1 論文式試験問題集[倒
2
3 -1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 次の文章を読んで、
16 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
17
18
19 【事例】
20 A社は、
21 高級婦人服を中心とし、
22 学生服の販売も手掛けている総合衣料品店を経営している、
23 資
24 本金1000万円の株式会社である。
25
26 A社は、
27 衣料品の販売不振や販売商品の多角化による事業拡
28 大の失敗により、
29 総額2億円の負債を抱えて債務超過に陥り、
30 令和5年3月1日、
31 再生手続開始の
32 申立てをした。
33
34 裁判所は、
35 同日、
36 監督命令を発令し、
37 同月8日、
38 A社について再生手続開始の決定
39 をした。
40
41 なお、
42 監督命令と同時に発令された弁済禁止の保全処分において、
43 10万円以下の債務は
44 弁済禁止の対象外とされた。
45
46
47 A社の株主は2名で、
48 株主構成としては、
49 B(A社の代表取締役)が60株を、
50 Bの父であるC
51 が40株を保有している。
52
53
54 A社の再生手続開始の決定時の債権者は、
55 金融機関が計3社、
56 衣料品の製造委託先10社や販売
57 商品の仕入先20社を含む商取引先が計50社、
58 A社の店舗で使用することができるクーポン券の
59 保有者が300名である。
60
61
62 〔設問1〕
63 以下の小問からまでに答えなさい(各小問は独立した問題である。
64
65 )。
66
67
68
69
70 販売商品の仕入先20社は、
71 A社にとって、
72 いずれも他の仕入先を見付けることも可能な取引
73 先であり、
74 取引継続の必要性の高い取引先ではない。
75
76 仕入先20社は、
77 再生手続開始の決定後で
78 ある令和5年3月13日から同月15日までの間にかけて、
79 同年2月末日までに納品した商品に
80 ついての未払売買代金を約定どおりに支払ってほしいとA社に伝えてきている。
81
82
83 A社は、
84 仕入先20社に対し、
85 未払売買代金を約定どおりに支払うことができるか、
86 説明しな
87 さい。
88
89
90
91
92
93 クーポン券は、
94 令和5年2月末日までに、
95 A社の店舗で学生服を購入した者に対し、
96 購入金額
97 に応じて配布されたもので、
98 額面が1000円であり、
99 A社の店舗において、
100 購入した学生服の
101 仕立て直しや校章入りワイシャツの購入などをする際に、
102 金券として使用することができる。
103
104 ク
105 ーポン券を最も多く保有する者は、
106 1人で10枚(額面合計1万円)を保有している。
107
108 クーポン
109 券の保有者300名が有するクーポン券の額面総額は、
110 合計100万円である。
111
112 A社は、
113 再生手
114 続開始の決定後の同年3月13日、
115 A社を学生服の指定販売店とする複数の学校から、
116 保護者か
117 ら学校に問合せが相次いでいるので、
118 直ちに対応してもらいたいとの連絡を受けた。
119
120 学校からの
121 連絡によれば、
122 保護者は、
123 学生服の仕立て直しや校章入りワイシャツの購入などをする際のクー
124 ポン券の使用に支障が出るのかについて不安があるようであり、
125 クーポン券を使用することがで
126 きない場合には、
127 店舗での混乱も予想される状況であった。
128
129
130 A社として、
131 再生手続開始の決定後、
132 店舗での混乱を回避し、
133 再生手続を円滑に進めるため
134 に、
135 保護者の要望に応じてクーポン券を使用させることができるか、
136 クーポン券の保有者の権利
137 が再生手続においてどのように取り扱われるかを述べた上で論じなさい。
138
139
140
141
142
143 製造委託先10社のうち高級服の製造を委託しているD社、
144 E社及びF社(以下「D社ら」と
145 いう。
146
147 )は、
148 その縫製技術の高さから、
149 早期に代替先を確保することが難しい委託先であり、
150 A
151 社販売の高級服を愛用する顧客層を維持するためにも不可欠な取引先である。
152
153 再生手続開始の決
154 定後の令和5年3月9日にA社がD社らに連絡を取ったところ、
155 D社らは、
156 A社に対し、
157 いずれ
158 もA社との取引継続に理解を示したが、
159 同年2月末日までに納品した高級服についての未払委託
160 料が約定期限である同年3月31日までに支払われなければ、
161 新たな取引はしないと伝えた。
162
163 D
164
165 -2 -
166
167 社、
168 E社及びF社に対する未払委託料は、
169 それぞれ60万円、
170 70万円、
171 80万円である。
172
173 A社
174 としては、
175 事業価値の劣化を回避するためにも、
176 D社らについて、
177 その要望に応じて、
178 未払委託
179 料を約定期限までに支払って今後も取引を続けたいと考えている。
180
181
182 A社として、
183 D社らに対する未払委託料を約定期限までに支払うことができるか、
184 論じなさ
185 い。
186
187
188 〔設問2〕
189 Bは、
190 A社の事業に関心を示してきた高級紳士服店を経営するG社に事業の全部の譲渡を行い、
191
192 その譲渡代金により、
193 債権者に一括して弁済したいと考えている。
194
195 そこで、
196 Bは、
197 再生計画により
198 事業譲渡を行うことも検討したが、
199 その間の事業価値の劣化により、
200 譲渡代金の低下やそれに伴う
201 弁済率の低下も予想されたことから、
202 早期に再生計画によらずにG社への事業譲渡を行いたいと考
203 えている。
204
205 これに対し、
206 A社の創業者であるCは、
207 事業規模縮小による自主再建を目指したいと考
208 えており、
209 事業譲渡を行うというBの方針に反対の意向を示している。
210
211 Bが想定するG社への事業
212 譲渡の対価は、
213 公認会計士作成の資料によれば適正な価格である。
214
215
216 A社として、
217 再生計画によらずに事業譲渡を迅速に行うために、
218 民事再生法上、
219 どのような方策
220 を採ることができるか、
