1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
3
4 - 1 - 2 -
5
6 [刑 法]
7 以下の【事例1】及び【事例2】を読んで、後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
8 【事例1】
9 1 甲(35歳、女性)は、A市内のアパートにおいて、長男X(13歳)及び長女Y(6歳)と3人
10 で暮らしていた。
11 2 某月1日、甲は、Yと共に、Bが店長を務める大型スーパーマーケットC店に入り、果物コーナーを
12 歩いていた際、陳列棚に置かれていた1房3000円の高級ブドウを手に取ってYに見せながら、
13 「あ
14 んた、これ好きでしょ。
15 」などと話したが、高額であったことから、Yの眼前でそのまま陳列棚に戻し
16 た。その後、甲は、何も買わずに店を出たが、Yに上記ブドウを万引きさせようと考え、C店の前にお
17 いて、Yに対し、
18 「さっきのブドウを持ってきて。ママはここで待っているから、1人で行ってきて。
19 お金を払わずにこっそりとね。
20 」と言った。それを聞いたYは、ちゅうちょしたが、甲から「いいから
21 早く行きなさい。
22 」と強い口調で言われたために怖くなり、甲の指示に従うことを決め、
23 「分かった。
24 」
25 と言って、甲から渡された買物袋を持って1人でC店に入っていった。Yは、約10分間掛けて店内
26 を探したが、果物コーナーの場所が分からず、そのまま何もとらずに店を出た。甲は、上記ブドウの入
27 手を諦め、Yと共に帰宅した。
28 3 同月5日、甲は、自宅において、Xに対し、
29 「今晩、ステーキ食べたいね。C店においしそうなステ
30 ーキ用の牛肉があったから、とってきてよ。
31 」と言った。甲は、Xが「万引きなんて嫌だよ。
32 」などと言
33 ってこれを断ったため、
34 「あのスーパーは監視が甘いから見付からないよ。見付かっても、あんたは足
35 が速いから大丈夫。
36 」などと言って説得したところ、Xは、渋々これに応じることとし、
37 「分かった。
38 」
39 と言った。甲は、
40 「一番高い3000円くらいのやつを2パックとってきて。午後3時頃に警備員が休
41 憩に入るらしいから、その頃が狙い目だよ。
42 」などと言い、商品を隠し入れるためのエコバッグをXに
43 手渡した。Xは、同日午後3時頃、上記エコバッグを持ってC店に入り、精肉コーナーにおいて、1パ
44 ック3000円のステーキ用牛肉を見付け、どうせなら多い方がいいだろうと考えて5パックを手に
45 取り、誰にも見られていないことを確認した上で同エコバッグに入れた。Xは、そのまま店を出よう
46 と考えて出入口付近に差し掛かったところ、同所にあった雑誌コーナーにXの好きなアイドルの写真
47 集(販売価格3000円)を見付けてにわかにこれが欲しくなり、同写真集1冊を手に取ったまま、い
48 ずれも精算することなく店外に持ち出した。Xは、帰宅し、上記写真集を自分の部屋に置いた後、牛肉
49 5パックが入った上記エコバッグを甲に渡した。甲は、
50 「こんなにとってきてどうすんのよ。
51 」などと
52 言いつつこれを受け取り、同日以降、X及びYと共にこれらの牛肉を全て食べた。
53 〔設問1〕
54 【事例1】における甲の罪責について、論じなさい(建造物侵入罪及び特別法違反の点は除く。
55 )
56 。
57 【事例2】
58 (
59 【事例1】の事実に続けて、以下の事実があったものとする。
60 )
61 4 同月10日、甲は、自転車に乗って1人で、Dが店長を務めるホームセンターE店に行った際、陳列
62 されていた液晶テレビ(50センチメートル×40センチメートル×15センチメートルの箱に入っ
63 たもの)を、自宅で使う目的で万引きしようと考え、E店内で、同液晶テレビ1箱を手に取って自己の
64 トートバッグに入れた。甲は、上記箱を上記トートバッグ内に収めて店外へ持ち出すつもりでいたが、
65 箱が大きすぎてその上部が10センチメートルほど同トートバッグからはみ出した状態になった。甲
66 は、その状態のまま出入口方向へ歩き出そうとしたが、その一部始終を警備員F(35歳、女性)に目
67 撃されていた。Fは、甲が液晶テレビを精算せずに店外へ持ち出そうとしていると考え、約20メー
