1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 次の文章を読んで、
16 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
17
18
19 【事例】
20 A株式会社(以下「A社」という。
21
22 )は、
23 自動車部品の製造及び販売を業とする株式会社である。
24
25
26 A社は、
27 順調な業績を維持していたが、
28 令和2年度に初めて赤字決算となったことから、
29 自己所有
30 の甲土地をB株式会社(以下「B社」という。
31
32 )に売却することとし、
33 令和3年9月15日、
34 B社と
35 の間で、
36 売買代金を取引相当額である5000万円とする売買契約を締結した。
37
38 A社は、
39 同日、
40 B
41 社から売買代金の支払を受けるのと引換えに、
42 B社に対し、
43 甲土地を引き渡すとともに、
44 所有権移
45 転登記手続の申請に必要な書類を交付したが、
46 その際、
47 甲土地を買い戻す意思があり、
48 近く買戻資
49 金の手当ができる見込みなので、
50 所有権移転の登記申請の実行を半年程度待ってほしいと要請した。
51
52
53 B社はこの要請に応じたが、
54 実際は、
55 A社において買戻資金を調達する予定はなく、
56 むしろ、
57 他の
58 取引先から信用供与を得る可能性を残すために、
59 甲土地の所有名義をA社のままにしておくことが
60 目的であった。
61
62
63 しかしながら、
64 令和3年10月以降、
65 A社の売上げの半分以上を占めていたC株式会社(以下「C
66 社」という。
67
68 )からの売掛金の支払が滞るようになり、
69 同年12月5日にC社が破産手続開始の申立
70 てをしてC社からの売掛金の支払が完全に途絶えたため、
71 A社は、
72 資金繰りに窮することとなった。
73
74
75 そこで、
76 A社は、
77 メインバンクを含む金融機関に緊急の融資を求めたものの、
78 十分な額の融資を受
79 けることができなかったことから、
80 令和4年1月25日を支払期限とするD株式会社に対する買掛
81 金の支払を遅滞するに至ったほか、
82 同月31日を支払期限とするメインバンクに対する借入金の分
83 割弁済もできなかった。
84
85
86 その後、
87 A社は、
88 令和4年2月20日、
89 代理人弁護士Eの名義で、
90 取引先や取引金融機関に対し、
91
92 A社は近日中にEを申立代理人として破産手続開始の申立てを行う予定であり、
93 債務の支払につい
94 てもそれまでの間停止する旨の通知(以下「本件通知」という。
95
96 )を発した。
97
98 さらに、
99 A社は、
100 同
101 年3月6日、
102 F地方裁判所に対し、
103 破産手続開始の申立てを行ったところ、
104 F地方裁判所は、
105 翌7
106 日、
107 破産手続開始決定を発し、
108 併せて弁護士Gを破産管財人に選任した。
109
110
111 〔設問1〕(とは、
112 独立した問題である。
113
114 )
115
116
117 B社は、
118 令和4年2月21日に本件通知を受け取ったため、
119 登記手続に必要な印鑑証明書を改
120 めてA社から取得して、
121 同年3月1日、
122 甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。
123
124
125 この登記手続を申請する行為につき、
126 破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、
127
128 論じなさい。
129
130
131
132
133
134 B社は、
135 令和4年2月3日、
136 A社において取引先に対する買掛金の支払やメインバンクに対す
137 る借入金の返済が滞っているとの情報に接したことから、
138 登記手続に必要な印鑑証明書を改めて
139 A社から取得して、
140 同月12日、
141 甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。
142
143 この登
144 記手続を申請する行為につき、
145 破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、
146 反対
147 の結論を採る立場にも言及しつつ、
148 論じなさい。
149
150
151
152 〔設問2〕
153 仮に、
154
155 〔設問1〕において、
156 甲土地の所有権移転登記手続を申請する行為が否認された場合、
157 B
158 社と破産管財人Gとの間の法律関係はどのようになるか、
159 論じなさい。
160
161 また、
162 甲土地の売買契約に
163 係る代金額が1000万円であり、
164 廉価売却であるとして甲土地の売買契約自体が否認された場合
165 のB社と破産管財人Gとの間の法律関係についても、
166 説明しなさい。
167
168
169 - 2 -
170
171 論文式試験問題集[租
172
173 - 3 -
174
175 税
176
177 法]
178
179 [租
180
181 税
182
183 法]
184
185 Aは、
186 宅地建物取引士の資格を持ち、
187 宅地建物取引業の免許を得て、
188 平成10年4月から同30
189 年12月まで、
190 個人で不動産業を営んでいた。
191
192 Aは、
193 その就業規則に基づいて、
194 不動産の販売業務
195 に従事する使用人(以下「営業社員」という。
196
197 )に対して、
198 通常の給与とは別に、
199 営業社員がA所有
200 の不動産を顧客に販売した場合に、
