1 論文式試験問題集
2 [法律実務基礎科目(民事・刑事)]
3
4 - 1 - 42 -
5
6 [民
7
8 事]
9
10 司法試験予備試験用法文を適宜参照して、
11 以下の各設問に答えなさい。
12
13
14 〔設問1〕
15 弁護士Pは、
16 Xから次のような相談を受けた。
17
18
19 【Xの相談内容】
20 「私は、
21 建物のリフォームを仕事としています。
22
23 私は、
24 Yとは十年来の付き合いで、
25 Yが経営
26 する飲食店の常連客でもありました。
27
28 私は、
29 令和3年の年末頃、
30 Yから、
31 M市所在の建物(以下
32 「本件建物」という。
33
34 )を飲食店に改修するための外壁・内装等のリフォーム工事(以下「本件工
35 事」という。
36
37 )について相談を受け、
38 令和4年2月8日、
39 本件工事を報酬1000万円で請け負い
40 ました。
41
42
43 令和4年5月28日、
44 私は、
45 本件工事を完成させ、
46 本件建物をYに引き渡し、
47 本件工事の報酬
48 として、
49 1000万円の支払を求めましたが、
50 Yは、
51 700万円しか支払わず、
52 残金300万円
53 を支払いませんでした。
54
55 私は、
56 本件工事の報酬の残金300万円と支払が遅れたことの損害金全
57 てをYに支払ってほしいと思います。
58
59
60 弁護士Pは、
61 令和4年8月1日、
62 【Xの相談内容】を前提に、
63 Xの訴訟代理人として、
64 Yに対し、
65
66 Xの希望する金員の支払を求める訴訟(以下「本件訴訟」という。
67
68 )を提起することとした。
69
70
71 以上を前提に、
72 以下の各問いに答えなさい。
73
74
75
76
77 弁護士Pが、
78 本件訴訟において、
79 Xの希望を実現するために選択すると考えられる訴訟物を記
80 載しなさい。
81
82
83
84
85
86 弁護士Pが、
87 本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。
88
89 )において記載すべき請求の趣旨(民
90 事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい。
91
92 なお、
93 付随的申立てについては、
94 考慮する
95 必要はない。
96
97
98
99
100
101 弁護士Pが、
102 本件訴状において記載すべき請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1
103 項)を記載しなさい。
104
105 なお、
106 いわゆるよって書き(請求原因の最後のまとめとして、
107 訴訟物を明
108 示するとともに、
109 請求の趣旨と請求原因の記載との結びつきを明らかにするもの)は記載しない
110 こと。
111
112
113
114
115
116 弁護士Pが、
117 本件訴状において請求を理由づける事実として、
118 上記のとおり記載した理由を
119 判例を踏まえて簡潔に説明しなさい。
120
121 なお、
122 訴訟物が複数ある場合は、
123 訴訟物ごとに記載するこ
124 と。
125
126
127
128 〔設問2〕
129 以下、
130 XがYとの間で、
131 令和4年2月8日に締結した報酬を1000万円とする本件工事の請負
132 契約を「本件契約」という。
133
134
135 弁護士Qは、
136 本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。
137
138
139 【Yの相談内容】
140 「(a)
141
142 Xは、
143 令和4年5月28日、
144 本件工事を完成させ、
145 私は、
146 同日、
147 本件建物の引渡しを受
148 け、
149 Xに700万円を支払いました。
150
151 しかし、
152 私がXとの間で締結したのは、
153 報酬を70
154 0万円とする本件工事の請負契約であり、
155 本件契約ではありません。
156
157
158 - 2 - 53 -
159
160 私は、
161 本件建物で飲食店を営業したいと考え、
162 令和3年の年末頃、
163 Xに本件建物のリ
164 フォーム工事について相談をしました。
165
166 Xが本件建物を見た上で、
167 本件工事は700万
168 円程度でできると述べたので、
169 私は、
170 令和4年2月8日、
171 Xとの間で、
172 報酬を700万
173 円とする本件工事の請負契約を締結しました。
174
175 したがって、
176 私が本件工事の報酬として
177 Xに支払うべき金額は、
178 1000万円ではなく700万円であり、
179 未払はありません。
180
181
182 仮に、
183 Xと私との間で、
184 本件契約が締結されたというのであれば、
