1 論文式試験問題集[刑事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 以下の【事例1】から【事例3】までを読んで、
8 後記〔設問1〕から〔設問3〕までについて、
9
10 答えなさい。
11
12
13 【事例1】
14 1
15
16 甲は、
17 乙及び丙と共に、
18 後記計画に基づき、
19 常習的に高齢者から現金をだまし取っていた。
20
21
22 その計画は、
23
24 ・
25
26 甲が資産家の名簿を見て、
27 現金をだまし取る対象者を選定する。
28
29
30
31 ・
32
33 甲が警察官に成りすまして相手方に電話をかけ、
34 「X警察署の○○です。
35
36 この度、
37 この
38 地域を担当することになりました。
39
40 今後、
41 当署からの連絡はこの番号からかけますので、
42
43 御登録をお願いします。
44
45 」などとうそを言って、
46 名前と電話番号を告げる(以下、
47 この内
48 容の電話を「1回目の電話」という。
49
50 )。
51
52
53
54 ・
55
56 その翌日、
57 甲が相手方に電話をかけ、
58 「昨日電話した○○です。
59
60 あなたの預金口座が、
61
62 不正に利用されている疑いがあります。
63
64 捜査のために必要なので、
65 お持ちの預金口座に1
66 00万円を超える残高があるようでしたら、
67 速やかに全額を引き出して自宅に持ち帰った
68 後、
69 こちらに電話をください。
70
71 」などとうそを言う(以下、
72 この内容の電話を「2回目の
73 電話」という。
74
75 )。
76
77
78
79 ・
80
81 相手方に預金口座から現金を引き出させて、
82 自宅にその現金を持ち帰らせる。
83
84
85
86 ・
87
88 その後、
89 相手方からかかってきた電話で、
90 甲が、
91 相手方の現金引出しを確認した上、
92 「こ
93 れから警察官がそちらに向かいます。
94
95 」とうそを言う。
96
97
98
99 ・
100
101 その約1時間後、
102 乙及び丙が警察官を装って相手方の家を訪ねる。
103
104
105
106 ・
107
108 乙及び丙が、
109 捜査のために必要なので現金を預けてほしい旨のうそを言い、
110 その交付を
111 受けて現金をだまし取る。
112
113
114
115 というものであった。
116
117
118 2
119
120 甲らは、
121 上記計画に従い、
122 以下の行為に及んだ。
123
124
125 @
126
127 甲は、
128 某月1日、
129 名簿から現金をだまし取る対象者として高齢の男性Aを選んだ。
130
131
132
133 A
134
135 甲は、
136 同日午前10時、
137 Aに1回目の電話をかけた。
138
139
140
141 B
142
143 甲は、
144 同月2日午前10時、
145 Aに2回目の電話をかけた。
146
147
148
149 C
150
151 甲のうそを信用したAは、
152 預金口座から200万円を引き出して自宅に持ち帰った。
153
154
155
156 D
157
158 甲は、
159 同日正午、
160 Aからかかってきた電話に出て、
161 Aが200万円を引き出したことを
162 確認した上、
163 Aに対し、
164 「これから警察官がそちらに向かいます。
165
166 」とうそを言った。
167
168
169
170 E
171
172 乙及び丙は、
173 甲の指示に基づき、
174 同日午後1時、
175 警察官を装ってA宅を訪ねた。
176
177
178
179 しかし、
180 乙らの姿を見て不審に思ったAが玄関ドアを開けなかったため、
181 乙及び丙は、
182 捜査の
183 ために必要なので現金を預けてほしい旨のうそを言うことができないまま、
184 Aから現金をだまし
185 取ることを断念した。
186
187
188 〔設問1〕
189
190 【事例1】におけるAに対する甲の罪責に関し、
191 以下の及びについて、
192 答えなさ
193
194 い。
195
196 なお、
197 及びのいずれについても、
198 自らの見解を問うものではない。
199
200
201
202
203 甲に詐欺未遂罪の成立を認める立場から、
204 その結論を導くために、
205 どのような説明が考えられ
206 るか。
207
