1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。
17 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、試験時に施行されて
18 いる法令に基づいて答えなさい。
19 【事
20
21 例】
22
23 Aは、個人事業主として、P国の雑貨を現地で買い付けて日本に輸入し、賃借している商店街
24 の店舗で販売するという事業を行っていたが、多額の負債を抱えた上に売上げの不振で資金繰り
25 に行き詰まってしまった。そこで、Aは、弁護士Bに依頼して、令和4年4月1日、破産手続開
26 始の申立てをしたところ、同月10日、Aについて破産手続開始の決定がされ、弁護士Xが破産
27 管財人に選任された。
28 〔設問1〕
29 Aは、破産手続開始の決定がされた時点で、現金90万円を保有している。また、Aが、仕入
30 先であるP国所在の販売店にAの所有物として預かってもらっている500万円相当の雑貨があ
31 る(なお、売買代金は支払済みである。)。
32 Aについて破産手続開始の決定がされた直後の令和4年4月20日、Aの父親であるCが死亡
33 した。AはCの唯一の法定相続人であるところ、Cの遺産としてC名義の銀行口座に600万円
34 の預金が残されていた。また、Cは、10年以上前から生命保険に加入しており、その加入時に
35 おいて死亡保険金の受取人をAと指定していたため、Cが死亡した場合にはその死亡保険金はA
36 が受け取ることになっていた。この死亡保険金の額は1000万円である。
37
38
39 以下@からCまでの各財産は、Aの破産手続において破産財団に属するか、説明しなさい。
40 @
41
42 P国所在の販売店に預かってもらっている500万円相当の雑貨
43
44 A
45
46 現金90万円
47
48 B
49
50 Cの遺産である600万円の預金債権
51
52 C
53
54 Cの死亡による1000万円の保険金請求権
55
56 (参照条文)民事執行法施行令
57 (差押えが禁止される金銭の額)
58 第1条
59
60 民事執行法(以下「法」という。)第131条第3号(法第192条において準用す
61
62 る場合を含む。)の政令で定める額は、66万円とする。
63
64
65 Aは、破産手続開始の時において、自らを受取人とする貯蓄型の医療保険に加入しており、
66 その時点における解約返戻金の額は40万円であった。
67 破産管財人Xは、この解約返戻金が破産財団に帰属することを前提に、令和4年4月30日、
68 Aの申立代理人Bに対し、解約返戻金を破産財団に組み入れるために医療保険契約(以下「本
69 件保険契約」という。)を解約する予定であると通知をした。
70 しかしながら、Aは、すぐに新たな職に就くことが難しい上、持病があるため、本件保険契
71 約を解約されてしまうと代わりの医療保険に加入する必要があるところ、その場合には、保険
72 料が従前と比べてかなり高額になることが判明した。
73 Aの申立代理人Bとしては、本件保険契約を継続するためにどのような手段を採ることが考
74 えられるか。破産財団に関する破産債権者の利益を考慮しつつ、複数の手段を検討して論じな
75 さい。
76
77 - 2 -
78
79 〔設問2〕
80 AとDは婚姻していたが、性格の不一致から長期間不仲が続いていたところ、Aの事業の行き
81 詰まりが最後の引き金となり、令和4年2月1日に協議離婚をするに至った。その協議の際、A
82 は、Dとの間で、離婚に伴う財産分与として、AがDに対し、A名義の登記がある甲不動産(担
83 保権は設定されていない。)の所有権を譲渡するとともに、150万円の支払をする旨の合意を
84 した。Aは、この合意に基づき、協議離婚が成立した時点で既に支払不能に陥っていたにもかか
85 わらず、同年3月1日、Dに対して上記150万円を支払った(以下「本件支払」という。)。
86 また、Aは、甲不動産から退去して新たにアパートを賃借してそこで生活するようになり、現在、
87 甲不動産にはDのみが居住している。もっとも、Aについて破産手続開始の決定がされた時点で
88 は、甲不動産に係るDへの所有権移転登記手続はされていない。
89
90
91 Dは、甲不動産の所有権の移転は財産分与を通じて婚姻中に形成された夫婦の共有財産を清
92 算する性質のものであるため、Aの破産手続において、甲不動産の所有権の移転に係る登記請
93 求は当然に認められるはずだと主張している。この主張の当否について、Xからの反論を踏ま
94 えて論じなさい。
95
96
97
98 Xは、破産手続開始の決定前にされた本件支払に対して否認権を行使しようとしている。こ
99 れに対し、Dは、協議離婚の成立時においてAが支払不能に陥っている事実を認識していたも
100 のの、上記と同様、本件支払は夫婦の共有財産を清算する性質のものであるため否認権は成
101 立しないと反論している。なお、甲不動産の譲渡と150万円の支払は、財産分与としては相
102 当なものであるとする。
103 このとき、Xの主張する否認権の成否について、Dからの反論を踏まえて論じなさい。
104
105 - 3 -
106
107 〔第2問〕(配点:50)
108 次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。
109 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、試験時に施行されて
110 いる法令に基づいて答えなさい。
111 【事
112
113 例】
114
115 A株式会社(以下「A社」という。)は、衣服の製造及び販売を業とする株式会社である。A
116 社は、その所有する工場において衣服を縫製しているほか、1棟のオフィスビルを所有し、その
117 1階から3階までの部分を自社の店舗及び事務所として使用し、4階部分(以下「物件甲」とい
118 う。)をB株式会社(以下「B社」という。)に賃貸している。
119 A社は、業界全体の売上げが減少傾向にあったことに加え、インターネットを用いた商品の販
120 売に乗り遅れたことも相まって急激に売上げを落としたことにより、令和4年9月頃には資金繰
121 りに窮するに至った。そこで、A社は、同年10月27日、弁護士Cを代理人として再生手続開
122 始の申立てをしたところ、同年11月4日、再生手続開始の決定を受けた。なお、同決定におい
123 て、債権届出期間が同年12月2日までと定められた。
124 〔設問1〕
125 A社の申立代理人Cは、令和4年11月7日、電力会社であるD株式会社(以下「D社」とい
126 う。)から、A社の縫製工場における以下の各時期の供給分に係る電気料金に関し、括弧内に示
127 した約定どおりの支払期限までに支払がされるかどうかについて照会を受けた。A社として当該
128 電気の供給契約を継続する意向である場合に、Cはどのように回答すべきか、説明しなさい。
129 @
130
131 令和4年9月分(1日〜30日分)(支払期限:令和4年11月10日)
132
133 A
134
135 令和4年10月分(1日〜31日分)(支払期限:令和4年12月10日)
136
137 B
138
139 令和4年11月分(1日〜30日分)(支払期限:令和5年1月10日)
140
141 【事
142
143 例(続き)】
144 A社は、B社との間で、令和3年7月1日、物件甲につき、賃貸期間を同日から2年、月額賃
145
146 料を60万円(毎月末日までに翌月分の賃料を支払う。)とする賃貸借契約を締結した。同契約
147 において、原状回復費用は賃借人であるB社が負担する旨の合意がされた。B社は、敷金として
148 賃料の10か月分(600万円)を交付し、上記賃貸借契約に基づき、物件甲の引渡しを受けた。
149 B社は、A社についての再生手続開始の決定前において、賃料を支払期限までに支払っていた。
150 B社は、令和4年8月頃、備付けの空調設備が故障したため、修理費用として60万円を支出
151 していたところ、同年11月30日、A社に対する修理費用の返還請求権を自働債権とし、同年
152 12月分の賃料の支払債務を受働債権として相殺する旨の意思表示をした。
153 B社は、令和4年12月1日、A社に交付した敷金の返還請求権につき、その交付額が600
154 万円であること及び賃貸目的物の明渡し前であるので再生債権の額は未定であることを示して、
155 再生債権の届出をした。A社は、債権調査手続において、B社が届け出た再生債権の内容を認め、
156 また、届出をした他の再生債権者からも異議は述べられなかった。
157 その後、令和5年4月3日、A社から、再生債権に関する権利の変更及び弁済方法につき、再
158 生債権者の権利の60%を免除し、その残額を再生計画認可の決定の確定後に弁済することを内
159 容とする再生計画案が提出された。同計画案は、債権者集会において可決された後、同年5月2
160 9日、再生計画を認可する旨の決定がされ、同年6月26日、この認可決定が確定した。
161 B社は、令和5年1月分から同年4月分の賃料をそれぞれ支払期限までに支払ったが、同年5
162 月分及び6月分の賃料を支払うことなく、同月30日、賃貸期間の満了により、A社に対して物
163 件甲を明け渡した。その際、A社は、物件甲につき、原状回復費用として80万円を支出した。
164
165 - 4 -
166
167 〔設問2〕
168
169
170 A社についての再生手続において、B社のA社に対する敷金返還請求権はどのように取り扱
171 われるか、A社について破産手続が開始した場合との違いに触れつつ、説明しなさい。
172
173
174
175 【事例】において、B社のA社に対する敷金返還請求権に係る債務の弁済額は幾らになるか、
176 説明しなさい。なお、敷金返還請求権については、明渡し時において、敷金から賃貸借契約に
177 基づいて生じた賃借人の債務の額を控除した残額のうち、再生債権となるべき部分に対して、
178 再生計画に従った権利変更を行うとの考え方に立つこととする。
179
180 - 5 -
181
182 - 6 -
183
184 論文式試験問題集[租
185
186 - 7 -
187
188 税
189
190 法]
191
192 [租
193
194 税
195
196 法]
197
198 〔第1問〕(配点:50)
199 Aは、平成20年から上場会社であるC株式会社(以下「C社」という。)の取締役を務めてお
200 り、C社から毎年2100万円の報酬の支払を受けている。
201 Aは、平成25年4月1日、C社から、次の内容のC社株式に係る新株予約権(以下「本件新株
202 予約権」という。)を取得した。
203 ・
204
205 Aに付与された本件新株予約権の個数は100個である。
206
207 ・
208
209 本件新株予約権1個につき目的となる株式の数は100株である。
210
211 ・
212
213 本件新株予約権が行使できる期間は、平成26年4月1日から令和6年3月31日ま
214 でである。
215
216 ・
217
218 Aは、本件新株予約権1個の行使に当たり、C社に5万円を払い込む。
219
220 ・
221
222 本件新株予約権の譲渡・質入れ等は禁止されている。
223
224 また、Aは、その所有する土地上に甲建物を所有していた。
225 Aは、甲建物について、平成20年12月16日、個人Bとの間で、賃貸借契約の期間を同日か
226 ら平成22年12月15日までの2年間とする賃貸借契約を締結した。その後、AとBは、賃料を
227 月額20万円として2年ごとに同賃貸借契約の更新を繰り返し、その間、Bは甲建物内で小料理屋
228 を営んでいた。
229 Aは、老朽化した甲建物を取り壊して、その土地上に新たに賃貸用アパートを建築することを計
230 画した。そこで、Aは、令和2年2月1日、Bに対し、同年12月15日をもって契約更新をしな
231 いことを告げた上で、立ち退きのための交渉を開始した。その結果、AとBは、同年8月1日、以
232 下のとおりの内容で合意して、合意書を取り交わした。
233 @
234
235 AとBは、甲建物の賃貸借契約を更新せず、令和2年12月15日をもって契約期間
236 が終了することを確認する。
237
238 A
239
240 Bは、Aに対し、令和2年12月15日限り、甲建物を明け渡す。
241
242 B
243
244 Aは、Bに対し、BがAの明渡しを行うことを条件として、令和2年12月15日限
245 り、解決金として300万円を支払う。
246
247 なお、Bは、Aに対し、当初、じゅう器や食材の廃棄による損失や転居費用及び新たに店舗を借
248 りるための敷金などの名目で、立退料として400万円程度を要求していた。しかし、Bが立ち退
249 き交渉以前から高齢のため令和2年中に廃業しようと周囲に漏らしていたことがAの知るところと