221 その場合の裁判所における手続についても触れつつ論じなさい。
222
223
224
225 -3 -
226
227 -4 -
228
229 論文式試験問題集[租
230
231 -5 -
232
233 税
234
235 法]
236
237 [租
238
239 税
240
241 法]
242
243 A社は、
244 毎年4月1日から翌年3月31日までの期間を事業年度とする株式会社である。
245
246 A社
247 は、
248 平成20年6月1日、
249 甲土地をその時点における時価である1000万円の対価により取得した。
250
251
252 A社は、
253 平成29年頃から、
254 甲土地の売却先を探していたが、
255 適当な相手が見付からず、
256 結局、
257
258 平成30年6月1日、
259 A社の取締役の一人であるBとの間で甲土地を2000万円で売却する旨の
260 売買契約を締結した。
261
262 同日、
263 BがA社に売買代金を支払うとともに、
264 A社はBに対して甲土地を引
265 き渡し、
266 所有権移転登記を了した(以下、
267 この取引を「本件売買」という。
268
269 )。
270
271 A社は、
272 本件売買
273 時における甲土地の時価が2000万円であるという前提で、
274 平成30年4月1日から平成31年
275 3月31日までの期間の事業年度(以下「平成31年3月期」という。
276
277 )に係る法人税の申告・納
278 付をした。
279
280
281 Bは、
282 令和2年4月1日、
283 その子であるCに、
284 甲土地を贈与した。
285
286 ただし、
287 この贈与には、
288 Bの
289 D銀行に対する2500万円の金銭支払債務をCが引き受ける旨の負担が付いていた(以下、
290 この
291 贈与を「本件贈与」という。
292
293 )。
294
295 同日、
296 甲土地はBからCに引き渡され、
297 所有権移転登記を了し
298 た。
299
300 なお、
301 本件贈与時における甲土地の時価は、
302 5500万円である。
303
304
305 所轄税務署長Yは、
306 令和2年6月1日、
307 本件売買時における甲土地の時価は3000万円であ
308 り、
309 売買代金との差額である1000万円はA社からBに対する役員給与に当たるとして、
310 A社に
311 対して平成31年3月期の法人税の更正処分等をした(以下「本件処分等」という。
312
313 )。
314
315 A社は、
316
317 これに対して、
318 適法な不服申立てを経て訴訟を提起しており、
319 本件売買時における甲土地の時価は
320 2000万円であることを主張している。
321
322
323 Cは、
324 令和4年4月1日、
325 不動産業者に、
326 甲土地を6000万円の対価により譲渡した。
327
328
329 〔設問〕
330 1
331
332 本件売買に関して次の問いに答えなさい。
333
334
335
336
337 本件売買についてYの認定に従うならば、
338 平成31年3月期において、
339 本件売買によりA社に
340 生じる益金及び損金の額はどうなるか。
341
342
343
344
345
346 Yが令和2年6月1日に行った「本件処分等」には、
347 平成31年3月期の法人税の更正処分の
348 他に、
349 どのような行政処分が含まれる可能性があるか。
350
351 ただし、
352 地方法人税及び復興特別所得税
353 は考慮しなくてよい。
354
355
356
357 2
358
359 本件贈与に関して次の問いに答えなさい。
360
361
362
363
364 本件贈与は、
365 所得税法第60条第1項第1号に規定される「贈与」に当たるか。
366
367
368
369
370
371 本件売買時における甲土地の時価が2000万円であることを前提として、
372 本件贈与によって
373 生じるBの所得税の課税関係、
374 及び本件贈与により甲土地を取得したCにとっての甲土地の取得
375 費について説明しなさい。
376
377 なお、
378 甲土地に関しては、
379 問題文中に記された以外の取得費又は譲渡
380 費用はないものとする。
381
382
383
384
385
386 本件売買についてのYの認定を前提として、
387 本件贈与によって生じるBの所得税の課税関係、
388
389 及び本件贈与により甲土地を取得したCにとっての甲土地の取得費について説明しなさい。
390
391 な
392 お、
393 甲土地に関しては、
394 問題文中に記された以外の取得費又は譲渡費用はないものとする。
395
396
397
398 (参照条文)
399
400 所得税法施行令
401
402 (時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)
403 第169条
404
405 法第59条第1項第2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定め
406
407 る額は、
408 同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1
409 に満たない金額とする。
410
411
412
413 -6 -
414
415 論文式試験問題集[経
416
417 -7 -
418
419 済
420
421 法]
422
423 [経
424
425 済
426
427 法]
428
429 甲製品は特有の機能を有する事務機器であり、
430 甲製品に代替できる製品はない。
431
432 我が国における
433 甲製品のメーカーとして、
434 A社、
435 B社、
436 C社、
437 D社及びE社の5社(以下「5社」という。
438
439 )があ
440 り、
441 令和4年における各社のシェア(甲製品の国内における総販売額に占める各社の販売額の割
442 合)は、
443 それぞれ、
444 30パーセント、
445 25パーセント、
446 20パーセント、
447 15パーセント、
448 10パ
449 ーセントとなっている。
450
451 なお、
452 輸入は事実上行われていない。
453
454 また、
455 5社は、
456 甲製品事業の振興と
457 共通の利益の増進を目的として、
458 一般社団法人日本甲製品協会(以下「甲製品協会」という。
459
460 )を
461 設立している。
462
463
464 5社は、
465 それぞれ、