208 詐欺罪が「人を欺いて財物を交付させ」るという手段・態様を限定した犯罪であるのに、
209
210 その実行の着手に「現金の交付を求める文言を述べること」を要しないと考える理由に触れつつ
211 論じなさい。
212
213
214
215
216
217 の説明に基づくと、
218 上記@〜Eのうちどの時点で実行の着手を認めることになるのか。
219
220 具体
221
222 - 2 -
223
224 的事実に即して、
225 それより前の時点との実質的相違を明らかにしつつ論じなさい。
226
227
228 【事例2】(【事例1】の1の事実に続けて、
229 以下の事実があったものとする。
230
231 )
232 3
233
234 甲は、
235 上記計画に従い、
236 某月5日午前10時、
237 名簿から現金をだまし取る対象者として高齢で
238 一人暮らしの男性Bを選んだ上、
239 Bに1回目の電話をかけ、
240 さらに、
241 同月6日午前10時、
242 2回
243 目の電話をかけた。
244
245 Bは、
246 甲のうそを信用し、
247 同日午前10時30分、
248 預金口座から300万円
249 を引き出して自宅に持ち帰った。
250
251 甲は、
252 同日正午、
253 Bからかかってきた電話で、
254 Bが300万円
255 を引き出して自宅に持ち帰った旨を聞いたことから、
256 「これから警察官がそちらに向かいます。
257
258 」
259 とうそを言い、
260 Bは「分かりました。
261
262 待っています。
263
264 」と答えた。
265
266 甲は、
267 乙及び丙に対し、
268 高齢
269 で一人暮らしの男性Bがうそを信用し、
270 300万円を自宅に用意している旨を告げ、
271 計画どおり、
272
273 捜査のために必要なので現金を預けてほしい旨のうそを言って、
274 300万円をだまし取ってくる
275 ように指示し、
276 乙及び丙はこれを了承した。
277
278
279
280 4
281
282 乙は、
283 甲の上記指示を受け、
284 丙と共にB宅に向かうことにしたが、
285 その道中で、
286 Bを縛り上げ
287 てしまえば、
288 より確実に現金を手に入れることができると考え、
289 丙に対し、
290 「ジジイをだますよ
291 り、
292 縛った方が確実に金を奪える。
293
294 縛って、
295 金を奪ってしまおうぜ。
296
297 奪った300万円を3人で
298 分ければ問題ないだろう。
299
300 」などと言い、
301 丙はこれを了承した。
302
303 そして、
304 乙及び丙は、
305 Bの手足
306 を縛るためのロープと口を塞ぐための粘着テープを準備した上、
307 同日午後1時、
308 B宅へ赴き、
309 イ
310 ンターホンを鳴らして警察官であることを告げ、
311 Bに玄関ドアを開けさせた。
312
313 乙及び丙は、
314 直ち
315 にB宅内に押し入り、
316 Bの手足をそれぞれロープで縛り、
317 口を粘着テープで塞ぎ、
318 Bを床の上に
319 倒した。
320
321 そして、
322 リビングルームに移動した乙及び丙は、
323 Bが預金口座から引き出してテーブル
324 上に置いていた上記300万円を見付け、
325 同日午後1時10分、
326 同300万円を持ってB宅を出
327 た。
328
329 その後、
330 乙及び丙は、
331 甲に対し、
332 いつもどおりのやり方でBから300万円をだまし取って
333 きたと虚偽の報告をし、
334 それぞれ100万円ずつ山分けした。
335
336
337
338 5
339
340 同日午後3時、
341 Bの娘CがB宅を訪れ、
342 緊縛されたBを発見した。
343
344 Cから上記ロープ及び粘着
345 テープを取り外してもらったBは、
346 立ち上がろうとしたものの、
347 長時間の緊縛による足のしびれ
348 でふらついて倒れそうになった。
349
350 そのため、
351 Cは、
352 Bを座らせ、
353 そのままでいるように言った。
354
355
356 Bは、
357 それにもかかわらず、
358 その1分後、
359 Cがその場を離れた隙に、
360 奪われた物の有無を確認す
361 るために立ち上がろうとした。
362
363 その際、
364 Bは、
365 まだ上記足のしびれが残っていたために、
366 転倒し