68 トル離れた場所から甲の方へ歩いて向かったところ、周囲を見回していた甲も、Fがこちらを見なが
69 - 2 - 3 -
70
71 ら向かってきていることに気付いて万引きがばれたと思い、上記箱を陳列棚に戻した。そして、甲は、
72 その場から走って逃げ出し、E店を出てから約3分後、E店から約400メートル離れた公園にたど
73 り着き、同所でE店から追ってくる人がいないかどうかをうかがっていた。甲は、約10分間、上記公
74 園にとどまっていたが、誰も追ってこなかったことから、E店に隣接する駐輪場にとめたままにして
75 いた自己の自転車を取りに戻ろうと考え、それから約5分後、同駐輪場に戻ってきて、周囲の様子を
76 うかがいつつ同自転車に近づこうとした。Fは、戻ってきた甲に気付き、上記駐輪場に飛び出し、甲を
77 捕まえようと思って、
78 「この万引き犯。逃げるんじゃない。
79 」などと言いながら、両手を左右に広げて甲
80 の前に立ち塞がった。そのため、甲は、逮捕を免れようと考え、両手でFの胸部を1回押したところ、
81 Fが体勢を崩して尻餅を付いた。そこで、甲は、その隙に上記自転車に乗ってその場から逃走した。
82 〔設問2〕
83 【事例2】における甲の罪責に関し、事後強盗既遂罪(刑法第238条)の成立を否定するためには
84 どのような主張があり得るか。考えられるものを3つ挙げ、その3つの主張の論拠を、それぞれ具体
85 的な事実を明示して、説明しなさい。
86
87 - 3 - 4 -
88
89 [刑事訴訟法]
90 次の【事例】を読んで、後記〔設問〕に答えなさい。
91 【事例】
92 司法警察員Pは、Aが覚醒剤を密売しているとの情報を得て、内偵捜査を進めた。その結果、その拠点
93 は、Aが妻甲及び息子乙と同居するアパート1階にあるA方居室であるとの疑いが強まった。
94 そこで、Pは、令和3年11月13日、Aを被疑者とする前記覚醒剤営利目的譲渡被疑事件に関し、捜
95 索すべき場所をA方居室、差し押さえるべき物を「覚醒剤、注射器、計量器等」とする捜索差押許可状の
96 発付を受けた。
97 Pは、同月15日、他の司法警察員らと共に、A方居室付近に赴き、同日午後1時30分頃、玄関扉を
98 少し開けて顔を出した甲に対して、捜索を実施する旨告げた。
99 Pは、Aが不在であったため、甲を立会人としてA方居室の捜索を実施することとし、甲に対して、前
100 記捜索差押許可状を呈示して捜索を開始した。その際、甲が同室玄関内において、コートを着用し、靴を
101 履いてキャリーケースを所持していたことから、Pは、甲が同室内から覚醒剤の密売に関する物を同キ
102 ャリーケースに入れて持ち出そうとしていたのではないかとの疑いを抱き、甲に対し、再三にわたり、
103 同キャリーケースを開けて中を見せるように求めた。しかし、甲は、同キャリーケースの持ち手を握っ
104 たまま、これを拒否した。そこで、Pは、@甲の承諾を得ることなく、無施錠の同キャリーケースのチャ
105 ックを開けて、その中を捜索し、覚醒剤や注射器を発見した。
106 その後、Pは、他の司法警察員らと共に、同室の捜索を継続し、同室から覚醒剤、注射器及び計量器を
107 発見した。そして、その頃、乙がボストンバッグを所持して同室に帰宅した。乙が同室内に入った後も同
108 ボストンバッグを手放さなかったことから、Pは、同ボストンバッグ内にも覚醒剤の密売に関する物が
109 入っているのではないかとの疑いを抱き、乙に対し、再三にわたり、同ボストンバッグを開けて中を見
110 せるように求めた。しかし、乙は、同ボストンバッグを両腕で抱きかかえて、これを拒否した。そこで、
111 Pらは、A乙を羽交い締めにした上、乙から同ボストンバッグを取り上げて、その中を捜索し、覚醒剤を
112 発見した。
113 〔設問〕
114 下線部@及びAの各行為の適法性について論じなさい。なお、前記捜索差押許可状は適法に発付され
115 たものとする。
116 (参照条文) 覚醒剤取締法
117 第41条の2 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する
118 者を除く。
119 )は、10年以下の懲役に処する。
120 2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期
121 懲役及び500万円以下の罰金に処する。
122 3 (略)
123
124 - 4 - 5 -
125
126