1 論文式試験問題集[民事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [民事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点は、
7 50:50〕)
8 次の各文章を読んで、
9 後記の〔設問1・〕及び〔設問2〕に答えなさい。
10
11
12 なお、
13 解答に当たっては、
14 文中において特定されている日時にかかわらず、
15 令和6年1月1日現
16 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
17
18
19 【事実】
20 1.Aは、
21 遠方に、
22 空き地である甲土地を所有しており、
23 甲土地の所有権の登記名義人はAであ
24 る。
25
26
27 2.令和2年4月1日、
28 Aの子Bは、
29 Aの了承を得ないまま、
30 甲土地について、
31 Cとの間で、
32 賃
33 料月額5万円、
34 賃貸期間30年間、
35 建物所有目的との約定による賃貸借契約(以下「契約@」
36 という。
37
38 )をBの名において締結し、
39 同日、
40 甲土地をCに引き渡した。
41
42 契約@の締結に当たり、
43
44 Cが、
45 Bに対し、
46 甲土地の所有権の登記名義人がAである理由を尋ねたところ、
47 Bは、
48 「Aは
49 父であり、
50 甲土地は既にAから贈与してもらったものだから、
51 心配はいらない。
52
53 」と言い繕っ
54 た。
55
56 Cがなお不安がったことから、
57 契約@には、
58 甲土地の使用及び収益が不可能になった場合
59 について、
60 損害賠償額を300万円と予定する旨の特約が付された。
61
62
63 3.令和2年7月1日、
64 Cは、
65 甲土地上に居住用建物(以下「乙建物」という。
66
67 )を築造し、
68 乙
69 建物について所有権保存登記を備えた。
70
71 Cは、
72 乙建物に居住している。
73
74
75 4.令和3年7月10日、
76 Bが急死した。
77
78 Bは、
79 遺言をしておらず、
80 また、
81 Bの相続人は、
82 Aの
83 みである。
84
85 Cは、
86 Bの相続人が誰であるか分からなかったことから、
87 Bの死亡後、
88 甲土地の賃
89 料を供託している。
90
91
92 5.令和4年4月15日、
93 Aは、
94 甲土地をCが利用していることに気付き、
95 Cに対し、
96 甲土地の
97 所有権に基づき、
98 乙建物を収去して甲土地を明け渡すよう請求した(以下「請求1」とい
99 う。
100
101 )。
102
103 これに対して、
104 Cは、
105 「私は、
106 契約@に基づいて甲土地を占有する権利を有してい
107 る。
108
109 仮にそのような権利がないとしても、
110 300万円の損害賠償を受けるまでは甲土地を占
111 有する権利がある。
112
113 」と反論した。
114
115
116 〔設問1〕
117 【事実】1から5までを前提として、
118 次のア及びイの問いに答えなさい。
119
120
121 ア
122
123 Cは、
124 下線部の反論に基づいて請求1を拒むことができるかどうかを論じなさい。
125
126
127
128 イ
129
130 下線部の反論が認められない場合に、
131 Cが下線部の反論に基づいて請求1を拒むことがで
132 きるかどうかを論じなさい。
133
134
135
136 【事実】
137 6.【事実】5の後、
138 AとCとの間で交渉が持たれ、
139 令和4年6月1日、
140 Cは、
141 乙建物を代金2
142 80万円でAに売却し、
143 同日、
144 乙建物をAに引き渡した。
145
146 その後、
147 乙建物について、
148 CからA
149 への所有権移転登記がされた。
150
151
152 7.令和4年6月15日、
153 Aは、
154 乙建物について、
155 Dとの間で、
156 賃料月額12万円、
157 賃料前月末
158 日払、
159 賃貸期間2年間との約定による賃貸借契約(以下「契約A」という。
160
161 )を締結し、
162 同年
163 7月1日、
164 乙建物をDに引き渡した。
165
166
167 Dは、
168 令和4年7月分から9月分までの賃料を、
169 それぞれ約定どおりAに支払った。
170
171
172 8.令和4年9月初めから雨が降り続く中、
173 同月11日、
174 乙建物の一室(以下「丙室」とい
175 う。
176
177 )で雨漏りが発生し、
178 同日以後、
179 丙室は使用することができなくなった。
180
181 その後の調査に
182 よれば、
183 丙室の雨漏りは、
184 契約Aが締結される前から存在した原因によるものであった。
185
186
187
188 - 2 -
189
190 9.令和4年9月13日、
191 Dは、
192 Aに何らの通知もしないまま、
193 建設業者Eに丙室の雨漏りの修
194 繕工事を依頼した。
195
196 Eは、
197 雨漏りの状態を確認した上で、
198 同月20日、
199 この依頼を報酬30万
200 円で引き受け、
201 同月24日から30日まで丙室の雨漏りの修繕工事(以下「本件工事」とい
202 う。
203
204 )を行った。
205
206 Dは、
207 Eに30万円の報酬を支払い、
208 同年10月1日から丙室の使用を再開
209 した。
210
211