201 その契約高に比例した金額の金員を「契約報奨金」という名目
202 で支給していた。
203
204 営業社員が営業活動のために交通費や交際費を支出した場合、
205 Aがその金額を補
206 填していた。
207
208 しかし、
209 補填には年ごとに上限額があり、
210 営業社員がその上限額を超えた支出をして
211 差額を自己負担することも珍しくなかった。
212
213
214 Aの営業社員の一人であるBは、
215 宅地建物取引士の資格を持っている。
216
217 Bは、
218 平成25年、
219 通常
220 の給与として800万円、
221 契約報奨金として1000万円をAから受け取った。
222
223 同年にBが営業活
224 動のために支出した交通費及び交際費の合計額は70万円であり、
225 そのうちAから補填を受けた金
226 額は60万円であった。
227
228
229 Aは、
230 宅地建物取引士としての知識や、
231 不動産業を営んできた経験に基づいて、
232 平成26年3月
233 に、
234 不動産取引に関する書籍を株式会社Cから出版した。
235
236 Aは、
237 同年9月に、
238 同書に係る印税収入
239 として30万円を得た。
240
241
242 Aは、
243 販売用に所有していた甲土地の譲渡に関して、
244 平成28年4月から個人Dと交渉を始めた。
245
246
247 平成29年11月30日に、
248 Aが甲土地を5000万円の対価によりDに譲渡する旨の契約が締結
249 され、
250 同日、
251 売買契約を原因とするDへの移転登記を経由した。
252
253 しかし、
254 当時Dの資力に一時的に
255 制限があったため、
256 実際にDのAへの5000万円の代金支払が完了したのは、
257 平成30年1月1
258 0日であった。
259
260
261 Aは、
262 平成25年から同30年まで、
263 E証券会社にA名義の口座を設けて、
264 外国為替証拠金取引
265 (外国通貨の売買を、
266 一定の証拠金を担保にして、
267 その証拠金の何十倍もの金額で行う取引。
268
269 以下
270 「FX取引」という。
271
272 )を行っていた。
273
274 Aは、
275 この期間中に、
276 年200回から300回のFX取引を
277 行い、
278 平成25年には50万円余の利益を得たが、
279 平成26年から同30年までは年100万円か
280 ら300万円の損失を生じていた。
281
282 Aは、
283 FX取引を、
284 主に不動産業の事務所のパソコンを用いて
285 インターネット経由で行っており、
286 他にFX取引のための設備等はなかった。
287
288 また、
289 Aは、
290 FX取
291 引のための知識を、
292 主にインターネットや雑誌により得ていた。
293
294
295 Aは、
296 平成31年1月に、
297 Aの不動産業を法人化して株式会社F(以下「F社」という。
298
299 )を設立
300 し、
301 その代表取締役となった。
302
303
304 F社は、
305 令和元年6月から令和3年2月までの間に、
306 人気上昇中の避暑地にある土地8区画を購
307 入し、
308 同年4月、
309 別荘用地として売り出した。
310
311 売出しに当たり、
312 F社は、
313 分譲地内に水道施設を完
314 備する旨を広告用サイトに記載し、
315 購入希望者を現地に案内した際にも営業担当者が同様の説明を
316 行っていた。
317
318 F社は、
319 土地の販売活動と並行して、
320 地元の建設工事会社G(以下「G社」という。
321
322 )
323 に対し、
324 水源の確保と水道工事の見積もりを依頼した。
325
326 令和3年5月、
327 G社は、
328 8区画分の水道工
329 事代金を合計7550万円と見積もり(以下、
330 当該金額を「本件工事見積額」という。
331
332 )、
333 F社にそ
334 の旨連絡したが、
335 水源の地主らとの折衝は難航していた。
336
337 F社はG社に対し、
338 地主との折衝を急ぐ
339 よう求めるとともに、
340 水源が確保できた区画から順次、
341 G社の見積額で水道工事を発注すると伝え
342 た。
343
344 上記土地の売れ行きは順調で、
345 F社は、
346 令和3年11月までに8区画の全てを販売し、
347 令和3
348 年12月までに各購入者への所有権移転登記を済ませ、
349 売買代金全額を受領した。
350
351 しかし、
352 令和3
353 年末までにF社がG社に水道工事を発注したのは2区画にとどまり、
354 残り6区画は水源確保に至ら
355 ず、
356 工事の着工見込みは立っていなかった。
357
358 なお、
359 F社は、
360 各購入者との間で、
361 水道工事の完成時
362 期について具体的な取決めはしていなかった。
363
364
365 その後、
366 G社は、
367 地元有力者の助力を得て、
368 残り6区画についても水源を確保するに至り、
369 F社
370 - 4 -
371
372 は、
373 令和4年3月、
374 G社に上記6区画の水道工事を発注した。
375
376 同年4月から9月にかけて8区画の
377 水道工事が順次完成し、
378 F社は、
379 同年5月から10月までの間に、
380 完成した区画の工事代金を順次
381 支払った。
382
383 F社が支払った工事代金の合計は、
384 本件工事見積額と同額であった。
385
386
387 以上の事案について、
388 以下の設問に答えなさい。
389
390 ただし、
391 租税特別措置法の適用は考えなくてよ
392 い。
393
394 なお、
