1 論文式試験問題集[刑事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 以下の【事例1】及び【事例2】を読んで、
8 後記〔設問1〕及び〔設問2〕について、
9 答えなさ
10 い。
11
12
13 【事例1】
14 1
15
16 特殊詐欺グループを率いる甲(28歳、
17 男性)は、
18 同じグループの配下のA(25歳、
19 男性)
20 が資産家名簿を別の特殊詐欺グループに無断で渡したと考え、
21 某月1日午後8時頃、
22 人のいない
23 B公園にAを呼び出し、
24 Aに「名簿を他のグループに流しただろう。
25
26 相手は誰だ。
27
28 」と言って追
29 及したが、
30 Aはこれを否定した。
31
32 甲は、
33 Aがうそを言っていると思い腹を立て、
34 Aの頭部を拳で
35 殴り、
36 その場に転倒したAに「殺されたいのか。
37
38 」と言いながらAの腹部を繰り返し蹴って、
39 A
40 に肋骨骨折等の傷害を負わせた。
41
42
43 甲は、
44 Aの所持品の中に資産家名簿の流出先に関する手掛かりがあるだろうと考え、
45 Aの所持
46 品を奪うつもりはなかったが、
47 甲から1メートル離れた場所で倒れたままのAに「持っているも
48 のを見せろ。
49
50 」と言った。
51
52 Aは、
53 既に抵抗する気力を失っていたので、
54 A所有の財布1個(以下
55 「本件財布」という。
56
57 )を上着ポケットから取り出してAの手元に置いた。
58
59 甲は、
60 本件財布を拾
61 って中身を見たところ、
62 本件財布内に資産家名簿の流出先を示すものはなかったが、
63 現金6万円
64 が入っているのが分かり、
65 その現金がにわかに欲しくなった。
66
67 甲は、
68 Aが恐怖で抵抗できないこ
69 とを知りながら、
70 Aに「この財布はもらっておくよ。
71
72 」と言った。
73
74 Aは、
75 本件財布を甲に渡した
76 くなかったが、
77 抵抗する気力を失っていたので何も答えられずにいた。
78
79 そこで、
80 甲は、
81 本件財布
82 を自分のズボンのポケットに入れた。
83
84
85
86 2
87
88 甲は、
89 Aの追及には時間が掛かると考え、
90 同じグループの配下の乙(25歳、
91 男性)に見張り
92 を頼むこととし、
93 電話で乙を呼び出した。
94
95 同日午後8時30分頃、
96 乙がB公園に到着すると、
97 甲
98 は、
99 一旦、
100 食事に出掛けることにして、
101 乙に「小遣いをやるから、
102 Aを見張っておけ。
103
104 」と言っ
105 た。
106
107 乙は、
108 おびえているAの様子から、
109 甲がAに暴力を振るったことを理解し、
110 「分かりまし
111 た。
112
113 」と答えた。
114
115 甲は、
116 本件財布から現金3万円を抜き取った後、
117 「お前が自由に使ってい
118 い。
119
120 」と言って、
121 本件財布を乙に手渡した。
122
123
124 甲がその場を立ち去ると、
125 乙は、
126 本件財布内の運転免許証を見て、
127 本件財布がAのものだと理
128 解するとともに、
129 A名義のキャッシュカード(以下「本件カード」という。
130
131 )が入っていること
132 に気付き、
133 Aの預金を引き出して奪おうと考えた。
134
135 乙は、
136 本件カードを本件財布から取り出して、
137
138 倒れたままのAに見せつつ、
139 持っていたバタフライナイフの刃先をAの眼前に示しながら、
140 「死
141 にたくなければ、
142 このカードの暗証番号を言え。
143
144 」と言った。
145
146 Aは、
147 預金を奪われたくなかった
148 ものの、
149 拒否すれば殺されると思い、
150 仕方なく4桁の数字から成る暗証番号を答えようとしたが、
151
152 暗がりで本件カードを自宅に保管中の別のキャッシュカードと見誤っていたため、
153 本件カードの
154 暗証番号と異なる4桁の数字を答えた。
155
156
157