212 令和4年9月30日、
213 Dは、
214 翌日から丙室の使用が可能となったため、
215 Aに令和4年10月
216 分の賃料を支払った。
217
218
219 10.令和4年10月10日、
220 Dは、
221 Aに対して、
222 同年8月31日に支払った令和4年9月分の賃
223 料の一部を返還するよう請求する(以下「請求2」という。
224
225 )とともに、
226 DがEに報酬として
227 支払った30万円を直ちに償還するよう請求した(以下「請求3」という。
228
229 )。
230
231 Aは、
232 この時
233 に初めて、
234 丙室に雨漏りが発生した事実とDがEに本件工事を行わせた事実とを知った。
235
236
237 Aは、
238 請求2及び請求3を拒み、
239 Dに対し、
240 「特に修繕工事を急ぐべき事情はなかったのだ
241 から、
242 Dは、
243 そもそも、
244 丙室の雨漏りを無断で修繕する権利を有していなかったはずだ。
245
246 しか
247 も、
248 DがEに支払った報酬30万円は高すぎる。
249
250 私が一般の建設業者に依頼していれば20万
251 円で足りたはずだ。
252
253 」と反論した。
254
255
256 〔設問1〕
257 【事実】1から10までを前提として、
258 次のア及びイの問いに答えなさい。
259
260
261 ア
262
263 請求2が認められるかどうかを論じなさい。
264
265
266
267 イ
268
269 請求3が認められるかどうかを論じなさい。
270
271 なお、
272 本件工事の実施について急迫の事情はなく、
273
274 また、
275 本件工事と同じ内容及び工期の工事に対する適正な報酬額は20万円であるものとする。
276
277
278
279 【事実】
280 11. 令和5年9月15日、
281 Fは、
282 Gに無断で、
283 Gが所有する丁土地を駐車場として使用し始めた。
284
285
286 Gは、
287 Fとは知らない仲ではなかったことや、
288 G自身は丁土地を使用する予定がなかったこと
289 から、
290 Fに対し、
291 口頭で抗議をする以外のことをしなかった。
292
293
294 12. 令和5年12月5日、
295 Gは、
296 配偶者であるHと協議により離婚し、
297 Hとの間で離婚に伴う
298 財産分与について協議をした。
299
300 Gは、
301 丁土地以外の財産をほとんど持っておらず、
302 また、
303 失職
304 中で収入がなかった。
305
306 Gは、
307 Hに対し、
308 Gの財産及び収入の状況を伝えるとともに、
309 丁土地は
310 Fが無断で使用しているだけなので、
311 いつでもFから返してもらえるはずであると説明した。
312
313
314 13. 令和5年12月6日、
315 GとHとの間で、
316 離婚に伴う財産分与として、
317 Gが丁土地をHに譲
318 渡する契約(以下「契約B」という。
319
320 )が締結された。
321
322 その際、
323 Gは、
324 GではなくHに課税さ
325 れることを心配して、
326 そのことを気遣う発言をしたのに対し、
327 Hは、
328 「私に課税される税金は、
329
330 何とかするから大丈夫。
331
332 」と応じた。
333
334 Hは、
335 Hにのみ課税されるものと理解していた。
336
337 同月1
338 1日、
339 丁土地について、
340 GからHへの所有権移転登記がされた。
341
342
343 14.
344
345 令和6年1月10日、
346 HとIとの間で、
347 Hが丁土地を代金2000万円でIに売る契約
348
349 (以下「契約C」という。
350
351 )が締結された。
352
353 Hは、
354 Iに対し、
355 丁土地の使用に係る事情につい
356 て、
357 HがGから受けた説明のとおりに説明した。
358
359 同日、
360 Iは、
361 Hに対し、
362 契約Cの代金を支払
363 った。
364
365 丁土地について、
366 HからIへの所有権移転登記は、
367 されなかった。
368
369
370 15. 令和6年1月15日、
371 Gは、
372 税理士である友人から、
373 課税されるのは財産分与をした側で
374 あるGであり、
375 その額はおおよそ300万円であるとの指摘を受けた。
376
377 Gは、
378 契約Bに係る課
379 税についての誤解に基づきHとの間で契約Bを締結したことに気付いたため、
380 同日、
381 Hに対し、
382
383 契約Bをなかったこととする旨を伝えた。
384
385 Iは、
386 Gが契約Bに係る課税について誤解していた
387 ことを契約Cの締結時に知らず、
388 そのことについて過失がなかった。
389
390
391 16. 令和6年1月18日、
392 Gは、
393 丁土地を駐車場として使用しているFに対し、
394 丁土地を買わな
395
396 - 3 -
397
398 いかと持ち掛けた。
399
400 Gは、
401 丁土地の所有権の登記名義人がHとなっていることについては、
402 G
403 とHとの間で契約Bが締結されたものの、
404 Gが契約Bに係る課税について誤解していたため、
405
406 契約Bは既になかったこととなっているとFに説明した。
407
408 同月25日、
409 GとFとの間で、
410 Gが
411 丁土地を代金2000万円でFに売る契約(以下「契約D」という。