185 Xは、
186 令和4年5
187 月28日、
188 次のようなやり取りを経て、
189 私に本件工事の報酬残金300万円の支払を免
190 除しましたので、
191 私はそれを主張したいと思います。
192
193
194 私は、
195 令和4年5月28日、
196 本件建物の引渡しを受ける際、
197 本件建物の外壁に亀裂が
198 あるのを発見しました。
199
200 私がその場で、
201 Xに対し、
202 外壁の修補を求めたところ、
203 Xは、
204
205 この程度の亀裂は自然に発生するもので修補の必要はないと言い、
206 本件工事の報酬10
207 00万円を支払うよう求めてきました。
208
209 私は、
210 本件工事の報酬は700万円だと思って
211 いましたので、
212 それを強く言うと、
213 Xは、
214 そのようなことはないなどと言っていました
215 が、
216 最終的には、
217 『700万円でいい。
218
219 残りの300万円の支払はしなくてよい。
220
221 』と言
222 いましたので、
223 私は、
224 700万円を支払って、
225 本件建物の引渡しを受けました。
226
227
228 (b)
229
230 本件建物の外壁の亀裂は、
231 その後、
232 とんでもないことになりました。
233
234
235 令和4年6月初旬、
236 雨が降り続いた際、
237 本件建物の外壁の亀裂が原因で雨漏りが生じ
238 ました。
239
240 私は、
241 このままでは安心して本件建物で営業ができないと思い、
242 同月10日、
243
244 Xに対し、
245 本件建物の外壁の亀裂から雨漏りが生じたことを伝え、
246 外壁の修補を求めま
247 したが、
248 Xから断られましたので、
249 損害賠償を請求する旨を伝えました。
250
251 そして、
252 私は、
253
254 本件建物の外壁の補修工事を別の業者に依頼し、
255 その報酬として350万円を支出しま
256 した。
257
258
259
260 弁護士Qは、
261 【Yの相談内容】を前提に、
262 Yの訴訟代理人として、
263 本件訴訟の答弁書(以下「本
264 件答弁書」という。
265
266 )を作成した。
267
268
269 以上を前提に、
270 以下の各問いに答えなさい。
271
272
273
274
275 弁護士Qは、
276 【Yの相談内容】(a)を踏まえて、
277 抗弁を主張することとした。
278
279 その検討に当た
280 り、
281 本件訴訟において、
282 抗弁として機能するためには、
283 以下の(ア)及び(イ)の事実が必要
284 であると考えた。
285
286
287 (ア)
288
289
290
291 (イ)
292
293
294
295 Xは、
296 Yに対し、
297 令和4年5月28日、
298 本件契約に基づく報酬債務のうち300万円の支
299 払を免除するとの意思表示をした。
300
301
302
303 (@) (ア)に入る具体的事実を記載しなさい。
304
305
306 (A) 弁護士Qが、
307 (ア)の事実が必要であると考えた理由を簡潔に説明しなさい。
308
309
310
311
312 弁護士Qは、
313 【Yの相談内容】(b)から、
314 YはXに対し、
315 契約不適合を理由とする債務不履行に
316 基づく350万円の損害賠償債権を有すると考えた。
317
318 弁護士Qがこの350万円の回収方法とし
319 て、
320 本件訴訟手続を利用して選択できる訴訟行為を判例を踏まえて挙げなさい。
321
322
323
324 〔設問3〕
325 本件訴訟の第1回口頭弁論期日において、
326 本件訴状及び本件答弁書等は陳述された。
327
328 弁護士Pは、
329
330 その口頭弁論期日において、
331 本件工事の報酬の見積金額が1000万円と記載された令和4年2月
332 2日付けのX作成の見積書(以下「本件見積書@」という。
333
334 )を書証として提出し、
335 これが取り調
336 べられたところ、
337 弁護士Qは、
338 本件見積書@の成立を認める旨を陳述した。
339
340
341
342 - 3 - 64 -
343
344 これに対し、
345 弁護士Qは、
346 本件訴訟の第1回弁論準備手続期日において、
347 本件工事の報酬の見積
348 金額が700万円と記載された令和4年2月2日付けのX作成の見積書(以下「本件見積書A」と
349 いう。
350
351 )を書証として提出し、
352 これが取り調べられたところ、
353 弁護士Pは、
354 本件見積書Aの成立を
355 認める旨を陳述した。
356
357
358 本件訴訟の第2回弁論準備手続期日を経た後、
359 第2回口頭弁論期日において、
360 本人尋問が実施さ
361 れ、
362 本件契約の締結に関し、
