1 論文式試験問題集
2 [憲法・行政法]
3
4 - 1 -
5
6 [憲
7
8 法]
9
10 大手新聞社Aで記者として働いていたXは、
11 編集方針等の違いからAを退社し、
12 現在は、
13 フリー
14 ジャーナリストを自称し、
15 B県を拠点に、
16 主に環境問題について取材その他の活動を行っている。
17
18
19 しかし、
20 Xの取材及び発表の手段は、
21 Aの記者だったときとは変化している。
22
23 取材の手段について
24 言えば、
25 B県には、
26 新聞社等の報道機関によって設立された取材・報道のための自主的な組織であ
27 るB県政記者クラブが存在するが、
28 同クラブは、
29 その規約上、
30 日本新聞協会加盟社とこれに準ずる
31 報道機関から派遣された県政担当記者のみを構成員としており、
32 フリージャーナリストであるXは
33 入会を認められていない。
34
35 B県庁やB県警は、
36 記者発表には、
37 B県政記者クラブに所属する報道機
38 関の記者のみに出席を認めているため、
39 Xは出席することができない。
40
41 また、
42 Xの発表の場は主に
43 インターネットとなり、
44 自らの関心に応じて取材した内容を動画サイトに投稿し、
45 閲覧数に応じて
46 支払われる広告料によって収入を得ている。
47
48 環境問題に鋭く切り込むXの動画は若い世代を中心に
49 関心を集め、
50 インフルエンサーとして認識されつつある。
51
52 さらに、
53 Xは、
54 これまでに取材・投稿し
55 た内容に基づくノンフィクションの著作1冊を公表している。
56
57
58 Xは、
59 森林破壊に関する取材の過程で、
60 SDGsに積極的にコミットしていることで知られる家
61 具メーカー甲が、
62 実はコストを安く抑えるために、
63 濫開発による森林破壊が国際的に強い批判を受
64 けているC国から原材料となる木材を輸入し、
65 日本国内で加工し製品化しているのではないかと考
66 え、
67 甲に取材を申し入れた。
68
69 しかし、
70 甲は、
71 輸入元は企業秘密に当たるので回答できないとして、
72
73 これを拒否した。
74
75 そこでXは、
76 半年前に甲を退社し、
77 現在は間伐材を活用したエコロジー家具の工
78 房を開いている元従業員乙に取材を申し入れた。
79
80 乙は当初、
81 「退職していても守秘義務があるから
82 何も話せない。
83
84 」と言い、
85 取材に応じることを断っていた。
86
87 しかし、
88 Xは乙の工房に通い詰めたば
89 かりか、
90 乙が家族と住む自宅にまで執ように押し掛け、
91 「あなたが甲の行為を黙認することは、
92 環
93 境破壊に手を貸すのも同然だ。
94
95 保身のためなら環境などどうなっても良いという、
96 あなたのそんな
97 態度が世間に知れたら、
98 エコロジー家具の看板にも傷がつく。
99
100 それでいいのか。
101
102 」などと強く迫
103 り、
104 エコフレンドリーという評判が低下し工房経営に悪影響が及ぶことを匂わせた。
105
106 そこで乙は、
107
108 最終的には、
109 名前を仮名にすること及び画像と音声を加工することを条件に、
110 Xの求めに応じてイ
111 ンタビューを受け、
112 甲はC国から原材料を輸入していると語った。
113
114 Xは、
115 このインタビューに基づ
116 き、
117 「SDGsを標榜する甲の裏の顔」と題する動画を作成し、
118 動画サイトに投稿した。
119
120 動画に
121 は、
122 乙が特定されない加工が施されていたが、
123 Xが繰り返し取材をし、
124 取材対象者に強く証言を迫
125 る様子が映っていた。
126
127 この動画は反響を呼び、
128 その後、
129 マスコミ各社が後追い報道を行ったことも
130 あって、
131 濫開発による森林破壊に加担しているとして甲の製品の不買運動が起こるなどの影響をも
132 たらした。
133
134
135 甲は、
136 労働者との間に守秘義務契約を交わしており、
137 同契約書には、
138 原材料の輸入元を含む取引
139 先の情報は守秘義務の対象となる企業秘密に含まれること、
140 守秘義務の対象となる情報は、
141 退職後
142 においても、
143 開示、
144 漏えい又は使用しないことが明記されている。
145
146 同契約書によれば、
147 守秘義務に
148 反した場合は損害を賠償することとされている。
149
150
151 Xの作成した動画を見た甲は、
152 乙が情報を漏えいしたと考え、
153 乙に対して守秘義務違反に基づく
154 損害賠償請求訴訟を提起し、
155 その訴訟においてXを証人として尋問することを求め、