412
413 )が締結された。
414
415 同日、
416
417 Fは、
418 Gに対し、
419 契約Dの代金を支払った。
420
421
422 〔設問2〕
423 【事実】11から16までを前提として、
424 次の問いに答えなさい。
425
426
427 令和6年1月30日、
428 Iは、
429 丁土地を占有するFに対し、
430 丁土地を明け渡すよう請求した(以下
431 「請求4」という。
432
433 )。
434
435 請求4が認められるかどうかを論じなさい。
436
437
438
439 - 4 -
440
441 論文式試験問題集[民事系科目第2問]
442
443 - 1 -
444
445 [民事系科目]
446 〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点の割合は、
447 60:40〕)
448 次の文章を読んで、
449 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
450
451
452
453 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
454
455 )は、
456 建築設備機器の製造及び販売等を目的とする会社法
457 上の公開会社である取締役会設置会社であり、
458 種類株式発行会社ではない。
459
460 甲社の発行済株式の
461 総数は500万株であり、
462 株主数は1000名であった。
463
464 甲社には、
465 A、
466 B及びC(以下、
467 A、
468
469 B及びCを総称して「Aら」という。
470
471 )の3名の取締役並びにDほか2名の計3名の監査役がお
472 り、
473 Aが代表取締役を務めていた。
474
475 なお、
476 甲社の取締役であるAらは甲社の株式を保有していた
477 が、
478 甲社の監査役であるDほか2名は甲社の株式を保有していなかった。
479
480
481 乙株式会社(以下「乙社」という。
482
483 )は、
484 住宅の建設及び売買等を目的とする株式会社であり、
485
486 甲社の発行済株式の総数の20%に相当する100万株を保有する甲社の筆頭株主であった。
487
488
489 2.甲社の近年の業績が悪化していたことから、
490 乙社は、
491 令和3年7月20日、
492 甲社に対し、
493 @取
494 締役3名の解任の件、
495 A監査役3名の解任の件、
496 B取締役3名の選任の件、
497 C監査役3名の選任
498 の件(以下、
499 これらを総称して「本件各議題」という。
500
501 )を目的とする株主総会の招集を請求し
502 た。
503
504 しかし、
505 甲社は、
506 株主総会の招集通知を発しなかった。
507
508
509 3.そこで、
510 乙社は、
511 令和3年9月27日、
512 裁判所の許可を得て、
513 甲社の株主に対し、
514 本件各議題
515 を目的とする臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会1」という。
516
517 )を開催するため、
518 必要事項
519 を記載した招集通知を発した。
520
521 当該招集通知が入った封書には、
522 議決権行使書面及び株主総会参
523 考書類のほか「議決権の行使のお願い」と題する書面(以下「本件書面」という。
524
525 )が同封され
526 ていた。
527
528 本件書面には、
529 「甲社の改革の実現に御協力をお願い申し上げます。
530
531 株主総会参考書類
532 に記載した乙社提案の各議案のいずれにも賛成していただいた方には、
533 後日、
534 1000円相当の
535 商品券を郵送にて贈呈させていただきます。
536
537 全ての議案について同封した議決権行使書面の
538 『賛』の欄に○印を付けて御返送ください。
539
540 」との記載がされていた。
541
542 なお、
543 甲社においては、
544
545 過去の定時株主総会に際して、
546 甲社又は甲社の役員若しくは株主が一定の内容の議決権の行使又
547 は議決権の行使自体を条件として商品券等を提供したことはなかった。
548
549
550 4.令和3年10月20日、
551 本件臨時株主総会1が開催され、
552 本件各議題についての乙社提案の各
553 議案は、
554 いずれも出席した株主の議決権の約75%の賛成により可決した(以下「本件決議1」
555 という。
556
557 )。
558
559 本件臨時株主総会1においては、
560 出席した株主の議決権の数は、
561 例年の定時株主総
562 会よりも約30%増加し、
563 行使された議決権のうち議案に賛成したものの割合も、
564 例年の定時株
565 主総会において行使された議決権のうち甲社が提案した議案(いずれも可決された。
566
567 )に賛成し
568 たものの割合よりも高いものであった。
569
570 なお、
571 本件臨時株主総会1において、
572 甲社の株主が返送
573 した議決権行使書面には、
574 賛否の欄に記入をしていない白票は存在しなかった。
575
576
577 5.乙社は、
578 令和3年11月15日、
579 本件各議題についての乙社提案の各議案のいずれにも賛成し
580 た甲社の株主全員に対し、
581 一人当たり1000円相当の商品券を送付した。
582
583 これらの商品券の取
584 得や送付に要した費用については、
