1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [刑
7
8 法]
9
10 以下の【事例1】及び【事例2】を読んで、
11 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
12
13
14 【事例1】
15
16
17 甲は、
18 かねてより会社の上司であるXから執ように叱責されるなどしていたことに恨みを募ら
19 せ、
20 登山が趣味のXを登山に誘って山中に連れ出し、
21 Xを殺害した上でXが滑落によって事故死
22 したように装い、
23 犯跡を隠蔽しようと考えた。
24
25 甲は、
26 某月1日、
27 Xを登山に誘い、
28 Xが喜んで応
29 じたことから、
30 同月10日、
31 Xと2人で1泊2日の登山に出掛けた。
32
33
34
35
36
37 甲とXは、
38 同日午前10時頃から登山を始めたが、
39 同日午後4時頃、
40 天候が急変して降雨とな
41 ったため、
42 当初の登山計画を変更し、
43 山頂付近にあった無人の小屋で一晩を過ごすことにした。
44
45
46 甲は、
47 同日午後5時頃、
48 疲れていたXが上記小屋内で熟睡したことから、
49 この機会にXを殺して
50 しまおうと決めた。
51
52 ちょうどその頃、
53 雨が止んだため、
54 甲は、
55 Xを殺した後にXの滑落死を装う
56 ための場所をあらかじめ探そうと思い立ち、
57 上記小屋周辺を下見しておくことにした。
58
59 甲は、
60
61 ばらくの間、
62 上記小屋を離れ、
63 外に出ることにしたが、
64 外にいる間にXに逃げられないようにす
65 るため、
66 同日午後5時5分頃、
67 同小屋の出入口扉を外側からロープできつく縛り、
68 内側から同扉
69 を開けられないようにした。
70
71 なお、
72 上記小屋は、
73 木造平屋建てで、
74 窓はなく、
75 出入口は上記扉1
76 か所のみであった。
77
78
79
80
81
82 その後、
83 甲は、
84 上記小屋から歩いて約100メートル離れた場所に、
85 高さ約70メートルの岩
86 場の崖があるのを確認し、
87 同日午後6時頃、
88 同小屋に戻り、
89 上記ロープをほどいた。
90
91 Xは、
92 同日
93 午後5時頃に熟睡した後、
94 一度も目を覚まさなかった。
95
96
97
98 〔設問1〕
99 【事例1】において、
100 甲に監禁罪が成立するという主張の当否について、
101 具体的な事実関係を
102 踏まえつつ、
103 反対の立場からの主張にも言及して論じなさい。
104
105
106 【事例2】(【事例1】の事実に続けて、
107 以下の事実があったものとする。
108
109
110
111
112 甲は、
113 上記小屋内に戻った後、
114 Xを殺そうと思ったが、
115 死体がすぐに見つかってしまっては何
116 らかの殺害の痕跡が発見され、
117 滑落による事故死ではないことが判明してしまうと不安に思っ
118 た。
119
120 そこで、
121 甲は、
122 同日午後6時10分頃、
123 Xの携帯電話機をXの死体から遠く離れた場所に捨
124 てておけば、
125 同携帯電話機のGPS機能によって発信される位置情報をXの親族等が取得した場
126 合であっても、
127 Xの死体の発見を困難にできる上、
128 Xが甲とはぐれた後、
129 山中をさまよって滑落
130 したかのように装う犯跡隠蔽に使えると考え、
131 眠っているXの上着のポケットからXの携帯電話
132 機1台を取り出し、
133 自分のリュックサックに入れた。
134
135
136
137
138
139 甲は、
140 同日午後6時20分頃、
141 Xを殺すため、
142 眠っているXの首を両手で強く絞め付け、
143 Xが
144 ぐったりしたのを見て、
145 Xが死亡したものと思い込んだ。
146
147 しかし、
148 この時点で、
149 Xは、
150 意識を失
151 っただけで、
152 実際には生きていた。
153
154
155
156
157
158 甲は、
159 同日午後6時25分頃、
160 Xの死体を上記崖まで運んで崖下に落とすため、
161 Xの背後から
162 両脇に両手を回してXの身体を抱え上げた。
163
164 その際、
165 XのズボンのポケットからXの財布が床に
166 落ち、
167 これを見た甲は、
168 にわかに同財布内の現金が欲しくなり、
169 同財布内から現金3万円を抜き
170 取って自分のズボンのポケットに入れ、
171 同財布をXのポケットに戻した。
172
173
174
175
176
177 甲は、
178 同日午後7時頃、
179 Xを上記崖まで運び、
180 Xを崖下に落とした。
181
182 甲は、
183 Xが既に死んでい
184 ると軽信し続けていたが、
185 この時点でもXはまだ生きており、
186 上記崖から地面に落下した際、
187
188 部等を地面に強く打ち付け、
189 頭部外傷により即死した。
190
191
192
193 - 2 -
194
195
196
197 甲は、
198 すぐに上記崖から離れ、
