1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒
10
11
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の【事例】について、
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 なお、
21 解答に当たっては、
22 文中において特定されている日時にかかわらず、
23 試験時に施行されて
24 いる法令に基づいて答えなさい。
25
26
27 【事
28
29 例】
30
31 Aは、
32 個人事業主として、
33 P国の雑貨を現地で買い付けて日本に輸入し、
34 賃借している商店街
35 の店舗で販売するという事業を行っていたが、
36 多額の負債を抱えた上に売上げの不振で資金繰り
37 に行き詰まってしまった。
38
39 そこで、
40 Aは、
41 弁護士Bに依頼して、
42 令和4年4月1日、
43 破産手続開
44 始の申立てをしたところ、
45 同月10日、
46 Aについて破産手続開始の決定がされ、
47 弁護士Xが破産
48 管財人に選任された。
49
50
51 〔設問1〕
52 Aは、
53 破産手続開始の決定がされた時点で、
54 現金90万円を保有している。
55
56 また、
57 Aが、
58 仕入
59 先であるP国所在の販売店にAの所有物として預かってもらっている500万円相当の雑貨があ
60 る(なお、
61 売買代金は支払済みである。
62
63 )。
64
65
66 Aについて破産手続開始の決定がされた直後の令和4年4月20日、
67 Aの父親であるCが死亡
68 した。
69
70 AはCの唯一の法定相続人であるところ、
71 Cの遺産としてC名義の銀行口座に600万円
72 の預金が残されていた。
73
74 また、
75 Cは、
76 10年以上前から生命保険に加入しており、
77 その加入時に
78 おいて死亡保険金の受取人をAと指定していたため、
79 Cが死亡した場合にはその死亡保険金はA
80 が受け取ることになっていた。
81
82 この死亡保険金の額は1000万円である。
83
84
85
86
87 以下@からCまでの各財産は、
88 Aの破産手続において破産財団に属するか、
89 説明しなさい。
90
91
92 @
93
94 P国所在の販売店に預かってもらっている500万円相当の雑貨
95
96 A
97
98 現金90万円
99
100 B
101
102 Cの遺産である600万円の預金債権
103
104 C
105
106 Cの死亡による1000万円の保険金請求権
107
108 (参照条文)民事執行法施行令
109 (差押えが禁止される金銭の額)
110 第1条
111
112 民事執行法(以下「法」という。
113
114 )第131条第3号(法第192条において準用す
115
116 る場合を含む。
117
118 )の政令で定める額は、
119 66万円とする。
120
121
122
123
124 Aは、
125 破産手続開始の時において、
126 自らを受取人とする貯蓄型の医療保険に加入しており、
127
128 その時点における解約返戻金の額は40万円であった。
129
130
131 破産管財人Xは、
132 この解約返戻金が破産財団に帰属することを前提に、
133 令和4年4月30日、
134
135 Aの申立代理人Bに対し、
136 解約返戻金を破産財団に組み入れるために医療保険契約(以下「本
137 件保険契約」という。
138
139 )を解約する予定であると通知をした。
140
141
142 しかしながら、
143 Aは、
144 すぐに新たな職に就くことが難しい上、
145 持病があるため、
146 本件保険契
147 約を解約されてしまうと代わりの医療保険に加入する必要があるところ、
148 その場合には、
149 保険
150 料が従前と比べてかなり高額になることが判明した。
151
152
153 Aの申立代理人Bとしては、
154 本件保険契約を継続するためにどのような手段を採ることが考
155 えられるか。
156
157 破産財団に関する破産債権者の利益を考慮しつつ、
158 複数の手段を検討して論じな
159 さい。
160
161
162
163 - 2 -
164
165 〔設問2〕
166 AとDは婚姻していたが、
167 性格の不一致から長期間不仲が続いていたところ、
168 Aの事業の行き
169 詰まりが最後の引き金となり、
170 令和4年2月1日に協議離婚をするに至った。
171
172 その協議の際、
173
174 は、
175 Dとの間で、
176 離婚に伴う財産分与として、
177 AがDに対し、
178 A名義の登記がある甲不動産(担
179 保権は設定されていない。
180
181 )の所有権を譲渡するとともに、
182 150万円の支払をする旨の合意を
183 した。
184
185 Aは、
186 この合意に基づき、
187 協議離婚が成立した時点で既に支払不能に陥っていたにもかか
188 わらず、
189 同年3月1日、
190 Dに対して上記150万円を支払った(以下「本件支払」という。
191
192 )。
193
194
195 また、
196 Aは、
197 甲不動産から退去して新たにアパートを賃借してそこで生活するようになり、
198 現在、
199
200 甲不動産にはDのみが居住している。
201
202 もっとも、
203 Aについて破産手続開始の決定がされた時点で
204 は、
205 甲不動産に係るDへの所有権移転登記手続はされていない。
206
207
208
209
210 Dは、
211 甲不動産の所有権の移転は財産分与を通じて婚姻中に形成された夫婦の共有財産を清
212 算する性質のものであるため、
213 Aの破産手続において、
214 甲不動産の所有権の移転に係る登記請
215 求は当然に認められるはずだと主張している。
216
217 この主張の当否について、
218 Xからの反論を踏ま
219 えて論じなさい。
220
221
222
223
224
225 Xは、
226 破産手続開始の決定前にされた本件支払に対して否認権を行使しようとしている。
227
228
229 れに対し、
230 Dは、
231 協議離婚の成立時においてAが支払不能に陥っている事実を認識していたも
232 のの、
233 上記と同様、
234 本件支払は夫婦の共有財産を清算する性質のものであるため否認権は成
235 立しないと反論している。
236
237 なお、
238 甲不動産の譲渡と150万円の支払は、
239 財産分与としては相
240 当なものであるとする。
241
242
243 このとき、
244 Xの主張する否認権の成否について、
245 Dからの反論を踏まえて論じなさい。
246
247
248
249 - 3 -
250
251 〔第2問〕(配点:50)
252 次の【事例】について、
253 以下の設問に答えなさい。
254
255
256 なお、
257 解答に当たっては、
258 文中において特定されている日時にかかわらず、
259 試験時に施行されて
260 いる法令に基づいて答えなさい。
261
262
263 【事
264
265 例】
266
267 A株式会社(以下「A社」という。
268
269 )は、
270 衣服の製造及び販売を業とする株式会社である。
271
272
273 社は、
274 その所有する工場において衣服を縫製しているほか、
275 1棟のオフィスビルを所有し、
276 その
277 1階から3階までの部分を自社の店舗及び事務所として使用し、
278 4階部分(以下「物件甲」とい
279 う。
280
281 )をB株式会社(以下「B社」という。
282
283 )に賃貸している。
284
285
286 A社は、
287 業界全体の売上げが減少傾向にあったことに加え、
288 インターネットを用いた商品の販
289 売に乗り遅れたことも相まって急激に売上げを落としたことにより、
290 令和4年9月頃には資金繰
291 りに窮するに至った。
292
293 そこで、
294 A社は、
295 同年10月27日、
296 弁護士Cを代理人として再生手続開
297 始の申立てをしたところ、
298 同年11月4日、
299 再生手続開始の決定を受けた。
300
301 なお、
302 同決定におい
303 て、
304 債権届出期間が同年12月2日までと定められた。
305
306
307 〔設問1〕
308 A社の申立代理人Cは、
309 令和4年11月7日、
310 電力会社であるD株式会社(以下「D社」とい
311 う。
312
313 )から、
314 A社の縫製工場における以下の各時期の供給分に係る電気料金に関し、
315 括弧内に示
316 した約定どおりの支払期限までに支払がされるかどうかについて照会を受けた。
317
318 A社として当該
319 電気の供給契約を継続する意向である場合に、
320 Cはどのように回答すべきか、
321 説明しなさい。
322
323
324 @
325
326 令和4年9月分(1日〜30日分)(支払期限:令和4年11月10日)
327
328 A
329
330 令和4年10月分(1日〜31日分)(支払期限:令和4年12月10日)
331
332 B
333
334 令和4年11月分(1日〜30日分)(支払期限:令和5年1月10日)
335
336 【事
337
338 例(続き)】
339 A社は、
340 B社との間で、
341 令和3年7月1日、
342 物件甲につき、
343 賃貸期間を同日から2年、
344 月額賃
345
346 料を60万円(毎月末日までに翌月分の賃料を支払う。
347
348 )とする賃貸借契約を締結した。
349
350 同契約
351 において、
352 原状回復費用は賃借人であるB社が負担する旨の合意がされた。
353
354 B社は、
355 敷金として
356 賃料の10か月分(600万円)を交付し、
357 上記賃貸借契約に基づき、
358 物件甲の引渡しを受けた。
359
360
361 B社は、
362 A社についての再生手続開始の決定前において、
363 賃料を支払期限までに支払っていた。
364
365
366 B社は、
367 令和4年8月頃、
368 備付けの空調設備が故障したため、
369 修理費用として60万円を支出
370 していたところ、
371 同年11月30日、
372 A社に対する修理費用の返還請求権を自働債権とし、
373 同年
374 12月分の賃料の支払債務を受働債権として相殺する旨の意思表示をした。
375
376
377 B社は、
378 令和4年12月1日、
379 A社に交付した敷金の返還請求権につき、
380 その交付額が600
381 万円であること及び賃貸目的物の明渡し前であるので再生債権の額は未定であることを示して、
382
383 再生債権の届出をした。
384
385 A社は、
386 債権調査手続において、
387 B社が届け出た再生債権の内容を認め、
388
389 また、
390 届出をした他の再生債権者からも異議は述べられなかった。
391
392
393 その後、
394 令和5年4月3日、
395 A社から、
396 再生債権に関する権利の変更及び弁済方法につき、
397
398 生債権者の権利の60%を免除し、
399 その残額を再生計画認可の決定の確定後に弁済することを内
400 容とする再生計画案が提出された。
401
402 同計画案は、
403 債権者集会において可決された後、
404 同年5月2
405 9日、
406 再生計画を認可する旨の決定がされ、
407 同年6月26日、
408 この認可決定が確定した。
409
410
411 B社は、
412 令和5年1月分から同年4月分の賃料をそれぞれ支払期限までに支払ったが、
413 同年5
414 月分及び6月分の賃料を支払うことなく、
415 同月30日、
416 賃貸期間の満了により、
417 A社に対して物
418 件甲を明け渡した。
419
420 その際、
421 A社は、
422 物件甲につき、
423 原状回復費用として80万円を支出した。
424
425
426
427 - 4 -
428
429 〔設問2〕
430
431
432 A社についての再生手続において、
433 B社のA社に対する敷金返還請求権はどのように取り扱
434 われるか、
435 A社について破産手続が開始した場合との違いに触れつつ、
436 説明しなさい。
437
438
439
440
441
442 【事例】において、
443 B社のA社に対する敷金返還請求権に係る債務の弁済額は幾らになるか、
444
445 説明しなさい。
446
447 なお、
448 敷金返還請求権については、
449 明渡し時において、
450 敷金から賃貸借契約に
451 基づいて生じた賃借人の債務の額を控除した残額のうち、
452 再生債権となるべき部分に対して、
453
454 再生計画に従った権利変更を行うとの考え方に立つこととする。
455
456
457
458 - 5 -
459
460 - 6 -
461
462 論文式試験問題集[租
463
464 - 7 -
465
466
467
468 法]
469
470 [租
471
472
473
474 法]
475
476 〔第1問〕(配点:50)
477 Aは、
478 平成20年から上場会社であるC株式会社(以下「C社」という。
479
480 )の取締役を務めてお
481 り、
482 C社から毎年2100万円の報酬の支払を受けている。
483
484
485 Aは、
486 平成25年4月1日、
487 C社から、
488 次の内容のC社株式に係る新株予約権(以下「本件新株
489 予約権」という。
490
491 )を取得した。
492
493
494
495
496 Aに付与された本件新株予約権の個数は100個である。
497
498
499
500
501
502 本件新株予約権1個につき目的となる株式の数は100株である。
503
504
505
506
507
508 本件新株予約権が行使できる期間は、
509 平成26年4月1日から令和6年3月31日ま
510 でである。
511
512
513
514
515
516 Aは、
517 本件新株予約権1個の行使に当たり、
518 C社に5万円を払い込む。
519
520
521
522
523
524 本件新株予約権の譲渡・質入れ等は禁止されている。
525
526
527
528 また、
529 Aは、
530 その所有する土地上に甲建物を所有していた。
531
532
533 Aは、
534 甲建物について、
535 平成20年12月16日、
536 個人Bとの間で、
537 賃貸借契約の期間を同日か
538 ら平成22年12月15日までの2年間とする賃貸借契約を締結した。
539
540 その後、
541 AとBは、
542 賃料を
543 月額20万円として2年ごとに同賃貸借契約の更新を繰り返し、
544 その間、
545 Bは甲建物内で小料理屋
546 を営んでいた。
547
548
549 Aは、
550 老朽化した甲建物を取り壊して、
551 その土地上に新たに賃貸用アパートを建築することを計
552 画した。
553
554 そこで、
555 Aは、
556 令和2年2月1日、
557 Bに対し、
558 同年12月15日をもって契約更新をしな
559 いことを告げた上で、
560 立ち退きのための交渉を開始した。
561
562 その結果、
563 AとBは、
564 同年8月1日、
565
566 下のとおりの内容で合意して、
567 合意書を取り交わした。
568
569
570 @
571
572 AとBは、
573 甲建物の賃貸借契約を更新せず、
574 令和2年12月15日をもって契約期間
575 が終了することを確認する。
576
577
578
579 A
580
581 Bは、
582 Aに対し、
583 令和2年12月15日限り、
584 甲建物を明け渡す。
585
586
587
588 B
589
590 Aは、
591 Bに対し、
592 BがAの明渡しを行うことを条件として、
593 令和2年12月15日限
594 り、
595 解決金として300万円を支払う。
596
597
598
599 なお、
600 Bは、
601 Aに対し、
602 当初、
603 じゅう器や食材の廃棄による損失や転居費用及び新たに店舗を借
604 りるための敷金などの名目で、
605 立退料として400万円程度を要求していた。
606
607 しかし、
608 Bが立ち退
609 き交渉以前から高齢のため令和2年中に廃業しようと周囲に漏らしていたことがAの知るところと
610 なり、
611 最終的に、
612 特に内訳を定めることなく、
613 円満に退去する解決金として300万円という額で
614 合意するに至った(以下この金員を「本件解決金」という。
615
616 )。