395 F社及びG社は、
396 毎年1月1日から12月31日までの期間を事業年度としている。
397
398
399 〔設問〕
400 1
401
402 Bが平成25年にAから受け取った契約報奨金に係る所得は、
403 所得税法上、
404 いずれの所得に分類
405 されるか、
406 説明しなさい。
407
408
409
410 2
411
412 Aが平成26年に得た印税収入に係る所得は、
413 所得税法上、
414 いずれの所得に分類されるか、
415 説明
416 しなさい。
417
418
419
420 3
421
422 Aが甲土地の譲渡の対価としてDから受け取った金員に係る所得は、
423 Aの所得税の金額の計算上
424 いつの年分の所得となるか、
425 また、
426 いずれの所得に分類されるか、
427 説明しなさい。
428
429
430
431 4
432
433 FX取引により平成26年から同30年までにAに生じた損失は、
434 Aの所得税の金額の計算上ど
435 のように扱われるか、
436 説明しなさい。
437
438
439
440 5
441
442 本件工事見積額は、
443 F社の令和3年12月期の所得の金額の計算上、
444 損金の額に算入することが
445 できるか。
446
447 根拠規定とその趣旨に触れつつ説明しなさい。
448
449
450
451 (参照条文)
452
453 所得税法施行令
454
455 (事業の範囲)
456 第63条
457 法第27条第1項(事業所得)に規定する政令で定める事業は、
458 次に掲げる事業(不動産の貸付
459 業又は船舶若しくは航空機の貸付業に該当するものを除く。
460
461 )とする。
462
463
464 一
465
466 農業
467
468 二
469
470 林業及び狩猟業
471
472 三
473
474 漁業及び水産養殖業
475
476 四
477
478 鉱業(土石採取業を含む。
479
480 )
481
482 五
483
484 建設業
485
486 六
487
488 製造業
489
490 七
491
492 卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。
493
494 )
495
496 八
497
498 金融業及び保険業
499
500 九
501
502 不動産業
503
504 十
505
506 運輸通信業(倉庫業を含む。
507
508 )
509
510 十一
511
512 医療保健業、
513 著述業その他のサービス業
514
515 十二
516
517 前各号に掲げるもののほか、
518 対価を得て継続的に行なう事業
519
520 - 5 -
521
522 論文式試験問題集[経
523
524 - 6 -
525
526 済
527
528 法]
529
530 [経
531
532 済
533
534 法]
535
536 X社とY社は、
537 電子部品である甲(以下「甲」という。
538
539 )を製造販売する日本の会社である。
540
541 X社
542 は、
543 Y社から甲の製造販売事業の全てを譲り受けることを計画している(以下「本件計画」という。
544
545 )。
546
547
548 甲は電子機器である乙(以下「乙」という。
549
550 )の部品であり、
551 乙は日本を含む世界中で販売されて
552 いる。
553
554 乙の部品として甲に代わるものはなく、
555 また、
556 乙の部品として用いる以外に甲の用途はない。
557
558
559 乙には、
560 据付け型(以下「据付け型乙」という。
561
562 )とモバイル型(以下「モバイル型乙」という。
563
564 )
565 がある。
566
567 甲には、
568 据付け型乙向けの大型のもの(以下「大型甲」という。
569
570 )と、
571 モバイル型乙向けの
572 小型のもの(以下「小型甲」という。
573
574 )がある。
575
576
577 大型甲の代わりに小型甲を用いることはできないし、
578 小型甲の代わりに大型甲を用いることもでき
579 ない。
580
581 また、
582 大型甲の製造設備を小型甲の製造設備に変更することはできないし、
583 小型甲の製造設備
584 を大型甲の製造設備に変更することもできない。
585
586 なお、
587 甲の製造販売事業を新たに開始することは困
588 難である。
589
590
591 X社及びY社を含む甲の製造販売業者は世界中に向けて甲を販売できる体制を整えており、
592 日本に
593 所在するものを含む乙の製造販売業者は、
594 必要な大型甲及び小型甲を、
595 それぞれ世界中の甲の製造販
596 売業者から購入している。
597
598 販売価格に占める輸送費や関税の割合は小さく、
599 大型甲及び小型甲のいず
600 れの取引においても、
601 国ごとの価格差はない。
602
603
604 全世界における大型甲の販売状況(販売額に基づく市場シェア)は、
605 X社が50パーセント、
606 Y社
607 が40パーセント、
608 A社が10パーセントである。
609
610 近年、
611 据付け型乙の需要は減少傾向にあり、
612 それ
613 に伴い大型甲に対する需要も減少傾向にある。
614
615 大型甲の需要減少がY社の想定以上であることなどか
616 ら、
617 Y社の大型甲の製造販売部門は大幅な赤字が続いている。
618
619 今後、
620 本件計画が実現しなければ、
621 近
622 い将来においてY社が大型甲の製造販売事業から撤退する蓋然性は高い。
623
624
625 大型甲の需要減少に伴い、
626 X社及びY社は、
627 大型甲について十分な製造余力を有する。
628
629 これに対し
630 て、
631 A社は、