367 て床に頭を打ち付け、
368 全治2週間を要する頭部打撲の傷害を負った。
369
370
371
372 〔設問2〕
373
374 【事例2】における甲、
375 乙及び丙の罪責について、
376 論じなさい(住居等侵入罪(刑法
377
378 第130条)及び特別法違反の点は除く。
379
380 )。
381
382
383 【事例3】(【事例2】の事実に続けて、
384 以下の事実があったものとする。
385
386 )
387 6
388
389 Y警察署の警察官Dは、
390 【事例2】に係る事件につき、
391 乙に対する逮捕状を取得し、
392 乙の逮捕
393 に向かったところ、
394 乙が細い路地を丁と共に歩いているのを発見した。
395
396 Dは、
397 逮捕のため、
398 乙に
399 接近しようとしたが、
400 それに気付いた乙が走って逃げ出したため、
401 急いで乙を追おうとした。
402
403 丁
404 は、
405 乙が警察官に逮捕されそうになっていることを察し、
406 乙を逃がそうと考え、
407 怒号しながら両
408 手を広げて立ちはだかり、
409 道を塞いだ。
410
411 そのため、
412 Dは、
413 直ちに乙を追い掛けることができず、
414
415 乙を逮捕することができなかった。
416
417
418
419 7
420
421 その後、
422 Dは、
423 Y警察署の警察官5名に乙を追跡して逮捕するよう応援を要請した。
424
425 丁は、
426 警
427 察官による乙の逮捕を妨害しようと考え、
428 Y警察署に電話をかけ、
429 「Y署近くの路上で、
430 通り魔
431 に刺されました。
432
433 すぐに来てください。
434
435 」などとうそを言った。
436
437 そのため、
438 上記警察官5名は、
439
440 更なる通り魔事件発生への警戒等を行わざるを得なくなった結果、
441 乙を追跡できず、
442 乙を逮捕す
443 ることができなかった。
444
445
446
447 - 3 -
448
449 〔設問3〕
450
451 【事例3】における前記6の事実につき、
452 丁に業務妨害罪の成立を否定しつつ(丁に
453
454 よる怒号などは、
455 公務執行妨害罪における暴行・脅迫には当たらないが、
456 業務妨害罪における威
457 力には当たることを前提とする。
458
459 )、
460 前記7の事実につき、
461 丁に上記警察官5名に対する業務妨
462 害罪の成立を肯定する立場からは、
463 その結論を導くために、
464 どのような説明が考えられるか、
465 論
466 じなさい。
467
468 なお、
469 自らの見解を問うものではない。
470
471
472
473 - 4 -
474
475 論文式試験問題集[刑事系科目第2問]
476
477 - 1 -
478
479 [刑事系科目]
480 〔第2問〕(配点:100)
481 次の【事例】を読んで、
482 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
483
484
485 【事
486 1
487
488 例】
489 Vは、
490 令和4年10月25日午前2時頃、
491 H県I市内のV方2階寝室で就寝中、
492 物音に気付
493 いたため、
494 1階リビングルームに行き、
495 照明をつけた。
496
497 すると、
498 黒のニット帽、
499 黒のマスク、
500
501 黒のジャンパー、
502 黒の手袋、
503 緑の作業ズボン、
504 黒のスニーカー姿の身長165センチメートル
505 くらいで、
506 小太りの男性(以下「犯人」という。
507
508 )がタンスを物色していた。
509
510 犯人がVにつか
511 みかかってきたため、
512 Vが無我夢中で腕を振ったところ、
513 その拳が犯人の鼻の辺りに強く当た
514 った。
515
516 これに対し、
517 犯人は、
518 その場にあったゴルフクラブを手に取り、
519 Vの左側頭部を1回殴
520 打して、
521 逃走した。
522
523 Vは、
524 犯人から殴打された左側頭部から出血して、
525 その場に倒れて失神し
526 た。
527
528 その後、
529 覚醒したVは、
530 同日午前2時12分頃、
531 110番通報し、
532 強盗の被害に遭って犯
533 人にゴルフクラブで頭を殴られたこと、