617
618
619 その後、
620 Bは、
621 合意書のとおり令和2年12月15日までに甲建物から退去して甲建物を明け渡
622 した。
623
624 また、
625 Aは、
626 同日、
627 Bに対して本件解決金300万円を交付した。
628
629
630 Aは、
631 甲建物の取壊し費用及び賃貸用アパートの建築費用を調達するため、
632 C社の新株予約権を
633 行使して取得した株式を売却して、
634 これに充てることとした。
635
636 そこで、
637 Aは、
638 令和3年2月1日、
639
640 行使に際し500万円を払い込んで、
641 本件新株予約権100個を行使し、
642 C社株式1万株を取得し
643 た。
644
645
646 そして、
647 Aは、
648 上昇傾向にあったC社株式の相場価格の推移を見守った上で、
649 令和4年1月20
650 日、
651 取得したC社株式1万株をその時点における相場価格である1株当たり1800円で適法に売
652 却するとともに、
653 証券会社に対して株式売買手数料20万円を支払った。
654
655
656
657 - 8 -
658
659 なお、
660 C社株式の相場価格の推移は、
661 以下のとおりである。
662
663
664 平成25年4月1日
665
666 1000円
667
668 平成26年4月1日
669
670 1200円
671
672 令和3年2月1日
673
674 1500円
675
676 令和4年1月20日
677
678 1800円
679
680 以上の事案について、
681 以下の設問に答えなさい。
682
683 ただし、
684 租税特別措置法の適用は考えなくてよ
685 い。
686
687
688 〔設
689
690 問〕
691
692
693
694 令和3年分のAの総所得金額について、
695 その根拠規定及び適用関係を具体的に示して説明
696 しなさい。
697
698 ただし、
699 問題文中に掲げたもの以外に、
700 Aの収入はないものとする。
701
702
703
704
705
706 令和4年分のAの総所得金額について、
707 その根拠規定及び適用関係を具体的に示して説明
708 しなさい。
709
710 ただし、
711 問題文中に掲げたもの以外に、
712 Aの収入はないものとする。
713
714
715
716
717
718 Bは、
719 令和2年分の所得税の確定申告書を期限内に所轄税務署に提出したが、
720 その際、
721 Aか
722 ら受領した本件解決金300万円に係る所得を一時所得に区分した内容の確定申告書を提出し
723 た。
724
725 しかし、
726 その後、
727 Bは、
728 自分で本を調べるなどした結果、
729 本件解決金に係る所得が所得税
730 法施行令第30条第2号又は第3号により非課税所得となると考えるに至った。
731
732
733
734
735 本件解決金に係る所得は、
736 非課税所得に当たるか。
737
738 また、
739 課税所得に当たるとした場合に
740 は、
741 所得税法上、
742 各種所得のいずれに分類されるか、
743 説明しなさい。
744
745
746
747
748
749 本件解決金に係る所得が非課税所得に当たり、
750 過大に納税していると考えたBが、
751 所轄税
752 務署長に対して国税通則法に基づいてどのような措置を採ることができるか、
753 説明しなさい。
754
755
756 また、
757 同措置に対する所轄税務署長の対応として考えられる行政処分は何か、
758 説明しなさい。
759
760
761
762 (参照条文)所得税法施行令
763 (非課税とされる保険金、
764 損害賠償金等)
765 第30条
766
767 法第9条第1項第18号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金
768
769 (これらに類するものを含む。
770
771 )は、
772 次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのもの
773 の額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補
774 するための金額が含まれている場合には、
775 当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
776
777
778
779
780 (略)
781
782
783
784 損害保険契約に基づく保険金及び損害保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金(中
785 略)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産
786 に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち第94条(事業所得の収入金
787 額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。
788
789
790
791
792
793 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第94条の規定に該当す
794 るものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。
795
796
797
798 (譲渡制限付株式の価額等)
799 第84条
800
801
802 (略)
803
804
805
806 (略)
807
808
809
810 発行法人から次の各号に掲げる権利で当該権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付さ
811 れているものを与えられた場合(株主等として与えられた場合(当該発行法人の他の株主等に損
812 害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。
813
814 )を除く。
815
816 )における当該権利に係る法第3
817
818 - 9 -
819
820 6条第2項の価額は、
821 当該権利の行使により取得した株式のその行使の日(中略)における価額
822 から次の各号に掲げる権利の区分に応じ当該各号に定める金額を控除した金額による。
823
824
825
826
827 (略)
828
829
830
831 会社法第238条第2項(募集事項の決定)の決議(同法第239条第1項(募集事項の決
832 定の委任)の決議による委任に基づく同項に規定する募集事項の決定及び同法第240条第1
833 項(公開会社における募集事項の決定の特則)の規定による取締役会の決議を含む。
834
835 )に基づ
836 き発行された新株予約権(当該新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件若しくは金額であ
837 ることとされるもの又は役務の提供その他の行為による対価の全部若しくは一部であることと
838 されるものに限る。
839
840
841
842 当該新株予約権の行使に係る当該新株予約権の取得価額にその行使に
843
844 際し払い込むべき額を加算した金額
845
846
847 (略)
848
849 (事業所得の収入金額とされる保険金等)
850 第94条
851
852
853 不動産所得、
854 事業所得、
855 山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げ
856 るもので、
857 その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するも
858 のは、
859 これらの所得に係る収入金額とする。
860
861
862
863
864 当該業務に係るたな卸資産(中略)、
865 山林、
866 工業所有権その他の技術に関する権利、
867 特別の
868 技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの又は著作権(出版権及び著作隣接権その他こ
869 れに準ずるものを含む。
870
871 )につき損失を受けたことにより取得する保険金、
872 損害賠償金、
873 見舞
874 金その他これらに類するもの(山林につき法第51条第3項(山林損失の必要経費算入)の規
875 定に該当する損失を受けたことにより取得するものについては、
876 その損失の金額をこえる場合
877 におけるそのこえる金額に相当する部分に限る。
878
879
880
881
882
883 当該業務の全部又は一部の休止、
884 転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償と
885 して取得する補償金その他これに類するもの
886
887
888
889 (略)
890
891 - 10 -
892
893 〔第2問〕(配点:50)
894 令和3年10月1日、
895 Aは、
896 自らの財産をE株式会社(以下「E社」という。
897
898 )に全部包括遺贈
899 し、
900 その遺言執行者をCとする旨の遺言を残して死亡した。
901
902 死亡時のAの財産は、
903 甲土地、
904 乙土地
905 及び丙家屋のほかは、
906 若干の銀行預金があるのみであった。
907
908
909 甲土地及び乙土地は、
910 いずれもAが平成元年頃に各2000万円で購入した土地である。
911
912 Aは、
913
914 甲土地上に自己居住目的で丙家屋を建設し、
915 乙土地を駐車場として、
916 利用してきた。
917
918 Aの死亡時の
919 甲土地及び乙土地の時価は、
920 いずれも3000万円であった。
921
922 なお、
923 Aは、
924 配偶者と死別しており、
925
926 相続人は子Bのみであったが、
927 10年以上音信不通の関係であった。
928
929
930 E社は、
931 平成10年4月1日にAがCと2人で創業し、
932 Aの死亡時は、
933 Cの子Dが代表取締役を
934 務めていた。
935
936 E社は、
937 毎年4月1日から翌年3月31日までの期間を事業年度としている。
938
939 創業以
940 来、
941 Aは、
942 E社の発行済株式の2分の1を保有して経営に携わってきたが、
943 平成20年頃にBが起
944 こした詐欺事件の示談金に充てるために、
945 保有するE社株式の全てをCに売却し、
946 その後しばらく
947 してE社の経営からも退いた、
948 という経緯がある。
949
950 AとBが疎遠になったのも、
951 この事件がきっか
952 けであった。
953
954
955 Aの死亡後、
956 Cは、
957 遺言に従って、
958 甲土地、
959 乙土地及び丙家屋をE社に管理させるとともに、
960
961 社への所有権移転登記を了した。
962
963 その後、
964 Dが自宅の建て替え工事のために臨時の住居を必要とし
965 ていたため、
966 E社は、
967 丙家屋をDに利用させることとした。
968
969 そして、
970 Dは、
971 丙家屋を無償で利用す
972 る地位をDの報酬の一部とする旨のE社の株主総会決議(会社法第361条第1項第6号)を経て、
973
974 令和4年3月1日から丙家屋の居住を開始した。
975
976
977 令和4年3月15日、
978 E社は、
979 Bから、
980 Bの遺留分を侵害しているので遺留分侵害額に相当する
981 金銭の支払を請求する旨の通知を受領した。
982
983 E社は、
984 Bとの交渉を経て、
985 同年6月10日に、
986 以下
987 の内容のとおり合意し、
988 同月25日、
989 乙土地をBに引き渡すとともに、
990 所有権移転登記を了した。
991
992
993 @
994
995 E社は、
996 Bに対し、
997 Bの遺留分侵害額請求権に基づく金3000万円の支払義務があること
998 を認める。
999
1000
1001
1002 A
1003
1004 E社は、
1005 Bに対し、
1006 本合意の成立以後1か月以内に、
1007 金3000万円の支払に代えて乙土地
1008 を譲り渡す。
1009
1010
1011
1012 B
1013
1014 E社とBは、
1015 互いにその余の請求権を有しないことを確認する。
1016
1017
1018
1019 令和5年3月31日、
1020 Dは、
1021 新居に引っ越すために丙家屋から退去し、
1022 E社に明け渡した。
1023
1024 なお、
1025
1026 Dの居住期間を通じて、
1027 近隣地で丙家屋と同等の住居を賃借した場合の賃料相場は月額10万円で
1028 あった。
1029
1030
1031 以上の事案について、
1032 以下の設問に答えなさい。
1033
1034 ただし、
1035 租税特別措置法の適用は考えなくてよ
1036 い。
1037
1038 また、
1039 問題文から読み取れるものを除いて、
1040 取得費及び譲渡費用はないものとして解答せよ。
1041
1042
1043 〔設
1044
1045 問〕
1046
1047
1048
1049 包括遺贈により甲土地及び乙土地が移転されたことについて(その他の財産は無視してよい。
1050
1051
1052
1053
1054 E社の法人税の課税関係がどうなるか、
1055 説明しなさい。
1056
1057
1058
1059
1060
1061 E社が取得した甲土地及び乙土地の取得価額は幾らとなるか、
1062 根拠条文とともに説明しな
1063 さい。
1064
1065
1066
1067
1068
1069
1070 この包括遺贈に伴うAの所得税の課税関係がどうなるか、
1071 説明しなさい。
1072
1073
1074 E社がBからの遺留分侵害額の請求を受けて乙土地を譲渡したことについて、
1075 E社の法人税
1076
1077 の課税関係がどうなるか、
1078 年度帰属を明らかにしつつ、
1079 説明しなさい。
1080
1081
1082
1083
1084 令和5年3月期(令和4年4月1日から令和5年3月31日までの事業年度をいう。
1085
1086 )にお
1087 けるDの丙家屋の無償利用について
1088
1089
1090 E社の法人税の課税関係がどうなるか、
1091 説明しなさい。
1092
1093
1094
1095 - 11 -
1096
1097
1098
1099 E社が所得税法上負うことになる義務について、
1100 簡潔に説明しなさい。
1101
1102
1103
1104 (参照条文)法人税法施行令
1105 (定期同額給与の範囲等)
1106 第69条
1107
1108 法第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は、
1109
1110
1111 に掲げる給与とする。
1112
1113
1114
1115
1116
1117 (略)
1118 継続的に供与される経済的な利益のうち、
1119 その供与される利益の額が毎月おおむね一定であ
1120 るもの
1121
1122
1123
1124 (以下略)
1125
1126 - 12 -
1127
1128 論文式試験問題集[経
1129
1130 - 13 -
1131
1132
1133
1134 法]
1135
1136 [経
1137
1138
1139
1140 法]
1141
1142 〔第1問〕(配点:50)
1143 甲装置は、
1144 我が国において法令上求められている検査のための特有の機能を有する業務用検査装
1145 置である。
1146
1147 また、
1148 乙機器は、
1149 甲装置の中核となる機器であり、
1150 甲装置に組み込んで使用される。
1151
1152
1153 甲装置には、
1154 大型の甲装置(以下「大型甲」という。
1155
1156 )と小型の甲装置(以下「小型甲」という。
1157
1158
1159 がある。
1160
1161 大型甲と小型甲の市場規模(販売金額)は同程度であり、
1162 それぞれの需要は安定している。
1163
1164
1165 大型甲と小型甲では、
1166 サイズ、
1167 処理能力等が異なり、
1168 また、
1169 大型甲と小型甲の製造設備を相互に転
1170 換するためには、
1171 かなりの投資と時間を必要とする。
1172
1173
1174 甲装置の主要なメーカーとして、
1175 X社、
1176 Y社及びZ社(以下「3社」という。
1177
1178 )があり、