466 甲製品を直接ユーザーに販売している。
467
468 甲製品の需要の大部分は買換えに伴
469 うものであり、
470 一般に、
471 ユーザーは数年ごとに甲製品を買い換えている。
472
473 甲製品について、
474 メーカ
475 ーごとの性能、
476 使用方法等に大きな違いはないことから、
477 ユーザーは買換えに際して異なるメーカ
478 ーの甲製品を選択することが少なくなく、
479 5社間でユーザーの争奪が活発に行われてきている。
480
481
482 使用済みとなった甲製品については、
483 従来、
484 メーカーがユーザーから無償で引き取り、
485 整備等を
486 行った上で中古品として販売することもあるが、
487 多くは産業廃棄物処理業者に委託して廃棄してい
488 たほか、
489 ユーザーが自ら廃棄していた。
490
491
492 ところが、
493 数年前、
494 法令により、
495 使用済みの甲製品(整備等を行った上で中古品として販売され
496 るものを除く。
497
498 以下同じ。
499
500 )について、
501 製造販売したメーカーが回収し、
502 再利用が可能な部品等を
503 取り出し、
504 洗浄・検査等を行って、
505 甲製品の部品等としての再利用を可能とすること(以下「リサ
506 イクル」という。
507
508 )が義務付けられ、
509 所要の準備期間を置いて令和5年4月1日から施行されるこ
510 ととなった。
511
512 リサイクルを義務付ける法令には、
513 リサイクルに要する費用(以下「リサイクル費
514 用」という。
515
516 )について、
517 メーカーは合理的な範囲でユーザーに負担を求めることができる旨定め
518 られている。
519
520
521 リサイクル費用は、
522 回収した使用済みの甲製品から部品等を取り出して再利用が可能となるよう
523 に処理すること(以下「処理」という。
524
525 )に要する費用(処理施設を設置・運営する費用を含む。
526
527
528 以下「処理費用」という。
529
530 )と、
531 回収した使用済みの甲製品の処理施設への運送及び再利用される
532 部品等の処理施設から甲製品の製造・修理拠点への運送(以下、
533 合わせて「運送」という。
534
535 )に要
536 する費用(以下「運送費用」という。
537
538 )に大別される。
539
540 また、
541 部品等の再利用による製造費用の節
542 減額はメーカーにより異なっているが、
543 いずれのメーカーにおいても大きなものではない。
544
545
546 使用済みの甲製品のリサイクルが義務付けられるに際し、
547 甲製品協会において専門家を交えて対
548 応を検討した。
549
550 その結果、
551 各メーカーの甲製品はいずれも日本全国で販売されており、
552 処理施設は
553 運送費用との関係で全国に複数箇所設置する必要があるところ、
554 どのメーカーも単独では効率的な
555 規模の処理施設を設置・運営することはできないことが判明した。
556
557 このため、
558 甲製品協会は、
559 次の
560 内容の甲製品のリサイクルシステム(以下「本リサイクルシステム」という。
561
562 )を構築し、
563 実施す
564 ることを決定し、
565 会員5社に参加を求めた。
566
567 なお、
568 会員の本リサイクルシステムへの参加義務や会
569 員以外の者(新規参入者を含む。
570
571 )の利用等に関しては、
572 何ら取り決められていない。
573
574
575 【本リサイクルシステム】
576 甲製品協会は全国2箇所に処理施設を設置・運営し、
577 メーカーは同施設に使用済みの甲製品
578 の処理を委託する。
579
580 また、
581 運送は各メーカーが行う。
582
583
584 甲製品協会は、
585 令和5年4月1日から処理施設を運営することとし、
586 処理を受託する対価と
587 して、
588 使用済みの甲製品1台当たりの処理費用の実費額(以下「処理単価」という。
589
590 メーカーご
591 とに金額の違いは設けない。
592
593 )を決定し、
594 メーカーから徴収する。
595
596 処理単価は、
597 甲製品のユーザ
598 ー向け販売価格の10パーセント程度になる。
599
600
601
602 -8 -
603
604 メーカーは、
605 令和5年4月1日以降、
606 ユーザーから使用済みの甲製品を回収するに当たり、
607
608 リサイクル費用として、
609 処理単価の1.5倍相当額をユーザーから徴収する。
610
611
612 令和5年4月1日以降、
613 5社は、
614 いずれも本リサイクルシステムに参加しており、
615 同システムは
616 問題なく実施され、
617 5社は、
618 それぞれのユーザーから上記のリサイクル費用を徴収している。
619
620 ま
621 た、
622 5社間では、
623 ユーザーの争奪が引き続き活発に行われている。
624
625
626 〔設問〕
627 甲製品協会による本リサイクルシステムの構築・実施について、
628 私的独占の禁止及び公正取引の
629 確保に関する法律上の問題点を分析して検討しなさい。
630
631
632
633 -9 -
634
635 - 10 -
636
637 論文式試験問題集[知的財産法]
638
639 - 11 -
640
641 [知的財産法]
642 共に工作機械メーカーであるA社及びB社は、
643 精密部品の加工用の工作機械に関する共同研究開
644 発契約(以下「本件契約」という。
645
646 )を締結し、
647 いずれも研究開発部門に所属する、
648 A社の従業員
649 甲とB社の従業員乙が、
650 勤務時間内に、
651 A社及びB社の研究設備や施設を使用して共同研究開発し
652 た結果、
653 従来よりも精密で複雑な部品加工が可能な新たな工作機械を発明した(以下「本件発明」
654 という。
655
656 )。
657
658 本件発明の技術的思想の創作行為に対する甲及び乙の関与の程度は同等である。
659
660 ま
661 た、
662 本件契約には、
663 本件契約に基づき発明がなされた場合には、
664 各社に特許を受ける権利が帰属す
665 るために必要な措置をお互い講ずる旨の定めがあった。
666
667 共同研究開発中、
668 B社内では、
669 乙の上司か
670 ら、
671 乙が行っている研究方針について反対の意向が示されていたが、
672 乙は、
673 これに従わずに研究を
