗でも共通して
81 用いられており、
82 Bのコーポレートカラーとして特に採用したものである。
83
84 外壁塗装に塗料βを
85 使用したことは重大な契約違反である。
86
87 この件の対処については、
88 社内で検討の上、
89 改めて協議
90 させてもらう。
91
92 」と申し入れた。
93
94
95 6.塗料βは、
96 塗料αよりも耐久性が高く、
97 防汚防水性能にも優れており、
98 高価である。
99
100 そのため、
101
102 外壁塗装を塗料αで行った場合の甲建物の客観的価値よりも、
103 外壁塗装を塗料βで行った場合の
104 甲建物の客観的価値の方が高い。
105
106
107 〔設問1〕
108 【事実】1から6までを前提として、
109 次の問いに答えなさい。
110
111
112 (1)
113
114 Bが塗料αによる再塗装を求めたが、
115 Aがこれを拒絶した場合において、
116 Bは、
117 Aに対して、
118
119 本件請負契約に基づく報酬の減額を請求している。
120
121 Bの請求が認められるか、
122 【事実】6に留意
123 しつつ論じなさい。
124
125
126
127 (2)
128
129 Aが塗料αによる再塗装を行う旨の申入れを行ったが、
130 Bがこれを拒絶した場合において、
131
132 は、
133 Aに対して、
134 再塗装に要する費用を損害としてその賠償を請求している。
135
136 Bの請求が認めら
137 れるか論じなさい。
138
139
140
141 【事実】
142 7.Cは、
143 個人でラーメン店を経営し、
144 全国に多数の店舗を有する。
145
146 Dは、
147 創業当時からCの従業
148 員として重要な貢献をしてきたが、
149 独立して自分のラーメン店を持ちたいと思うようになり、
150
151 の旨をCに伝えた。
152
153
154 8.Cは、
155 Dの長年の功労に報いたいと考え、
156 Cの所有する土地及びその上の店舗用建物(以下併
157 せて「乙不動産」という。
158
159 )を無償でDに貸すが、
160 固定資産税はDに負担してほしいと申し出た。
161
162
163 Dは、
164 この申出を受け、
165 令和2年1月10日、
166 Cとの間で、
167 上記の内容を記した覚書(以下「本
168 件覚書」という。
169
170 )を取り交わして使用貸借契約を締結し、
171 これに基づいて乙不動産の引渡しを
172 - 2 - 3 -
173
174 受けた。
175
176
177 同年3月1日、
178 Dは、
179 乙不動産においてラーメン店(以下「本件ラーメン店」という。
180
181 )を開
182 業し、
183 乙不動産の固定資産税を同年分からCに代わり毎年支払った。
184
185
186 9.令和8年1月、
187 Cは死亡し、
188 子EがCを単独相続したが、
189 Eは、
190 詳しい事情を知らないまま、
191
192 乙不動産の固定資産税をDに支払ってもらっていた。
193
194 なお、
195 乙不動産の登記名義人は、
196 Cのまま
197 であった。
198
199
200 10.令和9年3月1日、
201 Dは死亡し、
202 乙不動産は本件ラーメン店の従業員により閉鎖された。
203
204
205 Dを単独相続した子Fは、
206 本件ラーメン店の営業には全く関与していなかったが、
207 乙不動産は
208 DがCから贈与を受けたものと理解していた。
209
210 そこで、
211 Fは、
212 Eに対して、
213 「乙不動産は、
214 Dが
215 Cから贈与を受けたものであるから、
216 相続を機会に、
217 登記名義を自分に移したい。
218
219 」と相談した。
220
221
222 Eは、
223 固定資産税をDが支払っていたのはそういうわけだったのかと納得し、
224 同年4月1日、
225
226 不動産の登記名義人をFとするために必要な登記が行われた。
227
228
229 その後、
230 Fは、
231 本件ラーメン店の営業を引き継ぐことを決意し、
232 同年5月1日、
233 前記従業員か
234 ら乙不動産の管理を引き継ぎ、
235 間もなく営業を再開した。
236
237 Fは、
238 令和29年に至るまで、
239 乙不動
240 産において本件ラーメン店の営業を継続している。
241
242
243 11.令和29年3月、
244 Eは、
245 本件覚書を発見し、
246 CからDへの乙不動産の贈与が行われていなかっ
247 たことを知った。
248
249 同年4月1日、
250 Eは、
251 Fに対し、
252 所有権に基づき、
253 乙不動産の明渡しを請求す
254 る訴えを提起した。
255
256 これに対して、
257 Fは、
258 同月15日、
259 乙不動産の20年の取得時効を援用した。
260
261
262 〔設問2〕
263 【事実】7から 11 までを前提として、
264 【事実】11 においてFが援用する乙不動産の取得時効の
265 成否について論じなさい。
266
267
268
269 - 3 - 4 -
270
271 [商
272
273 法]
274 次の文章を読んで、
275 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
276
277
278
279 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
280
281 )は、
282 農産物加工品の通信販売を業とする取締役会設置会社
283 であり、
284 監査役設置会社である。
285
286 甲社は種類株式発行会社ではなく、
287 甲社の定款には、
288 譲渡による
289 株式の取得について取締役会の承認を要する旨の定めがある。
