1 令和4年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨
2 [憲 法]
3 人口の都市集中化に伴う地方の人口減少によって私鉄の多くが経営危機に陥っており、
4 運行便数を減
5 らしたり、
6 一部の赤字路線を廃止したりするほか、
7 賃金カット・人員削減も行っている。
8
9 しかし、
10 地方の
11 私鉄の中には、
12 それに対抗するストライキが頻発し、
13 そのことが利用客離れを呼び、
14 経営危機が進行す
15 るといった悪循環に陥っているものもある。
16
17 他方、
18 地方の住民からは、
19 移動に不可欠な公共交通機関で
20 ある私鉄に対して国が財政支援を行うよう、
21 強い要望が続出している。
22
23 そこで、
24 202×年、
25 内閣は、
26
27 営危機に陥った地方の私鉄の経営再建を国が支援するために、
28 「地方における民間鉄道事業の維持に関
29 する特別措置法案」(以下「地方鉄道維持特措法案」という。
30
31 )の策定を検討することになった。
32
33
34 この地方鉄道維持特措法案によれば、
35 都道府県知事の申出に基づき、
36 内閣は「住民の移動にとって不
37 可欠な鉄道を運営しながら、
38 当該鉄道事業の継続が著しく困難であり、
39 その維持のために国による財政
40 的な支援と、
41 国の管理の下での抜本的な改革を必要としている」と認められる鉄道会社を「特別公的管
42 理鉄道会社」に指定することができる。
43
44 特別公的管理鉄道会社は、
45 国から経営再建のために最大100
46 億円の補助金を得ることができるが、
47 補助金の原資の一部には、
48 当該都道府県の住民に対して課される
49 目的税である「地方鉄道維持税」の税収が充てられる。
50
51 特別公的管理鉄道会社は、
52 国土交通大臣に対して
53 再建計画を提出し、
54 また、
55 従業員の賃金その他の基本的な労働条件を含む重要事項の決定について同大
56 臣の承認を得なければならない。
57
58 そして、
59 特別公的管理鉄道会社の従業員は公務員としての身分を有す
60 るわけではないが、
61 ストライキなどの争議行為を行ってはならないとされ、
62 争議行為をあおり、
63 又はそ
64 そのかした者に対しては刑罰が科される。
65
66
67 立案担当者の説明によれば、
68 特別公的管理鉄道会社の従業員が争議行為を禁止され、
69 争議行為のあお
70 り、
71 そそのかしが処罰される理由は以下のとおりである。
72
73 @特別公的管理鉄道会社を財政的に支えるた
74 めに地方鉄道維持税を負担している住民に対して、
75 争議行為によりその生活に重大な悪影響を与えるこ
76 とは不適切である。
77
78 A争議行為により鉄道の利用客が減少すると、
79 特別公的管理鉄道会社の経営再建に
80 支障が生ずる。
81
82 B特別公的管理鉄道会社の従業員も団体交渉を行い、
83 労働協約を締結することができる
84 が、
85 従業員の賃金その他の基本的な労働条件の決定については国土交通大臣の承認が必要であり、
86 労使
87 だけで決定することができないので、
88 従業員が労働条件をめぐって特別公的管理鉄道会社に対して争議
89 行為を行うのは筋違いである。
90
91 C禁止されている争議行為をあおり、
92 又はそそのかした者は、
93 争議行為
94 の開始、
95 遂行の原因を作り、
96 争議行為に対する原動力を与えた者として、
97 単に争議行為を行った者に比
98 べて社会的責任が重いから、
99 その者を処罰の対象とすることは、
100 十分に合理性がある。
101
102
103 地方鉄道維持特措法案における争議行為の禁止規定、
104 争議行為のあおり、
105 そそのかしの処罰規定のそ
106 れぞれが憲法第28条に適合するかどうかについて、
107 必要に応じて判例に触れつつ、
108 論じなさい。
109
110
111
112 (出題の趣旨)
113 本問は、
114 公的資金を注入され、
115 公的管理下に置かれた地方の私鉄の労働者について争
116 議行為を禁止し、
117 そのあおり、
118 そそのかしを処罰することが、
119 憲法第28条に違反しな
120 いかについて、
121 必要に応じて判例に触れつつ論じることを求める問題である。
122
123
124 まず、
125 労働基本権の制限が公共の福祉のための必要やむを得ない限度の制限(全農林
126 警職法事件判決(最大判昭和48年4月25日、
127 刑集27巻4号547頁)参照)に当
128 たるかどうかをどのような枠組み又は基準を用いて判断するかが問題となる。
129
130 これにつ
131 いては、
132 例えば、
133 全逓東京中郵事件判決(最大判昭和41年10月26日、
134 刑集20巻
135 8号901頁)が採った、
136 労働基本権を尊重する必要性と規制する必要性とを比較衡量
137 するという手法のほか、
138 いわゆる厳格な合理性の基準(規制目的が重要なものであり、
139
140
141 手段が目的と実質的に関連していなければならないとする基準)のような違憲審査基準
142 を用いるということも考えられる。
143
144 ただし、
145 「労働基本権が社会権であるから厳格な合
146 理性の基準が妥当する」といった大雑把な理由付けではなく、
147 本問の法律案が労働基本
148 権の行使を禁止し、
149 違反に対して刑罰を科すものであり、
150 労働基本権の自由権的な側面
151 を制限するものであることに着目するなど、
152 規制の性質をも踏まえた理由付けが望まし
153 い。
154
155
156 問題文では、
157 特別公的管理鉄道会社の従業員が争議行為を禁止される理由が3つ挙げ
158 られているので、
159 その3点が争議行為を禁止することを正当化できるものであるかどう
160 か、
161 前記の2判決のほか全逓名古屋中郵事件判決(最大判昭和52年5月4日、
162 刑集3
163 1巻3号182頁)も参考にしながら、
164 検討しなければならない。
165
166 例えば、
167 理由@を認
168 めるならば、
169 結局、
170 公的な財政支援を受けている事業については全て争議行為を禁止で
171 きることになってしまわないかが問題となろう。
172
173 また、
174 理由Aについては、
175 争議行為に
176 より経営再建に支障を及ぼすほど利用者が減少するかどうかは、
177 争議行為の内容、
178 規模、
179
180 頻度によるのではないかが問題となろう。
181
182 理由Bは、
183 全農林警職法事件判決の勤務条件
184 法定主義を根拠とした議会制民主主義論に類似したものであるが、
185 これに対しては、
186
187 働条件を労使だけで決定できなくても、
188 争議権を行使する余地があるという反論、
189 具体
190 的には、
191 本問の法律案の下でも、
192 従業員は、
193 賃金などの基本的な労働条件の案を国土交
194 通大臣に示すよう会社に求めて争議行為をする余地がある、
195 という反論があり得よう。
196
197
198 さらに、
199 本問の法律案は争議行為を禁止するだけでなく、
200 争議行為をあおり、
201 そその
202 かした者を処罰するとしているので、
203 この点についても検討が必要である。
204
205 争議行為の
206 禁止が憲法第28条違反であるとする立場を採る場合には、
207 当然、
208 争議行為のあおり、
209
210 そそのかしの処罰規定も憲法第28条違反ということになるが、
211 その点について確認し
212 ておくべきである。
213
214 争議行為の禁止自体が憲法第28条に違反しないという立場を採っ
215 た場合には、
216 あおり、
217 そそのかしの処罰規定を、
218 いわゆる原動力論で正当化できるかが
219 問題となる。
220
221 また、
222 都教組事件判決(最大判昭和44年4月2日、
223 刑集23巻5号30
224 5頁)の趣旨を踏まえて処罰範囲を限定した法文にすべきとの主張もあり得よう。
225
226
227
228 [行政法]
229 A県B町は、
230 B町文化財保護条例(以下「本件条例」という。
231
232 )を定め、
233 B町の区域内に存する文化財
234 のうち重要なものを指定し、
235 その保存及び活用のため必要な措置を講じている。
236
237 B町教育委員会(以下
238 「教育委員会」という。
239
240 )は、
241 平成18年4月14日、
242 告示により、
243 B町の区域内にあるC古墳を本件条
244 例第4条第1項に基づきB町指定文化財に指定した(以下、
245 同指定を「本件処分」という。
246
247 )。
248
249 C古墳
250 は、
251 7世紀前半に造られた横穴式石室古墳であり、
252 宗教法人Dが本件処分以前から所有する土地(以下
253 「本件土地」という。
254
255 )の一部を占めている。
256
257 横穴式石室とは、
258 遺体を納める埋葬室と、
259 そこから入口部
260 分へとつながる通路から成る石積みの墓室をいい、
261 その全体が墳丘を成している盛土の中に埋まってい
262 るのが通常であるところ、
263 C古墳の横穴式石室(以下「本件石室」という。
264
265 )も、
266 埋葬室の中心から半径
267 約10メートルの盛土の中に石造りの埋葬室と通路が埋まっているが、
268 その入口周辺の盛土は崩れてし
269 まい、
270 入口を構成している巨石が盛土から露出している状態であった。
271
272 教育委員会は、
273 本件処分の際に、
274
275 C古墳の範囲が本件石室に限定されるものではなく、
276 本件石室を取り巻く盛土全体もC古墳に含まれる
277 と考えており、
278 その範囲(本件石室の埋葬室の中心から半径約10メートルの円の内側一帯)に本件処
279 分の効力が及ぶと認識していた。
280
281 もっとも、
282 上記露出している巨石(同巨石は、
283 本件石室の埋葬室の中心
284 から約9メートルの距離に位置する。
285
286 )の周辺のみは、
287 Dから管理責任者として選任されている教育委
288 員会により本件処分の直後から定期的に草刈りがされてきたものの、
289 それ以外の盛土全体には樹木が生
290 い茂っている。
291
292 また、
293 教育委員会は、
294 本件処分後にC古墳であることを示す標識を露出している上記巨
295 石のすぐそばに設置したが、
296 上記半径約10メートルの円の内側一帯がC古墳であることを示す標識等
297 を設置したことはなかった。
298
299
300 Dは、
301 平成31年3月5日、
302 C古墳周辺を公園として整備することとし、
303 教育委員会に相談したとこ
304 ろ、
305 教育委員会は、
306 Dの計画がC古墳の現状を変更したり、
307 その保存に影響を与えたりしないものであ
308 れば、
309 本件条例第13条の許可は不要である旨回答した。
310
311 そこで、
312 Dは、
313 本件土地を平らに整地する土木
314 工事(以下「本件工事」という。
315
316 )を開始した。
317
318 教育委員会は、
319 令和3年5月頃、
320 本件処分の効力が及ぶ
321 と考えている土地の付近まで本件工事が進められていることを把握したことから、
322 C古墳の現状保存等
323 のため、
324 Dに対して本件工事の中断を求める旨の行政指導を行った。
325
326 Dは、
327 本件工事を中断した上で、
328
329 育委員会に対し、
330 C古墳の範囲は、
331 埋葬室及び通路から成る本件石室部分のみを指し、
332 盛土は含まれな
333 いから、
334 本件石室の周囲1メートルまでの工事ならば、
335 C古墳の現状が変更されることはなく、
336 その保
337 存に影響を与えることもないと主張したが、
338 教育委員会は、
339 Dの主張する工事を行うには、
340 本件条例第
341 13条第1項に基づく教育委員会の許可が必要になるとDに説明した。
342
343
344 Dは、
345 教育委員会に反論する根拠を見付けたいと考え、
346 教育委員会の許しを得て本件処分当時の関係
347 資料を閲覧した。
348
349 当該資料によれば、
350 C古墳が指定文化財に指定されたことは当時のDの代表者にも前
351 記告示の日に通知されたこと等が記載されていたものの、
352 本件処分の指定対象物の範囲が本件石室にと
353 どまるのか、
354 それとも本件石室とそれを取り巻く盛土も含むのかについては記載がなかった。
355
356 また、
357
358 件処分当時、
359 B町文化財保護委員会(以下「保護委員会」という。
360
361 )は、
362 委員長である考古学者Eのほ
363 か、
364 歴史学、
365 民俗学等を専攻する9名の研究者で構成されていたが、
366 本件処分に当たり、
367 本件条例の定め
368 る手続に基づく保護委員会への諮問は行われておらず、
369 E一人のみの意見を聴取し、
370 当該資料には、
371 「E
372 の意見聴取を経たことにより、
373 本件条例第4条第2項に基づく保護委員会への諮問手続を実質的には履
374 践したものといえる。
375
376 」との教育委員会の意見が付記されていた。
377
378
379 Dは、
380 本件処分の内容の明確性や手続等に問題があることから、
381 本件処分それ自体を争うべきである
382 と考えるに至り、
383 行政訴訟を提起することを考えている。
384
385
386 以上を前提として、
387 以下の設問に答えなさい。
388
389
390 なお、
391 本件条例の抜粋を【資料】として掲げるので、
392 適宜参照しなさい。
393
394
395
396 〔設問1〕
397 Dは、
398 本件処分について、
399 取消訴訟の提起を断念し、
400 無効確認訴訟を提起したいと考えている。
401
402 Dが
403 当該取消訴訟の提起を断念した理由として考えられるものについて説明するとともに、
404 Dが当該無効確
405 認訴訟を提起した場合、
406 Dに行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。
407
408 )第36条に定める原告適格が認
409 められるかを検討しなさい。
410
411 なお、
412 本問の解答に当たっては、
413 本件処分が行訴法第3条第2項の「処分」
414 に当たることを前提にしなさい。
415
416
417 〔設問2〕
418 Dは、
419 本件処分の無効確認訴訟において、
420 本件処分が無効であることについて、
421 どのような主張をす
422 べきか。
423
424 想定されるB町の反論を踏まえて、
425 検討しなさい。
426
427
428
429 【資料】
430 ○ B町文化財保護条例(抜粋)
431 (目的)
432 第1条 この条例は、
433 (中略)B町の区域内に存する文化財のうち重要なものを指定し、
434 その保存及び活用
435 のため必要な措置を講じ、
436 もって町民の文化的向上に資するとともに、
437 国文化の進歩に貢献することを
438 目的とする。
439
440
441 (財産権等の尊重及び公益との調整)
442 第3条 B町教育委員会(以下「教育委員会」という。
443
444 )は、
445 この条例の施行に当たっては、
446 関係者の所有
447 権その他の財産権を尊重するとともに、
448 文化財の保護と他の公益との調整に留意しなければならない。
449
450
451 (指定)
452 第4条 教育委員会は、
453 町の区域内に存する文化財のうち、
454 町にとって重要なものをB町指定文化財(以下
455 「町指定文化財」という。
456
457 )に指定することができる。
458
459
460 2 教育委員会は第1項の規定による指定をしようとするときは、
461 B町文化財保護委員会(以下「保護委員
462 会」という。
463
464 )に諮問しなければならない。
465
466
467 3 第1項による指定は、
468 その旨を告示するとともに、
469 当該文化財の所有者及び権原に基づく占有者に通
470 知して行う。
471
472
473 4 第1項による指定は、
474 前項の規定による告示があった日から効力を生ずる。
475
476
477 5、
478 6 (略)
479 (所有者の管理義務及び管理責任者)
480 第6条 町指定文化財の所有者は、
481 この条例に従い、
482 町指定文化財を管理しなければならない。
483
484
485 2 (略)
486 3 町指定文化財の所有者は、
487 特別の事情がある場合は、
488 専ら自己に代わり当該指定文化財の管理の責め
489 に任ずべき者(以下「管理責任者」という。
490
491 )を選任することができる。
492
493
494 4〜6 (略)
495 (現状変更等の制限)
496 第13条 町指定文化財の現状を変更し、
497 又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、
498 あら
499 かじめ、
500 教育委員会の許可を受けなければならない。
501
502
503 2、
504 3 (略)
505 (保護委員会の設置)
506 第19条 文化財に関する諮問のため、
507 保護委員会を置く。
508
509
510 (保護委員会の組織等)
511 第20条 保護委員会の委員は、
512 10人以内とし、
513 学識経験を有する者のうちから教育委員会が委嘱する。
514
515
516 2〜5 (略)
517 (保護委員会の答申等)
518 第21条 保護委員会は、
519 教育委員会の諮問に応じ、
520 これを審議し、
521 これに関する専門的又は技術的事項に
522 ついて答申する。
523
524
525 2 保護委員会は、
526 前項の答申に必要な調査、
527 研究を行う。
528
529
530 (会議の招集等)
531 第22条 保護委員会の会議は、
532 教育長が招集する。
533
534
535 2 会議は、
536 委員の半数以上が出席しなければ開くことができない。
537
538
539 3 保護委員会の庶務は、
540 教育委員会において処理する。
541
542
543
544 (出題の趣旨)
545 本問は、
546 文化財保護条例に基づき、
547 町が私有地にある古墳を文化財に指定した処分(以
548 下「本件処分」という。
549
550 )について、
551 当該私有地の所有者が、
552 本件処分から16年の後、
553
554 当該古墳一帯を開発するために無効確認訴訟の提起を検討しているという設例の下で、
555
556 取消訴訟の訴訟要件としての出訴期間の意義・理解とともに、
557 無効確認訴訟の訴訟要件
558 及び本案勝訴要件に関する基本的な知識・理解を試す趣旨の問題である。
559
560
561 設問1では、
562 まず、
563 本件処分に不服のある原告は、
564 行政事件訴訟法(以下「行訴法」と
565 いう。
566
567 )第14条が定める出訴期間の経過によって原則として適法に取消訴訟を提起す
568 ることができないこと、
569 そのため、
570 無効確認訴訟を提起することが考えられるが、
571 無効
572 確認訴訟の原告適格の有無について、
573 行訴法第36条に則して検討することが求められ
574 る。
575
576
577 設問2では、
578 まず、
579 処分が重大かつ明白な瑕疵を帯びていることが無効確認訴訟の本
580 案勝訴要件であることについて言及した上で、
581 @本件処分の内容が不明確であること及
582 びA条例に定める諮問手続を欠いていること等の瑕疵が本件処分の無効事由に当たるか
583 どうかについて、
584 本問における事実関係を踏まえて紛争当事者の主張を想定しながら論
585 ずる必要がある。
586
587
588
589 [民
590
591 法]
592
593 次の文章を読んで、
594 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
595
596
597 解答に当たっては、
598 文中において特定されている日時にかかわらず、
599 試験時に施行されている法
600 令に基づいて答えなさい。
601
602 なお、
603 民法以外の法令の適用について検討する必要はない。
604
605
606 【事実】
607 1.Aは、
608 建築設計工事等を業とする株式会社である。
609
610 Bは、
611 複合商業施設の経営等を業とする株
612 式会社である。
613
614 Bは、
615 Aとの間で、
616 令和4年4月1日、
617 Bの所有する土地上にAが鉄筋コンクリ
618 ート造の5階建て店舗用建物(以下「甲建物」という。
619
620 )を報酬2億円で新築することを内容と
621 する建築請負契約(以下「本件請負契約」という。
622
623 )を締結した。
624
625
626 2.本件請負契約の締結に当たって、
627 Bは、
628 Aに対して、
629 「外壁の塗装には塗料αを使用してほし
630 い。
631
632 」と申し入れ、
633 Aはこれを了承した。
634
635 塗料αは、
636 極めて鮮やかなピンク色の外壁用塗料であ
637 る。
638
639
640 3.Aの担当者が近隣住民に建築計画の概要を説明した際に、
641 地域の美観を損ねるとして多数の住
642 民から反発を受けたため、
643 Aは、
644 周辺の景観に合致する、
645 より明度の低い同系色の外壁用塗料で
646 ある塗料βで甲建物の外壁を塗装することとした。
647
648
649 4.令和7年10月25日、
650 塗料βによる外壁塗装を含む甲建物の工事が完了した。
651
652 同月30日、
653
654 Aは、
655 Bに対して、
656 甲建物を引き渡した。
657
658
659 5.令和7年10月31日、
660 Bは、
661 Aに対して、
662 「塗料αは、
663 Bの運営する他の店舗でも共通して
664 用いられており、
665 Bのコーポレートカラーとして特に採用したものである。
666
667 外壁塗装に塗料βを
668 使用したことは重大な契約違反である。
669
670 この件の対処については、
671 社内で検討の上、
672 改めて協議
673 させてもらう。
674
675 」と申し入れた。
676
677
678 6.塗料βは、
679 塗料αよりも耐久性が高く、
680 防汚防水性能にも優れており、
681 高価である。
682
683 そのため、
684
685 外壁塗装を塗料αで行った場合の甲建物の客観的価値よりも、
686 外壁塗装を塗料βで行った場合の
687 甲建物の客観的価値の方が高い。
688
689
690 〔設問1〕
691 【事実】1から6までを前提として、
692 次の問いに答えなさい。
693
694
695 (1)
696
697 Bが塗料αによる再塗装を求めたが、
698 Aがこれを拒絶した場合において、
699 Bは、
700 Aに対して、
701
702 本件請負契約に基づく報酬の減額を請求している。
703
704 Bの請求が認められるか、
705 【事実】6に留意
706 しつつ論じなさい。
707
708
709
710 (2)
711
712 Aが塗料αによる再塗装を行う旨の申入れを行ったが、
713 Bがこれを拒絶した場合において、
714
715 は、
716 Aに対して、
717 再塗装に要する費用を損害としてその賠償を請求している。
718
719 Bの請求が認めら
720 れるか論じなさい。
721
722
723
724 【事実】
725 7.Cは、
726 個人でラーメン店を経営し、
727 全国に多数の店舗を有する。
728
729 Dは、
730 創業当時からCの従業
731 員として重要な貢献をしてきたが、
732 独立して自分のラーメン店を持ちたいと思うようになり、