156 裁判所はこれ
157 を認めた。
158
159 Xは、
160 証人尋問においてインタビューに応じた者の名前を問われたが、
161 民事訴訟法第1
162 97条第1項第3号所定の職業の秘密に該当するとして、
163 証言を拒んだ。
164
165 これに対し甲は、
166 Xの証
167 言拒絶は認められないと主張している。
168
169
170 この証言拒絶について、
171 Xの立場から憲法に基づく主張を述べた上で、
172 それに対して想定される
173 反論や関連する判例を踏まえて、
174 あなた自身の見解を述べなさい。
175
176
177
178 - 2 -
179
180 [行政法]
181 A市では、
182 浄化槽(便所と連結してし尿等を処理し、
183 公共下水道以外に放流するための設備又は
184 施設をいう。
185
186 )の設置による便所の水洗化が進んだ昭和50年代に、
187 それまで十数社存在していた
188 し尿収集業者がB、
189 Cの2社に集約され、
190 それ以後、
191 当該2社が浄化槽汚泥の収集運搬に従事して
192 きた。
193
194 一般に、
195 浄化槽汚泥の発生量は浄化槽の設置世帯数に応じてほぼ一定しており、
196 また、
197 その
198 収集運搬に支障が生じると、
199 衛生状態が悪化し、
200 住民の健康と生活環境に被害が生じるおそれがあ
201 る。
202
203 そのためA市は、
204 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。
205
206 )第6条に規定す
207 る一般廃棄物処理計画に当たる計画(以下「旧計画」という。
208
209 )の中で、
210 「一般廃棄物の適正な処
211 理(中略)を実施する者に関する基本的事項」(同条第2項第4号)として、
212 「一般廃棄物(浄化
213 槽汚泥)の収集運搬についてはB、
214 Cの2社に一般廃棄物収集運搬業の許可を与えてこれを行わせ
215 る。
216
217 」と記載するとともに、
218 「大幅な変動がない限り、
219 新たな許可は行わないものとする。
220
221 」と記
222 載していた。
223
224 その結果、
225 この2社体制の下で、
226 A市の区域内で発生する浄化槽汚泥の量に対してお
227 よそ2倍の収集運搬能力が確保され、
228 適切な収集運搬体制が維持されていた。
229
230 A市では、
231 公共下水
232 道の普及が十分でない中、
233 便所のくみ取り式から水洗式への改修が進んでいるため、
234 浄化槽の設置
235 世帯数は微増しているが、
236 将来の人口及び総世帯数は減少が予想されているため、
237 旧計画中の「発
238 生量及び処理量の見込み」(同項第1号)においては、
239 浄化槽汚泥について、
240 今後は発生量及び処
241 理量の減少が見込まれる旨記載されていた。
242
243 BとCは、
244 過当競争の結果として経営状態が悪化し、
245
246 それにより一般廃棄物収集運搬業務に支障が生じる事態を回避することで、
247 その適正な運営を継続
248 的かつ安定的に確保するため、
249 それぞれの担当区域を取り決める事実上の区域割りを行ってきた。
250
251
252 そうした中、
253 浄化槽汚泥の処理を含む公共サービスへの競争原理の導入を主張して当選した新A
254 市長は、
255 浄化槽の設置件数の増加が予想されること、
256 及び競争原理を導入する必要性を主張して、
257
258 それまで旧計画に定められてきた上述のB、
259 Cの2社体制と新たな許可をしない旨の記述を削除
260 し、
261 「一般廃棄物(浄化槽汚泥)収集運搬業にあっては、
262 競争性を確保するため、
263 浄化槽の設置件
264 数の推移に応じて新規の許可を検討する。
265
266 」との記載を追加する内容で、
267 旧計画を改訂した(以
268 下、
269 旧計画を改訂したものを「新計画」という。
270
271 )。
272
273 さらに、
274 旧計画の基礎とされた将来の人口及
275 び総世帯数の減少予測は新計画においても維持されているにもかかわらず、
276 新計画中の「発生量及
277 び処理量の見込み」において、
278 浄化槽の設置件数の増加に伴い、
279 浄化槽汚泥について、
280 発生量及び
281 処理量の大幅な増加が見込まれる旨記載された。
282
283
284 令和2年4月1日付けで、
285 新A市長は、
286 Dの申請に基づき、
287 法第7条第2項に基づく政令が一般
288 廃棄物収集運搬業の許可の有効期間を2年と定めていることに従い、
289 期限を令和4年3月31日と
290 する一般廃棄物(浄化槽汚泥)収集運搬業の許可(以下「本件許可」という。
291