250 なり、最終的に、特に内訳を定めることなく、円満に退去する解決金として300万円という額で
251 合意するに至った(以下この金員を「本件解決金」という。)。
252 その後、Bは、合意書のとおり令和2年12月15日までに甲建物から退去して甲建物を明け渡
253 した。また、Aは、同日、Bに対して本件解決金300万円を交付した。
254 Aは、甲建物の取壊し費用及び賃貸用アパートの建築費用を調達するため、C社の新株予約権を
255 行使して取得した株式を売却して、これに充てることとした。そこで、Aは、令和3年2月1日、
256 行使に際し500万円を払い込んで、本件新株予約権100個を行使し、C社株式1万株を取得し
257 た。
258 そして、Aは、上昇傾向にあったC社株式の相場価格の推移を見守った上で、令和4年1月20
259 日、取得したC社株式1万株をその時点における相場価格である1株当たり1800円で適法に売
260 却するとともに、証券会社に対して株式売買手数料20万円を支払った。
261
262 - 8 -
263
264 なお、C社株式の相場価格の推移は、以下のとおりである。
265 平成25年4月1日
266
267 1000円
268
269 平成26年4月1日
270
271 1200円
272
273 令和3年2月1日
274
275 1500円
276
277 令和4年1月20日
278
279 1800円
280
281 以上の事案について、以下の設問に答えなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考えなくてよ
282 い。
283 〔設
284
285 問〕
286
287 1
288
289 令和3年分のAの総所得金額について、その根拠規定及び適用関係を具体的に示して説明
290 しなさい。ただし、問題文中に掲げたもの以外に、Aの収入はないものとする。
291
292
293
294 令和4年分のAの総所得金額について、その根拠規定及び適用関係を具体的に示して説明
295 しなさい。ただし、問題文中に掲げたもの以外に、Aの収入はないものとする。
296
297 2
298
299 Bは、令和2年分の所得税の確定申告書を期限内に所轄税務署に提出したが、その際、Aか
300 ら受領した本件解決金300万円に係る所得を一時所得に区分した内容の確定申告書を提出し
301 た。しかし、その後、Bは、自分で本を調べるなどした結果、本件解決金に係る所得が所得税
302 法施行令第30条第2号又は第3号により非課税所得となると考えるに至った。
303
304
305 本件解決金に係る所得は、非課税所得に当たるか。また、課税所得に当たるとした場合に
306 は、所得税法上、各種所得のいずれに分類されるか、説明しなさい。
307
308
309
310 本件解決金に係る所得が非課税所得に当たり、過大に納税していると考えたBが、所轄税
311 務署長に対して国税通則法に基づいてどのような措置を採ることができるか、説明しなさい。
312 また、同措置に対する所轄税務署長の対応として考えられる行政処分は何か、説明しなさい。
313
314 (参照条文)所得税法施行令
315 (非課税とされる保険金、損害賠償金等)
316 第30条
317
318 法第9条第1項第18号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金
319
320 (これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのもの
321 の額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補
322 するための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
323 一
324
325 (略)
326
327 二
328
329 損害保険契約に基づく保険金及び損害保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金(中
330 略)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産
331 に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち第94条(事業所得の収入金
332 額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。)
333
334 三
335
336 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第94条の規定に該当す
337 るものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。)
338
339 (譲渡制限付株式の価額等)
340 第84条
341 1
342
343 (略)
344
345 2
346
347 (略)
348
349 3
350
351 発行法人から次の各号に掲げる権利で当該権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付さ
352 れているものを与えられた場合(株主等として与えられた場合(当該発行法人の他の株主等に損
353 害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)を除く。)における当該権利に係る法第3
354
355 - 9 -
356
357 6条第2項の価額は、当該権利の行使により取得した株式のその行使の日(中略)における価額
358 から次の各号に掲げる権利の区分に応じ当該各号に定める金額を控除した金額による。
359 一
360
361 (略)
362
363 二
364
365 会社法第238条第2項(募集事項の決定)の決議(同法第239条第1項(募集事項の決
366 定の委任)の決議による委任に基づく同項に規定する募集事項の決定及び同法第240条第1
367 項(公開会社における募集事項の決定の特則)の規定による取締役会の決議を含む。)に基づ
368 き発行された新株予約権(当該新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件若しくは金額であ
369 ることとされるもの又は役務の提供その他の行為による対価の全部若しくは一部であることと
370 されるものに限る。)
371
372 当該新株予約権の行使に係る当該新株予約権の取得価額にその行使に
373
374 際し払い込むべき額を加算した金額
375 三
376
377 (略)
378
379 (事業所得の収入金額とされる保険金等)
380 第94条
381 1
382
383 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げ
384 るもので、その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するも
385 のは、これらの所得に係る収入金額とする。
386 一
387
388 当該業務に係るたな卸資産(中略)、山林、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の
389 技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの又は著作権(出版権及び著作隣接権その他こ
390 れに準ずるものを含む。)につき損失を受けたことにより取得する保険金、損害賠償金、見舞
391 金その他これらに類するもの(山林につき法第51条第3項(山林損失の必要経費算入)の規
392 定に該当する損失を受けたことにより取得するものについては、その損失の金額をこえる場合
393 におけるそのこえる金額に相当する部分に限る。)
394
395 二
396
397 当該業務の全部又は一部の休止、転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償と
398 して取得する補償金その他これに類するもの
399
400 2
401
402 (略)
403
404 - 10 -
405
406 〔第2問〕(配点:50)
407 令和3年10月1日、Aは、自らの財産をE株式会社(以下「E社」という。)に全部包括遺贈
408 し、その遺言執行者をCとする旨の遺言を残して死亡した。死亡時のAの財産は、甲土地、乙土地
409 及び丙家屋のほかは、若干の銀行預金があるのみであった。
410 甲土地及び乙土地は、いずれもAが平成元年頃に各2000万円で購入した土地である。Aは、
411 甲土地上に自己居住目的で丙家屋を建設し、乙土地を駐車場として、利用してきた。Aの死亡時の
412 甲土地及び乙土地の時価は、いずれも3000万円であった。なお、Aは、配偶者と死別しており、
413 相続人は子Bのみであったが、10年以上音信不通の関係であった。
414 E社は、平成10年4月1日にAがCと2人で創業し、Aの死亡時は、Cの子Dが代表取締役を
415 務めていた。E社は、毎年4月1日から翌年3月31日までの期間を事業年度としている。創業以
416 来、Aは、E社の発行済株式の2分の1を保有して経営に携わってきたが、平成20年頃にBが起
417 こした詐欺事件の示談金に充てるために、保有するE社株式の全てをCに売却し、その後しばらく
418 してE社の経営からも退いた、という経緯がある。AとBが疎遠になったのも、この事件がきっか
419 けであった。
420 Aの死亡後、Cは、遺言に従って、甲土地、乙土地及び丙家屋をE社に管理させるとともに、E
421 社への所有権移転登記を了した。その後、Dが自宅の建て替え工事のために臨時の住居を必要とし
422 ていたため、E社は、丙家屋をDに利用させることとした。そして、Dは、丙家屋を無償で利用す
423 る地位をDの報酬の一部とする旨のE社の株主総会決議(会社法第361条第1項第6号)を経て、
424 令和4年3月1日から丙家屋の居住を開始した。
425 令和4年3月15日、E社は、Bから、Bの遺留分を侵害しているので遺留分侵害額に相当する
426 金銭の支払を請求する旨の通知を受領した。E社は、Bとの交渉を経て、同年6月10日に、以下
427 の内容のとおり合意し、同月25日、乙土地をBに引き渡すとともに、所有権移転登記を了した。
428 @
429
430 E社は、Bに対し、Bの遺留分侵害額請求権に基づく金3000万円の支払義務があること
431 を認める。
432
433 A
434
435 E社は、Bに対し、本合意の成立以後1か月以内に、金3000万円の支払に代えて乙土地
436 を譲り渡す。
437
438 B
439
440 E社とBは、互いにその余の請求権を有しないことを確認する。
441
442 令和5年3月31日、Dは、新居に引っ越すために丙家屋から退去し、E社に明け渡した。なお、
443 Dの居住期間を通じて、近隣地で丙家屋と同等の住居を賃借した場合の賃料相場は月額10万円で
444 あった。
445 以上の事案について、以下の設問に答えなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考えなくてよ
446 い。また、問題文から読み取れるものを除いて、取得費及び譲渡費用はないものとして解答せよ。
447 〔設
448
449 問〕
450
451 1
452
453 包括遺贈により甲土地及び乙土地が移転されたことについて(その他の財産は無視してよい。)
454
455
456 E社の法人税の課税関係がどうなるか、説明しなさい。
457
458
459
460 E社が取得した甲土地及び乙土地の取得価額は幾らとなるか、根拠条文とともに説明しな
461 さい。
462
463
464 2
465
466 この包括遺贈に伴うAの所得税の課税関係がどうなるか、説明しなさい。
467 E社がBからの遺留分侵害額の請求を受けて乙土地を譲渡したことについて、E社の法人税
468
469 の課税関係がどうなるか、年度帰属を明らかにしつつ、説明しなさい。
470 3
471
472 令和5年3月期(令和4年4月1日から令和5年3月31日までの事業年度をいう。)にお
473 けるDの丙家屋の無償利用について
474
475
476 E社の法人税の課税関係がどうなるか、説明しなさい。
477
478 - 11 -
479
480
481
482 E社が所得税法上負うことになる義務について、簡潔に説明しなさい。
483
484 (参照条文)法人税法施行令
485 (定期同額給与の範囲等)
486 第69条
487
488 法第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は、次
489
490 に掲げる給与とする。
491 一
492 二
493
494 (略)
495 継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であ