585 乙社が全て負担した。
586
587
588 〔設問1〕
589 下記の小問に答えなさい。
590
591
592 〔小問1〕
593
594 上記3の時点で、
595 甲社の監査役Dは、
596 本件臨時株主総会1の招集通知と本件書面を見て、
597 本
598 件臨時株主総会1の開催には法令違反があり、
599 監査役として何らかの対応をする必要があるの
600
601 - 2 -
602
603 ではないかと考えた。
604
605 Dほか2名の甲社の監査役3名が協議した結果、
606 仮に本件臨時株主総会
607 1の開催に法令違反があったとしても、
608 本件臨時株主総会1の開催をやめるように求める手段
609 の有無が別途問題となることが判明したため、
610 Dは、
611 弁護士に相談することとした。
612
613 Dの相談
614 を受けた弁護士は、
615 Dが会社法に基づいて本件臨時株主総会1の開催をやめるように求める手
616 段の有無についてどのように回答すべきか、
617 論じなさい。
618
619 なお、
620 本件臨時株主総会1の開催に
621 法令違反があるかどうかについては、
622 論じなくてよい。
623
624
625 〔小問2〕
626 上記5の時点で、
627 本件各議題についての乙社提案の各議案に反対した甲社の株主Eが、
628 本件
629 決議1に至った経緯に不満を抱き、
630 株主総会決議の取消しの訴えを提起した場合に、
631 Eの立場
632 において考えられる主張及びその主張の当否について、
633 論じなさい。
634
635
636 下記6以下においては、
637 上記2から5までの事実は存在しないことを前提として、
638 〔設問2〕に
639 答えなさい。
640
641
642
643 6.乙社は、
644 甲社の業績が長期的に悪化していたため、
645 Aらに対して不満を持っていた。
646
647 これに対
648 し、
649 Aらは、
650 考え方が大きく異なる乙社が筆頭株主のままでは甲社の意思決定を円滑に行うこと
651 ができないし、
652 乙社のような株主が存在するのは甲社が会社法上の公開会社であるからであり、
653
654 今後は甲社を会社法上の公開会社でない株式会社にすべきであると考えていた。
655
656 また、
657 Aらは、
658
659 1000名もの株主が存在していることも機動的な意思決定の妨げになるものと考えていた。
660
661 そ
662 こで、
663 Aらは、
664 令和3年12月、
665 甲社の再建を支援してくれる丙株式会社(以下「丙社」とい
666 う。
667
668 )とともに、
669 株式の併合をするなどして甲社の買収を行うこととした。
670
671
672 その結果、
673 令和3年12月の時点で、
674 甲社の発行済株式の総数は600株(全て普通株式であ
675 る。
676
677 )となり、
678 丙社が200株を、
679 Aが200株を、
680 Bが100株を、
681 Cが100株を、
682 それぞ
683 れ保有することとなった。
684
685 また、
686 甲社の定款には、
687 譲渡による甲社の株式の取得について株主総
688 会の承認を要する旨、
689 株式取得者が甲社の株主である場合には甲社はその取得を承認したものと
690 みなす旨が定められた。
691
692 そして、
693 甲社は、
694 引き続き取締役会を置くこととし、
695 その取締役は、
696 A
697 らに加えて、
698 丙社から派遣されたFの4名となり、
699 引き続きAが代表取締役を務めることとなっ
700 た。
701
702 また、
703 甲社の監査役は、
704 従前と同様、
705 Dほか2名の計3名となった。
706
707 なお、
708 これらの手続は、
709
710 全て適法に行われた。
711
712
713 7.丙社は、
714 建築関係の中小規模の株式会社数社について、
715 その株式の全てを保有したり、
716 甲社や
717 下記8の丁株式会社(以下「丁社」という。
718
719 )のように、
720 その株式の一部を少数株主として保有
721 したりしていた。
722
723 丙社は、
724 甲社に対し、
725 Fを取締役として派遣したり、
726 取引先を紹介したりする
727 などしてその再建に協力した。
728
729
730 8.甲社は、
731 その製造する機器の品質に定評があったことに加え、
732 建築設備機器に対する需要の増
733 加、
734 丙社の協力及びAらの努力により、
735 急速に業績を回復することができ、
736 令和5年6月にはそ
737 の経営が安定してきた。
738
739 丙社は、
740 甲社の再建はめどがついたと考え、
741 今度は、
742 甲社の営業範囲と
743 隣接する地域で建築設備機器の製造及び販売等を行う丁社の再建に注力するようになった。
744
745 その
746 一環として、
747 Fは、
748 Aらに対し、
749 甲社の持つ技術やライセンスを丁社に提供するように求めるな
750 どしたため、
751 FとAらとの間に見解の相違が見られるようになった。
752
753
754 9.Aらは、
755 令和5年10月、
756 丙社の本社を訪れ、
757 丙社の代表取締役であるGと面会した。
758
759 Aらは、
760
761 Gに対して、
762 「甲社の再建に水を差すようなことはしないでほしい。
763
764 」と伝えたところ、
765 Gは、
766
767 「甲社の再建のために協力したのだから、