534 犯人はゴルフクラブを持って逃走したと思われること、
535
536 犯人の着衣や背格好などを伝えた。
537
538
539 H県警察I警察署の司法警察員Pは、
540 同日午前2時18分頃、
541 現場であるV方に臨場し、
542 玄
543 関から1階リビングルームにつながる廊下に足跡があるのを発見した。
544
545 このとき、
546 Pは、
547 Vが
548 すぐに病院に救急搬送されたため、
549 Vから詳細な被害状況を聞くことができなかった。
550
551 Pらは、
552
553 住居侵入・強盗殺人未遂事件(以下「本件事件」という。
554
555 )として、
556 捜査を開始したが、
557 同現
558 場からは、
559 足跡以外に、
560 犯人の特定につながる証拠を発見することができなかった。
561
562
563
564 2
565
566 その後、
567 Pは、
568 V方付近にあるコンビニエンスストアに設置された防犯カメラの映像に、
569 同
570 日午前2時7分頃、
571 Vが110番通報した際に告げた犯人の着衣や背格好などに酷似した男性
572 が、
573 長い棒状の物を手に持ち北西方向に走っている様子が記録されているのを発見した。
574
575 また、
576
577 Pは、
578 同コンビニエンスストアから北西に約1キロメートル離れた場所にあるガソリンスタン
579 ドに設置された防犯カメラの映像に、
580 同日午前2時22分頃、
581 マスクは着けておらず、
582 長い棒
583 状の物も持っていなかったものの、
584 前記コンビニエンスストアの防犯カメラの映像に記録され
585 ていた男性と酷似した男性が、
586 同ガソリンスタンドの向かいにあるアパートの建物の中に入っ
587 ていく様子が記録されているのを発見した。
588
589 Pは、
590 この男性(以下「甲」という。
591
592 )が本件事
593 件の犯人である可能性が高いと考え、
594 甲の動向を確認するため、
595 同日午前4時頃から同アパー
596 ト周辺の公道上での張り込みを開始した。
597
598
599 すると、
600 同日午前6時頃、
601 甲が同アパートの建物から出てきて、
602 同アパートの敷地内にある
603 ごみ置場にごみ袋1袋を投棄した。
604
605 そこで、
606 Pは、
607 同ごみ袋の外観の特徴を公道上から目視し
608 て確認した上で、
609 同アパートの敷地と隣接する大家方に赴いた。
610
611 このとき、
612 Pは、
613 同アパート
614 の所有者である大家から、
615 同アパートでは、
616 居住者に対して、
617 ごみを同ごみ置場に捨てるよう
618 に指示しており、
619 大家が同ごみ置場のごみの分別を確認し、
620 公道上にある地域のごみ集積所に、
621
622 ごみ回収日の午前8時頃に搬出することにつき、
623 あらかじめ居住者から了解を得ていることを
624 聞いた。
625
626 Pは、
627 この日が同ごみ集積所のごみ回収日であったことから、
628 大家と一緒にアパート
629 の敷地内の同ごみ置場に向かい、
630 そこに投棄されていた複数のごみ袋の中から、
631 先ほど特徴を
632 確認しておいたごみ袋1袋だけを選び、
633 大家から任意提出を受けて領置した【捜査@】。
634
635
636 Pは、
637 同ごみ袋をI警察署に持ち帰り、
638 同ごみ袋を開けて内容を確認したところ、
639 黒のスニ
640 ーカー1足が入っているのを発見した。
641
642 捜査の結果、
643 同スニーカーの靴底の紋様が、
644 V方廊下
645 に付着していた足跡と矛盾しないものであることが判明した。
646
647 しかし、
648 同スニーカーは大手デ
649 ィスカウントショップで大量に販売されていたものであった上、
650 同スニーカーから、
651 犯人の特
652 定につながる証拠を得ることもできなかった。
653
654 そのため、
655 Pは、
656 この段階では甲の逮捕状を請
657 求することは難しいと考えた。
658
659
660
661 - 2 -
662
663 3
664
665 一方で、
666 I警察署の司法警察員らは、
667 犯人の逃走経路と考えられる場所の捜索をしていたと
668 ころ、
669 同月26日、
670 植え込みの中からゴルフクラブと黒のマスクを発見した。
671
672 同ゴルフクラブ
673 には血液が付着しており、