733
734 の旨をCに伝えた。
735
736
737 8.Cは、
738 Dの長年の功労に報いたいと考え、
739 Cの所有する土地及びその上の店舗用建物(以下併
740 せて「乙不動産」という。
741
742 )を無償でDに貸すが、
743 固定資産税はDに負担してほしいと申し出た。
744
745
746 Dは、
747 この申出を受け、
748 令和2年1月10日、
749 Cとの間で、
750 上記の内容を記した覚書(以下「本
751 件覚書」という。
752
753 )を取り交わして使用貸借契約を締結し、
754 これに基づいて乙不動産の引渡しを
755
756 受けた。
757
758
759 同年3月1日、
760 Dは、
761 乙不動産においてラーメン店(以下「本件ラーメン店」という。
762
763 )を開
764 業し、
765 乙不動産の固定資産税を同年分からCに代わり毎年支払った。
766
767
768 9.令和8年1月、
769 Cは死亡し、
770 子EがCを単独相続したが、
771 Eは、
772 詳しい事情を知らないまま、
773
774 乙不動産の固定資産税をDに支払ってもらっていた。
775
776 なお、
777 乙不動産の登記名義人は、
778 Cのまま
779 であった。
780
781
782 10.令和9年3月1日、
783 Dは死亡し、
784 乙不動産は本件ラーメン店の従業員により閉鎖された。
785
786
787 Dを単独相続した子Fは、
788 本件ラーメン店の営業には全く関与していなかったが、
789 乙不動産は
790 DがCから贈与を受けたものと理解していた。
791
792 そこで、
793 Fは、
794 Eに対して、
795 「乙不動産は、
796 Dが
797 Cから贈与を受けたものであるから、
798 相続を機会に、
799 登記名義を自分に移したい。
800
801 」と相談した。
802
803
804 Eは、
805 固定資産税をDが支払っていたのはそういうわけだったのかと納得し、
806 同年4月1日、
807
808 不動産の登記名義人をFとするために必要な登記が行われた。
809
810
811 その後、
812 Fは、
813 本件ラーメン店の営業を引き継ぐことを決意し、
814 同年5月1日、
815 前記従業員か
816 ら乙不動産の管理を引き継ぎ、
817 間もなく営業を再開した。
818
819 Fは、
820 令和29年に至るまで、
821 乙不動
822 産において本件ラーメン店の営業を継続している。
823
824
825 11.令和29年3月、
826 Eは、
827 本件覚書を発見し、
828 CからDへの乙不動産の贈与が行われていなかっ
829 たことを知った。
830
831 同年4月1日、
832 Eは、
833 Fに対し、
834 所有権に基づき、
835 乙不動産の明渡しを請求す
836 る訴えを提起した。
837
838 これに対して、
839 Fは、
840 同月15日、
841 乙不動産の20年の取得時効を援用した。
842
843
844 〔設問2〕
845 【事実】7から 11 までを前提として、
846 【事実】11 においてFが援用する乙不動産の取得時効の
847 成否について論じなさい。
848
849
850
851 (出題の趣旨)
852 設問1は、
853 請負契約の内容に適合しない仕事の目的物が引き渡されたが、
854 その目的
855 物は契約内容に適合した仕事の目的物よりも客観的価値が増加している事例を題材
856 として、
857 契約不適合責任としての報酬減額請求の可否及び修補に代わる損害賠償請求
858 の可否を問うものである。
859
860 請負の契約不適合責任や債務不履行責任に係る民法の規律
861 構造を踏まえた上で、
862 事案に即した論述を展開することが求められる。
863
864
865 設問2は、
866 所有の意思なく不動産を占有していた者の相続人が、
867 自らが所有者であ
868 ると信じて占有を開始した事例を題材として、
869 取得時効の成否を問うものである。
870
871
872 わゆる他主占有の自主占有への転換の成否とその時期(取得時効の起算点)を踏まえ
873 た上で、
874 事案に即した論述を展開することが求められる。
875
876
877
878 [商
879
880 法]
881 次の文章を読んで、
882 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
883
884
885
886 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
887
888 )は、
889 農産物加工品の通信販売を業とする取締役会設置会社
890 であり、
891 監査役設置会社である。
892
893 甲社は種類株式発行会社ではなく、
894 甲社の定款には、
895 譲渡による
896 株式の取得について取締役会の承認を要する旨の定めがある。
897
898 甲社の発行済株式の総数は5000
899 株であり、
900 そのうち、
901 Aが2000株を、
902 Bが400株を、
903 Cが1000株を、
904 Dが1600株を
905 それぞれ保有している。
906
907
908 甲社の取締役はA、
909 B及びEの3名であり、
910 Aが代表取締役である。
911
912 また、
913 監査役にはFが就任
914 している。
915
916 Dは、
917 かつて甲社の取締役であったが、
918 数年前に甲社の経営方針をめぐってAと対立し、
919
920 その際、
921 CがAの側についたことから、
922 甲社の取締役に再任されず、
923 その後も取締役に選任される
924 ことはなかった。
925
926 AとDの対立は現在まで続いている。
927
928
929 2.甲社は、
930 かねてより商品を保管する倉庫を建設するための用地を探していたところ、
931 Cが保有し
932 ている土地(以下「本件土地」という。
933
934 )が倉庫建設に適していることが判明した。
935
936 AはCとの間
937 で、
938 本件土地の売買交渉を進め、
939 もう少しで契約が成立するというところまでこぎつけた。
940
941
942 ところが、
943 不動産業者から倉庫建設に適した別の土地の情報がもたらされた。
944
945 その情報を受け、
946
947 甲社の取締役会において審議したところ、
948 本件土地に倉庫を建設するより不動産業者から提案され
949 た土地に倉庫を建設した方が円滑に商品を出荷することが可能となることから、
950 本件土地の買取り
951 を見送るとの結論に達した。
952
953
954 3.上記のような取締役会での決定を受け、
955 AがCのもとに赴き、
956 本件土地を買い取ることができな
957 くなったことを説明したところ、
958 Cは納得しなかった。
959
960 AはCの説得を続けたが、
961 Cは聞き入れず、
962
963 ついに本件土地の買取りができないなら今後の対応についてDに相談すると言い出した。
964
965 CとDが
966 協調して行動することを恐れたAは、
967 本件土地の買取りを再検討する旨をCに告げてCのもとを去
968 った。
969
970
971 4.甲社の取締役会では、
972 Aからの報告を受け、
973 Cから本件土地を買い取ることとし、
974 さらに、
975 準備
976 されていた本件土地に関する資料をもとに買取価格を検討し、
977 2億円で本件土地を買い取ることを
978 A、
979 B及びEの賛成によって決定した(以下「本件取締役会決議」という。
980
981 )。
982
983 本件土地に関する
984 資料によれば、
985 本件土地の適正価格は2億円であった。
986
987
988 5.Aが、
989 すぐさまCに甲社の本件取締役会決議の内容を知らせてCと再度交渉したところ、
990 Cは本
991 件土地を2億円で売却することを承諾し、
992 本件土地の売買契約が成立した(以下「本件取引」とい
993 う。
994
995 )。
996
997
998 6.この頃、
999 甲社の完全子会社である乙株式会社(以下「乙社」という。
1000
1001 )の取締役が任期中に死亡
1002 したため、
1003 乙社の取締役に欠員が生じた。
1004
1005 乙社の代表取締役を兼任するAは、
1006 Fを乙社の取締役に
1007 することとし、
1008 乙社においてFを取締役に選任する手続を採るとともに、
1009 Fに対して乙社の取締役
1010 に就任するよう要請した。
1011
1012 それを受け、
1013 FはAに乙社の取締役に就任すると返答した。
1014
1015
1016 7.本件取引のことを聞きつけたDは、
1017 本件土地より倉庫に適した土地があったにもかかわらず本件
1018 取引をしたことは、
1019 Cが甲社の株主であるために特別に優遇したものであり、
1020 不適切であると考え、
1021
1022 友人の弁護士に対し、
1023 A、
1024 B及びE並びにC(以下「Aら」という。
1025
1026 )が、
1027 本件取引に関して甲社
1028 に対して何らかの責任を負わないか検討してほしいと依頼した。
1029
1030
1031 8.弁護士のアドバイスを受けたDは、
1032 Aらに対して責任追及等の訴えを提起することとし、
1033 Fに対
1034 して、
1035 甲社としてAらに対して訴訟を提起するよう請求した(以下「本件提訴請求」という。
1036
1037 )。
1038
1039
1040 本件提訴請求から60日以内に甲社がAらに対して訴訟を提起しなかったことから、
1041 Dは、
1042 甲社の
1043 ためにAらに対する責任追及等の訴え(以下「本件訴え」という。
1044
1045 )を提起した。
1046
1047
1048
1049 〔設問1〕
1050 本件訴えにおいて、
1051 Dの立場において考えられる主張及びその当否について、
1052 論じなさい。
1053
1054
1055 〔設問2〕
1056 本件訴えの被告であるAらは、
1057 本件提訴請求は適法とはいえず、
1058 本件訴えは違法であると主張し
1059 ている。
1060
1061 本件訴えは適法か、
1062 Aらの主張を踏まえて論じなさい。
1063
1064
1065
1066 (出題の趣旨)
1067 本問は、
1068 株主の権利行使に関する利益供与に関与した者の責任及び株主がその責任
1069 を追及する訴えを提起するための手続を問うものである。
1070
1071
1072 設問1では、
1073 A、
1074 B及びEに対する請求については会社法第120条第4項を、
1075
1076 に対する請求については同条第3項を根拠とすることが考えられる。
1077
1078 いずれの請求に
1079 ついても、
1080 本件取引が、
1081 同条第1項によって禁止される株主の権利行使に関する利益
1082 供与に該当するかを検討することが求められる。
1083
1084 その際、
1085 一度は本件土地の買取りを
1086 見送ることとしたにもかかわらず、
1087 改めて本件取引をすることを決定したA、
1088 B及び
1089 Eの意図について、
1090 甲社の株主構成と株主の持株比率、
1091 更にAとDが対立しているこ
1092 となどの事情を踏まえて検討する必要がある。
1093
1094 また、
1095 本件取引が適正な対価での売買
1096 であることにも触れることが望ましい。
1097
1098 A、
1099 B及びEについては、
1100 利益の供与をする
1101 ことに関与した取締役(同条第4項、
1102 会社法施行規則第21条第1号、
1103 第2号)に当
1104 たることを指摘しなければならない。
1105
1106
1107 設問2では、
1108 設問1で検討したCに対する返還請求も会社法第847条第1項の
1109 責任追及等の訴えの対象となることを確認した上で、
1110 本件訴えが適法な手続を経て
1111 提起されたといえるかを検討することが求められる。
1112
1113 Dによる提訴請求は適法にさ
1114 れたとはいえないとするAらの主張は、
1115 監査役設置会社においては監査役に対して
1116 提訴請求をすべきであるところ(同法第386条第2項第1号)、
1117 甲社の監査役F
1118 が同社の完全子会社である乙社の取締役に就任したことにより兼任禁止(同法第3
1119 35条第2項)に抵触するため、
1120 提訴請求の時点でFは甲社の監査役を辞任してい
1121 たことになり(最判平成元年9月19日集民第157号627頁参照)、
1122 Fに対す
1123 る提訴請求は適法とはいえないというものである。
1124
1125 この主張を踏まえて、
1126 提訴請求
1127 の時点でFは甲社の監査役又は監査役の権利義務を有する者(同法第346条第1
1128 項)であったといえるか否かなどを考慮して検討する必要がある。
1129
1130
1131
1132 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は、
1133 3:2)
1134 次の文章を読んで、
1135 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1136
1137
1138 【事例】
1139 Xは、
1140 自動車の愛好家らによって創設されたクラブであり、
1141 20年近くにわたって継続的に活動
1142 を行ってきた。
1143
1144 Xの構成員は、
1145 現在はA、
1146 B、
1147 Cらを含む計30名である。
1148
1149 また、
1150 Xは、
1151 その財産
1152 として、
1153 不動産、
1154 動産及び預金等を有している。
1155
1156 Xの規約によれば、
1157 Xの意思決定は、
1158 原則として、
1159
1160 Xの構成員全員で構成される総会の多数決によることとされているが、
1161 不動産等の重要財産を処分
1162 するに当たっては、
1163 構成員の3分の2以上の特別多数の同意を要するものとされている。
1164
1165 Xの現在
1166 の代表者はAである。
1167
1168
1169 甲土地は、
1170 従前、
1171 Xの構成員の1人であるCの名義で登記されていた。
1172
1173 もっとも、
1174 甲土地は、
1175
1176 の構成員が利用してきたことから、
1177 Aは甲土地をXの財産であると認識していた。
1178
1179 しかし、
1180 Aが登
1181 記を確認したところ、
1182 登記名義がCからYに移転されていることが判明した。
1183
1184 なお、
1185 Yは、
1186 Xの構
1187 成員ではない。
1188
1189 AがCに対して事情を尋ねたところ、
1190 Cは、
1191 甲土地はXの財産ではなく、
1192 自己の財
1193 産であり、
1194 Yの求めに応じて売り渡したと説明した。
1195
1196 また、
1197 Aは、
1198 Yに対して甲土地がXの財産で
1199 ある旨を主張したが、
1200 Yは自己の所有権を主張して譲らなかった。
1201
1202
1203 Xの構成員は、
1204 現在、
1205 甲土地を車の部品などの資材置き場として使用している。
1206
1207
1208 〔設問1〕
1209 AはYとの間で裁判によって甲土地がXの財産であることを確定したいと考えたが、
1210 Yに対して
1211 訴えを提起することについては、
1212 Cのほか、
1213 Cと関係の近い相当数の構成員による反対が予想され
1214 た。
1215
1216 以下は、
1217 Aの相談を受けた弁護士L1と修習生Pとの対話である。
1218
1219
1220 弁護士L1:
1221
1222 本件においては、
1223 Xは権利能力のない社団であり、
1224 Xの財産が構成員全員に総有的
1225 に帰属することを前提として、
1226 甲土地の総有権の確認を求める訴えを提起することが
1227 考えられますが、
1228 その場合、
1229 誰が原告となることが考えられるでしょうか。
1230
1231
1232
1233 修習生P
1234
1235
1236
1237 @Xが原告となり、
1238 AがXの代表者として訴えを提起する方法が考えられます。
1239
1240
1241 た、
1242 A権利の帰属主体である X の構成員らが原告となって訴えを提起する方法も考え
1243 られると思います。
1244
1245
1246
1247 弁護士L1: では、
1248 訴えの適法性について、
1249 @及びAの方法ごとに考えてみることにしましょう。
1250
1251
1252 本件では、
1253 Xの構成員の中に反対者がいるようですが、
1254 そのことは、
1255 訴えの適法性に
1256 影響を与えるでしょうか。
1257
1258 更に考えてみてください。
1259
1260
1261 修習生P
1262
1263
1264
1265 はい。
1266
1267 わかりました。
1268
1269
1270
1271 訴えの適法性について、
1272 @及びAの方法ごとに、
1273 下線部の事情を考慮して、
1274 判例の理解を踏まえつ
1275 つ、
1276 検討しなさい。
1277
1278 なお、
1279 解答に当たっては、
1280 Xが当事者能力を有することを前提とし、
1281 確認の利益
1282 については論じなくてよい。
1283
1284
1285 【事例(続き)】(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
1286
1287
1288 Xは、
1289 Yを被告として、
1290 甲土地の総有権の確認を求める訴えを適法に提起した(以下「本件訴訟」
1291 という。
1292
1293 )。
1294
1295
1296 Yは、
1297 当初、
1298 訴訟代理人L2に対し、
1299 自己の所有権を主張してXの請求の棄却を求めるだけでよ
1300 いとの意向を伝えていたが、
1301 本件訴訟の審理が進んだ後で、
1302 L2に対して、
1303 Xに対して甲土地の明
1304
1305 渡しを求めたいとする意向を伝えた。
1306
1307
1308 L2は、
1309 反訴ではなく、
1310 本件訴訟係属中に、
1311 所有権に基づく甲土地の明渡しを求める訴えをX
1312 に対して別途提起すること(以下「本件別訴」という。
1313
1314 )を考えた。
1315
1316
1317 また、
1318 L2は、
1319 その方法とは別に、
1320 まず、
1321 本件訴訟においてXの請求を棄却する判決(以下「前
1322 訴判決」という。
1323
1324 )を得た上で、
1325 本件訴訟終了後に、
1326 所有権に基づく甲土地の明渡しを求める訴え
1327 (以下「後訴」という。
1328
1329 )をXに対して提起することも考えた。
1330
1331
1332 〔設問2〕
1333 の本件別訴の適法性について、
1334 重複起訴が禁止されている趣旨を踏まえて、
1335 検討しなさい。
1336
1337
1338 た、
1339 の方法を採った場合における前訴判決の既判力の後訴に対する作用について、
1340 事案に即して
1341 検討しなさい。
1342
1343 なお、
1344 解答に当たっては、
1345 及びにおけるXの被告適格については言及しなくて
1346 よい。
1347
1348 また、
1349 「信義則」及び「争点効」には触れなくてよい。
1350
1351
1352
1353 (出題の趣旨)
1354 設問1は、
1355 権利能力のない社団の財産に係る総有権確認の訴えに関して、
1356 @社団自
1357 身が原告となって訴えを提起することの適否、
1358 A構成員らが原告となって訴えを提起
1359 することの適否を、
1360 具体的な事例を通して問うものである。
1361
1362
1363 前段部分に関しては、
1364 権利能力のない社団であるXについて、
1365 構成員全員の総有
1366 に属するとされる甲土地の総有権確認訴訟の原告適格が認められるか否か、
1367 が肯
1368 定される場合でも、
1369 原告Xの代表者であるAについて、
1370 本件総有権確認訴訟をXの代
1371 表者として提起し、
1372 追行する訴訟上の権限があるといえるか等に関して、
1373 関連判例で
1374 ある最判平成6年5月31日民集48巻4号1065頁の理解を踏まえて検討する
1375 ことが期待されている。
1376
1377
1378 後段部分に関しては、
1379 Xの構成員らが原告となって共同訴訟を提起するに際し、
1380
1381 当該訴訟が、
1382 Xの構成員全員が当事者とならなければ当事者適格を欠いて不適法とな
1383 る、
1384 固有必要的共同訴訟か否か、
1385 を肯定する場合には、
1386 構成員の一部が当該訴え
1387 を提起することに反対している場合に当該訴えを適法に提起することの可否や方法
1388 等について、
1389 固有必要的共同訴訟の成否を決定する基準や当該訴訟が確認訴訟である
1390 ことを踏まえつつ、
1391 関連判例である最判平成20年7月17日民集62巻7号199
1392 4頁の論旨や射程等を意識した検討が求められている。
1393
1394
1395 設問2は、
1396 重複起訴の禁止と既判力の範囲・作用等についての理解を、
1397 本件事案に
1398 即して問うものである。
1399
1400
1401 設問前段部分では、
1402 本件訴訟の係属中に本件別訴を提起することが重複起訴の禁止
1403 に抵触するか否かにつき、
1404 重複起訴の禁止の趣旨を明らかにした上で、
1405 当該趣旨を考
1406 慮して要件を定立して、
1407 結論を導き出すことが求められている。
1408
1409 結論を導き出すに際
1410 しては、
1411 本件事案に応じた当てはめを行う必要があるが、
1412 その定立した要件に応じて、
1413
1414 本件訴訟や本件別訴の訴訟物の内容や異同などを意識しながら、
1415 検討することが期待
1416 されている。
1417
1418
1419 また、
1420 設問後段部分では、
1421 前訴判決が請求棄却判決であるとの前提の下、
1422 前訴判決
1423 の既判力が生じる範囲、
1424 前訴及び後訴における訴訟物の内容や異同などを意識しなが
1425 ら、
1426 既判力に関する基本的な理解を手掛かりとして、
1427 前訴判決の既判力の後訴に対す
1428 る作用について検討することが期待されている。
1429
1430
1431
1432 [刑 法]
1433 以下の【事例1】及び【事例2】を読んで、
1434 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1435
1436
1437 【事例1】
1438 1 甲(35歳、
1439 女性)は、
1440 A市内のアパートにおいて、
1441 長男X(13歳)及び長女Y(6歳)と3人
1442 で暮らしていた。
1443
1444
1445 2 某月1日、
1446 甲は、
1447 Yと共に、
1448 Bが店長を務める大型スーパーマーケットC店に入り、
1449 果物コーナーを
1450 歩いていた際、
1451 陳列棚に置かれていた1房3000円の高級ブドウを手に取ってYに見せながら、
1452
1453 「あ
1454 んた、
1455 これ好きでしょ。
1456
1457
1458 」などと話したが、
1459 高額であったことから、
1460 Yの眼前でそのまま陳列棚に戻し
1461 た。
1462
1463 その後、
1464 甲は、
1465 何も買わずに店を出たが、
1466 Yに上記ブドウを万引きさせようと考え、
1467 C店の前にお
1468 いて、
1469 Yに対し、
1470