496 るもの
497
498 2
499
500 (以下略)
501
502 - 12 -
503
504 論文式試験問題集[経
505
506 - 13 -
507
508 済
509
510 法]
511
512 [経
513
514 済
515
516 法]
517
518 〔第1問〕(配点:50)
519 甲装置は、我が国において法令上求められている検査のための特有の機能を有する業務用検査装
520 置である。また、乙機器は、甲装置の中核となる機器であり、甲装置に組み込んで使用される。
521 甲装置には、大型の甲装置(以下「大型甲」という。)と小型の甲装置(以下「小型甲」という。)
522 がある。大型甲と小型甲の市場規模(販売金額)は同程度であり、それぞれの需要は安定している。
523 大型甲と小型甲では、サイズ、処理能力等が異なり、また、大型甲と小型甲の製造設備を相互に転
524 換するためには、かなりの投資と時間を必要とする。
525 甲装置の主要なメーカーとして、X社、Y社及びZ社(以下「3社」という。)があり、それぞ
526 れ複数の製造設備で甲装置を製造しているが、3社それぞれの製造能力にはかなりの余裕がある。
527 3社のほかに、小型甲のみを製造販売するW社がある。これらのメーカーは、全国の需要者に甲装
528 置を販売する体制を整えており、地域による価格差は存在しない。また、甲装置の輸出入は事実上
529 行われていない。甲装置の需要者は、比較的大規模な事業者であり、交渉力が強い。甲装置の製造
530 コストは、需要者向け販売価格の6割程度である。
531 甲装置全体では、Z社がシェア(販売金額に基づく割合をいう。以下同じ。)を漸増させてきて
532 おり、その分、X社及びY社のシェアが漸減してきている。現在のシェアは、次表のとおりである。
533 甲装置全体
534
535 大型甲のみ
536
537 小型甲のみ
538
539 X社
540
541 25%
542
543 40%
544
545 10%
546
547 Y社
548
549 25%
550
551 20%
552
553 30%
554
555 Z社
556
557 40%
558
559 40%
560
561 40%
562
563 W社
564
565 10%
566
567 ―
568
569 20%
570
571 合計
572
573 100%
574
575 100%
576
577 100%
578
579 大型甲については、3社が製造販売しており、うちX社とZ社が大きなシェアを有している。こ
580 れに対し、Y社のシェアは、同程度の製造能力を有する二つの大型甲の製造設備のうち一つが老朽
581 化して高コストになっていることもあって減少傾向にあり、このままでは今後更にシェアを落とす
582 ことになるとみられている。
583 他方、小型甲については、3社のほか、小型甲のみを製造販売するW社を加えた4社がしのぎを
584 削っている。X社は、小型甲については最低のシェアにとどまっている。
585 乙機器は、専ら甲装置に組み込まれるものであり、他に代わるものはなく、他に転用することも
586 できない。また、大型甲向けと小型甲向けとで違いはない。
587 3社は、乙機器を自ら製造している。乙機器の製造コストは、甲装置全体の製造コストの5割程
588 度を占めている。乙機器の製造には特殊な技術が必要であり、甲装置のメーカー以外には乙機器の
589 製造技術を有するものはおらず、新規参入も困難であり、また、輸出入も事実上行われていない。
590 3社それぞれの乙機器の製造能力にはある程度の余裕がある。
591 他方、小型甲のみを製造するW社は、乙機器を製造する技術を有するものの、自らは製造せず、
592 3社に製造を委託している(必要数量のおおむね3分の1ずつ)。これは、甲装置のシェアが低い
593 W社が乙機器を自ら製造する場合にはコスト面で不利であり、乙機器の製造余力がある3社から供
594 給を受けることが有利であると判断しているためである。W社が乙機器の製造設備を設置し稼働さ
595 せるためには3年近い期間を必要とする。また、W社は、独自の技術を用いて、他社から調達した
596 乙機器を組み込んだ小型甲を製造しており、一部の需要者から支持を得ていることから、一定の競
597 争力があると評価されている。
598
599 - 14 -
600
601 〔設
602
603 問〕
604 こうした中で、X社及びY社では、次の二つの計画を立案しており、その一環として、私的独
605
606 占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)上の問題点について
607 も検討している。二つの計画について、独占禁止法上の問題点を分析して検討するとともに、問
608 題があると判断される場合には、当該問題を解消するために必要と考えられる措置を具体的に提
609 示しなさい。なお、二つの計画について、それぞれ独立して検討するものとする。
610
611
612 甲装置の製造コストは、その製造数量や製造設備の稼働率に左右されるところ、X社の小型
613 甲の製造設備やY社の二つの大型甲の製造設備のうちの一つの稼働率が低い状況にある。しか
614 し、甲装置の需要者の中には、設置場所等により大型甲と小型甲の両方を必要とするものも少
615 なくなく、X社及びY社では、大型甲と小型甲の両方を販売することが営業上重要であると判
616 断している。
617 このため、X社とY社は、次の内容の甲装置の製造受委託(OEM)契約を締結することを
618 計画している。すなわち、X社にあっては、小型甲の製造を取りやめ、Y社に小型甲の製造の
619 全部を委託し、Y社から供給を受けた小型甲を自社の製品として需要者に販売する。逆に、Y
620 社にあっては、大型甲の製造を取りやめ、X社に大型甲の製造の全部を委託し、X社から供給
621 を受けた大型甲を自社の製品として需要者に販売する。甲装置の需要者向けの販売活動は、そ
622 れぞれが独立して行う。
623 X社及びY社において、大型甲と小型甲の製造を担当する従業員を相互に配置転換すること
624 は容易である。それぞれの現有製造設備から他方に必要数量を供給することは可能であるが、
625 特に大型甲についてはX社の製造余力は乏しくなる見込みである。また、大型甲及び小型甲の
626 いずれについても、製造受託者から製造委託者に対する供給価格は、それぞれの需要者向け販
627 売価格の8割程度と見込まれる。
628 なお、これによりW社に対する乙機器の供給に影響が生じることはない。
629
630
631
632 乙機器の製造コストは、その製造数量や製造設備の稼働率に左右されるところ、甲装置のシ
633 ェアが首位のZ社に比べて低いX社及びY社では、乙機器の製造コスト面で不利な状況にある。
634 このため、X社とY社は、それぞれの乙機器製造部門を共同新設分割方式で切り出し、乙機
635 器の製造を行う共同出資会社としてS社を設立することを計画している。なお、この共同新設
636 分割は、独占禁止法に基づく公正取引委員会への届出基準を充足している。
637 S社では、乙機器の製造設備を統廃合し(ただし、W社に対して引き続き乙機器を供給する
638 上で必要な製造能力を維持する。)、製造コストの低減を図る。X社及びY社は、S社から製
639 造コストベースで乙機器の供給を受ける。また、甲装置の製造や需要者向けの販売活動は、そ
640 れぞれが独立して行う。
641
642 - 15 -
643
644 〔第2問〕(配点:50)
645 甲精密工作機械(以下「甲機械」という。)は、機械部品を効率よく高精度に自動で加工する工
646 作機械である。我が国における甲機械のメーカー(以下「メーカー」という。)は5社あり、その
647 売上額に基づく割合(以下「シェア」という。)はほぼ均等である。甲機械に代替する工作機械は
648 なく、この10年間に甲機械の製造販売業に新規参入したものはなく、また、輸入もほとんど行わ
649 れていない。
650 甲機械を使用して機械部品を加工する甲機械の需要者(以下「需要者」という。)にとっては、
651 これをメーカーから購入する方法と、リース事業者から甲機械のリースを受ける方法がある。リー
652 スとは、需要者があらかじめ選定した甲機械をリース事業者がメーカーから購入し、これを需要者
653 がリース事業者から中長期にわたって賃借する方法である。リースには、@初期に多額の購入費用
654 が掛からず、毎月のリース料の支払だけで済み、費用を平準化できること、A管理や事務の負担を
655 軽減できること、B陳腐化しやすい甲機械にあって常に最新のものを導入できることなどのメリッ
656 トがあり、こうしたメリットを重視する需要者は、甲機械の購入ではなくリースを選択している。
657 どのメーカーにおいても、甲機械の販売台数に占める購入する需要者向けとリース事業者向けの比
658 率は、おおむね50パーセントずつとなっている。
659 リース事業者であるA社、B社、C社及びD社(以下「リース4社」という。)は、我が国にお
660 ける甲機械のリースの取引において、それぞれ約13パーセント、約11パーセント、約10パー
661 セント及び約7パーセントのシェアを有している。その他のリース事業者も多数存在し、競争は活
662 発に行われているが、そのシェアはいずれも5パーセント以下である。また、国内における甲機械
663 の販売台数全体のうちリース4社が購入する割合は、それぞれ約7パーセント、約6パーセント、
664 約5パーセント及び約4パーセントとなっている。甲機械のその他の購入者で3パーセント以上の
665 割合を有するものはいない。
666 近年、甲機械に対する需要の鈍化に伴い、メーカーには甲機械の在庫が増えている。こうした中
667 で、メーカーのうちX社及びY社(以下「メーカー2社」という。)が、それぞれ、甲機械の販売
668 のみならず、甲機械のリースを希望する需要者に対して自ら直接リースを行うこと(以下「直接リ
669 ース」という。)を始めた。これにより、リース4社の取引先である需要者の中にも、メーカー2
670 社から甲機械の直接リースを受けるものが出てきた。
671 メーカー2社による直接リースによって大きな影響を受けていたD社の営業部長dは、他社の状
672 況を知りたいと考えて、A社の営業部長a、B社の営業部長b及びC社の営業部長cに情報交換を
673 呼び掛けた。この呼び掛けを受けて令和5年4月10日に開かれた会合では、リース4社がそれぞ
674 れ直接リースによる影響を受けていることについて情報交換が行われた後、出席者から次のような
675 発言があった(発言順)。
676 d:「メーカーによる直接リースがこのまま拡大していくと、我々リース事業者は大きな打撃を受
677 けることになる。」
678 b:「リースに関する知識や経験に乏しいメーカーがリースを行うと、需要者に対して十分な説明
679 ができず、需要者の利益にならない。」
680 d:「リース事業への需要者の信頼を失わせることにもなる。」
681 a:「メーカーは、需要者に販売することは自由にできるのだから、リースについては我々に任せ
682 るべきだろう。」
683 c:「リースを知らないメーカーによる直接リースはやめさせるべきだ。」
684 b:「メーカー2社が直接リースを続けるなら、メーカー2社からの甲機械の購入はやめたい。」
685 a:「メーカー2社に直接リースをやめさせるには、ここにいるリース4社がメーカー2社からの
686 甲機械の購入をやめることが最も有効な方策ではないか。」
687 c:「確かにリース4社で協力すれば、メーカー2社への圧力になる。」
688 a:「メーカーに対してリース事業者の利益を守るためには、この場にいるリース4社の結束が必
689
690 - 16 -
691
692 要だ。」
693 c:「今のところ直接リースを始めたのはメーカー2社に限られているが、他のメーカーに直接リ
694 ースをさせないための牽制にもなる。」
695 b:「メーカー2社が直接リースをやめれば、他のメーカーも直接リースを始めようとは考えない
696 だろう。」
697 情報交換を呼び掛けたdは、会合の途中から発言しなくなったが、a、b及びcの発言に異を唱
698 えることはなかった。また、a、b及びcは、D社がメーカー2社による直接リースの影響を大き
699 く受けていることを知っていた。
700 その後、A社、B社及びC社(以下「リース3社」という。)は、それぞれ、令和5年4月24
701 日、メーカー2社に対して、直接リースを今後行わないこと、直接リースを今後も行うメーカーか
702 らは甲機械を購入しないことを申し入れた。D社も、同月26日、メーカー2社に対して、リース
703 3社の申入れと同趣旨を申し入れた。これらの申入れを受けて、メーカー2社のうちX社は、今後、
704 直接リースを行わないこととしたが、Y社は、引き続き直接リースを行っていた。このため、リー