674 DNA型鑑定により、
675 その血液のDNA型とVのDNA型が一致す
676 ることが判明した。
677
678 また、
679 同マスクの内側及び外側にも血液が付着しており、
680 DNA型鑑定に
681 より、
682 外側に付着した血液のDNA型とVのDNA型が一致することが判明した。
683
684 一方、
685 内側
686 に付着した血液については、
687 同マスクが本件事件の凶器であると考えられる同ゴルフクラブと
688 同じ場所に投棄されていたこと、
689 犯人が犯行当日に黒のマスクを着けており、
690 Vの拳が犯人の
691 鼻付近に強く当たったことなどから、
692 犯人の血液である可能性が極めて高いと認められた。
693
694 も
695 っとも、
696 DNA型鑑定により、
697 そのDNA型は判明したものの、
698 同DNA型は、
699 警察が把握し
700 ていたDNA型のデータベースには登録されていなかった。
701
702
703 I警察署の司法警察員らは、
704 甲と犯人との同一性を判断するために、
705 甲のDNA型を特定す
706 るための証拠を入手したいと考えた。
707
708 しかし、
709 行動確認の結果、
710 甲方に複数人が出入りしてい
711 ることが判明していたことから、
712 ごみの中から甲のDNA型を特定するための証拠を入手する
713 ことが難しい状況であった。
714
715 そうしたところ、
716 Pは、
717 ボランティアがI市内の公園で開催し、
718
719 多数の人に食事の提供をしている炊き出しで、
720 甲が食事の提供を受けていることを把握した。
721
722
723 Pは、
724 公園内のごみ箱に甲が投棄した炊き出し用の使い捨て容器を回収することを考えたが、
725
726 炊き出しの参加者が多く、
727 甲が使用した容器だけを選別することは困難であると思われた。
728
729 そ
730 こで、
731 Pは、
732 同月30日、
733 ボランティアの一員として炊き出しに参加し、
734 容器の裏側にマーク
735 を付けて、
736 同容器に豚汁を入れて甲に手渡した。
737
738 すると、
739 甲は、
740 数人と連れ立って公園を出て
741 公道上に座り込み、
742 当該容器の豚汁を食べ終えると、
743 空の容器を公道上に投棄して、
744 その場を
745 去った。
746
747 Pは、
748 ボランティアが炊き出しを終えて公園から去った後、
749 公道上に投棄されていた
750 複数の容器の中から前記マークの付いた容器を回収して、
751 これを領置した【捜査A】。
752
753
754 その後、
755 DNA型鑑定により、
756 同容器に付着した唾液から判明した甲のDNA型が、
757 犯人の
758 ものである可能性が極めて高い前記DNA型と一致することが判明した。
759
760 そこで、
761 Pは、
762 甲の
763 逮捕状及び甲方の捜索差押許可状を取得し、
764 同年11月1日、
765 甲を逮捕するとともに、
766 甲方の
767 捜索を実施し、
768 鍵を開けるための特殊な道具(以下「ピッキング用具」という。
769
770 )を差し押さ
771 えた。
772
773 甲は、
774 逮捕後、
775 本件事件について自白し、
776 同月2日にH地方検察庁の検察官に送致され、
777
778 同日中に勾留された。
779
780
781
782 4
783
784 I警察署の司法警察員Qは、
785 同月4日、
786 同署において、
787 Vから被害状況を聴取した。
788
789 Vは、
790
791 Qに対し、
792 「犯人が、
793 右手でゴルフクラブのグリップを握り、
794 すごい速さでゴルフクラブを斜
795 め上から振り下ろして、
796 私の左側頭部を殴った。
797
798 」旨供述し、
799 その旨の警察官面前調書が作成
800 された。
801
802
803
804 5
805
806 Qは、
807 同月5日、
808 I警察署において、
809 甲の取調べを行った。
810
811 甲は、
812 Qに対し、
813 窃盗目的で、
814
815 施錠されていたV方玄関ドアの特殊な錠をピッキング用具で解錠して室内に侵入し、
816 タンスを
817 物色するなどしたが、
818 Vに発見されたため、
819 逮捕を免れる目的でVの頭部をゴルフクラブで殴
820 打した旨供述し、