1471 「さっきのブドウを持ってきて。
1472
1473 ママはここで待っているから、
1474 1人で行ってきて。
1475
1476
1477 お金を払わずにこっそりとね。
1478
1479
1480 」と言った。
1481
1482 それを聞いたYは、
1483 ちゅうちょしたが、
1484 甲から「いいから
1485 早く行きなさい。
1486
1487
1488 」と強い口調で言われたために怖くなり、
1489 甲の指示に従うことを決め、
1490
1491 「分かった。
1492
1493
1494
1495 と言って、
1496 甲から渡された買物袋を持って1人でC店に入っていった。
1497
1498 Yは、
1499 約10分間掛けて店内
1500 を探したが、
1501 果物コーナーの場所が分からず、
1502 そのまま何もとらずに店を出た。
1503
1504 甲は、
1505 上記ブドウの入
1506 手を諦め、
1507 Yと共に帰宅した。
1508
1509
1510 3 同月5日、
1511 甲は、
1512 自宅において、
1513 Xに対し、
1514
1515 「今晩、
1516 ステーキ食べたいね。
1517
1518 C店においしそうなステ
1519 ーキ用の牛肉があったから、
1520 とってきてよ。
1521
1522
1523 」と言った。
1524
1525 甲は、
1526 Xが「万引きなんて嫌だよ。
1527
1528
1529 」などと言
1530 ってこれを断ったため、
1531
1532 「あのスーパーは監視が甘いから見付からないよ。
1533
1534 見付かっても、
1535 あんたは足
1536 が速いから大丈夫。
1537
1538
1539 」などと言って説得したところ、
1540 Xは、
1541 渋々これに応じることとし、
1542
1543 「分かった。
1544
1545
1546
1547 と言った。
1548
1549 甲は、
1550
1551 「一番高い3000円くらいのやつを2パックとってきて。
1552
1553 午後3時頃に警備員が休
1554 憩に入るらしいから、
1555 その頃が狙い目だよ。
1556
1557
1558 」などと言い、
1559 商品を隠し入れるためのエコバッグをXに
1560 手渡した。
1561
1562 Xは、
1563 同日午後3時頃、
1564 上記エコバッグを持ってC店に入り、
1565 精肉コーナーにおいて、
1566 1パ
1567 ック3000円のステーキ用牛肉を見付け、
1568 どうせなら多い方がいいだろうと考えて5パックを手に
1569 取り、
1570 誰にも見られていないことを確認した上で同エコバッグに入れた。
1571
1572 Xは、
1573 そのまま店を出よう
1574 と考えて出入口付近に差し掛かったところ、
1575 同所にあった雑誌コーナーにXの好きなアイドルの写真
1576 集(販売価格3000円)を見付けてにわかにこれが欲しくなり、
1577 同写真集1冊を手に取ったまま、
1578
1579 ずれも精算することなく店外に持ち出した。
1580
1581 Xは、
1582 帰宅し、
1583 上記写真集を自分の部屋に置いた後、
1584 牛肉
1585 5パックが入った上記エコバッグを甲に渡した。
1586
1587 甲は、
1588
1589 「こんなにとってきてどうすんのよ。
1590
1591
1592 」などと
1593 言いつつこれを受け取り、
1594 同日以降、
1595 X及びYと共にこれらの牛肉を全て食べた。
1596
1597
1598 〔設問1〕
1599 【事例1】における甲の罪責について、
1600 論じなさい(建造物侵入罪及び特別法違反の点は除く。
1601
1602
1603
1604
1605
1606
1607 【事例2】
1608
1609 【事例1】の事実に続けて、
1610 以下の事実があったものとする。
1611
1612
1613
1614 4 同月10日、
1615 甲は、
1616 自転車に乗って1人で、
1617 Dが店長を務めるホームセンターE店に行った際、
1618 陳列
1619 されていた液晶テレビ(50センチメートル×40センチメートル×15センチメートルの箱に入っ
1620 たもの)を、
1621 自宅で使う目的で万引きしようと考え、
1622 E店内で、
1623 同液晶テレビ1箱を手に取って自己の
1624 トートバッグに入れた。
1625
1626 甲は、
1627 上記箱を上記トートバッグ内に収めて店外へ持ち出すつもりでいたが、
1628
1629 箱が大きすぎてその上部が10センチメートルほど同トートバッグからはみ出した状態になった。
1630
1631
1632 は、
1633 その状態のまま出入口方向へ歩き出そうとしたが、
1634 その一部始終を警備員F(35歳、
1635 女性)に目
1636 撃されていた。
1637
1638 Fは、
1639 甲が液晶テレビを精算せずに店外へ持ち出そうとしていると考え、
1640 約20メー
1641 トル離れた場所から甲の方へ歩いて向かったところ、
1642 周囲を見回していた甲も、
1643 Fがこちらを見なが
1644
1645 ら向かってきていることに気付いて万引きがばれたと思い、
1646 上記箱を陳列棚に戻した。
1647
1648 そして、
1649 甲は、
1650
1651 その場から走って逃げ出し、
1652 E店を出てから約3分後、
1653 E店から約400メートル離れた公園にたど
1654 り着き、
1655 同所でE店から追ってくる人がいないかどうかをうかがっていた。
1656
1657 甲は、
1658 約10分間、
1659 上記公
1660 園にとどまっていたが、
1661 誰も追ってこなかったことから、
1662 E店に隣接する駐輪場にとめたままにして
1663 いた自己の自転車を取りに戻ろうと考え、
1664 それから約5分後、
1665 同駐輪場に戻ってきて、
1666 周囲の様子を
1667 うかがいつつ同自転車に近づこうとした。
1668
1669 Fは、
1670 戻ってきた甲に気付き、
1671 上記駐輪場に飛び出し、
1672 甲を
1673 捕まえようと思って、
1674
1675 「この万引き犯。
1676
1677 逃げるんじゃない。
1678
1679
1680 」などと言いながら、
1681 両手を左右に広げて甲
1682 の前に立ち塞がった。
1683
1684 そのため、
1685 甲は、
1686 逮捕を免れようと考え、
1687 両手でFの胸部を1回押したところ、
1688
1689 Fが体勢を崩して尻餅を付いた。
1690
1691 そこで、
1692 甲は、
1693 その隙に上記自転車に乗ってその場から逃走した。
1694
1695
1696 〔設問2〕
1697 【事例2】における甲の罪責に関し、
1698 事後強盗既遂罪(刑法第238条)の成立を否定するためには
1699 どのような主張があり得るか。
1700
1701 考えられるものを3つ挙げ、
1702 その3つの主張の論拠を、
1703 それぞれ具体
1704 的な事実を明示して、
1705 説明しなさい。
1706
1707
1708
1709 (出題の趣旨)
1710 設問1は、
1711 甲が、
1712 長女Y(6歳)にスーパーマーケットC店でブドウを万引きさせ
1713 ようとしたところ、
1714 Yが果物コーナーの場所が分からず、
1715 何もとらずに同店を出たこと、
1716
1717 長男X(13歳)に同店でステーキ用牛肉2パックを万引きさせようとしたところ、
1718
1719 Xが同牛肉5パックと写真集1冊を精算せずに同店から持ち出したことを内容とする事
1720 例について、
1721 甲の罪責に関する論述を求めるものである。
1722
1723 いずれも、
1724 刑事未成年者を利
1725 用した甲の罪責を検討する前提として、
1726 間接正犯、
1727 共謀共同正犯又は狭義の共犯のいず
1728 れが成立するかを検討する必要がある。
1729
1730 そして、
1731 については、
1732 甲に認めた関与類型を
1733 踏まえつつ、
1734 実行の着手の判断基準に関する基本的理解を示して窃盗未遂罪の成否を検
1735 討する必要がある。
1736
1737 また、
1738 については、
1739 Xが甲の指示した牛肉2パックに加え、
1740 牛肉
1741 3パック及び写真集1冊を窃取していることから、
1742 甲の指示に含まれておらず、
1743 甲が予
1744 見もしていなかった客体の窃取に関して甲がどの範囲で罪責を負うかについて、
1745 本件の
1746 具体的事実関係を踏まえて検討する必要がある。
1747
1748 本設問では、
1749 刑法の基本的な概念に関
1750 する正確な理解を前提に、
1751 事実関係を的確に分析し、
1752 それを法的に構成する能力が問わ
1753 れている。
1754
1755
1756 設問2は、
1757 甲が、
1758 ホームセンターE店で液晶テレビを万引きしようとしたところ、
1759
1760 れを警備員Fに目撃され、
1761 同テレビを陳列棚に戻して同店から約400メートル離れた
1762 公園まで逃げたが、
1763 その後同店駐輪場に自転車を取りに戻った際にFから捕まりそうに
1764 なったため、
1765 Fの胸部を押して転倒させたことを内容とする事例について、
1766 事後強盗既
1767 遂罪の成立を否定するための3つの主張とその論拠を論じることを求めるものである。
1768
1769
1770 事後強盗罪の既遂・未遂は先行する窃盗の既遂・未遂によって決定されること、
1771 同罪の
1772 暴行・脅迫は「窃盗の機会」の継続中に行われる必要があること、
1773 同罪における暴行・
1774 脅迫の程度は相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものでなければならないことを踏
1775 まえ、
1776 具体的事実を示して論じる必要がある。
1777
1778 本設問では、
1779 一定の結論を導くために
1780 は、
1781 どのような主張があり得るかを事実関係に即して検討させることによって、
1782 具体的
1783 な事実を法的に分析する能力が問われている。
1784
1785
1786
1787 [刑事訴訟法]
1788 次の【事例】を読んで、
1789 後記〔設問〕に答えなさい。
1790
1791
1792 【事例】
1793 司法警察員Pは、
1794 Aが覚醒剤を密売しているとの情報を得て、
1795 内偵捜査を進めた。
1796
1797 その結果、
1798 その拠点
1799 は、
1800 Aが妻甲及び息子乙と同居するアパート1階にあるA方居室であるとの疑いが強まった。
1801
1802
1803 そこで、
1804 Pは、
1805 令和3年11月13日、
1806 Aを被疑者とする前記覚醒剤営利目的譲渡被疑事件に関し、
1807
1808 索すべき場所をA方居室、
1809 差し押さえるべき物を「覚醒剤、
1810 注射器、
1811 計量器等」とする捜索差押許可状の
1812 発付を受けた。
1813
1814
1815 Pは、
1816 同月15日、
1817 他の司法警察員らと共に、
1818 A方居室付近に赴き、
1819 同日午後1時30分頃、
1820 玄関扉を
1821 少し開けて顔を出した甲に対して、
1822 捜索を実施する旨告げた。
1823
1824
1825 Pは、
1826 Aが不在であったため、
1827 甲を立会人としてA方居室の捜索を実施することとし、
1828 甲に対して、
1829
1830 記捜索差押許可状を呈示して捜索を開始した。
1831
1832 その際、
1833 甲が同室玄関内において、
1834 コートを着用し、
1835 靴を
1836 履いてキャリーケースを所持していたことから、
1837 Pは、
1838 甲が同室内から覚醒剤の密売に関する物を同キ
1839 ャリーケースに入れて持ち出そうとしていたのではないかとの疑いを抱き、
1840 甲に対し、
1841 再三にわたり、
1842
1843 同キャリーケースを開けて中を見せるように求めた。
1844
1845 しかし、
1846 甲は、
1847 同キャリーケースの持ち手を握っ
1848 たまま、
1849 これを拒否した。
1850
1851 そこで、
1852 Pは、
1853 @甲の承諾を得ることなく、
1854 無施錠の同キャリーケースのチャ
1855 ックを開けて、
1856 その中を捜索し、
1857 覚醒剤や注射器を発見した。
1858
1859
1860 その後、
1861 Pは、
1862 他の司法警察員らと共に、
1863 同室の捜索を継続し、
1864 同室から覚醒剤、
1865 注射器及び計量器を
1866 発見した。
1867
1868 そして、
1869 その頃、
1870 乙がボストンバッグを所持して同室に帰宅した。
1871
1872 乙が同室内に入った後も同
1873 ボストンバッグを手放さなかったことから、
1874 Pは、
1875 同ボストンバッグ内にも覚醒剤の密売に関する物が
1876 入っているのではないかとの疑いを抱き、
1877 乙に対し、
1878 再三にわたり、
1879 同ボストンバッグを開けて中を見
1880 せるように求めた。
1881
1882 しかし、
1883 乙は、
1884 同ボストンバッグを両腕で抱きかかえて、
1885 これを拒否した。
1886
1887 そこで、
1888
1889 Pらは、
1890 A乙を羽交い締めにした上、
1891 乙から同ボストンバッグを取り上げて、
1892 その中を捜索し、
1893 覚醒剤を
1894 発見した。
1895
1896
1897 〔設問〕
1898 下線部@及びAの各行為の適法性について論じなさい。
1899
1900 なお、
1901 前記捜索差押許可状は適法に発付され
1902 たものとする。
1903
1904
1905 (参照条文) 覚醒剤取締法
1906 第41条の2 覚醒剤を、
1907 みだりに、
1908 所持し、
1909 譲り渡し、
1910 又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する
1911 者を除く。
1912
1913
1914 )は、
1915 10年以下の懲役に処する。
1916
1917
1918 2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、
1919 1年以上の有期懲役に処し、
1920 又は情状により1年以上の有期
1921 懲役及び500万円以下の罰金に処する。
1922
1923
1924 3 (略)
1925
1926 (出題の趣旨)
1927 本問は、
1928 Aに対する覚醒剤取締法違反事件において、
1929 警察官がA、
1930 Aの妻甲及びその
1931 息子乙が居住するアパート居室(以下「A方居室」という。
1932
1933
1934 )を捜索場所とする捜索差押
1935 許可状(以下「本件許可状」という。
1936
1937
1938 )の発付を受け、
1939 本件許可状に基づきA方居室の捜
1940 索を実施したところ、
1941 設問1では、
1942 甲がその場で携帯していたキャリーケースを捜索し
1943 た事例において、
1944 本件許可状によって、
1945 甲の携帯物を捜索することが許されるのかにつ
1946
1947 いて、
1948 最高裁判所の判例(最決平成6年9月8日刑集48巻6号263頁)をも踏まえ
1949 た検討をさせることを通して、
1950 憲法35条が捜索する場所及び押収する物を明示する各
1951 別の令状を要求している趣旨や、
1952
1953 「場所」に対する捜索許可状に基づき、
1954 その場所に存在
1955 する「物」を捜索することの可否についての基本的理解を問うものである。
1956
1957 また、
1958 設問
1959 2は、
1960 上記捜索中に同居室に帰宅した乙が携帯していたボストンバッグを、
1961 有形力を行
1962 使して捜索した事例において、
1963 最高裁判所の判例(最決平成19年2月8日刑集61巻
1964 1号1頁)の基本的な理解を踏まえつつその適否を検討させることを通して、
1965 本件許可
1966 状の効力が令状呈示後に同居室内に搬入された物品に及ぶか、
1967 また、
1968 捜索の際に処分を
1969 受ける者の身体に有形力を行使することの可否及び限度といった、
1970 令状による捜索の実
1971 施に当たり許される処分の範囲についての基本的理解を問うものである。
1972
1973
1974 設問1及び2のいずれも刑事訴訟法の基本的な学識の有無及び具体的事案における応
1975 用力を問うものである。
1976
1977
1978
1979 [民
1980
1981 事]
1982
1983 司法試験予備試験用法文を適宜参照して、
1984 以下の各設問に答えなさい。
1985
1986
1987 〔設問1〕
1988 弁護士Pは、
1989 Xから次のような相談を受けた。
1990
1991
1992 【Xの相談内容】
1993 「私は、
1994 建物のリフォームを仕事としています。
1995
1996 私は、
1997 Yとは十年来の付き合いで、
1998 Yが経営
1999 する飲食店の常連客でもありました。
2000
2001 私は、
2002 令和3年の年末頃、
2003 Yから、
2004 M市所在の建物(以下
2005 「本件建物」という。
2006
2007 )を飲食店に改修するための外壁・内装等のリフォーム工事(以下「本件工
2008 事」という。
2009
2010 )について相談を受け、
2011 令和4年2月8日、
2012 本件工事を報酬1000万円で請け負い
2013 ました。
2014
2015
2016 令和4年5月28日、
2017 私は、
2018 本件工事を完成させ、
2019 本件建物をYに引き渡し、
2020 本件工事の報酬
2021 として、
2022 1000万円の支払を求めましたが、
2023 Yは、
2024 700万円しか支払わず、
2025 残金300万円
2026 を支払いませんでした。
2027
2028 私は、
2029 本件工事の報酬の残金300万円と支払が遅れたことの損害金全
2030 てをYに支払ってほしいと思います。
2031
2032
2033 弁護士Pは、
2034 令和4年8月1日、
2035 【Xの相談内容】を前提に、
2036 Xの訴訟代理人として、
2037 Yに対し、
2038
2039 Xの希望する金員の支払を求める訴訟(以下「本件訴訟」という。
2040
2041 )を提起することとした。
2042
2043
2044 以上を前提に、
2045 以下の各問いに答えなさい。
2046
2047
2048
2049
2050 弁護士Pが、
2051 本件訴訟において、
2052 Xの希望を実現するために選択すると考えられる訴訟物を記
2053 載しなさい。
2054
2055
2056
2057
2058
2059 弁護士Pが、
2060 本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。
2061
2062 )において記載すべき請求の趣旨(民
2063 事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい。
2064
2065 なお、
2066 付随的申立てについては、
2067 考慮する
2068 必要はない。
2069
2070
2071
2072
2073
2074 弁護士Pが、
2075 本件訴状において記載すべき請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1
2076 項)を記載しなさい。
2077
2078 なお、
2079 いわゆるよって書き(請求原因の最後のまとめとして、
2080 訴訟物を明
2081 示するとともに、
2082 請求の趣旨と請求原因の記載との結びつきを明らかにするもの)は記載しない
2083 こと。
2084
2085
2086
2087
2088
2089 弁護士Pが、
2090 本件訴状において請求を理由づける事実として、
2091 上記のとおり記載した理由を
2092 判例を踏まえて簡潔に説明しなさい。
2093
2094 なお、
2095 訴訟物が複数ある場合は、
2096 訴訟物ごとに記載するこ
2097 と。
2098
2099
2100
2101 〔設問2〕
2102 以下、
2103 XがYとの間で、
2104 令和4年2月8日に締結した報酬を1000万円とする本件工事の請負
2105 契約を「本件契約」という。
2106
2107
2108 弁護士Qは、
2109 本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。
2110
2111
2112 【Yの相談内容】
2113 「(a)
2114
2115 Xは、
2116 令和4年5月28日、
2117 本件工事を完成させ、
2118 私は、
2119 同日、
2120 本件建物の引渡しを受
2121 け、
2122 Xに700万円を支払いました。
2123
2124 しかし、
2125 私がXとの間で締結したのは、
2126 報酬を70
2127 0万円とする本件工事の請負契約であり、
2128 本件契約ではありません。
2129
2130
2131
2132 私は、
2133 本件建物で飲食店を営業したいと考え、
2134 令和3年の年末頃、
2135 Xに本件建物のリ
2136 フォーム工事について相談をしました。
2137
2138 Xが本件建物を見た上で、
2139 本件工事は700万
2140 円程度でできると述べたので、
2141 私は、
2142 令和4年2月8日、
2143 Xとの間で、
2144 報酬を700万
2145 円とする本件工事の請負契約を締結しました。
2146
2147 したがって、
2148 私が本件工事の報酬として
2149 Xに支払うべき金額は、
2150 1000万円ではなく700万円であり、
2151 未払はありません。
2152
2153
2154 仮に、
2155 Xと私との間で、
2156 本件契約が締結されたというのであれば、
2157 Xは、
2158 令和4年5
2159 月28日、
2160 次のようなやり取りを経て、
2161 私に本件工事の報酬残金300万円の支払を免
2162 除しましたので、
2163 私はそれを主張したいと思います。
2164
2165
2166 私は、
2167 令和4年5月28日、
2168 本件建物の引渡しを受ける際、
2169 本件建物の外壁に亀裂が
2170 あるのを発見しました。
2171
2172 私がその場で、
2173 Xに対し、
2174 外壁の修補を求めたところ、
2175 Xは、
2176
2177 この程度の亀裂は自然に発生するもので修補の必要はないと言い、
2178 本件工事の報酬10
2179 00万円を支払うよう求めてきました。
2180
2181 私は、
2182 本件工事の報酬は700万円だと思って
2183 いましたので、
2184 それを強く言うと、
2185 Xは、
2186 そのようなことはないなどと言っていました
2187 が、
2188 最終的には、
2189 『700万円でいい。
2190
2191 残りの300万円の支払はしなくてよい。
2192
2193 』と言
2194 いましたので、
2195 私は、
2196 700万円を支払って、
2197 本件建物の引渡しを受けました。
2198
2199
2200 (b)
2201
2202 本件建物の外壁の亀裂は、
2203 その後、
2204 とんでもないことになりました。
2205
2206
2207 令和4年6月初旬、
2208 雨が降り続いた際、
2209 本件建物の外壁の亀裂が原因で雨漏りが生じ
2210 ました。
2211
2212 私は、
2213 このままでは安心して本件建物で営業ができないと思い、
2214 同月10日、
2215
2216 Xに対し、
2217 本件建物の外壁の亀裂から雨漏りが生じたことを伝え、
2218 外壁の修補を求めま
2219 したが、
2220 Xから断られましたので、