199 同日午後10時頃、
200 同崖から約6キロメートル離れた場所まで
201 来ると、
202 その場に上記携帯電話機を捨てた。
203
204 同月11日、
205 Xが帰宅しなかったことから、
206 Xの親
207 族が上記携帯電話機のGPS機能によって発信される位置情報を取得し、
208 その情報を基にXの捜
209 索が行われたが、
210 Xの発見には至らなかった。
211
212
213
214 〔設問2〕
215 【事例2】における甲の罪責を論じなさい(特別法違反の点は除く。
216
217 )。
218
219
220
221 - 3 -
222
223 [刑事訴訟法]
224 次の【事例】を読んで、
225 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
226
227
228 【事例】
229
230
231 司法警察員Pは、
232 令和4年7月1日にH県内の飲食店で甲が同店店員の顔面を殴打した(以下
233 「本件暴行」という。
234
235 )という事件を捜査し、
236 甲を逮捕することなく、
237 H地方検察庁検察官Qに同
238 事件を送致した。
239
240 しかし、
241 甲は、
242 まもなく所在不明となった。
243
244
245
246 2 その後、
247 同年8月20日、
248 H県内で、
249 V方に何者かが侵入し、
250 Vの顔面を多数回殴打してその両
251 手両足をひもでしばるなどの暴行を加え、
252 V所有の高級腕時計を奪い、
253 その際、
254 Vに傷害を負わせ
255 た(以下「本件住居侵入・強盗致傷」という。
256
257 )という事件が発生した。
258
259 そして、
260 Vの供述等か
261 ら、
262 実行犯は1人であることが想定された。
263
264 Pは、
265 同事件が発生した直後、
266 実行犯とは容ぼうが異
267 なる甲が同腕時計を中古品買取店に売却した事実を把握し、
268 甲が同事件の実行犯と共犯関係にある
269 との嫌疑を抱いた。
270
271 なお、
272 捜査の過程で、
273 甲の所在は判明したが、
274 実行犯の氏名や住居等は判明し
275 なかった。
276
277
278 そこで、
279 Pは、
280 同年9月7日、
281 本件住居侵入・強盗致傷の事実で甲の逮捕状を請求し、
282 その発付
283 を受け、
284 甲を通常逮捕し、
285 同月9日、
286 Qに送致した。
287
288 Qは、
289 同日、
290 @H地方裁判所裁判官に対し、
291
292 本件住居侵入・強盗致傷の事実で甲の勾留を請求した。
293
294
295 3 甲は、
296 逮捕・勾留中、
297 一貫して黙秘した。
298
299 Pは、
300 その間、
301 甲の所持する携帯電話機や甲方から押
302 収したパソコン等の解析、
303 甲と交友関係にある者の取調べ、
304 V方周辺の防犯カメラに映っていた不
305 審者に関する更なる聞き込みなどの捜査をしたが、
306 実行犯の氏名及び所在も前記腕時計が甲に渡っ
307 た状況等も判明しなかった。
308
309
310 そのため、
311 Qは、
312 本件住居侵入・強盗致傷の事実で甲について公判請求するのは困難であると考
313 え、
314 勾留延長期間が満了する同月28日、
315 甲を釈放した。
316
317
318 4 乙は、
319 同年10月6日、
320 別事件で逮捕され、
321 その後の取調べにおいて、
322 Pに対し、
323 本件住居侵入
324 ・強盗致傷について、
325 V方に侵入して金品を強取することを甲と相談し、
326 乙が実行し、
327 甲が換金す
328 る旨の役割分担をして犯行に及んだことを供述した。
329
330
331 そして、
332 Pが乙を逮捕した際に押収した乙の携帯電話機を解析したところ、
333 本件住居侵入・強盗
334 致傷について、
335 甲との共謀を裏付けるメッセージのやりとりが記録されていることが分かった。
336
337
338 そのため、
339 Pは、
340 甲に対する嫌疑が高まったと考えて、
341 同月19日、
342 本件住居侵入・強盗致傷の
343 事実につき、
344 改めて逮捕状を請求し、
345 その発付を受け、
346 甲を通常逮捕した上、
347 同月21日、
348 Qに送
349 致した。
350
351 そして、
352 Qは、
353 同日、
354 AH地方裁判所裁判官に対し、
355 本件住居侵入・強盗致傷の事実で甲
356 の勾留を請求した。
357
358
359 〔設問1〕
360 下線部@につき、
361 仮に検察官が本件住居侵入・強盗致傷の事実に本件暴行の事実を付加して甲の勾
362 留を請求した場合、
363 裁判官は甲を本件住居侵入・強盗致傷の事実及び本件暴行の事実で勾留すること
364 ができるかについて論じなさい。
365
366 ただし、
367 各事実につき、
368 勾留の理由及び必要性はあるものとする。
369
370
371 〔設問2〕
372 下線部Aにつき、
373 裁判官は甲を勾留することができるかについて論じなさい。
374
375
376
377 - 4 -
378
379