705 ス3社は、それぞれ、同年6月8日、Y社に対して、今後Y社から甲機械を購入しない旨通知した。
706 D社も、同月10日、Y社に対して、リース3社の通知と同趣旨を通知した。これにより、Y社も、
707 以後、直接リースを行わないこととするに至った。
708 〔設
709
710 問〕
711 リース4社の上記行為について、独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
712
713 - 17 -
714
715 - 18 -
716
717 論文式試験問題集[知的財産法]
718
719 - 19 -
720
721 [知的財産法]
722 〔第1問〕(配点:50)
723 Xは、医薬品の製造販売を業とする会社であり、化合物αを有効成分とする疾患βの予防剤(以
724 下「本件発明」という。)について特許権を有している(以下、登録された権利を「本件特許権」
725 といい、本件特許権についての特許を「本件特許」という。)。αには甲作用と乙作用の2種類の
726 作用があり、甲作用が発現すると、疾患βの治療効果が生じ、乙作用が発現すると、疾患βの予防
727 効果が生じる。α自体は公知の化合物であり、本件発明の特許出願前に、αを有効成分とする疾患
728 βの治療剤が製造、販売されていた。本件発明は、αに乙作用があることを発見し、疾患βの予防
729 剤に適用したことに特徴を有するものである。なお、αを治療剤として用いる場合と予防剤として
730 用いる場合では、製剤の標準的な用法・用量に違いがある。
731 以上の事実関係を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各設問はそれぞれ独立したもの
732 であり、相互に関係はないものとする。
733 [設問1]
734 本件発明は、Xの研究開発部の部長であるAが、部下であるBに対して、αを予防剤に適用す
735 ることが可能か否かを検討するように指示し、Bが、Xの勤務時間中にXの施設を利用して実験
736 を行い、αを所定の用法・用量で使用した場合に乙作用が発現することを確認して完成させたも
737 のである。本件発明完成時のXの職務発明規程には、職務発明について、その発明が完成した時
738 にXが特許を受ける権利を取得し、Xが特許権を取得した時に発明をした従業者に対して一括し
739 て補償金を支払う旨が定められており、その内容は全従業員に周知されていた。Xは、前記職務
740 発明規程に基づいて、本件発明の特許を受ける権利を取得し、発明者をA、出願人をXとする特
741 許出願を行い、本件特許権を取得した。
742
743
744 本件発明に係る特許出願が特許庁に係属している間に、Bは、Xに対して、自らが本件発
745 明の発明者であると主張して、発明者名を訂正する補正手続を行うことを請求した。Bの請
746 求が認められるかについて論じなさい。
747
748
749
750 Bは、Xを退社後、Xに対して、自らが本件発明の発明者であると主張し、本件発明に係
751 る相当の利益として、前記職務発明規程に基づいて算出される額の補償金の支払を請求した。
752 Bの請求が本件発明の完成時から7年、本件発明に係る特許出願時から6年、本件発明に係
753 る特許登録時から4年を経過した後に行われたとした場合、Bの請求が認められるかについ
754 て論じなさい。なお、解答に当たっては、現行民法及び現行特許法の適用を前提とすること。
755
756 [設問2]
757 Cは、医薬品の製造販売を業とする会社であるが、本件発明に係る特許出願前に、他の化合物
758 γが疾患βの治療剤と予防剤の両方に適用されていたことから、αを疾患βの予防剤に適用する
759 ことは、本件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)
760 が容易に想到可能であると考え、本件特許について無効審判を請求したところ、特許庁が請求不
761 成立審決をしたため、Cは審決取消訴訟を提起した。知的財産高等裁判所は、Cの主張を認め、
762 αを疾患βの予防剤に適用することは当業者が容易に想到し得るとして審決を取り消す判決をし、
763 その判決が確定した。その後、特許庁は再度の審理をし、本件特許を無効にすべき旨の第二次審
764 決をしたため、Xは第二次審決取消訴訟を提起した。第二次審決取消訴訟において、Xは、仮に
765 αを疾患βの予防剤に適用することを当業者が容易に想到し得るとしても、本件特許出願の願書
766 に添付した明細書記載の実験により証明されるαの予防効果は当業者の予測できない顕著なもの
767 であるから、本件特許は無効ではないという主張を新たに行った。これに対して、Cは、αの予
768 防効果はγのそれと同程度のものであるから、αが予測できない顕著な効果を有するとはいえな
769
770 - 20 -
771
772 いと主張した。
773
774
775 第二次審決取消訴訟において、Xが本件発明の効果に関する主張を新たに行うことは許さ
776 れるかについて論じなさい。
777
778
779
780 第二次審決取消訴訟において本件発明の効果に関する主張をすることが許されるとして、
781 X及びCの主張の妥当性について論じなさい。
782
783 [設問3]
784 Dは、医薬品の製造販売を業とする会社であり、αを有効成分とする製剤(以下「D製剤」と
785 いう。)を製造、販売している。D製剤の添付文書には、治療剤として使用する場合の用法・用
786 量と予防剤として使用する場合の用法・用量が併記されている。Xは、本件特許権に基づき、D
787 に対して、D製剤の販売の差止め及び廃棄を請求した。Xの請求が認められるかについて論じな
788 さい。なお、解答に当たっては、本件特許が有効であることを前提とすること。
789
790 - 21 -
791
792 〔第2問〕(配点:50)
793 動物αは、日本のある地域にのみ生息しているネコ科の動物であるが、警戒心が強く動きが俊敏
794 であるため目撃例が非常に少なく、その生態には不明なところが多い。動物αの研究者であるXは、
795 いくつかの証拠から動物αの生息域を絞り込み、その域内で動物αに認識されずに撮影できるポイ
796 ントを発見し、そこにカメラ等の機材を設置・固定して、撮影する角度も最適に調整した上で録画
797 を開始し、その場を立ち去って50時間放置した。このようにして撮影された映像(以下、この5
798 0時間分の映像を「X映像1」という。)に、動物αが鮮明に映っていた。Xは、X映像1に断続
799 的に映っている動物αの部分の合計約3時間分から、各30秒から2分程度の10個のシーンを抽
800 出し、さらに、これらのシーンを時系列と異なる順番に配置して、15分の映像(以下「X映像
801 2」という。)を作成した。
802 民放のテレビ局であるYは、動物αについての番組(以下「Y番組1」という。)を作成し、放
803 送した。Y番組1の一部として、Xの許諾を得てX映像2は放送された。
804 以上の事実関係を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各設問はそれぞれ独立したもの
805 であり、相互に関係はないものとする。
806 [設問1]
807 出版社のZは、ネコ科の動物についての図鑑を発行した。この図鑑は2種あり、一つは書籍単
808 独(以下「Z図鑑1」という。)、もう一つはZ図鑑1に各種ネコ科の動物の映像が収録された
809 DVD(以下「Z・DVD」という。)が付属しているもの(以下「Z図鑑2」という。)であ
810 る。Z図鑑1は全部で250ページから成り、うち2ページにおいて動物αの画像5枚(以下
811 「Z画像」という。)が掲載されている。Z・DVDには各15分程度の映像作品が5つ収録さ
812 れており、そのうちの一つとして、動物αの映っている映像(以下「Z映像」という。)がある。
813 Z画像とZ映像は、放送されたY番組1を録画したものから、Z画像についてはX映像2の一部
814 を抜き出して、Z映像についてはX映像2の全部を抜き出して、それぞれ作成されたものである。
815 XはZに対し、訴訟を提起した。
816
817
818 この訴訟において、Xは、X映像2を自らの著作物として主張している。Xがこのような
819 主張をすることには、X映像1を自らの著作物として主張する場合と比較して、Xにとって
820 どのような利点があるかについて論じなさい。
821
822
823
824 XがZに対して、その著作権に基づいてなし得る請求としてどのようなものが考えられる
825 か。の解答を踏まえ、その請求の妥当性についても論じなさい。
826
827 [設問2]
828 Yは、Y番組1とは別の番組(以下「Y番組2」という。)において、X映像2を使用するこ
829 とを企画したが、Xの許諾が得られなかったため、将来的に同種の番組を作成する際に使用する
830 ことも視野に入れて、X映像2と同様の映像を自ら作成することとした。このため、Yのスタッ
831 フは、X映像1の撮影場所を特定し、その場所にX映像1と同様の範囲が映るようにカメラ等の
832 機材の位置と角度を調整して設置・固定し、50時間放置して撮影を実行した。さらに同スタッ
833 フは、撮影された映像の中から、動物αがX映像2で見られたのと似た動きをしている10個の
834 シーンを抽出し、これらをX映像2で見られたのと同じ順番になるように配置した15分の映像
835 (以下「Y映像」という。)を作成した。その後、Y映像はY番組2の一部として放送された。
836 Y番組2の終了間際に出されるテロップには、Xの氏名が「協力者」として表示されていた(こ
837 の部分以外に、Y番組2においてXの氏名が表示される部分は存在しない。)。XはYに対し、
838 訴訟を提起した。
839
840
841 この訴訟において、Yにより侵害された著作権法上の権利として、どのような権利をXが
842 主張すべきかについて論じなさい。
843
844 - 22 -
845
846
847
848 で解答した権利に基づいて、XがYに対してなし得る請求としてどのようなものが考え
849 られるか。その請求の妥当性についても論じなさい。
850
851 [設問3]
852 Y番組1の放送後、視聴者から、Y番組1中のX映像2を見た飼い犬が急に激しく吠え立て始
853 め、X映像2を見ている間それがやまなかったという多数の報告がYに寄せられた。X映像2を
854 見た犬の反応の映像が視聴者の笑いを誘うものになるかもしれないと考えたYは、バラエティ番
855 組の企画として、次のような実験(以下「Y実験」という。)を行うこととした。Y実験は、タ
856 ブレットに]映像2を記録し、そのタブレットを持ったYのスタッフが、街で犬を散歩させてい
857 る飼い主に声掛けして、承諾を得られた場合、その犬に、タブレットに記録された]映像2を再
858 生して見せる、というものである。Yは、Y実験が犬に映像を見せるために行うものであること
859 から、Y実験に際して]映像2をタブレットに記録することや、それに記録した映像を再生する
860 ことが著作権侵害に問われることはないと判断したため、Y実験に関して]に許諾を求めること
861 はしなかった。
862 YがY実験を実施したところ、承諾を得られた飼い主が20名いたため、20匹の飼い犬にX
863 映像2の全てを見せた。Y実験の完了直後に、実験に用いたタブレットに記録されたX映像2は
864 Yにより削除された。
865 Y実験が行われたことを知り、この企画をくだらないものと思い立腹したXは、Yに対し、損
866 害賠償を求める訴訟を提起した。
867
868
869 Yはどのような根拠に基づいて下線部のような判断をしたと考えられるか。簡潔に答えな
870 さい。
871
872
873
874 Y実験においてYのスタッフは、各飼い主に対して事前に実験の趣旨を説明した際、飼い
875 主が映像を見る必要はない旨伝達していたが、珍しい動物αに興味を持った飼い主3名がX
876 映像2の全てを見ていた。この場合に、YがXの著作権を侵害したと言えるか。の解答を
877 踏まえ、論じなさい。
878
879 - 23 -
880
881 - 24 -
882
883 論文式試験問題集[労
884
885 - 25 -
886
887 働
888
889 法]
890
891 [労
892
893 働
894
895 法]
896
897 〔第1問〕(配点:50)
898 次の事例を読んで、後記の設問に答えなさい。
899 【事
900
901 例】
902 Xは、平成15年4月、約500名の社員を擁するIT企業であるY社との間で、所定労働時間
903
904 を1日8時間、賃金(基本給)を月額30万円として、担当職種の限定なく、期間の定めのない労
905 働契約を締結し、その頃から、同社においてプログラマー兼システムエンジニアとして就労を始め、