674 継続した結果、
675 本件発明に至ったものである。
676
677
678 A社の職務発明規程には、
679 従業員が発明をするに至った行為が職務に属する場合には、
680 当該発明
681 についての特許を受ける権利をA社が承継することができる旨の定めがあり、
682 B社の職務発明規程
683 には、
684 従業員が発明をするに至った行為が職務に属する場合には、
685 その発明が完成した時に、
686 当該
687 発明についての特許を受ける権利をB社が取得する旨の定めがあった。
688
689
690 以上の事実関係を前提として、
691 以下の各設問に答えよ。
692
693 ただし、
694 設問1及び設問2にそれぞれ記
695 載した追加的な事実関係は、
696 別個独立したものである。
697
698
699 〔設問1〕
700 甲が、
701 本件発明の完成後、
702 A社に本件発明について報告したところ、
703 A社は、
704 本件発明の特許を
705 受ける権利を甲から承継することとし、
706 甲とA社は、
707 特許を受ける権利の譲渡に必要な手続を行っ
708 た。
709
710 他方、
711 乙は、
712 乙の上司の反対を押し切って本件発明を完成させたことから、
713 本件発明の特許を
714 受ける権利は自己に帰属するものと考え、
715 甲に対し、
716 本件発明について一緒に特許出願をしようと
717 持ちかけた。
718
719 しかし、
720 甲は、
721 A社との間で、
722 特許を受ける権利の譲渡に必要な手続を済ませていた
723 ことから、
724 乙からの誘いを断った。
725
726 そのため、
727 乙は、
728 本件発明について、
729 乙を発明者として特許出
730 願を行い、
731 その後、
732 特許権の設定登録を受けた(以下、
733 登録された権利を「乙特許権」とい
734 う。
735
736 )。
737
738
739
740
741 工作機械メーカーであるC社は、
742 本件発明の実施品である工作機械(以下「C社機械」とい
743 う。
744
745 )の製造及び販売を開始した。
746
747 乙がC社に対し、
748 乙特許権に基づき、
749 C社機械の製造及び販
750 売の差止めを請求した場合、
751 この請求が認められるかについて論じなさい。
752
753
754
755
756
757 乙による単独出願を知ったA社及びB社は、
758 乙に対し、
759 乙特許権の移転を請求することができ
760 るかについて論じなさい。
761
762
763
764 〔設問2〕
765 A社及びB社は、
766 令和3年4月に本件発明について共同出願し、
767 令和5年7月に特許権の設定登
768 録を受けた(以下、
769 登録された権利を「AB特許権」という。
770
771 )。
772
773
774 D社は、
775 工作機械メーカーであるが、
776 令和元年秋頃から、
777 日本国内の工場において、
778 秘密裏に、
779
780 新たな工作機械の研究開発を続け、
781 本件発明の内容を知らずに、
782 独自に、
783 従来よりも精密で複雑な
784 部品加工が可能な新たな工作機械を開発し、
785 その製造図面を作成の上、
786 令和3年1月には当該工作
787 機械の試作品を製作した。
788
789 この試作品は本件発明の技術的範囲に属するものであった。
790
791 その後、
792 D
793 社は、
794 同工作機械の量産化に向けた事業化を進め、
795 同年8月から、
796 工作機械(以下「D社機械」と
797 いう。
798
799 )の製造及び販売を開始した。
800
801 D社機械は、
802 本件発明の技術的範囲に属するものであった。
803
804
805 また、
806 D社機械は、
807 前記試作品から仕様の一部が変更されていたが、
808 その変更に係る部分は、
809 従来
810 よりも精密で複雑な部品加工を可能にするための技術的手段とは無関係であった。
811
812
813
814 - 12 -
815
816
817
818 A社が、
819 AB特許権に基づき、
820 D社に対し、
821 D社機械の製造及び販売の差止めを請求した場
822 合、
823 その請求が認められるかについて論じなさい。
824
825
826
827
828
829 D社は、
830 工作機械メーカーであるE社に対し、
831 D社機械を販売し、
832 E社はそれを取引先に販売
833 している。
834
835 A社が、
836 AB特許権に基づき、
837 E社に対し、
838 D社機械の販売の差止めを請求した場
839 合、
840 その請求が認められるかについて論じなさい。
841
842
843
844
845
846 その後、
847 D社は、
848 E社に対し、
849 D社機械と同一の工作機械(以下「E社機械」という。
850
851 )の製
852 造を許諾し、
853 E社は、
854 E社機械を自ら製造し、
855 取引先に販売するようになった。
856
857 A社が、
858 AB特
859 許権に基づき、
860 E社に対し、
861 E社機械の製造及び販売の差止めを請求した場合、
862 その請求が認め
863 られるかについて論じなさい。
864
865
866
867 【参考】特許法施行規則(昭和35年3月8日通商産業省令第10号)
868 (特許権の移転の特例)
869 第40条の2
870
871 特許法第74条第1項の規定による特許権の移転の請求は、
872 自己が有すると認める
873
874 特許を受ける権利の持分に応じてするものとする。
875
876
877
878 - 13 -
879
880 - 14 -
881
882 論文式試験問題集[労
883
884 - 15 -
885
886 働
887
888 法]
889
890 [労
891
892 働
893
894 法]
895
896 次の事例を読んで、
897 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
898
899 なお、
900 会社法(平成17年
901 法律第86号)の適用について検討する必要はない。
902
903
904 【事例】
905 1
906
907 宿泊業を営むA社は、
908 国内にとどまらず国外においても広く事業を展開している。
909
910 A社は、
911 国
912 際的な人材を社内に育成するため、
913 入社5年目までの若手社員を対象とし、
914 英語力の強化や多様
915 性に対する理解のかん養、