2221 損害賠償を請求する旨を伝えました。
2222
2223 そして、
2224 私は、
2225
2226 本件建物の外壁の補修工事を別の業者に依頼し、
2227 その報酬として350万円を支出しま
2228 した。
2229
2230
2231
2232 弁護士Qは、
2233 【Yの相談内容】を前提に、
2234 Yの訴訟代理人として、
2235 本件訴訟の答弁書(以下「本
2236 件答弁書」という。
2237
2238 )を作成した。
2239
2240
2241 以上を前提に、
2242 以下の各問いに答えなさい。
2243
2244
2245
2246
2247 弁護士Qは、
2248 【Yの相談内容】(a)を踏まえて、
2249 抗弁を主張することとした。
2250
2251 その検討に当た
2252 り、
2253 本件訴訟において、
2254 抗弁として機能するためには、
2255 以下の(ア)及び(イ)の事実が必要
2256 であると考えた。
2257
2258
2259 (ア)
2260
2261
2262
2263 (イ)
2264
2265
2266
2267 Xは、
2268 Yに対し、
2269 令和4年5月28日、
2270 本件契約に基づく報酬債務のうち300万円の支
2271 払を免除するとの意思表示をした。
2272
2273
2274
2275 (@) (ア)に入る具体的事実を記載しなさい。
2276
2277
2278 (A) 弁護士Qが、
2279 (ア)の事実が必要であると考えた理由を簡潔に説明しなさい。
2280
2281
2282
2283
2284 弁護士Qは、
2285 【Yの相談内容】(b)から、
2286 YはXに対し、
2287 契約不適合を理由とする債務不履行に
2288 基づく350万円の損害賠償債権を有すると考えた。
2289
2290 弁護士Qがこの350万円の回収方法とし
2291 て、
2292 本件訴訟手続を利用して選択できる訴訟行為を判例を踏まえて挙げなさい。
2293
2294
2295
2296 〔設問3〕
2297 本件訴訟の第1回口頭弁論期日において、
2298 本件訴状及び本件答弁書等は陳述された。
2299
2300 弁護士Pは、
2301
2302 その口頭弁論期日において、
2303 本件工事の報酬の見積金額が1000万円と記載された令和4年2月
2304 2日付けのX作成の見積書(以下「本件見積書@」という。
2305
2306 )を書証として提出し、
2307 これが取り調
2308 べられたところ、
2309 弁護士Qは、
2310 本件見積書@の成立を認める旨を陳述した。
2311
2312
2313
2314 これに対し、
2315 弁護士Qは、
2316 本件訴訟の第1回弁論準備手続期日において、
2317 本件工事の報酬の見積
2318 金額が700万円と記載された令和4年2月2日付けのX作成の見積書(以下「本件見積書A」と
2319 いう。
2320
2321 )を書証として提出し、
2322 これが取り調べられたところ、
2323 弁護士Pは、
2324 本件見積書Aの成立を
2325 認める旨を陳述した。
2326
2327
2328 本件訴訟の第2回弁論準備手続期日を経た後、
2329 第2回口頭弁論期日において、
2330 本人尋問が実施さ
2331 れ、
2332 本件契約の締結に関し、
2333 Xは、
2334 次の【Xの供述内容】のとおり、
2335 Yは、
2336 次の【Yの供述内容】
2337 のとおり、
2338 それぞれ供述した(なお、
2339 それ以外の者の尋問は実施されていない。
2340
2341 )。
2342
2343
2344 【Xの供述内容】
2345 「私は、
2346 令和3年の年末頃に、
2347 Yから本件建物を飲食店にリフォームをしてもらえないかと頼
2348 まれ、
2349 本件建物を見に行きました。
2350
2351 Yは、
2352 リフォームの費用は銀行から融資を受けるつもりなの
2353 で、
2354 できるだけ安く済ませたいと言っていました。
2355
2356 私は、
2357 Yの要望のとおりのリフォームをする
2358 のであれば1000万円を下回る報酬額で請け負うのは難しいと話し、
2359 本件工事の報酬金額を1
2360 000万円と見積もった本件見積書@を作成して、
2361 令和4年2月2日、
2362 Yに交付しました。
2363
2364 Yが
2365 同月8日、
2366 本件工事を報酬1000万円で発注すると言いましたので、
2367 私は、
2368 同日、
2369 本件工事を
2370 報酬1000万円で請け負いました。
2371
2372 見積金額が700万円と記載された本件見積書Aは、
2373 Yか
2374 ら、
2375 本件建物は賃借している物件なので、
2376 賃貸人に本件工事を承諾してもらわなければならない
2377 が、
2378 大掛かりなリフォームと見えないようにするため、
2379 外壁工事の項目を除いた見積書を作って
2380 ほしいと頼まれて作成したものです。
2381
2382 実際、
2383 私は、
2384 本件工事として本件建物の外壁工事を実施し
2385 ており、
2386 本件見積書Aは実体と合っていません。
2387
2388 私は、
2389 Yは本件見積書@を銀行に提出し、
2390 同年
2391 5月初旬に銀行から700万円の融資を受けたと聞いていますが、
2392 本件見積書Aを賃貸人に見せ
2393 たかどうかは聞いていません。
2394
2395 私は、
2396 契約書を作成しておかなかったことを後悔していますが、
2397
2398 私とYは十年来の仲でしたので、
2399 作らなくても大丈夫だと思っていました。
2400
2401
2402 以上のとおり、
2403 私は、
2404 Yとの間で、
2405 令和4年2月8日、
2406 本件契約を締結しました。
2407
2408
2409 【Yの供述内容】
2410 「私は令和4年2月8日、
2411 Xに本件工事を発注しましたが、
2412 報酬は1000万円ではなく、
2413
2414 00万円でした。
2415
2416 Xが私に対し、
2417 1000万円を下回る報酬額で請け負うのは難しいと言ったこ
2418 とはなく、
2419 令和3年の年末頃に本件建物を見た際、
2420 700万円程度でできると言い、
2421 令和4年2
2422 月2日、
2423 本件工事の報酬金額を700万円と見積もった本件見積書Aを私に交付しました。
2424
2425 そこ
2426 で、
2427 私は、
2428 同月8日、
2429 Xに対し、
2430 本件工事を報酬700万円で発注したいと伝え、
2431 Xとの間で、
2432
2433 本件工事の請負契約を締結したのです。
2434
2435 私から外壁工事の項目を除いた見積書を作ってほしいと
2436 は言っていません。
2437
2438 確かに、
2439 本件見積書Aには、
2440 本件工事としてXが施工した外壁工事に関する
2441 部分の記載がありませんが、
2442 私は、
2443 本件見積書Aの交付を受けた当時、
2444 Xから、
2445 外壁工事分はサ
2446 ービスすると言われていました。
2447
2448 本件見積書@は、
2449 私が運転資金として300万円を上乗せして
2450 銀行から融資を受けたいと考え、
2451 Xにお願いして、
2452 銀行提出用に作成してもらったものです。
2453
2454
2455 は、
2456 本件見積書@を銀行に提出しましたが、
2457 結局、
2458 融資を受けられたのは700万円でした。
2459
2460
2461 件見積書Aは、
2462 本件工事の承諾を得る際、
2463 賃貸人に見せています。
2464
2465
2466 以上を前提に、
2467 以下の問いに答えなさい。
2468
2469
2470 弁護士Pは、
2471 本件訴訟の第3回口頭弁論期日までに、
2472 準備書面を提出することを予定している。
2473
2474
2475 その準備書面において、
2476 弁護士Pは、
2477 前記の提出された書証並びに前記【Xの供述内容】及び
2478 【Yの供述内容】と同内容のX及びYの本人尋問における供述に基づいて、
2479 XとYが本件契約を締
2480 結した事実が認められることにつき、
2481 主張を展開したいと考えている。
2482
2483 弁護士Pにおいて、
2484 上記
2485 準備書面に記載すべき内容を、
2486 提出された書証や両者の供述から認定することができる事実を踏
2487
2488 まえて、
2489 答案用紙1頁程度の分量で記載しなさい。
2490
2491 なお、
2492 記載に際しては、
2493 冒頭に、
2494 XとYが本
2495 件契約を締結した事実を直接証明する証拠の有無について言及すること。
2496
2497
2498 〔設問4〕
2499 仮に、
2500 弁護士Qにおいて、
2501 〔設問2〕の本件訴訟手続を利用して選択できる訴訟行為を行わない
2502 まま、
2503 本件訴訟の口頭弁論は終結し、
2504 その後、
2505 Xの請求を全部認容する判決が言い渡され、
2506 同判決
2507 は確定したものとする(以下、
2508 この確定した判決を「本件確定判決」という。
2509
2510 )。
2511
2512 Xは、
2513 Yが支払わ
2514 ないので、
2515 本件確定判決を債務名義として、
2516 YのA銀行に対する預金債権を差押債権とする債権差
2517 押命令の申立てをしたところ、
2518 これに基づく差押命令が発令されて、
2519 同命令がA銀行及びYに送達
2520 された。
2521
2522
2523 弁護士Qは、
2524 Yの代理人として、
2525 〔設問2〕の【Yの相談内容】(b)を踏まえ、
2526 本件確定判決に係
2527 る請求権の存在又は内容について異議を主張して、
2528 本件確定判決による強制執行の不許を求めるこ
2529 とができるか、
2530 結論を答えた上で、
2531 その理由を民事執行法の関係する条文に言及しつつ、
2532 判例を踏
2533 まえて簡潔に説明しなさい。
2534
2535
2536
2537 (出題の趣旨)
2538 設問1は、
2539 請負契約に基づく報酬支払請求権及びその附帯請求である履行遅滞に
2540 基づく損害賠償請求権が問題となる訴訟において、
2541 原告の希望に応じた訴訟物、
2542
2543 求の趣旨、
2544 請求を理由づける事実及びその事実が必要となる理由について説明を求
2545 めるものである。
2546
2547 前記各訴訟物の法律要件及び要件事実の正確な理解が問われてい
2548 る。
2549
2550
2551 設問2は、
2552 一部請求の事案において、
2553 設問1の請求原因に対する抗弁として機能
2554 するために必要な要件事実及びその事実が必要となる理由の説明を求めるほか、
2555
2556 告が原告に対し債権を有する場合に債権回収の方法として本訴訟手続を利用して選
2557 択できる訴訟行為を問うものである。
2558
2559 一部請求の事案における判例の理解を踏まえ
2560 て、
2561 請求原因に対する抗弁の機能を正確に理解しているかが問われている。
2562
2563 また、
2564
2565 債権回収の観点から、
2566 適切な訴訟行為を選択できるか、
2567 実体法及び手続法の理解が
2568 問われている。
2569
2570
2571 設問3は、
2572 供述が直接証拠となる事案において、
2573 要証事実との関係で証拠構造を
2574 正確に捉えること、
2575 間接証拠から推認できる重要な事実(原告に有利なもの、
2576 不利
2577 なもの)に言及した上で、
2578 要証事実が認められる理由を説得的に論じることが求め
2579 られている。
2580
2581
2582 設問4は、
2583 請求異議の訴えにおける異議事由が生じる基準時を指摘した上で、
2584
2585 殺の意思表示に関する判例の理解を踏まえて解答することが求められている。
2586
2587
2588
2589 [刑
2590
2591 事]
2592
2593 次の【事例】を読んで、
2594 後記〔設問〕に答えなさい。
2595
2596
2597 【事例】
2598
2599
2600 A(23歳、
2601 男性)は、
2602 令和3年3月31日、
2603 「被告人は、
2604 金品を強取しようと考え、
2605 Bと
2606 共謀の上、
2607 令和3年3月9日午後1時頃、
2608 H県I市J町1丁目2番3号V方に、
2609 宅配業者を装
2610 って玄関から侵入し、
2611 その頃から同日午後1時10分頃までの間、
2612 同所において、
2613 V(当時7
2614 5歳)に対し、
2615 持っていたサバイバルナイフを突き付け、
2616 『金とキャッシュカードを出せ。
2617
2618 』な
2619 どと申し向け、
2620 持っていたロープでVの両手首及び両足首を縛るなどの暴行脅迫を加え、
2621 Vの
2622 反抗を抑圧した上、
2623 V所有又は管理の現金500万円及びキャッシュカード1枚を強取し、
2624
2625 の際、
2626 Vに加療約10日間を要する両手関節部擦過傷の傷害を負わせた。
2627
2628 」旨の住居侵入、
2629 強盗
2630 致傷被告事件(以下「本件被告事件」という。
2631
2632 )でH地方裁判所に公判請求された。
2633
2634 B(21歳、
2635
2636 男性)は、
2637 Aが公判請求される前日に、
2638 前記住居侵入、
2639 強盗致傷の事実で同裁判所に公判請求
2640 されていた。
2641
2642
2643
2644
2645
2646 Aが公判請求されるまでに収集された主な証拠の概要は次のとおりである(以下、
2647 特に年を
2648 明示していない日付は全て令和3年である。
2649
2650 )。
2651
2652 なお、
2653 Aは、
2654 取調べに対し、
2655 一貫して黙秘して
2656 いた。
2657
2658
2659
2660
2661 Vの警察官面前の供述録取書(証拠@)
2662 「私は、
2663 自宅に1人で住んでいる。
2664
2665 3月9日午後1時頃、
2666 玄関のチャイムが鳴り、
2667 インター
2668 ホンに応対したところ、
2669 男が宅配業者を名乗ったため、
2670 玄関のドアを開けた。
2671
2672 すると、
2673 茶色
2674 の作業着上下と帽子を着用した男が玄関内に入ってきてドアを閉め、
2675 ポケットから取り出し
2676 たナイフを私ののど元に突き付け、
2677 『金とキャッシュカードを出せ。
2678
2679 』と言ってきた。
2680
2681 男の言
2682 うとおりにしないと刺されると思い、
2683 寝室のたんすの中に現金やキャッシュカードがあるこ
2684 とを伝えた。
2685
2686 男は、
2687 私にナイフを突き付けたまま、
2688 私を連れて寝室に移動し、
2689 再び、
2690 現金と
2691 キャッシュカードを出すように言ってきた。
2692
2693 私は、
2694 たんすの引き出しを開け、
2695 中にあった現
2696 金500万円とR銀行の私名義のキャッシュカード1枚を男に示した。
2697
2698 男は、
2699 その現金とキ
2700 ャッシュカードを奪って作業着上衣のポケットに入れると、
2701 私を床にうつ伏せに押さえ付け、
2702
2703 私の両手首と両足首をロープで縛った。
2704
2705 そして、
2706 男が『キャッシュカードの暗証番号を教え
2707 ろ。
2708
2709 』と言ってきたので、
2710 私は、
2711 4桁の暗証番号を教えた。
2712
2713 すると、
2714 男はその場から立ち去っ
2715 た。
2716
2717 私は、
2718 両手両足を必死に動かし、
2719 ロープを緩めて手足を抜いたが、
2720 その際、
2721 両手首を怪
2722 我してしまった。
2723
2724 その後、
2725 110番通報した上で、
2726 R銀行に電話をかけ、
2727 キャッシュカード
2728 の利用を停止した。
2729
2730 犯人の男が家にいた時間は約10分間だった。
2731
2732
2733
2734
2735
2736 ロープに関する捜査報告書(証拠A)
2737 「Vの110番通報を受け、
2738 3月9日午後1時40分頃にV方に臨場した警察官らは、
2739 Vの
2740 両手首及び両足首を縛っていたものとして、
2741 Vから水色のロープ2本の提出を受けたことか
2742 ら、
2743 これを領置した。
2744
2745
2746
2747
2748
2749 I市立病院医師作成の診断書(証拠B)
2750 「Vが3月9日、
2751 同病院を受診し、
2752 同日から約10日間の加療を要する両手関節部擦過傷と
2753 診断された。
2754
2755
2756
2757
2758
2759 Qマンション防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠C)
2760 「警察官らがV方付近の防犯カメラを検索したところ、
2761 V方から北方約50メートルに位置
2762 するQマンション入口に防犯カメラが設置されていることが判明した。
2763
2764 同防犯カメラ画像を
2765
2766 精査した結果、
2767 3月9日午後0時56分、
2768 同マンション前路上に、
2769 車両番号『あ
2770
2771 8910』
2772
2773 の黒色ワンボックスカーが止まり、
2774 同日午後0時58分、
2775 同車両助手席から男(茶色の作業
2776 着上下、
2777 帽子を着用)が降り、
2778 南方に歩いていく状況と、
2779 同日午後1時11分、
2780 南方から同
2781 男と思われる男が走ってきて同車両助手席に乗り込み、
2782 同車両が発進する状況が記録されて
2783 いた。
2784
2785
2786
2787
2788 車両検索に関する捜査報告書(証拠D)
2789 「車両番号『あ
2790
2791 8910』について検索をかけたところ、
2792 同車両番号での黒色ワンボック
2793
2794 スカーの該当は1台のみであることが確認され、
2795 その使用者はBであることが判明した。
2796
2797
2798
2799
2800 V名義のキャッシュカード利用状況に関する捜査関係事項照会回答書(証拠E)
2801 「R銀行S支店に開設されたV名義の普通預金口座(口座番号1234567)に係るキャ
2802 ッシュカードについては、
2803 3月9日午後1時35分頃、
2804 Vの申入れにより利用停止の手続が
2805 執られた。
2806
2807 同日午後1時40分、
2808 UコンビニエンスストアT店に設置されたATMに同キャ
2809 ッシュカードが挿入され、
2810 出金の操作が行われたが、
2811 未遂に終わっている。
2812
2813
2814
2815
2816
2817 UコンビニエンスストアT店防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠F)
2818 「UコンビニエンスストアT店の駐車場及び店内に設置された防犯カメラ画像を精査した結
2819 果、
2820 3月9日午後1時38分、
2821 黒色ワンボックスカーが駐車場に止まり、
2822 運転席から、
2823 黒色
2824 の上衣、
2825 青色のズボンを着用した男(以下『甲』という。
2826
2827 )、
2828 助手席から、
2829 茶色の作業着上下
2830 を着用した男(以下『乙』という。
2831
2832 )がそれぞれ降り、
2833 入店する様子が記録されていた。
2834
2835 また、
2836
2837 入店後、
2838 甲が、
2839 同日午後1時39分から同日午後1時41分までの間、
2840 ATM前に立ってい
2841 る様子、
2842 乙が、
2843 清涼飲料水コーナーでペットボトル1本を手に取り、
2844 同日午後1時41分、
2845
2846 店員にカードを手渡して購入手続を行う様子が、
2847 記録されていた。
2848
2849
2850
2851
2852
2853 商品購入状況に関する捜査報告書(証拠G)
2854 「UコンビニエンスストアT店店長からの聴取により、
2855 3月9日午後1時41分、
2856 同店にお
2857 いて、
2858 清涼飲料水1本が購入されたこと、
2859 その購入に際しては、
2860 交通系ICカードが用いら
2861 れたことが判明し、
2862 同カードの名義人を照会した結果、
2863 Bであることが確認された。
2864
2865
2866
2867
2868
2869 B方及びB使用車両の捜索差押調書(証拠H)
2870 「3月10日午前7時から同日午前7時45分までの間、
2871 B方及びB使用車両の捜索を実施
2872 し、
2873 B方において、
2874 現金200万円、
2875 茶色の作業着上下1着、
2876 茶色の帽子1個、
2877 水色物干し
2878 ロープ1巻及び携帯電話機1台を発見したので、
2879 これらを差し押さえた。
2880
2881
2882
2883
2884
2885 Bの警察官面前の供述録取書(3月12日付け)(証拠I)
2886 「3月1日の夜、
2887 Aから電話で、
2888 『家に金をためているばあさんがいるらしい。
2889
2890 一緒にその
2891 金を奪わないか。
2892
2893 』と誘われ、
2894 金に困っていたので承諾した。
2895
2896 それから何回か、
2897 Aと共に私の
2898 車でV方付近に行き、
2899 V方の様子を観察したところ、
2900 Vが1人暮らしで、
2901 昼前後はV方にい
2902 ることが分かったので、
2903 昼過ぎ頃にV方に押し入ることにした。
2904
2905 その後、
2906 Aと話し合い、
2907
2908 が宅配業者を装ってV方に入り、
2909 刃物でVを脅して現金とキャッシュカードを奪うこと、
2910
2911 の際にVから暗証番号を聞き出すこと、
2912 発覚を遅らせるためにVを縛ること、
2913 その間Aが見
2914 張りをすることを決めた。
2915
2916 Aから、
2917 宅配業者のような服とVを縛る道具を用意するように言
2918 われたので、
2919 茶色の作業着上下と帽子を購入した。
2920
2921 Vを縛るためには、
2922 家にあった物干しロ
2923 ープを使うことにした。
2924
2925 3月9日午後0時過ぎ頃、
2926 購入した作業着を着て、
2927 私の車でA方に
2928 行き、
2929 その後、
2930 Aに運転を替わってV方に向かった。
2931
2932 Aは、
2933 V方付近のマンション前に車を
2934 止めると、
2935 『親父のだから、
2936 落としたりするなよ。
2937
2938 』と言いながら、
2939 私にナイフを渡してきた。
2940
2941
2942 そのナイフを受け取って作業着上衣のポケットに入れ、
2943 帽子をかぶり、
2944 軍手をはめて車から
2945 降りた。
2946
2947 その後は計画どおりに実行し、
2948 V方のたんすの引き出し内にあった現金の束とキャ
2949 ッシュカード1枚を奪い、
2950 暗証番号を聞き出した。
2951
2952 V方を出た後は、
2953 Aが待つ車の助手席に
2954 乗り込み、
2955 Aが車を発進させた。
2956
2957 Aは、
2958 しばらくの間車を走らせていたが、
2959 30分ほど経っ
2960
2961 た頃、
2962 Uコンビニエンスストアの駐車場に車を止め、
2963 『カードで金を下ろしてくる。
2964
2965 』と言っ
2966 てきた。
2967
2968 そこで、
2969 私は、
2970 Vから奪ったキャッシュカード1枚をAに渡して暗証番号を伝え、
2971