906 平成30年4月には、本社システム開発課の課長補佐に昇進するとともに賃金(基本給)は月額5
907 0万円に昇給し、以後、主に同課の課長補佐が務めるものとされていたシステム開発のプロジェク
908 トマネージャーとして就労していた。
909 ところが、Xは、令和元年9月頃、私傷病であるうつ病を発症した。Xは、発症後しばらくは、
910 有給休暇を取得して療養したものの、症状は改善せず、かかりつけのメンタルクリニックの主治医
911 Aからも、「少なくとも今後3か月間の自宅療養の必要がある。」旨の診断を受けた。そこで、X
912 は、上司と相談の上、後記のY社の就業規則に定められた私傷病休職の制度を利用し、令和2年1
913 月1日から休職することとなった。
914 休職期間の満了日(令和3年6月30日)が迫る同月1日に至り、Xは、主治医Aに対し、復職
915 の希望を述べて診断書の作成を求めた。主治医Aは、Xの症状は、休職を開始した頃と比べれば改
916 善傾向にはあるものの、依然として投薬の種類・量が多く、そのため、Xについては「なお3か月
917 程度の療養の継続を要する。」と診断するとともに、復職については「不可能ではないが、複雑な
918 業務の遂行はいまだ困難と思われる。」と記載した診断書を作成し、Xに交付した。
919 この診断書及び復職申出書をXから受領したY社の復職判定委員会(Y社の就業規則第34条に
920 規定するものであり、同社の人事担当役員らにより組織される。)は、同月10日、Xに対し、Y
921 社の産業医Bと面談するよう指示し、産業医Bは、Xと面談の上、復職判定委員会に対して、「適
922 切な配慮がない限り、プロジェクトマネージャーとしての就労は困難と思料する。」との意見を述
923 べた。これを受け、復職判定委員会は、Xと面談を行ったが、その際、Xは、「今でも朝に起床す
924 るのが億劫なときがあり、これまで外出もあまりしておらず、注意力が散漫になるときもないでは
925 ないが、休職に入った令和2年1月当時に比べれば、症状は改善しており、エンジニアとして力を
926 尽くしたいので、復職させてほしい。」旨を述べた。
927 復職判定委員会は、主治医A作成の診断書、復職申出書の内容、産業医Bの意見、Xの面談の際
928 の発言などを考慮し、Xを本社システム開発課の課長補佐として復職させ、プロジェクトマネージ
929 ャーとして就労させることは難しいと考えた。
930 【就業規則(抜粋)】
931 第31条
932 第1号
933
934 社員が次の各号のいずれかに該当するときは、会社は休職を命ずる。
935 社員が、業務災害又は通勤災害に起因するもの以外の傷病(以下「私傷病」という。)に
936 より引き続き60日間欠勤し、なお就労することができないと会社が認めたとき。
937
938 (第2号以下は省略)
939 第32条
940
941 前条により休職を命ぜられた社員は、次条の休職の期間中は社員としての地位を失わない
942
943 が、賃金は支給されないものとする。
944 第33条
945
946 第31条第1号の事由による休職の期間は、勤続年数に応じて次のとおりとする。ただし、
947
948 会社は、当該休職の期間が満了してもなお引き続き休養が必要と認めたときは、通算して2年を超
949 えない範囲内でこれを延長することができる。
950 第1号
951
952 勤続年数が1年未満の者
953
954 6か月
955
956 - 26 -
957
958 第2号
959
960 勤続年数が1年以上10年未満の者
961
962 第3号
963
964 勤続年数が10年を超える者
965
966 第34条
967
968 1年
969
970 1年6か月
971
972 第31条第1号の事由により休職を命ぜられた社員が復職をしようとするときは、会社に
973
974 対し、医師の診断書を添えて申出をするものとし、会社は、復職判定委員会の判定に基づき、当該
975 社員について復職が可能と認めたときは、当該社員に対し、10日以内に復職することを命ずるも
976 のとする。
977 第35条
978
979 社員が第33条の休職の期間を満了しても復職することができないときは、会社を退職す
980
981 る。
982 〔設
983 1
984
985 問〕
986 上記【事例】の経過を踏まえ、復職判定委員会は、Xに対し、原職である本社システム開発課
987 の課長補佐としての復職は難しい旨を伝えたが、Xは、「プロジェクトマネージャーとして期待
988 される役割を全うする自信はある。別の職務をあてがわれて課長補佐から降格させられ、それに
989 より給与が減額されては困る。」と述べて原職での復職を強く希望し、それ以外の形での復職を
990 拒否した。復職判定委員会は、そのようなXの意思を踏まえ、復職可能とは認められないと判定
991 し、Y社は、令和3年6月20日、Xに対し、就業規則第34条の復職命令はしない旨を伝えた。
992 その後、同月30日をもって就業規則所定の休職期間が満了し、なお復職できないと認められた
993 ことから、Y社は、就業規則第35条に基づき、Xは自然退職したものとした。
994 Xは、Y社が自分を原職で復職させず、自然退職したものとして取り扱ったことは不当であり、
995 同社に対して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴訟を提起したいと考
996 えている。このXの請求の当否について、考えられる法律上の論点を挙げて検討し、あなたの見
997 解を述べなさい。
998
999 2
1000
1001 上記【事例】の経過を踏まえ、復職判定委員会は、Xに対し、直ちに原職である本社システム
1002 開発課の課長補佐としての復職は難しい旨を伝えるとともに、「一旦正式な復職とせずに本社総
1003 務課に出社して繁忙度が比較的低い同課の事務職の業務を行ってもらい、一定期間、同課でのフ
1004 ルタイムでの就労の状況を観察した上で、改めて正式に復職の可否を判断する。」という案を提
1005 示したが、Xが「最初からフルタイムで就労を再開することには不安が残る。」と述べて難色を
1006 示したことから、更に「当面の間、週3日の隔日勤務、勤務時間を午後1時から午後5時までの
1007 4時間とし、就労状況を観察して徐々に業務量や勤務時間を増やしていく。」という案を提示し、
1008 Xはこれを了承した。Y社は、これを踏まえ、就業規則第33条ただし書に基づき、Xの休職期
1009 間を2か月間延長した上で、休職扱いのまま、Xに対し、令和3年7月1日から本社総務課の事
1010 務職として就労するよう指示し、同課課長に対し、Xには簡易な業務から担当させるよう指示し
1011 た。Xは、同日からY社への出勤を再開した。
1012 同課における業務は、定型的な事務が中心であり、システム開発課における業務よりも日々の
1013 繁忙度は低かったが、Xは、2週間ほどで体調不良となり、同月中旬頃から欠勤を重ねるに至っ
1014 た。復職判定委員会は、このような状況に照らし、Xにつき復職可能とは認められないと判定し、
1015 Y社は、同年8月20日、Xに対し、就業規則第34条の復職命令はしない旨を伝えた。その後、
1016 同月31日をもって延長後の休職期間が満了し、なお復職できないと認められたことから、Y社
1017 は、就業規則第35条に基づき、Xは自然退職したものとした。
1018 Xは、復職がかなわなかったのは、本社総務課で就労を再開した際の労働条件が過重であった
1019 ためであって、復職させずに休職期間の満了をもって自然退職したものとして取り扱われたこと
1020 は不当であり、また、同年7月1日以降については、実際に同課で就労していたのであるから、
1021 少なくとも当該就労分の賃金は支払われるべきであるとして、Y社に対して、労働契約上の権利
1022 を有する地位にあることの確認及び同課で就労した期間に係る未払賃金の支払を求める訴訟を提
1023 起したいと考えている。このXの請求の当否について、考えられる法律上の論点を挙げて検討し、
1024
1025 - 27 -
1026
1027 あなたの見解を述べなさい。
1028
1029 - 28 -
1030
1031 〔第2問〕(配点:50)
1032 次の事例を読んで、後記の設問に答えなさい。
1033 【事
1034 1
1035
1036 例】
1037 A社は、観光バスツアーの催行その他の旅客自動車運送事業等を営む会社である。B社は、労
1038 働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88
1039 号)に基づく労働者派遣事業その他の事業を営む会社であり、その雇用する添乗員をA社に派遣
1040 している。なお、B社は、A社と同じ企業グループに所属する同社の関連会社であるが、同グル
1041 ープ外の会社を含め、A社以外にも添乗員を派遣している。C組合は、B社に雇用されている添
1042 乗員の6割で組織する労働組合であり、Dは、B社に雇用され、A社に派遣されている添乗員で、
1043 C組合の組合員である。C組合とB社との間で締結された賃金に関する基本的内容を定める労働
1044 協約においては、賃金は毎月20日締め、月末支払とされていた。
1045 A社は、同社に派遣されている添乗員(以下単に「添乗員」という。)について、基本的には、
1046 同社が各ツアーの催行に際し旅程を踏まえて作成する添乗員勤務計画書に基づいて添乗業務に従
1047 事させつつ、これに加えて、業務従事日には日報を提出させ、また、必要に応じて携帯電話等で
1048 添乗員に連絡・指示をすること等により、添乗員が添乗業務に従事する時間の管理を行っていた
1049 が、添乗員の勤務の実態としては、ツアー当日の交通状況や立ち寄り先の観光地の事情等により、
1050 前記の添乗員勤務計画書に定められた時間を超える労働がしばしば行われ、しかも、時間外労働
1051 について所定の割増賃金が支払われない状況が生じていた。そのため、C組合は、令和3年10
1052 月1日、A社に対して、C組合の組合員である添乗員の労働時間管理の改善に向けた事項(具体
1053 的には、勤務実態についての資料の提示、長時間労働等を解消するための方策の策定等)を議題
1054 として、団体交渉を申し入れるとともに、同日、B社に対して、時間外労働に係る未払の割増賃
1055 金の支払を議題として、団体交渉を申し入れた。
1056
1057 2
1058
1059 A社は、同月10日、B社に雇用されている添乗員で組織する労働組合であるC組合との団体
1060 交渉に応じる立場にはないとしてこの申入れを拒否し、C組合は、同月31日、この団体交渉拒
1061 否は労働組合法第7条第2号所定の不当労働行為に該当するとして、前記のとおり申し入れた団
1062 体交渉にA社が応じる旨の救済を求め、管轄する労働委員会に救済申立てを行った。
1063
1064 3
1065
1066 B社は、同月15日、前記のとおり申し入れられた団体交渉に応じ、その際、時間外労働に係
1067 る未払の割増賃金があることを認めつつ、近年同社の事業全体が低調で経営が悪化しているため、
1068 懸案の未払の割増賃金を含め、当面の賃金の支払について交渉したい旨述べた。これを受け、B
1069 社とC組合との間で交渉が重ねられ、同年12月20日、両者の間で、C組合の組合員である添
1070 乗員の時間外労働に係る未払の割増賃金は同月末に一括して支払う一方で、同月分以降12か月
1071 間の基本給の1割について支払の猶予を認め、令和4年12月分の賃金の支払の際、当該支払猶
1072 予分の賃金を一括で併せて支払うことを内容とする労働協約が締結された(以下「令和3年協
1073 約」という。)。令和3年協約は、C組合の規約に定められた手続を経て締結されたものであり、
1074 Dは、その過程で明示的に反対の意思を表明したものではなかったが、自身について未払となっ
1075 ている時間外労働に係る割増賃金はそれほど多額ではなく、むしろ向こう1年間の基本給の1割
1076 の支払が猶予されることによる生活への影響を懸念し、不満を持っていた。
1077
1078 4
1079
1080 令和3年協約を締結する際、B社としては、1年後であれば経営状態が改善して賃金の支払に
1081 支障がなくなっているであろうと見込んでいたが、令和4年下半期に同社の経営状態は更に悪化
1082 し、令和4年12月分の賃金の支払の際、令和3年協約において約した支払猶予分の賃金の支払
1083 ができなかった。このため、B社は、令和5年1月に入り、C組合に対して交渉を申し入れ、未
1084 払となっている支払猶予分の賃金債権の放棄を提案した。C組合は、B社の経営がこれ以上悪化
1085 しない保証はなく、その結果として同社が組合員の解雇に踏み切ったり、将来にわたり賃金を減
1086 額する措置に出たりする事態となることは回避すべきであるとして、同月31日、前記のB社の
1087