363 Xは、
364 次の【Xの供述内容】のとおり、
365 Yは、
366 次の【Yの供述内容】
367 のとおり、
368 それぞれ供述した(なお、
369 それ以外の者の尋問は実施されていない。
370
371 )。
372
373
374 【Xの供述内容】
375 「私は、
376 令和3年の年末頃に、
377 Yから本件建物を飲食店にリフォームをしてもらえないかと頼
378 まれ、
379 本件建物を見に行きました。
380
381 Yは、
382 リフォームの費用は銀行から融資を受けるつもりなの
383 で、
384 できるだけ安く済ませたいと言っていました。
385
386 私は、
387 Yの要望のとおりのリフォームをする
388 のであれば1000万円を下回る報酬額で請け負うのは難しいと話し、
389 本件工事の報酬金額を1
390 000万円と見積もった本件見積書@を作成して、
391 令和4年2月2日、
392 Yに交付しました。
393
394 Yが
395 同月8日、
396 本件工事を報酬1000万円で発注すると言いましたので、
397 私は、
398 同日、
399 本件工事を
400 報酬1000万円で請け負いました。
401
402 見積金額が700万円と記載された本件見積書Aは、
403 Yか
404 ら、
405 本件建物は賃借している物件なので、
406 賃貸人に本件工事を承諾してもらわなければならない
407 が、
408 大掛かりなリフォームと見えないようにするため、
409 外壁工事の項目を除いた見積書を作って
410 ほしいと頼まれて作成したものです。
411
412 実際、
413 私は、
414 本件工事として本件建物の外壁工事を実施し
415 ており、
416 本件見積書Aは実体と合っていません。
417
418 私は、
419 Yは本件見積書@を銀行に提出し、
420 同年
421 5月初旬に銀行から700万円の融資を受けたと聞いていますが、
422 本件見積書Aを賃貸人に見せ
423 たかどうかは聞いていません。
424
425 私は、
426 契約書を作成しておかなかったことを後悔していますが、
427
428 私とYは十年来の仲でしたので、
429 作らなくても大丈夫だと思っていました。
430
431
432 以上のとおり、
433 私は、
434 Yとの間で、
435 令和4年2月8日、
436 本件契約を締結しました。
437
438
439 【Yの供述内容】
440 「私は令和4年2月8日、
441 Xに本件工事を発注しましたが、
442 報酬は1000万円ではなく、
443
444 00万円でした。
445
446 Xが私に対し、
447 1000万円を下回る報酬額で請け負うのは難しいと言ったこ
448 とはなく、
449 令和3年の年末頃に本件建物を見た際、
450 700万円程度でできると言い、
451 令和4年2
452 月2日、
453 本件工事の報酬金額を700万円と見積もった本件見積書Aを私に交付しました。
454
455 そこ
456 で、
457 私は、
458 同月8日、
459 Xに対し、
460 本件工事を報酬700万円で発注したいと伝え、
461 Xとの間で、
462
463 本件工事の請負契約を締結したのです。
464
465 私から外壁工事の項目を除いた見積書を作ってほしいと
466 は言っていません。
467
468 確かに、
469 本件見積書Aには、
470 本件工事としてXが施工した外壁工事に関する
471 部分の記載がありませんが、
472 私は、
473 本件見積書Aの交付を受けた当時、
474 Xから、
475 外壁工事分はサ
476 ービスすると言われていました。
477
478 本件見積書@は、
479 私が運転資金として300万円を上乗せして
480 銀行から融資を受けたいと考え、
481 Xにお願いして、
482 銀行提出用に作成してもらったものです。
483
484
485 は、
486 本件見積書@を銀行に提出しましたが、
487 結局、
488 融資を受けられたのは700万円でした。
489
490
491 件見積書Aは、
492 本件工事の承諾を得る際、
493 賃貸人に見せています。
494
495
496 以上を前提に、
497 以下の問いに答えなさい。
498
499
500 弁護士Pは、
501 本件訴訟の第3回口頭弁論期日までに、
502 準備書面を提出することを予定している。
503
504
505 その準備書面において、
506 弁護士Pは、
507 前記の提出された書証並びに前記【Xの供述内容】及び
508 【Yの供述内容】と同内容のX及びYの本人尋問における供述に基づいて、
509 XとYが本件契約を締
510 結した事実が認められることにつき、
511 主張を展開したいと考えている。
512
513 弁護士Pにおいて、
514 上記
515 準備書面に記載すべき内容を、
516 提出された書証や両者の供述から認定することができる事実を踏
517 - 4 - 75 -
518