292 )をした。
293
294 Dの代表
295 者はBの代表者の実弟であり、
296 従来、
297 一般廃棄物収集運搬業に従事した経験はなかった。
298
299 Dの営業
300 所所在地は、
301 Bの営業所所在地と同一の場所になっており、
302 D単独の社屋等は存在せず、
303 Dの代表
304 者はBの営業所内で執務を行っていた。
305
306 さらに、
307 BとDは業務提携契約を締結し、
308 その中で、
309 Bが
310 雇用する人員が随時Dに出向すること、
311 Bが保有している運搬車をDも使用し得ることが定められ
312 ていた。
313
314
315 令和2年4月以降、
316 Dは従来Cが担当していた区域においてCからの乗換客を獲得しつつあり、
317
318 それによりCの売上げは徐々に減少している。
319
320 そこで、
321 Cは、
322 同年9月30日、
323 本件許可の取消訴
324 訟(以下「本件取消訴訟」という。
325
326 )を提起した。
327
328
329 なお、
330 法及び「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」の抜粋を【資料】として掲げるの
331 で、
332 適宜参照しなさい。
333
334
335
336 - 3 -
337
338 〔設問1〕
339
340
341 Cに本件取消訴訟における原告適格は認められるか、
342 関係する法令の規定を挙げながら、
343 検討
344 しなさい。
345
346 なお、
347 解答に当たっては、
348 市町村において既存の一般廃棄物収集運搬業者によって適
349 正な収集及び運搬がされていることを踏まえて法第6条に規定する一般廃棄物処理計画が策定さ
350 れている場合には、
351 新規の一般廃棄物収集運搬業の許可申請を法第7条第5項第2号の要件を充
352 足しないものとして不許可とすることが適法と解されていることを前提にしなさい。
353
354
355
356
357
358 本件取消訴訟係属中に令和4年3月31日が経過し、
359 同年4月1日付けで本件許可が更新され
360 た。
361
362 A市は、
363 同年3月31日の経過により本件許可は失効し、
364 本件取消訴訟の訴えの利益は失わ
365 れたと主張している。
366
367 本件取消訴訟の訴えの利益は肯定されると主張したいCとしては、
368 どのよ
369 うな主張をすることが考えられるか、
370 関係する法令の規定を挙げながら、
371 検討しなさい。
372
373 なお、
374
375 解答に当たっては、
376 Cに原告適格が認められることを前提にしなさい。
377
378
379
380 〔設問2〕
381 A市は、
382 本件取消訴訟において、
383 本件許可は新計画に適合していること、
384 法第6条に規定する一
385 般廃棄物処理計画の策定及び内容の変更についてはA市長に裁量が認められており、
386 新計画の内容
387 はその裁量の範囲内であること、
388 並びにDに事業遂行能力がある以上、
389 自由な参入を認めざるを得
390 ないことを主張している。
391
392 これに対し、
393 法第7条第5項第2号及び第3号の各要件に関して、
394 Cは
395 本件許可の違法事由としてどのような主張をすることが考えられるか、
396 検討しなさい。
397
398 なお、
399 解答
400 に当たっては、
401 本件取消訴訟が適法であることを前提にしなさい。
402
403
404
405 - 4 -
406
407 【資料】
408 〇
409
410 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)(抜粋)
411
412 (目的)
413 第1条
414
415 この法律は、
416 廃棄物の排出を抑制し、
417 及び廃棄物の適正な分別、
418 保管、
419 収集、
420 運搬、
421 再生、
422
423
424 処分等の処理をし、
425 並びに生活環境を清潔にすることにより、
426 生活環境の保全及び公衆衛生の向
427 上を図ることを目的とする。
428
429
430 (一般廃棄物処理計画)
431 第6条
432
433 市町村は、
434 当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(以下「一般廃棄物処理計
435
436 画」という。
437
438 )を定めなければならない。
439
440
441 2
442
443 一般廃棄物処理計画には、
444 環境省令で定めるところにより、
445 当該市町村の区域内の一般廃棄物の
446 処理に関し、
447 次に掲げる事項を定めるものとする。
448
449
450 一
451