632 大型甲の製造設備を縮小してきており、
633 大型甲について製造余力を有しない。
634
635 なお、
636 A
637 社は、
638 本件計画に先立ちY社からなされた、
639 大型甲を含む甲の製造販売事業の全ての譲渡に関する申
640 出を断ったという経緯がある。
641
642
643 全世界における小型甲の販売状況(販売額に基づく市場シェア)は、
644 A社が30パーセント、
645 X社、
646
647 B社及びC社が各20パーセント、
648 Y社が10パーセントである。
649
650 据付け型乙とは対照的に、
651 近年、
652
653 モバイル型乙の需要は増加傾向にあり、
654 それに伴い小型甲に対する需要も増加傾向にある。
655
656 モバイル
657 型乙及び小型甲をめぐっては技術開発を含む活発な競争が行われており、
658 小型甲の製品サイクルは短
659 い。
660
661
662 X社及びY社が小型甲について十分な製造余力を有しないのに対して、
663 A社、
664 B社及びC社は小型
665 甲について十分な製造余力を有する。
666
667 モバイル型乙の製造販売業者は、
668 小型甲の製造販売業者に対し
669 て取引交渉上の地位が強く、
670 さらに、
671 低価格調達のために発注方法を工夫している。
672
673
674 〔設問〕
675 本件計画に基づいてX社がY社から甲の製造販売事業の全てを譲り受けることは、
676 私的独占の禁
677 止及び公正取引の確保に関する法律第16条第1項に違反するか検討しなさい。
678
679
680 なお、
681 Y社の当該事業は同社の事業の「重要部分」(同項第1号)に該当するものとする。
682
683
684
685 - 7 -
686
687 論文式試験問題集[知的財産法]
688
689 - 8 -
690
691 [知的財産法]
692 Xは、
693 建売住宅の販売業用システムに係るデータベース(以下「Xデータベース」という。
694
695 )を
696 開発し、
697 販売していた。
698
699 Xデータベースは、
700 開発費用として3億円、
701 開発期間として2年間を掛け、
702
703 Xの多くの従業員が関与し多大な労苦を重ねて建売住宅の情報を収集し、
704 その社運を賭けて制作し
705 たものであった。
706
707 また、
708 Xデータベースにおいては、
709 そのデータ対象(建売住宅)として、
710 人気エ
711 リアであるA県内に実在する全ての2階建ての建売住宅約3万件が選択され、
712 そのデータ項目とし
713 て、
714 販売開始年月日、
715 坪単価、
716 床面積、
717 間取り、
718 販売状況、
719 住みやすさという各項目が選択され、
720
721 これらの各項目がその順序で端末の画面上に表示されるように構成されていた。
722
723 このうち、
724 「住み
725 やすさ」という項目は、
726 駅からの距離、
727 治安の良さ、
728 公共施設の存在、
729 買い物のしやすさなどを基
730 に、
731 実際に情報収集に当たったXのベテラン従業員のセンスと感覚により、
732 社内での検討を経て、
733
734 居住した場合の主観的な満足度の予想を5段階にランク付けしたものであった。
735
736 また、
737 Xデータベ
738 ースは、
739 これらの建売住宅が画面上に販売開始年月日の新しい順に表示されるように構成されたも
740 のであった。
741
742 以上のような特徴を有する建売住宅のデータベースは、
743 他府県のものも含め、
744 これま
745 で存在していなかった。
746
747
748 他方、
749 Yは、
750 Xデータベースを基にして、
751 A県内の建売住宅の販売業用システムに係るデータベ
752 ース(以下「Yデータベース」という。
753
754 )を制作した。
755
756 Yデータベースには、
757 Xデータベースの建
758 売住宅約3万件のデータから、
759 販売開始年月日の新しい順に取り出した 1 万件分の建売住宅のデー
760 タが格納されており、
761 そのデータ項目及びその画面表示上の順序は、
762 Xデータベースにおけるそれ
763 と完全に一致していた。
764
765 Yデータベースには、
766 Xデータベースにはない最新の販売分として建売住
767 宅500件のデータも格納されていたが、
768 その500件のデータに係る「住みやすさ」の項目は、
769
770 空欄になっていた。
771
772
773 Yは、
774 Yデータベースを、
775 Xデータベースが販売されていたA県及びその近郊の地域で、
776 大々的
777 に広告宣伝し、
778 その販売活動を開始した。
779
780
781 以上の事実関係を前提として、
782 以下の設問に答えなさい。
783
784 なお、
785 各設問はそれぞれ独立したもの
786 であり、
787 相互に関係はないものとする。
788
789
790 〔設問1〕
791 Xは、
792 「Xデータベースは、
793 建売住宅についてこれまで存在していなかったものを、
794 Xの従業員
795 が多大な労苦を重ねて建売住宅の情報を収集して制作したものであり、
796 建売住宅の選択、
797 住みやす
798 さ等の独自のデータ項目の選択及びそれらの画面表示上の順序に独自の工夫が凝らされているも
799 のであって、
800 著作物性を有する。
801
802 」と主張している。
803
804
805 Xの上記主張の妥当性について論ぜよ。
806
807
808 〔設問2〕
809 仮に、
810 Xデータベースに著作物性があり、
811 Xがその著作権を有するとした場合、
812 YがYデータベ
813 ースを制作する行為は、
814 Xの著作権を侵害するものであるといえるか。