519 まえて、
520 答案用紙1頁程度の分量で記載しなさい。
521
522 なお、
523 記載に際しては、
524 冒頭に、
525 XとYが本
526 件契約を締結した事実を直接証明する証拠の有無について言及すること。
527
528
529 〔設問4〕
530 仮に、
531 弁護士Qにおいて、
532 〔設問2〕の本件訴訟手続を利用して選択できる訴訟行為を行わない
533 まま、
534 本件訴訟の口頭弁論は終結し、
535 その後、
536 Xの請求を全部認容する判決が言い渡され、
537 同判決
538 は確定したものとする(以下、
539 この確定した判決を「本件確定判決」という。
540
541 )。
542
543 Xは、
544 Yが支払わ
545 ないので、
546 本件確定判決を債務名義として、
547 YのA銀行に対する預金債権を差押債権とする債権差
548 押命令の申立てをしたところ、
549 これに基づく差押命令が発令されて、
550 同命令がA銀行及びYに送達
551 された。
552
553
554 弁護士Qは、
555 Yの代理人として、
556 〔設問2〕の【Yの相談内容】(b)を踏まえ、
557 本件確定判決に係
558 る請求権の存在又は内容について異議を主張して、
559 本件確定判決による強制執行の不許を求めるこ
560 とができるか、
561 結論を答えた上で、
562 その理由を民事執行法の関係する条文に言及しつつ、
563 判例を踏
564 まえて簡潔に説明しなさい。
565
566
567
568 - 5 - 86 -
569
570 [刑
571
572 事]
573
574 次の【事例】を読んで、
575 後記〔設問〕に答えなさい。
576
577
578 【事例】
579
580
581 A(23歳、
582 男性)は、
583 令和3年3月31日、
584 「被告人は、
585 金品を強取しようと考え、
586 Bと
587 共謀の上、
588 令和3年3月9日午後1時頃、
589 H県I市J町1丁目2番3号V方に、
590 宅配業者を装
591 って玄関から侵入し、
592 その頃から同日午後1時10分頃までの間、
593 同所において、
594 V(当時7
595 5歳)に対し、
596 持っていたサバイバルナイフを突き付け、
597 『金とキャッシュカードを出せ。
598
599 』な
600 どと申し向け、
601 持っていたロープでVの両手首及び両足首を縛るなどの暴行脅迫を加え、
602 Vの
603 反抗を抑圧した上、
604 V所有又は管理の現金500万円及びキャッシュカード1枚を強取し、
605
606 の際、
607 Vに加療約10日間を要する両手関節部擦過傷の傷害を負わせた。
608
609 」旨の住居侵入、
610 強盗
611 致傷被告事件(以下「本件被告事件」という。
612
613 )でH地方裁判所に公判請求された。
614
615 B(21歳、
616
617 男性)は、
618 Aが公判請求される前日に、
619 前記住居侵入、
620 強盗致傷の事実で同裁判所に公判請求
621 されていた。
622
623
624
625
626
627 Aが公判請求されるまでに収集された主な証拠の概要は次のとおりである(以下、
628 特に年を
629 明示していない日付は全て令和3年である。
630
631 )。
632
633 なお、
634 Aは、
635 取調べに対し、
636 一貫して黙秘して
637 いた。
638
639
640
641
642 Vの警察官面前の供述録取書(証拠@)
643 「私は、
644 自宅に1人で住んでいる。
645
646 3月9日午後1時頃、
647 玄関のチャイムが鳴り、
648 インター
649 ホンに応対したところ、
650 男が宅配業者を名乗ったため、
651 玄関のドアを開けた。
652
653 すると、
654 茶色
655 の作業着上下と帽子を着用した男が玄関内に入ってきてドアを閉め、
656 ポケットから取り出し
657 たナイフを私ののど元に突き付け、
658 『金とキャッシュカードを出せ。
659
660 』と言ってきた。
661
662 男の言
663 うとおりにしないと刺されると思い、
664 寝室のたんすの中に現金やキャッシュカードがあるこ
665 とを伝えた。
666
667 男は、
668 私にナイフを突き付けたまま、
669 私を連れて寝室に移動し、
670 再び、
671 現金と
672 キャッシュカードを出すように言ってきた。
673
674 私は、
675 たんすの引き出しを開け、
676 中にあった現
677 金500万円とR銀行の私名義のキャッシュカード1枚を男に示した。
678
679 男は、
680 その現金とキ
681 ャッシュカードを奪って作業着上衣のポケットに入れると、
682 私を床にうつ伏せに押さえ付け、
683
684 私の両手首と両足首をロープで縛った。
685
686 そして、
687 男が『キャッシュカードの暗証番号を教え
688 ろ。
689