768 今度は甲社が協力する番ではないか。
769
770 甲社は、
771 その技
772 術とライセンスを丁社に提供し、
773 実際の生産は丁社に任せる方向で業務提携をしてはどうか。
774
775 」
776
777 - 3 -
778
779 などと提案し、
780 両者の見解は一致しなかった。
781
782 Gは、
783 これを機に、
784 甲社を丙社の完全子会社とし
785 た上で将来的には丁社と合併させる方がうまくいくのではないかと考えるようになった。
786
787
788 10.Aは、
789 令和5年11月1日、
790 上記9の甲社を丙社の完全子会社にするというGの意向をFから
791 聞かされて驚がくし、
792 B及びCと対応策を協議した。
793
794 その結果、
795 Aらで甲社の発行済株式の総数
796 の3分の2を保有していることから、
797 甲社と競合関係にある丁社のために経営に介入されること
798 を防ぎ、
799 甲社の独立を維持するために、
800 丙社を締め出すべきであるとの結論に達した。
801
802 そして、
803
804 下記11の計画を実現するために、
805 Bは、
806 同月6日、
807 Aに対し、
808 甲社の株式100株を譲渡した。
809
810
811 Gが考えていた甲社を丙社の完全子会社にする案も、
812 Aらが決定した甲社の独立を維持するた
813 めに丙社を締め出すという案も、
814 甲社の企業価値との関係では、
815 客観的にいずれか一方が他方よ
816 りも優れているとは言い難く、
817 見解の分かれる問題であった。
818
819 Bは、
820 Aよりも前にGの案を聞い
821 ており、
822 当初はGの案もあながちおかしなものではないと考えていたが、
823 Aが甲社の独立を維持
824 する必要があると強く主張し、
825 Cもこれに賛同したことから、
826 最終的にはAらの案を支持するこ
827 とにした。
828
829
830 11.甲社の取締役会は、
831 令和5年11月15日、
832 適法な決議を経て、
833 次の@からBまでの事項を一
834 連のものとして行う計画(以下「本件計画」という。
835
836 )を決定した。
837
838
839 @ 甲社の株式について、
840 300株を1株とする株式の併合(以下「本件株式併合」という。
841
842 )
843 を行うこととし、
844 そのために臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会2」という。
845
846 )を招集す
847 る。
848
849 なお、
850 本件株式併合により1株に満たない端数となる株式については、
851 甲社が、
852 同月14
853 日に専門家から取得した株式価値算定書に基づいた価格で買い取ることとする。
854
855
856 A 本件株式併合の効力発生後遅滞なく、
857 1株を200株に分割する株式の分割(以下「本件株
858 式分割」という。
859
860 )を行う。
861
862
863 B 本件株式分割の効力発生後遅滞なく、
864 B及びCに対する募集株式の第三者割当て(甲社が上
865 記@で買い取った甲社の株式であって本件株式分割後の200株の自己株式を処分するという
866 ものである。
867
868 )を行うこととし、
869 そのために臨時株主総会を招集する。
870
871 この募集株式の第三者
872 割当ては、
873 Bに100株を、
874 Cに100株を、
875 それぞれ割り当てるものである。
876
877
878 これらを行うことにより、
879 甲社の発行済株式の総数は400株となり、
880 Aが200株を、
881 Bが
882 100株を、
883 Cが100株を、
884 それぞれ保有することとなる。
885
886
887 Fは、
888 甲社のような株式会社において特定の株主を狙い撃ちにして締め出すことは許されない
889 と主張して本件計画に反対した。
890
891 しかし、
892 Aらが賛成したことにより本件計画が可決された。
893
894
895 12.甲社は、
896 令和5年12月11日、
897 適法な招集手続を経て、
898 本件臨時株主総会2を開催した。
899
900 本
901 件臨時株主総会2では、
902 全ての株主が出席し、
903 Aが上記8及び9の丙社による提案等を説明した
904 上で、
905 甲社と競合関係にある丁社のために経営に介入されることを防ぎ、
906 甲社の独立を維持する
907 ために、
908 丙社を締め出す必要があるとして、
909 本件株式併合が必要な理由を説明した。
910
911 なお、
912 本件
913 株式併合により1株に満たない端数となる株式の買取価格は、
914 公正な価格と認められるものであ
915 った。
916
917
918 本件臨時株主総会2に出席したGは、
919 「金額の問題ではなく、
920 信義の問題だ。
921
922 なぜ再建に協力
923 した我々だけを排除するのか。
924
925 このようなものは到底容認できない。
926
927 」と述べたところ、
928 Aは、
929
930 「御社とは甲社の経営について深刻な見解の相違があるため、
931 我々経営陣が退くのでなければ、
932
933 最終的には退出していただくほかない。
934
935 」と回答した。
936
937 本件株式併合に関する事項を定める件に
938 ついては、
939 丙社が反対したものの、
940 他の株主全ての賛成により、
941 甲社提案のとおり可決された