821 その旨の警察官面前調書が作成された。
822
823 そこで、
824 Qは、
825 甲方から押収された
826 ピッキング用具と同種のもの及び本件犯行時にV方に設置されていた錠と同種の特殊な錠を準
827 備し、
828 同日、
829 同署において、
830 甲に対し、
831 「この道具を使って、
832 この錠を開けられますか。
833
834 」と
835 尋ねた。
836
837 甲は、
838 随時説明しながらピッキング用具を使って解錠した。
839
840 後日、
841 Qは、
842 その解錠の
843 状況につき、
844 【実況見分調書@】を作成した。
845
846 同調書には、
847 甲が解錠している前記状況を連続
848 して撮影した写真が複数枚添付されており、
849 これらの写真の下に、
850 それぞれ「被疑者は、
851 『こ
852 のように、
853 ピッキング用具を鍵穴に入れてこうして動かしていくと解錠できます。
854
855 』と説明し
856 た。
857
858 」との記載があった。
859
860 また、
861 甲が解錠された後の錠を指さしている場面の写真1枚が添付
862 されており、
863 その下に「被疑者は、
864 『このように解錠できました。
865
866 』と説明した。
867
868 」との記載
869 があった。
870
871 ところが、
872 その後、
873 甲は、
874 取調べにおいて、
875 黙秘に転じた。
876
877
878
879 - 3 -
880
881 6
882
883 H地方検察庁の検察官Rは、
884 同月8日、
885 同検察庁において、
886 Vから被害状況を聴取したとこ
887 ろ、
888 Qに対して供述した内容と同様の説明をしたため、
889 その旨の検察官面前調書を作成すると
890 ともに、
891 同日、
892 同検察庁において、
893 Vを立会人とした実況見分を実施した。
894
895 その際、
896 Rは、
897 前
898 記ゴルフクラブと同種のものを準備し、
899 検察事務官Sを犯人に見立て、
900 Vに対し、
901 被害状況に
902 ついて説明を求めつつ再現させた上、
903 その再現状況を写真撮影した。
904
905 後日、
906 Rは、
907 この結果に
908 つき、
909 【実況見分調書A】を作成した。
910
911 同調書には、
912 Sが右手でゴルフクラブのグリップを握
913 り、
914 Vの左側頭部を目掛けて振り下ろしている場面の写真1枚が添付されており、
915 その下に「こ
916 のようにして、
917 犯人は、
918 右手に持っていたゴルフクラブで私の左側頭部を殴りました。
919
920 」との
921 記載があった。
922
923
924
925 7
926
927 同月20日、
928 甲は、
929 住居侵入・強盗殺人未遂罪によりH地方裁判所に起訴された。
930
931
932 同被告事件は、
933 裁判所の決定により、
934 公判前整理手続に付された。
935
936 同手続の中で、
937 公判立会
938 検察官Tは、
939 前記【実況見分調書@】につき、
940 立証趣旨を「甲がV方の施錠された玄関ドアの
941 錠を開けることが可能であったこと」として、
942 証拠調べの請求をした。
943
944 また、
945 Tは、
946 前記Vの
947 検察官面前調書につき、
948 立証趣旨を「被害状況」とし、
949 前記【実況見分調書A】につき、
950 立証
951 趣旨を「被害再現状況」として、
952 それぞれ証拠調べの請求をした。
953
954
955 これに対し、
956 甲の弁護人は、
957 「犯人性を争う。
958
959 」と主張し、
960 いずれの証拠についても不同意
961 とした。
962
963
964 その後、
965 Vは、
966 公判前整理手続が終了する前に交通事故により死亡した。
967
968
969
970 〔設問1〕
971 下線部の【捜査@】及び【捜査A】の領置の適法性について、
972 具体的事実を摘示しつつ論じな
973 さい。
974
975
976 〔設問2〕
977 【実況見分調書@】及び【実況見分調書A】の証拠能力について、
978 具体的事実を摘示しつつ論
979 じなさい。
980
981 ただし、
982 【捜査@】及び【捜査A】の適否が与える影響については論じなくてよい。
983
984
985
986 - 4 -
987
988