690 』と言ってきたので、
691 私は、
692 4桁の暗証番号を教えた。
693
694 すると、
695 男はその場から立ち去っ
696 た。
697
698 私は、
699 両手両足を必死に動かし、
700 ロープを緩めて手足を抜いたが、
701 その際、
702 両手首を怪
703 我してしまった。
704
705 その後、
706 110番通報した上で、
707 R銀行に電話をかけ、
708 キャッシュカード
709 の利用を停止した。
710
711 犯人の男が家にいた時間は約10分間だった。
712
713
714
715
716
717 ロープに関する捜査報告書(証拠A)
718 「Vの110番通報を受け、
719 3月9日午後1時40分頃にV方に臨場した警察官らは、
720 Vの
721 両手首及び両足首を縛っていたものとして、
722 Vから水色のロープ2本の提出を受けたことか
723 ら、
724 これを領置した。
725
726
727
728
729
730 I市立病院医師作成の診断書(証拠B)
731 「Vが3月9日、
732 同病院を受診し、
733 同日から約10日間の加療を要する両手関節部擦過傷と
734 診断された。
735
736
737
738
739
740 Qマンション防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠C)
741 「警察官らがV方付近の防犯カメラを検索したところ、
742 V方から北方約50メートルに位置
743 するQマンション入口に防犯カメラが設置されていることが判明した。
744
745 同防犯カメラ画像を
746 精査した結果、
747 3月9日午後0時56分、
748 同マンション前路上に、
749 車両番号『あ
750 - 6 - 97 -
751
752 8910』
753
754 の黒色ワンボックスカーが止まり、
755 同日午後0時58分、
756 同車両助手席から男(茶色の作業
757 着上下、
758 帽子を着用)が降り、
759 南方に歩いていく状況と、
760 同日午後1時11分、
761 南方から同
762 男と思われる男が走ってきて同車両助手席に乗り込み、
763 同車両が発進する状況が記録されて
764 いた。
765
766
767
768
769 車両検索に関する捜査報告書(証拠D)
770 「車両番号『あ
771
772 8910』について検索をかけたところ、
773 同車両番号での黒色ワンボック
774
775 スカーの該当は1台のみであることが確認され、
776 その使用者はBであることが判明した。
777
778
779
780
781 V名義のキャッシュカード利用状況に関する捜査関係事項照会回答書(証拠E)
782 「R銀行S支店に開設されたV名義の普通預金口座(口座番号1234567)に係るキャ
783 ッシュカードについては、
784 3月9日午後1時35分頃、
785 Vの申入れにより利用停止の手続が
786 執られた。
787
788 同日午後1時40分、
789 UコンビニエンスストアT店に設置されたATMに同キャ
790 ッシュカードが挿入され、
791 出金の操作が行われたが、
792 未遂に終わっている。
793
794
795
796
797
798 UコンビニエンスストアT店防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠F)
799 「UコンビニエンスストアT店の駐車場及び店内に設置された防犯カメラ画像を精査した結
800 果、
801 3月9日午後1時38分、
802 黒色ワンボックスカーが駐車場に止まり、
803 運転席から、
804 黒色
805 の上衣、
806 青色のズボンを着用した男(以下『甲』という。
807
808 )、
809 助手席から、
810 茶色の作業着上下
811 を着用した男(以下『乙』という。
812
813 )がそれぞれ降り、
814 入店する様子が記録されていた。
815
816 また、
817
818 入店後、
819 甲が、
820 同日午後1時39分から同日午後1時41分までの間、
821 ATM前に立ってい
822 る様子、
823 乙が、
824 清涼飲料水コーナーでペットボトル1本を手に取り、
825 同日午後1時41分、
826
827 店員にカードを手渡して購入手続を行う様子が、
828 記録されていた。
829
830
831
832
833
834 商品購入状況に関する捜査報告書(証拠G)
835 「UコンビニエンスストアT店店長からの聴取により、
836 3月9日午後1時41分、
837 同店にお
838 いて、
839 清涼飲料水1本が購入されたこと、
840 その購入に際しては、
841 交通系ICカードが用いら
842 れたことが判明し、
843 同カードの名義人を照会した結果、
844 Bであることが確認された。
845
846
847
848
849
850 B方及びB使用車両の捜索差押調書(証拠H)