1179 それぞ
1180 れ複数の製造設備で甲装置を製造しているが、
1181 3社それぞれの製造能力にはかなりの余裕がある。
1182
1183
1184 3社のほかに、
1185 小型甲のみを製造販売するW社がある。
1186
1187 これらのメーカーは、
1188 全国の需要者に甲装
1189 置を販売する体制を整えており、
1190 地域による価格差は存在しない。
1191
1192 また、
1193 甲装置の輸出入は事実上
1194 行われていない。
1195
1196 甲装置の需要者は、
1197 比較的大規模な事業者であり、
1198 交渉力が強い。
1199
1200 甲装置の製造
1201 コストは、
1202 需要者向け販売価格の6割程度である。
1203
1204
1205 甲装置全体では、
1206 Z社がシェア(販売金額に基づく割合をいう。
1207
1208 以下同じ。
1209
1210 )を漸増させてきて
1211 おり、
1212 その分、
1213 X社及びY社のシェアが漸減してきている。
1214
1215 現在のシェアは、
1216 次表のとおりである。
1217
1218
1219 甲装置全体
1220
1221 大型甲のみ
1222
1223 小型甲のみ
1224
1225 X社
1226
1227 25%
1228
1229 40%
1230
1231 10%
1232
1233 Y社
1234
1235 25%
1236
1237 20%
1238
1239 30%
1240
1241 Z社
1242
1243 40%
1244
1245 40%
1246
1247 40%
1248
1249 W社
1250
1251 10%
1252
1253
1254
1255 20%
1256
1257 合計
1258
1259 100%
1260
1261 100%
1262
1263 100%
1264
1265 大型甲については、
1266 3社が製造販売しており、
1267 うちX社とZ社が大きなシェアを有している。
1268
1269
1270 れに対し、
1271 Y社のシェアは、
1272 同程度の製造能力を有する二つの大型甲の製造設備のうち一つが老朽
1273 化して高コストになっていることもあって減少傾向にあり、
1274 このままでは今後更にシェアを落とす
1275 ことになるとみられている。
1276
1277
1278 他方、
1279 小型甲については、
1280 3社のほか、
1281 小型甲のみを製造販売するW社を加えた4社がしのぎを
1282 削っている。
1283
1284 X社は、
1285 小型甲については最低のシェアにとどまっている。
1286
1287
1288 乙機器は、
1289 専ら甲装置に組み込まれるものであり、
1290 他に代わるものはなく、
1291 他に転用することも
1292 できない。
1293
1294 また、
1295 大型甲向けと小型甲向けとで違いはない。
1296
1297
1298 3社は、
1299 乙機器を自ら製造している。
1300
1301 乙機器の製造コストは、
1302 甲装置全体の製造コストの5割程
1303 度を占めている。
1304
1305 乙機器の製造には特殊な技術が必要であり、
1306 甲装置のメーカー以外には乙機器の
1307 製造技術を有するものはおらず、
1308 新規参入も困難であり、
1309 また、
1310 輸出入も事実上行われていない。
1311
1312
1313 3社それぞれの乙機器の製造能力にはある程度の余裕がある。
1314
1315
1316 他方、
1317 小型甲のみを製造するW社は、
1318 乙機器を製造する技術を有するものの、
1319 自らは製造せず、
1320
1321 3社に製造を委託している(必要数量のおおむね3分の1ずつ)。
1322
1323 これは、
1324 甲装置のシェアが低い
1325 W社が乙機器を自ら製造する場合にはコスト面で不利であり、
1326 乙機器の製造余力がある3社から供
1327 給を受けることが有利であると判断しているためである。
1328
1329 W社が乙機器の製造設備を設置し稼働さ
1330 せるためには3年近い期間を必要とする。
1331
1332 また、
1333 W社は、
1334 独自の技術を用いて、
1335 他社から調達した
1336 乙機器を組み込んだ小型甲を製造しており、
1337 一部の需要者から支持を得ていることから、
1338 一定の競
1339 争力があると評価されている。
1340
1341
1342
1343 - 14 -
1344
1345 〔設
1346
1347 問〕
1348 こうした中で、
1349 X社及びY社では、
1350 次の二つの計画を立案しており、
1351 その一環として、
1352 私的独
1353
1354 占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。
1355
1356 )上の問題点について
1357 も検討している。
1358
1359 二つの計画について、
1360 独占禁止法上の問題点を分析して検討するとともに、
1361
1362 題があると判断される場合には、
1363 当該問題を解消するために必要と考えられる措置を具体的に提
1364 示しなさい。
1365
1366 なお、
1367 二つの計画について、
1368 それぞれ独立して検討するものとする。
1369
1370
1371
1372
1373 甲装置の製造コストは、
1374 その製造数量や製造設備の稼働率に左右されるところ、
1375 X社の小型
1376 甲の製造設備やY社の二つの大型甲の製造設備のうちの一つの稼働率が低い状況にある。
1377
1378 しか
1379 し、
1380 甲装置の需要者の中には、
1381 設置場所等により大型甲と小型甲の両方を必要とするものも少
1382 なくなく、
1383 X社及びY社では、
1384 大型甲と小型甲の両方を販売することが営業上重要であると判
1385 断している。
1386
1387
1388 このため、
1389 X社とY社は、
1390 次の内容の甲装置の製造受委託(OEM)契約を締結することを
1391 計画している。
1392
1393 すなわち、
1394 X社にあっては、
1395 小型甲の製造を取りやめ、
1396 Y社に小型甲の製造の
1397 全部を委託し、
1398 Y社から供給を受けた小型甲を自社の製品として需要者に販売する。
1399
1400 逆に、
1401
1402 社にあっては、
1403 大型甲の製造を取りやめ、
1404 X社に大型甲の製造の全部を委託し、
1405 X社から供給
1406 を受けた大型甲を自社の製品として需要者に販売する。
1407
1408 甲装置の需要者向けの販売活動は、
1409
1410 れぞれが独立して行う。
1411
1412
1413 X社及びY社において、
1414 大型甲と小型甲の製造を担当する従業員を相互に配置転換すること
1415 は容易である。
1416
1417 それぞれの現有製造設備から他方に必要数量を供給することは可能であるが、
1418
1419 特に大型甲についてはX社の製造余力は乏しくなる見込みである。
1420
1421 また、
1422 大型甲及び小型甲の
1423 いずれについても、
1424 製造受託者から製造委託者に対する供給価格は、
1425 それぞれの需要者向け販
1426 売価格の8割程度と見込まれる。
1427
1428
1429 なお、
1430 これによりW社に対する乙機器の供給に影響が生じることはない。
1431
1432
1433
1434
1435
1436 乙機器の製造コストは、
1437 その製造数量や製造設備の稼働率に左右されるところ、
1438 甲装置のシ
1439 ェアが首位のZ社に比べて低いX社及びY社では、
1440 乙機器の製造コスト面で不利な状況にある。
1441
1442
1443 このため、
1444 X社とY社は、
1445 それぞれの乙機器製造部門を共同新設分割方式で切り出し、
1446 乙機
1447 器の製造を行う共同出資会社としてS社を設立することを計画している。
1448
1449 なお、
1450 この共同新設
1451 分割は、
1452 独占禁止法に基づく公正取引委員会への届出基準を充足している。
1453
1454
1455 S社では、
1456 乙機器の製造設備を統廃合し(ただし、
1457 W社に対して引き続き乙機器を供給する
1458 上で必要な製造能力を維持する。
1459
1460 )、
1461 製造コストの低減を図る。
1462
1463 X社及びY社は、
1464 S社から製
1465 造コストベースで乙機器の供給を受ける。
1466
1467 また、
1468 甲装置の製造や需要者向けの販売活動は、
1469
1470 れぞれが独立して行う。
1471
1472
1473
1474 - 15 -
1475
1476 〔第2問〕(配点:50)
1477 甲精密工作機械(以下「甲機械」という。
1478
1479 )は、
1480 機械部品を効率よく高精度に自動で加工する工
1481 作機械である。
1482
1483 我が国における甲機械のメーカー(以下「メーカー」という。
1484
1485 )は5社あり、
1486 その
1487 売上額に基づく割合(以下「シェア」という。
1488
1489 )はほぼ均等である。
1490
1491 甲機械に代替する工作機械は
1492 なく、
1493 この10年間に甲機械の製造販売業に新規参入したものはなく、
1494 また、
1495 輸入もほとんど行わ
1496 れていない。
1497
1498
1499 甲機械を使用して機械部品を加工する甲機械の需要者(以下「需要者」という。
1500
1501 )にとっては、
1502
1503 これをメーカーから購入する方法と、
1504 リース事業者から甲機械のリースを受ける方法がある。
1505
1506 リー
1507 スとは、
1508 需要者があらかじめ選定した甲機械をリース事業者がメーカーから購入し、
1509 これを需要者
1510 がリース事業者から中長期にわたって賃借する方法である。
1511
1512 リースには、
1513 @初期に多額の購入費用
1514 が掛からず、
1515 毎月のリース料の支払だけで済み、
1516 費用を平準化できること、
1517 A管理や事務の負担を
1518 軽減できること、
1519 B陳腐化しやすい甲機械にあって常に最新のものを導入できることなどのメリッ
1520 トがあり、
1521 こうしたメリットを重視する需要者は、
1522 甲機械の購入ではなくリースを選択している。
1523
1524
1525 どのメーカーにおいても、
1526 甲機械の販売台数に占める購入する需要者向けとリース事業者向けの比
1527 率は、
1528 おおむね50パーセントずつとなっている。
1529
1530
1531 リース事業者であるA社、
1532 B社、
1533 C社及びD社(以下「リース4社」という。
1534
1535 )は、
1536 我が国にお
1537 ける甲機械のリースの取引において、
1538 それぞれ約13パーセント、
1539 約11パーセント、
1540 約10パー
1541 セント及び約7パーセントのシェアを有している。
1542
1543 その他のリース事業者も多数存在し、
1544 競争は活
1545 発に行われているが、
1546 そのシェアはいずれも5パーセント以下である。
1547
1548 また、
1549 国内における甲機械
1550 の販売台数全体のうちリース4社が購入する割合は、
1551 それぞれ約7パーセント、
1552 約6パーセント、
1553
1554 約5パーセント及び約4パーセントとなっている。
1555
1556 甲機械のその他の購入者で3パーセント以上の
1557 割合を有するものはいない。
1558
1559
1560 近年、
1561 甲機械に対する需要の鈍化に伴い、
1562 メーカーには甲機械の在庫が増えている。
1563
1564 こうした中
1565 で、
1566 メーカーのうちX社及びY社(以下「メーカー2社」という。
1567
1568 )が、
1569 それぞれ、
1570 甲機械の販売
1571 のみならず、
1572 甲機械のリースを希望する需要者に対して自ら直接リースを行うこと(以下「直接リ
1573 ース」という。
1574
1575 )を始めた。
1576
1577 これにより、
1578 リース4社の取引先である需要者の中にも、
1579 メーカー2
1580 社から甲機械の直接リースを受けるものが出てきた。
1581
1582
1583 メーカー2社による直接リースによって大きな影響を受けていたD社の営業部長dは、
1584 他社の状
1585 況を知りたいと考えて、
1586 A社の営業部長a、
1587 B社の営業部長b及びC社の営業部長cに情報交換を
1588 呼び掛けた。
1589
1590 この呼び掛けを受けて令和5年4月10日に開かれた会合では、
1591 リース4社がそれぞ
1592 れ直接リースによる影響を受けていることについて情報交換が行われた後、
1593 出席者から次のような
1594 発言があった(発言順)。
1595
1596
1597 d:「メーカーによる直接リースがこのまま拡大していくと、
1598 我々リース事業者は大きな打撃を受
1599 けることになる。
1600
1601
1602 b:「リースに関する知識や経験に乏しいメーカーがリースを行うと、
1603 需要者に対して十分な説明
1604 ができず、
1605 需要者の利益にならない。
1606
1607
1608 d:「リース事業への需要者の信頼を失わせることにもなる。
1609
1610
1611 a:「メーカーは、
1612 需要者に販売することは自由にできるのだから、
1613 リースについては我々に任せ
1614 るべきだろう。
1615
1616
1617 c:「リースを知らないメーカーによる直接リースはやめさせるべきだ。
1618
1619
1620 b:「メーカー2社が直接リースを続けるなら、
1621 メーカー2社からの甲機械の購入はやめたい。
1622
1623
1624 a:「メーカー2社に直接リースをやめさせるには、
1625 ここにいるリース4社がメーカー2社からの
1626 甲機械の購入をやめることが最も有効な方策ではないか。
1627
1628
1629 c:「確かにリース4社で協力すれば、
1630 メーカー2社への圧力になる。
1631
1632
1633 a:「メーカーに対してリース事業者の利益を守るためには、
1634 この場にいるリース4社の結束が必
1635
1636 - 16 -
1637
1638 要だ。
1639
1640
1641 c:「今のところ直接リースを始めたのはメーカー2社に限られているが、
1642 他のメーカーに直接リ
1643 ースをさせないための牽制にもなる。
1644
1645
1646 b:「メーカー2社が直接リースをやめれば、
1647 他のメーカーも直接リースを始めようとは考えない
1648 だろう。
1649
1650
1651 情報交換を呼び掛けたdは、
1652 会合の途中から発言しなくなったが、
1653 a、
1654 b及びcの発言に異を唱
1655 えることはなかった。
1656
1657 また、
1658 a、
1659 b及びcは、
1660 D社がメーカー2社による直接リースの影響を大き
1661 く受けていることを知っていた。
1662
1663
1664 その後、
1665 A社、
1666 B社及びC社(以下「リース3社」という。
1667
1668 )は、
1669 それぞれ、
1670 令和5年4月24
1671 日、
1672 メーカー2社に対して、
1673 直接リースを今後行わないこと、
1674 直接リースを今後も行うメーカーか
1675 らは甲機械を購入しないことを申し入れた。
1676
1677 D社も、
1678 同月26日、
1679 メーカー2社に対して、
1680 リース
1681 3社の申入れと同趣旨を申し入れた。
1682
1683 これらの申入れを受けて、
1684 メーカー2社のうちX社は、
1685 今後、
1686
1687 直接リースを行わないこととしたが、
1688 Y社は、
1689 引き続き直接リースを行っていた。
1690
1691 このため、
1692 リー
1693 ス3社は、
1694 それぞれ、
1695 同年6月8日、
1696 Y社に対して、
1697 今後Y社から甲機械を購入しない旨通知した。
1698
1699
1700 D社も、
1701 同月10日、
1702 Y社に対して、
1703 リース3社の通知と同趣旨を通知した。
1704
1705 これにより、
1706 Y社も、
1707
1708 以後、
1709 直接リースを行わないこととするに至った。
1710
1711
1712 〔設
1713