290
291 甲社の発行済株式の総数は5000
292 株であり、
293 そのうち、
294 Aが2000株を、
295 Bが400株を、
296 Cが1000株を、
297 Dが1600株を
298 それぞれ保有している。
299
300
301 甲社の取締役はA、
302 B及びEの3名であり、
303 Aが代表取締役である。
304
305 また、
306 監査役にはFが就任
307 している。
308
309 Dは、
310 かつて甲社の取締役であったが、
311 数年前に甲社の経営方針をめぐってAと対立し、
312
313 その際、
314 CがAの側についたことから、
315 甲社の取締役に再任されず、
316 その後も取締役に選任される
317 ことはなかった。
318
319 AとDの対立は現在まで続いている。
320
321
322 2.甲社は、
323 かねてより商品を保管する倉庫を建設するための用地を探していたところ、
324 Cが保有し
325 ている土地(以下「本件土地」という。
326
327 )が倉庫建設に適していることが判明した。
328
329 AはCとの間
330 で、
331 本件土地の売買交渉を進め、
332 もう少しで契約が成立するというところまでこぎつけた。
333
334
335 ところが、
336 不動産業者から倉庫建設に適した別の土地の情報がもたらされた。
337
338 その情報を受け、
339
340 甲社の取締役会において審議したところ、
341 本件土地に倉庫を建設するより不動産業者から提案され
342 た土地に倉庫を建設した方が円滑に商品を出荷することが可能となることから、
343 本件土地の買取り
344 を見送るとの結論に達した。
345
346
347 3.上記のような取締役会での決定を受け、
348 AがCのもとに赴き、
349 本件土地を買い取ることができな
350 くなったことを説明したところ、
351 Cは納得しなかった。
352
353 AはCの説得を続けたが、
354 Cは聞き入れず、
355
356 ついに本件土地の買取りができないなら今後の対応についてDに相談すると言い出した。
357
358 CとDが
359 協調して行動することを恐れたAは、
360 本件土地の買取りを再検討する旨をCに告げてCのもとを去
361 った。
362
363
364 4.甲社の取締役会では、
365 Aからの報告を受け、
366 Cから本件土地を買い取ることとし、
367 さらに、
368 準備
369 されていた本件土地に関する資料をもとに買取価格を検討し、
370 2億円で本件土地を買い取ることを
371 A、
372 B及びEの賛成によって決定した(以下「本件取締役会決議」という。
373
374 )。
375
376 本件土地に関する
377 資料によれば、
378 本件土地の適正価格は2億円であった。
379
380
381 5.Aが、
382 すぐさまCに甲社の本件取締役会決議の内容を知らせてCと再度交渉したところ、
383 Cは本
384 件土地を2億円で売却することを承諾し、
385 本件土地の売買契約が成立した(以下「本件取引」とい
386 う。
387
388 )。
389
390
391 6.この頃、
392 甲社の完全子会社である乙株式会社(以下「乙社」という。
393
394 )の取締役が任期中に死亡
395 したため、
396 乙社の取締役に欠員が生じた。
397
398 乙社の代表取締役を兼任するAは、
399 Fを乙社の取締役に
400 することとし、
401 乙社においてFを取締役に選任する手続を採るとともに、
402 Fに対して乙社の取締役
403 に就任するよう要請した。
404
405 それを受け、
406 FはAに乙社の取締役に就任すると返答した。
407
408
409 7.本件取引のことを聞きつけたDは、
410 本件土地より倉庫に適した土地があったにもかかわらず本件
411 取引をしたことは、
412 Cが甲社の株主であるために特別に優遇したものであり、
413 不適切であると考え、
414
415 友人の弁護士に対し、
416 A、
417 B及びE並びにC(以下「Aら」という。
418
419 )が、
420 本件取引に関して甲社
421 に対して何らかの責任を負わないか検討してほしいと依頼した。
422
423
424 8.弁護士のアドバイスを受けたDは、
425 Aらに対して責任追及等の訴えを提起することとし、
426 Fに対
427 して、
428 甲社としてAらに対して訴訟を提起するよう請求した(以下「本件提訴請求」という。
429
430 )。
431
432
433 本件提訴請求から60日以内に甲社がAらに対して訴訟を提起しなかったことから、
434 Dは、
435 甲社の
436 ためにAらに対する責任追及等の訴え(以下「本件訴え」という。
437
438 )を提起した。
439
440
441 - 4 - 5 -
442
443 〔設問1〕
444 本件訴えにおいて、
445 Dの立場において考えられる主張及びその当否について、
446 論じなさい。
447
448
449 〔設問2〕
450 本件訴えの被告であるAらは、
451 本件提訴請求は適法とはいえず、
452 本件訴えは違法であると主張し
453 ている。
454
455 本件訴えは適法か、
456 Aらの主張を踏まえて論じなさい。
457
458
459
460 - 5 - 6 -
461
462 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は、
463 3:2)
464 次の文章を読んで、
465 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
466
467
468 【事例】
469 Xは、
470 自動車の愛好家らによって創設されたクラブであり、
471 20年近くにわたって継続的に活動