942 (以下「本件決議2」という。
943
944 )。
945
946
947 13.本件株式併合の効力は、
948 本件決議2によって効力発生日として定められた日に発生した。
949
950 なお、
951
952 本件株式併合に際して行うべき株主への通知及び本件株式併合に関する書面等の備置き等は、
953 全
954
955 - 4 -
956
957 て適法に行われた。
958
959
960 〔設問2〕
961
962 上記13の時点で、
963 丙社は、
964 本件株式併合の効力を争うことを検討している。
965
966 丙社が採ること
967 ができる会社法上の手段に関し、
968 丙社の立場において考えられる主張及びその主張の当否につい
969 て、
970 論じなさい。
971
972
973
974 - 5 -
975
976 論文式試験問題集[民事系科目第3問]
977
978 - 1 -
979
980 [民事系科目]
981 〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は、
982 35:35:30])
983 次の文章を読んで、
984 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
985
986
987 なお、
988 解答に当たっては、
989 文中において特定されている日時にかかわらず、
990 令和6年1月1日現
991 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
992
993
994 【事
995
996 例】
997
998 1.Aは、
999 令和2年4月1日、
1000 その所有する建物(以下「本件建物」という。
1001
1002 )をYに対して賃貸
1003 する旨の契約を締結し(以下「本件契約」という。
1004
1005 )、
1006 本件契約に基づき本件建物をYに引き渡
1007 した。
1008
1009 本件契約では、
1010 賃貸期間を契約日から3年間とすること、
1011 賃料は月額6万円を前月末日ま
1012 でに支払うこと、
1013 Yは本件建物を居住用建物として使用し、
1014 他の目的での使用はしないこと、
1015 Y
1016 が賃料の支払を怠ったとき又は前記使用目的に違反したときは、
1017 Aは催告を要することなく本件
1018 契約を解除することができることが定められた。
1019
1020
1021 2.その後、
1022 Aは令和3年7月に死亡し、
1023 その子であるX1、
1024 X2及びX3(以下、
1025 併せて「X
1026 ら」という。
1027
1028 )が遺産分割協議をした。
1029
1030 その結果、
1031 本件建物については、
1032 Xらがそれぞれ3分の
1033 1の持分で共有すること、
1034 本件契約については、
1035 Xら全員が賃貸人となること、
1036 本件契約の更新、
1037
1038 賃料の徴収及び受領、
1039 本件建物の明渡しに関する訴訟上あるいは訴訟外の業務についてはX1が
1040 自己の名で行うことが取り決められた。
1041
1042
1043 3.これを受けて、
1044 X1は、
1045 同年9月に本件契約の現状について調べたところ、
1046 同年6月から8月
1047 までの3か月分の賃料が支払われていないことが判明したことから、
1048 X1は、
1049 本件契約を解除し
1050 て本件建物の明渡しを求める訴訟を提起しようと考え、
1051 X2及びX3にその旨を相談した。
1052
1053 これ
1054 に対し、
1055 X2及びX3は、
1056 Yに対して本件建物の明渡しを求めるとのX1の意向には賛成したが、
1057
1058 自らが当事者となることは時間的・経済的負担が大きいことを理由に、
1059 X1単独で訴訟を提起し
1060 てほしいと述べた。
1061
1062
1063 以下は、
1064 X1から相談を受けた弁護士L1と司法修習生Pとの間の会話である。
1065
1066
1067 L1:X1としては、
1068 できればX2及びX3と共同で訴訟を提起したいとの気持ちがあるようです
1069 が、
1070 それが難しいようなら、
1071 自分一人で訴訟を提起することもやむを得ないということでした。
1072
1073
1074 そこで、
1075 X1のみが原告となって訴訟を提起する方法について検討してみましょう。
1076
1077
1078 P:本件建物の明渡しについて、
1079 賃貸借契約の終了に基づく明渡請求権を訴訟物とした場合は、
1080
1081 X1単独で訴訟を提起することができるのではないかと思います。
1082
1083
1084 L1:固有必要的共同訴訟ではないということですね。
1085
1086 それ以外に何かありませんか。
1087
1088
1089 P:X1が自らの請求権について当事者となるだけでなく、
1090 X2及びX3の訴訟担当者としても
1091 関与するということでしょうか。
1092
1093 本件では、
1094 X2やX3からの選定行為はないので、
1095 X1は選
1096 定当事者になることはできませんが、
1097 明文なき任意的訴訟担当とすることが考えられると思い
1098 ます。
1099
1100
1101 L1:なるほど。
1102
1103 それでは、
1104 まず、
1105 任意的訴訟担当の意義及びそれが明文なくして認められるため
1106 の要件を説明してもらえますか。
1107