1714 問〕
1715 リース4社の上記行為について、
1716 独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
1717
1718
1719
1720 - 17 -
1721
1722 - 18 -
1723
1724 論文式試験問題集[知的財産法]
1725
1726 - 19 -
1727
1728 [知的財産法]
1729 〔第1問〕(配点:50)
1730 Xは、
1731 医薬品の製造販売を業とする会社であり、
1732 化合物αを有効成分とする疾患βの予防剤(以
1733 下「本件発明」という。
1734
1735 )について特許権を有している(以下、
1736 登録された権利を「本件特許権」
1737 といい、
1738 本件特許権についての特許を「本件特許」という。
1739
1740 )。
1741
1742 αには甲作用と乙作用の2種類の
1743 作用があり、
1744 甲作用が発現すると、
1745 疾患βの治療効果が生じ、
1746 乙作用が発現すると、
1747 疾患βの予防
1748 効果が生じる。
1749
1750 α自体は公知の化合物であり、
1751 本件発明の特許出願前に、
1752 αを有効成分とする疾患
1753 βの治療剤が製造、
1754 販売されていた。
1755
1756 本件発明は、
1757 αに乙作用があることを発見し、
1758 疾患βの予防
1759 剤に適用したことに特徴を有するものである。
1760
1761 なお、
1762 αを治療剤として用いる場合と予防剤として
1763 用いる場合では、
1764 製剤の標準的な用法・用量に違いがある。
1765
1766
1767 以上の事実関係を前提として、
1768 以下の設問に答えなさい。
1769
1770 なお、
1771 各設問はそれぞれ独立したもの
1772 であり、
1773 相互に関係はないものとする。
1774
1775
1776 [設問1]
1777 本件発明は、
1778 Xの研究開発部の部長であるAが、
1779 部下であるBに対して、
1780 αを予防剤に適用す
1781 ることが可能か否かを検討するように指示し、
1782 Bが、
1783 Xの勤務時間中にXの施設を利用して実験
1784 を行い、
1785 αを所定の用法・用量で使用した場合に乙作用が発現することを確認して完成させたも
1786 のである。
1787
1788 本件発明完成時のXの職務発明規程には、
1789 職務発明について、
1790 その発明が完成した時
1791 にXが特許を受ける権利を取得し、
1792 Xが特許権を取得した時に発明をした従業者に対して一括し
1793 て補償金を支払う旨が定められており、
1794 その内容は全従業員に周知されていた。
1795
1796 Xは、
1797 前記職務
1798 発明規程に基づいて、
1799 本件発明の特許を受ける権利を取得し、
1800 発明者をA、
1801 出願人をXとする特
1802 許出願を行い、
1803 本件特許権を取得した。
1804
1805
1806
1807
1808 本件発明に係る特許出願が特許庁に係属している間に、
1809 Bは、
1810 Xに対して、
1811 自らが本件発
1812 明の発明者であると主張して、
1813 発明者名を訂正する補正手続を行うことを請求した。
1814
1815 Bの請
1816 求が認められるかについて論じなさい。
1817
1818
1819
1820
1821
1822 Bは、
1823 Xを退社後、
1824 Xに対して、
1825 自らが本件発明の発明者であると主張し、
1826 本件発明に係
1827 る相当の利益として、
1828 前記職務発明規程に基づいて算出される額の補償金の支払を請求した。
1829
1830
1831 Bの請求が本件発明の完成時から7年、
1832 本件発明に係る特許出願時から6年、
1833 本件発明に係
1834 る特許登録時から4年を経過した後に行われたとした場合、
1835 Bの請求が認められるかについ
1836 て論じなさい。
1837
1838 なお、
1839 解答に当たっては、
1840 現行民法及び現行特許法の適用を前提とすること。
1841
1842
1843
1844 [設問2]
1845 Cは、
1846 医薬品の製造販売を業とする会社であるが、
1847 本件発明に係る特許出願前に、
1848 他の化合物
1849 γが疾患βの治療剤と予防剤の両方に適用されていたことから、
1850 αを疾患βの予防剤に適用する
1851 ことは、
1852 本件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。
1853
1854
1855 が容易に想到可能であると考え、
1856 本件特許について無効審判を請求したところ、
1857 特許庁が請求不
1858 成立審決をしたため、
1859 Cは審決取消訴訟を提起した。
1860
1861 知的財産高等裁判所は、
1862 Cの主張を認め、
1863
1864 αを疾患βの予防剤に適用することは当業者が容易に想到し得るとして審決を取り消す判決をし、
1865
1866 その判決が確定した。
1867
1868 その後、
1869 特許庁は再度の審理をし、
1870 本件特許を無効にすべき旨の第二次審
1871 決をしたため、
1872 Xは第二次審決取消訴訟を提起した。
1873
1874 第二次審決取消訴訟において、
1875 Xは、
1876 仮に
1877 αを疾患βの予防剤に適用することを当業者が容易に想到し得るとしても、
1878 本件特許出願の願書
1879 に添付した明細書記載の実験により証明されるαの予防効果は当業者の予測できない顕著なもの
1880 であるから、
1881 本件特許は無効ではないという主張を新たに行った。
1882
1883 これに対して、
1884 Cは、
1885 αの予
1886 防効果はγのそれと同程度のものであるから、
1887 αが予測できない顕著な効果を有するとはいえな
1888
1889 - 20 -
1890
1891 いと主張した。
1892
1893
1894
1895
1896 第二次審決取消訴訟において、
1897 Xが本件発明の効果に関する主張を新たに行うことは許さ
1898 れるかについて論じなさい。
1899
1900
1901
1902
1903
1904 第二次審決取消訴訟において本件発明の効果に関する主張をすることが許されるとして、
1905
1906 X及びCの主張の妥当性について論じなさい。
1907
1908
1909
1910 [設問3]
1911 Dは、
1912 医薬品の製造販売を業とする会社であり、
1913 αを有効成分とする製剤(以下「D製剤」と
1914 いう。
1915
1916 )を製造、
1917 販売している。
1918
1919 D製剤の添付文書には、
1920 治療剤として使用する場合の用法・用
1921 量と予防剤として使用する場合の用法・用量が併記されている。
1922
1923 Xは、
1924 本件特許権に基づき、
1925
1926 に対して、
1927 D製剤の販売の差止め及び廃棄を請求した。
1928
1929 Xの請求が認められるかについて論じな
1930 さい。
1931
1932 なお、
1933 解答に当たっては、
1934 本件特許が有効であることを前提とすること。
1935
1936
1937
1938 - 21 -
1939
1940 〔第2問〕(配点:50)
1941 動物αは、
1942 日本のある地域にのみ生息しているネコ科の動物であるが、
1943 警戒心が強く動きが俊敏
1944 であるため目撃例が非常に少なく、
1945 その生態には不明なところが多い。
1946
1947 動物αの研究者であるXは、
1948
1949 いくつかの証拠から動物αの生息域を絞り込み、
1950 その域内で動物αに認識されずに撮影できるポイ
1951 ントを発見し、
1952 そこにカメラ等の機材を設置・固定して、
1953 撮影する角度も最適に調整した上で録画
1954 を開始し、
1955 その場を立ち去って50時間放置した。
1956
1957 このようにして撮影された映像(以下、
1958 この5
1959 0時間分の映像を「X映像1」という。
1960
1961 )に、
1962 動物αが鮮明に映っていた。
1963
1964 Xは、
1965 X映像1に断続
1966 的に映っている動物αの部分の合計約3時間分から、
1967 各30秒から2分程度の10個のシーンを抽
1968 出し、
1969 さらに、
1970 これらのシーンを時系列と異なる順番に配置して、
1971 15分の映像(以下「X映像
1972 2」という。
1973
1974 )を作成した。
1975
1976
1977 民放のテレビ局であるYは、
1978 動物αについての番組(以下「Y番組1」という。
1979
1980 )を作成し、
1981
1982 送した。
1983
1984 Y番組1の一部として、
1985 Xの許諾を得てX映像2は放送された。
1986
1987
1988 以上の事実関係を前提として、
1989 以下の設問に答えなさい。
1990
1991 なお、
1992 各設問はそれぞれ独立したもの
1993 であり、
1994 相互に関係はないものとする。
1995
1996
1997 [設問1]
1998 出版社のZは、
1999 ネコ科の動物についての図鑑を発行した。
2000
2001 この図鑑は2種あり、
2002 一つは書籍単
2003 独(以下「Z図鑑1」という。
2004
2005 )、
2006 もう一つはZ図鑑1に各種ネコ科の動物の映像が収録された
2007 DVD(以下「Z・DVD」という。
2008
2009 )が付属しているもの(以下「Z図鑑2」という。
2010
2011 )であ
2012 る。
2013
2014 Z図鑑1は全部で250ページから成り、
2015 うち2ページにおいて動物αの画像5枚(以下
2016 「Z画像」という。
2017
2018 )が掲載されている。
2019
2020 Z・DVDには各15分程度の映像作品が5つ収録さ
2021 れており、
2022 そのうちの一つとして、
2023 動物αの映っている映像(以下「Z映像」という。
2024
2025 )がある。
2026
2027
2028 Z画像とZ映像は、
2029 放送されたY番組1を録画したものから、
2030 Z画像についてはX映像2の一部
2031 を抜き出して、
2032 Z映像についてはX映像2の全部を抜き出して、
2033 それぞれ作成されたものである。
2034
2035
2036 XはZに対し、
2037 訴訟を提起した。
2038
2039
2040
2041
2042 この訴訟において、
2043 Xは、
2044 X映像2を自らの著作物として主張している。
2045
2046 Xがこのような
2047 主張をすることには、
2048 X映像1を自らの著作物として主張する場合と比較して、
2049 Xにとって
2050 どのような利点があるかについて論じなさい。
2051
2052
2053
2054
2055
2056 XがZに対して、
2057 その著作権に基づいてなし得る請求としてどのようなものが考えられる
2058 か。
2059
2060 の解答を踏まえ、
2061 その請求の妥当性についても論じなさい。
2062
2063
2064
2065 [設問2]
2066 Yは、
2067 Y番組1とは別の番組(以下「Y番組2」という。
2068
2069 )において、
2070 X映像2を使用するこ
2071 とを企画したが、
2072 Xの許諾が得られなかったため、
2073 将来的に同種の番組を作成する際に使用する
2074 ことも視野に入れて、
2075 X映像2と同様の映像を自ら作成することとした。
2076
2077 このため、
2078 Yのスタッ
2079 フは、
2080 X映像1の撮影場所を特定し、
2081 その場所にX映像1と同様の範囲が映るようにカメラ等の
2082 機材の位置と角度を調整して設置・固定し、
2083 50時間放置して撮影を実行した。
2084
2085 さらに同スタッ
2086 フは、
2087 撮影された映像の中から、
2088 動物αがX映像2で見られたのと似た動きをしている10個の
2089 シーンを抽出し、
2090 これらをX映像2で見られたのと同じ順番になるように配置した15分の映像
2091 (以下「Y映像」という。
2092
2093 )を作成した。
2094
2095 その後、
2096 Y映像はY番組2の一部として放送された。
2097
2098
2099 Y番組2の終了間際に出されるテロップには、
2100 Xの氏名が「協力者」として表示されていた(こ
2101 の部分以外に、
2102 Y番組2においてXの氏名が表示される部分は存在しない。
2103
2104 )。
2105
2106 XはYに対し、
2107
2108 訴訟を提起した。
2109
2110
2111
2112
2113 この訴訟において、
2114 Yにより侵害された著作権法上の権利として、
2115 どのような権利をXが
2116 主張すべきかについて論じなさい。
2117
2118
2119
2120 - 22 -
2121
2122
2123
2124 で解答した権利に基づいて、
2125 XがYに対してなし得る請求としてどのようなものが考え
2126 られるか。
2127
2128 その請求の妥当性についても論じなさい。
2129
2130
2131
2132 [設問3]
2133 Y番組1の放送後、
2134 視聴者から、
2135 Y番組1中のX映像2を見た飼い犬が急に激しく吠え立て始
2136 め、
2137 X映像2を見ている間それがやまなかったという多数の報告がYに寄せられた。
2138
2139 X映像2を
2140 見た犬の反応の映像が視聴者の笑いを誘うものになるかもしれないと考えたYは、
2141 バラエティ番
2142 組の企画として、
2143 次のような実験(以下「Y実験」という。
2144
2145 )を行うこととした。
2146
2147 Y実験は、
2148
2149 ブレットに]映像2を記録し、
2150 そのタブレットを持ったYのスタッフが、
2151 街で犬を散歩させてい
2152 る飼い主に声掛けして、
2153 承諾を得られた場合、
2154 その犬に、
2155 タブレットに記録された]映像2を再
2156 生して見せる、
2157 というものである。
2158
2159 Yは、
2160 Y実験が犬に映像を見せるために行うものであること
2161 から、
2162 Y実験に際して]映像2をタブレットに記録することや、
2163 それに記録した映像を再生する
2164 ことが著作権侵害に問われることはないと判断したため、
2165 Y実験に関して]に許諾を求めること
2166 はしなかった。
2167
2168
2169 YがY実験を実施したところ、
2170 承諾を得られた飼い主が20名いたため、
2171 20匹の飼い犬にX
2172 映像2の全てを見せた。
2173
2174 Y実験の完了直後に、
2175 実験に用いたタブレットに記録されたX映像2は
2176 Yにより削除された。
2177
2178
2179 Y実験が行われたことを知り、
2180 この企画をくだらないものと思い立腹したXは、
2181 Yに対し、
2182
2183 害賠償を求める訴訟を提起した。
2184
2185
2186
2187
2188 Yはどのような根拠に基づいて下線部のような判断をしたと考えられるか。
2189
2190 簡潔に答えな
2191 さい。
2192
2193
2194
2195
2196
2197 Y実験においてYのスタッフは、
2198 各飼い主に対して事前に実験の趣旨を説明した際、
2199 飼い
2200 主が映像を見る必要はない旨伝達していたが、
2201 珍しい動物αに興味を持った飼い主3名がX
2202 映像2の全てを見ていた。
2203
2204 この場合に、
2205 YがXの著作権を侵害したと言えるか。
2206
2207 の解答を
2208 踏まえ、
2209 論じなさい。
2210
2211
2212
2213 - 23 -
2214
2215 - 24 -
2216
2217 論文式試験問題集[労
2218
2219 - 25 -
2220
2221
2222
2223 法]
2224
2225 [労
2226
2227
2228
2229 法]
2230
2231 〔第1問〕(配点:50)
2232 次の事例を読んで、
2233 後記の設問に答えなさい。
2234
2235
2236 【事
2237
2238 例】
2239 Xは、
2240 平成15年4月、
2241 約500名の社員を擁するIT企業であるY社との間で、
2242 所定労働時間
2243
2244 を1日8時間、
2245 賃金(基本給)を月額30万円として、