815
816
817 〔設問3〕
818 Xは、
819 「仮にXデータベースに著作物性がなく、
820 YがYデータベースを制作し販売した行為が、
821
822 Xの著作権を侵害するものであるとはいえないとしても、
823 このようなYの行為は、
824 不法行為に当た
825 る。
826
827 」と主張している。
828
829
830 Xの上記主張の妥当性について論ぜよ。
831
832
833
834 - 9 -
835
836 〔設問4〕
837 Xは、
838 Xデータベースの販売をPに任せることとし、
839 Pに対して、
840 Xデータベースの複製品を独
841 占的に作成し販売することにつき許諾を与えた。
842
843 その後、
844 Pは、
845 QがXデータベースの複製品(以
846 下「Q製品」という。
847
848 )を無断で作成し販売していることを発見し、
849 Qに対し、
850 Q製品の販売の差
851 止め及びこれまでの販売分に係る損害賠償を請求した。
852
853 これに対し、
854 Qは、
855 「そもそも利用権者に
856 すぎないPは、
857 Q製品の販売差止め及び損害賠償を請求することはできない。
858
859 」と主張している。
860
861
862 仮に、
863 Xデータベースに著作物性があり、
864 Xがその著作権を有するとした場合、
865 Qの上記主張の
866 妥当性について論ぜよ。
867
868
869
870 - 10 -
871
872 論文式試験問題集[労
873
874 - 11 -
875
876 働
877
878 法]
879
880 [労
881
882 働
883
884 法]
885
886 次の事例を読んで、
887 後記の設問に答えなさい。
888
889
890 【事例】
891 Y社は、
892 全国の百貨店内のテナント店舗のほかに多数の路面店を展開して女性服の小売業を営む
893 会社であり、
894 Xは、
895 平成29年4月1日からY社の路面店A店で販売担当従業員として勤務する有
896 期労働契約社員である。
897
898
899 Xは、
900 販売担当従業員として勤務を始めた当初の1年半は平均的な成績であったが、
901 接客の才能
902 を徐々に開花させ、
903 その後は常に売上成績においてA店のトップであった。
904
905 その一方で、
906 Xの同僚
907 との関係は良好なものではなく、
908 業務の進め方や店内での従業員間のコミュニケーションの取り方
909 に問題があった。
910
911 例えば、
912 A店においては、
913 販売担当従業員が接客をしたことにより来店客が商品
914 の購入を決めた場合には、
915 当該販売担当従業員が当該商品の配送の手配や代金受領の手続等をする
916 こととされていたにもかかわらず、
917 Xは、
918 これを同僚に押し付けることを繰り返していた。
919
920 そのた
921 め、
922 同僚らは、
923 Xの接客技術については一目置いていたものの、
924 その勤務態度に大いに不満を持っ
925 ていた。
926
927 また、
928 Xは、
929 同僚に対し商品の在庫確認を依頼する際に誤った説明をしておきながら、
930 在
931 庫不足が問題となった際には、
932 上司に対し同僚のミスであるなどと報告して責任を転嫁したり、
933 他
934 の従業員への必要な声掛けや引継ぎをしないまま勝手に休憩に入ってしまったりすることを繰り
935 返していた。
936
937
938 Y社の有期労働契約社員の契約期間は1年であり、
939 Y社は、
940 契約更新の際、
941 有期労働契約社員に
942 対し、
943 新たに労働契約書に署名・押印をさせるだけでなく、
944 その機会に、
945 売上成績や勤務態度、
946 能
947 力評価などを考慮して更新後の年俸額を決定していた。
948
949 Xについては、
950 令和2年4月及び令和3年
951 4月の契約更新の際、
952 勤務態度を改善すべきことが指摘されたものの、
953 売上成績がA店において群
954 を抜いていたことから、
955 契約不更新の可能性が指摘されることはなかった。
956
957 その間、
958 A店の店長B
959 は、
960 同店の売上げを支えるXが前記のような勤務態度を改めることを期待してXに対して指導を行
961 うこともあったが、
962 同僚とのトラブルはなくならず、
963 多くの場合、
964 他の販売担当従業員に対して「多
965 少は大目に見てやってくれ。
966
967 」などと言って我慢をさせ、
968 Xとの衝突が激しくなったときには、
969 他の
970 販売担当従業員を他店へ異動させることも数回あった。
971
972
973 令和3年4月の契約更新後も、
974 Xの売上成績は依然として他の販売担当従業員を引き離してA店
975 のトップであったが、
976 Xの前記のような勤務態度が根本的に改まることはなく、
977 また、
978 他の販売担
979 当従業員に我慢を強いてきた結果、
980 A店全体の職場環境は、
981 相当悪化した状態にあった。
982
983 店長Bは、
984
985 新人販売担当従業員2名が、
986 そうした職場環境の悪さやXとの不仲を理由に立て続けに退職したこ
987 とを契機として、
988 これ以上Xを立て続けるのは困難であると感じ、
989 契約の更新の繰り返しにより通
990 算契約期間が5年を超える前にXの有期労働契約を更新しないこととすることを決断した。
991
992 Y社は、
993
994 契約期間満了日の3か月前よりも更に前の令和3年12月中に、
995 Xに対して、
996 契約を更新しない旨
997 を通知した。
998
999
1000 Xは、
1001 Y社が労働契約を更新しなかったことは不当であり、