2972 Aにナイフを返した。
2973
2974 Aが車から降り、
2975 私も飲み物でも買おうと思って車から降りた。
2976
2977 店内
2978 では、
2979 私名義の交通系ICカードを使ってスポーツドリンク1本を買った。
2980
2981 それから、
2982 Aと
2983 2人で車に戻ったが、
2984 この時Aが不機嫌そうに、
2985 『もう使えなかった。
2986
2987 』と言っていたので、
2988
2989 キャッシュカードが利用停止になっており、
2990 出金できなかったことが分かった。
2991
2992 その後、
2993
2994 方に行き、
2995 Vから奪った現金500万円を2人で分けた。
2996
2997 取り分は、
2998 Aが300万円で私が
2999 200万円だった。
3000
3001 実行したのは私だったので分け前に少し不満はあったが、
3002 地元の先輩で
3003 あるAには昔から面倒を見てもらっていて、
3004 私が学校でいじめられていたときに助けてもら
3005 ったり、
3006 金に困っていたときに金を貸してもらったりしていたので仕方ないと思った。
3007
3008
3009
3010
3011 B使用の携帯電話機の精査に関する捜査報告書(証拠J)
3012 「B使用の携帯電話機を精査したところ、
3013 メッセージアプリがインストールされ、
3014 同アプリ
3015 に『A』なる者が登録されていること、
3016 『A』とBとの間で通話やメッセージが頻繁に交わさ
3017 れており、
3018 3月1日午後8時32分にも『A』からの着信があり、
3019 約14分間の通話があっ
3020 たことが判明した。
3021
3022
3023
3024
3025
3026 A方の捜索差押調書(証拠K)
3027 「3月10日午後3時から同日午後3時45分までの間、
3028 A方の捜索を実施し、
3029 Aが使用
3030 する部屋において、
3031 R銀行発行に係るV名義のキャッシュカード1枚(口座番号12345
3032 67)及びサバイバルナイフ1本を発見したので、
3033 これらを差し押さえた。
3034
3035
3036
3037
3038
3039 A父の警察官面前の供述録取書(証拠L)
3040 「私は、
3041 妻、
3042 息子のAと3人で自宅に住んでいる。
3043
3044 警察官から、
3045 サバイバルナイフを所持
3046 しているかと尋ねられたが、
3047 1本持っている。
3048
3049 特注品であり、
3050 柄には私の名前が入っている。
3051
3052
3053 本日、
3054 Aの部屋から発見されたというサバイバルナイフ1本を見せてもらったが、
3055 柄に入っ
3056 た名前などから私のものに間違いない。
3057
3058 3月7日にもそのナイフを持って釣りに行った。
3059
3060
3061 のことは知っているが、
3062 ここ数年は会ったことがなく、
3063 そのナイフを貸したこともない。
3064
3065
3066
3067
3068
3069 指紋対照結果に関する捜査報告書(証拠M)
3070 「証拠K記載のサバイバルナイフ1本から採取した指紋のうち、
3071 柄から採取した指紋2個
3072 が、
3073 それぞれBの右手拇指及び右手中指の指紋と一致した。
3074
3075
3076
3077
3078
3079 Qマンション防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠N)
3080 「3月1日以降の防犯カメラ画像を新たに入手して精査した結果、
3081 同月3日から同月5日ま
3082 での各日午前8時頃から午後6時頃までの間、
3083 車両番号『あ
3084
3085 8910』の黒色ワンボック
3086
3087 スカーがQマンション前路上に止められ、
3088 同車両を男2名が出入りする様子が記録されてい
3089 た。
3090
3091
3092
3093
3094 Aの債務に関する捜査報告書(証拠O)
3095 「消費者金融各社に対する照会の結果、
3096 本件犯行日である3月9日時点で、
3097 Aが消費者金融
3098 Y社に対して105万円、
3099 消費者金融Z社に対して220万円の債務を負っていたこと、
3100
3101 社に対する債務につき、
3102 3月10日午前9時32分に100万円が返済され、
3103 Z社に対する
3104 債務につき、
3105 同日午前9時34分に200万円が返済されていることがそれぞれ判明した。
3106
3107
3108
3109
3110
3111 Bの検察官面前の供述録取書(3月26日付け)(証拠P)
3112 証拠Iと同旨の供述に加え、
3113 「事件の翌朝、
3114 警察官が家に来たとき、
3115 初めはしらを切ろうか
3116 と思ったが、
3117 嘘を言っても通用しないだろうと思い、
3118 最初から全部本当のことを話すことに
3119 した。
3120
3121 Vに怖い思いをさせて申し訳ない。
3122
3123 」旨の供述が録取されている。
3124
3125 なお、
3126 Bは、
3127 取調べ
3128 に対し、
3129 一貫して本件犯行を認め、
3130 証拠Iと同旨の供述をしていた。
3131
3132
3133
3134
3135
3136 受訴裁判所は、
3137 4月2日、
3138 本件被告事件を公判前整理手続に付する決定をした。
3139
3140
3141
3142 検察官は、
3143 同月14日、
3144 本件被告事件について、
3145 犯行に至る経緯、
3146 犯行状況等をB供述に沿
3147 って時系列で記載した証明予定事実記載書を裁判所に提出するとともに、
3148 証拠の取調べを裁判所
3149 に請求し、
3150 当該証拠を弁護人に開示した。
3151
3152
3153 その後、
3154 所定の手続を経て、
3155 弁護人は、
3156 「AがBと共謀した事実はなく、
3157 Aは無罪である。
3158
3159
3160 旨の予定主張記載書を裁判所に提出し、
3161 検察官請求証拠に対する意見を述べた。
3162
3163 これを受け、
3164
3165 裁判所は、
3166 検察官に対し、
3167 どのような事実と証拠に基づいてAB間の共謀を立証するのか、
3168
3169 その主張と証拠の構造が分かるような証明予定事実記載書を追加で提出するように求めた。
3170
3171
3172 その後、
3173 検察官による追加の証明予定事実記載書の提出、
3174 Bの証人尋問請求等の所定の手続
3175 が行われ、
3176 9月21日、
3177 裁判所は、
3178 争点を整理し、
3179 検察官が請求したBを証人として尋問する
3180 旨の決定をするなどした上、
3181 審理計画を策定し、
3182 公判前整理手続を終了した。
3183
3184 裁判所が策定し
3185 た審理計画は、
3186 第1回公判期日に冒頭手続、
3187 検察官請求証拠のうち証拠書類等の取調べ、
3188 第2
3189 回公判期日にBの証人尋問、
3190 第3回公判期日に被告人質問、
3191 第4回公判期日に論告、
3192 弁論等を
3193 行い、
3194 第5回公判期日に判決を言い渡すというものであった。
3195
3196
3197
3198
3199 検察官は、
3200 Aについて、
3201 起訴後の接見等禁止決定がなされていたものの、
3202 その終期が公判前整
3203 理手続の終了する日までとされていたことから、
3204 同日、
3205 接見等禁止の請求をし、
3206 裁判官は、
3207
3208 の終期を第1回公判期日が終了する日までとして接見等禁止決定をした。
3209
3210
3211 第1回公判期日において、
3212 冒頭手続、
3213 検察官請求証拠のうち証拠書類等の取調べが行われた。
3214
3215
3216 検察官は、
3217 同期日終了後、
3218 裁判所に対し、
3219 接見等禁止の請求をし、
3220 裁判所は、
3221 その終期を第2回
3222 公判期日が終了する日までとして接見等禁止決定をした。
3223
3224
3225 その後、
3226 第2回公判期日において、
3227 Bの証人尋問が行われ、
3228 Bは、
3229 証拠Pと同旨の証言をし
3230 た。
3231
3232 検察官は、
3233 同期日終了後、
3234 接見等禁止の請求をしなかった。
3235
3236
3237
3238 〔設問1〕
3239 下線部に関し、
3240 検察官は、
3241 Aが本件被告事件に関与した状況についてのB供述の信用性が認め
3242 られ、
3243 同供述の内容等を踏まえればAに共謀共同正犯が成立すると判断したものであるところ、
3244
3245 以下の各問いに答えなさい。
3246
3247 なお、
3248 証拠@からH及び証拠JからOに記載された内容については、
3249
3250 信用性が認められることを前提とする。
3251
3252
3253
3254
3255 B供述のうち本件被告事件に関与したのはAであるとする供述部分の信用性が認められると判断
3256 した検察官の思考過程について、
3257 具体的事実を指摘しつつ答えなさい。
3258
3259
3260
3261
3262
3263 Aに共謀共同正犯が成立すると判断した検察官の思考過程について、
3264 具体的事実を指摘しつつ答
3265 えなさい。
3266
3267
3268
3269 〔設問2〕
3270 下線部に関し、
3271 裁判所が検察官に対し、
3272 追加の証明予定事実記載書の提出を求めた理由を、
3273
3274 判前整理手続の制度趣旨に言及しつつ答えなさい。
3275
3276
3277 〔設問3〕
3278 下線部及びに関し、
3279 検察官は、
3280 下線部では接見等禁止の請求をしたのに、
3281 下線部ではこ
3282 れをしていないが、
3283 検察官がこのように異なる対応を採った理由を、
3284 具体的事実を指摘しつつ答
3285 えなさい。
3286
3287
3288 〔設問4〕
3289 仮に、
3290 第2回公判期日に実施されたBの証人尋問の主尋問において、
3291 Bが「今回の事件は、
3292 全て
3293 Aに言われたとおりにやった。
3294
3295 当日私が着ていた作業着やロープもAが用意したものだ。
3296
3297 」旨証言
3298 した後、
3299 反対尋問において、
3300 弁護人がその点に関し捜査段階でどのような供述をしていたのかに
3301
3302 ついて尋問を尽くしても、
3303 「覚えていない。
3304
3305 」旨の証言に終始したとする。
3306
3307 この場合において、
3308
3309 護人は、
3310 Bの証人尋問終了後、
3311 「やむを得ない事由」(刑事訴訟法第316条の32第1項)があ
3312 り、
3313 かつ、
3314 証拠能力も認められるとして、
3315 証拠Iの取調べを請求した。
3316
3317 これに対し、
3318 検察官は、
3319
3320 「やむを得ない事由」があることは争わないとした上で、
3321 証拠意見として「異議なし」と述べた。
3322
3323
3324
3325
3326 弁護人が証拠Iの取調べを請求した思考過程について、
3327 「やむを得ない事由」があり、
3328 かつ、
3329
3330 拠能力も認められると考えた理由にも言及しつつ答えなさい。
3331
3332
3333
3334
3335
3336 検察官が証拠意見として「同意」ではなく「異議なし」と述べた理由を答えなさい。
3337
3338
3339
3340 (出題の趣旨)
3341 本問は、
3342 共謀共同正犯の成否が争点となる住居侵入、
3343 強盗致傷事件を題材に、
3344
3345 事手続の基本的知識、
3346 刑事事実認定の基本構造及び基礎的刑事実務能力を試すもの
3347 である。
3348
3349
3350 設問1は、
3351 共犯者供述のうち被疑者が犯人であるとする供述部分の信用性が認め
3352 られると判断した検察官の思考過程と、
3353 共謀共同正犯が成立すると判断した検察官
3354 の思考過程を、
3355 それぞれ具体的な事実関係を踏まえて検討することを通じて、
3356 供述
3357 の信用性判断及び共謀共同正犯についての基本的理解を示すことが求められる。
3358
3359
3360 設問2は、
3361 事例に現れた、
3362 公判前整理手続における裁判所及び当事者のやり取り
3363 を踏まえ、
3364 裁判所が検察官に追加証明予定事実記載書の提出を求めた理由を検討す
3365 ることを通じて、
3366 公判前整理手続の意義や機能に対する基本的理解を示すことが求
3367 められる。
3368
3369
3370 設問3は、
3371 公判前整理手続に付された事件の起訴後の接見等禁止請求を巡る検察
3372 官の対応に、
3373 手続の進展に伴い差が生じている理由を検討することを通じて、
3374 接見
3375 等禁止における罪証隠滅のおそれについての理解を正確に示すことが求められる。
3376
3377
3378 設問4は、
3379 弁護人が共犯者の証人尋問後に、
3380 その捜査段階における供述録取書の
3381 取調べを請求した思考過程と、
3382 同請求に対する検察官の証拠意見の理由を検討する
3383 ことを通じて、
3384 刑事訴訟法第316条の32第1項の「やむを得ない事由」につい
3385 ての基本的理解を示すとともに、
3386 弾劾証拠についての理解を正確に示すことが求め
3387 られる。
3388
3389
3390
3391 [倒
3392
3393
3394
3395 法]
3396
3397 次の文章を読んで、
3398 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
3399
3400
3401 【事例】
3402 A株式会社(以下「A社」という。
3403
3404 )は、
3405 自動車部品の製造及び販売を業とする株式会社である。
3406
3407
3408 A社は、
3409 順調な業績を維持していたが、
3410 令和2年度に初めて赤字決算となったことから、
3411 自己所有
3412 の甲土地をB株式会社(以下「B社」という。
3413
3414 )に売却することとし、
3415 令和3年9月15日、
3416 B社と
3417 の間で、
3418 売買代金を取引相当額である5000万円とする売買契約を締結した。
3419
3420 A社は、
3421 同日、
3422
3423 社から売買代金の支払を受けるのと引換えに、
3424 B社に対し、
3425 甲土地を引き渡すとともに、
3426 所有権移
3427 転登記手続の申請に必要な書類を交付したが、
3428 その際、
3429 甲土地を買い戻す意思があり、
3430 近く買戻資
3431 金の手当ができる見込みなので、
3432 所有権移転の登記申請の実行を半年程度待ってほしいと要請した。
3433
3434
3435 B社はこの要請に応じたが、
3436 実際は、
3437 A社において買戻資金を調達する予定はなく、
3438 むしろ、
3439 他の
3440 取引先から信用供与を得る可能性を残すために、
3441 甲土地の所有名義をA社のままにしておくことが
3442 目的であった。
3443
3444
3445 しかしながら、
3446 令和3年10月以降、
3447 A社の売上げの半分以上を占めていたC株式会社(以下「C
3448 社」という。
3449
3450 )からの売掛金の支払が滞るようになり、
3451 同年12月5日にC社が破産手続開始の申立
3452 てをしてC社からの売掛金の支払が完全に途絶えたため、
3453 A社は、
3454 資金繰りに窮することとなった。
3455
3456
3457 そこで、
3458 A社は、
3459 メインバンクを含む金融機関に緊急の融資を求めたものの、
3460 十分な額の融資を受
3461 けることができなかったことから、
3462 令和4年1月25日を支払期限とするD株式会社に対する買掛
3463 金の支払を遅滞するに至ったほか、
3464 同月31日を支払期限とするメインバンクに対する借入金の分
3465 割弁済もできなかった。
3466
3467
3468 その後、
3469 A社は、
3470 令和4年2月20日、
3471 代理人弁護士Eの名義で、
3472 取引先や取引金融機関に対し、
3473
3474 A社は近日中にEを申立代理人として破産手続開始の申立てを行う予定であり、
3475 債務の支払につい
3476 てもそれまでの間停止する旨の通知(以下「本件通知」という。
3477
3478 )を発した。
3479
3480 さらに、
3481 A社は、
3482
3483 年3月6日、
3484 F地方裁判所に対し、
3485 破産手続開始の申立てを行ったところ、
3486 F地方裁判所は、
3487 翌7
3488 日、
3489 破産手続開始決定を発し、
3490 併せて弁護士Gを破産管財人に選任した。
3491
3492
3493
3494 〔設問1〕(とは、
3495 独立した問題である。
3496
3497
3498
3499
3500 B社は、
3501 令和4年2月21日に本件通知を受け取ったため、
3502 登記手続に必要な印鑑証明書を改
3503 めてA社から取得して、
3504 同年3月1日、
3505 甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。
3506
3507
3508 この登記手続を申請する行為につき、
3509 破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、
3510
3511 論じなさい。
3512
3513
3514
3515
3516
3517 B社は、
3518 令和4年2月3日、
3519 A社において取引先に対する買掛金の支払やメインバンクに対す
3520 る借入金の返済が滞っているとの情報に接したことから、
3521 登記手続に必要な印鑑証明書を改めて
3522 A社から取得して、
3523 同月12日、
3524 甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。
3525
3526 この登
3527 記手続を申請する行為につき、
3528 破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、
3529 反対
3530 の結論を採る立場にも言及しつつ、
3531 論じなさい。
3532
3533
3534
3535 〔設問2〕
3536 仮に、
3537
3538 〔設問1〕において、
3539 甲土地の所有権移転登記手続を申請する行為が否認された場合、
3540
3541 社と破産管財人Gとの間の法律関係はどのようになるか、
3542 論じなさい。
3543
3544 また、
3545 甲土地の売買契約に
3546 係る代金額が1000万円であり、
3547 廉価売却であるとして甲土地の売買契約自体が否認された場合
3548
3549 のB社と破産管財人Gとの間の法律関係についても、
3550 説明しなさい。
3551
3552
3553
3554 (出題の趣旨)
3555 設問1は、
3556 危機時期より前に締結された不動産の売買契約に基づいて所有権移転登
3557 記手続がされた事例を題材に、
3558 対抗要件具備行為の否認の可否についての検討を求め
3559 るものである。
3560
3561 まず、
3562 小問については、
3563 事例によれば、
3564 破産法第164条第1項が
3565 適用されることに異論はないものと考えられることから、
3566 同項の定める要件を摘示し
3567 て当てはめを行い、
3568 結論として否認権の行使が認められることを淡々と論ずることが
3569 求められる。
3570
3571 次に、
3572 小問については、
3573 所有権移転登記手続の申請行為が「支払の停
3574 止等」に至る前にされたものであることから、
3575 同項の要件は満たさないことを前提に、
3576
3577 事例に照らし、
3578 同法第160条第1項第1号に基づく否認権の行使の可否についての
3579 検討が求められる。
3580
3581 この点に関しては、
3582 同法第164条の制度趣旨のほか、
3583 対抗要件
3584 具備行為の性質論との関係で様々な考え方を採り得るところであるが、
3585 解答に当たっ
3586 ては、
3587 反対の結論を採る立場に言及しつつ、
3588 自らの考え方に基づいて論理的かつ一貫
3589 性のある解釈を示した上、
3590 事例に即した当てはめをして結論を導くことが求められる。
3591
3592
3593 設問2は、
3594 対抗要件具備行為が否認された場合と売買契約自体が否認された場合の
3595 それぞれについて、
3596 否認の効果に関する説明を求めるものである。
3597
3598 解答に当たっては、
3599
3600 登記又はその原因となる行為が否認されたことによって登記に関する法律関係はど
3601 うなるのか、
3602 土地所有権の帰属に関する法律関係はどうなるのか、
3603 支払済みの売買代
3604 金に関する法律関係はどうなるのかという問題に整理した上、
3605 関連する条文を摘示し
3606 て説明することが求められる。
3607
3608 その際、
3609 対抗要件具備行為が否認された場合の所有権
3610 移転登記手続請求権や、
3611 売買契約が否認された場合の売買代金返還請求権が、
3612 破産手
3613 続においてどのように取り扱われるかについても言及する必要があろう。
3614
3615
3616
3617 [租
3618
3619
3620
3621 法]
3622
3623 Aは、
3624 宅地建物取引士の資格を持ち、
3625 宅地建物取引業の免許を得て、
3626 平成10年4月から同30
3627 年12月まで、
3628 個人で不動産業を営んでいた。
3629
3630 Aは、
3631 その就業規則に基づいて、
3632 不動産の販売業務
3633 に従事する使用人(以下「営業社員」という。
3634
3635 )に対して、
3636 通常の給与とは別に、
3637 営業社員がA所有
3638 の不動産を顧客に販売した場合に、
3639 その契約高に比例した金額の金員を「契約報奨金」という名目
3640 で支給していた。
3641
3642 営業社員が営業活動のために交通費や交際費を支出した場合、
3643 Aがその金額を補
3644 填していた。
3645
3646 しかし、
3647 補填には年ごとに上限額があり、
3648 営業社員がその上限額を超えた支出をして
3649 差額を自己負担することも珍しくなかった。
3650
3651
3652 Aの営業社員の一人であるBは、
3653 宅地建物取引士の資格を持っている。
3654
3655 Bは、
3656 平成25年、
3657 通常
3658 の給与として800万円、
3659 契約報奨金として1000万円をAから受け取った。
3660
3661 同年にBが営業活
3662 動のために支出した交通費及び交際費の合計額は70万円であり、
3663 そのうちAから補填を受けた金
3664 額は60万円であった。
3665
3666
3667 Aは、
3668 宅地建物取引士としての知識や、
3669 不動産業を営んできた経験に基づいて、
3670 平成26年3月
3671 に、
3672 不動産取引に関する書籍を株式会社Cから出版した。
3673
3674 Aは、
3675 同年9月に、
3676 同書に係る印税収入
3677 として30万円を得た。
3678
3679
3680 Aは、
3681 販売用に所有していた甲土地の譲渡に関して、
3682 平成28年4月から個人Dと交渉を始めた。
3683
3684
3685 平成29年11月30日に、
3686 Aが甲土地を5000万円の対価によりDに譲渡する旨の契約が締結
3687 され、
3688 同日、