916 社外ネットワークの構築等を図ることを目的とした海外研修制度を設
917 けていた。
918
919 同制度においては、
920 研修先となる大学・研究機関や専攻は、
921 対象となった社員の選択
922 に委ねられる一方で、
923 海外研修中、
924 職務に従事する場合と同額の基本給と賞与が支給され、
925 これ
926 らとは別に、
927 海外研修に係る費用(以下「海外研修費用」という。
928
929 )は、
930 A社が負担することと
931 されていた。
932
933
934 入社3年目のBは、
935 前記の海外研修制度に自らの意思で応募し、
936 選考を経て、
937 C国所在の大学
938 の大学院(国際関係学)への留学が決定した。
939
940 留学に先立ち、
941 A社は、
942 Bに対し、
943 海外研修中は
944 学業に精励すること、
945 学位取得後は直ちに帰国して職務に復帰すること、
946 帰国後60か月以内に
947 自己都合でA社を退職する場合は海外研修費用の全部又は一部を返還することを内容とする誓約
948 書について、
949 その内容を説明した上で署名して提出するよう求め、
950 Bはその内容を理解してこれ
951 に署名し、
952 A社に提出した。
953
954
955 A社は、
956 Bの留学に係る海外研修費用として、
957 渡航費、
958 大学院の学費及び寮費をその都度負担
959 した。
960
961 留学中、
962 Bは、
963 2か月に1回程度、
964 A社の全社員を対象とするオンライン研修(短いもの
965 で15分、
966 長いもので3時間程度のもの)を受講することのほかには、
967 A社の業務に従事するこ
968 とは求められず、
969 学業に専念・精励することができた。
970
971 Bは、
972 国際関係学の学位を取得後、
973 直ち
974 に帰国して職務に復帰した。
975
976
977 ところが、
978 Bは、
979 帰国後6か月で自己都合によりA社を退職した。
980
981
982
983 2
984
985 Dは、
986 クリーニングサービス業を営むE社(A社のグループ子会社)の社員であり、
987 A社が経
988 営するホテルでリネン類を回収し、
989 クリーニング後のリネン類を同ホテルに配達する業務に従事
990 していた。
991
992 また、
993 Fは、
994 清掃業を営むG社(A社のグループ子会社であり、
995 同社ほか数社から業
996 務委託を受けてホテルやオフィスの清掃業務を行うもの。
997
998 )の社員であり、
999 A社が経営するホテ
1000 ルで客室内の清掃やベッドメイク、
1001 備品補充等の業務に従事していた。
1002
1003
1004 Dは、
1005 リネン類の回収・配達の業務中にFと知り合い、
1006 同人に好意を持った。
1007
1008 Dは、
1009 Fが喜ぶ
1010 と思って同人に菓子やアクセサリーを贈り、
1011 同人がお礼を言って受け取ったことから、
1012 同人も自
1013 分に好意を持っていると思い込み、
1014 退勤するFに自宅近くまで追随したり、
1015 休日にFの自宅近く
1016 を歩き回ったりした。
1017
1018 さらに、
1019 Dは、
1020 配達するリネン類をホテル内の所定の場所ではなく備品室
1021 や客室に持ち込み、
1022 これを取りに来るFと二人きりになる状況を作るなどした。
1023
1024 そのような状況
1025 でDに肩や腰を触られ、
1026 恐怖を感じたFは、
1027 G社に相談した。
1028
1029 G社は、
1030 FがDと顔を合わせる機
1031 会はDがリネン類の回収・配達業務のためにホテルを訪れるごく短時間であり、
1032 その間にDと二
1033 人きりにならないよう注意すればよいだけであると考え、
1034 Fが主張する前記のDの行為について
1035 更に調査をしたり、
1036 Fの職務場所の変更を検討したりするなどはしなかった。
1037
1038 Fは出勤をすれば
1039 Dと会うことを避けられないことから、
1040 恐怖と苦痛を感じてG社を退職した。
1041
1042
1043 A社は、
1044 同社及びそのグループ会社によるコンプライアンス違反行為を予防し、
1045 又は現に生じ
1046 たコンプライアンス違反行為に対処するため、
1047 コンプライアンス相談窓口を設置し、
1048 同社及びそ
1049 のグループ会社の社員に同窓口の存在を周知するとともに、
1050 社員からの相談への対応を行ってい
1051 た。
1052
1053 G社の社員にも同社を通じて同窓口の存在が周知されていたが、
1054 前記のFの主張や同人の退
1055
1056 - 16 -
1057
1058 職に関し、
1059 G社が同人にA社の相談窓口への相談を勧めることはなかった。
1060
1061 Fは、
1062 退職から約1
1063 年経過後、
1064 同窓口に電話をかけ、
1065 E社の社員の行為により退職を余儀なくされたG社の社員がい
1066 ることを伝え、
1067 事実関係を調査し、
1068 当該E社の社員を厳正に処分するよう求めた。
1069
1070 これを受け、
1071
1072 A社は、
1073 E社及びG社に事実関係を確認したが、
1074 両社とも問題となる事実はないと回答したの
1075 で、
1076 それ以上の対応をしなかった。
1077
1078
1079 〔設問1〕
1080 【事例】の1を前提として、
1081 A社は、
1082 Bに対して、
1083 A社が負担した海外研修費用の返還を請求す
1084 ることができるか。
1085
1086 考えられる論点を挙げて検討し、
1087 あなたの見解を述べなさい。
1088
1089
1090 〔設問2〕
1091 【事例】の2を前提として、
1092 DのFに対する不法行為責任が生じる場合に、
1093 FはA社及びG社に
1094 対して何らかの責任を追及できるか。
1095
1096 考えられる論点を挙げて検討し、
1097 あなたの見解を述べなさ
1098 い。
1099
1100
1101
1102 - 17 -
1103
1104 - 18 -
1105
1106 論文式試験問題集[環
1107
1108 - 19 -
1109
1110 境
1111
1112 法]
1113
1114 [環
1115
1116 境
1117
1118 法]
1119
1120 A社は、
1121 長年、
1122 B県内にCが所有する甲土地を賃借し、
1123 同土地上にカドミウムを含有する排水を