158 3
159
160 乙は、
161 Aが逃げ出す様子もなかったので、
162 本件カードを使ってAの預金を引き出そうと思い、
163
164 Aをその場に残して、
165 付近のコンビニエンスストアに向かった。
166
167
168 乙は、
169 同日午後8時45分頃、
170 上記コンビニエンスストアに設置された現金自動預払機(以下
171 「ATM」という。
172
173 )に本件カードを挿入し、
174 Aが答えた4桁の数字を入力して預金を引き出そ
175 うとしたが、
176 暗証番号が間違っている旨の表示が出たため、
177 ボタンを押し間違えたと思い、
178 続け
179 て同じ4桁の数字を2回入力したところ、
180 ATMに不正な操作と認識されて取引が停止された。
181
182
183
184 〔設問1〕
185
186 【事例1】における甲及び乙の罪責を論じなさい(盗品等に関する罪(刑法第256
187
188 条)、
189 建造物侵入罪(刑法第130条)及び特別法違反の点は除く。
190
191 )。
192
193 なお、
194 乙の罪責を論じ
195
196 - 2 -
197
198 るに際しては、
199 乙がAから暗証番号を聞き出す行為が財産犯における「財産上不法の利益」を得
200 ようとする行為に当たるかという点にも触れること。
201
202
203 【事例2】(【事例1】の事実に続けて、
204 以下の事実があったものとする。
205
206 )
207 4
208
209 甲は、
210 資産家名簿の流出先が以前仲間割れしたC(30歳、
211 男性)であるとのうわさを聞き付
212 け、
213 同月10日午後5時頃、
214 Cに電話をして「お前がうちの名簿を受け取っているだろう。
215
216 」と
217 言ったところ、
218 Cから「お前が無能で管理できていないだけだ。
219
220 」と罵倒されたことに激高し、
221
222 C方に出向き、
223 直接文句を言おうと決めた。
224
225 その際、
226 甲は、
227 粗暴な性格のCから殴られるかもし
228 れないと考え、
229 そうなった場合には、
230 むしろその機会を利用してCに暴力を振るい、
231 痛め付けよ
232 うと考えた。
233
234 そこで、
235 甲は、
236 粗暴な性格の丙(26歳、
237 男性)を連れて行けば、
238 Cから暴力を振
239 るわれた際に、
240 丙がCにやり返してCを痛め付けるだろうと考えて、
241 丙を呼び出し、
242 丙に「この
243 後、
244 Cとの話合いに行くから、
245 一緒に付いて来てほしい。
246
247 」と言って頼んだ。
248
249 丙は、
250 Cと面識は
251 なく、
252 甲がCに文句を言うつもりであることやCから暴力を振るわれる可能性があることを何も
253 聞かされていなかったため、
254 甲に付いて行くだけだと思い、
255 甲の頼みを了承した。
256
257
258
259 5
260
261 甲及び丙は、
262 同日午後9時頃、
263 C方前に行くと、
264 甲がCに電話で「今、
265 家の前まで来ているか
266 ら出て来い。
267
268 」と言って呼び出した。
269
270 Cは、
271 C方の窓から甲が丙と一緒にいるのを確認し、
272 甲が
273 手下を連れて来たものと思い腹を立て、
274 「ふざけるな。
275
276 」と怒鳴りながら、
277 玄関から出た。
278
279
280 その様子を見た甲は、
281 事前に予想していたとおりCが殴ってくると思い、
282 後方に下がったが、
283
284 丙は、
285 暴力を振るわれると考えていなかったため、
286 その場にとどまったところ、
287 Cから顔面を拳
288 で1回殴られた。
289
290 丙は、
291 Cに「やめろよ。
292
293 」と言い、
294 甲に「こいつ何だよ。
295
296 どうにかしろよ。
297
298 」
299 と言ったが、
300 興奮したCから一方的に顔面を拳で数回殴られて、
301 その場に転倒した。
302
303
304
305 6
306
307 甲は、
308 丙らから2メートル離れてその様子を見ていたが、