2246 担当職種の限定なく、
2247 期間の定めのない労
2248 働契約を締結し、
2249 その頃から、
2250 同社においてプログラマー兼システムエンジニアとして就労を始め、
2251
2252 平成30年4月には、
2253 本社システム開発課の課長補佐に昇進するとともに賃金(基本給)は月額5
2254 0万円に昇給し、
2255 以後、
2256 主に同課の課長補佐が務めるものとされていたシステム開発のプロジェク
2257 トマネージャーとして就労していた。
2258
2259
2260 ところが、
2261 Xは、
2262 令和元年9月頃、
2263 私傷病であるうつ病を発症した。
2264
2265 Xは、
2266 発症後しばらくは、
2267
2268 有給休暇を取得して療養したものの、
2269 症状は改善せず、
2270 かかりつけのメンタルクリニックの主治医
2271 Aからも、
2272 「少なくとも今後3か月間の自宅療養の必要がある。
2273
2274 」旨の診断を受けた。
2275
2276 そこで、
2277
2278 は、
2279 上司と相談の上、
2280 後記のY社の就業規則に定められた私傷病休職の制度を利用し、
2281 令和2年1
2282 月1日から休職することとなった。
2283
2284
2285 休職期間の満了日(令和3年6月30日)が迫る同月1日に至り、
2286 Xは、
2287 主治医Aに対し、
2288 復職
2289 の希望を述べて診断書の作成を求めた。
2290
2291 主治医Aは、
2292 Xの症状は、
2293 休職を開始した頃と比べれば改
2294 善傾向にはあるものの、
2295 依然として投薬の種類・量が多く、
2296 そのため、
2297 Xについては「なお3か月
2298 程度の療養の継続を要する。
2299
2300 」と診断するとともに、
2301 復職については「不可能ではないが、
2302 複雑な
2303 業務の遂行はいまだ困難と思われる。
2304
2305 」と記載した診断書を作成し、
2306 Xに交付した。
2307
2308
2309 この診断書及び復職申出書をXから受領したY社の復職判定委員会(Y社の就業規則第34条に
2310 規定するものであり、
2311 同社の人事担当役員らにより組織される。
2312
2313 )は、
2314 同月10日、
2315 Xに対し、
2316
2317 社の産業医Bと面談するよう指示し、
2318 産業医Bは、
2319 Xと面談の上、
2320 復職判定委員会に対して、
2321 「適
2322 切な配慮がない限り、
2323 プロジェクトマネージャーとしての就労は困難と思料する。
2324
2325 」との意見を述
2326 べた。
2327
2328 これを受け、
2329 復職判定委員会は、
2330 Xと面談を行ったが、
2331 その際、
2332 Xは、
2333 「今でも朝に起床す
2334 るのが億劫なときがあり、
2335 これまで外出もあまりしておらず、
2336 注意力が散漫になるときもないでは
2337 ないが、
2338 休職に入った令和2年1月当時に比べれば、
2339 症状は改善しており、
2340 エンジニアとして力を
2341 尽くしたいので、
2342 復職させてほしい。
2343
2344 」旨を述べた。
2345
2346
2347 復職判定委員会は、
2348 主治医A作成の診断書、
2349 復職申出書の内容、
2350 産業医Bの意見、
2351 Xの面談の際
2352 の発言などを考慮し、
2353 Xを本社システム開発課の課長補佐として復職させ、
2354 プロジェクトマネージ
2355 ャーとして就労させることは難しいと考えた。
2356
2357
2358 【就業規則(抜粋)】
2359 第31条
2360 第1号
2361
2362 社員が次の各号のいずれかに該当するときは、
2363 会社は休職を命ずる。
2364
2365
2366 社員が、
2367 業務災害又は通勤災害に起因するもの以外の傷病(以下「私傷病」という。
2368
2369 )に
2370 より引き続き60日間欠勤し、
2371 なお就労することができないと会社が認めたとき。
2372
2373
2374
2375 (第2号以下は省略)
2376 第32条
2377
2378 前条により休職を命ぜられた社員は、
2379 次条の休職の期間中は社員としての地位を失わない
2380
2381 が、
2382 賃金は支給されないものとする。
2383
2384
2385 第33条
2386
2387 第31条第1号の事由による休職の期間は、
2388 勤続年数に応じて次のとおりとする。
2389
2390 ただし、
2391
2392
2393 会社は、
2394 当該休職の期間が満了してもなお引き続き休養が必要と認めたときは、
2395 通算して2年を超
2396 えない範囲内でこれを延長することができる。
2397
2398
2399 第1号
2400
2401 勤続年数が1年未満の者
2402
2403 6か月
2404
2405 - 26 -
2406
2407 第2号
2408
2409 勤続年数が1年以上10年未満の者
2410
2411 第3号
2412
2413 勤続年数が10年を超える者
2414
2415 第34条
2416
2417 1年
2418
2419 1年6か月
2420
2421 第31条第1号の事由により休職を命ぜられた社員が復職をしようとするときは、
2422 会社に
2423
2424 対し、
2425 医師の診断書を添えて申出をするものとし、
2426 会社は、
2427 復職判定委員会の判定に基づき、
2428 当該
2429 社員について復職が可能と認めたときは、
2430 当該社員に対し、
2431 10日以内に復職することを命ずるも
2432 のとする。
2433
2434
2435 第35条
2436
2437 社員が第33条の休職の期間を満了しても復職することができないときは、
2438 会社を退職す
2439
2440 る。
2441
2442
2443 〔設
2444
2445
2446 問〕
2447 上記【事例】の経過を踏まえ、
2448 復職判定委員会は、
2449 Xに対し、
2450 原職である本社システム開発課
2451 の課長補佐としての復職は難しい旨を伝えたが、
2452 Xは、
2453 「プロジェクトマネージャーとして期待
2454 される役割を全うする自信はある。
2455
2456 別の職務をあてがわれて課長補佐から降格させられ、
2457 それに
2458 より給与が減額されては困る。
2459
2460 」と述べて原職での復職を強く希望し、
2461 それ以外の形での復職を
2462 拒否した。
2463
2464 復職判定委員会は、
2465 そのようなXの意思を踏まえ、
2466 復職可能とは認められないと判定
2467 し、
2468 Y社は、
2469 令和3年6月20日、
2470 Xに対し、
2471 就業規則第34条の復職命令はしない旨を伝えた。
2472
2473
2474 その後、
2475 同月30日をもって就業規則所定の休職期間が満了し、
2476 なお復職できないと認められた
2477 ことから、
2478 Y社は、
2479 就業規則第35条に基づき、
2480 Xは自然退職したものとした。
2481
2482
2483 Xは、
2484 Y社が自分を原職で復職させず、
2485 自然退職したものとして取り扱ったことは不当であり、
2486
2487 同社に対して、
2488 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴訟を提起したいと考
2489 えている。
2490
2491 このXの請求の当否について、
2492 考えられる法律上の論点を挙げて検討し、
2493 あなたの見
2494 解を述べなさい。
2495
2496
2497
2498
2499
2500 上記【事例】の経過を踏まえ、
2501 復職判定委員会は、
2502 Xに対し、
2503 直ちに原職である本社システム
2504 開発課の課長補佐としての復職は難しい旨を伝えるとともに、
2505 「一旦正式な復職とせずに本社総
2506 務課に出社して繁忙度が比較的低い同課の事務職の業務を行ってもらい、
2507 一定期間、
2508 同課でのフ
2509 ルタイムでの就労の状況を観察した上で、
2510 改めて正式に復職の可否を判断する。
2511
2512 」という案を提
2513 示したが、
2514 Xが「最初からフルタイムで就労を再開することには不安が残る。
2515
2516 」と述べて難色を
2517 示したことから、
2518 更に「当面の間、
2519 週3日の隔日勤務、
2520 勤務時間を午後1時から午後5時までの
2521 4時間とし、
2522 就労状況を観察して徐々に業務量や勤務時間を増やしていく。
2523
2524 」という案を提示し、
2525
2526 Xはこれを了承した。
2527
2528 Y社は、
2529 これを踏まえ、
2530 就業規則第33条ただし書に基づき、
2531 Xの休職期
2532 間を2か月間延長した上で、
2533 休職扱いのまま、
2534 Xに対し、
2535 令和3年7月1日から本社総務課の事
2536 務職として就労するよう指示し、
2537 同課課長に対し、
2538 Xには簡易な業務から担当させるよう指示し
2539 た。
2540
2541 Xは、
2542 同日からY社への出勤を再開した。
2543
2544
2545 同課における業務は、
2546 定型的な事務が中心であり、
2547 システム開発課における業務よりも日々の
2548 繁忙度は低かったが、
2549 Xは、
2550 2週間ほどで体調不良となり、
2551 同月中旬頃から欠勤を重ねるに至っ
2552 た。
2553
2554 復職判定委員会は、
2555 このような状況に照らし、
2556 Xにつき復職可能とは認められないと判定し、
2557
2558 Y社は、
2559 同年8月20日、
2560 Xに対し、
2561 就業規則第34条の復職命令はしない旨を伝えた。
2562
2563 その後、
2564
2565 同月31日をもって延長後の休職期間が満了し、
2566 なお復職できないと認められたことから、
2567 Y社
2568 は、
2569 就業規則第35条に基づき、
2570 Xは自然退職したものとした。
2571
2572
2573 Xは、
2574 復職がかなわなかったのは、
2575 本社総務課で就労を再開した際の労働条件が過重であった
2576 ためであって、
2577 復職させずに休職期間の満了をもって自然退職したものとして取り扱われたこと
2578 は不当であり、
2579 また、
2580 同年7月1日以降については、
2581 実際に同課で就労していたのであるから、
2582
2583 少なくとも当該就労分の賃金は支払われるべきであるとして、
2584 Y社に対して、
2585 労働契約上の権利
2586 を有する地位にあることの確認及び同課で就労した期間に係る未払賃金の支払を求める訴訟を提
2587 起したいと考えている。
2588
2589 このXの請求の当否について、
2590 考えられる法律上の論点を挙げて検討し、
2591
2592
2593 - 27 -
2594
2595 あなたの見解を述べなさい。
2596
2597
2598
2599 - 28 -
2600
2601 〔第2問〕(配点:50)
2602 次の事例を読んで、
2603 後記の設問に答えなさい。
2604
2605
2606 【事
2607
2608
2609 例】
2610 A社は、
2611 観光バスツアーの催行その他の旅客自動車運送事業等を営む会社である。
2612
2613 B社は、
2614
2615 働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88
2616 号)に基づく労働者派遣事業その他の事業を営む会社であり、
2617 その雇用する添乗員をA社に派遣
2618 している。
2619
2620 なお、
2621 B社は、
2622 A社と同じ企業グループに所属する同社の関連会社であるが、
2623 同グル
2624 ープ外の会社を含め、
2625 A社以外にも添乗員を派遣している。
2626
2627 C組合は、
2628 B社に雇用されている添
2629 乗員の6割で組織する労働組合であり、
2630 Dは、
2631 B社に雇用され、
2632 A社に派遣されている添乗員で、
2633
2634 C組合の組合員である。
2635
2636 C組合とB社との間で締結された賃金に関する基本的内容を定める労働
2637 協約においては、
2638 賃金は毎月20日締め、
2639 月末支払とされていた。
2640
2641
2642 A社は、
2643 同社に派遣されている添乗員(以下単に「添乗員」という。
2644
2645 )について、
2646 基本的には、
2647
2648 同社が各ツアーの催行に際し旅程を踏まえて作成する添乗員勤務計画書に基づいて添乗業務に従
2649 事させつつ、
2650 これに加えて、
2651 業務従事日には日報を提出させ、
2652 また、
2653 必要に応じて携帯電話等で
2654 添乗員に連絡・指示をすること等により、
2655 添乗員が添乗業務に従事する時間の管理を行っていた
2656 が、
2657 添乗員の勤務の実態としては、
2658 ツアー当日の交通状況や立ち寄り先の観光地の事情等により、
2659
2660 前記の添乗員勤務計画書に定められた時間を超える労働がしばしば行われ、
2661 しかも、
2662 時間外労働
2663 について所定の割増賃金が支払われない状況が生じていた。
2664
2665 そのため、
2666 C組合は、
2667 令和3年10
2668 月1日、
2669 A社に対して、
2670 C組合の組合員である添乗員の労働時間管理の改善に向けた事項(具体
2671 的には、
2672 勤務実態についての資料の提示、
2673 長時間労働等を解消するための方策の策定等)を議題
2674 として、
2675 団体交渉を申し入れるとともに、
2676 同日、
2677 B社に対して、
2678 時間外労働に係る未払の割増賃
2679 金の支払を議題として、
2680 団体交渉を申し入れた。
2681
2682
2683
2684
2685
2686 A社は、
2687 同月10日、
2688 B社に雇用されている添乗員で組織する労働組合であるC組合との団体
2689 交渉に応じる立場にはないとしてこの申入れを拒否し、
2690 C組合は、
2691 同月31日、
2692 この団体交渉拒
2693 否は労働組合法第7条第2号所定の不当労働行為に該当するとして、
2694 前記のとおり申し入れた団
2695 体交渉にA社が応じる旨の救済を求め、
2696 管轄する労働委員会に救済申立てを行った。
2697
2698
2699
2700
2701
2702 B社は、
2703 同月15日、
2704 前記のとおり申し入れられた団体交渉に応じ、
2705 その際、
2706 時間外労働に係
2707 る未払の割増賃金があることを認めつつ、
2708 近年同社の事業全体が低調で経営が悪化しているため、
2709
2710 懸案の未払の割増賃金を含め、
2711 当面の賃金の支払について交渉したい旨述べた。
2712
2713 これを受け、
2714
2715 社とC組合との間で交渉が重ねられ、
2716 同年12月20日、
2717 両者の間で、
2718 C組合の組合員である添
2719 乗員の時間外労働に係る未払の割増賃金は同月末に一括して支払う一方で、
2720 同月分以降12か月
2721 間の基本給の1割について支払の猶予を認め、
2722 令和4年12月分の賃金の支払の際、
2723 当該支払猶
2724 予分の賃金を一括で併せて支払うことを内容とする労働協約が締結された(以下「令和3年協
2725 約」という。
2726
2727 )。
2728
2729 令和3年協約は、
2730 C組合の規約に定められた手続を経て締結されたものであり、
2731
2732 Dは、
2733 その過程で明示的に反対の意思を表明したものではなかったが、
2734 自身について未払となっ
2735 ている時間外労働に係る割増賃金はそれほど多額ではなく、
2736 むしろ向こう1年間の基本給の1割
2737 の支払が猶予されることによる生活への影響を懸念し、
2738 不満を持っていた。
2739
2740
2741
2742
2743
2744 令和3年協約を締結する際、
2745 B社としては、
2746 1年後であれば経営状態が改善して賃金の支払に
2747 支障がなくなっているであろうと見込んでいたが、
2748 令和4年下半期に同社の経営状態は更に悪化
2749 し、
2750 令和4年12月分の賃金の支払の際、