1002 Y社との労働契約は令和4年4月1
1003 日以降も存続していると主張している。
1004
1005
1006 〔設問〕
1007 Xが訴訟で令和4年4月1日以降も労働契約が存続していることを主張する場合、
1008 裁判所に対し
1009 てどのような請求をすることが考えられるか。
1010
1011 また、
1012 その請求は認められるか。
1013
1014 問題となる法令上
1015 の条文と考えられる論点を指摘しつつ検討し、
1016 あなたの見解を述べなさい。
1017
1018
1019
1020 - 12 -
1021
1022 論文式試験問題集[環
1023
1024 - 13 -
1025
1026 境
1027
1028 法]
1029
1030 [環
1031
1032 境
1033
1034 法]
1035
1036 景観及び眺望に関する以下の設問において、
1037 AがB社に対して訴訟を提起する場合、
1038 当該訴訟に
1039 おいてどのような主張をすることが考えられるか。
1040
1041 なお、
1042 仮処分については解答しなくてよい。
1043
1044
1045 〔設問1〕
1046 P市Q駅南口から直線状に延びる公道のうち同駅南口から1.2キロメートルの道路は、
1047
1048 「R通り」
1049 と称され、
1050 幅員が44メートルと広く、
1051 道路の中心から左右両端に向かって車道、
1052 自転車レーン、
1053
1054 緑地及び歩道が配置され、
1055 緑地部分には100本を超える桜や銀杏等が植樹され、
1056 並木道が整備さ
1057 れ、
1058 良好な景観が形成されている。
1059
1060 従来、
1061 R通り沿道地域の建築物は高さ20メートル未満とする
1062 ことを基本にしてきたが、
1063 B社はR通り南端に位置する土地を購入し、
1064 地上14階建て・高さ44
1065 メートルのマンション(以下「本件マンション」という。
1066
1067 )を建築することとし、
1068 完成した。
1069
1070 なお、
1071
1072 本件マンションは建築規制に関する行政法規には違反していない。
1073
1074 また、
1075 P市では、
1076 本件マンショ
1077 ンの建設当時、
1078 上記の景観を保護する法令上の独自の方策を講じていなかった。
1079
1080
1081 R通りに面し、
1082 かつ、
1083 本件マンションの近隣に位置する土地の地権者であるAは、
1084 本件マンショ
1085 ンは景観を侵害するものとして、
1086 B社に対する法的手段を検討している。
1087
1088 なお、
1089 本設問の解答に当
1090 たっては、
1091 差止め及び原状回復については問わない。
1092
1093
1094 〔設問2〕
1095 S湾に面したT町は、
1096 緑豊かな自然が多く残る風光明媚な地域であり、
1097 T町は、
1098 良好な景観の保
1099 持のために積極的な施策を続けてきた。
1100
1101 AがT町のこのような地域に所有する居宅からは、
1102 S湾の
1103 美しい眺望を一望できる。
1104
1105 Aは、
1106 このような景観及び眺望の享受を主な目的として居宅を構えたも
1107 のである。
1108
1109
1110 B社は、
1111 Aの居宅に近接する土地において、
1112 大規模な太陽光発電設備(以下「本件設備」という。
1113
1114 )
1115 を設置して太陽光発電事業(以下「本件事業」という。
1116
1117 )を営む計画を立てている。
1118
1119 本件事業は、
1120 相
1121 当数の世帯を賄えるだけの電力を地域に供給し、
1122 非常時に携帯電話等を充電できる設備も地域住民
1123 に供用する計画である。
1124
1125 また、
1126 B社は、
1127 太陽光発電設備の設置に係るT町の条例に従い、
1128 地域住民
1129 に対して本件事業に関する説明会を実施したほか、
1130 関係法令を遵守している。
1131
1132 しかし、
1133 本件設備が
1134 完成すれば、
1135 地域の景観の相当部分に本件設備が広がるとともに、
1136 Aの居宅からのS湾の眺望のか
1137 なりの部分を遮ることにもなる。
1138
1139
1140 Aは、
1141 B社に対する法的手段を検討している。
1142
1143 本設問の解答に当たっては、
1144 予想されるB社の反
1145 論を踏まえつつ、
1146 論じなさい。
1147
1148 なお、
1149 損害賠償請求については問わない。
1150
1151 また、
1152 問題文中に挙げた
1153 もの以外に、
1154 条例の内容は考慮しなくてよい。
1155
1156
1157
1158 - 14 -
1159
1160 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1161
1162 - 15 -
1163
1164 [国際関係法(公法系)]
1165 アフリカ中央部に位置するA海外州及びB海外州は、
1166 ヨーロッパのC国の植民地として19世紀
1167 初頭から統治されていた。
1168
1169 互いに隣接するA・B両海外州の間には山脈があり、
1170 その分水嶺は、
1171 C
1172 国の国内法で同国の行政区画線の一部としてこれら2つの海外州間の境界線を構成していた。
1173
1174 20
1175 世紀に入ると、
1176 1930年代からC国内が革命により内乱状態となり、
1177 A・B両海外州もその影響
1178 を受けたが、
1179 A海外州はその混乱に乗じて、
1180 B海外州との間の山脈を越えたところにあるB海外州
1181 内のα地域に税務事務所を設置して、