1088 - 29 -
1089
1090 提案を受け入れ、C組合と同社との間で、その旨の労働協約が締結された(以下「令和5年協
1091 約」という。)。令和5年協約も、C組合規約所定の手続を経たものであった。
1092 かねて令和3年協約に不満を持っていたDは、令和5年協約は到底受け入れられないと考え、
1093 令和5年2月28日、支払猶予分の賃金及びその遅延損害金の支払をB社に求める訴訟を、管轄
1094 する地方裁判所に提起した。
1095 〔設
1096 1
1097
1098 問〕
1099 C組合は、令和3年10月31日に行った申立てについて、労働委員会において救済を受ける
1100 ことができるか。検討すべき法律上の論点を挙げて、あなたの意見を述べなさい。なお、C組合
1101 は、労働組合法第2条に規定する「労働組合」に該当し、かつ、C組合について同法第5条第1
1102 項の立証がなされたものとする。
1103
1104 2
1105
1106 Dが訴訟を提起した、支払猶予分の賃金及びその遅延損害金の支払請求は、認められるか。検
1107 討すべき法律上の論点を挙げて、あなたの意見を述べなさい。
1108
1109 - 30 -
1110
1111 論文式試験問題集[環
1112
1113 - 31 -
1114
1115 境
1116
1117 法]
1118
1119 [環
1120
1121 境
1122
1123 法]
1124
1125 〔第1問〕(配点:50)
1126 道路騒音訴訟及び空港・基地騒音訴訟に関する以下の問いに答えなさい。
1127 〔設問1〕
1128 Aらは、B市とC市を結ぶ一般国道の沿道の道路端に近接した範囲内に居住している。Aらは、
1129 この道路を走行する自動車による騒音によって被害を被っており、国に対して訴訟を提起したい
1130 と考えている。
1131 なお、大阪国際空港訴訟最高裁大法廷判決(最高裁判所昭和56年12月16日大法廷判決・
1132 民集35巻10号1369頁)は、空港騒音訴訟において、国に対する民事差止訴訟を不適法と
1133 して却下している。
1134
1135
1136 本件設例と同様の道路騒音の事例について、裁判所は、Aらの民事差止訴訟の提起は適法で
1137 あるとしてきた。その理由としてはどのようなことが考えられるか。【資料】を参照しつつ、
1138 解答しなさい。
1139
1140
1141
1142 @Aらが民事差止訴訟を提起する場合、違法性の判断枠組みはどのようになるか、A損害賠
1143 償を請求する場合の違法性の判断枠組みとどのように異なるか。参考となる最高裁判所の判決
1144 や学説の立場を指摘しつつ、解答しなさい。
1145
1146 〔設問2〕
1147 Dらは、自衛隊基地の周辺に居住しており、夜間における自衛隊機の離発着に起因する騒音に
1148 よる不眠等に悩んでおり、差止めを請求する訴訟を提起したいと考えている。
1149
1150
1151 Dらは、どのような訴訟を提起することができるか。複数の可能性を挙げて、訴訟要件に言
1152 及しつつ比較・検討しなさい。
1153
1154
1155
1156 において解答した訴えについて、自衛隊機の離発着の違法性の判断枠組みはどのようにな
1157 るか。参考となる最高裁判所の判決の立場を指摘しつつ、解答しなさい。
1158
1159
1160
1161 〔設問1〕の@と〔設問2〕のの違法性の判断枠組みの関係について、どのように考え
1162 るか、解答しなさい。
1163
1164 - 32 -
1165
1166 【資
1167
1168 料】
1169
1170 以下の文章は、道路騒音に関する最高裁判所の判決の後に、関係省庁が連名で発出した通知の抜粋
1171 である。
1172 警察庁丙都交発102号
1173 警察庁交通局長・環境庁大気保全局長・通商産業省環境立地局長・運輸省運輸政策局長・建設省道路
1174 局長から各都道府県知事・政令指定都市市長あて
1175 (略)
1176 道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針について
1177 平成7年12月1日
1178 道路交通公害対策関係省庁連絡会議
1179 1
1180
1181 (略)
1182
1183 2
1184
1185 (略)
1186
1187 3
1188
1189 道路交通騒音の深刻な地域における対策の基本的考え方
1190 道路交通騒音が深刻である地域においては、可能な限り道路構造対策を実施すべきであるが、こ
1191 れに加えて、交通流対策、沿道対策を含めた総合的対策が必要であり、関係省庁の連携をさらに強
1192 化して対策を推進する必要がある。この場合、交通や沿道の状況が地域により様々であることから、
1193 自治体等地域レベルの施策実施主体が各々の地域に応じた取組を行うことが重要である。(以下、
1194 略)
1195
1196 4
1197
1198 道路交通騒音が深刻な地域における具体的な道路交通騒音対策
1199
1200
1201 道路構造対策の推進
1202 @
1203
1204 平面構造の道路における対策
1205 騒音の状況が深刻な地域においては、騒音の低減のためには、平面構造の道路においても遮
1206 音壁を設置することが望ましい。ただし、遮音壁の設置が沿道からのアクセスを低下させる場
1207 合や、景観上望ましくない場合等も考えられるため、騒音の観点に加えて沿道利用等総合的な
1208 観点から地域の意向を踏まえつつ、遮音壁の設置を推進する必要がある。
1209 また、通常の遮音壁が設置できない地域においても低層の遮音壁や低騒音舗装の敷設等可能
1210 な限りの対策を行っていくべきである。このため、関係省庁においては、低層遮音壁や、美観
1211 に優れた遮音壁等の技術開発を推進し、地域の状況に応じた技術の選択の幅を広げていく。
1212
1213 A
1214
1215 高架の道路における対策
1216 (略)
1217
1218
1219
1220 発生交通量の低減の推進
1221 @
1222
1223 物流対策の推進
1224 (略)
1225
1226 A
1227
1228 人流対策の推進
1229 (略)
1230
1231
1232
1233 交通流対策の推進
1234 @
1235
1236 道路ネットワークの整備による交通流の分散
1237 (略)
1238
1239 A
1240
1241 交通管制システムの高度化等による交通流の分散
1242 (略)
1243
1244 B〜D
1245 E
1246
1247 (略)
1248
1249 交通規制及び交通指導取締り
1250 適正な交通流の実現のため、以下の施策について支援を行う。
1251 a
1252
1253 速度違反取締り等の強化及び速度違反自動取締装置の増設
1254
1255 - 33 -
1256
1257 速度超過車両、過積載車両の取締り活動を強化し、車両走行時に発生する騒音の低減を図
1258 る。また、速度超過車両に対する取締り効果のみならず、走行速度の抑制に効果がある速度
1259 違反自動取締装置を増設するとともに、軸重自動計測装置や走行状況を把握するためのIT
1260 Vカメラの設置を推進する。
1261 b
1262
1263 減速を促す標識・標示の設置・改良
1264 標識の視認性の向上(大型化、灯火化及び可変化)や運転者に減速を促す標示の設置・改
1265 良(車線境界線のワイド化、くし形減速マーク等)を行い、走行速度の抑制を図る。
1266
1267 c
1268
1269 高速走行抑止システムの増設
1270 高速走行車両の検出、高速走行車両に対する警告及び高速走行車両の取締り機能を持つ高
1271 速走行抑止システムの設置を推進し、走行速度の抑制を図る。
1272
1273 d
1274
1275 大型自動車の通行規制等の検討
1276 交通実態や迂回路等の整備状況等を勘案して、大型自動車の通行規制等の検討を行う。
1277
1278
1279
1280 沿道対策等の推進
1281 (略)
1282
1283
1284
1285 自動車単体対策の強化
1286 (略)
1287
1288
1289
1290 低公害車の普及促進
1291 (略)
1292
1293
1294
1295 自動車公害防止計画の策定に対する支援
1296 (略)
1297
1298
1299
1300 自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(以下
1301 「自動車NOx法」という)の進行管理
1302 (略)
1303
1304
1305
1306 普及啓発活動の推進
1307 (略)
1308
1309
1310
1311 その他
1312 (略)
1313
1314 5
1315
1316 今後の取組
1317 関係省庁は、3に示したように地域的取組を支援していくほか、今後とも本連絡会議等の場にお
1318 いて相互に密接な連携を図りつつ、本とりまとめに盛られた道路交通騒音対策を着実に実施してい
1319 くものとする。
1320
1321 - 34 -
1322
1323 〔第2問〕(配点:50)
1324 小売業を営むXは、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(以下「容器包
1325 装リサイクル法」という。)上の特定容器利用事業者として再商品化義務を履行するため、公益財
1326 団法人日本容器包装リサイクル協会との間で再商品化に関する契約を締結して委託料を支払ってき
1327 た。Xは、容器包装リサイクル法が特定容器利用事業者に特定容器製造等事業者よりも過重な負担
1328 を課するのは、憲法に違反し、容器包装リサイクル法の規定に係る国会の立法行為は違法であると
1329 主張して、国家賠償を請求する訴訟を提起したいと考えている。
1330 〔設問1〕
1331 容器包装リサイクル法等における費用負担の考え方について以下の問いに答えなさい。
1332
1333
1334 容器包装リサイクル法における費用負担はどのような考え方に基づいているか。その考え方
1335 について説明しなさい。
1336
1337
1338
1339 @の考え方は同法のどの点にあらわれているか、条文上の根拠を挙げつつ簡潔に説明しな
1340 さい。Aその中には、規定の導入以降実際には機能を果たさなくなってきた規定もある。それ
1341 については、なぜ機能を果たさなくなってきたかについても説明しなさい。
1342
1343
1344
1345 の考え方は循環型社会形成推進基本法にも定められている考え方である。それは同法のど
1346 の点にあらわれているか、条文を挙げつつ答えなさい。
1347
1348 〔設問2〕
1349 問題文との関連で、以下の問いに答えなさい。
1350
1351
1352 現行の容器包装リサイクル法は、実際に容器の製造に関与していないともいえる特定容器利
1353 用事業者に費用負担を課している。その背景にある実質的根拠は何か。
1354
1355
1356
1357 現行の容器包装リサイクル法において、特定容器利用事業者に特定容器製造等事業者よりも
1358 過重な負担を課しているとするXの主張に関連する規定は、同法の条文のどの点か。
1359
1360
1361
1362 の規定については国には立法裁量があるとしても、立法上の適切さを考えた場合、立法論
1363 としては、特定容器製造等事業者と特定容器利用事業者の負担は同等とした上で、双方の事業
1364 者にインセンティブをより適切に与える他の方法も考えられる。【資料】を読み、どのような
1365 方法が考えられるかを指摘しなさい。
1366
1367
1368
1369 Xは、問題文の訴訟は提起せず、今後、委託料の支払を留保するという選択肢も考えている。
1370 留保した場合、行政側はXに対してどのような措置を採ることが考えられるか。条文を挙げつ
1371 つ説明しなさい。
1372
1373 - 35 -
1374
1375 【資
1376
1377 料】
1378
1379 2015年に欧州委員会が発表した循環経済パッケージの中には製品デザインに対する具体的な提
1380 案が2つある。そのうちの一つが調整料金制度である。こうした流れの中で、2016年の「OEC
1381 D(経済協力開発機構)ガイダンス改訂版」に調整料金制度が位置づけられたとみるべきだろう。ま
1382 たこれは、理論的に望ましいとされるリサイクラビリティに基づく製品課金を簡易的に導入したもの
1383 と捉えられる。ガイダンス改訂版2章の推奨事項でも、フルコスト、可変料金制、静脈セクター・消
1384 費者からメーカーへの情報フロー拡大、PRO(Producer Responsibility Organisation)によるエ
1385 コデザイン投資への支援、国際協調と並んで、調整料金制度や新技術利用等の革新的方法の検討があ
1386 げられている。