452 一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み
453
454 二
455
456 一般廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項
457
458 三
459
460 (略)
461
462 四
463
464 一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項
465
466 五
467
468 (略)
469
470 3・4
471
472 (略)
473
474 (市町村の処理等)
475 第6条の2
476
477 市町村は、
478 一般廃棄物処理計画に従つて、
479 その区域内における一般廃棄物を生活環境の
480
481 保全上支障が生じないうちに収集し、
482 これを運搬し、
483 及び処分(中略)しなければならない。
484
485
486 2〜7
487
488 (略)
489
490 (一般廃棄物処理業)
491 第7条
492
493 一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、
494 当該業を行おうとする区域(中
495
496 略)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。
497
498 (以下略)
499 2
500
501 前項の許可は、
502 1年を下らない政令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、
503 その期間の経
504 過によつて、
505 その効力を失う。
506
507
508
509 3
510
511 前項の更新の申請があつた場合において、
512 同項の期間(以下この項及び次項において「許可の有
513 効期間」という。
514
515 )の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、
516 従前の許可は、
517
518 許可の有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、
519 なおその効力を有する。
520
521
522
523 4
524
525 前項の場合において、
526 許可の更新がされたときは、
527 その許可の有効期間は、
528 従前の許可の有効期
529 間の満了の日の翌日から起算するものとする。
530
531
532
533 5
534
535 市町村長は、
536 第1項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなけれ
537 ば、
538 同項の許可をしてはならない。
539
540
541 一
542
543 当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。
544
545
546
547 二
548
549 その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。
550
551
552
553 三
554
555 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、
556 かつ、
557 継続して行うに足
558 りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
559
560
561
562 四
563
564 (略)
565
566 6〜16
567
568 (略)
569
570 - 5 -
571
572 〇
573
574 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)(抜粋)
575
576 (一般廃棄物収集運搬業の許可の基準)
577 第2条の2
578
579 法第7条第5項第3号(中略)の規定による環境省令で定める基準は、
580 次のとおりとす
581
582 る。
583
584
585 一
586
587 施設に係る基準
588 イ
589
590 一般廃棄物が飛散し、
591 及び流出し、
592 並びに悪臭が漏れるおそれのない運搬車、
593 運搬船、
594 運
595 搬容器その他の運搬施設を有すること。
596
597
598
599 ロ
600 二
601
602 (略)
603
604 申請者の能力に係る基準
605 イ
606
607 一般廃棄物の収集又は運搬を的確に行うに足りる知識及び技能を有すること。
608
609
610
611 ロ
612
613 一般廃棄物の収集又は運搬を的確に、
614 かつ、
615 継続して行うに足りる経理的基礎を有するこ
616 と。
617
618
619
620 - 6 -
621
622