1124 排出する(土壌汚染対策法上の)有害物質使用特定施設を伴う乙工場を保有し、
1125 これを稼働させて
1126 いたが、
1127 事業の見直しに伴い、
1128 乙工場の使用を廃止して解体・撤去した。
1129
1130 Dは、
1131 甲土地付近の丙土
1132 地を所有し、
1133 そこに居住し、
1134 庭に設置されていた井戸の揚水機によってくみ上げた井戸水を生活用
1135 水として利用していた。
1136
1137
1138 なお、
1139 以下の問いにおいて、
1140 水質汚濁防止法に基づく義務や措置は検討しなくてよい。
1141
1142
1143 〔設問1〕
1144
1145
1146 問題文の事例において、
1147 A社は、
1148 いかなる義務を負うか、
1149 根拠条文を挙げつつ説明しなさい。
1150
1151
1152
1153
1154
1155 問題文の事例において、
1156 B県知事は、
1157 A社以外に誰に対して、
1158 いかなる措置を採ることができ
1159 るか、
1160 根拠条文を挙げつつ説明しなさい。
1161
1162
1163
1164
1165
1166 の場合において、
1167 B県知事からの措置を受けたA社以外の者は、
1168 これに対してどのような訴
1169 訟を提起することができるか、
1170 説明しなさい。
1171
1172
1173
1174 〔設問2〕
1175 問題文の事例において、
1176 〔設問1〕でA社が義務を履行した結果、
1177 甲土地の広範囲において汚染
1178 状態に関する環境省令で定める基準を超えるカドミウムが検出され、
1179 その汚染により、
1180 人の健康に
1181 係る被害が生じるおそれがあるものとして政令が定める基準に該当することが確認された。
1182
1183
1184
1185
1186 B県知事は、
1187 甲土地について、
1188 いかなる措置を採ることができるか、
1189 根拠条文を挙げつつ説明
1190 しなさい。
1191
1192
1193
1194
1195
1196 の措置が採られた後、
1197 B県知事は、
1198 A社又はCに対して、
1199 いかなる場合に、
1200 いかなる措置を
1201 採ることができるか、
1202 根拠条文を挙げつつ説明しなさい。
1203
1204 なお、
1205 の措置が採られた後、
1206 CとA
1207 社は、
1208 甲土地の賃貸借契約を解除し、
1209 A社は、
1210 甲土地をCに返還しているものとする。
1211
1212
1213
1214
1215
1216 の場合において、
1217 B県知事の措置を受けてA社又はCが講じた実施措置が不十分な場合、
1218 B
1219 県知事は、
1220 A社又はCに対して、
1221 いかなる措置を採ることができるか、
1222 根拠条文を挙げつつ説明
1223 しなさい。
1224
1225
1226
1227 〔設問3〕
1228 問題文の事例において、
1229 Dは、
1230 甲土地にカドミウム汚染があり、
1231 その影響が丙土地にも及ぶ可能
1232 性があることを、
1233 新聞報道により知ったとする。
1234
1235 この場合において、
1236 Dは、
1237 A社に対して、
1238 どのよ
1239 うな法的請求をすることが考えられるか、
1240 法的根拠と要件に言及しつつ、
1241 簡潔に説明しなさい(損
1242 害賠償請求は考えなくてよい。
1243
1244 )。
1245
1246
1247
1248 【資料】
1249 ○
1250
1251 土壌汚染対策法施行令(平成14年政令第336号)(抜粋)
1252
1253 (特定有害物質)
1254 第1条
1255
1256 土壌汚染対策法(以下「法」という。
1257
1258 )第2条第1項の政令で定める物質は、
1259 次に掲げる物
1260
1261 質とする。
1262
1263
1264 一
1265
1266 カドミウム及びその化合物(以下略)
1267
1268 - 20 -
1269
1270 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1271
1272 - 21 -
1273
1274 [国際関係法(公法系)]
1275 【事例】
1276 A国では、
1277 B国からの分離・独立を主張するB国内の少数民族団体αの指導により、
1278 在A国のB
1279 国大使館前で連日デモ運動が行われ、
1280 その動きは日増しに激化していた。
1281
1282 事態を憂慮したB国によ
1283 る警備強化の要請にもかかわらず、
1284 A国の対応は鈍く、
1285 A国の警察をB国大使館付近に配置して警
1286 備に当たらせるなどの方策を講じることは一切なかった。
1287
1288 そのような中、
1289 αのメンバーがデモに乗
1290 じてB国大使館敷地内に火炎瓶を投げ込み、
1291 同大使館の建物に火災が発生した。
1292
1293
1294 近隣住民の通報によりA国の消防隊が出動してB国大使館に到着したところ、
1295 B国大使館員は全
1296 員、
1297 既に同大使館の敷地外に避難していたほか、
1298 B国大使もC国に出張して不在であり、
1299 A国から
1300 B国大使に連絡を取ることはできなかった。
1301
1302 その間にも火災はB国大使館の建物全体に広がり、
1303 同
1304 大使館の敷地周辺に所在する建物への延焼のおそれが生じたため、
1305 A国の消防隊は、
1306 B国から同国
1307 大使館の敷地内への立入許可を得ることなく、
1308 敷地内で消火活動を開始した。
1309
1310 B国大使館の建物は
1311 全焼したが、
1312 早期の消火活動の結果、
1313 周辺建物への延焼は免れた。
1314
1315
1316 A国の消防隊が消火活動を行う過程で、
1317 B国大使館内にC国国民Xが監禁されているのが発見さ
1318 れた。
1319
1320 Xは消防隊員により救助され、
1321 B国大使館付近の病院に搬送された。
1322
1323 また、
1324 A国の消防隊
1325 は、
1326 A国外務省を通じて、
1327 Xを救助した旨を在A国のC国大使館に通報した。
1328
1329 その後、
1330 病院でC国
1331 領事がXと面会し事情を尋ねたところ、
1332 Xは、
1333 A国滞在中に、
1334 B国大使館員により強制的にB国大
1335 使館に連行され監禁されたことが判明した。
1336
1337