309 丙にCを痛め付けさせようと考え、
310
311 丙に「俺がCを押さえるから、
312 Cを殴れ。
313
314 」と言った。
315
316 それを聞いて丙は、
317 身を守るためには、
318
319 甲の言うとおり、
320 Cを殴るのもやむを得ないと思った。
321
322 ちょうどその時、
323 Cが丙に対して続けて
324 殴りかかってきたことから、
325 丙は、
326 甲が来る前に立ち上がり、
327 Cの胸倉をつかんで、
328 Cの顔面を
329 拳で1回殴った(以下「1回目殴打」という。
330
331 )。
332
333 すると、
334 Cは、
335 一層興奮し「ふざけるな。
336
337 」
338 と大声を上げた。
339
340
341
342 7
343
344 その頃、
345 丙の友人丁(28歳、
346 男性)は、
347 偶然、
348 普通自動二輪車(以下「本件バイク」とい
349
350 う。
351
352 )を運転してC方前を通り掛かり、
353 丙がCの胸倉をつかんでいる様子を見て、
354 Cが先に丙を
355 殴った事実を知らないまま、
356 一方的に丙がCを殴ろうとしていると思った。
357
358 けんか好きの丁は、
359
360 面白がり、
361 丙がCを殴り倒した後、
362 丙がその場から逃走するのを手助けしようと思い、
363 丙に「頑
364 張れ。
365
366 ここで待っているから終わったらこっちに来い。
367
368 」と声を掛けた。
369
370 反撃しようとしていた
371 丙は、
372 それを聞いて発奮し、
373 なおもCが丙に殴りかかってきたことから、
374 身を守るために、
375 Cの
376 顔面を拳で1回殴った(以下「2回目殴打」という。
377
378 )。
379
380 丙は、
381 Cがひるんだ隙に、
382 本件バイク
383 の後部座席に座り、
384 丁が本件バイクを発進させて走り去った。
385
386
387 8
388
389 丙による暴行(1回目殴打及び2回目殴打)によりCに傷害は生じなかった。
390
391
392
393 〔設問2〕
394
395 【事例2】における甲、
396 丙及び丁の罪責に関し、
397 以下の及びについて、
398 答えなさ
399
400 い。
401
402
403
404
405 丙による暴行(1回目殴打及び2回目殴打)について、
406 丙に正当防衛が成立することを論じな
407 さい。
408
409
410
411
412
413 丙に正当防衛が成立することを前提に、
414 甲及び丁の罪責を論じなさい。
415
416 その際
417 @
418
419 丙による2回目殴打について丁に暴行罪(刑法第208条)の幇助犯が成立するか
420
421 A
422
423 甲に暴行罪の共同正犯が成立するか
424
425 について言及しなさい。
426
427 なお、
428 これらの論述に当たっては
429
430 - 3 -
431
432 ア
433
434 誰を基準として正当防衛の成立要件を判断するか
435
436 イ
437
438 違法性の判断が共犯者間で異なることがあるか
439
440 についても、
441 その結論及び論拠に言及し、
442 @及びAにおける説明相互の整合性にも触れること。
443
444
445
446 - 4 -
447
448 論文式試験問題集[刑事系科目第2問]
449
450 - 1 -
451
452 [刑事系科目]
453 〔第2問〕(配点:100)
454 次の【事例】を読んで、
455 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
456
457
458 【事
459 1
460
461 例】
462 H県警察I警察署の司法警察員Pは、
463 同県I市内のアパート(以下「本件アパート」とい
464 う。
465
466 )2階の201号室を拠点として覚醒剤の密売が行われているとの情報を得たことから、
467
468 令和5年9月16日午後8時頃、
469 本件アパートに赴いたところ、
470 本件アパート201号室から
471 出てくる人物を目撃したため、