3689 売買契約を原因とするDへの移転登記を経由した。
3690
3691 しかし、
3692 当時Dの資力に一時的に
3693 制限があったため、
3694 実際にDのAへの5000万円の代金支払が完了したのは、
3695 平成30年1月1
3696 0日であった。
3697
3698
3699 Aは、
3700 平成25年から同30年まで、
3701 E証券会社にA名義の口座を設けて、
3702 外国為替証拠金取引
3703 (外国通貨の売買を、
3704 一定の証拠金を担保にして、
3705 その証拠金の何十倍もの金額で行う取引。
3706
3707 以下
3708 「FX取引」という。
3709
3710 )を行っていた。
3711
3712 Aは、
3713 この期間中に、
3714 年200回から300回のFX取引を
3715 行い、
3716 平成25年には50万円余の利益を得たが、
3717 平成26年から同30年までは年100万円か
3718 ら300万円の損失を生じていた。
3719
3720 Aは、
3721 FX取引を、
3722 主に不動産業の事務所のパソコンを用いて
3723 インターネット経由で行っており、
3724 他にFX取引のための設備等はなかった。
3725
3726 また、
3727 Aは、
3728 FX取
3729 引のための知識を、
3730 主にインターネットや雑誌により得ていた。
3731
3732
3733 Aは、
3734 平成31年1月に、
3735 Aの不動産業を法人化して株式会社F(以下「F社」という。
3736
3737 )を設立
3738 し、
3739 その代表取締役となった。
3740
3741
3742 F社は、
3743 令和元年6月から令和3年2月までの間に、
3744 人気上昇中の避暑地にある土地8区画を購
3745 入し、
3746 同年4月、
3747 別荘用地として売り出した。
3748
3749 売出しに当たり、
3750 F社は、
3751 分譲地内に水道施設を完
3752 備する旨を広告用サイトに記載し、
3753 購入希望者を現地に案内した際にも営業担当者が同様の説明を
3754 行っていた。
3755
3756 F社は、
3757 土地の販売活動と並行して、
3758 地元の建設工事会社G(以下「G社」という。
3759
3760
3761 に対し、
3762 水源の確保と水道工事の見積もりを依頼した。
3763
3764 令和3年5月、
3765 G社は、
3766 8区画分の水道工
3767 事代金を合計7550万円と見積もり(以下、
3768 当該金額を「本件工事見積額」という。
3769
3770 )、
3771 F社にそ
3772 の旨連絡したが、
3773 水源の地主らとの折衝は難航していた。
3774
3775 F社はG社に対し、
3776 地主との折衝を急ぐ
3777 よう求めるとともに、
3778 水源が確保できた区画から順次、
3779 G社の見積額で水道工事を発注すると伝え
3780 た。
3781
3782 上記土地の売れ行きは順調で、
3783 F社は、
3784 令和3年11月までに8区画の全てを販売し、
3785 令和3
3786 年12月までに各購入者への所有権移転登記を済ませ、
3787 売買代金全額を受領した。
3788
3789 しかし、
3790 令和3
3791 年末までにF社がG社に水道工事を発注したのは2区画にとどまり、
3792 残り6区画は水源確保に至ら
3793 ず、
3794 工事の着工見込みは立っていなかった。
3795
3796 なお、
3797 F社は、
3798 各購入者との間で、
3799 水道工事の完成時
3800 期について具体的な取決めはしていなかった。
3801
3802
3803 その後、
3804 G社は、
3805 地元有力者の助力を得て、
3806 残り6区画についても水源を確保するに至り、
3807 F社
3808
3809 は、
3810 令和4年3月、
3811 G社に上記6区画の水道工事を発注した。
3812
3813 同年4月から9月にかけて8区画の
3814 水道工事が順次完成し、
3815 F社は、
3816 同年5月から10月までの間に、
3817 完成した区画の工事代金を順次
3818 支払った。
3819
3820 F社が支払った工事代金の合計は、
3821 本件工事見積額と同額であった。
3822
3823
3824 以上の事案について、
3825 以下の設問に答えなさい。
3826
3827 ただし、
3828 租税特別措置法の適用は考えなくてよ
3829 い。
3830
3831 なお、
3832 F社及びG社は、
3833 毎年1月1日から12月31日までの期間を事業年度としている。
3834
3835
3836 〔設問〕
3837
3838
3839 Bが平成25年にAから受け取った契約報奨金に係る所得は、
3840 所得税法上、
3841 いずれの所得に分類
3842 されるか、
3843 説明しなさい。
3844
3845
3846
3847
3848
3849 Aが平成26年に得た印税収入に係る所得は、
3850 所得税法上、
3851 いずれの所得に分類されるか、
3852 説明
3853 しなさい。
3854
3855
3856
3857
3858
3859 Aが甲土地の譲渡の対価としてDから受け取った金員に係る所得は、
3860 Aの所得税の金額の計算上
3861 いつの年分の所得となるか、
3862 また、
3863 いずれの所得に分類されるか、
3864 説明しなさい。
3865
3866
3867
3868
3869
3870 FX取引により平成26年から同30年までにAに生じた損失は、
3871 Aの所得税の金額の計算上ど
3872 のように扱われるか、
3873 説明しなさい。
3874
3875
3876
3877
3878
3879 本件工事見積額は、
3880 F社の令和3年12月期の所得の金額の計算上、
3881 損金の額に算入することが
3882 できるか。
3883
3884 根拠規定とその趣旨に触れつつ説明しなさい。
3885
3886
3887
3888 (参照条文)
3889
3890 所得税法施行令
3891
3892 (事業の範囲)
3893 第63条
3894 法第27条第1項(事業所得)に規定する政令で定める事業は、
3895 次に掲げる事業(不動産の貸付
3896 業又は船舶若しくは航空機の貸付業に該当するものを除く。
3897
3898 )とする。
3899
3900
3901
3902
3903 農業
3904
3905
3906
3907 林業及び狩猟業
3908
3909
3910
3911 漁業及び水産養殖業
3912
3913
3914
3915 鉱業(土石採取業を含む。
3916
3917
3918
3919
3920
3921 建設業
3922
3923
3924
3925 製造業
3926
3927
3928
3929 卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。
3930
3931
3932
3933
3934
3935 金融業及び保険業
3936
3937
3938
3939 不動産業
3940
3941
3942
3943 運輸通信業(倉庫業を含む。
3944
3945
3946
3947 十一
3948
3949 医療保健業、
3950 著述業その他のサービス業
3951
3952 十二
3953
3954 前各号に掲げるもののほか、
3955 対価を得て継続的に行なう事業
3956
3957 (出題の趣旨)
3958 本問は、
3959 給与所得と事業所得との区別(設問1)、
3960 事業に関連する収入の所得分類
3961 (設問2)、
3962 収入金額の計上時期(設問3)、
3963 雑所得に係る損失の損益通算利用制限(設
3964 問4)、
3965 法人税法第22条3項1号と2号との違い(設問5)について問うものであ
3966 る。
3967
3968
3969 設問1は、
3970 司法試験受験を目指す者に勉強しておいてほしい弁護士顧問料事件・最
3971 判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁や九州電力検針員事件・福岡地判昭
3972 和62年7月21日訟月34巻1号187頁、
3973 福岡高判昭和63年11月22日税資
3974 166号505頁における、
3975 給与所得と事業所得の区別の基準を問うている。
3976
3977 契約報
3978
3979 奨金が成果報酬的である点は事業所得であることを思わせる一方、
3980 元々営業社員は基
3981 本給的な通常の給与を受け取っている点で従属性がうかがわれ、
3982 交通費が検針員の自
3983 己負担であった九州電力検針員事件とは異なり本問では交通費・交際費等をAが補填
3984 しBのリスク負担が限定的である点も給与所得であることを思わせる。
3985
3986 補填には上限
3987 がありBの負担となる部分もあった点を勘案しても給与所得であるという判断を覆
3988 すことは難しいであろう。
3989
3990
3991 設問2は、
3992 印税収入だから雑所得であるという結論に飛び付かずに、
3993 所得税法第2
3994 7条の事業所得の基因となる事業と関連性がある業務による収入であるか否かを論
3995 じさせようとしている。
3996
3997
3998 設問3は、
3999 所得税法は原則として現金主義を許してはおらず(所得税法第67条の
4000 ように限定的である)、
4001 雑所得貸倒分不当利得返還請求事件・最判昭和49年3月8
4002 日民集28巻2号186頁における権利確定主義を原則としていることを確認させ
4003 ようとしている。
4004
4005 司法試験の半分(90分)よりも解答時間が限られている(75分)
4006 ことに鑑み、
4007 権利確定の判定の要素の論述にあまり時間を割かなくて済むような設定
4008 にした。
4009
4010 また、
4011 設問3は所得分類も問うている。
4012
4013 これは所得税法第33条2項1号の
4014 理解を問うものである。
4015
4016
4017 設問4は、
4018 FX取引による収入の所得分類と、
4019 損失の損益通算利用の可否について
4020 問うている。
4021
4022 類例として会社取締役商品先物取引事件・名古屋地判昭和60年4月2
4023 6日行集36巻4号589頁がある。
4024
4025 所得税法第27条の事業所得該当性は、
4026 本問の
4027 ような状況では、
4028 所得税法施行令第63条12号の「対価を得て継続的に行なう事業」
4029 該当性として論じられる。
4030
4031 AのしたFX取引が社会通念上事業といえるかどうかを判
4032 定してもらう。
4033
4034 結論は消極であろう。
4035
4036 事業所得でなければ、
4037 次に、
4038 所得税法第34条
4039 の一時所得か第35条の雑所得かが問題となる。
4040
4041 所得税法第34条1項の「営利を目
4042 的とする継続的行為から生じた所得以外」該当性が問題となる。
4043
4044 本問では営利を目的
4045 とする継続的行為であるといえよう。
4046
4047 よって雑所得となる。
4048
4049 雑所得に係る損失は、
4050
4051 得税法第69条1項の損益通算に利用できる損失として掲げられていないというこ
4052 とを論じてもらう。
4053
4054
4055 設問5は、
4056 法人税法第22条3項1号の「原価」の意義と、
4057 計上時期について問
4058 うている。
4059
4060 同項2号では債務確定基準が明記されている一方で、
4061 1号に債務確定基
4062 準はない。
4063
4064 その趣旨は、
4065 1号が「収益に係る」と規定し費用収益対応を重視してい
4066 るからであり、
4067 また、
4068 1号の費用については恣意性がないともいえる。
4069
4070 そして、
4071
4072 体的に原価を損金に計上できるかにつき、
4073 牛久市売上原価見積事件・最判平成16
4074 年10月29日刑集58巻7号697頁は、
4075 支出の確実性と、
4076 合理的見積もり可能
4077 性を要件として、
4078 見積もり計上を許すとしている。
4079
4080 本問でも、
4081 支出の確実性と合理
4082 的見積もり可能性について、
4083 論じてもらう。
4084
4085
4086
4087 [経
4088
4089
4090
4091 法]
4092
4093 X社とY社は、
4094 電子部品である甲(以下「甲」という。
4095
4096 )を製造販売する日本の会社である。
4097
4098 X社
4099 は、
4100 Y社から甲の製造販売事業の全てを譲り受けることを計画している(以下「本件計画」という。
4101
4102 )。
4103
4104
4105 甲は電子機器である乙(以下「乙」という。
4106
4107 )の部品であり、
4108 乙は日本を含む世界中で販売されて
4109 いる。
4110
4111 乙の部品として甲に代わるものはなく、
4112 また、
4113 乙の部品として用いる以外に甲の用途はない。
4114
4115
4116 乙には、
4117 据付け型(以下「据付け型乙」という。
4118
4119 )とモバイル型(以下「モバイル型乙」という。
4120
4121
4122 がある。
4123
4124 甲には、
4125 据付け型乙向けの大型のもの(以下「大型甲」という。
4126
4127 )と、
4128 モバイル型乙向けの
4129 小型のもの(以下「小型甲」という。
4130
4131 )がある。
4132
4133
4134 大型甲の代わりに小型甲を用いることはできないし、
4135 小型甲の代わりに大型甲を用いることもでき
4136 ない。
4137
4138 また、
4139 大型甲の製造設備を小型甲の製造設備に変更することはできないし、
4140 小型甲の製造設備
4141 を大型甲の製造設備に変更することもできない。
4142
4143 なお、
4144 甲の製造販売事業を新たに開始することは困
4145 難である。
4146
4147
4148 X社及びY社を含む甲の製造販売業者は世界中に向けて甲を販売できる体制を整えており、
4149 日本に
4150 所在するものを含む乙の製造販売業者は、
4151 必要な大型甲及び小型甲を、
4152 それぞれ世界中の甲の製造販
4153 売業者から購入している。
4154
4155 販売価格に占める輸送費や関税の割合は小さく、
4156 大型甲及び小型甲のいず
4157 れの取引においても、
4158 国ごとの価格差はない。
4159
4160
4161 全世界における大型甲の販売状況(販売額に基づく市場シェア)は、
4162 X社が50パーセント、
4163 Y社
4164 が40パーセント、
4165 A社が10パーセントである。
4166
4167 近年、
4168 据付け型乙の需要は減少傾向にあり、
4169 それ
4170 に伴い大型甲に対する需要も減少傾向にある。
4171
4172 大型甲の需要減少がY社の想定以上であることなどか
4173 ら、
4174 Y社の大型甲の製造販売部門は大幅な赤字が続いている。
4175
4176 今後、
4177 本件計画が実現しなければ、
4178
4179 い将来においてY社が大型甲の製造販売事業から撤退する蓋然性は高い。
4180
4181
4182 大型甲の需要減少に伴い、
4183 X社及びY社は、
4184 大型甲について十分な製造余力を有する。
4185
4186 これに対し
4187 て、
4188 A社は、
4189 大型甲の製造設備を縮小してきており、
4190 大型甲について製造余力を有しない。
4191
4192 なお、
4193
4194 社は、
4195 本件計画に先立ちY社からなされた、
4196 大型甲を含む甲の製造販売事業の全ての譲渡に関する申
4197 出を断ったという経緯がある。
4198
4199
4200 全世界における小型甲の販売状況(販売額に基づく市場シェア)は、
4201 A社が30パーセント、
4202 X社、
4203
4204 B社及びC社が各20パーセント、
4205 Y社が10パーセントである。
4206
4207 据付け型乙とは対照的に、
4208 近年、
4209
4210 モバイル型乙の需要は増加傾向にあり、
4211 それに伴い小型甲に対する需要も増加傾向にある。
4212
4213 モバイル
4214 型乙及び小型甲をめぐっては技術開発を含む活発な競争が行われており、
4215 小型甲の製品サイクルは短
4216 い。
4217
4218
4219 X社及びY社が小型甲について十分な製造余力を有しないのに対して、
4220 A社、
4221 B社及びC社は小型
4222 甲について十分な製造余力を有する。
4223
4224 モバイル型乙の製造販売業者は、
4225 小型甲の製造販売業者に対し
4226 て取引交渉上の地位が強く、
4227 さらに、
4228 低価格調達のために発注方法を工夫している。
4229
4230
4231 〔設問〕
4232 本件計画に基づいてX社がY社から甲の製造販売事業の全てを譲り受けることは、
4233 私的独占の禁
4234 止及び公正取引の確保に関する法律第16条第1項に違反するか検討しなさい。
4235
4236
4237 なお、
4238 Y社の当該事業は同社の事業の「重要部分」(同項第1号)に該当するものとする。
4239
4240
4241
4242 (出題の趣旨)
4243 本件計画の実行によって、
4244 「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること
4245 となる」(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」と
4246 いう。
4247
4248 )第16条第1項)かを、
4249 的確に論じることが求められる。
4250
4251
4252 まず「一定の取引分野」については、
4253 需要者にとっての代替性を基本として、
4254 供給
4255
4256 者にとっての代替性の観点も考慮しつつ、
4257 商品の範囲及び地理的範囲のそれぞれを画
4258 定することが必要となる。
4259
4260 特に地理的範囲については、
4261 国境を越えて地理的範囲が画
4262 定されることがないか、
4263 とりわけ世界市場が画定されるのではないかが問題となる。
4264
4265
4266 本件では、
4267 全世界における大型甲に係る一定の取引分野、
4268 全世界における小型甲に係
4269 る一定の取引分野が、
4270 それぞれ画定されようが、
4271 上で述べた需要者にとっての代替性
4272 と供給者にとっての代替性の観点から、
4273 問題文の事実関係を適切に評価することが求
4274 められる。
4275
4276
4277 次に、
4278 画定された一定の取引分野ごとに、
4279 競争を実質的に制限することとなるかの
4280 判断を行うことになる。
4281
4282 その判断は、
4283 単独行動による場合と協調的行動による場合の
4284 2つの観点から行う。
4285
4286
4287 本件では、
4288 全世界における大型甲に係る一定の取引分野において、
4289 当事会社の市場
4290 シェアは90パーセントとなる。
4291
4292 競争者であるA社との市場シェアの格差は大きく、
4293
4294 また、
4295 A社には製造余力がないことから、
4296 単独行動による競争の実質的制限が生じそ
4297 うである。
4298
4299
4300 しかし、
4301 Y社の経営状況は厳しく、
4302 本件計画を実行しなければ、
4303 Y社が当該事業か
4304 ら撤退する蓋然性は高い。
4305
4306 事業譲渡に係るA社との交渉経緯やA社の経営方針も踏ま
4307 えると、
4308 本件計画の有無にかかわらず上記市場状況がもたらされるのであるから、
4309
4310 争を実質的に制限することとはならないとの評価が可能かもしれない。
4311
4312 他方、
4313 X社や
4314 A社ではない市場外の会社等への譲渡の可能性が残される以上、
4315 X社への事業譲渡が
4316 最も競争制限的でないとは必ずしも言えず、
4317 したがって、
4318 やはり競争の実質的制限の
4319 蓋然性を否定することはできないなどの評価も可能かもしれない。
4320
4321 いずれの結論であ
4322 っても、
4323 Y社の経営状況を独占禁止法上どのように評価するのか、
4324 結論に至る考えを
4325 説得的に示すことが求められる。
4326
4327
4328 なお、
4329 企業結合ガイドラインは、
4330 「一方当事会社の企業結合の対象となる事業部門
4331 が、
4332 継続的に大幅な損失を計上するなど著しい業績不振に陥っており、
4333 企業結合がな
4334 ければ近い将来において市場から退出する蓋然性が高いことが明らかな場合におい
4335 て、
4336 これを企業結合により救済することが可能な事業者で、
4337 他方当事会社による企業
4338 結合よりも競争に与える影響が小さいものの存在が認め難いとき。
4339
4340 」には、
4341 競争を実
4342 質的に制限することとなるおそれは小さいと通常考えられるとするが(企業結合ガイ
4343 ドライン第4・2(8)イA)、
4344 本件はガイドラインに係る知識そのものを問うもの
4345 ではない。
4346
4347
4348
4349 [知的財産法]
4350 Xは、
4351 建売住宅の販売業用システムに係るデータベース(以下「Xデータベース」という。
4352
4353 )を
4354 開発し、
4355 販売していた。
4356
4357 Xデータベースは、
4358 開発費用として3億円、
4359 開発期間として2年間を掛け、
4360
4361 Xの多くの従業員が関与し多大な労苦を重ねて建売住宅の情報を収集し、
4362 その社運を賭けて制作し
4363 たものであった。
4364
4365 また、
4366 Xデータベースにおいては、
4367 そのデータ対象(建売住宅)として、
4368 人気エ
4369 リアであるA県内に実在する全ての2階建ての建売住宅約3万件が選択され、
4370 そのデータ項目とし
4371 て、
4372 販売開始年月日、
4373 坪単価、
4374 床面積、
4375 間取り、
4376 販売状況、
4377 住みやすさという各項目が選択され、
4378
4379 これらの各項目がその順序で端末の画面上に表示されるように構成されていた。
4380
4381 このうち、
4382 「住み
4383 やすさ」という項目は、
4384 駅からの距離、
4385 治安の良さ、
4386 公共施設の存在、
4387 買い物のしやすさなどを基
4388 に、
4389 実際に情報収集に当たったXのベテラン従業員のセンスと感覚により、
4390 社内での検討を経て、
4391
4392 居住した場合の主観的な満足度の予想を5段階にランク付けしたものであった。
4393
4394 また、
4395 Xデータベ
4396 ースは、
4397 これらの建売住宅が画面上に販売開始年月日の新しい順に表示されるように構成されたも
4398 のであった。
4399
4400 以上のような特徴を有する建売住宅のデータベースは、
4401 他府県のものも含め、
4402 これま
4403 で存在していなかった。
4404
4405
4406 他方、
4407 Yは、
4408 Xデータベースを基にして、
4409 A県内の建売住宅の販売業用システムに係るデータベ
4410 ース(以下「Yデータベース」という。
4411
4412 )を制作した。
4413
4414 Yデータベースには、
4415 Xデータベースの建
4416 売住宅約3万件のデータから、
4417 販売開始年月日の新しい順に取り出した 1 万件分の建売住宅のデー
4418 タが格納されており、
4419 そのデータ項目及びその画面表示上の順序は、
4420 Xデータベースにおけるそれ