1338 在A国のB国大使は、
1339 A国の消防隊の消火活動が終了した後にA国に再入国し、
1340 この間のB国大
1341 使館をめぐるA国の行為について、
1342 外交関係に関するウィーン条約(以下「外交関係条約」とい
1343 う。
1344
1345 )の違反を理由にA国に対して抗議した。
1346
1347 また、
1348 B国は、
1349 Xに関し、
1350 Xによるαへの活動支援
1351 がB国国内法違反に当たる疑いがあるため、
1352 同人をB国大使館に連行して同大使館内に留置したの
1353 であり、
1354 後日B国へ移送する予定であったと主張して、
1355 A国に対しXの身柄の引渡しを求めた。
1356
1357 こ
1358 れに対して、
1359 A国は、
1360 B国によるXの身柄の引渡請求には応じなかった。
1361
1362
1363 Xは、
1364 退院後、
1365 在A国のC国大使館に身を寄せた。
1366
1367 そして、
1368 C国は、
1369 Xの身体の自由が侵害され
1370 たことなどを理由にB国に対して外交的保護権を行使して損害賠償請求を行った。
1371
1372 他方、
1373 A国は、
1374
1375 B国との間に、
1376 外交関係条約を含む国際法の解釈又は適用に関する紛争が存在することをB国に通
1377 告したが、
1378 2か月経過してもB国からは仲裁裁判所への付託を含むいかなる回答も受領しなかった
1379 ことから、
1380 当該紛争を国際司法裁判所(以下「ICJ」という。
1381
1382 )に付託することにした。
1383
1384
1385 A国、
1386 B国及びC国はいずれも国連の原加盟国であるとともに、
1387 外交関係条約及び紛争の義務的
1388 解決に関する選択議定書(以下「選択議定書」という。
1389
1390 )の締約国であり、
1391 外交関係条約にもその
1392 選択議定書にも留保は付していない。
1393
1394 また、
1395 これら3国は、
1396 ICJ規程第36条第2項に基づく宣
1397 言を留保なしに行っている。
1398
1399 なお、
1400 A国とB国の間には犯罪人引渡しに関する条約は存在しない。
1401
1402
1403 以上の事実を基に、
1404 以下の設問に答えなさい。
1405
1406
1407 〔設問〕
1408 1.A国は、
1409 外交関係条約上、
1410 いかなる義務の違反に問われ得るかについて論じなさい。
1411
1412
1413 2.B国大使館によるXの身柄の拘束について、
1414 A国がB国のいかなる国際法違反を問うことが可
1415 能かについて論じなさい。
1416
1417
1418 3.A国が前記設問2においてB国の国際法義務違反の追及が可能である場合、
1419 B国をICJに一
1420 方的に訴えるために可能な裁判管轄権の基礎を全て論じなさい。
1421
1422
1423 4.C国がB国に対して外交的保護権を行使するための要件を述べ、
1424 この事例においてその要件が
1425 満たされるかどうかについて論じなさい。
1426
1427
1428
1429 - 22 -
1430
1431 【参考資料】
1432
1433 選択議定書(抜粋)
1434
1435 この議定書及び1961年3月2日から同年4月14日までウィーンで開催された国際連合の会
1436 議において採択された外交関係に関するウィーン条約(以下「条約」という。
1437
1438 )の当事国は、
1439
1440 条約の解釈又は適用から生ずるあらゆる紛争を、
1441 自国に関するものである限り、
1442 他の解決方法が
1443 当事国により合理的な期間内に合意される場合を除くほか、
1444 国際司法裁判所の義務的管轄に付託する
1445 希望を有することを表明して、
1446
1447 次のとおり協定した。
1448
1449
1450 第1条
1451 条約の解釈又は適用から生ずる紛争は、
1452 国際司法裁判所の義務的管轄の範囲内に属するものとし、
1453
1454 したがつて、
1455 これらの紛争は、
1456 この議定書の当事国である紛争のいずれかの当事国が行なう請求によ
1457 り、
1458 国際司法裁判所に付託することができる。
1459
1460
1461 第2条
1462 両当事国は、
1463 一方の当事国が、
1464 他方の当事国に対し、
1465 紛争が存在する旨の見解を通告した後2箇月
1466 の期間内に、
1467 その紛争を国際司法裁判所にではなく仲裁裁判所に付託することにつき合意することが
1468 できる。
1469
1470 前記の期間が経過した後は、
1471 いずれか一方の当事国は、
1472 請求により、
1473 当該紛争を国際司法裁
1474 判所に付託することができる。
1475
1476
1477 第3条
1478 1
1479
1480 両当事国は、
1481 第2条に規定する2箇月の期間内においては、
1482 国際司法裁判所に付託する前に調停
1483 手続を執ることにつき、
1484 合意することができる。
1485
1486
1487
1488 2
1489
1490 調停委員会は、
1491 その構成の後5箇月以内に勧告を行なわなければならない。
1492
1493 勧告が行なわれた後
1494 2箇月以内に紛争の当事国がその勧告を受諾しない場合には、
1495 いずれか一方の当事国は、
1496 請求によ
1497 り、
1498 当該紛争を国際司法裁判所に付託することができる。
1499
1500
1501
1502 - 23 -
1503
1504 - 24 -
1505
1506 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1507
1508 - 25 -
1509
1510 [国際関係法(私法系)]
1511 Aは、
1512 いずれも日本在住の甲国人である両親の間の子として日本で生まれ、
1513 ずっと日本で暮らし
1514 てきた。
1515
1516 大学生になったAは、
1517 夏季休暇を利用して、
1518 一人で甲国内を1か月間旅行する計画を立
1519 て、
1520 初めて甲国を訪れた。
1521
1522 Aは、
1523 かつて両親から聞いた断片的な情報に基づき、
1524 甲国は夏でも比較
1525 的過ごしやすい気候であると思い込んでいたが、
1526 実際に甲国に渡航して滞在してみると、
1527 連日、
1528 想
1529 定していなかった厳しい暑さに見舞われたため、
1530 この暑さへの応急対策として、
1531 甲国の家電小売店