472 同人を尾行した。
473
474 すると、
475 同人は、
476 I市内の路上において、
477 左
478 手に手提げかばん(以下「本件かばん」という。
479
480 )を持っていた男性(後に甲と判明した。
481
482 以
483 下「甲」という。
484
485 )と接触し、
486 封筒(以下「本件封筒」という。
487
488 )を甲に手渡し、
489 甲は、
490 本件
491 封筒を本件かばんに入れた。
492
493 これを目撃したPは、
494 本件封筒の中には覚醒剤が入っているので
495 はないかと疑い、
496 甲が本件アパートから出てきた人物と別れた後、
497 甲に対する職務質問を開始
498 した。
499
500
501
502 2
503
504 Pが「ちょっといいですか。
505
506 名前を教えていただけますか。
507
508 」と尋ねたところ、
509 甲が氏名を
510 名のったことから、
511 Pは無線で甲の前科を照会した。
512
513 その結果、
514 甲には覚醒剤取締法違反(使
515 用)の前科があることが判明した。
516
517 引き続き、
518 Pが「先ほど封筒を受け取ってかばんに入れま
519 したよね。
520
521 封筒の中身は何ですか。
522
523 」と尋ねたところ、
524 甲は、
525 「貸していたお金を返してもら
526 っただけです。
527
528 」と答えた。
529
530 しかし、
531 甲が異常に汗をかき、
532 目をきょろきょろさせ、
533 落ち着き
534 がないなど、
535 覚醒剤常用者の特徴を示していたため、
536 Pは、
537 本件封筒の中に覚醒剤が入ってい
538 るとの疑いを更に強め、
539 甲に対し、
540 「封筒の中を見せてもらえませんか。
541
542 」と言った。
543
544
545 すると、
546 甲がいきなりその場から走って逃げ出したので、
547 Pは、
548 これを追い掛け、
549 すぐに追
550 い付いて甲の前方に回り込んだ。
551
552 甲は、
553 立ち止まって、
554 「何で追い掛けてくるんですか。
555
556 任意
557 じゃないんですか。
558
559 」と言ったが、
560 Pは、
561 「何で逃げたんだ。
562
563 そのかばんの中を見せろ。
564
565 」と
566 言いながら、
567 いきなり本件かばんのチャックを開け、
568 その中に手を差し入れ、
569 その中をのぞき
570 込みながらその在中物を手で探った。
571
572 そして、
573 Pが本件かばんの中に入っていた書類を手で持
574 ち上げたところ、
575 その下から注射器が発見された。
576
577 Pが同注射器を取り出し、
578 甲に対し、
579 「こ
580 れは何だ。
581
582 一緒に署まで来てもらおうか。
583
584 」と言ったところ、
585 甲は警察署への同行に応じた。
586
587
588 そこで、
589 Pは、
590 同注射器を本件かばんに戻した上、
591 同日午後8時30分頃、
592 甲をI警察署まで
593 任意同行した。
594
595
596
597 3
598
599 I警察署への任意同行後、
600 甲が本件かばんやその在中物の任意提出に応じなかったことから、
601
602 Pは、
603 捜索差押許可状を取得して、
604 本件かばんやその在中物を差し押さえる必要があると考え
605 た。
606
607 そこで、
608 Pは、
609 甲に職務質問を実施した経緯に関する捜査報告書(以下「捜査報告書@」
610 という。
611
612 )及び注射器発見の経緯に関する捜査報告書(以下「捜査報告書A」という。
613
614 )を作
615 成した。
616
617
618 捜査報告書@には、
619 覚醒剤の密売拠点と疑われる本件アパートから出てきた人物から甲が本
620 件封筒を受け取って本件かばんに入れたこと、
621 甲には覚醒剤取締法違反(使用)の前科がある
622 こと、
623 甲が覚醒剤常用者の特徴を示していたこと及び甲は本件封筒の中を見せるように言われ
624 ると逃げ出したことが記載されていた。
625