2751 令和3年協約において約した支払猶予分の賃金の支払
2752 ができなかった。
2753
2754 このため、
2755 B社は、
2756 令和5年1月に入り、
2757 C組合に対して交渉を申し入れ、
2758
2759 払となっている支払猶予分の賃金債権の放棄を提案した。
2760
2761 C組合は、
2762 B社の経営がこれ以上悪化
2763 しない保証はなく、
2764 その結果として同社が組合員の解雇に踏み切ったり、
2765 将来にわたり賃金を減
2766 額する措置に出たりする事態となることは回避すべきであるとして、
2767 同月31日、
2768 前記のB社の
2769
2770 - 29 -
2771
2772 提案を受け入れ、
2773 C組合と同社との間で、
2774 その旨の労働協約が締結された(以下「令和5年協
2775 約」という。
2776
2777 )。
2778
2779 令和5年協約も、
2780 C組合規約所定の手続を経たものであった。
2781
2782
2783 かねて令和3年協約に不満を持っていたDは、
2784 令和5年協約は到底受け入れられないと考え、
2785
2786 令和5年2月28日、
2787 支払猶予分の賃金及びその遅延損害金の支払をB社に求める訴訟を、
2788 管轄
2789 する地方裁判所に提起した。
2790
2791
2792 〔設
2793
2794
2795 問〕
2796 C組合は、
2797 令和3年10月31日に行った申立てについて、
2798 労働委員会において救済を受ける
2799 ことができるか。
2800
2801 検討すべき法律上の論点を挙げて、
2802 あなたの意見を述べなさい。
2803
2804 なお、
2805 C組合
2806 は、
2807 労働組合法第2条に規定する「労働組合」に該当し、
2808 かつ、
2809 C組合について同法第5条第1
2810 項の立証がなされたものとする。
2811
2812
2813
2814
2815
2816 Dが訴訟を提起した、
2817 支払猶予分の賃金及びその遅延損害金の支払請求は、
2818 認められるか。
2819
2820
2821 討すべき法律上の論点を挙げて、
2822 あなたの意見を述べなさい。
2823
2824
2825
2826 - 30 -
2827
2828 論文式試験問題集[環
2829
2830 - 31 -
2831
2832
2833
2834 法]
2835
2836 [環
2837
2838
2839
2840 法]
2841
2842 〔第1問〕(配点:50)
2843 道路騒音訴訟及び空港・基地騒音訴訟に関する以下の問いに答えなさい。
2844
2845
2846 〔設問1〕
2847 Aらは、
2848 B市とC市を結ぶ一般国道の沿道の道路端に近接した範囲内に居住している。
2849
2850 Aらは、
2851
2852 この道路を走行する自動車による騒音によって被害を被っており、
2853 国に対して訴訟を提起したい
2854 と考えている。
2855
2856
2857 なお、
2858 大阪国際空港訴訟最高裁大法廷判決(最高裁判所昭和56年12月16日大法廷判決・
2859 民集35巻10号1369頁)は、
2860 空港騒音訴訟において、
2861 国に対する民事差止訴訟を不適法と
2862 して却下している。
2863
2864
2865
2866
2867 本件設例と同様の道路騒音の事例について、
2868 裁判所は、
2869 Aらの民事差止訴訟の提起は適法で
2870 あるとしてきた。
2871
2872 その理由としてはどのようなことが考えられるか。
2873
2874 【資料】を参照しつつ、
2875
2876 解答しなさい。
2877
2878
2879
2880
2881
2882 @Aらが民事差止訴訟を提起する場合、
2883 違法性の判断枠組みはどのようになるか、
2884 A損害賠
2885 償を請求する場合の違法性の判断枠組みとどのように異なるか。
2886
2887 参考となる最高裁判所の判決
2888 や学説の立場を指摘しつつ、
2889 解答しなさい。
2890
2891
2892
2893 〔設問2〕
2894 Dらは、
2895 自衛隊基地の周辺に居住しており、
2896 夜間における自衛隊機の離発着に起因する騒音に
2897 よる不眠等に悩んでおり、
2898 差止めを請求する訴訟を提起したいと考えている。
2899
2900
2901
2902
2903 Dらは、
2904 どのような訴訟を提起することができるか。
2905
2906 複数の可能性を挙げて、
2907 訴訟要件に言
2908 及しつつ比較・検討しなさい。
2909
2910
2911
2912
2913
2914 において解答した訴えについて、
2915 自衛隊機の離発着の違法性の判断枠組みはどのようにな
2916 るか。
2917
2918 参考となる最高裁判所の判決の立場を指摘しつつ、
2919 解答しなさい。
2920
2921
2922
2923
2924
2925 〔設問1〕の@と〔設問2〕のの違法性の判断枠組みの関係について、
2926 どのように考え
2927 るか、
2928 解答しなさい。
2929
2930
2931
2932 - 32 -
2933
2934 【資
2935
2936 料】
2937
2938 以下の文章は、
2939 道路騒音に関する最高裁判所の判決の後に、
2940 関係省庁が連名で発出した通知の抜粋
2941 である。
2942
2943
2944 警察庁丙都交発102号
2945 警察庁交通局長・環境庁大気保全局長・通商産業省環境立地局長・運輸省運輸政策局長・建設省道路
2946 局長から各都道府県知事・政令指定都市市長あて
2947 (略)
2948 道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針について
2949 平成7年12月1日
2950 道路交通公害対策関係省庁連絡会議
2951
2952
2953 (略)
2954
2955
2956
2957 (略)
2958
2959
2960
2961 道路交通騒音の深刻な地域における対策の基本的考え方
2962 道路交通騒音が深刻である地域においては、
2963 可能な限り道路構造対策を実施すべきであるが、
2964
2965 れに加えて、
2966 交通流対策、
2967 沿道対策を含めた総合的対策が必要であり、
2968 関係省庁の連携をさらに強
2969 化して対策を推進する必要がある。
2970
2971 この場合、
2972 交通や沿道の状況が地域により様々であることから、
2973
2974 自治体等地域レベルの施策実施主体が各々の地域に応じた取組を行うことが重要である。
2975
2976 (以下、
2977
2978 略)
2979
2980
2981
2982 道路交通騒音が深刻な地域における具体的な道路交通騒音対策
2983
2984
2985 道路構造対策の推進
2986 @
2987
2988 平面構造の道路における対策
2989 騒音の状況が深刻な地域においては、
2990 騒音の低減のためには、
2991 平面構造の道路においても遮
2992 音壁を設置することが望ましい。
2993
2994 ただし、
2995 遮音壁の設置が沿道からのアクセスを低下させる場
2996 合や、
2997 景観上望ましくない場合等も考えられるため、
2998 騒音の観点に加えて沿道利用等総合的な
2999 観点から地域の意向を踏まえつつ、
3000 遮音壁の設置を推進する必要がある。
3001
3002
3003 また、
3004 通常の遮音壁が設置できない地域においても低層の遮音壁や低騒音舗装の敷設等可能
3005 な限りの対策を行っていくべきである。
3006
3007 このため、
3008 関係省庁においては、
3009 低層遮音壁や、
3010 美観
3011 に優れた遮音壁等の技術開発を推進し、
3012 地域の状況に応じた技術の選択の幅を広げていく。
3013
3014
3015
3016 A
3017
3018 高架の道路における対策
3019 (略)
3020
3021
3022
3023 発生交通量の低減の推進
3024 @
3025
3026 物流対策の推進
3027 (略)
3028
3029 A
3030
3031 人流対策の推進
3032 (略)
3033
3034
3035
3036 交通流対策の推進
3037 @
3038
3039 道路ネットワークの整備による交通流の分散
3040 (略)
3041
3042 A
3043
3044 交通管制システムの高度化等による交通流の分散
3045 (略)
3046
3047 B〜D
3048 E
3049
3050 (略)
3051
3052 交通規制及び交通指導取締り
3053 適正な交通流の実現のため、
3054 以下の施策について支援を行う。
3055
3056
3057
3058
3059 速度違反取締り等の強化及び速度違反自動取締装置の増設
3060
3061 - 33 -
3062
3063 速度超過車両、
3064 過積載車両の取締り活動を強化し、
3065 車両走行時に発生する騒音の低減を図
3066 る。
3067
3068 また、
3069 速度超過車両に対する取締り効果のみならず、
3070 走行速度の抑制に効果がある速度
3071 違反自動取締装置を増設するとともに、
3072 軸重自動計測装置や走行状況を把握するためのIT
3073 Vカメラの設置を推進する。
3074
3075
3076
3077
3078 減速を促す標識・標示の設置・改良
3079 標識の視認性の向上(大型化、
3080 灯火化及び可変化)や運転者に減速を促す標示の設置・改
3081 良(車線境界線のワイド化、
3082 くし形減速マーク等)を行い、
3083 走行速度の抑制を図る。
3084
3085
3086
3087
3088
3089 高速走行抑止システムの増設
3090 高速走行車両の検出、
3091 高速走行車両に対する警告及び高速走行車両の取締り機能を持つ高
3092 速走行抑止システムの設置を推進し、
3093 走行速度の抑制を図る。
3094
3095
3096
3097
3098
3099 大型自動車の通行規制等の検討
3100 交通実態や迂回路等の整備状況等を勘案して、
3101 大型自動車の通行規制等の検討を行う。
3102
3103
3104
3105
3106
3107 沿道対策等の推進
3108 (略)
3109
3110
3111
3112 自動車単体対策の強化
3113 (略)
3114
3115
3116
3117 低公害車の普及促進
3118 (略)
3119
3120
3121
3122 自動車公害防止計画の策定に対する支援
3123 (略)
3124
3125
3126
3127 自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(以下
3128 「自動車NOx法」という)の進行管理
3129 (略)
3130
3131
3132
3133 普及啓発活動の推進
3134 (略)
3135
3136
3137
3138 その他
3139 (略)
3140
3141
3142
3143 今後の取組
3144 関係省庁は、
3145 3に示したように地域的取組を支援していくほか、
3146 今後とも本連絡会議等の場にお
3147 いて相互に密接な連携を図りつつ、
3148 本とりまとめに盛られた道路交通騒音対策を着実に実施してい
3149 くものとする。
3150
3151
3152
3153 - 34 -
3154
3155 〔第2問〕(配点:50)
3156 小売業を営むXは、
3157 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(以下「容器包
3158 装リサイクル法」という。
3159
3160 )上の特定容器利用事業者として再商品化義務を履行するため、
3161 公益財
3162 団法人日本容器包装リサイクル協会との間で再商品化に関する契約を締結して委託料を支払ってき
3163 た。
3164
3165 Xは、
3166 容器包装リサイクル法が特定容器利用事業者に特定容器製造等事業者よりも過重な負担
3167 を課するのは、
3168 憲法に違反し、
3169 容器包装リサイクル法の規定に係る国会の立法行為は違法であると
3170 主張して、
3171 国家賠償を請求する訴訟を提起したいと考えている。
3172
3173
3174 〔設問1〕
3175 容器包装リサイクル法等における費用負担の考え方について以下の問いに答えなさい。
3176
3177
3178
3179
3180 容器包装リサイクル法における費用負担はどのような考え方に基づいているか。
3181
3182 その考え方
3183 について説明しなさい。
3184
3185
3186
3187
3188
3189 @の考え方は同法のどの点にあらわれているか、
3190 条文上の根拠を挙げつつ簡潔に説明しな
3191 さい。
3192
3193 Aその中には、
3194 規定の導入以降実際には機能を果たさなくなってきた規定もある。
3195
3196 それ
3197 については、
3198 なぜ機能を果たさなくなってきたかについても説明しなさい。
3199
3200
3201
3202
3203
3204 の考え方は循環型社会形成推進基本法にも定められている考え方である。
3205
3206 それは同法のど
3207 の点にあらわれているか、
3208 条文を挙げつつ答えなさい。
3209
3210
3211
3212 〔設問2〕
3213 問題文との関連で、
3214 以下の問いに答えなさい。
3215
3216
3217
3218
3219 現行の容器包装リサイクル法は、
3220 実際に容器の製造に関与していないともいえる特定容器利
3221 用事業者に費用負担を課している。
3222
3223 その背景にある実質的根拠は何か。
3224
3225
3226
3227
3228
3229 現行の容器包装リサイクル法において、
3230 特定容器利用事業者に特定容器製造等事業者よりも
3231 過重な負担を課しているとするXの主張に関連する規定は、
3232 同法の条文のどの点か。
3233
3234
3235
3236
3237
3238 の規定については国には立法裁量があるとしても、
3239 立法上の適切さを考えた場合、
3240 立法論
3241 としては、
3242 特定容器製造等事業者と特定容器利用事業者の負担は同等とした上で、
3243 双方の事業
3244 者にインセンティブをより適切に与える他の方法も考えられる。
3245
3246 【資料】を読み、
3247 どのような
3248 方法が考えられるかを指摘しなさい。
3249
3250
3251
3252
3253
3254 Xは、
3255 問題文の訴訟は提起せず、
3256 今後、
3257 委託料の支払を留保するという選択肢も考えている。
3258
3259
3260 留保した場合、
3261 行政側はXに対してどのような措置を採ることが考えられるか。
3262
3263 条文を挙げつ
3264 つ説明しなさい。
3265
3266
3267
3268 - 35 -
3269
3270 【資
3271
3272 料】
3273
3274 2015年に欧州委員会が発表した循環経済パッケージの中には製品デザインに対する具体的な提
3275 案が2つある。
3276
3277 そのうちの一つが調整料金制度である。
3278
3279 こうした流れの中で、
3280 2016年の「OEC
3281 D(経済協力開発機構)ガイダンス改訂版」に調整料金制度が位置づけられたとみるべきだろう。
3282
3283
3284 たこれは、
3285 理論的に望ましいとされるリサイクラビリティに基づく製品課金を簡易的に導入したもの
3286 と捉えられる。
3287
3288 ガイダンス改訂版2章の推奨事項でも、
3289 フルコスト、
3290 可変料金制、
3291 静脈セクター・消
3292 費者からメーカーへの情報フロー拡大、
3293 PRO(Producer Responsibility Organisation)によるエ
3294 コデザイン投資への支援、
3295 国際協調と並んで、
3296 調整料金制度や新技術利用等の革新的方法の検討があ
3297 げられている。
3298
3299
3300 フランスはEUの中でも調整料金制度を先駆的・積極的に導入している。
3301
3302 (中略)具体的には、
3303
3304 州レベルの制度またはEUの規制に対応した7つの制度に加えて、
3305 フランス独自の制度として廃タイ
3306 ヤ(2004年)、
3307 印刷物等(ただし本・雑誌・新聞・行政文書は今のところ対象外:2007年)、
3308
3309 衣類・家庭用リネン類・履物(2009年)、
3310 在宅医療の注射針等(2013年)、