4421 と完全に一致していた。
4422
4423 Yデータベースには、
4424 Xデータベースにはない最新の販売分として建売住
4425 宅500件のデータも格納されていたが、
4426 その500件のデータに係る「住みやすさ」の項目は、
4427
4428 空欄になっていた。
4429
4430
4431 Yは、
4432 Yデータベースを、
4433 Xデータベースが販売されていたA県及びその近郊の地域で、
4434 大々的
4435 に広告宣伝し、
4436 その販売活動を開始した。
4437
4438
4439 以上の事実関係を前提として、
4440 以下の設問に答えなさい。
4441
4442 なお、
4443 各設問はそれぞれ独立したもの
4444 であり、
4445 相互に関係はないものとする。
4446
4447
4448 〔設問1〕
4449 Xは、
4450 「Xデータベースは、
4451 建売住宅についてこれまで存在していなかったものを、
4452 Xの従業員
4453 が多大な労苦を重ねて建売住宅の情報を収集して制作したものであり、
4454 建売住宅の選択、
4455 住みやす
4456 さ等の独自のデータ項目の選択及びそれらの画面表示上の順序に独自の工夫が凝らされているも
4457 のであって、
4458 著作物性を有する。
4459
4460 」と主張している。
4461
4462
4463 Xの上記主張の妥当性について論ぜよ。
4464
4465
4466 〔設問2〕
4467 仮に、
4468 Xデータベースに著作物性があり、
4469 Xがその著作権を有するとした場合、
4470 YがYデータベ
4471 ースを制作する行為は、
4472 Xの著作権を侵害するものであるといえるか。
4473
4474
4475 〔設問3〕
4476 Xは、
4477 「仮にXデータベースに著作物性がなく、
4478 YがYデータベースを制作し販売した行為が、
4479
4480 Xの著作権を侵害するものであるとはいえないとしても、
4481 このようなYの行為は、
4482 不法行為に当た
4483 る。
4484
4485 」と主張している。
4486
4487
4488 Xの上記主張の妥当性について論ぜよ。
4489
4490
4491
4492 〔設問4〕
4493 Xは、
4494 Xデータベースの販売をPに任せることとし、
4495 Pに対して、
4496 Xデータベースの複製品を独
4497 占的に作成し販売することにつき許諾を与えた。
4498
4499 その後、
4500 Pは、
4501 QがXデータベースの複製品(以
4502 下「Q製品」という。
4503
4504 )を無断で作成し販売していることを発見し、
4505 Qに対し、
4506 Q製品の販売の差
4507 止め及びこれまでの販売分に係る損害賠償を請求した。
4508
4509 これに対し、
4510 Qは、
4511 「そもそも利用権者に
4512 すぎないPは、
4513 Q製品の販売差止め及び損害賠償を請求することはできない。
4514
4515 」と主張している。
4516
4517
4518 仮に、
4519 Xデータベースに著作物性があり、
4520 Xがその著作権を有するとした場合、
4521 Qの上記主張の
4522 妥当性について論ぜよ。
4523
4524
4525
4526 (出題の趣旨)
4527 1 本問は、
4528 データベースを題材として、
4529 その情報の選択又は体系的構成における創
4530 作性の有無、
4531 著作物性が認められる場合の著作権侵害の成否、
4532 著作権侵害が成立し
4533 ない場合の不法行為の成否、
4534 独占的利用権者による差止請求及び損害賠償請求の可
4535 否、
4536 についての理解を問うものである。
4537
4538
4539 2 設問1については、
4540 データベースが著作物として保護されるためには、
4541 その情報
4542 の選択又は体系的構成によって創作性を有することが必要であること(著作権法
4543 (以下「法」という。
4544
4545 )第12条の2第1項、
4546 法第2条第1項第1号)を踏まえて、
4547
4548 創作性の判断基準を示し、
4549 その基準に本問の具体的事情を当てはめて論じることが
4550 求められる。
4551
4552
4553 3 設問2については、
4554 複製又は翻案の意義を示した上で、
4555 Yデータベースに、
4556 Xデ
4557 ータベースの1万件分のデータが含まれていること、
4558 及びXデータベースにはない
4559 新たな500件のデータが追加されていることを踏まえ、
4560 複製権(法第21条)又
4561 は翻案権(法第27条)侵害が成立するか否かを論じることが求められる。
4562
4563
4564 4 設問3については、
4565 著作権侵害が成立しないときに不法行為(民法第709条)
4566 が成立する場合に関して、
4567 その判断基準を示した上で、
4568 事案に当てはめる必要があ
4569 る。
4570
4571 具体的には、
4572 最判平成23年12月8日民集65巻9号3275頁【北朝鮮事
4573 件】が判示しているところを念頭に置いて、
4574 本問におけるYの行為は、
4575 自由競争の
4576 範囲を逸脱しXの営業を妨害するものといえるか否かなどについて論じることが
4577 期待される。
4578
4579
4580 5 設問4については、
4581 まず、
4582 差止請求の可否については、
4583 差止請求権に関する法第
4584 112条第1項を踏まえ、
4585 独占的利用権の法的性質について検討しつつ、
4586 独占的利
4587 用権者に固有の差止請求権が認められるか否かを論じた上で、
4588 これが認められない
4589 としても、
4590 著作権者の差止請求権を代位行使(民法第423条第1項)できるか否
4591 かを論じることが求められる。
4592
4593
4594
4595 [労
4596
4597
4598
4599 法]
4600
4601 次の事例を読んで、
4602 後記の設問に答えなさい。
4603
4604
4605 【事例】
4606 Y社は、
4607 全国の百貨店内のテナント店舗のほかに多数の路面店を展開して女性服の小売業を営む
4608 会社であり、
4609 Xは、
4610 平成29年4月1日からY社の路面店A店で販売担当従業員として勤務する有
4611 期労働契約社員である。
4612
4613
4614 Xは、
4615 販売担当従業員として勤務を始めた当初の1年半は平均的な成績であったが、
4616 接客の才能
4617 を徐々に開花させ、
4618 その後は常に売上成績においてA店のトップであった。
4619
4620 その一方で、
4621 Xの同僚
4622 との関係は良好なものではなく、
4623 業務の進め方や店内での従業員間のコミュニケーションの取り方
4624 に問題があった。
4625
4626 例えば、
4627 A店においては、
4628 販売担当従業員が接客をしたことにより来店客が商品
4629 の購入を決めた場合には、
4630 当該販売担当従業員が当該商品の配送の手配や代金受領の手続等をする
4631 こととされていたにもかかわらず、
4632 Xは、
4633 これを同僚に押し付けることを繰り返していた。
4634
4635 そのた
4636 め、
4637 同僚らは、
4638 Xの接客技術については一目置いていたものの、
4639 その勤務態度に大いに不満を持っ
4640 ていた。
4641
4642 また、
4643 Xは、
4644 同僚に対し商品の在庫確認を依頼する際に誤った説明をしておきながら、
4645
4646 庫不足が問題となった際には、
4647 上司に対し同僚のミスであるなどと報告して責任を転嫁したり、
4648
4649 の従業員への必要な声掛けや引継ぎをしないまま勝手に休憩に入ってしまったりすることを繰り
4650 返していた。
4651
4652
4653 Y社の有期労働契約社員の契約期間は1年であり、
4654 Y社は、
4655 契約更新の際、
4656 有期労働契約社員に
4657 対し、
4658 新たに労働契約書に署名・押印をさせるだけでなく、
4659 その機会に、
4660 売上成績や勤務態度、
4661
4662 力評価などを考慮して更新後の年俸額を決定していた。
4663
4664 Xについては、
4665 令和2年4月及び令和3年
4666 4月の契約更新の際、
4667 勤務態度を改善すべきことが指摘されたものの、
4668 売上成績がA店において群
4669 を抜いていたことから、
4670 契約不更新の可能性が指摘されることはなかった。
4671
4672 その間、
4673 A店の店長B
4674 は、
4675 同店の売上げを支えるXが前記のような勤務態度を改めることを期待してXに対して指導を行
4676 うこともあったが、
4677 同僚とのトラブルはなくならず、
4678 多くの場合、
4679 他の販売担当従業員に対して「多
4680 少は大目に見てやってくれ。
4681
4682 」などと言って我慢をさせ、
4683 Xとの衝突が激しくなったときには、
4684 他の
4685 販売担当従業員を他店へ異動させることも数回あった。
4686
4687
4688 令和3年4月の契約更新後も、
4689 Xの売上成績は依然として他の販売担当従業員を引き離してA店
4690 のトップであったが、
4691 Xの前記のような勤務態度が根本的に改まることはなく、
4692 また、
4693 他の販売担
4694 当従業員に我慢を強いてきた結果、
4695 A店全体の職場環境は、
4696 相当悪化した状態にあった。
4697
4698 店長Bは、
4699
4700 新人販売担当従業員2名が、
4701 そうした職場環境の悪さやXとの不仲を理由に立て続けに退職したこ
4702 とを契機として、
4703 これ以上Xを立て続けるのは困難であると感じ、
4704 契約の更新の繰り返しにより通
4705 算契約期間が5年を超える前にXの有期労働契約を更新しないこととすることを決断した。
4706
4707 Y社は、
4708
4709 契約期間満了日の3か月前よりも更に前の令和3年12月中に、
4710 Xに対して、
4711 契約を更新しない旨
4712 を通知した。
4713
4714
4715 Xは、
4716 Y社が労働契約を更新しなかったことは不当であり、
4717 Y社との労働契約は令和4年4月1
4718 日以降も存続していると主張している。
4719
4720
4721 〔設問〕
4722 Xが訴訟で令和4年4月1日以降も労働契約が存続していることを主張する場合、
4723 裁判所に対し
4724 てどのような請求をすることが考えられるか。
4725
4726 また、
4727 その請求は認められるか。
4728
4729 問題となる法令上
4730 の条文と考えられる論点を指摘しつつ検討し、
4731 あなたの見解を述べなさい。
4732
4733
4734
4735 (出題の趣旨)
4736 本問は、
4737 女性服小売業者の店舗販売担当従業員として勤務する、
4738 期間1年の労働契
4739 約がそれまでに4回更新された有期契約労働者について、
4740 直近の売上成績は最上位で
4741 ある一方、
4742 勤務態度や他の従業員とのコミュニケーションの取り方に問題があり、
4743
4744 れにより職場環境を著しく悪化させたこと等を理由に、
4745 通算契約期間が5年を超えて
4746 労働契約法第18条が適用されることとなる前に、
4747 雇止めを行ったという事案を素材
4748 に、
4749 当該労働者が裁判上労働契約の存続を主張する場合の請求の内容及びその当否に
4750 ついて、
4751 問題となる法令上の条文と考えられる論点を指摘しながら論じることを求め
4752 たものである。
4753
4754 そこでは、
4755 いわゆる「雇止め」という労働法の重要かつ最も基本的な
4756 問題の一つについて、
4757 正確に理解し、
4758 具体的事実の当てはめを的確に行い、
4759 論述する
4760 能力が問われている。
4761
4762 実務上も近年、
4763 雇止めは、
4764 均等・均衡待遇の問題などとともに、
4765
4766 有期契約労働者の処遇の在り方に関する最も重要な問題の一つとなっており、
4767 法律実
4768 務家には、
4769 そのような社会状況やそれに関する議論にも精通しつつ、
4770 制定法や判例法
4771 理を踏まえた規範を当該事実関係に的確に適用し、
4772 個々の紛争の解決を図る能力が求
4773 められる。
4774
4775 加えて、
4776 本問では、
4777 近年の雇用・勤労環境における個々の労働者の能力・
4778 成果を重視する傾向と、
4779 職場におけるチームワークや協調性の重要性を、
4780 有期労働契
4781 約の更新の拒否という場面において、
4782 それぞれどのように評価し、
4783 それらをどのよう
4784 に衡量して、
4785 どのような結論を導くかという判断能力も問われている。
4786
4787
4788 本問において論じるべき法律問題の中心は、
4789 労働契約法第19条により労働者から
4790 の有期労働契約の更新の申込みに対して使用者が従前と同一の労働条件でこれを承
4791 諾したものとみなされ、
4792 本件雇止めが認められないこととなるかどうかである。
4793
4794 本件
4795 雇止めが認められない場合には、
4796 令和4年4月1日を始期とする期間1年の有期労働
4797 契約が成立することとなり、
4798 その結果として通算契約期間が5年を超え、
4799 同法第18
4800 条による無期労働契約への転換が視野に入り、
4801 Xとしては、
4802 そのような労働契約上の
4803 地位の確認を裁判所に請求することも可能となる。
4804
4805
4806 同法第19条の適用の有無について論じる上では、
4807 次の点が、
4808 特に重要なポイント
4809 となる。
4810
4811
4812 まず、
4813 第1に、
4814 同条の構造に照らし、
4815 その論理的順序に沿って、
4816 同条各号及び柱書
4817 きのそれぞれについて、
4818 論ずべき争点を適切に設定することである。
4819
4820 特に、
4821 同条各号
4822 該当性を判断した後に、
4823 同条柱書きの更新拒絶の客観的合理性・社会的相当性を判断
4824 するという2段階の判断枠組みに沿って、
4825 同条各号及び柱書きそれぞれの要件に則し
4826 た的確な判断をすることが求められる。
4827
4828
4829 第2に、
4830 同条第1号該当性については、
4831 同号が、
4832 東芝柳町工場事件最高裁判決(最
4833 判昭和49年7月22日民集28巻5号927頁)の要件を条文化したものと理解さ
4834 れていることを踏まえ、
4835 本件において5回目の契約更新を拒絶することが、
4836 同号に当
4837 たるかどうか、
4838 すなわち、
4839 期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上
4840 同視できると認められるかどうかについて、
4841 事実関係の中から有意な事実を抽出して
4842 これに当てはめ、
4843 判断を示すことである。
4844
4845 ここでは、
4846 特に、
4847 Xの業務の内容や、
4848 契約
4849 更新のたびに労働契約書に署名・押印をさせるだけでなく成績・能力・勤務態度等を
4850 評価して更新後の年俸額を決定するなどの手続が行われ、
4851 期間の定めが形骸化してい
4852 たとは認め難い状況にあったことなどが、
4853 重要な判断要素となる。
4854
4855
4856 第3に、
4857 同条第2号該当性については、
4858 同号が、
4859 日立メディコ事件最高裁判決(最
4860 判昭和61年12月4日労判486号6頁)の要件を条文化したものと理解されてい
4861 ることを踏まえ、
4862 当該有期労働契約が、
4863 同条第1号に当たるような状態にあったとは
4864
4865 認められないとしても、
4866 その期間満了時に当該契約が「更新されるものと期待するこ
4867 とについて合理的な理由がある」と認められるかどうかについて、
4868 適切な判断枠組み
4869 等を設定し、
4870 事案に照らした的確な判断を行うことである。
4871
4872 ここでは、
4873 契約の回数や
4874 期間だけではなく、
4875 それまでの当事者の言動や認識、
4876 特に、
4877 契約更新の都度勤務態度
4878 を改善すべき旨の指導はなされていたものの、
4879 Xと衝突する他の従業員を異動させる
4880 などする一方で、
4881 契約不更新の可能性は指摘されなかったことなどが、
4882 重要な判断要
4883 素となる。
4884
4885
4886 第4に、
4887 同条柱書きが規定する、
4888 更新拒絶が「客観的に合理的な理由を欠き、
4889 社会
4890 通念上相当であると認められないとき」との要件については、
4891 本条が、
4892 同条各号のい
4893 ずれかに当たる場合に、
4894 前記の各最高裁判例に照らし、
4895 解雇権濫用法理(同法第16
4896 条参照)を類推する趣旨のものであることを踏まえ、
4897 その該当性について、
4898 事案に即
4899 した適切な判断枠組み・着眼点を設定し、
4900 これに事例中の有意な事実を拾い出して当
4901 てはめ、
4902 結論を導くことである。
4903
4904 ここでは、
4905 冒頭でも触れたとおり、
4906 有期契約労働者
4907 の処遇について、
4908 個人の能力・成果を重視する考え方と、
4909 チームワーク・協調性・調
4910 和的な職場環境の維持等を重視する考え方の双方があることや、
4911 本件の雇止めが同法
4912 第18条による無期労働契約への転換を回避する目的で行われたものとも認め得る
4913 状況においてなされたものであることなどが、
4914 重要な判断のポイントとなり得る。
4915
4916
4917 た、
4918 雇止めに至るまでにどのような措置が採られ、
4919 あるいは、
4920 採り得たか、
4921 特に、
4922
4923 題となる勤務態度を改める機会や環境が、
4924 Xに十分に与えられていたか、
4925 などの点に
4926 ついても、
4927 適切に評価して考慮に入れる必要がある。
4928
4929 その上で、
4930 本件の雇止めに「客
4931 観的に合理的な理由」があったかどうか、
4932 また、
4933 「社会通念上相当」と認められるか
4934 どうかを、
4935 丁寧に論じることが求められる。
4936
4937 なお、
4938 同条柱書きの要件については、
4939
4940 「申
4941 込みをした場合」に当たるかどうかも問題となろう。
4942
4943
4944 本問は、
4945 労働法の重要論点について、
4946 関連する法令や判例、
4947 それらの理論的な基盤
4948 を正確に理解し、
4949 事例へのそれらの規範の適用においてそれぞれ反対の結論の方向に
4950 働き得る諸事実を的確に評価・整理しつつ、
4951 説得力のある結論を導くことができるか
4952 どうかを問うものである。
4953
4954 本問を通じて、
4955 労働法の基礎的な論点について深度のある
4956 学習を積み重ねることが重要であることを、
4957 改めて強調したい。
4958
4959
4960
4961 [環
4962
4963
4964
4965 法]
4966
4967 景観及び眺望に関する以下の設問において、
4968 AがB社に対して訴訟を提起する場合、
4969 当該訴訟に
4970 おいてどのような主張をすることが考えられるか。
4971
4972 なお、
4973 仮処分については解答しなくてよい。
4974
4975
4976 〔設問1〕
4977 P市Q駅南口から直線状に延びる公道のうち同駅南口から1.2キロメートルの道路は、
4978
4979 「R通り」
4980 と称され、
4981 幅員が44メートルと広く、
4982 道路の中心から左右両端に向かって車道、
4983 自転車レーン、
4984
4985 緑地及び歩道が配置され、
4986 緑地部分には100本を超える桜や銀杏等が植樹され、
4987 並木道が整備さ
4988 れ、
4989 良好な景観が形成されている。
4990
4991 従来、
4992 R通り沿道地域の建築物は高さ20メートル未満とする
4993 ことを基本にしてきたが、
4994 B社はR通り南端に位置する土地を購入し、
4995 地上14階建て・高さ44
4996 メートルのマンション(以下「本件マンション」という。
4997
4998 )を建築することとし、
4999 完成した。
5000
5001 なお、
5002
5003 本件マンションは建築規制に関する行政法規には違反していない。
5004
5005 また、
5006 P市では、
5007 本件マンショ
5008 ンの建設当時、
5009 上記の景観を保護する法令上の独自の方策を講じていなかった。
5010
5011
5012 R通りに面し、
5013 かつ、
5014 本件マンションの近隣に位置する土地の地権者であるAは、
5015 本件マンショ
5016 ンは景観を侵害するものとして、
5017 B社に対する法的手段を検討している。
5018
5019 なお、
5020 本設問の解答に当
5021 たっては、
5022 差止め及び原状回復については問わない。
5023
5024
5025 〔設問2〕
5026 S湾に面したT町は、
5027 緑豊かな自然が多く残る風光明媚な地域であり、
5028 T町は、
5029 良好な景観の保
5030 持のために積極的な施策を続けてきた。
5031
5032 AがT町のこのような地域に所有する居宅からは、
5033 S湾の
5034 美しい眺望を一望できる。
5035
5036 Aは、
5037 このような景観及び眺望の享受を主な目的として居宅を構えたも
5038 のである。
5039
5040
5041 B社は、
5042 Aの居宅に近接する土地において、
5043 大規模な太陽光発電設備(以下「本件設備」という。
5044
5045
5046 を設置して太陽光発電事業(以下「本件事業」という。
5047
5048 )を営む計画を立てている。
5049
5050 本件事業は、
5051
5052 当数の世帯を賄えるだけの電力を地域に供給し、
5053 非常時に携帯電話等を充電できる設備も地域住民
5054 に供用する計画である。
5055
5056 また、
5057 B社は、
5058 太陽光発電設備の設置に係るT町の条例に従い、
5059 地域住民
5060 に対して本件事業に関する説明会を実施したほか、
5061 関係法令を遵守している。
5062
5063 しかし、
5064 本件設備が
5065 完成すれば、
5066 地域の景観の相当部分に本件設備が広がるとともに、
5067 Aの居宅からのS湾の眺望のか
5068 なりの部分を遮ることにもなる。
5069
5070
5071 Aは、
5072 B社に対する法的手段を検討している。
5073
5074 本設問の解答に当たっては、
5075 予想されるB社の反
5076 論を踏まえつつ、
5077 論じなさい。
5078
5079 なお、
5080 損害賠償請求については問わない。
5081
5082 また、
5083 問題文中に挙げた
5084 もの以外に、
5085 条例の内容は考慮しなくてよい。
5086
5087
5088
5089 (出題の趣旨)
5090 設問1は、
5091 景観の悪化を理由とする損害賠償請求について問うものであり、
5092 設問2
5093 は、
5094 景観の悪化及び眺望の阻害を理由とする民事差止請求について問うものである。
5095
5096
5097 設問1では、
5098 我が国の環境法における画期的判決であるとともに、
5099 学習上の重要基