626 これに対して、
627 捜査報告書Aには、
628 本件かばんのチャ
629 ックを開けたところ注射器が入っていた旨記載されていたが、
630 Pが本件かばんの中に手を入れ
631 て探り、
632 書類の下から同注射器を発見して取り出したことは記載されていなかった。
633
634
635
636 4
637
638 Pは、
639 同日午後9時30分頃、
640 捜査報告書@及び捜査報告書A等を疎明資料として、
641 H地方
642 裁判所裁判官に対し、
643 「捜索すべき場所、
644 身体又は物」を甲の身体及び所持品、
645 「差し押さえ
646 るべき物」を本件かばん及びその在中物並びに覚醒剤等とする捜索差押許可状の発付を請求し、
647
648 その旨の捜索差押許可状の発付を受けた。
649
650
651
652 - 2 -
653
654 同日午後10時30分頃、
655 Pが同許可状に基づき捜索を実施したところ、
656 本件かばん内側の
657 サイドポケットから本件封筒が発見された。
658
659 Pがこれを取り出して中身を確認すると、
660 覚醒剤
661 様の白色結晶入りのチャック付きポリ袋が入っていたことから、
662 Pは、
663 同結晶の簡易検査を実
664 施した。
665
666 その結果、
667 同結晶から覚醒剤の陽性反応が出たことから、
668 Pは、
669 同日午後11時頃、
670
671 覚醒剤取締法違反(所持)の事実で甲を現行犯逮捕するとともに、
672 同許可状に基づき、
673 同結晶
674 入りのチャック付きポリ袋を差し押さえた。
675
676
677 その後、
678 同結晶の鑑定が実施され、
679 同結晶が覚醒剤である旨の【鑑定書】が作成された。
680
681 同
682 月27日、
683 甲は、
684 覚醒剤取締法違反(所持)の事実で、
685 H地方裁判所に起訴された。
686
687
688 検察官は、
689 第1回公判期日において、
690 前記【鑑定書】の証拠調べを請求したが、
691 甲の弁護人
692 は、
693 前記【鑑定書】の取調べに異議がある旨の意見を述べた。
694
695
696 5
697
698 他方、
699 Pが本件アパート201号室に関する捜査を実施したところ、
700 同室の賃貸借契約の名
701 義人が乙であること、
702 乙には覚醒剤取締法違反(所持)の前科があり、
703 その前科に係る事件記
704 録の捜査報告書によれば、
705 乙の首右側に小さな蛇のタトゥーがあることが判明した。
706
707
708 Pは、
709 同年9月27日午後11時30分頃、
710 本件アパート201号室の玄関ドアが見える公
711 道上において、
712 本件アパートの張り込みを開始した。
713
714 Pは、
715 同月28日午前1時30分頃に男
716 性1名が、
717 同日午前2時頃に別の男性2名がそれぞれ本件アパート201号室に入る様子を目
718 撃した。
719
720 Pは、
721 これらの男性のうち、
722 同日午前1時30分頃に本件アパート201号室に入っ
723 た男性の顔が乙の顔と極めて酷似していたことから、
724 同男性の首右側にタトゥーが入っている
725 か否か及びその形状を確認できれば、
726 同男性が乙であると特定できると考えた。
727
728
729 同日午前8時頃、
730 Pが本件アパート201号室から出てきた同男性を尾行したところ、
731 同男
732 性は本件アパート付近の喫茶店に入店した。
733
734 そこで、
735 Pは、
736 同男性が乙であることを特定する
737 目的で、
738 同喫茶店において、
739 同店店長の承諾を得た上で、
740 店内に着席していた同男性から少し
741 離れた席から、
742 ビデオカメラを用いて、
743 同男性を撮影した【捜査@】。
744
745 Pが撮影した映像は、
746
747 全体で約20秒間のものであり、
748 そこには、
749 小さな蛇のタトゥーが入った同男性の首右側や同
750 男性が椅子に座って飲食する様子のほか、
751 その後方の客の様子が映っていた。
752
753
754 Pが同映像に映る男性の容貌及び首右側の小さな蛇のタトゥーの形状を乙のそれと突き合わ