3311 家具(2013
3312 年)、
3313 家庭用薬品廃棄物(2013年)、
3314 ボトル入りガスボンベ(2013年)、
3315 レジャー用・スポ
3316 ーツ用ボート(2018年から実施予定)の8つの制度がある。
3317
3318 そのほか自主的取組としてオフィス
3319 系インクカートリッジ(2000年)、
3320 農業用品(農薬容器、
3321 未使用農薬、
3322 農業用フィルム等:20
3323 01年)、
3324 トレーラハウス(2010年)があげられている。
3325
3326 2000年以降、
3327 順次拡大されており、
3328
3329 また制度改革も進められている。
3330
3331 そうした制度改革の一つが調整料金制度である。
3332
3333
3334 (中略)エコデザインを推進するために、
3335 特に製品デザインや耐用年数、
3336 使用後のリサイクル等の
3337 環境面に関係する判断基準に基づいてPROへのリサイクル委託料金(contribution)を調整するこ
3338 とが定められた(フランス環境法L541−10−9条)。
3339
3340
3341 (山川肇・廃棄物資源循環学会誌29巻1号39頁(抜粋)(引用に当たり、
3342 一部追記した。
3343
3344 ))
3345
3346 - 36 -
3347
3348 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
3349
3350 - 37 -
3351
3352 [国際関係法(公法系)]
3353 〔第1問〕(配点:50)
3354 P大陸東部地域において南北に隣接するA国及びB国は、
3355 いずれもその東側においてQ海に面し
3356 ている。
3357
3358 両国間にはα山脈が東西に走っており、
3359 その分水嶺が両国の陸の国境線とされていて、
3360
3361 側のA国と南側のB国を分けつつ、
3362 東端はQ海にやや突き出たβ岬まで続いている。
3363
3364 A国もB国も
3365 α山脈の分水嶺が陸地境界線となること及びβ岬が陸地境界線の東の終点であることは争っていな
3366 いが、
3367 海洋に関する境界線については合意がなされていなかった。
3368
3369 北側のA国は、
3370 β岬から子午線
3371 に沿うように北へほぼまっすぐに伸びる低潮線を通常基線として定め、
3372 国内法により当該基線から
3373 12海里までの海域を領海とし、
3374 通常基線から200海里までの海域に排他的経済水域(以下「E
3375 EZ」という。
3376
3377 )を、
3378 その下の海底部分に大陸棚を設定した。
3379
3380 これに対して、
3381 南側のB国の海岸線
3382 はβ岬からやや緩やかに南西方向に伸びており、
3383 β岬より南側には、
3384 海岸に沿って沖合約5海里の
3385 ところに一連の島と低潮高地が存在している。
3386
3387 B国は国内法により、
3388 基線の一部についてこれらの
3389 島と低潮高地をつないで直線基線とするとともに、
3390 当該基線から12海里までの海域に領海を、
3391
3392 00海里までの海域とその下の海底部分にそれぞれEEZと大陸棚を設定した。
3393
3394
3395 AB両国は、
3396 海洋境界線の設定に関して何度かの交渉を経てそれぞれの基線を確認した上で、
3397
3398 海については等距離線で境界画定することに合意したが、
3399 EEZ及び大陸棚については単一の境界
3400 画定線とすることに合意したものの、
3401 その境界画定線をどこに引くかに関しては合意に至らなかっ
3402 た。
3403
3404 AB両国間での主たる意見の相違は、
3405 β岬が位置する緯度よりも約6海里北側でA国沖約30
3406 海里のところにあるγ島(面積約0.5平方キロメートル)の取扱いと、
3407 海洋境界画定に関連する
3408 AB両国それぞれの関連海岸線の長さについてであった。
3409
3410 AB両国ともγ島がB国領であることを
3411 認めていたものの、
3412 A国は、
3413 γ島が無人島であることから海洋境界画定についてはその存在を無視
3414 することを主張したのに対し、
3415 B国はこれを関連事情として考慮すべきであると反論した。
3416
3417 また、
3418
3419 海洋境界画定に関するA国とB国の関連海岸線について、
3420 A国の主張によれば、
3421 その長さはA国が
3422 約400キロメートル、
3423 B国は約410キロメートルで、
3424 長さの比は約1:1となり、
3425 A国が主張
3426 する境界画定線で分けられる海域の面積も約1:1となる。
3427
3428 これに対して、
3429 B国の主張によれば、
3430
3431 関連海岸線の長さはA国が約400キロメートル、
3432 B国は約620キロメートルで、
3433 約1:1.5
3434 であり、
3435 γ島を関連事情として考慮した境界画定線で分けられる海域の面積は約1:1.7になる
3436 という。
3437
3438
3439 その後、
3440 B国が、
3441 γ島に埋立て用の作業船とこれを護衛する軍艦を派遣し、
3442 γ島の周辺を埋め立
3443 てて島を大きくする作業を開始しようとしたため、
3444 A国もまた、
3445 γ島の周辺海域に軍艦を派遣して
3446 B国の作業船による埋立作業を中止させるために威嚇発砲を行ったところ、
3447 B国の軍艦もこれに応
3448 戦したため、
3449 AB両国軍艦の間で武力衝突が発生した。
3450
3451 A国は、
3452 B国との武力衝突が生じている最
3453 中に、
3454 AB両国間におけるEEZと大陸棚の境界画定に関する問題を、
3455 国際司法裁判所(以下「I
3456 CJ」という。
3457
3458 )に一方的に付託して海洋境界線の画定を求めたほか、
3459 B国に対して埋立作業と軍
3460 事活動を停止してγ島の周辺海域からB国の船舶を撤収させ、
3461 紛争を悪化・拡大するような措置を
3462 控えることを指示する仮保全措置も併せてICJに要請した。
3463
3464
3465 A国が海洋境界画定問題をICJに付託した後、
3466 C国の軍艦X号がB国の主張する領海に入域し
3467 て、
3468 更にB国が設定した直線基線の内側に入り、
3469 この直線基線とB国の低潮線との間の海域を迅速
3470 かつ継続的に通航しているところをB国の沿岸警備隊が発見するという出来事が生じた。
3471
3472 B国の沿
3473 岸警備隊は、
3474 X号を発見した海域からB国の設定した領海外まで直ちに出るようX号に通知したと
3475 ころ、
3476 X号は、
3477 これを無視してB国の直線基線と低潮線との間の海域をしばらく航行した後、
3478 B国
3479 の主張する領海内を航行してようやくB国の領海の外に出た。
3480
3481 B国は、
3482 国内法令で自国領海内での
3483 外国軍艦の通航について事前の許可申請や事前の通告を求めてはいなかったが、
3484 直線基線の内側は
3485 内水であって外国軍艦の通航は許容されないと主張して、
3486 この事件の後、
3487 X号の通航がB国の主権
3488
3489 - 38 -
3490
3491 を侵害する行為であるとしてC国に対して抗議を行った。
3492
3493
3494 A国、
3495 B国及びC国はいずれも国際連合(以下「国連」という。
3496
3497 )の原加盟国であり、
3498 上記の出
3499 来事が生じた時点では既に1982年の海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」と
3500 いう。
3501
3502 )の当事国でもあった。
3503
3504 またAB両国は、
3505 国連加盟時に国際司法裁判所規程第36条第2項
3506 に基づきICJの管轄権を受諾する宣言を留保なしで行っている。
3507
3508
3509 以上の事実を基に、
3510 以下の設問に答えなさい。
3511
3512
3513 〔設
3514
3515 問〕
3516
3517 1.A国がICJに要請した仮保全措置に関して、
3518 近時のICJの判例を参考にしつつ、
3519 指示が
3520 命じられるための要件を確認した上で、
3521 A国は、
3522 自らが要請した仮保全措置がICJにより指
3523 示されるためにいかなる主張が可能かについて論じなさい。
3524
3525
3526 2.B国は、
3527 国連海洋法条約上、
3528 EEZと大陸棚の境界画定に関していかなる主張が可能かにつ
3529 いて、
3530 海洋境界画定に関する近時の国際判例を参考にしつつ論じなさい。
3531
3532
3533 3.X号の通航がB国の主権を侵害する行為であるというB国の抗議に対して、
3534 C国は国際法上
3535 いかなる反論が可能かについて論じなさい。
3536
3537
3538
3539 - 39 -
3540
3541 〔第2問〕(配点:50)
3542 α河は、
3543 ある大陸を流れる広い流域面積を有する河川で、
3544 同大陸の複数の国の領域を流れていた。
3545
3546
3547 A国は、
3548 α河から分岐した支流のβ川を挟んでB国と隣り合っていた。
3549
3550 また、
3551 同じくα河から分岐
3552 した別の支流であるγ川が、
3553 別の隣国であるC国との国境線をまたいで複雑に蛇行していた。
3554
3555
3556 A国では19世紀末から少しずつ工業化が進み、
3557 特にα河上流地域に位置するD国から多くの石
3558 炭を輸入することで栄え始めた。
3559
3560 β川は、
3561 そのための重要なルートであったが、
3562 他方、
3563 β川をめぐ
3564 ってA国とB国の双方が領有権を主張していた。
3565
3566 AB両国は外交交渉を重ね、
3567 その結果、
3568 20世紀
3569 初頭には、
3570 「β川の主権はB国に属する。
3571
3572 他方、
3573 A国はβ川において、
3574 産業目的のため、
3575 永久の航
3576 行利用権を有する。
3577
3578 」との条項を有する協定(以下「P協定」という。
3579
3580 )を締結した。
3581
3582
3583 この大陸では、
3584 20世紀後半になって、
3585 E国などのごく僅かな国を除いて、
3586 地域のほぼ全ての国
3587 である30数か国が加盟する一般的な地域国際組織Qが設立された。
3588
3589 その設立条約によれば、
3590 Qは
3591 この地域と世界の「平和、
3592 安全及び進歩を達成すること」を目指して設立され、
3593 また、
3594 総会や理事
3595 会、
3596 事務局などのほか、
3597 地域の安全保障や人権保障、
3598 社会的福利増進のための各種機関を備えてい
3599 た。
3600
3601 Qはこの大陸の中心的な国際組織として、
3602 設立以来、
3603 その目的に照らした活動に積極的に取り
3604 組み、
3605 各種分野において着実に実行を積み重ねていった。
3606
3607
3608 21世紀に入り、
3609 A国は自国の国土開発計画を見直す中で、
3610 自国と関わりのある河川の有効利用
3611 を考え始めた。
3612
3613
3614 β川については、
3615 これまで石炭輸入のための輸送以外には利用されてこなかったが、
3616 β川は起伏
3617 に富んだ風光明媚な地域を流れており、
3618 また、
3619 他の地域にはない多様な生物が生息していた。
3620
3621 そこ
3622 で、
3623 A国は、
3624 有償で観光客を石炭輸送船に乗せる事業を国内事業者に許可し、
3625 あわせて、
3626 外国学術
3627 機関と契約して、
3628 研究を目的とする河川の生物資源調査を許すようになった。
3629
3630 さらに、
3631 ちょうどそ
3632 の頃、
3633 上流のD国とE国の間で軍事的緊張が生じたため、
3634 A国は、
3635 β川を利用して、
3636 同じ石炭輸送
3637 船を用いてD国へ向けて対空砲や銃器・銃弾などの軍事兵器・物資の輸送も開始した。
3638
3639 この種の軍
3640 事協力をA国は以前からD国に対して無償で行ってきたが、
3641 今回の輸送もこの協力の一環であり、
3642
3643 緊張している地域の地理的位置から考えてβ川を利用することが戦略的に好ましいと考えられた。
3644
3645
3646 これに対し、
3647 B国は、
3648 A国に認めたのは石炭輸送のみであり、
3649 A国の行為はP協定違反だと主張し
3650 た。
3651
3652
3653 Qは、
3654 D国とE国の軍事的緊張が武力衝突に発展することを危惧して、
3655 Qの職員Xを含む国際監
3656 視団をD国にあるE国と隣接する国境地帯に派遣し、
3657 状況を監視させていた。
3658
3659 しかし、
3660 その最中に、
3661
3662 E国の軍隊がXをD国兵だと誤認して銃撃し死亡させた。
3663
3664 Xの死亡を理由に、
3665 QはE国に損害賠償
3666 を求めたが、
3667 E国はこれを拒否し、
3668 Q設立条約にはQが損害賠償を求める権能については規定がな
3669 いことを指摘しつつ、
3670 そもそも国際組織であるQにそのような権能はないと主張した。
3671
3672
3673 他方、
3674 γ川についてもA国は新たな活用を検討し始めた。
3675
3676 A国は、
3677 γ川流域に共同でダム4基か
3678 ら成る治水施設を構築する計画を立案し、
3679 C国に申し込んで、
3680 A国とC国がそれぞれ自国領域内に
3681 おいてγ川にダム2基ずつを建設することとする協定(以下「R協定」という。
3682
3683 )を締結した。
3684
3685
3686 協定によれば、
3687 その締結から8年以内をめどに工事を完成させ、
3688 運用を開始するものとされた。
3689
3690
3691 国は即座に建設に取り掛かり、
3692 5年目には自国が建設することになっていたダムの建設を完了させ
3693 た。
3694
3695 他方、
3696 C国はR協定を締結した直後から経済状況が苦しくなり、
3697 ダム建設は遅滞していった。
3698
3699
3700 さらに、
3701 C国国内で環境保護団体が、
3702 γ川流域には多様な生物が生息していることに着目してダム
3703 建設はこの付近の生態系を壊すとの主張を行うようになった。
3704
3705 C国国内ではダム建設に反対する声
3706 が高まり、
3707 ついにはこれに支持された政党が政権を取るに至り、
3708 ダム建設作業は完全に停止した。
3709
3710
3711 A国はC国に対して、
3712 ダム建設を継続するように申し入れたが、
3713 新政権下のC国は聞き入れず、
3714
3715 れどころかC国国内のγ川流域を自然保護区とする国内法を制定した。
3716
3717 この国内法によれば、
3718 自然
3719 保護区にダムや発電所などの一定以上の規模の建設物を設置できないとされる。
3720
3721 A国は、
3722 4基のダ
3723 ムが一体として機能することで初めてR協定締結時に予定していた効果が発揮できることから、
3724
3725
3726 - 40 -
3727
3728 国がこれまで投じた建設費用の相当部分が無駄になったと抗議し、
3729 C国に損害賠償を求めた。
3730
3731 他方、
3732
3733 C国は、
3734 γ川流域を自然保護区とする国内法によってR協定を守ることはできなくなったとして不
3735 遵守を正当化し、
3736 かつ、
3737 R協定の無効を主張し、
3738 さらに、
3739 経済的苦境や環境保護は喫緊の問題なの
3740 であって、
3741 これは緊急避難に当たり、
3742 損害賠償を支払う義務はないとも主張した。
3743
3744
3745 なお、
3746 A国〜E国は、
3747 いずれも条約法に関するウィーン条約の当事国である。
3748
3749 また、
3750 A国〜D国
3751 は、
3752 国際組織Qの加盟国である。
3753
3754
3755 以上の事実を基に、
3756 以下の設問に答えなさい。
3757
3758
3759 〔設
3760
3761 問〕
3762
3763 1.A国がP協定に違反しているとのB国の主張に対して、
3764 国際法上どのように評価できるかに
3765 ついて論じなさい。