1182 同地域における徴税に係る活動を開始した。
1183
1184 これに対してB
1185 海外州は、
1186 A海外州に抗議して、
1187 A海外州がα地域に設置した税務事務所の撤去を求めるとともに、
1188
1189 当該税務事務所の撤去をA海外州に命ずるようC国に上申したが、
1190 A海外州もC国も、
1191 こうしたB
1192 海外州の求めに対していかなる対応も行わなかった。
1193
1194
1195 その後、
1196 脱植民地化の過程において、
1197 A海外州もB海外州も、
1198 1960年にそれぞれA国及びB
1199 国としてC国からの独立を果たし、
1200 A・B両国は、
1201 その独立直後から両国間の国境画定条約を締結
1202 するための交渉を行ってきた。
1203
1204 ところが、
1205 A国は、
1206 α地域を自国領と主張し、
1207 その独立直後から同
1208 地域に自国軍隊を駐留させたため、
1209 B国は、
1210 こうしたA国の行動に対して定期的に抗議を行ってき
1211 た。
1212
1213 しかし、
1214 A国は、
1215 更に警察や住民登録のための行政機関等を現地に常駐させるなど、
1216 α地域に
1217 対する実効的な支配を強化していったことから、
1218 α地域に関係する国境線だけはA国とB国との間
1219 で合意に至らず、
1220 常に紛争の火種となっていた。
1221
1222 そこで、
1223 B国は、
1224 1990年に、
1225 A国を相手に、
1226
1227 α地域における国境線の画定問題を国際司法裁判所(以下「ICJ」という。
1228
1229 )に一方的に付託した
1230 ところ、
1231 A国は、
1232 ICJに出廷する意思を示さず、
1233 この問題についてICJが判断を下すことはで
1234 きない旨の書簡をICJに送付した。
1235
1236
1237 他方で、
1238 A国とB国は、
1239 自国の安全保障の観点から、
1240 C国及びC国に隣接するD国とともに、
1241 1
1242 995年に軍備管理に関するP条約を批准した。
1243
1244 この条約によると、
1245 当事国は、
1246 核兵器を開発も保
1247 有もしないこと(2条)、
1248 正規軍の兵員数の上限を2万人とすること(3条)とされていた。
1249
1250 なお、
1251
1252 D国は、
1253 P条約第2条について、
1254
1255 「この規定は、
1256 いかなる状況においても、
1257 D国には適用されない。
1258
1259 」
1260 という留保を付した上でP条約を批准したところ、
1261 C国のみがD国の批准の3か月後にD国の留保
1262 に異議を申し立てた。
1263
1264 なお、
1265 P条約には留保に関する規定が置かれていなかった。
1266
1267
1268 B国は、
1269 A国との国境画定交渉が停滞していることを不満として、
1270 2000年頃からα地域を武
1271 力で奪還すべく正規軍の規模を3万人に増やし、
1272 その半数の兵力をα地域の近くに配置した。
1273
1274 これ
1275 に対してA国は、
1276 P条約第3条の運用を停止すると宣言し、
1277 正規軍の兵員数を4万人まで増員して、
1278
1279 そのおよそ半数の兵員をα地域に駐留させることを決定した。
1280
1281 また、
1282 A国は、
1283 その当時B国内で生
1284 じていた反政府デモを利用し、
1285 このデモを指導していた政治団体Sに対して、
1286 資金のほか武器・弾
1287 薬等も供与してB国内の状況を更に混乱させようとしたため、
1288 この動きを察知したB国は、
1289 個別的
1290 自衛権の行使を主張してα地域に自国軍隊を進め、
1291 B国軍隊は、
1292 α地域に駐留していたA国軍隊と
1293 の間で交戦状態に入った。
1294
1295
1296 A国、
1297 B国、
1298 C国及びD国は、
1299 いずれも国際連合(以下「国連」という。
1300
1301 )の加盟国である。
1302
1303 また、
1304
1305 これら4国は、
1306 いずれも1969年の条約法に関するウィーン条約(以下「条約法条約」という。
1307
1308 )
1309 についていかなる留保も付さずに1980年から当事国となっている。
1310
1311 また、
1312 P条約については、
1313
1314 A国、
1315 B国、
1316 C国及びD国のいずれにおいても、
1317 それぞれの国内手続が行われて批准がなされ、
1318 1
1319 996年に効力が発生している。
1320
1321 さらに、
1322 A国及びB国は、
1323 独立した年に国連に加盟するとともに、
1324
1325 ICJ規程第36条第2項に基づき、
1326 裁判所の管轄権を受諾する宣言を行ったが、
1327 B国は、
1328
1329 「B国が
1330 本質上自国の国内管轄内にあると判断する紛争」には、
1331 この選択条項受諾宣言が適用されない旨を
1332 国連事務総長に通告している。
1333
1334
1335 以上の事実を基に、
1336 以下の設問に答えなさい。
1337
1338
1339 - 16 -
1340
1341 〔設問〕
1342 1.B国は、
1343 α地域が自国領であると主張する観点から、
1344 国際法上いかなる議論が可能かについて
1345 論じなさい。
1346
1347
1348 2.A国は、
1349 α地域におけるB国との国境線の画定問題についてICJが判断を下すことはできな
1350 いと主張するために、
1351 国際法上いかなる議論が可能かについて論じなさい。
1352
1353
1354 3.C国は、