1108 その要件の説明に当たっては、
1109 民法上の組合契約に基づいて
1110 結成された共同事業体を契約当事者とする訴訟について当該共同事業体の代表者である組合員
1111 の任意的訴訟担当を認めた最高裁判所昭和45年11月11日大法廷判決・民集24巻12号
1112 1854頁を踏まえるようにしてください。
1113
1114 これを「課題1」とします。
1115
1116 その上で、
1117 課題1に
1118 おける意義及び要件の説明を踏まえ、
1119 本件においてX1による訴訟担当が明文なき任意的訴訟
1120 担当として認められるかについて、
1121 検討してください。
1122
1123 その際、
1124 本件と前記最高裁判例の事案
1125 との異同に留意するようにしてください。
1126
1127 これを「課題2」とします。
1128
1129
1130
1131 - 2 -
1132
1133 〔設問1〕
1134 あなたが司法修習生Pであるとして、
1135 L1から与えられた課題1及び課題2について答えなさい。
1136
1137
1138 なお、
1139 以下に掲げる【事例(続き・その1)】及び【事例(続き・その2)】に記載されている事
1140 実関係は考慮しなくてよい。
1141
1142
1143 【事
1144
1145 例(続き・その1)】
1146
1147 4.X2及びX3はX1の説得に応じ、
1148 Xらはそろって弁護士L1にYに対する訴訟の提起等を委
1149 任した。
1150
1151 これを受けて、
1152 L1は、
1153 令和4年1月24日、
1154 令和3年6月から8月までの3か月分の
1155 賃料の支払がないとして、
1156 催告することなく、
1157 同日をもって本件契約を解除する旨を内容証明郵
1158 便にてYに送付した。
1159
1160 さらに、
1161 L1は、
1162 Xらを原告、
1163 Yを被告として、
1164 本件契約の終了に基づく
1165 本件建物の明渡しを求める訴え(以下、
1166 この訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。
1167
1168 )を提起し
1169 た。
1170
1171
1172 5.これに対し、
1173 Yは、
1174 弁護士L2に訴訟委任をした上、
1175 本件訴訟の第1回口頭弁論期日において、
1176
1177 「未払とされる賃料は全額支払済みである。
1178
1179 無催告解除が認められるに足りる信頼関係の破壊の
1180 事実はない。
1181
1182 」と主張してXらの請求を争った。
1183
1184
1185 6.裁判所は、
1186 本件訴訟に係る事件を弁論準備手続に付すこととした。
1187
1188 その際、
1189 前記3か月分の賃
1190 料の支払を示す書証が提出されていなかったことから、
1191 裁判官の示唆により、
1192 第1回弁論準備手
1193 続期日においては、
1194 賃料不払による無催告解除の可否に関して当事者間の信頼関係の破壊を基礎
1195 付ける事実関係の存否につき、
1196 当事者双方が口頭で自由に議論し、
1197 その結果を踏まえ、
1198 第2回弁
1199 論準備手続期日以降に準備書面を提出して具体的な争点を確定することとされた。
1200
1201
1202 7.第1回弁論準備手続期日において、
1203 Yは、
1204 「令和3年10月以降、
1205 自分の妻が、
1206 本件建物にお
1207 いて何回か料理教室を無償で開いたことがあった。
1208
1209 X1は夫婦でその料理教室に毎回参加してい
1210 たが、
1211 賃料の話など一切出なかった。
1212
1213 」と話したところ(以下、
1214 Yのこの発言を「本件陳述」と
1215 いう。
1216
1217 )、
1218 第2回弁論準備手続期日の前に、
1219 L1から、
1220 「Yによる本件建物の使用は本件契約に
1221 おいて定められた使用目的に違反するものであり、
1222 賃料不払とは別の解除原因を構成するもので
1223 あるところ、
1224 Yはかかる請求原因事実を自白したものであり、
1225 Xらはこれを援用する。
1226
1227 」と記載
1228 された準備書面が裁判所に提出された。
1229
1230
1231 以下は、
1232 第2回弁論準備手続期日の前にされた、
1233 L2と司法修習生Qとの間の会話である。
1234
1235
1236 L2:Yは、
1237 本件陳述はXらとの間の信頼関係が破壊されていないことを裏付ける事実として述べ
1238 たにすぎないのに、
1239 このような形でXらが主張してきたのは心外であると怒っていました。
1240
1241
1242 Q:私も、
1243 このような揚げ足取りの主張は許されないと思います。
1244
1245
1246 L2:そうですね。
1247
1248 第2回弁論準備手続期日においてXらの準備書面を陳述させるべきでないと主
1249 張することが考えられますが、
1250 裁判所が陳述を許すことも想定しておく必要があります。
1251
1252 そこ
1253 で、
1254 次善の策として、
1255 裁判上の自白は成立しない、
1256 又はこれが成立するとしても撤回が許され
1257 るとの主張を準備しておきましょう。
1258
1259 この点について検討してもらえますか。
1260
1261 検討に当たって
1262 は、
1263 まず裁判上の自白の意義及び要件に触れ、
1264 それを前提に、