472 を行ってきた。
473
474 Xの構成員は、
475 現在はA、
476 B、
477 Cらを含む計30名である。
478
479 また、
480 Xは、
481 その財産
482 として、
483 不動産、
484 動産及び預金等を有している。
485
486 Xの規約によれば、
487 Xの意思決定は、
488 原則として、
489
490 Xの構成員全員で構成される総会の多数決によることとされているが、
491 不動産等の重要財産を処分
492 するに当たっては、
493 構成員の3分の2以上の特別多数の同意を要するものとされている。
494
495 Xの現在
496 の代表者はAである。
497
498
499 甲土地は、
500 従前、
501 Xの構成員の1人であるCの名義で登記されていた。
502
503 もっとも、
504 甲土地は、
505
506 の構成員が利用してきたことから、
507 Aは甲土地をXの財産であると認識していた。
508
509 しかし、
510 Aが登
511 記を確認したところ、
512 登記名義がCからYに移転されていることが判明した。
513
514 なお、
515 Yは、
516 Xの構
517 成員ではない。
518
519 AがCに対して事情を尋ねたところ、
520 Cは、
521 甲土地はXの財産ではなく、
522 自己の財
523 産であり、
524 Yの求めに応じて売り渡したと説明した。
525
526 また、
527 Aは、
528 Yに対して甲土地がXの財産で
529 ある旨を主張したが、
530 Yは自己の所有権を主張して譲らなかった。
531
532
533 Xの構成員は、
534 現在、
535 甲土地を車の部品などの資材置き場として使用している。
536
537
538 〔設問1〕
539 AはYとの間で裁判によって甲土地がXの財産であることを確定したいと考えたが、
540 Yに対して
541 訴えを提起することについては、
542 Cのほか、
543 Cと関係の近い相当数の構成員による反対が予想され
544 た。
545
546 以下は、
547 Aの相談を受けた弁護士L1と修習生Pとの対話である。
548
549
550 弁護士L1:
551
552 本件においては、
553 Xは権利能力のない社団であり、
554 Xの財産が構成員全員に総有的
555 に帰属することを前提として、
556 甲土地の総有権の確認を求める訴えを提起することが
557 考えられますが、
558 その場合、
559 誰が原告となることが考えられるでしょうか。
560
561
562
563 修習生P
564
565
566
567 @Xが原告となり、
568 AがXの代表者として訴えを提起する方法が考えられます。
569
570
571 た、
572 A権利の帰属主体である X の構成員らが原告となって訴えを提起する方法も考え
573 られると思います。
574
575
576
577 弁護士L1: では、
578 訴えの適法性について、
579 @及びAの方法ごとに考えてみることにしましょう。
580
581
582 本件では、
583 Xの構成員の中に反対者がいるようですが、
584 そのことは、
585 訴えの適法性に
586 影響を与えるでしょうか。
587
588 更に考えてみてください。
589
590
591 修習生P
592
593
594
595 はい。
596
597 わかりました。
598
599
600
601 訴えの適法性について、
602 @及びAの方法ごとに、
603 下線部の事情を考慮して、
604 判例の理解を踏まえつ
605 つ、
606 検討しなさい。
607
608 なお、
609 解答に当たっては、
610 Xが当事者能力を有することを前提とし、
611 確認の利益
612 については論じなくてよい。
613
614
615 【事例(続き)】(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
616
617
618 Xは、
619 Yを被告として、
620 甲土地の総有権の確認を求める訴えを適法に提起した(以下「本件訴訟」
621 という。
622
623 )。
624
625
626 Yは、
627 当初、
628 訴訟代理人L2に対し、
629 自己の所有権を主張してXの請求の棄却を求めるだけでよ
630 いとの意向を伝えていたが、
631 本件訴訟の審理が進んだ後で、
632 L2に対して、
633 Xに対して甲土地の明
634 - 6 - 7 -
635
636 渡しを求めたいとする意向を伝えた。
637
638
639 L2は、
640 反訴ではなく、
641 本件訴訟係属中に、
642 所有権に基づく甲土地の明渡しを求める訴えをX
643 に対して別途提起すること(以下「本件別訴」という。
644
645 )を考えた。
646
647
648 また、
649 L2は、
650 その方法とは別に、
651 まず、
652 本件訴訟においてXの請求を棄却する判決(以下「前
653 訴判決」という。
654
655 )を得た上で、
656 本件訴訟終了後に、
657 所有権に基づく甲土地の明渡しを求める訴え
658 (以下「後訴」という。
659
660 )をXに対して提起することも考えた。
661
662
663 〔設問2〕
664 の本件別訴の適法性について、
665 重複起訴が禁止されている趣旨を踏まえて、
666 検討しなさい。
667
668
669 た、
670 の方法を採った場合における前訴判決の既判力の後訴に対する作用について、
671 事案に即して
672 検討しなさい。
673
674 なお、
675 解答に当たっては、
676 及びにおけるXの被告適格については言及しなくて
677 よい。
678
679 また、
680 「信義則」及び「争点効」には触れなくてよい。
681
682
683
684 - 7 - 8 -
685
686