851 「3月10日午前7時から同日午前7時45分までの間、
852 B方及びB使用車両の捜索を実施
853 し、
854 B方において、
855 現金200万円、
856 茶色の作業着上下1着、
857 茶色の帽子1個、
858 水色物干し
859 ロープ1巻及び携帯電話機1台を発見したので、
860 これらを差し押さえた。
861
862
863
864
865
866 Bの警察官面前の供述録取書(3月12日付け)(証拠I)
867 「3月1日の夜、
868 Aから電話で、
869 『家に金をためているばあさんがいるらしい。
870
871 一緒にその
872 金を奪わないか。
873
874 』と誘われ、
875 金に困っていたので承諾した。
876
877 それから何回か、
878 Aと共に私の
879 車でV方付近に行き、
880 V方の様子を観察したところ、
881 Vが1人暮らしで、
882 昼前後はV方にい
883 ることが分かったので、
884 昼過ぎ頃にV方に押し入ることにした。
885
886 その後、
887 Aと話し合い、
888
889 が宅配業者を装ってV方に入り、
890 刃物でVを脅して現金とキャッシュカードを奪うこと、
891
892 の際にVから暗証番号を聞き出すこと、
893 発覚を遅らせるためにVを縛ること、
894 その間Aが見
895 張りをすることを決めた。
896
897 Aから、
898 宅配業者のような服とVを縛る道具を用意するように言
899 われたので、
900 茶色の作業着上下と帽子を購入した。
901
902 Vを縛るためには、
903 家にあった物干しロ
904 ープを使うことにした。
905
906 3月9日午後0時過ぎ頃、
907 購入した作業着を着て、
908 私の車でA方に
909 行き、
910 その後、
911 Aに運転を替わってV方に向かった。
912
913 Aは、
914 V方付近のマンション前に車を
915 止めると、
916 『親父のだから、
917 落としたりするなよ。
918
919 』と言いながら、
920 私にナイフを渡してきた。
921
922
923 そのナイフを受け取って作業着上衣のポケットに入れ、
924 帽子をかぶり、
925 軍手をはめて車から
926 降りた。
927
928 その後は計画どおりに実行し、
929 V方のたんすの引き出し内にあった現金の束とキャ
930 ッシュカード1枚を奪い、
931 暗証番号を聞き出した。
932
933 V方を出た後は、
934 Aが待つ車の助手席に
935 乗り込み、
936 Aが車を発進させた。
937
938 Aは、
939 しばらくの間車を走らせていたが、
940 30分ほど経っ
941 た頃、
942 Uコンビニエンスストアの駐車場に車を止め、
943 『カードで金を下ろしてくる。
944
945 』と言っ
946 - 7 -- 10
947 8 --
948
949 てきた。
950
951 そこで、
952 私は、
953 Vから奪ったキャッシュカード1枚をAに渡して暗証番号を伝え、
954
955 Aにナイフを返した。
956
957 Aが車から降り、
958 私も飲み物でも買おうと思って車から降りた。
959
960 店内
961 では、
962 私名義の交通系ICカードを使ってスポーツドリンク1本を買った。
963
964 それから、
965 Aと
966 2人で車に戻ったが、
967 この時Aが不機嫌そうに、
968 『もう使えなかった。
969
970 』と言っていたので、
971
972 キャッシュカードが利用停止になっており、
973 出金できなかったことが分かった。
974
975 その後、
976
977 方に行き、
978 Vから奪った現金500万円を2人で分けた。
979
980 取り分は、
981 Aが300万円で私が
982 200万円だった。
983
984 実行したのは私だったので分け前に少し不満はあったが、
985 地元の先輩で
986 あるAには昔から面倒を見てもらっていて、
987 私が学校でいじめられていたときに助けてもら
988 ったり、
989 金に困っていたときに金を貸してもらったりしていたので仕方ないと思った。
990
991
992
993
994 B使用の携帯電話機の精査に関する捜査報告書(証拠J)
995 「B使用の携帯電話機を精査したところ、
996 メッセージアプリがインストールされ、
997 同アプリ
998 に『A』なる者が登録されていること、
999 『A』とBとの間で通話やメッセージが頻繁に交わさ
1000 れており、
1001 3月1日午後8時32分にも『A』からの着信があり、
1002 約14分間の通話があっ
1003 たことが判明した。
1004
1005
1006
1007
1008
1009 A方の捜索差押調書(証拠K)
1010 「3月10日午後3時から同日午後3時45分までの間、
1011 A方の捜索を実施し、
1012 Aが使用
1013 する部屋において、
1014 R銀行発行に係るV名義のキャッシュカード1枚(口座番号12345