1355 条約法条約の適用上、
1356 P条約との関連でD国といかなる条約関係を主張することが可
1357 能かについて論じなさい。
1358
1359
1360 4.A国は、
1361 自国正規軍の増員をP条約違反に問われないために、
1362 国際法上いかなる議論が可能か
1363 について論じなさい。
1364
1365
1366 5.A国は、
1367 α地域におけるB国の軍事行動が国際違法行為であることを主張するために、
1368 国際法
1369 上いかなる議論が可能かについて論じなさい。
1370
1371
1372
1373 - 17 -
1374
1375 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1376
1377 - 18 -
1378
1379 [国際関係法(私法系)]
1380 甲国籍のA女は、
1381 1987年に甲国P州で生まれ、
1382 その後も2009年まで同州にのみ居住して
1383 いた。
1384
1385 Aの親族は、
1386 現在まで同州に居住している。
1387
1388 甲国籍のB男は、
1389 1987年に甲国Q州で生ま
1390 れ、
1391 その後も2011年まで同州にのみ居住していた。
1392
1393 Bの親族は、
1394 現在まで同州に居住している。
1395
1396
1397 A及びBは、
1398 2009年に甲国Q州において、
1399 いずれも22歳で婚姻して、
1400 Aは同州に転居した。
1401
1402
1403 婚姻から約1年後の2010年に同州において、
1404 AB間に子C(甲国籍)が生まれた。
1405
1406 Cの出生か
1407 ら更に1年間、
1408 A、
1409 B及びCは同州に居住していた。
1410
1411 Bは2009年に同州の大学の日本語学科を
1412 卒業後、
1413 同州内の地元企業に就職したが、
1414 2011年に日本企業に転職し、
1415 就業場所が東京となっ
1416 たことから、
1417 A、
1418 B及びCは同年に来日し、
1419 現在まで日本で生活を営んでいる。
1420
1421 Aは、
1422 日本の大学
1423 に甲国語の語学教師として常勤しており、
1424 Cは、
1425 日本の公立学校に通学している。
1426
1427 Cが6歳になる
1428 2016年頃から、
1429 Bは、
1430 A及びCに対して日常的に暴力を振るうようになり、
1431 これによりAB間
1432 の婚姻関係は実質的に破綻し、
1433 AとBは翌2017年から別居して、
1434 それ以降はAがCを監護して
1435 いる。
1436
1437 A及びBは、
1438 それぞれ今後も日本での生活を継続する予定であり、
1439 甲国に帰国する意思はな
1440 い。
1441
1442
1443 別居から約5年後の2022年に、
1444 Aは、
1445 Bとの離婚等を求めて、
1446 日本の家庭裁判所に調停を申
1447 し立てた。
1448
1449 その後、
1450 調停は不成立となり、
1451 Aは、
1452 Bの暴行等により婚姻関係が破綻したと主張して、
1453
1454 Bを被告として、
1455 離婚及びCの親権者をAと定めること、
1456 並びに離婚せざるを得なくなったことに
1457 ついての精神的苦痛に対する慰謝料200万円及びBの暴行についての精神的苦痛に対する慰謝
1458 料100万円の合計300万円の支払を求める訴えを提起した。
1459
1460
1461 なお、
1462 甲国は、
1463 P州、
1464 Q州を含む複数の州から成る地域的不統一法国であり、
1465 州ごとに民法の内
1466 容が異なる。
1467
1468 甲国P州民法は、
1469 @年齢18歳をもって成年とすること、
1470 A離婚をするときは、
1471 未成
1472 年の子の親権は父母が共同して行う旨の規定を有している。
1473
1474 甲国Q州民法は、
1475 @年齢20歳をもっ
1476 て成年とすること、
1477 A離婚をするときは、
1478 未成年の子の親権は父のみが行う旨の規定を有している。
1479
1480
1481 また、
1482 甲国には、
1483 甲国人が甲国内のいずれの州に属するかを示すような属人法の決定基準として用
1484 いられる統一的な準国際私法の規則は存在しない。
1485
1486
1487 以上の事実に加え、
1488 本件において日本の裁判所に国際裁判管轄権が認められること及び日本の国
1489 際私法の観点からみてAB間の婚姻が有効に成立していることを前提として、
1490 以下の設問に答えな
1491 さい。
1492
1493
1494 〔設問1〕
1495 本件においてAB間の離婚が認められるか否かについて、
1496 日本の裁判所は、
1497 いずれの国の法を適
1498 用して判断すべきか論じなさい。
1499
1500
1501 〔設問2〕
1502 本件においてAB間の離婚が認められるものとする。
1503
1504 その場合において、
1505 以下の小問に答えなさ
1506 い。
1507
1508
1509 〔小問1〕
1510 日本の裁判所は、
1511 Cの親権者をAと定めることができるか。
1512
1513 準拠法の決定過程を示しつつ、
1514 論
1515 じなさい。
1516
1517
1518 〔小問2〕
1519 Aの慰謝料請求について、
1520 日本の裁判所は、
1521 いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさ
1522 い。
1523
1524
1525
1526 - 19 -
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1528