1387 フランスはEUの中でも調整料金制度を先駆的・積極的に導入している。(中略)具体的には、欧
1388 州レベルの制度またはEUの規制に対応した7つの制度に加えて、フランス独自の制度として廃タイ
1389 ヤ(2004年)、印刷物等(ただし本・雑誌・新聞・行政文書は今のところ対象外:2007年)、
1390 衣類・家庭用リネン類・履物(2009年)、在宅医療の注射針等(2013年)、家具(2013
1391 年)、家庭用薬品廃棄物(2013年)、ボトル入りガスボンベ(2013年)、レジャー用・スポ
1392 ーツ用ボート(2018年から実施予定)の8つの制度がある。そのほか自主的取組としてオフィス
1393 系インクカートリッジ(2000年)、農業用品(農薬容器、未使用農薬、農業用フィルム等:20
1394 01年)、トレーラハウス(2010年)があげられている。2000年以降、順次拡大されており、
1395 また制度改革も進められている。そうした制度改革の一つが調整料金制度である。
1396 (中略)エコデザインを推進するために、特に製品デザインや耐用年数、使用後のリサイクル等の
1397 環境面に関係する判断基準に基づいてPROへのリサイクル委託料金(contribution)を調整するこ
1398 とが定められた(フランス環境法L541−10−9条)。
1399 (山川肇・廃棄物資源循環学会誌29巻1号39頁(抜粋)(引用に当たり、一部追記した。))
1400
1401 - 36 -
1402
1403 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1404
1405 - 37 -
1406
1407 [国際関係法(公法系)]
1408 〔第1問〕(配点:50)
1409 P大陸東部地域において南北に隣接するA国及びB国は、いずれもその東側においてQ海に面し
1410 ている。両国間にはα山脈が東西に走っており、その分水嶺が両国の陸の国境線とされていて、北
1411 側のA国と南側のB国を分けつつ、東端はQ海にやや突き出たβ岬まで続いている。A国もB国も
1412 α山脈の分水嶺が陸地境界線となること及びβ岬が陸地境界線の東の終点であることは争っていな
1413 いが、海洋に関する境界線については合意がなされていなかった。北側のA国は、β岬から子午線
1414 に沿うように北へほぼまっすぐに伸びる低潮線を通常基線として定め、国内法により当該基線から
1415 12海里までの海域を領海とし、通常基線から200海里までの海域に排他的経済水域(以下「E
1416 EZ」という。)を、その下の海底部分に大陸棚を設定した。これに対して、南側のB国の海岸線
1417 はβ岬からやや緩やかに南西方向に伸びており、β岬より南側には、海岸に沿って沖合約5海里の
1418 ところに一連の島と低潮高地が存在している。B国は国内法により、基線の一部についてこれらの
1419 島と低潮高地をつないで直線基線とするとともに、当該基線から12海里までの海域に領海を、2
1420 00海里までの海域とその下の海底部分にそれぞれEEZと大陸棚を設定した。
1421 AB両国は、海洋境界線の設定に関して何度かの交渉を経てそれぞれの基線を確認した上で、領
1422 海については等距離線で境界画定することに合意したが、EEZ及び大陸棚については単一の境界
1423 画定線とすることに合意したものの、その境界画定線をどこに引くかに関しては合意に至らなかっ
1424 た。AB両国間での主たる意見の相違は、β岬が位置する緯度よりも約6海里北側でA国沖約30
1425 海里のところにあるγ島(面積約0.5平方キロメートル)の取扱いと、海洋境界画定に関連する
1426 AB両国それぞれの関連海岸線の長さについてであった。AB両国ともγ島がB国領であることを
1427 認めていたものの、A国は、γ島が無人島であることから海洋境界画定についてはその存在を無視
1428 することを主張したのに対し、B国はこれを関連事情として考慮すべきであると反論した。また、
1429 海洋境界画定に関するA国とB国の関連海岸線について、A国の主張によれば、その長さはA国が
1430 約400キロメートル、B国は約410キロメートルで、長さの比は約1:1となり、A国が主張
1431 する境界画定線で分けられる海域の面積も約1:1となる。これに対して、B国の主張によれば、
1432 関連海岸線の長さはA国が約400キロメートル、B国は約620キロメートルで、約1:1.5
1433 であり、γ島を関連事情として考慮した境界画定線で分けられる海域の面積は約1:1.7になる
1434 という。
1435 その後、B国が、γ島に埋立て用の作業船とこれを護衛する軍艦を派遣し、γ島の周辺を埋め立
1436 てて島を大きくする作業を開始しようとしたため、A国もまた、γ島の周辺海域に軍艦を派遣して
1437 B国の作業船による埋立作業を中止させるために威嚇発砲を行ったところ、B国の軍艦もこれに応
1438 戦したため、AB両国軍艦の間で武力衝突が発生した。A国は、B国との武力衝突が生じている最
1439 中に、AB両国間におけるEEZと大陸棚の境界画定に関する問題を、国際司法裁判所(以下「I
1440 CJ」という。)に一方的に付託して海洋境界線の画定を求めたほか、B国に対して埋立作業と軍
1441 事活動を停止してγ島の周辺海域からB国の船舶を撤収させ、紛争を悪化・拡大するような措置を
1442 控えることを指示する仮保全措置も併せてICJに要請した。
1443 A国が海洋境界画定問題をICJに付託した後、C国の軍艦X号がB国の主張する領海に入域し
1444 て、更にB国が設定した直線基線の内側に入り、この直線基線とB国の低潮線との間の海域を迅速
1445 かつ継続的に通航しているところをB国の沿岸警備隊が発見するという出来事が生じた。B国の沿
1446 岸警備隊は、X号を発見した海域からB国の設定した領海外まで直ちに出るようX号に通知したと
1447 ころ、X号は、これを無視してB国の直線基線と低潮線との間の海域をしばらく航行した後、B国
1448 の主張する領海内を航行してようやくB国の領海の外に出た。B国は、国内法令で自国領海内での
1449 外国軍艦の通航について事前の許可申請や事前の通告を求めてはいなかったが、直線基線の内側は
1450 内水であって外国軍艦の通航は許容されないと主張して、この事件の後、X号の通航がB国の主権
1451
1452 - 38 -
1453
1454 を侵害する行為であるとしてC国に対して抗議を行った。
1455 A国、B国及びC国はいずれも国際連合(以下「国連」という。)の原加盟国であり、上記の出
1456 来事が生じた時点では既に1982年の海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」と
1457 いう。)の当事国でもあった。またAB両国は、国連加盟時に国際司法裁判所規程第36条第2項
1458 に基づきICJの管轄権を受諾する宣言を留保なしで行っている。
1459 以上の事実を基に、以下の設問に答えなさい。
1460 〔設
1461
1462 問〕
1463
1464 1.A国がICJに要請した仮保全措置に関して、近時のICJの判例を参考にしつつ、指示が
1465 命じられるための要件を確認した上で、A国は、自らが要請した仮保全措置がICJにより指
1466 示されるためにいかなる主張が可能かについて論じなさい。
1467 2.B国は、国連海洋法条約上、EEZと大陸棚の境界画定に関していかなる主張が可能かにつ
1468 いて、海洋境界画定に関する近時の国際判例を参考にしつつ論じなさい。
1469 3.X号の通航がB国の主権を侵害する行為であるというB国の抗議に対して、C国は国際法上
1470 いかなる反論が可能かについて論じなさい。
1471
1472 - 39 -
1473
1474 〔第2問〕(配点:50)
1475 α河は、ある大陸を流れる広い流域面積を有する河川で、同大陸の複数の国の領域を流れていた。
1476 A国は、α河から分岐した支流のβ川を挟んでB国と隣り合っていた。また、同じくα河から分岐
1477 した別の支流であるγ川が、別の隣国であるC国との国境線をまたいで複雑に蛇行していた。
1478 A国では19世紀末から少しずつ工業化が進み、特にα河上流地域に位置するD国から多くの石
1479 炭を輸入することで栄え始めた。β川は、そのための重要なルートであったが、他方、β川をめぐ
1480 ってA国とB国の双方が領有権を主張していた。AB両国は外交交渉を重ね、その結果、20世紀
1481 初頭には、「β川の主権はB国に属する。他方、A国はβ川において、産業目的のため、永久の航
1482 行利用権を有する。」との条項を有する協定(以下「P協定」という。)を締結した。
1483 この大陸では、20世紀後半になって、E国などのごく僅かな国を除いて、地域のほぼ全ての国
1484 である30数か国が加盟する一般的な地域国際組織Qが設立された。その設立条約によれば、Qは
1485 この地域と世界の「平和、安全及び進歩を達成すること」を目指して設立され、また、総会や理事
1486 会、事務局などのほか、地域の安全保障や人権保障、社会的福利増進のための各種機関を備えてい
1487 た。Qはこの大陸の中心的な国際組織として、設立以来、その目的に照らした活動に積極的に取り
1488 組み、各種分野において着実に実行を積み重ねていった。
1489 21世紀に入り、A国は自国の国土開発計画を見直す中で、自国と関わりのある河川の有効利用
1490 を考え始めた。
1491 β川については、これまで石炭輸入のための輸送以外には利用されてこなかったが、β川は起伏
1492 に富んだ風光明媚な地域を流れており、また、他の地域にはない多様な生物が生息していた。そこ
1493 で、A国は、有償で観光客を石炭輸送船に乗せる事業を国内事業者に許可し、あわせて、外国学術
1494 機関と契約して、研究を目的とする河川の生物資源調査を許すようになった。さらに、ちょうどそ
1495 の頃、上流のD国とE国の間で軍事的緊張が生じたため、A国は、β川を利用して、同じ石炭輸送
1496 船を用いてD国へ向けて対空砲や銃器・銃弾などの軍事兵器・物資の輸送も開始した。この種の軍
1497 事協力をA国は以前からD国に対して無償で行ってきたが、今回の輸送もこの協力の一環であり、
1498 緊張している地域の地理的位置から考えてβ川を利用することが戦略的に好ましいと考えられた。
1499 これに対し、B国は、A国に認めたのは石炭輸送のみであり、A国の行為はP協定違反だと主張し
1500 た。
1501 Qは、D国とE国の軍事的緊張が武力衝突に発展することを危惧して、Qの職員Xを含む国際監
1502 視団をD国にあるE国と隣接する国境地帯に派遣し、状況を監視させていた。しかし、その最中に、
1503 E国の軍隊がXをD国兵だと誤認して銃撃し死亡させた。Xの死亡を理由に、QはE国に損害賠償
1504 を求めたが、E国はこれを拒否し、Q設立条約にはQが損害賠償を求める権能については規定がな
1505 いことを指摘しつつ、そもそも国際組織であるQにそのような権能はないと主張した。
1506 他方、γ川についてもA国は新たな活用を検討し始めた。A国は、γ川流域に共同でダム4基か
1507 ら成る治水施設を構築する計画を立案し、C国に申し込んで、A国とC国がそれぞれ自国領域内に
1508 おいてγ川にダム2基ずつを建設することとする協定(以下「R協定」という。)を締結した。R
1509 協定によれば、その締結から8年以内をめどに工事を完成させ、運用を開始するものとされた。A
1510 国は即座に建設に取り掛かり、5年目には自国が建設することになっていたダムの建設を完了させ
1511 た。他方、C国はR協定を締結した直後から経済状況が苦しくなり、ダム建設は遅滞していった。
1512 さらに、C国国内で環境保護団体が、γ川流域には多様な生物が生息していることに着目してダム
1513 建設はこの付近の生態系を壊すとの主張を行うようになった。C国国内ではダム建設に反対する声
1514 が高まり、ついにはこれに支持された政党が政権を取るに至り、ダム建設作業は完全に停止した。
1515 A国はC国に対して、ダム建設を継続するように申し入れたが、新政権下のC国は聞き入れず、そ
1516 れどころかC国国内のγ川流域を自然保護区とする国内法を制定した。この国内法によれば、自然
1517 保護区にダムや発電所などの一定以上の規模の建設物を設置できないとされる。A国は、4基のダ
1518 ムが一体として機能することで初めてR協定締結時に予定していた効果が発揮できることから、自
1519
1520 - 40 -
1521
1522 国がこれまで投じた建設費用の相当部分が無駄になったと抗議し、C国に損害賠償を求めた。他方、
1523 C国は、γ川流域を自然保護区とする国内法によってR協定を守ることはできなくなったとして不
1524 遵守を正当化し、かつ、R協定の無効を主張し、さらに、経済的苦境や環境保護は喫緊の問題なの