1015 67)及びサバイバルナイフ1本を発見したので、
1016 これらを差し押さえた。
1017
1018
1019
1020
1021
1022 A父の警察官面前の供述録取書(証拠L)
1023 「私は、
1024 妻、
1025 息子のAと3人で自宅に住んでいる。
1026
1027 警察官から、
1028 サバイバルナイフを所持
1029 しているかと尋ねられたが、
1030 1本持っている。
1031
1032 特注品であり、
1033 柄には私の名前が入っている。
1034
1035
1036 本日、
1037 Aの部屋から発見されたというサバイバルナイフ1本を見せてもらったが、
1038 柄に入っ
1039 た名前などから私のものに間違いない。
1040
1041 3月7日にもそのナイフを持って釣りに行った。
1042
1043
1044 のことは知っているが、
1045 ここ数年は会ったことがなく、
1046 そのナイフを貸したこともない。
1047
1048
1049
1050
1051
1052 指紋対照結果に関する捜査報告書(証拠M)
1053 「証拠K記載のサバイバルナイフ1本から採取した指紋のうち、
1054 柄から採取した指紋2個
1055 が、
1056 それぞれBの右手拇指及び右手中指の指紋と一致した。
1057
1058
1059
1060
1061
1062 Qマンション防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠N)
1063 「3月1日以降の防犯カメラ画像を新たに入手して精査した結果、
1064 同月3日から同月5日ま
1065 での各日午前8時頃から午後6時頃までの間、
1066 車両番号『あ
1067
1068 8910』の黒色ワンボック
1069
1070 スカーがQマンション前路上に止められ、
1071 同車両を男2名が出入りする様子が記録されてい
1072 た。
1073
1074
1075
1076
1077 Aの債務に関する捜査報告書(証拠O)
1078 「消費者金融各社に対する照会の結果、
1079 本件犯行日である3月9日時点で、
1080 Aが消費者金融
1081 Y社に対して105万円、
1082 消費者金融Z社に対して220万円の債務を負っていたこと、
1083
1084 社に対する債務につき、
1085 3月10日午前9時32分に100万円が返済され、
1086 Z社に対する
1087 債務につき、
1088 同日午前9時34分に200万円が返済されていることがそれぞれ判明した。
1089
1090
1091
1092
1093
1094 Bの検察官面前の供述録取書(3月26日付け)(証拠P)
1095 証拠Iと同旨の供述に加え、
1096 「事件の翌朝、
1097 警察官が家に来たとき、
1098 初めはしらを切ろうか
1099 と思ったが、
1100 嘘を言っても通用しないだろうと思い、
1101 最初から全部本当のことを話すことに
1102 した。
1103
1104 Vに怖い思いをさせて申し訳ない。
1105
1106 」旨の供述が録取されている。
1107
1108 なお、
1109 Bは、
1110 取調べ
1111 に対し、
1112 一貫して本件犯行を認め、
1113 証拠Iと同旨の供述をしていた。
1114
1115
1116
1117
1118
1119 受訴裁判所は、
1120 4月2日、
1121 本件被告事件を公判前整理手続に付する決定をした。
1122
1123
1124
1125 - 8 -- 11
1126 9 --
1127
1128 検察官は、
1129 同月14日、
1130 本件被告事件について、
1131 犯行に至る経緯、
1132 犯行状況等をB供述に沿
1133 って時系列で記載した証明予定事実記載書を裁判所に提出するとともに、
1134 証拠の取調べを裁判所
1135 に請求し、
1136 当該証拠を弁護人に開示した。
1137
1138
1139 その後、
1140 所定の手続を経て、
1141 弁護人は、
1142 「AがBと共謀した事実はなく、
1143 Aは無罪である。
1144
1145
1146 旨の予定主張記載書を裁判所に提出し、
1147 検察官請求証拠に対する意見を述べた。
1148
1149 これを受け、
1150
1151 裁判所は、
1152 検察官に対し、
1153 どのような事実と証拠に基づいてAB間の共謀を立証するのか、
1154
1155 その主張と証拠の構造が分かるような証明予定事実記載書を追加で提出するように求めた。
1156
1157
1158 その後、
1159 検察官による追加の証明予定事実記載書の提出、
1160 Bの証人尋問請求等の所定の手続
1161 が行われ、
1162 9月21日、
1163 裁判所は、
1164 争点を整理し、
1165 検察官が請求したBを証人として尋問する
1166 旨の決定をするなどした上、
1167 審理計画を策定し、
1168 公判前整理手続を終了した。
1169