1265 本件陳述がされた場面や当該手
1266 続の目的等を踏まえ、
1267 本件陳述について裁判上の自白が成立しないとの立場又はこれが成立す
1268 るとしても撤回が許されるとの立場のいずれかを選択して論じてください。
1269
1270 これを「課題」と
1271 します。
1272
1273
1274 〔設問2〕
1275 あなたが司法修習生Qであるとして、
1276 L2から与えられた課題について答えなさい。
1277
1278 なお、
1279 以下
1280 に掲げる【事例(続き・その2)】に記載されている事実関係は考慮しなくてよい。
1281
1282
1283
1284 - 3 -
1285
1286 後記8以下においては、
1287 前記6及び7の事実は存在しないことを前提として、
1288 〔設問3〕に答え
1289 なさい。
1290
1291
1292 【事
1293
1294 例(続き・その2)】
1295
1296 8.裁判所は、
1297 本件訴訟につき、
1298 令和5年4月に口頭弁論を終結し、
1299 Yが主張する賃料の支払は認
1300 められないものの、
1301 未払の期間及び本件契約の解除に至る経緯等からすれば、
1302 信頼関係が破壊さ
1303 れたとまでは認められないとして、
1304 Xらの請求を棄却するとの判決(以下「本件判決」とい
1305 う。
1306
1307 )をし、
1308 本件判決は確定した。
1309
1310
1311 9.その後、
1312 Yが、
1313 令和3年1月から令和5年1月までの間、
1314 本件建物において、
1315 株式投資に関す
1316 るセミナー(以下「本件セミナー」という。
1317
1318 )を有料で月一、
1319 二回の割合で開催していたことが
1320 判明した。
1321
1322 そこで、
1323 Xらは、
1324 これが用法遵守義務違反に該当するとして本件契約を解除すること
1325 ができないかと考えるに至り、
1326 L1に相談した。
1327
1328
1329 以下は、
1330 L1と司法修習生Rとの間の会話である。
1331
1332
1333 L1:Xらとしては、
1334 本件訴訟では敗訴したが、
1335 本件訴訟とは異なる前記9の用法遵守義務違反を
1336 理由として本件契約を解除し、
1337 再度本件建物の明渡しを求める訴え(以下、
1338 この訴えに係る訴
1339 訟を「後訴」という。
1340
1341 )を提起したいと考えているようです。
1342
1343 所有権に基づく明渡請求権を訴
1344 訟物とすることも考えられますが、
1345 ここでは、
1346 賃貸借契約終了に基づく明渡請求権を訴訟物と
1347 することを前提に検討してみましょう。
1348
1349
1350 R:本件訴訟の訴訟物は賃貸借契約終了に基づく明渡請求権ですから、
1351 後訴も同一の訴訟物にな
1352 ります。
1353
1354 そして、
1355 本件セミナーの開催は、
1356 いずれも本件訴訟の事実審の口頭弁論終結時(以下
1357 「基準時」という。
1358
1359 )より前の事実であり、
1360 基準時後は開催されていないとのことですから、
1361
1362 確定した本件判決の既判力が後訴に作用し、
1363 後訴は請求棄却となるように思います。
1364
1365 また、
1366 解
1367 除権の行使は基準時後にされていますが、
1368 学説では、
1369 基準時後の解除権の行使の主張が既判力
1370 により遮断されないとするのは難しいとする説が強いということを授業で聞きました。
1371
1372
1373 L1:そうですか。
1374
1375 それでは、
1376 別の観点から検討してみましょう。
1377
1378 Xらによれば、
1379 XらがYによる
1380 本件セミナーの開催に気付いたのは本件判決の確定後であったとのことですから、
1381 用法遵守義
1382 務違反を理由とする解除権の行使の主張は本件判決の既判力によっては遮断されないと考える
1383 ことはできないでしょうか。
1384
1385
1386 R:確かに、
1387 本件判決の既判力によって主張を制限してしまうのは、
1388 Xらにやや酷な気もします。
1389
1390
1391 L1:ただ、
1392 Xらに酷というだけでは裁判所は受け入れてくれないと思いますので、
1393 そのための理
1394 論構成を考える必要があります。
1395
1396 まず、
1397 既判力によって基準時前の事由に関する主張が遮断さ
1398 れる根拠を考えてみましょう。
1399
1400 そして、
1401 それを踏まえ、
1402 本件の具体的な事実関係に照らし、
1403 本
1404 件判決の既判力によって解除権行使の主張を遮断することが相当かどうかを検討してください。
1405
1406
1407 これを「課題」とします。
1408
1409 なお、
1410 結論はどちらでも構いませんが、
1411 検討に当たっては、
1412 自説と
1413 反対の結論を採る見解にも留意するようにしてください。
1414
1415
1416 〔設問3〕
1417 あなたが司法修習生Rであるとして、
1418 L1から与えられた課題について答えなさい。
1419
1420 なお、
1421 【事
1422 例(続き・その1)】に記載されている6及び7の事実関係は考慮しなくてよい。
1423
1424
1425
1426 - 4 -
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