1525 であって、これは緊急避難に当たり、損害賠償を支払う義務はないとも主張した。
1526 なお、A国〜E国は、いずれも条約法に関するウィーン条約の当事国である。また、A国〜D国
1527 は、国際組織Qの加盟国である。
1528 以上の事実を基に、以下の設問に答えなさい。
1529 〔設
1530
1531 問〕
1532
1533 1.A国がP協定に違反しているとのB国の主張に対して、国際法上どのように評価できるかに
1534 ついて論じなさい。
1535 2.国際組織Qは、自らに生じた損害の賠償を請求するために、E国に対してどのように主張で
1536 きるかについて論じなさい。
1537 3.R協定に関するC国の主張は国際法上認められるかについて論じなさい。
1538
1539 - 41 -
1540
1541 - 42 -
1542
1543 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1544
1545 - 43 -
1546
1547 [国際関係法(私法系)]
1548 〔第1問〕(配点:50)
1549 甲国法人A社は、食品の加工・製造・販売を業とする株式会社であり、様々な国の企業との間で、
1550 食品や食材の輸出入の取引をしている。A社は、2022年1月10日、日本法人B社との間で、
1551 A社を売主、B社を買主とし、日本法を準拠法とする、A社製の食品の売買契約(以下「売買契約
1552 @」という。)を締結して、B社に対する3000万円の売買代金債権(以下「債権@」という。)
1553 を取得した。
1554 以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、〔設問1〕と〔設問2〕は独立した
1555 問いである。
1556 〔設問1〕
1557 B社は、2022年2月1日、A社との間で、B社を売主、A社を買主とし、甲国法を準拠法
1558 とする、冷凍食材の売買契約(以下「売買契約A」という。)を締結して、A社に対する320
1559 0万円の売買代金債権(以下「債権A」という。)を取得した。売買契約Aの契約書には、「こ
1560 の契約から生じる一切の紛争については、甲国P市にあるP地方裁判所を専属的管轄裁判所とす
1561 る」旨の条項(以下「本件条項」という。)が定められていた。
1562 A社は、債権@の弁済期が到来した後もB社から債権@の弁済がなかったため、同年3月1日、
1563 B社に対し、債権@の弁済を催告した。B社は、同年5月25日、A社に対し、自己が有する債
1564 権Aをもって、債権@と対当額において相殺する旨の意思表示をした(以下「本件相殺」という。)。
1565 〔小問1〕
1566 A社が、同年12月1日、B社を相手取り、債権@の弁済を求めて、東京地方裁判所に提起
1567 した訴訟において、B社が本件相殺を抗弁として主張したのに対し、A社は、本件条項は、売
1568 買契約Aから生じる一切の紛争について、その最終的な解決を甲国の特定の裁判所に委ね、日
1569 本の裁判所の管轄を排除するものであるから、日本の裁判所において債権Aについて審理・判
1570 断することはできないと主張した。A社の主張が認められるか否かについて、そのように考え
1571 た根拠を挙げて論じなさい。なお、本件条項に係る合意は、民事訴訟法第3条の7の要件を満
1572 たし、効力を生じているものとする。
1573 〔小問2〕
1574 〔小問1〕において、日本の裁判所において債権Aについて審理・判断することができるも
1575 のと解した場合、本件相殺を理由とするB社の抗弁について、いずれの国の法によって判断さ
1576 れるべきかを論じなさい。
1577 〔設問2〕
1578 A社は、2022年2月10日、乙国法人C社に対し、債権@を譲渡した。A社は、B社に対
1579 し、公証人が同日の日付印を押した証書によって、債権@をC社に譲渡した旨の通知を発し、こ
1580 の通知は、同月12日、B社の本社に郵便で到達した。C社は、債権@の弁済期が到来した後も
1581 B社から債権@の弁済がなかったため、同年3月1日、B社に対し、債権@の弁済を催告した。
1582 なお、各小問は独立した問いである。
1583 〔小問1〕
1584 B社は、C社に対し、B社が既にA社に対して債権@の弁済をしたことを理由として、同年
1585 5月25日、債権@の弁済を拒絶する旨の通知をした。
1586 C社が、同年12月1日、B社を相手取り、債権@の弁済を求めて、東京地方裁判所に提起
1587 した訴訟において、この弁済を理由とするB社の抗弁が認められるかについて、いずれの国の
1588 法によって判断されるべきかを論じなさい。なお、この訴えについて、日本の裁判所の国際裁
1589
1590 - 44 -
1591
1592 判管轄権は認められるものとする。
1593 〔小問2〕
1594 甲国法人D社は、同年2月1日、A社に対し、3000万円を貸し付けるとともに、この貸
1595 付けに基づく貸金債権の引き当てとして、A社から、債権@を目的とする債権譲渡担保権の設
1596 定を受けていた。この契約においては、甲国法が準拠法とされていた。A社は、B社に対し、
1597 この債権譲渡担保権の設定について何ら通知をしていない。なお、甲国法上、債権譲渡又は債
1598 権譲渡担保権の設定の第三者対抗要件は、債権譲渡契約又は債権譲渡担保権設定契約の締結時
1599 期の先後で決まるとされている。
1600 D社は、上記貸金債権の弁済期が到来した後もA社からその弁済がなかったため、債権@を
1601 目的とする譲渡担保権を実行することとして、同年6月1日、B社に譲渡担保権実行の通知を
1602 したところ、B社は、同年7月1日、債権@の債権者を確知することができないとの理由によ
1603 り、売買契約@に基づく売買代金3000万円を東京法務局に供託した。
1604 C社とD社の間で、この供託に係る供託金還付請求権の帰属が争われ、東京地方裁判所に訴
1605 えが提起された場合において、C社とD社のいずれが債権@を取得したかについて、どのよう
1606 な判断がされるべきかを論じなさい。なお、この訴えについて、日本の裁判所の国際裁判管轄
1607 権は認められるものとする。
1608
1609 - 45 -
1610
1611 〔第2問〕(配点:50)
1612 A女(甲国籍)は、甲国K市の理工系の大学院に在学中、留学生のB男(乙国籍)と知り合い、
1613 両者は親密な交際を始めた。両者の関係は、Aが大学院を修了後に、日本の工作機械メーカーO社
1614 の甲国における現地法人P社に技術者として就職してからも継続した。やがて、AはBの子を懐妊
1615 するに至ったが、その直後に両者の関係が悪化し、両者は話合いの末に交際関係を解消した。Aは、
1616 Bとの関係を解消してから間もない2010年1月、未婚のままでYを出産し、Yは出生により甲
1617 国籍を取得した。その後しばらくして、Bは大学院を修了したが、Yを認知しないまま乙国に帰国
1618 し、それ以降、BとA及びYとの間に一切の連絡はない。
1619 その後、Aは、Yを育てながらP社で働いていたが、ある時、O社からP社に一時的に出向して
1620 きていたX男(日本国籍)と知り合い、両者は親密な交際を始めた。しばらくして、Xは、Aの歓
1621 心を買うため、血縁関係のないYを自分の子として認知することを決意し、2012年1月上旬、
1622 甲国K市の身分登録所にAと連れ立って出頭した上、身分登録をつかさどる官吏に対し、Yを自分
1623 の子として認知する旨の意思表示を行い(以下「本件認知」という。)、甲国の身分登録簿には、
1624 Yに係る身分事項として、本件認知が登録された。さらに、同月下旬、AとXは、甲国K市におい
1625 て、甲国法上の方式で婚姻し(以下「本件婚姻」という。)、甲国の身分登録簿には、Aに係る身
1626 分事項として、本件婚姻が登録された。その翌月の同年2月、Xは、戸籍法第41条第1項の定め
1627 るところに従い、甲国K市駐在の日本国領事に対し、本件認知及び本件婚姻に関してそれぞれ作成
1628 された証書の謄本を提出し、その後間もなく、Xの戸籍には、その身分事項として、本件認知及び
1629 本件婚姻が記載された。
1630 2015年、XがP社への一時的な出向を終えてO社に復帰することとなったことを契機として、
1631 O社とP社との間で、A及びXの要望に基づき、AをP社からO社に出向させるとともに、A及び
1632 Xをいずれも、O社の東京本社に配属する旨の人事上の調整が行われ、同年4月、A及びXは、Y
1633 を伴って日本に転居し、東京都内の住宅において同居生活を開始した。
1634 ところが、日本での同居生活を開始してから、AとXの関係は次第に悪化していき、ついには、
1635 両者の婚姻関係は実質的に破綻している状態となった。そこで、A及びXは、話合いの末に別居す
1636 ることとして、2018年10月以降、Xは横浜市内の住宅に単身で居住し、AはYと共に従前と
1637 同じ東京都内の住宅に居住している。
1638 以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、〔設問1〕と〔設問2〕は独立した
1639 問いである。
1640 〔設問1〕
1641 Xは、2019年7月、東京家庭裁判所に対し、Yを被告として、本件認知が血縁の事実に反
1642 することを理由として、認知の無効の訴えを提起した。この訴えについて、日本の裁判所の国際
1643 裁判管轄権は認められるものとする。また、本設問において反致の成立はないものとする。なお、
1644 甲国法及び乙国法には、親子関係の成立等に関し、それぞれ次の規定が存在する。
1645 【甲国法】
1646 @
1647
1648 嫡出でない子は、その父が認知することができる。
1649
1650 A
1651
1652 認知は、身分登録吏又は裁判官の面前での意思表示によってする。
1653
1654 B
1655
1656 認知をした者は、認知の時から7年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由
1657 として、認知の無効の訴えを提起することができる。
1658
1659 【乙国法】
1660 C
1661
1662 非嫡出父子関係は、親からの意思表示を要することなく、血縁関係が証明されるときに成立
1663 する。
1664
1665 - 46 -
1666
1667 〔小問1〕
1668 本件認知が方式上有効に成立しているかについて論じなさい。
1669 〔小問2〕
1670 本件認知は方式上有効に成立しているものとする。この場合において、Xによる認知無効の
1671 請求は認められるか。訴訟上、Yの血縁上の父がBであることが不明のままであるときと、提
1672 出された証拠により、Yの血縁上の父がBであることが証明されたときのそれぞれについて、
1673 論じなさい。
1674 〔設問2〕
1675 Aは、2019年4月、Yを連れて行くことについてXの同意を得た上で、Yと共に甲国へ帰
1676 国し、そのまま現在まで甲国K市で生活している。Xは、2015年に日本に帰国してから甲国
1677 に渡航したことはなく、現在も日本で生活している。
1678 Aは、2022年4月、甲国のK裁判所に対し、Xを被告として、離婚を請求するとともに、
1679 附帯処分として財産分与を申し立て、提訴した。
1680 甲国と日本との間の司法共助に基づき日本において訴状の送達を受けたXは、甲国の弁護士を
1681 訴訟代理人として選任した上、K裁判所における答弁として、主位的には、甲国の裁判所は国際
1682 裁判管轄権を有しないとして訴えの却下を求め、予備的には、請求に理由がないとして請求棄却
1683 を求めた。これに対し、K裁判所は、2023年4月、下記の甲国法D及びEの規定に基づき、
1684 離婚及び財産分与のいずれについても国際裁判管轄権を有すると判断した上、Aの離婚請求を認
1685 容するとともに、財産分与として300万円の支払をXに命じる内容の判決(以下「本件判決」
1686 という。)をし、翌月、本件判決は確定した。
1687 そこで、Aは、東京家庭裁判所に対し、本件判決のうち300万円の支払を命じる部分につい
1688 て、民事執行法第24条に基づいて執行判決を求める訴えを提起した。
1689 この場合において、執行判決の要件である民事訴訟法第118条第1号の要件が具備されてい
1690 るかについて論じなさい。
1691 【甲国法】
1692 D
1693
1694 離婚に関する訴えは、原告が甲国に1年以上継続して住所を有するときは、甲国の裁判所に
1695 提起することができる。
1696
1697 E
1698
1699 裁判所は、甲国の裁判所が離婚の訴えについて管轄権を有するときは、財産の分与に関する
1700 処分についての裁判に係る事件について、管轄権を有する。
1701
1702 - 47 -
1703
1704