1170 裁判所が策定し
1171 た審理計画は、
1172 第1回公判期日に冒頭手続、
1173 検察官請求証拠のうち証拠書類等の取調べ、
1174 第2
1175 回公判期日にBの証人尋問、
1176 第3回公判期日に被告人質問、
1177 第4回公判期日に論告、
1178 弁論等を
1179 行い、
1180 第5回公判期日に判決を言い渡すというものであった。
1181
1182
1183
1184
1185 検察官は、
1186 Aについて、
1187 起訴後の接見等禁止決定がなされていたものの、
1188 その終期が公判前整
1189 理手続の終了する日までとされていたことから、
1190 同日、
1191 接見等禁止の請求をし、
1192 裁判官は、
1193
1194 の終期を第1回公判期日が終了する日までとして接見等禁止決定をした。
1195
1196
1197 第1回公判期日において、
1198 冒頭手続、
1199 検察官請求証拠のうち証拠書類等の取調べが行われた。
1200
1201
1202 検察官は、
1203 同期日終了後、
1204 裁判所に対し、
1205 接見等禁止の請求をし、
1206 裁判所は、
1207 その終期を第2回
1208 公判期日が終了する日までとして接見等禁止決定をした。
1209
1210
1211 その後、
1212 第2回公判期日において、
1213 Bの証人尋問が行われ、
1214 Bは、
1215 証拠Pと同旨の証言をし
1216 た。
1217
1218 検察官は、
1219 同期日終了後、
1220 接見等禁止の請求をしなかった。
1221
1222
1223
1224 〔設問1〕
1225 下線部に関し、
1226 検察官は、
1227 Aが本件被告事件に関与した状況についてのB供述の信用性が認め
1228 られ、
1229 同供述の内容等を踏まえればAに共謀共同正犯が成立すると判断したものであるところ、
1230
1231 以下の各問いに答えなさい。
1232
1233 なお、
1234 証拠@からH及び証拠JからOに記載された内容については、
1235
1236 信用性が認められることを前提とする。
1237
1238
1239
1240
1241 B供述のうち本件被告事件に関与したのはAであるとする供述部分の信用性が認められると判断
1242 した検察官の思考過程について、
1243 具体的事実を指摘しつつ答えなさい。
1244
1245
1246
1247
1248
1249 Aに共謀共同正犯が成立すると判断した検察官の思考過程について、
1250 具体的事実を指摘しつつ答
1251 えなさい。
1252
1253
1254
1255 〔設問2〕
1256 下線部に関し、
1257 裁判所が検察官に対し、
1258 追加の証明予定事実記載書の提出を求めた理由を、
1259
1260 判前整理手続の制度趣旨に言及しつつ答えなさい。
1261
1262
1263 〔設問3〕
1264 下線部及びに関し、
1265 検察官は、
1266 下線部では接見等禁止の請求をしたのに、
1267 下線部ではこ
1268 れをしていないが、
1269 検察官がこのように異なる対応を採った理由を、
1270 具体的事実を指摘しつつ答
1271 えなさい。
1272
1273
1274 〔設問4〕
1275 仮に、
1276 第2回公判期日に実施されたBの証人尋問の主尋問において、
1277 Bが「今回の事件は、
1278 全て
1279 Aに言われたとおりにやった。
1280
1281 当日私が着ていた作業着やロープもAが用意したものだ。
1282
1283 」旨証言
1284 した後、
1285 反対尋問において、
1286 弁護人がその点に関し捜査段階でどのような供述をしていたのかに
1287 - 9 - 12
1288 10 -
1289
1290 ついて尋問を尽くしても、
1291 「覚えていない。
1292
1293 」旨の証言に終始したとする。
1294
1295 この場合において、
1296
1297 護人は、
1298 Bの証人尋問終了後、
1299 「やむを得ない事由」(刑事訴訟法第316条の32第1項)があ
1300 り、
1301 かつ、
1302 証拠能力も認められるとして、
1303 証拠Iの取調べを請求した。
1304
1305 これに対し、
1306 検察官は、
1307
1308 「やむを得ない事由」があることは争わないとした上で、
1309 証拠意見として「異議なし」と述べた。
1310
1311
1312
1313
1314 弁護人が証拠Iの取調べを請求した思考過程について、
1315 「やむを得ない事由」があり、
1316 かつ、
1317
1318 拠能力も認められると考えた理由にも言及しつつ答えなさい。
1319
1320
1321
1322
1323
1324 検察官が証拠意見として「同意」ではなく「異議なし」と述べた理由を答えなさい。
1325
1326
1327
1328 - 10 - 13
1329 11 -
1330
1331