5100 本判例である、
5101 国立景観訴訟最高裁判決を踏まえた上での、
5102 「権利又は法律上保護さ
5103 れる利益」、
5104 その違法な侵害、
5105 そして損害の発生の主張が求められる。
5106
5107 環境法及び民
5108 法のごく基本的な知識・理解が問われるが、
5109 原告Aの主張として構成・論述しつつ、
5110
5111 違法な侵害となる根拠についても的確に論じることが求められる。
5112
5113
5114 設問2では、
5115 「権利又は法律上保護される利益」及びその違法な侵害の主張が求め
5116 られること自体は、
5117 設問1と同様であるが、
5118 差止請求の法的根拠を組み込んだ論述や、
5119
5120
5121 景観の悪化のみならず眺望の阻害という問題にも適した主張等が求められ、
5122 これらを
5123 構築するための基本的な法解釈・運用能力が問われる。
5124
5125 さらに、
5126 関係法令が遵守され
5127 ている点や、
5128 社会的有用性のある再生可能エネルギー設備と私人の権利又は利益とが
5129 対立している点等において、
5130 事例に即した主張を展開する論証能力が問われる。
5131
5132
5133
5134 [国際関係法(公法系)]
5135 アフリカ中央部に位置するA海外州及びB海外州は、
5136 ヨーロッパのC国の植民地として19世紀
5137 初頭から統治されていた。
5138
5139 互いに隣接するA・B両海外州の間には山脈があり、
5140 その分水嶺は、
5141
5142 国の国内法で同国の行政区画線の一部としてこれら2つの海外州間の境界線を構成していた。
5143
5144 20
5145 世紀に入ると、
5146 1930年代からC国内が革命により内乱状態となり、
5147 A・B両海外州もその影響
5148 を受けたが、
5149 A海外州はその混乱に乗じて、
5150 B海外州との間の山脈を越えたところにあるB海外州
5151 内のα地域に税務事務所を設置して、
5152 同地域における徴税に係る活動を開始した。
5153
5154 これに対してB
5155 海外州は、
5156 A海外州に抗議して、
5157 A海外州がα地域に設置した税務事務所の撤去を求めるとともに、
5158
5159 当該税務事務所の撤去をA海外州に命ずるようC国に上申したが、
5160 A海外州もC国も、
5161 こうしたB
5162 海外州の求めに対していかなる対応も行わなかった。
5163
5164
5165 その後、
5166 脱植民地化の過程において、
5167 A海外州もB海外州も、
5168 1960年にそれぞれA国及びB
5169 国としてC国からの独立を果たし、
5170 A・B両国は、
5171 その独立直後から両国間の国境画定条約を締結
5172 するための交渉を行ってきた。
5173
5174 ところが、
5175 A国は、
5176 α地域を自国領と主張し、
5177 その独立直後から同
5178 地域に自国軍隊を駐留させたため、
5179 B国は、
5180 こうしたA国の行動に対して定期的に抗議を行ってき
5181 た。
5182
5183 しかし、
5184 A国は、
5185 更に警察や住民登録のための行政機関等を現地に常駐させるなど、
5186 α地域に
5187 対する実効的な支配を強化していったことから、
5188 α地域に関係する国境線だけはA国とB国との間
5189 で合意に至らず、
5190 常に紛争の火種となっていた。
5191
5192 そこで、
5193 B国は、
5194 1990年に、
5195 A国を相手に、
5196
5197 α地域における国境線の画定問題を国際司法裁判所(以下「ICJ」という。
5198
5199 )に一方的に付託した
5200 ところ、
5201 A国は、
5202 ICJに出廷する意思を示さず、
5203 この問題についてICJが判断を下すことはで
5204 きない旨の書簡をICJに送付した。
5205
5206
5207 他方で、
5208 A国とB国は、
5209 自国の安全保障の観点から、
5210 C国及びC国に隣接するD国とともに、
5211
5212 995年に軍備管理に関するP条約を批准した。
5213
5214 この条約によると、
5215 当事国は、
5216 核兵器を開発も保
5217 有もしないこと(2条)、
5218 正規軍の兵員数の上限を2万人とすること(3条)とされていた。
5219
5220 なお、
5221
5222 D国は、
5223 P条約第2条について、
5224
5225 「この規定は、
5226 いかなる状況においても、
5227 D国には適用されない。
5228
5229
5230 という留保を付した上でP条約を批准したところ、
5231 C国のみがD国の批准の3か月後にD国の留保
5232 に異議を申し立てた。
5233
5234 なお、
5235 P条約には留保に関する規定が置かれていなかった。
5236
5237
5238 B国は、
5239 A国との国境画定交渉が停滞していることを不満として、
5240 2000年頃からα地域を武
5241 力で奪還すべく正規軍の規模を3万人に増やし、
5242 その半数の兵力をα地域の近くに配置した。
5243
5244 これ
5245 に対してA国は、
5246 P条約第3条の運用を停止すると宣言し、
5247 正規軍の兵員数を4万人まで増員して、
5248
5249 そのおよそ半数の兵員をα地域に駐留させることを決定した。
5250
5251 また、
5252 A国は、
5253 その当時B国内で生
5254 じていた反政府デモを利用し、
5255 このデモを指導していた政治団体Sに対して、
5256 資金のほか武器・弾
5257 薬等も供与してB国内の状況を更に混乱させようとしたため、
5258 この動きを察知したB国は、
5259 個別的
5260 自衛権の行使を主張してα地域に自国軍隊を進め、
5261 B国軍隊は、
5262 α地域に駐留していたA国軍隊と
5263 の間で交戦状態に入った。
5264
5265
5266 A国、
5267 B国、
5268 C国及びD国は、
5269 いずれも国際連合(以下「国連」という。
5270
5271 )の加盟国である。
5272
5273 また、
5274
5275 これら4国は、
5276 いずれも1969年の条約法に関するウィーン条約(以下「条約法条約」という。
5277
5278
5279 についていかなる留保も付さずに1980年から当事国となっている。
5280
5281 また、
5282 P条約については、
5283
5284 A国、
5285 B国、
5286 C国及びD国のいずれにおいても、
5287 それぞれの国内手続が行われて批准がなされ、
5288
5289 996年に効力が発生している。
5290
5291 さらに、
5292 A国及びB国は、
5293 独立した年に国連に加盟するとともに、
5294
5295 ICJ規程第36条第2項に基づき、
5296 裁判所の管轄権を受諾する宣言を行ったが、
5297 B国は、
5298
5299 「B国が
5300 本質上自国の国内管轄内にあると判断する紛争」には、
5301 この選択条項受諾宣言が適用されない旨を
5302 国連事務総長に通告している。
5303
5304
5305 以上の事実を基に、
5306 以下の設問に答えなさい。
5307
5308
5309
5310 〔設問〕
5311 1.B国は、
5312 α地域が自国領であると主張する観点から、
5313 国際法上いかなる議論が可能かについて
5314 論じなさい。
5315
5316
5317 2.A国は、
5318 α地域におけるB国との国境線の画定問題についてICJが判断を下すことはできな
5319 いと主張するために、
5320 国際法上いかなる議論が可能かについて論じなさい。
5321
5322
5323 3.C国は、
5324 条約法条約の適用上、
5325 P条約との関連でD国といかなる条約関係を主張することが可
5326 能かについて論じなさい。
5327
5328
5329 4.A国は、
5330 自国正規軍の増員をP条約違反に問われないために、
5331 国際法上いかなる議論が可能か
5332 について論じなさい。
5333
5334
5335 5.A国は、
5336 α地域におけるB国の軍事行動が国際違法行為であることを主張するために、
5337 国際法
5338 上いかなる議論が可能かについて論じなさい。
5339
5340
5341
5342 (出題の趣旨)
5343 本問は、
5344 領域紛争において主張される権原の内容、
5345 国際司法裁判所(以下「ICJ」
5346 という。
5347
5348 )の管轄権と選択条項受諾宣言への留保の効果、
5349 1969年条約法に関する
5350 ウィーン条約(以下「条約法条約」という。
5351
5352 )における留保制度及び同条約に基づく
5353 条約の終了・運用停止事由、
5354 国家による他国の内政への干渉とこれに対する武力行使
5355 の問題といった事項について基本的な知識と理解を問うことを目的としている。
5356
5357
5358 設問1は、
5359 A国が実効支配しているα地域をB国が自国領と主張するには、
5360 その国
5361 際法上の根拠に基づかなければならず、
5362 その根拠を特定することを求めるものである。
5363
5364
5365 B国からすると、
5366 A・B両国はC国を旧宗主国として脱植民地化の過程で独立したこ
5367 とから、
5368 植民地時代のC国の行政区画線がA・B両国間の国境線として認められれば
5369 α地域はB国領として認められることになる。
5370
5371 植民地時代の行政区画線が独立後に国
5372 境線とされる法理としては、
5373 中南米の旧スペイン植民地が独立する際に国境線画定で
5374 用いられたウティ・ポシデティス・ユリス原則(現状承認原則)があるが、
5375 これが本
5376 件にも適用されるためには、
5377 同原則の出自や内容を正確に特定した上で、
5378 ブルキナフ
5379 ァソとマリ共和国との間の国境紛争事件ICJ裁判部判決(1986年)においてア
5380 フリカの国々に適用されたように、
5381 本件のA・B両国にも同原則が適用されることを
5382 示す必要がある。
5383
5384
5385 設問2は、
5386 ICJが本案判決に至らないように、
5387 裁判所の裁判管轄権又は請求の受
5388 理可能性のいずれかでA国の主張が認容されるように先決的抗弁が提起されること
5389 が想定されている。
5390
5391 裁判管轄権に関して、
5392 A・B両国とも、
5393 ICJ規程第36条第2
5394 項に基づく選択条項受諾宣言を行っているものの、
5395 B国は、
5396 自らが判断することによ
5397 り紛争をICJの裁判管轄権から除外できるとする、
5398 いわゆる自己判断留保(自動的
5399 留保)を同宣言に付していることから、
5400 当該留保自体に対する批判はともかく、
5401 ノル
5402 ウェー公債事件ICJ判決(1957年)が示すように、
5403 A国がB国の自己判断留保
5404 を相互主義に基づき援用することは判例上可能であり、
5405 その効果からA国はICJに
5406 対し裁判管轄権が欠如していると主張することを論じることになる。
5407
5408
5409 設問3は、
5410 D国によるP条約第2条への留保の許容性を問うものである。
5411
5412 A国、
5413
5414 国、
5415 C国及びD国はいずれも条約法条約の当事国であり、
5416 またP条約には留保に関す
5417 る規定が置かれていないことから、
5418 ここでは条約法条約の留保制度が適用されること
5419 になる。
5420
5421 C国がD国の留保に異議を提起した理由は、
5422 ジェノサイド条約留保事件勧告
5423 的意見(1951年)でICJが取り入れて、
5424 その後、
5425 条約法条約第19条(c)の
5426 規定に明記されたいわゆる両立性の基準に基づき、
5427 当該留保の内容がP条約の趣旨及
5428
5429 び目的と両立しないということを踏まえた上で、
5430 条約法条約第20条第4項(b)が
5431 適用されることを指摘する。
5432
5433 そして、
5434 D国が留保を行ってから12か月以内にC国が
5435 当該留保について異議を申し立てたことを確認して(条約法条約20条5項参照)、
5436
5437 C国がD国との間ではP条約の効力発生は肯定してP条約の適用による条約関係の
5438 存在は認めつつも、
5439 留保に係るP条約第2条についてのみ効力を否定するか(同20
5440 条4項(b)前段及び同21条1項(b))、
5441 それともC国がD国との間でP条約の効
5442 力発生自体を否定してC国とD国との間ではP条約の適用関係は生じないとするか
5443 (同20条4項(b)ただし書)のいずれかを主張することが可能であるということ
5444 を論じることが求められる。
5445
5446
5447 設問4は設問3に引き続き条約法条約の問題で、
5448 多数国間条約の規定に関する重大
5449 な条約違反の効果を問うものである。
5450
5451 A国が、
5452 P条約第3条の運用停止を主張して自
5453 国軍隊の増強を行うためには、
5454 B国による正規軍の増強が、
5455 「条約の否定であってこ
5456 の条約により認められないもの」
5457 (条約法条約60条3項(a))であるか又は「条約
5458 の趣旨及び目的の実現に不可欠な規定についての違反」
5459 (同60条3項(b))である
5460 ことを理由としたP条約の重大な違反であることを示すとともに、
5461 当該「違反により
5462 特に影響を受けた」
5463 (同60条2項(b))か、
5464 又はP条約の軍備管理条約としての性
5465 質から、
5466 当該違反が「条約に基づく義務の履行の継続についてのすべての当事国の立
5467 場を根本的に変更するものである」
5468 (同60条2項(c))ことを示す必要がある。
5469
5470
5471 して、
5472 これによりB国との関係でP条約第3条の運用停止が認められれば、
5473 A国もP
5474 条約上の義務を免れ得ることになる。
5475
5476
5477 設問5は、
5478 B国内における政治団体Sに対するA国の行為が、
5479 B国の軍事活動を正
5480 当化する国際法上の個別的自衛権の発動要件を満たすかどうかを問うものである。
5481
5482
5483 国による個別的自衛権の主張がその発動要件の不充足ゆえに自国の軍事活動を正当
5484 化できないのであれば、
5485 当該軍事活動は国際連合(以下「国連」という。
5486
5487 )憲章第2
5488 条第4項にいう武力不行使原則に反する武力行使として国際法違反とされる。
5489
5490 A国も
5491 B国も国連加盟国であることから、
5492 B国による個別的自衛権の発動においては国連憲
5493 章第51条に定める要件のほか、
5494 慣習国際法上の要件の充足が求められる。
5495
5496 したがっ
5497 て、
5498 その要件が、
5499 武力攻撃の発生、
5500 他の手段が利用できない状況という必要性及び先
5501 行する武力攻撃に照らして均衡のとれた自衛措置という均衡性であることを確認し
5502 た上で、
5503 ニカラグア軍事活動事件ICJ本案判決(1986年)では、
5504 反政府勢力に
5505 対する他国の武器供与等は、
5506 慣習国際法上、
5507 武力攻撃に該当しないことから、
5508 A国の
5509 行為もまた武力攻撃に該当せず、
5510 先行する武力攻撃の発生という要件が満たされない
5511 ことにより、
5512 B国の軍事活動は個別的自衛権の行使としては正当化できないことを論
5513 じることが求められる。
5514
5515
5516
5517 [国際関係法(私法系)]
5518 甲国籍のA女は、
5519 1987年に甲国P州で生まれ、
5520 その後も2009年まで同州にのみ居住して
5521 いた。
5522
5523 Aの親族は、
5524 現在まで同州に居住している。
5525
5526 甲国籍のB男は、
5527 1987年に甲国Q州で生ま
5528 れ、
5529 その後も2011年まで同州にのみ居住していた。
5530
5531 Bの親族は、
5532 現在まで同州に居住している。
5533
5534
5535 A及びBは、
5536 2009年に甲国Q州において、
5537 いずれも22歳で婚姻して、
5538 Aは同州に転居した。
5539
5540
5541 婚姻から約1年後の2010年に同州において、
5542 AB間に子C(甲国籍)が生まれた。
5543
5544 Cの出生か
5545 ら更に1年間、
5546 A、
5547 B及びCは同州に居住していた。
5548
5549 Bは2009年に同州の大学の日本語学科を
5550 卒業後、
5551 同州内の地元企業に就職したが、
5552 2011年に日本企業に転職し、
5553 就業場所が東京となっ
5554 たことから、
5555 A、
5556 B及びCは同年に来日し、
5557 現在まで日本で生活を営んでいる。
5558
5559 Aは、
5560 日本の大学
5561 に甲国語の語学教師として常勤しており、
5562 Cは、
5563 日本の公立学校に通学している。
5564
5565 Cが6歳になる
5566 2016年頃から、
5567 Bは、
5568 A及びCに対して日常的に暴力を振るうようになり、
5569 これによりAB間
5570 の婚姻関係は実質的に破綻し、
5571 AとBは翌2017年から別居して、
5572 それ以降はAがCを監護して
5573 いる。
5574
5575 A及びBは、
5576 それぞれ今後も日本での生活を継続する予定であり、
5577 甲国に帰国する意思はな
5578 い。
5579
5580
5581 別居から約5年後の2022年に、
5582 Aは、
5583 Bとの離婚等を求めて、
5584 日本の家庭裁判所に調停を申
5585 し立てた。
5586
5587 その後、
5588 調停は不成立となり、
5589 Aは、
5590 Bの暴行等により婚姻関係が破綻したと主張して、
5591
5592 Bを被告として、
5593 離婚及びCの親権者をAと定めること、
5594 並びに離婚せざるを得なくなったことに
5595 ついての精神的苦痛に対する慰謝料200万円及びBの暴行についての精神的苦痛に対する慰謝
5596 料100万円の合計300万円の支払を求める訴えを提起した。
5597
5598
5599 なお、
5600 甲国は、
5601 P州、
5602 Q州を含む複数の州から成る地域的不統一法国であり、
5603 州ごとに民法の内
5604 容が異なる。
5605
5606 甲国P州民法は、
5607 @年齢18歳をもって成年とすること、
5608 A離婚をするときは、
5609 未成
5610 年の子の親権は父母が共同して行う旨の規定を有している。
5611
5612 甲国Q州民法は、
5613 @年齢20歳をもっ
5614 て成年とすること、
5615 A離婚をするときは、
5616 未成年の子の親権は父のみが行う旨の規定を有している。
5617
5618
5619 また、
5620 甲国には、
5621 甲国人が甲国内のいずれの州に属するかを示すような属人法の決定基準として用
5622 いられる統一的な準国際私法の規則は存在しない。
5623
5624
5625 以上の事実に加え、
5626 本件において日本の裁判所に国際裁判管轄権が認められること及び日本の国
5627 際私法の観点からみてAB間の婚姻が有効に成立していることを前提として、
5628 以下の設問に答えな
5629 さい。
5630
5631
5632 〔設問1〕
5633 本件においてAB間の離婚が認められるか否かについて、
5634 日本の裁判所は、
5635 いずれの国の法を適
5636 用して判断すべきか論じなさい。
5637
5638
5639 〔設問2〕
5640 本件においてAB間の離婚が認められるものとする。
5641
5642 その場合において、
5643 以下の小問に答えなさ
5644 い。
5645
5646
5647 〔小問1〕
5648 日本の裁判所は、
5649 Cの親権者をAと定めることができるか。
5650
5651 準拠法の決定過程を示しつつ、
5652
5653 じなさい。
5654
5655
5656 〔小問2〕
5657 Aの慰謝料請求について、
5658 日本の裁判所は、
5659 いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさ
5660 い。
5661
5662
5663
5664 (出題の趣旨)
5665 本問は、
5666 渉外的な離婚とそれに伴う親権者の指定及び慰謝料請求の準拠法に関す
5667 る基本的理解を問うものである。
5668
5669
5670 設問1は、
5671 いずれも地域的不統一法国の国籍を有する者を当事者とする離婚につ
5672 いて、
5673 その準拠法を問うものである。
5674
5675 法の適用に関する通則法(以下「通則法」と
5676 いう。
5677
5678 )第27条の離婚の問題と性質決定し、
5679 同条本文が準用する通則法第25条の
5680 規定の解釈・適用が問題となる。
5681
5682 本問では、
5683 通則法第38条第3項かっこ書に従
5684 い、
5685 当事者それぞれの本国法を特定した後に、
5686 通則法第27条本文が準用する通則
5687 法第25条の規定の同一本国法が存在するかを判断し、
5688 存在しない場合には、
5689 同一
5690 常居所地法が存在するかを検討するというプロセスが論理的に示されなければなら
5691 ない。
5692
5693
5694 設問2は、
5695 離婚に伴う子の親権者の指定につき、
5696 その準拠法の決定と適用を問う
5697 ものである。
5698
5699 通則法第32条の親子間の法律関係の問題と性質決定し、
5700 同条の規定
5701 によって指定される準拠法によることを示した上で、
5702 地域的不統一法国の国籍を有
5703 する者である子(と父又は母)の本国法を通則法第38条第3項かっこ書に従い特
5704 定し、
5705 通則法第32条の同一本国法を決定するというプロセスが論理的に示されな
5706 ければならない。
5707
5708 本問では、
5709 子と父の同一本国法である甲国Q州法を事案に適用し
5710 た結果、
5711 父のみが親権者とされ、
5712 母が親権者となる余地がないことから、
5713 通則法第
5714 42条の公序則の発動の可否についても、
5715 本問の具体的な事案に即して、
5716 説得的に
5717 論述することが求められている。
5718
5719 さらに、
5720 公序則の発動があった場合、
5721 誰を親権者
5722 として指定すべきかを、
5723 法的根拠を示して論じなければならない。
5724
5725
5726 設問3は、
5727 離婚に伴う慰謝料請求の準拠法についての理解を問うものである。
5728
5729 本問
5730 では、
5731 離婚せざるを得なくなったことについての精神的苦痛に対する慰謝料及び夫の
5732 暴行についての精神的苦痛に対する慰謝料が請求されている。
5733
5734 それらの慰謝料につい
5735 て一括して法律関係の性質決定をするのか、
5736 それぞれに分けて性質決定をするのか、
5737
5738 また、
5739 通則法第27条の離婚準拠法を適用するのか、
5740 通則法第17条以下の不法行為
5741 の準拠法を適用するのかが、
5742 論理的に示されなければならない。
5743
5744 不法行為と性質決定
5745 する場合には、
5746 本問は夫婦という特別の関係にある者の間の不法行為であることから、
5747
5748 通則法第20条の規定が適用されるかどうかについても検討すべきである。
5749
5750
5751
5752