3766
3767
3768 2.国際組織Qは、
3769 自らに生じた損害の賠償を請求するために、
3770 E国に対してどのように主張で
3771 きるかについて論じなさい。
3772
3773
3774 3.R協定に関するC国の主張は国際法上認められるかについて論じなさい。
3775
3776
3777
3778 - 41 -
3779
3780 - 42 -
3781
3782 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
3783
3784 - 43 -
3785
3786 [国際関係法(私法系)]
3787 〔第1問〕(配点:50)
3788 甲国法人A社は、
3789 食品の加工・製造・販売を業とする株式会社であり、
3790 様々な国の企業との間で、
3791
3792 食品や食材の輸出入の取引をしている。
3793
3794 A社は、
3795 2022年1月10日、
3796 日本法人B社との間で、
3797
3798 A社を売主、
3799 B社を買主とし、
3800 日本法を準拠法とする、
3801 A社製の食品の売買契約(以下「売買契約
3802 @」という。
3803
3804 )を締結して、
3805 B社に対する3000万円の売買代金債権(以下「債権@」という。
3806
3807
3808 を取得した。
3809
3810
3811 以上の事実を前提として、
3812 以下の設問に答えなさい。
3813
3814 なお、
3815 〔設問1〕と〔設問2〕は独立した
3816 問いである。
3817
3818
3819 〔設問1〕
3820 B社は、
3821 2022年2月1日、
3822 A社との間で、
3823 B社を売主、
3824 A社を買主とし、
3825 甲国法を準拠法
3826 とする、
3827 冷凍食材の売買契約(以下「売買契約A」という。
3828
3829 )を締結して、
3830 A社に対する320
3831 0万円の売買代金債権(以下「債権A」という。
3832
3833 )を取得した。
3834
3835 売買契約Aの契約書には、
3836 「こ
3837 の契約から生じる一切の紛争については、
3838 甲国P市にあるP地方裁判所を専属的管轄裁判所とす
3839 る」旨の条項(以下「本件条項」という。
3840
3841 )が定められていた。
3842
3843
3844 A社は、
3845 債権@の弁済期が到来した後もB社から債権@の弁済がなかったため、
3846 同年3月1日、
3847
3848 B社に対し、
3849 債権@の弁済を催告した。
3850
3851 B社は、
3852 同年5月25日、
3853 A社に対し、
3854 自己が有する債
3855 権Aをもって、
3856 債権@と対当額において相殺する旨の意思表示をした(以下「本件相殺」という。
3857
3858 )。
3859
3860
3861 〔小問1〕
3862 A社が、
3863 同年12月1日、
3864 B社を相手取り、
3865 債権@の弁済を求めて、
3866 東京地方裁判所に提起
3867 した訴訟において、
3868 B社が本件相殺を抗弁として主張したのに対し、
3869 A社は、
3870 本件条項は、
3871
3872 買契約Aから生じる一切の紛争について、
3873 その最終的な解決を甲国の特定の裁判所に委ね、
3874
3875 本の裁判所の管轄を排除するものであるから、
3876 日本の裁判所において債権Aについて審理・判
3877 断することはできないと主張した。
3878
3879 A社の主張が認められるか否かについて、
3880 そのように考え
3881 た根拠を挙げて論じなさい。
3882
3883 なお、
3884 本件条項に係る合意は、
3885 民事訴訟法第3条の7の要件を満
3886 たし、
3887 効力を生じているものとする。
3888
3889
3890 〔小問2〕
3891 〔小問1〕において、
3892 日本の裁判所において債権Aについて審理・判断することができるも
3893 のと解した場合、
3894 本件相殺を理由とするB社の抗弁について、
3895 いずれの国の法によって判断さ
3896 れるべきかを論じなさい。
3897
3898
3899 〔設問2〕
3900 A社は、
3901 2022年2月10日、
3902 乙国法人C社に対し、
3903 債権@を譲渡した。
3904
3905 A社は、
3906 B社に対
3907 し、
3908 公証人が同日の日付印を押した証書によって、
3909 債権@をC社に譲渡した旨の通知を発し、
3910
3911 の通知は、
3912 同月12日、
3913 B社の本社に郵便で到達した。
3914
3915 C社は、
3916 債権@の弁済期が到来した後も
3917 B社から債権@の弁済がなかったため、
3918 同年3月1日、
3919 B社に対し、
3920 債権@の弁済を催告した。
3921
3922
3923 なお、
3924 各小問は独立した問いである。
3925
3926
3927 〔小問1〕
3928 B社は、
3929 C社に対し、
3930 B社が既にA社に対して債権@の弁済をしたことを理由として、
3931 同年
3932 5月25日、
3933 債権@の弁済を拒絶する旨の通知をした。
3934
3935
3936 C社が、
3937 同年12月1日、
3938 B社を相手取り、
3939 債権@の弁済を求めて、
3940 東京地方裁判所に提起
3941 した訴訟において、
3942 この弁済を理由とするB社の抗弁が認められるかについて、
3943 いずれの国の
3944 法によって判断されるべきかを論じなさい。
3945
3946 なお、
3947 この訴えについて、
3948 日本の裁判所の国際裁
3949
3950 - 44 -
3951
3952 判管轄権は認められるものとする。
3953
3954
3955 〔小問2〕
3956 甲国法人D社は、
3957 同年2月1日、
3958 A社に対し、
3959 3000万円を貸し付けるとともに、
3960 この貸
3961 付けに基づく貸金債権の引き当てとして、
3962 A社から、
3963 債権@を目的とする債権譲渡担保権の設
3964 定を受けていた。
3965
3966 この契約においては、
3967 甲国法が準拠法とされていた。
3968
3969 A社は、
3970 B社に対し、
3971
3972 この債権譲渡担保権の設定について何ら通知をしていない。
3973
3974 なお、
3975 甲国法上、
3976 債権譲渡又は債
3977 権譲渡担保権の設定の第三者対抗要件は、
3978 債権譲渡契約又は債権譲渡担保権設定契約の締結時
3979 期の先後で決まるとされている。
3980
3981
3982 D社は、
3983 上記貸金債権の弁済期が到来した後もA社からその弁済がなかったため、
3984 債権@を
3985 目的とする譲渡担保権を実行することとして、
3986 同年6月1日、
3987 B社に譲渡担保権実行の通知を
3988 したところ、
3989 B社は、
3990 同年7月1日、
3991 債権@の債権者を確知することができないとの理由によ
3992 り、
3993 売買契約@に基づく売買代金3000万円を東京法務局に供託した。
3994
3995
3996 C社とD社の間で、
3997 この供託に係る供託金還付請求権の帰属が争われ、
3998 東京地方裁判所に訴
3999 えが提起された場合において、
4000 C社とD社のいずれが債権@を取得したかについて、
4001 どのよう
4002 な判断がされるべきかを論じなさい。
4003
4004 なお、
4005 この訴えについて、
4006 日本の裁判所の国際裁判管轄
4007 権は認められるものとする。
4008
4009
4010
4011 - 45 -
4012
4013 〔第2問〕(配点:50)
4014 A女(甲国籍)は、
4015 甲国K市の理工系の大学院に在学中、
4016 留学生のB男(乙国籍)と知り合い、
4017
4018 両者は親密な交際を始めた。
4019
4020 両者の関係は、
4021 Aが大学院を修了後に、
4022 日本の工作機械メーカーO社
4023 の甲国における現地法人P社に技術者として就職してからも継続した。
4024
4025 やがて、
4026 AはBの子を懐妊
4027 するに至ったが、
4028 その直後に両者の関係が悪化し、
4029 両者は話合いの末に交際関係を解消した。
4030
4031 Aは、
4032
4033 Bとの関係を解消してから間もない2010年1月、
4034 未婚のままでYを出産し、
4035 Yは出生により甲
4036 国籍を取得した。
4037
4038 その後しばらくして、
4039 Bは大学院を修了したが、
4040 Yを認知しないまま乙国に帰国
4041 し、
4042 それ以降、
4043 BとA及びYとの間に一切の連絡はない。
4044
4045
4046 その後、
4047 Aは、
4048 Yを育てながらP社で働いていたが、
4049 ある時、
4050 O社からP社に一時的に出向して
4051 きていたX男(日本国籍)と知り合い、
4052 両者は親密な交際を始めた。
4053
4054 しばらくして、
4055 Xは、
4056 Aの歓
4057 心を買うため、
4058 血縁関係のないYを自分の子として認知することを決意し、
4059 2012年1月上旬、
4060
4061 甲国K市の身分登録所にAと連れ立って出頭した上、
4062 身分登録をつかさどる官吏に対し、
4063 Yを自分
4064 の子として認知する旨の意思表示を行い(以下「本件認知」という。
4065
4066 )、
4067 甲国の身分登録簿には、
4068
4069 Yに係る身分事項として、
4070 本件認知が登録された。
4071
4072 さらに、
4073 同月下旬、
4074 AとXは、
4075 甲国K市におい
4076 て、
4077 甲国法上の方式で婚姻し(以下「本件婚姻」という。
4078
4079 )、
4080 甲国の身分登録簿には、
4081 Aに係る身
4082 分事項として、
4083 本件婚姻が登録された。
4084
4085 その翌月の同年2月、
4086 Xは、
4087 戸籍法第41条第1項の定め
4088 るところに従い、
4089 甲国K市駐在の日本国領事に対し、
4090 本件認知及び本件婚姻に関してそれぞれ作成
4091 された証書の謄本を提出し、
4092 その後間もなく、
4093 Xの戸籍には、
4094 その身分事項として、
4095 本件認知及び
4096 本件婚姻が記載された。
4097
4098
4099 2015年、
4100 XがP社への一時的な出向を終えてO社に復帰することとなったことを契機として、
4101
4102 O社とP社との間で、
4103 A及びXの要望に基づき、
4104 AをP社からO社に出向させるとともに、
4105 A及び
4106 Xをいずれも、
4107 O社の東京本社に配属する旨の人事上の調整が行われ、
4108 同年4月、
4109 A及びXは、
4110
4111 を伴って日本に転居し、
4112 東京都内の住宅において同居生活を開始した。
4113
4114
4115 ところが、
4116 日本での同居生活を開始してから、
4117 AとXの関係は次第に悪化していき、
4118 ついには、
4119
4120 両者の婚姻関係は実質的に破綻している状態となった。
4121
4122 そこで、
4123 A及びXは、
4124 話合いの末に別居す
4125 ることとして、
4126 2018年10月以降、
4127 Xは横浜市内の住宅に単身で居住し、
4128 AはYと共に従前と
4129 同じ東京都内の住宅に居住している。
4130
4131
4132 以上の事実を前提として、
4133 以下の設問に答えなさい。
4134
4135 なお、
4136 〔設問1〕と〔設問2〕は独立した
4137 問いである。
4138
4139
4140 〔設問1〕
4141 Xは、
4142 2019年7月、
4143 東京家庭裁判所に対し、
4144 Yを被告として、
4145 本件認知が血縁の事実に反
4146 することを理由として、
4147 認知の無効の訴えを提起した。
4148
4149 この訴えについて、
4150 日本の裁判所の国際
4151 裁判管轄権は認められるものとする。
4152
4153 また、
4154 本設問において反致の成立はないものとする。
4155
4156 なお、
4157
4158 甲国法及び乙国法には、
4159 親子関係の成立等に関し、
4160 それぞれ次の規定が存在する。
4161
4162
4163 【甲国法】
4164 @
4165
4166 嫡出でない子は、
4167 その父が認知することができる。
4168
4169
4170
4171 A
4172
4173 認知は、
4174 身分登録吏又は裁判官の面前での意思表示によってする。
4175
4176
4177
4178 B
4179
4180 認知をした者は、
4181 認知の時から7年以内に限り、
4182 認知について反対の事実があることを理由
4183 として、
4184 認知の無効の訴えを提起することができる。
4185
4186
4187
4188 【乙国法】
4189 C
4190
4191 非嫡出父子関係は、
4192 親からの意思表示を要することなく、
4193 血縁関係が証明されるときに成立
4194 する。
4195
4196
4197
4198 - 46 -
4199
4200 〔小問1〕
4201 本件認知が方式上有効に成立しているかについて論じなさい。
4202
4203
4204 〔小問2〕
4205 本件認知は方式上有効に成立しているものとする。
4206
4207 この場合において、
4208 Xによる認知無効の
4209 請求は認められるか。
4210
4211 訴訟上、
4212 Yの血縁上の父がBであることが不明のままであるときと、
4213
4214 出された証拠により、
4215 Yの血縁上の父がBであることが証明されたときのそれぞれについて、
4216
4217 論じなさい。
4218
4219
4220 〔設問2〕
4221 Aは、
4222 2019年4月、
4223 Yを連れて行くことについてXの同意を得た上で、
4224 Yと共に甲国へ帰
4225 国し、
4226 そのまま現在まで甲国K市で生活している。
4227
4228 Xは、
4229 2015年に日本に帰国してから甲国
4230 に渡航したことはなく、
4231 現在も日本で生活している。
4232
4233
4234 Aは、
4235 2022年4月、
4236 甲国のK裁判所に対し、
4237 Xを被告として、
4238 離婚を請求するとともに、
4239
4240 附帯処分として財産分与を申し立て、
4241 提訴した。
4242
4243
4244 甲国と日本との間の司法共助に基づき日本において訴状の送達を受けたXは、
4245 甲国の弁護士を
4246 訴訟代理人として選任した上、
4247 K裁判所における答弁として、
4248 主位的には、
4249 甲国の裁判所は国際
4250 裁判管轄権を有しないとして訴えの却下を求め、
4251 予備的には、
4252 請求に理由がないとして請求棄却
4253 を求めた。
4254
4255 これに対し、
4256 K裁判所は、
4257 2023年4月、
4258 下記の甲国法D及びEの規定に基づき、
4259
4260 離婚及び財産分与のいずれについても国際裁判管轄権を有すると判断した上、
4261 Aの離婚請求を認
4262 容するとともに、
4263 財産分与として300万円の支払をXに命じる内容の判決(以下「本件判決」
4264 という。
4265
4266 )をし、
4267 翌月、
4268 本件判決は確定した。
4269
4270
4271 そこで、
4272 Aは、
4273 東京家庭裁判所に対し、
4274 本件判決のうち300万円の支払を命じる部分につい
4275 て、
4276 民事執行法第24条に基づいて執行判決を求める訴えを提起した。
4277
4278
4279 この場合において、
4280 執行判決の要件である民事訴訟法第118条第1号の要件が具備されてい
4281 るかについて論じなさい。
4282
4283
4284 【甲国法】
4285 D
4286
4287 離婚に関する訴えは、
4288 原告が甲国に1年以上継続して住所を有するときは、
4289 甲国の裁判所に
4290 提起することができる。
4291
4292
4293
4294 E
4295
4296 裁判所は、
4297 甲国の裁判所が離婚の訴えについて管轄権を有するときは、
4298 財産の分与に関する
4299 処分についての裁判に係る事件について、
4300 管轄権を有する。
4301
4302
4303
4304 - 47 -
4305
4306