1532 Pで手持ち式小型扇風機α(以下「α」という。
1533
1534 )を購入した。
1535
1536 αは、
1537 国際規格に準拠した方式の
1538 ケーブル・充電器により充電するタイプの内蔵バッテリーを動力源としており、
1539 Aがスマートフォ
1540 ン用に日本から持参していた携帯充電器によっても充電することができる上、
1541 大出力の駆動モータ
1542 ーによる強力な送風機能を備えているなど、
1543 利便性や使い心地の面で、
1544 Aにとって満足のいくもの
1545 であった。
1546
1547 そこで、
1548 Aは、
1549 甲国滞在を終えて日本へ帰国するに際し、
1550 αを引き続き利用することと
1551 して日本へ持ち帰った。
1552
1553
1554 Aは、
1555 帰国後間もなく、
1556 全国的に最高気温の観測記録が更新されるほどの猛暑の昼下がり、
1557 αを
1558 使用しながら、
1559 京都の観光地区に近接する大学の図書館に向かって歩いていたが、
1560 観光客で混み合
1561 う道に差し掛かったところで、
1562 突然、
1563 αが動作を停止してしまった。
1564
1565 不審に思ったAが立ち止まっ
1566 てαの状態を確認すると、
1567 本体内部から白煙が上がっていたため、
1568 思わずαを放り投げたところ、
1569
1570 その直後、
1571 αは、
1572 路上に落下する前に空中で破裂した(以下、
1573 このαが破裂した事故を「本件事
1574 故」という。
1575
1576 )。
1577
1578
1579 本件事故によって周囲に飛散したαの破片の一部は、
1580 たまたま近くを歩いていた東京からの観光
1581 客Bの右目の付近に当たり、
1582 Bは、
1583 この負傷により右目の視力を失った。
1584
1585
1586 甲国の隣国である乙国の法人で、
1587 αを製造したQ社は、
1588 日本を含む数か国で本件事故と同様の破
1589 裂事故が発生していることを把握し、
1590 一連の事故の原因を究明するために内部調査を実施した。
1591
1592 そ
1593 の結果、
1594 一連の事故が発生したαに使用されている内蔵バッテリーは全て、
1595 複数のサプライヤーの
1596 一つである日本法人R社東京工場製のバッテリーβ(以下「β」という。
1597
1598 )であり、
1599 極度に高温多
1600 湿となる条件下でβを使用した場合に、
1601 まれに膨張・破裂するとの実験結果を得た。
1602
1603
1604 なお、
1605 Q社は、
1606 営業所、
1607 工場等の拠点や財産を全て乙国内に置き、
1608 他国では営業活動も行ってお
1609 らず、
1610 αについても、
1611 その設計・製造から販売までを全て乙国内でのみ行っている。
1612
1613 もっとも、
1614 甲
1615 国や日本などの他国の業者が、
1616 乙国内で販売されているαを仕入れて、
1617 自国の消費者向けに販売す
1618 ることは広く行われている。
1619
1620 Q社も、
1621 そのような他国での販売がαの売上げに大きく貢献している
1622 ことを認識して、
1623 αの全ての製品には、
1624 甲国語や日本語を含む多言語で並列的に記述した取扱説明
1625 書を一律に同梱して販売している。
1626
1627
1628 以上の事実を前提として、
1629 以下の設問に答えなさい。
1630
1631
1632 〔設問1〕
1633 αの製造者がQ社であることを認識したBは、
1634 Q社を被告として、
1635 製造物責任法第3条に基づ
1636 き、
1637 本件事故によって被った損害の賠償を求める訴え(以下「本件訴え」という。
1638
1639 )を東京地方裁
1640 判所に提起した。
1641
1642
1643 〔小問1〕
1644 本件訴えについて、
1645 日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさ
1646 い。
1647
1648
1649 〔小問2〕
1650 本件訴えについて、
1651 日本の裁判所の国際裁判管轄権は認められるものとする。
1652
1653 この場合におい
1654 て、
1655 BのQに対する損害賠償請求について、
1656 いずれの国の法によって判断されるべきかを論じな
1657
1658 - 26 -
1659
1660 さい。
1661
1662
1663 〔設問2〕
1664 本件事故を含む一連のαの破裂事故の原因がβにある可能性が高いと考えたQ社は、
1665 R社に調査
1666 を求めたところ、
1667 βの特定の製造ロットの製造過程において、
1668 膨張・破裂の原因となる微小な金属
1669 異物が混入していたことが判明した。
1670
1671 そこで、
1672 Q社は、
1673 損害賠償金の支払やαの回収費用の支出に
1674 より生じた多額の損失について、
1675 R社に対し、
1676 応分の負担を求めたが、
1677 Q社とR社との間で、
1678 負担
1679 割合をめぐる交渉は決裂した。
1680
1681
1682 Q社とR社との間の取引は、
1683 R社がQ社に対して毎年一定数量のβを供給する旨の契約(以下
1684 「本件契約」という。
1685
1686 )に基づくものであった。
1687
1688 本件契約は、
1689 2018年1月、
1690 それぞれの本社ス
1691 タッフによる交渉の結果として締結されたものであり、
1692 本件契約には、
1693 「この契約は、
1694 日本法によ
1695 り解釈され規律される。
1696
1697 」との条項があった。
1698
1699
1700 Q社は、
1701 R社に対し、
1702 本件契約上の債務の不履行に基づき、
1703 損害の賠償を求める訴えを東京地方
1704 裁判所に提起した。
1705
1706 このQ社の請求について、
1707 裁判所は、
1708 「国際物品売買契約に関する国際連合条
1709 約」(以下「ウィーン売買条約」という。
1710
1711 )を適用して判断する内容の本案判決を言い渡したが、
1712
1713 乙国はウィーン売買条約の締約国ではなかった。
1714
1715
1716 上記判決において、
1717 裁判所が、
1718 Q社の請求についてウィーン売買条約を適用して判断したのはな
1719 ぜか。
1720
1721 理由を説明しなさい。
1722
1723
1724
1725 - 27 -
1726
1727