755 せたところ、
756 その特徴が一致したことから、
757 同日午前1時30分頃に本件アパート201号室
758 に入った男性は乙であると特定することができた。
759
760
761
762 6
763
764 さらに、
765 Pは、
766 乙とその他の男性らとの共犯関係、
767 覚醒剤の搬入状況などの組織的な覚醒剤
768 密売の実態を明らかにするため、
769 本件アパート201号室への人の出入りの様子を監視する必
770 要があると考えた。
771
772 しかし、
773 同室の玄関ドアは幅員約5メートルの公道側に向かって設置され
774 ていた上、
775 同ドア横には公道上を見渡せる位置に腰高窓が設置されていたことから、
776 同室に出
777 入りする人物に気付かれることなく、
778 同室の玄関ドアが見える公道上で張り込んで同室の様子
779 を間断なく監視することは困難であった。
780
781
782 一方、
783 その公道の反対側には3階建てのビルが建っており、
784 同ビル2階の部屋の公道側の窓
785 からは、
786 本件アパート201号室の玄関ドアが見通せた。
787
788 そこで、
789 Pは、
790 同年10月3日、
791 同
792 ビルの所有者及び管理会社の承諾を得て、
793 同ビル2階の前記窓のそばにビデオカメラを設置し、
794
795 同日から同年12月3日までの間、
796 毎日24時間、
797 本件アパート201号室の玄関ドアやその
798 付近の共用通路を撮影し続けた【捜査A】。
799
800
801 撮影された映像には、
802 同室玄関ドアが開けられるたびに、
803 玄関内側や奥の部屋に通じる廊下
804 が映り込んでいた。
805
806
807
808 7
809
810 その後、
811 Pは、
812 乙及び2名の男性が毎日おおむね決まった時間に同室に出入りする様子が記
813 録されていた前記ビデオカメラの映像等を疎明資料として、
814 本件アパート201号室の捜索差
815 押許可状を取得し、
816 同室の捜索を実施したところ、
817 同室内から大量の覚醒剤等が発見されたこ
818 とから、
819 乙らを覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の事実で現行犯逮捕した。
820
821
822
823 - 3 -
824
825 〔設問1〕
826 【鑑定書】の証拠能力について、
827 具体的事実を摘示しつつ論じなさい。
828
829
830 〔設問2〕
831 下線部の【捜査@】及び【捜査A】のビデオ撮影の適法性について、
832 具体的事実を摘示しつつ
833 論じなさい。
834
835
836 (参照条文)
837 第19条
838 一
839
840 覚醒剤取締法
841 次に掲げる場合のほかは、
842 何人も、
843 覚醒剤を使用してはならない。
844
845
846
847 (以下略)
848
849 第41条の2
850
851 覚醒剤を、
852 みだりに、
853 所持し、
854 譲り渡し、
855 又は譲り受けた者(略)は、
856 10年以
857
858 下の懲役に処する。
859
860
861 2
862
863 営利の目的で前項の罪を犯した者は、
864 1年以上の有期懲役に処し、
865 又は情状により1年以上
866 の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
867
868
869
870 3
871
872 (略)
873
874 第41条の3
875
876 次の各号の一に該当する者は、
877 10年以下の懲役に処する。
878
879
880
881 一
882
883 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者
884
885 二
886
887 (以下略)
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889 - 4 -
890
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